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特許7481619冷媒回収制御装置及び冷媒回収制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】冷媒回収制御装置及び冷媒回収制御システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240502BHJP
   F25B 45/00 20060101ALI20240502BHJP
   F24F 11/32 20180101ALI20240502BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20240502BHJP
【FI】
F25B1/00 391
F25B45/00 A
F25B1/00 304D
F24F11/32
F24F11/65
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020078297
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021173481
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-05-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井吉 悠太
(72)【発明者】
【氏名】山野井 喜記
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 久美子
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-304363(JP,A)
【文献】特開2014-119122(JP,A)
【文献】特開平04-281168(JP,A)
【文献】特開2019-143877(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107990501(CN,A)
【文献】特開2015-87071(JP,A)
【文献】特開2008-185229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 45/00
F24F 11/32
F24F 11/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍装置(1)における冷媒回路(9)の冷媒を回収するために回収対象の冷媒を圧縮機(11)を介して室外熱交換器(12)に流入させる冷媒回収運転の制御モードとして、互いに異なる第1制御モード及び第2制御モードを有する制御部(31)を備え、
前記第1制御モードにおける前記冷媒回路(9)の冷媒流量は、前記第2制御モードにおける前記冷媒回路(9)の冷媒流量よりも大きく、
前記制御部は、ユーザによって選択された前記制御モードを実行する、冷媒回収制御装置。
【請求項2】
前記第1制御モードにおける前記冷媒回路(9)の冷媒を圧縮して吐出する前記圧縮機(11)の回転速度は、前記第2制御モードにおける前記圧縮機(11)の回転速度よりも大きい、請求項1に記載の冷媒回収制御装置。
【請求項3】
前記第1制御モードにおける前記冷媒回路(9)の冷媒流量を調整可能な弁(41)の開度は、前記第2制御モードにおける前記弁(41)の開度よりも大きい、請求項1又は請求項2に記載の冷媒回収制御装置。
【請求項4】
前記第1制御モードは、前記冷凍装置(1)を廃棄する際に用いられ、
前記第2制御モードは、冷媒を回収した後も前記冷凍装置(1)を引き続き使用する際に用いられる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷媒回収制御装置。
【請求項5】
前記第1制御モードにおける、前記圧縮機(11)に吸入される冷媒の圧力は所定の保護下限値に近い値になる、又は前記圧縮機(11)から吐出される冷媒の圧力は所定の保護上限値に近い値になる、請求項2に記載の冷媒回収制御装置。
【請求項6】
前記圧縮機(11)は、
前記冷凍装置(1)の通常運転時において、前記圧縮機(11)に吸入される冷媒の第1圧力の下限値となる垂下下限値、及び前記圧縮機(11)から吐出される冷媒の第2圧力の上限値となる垂下上限値と、
前記圧縮機(11)へのダメージに対する、前記第1圧力の許容下限値となる保護下限値、及び前記第2圧力の許容上限値となる保護上限値と、を有し、
前記第1制御モードにおける、前記第1圧力は前記保護下限値に近い値になり、又は前記第2圧力は前記保護上限値に近い値になり、
前記第2制御モードにおける、前記第1圧力は前記垂下下限値以上になり、かつ前記第2圧力は前記垂下上限値以下になる、請求項2に記載の冷媒回収制御装置。
【請求項7】
冷媒回路(9)の冷媒を回収するために回収対象の冷媒を圧縮機(11)を介して室外熱交換器(12)に流入させる冷媒回収運転を行う冷凍装置(1)と、
前記冷媒回収運転の制御モードとして、互いに異なる第1制御モード及び第2制御モードを有する制御部(31)と、を備え、
前記第1制御モードにおける前記冷媒回路(9)の冷媒流量は、前記第2制御モードにおける前記冷媒回路(9)の冷媒流量よりも大きく、
前記制御部は、ユーザによって選択された前記制御モードを実行する、冷媒回収制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒回収制御装置及び冷媒回収制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、空気調和装置の冷媒を回収する冷媒回収運転時に、冷媒の回収速度を速めるための様々な対策が施されている。具体的には、冷媒回路の全ての弁を全開にした状態で、室内ファン及び室外ファンを駆動させ、クランクケースヒータの通電やモータの加熱によって圧縮機の温度を上昇させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-30459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気調和装置の冷媒を回収するタイミングとしては、空気調和装置の廃棄時と、室内機の追加や移設などを行うサービス時との2つのタイミングがある。しかし、特許文献1では、前記2つのいずれのタイミングであっても、同じ制御方法で冷媒回収運転が行われていた。
【0005】
本開示は、冷媒を回収するタイミングに応じた冷媒回収運転を行うことができる冷媒回収制御装置及び冷媒回収制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の冷媒回収制御装置は、
冷凍装置における冷媒回路の冷媒を回収する冷媒回収運転の制御モードとして、互いに異なる第1制御モード及び第2制御モードを有する制御部を備え、
前記第1制御モードにおける前記冷媒回路の冷媒流量は、前記第2制御モードにおける前記冷媒回路の冷媒流量よりも大きい。
【0007】
このように構成された冷媒回収制御装置では、冷凍装置における冷媒回路の冷媒を回収する冷媒回収運転時に、冷媒回路の冷媒流量が互いに異なる第1制御モード及び第2制御モードを使い分けることができるので、冷媒を回収するタイミングに応じた冷媒回収運転を行うことができる。
【0008】
(2)前記第1制御モードにおける前記冷媒回路の冷媒を圧縮して吐出する圧縮機の回転速度は、前記第2制御モードにおける前記圧縮機の回転速度よりも大きいのが好ましい。
この場合、第1制御モードでは、第2制御モードよりも圧縮機の回転速度が大きくなることで、第2制御モードよりも冷媒回路の冷媒流量を容易に大きくすることができる。
【0009】
(3)前記第1制御モードにおける前記冷媒回路(9)の冷媒流量を調整可能な弁(41)の開度は、前記第2制御モードにおける前記弁(41)の開度よりも大きいのが好ましい。
この場合、第1制御モードでは、第2制御モードよりも弁の開度が大きくなることで、第2制御モードよりも冷媒回路の冷媒流量を容易に大きくすることができる。
【0010】
(4)前記第1制御モードは、前記冷凍装置を廃棄する際に用いられ、前記第2制御モードは、冷媒を回収した後も前記冷凍装置を引き続き使用する際に用いられるのが好ましい。
冷凍装置を廃棄する際に冷媒を回収する場合、冷凍装置に多少のダメージを与えても問題が生じることはないので、第1制御モードでは、第2制御モードよりも冷媒回路の冷媒流量を大きくすることができる。その結果、冷媒回収時間を短縮することができる。また、冷媒を回収した後も冷凍装置を引き続き使用する場合、その冷媒回収時の第2制御モードでは、第1制御モードよりも冷媒回路の冷媒流量を小さくすることができる。その結果、冷凍装置に与えるダメージを抑制することができる。
【0011】
(5)前記第1制御モードにおける、前記圧縮機に吸入される冷媒の圧力は所定の保護下限値に近い値になる、又は前記圧縮機から吐出される冷媒の圧力は所定の保護上限値に近い値になるのが好ましい。
この場合、第1制御モードで冷媒を回収する際に、圧縮機に吸入される冷媒の圧力が保護下限値に近い値になるので、又は圧縮機から吐出される冷媒の圧力が保護上限値に近い値になるので、冷媒回路の冷媒流量を可及的に大きくすることができる。これにより、冷媒回収時間を可及的に短縮することができる。
【0012】
(6)前記圧縮機は、
前記冷凍装置の通常運転時において、前記圧縮機に吸入される冷媒の第1圧力の下限値となる垂下下限値、及び前記圧縮機から吐出される冷媒の第2圧力の上限値となる垂下上限値と、
前記圧縮機へのダメージに対する、前記第1圧力の許容下限値となる保護下限値、及び前記第2圧力の許容上限値となる保護上限値と、を有し、
前記第1制御モードにおける、前記第1圧力は前記保護下限値に近い値になり、又は前記第2圧力は前記保護上限値に近い値になり、
前記第2制御モードにおける、前記第1圧力は前記垂下下限値以上になり、かつ前記第2圧力は前記垂下上限値以下になるのが好ましい。
【0013】
この場合、第1制御モードで冷媒を回収する際に、圧縮機に吸入される冷媒の圧力が保護下限値に近い値になり、又は圧縮機から吐出される冷媒の圧力が保護上限値に近い値になるので、冷媒回路の冷媒流量を可及的に大きくすることができる。これにより、冷媒回収時間を可及的に短縮することができる。
また、第2制御モードで冷媒を回収する際に、圧縮機に吸入される冷媒の圧力が垂下下限値以上になり、かつ圧縮機から吐出される冷媒の圧力が垂下上限値以下になるので、圧縮機に与えるダメージを抑制しながら冷媒を回収することができる。
【0014】
(7)本開示の冷媒回収制御システムは、
冷媒回路の冷媒を回収する冷媒回収運転を行う冷凍装置と、
前記冷媒回収運転の制御モードとして、互いに異なる第1制御モード及び第2制御モードを有する制御部と、を備え、
前記第1制御モードにおける前記冷媒回路の冷媒流量は、前記第2制御モードにおける前記冷媒回路の冷媒流量よりも大きい。
【0015】
このように構成された冷媒回収制御システムでは、冷凍装置における冷媒回路の冷媒を回収する冷媒回収運転時に、冷媒回路の冷媒流量が互いに異なる第1制御モード及び第2制御モードを使い分けることができるので、冷媒を回収するタイミングに応じた冷媒回収運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る空気調和装置の概略構成図である。
図2】室外機及び室内機の各内部構成の一例を示すブロック図である。
図3】空気調和装置の冷媒回収運転時における制御例を示すフローチャートである。
図4】空気調和装置の冷媒回収運転時における制御例の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る空気調和装置の概略構成図である。冷凍装置としての空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって、ビル等の大型の建物における室内の冷房及び暖房を行う装置である。空気調和装置1は、室外機3と、互いが並列に接続された複数(ここでは4つ)の室内機4と、液冷媒連絡管5と、ガス冷媒連絡管6と、を備えている。なお、空気調和装置1は、室外機3と複数の室内機4との間における冷媒の流れを切り換える中間ユニットを備えていてもよい。その場合、中間ユニットは、建物の室外に設置されてもよいし、建物の機械室等に設置されてもよい。
【0018】
空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路9は、室外機3と室内機4とが、液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6を介して接続されることによって構成されている。冷媒回路9には、R32、CO、又はHFO系等の冷媒が充填されている。
【0019】
[室外機]
室外機3は、建物の室外に設置されており、冷媒回路9の一部を構成している。室外機3は、圧縮機11と、室外熱交換器12と、四路切換弁13と、室外ファン14と、室外膨張弁15と、アキュムレータ16と、液側閉鎖弁17と、ガス側閉鎖弁18と、を有している。各機器11~16及び弁17~18間は、冷媒管19~25によって接続されている。
【0020】
圧縮機11は、内蔵されているモータ(図示省略)をインバータ制御することによって、このモータの運転回転数(圧縮機11の回転速度)を変更することができる。室外熱交換器12は、例えばクロスフィンチューブ式の熱交換器であり、空気を熱源として冷媒と熱交換するために用いられる。
【0021】
室外ファン14は、インバータ制御によって運転回転数を調整可能なモータ(図示省略)を有している。室外ファン14は、屋外の空気を室外機3の内部に取り込み、取り込んだ空気と室外熱交換器12との間で熱交換が行われた後、当該空気を室外機3の外部に吹き出すように構成されている。
【0022】
四路切換弁13は、冷媒回路9における冷媒の流れを反転させ、圧縮機11から吐出される冷媒を室外熱交換器12と室内熱交換器42(後述)とに切り換えて供給する。アキュムレータ16は、圧縮機11に吸入される冷媒を一時的に溜める。液側閉鎖弁17及びガス側閉鎖弁18は、開度調整が可能な電動弁である。圧縮機11、四路切換弁13、室外ファン14、室外膨張弁15、液側閉鎖弁17、及びガス側閉鎖弁18は、後述する室外制御部31により動作制御される。
【0023】
室外機3は、吐出圧力センサ26、吐出温度センサ27、吸入圧力センサ28、及び吸入温度センサ29をさらに有している。
吐出圧力センサ26は、圧縮機11から吐出された冷媒の圧力を検出する。吐出温度センサ27は、圧縮機11から吐出された冷媒の温度を検出する。吸入圧力センサ28は、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力を検出する。吸入温度センサ29は、圧縮機11に吸入される冷媒の温度を検出する。
【0024】
各種センサ26~29によって検出された信号は、室外制御部31に入力される(図2参照)。圧縮機11、室外ファン14、及び室外膨張弁15は、各種センサ26~29の出力に応じて室外制御部31により動作制御される。
【0025】
[室内機]
室内機4は、建物の室内に設置されており、冷媒回路9の一部を構成している。室内機4は、室内膨張弁41と、室内熱交換器42と、室内ファン43と、を有している。
室内膨張弁41は、冷媒圧力の調節や冷媒流量の調節を行うことが可能な電動膨張弁が用いられている。室内熱交換器42は、例えばクロスフィンチューブ式の熱交換器であり、室内の空気と熱交換するために用いられる。
【0026】
室内ファン43は、インバータ制御によって運転回転数を調整可能なモータ(図示省略)を有している。室内ファン43は、室内の空気を室内機4の内部に取り込み、取り込んだ空気と室内熱交換器42との間で熱交換が行われた後、当該空気を室内に吹き出すように構成されている。室内膨張弁41の開度及び室内ファン43の駆動は、後述する室内制御部44により制御される(図2参照)。
【0027】
液冷媒連絡管5は、一端が室外機3の液側閉鎖弁17に接続され、他端が室内機4の室内膨張弁41の液側端に接続されている。ガス冷媒連絡管6は、一端が室外機3のガス側閉鎖弁18に接続され、他端が室内機4の室内熱交換器42のガス側端に接続されている。
【0028】
[室外機及び室内機の内部構成]
図2は、室外機3及び室内機4の各内部構成の一例を示すブロック図である。
【0029】
室内機4は、室内制御部44、及び通信部45を備えている。通信部45は、通信インターフェースからなり、室外制御部31との間で各種情報を送受信する。室内制御部44は、CPUやメモリ等で構成されるマイクロコンピュータである。室内制御部44は、室外制御部31からの指令に基づいて室内膨張弁41及び室内ファン43を制御する。
【0030】
室外機3は、室外制御部31、通信部32、及び入力部33を備えている。
通信部32は、通信インターフェースからなり、室内機4の通信部45との間で各種情報を送受信する。入力部33は、例えば基板に設けられたディップスイッチ等からなり、室外機3への操作や、後述する冷媒回収運転の制御モードの設定等を行う。
【0031】
室外制御部31は、CPUやメモリ等で構成されるマイクロコンピュータである。室外制御部31は、上記のような各種センサの検出信号等に基づいて、室外機3及び室内機4の各種構成機器の制御を行うことで、空気調和装置1全体の運転制御を行うようになっている。室外制御部31は、冷房運転を制御する冷房運転制御、暖房運転を制御する暖房運転制御、及び冷媒回収運転を制御する冷媒回収運転制御を行う。本実施形態では、室外制御部31、通信部32、及び入力部33は、空気調和装置1の冷媒回収運転を制御する冷媒回収制御装置を構成している。
【0032】
冷房運転制御では、室外熱交換器12を蒸発器として作用させ、室内熱交換器42を凝縮器として作用させる。具体的には、室外制御部31は、四路切換弁13を室外放熱状態(図1の実線で示される状態)に切り換えて、液側閉鎖弁17及びガス側閉鎖弁18を開ける。そして、室外制御部31は、圧縮機11及び室外ファン14を駆動させるとともに、室内制御部44に対して室内ファン43を駆動させる指令を出力する。
【0033】
圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13、室外熱交換器12、室外膨張弁15、及び液側閉鎖弁17を通じて室外機3から流出する。室外機3から流出した冷媒は、液冷媒連絡管5を通じて複数の室内機4に分岐して送られる。その後、冷媒は、各室内機4の室内膨張弁41、室内熱交換器42、及びガス冷媒連絡管6を通じて室外機3に合流して送られる。その後、冷媒は、ガス側閉鎖弁18、四路切換弁13及びアキュムレータ16を通じて圧縮機11に吸入される。
【0034】
暖房運転制御では、室外熱交換器12を凝縮器として作用させ、室内熱交換器42を蒸発器として作用させる。具体的には、室外制御部31は、四路切換弁13を室外蒸発状態(図1の破線で示される状態)に切り換えて、液側閉鎖弁17及びガス側閉鎖弁18を開ける。そして、室外制御部31は、圧縮機11及び室外ファン14を駆動させるとともに、室内制御部44に対して室内ファン43を駆動させる指令を出力する。
【0035】
圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13、ガス側閉鎖弁18を通じて室外機3から流出する。室外機3から流出した冷媒は、ガス冷媒連絡管6を通じて複数の室内機4に分岐して送られる。その後、冷媒は、各室内機4の室内熱交換器42、室内膨張弁41、及び液冷媒連絡管5を通じて室外機3に合流して送られる。その後、冷媒は、液側閉鎖弁17、室外膨張弁15、室外熱交換器12、四路切換弁13及びアキュムレータ16を通じて圧縮機11に吸入される。
【0036】
冷媒回収運転では、冷媒回路9の冷媒を、室外機3側に回収する際に行われる。その際、室外機3の室外熱交換器12及びアキュムレータ16は、冷媒回路9の冷媒を回収する回収部として機能する。以下、室外熱交換器12及びアキュムレータ16を回収部12,16ともいう。
【0037】
冷媒回収運転制御において、室外制御部31は、四路切換弁13を冷房運転時と同様に室外放熱状態に切り換える。また、室外制御部31は、液側閉鎖弁17を閉じ、ガス側閉鎖弁18、室外膨張弁15、及び室内膨張弁41を開ける。そして、室外制御部31は、圧縮機11及び室外ファン14を駆動させるとともに、室内制御部44に対して室内ファン43を駆動させる指令を出力する。
【0038】
圧縮機11を駆動すると、冷媒回路9における冷媒管22、液冷媒連絡管5、室内膨張弁41、室内熱交換器42、ガス冷媒連絡管6に滞留する冷媒は、ガス側閉鎖弁18及び四路切換弁13を通じて、アキュムレータ16に流入する。アキュムレータ16に流入した冷媒のうち、液冷媒はアキュムレータ16に滞留し、ガス冷媒は圧縮機11に吸入され、圧縮機11から四路切換弁13を介して室外熱交換器12に流入する。室外熱交換器12に流入したガス冷媒は、液側閉鎖弁17に向かって流出するが、液側閉鎖弁17は閉じられているので、室外熱交換器12に冷媒が溜まっていく。以上により、冷媒回路9の冷媒は、室外機3の回収部12,16に回収される。
【0039】
回収部12,16への冷媒回収が終了すると、室外制御部31は、圧縮機11、室外ファン14及び室内ファン43の駆動を停止させ、ガス側閉鎖弁18を閉じる。このようにガス側閉鎖弁18を閉じることで、回収部12,16に回収された冷媒が室内機4側へ流出するのを抑制することができる。
【0040】
[冷媒回収運転の制御モード]
外制御部31は、冷媒回収運転の制御モードとして、互いに異なる第1制御モード及び第2制御モードを有する。第1制御モード及び第2制御モードは、サービスマン等により室外機3の入力部33選択して設定される。室外制御部31は、入力部33からの出力信号に基づいて、冷媒回収運転制御として第1制御モード及び第2制御モードを選択的に実行する。
【0041】
第1制御モードは、例えば空気調和装置1を廃棄する際に冷媒回収運転を行う場合において、その冷媒回収運転の制御モードとして用いられる。空気調和装置1を廃棄する際には、空気調和装置1を今後使用することはないので、冷媒を回収し終えるまで空気調和装置1を稼働することができれば、空気調和装置1に多少のダメージを与えても問題が生じることはない。このため、第1制御モードでは、空気調和装置1に与えるダメージよりも冷媒回収時間の短縮化を優先するように、冷媒回路9の冷媒流量を大きくして冷媒回収運転が行われる。
【0042】
第2制御モードは、例えば冷媒回収運転後も空気調和装置1を引き続き使用する際に、その冷媒回収運転の制御モードとして用いられる。冷媒回収運転後も空気調和装置1を引き続き使用する場合としては、空気調和装置1の増設、移設、メンテナンス、又は更新を行う場合等が考えられる。これらの場合、冷媒を回収した後も空気調和装置1を引き続き使用するので、空気調和装置1にダメージを与えるのは好ましくない。このため、第2制御モードでは、冷媒回収時間の短縮化よりも空気調和装置1に与えるダメージを抑制することを優先するように、冷媒回路9の冷媒流量を小さくして冷媒回収運転が行われる。
【0043】
以上より、室外制御部31は、第1制御モードにおける冷媒回路9の冷媒流量が第2制御モードおける冷媒回路9の冷媒流量よりも大きくなるように、室外機3及び室内機4の構成機器を制御する。本実施形態では、室外制御部31は、第1制御モードにおいて冷媒回路9の冷媒を圧縮して吐出する圧縮機11の回転速度が、第2制御モードにおける圧縮機11の回転速度よりも大きくなるように、圧縮機11の動作を制御する。
【0044】
例えば、室外制御部31は、第1制御モードにおいて、圧縮機11から吸入される冷媒の圧力(第1圧力)が所定の保護下限値に近づくように、又は圧縮機11から吐出される冷媒の圧力(第2圧力)が所定の保護上限値に近づくように、圧縮機11の動作を制御する。ここで、保護下限値とは、圧縮機11へのダメージに対する第1圧力の許容下限値である。また、保護上限値とは、圧縮機11へのダメージに対する第2圧力の許容上限値である。
【0045】
室外制御部31は、第2制御モードにおいて、第1圧力が所定の垂下下限値以下にならないように、かつ第2圧力が所定の垂下上限値以上にならないように、圧縮機11の動作を制御する。垂下値は、空気調和装置1の通常運転時(冷房運転時や暖房運転時)に圧縮機11を保護するために定められた値であって、圧縮機11に大きなダメージを与えないように冷媒回収運転を行うことができる範囲を規定した第1圧力及び第2圧力の値である。第1圧力の下限値となる垂下下限値は、保護下限値よりも大きな値である。第2圧力の上限値となる垂下上限値は、保護上限値よりも小さな値である。
【0046】
圧縮機11の第1圧力を低く、又は圧縮機11の第2圧力を高くすれば、回収部12,16に冷媒を短時間で回収することができる。その反面、圧縮機11の第1圧力が低くなりすぎると、又は圧縮機11の第2圧力が高くなりすぎると、圧縮機11の温度が上昇して圧縮機11にダメージを与えるおそれがある。第1制御モードでは、圧縮機11に与えるダメージよりも冷媒回収時間の短縮化が優先される。このため、室外制御部31は、第1制御モードにおいて、圧縮機11の第1圧力が保護下限値(例えば、0.07MPa)に近い値になるように、又は圧縮機11の第2圧力が保護上限値(例えば、3.7MPa)に近い値になるように、吸入圧力センサ28又は吐出圧力センサ26の検出値に基づいて圧縮機11の動作を制御する。
【0047】
一方、第2制御モードでは、冷媒回収時間の短縮化よりも圧縮機11に与えるダメージを抑制することが優先される。このため、室外制御部31は、第2制御モードにおいて、圧縮機11の第1圧力が垂下下限値以上になるように、かつ、圧縮機11の第2圧力が垂下上限値以下になるように、圧縮機11の動作を制御する。
【0048】
具体的には、室外制御部31は、第2制御モードにおいて、圧縮機11の第1圧力が保護下限値よりも高い値(例えば、0.25MPa)以上になるように、かつ、圧縮機11の第2圧力が保護上限値よりも低い値(例えば、3.5MPa)以下になるように、吸入圧力センサ28又は吐出圧力センサ26の検出値に基づいて圧縮機11の動作を制御する。
【0049】
室外制御部31は、第1制御モードにおいて、圧縮機11から吐出される冷媒の温度(吐出側温度)が所定の保護上限温度に近づくように、圧縮機11の動作を制御する。ここで、保護上限温度とは、圧縮機11を故障させずに駆動できる吐出側温度の上限値である。
【0050】
圧縮機11の吐出側温度を高くすれば、回収部12,16に冷媒を短時間で回収することができる。その反面、圧縮機11の吐出側温度が高くなりすぎると、圧縮機11にダメージを与えるおそれがある。第1制御モードでは、圧縮機11に与えるダメージよりも冷媒回収時間の短縮化が優先される。このため、室外制御部31は、第1制御モードにおいて、圧縮機11の吐出側温度が保護上限温度(例えば、135℃)に近い値になるように、吐出温度センサ27の検出値に基づいて圧縮機11の動作を制御する。
【0051】
一方、第2制御モードでは、冷媒回収時間の短縮化よりも圧縮機11に与えるダメージを抑制することが優先される。このため、室外制御部31は、第2制御モードにおいて、圧縮機11の吐出側温度が保護上限温度に近づかないように、圧縮機11の動作を制御する。具体的には、室外制御部31は、第2制御モードにおいて、圧縮機11の吐出側温度が保護上限温度よりも低い温度(例えば、110℃)以下になるように、吐出温度センサ27の検出値に基づいて圧縮機11の動作を制御する。
【0052】
[冷媒回収運転の制御]
図3は、空気調和装置1の冷媒回収運転時における制御例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する具体的な圧力値及び温度値は、あくまで一例であって、冷媒の種類に応じて異なる値になることは言うまでもない。
まず、室外制御部31は、液側閉鎖弁17を閉じ、室外膨張弁15及び室内膨張弁41を開ける(ステップST11)。その後、室外制御部31は、室外ファン14と室内ファン43を駆動する(ステップST12)。
【0053】
室外制御部31は、入力部33からの出力信号が第1制御モードを示す信号であるか否かを判断する(ステップST13)。入力部33からの出力信号が第1制御モードを示す信号である場合(ステップST13で「Yes」の場合)、室外制御部31は、第1制御モードで圧縮機11の動作を制御する(ステップST14)。
【0054】
具体的には、室外制御部31は、圧縮機11の回転速度が高速になるように圧縮機11の動作を制御する。例えば、室外制御部31は、圧縮機11の第1圧力が保護下限値である0.07MPaに近い値になるように、又は圧縮機11の第2圧力が保護上限値である3.7MPaに近い値になるように、圧縮機11の動作を制御する。また、室外制御部31は、圧縮機11の吐出側温度が保護上限温度である135℃に近い値になるように圧縮機11の動作を制御する。
【0055】
一方、入力部33からの出力信号が第1制御モードを示す信号でない場合(ステップST13で「No」の場合)、室外制御部31は、入力部33からの出力信号が第2制御モードを示す信号であると判断し、第2制御モードで圧縮機11の動作を制御する(ステップST15)。
【0056】
具体的には、室外制御部31は、圧縮機11の回転速度が、第1制御モードにおける圧縮機11の回転速度よりも遅い低速になるように圧縮機11の動作を制御する。例えば、室外制御部31は、圧縮機11の第1圧力が保護下限値よりも高い0.25MPa以上になるように、かつ、圧縮機11の第2圧力が保護上限値よりも低い3.5MPa以下になるように、圧縮機11の動作を制御する。また、室外制御部31は、圧縮機11の吐出側温度が保護上限温度よりも低い110℃以下になるように、圧縮機11の動作を制御する。
【0057】
[実施形態の作用効果]
本実施形態の空気調和装置1によれば、室外制御部31は、冷媒回路9の冷媒を回収する冷媒回収運転時に、冷媒回路9の冷媒流量が互いに異なる第1制御モード及び第2制御モードを使い分けることができるので、冷媒を回収するタイミングに応じた冷媒回収運転を行うことができる。
【0058】
室外制御部31は、第1制御モードにおいて冷媒回路9の冷媒を圧縮して吐出する圧縮機11の回転速度が、第2制御モードにおける圧縮機11の回転速度よりも大きくなるように、圧縮機11を制御する。これにより、第1制御モードでは、第2制御モードよりも冷媒回路9の冷媒流量を容易に大きくすることができる。
【0059】
空気調和装置1を廃棄する際に冷媒を回収する場合、空気調和装置1に多少のダメージを与えても問題が生じることはないので、第1制御モードでは、第2制御モードよりも冷媒回路9の冷媒流量を大きくすることができる。その結果、冷媒回収時間を短縮することができる。また、冷媒を回収した後も空気調和装置1を引き続き使用する場合、その冷媒回収時の第2制御モードでは、第1制御モードよりも冷媒回路9の冷媒流量を小さくすることができる。その結果、空気調和装置1に与えるダメージを抑制することができる。
【0060】
室外制御部31は、第1制御モードにおいて、圧縮機11の第1圧力が保護下限値に近い値になるように、又は圧縮機11の第2圧力が保護上限値に近い値になるように、圧縮機11を制御するので、冷媒回路9の冷媒流量を可及的に大きくすることができる。これにより、冷媒回収時間を可及的に短縮することができる。
【0061】
室外制御部31は、第2制御モードにおいて、圧縮機11の第1圧力が垂下下限値以上になるように、かつ圧縮機11の第2圧力が垂下上限値以下になるように、圧縮機11を制御する。これにより、圧縮機11に与えるダメージを抑制しながら冷媒を回収することができる。
【0062】
[変形例]
図4は、空気調和装置1の冷媒回収運転時における制御例の変形例を示すフローチャートである。本変形例の室外制御部31は、第1制御モードにおいて冷媒回路9の冷媒の流れを調整可能な室内膨張弁41の開度が、第2制御モードにおける室内膨張弁41の開度よりも大きくなるように、室内膨張弁41の開度を制御する。
【0063】
例えば、室外制御部31は、第1制御モードにおいて室内膨張弁41の開度が全開となるように、室内膨張弁41の開度を制御する。また、室外制御部31は、第2制御モードにおいて室内膨張弁41の開度が全開よりも小さくなるように、室内膨張弁41の開度を制御する。以下、その制御の詳細について説明する。
【0064】
まず、室外制御部31は、液側閉鎖弁17を閉じ、室外膨張弁15を開ける(ステップST21)。次に、室外制御部31は、入力部33からの出力信号が第1制御モードを示す信号であるか否かを判断する(ステップST22)。入力部33からの出力信号が第1制御モードを示す信号である場合(ステップST22で「Yes」の場合)、室外制御部31は、第1制御モードで室内膨張弁41の開度を制御する(ステップST23)。具体的には、室外制御部31は、室内膨張弁41の開度が全開となるように、その開度を制御する。
【0065】
一方、入力部33からの出力信号が第1制御モードを示す信号でない場合(ステップST22で「No」の場合)、室外制御部31は、入力部33からの出力信号が第2制御モードを示す信号であると判断し、第2制御モードで室内膨張弁41の開度を制御する(ステップST24)。具体的には、室外制御部31は、室内膨張弁41の開度が全開よりも小さくなるように、その開度を制御する。
【0066】
室外制御部31は、第1制御モード又は第2制御モードで室内膨張弁41の開度を制御した後、室外ファン14、室内ファン43、及び圧縮機11を駆動する(ステップST25)。
【0067】
本変形例によれば、第1制御モードにおける冷媒回路9の冷媒の流れを調整可能な室内膨張弁41の開度は、第2制御モードにおける室内膨張弁41の開度よりも大きくなる。これにより、第1制御モードでは、第2制御モードよりも冷媒回路9の冷媒流量を容易に大きくすることができる。
【0068】
[その他]
上記実施形態では、室外制御部31等が冷媒回収制御装置として機能しているが、室外機3及び室内機4を制御する集中コントローラを冷媒回収制御装置として機能させ、集中コントローラから室外制御部31に対して冷媒回収運転の制御モードを指示してもよい。また、室外制御部31とネットワークを介して通信可能に接続された遠隔コントローラが空気調和装置1の冷媒回収運転を遠隔制御してもよい。その場合、空気調和装置1と遠隔コントローラの制御部とにより、本発明の冷媒回収制御システムが構成される。
【0069】
また、本発明は、空気調和装置1以外の冷凍装置にも適用することができる。さらに、本発明は、チラーユニットまたはカスケードユニットに適用してもよい。
【0070】
上記実施形態では、第1制御モードにおいて、第1圧力が保護下限値に近い値になるように、又は第2圧力が保護上限値に近い値になるように、圧縮機11を制御しているが、第1圧力が保護下限値に近い値になるように、かつ第2圧力が保護上限値に近い値になるように、圧縮機11を制御してもよい。
【0071】
液側閉鎖弁17とガス側閉鎖弁18は、手動で開閉される弁であってもよい。その場合、冷媒回収運転時に液側閉鎖弁17とガス側閉鎖弁18を手動で閉じればよい。
上記実施形態では、冷媒回収運転時に液側閉鎖弁17を閉じているが、室外膨張弁15を閉じ、室外膨張弁15とガス側閉鎖弁18の間に冷媒を回収してもよい。
【0072】
本開示は、以上の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 空気調和装置(冷凍装置)
9 冷媒回路
11 圧縮機
31 室外制御部(制御部)
41 室内膨張弁(弁)
図1
図2
図3
図4