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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】遠心送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20240502BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
F04D29/44 U
F04D29/66 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022046946
(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公開番号】P2023140892
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】東田 匡史
(72)【発明者】
【氏名】岩田 透
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 明楠
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/139732(WO,A1)
【文献】特開2003-035298(JP,A)
【文献】特開昭60-132098(JP,A)
【文献】特開2008-267242(JP,A)
【文献】米国特許第05570996(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車(2)と、前記羽根車(2)を収容するスクロールケーシング(3)と、を備える、遠心送風機(1)であって、
前記羽根車(2)は、側面の開口部(15)から気体を吸い込み遠心方向へ前記気体を送り出すように構成され、
前記スクロールケーシング(3)は、前記気体を吸い込む吸込口(25)と、前記羽根車(2)が送り出す前記気体を吹き出す吹出口(24)と、前記羽根車(2)の外周に沿うように設けられる周壁(23)と、前記周壁(23)に沿って流れる前記気体を前記吹出口(24)に導く舌部(26)と、を備え、
前記スクロールケーシング(3)の前記周壁(23)は、前記舌部(26)から連続して延びる第1平面部(31)と、前記第1平面部(31)から前記羽根車(2)の回転方向に進んだ位置に設けられる第2平面部(32)と、を有し、前記周壁(23)に沿う流路において、前記羽根車(2)の中心(CA)から前記周壁(23)の内周面(23C)までの距離と前記羽根車(2)の外周面との間の距離である間隔(CL)が前記第2平面部(32)上で最短となるように、構成され、
前記間隔(CL)に関して、
前記羽根車(2)の中心(CA)から前記第1平面部(31)に下ろした第1垂線(L1)の長さから前記羽根車(2)の半径(R)を引いた値が、第1間隔(CL1)と定義され、
前記羽根車(2)の中心(CA)から前記第2平面部(32)に下ろした第2垂線(L2)の長さから前記羽根車(2)の前記半径(R)を引いた値が、第2間隔(CL2)と定義されるとき、
前記第2間隔(CL2)に対する前記第1間隔(CL1)の比は、1.5以上2.5以下であり、
前記羽根車(2)の回転方向における前記第1垂線(L1)から前記第2垂線(L2)までの角度(A2)は、20度以上40度以下の角度である、
遠心送風機。
【請求項2】
羽根車(2)と、前記羽根車(2)を収容するスクロールケーシング(3)と、を備える、遠心送風機(1)であって、
前記羽根車(2)は、側面の開口部(15)から気体を吸い込み遠心方向へ前記気体を送り出すように構成され、
前記スクロールケーシング(3)は、前記気体を吸い込む吸込口(25)と、前記羽根車(2)が送り出す前記気体を吹き出す吹出口(24)と、前記羽根車(2)の外周に沿うように設けられる周壁(23)と、前記周壁(23)に沿って流れる前記気体を前記吹出口(24)に導く舌部(26)と、を備え、
前記スクロールケーシング(3)の前記周壁(23)は、前記舌部(26)から連続して延びる第1平面部(31)と、前記第1平面部(31)から前記羽根車(2)の回転方向に進んだ位置に設けられる第2平面部(32)と、を有し、
記周壁(23)に沿う流路において、前記羽根車(2)の中心(CA)から前記周壁(23)の内周面(23C)までの距離と前記羽根車(2)の外周面との間の距離は、間隔(CL)と定義され、
前記間隔(CL)に関して、
前記羽根車(2)の中心(CA)から前記第1平面部(31)に下ろした第1垂線(L1)の長さから前記羽根車(2)の半径(R)を引いた値が、第1間隔(CL1)と定義され、
前記羽根車(2)の中心(CA)から前記第2平面部(32)に下ろした第2垂線(L2)の長さから前記羽根車(2)の前記半径(R)を引いた値が、第2間隔(CL2)と定義され、
前記羽根車(2)の回転方向における前記第1垂線(L1)から前記第2垂線(L2)までの角度(A1)は、80度以上110度以下の角度であり、
前記スクロールケーシング(3)の前記周壁(23)は、前記周壁(23)の内周面(23C)に沿う前記間隔(CL)のうちで前記第2平面部(32)上での前記間隔(CL)が最短となるように、構成され、かつ、前記第2間隔(CL2)に対する前記第1間隔(CL1)の比は、1.5よりも大きく、かつ、2.5以下であり、
前記羽根車(2)の翼の個数は、60個以上である、
遠心送風機。
【請求項3】
羽根車(2)と、前記羽根車(2)を収容するスクロールケーシング(3)と、を備える、遠心送風機(1)であって、
前記羽根車(2)は、側面の開口部(15)から気体を吸い込み遠心方向へ前記気体を送り出すように構成され、
前記スクロールケーシング(3)は、前記気体を吸い込む吸込口(25)と、前記羽根車(2)が送り出す前記気体を吹き出す吹出口(24)と、前記羽根車(2)の外周に沿うように設けられる周壁(23)と、前記周壁(23)に沿って流れる前記気体を前記吹出口(24)に導く舌部(26)と、を備え、
前記スクロールケーシング(3)の前記周壁(23)は、前記舌部(26)から連続して延びる第1平面部(31)と、前記第1平面部(31)から前記羽根車(2)の回転方向に進んだ位置に設けられる第2平面部(32)と、を有し、
記周壁(23)に沿う流路において、前記羽根車(2)の中心(CA)から前記周壁(23)の内周面(23C)までの距離と前記羽根車(2)の外周面との間の距離は、間隔(CL)と定義され、
前記間隔(CL)に関して、
前記羽根車(2)の中心(CA)から前記第1平面部(31)に下ろした第1垂線(L1)の長さから前記羽根車(2)の半径(R)を引いた値が、第1間隔(CL1)と定義され、
前記羽根車(2)の中心(CA)から前記第2平面部(32)に下ろした第2垂線(L2)の長さから前記羽根車(2)の前記半径(R)を引いた値が、第2間隔(CL2)と定義され、
前記羽根車(2)の回転方向における前記第1垂線(L1)から前記第2垂線(L2)までの角度(A2)は、20度以上40度以下の角度であり、
前記スクロールケーシング(3)の前記周壁(23)は、前記周壁(23)の内周面(23C)に沿う前記間隔(CL)のうちで前記第2平面部(32)上での前記間隔(CL)が最短となるように、構成され、かつ、前記第2間隔(CL2)に対する前記第1間隔(CL1)の比は、1.5以上2.5以下であり、
前記羽根車(2)の翼の個数は、60個以上である、
遠心送風機。
【請求項4】
前記羽根車(2)の翼の個数は、60個以上である、
請求項1に記載の遠心送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遠心送風機(以下では、従来型の遠心送風機という。)は、例えば、排気通路および給気通路に設けられる。排気通路および給気通路においてフィルタが目詰まりすることによって遠心送風機に加わる負荷が増加すると、従来型の遠心送風機は、サージングを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/146015号
【文献】特開2003-35298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の遠心送風機は、小風量域で高静圧特性を有する。特許文献1に記載の遠心送風機は、スクロールケーシング内の通路の途中で通路が狭くなる狭窄部(特許文献1では、最接近部)を有する。この狭窄部において異音が発生する虞がある。
【0005】
一方、遠心送風機について異音抑制に関する技術がある(例えば、特許文献2)。しかし、この技術は、従来型の遠心送風機に対する技術であるため、小風量域で高静圧特性を有する遠心送風機に対してサージング抑制の効果があるかは不明である。このように、小風量域で高静圧特性を有する遠心送風機において、異音抑制とサージング抑制の両立に関して改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決する遠心送風機は、羽根車と、前記羽根車を収容するスクロールケーシングと、を備える、遠心送風機であって、前記羽根車は、側面の開口部から気体を吸い込み遠心方向へ前記気体を送り出すように構成され、前記スクロールケーシングは、前記気体を吸い込む吸込口と、前記羽根車が送り出す前記気体を吹き出す吹出口と、前記羽根車の外周に沿うように設けられる周壁と、前記周壁に沿って流れる前記気体を前記吹出口に導く舌部と、を備え、前記スクロールケーシングの前記周壁は、前記舌部から連続して延びる第1平面部と、前記第1平面部から前記羽根車の回転方向に進んだ位置に設けられる第2平面部と、を有し、前記周壁に沿う流路において、前記羽根車の中心から前記周壁の内周面までの距離と前記羽根車の外周面との間の距離である間隔が前記第2平面部上で最短となるように、構成される。
【0007】
この構成によれば、スクロールケーシングの周壁において、舌部よりも羽根車の回転方向に進んだ部分に、流路における間隔の最短部が設けられる。このため、舌部付近の間隔は最短部付近の間隔よりも大きい。これによって、舌部付近の乱れが抑制されるため、サージングの発生を抑制できる。一方、舌部から最短部までの流路に気流の淀みが生じる虞がある。気流の淀みは異音の発生源になる。この点、上記構成によれば、舌部に第1平面部が設けられるとともに最短部に第2平面部が設けられることによって、舌部から最短部までの範囲において気流が整流されて、気流の淀みが解消される。このようにして、サージングを抑制でき、かつ、異音の発生を抑制できる。
【0008】
上記遠心送風機において、前記間隔に関して、前記羽根車の中心から前記第1平面部に下ろした第1垂線の長さから前記羽根車の半径を引いた値が、第1間隔と定義され、前記羽根車の中心から前記第2平面部に下ろした第2垂線の長さから前記羽根車の前記半径を引いた値が、第2間隔と定義されるとき、前記第2間隔に対する前記第1間隔の比は、1.5以上2.5以下である。
【0009】
第2間隔に対する第1間隔の比が2.5よりも大きい場合、舌部から最短部までの流路の窄み方が大き過ぎるため、最短部付近において気流に淀みが生じやすくなり、異音が発生し易くなる虞がある。第2間隔に対する第1間隔の比が1.5よりも小さい場合、舌部から最短部までの流路の窄み方が小さい。この場合、流路の入口である舌部付近の間隔が最短部の間隔に近い大きさとなる。このため、舌部から最短部までの流路が狭くなるため、気体が流れ難くなる。この結果、舌部付近において乱流が生じ易くなる。このようなことから、サージングの抑制効果が小さくなる。
【0010】
この点、上記構成によれば、舌部付近の乱流の形成が抑制されるとともに、最短部付近において気流に淀みが形成され難くなるため、サージングおよび異音の発生を効果的に抑制できる。
【0011】
上記遠心送風機において、前記羽根車の回転方向における前記第1垂線から前記第2垂線までの角度は、80度以上110度以下の角度である。この構成によれば、遠心送風機は、上記角度が80度よりも小さいまたは110度よりも大きい場合に比べて、高い静圧特性を有する。
【0012】
上記遠心送風機において、前記羽根車の回転方向における前記第1垂線から前記第2垂線までの角度は、20度以上40度以下の角度である。この構成によれば、遠心送風機は、上記角度が20度よりも小さいまたは40度よりも大きい場合に比べて、高い静圧効率を有する。
【0013】
上記遠心送風機において、前記羽根車の翼の個数は、60個以上である。従来型の遠心送風機の場合、小風量域(高負荷領域)では、翼の個数の増大による静圧の増大効果は乏しい。これに対して、本開示の遠心送風機の場合、風量-静圧特性に関して小風量域において翼の個数の増大による静圧の増大効果がある。このため、上記構成の遠心送風機によれば、40個の翼を有する遠心送風機に比べて、小風量域における静圧が高い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態にかかる遠心送風機の側面図である。
図2図1の2-2線に沿う遠心送風機の断面図である。
図3図2の3-3線に沿う遠心送風機の断面図である。
図4】本実施形態および参考例の遠心送風機について、風量-静圧特性を示す図である。
図5】本実施形態にかかる遠心送風機について、翼の個数-静圧特性を示す図である。
図6】遠心送風機の変形例について、スクロールケーシングの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図5を参照して、遠心送風機1について説明する。遠心送風機1は、シロッコファン、リミットロードファン、および、ターボファンを含む。本実施形態では、遠心送風機1の一例としてシロッコファンを挙げる。遠心送風機1は、空気調和機または送風機に設けられる。本実施形態において、気体は、空気である。気体は、空気、アルゴンガス、酸素ガス、および、窒素ガスを含む。本実施形態において、遠心送風機1を軸部11の中心軸心Cに沿う方向から見ることを「側面視」という。
【0016】
<遠心送風機の構成>
図1に示されるように、遠心送風機1は、羽根車2と、羽根車2を収容するスクロールケーシング3と、を備える。
【0017】
<羽根車>
羽根車2は、側面の開口部15から気体を吸い込み遠心方向へ気体を送り出すように構成される。
【0018】
図1および図2に示されるように、羽根車2は、軸部11と、軸部11に固定されるベース部12と、ベース部12に設けられる複数の翼13と、複数の翼13を連結するリング部14と、を備える。軸部11は、モータ40の出力軸に固定される。ベース部12は、軸部11の中心軸心Cを中心とする円盤に構成される。複数の翼13は、ベース部12の外周縁に沿って所定間隔を空けて配列される。複数の翼13それぞれは、翼13の長手方向が軸部11に沿うように配置される。複数の翼13それぞれにおいて、第1端13Aはベース部12に接続され、第1端13Aの反対側の第2端13Bは、リング部14に接続される。羽根車2は、開口部15を有する(図3参照)。開口部15は、リング部14によって囲まれる。開口部15は、側面視において、羽根車2がスクロールケーシング3に収容された状態で、スクロールケーシング3の吸込口25に重なる。開口部15は、スクロールケーシング3の外側の空間に開く。
【0019】
羽根車2の翼13の個数は、40個以上である。一例では、羽根車2の翼13の個数は、60個以上である。羽根車2の翼13の個数は、素数であることが好ましい。例えば、羽根車2の翼13の個数は、41個、51個、または61個である。
【0020】
本実施形態では、羽根車2の半径Rは、軸部11の中心軸心Cと、径方向における翼13の外端との間の距離として定義される。また、本実施形態では、遠心送風機1における上流は、流路28において舌部26に近い部分を示す。下流は、流路28において吹出口24に近い部分を示す。
【0021】
<スクロールケーシング>
図3に示されるように、スクロールケーシング3は、羽根車2を収容する。スクロールケーシング3は、第1側壁21と、第1側壁21と同じ形状の第2側壁22と、周壁23と、を備える。さらに、スクロールケーシング3は、吹出口24と、吸込口25と、舌部26と、を備える。
【0022】
第1側壁21および第2側壁22は、スクロールケーシング3の側面を構成する。周壁23は、羽根車2の外周に沿うように設けられる。具体的には、周壁23は、第1側壁21と第2側壁22との間に配置される。周壁23は、第1側壁21の端縁および第2側壁22の端縁に沿うように設けられる。周壁23は、第1側壁21と第2側壁22とを繋ぐ。周壁23は、軸部11の中心軸心Cを中心として、渦巻き状に延びる。
【0023】
周壁23によって、周壁23と羽根車2との間に気体の流路28が構成される。流路断面積は、軸部11の中心軸心Cを含む面によって流路28が切断されたときの断面の面積を示す。流路断面積は、第1平面部31の下流端31Bから第2平面部32の上流端32Aまで徐々に減少する。流路断面積は、第2平面部32の下流端32Bから吹出口24に向かって徐々に拡大する。
【0024】
吸込口25は、気体を吸い込む部分である。吸込口25は、第1側壁21または第2側壁22に設けられる。本実施形態では、吸込口25は、第1側壁21に設けられる。吸込口25は、ベルマウスによって構成される。吸込口25は、円形に形成される。吸込口25は、羽根車2の開口部15と同じ程度の大きさに形成される。吸込口25の中心は、軸部11の中心軸心Cと同じ位置にある。
【0025】
吹出口24は、羽根車2が送り出す気体を吹き出す部分である。吹出口24は、筒状に構成される。吹出口24は、周壁23の下流端23Bに設けられる。舌部26は、周壁23に沿って流れる気体を吹出口24に導く。舌部26は、周壁23の上流端23Aに繋がる。周壁23の上流端23Aは、第1平面部31の上流端31Aと同じ部分である。
【0026】
周壁23は、第1平面部31と、第2平面部32とを有する。第1平面部31は、舌部26から連続して延びる。第1平面部31は、羽根車2の中心CAから延びる直線に直交するように構成される。第2平面部32は、第1平面部31から羽根車2の回転方向に進んだ位置に設けられる。第2平面部32は、羽根車2の中心CAから延びる直線に直交するように構成される。
【0027】
周壁23は、流路28において、間隔CLが第2平面部32上で最短となるように構成される。間隔CLは、羽根車2の中心CAから周壁23の内周面23Cまでの距離と羽根車2の外周面2Aとの間の距離として定義される。羽根車2の外周面2Aは、複数の翼13の外端を結ぶことによって形成される面である。実質的に、間隔CLは、径方向に沿う線において、羽根車2の中心CAから周壁23の内周面23Cまでの距離から羽根車2の半径Rを引いた値と等しい。
【0028】
一例では、第2平面部32上において間隔CLが最短となる最短部33は、第2平面部32の上流端32Aと下流端32Bとの間にある。最短部33と第2平面部32の下流端32Bとの間の距離は、最短部33と第2平面部32の上流端32Aとの間の距離よりも大きい。第2平面部32上において最短部33は、第2平面部32の上流端32Aにあってもよい。第2平面部32上において最短部33は、第2平面部32の下流端32Bにあってもよい。
【0029】
一例では、羽根車2の中心CAと第1平面部31の上流端31Aとを結ぶ線と、羽根車2の中心CAと第1平面部31の下流端31Bとを結ぶ線との間の角度A3は、5度以上20度以下である。一例では、羽根車2の中心CAと第2平面部32の上流端32Aとを結ぶ線と、羽根車2の中心CAと第2平面部32の下流端32Bとを結ぶ線との間の角度A4は、5度以上30度以下である。
【0030】
側面視において、羽根車2の中心CAから第1平面部31に下ろした線は第1垂線L1と定義される。側面視において、羽根車2の中心CAから第2平面部32に下ろした線は第2垂線L2と定義される。
【0031】
第2間隔CL2に対する第1間隔CL1の比は、1.5以上2.5以下であることが好ましい。第1間隔CL1は、第1垂線L1の長さから羽根車2の半径Rを引いた値として定義される。第2間隔CL2は、第2垂線L2の長さから羽根車2の半径Rを引いた値として定義される。
【0032】
第1垂線L1は、舌部26の近くを通る。第2垂線L2は、第1垂線L1との関係で次のように規定される。羽根車2の回転方向における第1垂線L1から第2垂線L2までの角度A1は、80度以上110度以下の角度である。
【0033】
<遠心送風機の特性>
図4および図5を参照して、本実施形態の遠心送風機1の特性を説明する。
図4は、遠心送風機1について、静圧-風量特性を示す。図4において黒丸を結ぶ線は、61個の翼13を有する本実施形態の遠心送風機1の特性を示す。図4において白丸を結ぶ線は、41個の翼13を有する本実施形態の遠心送風機1の特性を示す。図4において黒四角を結ぶ線は、61個の翼13を有する参考例の遠心送風機の特性を示す。図4において白四角を結ぶ線は、41個の翼13を有する参考例の遠心送風機の特性を示す。参考例の遠心送風機は、次の点で本実施形態の遠心送風機1と異なる。参考例の遠心送風機は、第1平面部31を有する一方、第2平面部32を有しない。第2平面部32を有しない点以外について、参考例の遠心送風機は、本実施形態の遠心送風機1と同じ構造を有する。
【0034】
図4に示されるように、本実施形態の遠心送風機1は、参考例の遠心送風機に比べて、小風量域において静圧が高い。したがって、遠心送風機1が設置されるダクトにおいてフィルタに埃が溜まった状態となって遠心送風機1に負荷が高まる場合でも、サージングが生じ難く、または、サージング音が発生し難い。また、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)を備える装置の排気部にも、本実施形態の遠心送風機1を好適に使用され得る。
【0035】
図4に示されるように、参考例の遠心送風機では、翼13の個数を増大させたとしても小風量域では静圧の向上が見られない。これに対して、本実施形態の遠心送風機1では、翼13の個数を増大させると小風量域において静圧が向上する。このため、本実施形態の遠心送風機1では、翼13の個数の設定によって、小風量域における静圧特性を調整できる。
【0036】
図5は、本実施形態に関して、翼13の個数が異なる複数の遠心送風機1それぞれについて、風量が2リューベであるときの静圧を示す。横軸は、翼13の個数を示す。縦軸は、静圧の大きさを示す。図5に示されるように、本実施形態に係る遠心送風機1では、翼13の個数の増大とともに小風量域における静圧が高くなる。
【0037】
<作用>
本実施形態の作用を説明する。
スクロールケーシング3の吹出口24付近において、羽根車2から吹き出された気体は、直接舌部26に衝突し易い。このため、舌部26のまわりに乱流が生じ易い。本実施形態では、舌部26に繋がるように第1平面部31が設けられる。そして、流路28について、第1平面部31における間隔CLは、第2平面部32における間隔CLよりも大きい。舌部26は、従来型の遠心送風機に比べて羽根車2から遠い位置に配置される。このため、舌部26のまわりの乱流が軽減される。
【0038】
第1平面部31から第2平面部32まで経路において流路断面積は徐々に減少する。そうすると、第1平面部31から第2平面部32まで経路において羽根車2から吹き出された気体は、流路28の最短部33で淀むようになり、乱流が形成される。吸込口25から吹出口24に気体がスムーズに流れ難くなる場合、最短部33付近において異音が発生する。この点、本実施形態では、流路28の最短部33に第2平面部32が設けられる。これによって、気流の淀みが緩和される。また、第1平面部31が設けられていることによって、第1平面部31から第2平面部32まで経路において気体がスムーズに流れる。この結果、舌部26から最短部33までの範囲において気流が整流されて、気流の淀みが解消される。このようにして、サージングを抑制でき、かつ、異音の発生を抑制できる。
【0039】
<効果>
本実施形態の効果を説明する。
(1)遠心送風機1において、スクロールケーシング3の周壁23は、第1平面部31と、第2平面部32とを有する。第1平面部31は、舌部26から連続して延びる。第2平面部32は、第1平面部31から羽根車2の回転方向に進んだ位置に設けられる。周壁23は、流路28において、羽根車2の中心CAから周壁23の内周面23Cまでの距離と羽根車2の外周面2Aとの間の距離である間隔CLが第2平面部32上で最短となるように、構成される。
【0040】
この構成によれば、スクロールケーシング3の周壁23において、舌部26よりも羽根車2の回転方向に進んだ部分に、流路28における間隔CLの最短部33が設けられる。このため、舌部26付近の間隔CLは最短部33付近の間隔CLよりも大きい。これによって、舌部26付近の乱れが抑制されるため、サージングの発生を抑制できる。一方、舌部26から最短部33までの流路28に気流の淀みが生じる虞がある。気流の淀みは異音の発生源になる。この点、上記構成によれば、舌部26に第1平面部31が設けられるとともに最短部33に第2平面部32が設けられることによって、舌部26から最短部33までの範囲において気流が整流されて、気流の淀みが解消される。このようにして、サージングを抑制でき、かつ、異音の発生を抑制できる。
【0041】
(2)遠心送風機1において、第2間隔CL2に対する第1間隔CL1の比は、1.5以上2.5以下である。第2間隔CL2に対する第1間隔CL1の比が2.5よりも大きい場合、舌部26から最短部33までの流路28の窄み方が大き過ぎるため、最短部33付近において気流に淀みが生じやすくなり、異音が発生し易くなる虞がある。第2間隔CL2に対する第1間隔CL1の比が1.5よりも小さい場合、舌部26から最短部33までの流路28の窄み方が小さい。この場合、流路28の入口である舌部26付近の間隔CLが最短部33の間隔CLに近い大きさとなる。このため、舌部26から最短部33までの流路28が狭くなるため、気体が流れ難くなる。この結果、舌部26付近において乱流が生じ易くなる。このようなことから、サージングの抑制効果が小さくなる。この点、上記構成によれば、舌部26付近の乱流の形成が抑制されるとともに、最短部33付近において気流に淀みが形成され難くなるため、サージングおよび異音の発生を効果的に抑制できる。
【0042】
(3)遠心送風機1において、羽根車2の回転方向における第1垂線L1から第2垂線L2までの角度A1は、80度以上110度以下の角度である。この構成によれば、遠心送風機1は、上記角度A1が80度よりも小さいまたは110度よりも大きい場合に比べて、高い静圧特性を有する。
【0043】
(4)遠心送風機1において、羽根車2の翼13の個数は、60個以上である。従来型の遠心送風機の場合、小風量域(高負荷領域)では、翼13の個数の増大による静圧の増大効果は乏しい。なお、従来型の遠心送風機は、第1平面部31および第2平面部32を有しないものであって、舌部26から流路断面積が徐々に拡大するものである。従来型の遠心送風機について、翼13の個数の増大による静圧の増大の効果は、図4に示される参考例と同じであり、翼13の個数の増大による静圧の増大効果は乏しい。
【0044】
これに対して、本開示の遠心送風機1の場合、風量-静圧特性に関して小風量域において翼13の個数の増大による静圧の増大効果がある。このため、上記構成の遠心送風機1によれば、40個の翼13を有する遠心送風機1に比べて、小風量域における静圧が高い。
【0045】
(変形例)
本開示の遠心送風機1は、上記各実施の形態以外に、例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも二つの変形例を組み合わせた形態としてもよい。
【0046】
図6を参照して、遠心送風機1の変形例を説明する。本実施形態では、羽根車2の回転方向における第1垂線L1から第2垂線L2までの角度A1は、80度以上110度以下の角度である。これに対して、図6に示されるように、羽根車2の回転方向における第1垂線L1から第2垂線L2までの角度A2は、20度以上40度以下の角度に設定されてもよい。この構成によれば、遠心送風機1は、上記角度A2が20度よりも小さいまたは40度よりも大きい場合に比べて、高い静圧効率を有する。静圧効率は、風量×静圧/(60×軸動力)によって定義される。
【0047】
・以上、遠心送風機1について実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された遠心送風機1の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0048】
A1…角度、A2…角度、CL…間隔、CL1…第1間隔、CL2…第2間隔、L1…第1垂線、L2…第2垂線、R…半径、1…遠心送風機、2…羽根車、2A…外周面、3…スクロールケーシング、13…翼、15…開口部、23…周壁、23C…内周面、24…吹出口、25…吸込口、26…舌部、28…流路、31…第1平面部、32…第2平面部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6