(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】水力発電システム
(51)【国際特許分類】
F03B 15/04 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
F03B15/04 F
(21)【出願番号】P 2020145621
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敬宏
(72)【発明者】
【氏名】園田 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 佳幸
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-218568(JP,A)
【文献】特開2016-166531(JP,A)
【文献】特表2013-537954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/00-13/26
F03B 15/00-15/22
F03B 17/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要施設に供給される上水又は中水を含む水の流れにより発電する水力発電システムであって、分岐した経路を形成する複数の管路(3)を通じて水が流れ、前記複数の管路(3)は管路(3A)を含み、
前記水力発電システムは、
前記管路(3A)に設置される水車(20)と、
前記水車(20)に接続され、前記管路(3A)内に水が流れることで発電する発電機(30)と、
前記発電機(30)に接続され、双方向の電力変換を行う電力変換部(41)と、
前記水車(20)の動作を制御する制御部(43)と
を備え、
前記水車(20)は、
前記管路(3A)に連通する第1貯留部(2A)の上流に設置され、
前記水車(20)の動作モードには、
前記水車(20)が前記管路(3A)で生じる水流によって回転しつつ、前記管路(3A)を流れる水が前記第1貯留部(2A)に送られる水車運転モードと、
前記水車(20)が前記発電機(30)により前記水車運転モードのときとは反対方向に回転してポンプとして動作することで、前記第1貯留部(2A)に貯留される水を前記第1貯留部(2A)の上流に供給する
ポンプ運転モードと
が含まれ、
前記経路上には前記需要施設へと向かう水のルートが形成され、前記需要施設へと向かう水のルートについて、前記水車(20)の動作モードが前記水車運転モードのときに形成されるルートと、前記水車(20)の動作モードが前記ポンプ運転モードのときに形成されるルートとが異なることを特徴とする水力発電システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部(43)は、前記需要施設の水の需要に基づいて、前記水車(20)による前記ポンプとしての動作を制御することを特徴とする水力発電システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記制御部(43)は、前記第1貯留部(2A)内の水が不足するか否か、又は、不足することが予想されるか否かを判定する第1判定処理を行い、前記第1判定処理の結果に基づいて、前記水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することを特徴とする水力発電システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記制御部(43)は、前記水車(20)よりも上流に設置される第2貯留部(2B)内の水が不足するか否か、又は、不足することが予想されるか否かを判定する第2判定処理を行い、前記第2判定処理の結果に基づいて、前記水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することを特徴とする水力発電システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記複数の管路(3)は分岐路(3C)を含み、
前記管路(3A)には、前記水車(20)の上流で前記管路(3A)から分岐する
前記分岐路(3C)が連結され、
前記分岐路(3C)の下流には、前記需要施設、又は、第3貯留部が設けられることを特徴とする水力発電システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記制御部(43)は、前記水車(20)よりも上流に設けられる上流側管路の供給水量と需要水量との比較結果に基づいて、前記水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することを特徴とする水力発電システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
前記制御部(43)は、前記水車(20)よりも下流に設けられる下流側管路の供給水量と需要水量との比較結果に基づいて、前記水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することを特徴とする水力発電システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項において、
前記複数の管路(3)は分岐路(3C)を含み、
前記管路(3A)には、前記水車(20)の上流で前記管路(3A)から分岐する前記分岐路(3C)が連結され、
前記分岐路(3C)の下流には、前記需要施設が設けられ、
前記経路上に形成される前記需要施設へと向かう水のルートついて、
前記水車(20)の動作モードが前記水車運転モードのとき、前記管路(3A)を順流する水が前記分岐路(3C)へ送られてから、前記需要施設へ供給されるルートが形成され、
前記水車(20)の動作モードが前記ポンプ運転モードのとき、前記管路(3A)を逆流する水が前記分岐路(3C)へ送られてから、前記需要施設へ供給されるルートが形成されることを特徴とする水力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の水力発電システムは、水道施設に設置される。水道施設は、管路と、貯留槽と、受水槽と、水力発電システムとを備える。管路は、貯留槽と受水槽とを繋ぐように配置されている。水力発電システムは、水車と発電機とを備える。水車は、管路に設置される。水車は、管路を流れる水流によって回転する。発電機は、水車の回転動作によって発電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の水力発電システムによると、発電機に発電動作を行わせるためは、水車を一方向に回転させ続けなければならない。これにより、水車を一方向に回転させ続けるために、管路には水が上流(貯留槽)から下流(受水槽)に向かって一方向に流れていた。
【0005】
例えば、貯留槽で水が不足した場合のように、水の需給変化に対応するために、下流(受水槽)から上流(貯留槽)へ水を供給しようとすると、既存の管路では、一方向に水が流れるために対応できない。この場合、受水槽と貯留槽とを繋ぐ管路を増設し、増設した管路に対して受水槽の水を貯留槽に送るためのポンプを増設しなければならない。その結果、水道施設の構成が煩雑になる可能性があった。
【0006】
本開示の目的は、水道施設の構成を簡素化することができることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、水力発電システムを対象とする。水力発電システムは、上水又は中水を含む水を需要施設に供給する管路(3A)に設置される水車(20)と、前記水車(20)に接続され、前記管路(3A)内に水が流れることで発電する発電機(30)と、前記発電機(30)に接続され、双方向の電力変換を行う電力変換部(41)と、前記水車(20)の動作を制御する制御部(43)とを備え、前記水車(20)は、前記管路(3A)に連通する第1貯留部(2A)の上流に設置され、ポンプとして動作することで、前記第1貯留部(2A)に貯留される水を前記第1貯留部(2A)の上流に供給することを特徴とする。
【0008】
第1の態様では、水道施設の構成を簡素化することができる。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記制御部(43)は、前記需要施設の水の需要に基づいて、前記水車(20)による前記ポンプとしての動作を制御することを特徴とする。
【0010】
第2の態様では、需要施設の水の需要に応じて、需要施設に水を供給できる。
【0011】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記制御部(43)は、前記第1貯留部(2A)内の水が不足するか否か、又は、不足することが予想されるか否かを判定する第1判定処理を行い、前記第1判定処理の結果に基づいて、前記水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することを特徴とする。
【0012】
第3の態様では、第1貯留部(2A)に貯留される水を切らさないようにすることができる。
【0013】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記制御部(43)は、前記水車(20)よりも上流に設置される第2貯留部(2B)内の水が不足するか否か、又は、不足することが予想されるか否かを判定する第2判定処理を行い、前記第2判定処理の結果に基づいて、前記水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することを特徴とする。
【0014】
第4の態様では、第2貯留部(2B)に貯留される水を切らさないようにすることができる。
【0015】
本開示の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、前記管路(3A)には、前記水車(20)の上流で前記管路(3A)から分岐する分岐路(3C)が連結され、前記分岐路(3C)の下流には、前記需要施設、又は、第3貯留部が設けられることを特徴とする。
【0016】
第5の態様では、管路(3A)に分岐路(3C)を設けることで、水が流れる経路を増やすことができる。
【0017】
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、前記制御部(43)は、前記水車(20)よりも上流に設けられる上流側管路の供給水量と需要水量との比較結果に基づいて、前記水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することを特徴とする。
【0018】
第6の態様では、上流側管路において需要水量に合わせて水を供給できる。
【0019】
本開示の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、前記制御部(43)は、前記水車(20)よりも下流に設けられる下流側管路の供給水量と需要水量との比較結果に基づいて、前記水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することを特徴とする。
【0020】
第7の態様では、下流側管路において需要水量に合わせて水を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、水力発電システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、水車が水車運転モードで動作しているときの水の流れを示す模式図である。
【
図3】
図3は、水車がポンプ運転モードで動作しているときの水の流れを示す模式図である。
【
図4】
図4は、水力発電システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、水力発電システムの動作を示すフロー図である。
【
図6】
図6は、水力発電システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、水力発電システムの動作を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、水力発電システムの構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9(a)は、スケジュール情報を示すグラフである。
図9(b)は、スケジュール情報に基づいた水車(20)の動作を表す図である。
【
図10】
図10(a)は、スケジュール情報を示すグラフである。
図10(b)は、スケジュール情報に基づいた水車(20)の動作を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付し、詳細な説明及びそれに付随する効果等の説明は繰り返さない。
【0023】
―第1実施形態―
図1~
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る水力発電システム(10)について説明する。
図1は、水力発電システム(10)の構成を示すブロック図である。
【0024】
―全体構成―
図1は、水道(1)を示す。水道(1)は、上水道、又は中水道を含む水道施設である。
図1に示すように、水力発電システム(10)は、水道(1)に適用される。水道(1)を流れた水は、住宅・ビルなどの需要施設に供給される。水は、上水でもよく、又は、中水でもよい。
【0025】
―水道―
水道(1)は、複数の貯水槽(2)と、複数の管路(3)とを含む。貯水槽(2)は、水を貯留する。管路(3)は、複数の貯水槽(2)と、住宅などの水の供給対象(需要施設)との間の管路を構成している。管路(3)は、有効落差を有しており、有効落差を利用して水を流す水路である。有効落差には、高低差による落差のみならず、増圧ポンプによる落差も含まれる。
【0026】
複数の貯水槽(2)は、第1貯水槽(2A)~第4貯水槽(2D)を含む。第1貯水槽(2A)は、本発明の第1貯留部の一例である。第2貯水槽(2B)は、本発明の第2貯留部の一例である。
【0027】
管路(3)は、需要施設に水を供給するための経路を形成する。複数の管路(3)は、網目状に分岐した構造を有する。複数の管路(3)は、第1管路(3A)~第9管路(3I)を含む。第1管路(3A)は、第1貯水槽(2A)及び第2貯水槽(2B)の各々に連通し、第1貯水槽(2A)側が低くなるような有効落差を有する。第2管路(3B)は、第1貯水槽(2A)に連通し、第1貯水槽(2A)側が高くなるような有効落差を有する。第3管路(3C)は、第1管路(3A)から分岐し、第1管路(3A)側が高くなるような有効落差を有する。第4管路(3D)は、第2貯水槽(2B)に連通し、第2貯水槽(2B)側が低くなるような有効落差を有する。第5管路(3E)は、第2管路(3B)から分岐し、第2管路(3B)側が高くなるような有効落差を有する。第6管路(3F)は、第1貯水槽(2A)及び第3貯水槽(2C)の各々に連通し、第1貯水槽(2A)側が低くなるような有効落差を有する。第7管路(3G)は、第3貯水槽(2C)に連通し、第3貯水槽(2C)側が低くなるような有効落差を有する。第8管路(3H)は、第2貯水槽(2B)及び第4貯水槽(2D)の各々に連通し、第4貯水槽(2D)側が低くなるような有効落差を有する。第9管路(3I)は、第4貯水槽(2D)に連通し、第4貯水槽(2D)側が高くなるような有効落差を有する。
【0028】
第4管路(3D)及び第7管路(3G)の各々には、ダム、又は河川のような水源からの水が供給される。第2管路(3B)は需要施設Aに通じ、第3管路(3C)は需要施設Bに通じ、第5管路(3E)は需要施設Cに通じ、第9管路(3I)は需要施設Dに通じる。以下では、需要施設A~需要施設Dを総称して、需要施設と記載することがある。
【0029】
―水力発電システム―
図1に示すように、水力発電システム(10)は、水車(20)と、発電機(30)と、発電機コントローラ(40)と、系統連系インバータ(50)とを備える。
【0030】
―水車―
水車(20)は、第1管路(3A)に設置される。水車(20)は、ケーシングと、ケーシングに収容される羽根車とを備える(図示省略)。羽根車の中心部には、回転軸(21)が固定される。水車(20)は、第1管路(3A)を流れる水流によって羽根車が回転する。回転軸(21)は、水車(20)と共に回転する。水車(20)は、正転方向と、正転方向とは反対の逆転方向に回転可能である。水車(20)は、第1管路(3A)の有効落差により生成される水流によって正転方向に回転する。水車(20)は、逆転方向に回転する際、第1管路(3A)の有効落差により生成された水流を逆流させるポンプとして動作する。水車(20)は、例えば、ポンプ逆転水車である。
【0031】
―発電機―
発電機(30)は、回転軸(21)を介して水車(20)と接続される。発電機(30)は、ロータとステータとを有する(図示省略)。ロータは、永久磁石埋込型である。ステータはコイルを有する。発電機(30)は、回生運転と、力行運転とを行うことが可能である。発電機(30)は、回生運転を行うとき、電力を発電する。発電機(30)は、力行運転を行うとき、水車(20)を回転させるモータとして機能する。
【0032】
―発電機コントローラ―
発電機コントローラ(40)は、AC/DCコンバータ(41)と、記憶部(42)と、制御部(43)とを含む。
【0033】
AC/DCコンバータ(41)は、複数のスイッチング素子を備える。AC/DCコンバータ(41)は、発電機(30)と系統連系インバータ(50)とに電気的に接続される。AC/DCコンバータ(41)は、発電機(30)と系統連系インバータ(50)との間で双方向に電力の授受を行うことで、双方向の電力変換を行うコンバータである。
【0034】
記憶部(42)は、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置(例えば、半導体メモリ)を含み、補助記憶装置(例えば、ハ-ドディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、SD(Secure Digital)メモリカード、又は、USB(Universal Seral Bus)フラッシメモリ)をさらに含んでもよい。記憶部(42)は、制御部(43)によって実行される種々のコンピュータープログラムを記憶する。
【0035】
制御部(43)は、CPU及びMPUのようなプロセッサーを含む。制御部(43)は、記憶部(42)に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、水力発電システム(10)の各構成要素を制御する。
【0036】
系統連系インバータ(50)は、インバータを構成する複数のスイッチング素子を有する。系統連系インバータ(50)は、AC/DCコンバータ(41)と電力系統(60)とに電気的に接続される。電力系統(60)は、例えば商用電源である。系統連系インバータ(50)は、AC/DCコンバータ(41)と電力系統(60)との間で双方向に電力の授受を行うことで、双方向の電力変換を行うインバータである。
【0037】
-水車の動作モード-
図1~
図3を参照して、水車(20)の動作モードについて説明する。
【0038】
水車(20)は、複数の動作モードを有する。複数の動作モードは、水車運転モードと、ポンプ運転モードとを含む。制御部(43)は、AC/DCコンバータ(41)のスイッチング素子を制御することによって、水車(20)の動作モードを水車運転モード、及びポンプ運転モードのうちのいずれかの動作モードに切り替える。
【0039】
図1及び
図2を参照して、水車運転モードについて説明する。
図2は、水車(20)が水車運転モードで動作しているときの水の流れを示す模式図である。
図2において、実線の矢印の指す方向は、管路(3)において水の流れる方向を示す。
【0040】
-水車運転モード-
図1及び
図2に示すように、水車運転モードは、水車(20)により水力発電を行うときの水車(20)の動作モードである。水車運転モードにおいて、水源から供給された水は、管路(3)に形成された有効落差に従って、管路(3)の高い側から低い側へ流れる。
【0041】
水車運転モードにおいて、水車(20)は、第1管路(3A)に形成された有効落差により第1管路(3A)を流れる水流によって回転する。水車運転モードにおいて、水車(20)が回転することで、発電機(30)が駆動される。これにより、発電機(30)が回生運転を行う。水車運転モードにおいて、発電機(30)は、回生運転を行うことで、交流電力を発生する。発電機(30)が発生した交流電力は、AC/DCコンバータ(41)へ供給される。AC/DCコンバータ(41)は、発電機(30)が発電した交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を系統連系インバータ(50)に出力する。系統連系インバータ(50)は、AC/DCコンバータ(41)から出力された直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を電力系統(60)に供給する。
【0042】
以下では、
図2に示すように、水車(20)が水車運転モードで動作するときに管路(3)において水の流れる方向を基準にして、上流及び下流を規定する。第1実施形態では、
図2において、管路(3)に沿って形成される実線の矢印の指す方向を下流とし、矢印の指す方向とは反対方向を上流として、上流及び下流を規定する。
【0043】
-ポンプ運転モード-
図1及び
図3を参照して、ポンプ運転モードについて説明する。
図3は、水車(20)がポンプ運転モードで動作しているときの水の流れを示す模式図である。
【0044】
図1及び
図3に示すように、ポンプ運転モードは、第1管路(3A)の有効落差に従って第1管路(3A)を流れる水を上流側へ逆流させるときの水車(20)の動作モードである。言い換えれば、ポンプ運転モードは、水車(20)がポンプとして動作するときの水車(20)の動作モードである。
【0045】
ポンプ運転モードにおいて、系統連系インバータ(50)は、電力系統(60)から供給された交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力をAC/DCコンバータ(41)に出力する。AC/DCコンバータ(41)は、系統連系インバータ(50)から出力された直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を発電機(30)に出力する。発電機(30)は、AC/DCコンバータ(41)から交流電力を供給されると、力行運転を行う。ポンプ運転モードにおいて、発電機(30)は、力行運転を行うことで、水車(20)を回転させるモータとして機能する。
【0046】
ポンプ運転モードにおいて、発電機(30)は、水車運転モードのときとは水車(20)を反対方向に回転させる。これにより、第1管路(3A)において、水が逆流して上流側へ流れる。その結果、水車(20)の上流で水が不足することを抑制できる。
【0047】
例えば、水源から第2貯水槽(2B)への水の供給が遮断された場合、水車(20)をポンプ運転モードで動作させることで、第2貯水槽(2B)内の水が不足することを効果的に抑制できる。
【0048】
ポンプ運転モードにおいて、第1貯水槽(2A)内の下部に水車(20)の流出側が位置していることで、水車(20)の回転により第1貯水槽(2A)に貯留される水が第1管路(3A)に供給されてもよい。また、ポンプ運転モードにおいて、水車(20)がサイフォンポンプとして機能し、サイフォンの原理により、第1貯水槽(2A)に貯留される水が第1管路(3A)に供給されてもよい。
【0049】
―第1実施形態の効果―
以上、
図1~
図3を参照して説明したように、水車(20)は、第1管路(3A)に連通する第1貯水槽(2A)の上流に設置され、
図3に示すポンプ動作モードによりポンプとして動作することで、第1貯水槽(2A)に貯留される水を第1管路(3A)を通じて第1貯水槽(2A)の上流に供給する。これにより、1つの管路(3)(第1管路(3A))に設けた1つの水車(20)を、水車運転モードと、ポンプ運転モードとで動作させることができるので、水道施設の構成を簡素化することができる。
【0050】
また、ポンプ運転モードにおいて、第1貯水槽(2A)の上流に供給された水は、第1管路(3A)から第3管路(3C)に供給された後、需要施設Bに供給される。また、ポンプ運転モードにおいて、第1貯水槽(2A)の上流に供給された水は、第1管路(3A)から第2貯水槽(2B)に供給された後、第8管路(3H)、第4貯水槽(2D)、及び第9管路(3I)を通じて需要施設Dに供給される。これにより、水力発電の水車(20)を、水を需要施設に供給するためのポンプとして用いることができる。
【0051】
また、制御部(43)は、需要施設の水の需要に基づいて、水車(20)の動作モードを、
図2に示す水車動作モード、及び、
図3に示すポンプ動作モードのうちのいずれかの動作モードに切り替えることで、需要施設への水の供給量が不足しないように、管路(3)を流れる水量を調整できる。
【0052】
また、
図3に示すポンプ動作モードにより水車(20)をポンプとして動作させる際、水車(20)の回転速度を調整することで、第1貯水槽(2A)から第1貯水槽(2A)の上流に供給される水量を、水車(20)の回転速度に応じた量になるように制御できる。
【0053】
また、第1貯水槽(2A)には、第1管路(3A)の下流側と、第6管路(3F)の下流側とが連通される。これにより、ポンプ動作モードにおいて、第1貯水槽(2A)の水が第1管路(3A)へ供給されても、第6管路(3F)を通じて第1貯水槽(2A)へ水を供給できる。その結果、ポンプ動作モードにおいて、第1貯水槽(2A)内の水が不足することを効果的に抑制できる。
【0054】
また、
図1に示すように、第1管路(3A)には、水車(20)の上流で第1管路(3A)から分岐する第3管路(3C)が連結される。このように、複数の管路(3)が分岐するように連結されることで、水が流れる経路を増やして、需要施設に向かうルートを複数形成することができる。その結果、例えば、複数のルートのうちの1つのルート(第1ルート)で水が流れなくなるような不具合が発生しても、他のルート(第2ルート)を用いて需要施設に水を供給することができる。この場合、例えば、水車運転モードでは第1ルートを通じて水が流れ、ポンプ運転モードでは第2ルートを通じて水が流れるように構成される。第3管路(3C)は、本発明の分岐路の一例である。第1実施形態では、第3管路(3C)に下流には、需要施設Bが設けられているが、貯水槽(2)が設けられてもよい。
【0055】
―第2実施形態―
図2~
図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る水力発電システム(10A)について説明する。
図4は、水力発電システム(10A)の構成を示すブロック図である。
【0056】
図4に示すように、水力発電システム(10A)は、水位センサ(70)をさらに備える。水位センサ(70)は、貯水槽(2)内の水位を検知する。第2実施形態では、水位センサ(70)は、第1貯水槽(2A)に設けられ、第1貯水槽(2A)内の水位を検知する。水位センサ(70)の種類は特に限定されない。水位センサ(70)は、例えば、圧力式水位センサ、電波式水位センサ、超音波式水位センサ、又は、投げ込み式水位センサである。なお、水位センサ(70)を用いることなく、制御部(43)が、第1貯水槽(2A)内の水位を推定するように構成してもよい。この場合、例えば、第1貯水槽(2A)に供給される供給水量を検出する第1センサと、第1貯水槽(2A)から放出される放出水量を検出する第2センサとが設けられ、制御部(43)は、第1センサにより検出された供給水量と、第2センサにより検出された放出水量との比較結果に基づいて、第1貯水槽(2A)内の水位を推定する。
【0057】
―第2実施形態の水力発電システムの動作―
図2~
図5を参照して、第2実施形態の水力発電システム(10A)の動作について説明する。
図5は、第2実施形態の水力発電システム(10A)の動作を示すフロー図である。
【0058】
図4において、水位P1は、第1貯水槽(2A)内の現在の水位を示す。下限閾値L1は、第1貯水槽(2A)内の水位の下限の閾値を示す。上限閾値H1は、第1貯水槽(2A)内の水位の上限の閾値を示す。
図5のフロー図に示す処理は、第1貯水槽(2A)内の現在の水位P1を適正な状態(L1≦P1≦H1になる状態)とするために行われる。下限閾値L1、及び上限閾値H1の各々は、予め設定された値であり、記憶部(42)に記憶されている。
【0059】
図4及び
図5に示すように、ステップS10において、水位センサ(70)が第1貯水槽(2A)内の現在の水位P1を検出する。制御部(43)は、水位センサ(70)から、現在の水位P1を示す情報を取得する。なお、上記のように、制御部(43)は、水位センサ(70)を用いることなく、現在の水位P1を推定するように構成してもよい。
【0060】
ステップS11において、制御部(43)は、現在の水位P1と、下限閾値L1と、上限閾値H1とを比較する。
【0061】
現在の水位P1が上限閾値H1よりも大きい場合(P1>H1)、処理がステップS12へ移行する。ステップS12において、制御部(43)は、水車(20)をポンプ運転モードで動作させる(
図3参照)。これにより、水車(20)は、第1貯水槽(2A)に貯留される水を、第1管路(3A)を通じて第1貯水槽(2A)の上流に逆流させることができる。その結果、第1貯水槽(2A)内の水位P1の上昇を抑制して、第1貯水槽(2A)内の水位P1を適正な状態(L1≦P1≦H1になる状態)に近づけることができる。
【0062】
現在の水位P1が、下限閾値L1以上、上限閾値H1以下の場合(L1≦P1≦H1)、処理がステップS13へ移行する。ステップS13において、制御部(43)は、水車(20)を水車運転モードで動作させる(
図2参照)。これにより、管路(3)において上流から下流へ水が流れている状態が保持されるので、第1貯水槽(2A)内の水位P1が適正な状態となる現状を維持することができる。
【0063】
現在の水位P1が、下限閾値L1よりも小さい場合(P1<L1)、処理がステップS14へ移行する。ステップS14において、制御部(43)は、水車(20)を水車運転モードで動作させる(
図2参照)。これにより、水車(20)は、第1管路(3A)を流れる水を第1貯水槽(2A)に供給できる。その結果、第1貯水槽(2A)内の水位P1の低下を抑制して、第1貯水槽(2A)内の水位P1を適正な状態に近づけることができる。
【0064】
―第2実施形態の効果―
以上、
図2~
図5を参照して説明したように、制御部(43)は、第1貯水槽(2A)に設けられる水位センサ(70)の検知結果に基づいて、水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定する。その結果、第1貯水槽(2A)内の水位P1を適正な状態に近づけることができる。
【0065】
なお、水車(20)よりも下流に設けられる管路(3)(下流側管路)の供給水量と需要水量とを比較すると、需要水量に対して供給水量が多くなる程、水位P1が高くなる。従って、水位P1は、下流側管路の供給水量と需要水量との比較結果と相関を有する。よって、第2実施形態のように、水位センサ(70)の検知結果である水位P1に基づいて水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することは、言い換えれば、下流側管路の供給水量と需要水量との比較結果に基づいて水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することを示す。
【0066】
―第3実施形態―
図2、
図3、
図6、及び
図7を参照して、本発明の第3実施形態に係る水力発電システム(10B)について説明する。
図6は、水力発電システム(10B)の構成を示すブロック図である。
【0067】
図6に示すように、水力発電システム(10B)は、水位センサ(70)をさらに備える。第3実施形態では、水位センサ(70)は、第2貯水槽(2B)に設けられ、第2貯水槽(2B)内の水位を検知する。なお、水位センサ(70)を用いることなく、制御部(43)が、第2貯水槽(2B)内の水位を推定するように構成してもよい。この場合、例えば、第2貯水槽(2B)に供給される供給水量を検出する第3センサと、第2貯水槽(2B)から放出される放出水量を検出する第4センサとが設けられ、制御部(43)は、第3センサにより検出された供給水量と、第4センサにより検出された放出水量との比較結果に基づいて、第2貯水槽(2B)内の水位を推定する。また、制御部(43)は、第1管路(3A)において第2貯水槽(2B)と水車(20)との間に位置する任意地点における水の異なる流量に応じた圧力に基づいて、第2貯水槽(2B)内の水位を推定するように構成してもよい。
【0068】
―第3実施形態の水力発電システムの動作―
図2、
図3、
図6、及び
図7を参照して、第3実施形態の水力発電システム(10B)の動作について説明する。
図7は、第3実施形態の水力発電システム(10B)の動作を示すフロー図である。
【0069】
図6において、水位P2は、第2貯水槽(2B)内の現在の水位を示す。下限閾値L2は、第2貯水槽(2B)内の水位の下限の閾値を示す。上限閾値H2は、第2貯水槽(2B)内の水位の上限の閾値を示す。
図6のフロー図に示す処理は、第2貯水槽(2B)内の現在の水位P2を適正な状態(L2≦P2≦H2になる状態)とするために行われる。下限閾値L2、及び上限閾値H2の各々は、予め設定された値であり、記憶部(42)に記憶されている。
【0070】
図6及び
図7に示すように、ステップS20において、水位センサ(70)が第2貯水槽(2B)内の現在の水位P2を検出する。制御部(43)は、水位センサ(70)から、現在の水位P2を示す情報を取得する。なお、上記のように、制御部(43)は、水位センサ(70)を用いることなく、現在の水位P2を推定するように構成してもよい。
【0071】
ステップS21において、制御部(43)は、現在の水位P2と、下限閾値L2と、上限閾値H2とを比較する。
【0072】
現在の水位P2が上限閾値H2よりも大きい場合(P2>H2)、処理がステップS22へ移行する。ステップS22において、制御部(43)は、水車(20)を水車運転モードで動作させる(
図2参照)。これにより、水車(20)は、第2貯水槽(2B)に貯留される水を、第1管路(3A)を通じて第2貯水槽(2B)から排出させることができる。その結果、第2貯水槽(2B)内の水位P2の上昇を抑制して、第2貯水槽(2B)内の水位P2を適正な状態(L2≦S2≦H2になる状態)に近づけることができる。
【0073】
現在の水位P2が、下限閾値L2以上、上限閾値H2以下の場合(L2≦P2≦H2)、処理がステップS23へ移行する。ステップS23において、制御部(43)は、水車(20)を水車運転モードで動作させる(
図2参照)。これにより、管路(3)において上流から下流へ水が流れている状態が保持されるので、第2貯水槽(2B)内の水位P2が適正な状態となる現状を維持することができる。
【0074】
現在の水位P2が、下限閾値L2よりも小さい場合(P2<L2)、処理がステップS24へ移行する。ステップS24において、制御部(43)は、水車(20)をポンプ運転モードで動作させる(
図3参照)。これにより、水車(20)は、第1貯水槽(2A)に貯留される水を、第1管路(3A)を通じて第1貯水槽(2A)の上流に逆流させて、第2貯水槽(2B)に供給できる。その結果、第2貯水槽(2B)内の水位P2の低下を抑制して、第2貯水槽(2B)内の水位P2を適正な状態に近づけることができる。
【0075】
―第3実施形態の効果―
以上、
図2、
図3、
図6、及び
図7を参照して説明したように、制御部(43)は、第2貯水槽(2B)に設けられる水位センサ(70)の検出結果に基づいて、水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定する。その結果、第2貯水槽(2B)内の水位P2を適正な状態に近づけることができる。
【0076】
なお、水車(20)よりも上流に設けられる管路(3)(上流側管路)の供給水量と需要水量とを比較すると、需要水量に対して供給水量が多くなる程、水位P2が高くなる。従って、水位P2は、上流側管路の供給水量と需要水量との比較結果と相関を有する。よって、第3実施形態のように、水位センサ(70)の検知結果である水位P2に基づいて水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することは、言い換えれば、上流側管路の供給水量と需要水量との比較結果に基づいて水車(20)をポンプとして動作させるか否かを決定することを示す。
【0077】
―第4実施形態―
図2、
図3、及び
図8、
図9を参照して、本発明の第4実施形態に係る水力発電システム(10C)について説明する。
図8は、水力発電システム(10C)の構成を示すブロック図である。
【0078】
図8に示すように、水力発電システム(10C)の記憶部(42)は、スケジュール情報(M1)を記憶する。
図9(a)は、スケジュール情報(M1)を示すグラフである。
図9(a)に示すように、スケジュール情報(M1)は、第1貯水槽(2A)の需要水量と、第1貯水槽(2A)の水の需要が発生する時間との対応関係を表したグラフである。スケジュール情報(M1)は、例えば、過去の所定の計測期間内において、第1貯水槽(2A)から需要施設に供給された水量を計測することによって、第1貯水槽(2A)から需要施設に供給される水量の周期的な変化を確認し、当該確認した水量の周期的な変化に基づいて作成される。
【0079】
図2、
図3、及び
図8、
図9を参照して、スケジュール情報(M1)に基づいた水車(20)の動作について説明する。
図9(b)は、スケジュール情報(M1)に基づいた水車(20)の動作を表す図である。
【0080】
図8、
図9(a)、及び
図9(b)に示すように、制御部(43)は、スケジュール情報(M1)に基づいて、第1貯水槽(2A)内の水が不足するか否か、又は、不足することが予想されるか否かを判定する第1判定処理を行う。そして、制御部(43)は、第1判定処理の結果に基づいて、水車(20)をポンプ運転モードで動作させるか否かを決定する。
【0081】
スケジュール情報(M1)において、第1貯水槽(2A)の需要水量が0となる時間帯においては、制御部(43)は、第1貯水槽(2A)内の水が不足しない、又は、不足することが予想されないと判定して、水車(20)をポンプ運転モードで動作させる(
図3参照)。第4実施形態では、0時~T1時の時間帯と、T2時~24時の時間帯とにおいて、制御部(43)が水車(20)をポンプ運転モードで動作させる。これにより、水車(20)から送られた水が第2貯水槽(2B)に供給されるので、第2貯水槽(2B)内の水が不足することを抑制できる。
【0082】
スケジュール情報(M1)において、第1貯水槽(2A)の需要水量が0よりも大きくなる時間帯においては、制御部(43)は、第1貯水槽(2A)内の水が不足する、又は、不足することが予想されると判定して、水車(20)を水車運転モードで動作させる(
図2参照)。第4実施形態では、T1時~T2時の時間帯において、制御部(43)が水車(20)を水車運転モードで動作させる。これにより、水車(20)から第1貯水槽(2A)へ水が供給されるので、第1貯水槽(2A)内の水が不足することを抑制できる。
【0083】
第4実施形態では、スケジュール情報(M1)において、水車(20)をポンプ運転モードで動作させるか否かを決定するための閾値として、閾値0を用いる。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、閾値0に代えて、所定の第1閾値Z1を用いてもよい(Z1>0)。この場合、スケジュール情報(M1)において、第1貯水槽(2A)の需要水量が所定の第1閾値Z1未満となる時間帯においては、制御部(43)が水車(20)をポンプ運転モードで動作させ(
図3参照)、第1貯水槽(2A)の需要水量が所定の第1閾値Z1以上となる時間帯においては、制御部(43)が水車(20)を水車運転モードで動作させる(
図2参照)。言い換えれば、スケジュール情報(M1)において、第1貯水槽(2A)の需要水量が所定の第1閾値Z1以上となる時間帯においては、制御部(43)は、第1貯水槽(2A)内の水が不足する、又は、不足することが予想されると判定して、水車(20)を水車運転モードで動作させる。また、スケジュール情報(M1)において、第1貯水槽(2A)の需要水量が所定の第1閾値Z1未満となる時間帯においては、制御部(43)は、第1貯水槽(2A)内の水が不足しない、又は、不足することが予想されないと判定して、水車(20)をポンプ運転モードで動作させる。
【0084】
―第5実施形態―
図2、
図3、
図8,
図10を参照して、本発明の第5実施形態に係る水力発電システム(10D)について説明する。
【0085】
水力発電システム(10D)の記憶部(42)は、第2スケジュール(M2)を記憶する。
図10(a)は、スケジュール情報(M2)を示すグラフである。
図10(a)に示すように、スケジュール情報(M2)は、第2貯水槽(2B)の需要水量と、第2貯水槽(2B)の水の需要が発生する時間との対応関係を表したグラフである。スケジュール情報(M2)は、例えば、過去の所定の計測期間内において、第2貯水槽(2B)から需要施設に供給された水量を計測することによって、第2貯水槽(2B)から需要施設に供給される水量の周期的な変化を確認し、当該確認した水量の周期的な変化に基づいて作成される。
【0086】
図2、
図3、
図8,
図10を参照して、スケジュール情報(M2)に基づいた水車(20)の動作について説明する。
図10(b)は、スケジュール情報(M2)に基づいた水車(20)の動作を表す図である。
【0087】
図8、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、制御部(43)は、スケジュール情報(M2)に基づいて、第2貯水槽(2B)内の水が不足するか否か、又は、不足することが予想されるか否かを判定する第2判定処理を行う。そして、制御部(43)は、第2判定処理の結果に基づいて、水車(20)をポンプ運転モードで動作させるか否かを決定する。
【0088】
スケジュール情報(M2)において、第2貯水槽(2B)の需要水量が0となる時間帯においては、制御部(43)は、第2貯水槽(2B)内の水が不足しない、又は、不足することが予想されないと判定して、水車(20)を水車運転モードで動作させる(
図2参照)。第5実施形態では、0時~T3時の時間帯と、T4時~24時の時間帯とにおいて、制御部(43)が水車(20)を水車運転モードで動作させる。これにより、水車(20)から第1貯水槽(2A)へ水が供給されるので、第1貯水槽(2A)内の水が不足することを抑制できる。
【0089】
スケジュール情報(M2)において、第2貯水槽(2B)の需要水量が0よりも大きくなる時間帯においては、水力発電システム(10D)の制御部(43)は、第2貯水槽(2B)内の水が不足する、又は、不足することが予想されると判定して、水車(20)をポンプ運転モードで動作させる(
図3参照)。第5実施形態では、T3時~T4時の時間帯において、制御部(43)が水車(20)をポンプ運転モードで動作させる。これにより、水車(20)から送られた水が第2貯水槽(2B)に供給されるので、第2貯水槽(2B)内の水が不足することを抑制できる。
【0090】
第5実施形態では、スケジュール情報(M2)において、水車(20)をポンプ運転モードで動作させるか否かを決定するための閾値として、閾値0を用いる。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、閾値0に代えて、所定の第2閾値Z2を用いてもよい(Z2>0)。この場合、スケジュール情報(M2)において、第2貯水槽(2B)の需要水量が所定の第2閾値Z2未満となる時間帯においては、制御部(43)が水車(20)を水車運転モードで動作させ(
図2参照)、第2貯水槽(2B)の需要水量が所定の第2閾値Z2以上となる時間帯においては、制御部(43)が水車(20)をポンプ運転モードで動作させる(
図3参照)。言い換えれば、スケジュール情報(M2)において、第2貯水槽(2B)の需要水量が所定の第2閾値Z2以上となる時間帯においては、制御部(43)は、第2貯水槽(2B)内の水が不足する、又は、不足することが予想されると判定して、水車(20)をポンプ運転モードで動作させる。また、スケジュール情報(M2)において、第2貯水槽(2B)の需要水量が所定の第2閾値Z2未満となる時間帯においては、制御部(43)は、第2貯水槽(2B)内の水が不足しない、又は、不足することが予想されないと判定して、水車(20)を水車運転モードで動作させる。
【0091】
なお、
図9(a)及び
図9(b)に示すスケジュール(M1、M2)は、1日単位で設定されている。しかし、本発明はこれに限定されない。スケジュール(M1、M2)が設定される期間の単位は特に限定されない。スケジュール(M1、M2)は、例えば、週単位で設定されてもよく、月単位で設定されてもよく、又は、年単位で設定されてもよい。
【0092】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本開示は、水力発電システムについて有用である。
【符号の説明】
【0094】
3A 第1管路(管路)
20 水車
30 発電機
41 AC/DCコンバータ電力変換部
43 制御部
2A 第1貯留部
3C 第3管路(分岐路)