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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/193 20210101AFI20240502BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20240502BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20240502BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240502BHJP
   C08F 8/20 20060101ALI20240502BHJP
   C08F 214/26 20060101ALI20240502BHJP
   C08F 216/14 20060101ALI20240502BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240502BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H01M50/193
H01M50/188
H01M50/198
B29C45/00
C08F8/20
C08F214/26
C08F216/14
C09K3/10 M
F16J15/10 X
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021205840
(22)【出願日】2021-12-20
(62)【分割の表示】P 2020142695の分割
【原出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022050435
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019153773
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020038592
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020038598
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020038601
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井坂 忠晴
(72)【発明者】
【氏名】津田 早登
(72)【発明者】
【氏名】善家 佑美
(72)【発明者】
【氏名】山本 有香里
(72)【発明者】
【氏名】青山 高久
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/048214(WO,A1)
【文献】特開2011-048976(JP,A)
【文献】特開平08-321287(JP,A)
【文献】特開2012-130557(JP,A)
【文献】特開2001-283907(JP,A)
【文献】特開平09-245832(JP,A)
【文献】特開2007-238960(JP,A)
【文献】特開2013-177574(JP,A)
【文献】特開2002-063934(JP,A)
【文献】特開2001-283921(JP,A)
【文献】特開2021-141045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
B29C 45/00
C08F 8/20
C08F 214/26
C08F 216/14
C09K 3/10
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有し、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.0~6.0質量%であり、メルトフローレートが、0.5~55g/10分であり、官能基数が、主鎖炭素数10個あたり、50個以下である共重合体を含有する非水電解液電池用のガスケット。
【請求項2】
射出成形体またはトランスファー成形体である請求項1に記載の非水電解液電池用のガスケット。
【請求項3】
厚みが、0.5~2.5mmである請求項1または2に記載の非水電解液電池用のガスケット。
【請求項4】
シール面積が、0.5~50cmである請求項1~3のいずれかに記載の非水電解液電池用のガスケット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の非水電解液電池用のガスケットを備える非水電解液電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電体およびガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロエチレン/フルオロアルキルビニルエーテル共重合体は、良好な絶縁特性を有していることから、電池の絶縁部材などに用いられている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位、及び、1種類以上のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく重合単位を有する含フッ素重合体からなる封止材料であって、上記含フッ素重合体は、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく重合単位が全重合単位に対して4.0質量%以下であり、かつ、メルトフローレートが0.1~100g/10分であることを特徴とする封止材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-177574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、密閉性が高く、異常に高温になった場合でも密閉性が損なわれない蓄電体を提供することを目的とする。
また、本開示では、蓄電体の密閉性を顕著に高めることができ、異常に高温になった場合でも蓄電体の密閉性を損なうことがないガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、テトラフルオロエチレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有し、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.0~6.0質量%であり、メルトフローレートが、0.5~55g/10分であり、官能基数が、主鎖炭素数10個あたり、50個以下である共重合体を含有するガスケットが提供される。
【0007】
本開示のガスケットは、射出成形体またはトランスファー成形体であることが好ましい。
本開示のガスケットにおいて、前記共重合体の150℃における面圧が0.3MPa以上であることが好ましい。
本開示のガスケットは、厚みが、0.5~2.5mmであることが好ましい。
【0008】
本開示のガスケットは、シール面積が、0.5~50cm であることが好ましい。
【0009】
本開示のガスケットは、非水電解液電池用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、密閉性が高く、異常に高温になった場合でも密閉性が損なわれない蓄電体を提供することができる。
また、本開示によれば、蓄電体の密閉性を顕著に高めることができ、異常に高温になった場合でも蓄電体の密閉性を損なうことがないガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、蓄電体の外観斜視図である。
図2図2は、蓄電体の端子部分の構成を示す概略断面図である。
図3図3は、ガスケットの正面図である。
図4図4は、図3のA-A’線断面図である。
図5図5は、電解液透過試験に用いる透過試験治具の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本開示の蓄電体は、テトラフルオロエチレン(TFE)単位およびフルオロ(アルキルビニルエーテル)(FAVE)単位を含有する共重合体を含有するガスケットを備えている。
【0014】
特許文献1には、車載用の二次電池は、使用環境下において時には85℃以上という高温に晒されることもあり、電池内部の気密性及び液密性を保つためには、そのような苛酷な使用条件下でも封止材料が充分な圧縮復元性を保持し、外装缶体と封口体との高い密着性を維持できることが重要であることが記載されている。
【0015】
しかしながら、蓄電体に注入された電解液が外部に漏れ出すことを防止するだけでは十分ではない可能性がある。蓄電体にガスケットを設けることにより、蓄電体からの電解液の漏液を防止する技術が知られている。従来の蓄電体では、漏液を防止できても、電解液がガスケットを透過して蓄電体の外部に拡散することを十分に防止できていないおそれがある。特に、近年では蓄電体が高温となる環境で用いられることが多くなっており、電解液がガスケットを透過する量も多くなりやすいことから、電解液の透過を一層抑制する重要性が高まっている。さらに、蓄電体が高寿命化していることから、電解液が蓄電体の外部に拡散してしまうと、蓄電体を長期間使用することにより、蓄電体中の電解液の量が次第に減少し、蓄電性能にも悪影響を与えかねない。
【0016】
TFE単位およびFAVE単位を含有する共重合体のFAVE単位の含有量、メルトフローレート(MFR)および官能基数が適切に調整された共重合体を含有するガスケットを用いて、蓄電体を密閉することにより、蓄電体からの電解液の漏液を防止できるだけでなく、電解液がガスケットを透過して外部に拡散することをも防止できることが見出された。加えて、このような共重合体を含有するガスケットが、高温でも優れたシール性を示し、したがって、蓄電体が異常に発熱して高温になる場合でも、電解液の外部への漏液や拡散が防止できることもあわせて見出された。これらの優れた効果は、蓄電体の最高温度が150℃以上に上昇した場合でも、十分に発揮される。さらには、このようなガスケットは、射出成形に用いる金型を腐食させることなく、射出成形によって高い生産性で製造することができ、電解液と接触してもフッ素イオンを溶出させにくい。したがって、このようなガスケットを備える蓄電体は、高い生産性で低コストで製造することができ、蓄電性能に優れており、蓄電性能の劣化および短寿命化が高度に抑制される。
【0017】
本開示の蓄電体は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、密閉性が高く、異常に高温になった場合でも密閉性が損なわれない。
【0018】
本開示の蓄電体が備えるガスケットが含有する共重合体は、溶融加工性のフッ素樹脂である。溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。
【0019】
本開示の蓄電体が備えるガスケットが含有する共重合体は、TFE単位およびFAVE単位を含有する。FAVE単位を構成するFAVEとしては、一般式(1):
CF=CFO(CFCFYO)-(CFCFCFO)-Rf (1)
(式中、YはFまたはCFを表し、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。pは0~5の整数を表し、qは0~5の整数を表す。)で表される単量体、および、一般式(2):
CFX=CXOCFOR (2)
(式中、Xは、同一または異なり、H、FまたはCFを表し、Rは、直鎖または分岐した、H、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1~2個含んでいてもよい炭素数が1~6のフルオロアルキル基、若しくは、H、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1~2個含んでいてもよい炭素数が5または6の環状フルオロアルキル基を表す。)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0020】
なかでも、上記FAVEとしては、一般式(1)で表される単量体が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PEVEおよびPPVEからなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましく、PPVEが特に好ましい。
【0021】
共重合体のフルオロアルキルビニルエーテル(FAVE)単位の含有量は、全単量体単位に対して、2.0~6.0質量%である。
共重合体のFAVE単位の含有量は、好ましくは5.5質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは4.7質量%以下である。共重合体のFAVE単位の含有量が上記範囲内にあることにより、電解液の透過をより一層抑制でき、高温でのシール性が一層向上したガスケットが得られ、したがって、密閉性がより一層高く、異常に高温になった場合でも密閉性がより一層損なわれない蓄電体を得ることができる。
共重合体のFAVE単位の含有量は、電解液の透過を非常に高いレベルで抑制し、高温でのシール性を非常に高いレベルまで向上させる観点からは、好ましくは2.2質量%以上であり、より好ましくは2.4質量%以上であり、さらに好ましくは2.6質量%以上であり、好ましくは4.4質量%以下である。
共重合体のFAVE単位の含有量は、電解液の透過をより一層高いレベルで抑制し、高温でのシール性をより一層高いレベルまで向上させる観点からは、好ましくは4.2質量%以下であり、より好ましくは3.8質量%以下であり、さらに好ましくは3.5質量%以下であり、特に好ましくは3.2質量%以下である。
【0022】
共重合体のテトラフルオロエチレン(TFE)単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは98.0~94.0質量%である。
共重合体のTFE単位の含有量は、好ましくは94.5質量%以上であり、より好ましくは95.0質量%以上であり、さらに好ましくは95.3質量%以上である。共重合体のTFE単位の含有量が上記範囲内にあることにより、電解液の透過をより一層抑制でき、高温でのシール性が一層向上したガスケットが得られ、したがって、密閉性がより一層高く、異常に高温になった場合でも密閉性がより一層損なわれない蓄電体を得ることができる。
共重合体のTFE単位の含有量は、電解液の透過を非常に高いレベルで抑制し、高温でのシール性を非常に高いレベルまで向上させる観点からは、好ましくは97.8質量%以下であり、より好ましくは97.6質量%以下であり、さらに好ましくは97.4質量%以下であり、好ましくは95.6質量%以上である。
共重合体のTFE単位の含有量は、電解液の透過をより一層高いレベルで抑制し、高温でのシール性をより一層高いレベルまで向上させる観点からは、好ましくは95.8質量%以上であり、より好ましくは96.2質量%以上であり、さらに好ましくは96.5質量%以上であり、特に好ましくは96.8質量%以上である。
【0023】
本開示において、共重合体中の各単量体単位の含有量は、19F-NMR法により測定することができる。
【0024】
共重合体は、TFEおよびFAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位を含有することもできる。この場合、TFEおよびFAVEと共重合可能な単量体単位の含有量は、共重合体の全単量体単位に対して、好ましくは0~4.00モル%であり、より好ましくは0.05~1.40モル%であり、さらに好ましくは0.10~0.50モル%である。
【0025】
TFEおよびFAVEと共重合可能な単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、CZ=CZ(CF(式中、Z、ZおよびZは、同一または異なって、HまたはFを表し、Zは、H、FまたはClを表し、nは2~10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、および、CF=CF-OCH-Rf(式中、Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。なかでも、HFPが好ましい。
【0026】
共重合体としては、TFE単位およびFAVE単位のみからなる共重合体、および、TFE/HFP/FAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、TFE単位およびFAVE単位のみからなる共重合体がより好ましい。
【0027】
共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.5~55g/10分である。
共重合体のMFRは、好ましくは1.0g/10分以上であり、より好ましくは5.0g/10分以上である。共重合体のMFRが上記範囲内にあることにより、電解液の透過をより一層抑制でき、高温でのシール性が一層向上したガスケットが得られ、したがって、密閉性がより一層高く、異常に高温になった場合でも密閉性がより一層損なわれない蓄電体を得ることができる。
共重合体のMFRは、電解液の透過を非常に高いレベルで抑制し、高温でのシール性を非常に高いレベルまで向上させる観点からは、好ましくは50g/10分以下である。
共重合体のMFRは、電解液の透過をより一層高いレベルで抑制し、高温でのシール性をより一層高いレベルまで向上させる観点からは、好ましくは45g/10分以下であり、より好ましくは40g/10分以下であり、さらに好ましくは、35g/10分であり、特に好ましくは30g/10分以下である。
共重合体のMFRは、非常に高い温度(たとえば150℃)でのシール性が特に要求される場合には、好ましくは20g/10分以下であり、より好ましくは15g/10分以下であり、さらに好ましくは10g/10分以下であり、特に好ましくは5.0g/10分以下である。
共重合体のMFRは、電解液の低透過性およびシール性と、ガスケットの製造容易性とのバランスを重視する場合には、10g/10分以上であってもよく、20g/10分以上であってもよい。
【0028】
本開示において、共重合体のメルトフローレートは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサーを用いて、372℃、5kg荷重下で内径2.1mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0029】
共重合体の主鎖炭素数10個当たりの官能基数は、50個以下である。官能基数は、好ましくは40個以下であり、より好ましくは30個以下であり、さらに好ましくは20個以下であり、特に好ましくは15個以下である。共重合体の官能基数が上記範囲内にあることにより、電解液の透過をより一層抑制でき、高温でのシール性が一層向上したガスケットが得られ、したがって、密閉性がより一層高く、異常に高温になった場合でも密閉性がより一層損なわれない蓄電体を得ることができる。さらに、射出成形に用いる金型の腐食を一層抑制でき、電解液へのフッ素イオンの溶出を一層抑制できる。
【0030】
上記官能基の種類の同定および官能基数の測定には、赤外分光分析法を用いることができる。
【0031】
官能基数については、具体的には、以下の方法で測定する。まず、上記共重合体をコールドプレスにより成形して、厚さ0.25~0.3mmのフィルムを作製する。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析により分析して、上記共重合体の赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得る。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って、上記共重合体における炭素原子1×10個あたりの官能基数Nを算出する。
【0032】
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0033】
参考までに、いくつかの官能基について、吸収周波数、モル吸光係数および補正係数を表1に示す。また、モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT-IR測定データから決定したものである。
【表1】
【0034】
-CHCFH、-CHCOF、-CHCOOH、-CHCOOCH、-CHCONHの吸収周波数は、それぞれ表中に示す、-CFH、-COF、-COOH freeと-COOH bonded、-COOCH、-CONHの吸収周波数から数十カイザー(cm-1)低くなる。
【0035】
たとえば、-COFの官能基数とは、-CFCOFに起因する吸収周波数1883cm-1の吸収ピークから求めた官能基数と、-CHCOFに起因する吸収周波数1840cm-1の吸収ピークから求めた官能基数との合計である。
【0036】
官能基は、共重合体の主鎖末端または側鎖末端に存在する官能基、および、主鎖中または側鎖中に存在する官能基である。官能基数は、-CF=CF、-CFH、-COF、-COOH、-COOCH、-CONHおよび-CHOHの合計数であってよい。
【0037】
上記官能基は、たとえば、共重合体を製造する際に用いた連鎖移動剤や重合開始剤によって、共重合体に導入される。たとえば、連鎖移動剤としてアルコールを使用する、あるいは重合開始剤として-CHOHの構造を有する過酸化物を使用した場合、共重合体の主鎖末端に-CHOHが導入される。また、官能基を有する単量体を重合することによって、上記官能基が共重合体の側鎖末端に導入される。
【0038】
このような官能基を有する共重合体を、フッ素化処理することによって、上記範囲内の官能基数を有する共重合体を得ることができる。すなわち、共重合体は、フッ素化処理されたものであることが好ましい。共重合体は、-CF末端基を有することも好ましい。
【0039】
ガスケットの一実施形態においては、TFE単位およびFAVE単位を含有し、FAVE単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.0~4.4質量%であり、メルトフローレートが、0.5~50g/10分であり、官能基数が、主鎖炭素数10個あたり、50個以下である共重合体を含有することができる。この実施形態に係るガスケットによれば、ガスケット中を透過する電解液を非常に高いレベルで抑制することができるとともに、高温の環境下でも、非常に高いレベルで蓄電体を密閉することができる。したがって、密閉性が非常に高く、異常に高温になった場合でも密閉性がより一層損なわれない蓄電体を得ることができる。
【0040】
ガスケットの一実施形態においては、FAVE単位の含有量が、全単量体単位に対して、2.0~4.2質量%であり、メルトフローレートが、0.5~45g/10分であり、官能基数が、主鎖炭素数10個あたり、50個以下である共重合体を含有することができる。この実施形態に係るガスケットによれば、ガスケット中を透過する電解液を一層高いレベルで抑制することができるとともに、高温の環境下でも、一層高いレベルで蓄電体を密閉することができる。したがって、密閉性がより一層高く、異常に高温になった場合でも密閉性がほとんど損なわれない蓄電体を得ることができる。
【0041】
ガスケットの電解液の低透過性は、たとえば、後述する電解液透過試験における溶出フッ素イオン量に基づいて評価できる。ガスケットの高温でのシール性は、たとえば、ガスケットの150℃での面圧に基づいて評価できる。
【0042】
ガスケットが含有する共重合体のFAVE単位の含有量をさらに調整することにより、電解液の透過をより一層高いレベルで抑制し、高温でのシール性をより一層高いレベルまで向上させられることが見いだされた。ガスケットが含有する共重合体のFAVE単位の含有量は、電解液の透過をより一層高いレベルで抑制し、高温でのシール性をより一層高いレベルまで向上させる観点からは、好ましくは4.2質量%以下であり、より好ましくは3.8質量%以下であり、さらに好ましくは3.5質量%以下であり、特に好ましくは3.2質量%以下である。
【0043】
ガスケットが含有する共重合体のTFE単位の含有量は、電解液の透過をより一層高いレベルで抑制し、高温でのシール性をより一層高いレベルまで向上させる観点からは、好ましくは95.8質量%以上であり、より好ましくは96.2質量%以上であり、さらに好ましくは96.5質量%以上であり、特に好ましくは96.8質量%以上である。
【0044】
ガスケットが含有する共重合体のMFRをさらに調整することにより、電解液の透過をより一層高いレベルで抑制し、高温でのシール性をより一層高いレベルまで向上させられることが見いだされた。ガスケットが含有する共重合体のMFRは、電解液の透過をより一層高いレベルで抑制し、高温でのシール性をより一層高いレベルまで向上させる観点からは、好ましくは45g/10分以下であり、より好ましくは40g/10分以下であり、さらに好ましくは、35g/10分であり、特に好ましくは30g/10分以下である。
【0045】
ガスケットが含有する共重合体のMFRは、非常に高い温度(たとえば150℃)でのシール性が特に要求される場合には、好ましくは20g/10分以下であり、より好ましくは15g/10分以下であり、さらに好ましくは10g/10分以下であり、特に好ましくは5.0g/10分以下である。
【0046】
共重合体の融点は、好ましくは298~315℃であり、より好ましくは302~310℃である。融点が上記範囲内にあることにより、電解液の透過をより一層抑制でき、高温でのシール性が一層向上したガスケットが得られ、したがって、密閉性がより一層高く、異常に高温になった場合でも密閉性がより一層損なわれない蓄電体を得ることができる。
【0047】
本開示において、融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて測定できる。
【0048】
共重合体は、電解液浸漬試験において検出される溶出フッ素イオン量が、質量基準で、好ましくは1.0ppm以下であり、より好ましくは0.9ppm以下であり、さらに好ましくは0.8ppm以下である。溶出フッ素イオン量が上記範囲内にあることにより、電解液中でのHFなどのガスの発生を一層抑制できたり、蓄電体の性能の劣化および短寿命化を一層抑制できる。
【0049】
本開示において、電解液浸漬試験は、共重合体を用いて、成形体(15mm×15mm×0.2mm)10枚に相当する重量を有する試験片を作製し、試験片と2gのジメチルカーボネート(DMC)とを入れたガラス製サンプル瓶を、80℃の恒温槽に入れて、144時間放置することにより、行うことができる。
【0050】
共重合体の電解液透過量は、0.0055g/1000時間以下であってよく、好ましくは0.0050g/1000時間以下であり、より好ましくは0.0047g/1000時間以下であり、さらに好ましくは0.0045g/1000時間以下であり、特に好ましくは0.0042g/1000時間以下であり、下限は特に限定されないが、0.0020g/1000時間以上であってよい。共重合体の電解液透過量が上記範囲内にあることにより、密閉性がより一層高く、異常に高温になった場合でも密閉性がより一層損なわれない蓄電体を得ることができる。共重合体の電解液透過量は、共重合体のFAVE単位の含有量、メルトフローレート(MFR)および官能基数を調整することにより、低減することができる。
【0051】
共重合体の電解液透過量は、共重合体を射出成形することにより得られるガスケット(外径Φ17.7mm、内径Φ14.3mm、厚み1.6mmt)を用いて、60℃で1000時間の条件で、ガスケットを透過する電解液(EC/DEC(30/70体積%))の質量を測定することにより、特定することができる。
【0052】
共重合体の150℃での貯蔵弾性率(E’)は、好ましくは10MPa以上であり、より好ましくは50MPa以上であり、好ましくは1000MPa以下であり、より好ましくは500MPa以下であり、さらに好ましくは200MPa以下である。共重合体の150℃での貯蔵弾性率(E’)が上記範囲内にあることにより、異常に高温になった場合でも密閉性がより一層損なわれない蓄電体を得ることができる。
【0053】
貯蔵弾性率(E’)は、昇温速度2℃/分、周波数10Hz条件下で、30~250℃の範囲で、動的粘弾性測定を行うことにより、測定することができる。
【0054】
共重合体の150℃における面圧は、好ましくは0.3MPa以上であり、より好ましくは0.5MPa以上であり、さらに好ましくは0.8MPa以上であり、上限は特に限定されないが、2.0MPa以下であってよい。150℃における面圧が高い共重合体を含有するガスケットは、高温での優れたシール性を示すことができる。したがって、このような共重合体を含有するガスケットを用いることにより、異常に高温になった場合でも密閉性がより一層損なわれない蓄電体を得ることができる。共重合体の150℃における面圧は、共重合体のFAVE単位の含有量、メルトフローレート(MFR)および官能基数を調整することにより、高めることができる。
【0055】
面圧は、試験片を50%の圧縮変形率で変形させた状態で、150℃で18時間放置し、圧縮状態を解放し、室温で30分放置した後、試験片の高さ(圧縮変形させた後の試験片の高さ)を測定し、圧縮変形させた後の試験片の高さと150℃での貯蔵弾性率(MPa)とから、次式により算出することができる。
150℃面圧(MPa)=(t-t)/t×E’
:圧縮変形させる前の試験片の元の高さ(mm)×50%
:圧縮変形させた後の試験片の高さ(mm)
E’:150℃での貯蔵弾性率(MPa)
【0056】
本開示の蓄電体が備えるガスケットを形成するための共重合体は、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合などの重合方法により、製造することができる。重合方法としては、乳化重合または懸濁重合が好ましい。これらの重合において、温度、圧力などの各条件、重合開始剤やその他の添加剤は、共重合体の組成や量に応じて適宜設定することができる。
【0057】
重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
【0058】
油溶性ラジカル重合開始剤は公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえば、
ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類;
t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類;
ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類;
などが代表的なものとしてあげられる。
【0059】
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、[(RfCOO)-](Rfは、パーフルオロアルキル基、ω-ハイドロパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基)で表されるジアシルパーオキサイドが挙げられる。
【0060】
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、たとえば、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロプロピオニル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどが挙げられる。
【0061】
水溶性ラジカル重合開始剤は公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ジコハク酸パーオキサイド、ジグルタル酸パーオキサイドなどの有機過酸化物、t-ブチルパーマレート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤を過酸化物に組み合わせて使用してもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
【0062】
重合においては、界面活性剤、連鎖移動剤、および、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。
【0063】
界面活性剤としては、公知の界面活性剤が使用でき、たとえば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用できる。なかでも、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、エーテル結合性酸素を含んでもよい(すなわち、炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい)、炭素数4~20の直鎖または分岐した含フッ素アニオン性界面活性剤がより好ましい。界面活性剤の添加量(対重合水)は、好ましくは50~5000ppmである。
【0064】
連鎖移動剤としては、たとえば、エタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;メチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。連鎖移動剤の添加量は、用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0.01~20質量%の範囲で使用される。
【0065】
溶媒としては、水や、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
【0066】
懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CHCClF、CHCClF、CFCFCClH、CFClCFCFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CFClCFClCFCF、CFCFClCFClCF等のクロロフルオロアルカン類;CFCFHCFHCFCFCF、CFHCFCFCFCFH、CFCFCFCFCFCFCFH等のハイドロフルオロアルカン類;CHOC、CHOCCFCFCHOCHF、CFCHFCFOCH、CHFCFOCHF、(CFCHCFOCH、CFCFCHOCHCHF、CFCHFCFOCHCF等のハイドロフルオロエーテル類;パーフルオロシクロブタン、CFCFCFCF、CFCFCFCFCF、CFCFCFCFCFCF等のパーフルオロアルカン類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性および経済性の面から、水性媒体に対して10~100質量%が好ましい。
【0067】
重合温度としては特に限定されず、0~100℃であってよい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量および蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0~9.8MPaGであってよい。
【0068】
重合反応により共重合体を含む水性分散液が得られる場合は、水性分散液中に含まれる共重合体を凝析させ、洗浄し、乾燥することにより、共重合体を回収できる。また、重合反応により共重合体がスラリーとして得られる場合は、反応容器からスラリーを取り出し、洗浄し、乾燥することにより、共重合体を回収できる。乾燥することによりパウダーの形状で共重合体を回収できる。
【0069】
重合により得られた共重合体を、ペレットに成形してもよい。ペレットに成形する成形方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を用いることができる。たとえば、単軸押出機、二軸押出機、タンデム押出機を用いて共重合体を溶融押出しし、所定長さに切断してペレット状に成形する方法などが挙げられる。溶融押出しする際の押出温度は、共重合体の溶融粘度や製造方法により変える必要があり、好ましくは共重合体の融点+20℃~共重合体の融点+140℃である。共重合体の切断方法は、特に限定は無く、ストランドカット方式、ホットカット方式、アンダーウオーターカット方式、シートカット方式などの従来公知の方法を採用できる。得られたペレットを、加熱することにより、ペレット中の揮発分を除去してもよい(脱気処理)。得られたペレットを、30~200℃の温水、100~200℃の水蒸気、または、40~200℃の温風と接触させて処理してもよい。
【0070】
重合により得られた共重合体を、フッ素化処理してもよい。フッ素化処理は、フッ素化処理されていない共重合体とフッ素含有化合物とを接触させることにより行うことができる。フッ素化処理により、共重合体の-COOH、-COOCH、-CHOH、-COF、-CF=CF、-CONHなどの熱的に不安定な官能基、および、熱的に比較的安定な-CFHなどの官能基を、熱的に極めて安定な-CFに変換することができる。結果として、共重合体のCOOH、-COOCH、-CHOH、-COF、-CF=CF、-CONH、および、-CFHの合計数(官能基数)を容易に上述した範囲に調整できる。
【0071】
フッ素含有化合物としては特に限定されないが、フッ素化処理条件下にてフッ素ラジカルを発生するフッ素ラジカル源が挙げられる。上記フッ素ラジカル源としては、Fガス、CoF、AgF、UF、OF、N、CFOF、フッ化ハロゲン(たとえばIF、ClF)などが挙げられる。
【0072】
ガスなどのフッ素ラジカル源は、100%濃度のものであってもよいが、安全性の面から不活性ガスと混合し、5~50質量%に希釈して使用することが好ましく、15~30質量%に希釈して使用することがより好ましい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、経済的な面より窒素ガスが好ましい。
【0073】
フッ素化処理の条件は、特に限定されず、溶融させた状態の共重合体とフッ素含有化合物とを接触させてもよいが、通常、共重合体の融点以下、好ましくは20~240℃、より好ましくは100~220℃の温度下で行うことができる。上記フッ素化処理は、一般に1~30時間、好ましくは5~25時間行う。フッ素化処理は、フッ素化処理されていない共重合体をフッ素ガス(Fガス)と接触させるものが好ましい。
【0074】
ガスケットは、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、充填剤、可塑剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、老化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0075】
上記その他の成分としては、なかでも、充填剤が好ましい。充填剤としては、たとえば、シリカ、カオリン、クレー、有機化クレー、タルク、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、架橋ポリスチレン、チタン酸カリウム、カーボン、チッ化ホウ素、カーボンナノチューブ、ガラス繊維等が挙げられる。
【0076】
上述したように、ガスケットは、共重合体以外にその他の成分を含むことができる。ただし、共重合体が有する優れた特性を充分により発揮させる観点からは、その他の成分の含有量は少ないほうが好ましく、その他の成分を含まないことが最も好ましい。具体的には、その他の成分は、ガスケットの質量に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、最も好ましくは0質量%、すなわち、ガスケットがその他の成分を含まないことである。ガスケットは、共重合体のみからなるものであってよい。
【0077】
ガスケットは、共重合体、または、共重合体およびその他の成分を含有する組成物を所望の形状や大きさに成形することにより製造することができる。上記組成物の製造方法としては、共重合体とその他の成分とを乾式で混合する方法や、共重合体およびその他の成分を予め混合機で混合し、次いで、ニーダー、溶融押出し機等で溶融混練する方法等を挙げることができる。
【0078】
上記共重合体または上記組成物を成形する方法は特に限定されず、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、トランスファー成形法等が挙げられる。成形方法としては、なかでも、圧縮成形法、射出成形法またはトランスファー成形法が好ましく、高い生産性でガスケットを生産できることから、射出成形法またはトランスファー成形法がより好ましい。すなわち、ガスケットは、高い生産性で生産できることから、射出成形体またはトランスファー成形体であることが好ましい。
【0079】
次に、本開示の一実施形態に係る蓄電体を、図面を参照しながら説明する。
【0080】
図1に示す蓄電体は、密閉型の角型二次電池である。蓄電体10は、外装缶1および蓋2を備える。外装缶1には、底面3に対向する上部に開口部(図示せず)が形成されている。
【0081】
外装缶1内には、発電体などの電気素子(図示せず)が収容され、外装缶の開口部が蓋2によって密閉封止されている。蓋2の周縁部は、外装缶1の開口部の縁部に対して接合される。
【0082】
蓋2には、外装缶1内に電解液を注入するための注液孔が設けられている。電解液としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチルラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの公知の溶媒の1種もしくは2種以上が使用できる。電解液に電解質を溶解させたものを用いることもできる。電解質としては、特に限定されるものではないが、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCl、LiBr、CHSOLi、CFSOLi、炭酸セシウムなどを用いることができる。
【0083】
注液孔を介して電解液を外装缶1内に注入した後、注液孔に栓5を設け、栓5を蓋2の注液孔の縁部に対して接合する。接合は、レーザーを用いた溶接により行うことができる。
【0084】
蓋2には、第1の外部端子4Aと、第2の外部端子4Bとが設けられており、第1の外部端子4Aと第2の外部端子4Bとを介して外部発電電力が電気素子に供給されて蓄電され、また、外部負荷に電力が供給される。たとえば、第1の外部端子4Aは正極端子であり、第2の外部端子4Bは負極端子である。第1の外部端子4Aは、たとえば、アルミニウムまたはアルミニウム合金により構成されている。第2の外部端子4Bは、たとえば、銅または銅合金により構成されている。
【0085】
第1の外部端子4Aおよび第2の外部端子4Bを蓋2から電気的に絶縁するために、ガスケット6および絶縁部材7が蓋2に設けられている。図2は、蓄電体の端子部分の構成を示す概略断面図である。第1の外部端子および第2の外部端子は、通常、構成材料や蓋2への配置箇所が異なるが、その他の構成を同一とすることができることから、以下の説明では、第1の外部端子4Aの例を挙げて説明する。
【0086】
図2に示すように、第1の外部端子4Aは、直方体のブロック形状を有する端子頭部41Aと、円柱状の軸部42Aを有している。端子頭部41Aは、外形が長方形の下面43Aを有しており、軸部42Aは、端子頭部41Aの下面43Aから突出している。
【0087】
図2に示すように、ガスケット6は、円筒部61と、円筒部61の一方の開口部から径方向に広がるフランジ部62と、フランジ部62の周縁から立ち上がる側壁部63とを有している。
【0088】
円筒部61は、第1の外部端子4Aの軸部42Aに外嵌され、円筒部61の内周部の当接面61Aが軸部42Aの外周面と当接する。また、円筒部61は、蓋2の貫通孔内に挿入され、円筒部61の外周部の当接面61Bが蓋2の貫通孔の内周面と当接する。
【0089】
フランジ部62は、蓋2と第1の外部端子4Aとに挟持され、フランジ部62の当接面62Aが第1の外部端子4Aの下面43Aと当接する。また、フランジ部62の当接面62Bが蓋2の表面と当接する。
【0090】
ガスケット6の円筒部61およびフランジ部62が圧縮された状態で、ガスケット6が第1の外部端子4Aおよび蓋2と当接することにより、蓄電体の密閉性が確保される。
【0091】
ガスケット6を形成する共重合体のFAVE単位の含有量、メルトフローレート(MFR)および官能基数を適切に調整することに加えて、ガスケット6の厚みを適切に調整することにより、蓄電体の密閉性を一層高めることができる。ガスケットの厚みは、好ましくは0.5~2.5mmであり、より好ましくは2.0mm以下であり、さらに好ましくは1.5mm以下であり、特に好ましくは1.0mm以下である。ガスケットの厚みが小さい方が、電解液の透過をより一層抑制することができるが、ガスケットの厚みが小さすぎると、十分な反発弾性が得られず、十分な密閉性(たとえば、耐漏液性)が得られないおそれがある。共重合体のFAVE単位の含有量、メルトフローレート(MFR)および官能基数を適切に調整し、ガスケットの厚みを適切に調整することにより、蓄電体の密閉性を一層高めながら、電解液の透過をより一層抑制することができる。
【0092】
図3は、ガスケット6の正面図であり、図4は、ガスケット6のA-A’線断面図である。本開示において、ガスケットの厚みとは、蓄電体の密閉に寄与する部分の厚みであり、図4に示すガスケット6においては、厚みdおよび厚みeである。厚みdおよび厚みeは、図4に示すガスケットのように、お互いに異なっていてもよいし、同一であってもよい。厚みdおよび厚みeは、同一である場合でも、異なっている場合でも、両方の厚みが適切に調整されていることが好ましい。また、ガスケットの生産性を考慮すると、厚みの変化が大きくないことが好ましいので、ガスケット全体の厚みが上記の範囲内に調整されてもよい。図4に示すガスケットでは、厚みdおよび厚みeだけではなく、厚みfについても、上記の範囲内に適切に調整されている。
【0093】
ガスケット6を形成する共重合体のFAVE単位の含有量、メルトフローレート(MFR)および官能基数を適切に調整することに加えて、ガスケット6のシール面積を適切に調整することにより、蓄電体の密閉性を一層高めることができる。ガスケットのシール面積は、好ましくは0.5~50cmであり、より好ましい上限は35cmであり、さらに好ましい上限は20cmであり、特に好ましい上限は10cmであり、より好ましい下限は1cmであり、さらに好ましい下限は2cmである。ガスケットのシール面積が小さい方が、蓄電体の内部と外部との距離が大きくなり、電解液の透過をより一層抑制することができるが、蓄電体の小型が求められていることから、従来のガスケットでは、シール面積を小さくしつつ、電解液の透過を十分に抑制することが難しい。本開示で用いるガスケットは、共重合体のFAVE単位の含有量、メルトフローレート(MFR)および官能基数を適切に調整されていることから、このようにガスケットのシール面積を小さくすることにより、蓄電体の小型化を達成しながら、電解液の透過をより一層抑制することができる。
【0094】
本開示において、ガスケットのシール面積とは、蓄電体の密閉に寄与する部分の面積であり、図2に示すガスケット6においては、当接面61A、61B、62Aおよび62Bの合計の面積である。
【0095】
ガスケット6を形成する共重合体のFAVE単位の含有量、メルトフローレート(MFR)および官能基数を適切に調整することに加えて、ガスケットの圧縮変形率を適切に調整することにより、蓄電体の密閉性を一層高めることができる。ガスケットの圧縮変形率としては、好ましくは20~60%である。ガスケットの圧縮変形率は、次式により算出できる。
圧縮変形率(%)=[(ガスケットが圧縮される前の厚み)-(ガスケットが圧縮された状態の厚み)]/(ガスケットが圧縮される前の厚み)×100
【0096】
一実施形態において、図3および図4に示すガスケットは、次の大きさを有している。
a:4.0mm
b:9.4mm
c:10.6mm
d:0.5mm
e:0.6mm
f:0.6mm
g:2.8mm
h:2.2mm
【0097】
図1および図2では、蓄電体として密閉型の角型二次電池について説明したが、本開示の蓄電体は、その他の蓄電体であっても構わない。蓄電体としては、一次電池であってもよく、蓄電池(二次電池)または蓄電素子であってもよい。蓄電体は非水電解液電池であってもよい。非水電解液電池には、電解液および発電素子を備える電池が全て含まれる。非水電解液電池としては、たとえば、リチウムイオン一次電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタなどが挙げられる。
【0098】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例
【0099】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0100】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0101】
(単量体単位の含有量)
各単量体単位の含有量は、NMR分析装置(たとえば、ブルカーバイオスピン社製、AVANCE300 高温プローブ)により測定した。
【0102】
(メルトフローレート(MFR))
ASTM D1238に従って、メルトインデクサーG-01(東洋精機製作所社製)を用いて、372℃、5kg荷重下で内径2.1mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)を求めた。
【0103】
(官能基数)
共重合体のペレットを、コールドプレスにより成形して、厚さ0.25~0.3mmのフィルムを作製した。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析装置〔FT-IR(Spectrum One、パーキンエルマー社製)〕により40回スキャンし、分析して赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得た。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って試料における炭素原子1×10個あたりの官能基数Nを算出した。
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
参考までに、本開示における官能基について、吸収周波数、モル吸光係数および補正係数を表2に示す。モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT-IR測定データから決定したものである。
【0104】
【表2】
【0105】
(融点)
示差走査熱量計(商品名:X-DSC7000、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、昇温速度10℃/分で200℃から350℃までの1度目の昇温を行い、続けて、冷却速度10℃/分で350℃から200℃まで冷却し、再度、昇温速度10℃/分で200℃から350℃までの2度目の昇温を行い、2度目の昇温過程で生ずる溶融曲線ピークから融点を求めた。
【0106】
実験例1
174L容積のオートクレーブに純水49Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン40.7kgとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)1.95kg、メタノール3.40kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、テトラフルオロエチレン(TFE)を0.64MPaまで圧入した後、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.041kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.058kg追加して19時間重合を継続した。TFEを放出して、オートクレーブ内を大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
【0107】
得られた粉末を、スクリュー押出機(商品名:PCM46、池貝社製)により360℃にて溶融押出して、TFE/PPVE共重合体のペレットを得た。得られたペレットを用いて上記した方法によりPPVE含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0108】
得られたペレットを、真空振動式反応装置 VVD-30(大川原製作所社製)に入れ、210℃に昇温した。真空引き後、Nガスで20体積%に希釈したFガスを大気圧まで導入した。Fガス導入時から0.5時間後、いったん真空引きし、再度Fガスを導入した。さらにその0.5時間後、再度真空引きし、再度Fガスを導入した。以降、上記Fガス導入及び真空引きの操作を1時間に1回行い続け、210℃の温度下で10時間反応を行った。反応終了後、反応器内をNガスに十分に置換して、フッ素化反応を終了した。フッ素化したペレットを用いて、上記した方法により、各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0109】
実験例2
174L容積のオートクレーブに純水34.0Lを投入し、充分に窒素置換を行った後、パーフルオロシクロブタン30.4kgとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)0.73kg、メタノール3.49kgとを仕込み、系内の温度を35℃、攪拌速度を200rpmに保った。次いで、テトラフルオロエチレン(TFE)を0.60MPaまで圧入した後、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液0.060kgを投入して重合を開始した。重合の進行とともに系内圧力が低下するので、TFEを連続供給して圧力を一定にし、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.040kg追加して20時間重合を継続した。TFEを放出して、オートクレーブ内を大気圧に戻した後、得られた反応生成物を水洗、乾燥して30kgの粉末を得た。
【0110】
得られた粉末を、スクリュー押出機(商品名:PCM46、池貝社製)により360℃にて溶融押出して、TFE/PPVE共重合体のペレットを得た。得られたペレットを用いて上記した方法によりPPVE含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0111】
得られたペレットを、真空振動式反応装置 VVD-30(大川原製作所社製)に入れ、160℃に昇温した。真空引き後、Nガスで20体積%に希釈したFガスを大気圧まで導入した。Fガス導入時から0.5時間後、いったん真空引きし、再度Fガスを導入した。さらにその0.5時間後、再度真空引きし、再度Fガスを導入した。以降、上記Fガス導入及び真空引きの操作を1時間に1回行い続け、160℃の温度下で5時間反応を行った。反応終了後、反応器内をNガスに十分に置換して、フッ素化反応を終了した。フッ素化したペレットを用いて、上記した方法により、各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0112】
実験例3
純水を27.0L、PPVEを1.20kg、メタノールを3.00kgに変更し、TFEを0.57MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.014kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.040kg追加し、重合時間を21時間に変更し、30kgの粉末を得た以外は、実験例2と同様にして、フッ素化したペレットを得た。
結果を表3に示す。
【0113】
実験例4
純水を26.6L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを0.77kg、メタノールを2.40kgに変更し、TFEを0.58MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.011kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.031kg追加し、重合時間を9時間に変更し、15kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0114】
実験例5
純水を26.6L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを0.77kg、メタノールを3.30kgに変更し、TFEを0.58MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.011kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.031kg追加し、重合時間を10時間に変更し、15kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0115】
実験例6
純水を26.6L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを0.77kg、メタノールを5.10kgに変更し、TFEを0.58MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.011kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.031kg追加し、重合時間を11時間に変更し、15kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0116】
実験例7
純水を26.6L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを1.02kg、メタノールを2.05kgに変更し、TFEを0.58MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.015kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.038kg追加し、重合時間を8時間に変更し、15kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0117】
実験例8
純水を26.6L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを0.92kg、メタノールを4.00kgに変更し、TFEを0.58MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.021kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.035kg追加し、重合時間を8時間に変更し、15kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0118】
実験例9
純水を34.0L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを0.61kg、メタノールを3.74kgに変更し、TFEを0.60MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.060kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.035kg追加し、30kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0119】
実験例10
純水を26.6L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを1.16kg、メタノールを1.71kgに変更し、TFEを0.58MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.044kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.042kg追加し、重合時間を8時間に変更し、15kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0120】
実験例11
純水を34L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを0.98kg、メタノールを1.30kgに変更し、TFEを0.60MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.060kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.052kg追加し、重合時間を23時間に変更し、30kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0121】
実験例12
純水を26.6L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを0.81kg、メタノールを0.14kgに変更し、TFEを0.58MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.010kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.032kg追加し、重合時間を4時間に変更し、15kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0122】
実験例13
純水を26.6L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを1.12kg、メタノールを0.09kgに変更し、TFEを0.58MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.010kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.040kg追加し、重合時間を5.5時間に変更し、15kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0123】
実験例14
純水を26.6L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを0.77kg、メタノールを6.40kgに変更し、TFEを0.58MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.011kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.031kg追加し、重合時間を12時間に変更し、15kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0124】
比較実験例1
メタノールを3.80kgに変更し、30kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化していないペレットを得た。結果を表3に示す。
【0125】
比較実験例2
純水を34L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを0.73kg、メタノールを3.84kgに変更し、TFEを0.60MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.060kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.040kg追加し、重合時間を20時間に変更し、30kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化していないペレットを得た。結果を表3に示す。
【0126】
比較実験例3
PPVEを1.38kg、メタノールを4.00kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.047kg追加し、重合時間を18時間に変更し、30kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化していないペレットを得た。結果を表3に示す。
【0127】
比較実験例4
純水を34L、PPVEを0.61kg、メタノールを4.34kgに変更し、TFEを0.60MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.060kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.035kg追加し、重合時間を20時間に変更し、30kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0128】
比較実験例5
純水を34L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを0.78kg、メタノールを4.70kgに変更し、TFEを0.60MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.060kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.043kg追加し、重合時間を23時間に変更し、30kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0129】
比較実験例6
PPVEを2.29kg、メタノールを3.30kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.065kg追加し、重合時間を19時間に変更し、30kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0130】
比較実験例7
PPVEを3.15kg、メタノールを3.30kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.082kg追加し、重合時間を20時間に変更し、30kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化したペレットを得た。結果を表3に示す。
【0131】
比較実験例8
純水を26.6L、パーフルオロシクロブタンを30.4kg、PPVEを1.12kgに変更し、メタノールを加えず、TFEを0.58MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.010kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.040kg追加し、重合時間を4時間に変更し、15kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化していないペレットを得た。結果を表3に示す。
【0132】
比較実験例9
純水を53.8L、パーフルオロシクロブタンを41.7kg、PPVEを0.31kg、メタノールを1.73kgに変更し、TFEを0.50MPaまで圧入し、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネートの50%メタノール溶液を0.220kgに変更し、PPVEをTFEの供給1kg毎に0.016kg追加し、重合時間を7時間に変更し、30kgの粉末を得た以外は、実験例1と同様にして、フッ素化していないペレットを得た。結果を表3に示す。
【0133】
【表3】
【0134】
次に得られたペレットを用いて、下記の特性を評価した。結果を表4に示す。
【0135】
(金属腐食試験)
ペレット20gをガラス容器(50mlスクリュー管)に入れ、HPM38(Crめっき)またはHPM38(Niめっき)により形成された金属柱(5mm四方の四角形状、長さ30mm)を、ガラス容器にペレットに触れないようにぶら下げた。そして、ガラス容器にアルミホイルで蓋をした。ガラス容器をこの状態のままオーブンに入れ、380℃で3時間加熱した。その後、加熱したガラス容器をオーブンから取り出し、室温まで冷却を行い、金属柱表面の腐食の程度を目視で観察した。腐食程度は次の基準で判定を行った。
○:腐食が観察されない
△:わずかに腐食が観察される
×:腐食が観察される
【0136】
(電解液浸漬試験)
金型(内径120mm、高さ38mm)に、上記ペレットを約5g投入した状態で、熱板プレスにて370℃で20分間溶融後、圧力1MPa(樹脂圧)で加圧しながら水冷して、厚み約0.2mmの成形品を作製した。その後、得られた成形品を用いて、15mm四方の試験片を作製した。
【0137】
20mLガラス製サンプル瓶に、得られた試験片10枚、および、2gの電解液(ジメチルカーボネート(DMC))を入れて、サンプル瓶の蓋を閉めた。サンプル瓶を、80℃の恒温槽に入れて、144時間放置することにより、試験片を電解液に浸漬させた。その後、サンプル瓶を恒温槽から取り出し、室温まで冷却してから、サンプル瓶から試験片を取り出した。試験片を取り出した後に残った電解液を、サンプル瓶に入った状態のままで、25℃で管理された部屋で24時間風乾し、超純水2gを加えた。得られた水溶液を、イオンクロマトシステムの測定セルに移し、この水溶液のフッ素イオン量を、イオンクロマトグラフシステム(Thermo Fisher Scientific社製 Dionex ICS-2100)により測定した。
【0138】
(圧縮永久歪み率(CS))
圧縮永久歪み率の測定は、ASTM D395またはJIS K6262に記載の方法に準じた。
【0139】
金型(内径13mm、高さ38mm)に、上記ペレットを約2g投入した状態で、熱板プレスにて370℃で30分間溶融後、圧力0.2MPa(樹脂圧)で加圧しながら水冷して、高さ約8mmの成形品を作製した。その後、得られた成形品を切削することにより、外径13mm、高さ6mmの試験片を作製した。作製した試験片を、圧縮装置を用いて、常温で、圧縮変形率50%まで圧縮(つまり、高さ6mmの試験片を、高さ3mmまで圧縮)した。
【0140】
次に、圧縮した試験片を圧縮装置に固定したまま、電気炉内に静置し、65℃で72時間放置した。電気炉から圧縮装置を取り出し、室温まで冷却後、試験片を取り外した。回収した試験片を、室温で、30分放置した後、回収した試験片の高さを測定し、次式により、圧縮永久歪み率を求めた。
圧縮永久歪み率(%)=(t-t)/(t-t)×100
:試験片の元の高さ(mm)
:スペーサの高さ(mm)
:圧縮装置から取り外した試験片の高さ(mm)
上記の試験においては、t=6mm、t=3mmである。
【0141】
(圧縮永久歪み試験)
圧縮永久歪み率の測定と同様にして、試験片を作製した。作製した試験片を、圧縮装置を用いて、常温で、圧縮変形率50%まで圧縮(つまり、高さ6mmの試験片を、高さ3mmまで圧縮)した。圧縮した試験片を圧縮装置に固定したまま、電気炉内に静置し、150℃で18時間放置した。電気炉から圧縮装置を取り出し、室温まで冷却後、試験片を取り外した。回収した試験片を、室温で、30分放置した後、回収した試験片を観察し、以下の基準で評価した。
無:試験片にクラックが観察されなかった。
有:試験片にクラックが観察された。
【0142】
回収した試験片の高さを測定し、次式により復元量を求めた。
復元量(mm)=t2-t1
:スペーサの高さ(mm)
:圧縮装置から取り外した試験片の高さ(mm)
上記の試験においては、t=3mmである。
【0143】
(150℃での貯蔵弾性率(E’))
DVA-220(アイティー計測制御社製)を用いた動的粘弾性測定を行い求めた。サンプル試験片として、長さ25mm、幅5mm、厚み0.2mmの圧縮成形シートを用いて、昇温速度2℃/分、周波数10Hz条件下で、30℃~250℃の範囲で測定を行い、150℃の貯蔵弾性率(MPa)を読み取った。
【0144】
(150℃での面圧)
150℃での圧縮永久歪み試験の結果と150℃での貯蔵弾性率測定の結果から、次式により150℃面圧を求めた。
150℃面圧(MPa)=(t-t)/t×E’
:スペーサの高さ(mm)
:圧縮装置から取り外した試験片の高さ(mm)
E’:150℃での貯蔵弾性率(MPa)
【0145】
(電解液透過試験)
射出成形機(住友重機械工業社製、SE50EV-A)を使用し、シリンダ温度を350~385℃、金型温度を150~200℃として、共重合体を射出成形することにより、外径Φ17.7mm、内径Φ14.3mm、厚み1.6mmtのガスケットを得た。
【0146】
実験例12および13の共重合体は射出成形が困難であり、これらの共重合体を射出成形することによりガスケットを作製できなかったことから、次の方法によりガスケットを作製した。金型(300mm×300mm)に、共重合体のペレットを投入し、電気炉内にて350℃で1時間予熱した後、1MPaGで1分間加圧して300mm×300mm×厚さ25mmのシートとし、室温まで放冷してサンプルシートを得た(表4では「HP」(ヒートプレス)と記載する)。上記サンプルシートを外径Φ17.7mm、内径Φ14.3mm、厚み1.6mmtに切削加工し、ガスケットを得た。
【0147】
図5に示すように、アルミ合金製のカップ51に電解液52を2g入れた。電解液は、エチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を含有し、ECとDECとの体積比(EC/DEC)が30/70(体積%)である。カップ51とガスケット圧縮治具53との間にガスケット6を組み込み、蓋54をボルト55で締めて、ガスケット6を圧縮した。蓋54とカップ51との間にスペーサ56を設置し、ガスケット6の圧縮変形率を50%に調整した。このようにして得られた透過試験治具50の質量を測定した。透過試験治具50を60℃に加熱した恒温槽に投入し、1000時間放置後に取出し、室温で2時間放置後に質量を測定した。次式により電解液透過量を求めた。この操作を5回繰り返し、電解液透過量の平均値を求めた。表4には平均値を記載する。
電解液透過量(g/1000h)=(加熱前の透過試験治具の質量)-(加熱後の透過試験治具の質量)
【0148】
(射出成形性)
電解液透過試験において作製したガスケットを目視にて観察し、射出成形性を以下の基準で評価した。
〇:ガスケットにバリが観られない
△:ガスケットに1mm以下の面積の小さなバリが観られる
×:ガスケットに1mmを超える面積の大きなバリが観られる
【0149】
【表4】
【符号の説明】
【0150】
10 蓄電体
1 外装缶
2 蓋
3 底面
4A 第1の外部端子
4B 第2の外部端子
5 栓
6 ガスケット
61 円筒部
62 フランジ部
63 側壁部
7 絶縁部材
50 透過試験治具
図1
図2
図3
図4
図5