(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F25B 7/00 20060101AFI20240502BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
F25B7/00 D
F25B1/00 331E
F25B1/00 361A
F25B1/00 371B
F25B1/00 101E
(21)【出願番号】P 2022566938
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2021043884
(87)【国際公開番号】W WO2022118844
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2020199796
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】井吉 悠太
(72)【発明者】
【氏名】山野井 喜記
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 久美子
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-139014(JP,A)
【文献】国際公開第2016/203624(WO,A1)
【文献】米国特許第06161391(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 7/00
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1冷媒が循環する回路であって、第1圧縮機(71)と、カスケード熱交換器(35)と、第1熱交換器(74)と、を有する第1回路(5a)と、
第2冷媒が循環する回路であって、第2圧縮機(21)と、前記カスケード熱交換器(35)と、第2熱交換器(52a、52b、52c)と、を有する第2回路(10)と、
を備え、
前記第1回路は、前記カスケード熱交換器と前記第1熱交換器を接続する第1流路(115、111、126)と、前記第1圧縮機の吸入流路(125)と、前記第1流路と前記吸入流路を接続するバイパス回路(104、134、144)と、前記バイパス回路に設けられる制御弁(104a、134a、144a)と、を有しており、
前記カスケード熱交換器が前記第1冷媒の放熱器として機能し前記第2冷媒の蒸発器として機能している際に、前記カスケード熱交換器の出口における前記第1冷媒の過冷却度に関する指標が所定の第1条件を満たした場合に、前記制御弁を開
き、
前記第1冷媒の温度圧力特性は、前記第2冷媒の温度圧力特性とは異なっており、
前記第1条件は、前記カスケード熱交換器における前記第1冷媒の圧力から把握される前記第1冷媒の温度と、前記カスケード熱交換器における前記第2冷媒の圧力から把握される前記第2冷媒の温度と、の温度差に基づいて判断される、
冷凍サイクルシステム(1)。
【請求項2】
第1冷媒が循環する回路であって、第1圧縮機(71)と、カスケード熱交換器(35)と、第1熱交換器(74)と、を有する第1回路(5a)と、
第2冷媒が循環する回路であって、第2圧縮機(21)と、前記カスケード熱交換器(35)と、第2熱交換器(52a、52b、52c)と、を有する第2回路(10)と、
を備え、
前記第1回路は、前記カスケード熱交換器と前記第1熱交換器を接続する第1流路(115、111、126)と、前記第1圧縮機の吸入流路(125)と、前記第1流路と前記吸入流路を接続するバイパス回路(104、134、144)と、前記バイパス回路に設けられる制御弁(104a、134a、144a)と、を有しており、
前記カスケード熱交換器が前記第1冷媒の放熱器として機能し前記第2冷媒の蒸発器として機能している際に、前記カスケード熱交換器の出口における前記第1冷媒の過冷却度に関する指標が所定の第1条件を満たした場合に、前記制御弁を開き、
前記カスケード熱交換器から流出する前記第1冷媒の温度と、前記カスケード熱交換器に流入する前記第2冷媒の温度と、の差が所定値以下であること、
前記第2圧縮機が吸入する前記第2冷媒の過熱度が所定値以下であること、
前記第2回路が前記第2熱交換器と前記カスケード熱交換器との間に第2膨張弁(36)を有しており、前記第2膨張弁は前記第2圧縮機に吸入される前記第2冷媒の過熱度に応じて弁開度が変化するものであり、前記第2膨張弁の開度が所定開度よりも小さいこと、
の少なくともいずれかを満たした場合に、前記第1条件が満たされる、
冷凍サイクルシステム(1)。
【請求項3】
第1冷媒が循環する回路であって、第1圧縮機(71)と、カスケード熱交換器(35)と、第1熱交換器(74)と、を有する第1回路(5a)と、
第2冷媒が循環する回路であって、第2圧縮機(21)と、前記カスケード熱交換器(35)と、第2熱交換器(52a、52b、52c)と、を有する第2回路(10)と、
を備え、
前記第1回路は、前記カスケード熱交換器と前記第1熱交換器を接続する第1流路(115、111、126)と、前記第1圧縮機の吸入流路(125)と、前記第1流路と前記吸入流路を接続するバイパス回路(104、134、144)と、前記バイパス回路に設けられる制御弁(104a、134a、144a)と、を有しており、
前記カスケード熱交換器が前記第1冷媒の放熱器として機能し前記第2冷媒の蒸発器として機能している際に、前記カスケード熱交換器の出口における前記第1冷媒の過冷却度に関する指標が所定の第1条件を満たした場合に、前記制御弁を開き、
前記第1条件を満たした場合に、前記第2圧縮機の回転数を低下させる、
冷凍サイクルシステム(1)。
【請求項4】
前記第1回路における前記第1冷媒の凝縮温度から、前記カスケード熱交換器を流出した前記第1冷媒の温度を差し引いて得られる値が所定値以上であること、
前記第1回路における高圧冷媒の圧力から前記第2回路における低圧冷媒の圧力を差し引いて得られる値が所定値以上であること、
前記第1回路における前記第1冷媒の凝縮温度から前記第2回路における前記第2冷媒の蒸発温度を差し引いて得られる値が所定値以上であること、
前記第1回路における前記第1冷媒の凝縮温度から前記カスケード熱交換器に流入する前記第2冷媒の温度を差し引いて得られる値が所定値以上であること、
の少なくともいずれかを満たした場合に、前記第1条件が満たされる、
請求項
3に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項5】
前記第1冷媒の温度圧力特性は、前記第2冷媒の温度圧力特性とは異なっており、
前記第1条件は、前記カスケード熱交換器における前記第1冷媒の圧力から把握される前記第1冷媒の温度と、前記カスケード熱交換器における前記第2冷媒の圧力から把握される前記第2冷媒の温度と、の温度差に基づいて判断される、
請求項
4に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項6】
前記カスケード熱交換器から流出する前記第1冷媒の温度と、前記カスケード熱交換器に流入する前記第2冷媒の温度と、の差が所定値以下であること、
前記第2圧縮機が吸入する前記第2冷媒の過熱度が所定値以下であること、
前記第2回路が前記第2熱交換器と前記カスケード熱交換器との間に第2膨張弁(36)を有しており、前記第2膨張弁は前記第2圧縮機に吸入される前記第2冷媒の過熱度に応じて弁開度が変化するものであり、前記第2膨張弁の開度が所定開度よりも小さいこと、
の少なくともいずれかを満たした場合に、前記第1条件が満たされる、
請求項
3に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項7】
前記第1回路は、アキュムレータ(105)をさらに有しており、
前記吸入流路は、第1吸入配管(125a)と第2吸入配管(125b)を含んでおり、
前記第1吸入配管と、前記アキュムレータと、前記第2吸入配管と、前記第1圧縮機とは、この順に接続されており、
前記バイパス回路は、前記第1吸入配管に接続されている、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項8】
前記第1条件を満たした場合に、前記制御弁を全開にする、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項9】
前記第1条件を満たした場合に、前記第2圧縮機の回転数を低下させる、
請求項1
または2に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項10】
前記第1回路の制御を行う第1制御部(70)と、
前記第2回路の制御を行う第2制御部(20)と、
をさらに備えた、
請求項1から
9のいずれか1項に記載の冷凍サイクルシステム。
【請求項11】
前記第1条件を満たしている場合には、前記第2制御部が前記制御弁の制御指示を出し、
前記第1条件を満たしていない場合には、前記第1制御部が前記制御弁に制御指示を出す、
請求項
10に記載の冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1(国際公開第2018/235832号)に記載の冷凍装置のように、一次側の冷媒回路と二次側の冷媒回路とをカスケード熱交換器を介して接続させた二元冷凍装置が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような二元冷凍装置のカスケード熱交換器は、冷媒と空気との間で熱交換を行わせる空気熱交換器に比べ熱交換器容積が小さくなりがちである。このため、カスケード熱交換器において、蒸発器の負荷の変動により放熱器の冷媒の過冷却度が大きくなると、熱交換器容積全体に対して液冷媒が存在する領域が占める割合が大きくなり、カスケード熱交換器における冷媒同士の熱交換効率が下がるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点に係る冷凍サイクルシステムは、第1回路と、第2回路と、を備えている。第1回路は、第1冷媒が循環する回路である。第1回路は、第1圧縮機と、カスケード熱交換器と、第1熱交換器と、を有する。第2回路は、第2冷媒が循環する回路である。第2回路は、第2圧縮機と、カスケード熱交換器と、第2熱交換器と、を有する。第1回路は、第1流路と、吸入流路と、バイパス回路と、制御弁と、を有している。第1流路は、カスケード熱交換器と第1熱交換器を接続する。吸入流路は、第1圧縮機の吸入側から延びる流路である。バイパス回路は、第1流路と吸入流路を接続する。制御弁は、バイパス回路に設けられている。カスケード熱交換器が第1冷媒の放熱器として機能し第2冷媒の蒸発器として機能している際に、カスケード熱交換器の出口における第1冷媒の過冷却度に関する指標が所定の第1条件を満たした場合に、制御弁を開く。
【0005】
ここで、カスケード熱交換器は、第1冷媒と第2冷媒との間で熱交換を行わせるものであってよい。
【0006】
また、制御弁は、開状態と閉状態の2つの状態が切り換えられる弁であってもよいし、弁開度を調節可能な弁であってもよい。
【0007】
この冷凍サイクルシステムでは、所定の第1条件を満たした際に制御弁が開くため、カスケード熱交換器において液状態の第1冷媒が存在する領域が占める割合が大きい状態を解消させやすい。これにより、カスケード熱交換器における熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0008】
第2観点に係る冷凍サイクルシステムは、第1観点に係る冷凍サイクルシステムにおいて、(A)第1回路における第1冷媒の凝縮温度から、カスケード熱交換器を流出した第1冷媒の温度を差し引いて得られる値が所定値以上であること、(B)第1回路における高圧冷媒の圧力から第2回路における低圧冷媒の圧力を差し引いて得られる値が所定値以上であること、(C)第1回路における第1冷媒の凝縮温度から第2回路における第2冷媒の蒸発温度を差し引いて得られる値が所定値以上であること、(D)第1回路における第1冷媒の凝縮温度からカスケード熱交換器に流入する第2冷媒の温度を差し引いて得られる値が所定値以上であること、の少なくともいずれかを満たした場合に、第1条件が満たされる。
【0009】
第3観点に係る冷凍サイクルシステムは、第2観点に係る冷凍サイクルシステムにおいて、第1冷媒の温度圧力特性は、第2冷媒の温度圧力特性とは異なっている。第1条件は、カスケード熱交換器における第1冷媒の圧力から把握される第1冷媒の温度と、カスケード熱交換器における第2冷媒の圧力から把握される第2冷媒の温度と、の温度差に基づいて判断される。
【0010】
この冷凍サイクルシステムでは、圧力を用いて第1条件を判断するのでは安定的な判断が困難となる場合であっても、圧力から換算される温度を用いて第1条件を判断することにより、カスケード熱交換器における熱交換効率が低下していることを、より精度よく判断することが可能になる。
【0011】
第4観点に係る冷凍サイクルシステムは、第1観点に係る冷凍サイクルシステムにおいて、(a)カスケード熱交換器から流出する第1冷媒の温度と、カスケード熱交換器に流入する第2冷媒の温度と、の差が所定値以下であること、(b)第2圧縮機が吸入する第2冷媒の過熱度が所定値以下であること、(c)第2膨張弁の開度が所定開度よりも小さいこと、の少なくともいずれかを満たした場合に、第1条件が満たされる。ここで、(c)について、第2回路は、第2熱交換器とカスケード熱交換器との間に第2膨張弁を有しており、第2膨張弁は、第2圧縮機に吸入される第2冷媒の過熱度に応じて弁開度が変化するものである。
【0012】
第5観点に係る冷凍サイクルシステムは、第1観点から第4観点のいずれかに係る冷凍サイクルシステムにおいて、第1回路は、アキュムレータをさらに有している。吸入流路は、第1吸入流路と第2吸入流路を含んでいる。第1吸入流路と、アキュムレータと、第2吸入流路と、第1圧縮機とは、この順に接続されている。バイパス回路は、第1吸入流路に接続されている。
【0013】
この冷凍サイクルシステムでは、バイパス回路に第1冷媒を流す場合であっても、第1冷媒がアキュムレータを介して第1圧縮機へ吸入されるため、第1圧縮機が液状態の第1冷媒を吸入することを抑制することができる。
【0014】
第6観点に係る冷凍サイクルシステムは、第1観点から第5観点のいずれかに係る冷凍サイクルシステムにおいて、第1条件を満たした場合に、制御弁を全開にする。
【0015】
この冷凍サイクルシステムでは、カスケード熱交換器における熱交換効率を迅速に改善することが可能となる。
【0016】
第7観点に係る冷凍サイクルシステムは、第1観点から第6観点のいずれかに係る冷凍サイクルシステムにおいて、第1条件を満たした場合に、第2圧縮機の回転数を低下させる。
【0017】
この冷凍サイクルシステムでは、カスケード熱交換器における第1冷媒の凝縮が抑制され、カスケード熱交換器における液状態の第1冷媒が占める割合の増大を抑制させることが可能になる。
【0018】
第8観点に係る冷凍サイクルシステムは、第1観点から第7観点のいずれかに係る冷凍サイクルシステムにおいて、第1回路の制御を行う第1制御部と、第2回路の制御を行う第2制御部と、をさらに備えている。
【0019】
この冷凍サイクルシステムでは、第1制御部に第1回路を制御させ、第2制御部に第2回路を制御させることができる。
【0020】
第9観点に係る冷凍サイクルシステムは、第8観点に係る冷凍サイクルシステムにおいて、第1条件を満たしている場合には、第2制御部が制御弁の制御指示を出す。第1条件を満たしていない場合には、第1制御部が制御弁に制御指示を出す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】冷凍サイクルシステムの概略機能ブロック構成図である。
【
図3】冷凍サイクルシステムの冷房運転における動作(冷媒の流れ)を示す図である。
【
図4】冷凍サイクルシステムの暖房運転における動作(冷媒の流れ)を示す図である。
【
図5】冷凍サイクルシステムの冷暖同時運転(冷房主体)における動作(冷媒の流れ)を示す図である。
【
図6】冷凍サイクルシステムの冷暖同時運転(暖房主体)における動作(冷媒の流れ)を示す図である。
【
図8】冷凍サイクルシステムの余剰冷媒制御時の動作(冷媒の流れ)を示す図である。
【
図9】他の実施形態Aに係る冷凍サイクルシステムの概略構成図である。
【
図10】他の実施形態Bに係る冷凍サイクルシステムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)冷凍サイクルシステムの構成
図1は、冷凍サイクルシステム1の概略構成図である。
図2は、冷凍サイクルシステム1の概略機能ブロック構成図である。
【0023】
冷凍サイクルシステム1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、ビル等の室内の冷暖房に使用される装置である。
【0024】
冷凍サイクルシステム1は、蒸気圧縮式の一次側冷媒回路5a(第1回路に相当)と蒸気圧縮式の二次側冷媒回路10(第2回路に相当)とからなる二元冷媒回路を有しており、二元冷凍サイクルを行う。一次側冷媒回路5aには、冷媒として、例えば、R32(第1冷媒に相当)等が封入されている。二次側冷媒回路10には、冷媒として、例えば、二酸化炭素(第2冷媒に相当)が封入されている。一次側冷媒回路5aと二次側冷媒回路10とは、後述するカスケード熱交換器35を介して、熱的に接続されている。
【0025】
冷凍サイクルシステム1は、一次側ユニット5と、熱源ユニット2と、複数の分岐ユニット6a、6b、6cと、複数の利用ユニット3a、3b、3cと、が互いに配管を介して接続されて構成されている。一次側ユニット5と熱源ユニット2とは、一次側第1連絡管111および一次側第2連絡管112により接続されている。熱源ユニット2と複数の分岐ユニット6a、6b、6cとは、二次側第2連絡管9と二次側第1連絡管8と二次側第3連絡管7の3つの冷媒連絡管により接続されている。複数の分岐ユニット6a、6b、6cと複数の利用ユニット3a、3b、3cとは、第1分岐接続管15a、15b、15cおよび第2分岐接続管16a、16b、16cにより接続されている。一次側ユニット5は、本実施形態では、1台である。熱源ユニット2は、本実施形態では、1台である。複数の利用ユニット3a、3b、3cは、本実施形態では、第1利用ユニット3aと、第2利用ユニット3bと、第3利用ユニット3cと、の3台である。複数の分岐ユニット6a、6b、6cは、本実施形態では、第1分岐ユニット6aと、第2分岐ユニット6bと、第3分岐ユニット6cと、の3台である。
【0026】
そして、冷凍サイクルシステム1では、各利用ユニット3a、3b、3cが個別に冷房運転または暖房運転を行うことが可能になっており、暖房運転を行う利用ユニットから冷房運転を行う利用ユニットに冷媒を送ることで利用ユニット間において熱回収を行うことが可能になるように構成されている。具体的には、本実施形態では、冷房運転と暖房運転とを同時に行う冷房主体運転や暖房主体運転を行うことで、熱回収が行われる。また、冷凍サイクルシステム1では、上記の熱回収(冷房主体運転や暖房主体運転)も考慮した複数の利用ユニット3a、3b、3c全体の熱負荷に応じて、熱源ユニット2の熱負荷をバランスさせるように構成されている。
【0027】
(2)一次側冷媒回路
一次側冷媒回路5aは、一次側圧縮機71(第1圧縮機に相当)と、一次側切換機構72と、一次側熱交換器74(第1熱交換器に相当)と、液接続配管126(第1流路の一部に相当)と、一次側第1膨張弁76と、一次側過冷却熱交換器103と、一次側過冷却回路104(バイパス回路に相当)と、一次側過冷却膨張弁104a(制御弁に相当)と、第1液閉鎖弁108と、一次側第1連絡管111(第1流路の一部に相当)と、第2液閉鎖弁106と、第1接続配管115(第1流路の一部に相当)と、一次側第2膨張弁102と、二次側冷媒回路10と共有しているカスケード熱交換器35と、第2接続配管113と、第2ガス閉鎖弁107と、一次側第2連絡管112と、第1ガス閉鎖弁109と、一次側吸入流路125(吸入流路に相当)と、一次側アキュムレータ105(アキュムレータに相当)と、を有している。
【0028】
一次側圧縮機71は、一次側の冷媒を圧縮するための機器であり、例えば、圧縮機モータ71aをインバータ制御することで運転容量を可変することが可能なスクロール型等の容積式圧縮機からなる。
【0029】
一次側アキュムレータ105は、一次側切換機構72と一次側圧縮機71の吸入側とを接続する一次側吸入流路125の途中に設けられている。
【0030】
一次側吸入流路125は、一次側切換機構72と一次側アキュムレータ105を接続する第1吸入流路125aと、一次側アキュムレータ105と一次側圧縮機71の吸入側とを接続する第2吸入流路125bと、を有している。
【0031】
カスケード熱交換器35を一次側の冷媒の蒸発器として機能させる場合には、一次側切換機構72は、一次側圧縮機71の吸入側とカスケード熱交換器35の一次側流路35bのガス側とを接続する第5接続状態となる(
図1の一次側切換機構72の実線を参照)。また、一次側切換機構72は、カスケード熱交換器35を一次側の冷媒の放熱器として機能させる場合には、一次側圧縮機71の吐出側とカスケード熱交換器35の一次側流路35bのガス側とを接続する第6接続状態となる(
図1の一次側切換機構72の破線を参照)。このように、一次側切換機構72は、一次側冷媒回路5a内における冷媒の流路を切り換えることが可能な機器であり、例えば、四路切換弁からなる。そして、一次側切換機構72の切り換え状態を変更することによって、カスケード熱交換器35を一次側の冷媒の蒸発器または放熱器として機能させることが可能になっている。
【0032】
カスケード熱交換器35は、一次側の冷媒であるR32等の冷媒と、二次側の冷媒である二酸化炭素等の冷媒と、の間で互いに混合させることなく熱交換を行わせるための機器である。カスケード熱交換器35は、例えば、プレート型熱交換器からなる。カスケード熱交換器35は、二次側冷媒回路10に属する二次側流路35aと、一次側冷媒回路5aに属する一次側流路35bと、を有している。二次側流路35aは、そのガス側が第3熱源配管25を介して二次側切換機構22に接続され、その液側が第4熱源配管26を介して熱源側膨張弁36に接続されている。一次側流路35bは、そのガス側が、第2接続配管113、第2ガス閉鎖弁107、一次側第2連絡管112、第1ガス閉鎖弁109、一次側切換機構72、第1吸入流路125a、一次側アキュムレータ105、第2吸入流路125bを介して一次側圧縮機71に接続され、その液側が、第1接続配管115に設けられた一次側第2膨張弁102に接続されている。
【0033】
一次側熱交換器74は、一次側の冷媒と屋外空気との熱交換を行うための機器である。一次側熱交換器74のガス側は、一次側切換機構72から延びる配管に接続されている。一次側熱交換器74の液側は、液接続配管126を通じて、第1液閉鎖弁108に接続されている。一次側熱交換器74は、例えば、多数の伝熱管およびフィンによって構成されたフィン・アンド・チューブ型熱交換器からなる。
【0034】
液接続配管126は、一次側熱交換器74の液側端部と第1液閉鎖弁108とを接続しており、第1液接続配管126aと第2液接続配管126bを有している。第1液接続配管126aは、一次側熱交換器74の液側端部から一次側第1膨張弁76まで延びている。第2液接続配管126bは、一次側第1膨張弁76から一次側過冷却熱交換器103を経て第1液閉鎖弁108まで延びている。
【0035】
一次側第1膨張弁76は、液接続配管126のうち、一次側熱交換器74の液側と一次側過冷却熱交換器103との間の部分に設けられている。一次側第1膨張弁76は、一次側冷媒回路5aの液接続配管126を流れる一次側の冷媒の流量の調節等を行う、開度調節が可能な電動膨張弁である。
【0036】
一次側過冷却回路104は、液接続配管126のうち、一次側第1膨張弁76と一次側過冷却熱交換器103との間から分岐し、一次側吸入流路125のうちの第1吸入流路125aに接続されている。一次側過冷却膨張弁104aは、一次側過冷却回路104のうち、一次側過冷却熱交換器103より上流側に設けられている。一次側過冷却膨張弁104aは、一次側過冷却回路104を流れる一次側の冷媒の流量の調節等を行う、開度調節が可能な電動膨張弁である。
【0037】
一次側過冷却熱交換器103は、一次側第1膨張弁76から第1液閉鎖弁108に向けて流れる冷媒と、一次側過冷却回路104において一次側過冷却膨張弁104aにおいて減圧された冷媒と、を熱交換させる熱交換器である。
【0038】
一次側第1連絡管111は、第1液閉鎖弁108と第2液閉鎖弁106を接続する配管であり、一次側ユニット5と熱源ユニット2を接続している。
【0039】
一次側第2連絡管112は、第1ガス閉鎖弁109と第2ガス閉鎖弁107を接続する配管であり、一次側ユニット5と熱源ユニット2を接続している。
【0040】
第1接続配管115は、第2液閉鎖弁106とカスケード熱交換器35の一次側流路35bの液側とを接続する配管であり、熱源ユニット2に設けられている。
【0041】
一次側第2膨張弁102は、第1接続配管115に設けられており、第1接続配管115を流れる一次側の冷媒の流量の調節等を行う、開度調節が可能な電動膨張弁である。
【0042】
第2接続配管113は、カスケード熱交換器35の一次側流路35bのガス側と第2ガス閉鎖弁107とを接続する配管であり、熱源ユニット2に設けられている。
【0043】
第1ガス閉鎖弁109は、一次側第2連絡管112と一次側切換機構72との間に設けられている。
【0044】
(3)二次側冷媒回路
二次側冷媒回路10は、複数の利用ユニット3a、3b、3cと、複数の分岐ユニット6a、6b、6cと、熱源ユニット2と、が互いに接続されて構成されている。各利用ユニット3a、3b、3cは、対応する分岐ユニット6a、6b、6cと、1対1に接続されている。具体的には、利用ユニット3aと分岐ユニット6aとは第1分岐接続管15aおよび第2分岐接続管16aを介して接続され、利用ユニット3bと分岐ユニット6bとは第1分岐接続管15bおよび第2分岐接続管16bを介して接続され、利用ユニット3cと分岐ユニット6cとは第1分岐接続管15cおよび第2分岐接続管16cを介して接続されている。また、各分岐ユニット6a、6b、6cは、熱源ユニット2と、3つの連絡管である二次側第3連絡管7と二次側第1連絡管8と二次側第2連絡管9とを介して接続されている。具体的には、熱源ユニット2から延び出した二次側第3連絡管7と二次側第1連絡管8と二次側第2連絡管9とは、それぞれ複数に分岐して、各分岐ユニット6a、6b、6cに接続されている。
【0045】
二次側第1連絡管8には、運転状態に応じて、気液二相状態の冷媒とガス状態の冷媒とのいずれかの冷媒が流れる。なお、第2冷媒の種類によっては、二次側第1連絡管8には、運転状態に応じて超臨界状態の冷媒が流れる。二次側第2連絡管9には、運転状態に応じて、気液二相状態の冷媒とガス状態の冷媒とのいずれかの冷媒が流れる。二次側第3連絡管7には、運転状態に応じて、気液二相状態の冷媒と液状態の冷媒とのいずれかの冷媒が流れる。なお、第2冷媒の種類によっては、二次側第3連絡管7には、運転状態に応じて超臨界状態の冷媒が流れる。
【0046】
二次側冷媒回路10は、熱源回路12と、分岐回路14a、14b、14cと、利用回路13a、13b、13cと、が互いに接続されて構成されている。
【0047】
熱源回路12は、主として、二次側圧縮機21(第2圧縮機に相当)と、二次側切換機構22と、第1熱源配管28と、第2熱源配管29と、吸入流路23と、吐出流路24と、第3熱源配管25と、第4熱源配管26と、第5熱源配管27と、カスケード熱交換器35と、熱源側膨張弁36(第2膨張弁に相当)と、第3閉鎖弁31と、第1閉鎖弁32と、第2閉鎖弁33と、二次側アキュムレータ30と、油分離器34と、油戻し回路40と、二次側レシーバ45と、バイパス回路46と、バイパス膨張弁46aと、二次側過冷却熱交換器47と、二次側過冷却回路48と、二次側過冷却膨張弁48aと、を有している。
【0048】
二次側圧縮機21は、二次側の冷媒を圧縮するための機器であり、例えば、圧縮機モータ21aをインバータ制御することで運転容量を可変することが可能なスクロール型等の容積式圧縮機からなる。なお、二次側圧縮機21は、運転時の負荷に応じて、負荷が大きいほど運転容量が大きくなるように制御される。
【0049】
二次側切換機構22は、二次側冷媒回路10の接続状態、特に、熱源回路12内における冷媒の流路を切り換えることが可能な機構である。本実施形態では、二次側切換機構22は、環状の流路に二方弁である切換弁22a、22b、22c、22dが4つ並んで設けられて構成されている。なお、二次側切換機構22としては、これに変えて、複数の三路切換弁を組合せたものを用いてもよい。二次側切換機構22は、吐出流路24と第3熱源配管25とを接続する流路に設けられた第1切換弁22aと、吐出流路24と第1熱源配管28とを接続する流路に設けられた第2切換弁22bと、吸入流路23と第3熱源配管25とを接続する流路に設けられた第3切換弁22cと、吸入流路23と第1熱源配管28とを接続する流路に設けられた第4切換弁22dと、を有している。本実施形態において、第1切換弁22aと、第2切換弁22bと、第3切換弁22cと、第4切換弁22dと、はそれぞれ開状態と閉状態とが切り換えられる電磁弁である。
【0050】
二次側切換機構22は、カスケード熱交換器35を二次側の冷媒の放熱器として機能させる場合には、第1切換弁22aを開状態として二次側圧縮機21の吐出側とカスケード熱交換器35の二次側流路35aのガス側とを接続しつつ、第3切換弁22cを閉状態とする第1接続状態とする。また、二次側切換機構22は、カスケード熱交換器35を二次側の冷媒の蒸発器として機能させる場合には、第3切換弁22cを開状態として二次側圧縮機21の吸入側とカスケード熱交換器35の二次側流路35aのガス側とを接続しつつ、第1切換弁22aを閉状態とする第2接続状態とする。また、二次側切換機構22は、二次側圧縮機21から吐出される二次側の冷媒を二次側第1連絡管8に送る場合には、第2切換弁22bを開状態として二次側圧縮機21の吐出側と二次側第1連絡管8とを接続しつつ、第4切換弁22dを閉状態とする第3接続状態とする。また、二次側切換機構22は、二次側第1連絡管8を流れる冷媒を二次側圧縮機21に吸入させる場合には、第4切換弁22dを開状態として二次側第1連絡管8と二次側圧縮機21の吸入側とを接続しつつ、第2切換弁22bを閉状態とする第4接続状態とする。
【0051】
カスケード熱交換器35は、上述の通り、一次側の冷媒であるR32等の冷媒と、二次側の冷媒である二酸化炭素等の冷媒と、の間で互いに混合させることなく熱交換を行わせるための機器である。なお、カスケード熱交換器35は、二次側冷媒回路10の二次側の冷媒が流れる二次側流路35aと、一次側冷媒回路5aの一次側の冷媒が流れる一次側流路35bと、を有することで、一次側ユニット5と熱源ユニット2とで共有されている。なお、本実施形態では、カスケード熱交換器35は、熱源ユニット2の熱源ケーシング2xの内部に配置されている。カスケード熱交換器35の一次側流路35bのガス側は、第2接続配管113と第2ガス閉鎖弁107を経て、熱源ケーシング2x外の一次側第2連絡管112まで延びている。カスケード熱交換器35の一次側流路35bの液側は、一次側第2膨張弁102と第1接続配管115と第2液閉鎖弁106を経て、熱源ケーシング2x外の一次側第1連絡管111まで延びている。
【0052】
熱源側膨張弁36は、カスケード熱交換器35を流れる二次側の冷媒の流量の調節等を行うために、カスケード熱交換器35の液側に接続された開度調節が可能な電動膨張弁である。熱源側膨張弁36は、第4熱源配管26に設けられている。
【0053】
第3閉鎖弁31、第1閉鎖弁32および第2閉鎖弁33は、外部の機器・配管(具体的には、連絡管7、8および9)との接続口に設けられた弁である。具体的には、第3閉鎖弁31は、熱源ユニット2から引き出される二次側第3連絡管7に接続されている。第1閉鎖弁32は、熱源ユニット2から引き出される二次側第1連絡管8に接続されている。第2閉鎖弁33は、熱源ユニット2から引き出される二次側第2連絡管9に接続されている。
【0054】
第1熱源配管28は、第1閉鎖弁32と二次側切換機構22とを接続する冷媒配管である。具体的には、第1熱源配管28は、第1閉鎖弁32と、二次側切換機構22のうちの第2切換弁22bと第4切換弁22dとの間の部分と、を接続している。
【0055】
吸入流路23は、二次側切換機構22と二次側圧縮機21の吸入側とを連絡する流路である。具体的には、吸入流路23は、二次側切換機構22のうちの第3切換弁22cと第4切換弁22dとの間の部分と、二次側圧縮機21の吸入側と、を接続している。吸入流路23の途中には、二次側アキュムレータ30が設けられている。
【0056】
第2熱源配管29は、第2閉鎖弁33と吸入流路23の途中とを接続する冷媒配管である。なお、本実施形態では、第2熱源配管29は、吸入流路23のうち、二次側切換機構22における第2切換弁22bと第4切換弁22dの間の部分と、二次側アキュムレータ30と、の間の部分である接続箇所において、吸入流路23に接続されている。
【0057】
吐出流路24は、二次側圧縮機21の吐出側と二次側切換機構22とを接続する冷媒配管である。具体的には、吐出流路24は、二次側圧縮機21の吐出側と、二次側切換機構22のうちの第1切換弁22aと第2切換弁22bとの間の部分と、を接続している。
【0058】
第3熱源配管25は、二次側切換機構22とカスケード熱交換器35のガス側とを接続する冷媒配管である。具体的には、第3熱源配管25は、二次側切換機構22のうちの第1切換弁22aと第3切換弁22cとの間の部分と、カスケード熱交換器35における二次側流路35aのガス側端部とを接続している。
【0059】
第4熱源配管26は、カスケード熱交換器35の液側(ガス側とは反対側、二次側切換機構22が設けられている側とは反対側)と、二次側レシーバ45と、を接続する冷媒配管である。具体的には、第4熱源配管26は、カスケード熱交換器35における二次側流路35aの液側端部(ガス側とは反対側の端部)と、二次側レシーバ45とを接続している。
【0060】
二次側レシーバ45は、二次側冷媒回路10における余剰冷媒を貯留する冷媒容器である。二次側レシーバ45からは、第4熱源配管26と、第5熱源配管27と、バイパス回路46と、が延びだしている。
【0061】
バイパス回路46は、二次側レシーバ45内部の上方の領域である気相領域と、吸入流路23と、を接続する冷媒配管である。具体的には、バイパス回路46は、吸入流路23のうち二次側切換機構22と二次側アキュムレータ30との間に接続されている。バイパス回路46には、バイパス膨張弁46aが設けられている。バイパス膨張弁46aは、開度調節により二次側レシーバ45内から二次側圧縮機21の吸入側に導く冷媒の量を調節可能な電動膨張弁である。
【0062】
第5熱源配管27は、二次側レシーバ45と第3閉鎖弁31とを接続する冷媒配管である。
【0063】
二次側過冷却回路48は、第5熱源配管27の一部と、吸入流路23と、を接続する冷媒配管である。具体的には、二次側過冷却回路48は、吸入流路23のうち二次側切換機構22と二次側アキュムレータ30との間に接続されている。なお、本実施形態においては、二次側過冷却回路48は、二次側レシーバ45と二次側過冷却熱交換器47との間から分岐するように延びている。
【0064】
二次側過冷却熱交換器47は、第5熱源配管27に属する流路を流れる冷媒と、二次側過冷却回路48に属する流路を流れる冷媒と、で熱交換を行わせる熱交換器である。本実施形態においては、第5熱源配管27のうち、二次側過冷却回路48が分岐している箇所と、第3閉鎖弁31と、の間に設けられている。二次側過冷却膨張弁48aは、二次側過冷却回路48における第5熱源配管27からの分岐箇所と、二次側過冷却熱交換器47と、の間に設けられている。二次側過冷却膨張弁48aは、二次側過冷却熱交換器47に対して減圧された冷媒を供給するものであり、開度調節可能な電動膨張弁である。
【0065】
二次側アキュムレータ30は、二次側の冷媒を溜めることが可能な容器であり、二次側圧縮機21の吸入側に設けられている。
【0066】
油分離器34は、吐出流路24の途中に設けられている。油分離器34は、二次側の冷媒に伴って二次側圧縮機21から吐出された冷凍機油を二次側の冷媒から分離して、二次側圧縮機21に戻すための機器である。
【0067】
油戻し回路40は、油分離器34と吸入流路23とを接続するように設けられている。油戻し回路40は、油分離器34から延び出た流路が、吸入流路23のうち二次側アキュムレータ30と二次側圧縮機21の吸入側との間の部分に合流するように延びた油戻し流路41を有している。油戻し流路41の途中には、油戻しキャピラリーチューブ42と油戻し開閉弁44とが設けられている。油戻し開閉弁44が開状態に制御されることで、油分離器34において分離された冷凍機油は、油戻し流路41の油戻しキャピラリーチューブ42を通過して、二次側圧縮機21の吸入側に戻される。ここで、本実施形態では、油戻し開閉弁44は、二次側冷媒回路10において二次側圧縮機21が運転状態の場合には、開状態を所定時間維持し閉状態を所定時間維持することを繰り返すことにより、油戻し回路40を通じた冷凍機油の返油量が制御される。なお、油戻し開閉弁44は、本実施形態では開閉制御される電磁弁であるが、開度調節が可能な電動膨張弁としつつ油戻しキャピラリーチューブ42を省略した構成としてもよい。
【0068】
以下、利用回路13a、13b、13cについて説明するが、利用回路13b、13cは利用回路13aと同様の構成であるため、利用回路13b、13cについては、利用回路13aの各部を示す符号の添字「a」の代わりに、「b」または「c」の添字を付すものとして各部の説明を省略する。
【0069】
利用回路13aは、主として、利用側熱交換器52a(第2熱交換器に相当)と、第1利用配管57aと、第2利用配管56aと、利用側膨張弁51aと、を有している。
【0070】
利用側熱交換器52aは、冷媒と室内空気との熱交換を行うための機器であり、例えば、多数の伝熱管およびフィンによって構成されたフィン・アンド・チューブ型熱交換器からなる。なお、複数の利用側熱交換器52a、52b、52cは、二次側切換機構22と吸入流路23とカスケード熱交換器35に対して互いに並列に接続されている。
【0071】
第2利用配管56aは、その一端が第1利用ユニット3aの利用側熱交換器52aの液側(ガス側とは反対側)に接続されている。第2利用配管56aの他端は、第2分岐接続管16aに接続されている。第2利用配管56aの途中には、上述した利用側膨張弁51aが設けられている。
【0072】
利用側膨張弁51aは、利用側熱交換器52aを流れる冷媒の流量の調節等を行う、開度調節が可能な電動膨張弁である。利用側膨張弁51aは、第2利用配管56aに設けられている。
【0073】
第1利用配管57aは、その一端が第1利用ユニット3aの利用側熱交換器52aのガス側に接続されている。本実施形態では、第1利用配管57aは、利用側熱交換器52aの利用側膨張弁51a側とは反対側に接続されている。第1利用配管57aは、その他端が、第1分岐接続管15aに接続されている。
【0074】
以下、分岐回路14a、14b、14cについて説明するが、分岐回路14b、14cは分岐回路14aと同様の構成であるため、分岐回路14b、14cについては、分岐回路14aの各部を示す符号の添字「a」の代わりに、「b」または「c」の添字を付すものとして各部の説明を省略する。
【0075】
分岐回路14aは、主として、合流配管62aと、第1分岐配管63aと、第2分岐配管64aと、第1調節弁66aと、第2調節弁67aと、第3分岐配管61aと、を有している。
【0076】
合流配管62aは、その一端が第1分岐接続管15aに接続されている。合流配管62aの他端には、第1分岐配管63aと第2分岐配管64aが分岐して接続されている。
【0077】
第1分岐配管63aは、合流配管62側とは反対側が、二次側第1連絡管8に接続されている。第1分岐配管63aには、開閉可能な第1調節弁66aが設けられている。なお、ここでは、第1調節弁66aとして、開度調節が可能な電動膨張弁を採用しているが、開閉のみが可能な電磁弁等を採用してもよい。
【0078】
第2分岐配管64aは、合流配管62側とは反対側が、二次側第2連絡管9に接続されている。第2分岐配管64aには、開閉可能な第2調節弁67aが設けられている。なお、ここでは、第2調節弁67aとして、開度調節が可能な電動膨張弁を採用しているが、開閉のみが可能な電磁弁等を採用してもよい。
【0079】
第3分岐配管61aは、その一端が第2分岐接続管16aに接続されている。第3分岐配管61aは、その他端が二次側第3連絡管7に接続されている。
【0080】
そして、第1分岐ユニット6aは、後述の冷房運転を行う際には、第1調節弁66aおよび第2調節弁67aを開けた状態にすることで、以下のように機能することができる。第1分岐ユニット6aは、二次側第3連絡管7を通じて第3分岐配管61aに流入する冷媒を、第2分岐接続管16aに送る。なお、第2分岐接続管16aを通じて第1利用ユニット3aの第2利用配管56aを流れる冷媒は、利用側膨張弁51aを通じて、第1利用ユニット3aの利用側熱交換器52aに送られる。そして、利用側熱交換器52aに送られた冷媒は、室内空気との熱交換によって蒸発した後、第1利用配管57aを介して、第1分岐接続管15aを流れる。第1分岐接続管15aを流れた冷媒は、第1分岐ユニット6aの合流配管62aに送られる。合流配管62aを流れた冷媒は、第1分岐配管63aと第2分岐配管64aに分岐して流れる。第1分岐配管63aにおいて第1調節弁66aを通過した冷媒は、二次側第1連絡管8に送られる。第2分岐配管64aにおいて第2調節弁67aを通過した冷媒は、二次側第2連絡管9に送られる。
【0081】
また、第1分岐ユニット6aは、後述の冷房主体運転を行う際と暖房主体運転を行う際に、第1利用ユニット3aにおいて室内を冷房する場合には、第1調節弁66aを閉じた状態にしつつ第2調節弁67aを開けた状態にすることで、以下のように機能することができる。第1分岐ユニット6aは、二次側第3連絡管7を通じて第3分岐配管61aに流入する冷媒を、第2分岐接続管16aに送る。なお、第2分岐接続管16aを通じて第1利用ユニット3aの第2利用配管56aを流れる冷媒は、利用側膨張弁51aを通じて、第1利用ユニット3aの利用側熱交換器52aに送られる。そして、利用側熱交換器52aに送られた冷媒は、室内空気との熱交換によって蒸発した後、第1利用配管57aを介して、第1分岐接続管15aを流れる。第1分岐接続管15aを流れた冷媒は、第1分岐ユニット6aの合流配管62aに送られる。合流配管62aを流れた冷媒は、第2分岐配管64aに流れて第2調節弁67aを通過した後、二次側第2連絡管9に送られる。
【0082】
また、第1分岐ユニット6aは、後述の暖房運転を行う際には、第2調節弁67aを後述するように運転状況に応じて開状態か閉状態にし、かつ、第1調節弁66aを開けた状態にすることで、次のように機能することができる。第1分岐ユニット6aでは、二次側第1連絡管8を通じて第1分岐配管63aに流入する冷媒が、第1調節弁66aを通過して、合流配管62aに送られる。合流配管62aを流れた冷媒は、第1分岐接続管15aを介して、利用ユニット3aの第1利用配管57aを流れて、利用側熱交換器52aに送られる。そして、利用側熱交換器52aに送られた冷媒は、室内空気との熱交換によって放熱した後、第2利用配管56aに設けられた利用側膨張弁51aを通過する。第2利用配管56aを通過した冷媒は、第2分岐接続管16aを介して、第1分岐ユニット6aの第3分岐配管61aを流れた後、二次側第3連絡管7に送られる。
【0083】
また、第1分岐ユニット6aは、後述の冷房主体運転を行う際と暖房主体運転を行う際に、第1利用ユニット3aにおいて室内を暖房する場合には、第2調節弁67aを閉状態にし、かつ、第1調節弁66aを開けた状態にすることで、次のように機能することができる。第1分岐ユニット6aでは、二次側第1連絡管8を通じて第1分岐配管63aに流入する冷媒が、第1調節弁66aを通過して、合流配管62aに送られる。合流配管62aを流れた冷媒は、第1分岐接続管15aを介して、利用ユニット3aの第1利用配管57aを流れて、利用側熱交換器52aに送られる。そして、利用側熱交換器52aに送られた冷媒は、室内空気との熱交換によって放熱した後、第2利用配管56aに設けられた利用側膨張弁51aを通過する。第2利用配管56aを通過した冷媒は、第2分岐接続管16aを介して、第1分岐ユニット6aの第3分岐配管61aを流れた後、二次側第3連絡管7に送られる。
【0084】
このような機能は、第1分岐ユニット6aだけでなく、第2分岐ユニット6b、第3分岐ユニット6cも同様に有している。このため、第1分岐ユニット6a、第2分岐ユニット6b、第3分岐ユニット6cは、ぞれぞれ、各利用側熱交換器52a、52b、52cについて、冷媒の蒸発器として機能させるか、または、冷媒の放熱器として機能させるか、を個別に切り換えることが可能になっている。
【0085】
(4)一次側ユニット
一次側ユニット5は、利用ユニット3a、3b、3cや分岐ユニット6a、6b、6cが配置された空間とは異なる空間や屋上等に設置されている。
【0086】
一次側ユニット5は、上述の一次側冷媒回路5aの一部と、一次側ファン75と、各種センサと、一次側制御部70(第1制御部に相当)と、を図示しない一次側ケーシング内に有して構成されている。
【0087】
一次側ユニット5は、一次側冷媒回路5aの一部として、一次側圧縮機71と、一次側切換機構72と、一次側熱交換器74と、一次側第1膨張弁76と、一次側過冷却熱交換器103と、一次側過冷却回路104と、一次側過冷却膨張弁104aと、第1液閉鎖弁108と、第1ガス閉鎖弁109と、一次側アキュムレータ105と、を有している。
【0088】
一次側ファン75は、一次側ユニット5内に設けられており、屋外空気を一次側熱交換器74に導いて、一次側熱交換器74を流れる一次側の冷媒と熱交換させた後に、屋外に排出させる、という空気流れを生じさせる。一次側ファン75は、一次側ファンモータ75aによって駆動される。
【0089】
また、一次側ユニット5には、各種のセンサが設けられている。具体的には、一次側熱交換器74を通過する前の屋外空気の温度を検出する外気温度センサ77と、一次側圧縮機71から吐出された一次側の冷媒の圧力を検出する一次側吐出圧力センサ78と、一次側圧縮機71に吸入される一次側の冷媒の圧力を検出する一次側吸入圧力センサ79と、一次側圧縮機71に吸入される一次側の冷媒の温度を検出する一次側吸入温度センサ81と、一次側熱交換器74を流れる冷媒の温度を検出する一次側熱交温度センサ82と、が設けられている。
【0090】
一次側制御部70は、一次側ユニット5内に設けられている各部71(71a)、72、75(75a)、76、104aの動作を制御する。そして、一次側制御部70は、一次側ユニット5の制御を行うために設けられたCPUやマイクロコンピュータ等のプロセッサとメモリを有しており、リモコン(図示せず)との間で制御信号等のやりとりを行うことや、二次側ユニット4の熱源側制御部20や分岐ユニット制御部60a、60b、60cや利用側制御部50a、50b、50cとの間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0091】
(5)熱源ユニット
熱源ユニット2は、利用ユニット3a、3b、3cや分岐ユニット6a、6b、6cが配置された空間とは異なる空間や屋上等に設置されている。
【0092】
熱源ユニット2は、連絡管7、8、9を介して分岐ユニット6a、6b、6cに接続されており、二次側冷媒回路10の一部を構成している。また、熱源ユニット2は、一次側第1連絡管111および一次側第2連絡管112を介して、一次側ユニット5と接続されており、一次側冷媒回路5aの一部を構成している。
【0093】
熱源ユニット2は、主として、上述した熱源回路12と、各種センサと、熱源側制御部20(第2制御部に相当)と、一次側冷媒回路5aの一部を構成する第2液閉鎖弁106、第1接続配管115、一次側第2膨張弁102、第2接続配管113、および、第2ガス閉鎖弁107とを、図示しない熱源ケーシング内に有して構成されている。
【0094】
熱源ユニット2には、二次側圧縮機21の吸入側における二次側の冷媒の圧力を検出する二次側吸入圧力センサ37と、二次側圧縮機21の吐出側における二次側の冷媒の圧力を検出する二次側吐出圧力センサ38と、二次側圧縮機21の吐出側における二次側の冷媒の温度を検出する二次側吐出温度センサ39と、二次側圧縮機21の吸入側における二次側の冷媒の温度を検出する二次側吸入温度センサ88と、カスケード熱交換器35の二次側流路35aと熱源側膨張弁36との間を流れる二次側の冷媒の温度を検出する二次側第1温度センサ83と、カスケード熱交換器35の一次側流路35bと一次側第2膨張弁102との間を流れる一次側の冷媒の温度を検出する一次側第1温度センサ121と、カスケード熱交換器35の一次側流路35bと第2ガス閉鎖弁107との間の第2接続配管113を流れる一次側の冷媒の温度を検出する一次側第2温度センサ122と、二次側レシーバ45から二次側過冷却熱交換器47との間を流れる二次側の冷媒の温度を検出するレシーバ出口温度センサ84と、バイパス回路46におけるバイパス膨張弁46aの下流側を流れる二次側の冷媒の温度を検出するバイパス回路温度センサ85と、二次側過冷却熱交換器47と第3閉鎖弁31との間を流れる二次側の冷媒の温度を検出する過冷却出口温度センサ86と、二次側過冷却回路48における二次側過冷却熱交換器47の出口を流れる二次側の冷媒の温度を検出する過冷却回路温度センサ87と、が設けられている。
【0095】
熱源側制御部20は、熱源ユニット2に設けられた各部21(21a)、22、36、44、46a、48a、102の動作を制御する。なお、熱源側制御部20は、二次側冷媒回路10ではなく一次側冷媒回路5aの一部を構成する部品である一次側第2膨張弁102の弁開度を制御する。熱源側制御部20は、熱源ユニット2の制御を行うために設けられたCPUやマイクロコンピュータ等のプロセッサとメモリを有しており、一次側ユニット5の一次側制御部70や利用ユニット3a、3b、3cの利用側制御部50a、50b、50cや分岐ユニット制御部60a、60b、60cとの間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0096】
(6)利用ユニット
利用ユニット3a、3b、3cは、ビル等の室内の天井に埋め込みや吊り下げ等、または、室内の壁面に壁掛け等により設置されている。
【0097】
利用ユニット3a、3b、3cは、連絡管7、8、9を介して熱源ユニット2に接続されている。
【0098】
利用ユニット3a、3b、3cは、二次側冷媒回路10の一部を構成する利用回路13a、13b、13cを有している。
【0099】
以下、利用ユニット3a、3b、3cの構成について説明する。なお、第2利用ユニット3bおよび第3利用ユニット3cは、第1利用ユニット3aと同様の構成であるため、ここでは、第1利用ユニット3aの構成のみ説明し、第2利用ユニット3bおよび第3利用ユニット3cの構成については、それぞれ、第1利用ユニット3aの各部を示す符号の添字「a」の代わりに、「b」または「c」の添字を付して、各部の説明を省略する。
【0100】
第1利用ユニット3aは、主として、上述の利用回路13aと、室内ファン53aと、利用側制御部50aと、各種センサと、を有している。なお、室内ファン53aは、室内ファンモータ54aを有している。
【0101】
室内ファン53aは、ユニット内に室内空気を吸入して、利用側熱交換器52aを流れる冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給する空気流れを生じさせる。室内ファン53aは、室内ファンモータ54aによって駆動される。
【0102】
利用ユニット3aには、利用側熱交換器52aの液側における冷媒の温度を検出する液側温度センサ58aが設けられている。また、利用ユニット3aには、室内から取り込まれた空気であって、利用側熱交換器52aを通過する前の空気の温度である室内温度を検出する室内温度センサ55aが設けられている。さらに、利用ユニット3aには、利用側熱交換器52aを通過した空気の温度を検出する室内吹出温度センサ59aが設けられている。
【0103】
利用側制御部50aは、利用ユニット3aを構成する各部51a、53a(54a)の動作を制御する。そして、利用側制御部50aは、利用ユニット3aの制御を行うために設けられたCPUやマイクロコンピュータ等のプロセッサとメモリを有しており、リモコン(図示せず)との間で制御信号等のやりとりを行うことや、二次側ユニット4の熱源側制御部20や分岐ユニット制御部60a、60b、60cや一次側ユニット5の一次側制御部70との間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0104】
なお、第2利用ユニット3bは、利用回路13b、室内ファン53b、利用側制御部50b、室内ファンモータ54bを有している。第3利用ユニット3cは、利用回路13c、室内ファン53c、利用側制御部50c、室内ファンモータ54cを有している。
【0105】
(7)分岐ユニット
分岐ユニット6a、6b、6cは、ビル等の室内の天井裏の空間等に設置されている。
【0106】
分岐ユニット6a、6b、6cは、利用ユニット3a、3b、3cと1対1に対応しつつ接続されている。分岐ユニット6a、6b、6cは、連絡管7、8、9を介して熱源ユニット2に接続されている。
【0107】
次に、分岐ユニット6a、6b、6cの構成について説明する。なお、第2分岐ユニット6bおよび第3分岐ユニット6cは、第1分岐ユニット6aと同様の構成であるため、ここでは、第1分岐ユニット6aの構成のみ説明し、第2分岐ユニット6bおよび第3分岐ユニット6cの構成については、それぞれ、第1分岐ユニット6aの各部を示す符号の添字「a」の代わりに、「b」または「c」の添字を付して、各部の説明を省略する。
【0108】
第1分岐ユニット6aは、主として、上述の分岐回路14aと、分岐ユニット制御部60aと、を有している。
【0109】
分岐ユニット制御部60aは、分岐ユニット6aを構成する各部66a、67aの動作を制御する。そして、分岐ユニット制御部60aは、分岐ユニット6aの制御を行うために設けられたCPUやマイクロコンピュータ等のプロセッサとメモリを有しており、リモコン(図示せず)との間で制御信号等のやりとりを行うことや、二次側ユニット4の熱源側制御部20や利用ユニット3a、3b、3cや一次側ユニット5の一次側制御部70との間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0110】
なお、第2分岐ユニット6bは、分岐回路14bと分岐ユニット制御部60bを有している。第3分岐ユニット6cは、分岐回路14cと分岐ユニット制御部60cを有している。
【0111】
(8)制御部
冷凍サイクルシステム1では、上述の熱源側制御部20、利用側制御部50a、50b、50c、分岐ユニット制御部60a、60b、60c、一次側制御部70が、有線または無線を介して相互に通信可能に接続されることで、制御部80を構成している。したがって、この制御部80は、各種センサ37、38、39、83、84、85、86、87、88、77、78、79、81、82、58a、58b、58c、59a、59b、59c、121、122等の検出情報および図示しないリモコン等から受け付けた指示情報等に基づいて、各部21(21a)、22、36、44、46a、48a、51a、51b、51c、53a、53b、53c(54a、54b、54c)、66a、66b、66c、67a、67b、67c、71(71a)、72、75(75a)、76、102、104aの動作を制御する。
【0112】
(9)冷凍サイクルシステムの動作
次に、冷凍サイクルシステム1の動作について、
図3~
図6を用いて説明する。
【0113】
冷凍サイクルシステム1の冷凍サイクル運転は、主として、冷房運転と、暖房運転と、冷房主体運転と、暖房主体運転と、に分けることができる。
【0114】
ここで、冷房運転は、利用側熱交換器が冷媒の蒸発器として機能する運転を行う利用ユニットだけが存在し、利用ユニット全体の蒸発負荷に対してカスケード熱交換器35を二次側の冷媒の放熱器として機能させる冷凍サイクル運転である。
【0115】
暖房運転は、利用側熱交換器が冷媒の放熱器として機能する運転を行う利用ユニットだけが存在し、利用ユニット全体の放熱負荷に対してカスケード熱交換器35を二次側の冷媒の蒸発器として機能させる冷凍サイクル運転である。
【0116】
冷房主体運転は、利用側熱交換器が冷媒の蒸発器として機能する運転を行う利用ユニットと、利用側熱交換器が冷媒の放熱器として機能する運転を行う利用ユニットと、を混在させる運転である。冷房主体運転は、利用ユニット全体の熱負荷のうち蒸発負荷が主体である場合に、この利用ユニット全体の蒸発負荷に対してカスケード熱交換器35を二次側の冷媒の放熱器として機能させる冷凍サイクル運転である。
【0117】
暖房主体運転は、利用側熱交換器が冷媒の蒸発器として機能する運転を行う利用ユニットと、利用側熱交換器が冷媒の放熱器として機能する運転を行う利用ユニットと、を混在させる運転である。暖房主体運転は、利用ユニット全体の熱負荷のうち放熱負荷が主体である場合に、この利用ユニット全体の放熱負荷に対してカスケード熱交換器35を二次側の冷媒の蒸発器として機能させる冷凍サイクル運転である。
【0118】
なお、これらの冷凍サイクル運転を含む冷凍サイクルシステム1の動作は、上記の制御部80によって行われる。
【0119】
(9-1)冷房運転
冷房運転では、例えば、利用ユニット3a、3b、3cの利用側熱交換器52a、52b、52cの全てが冷媒の蒸発器として機能する運転を行い、カスケード熱交換器35が二次側の冷媒の放熱器として機能する運転を行う。この冷房運転では、冷凍サイクルシステム1の一次側冷媒回路5aおよび二次側冷媒回路10は、
図3に示すように構成される。なお、
図3の一次側冷媒回路5aに付された矢印および二次側冷媒回路10に付された矢印は、冷房運転時の冷媒の流れを示している。
【0120】
具体的には、一次側ユニット5においては、一次側切換機構72を第5接続状態に切り換えることによって、カスケード熱交換器35を一次側の冷媒の蒸発器として機能させるようになっている。なお、一次側切換機構72の第5接続状態は、
図3の一次側切換機構72において実線で示す接続状態である。これにより、一次側ユニット5では、一次側圧縮機71から吐出された一次側の冷媒は、一次側切換機構72を通過して、一次側熱交換器74において一次側ファン75から供給される外気と熱交換を行うことで凝縮する。一次側熱交換器74において凝縮した一次側の冷媒は、全開状態に制御された一次側第1膨張弁76を通過し、一部の冷媒が、一次側過冷却熱交換器103を通じて第1液閉鎖弁108に向けて流れ、他の一部の冷媒が、一次側過冷却回路104に分岐して流れる。一次側過冷却回路104を流れる冷媒は、一次側過冷却膨張弁104aを通過する際に減圧される。一次側第1膨張弁76から第1液閉鎖弁108に向けて流れる冷媒は、一次側過冷却熱交換器103において、一次側過冷却膨張弁104aで減圧されて一次側過冷却回路104を流れる冷媒との間で熱交換を行い、過冷却状態となるまで冷却される。過冷却状態となった冷媒は、一次側第1連絡管111、第2液閉鎖弁106、第1接続配管115の順に流れ、一次側第2膨張弁102において減圧される。一次側第2膨張弁102において減圧された冷媒は、カスケード熱交換器35の一次側流路35bを流れる際に、二次側流路35aを流れる二次側の冷媒と熱交換することで蒸発し、第2接続配管113を通じて第2ガス閉鎖弁107に向けて流れる。第2ガス閉鎖弁107を通過した冷媒は、一次側第2連絡管112と第1ガス閉鎖弁109を通過した後、一次側切換機構72に至る。一次側切換機構72を通過した冷媒は、第1吸入流路125aにおいて一次側過冷却回路104を流れた冷媒と合流した後、一次側アキュムレータ105および第2吸入流路125bを介して、一次側圧縮機71に吸入される。
【0121】
また、熱源ユニット2においては、二次側切換機構22を第1接続状態でかつ第4接続状態に切り換えることによって、カスケード熱交換器35を二次側の冷媒の放熱器として機能させるようになっている。なお、二次側切換機構22の第1接続状態は、第1切換弁22aが開状態で第3切換弁22cが閉状態となる接続状態である。二次側切換機構22の第4接続状態は、第4切換弁22dが開状態で第2切換弁22bが閉状態となる接続状態である。ここで、熱源側膨張弁36は、開度調節されている。第1~第3利用ユニット3a、3b、3cにおいては、第1調節弁66a、66b、66c、および、第2調節弁67a、67b、67cは、開状態に制御される。これにより、利用ユニット3a、3b、3cの利用側熱交換器52a、52b、52cの全てが、冷媒の蒸発器として機能する。また、利用ユニット3a、3b、3cの利用側熱交換器52a、52b、52cの全てと熱源ユニット2の二次側圧縮機21の吸入側とは、第1利用配管57a、57b、57c、第1分岐接続管15a、15b、15c、合流配管62a、62b、62c、第1分岐配管63a、63b、63c、第2分岐配管64a、64b、64c、二次側第1連絡管8および二次側第2連絡管9を介して接続された状態になっている。また、二次側過冷却膨張弁48aは、二次側過冷却熱交換器47の出口を二次側第3連絡管7に向けて流れる二次側の冷媒の過冷却度が所定値になるように開度制御されている。バイパス膨張弁46aは、閉状態に制御される。利用ユニット3a、3b、3cにおいては、利用側膨張弁51a、51b、51cは、開度調節されている。
【0122】
このような二次側冷媒回路10において、二次側圧縮機21で圧縮され吐出された二次側の高圧冷媒は、二次側切換機構22を通じて、カスケード熱交換器35の二次側流路35aに送られる。カスケード熱交換器35では、二次側流路35aを流れる二次側の高圧冷媒は放熱し、カスケード熱交換器35の一次側流路35bを流れる一次側の冷媒は蒸発する。カスケード熱交換器35において放熱した二次側の冷媒は、開度調節されている熱源側膨張弁36を通過した後、二次側レシーバ45に流入する。二次側レシーバ45から流出した冷媒の一部は、二次側過冷却回路48に分岐して流れ、二次側過冷却膨張弁48aにおいて減圧された後に、二次側吸入流路23に合流する。二次側過冷却熱交換器47では、二次側レシーバ45から流出した冷媒の他の一部が、二次側過冷却回路48を流れる冷媒によって冷却された後、第3閉鎖弁31を通じて、二次側第3連絡管7に送られる。
【0123】
そして、二次側第3連絡管7に送られた冷媒は、3つに分岐されて、各第1~第3分岐ユニット6a、6b、6cの第3分岐配管61a、61b、61cを通過する。その後、各第2分岐接続管16a、16b、16cを流れた冷媒は、各第1~第3利用ユニット3a、3b、3cの第2利用配管56a、56b、56cに送られる。第2利用配管56a、56b、56cに送られた冷媒は、利用ユニット3a、3b、3cの利用側膨張弁51a、51b、51cに送られる。
【0124】
そして、開度調節されている利用側膨張弁51a、51b、51cを通過した冷媒は、利用側熱交換器52a、52b、52cにおいて、室内ファン53a、53b、53cによって供給される室内空気と熱交換を行う。これにより、利用側熱交換器52a、52b、52cを流れる冷媒は、蒸発し、低圧のガス冷媒となる。室内空気は、冷却されて室内に供給される。これにより、室内空間が冷房される。利用側熱交換器52a、52b、52cにおいて蒸発した低圧のガス冷媒は、第1利用配管57a、57b、57cを流れ、第1分岐接続管15a、15b、15cを流れた後、第1~第3分岐ユニット6a、6b、6cの合流配管62a、62b、62cに送られる。
【0125】
そして、合流配管62a、62b、62cに送られた低圧のガス冷媒は、第1分岐配管63a、63b、63cと、第2分岐配管64a、64b、64cと、に分岐して流れる。第1分岐配管63a、63b、63cにおいて第1調節弁66a、66b、66cを通過した冷媒は、二次側第1連絡管8に送られる。第2分岐配管64a、64b、64cにおいて第2調節弁67a、67b、67cを通過した冷媒は、二次側第2連絡管9に送られる。
【0126】
そして、二次側第1連絡管8および二次側第2連絡管9に送られた低圧のガス冷媒は、第1閉鎖弁32、第2閉鎖弁33、第1熱源配管28、第2熱源配管29、二次側切換機構22、二次側吸入流路23および二次側アキュムレータ30を通じて、二次側圧縮機21の吸入側に戻される。
【0127】
このようにして、冷房運転における動作が行われる。
【0128】
(9-2)暖房運転
暖房運転では、例えば、利用ユニット3a、3b、3cの利用側熱交換器52a、52b、52cの全てが冷媒の放熱器として機能する運転を行う。また、暖房運転では、カスケード熱交換器35が二次側の冷媒の蒸発器として機能する運転を行う。暖房運転では、冷凍サイクルシステム1の一次側冷媒回路5aおよび二次側冷媒回路10は、
図4に示すように構成される。
図4の一次側冷媒回路5aに付された矢印および二次側冷媒回路10に付された矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。
【0129】
具体的には、一次側ユニット5においては、一次側切換機構72を第6運転状態に切り換えることによって、カスケード熱交換器35を一次側の冷媒の放熱器として機能させるようになっている。一次側切換機構72の第6運転状態は、
図4の一次側切換機構72において破線で示す接続状態である。これにより、一次側ユニット5では、一次側圧縮機71から吐出され、一次側切換機構72を通過して、第1ガス閉鎖弁109を通過した一次側の冷媒は、一次側第2連絡管112と第2ガス閉鎖弁107を通過して、カスケード熱交換器35の一次側流路35bに送られる。カスケード熱交換器35の一次側流路35bを流れる冷媒は、二次側流路35aを流れる二次側の冷媒と熱交換することで凝縮する。カスケード熱交換器35において凝縮した一次側の冷媒は、第1接続配管115、全開状態に制御された一次側第2膨張弁102、第2液閉鎖弁106、一次側第1連絡管111、第1液閉鎖弁108、一次側過冷却熱交換器103の順に流れて、一次側第1膨張弁76において減圧される。なお、暖房運転時には、一次側過冷却膨張弁104aは閉状態に制御されることで、一次側過冷却回路104には冷媒は流れないため、一次側過冷却熱交換器103における熱交換も行われない。なお、一次側第1膨張弁76は、例えば、一次側圧縮機71に吸入される冷媒の過熱度が所定値となるように弁開度が制御される。一次側第1膨張弁76において減圧された冷媒は、一次側熱交換器74において一次側ファン75から供給される外気と熱交換を行うことで蒸発し、一次側切換機構72、一次側アキュムレータ105を通過して、一次側圧縮機71に吸入される。
【0130】
また、熱源ユニット2においては、二次側切換機構22を第2接続状態でかつ第3接続状態に切り換える。これにより、カスケード熱交換器35を二次側の冷媒の蒸発器として機能させるようになっている。二次側切換機構22の第2接続状態は、第1切換弁22aが閉状態で第3切換弁22cが開状態の接続状態である。二次側切換機構22の第3接続状態は、第2切換弁22bが開状態で第4切換弁22dが閉状態の接続状態である。また、熱源側膨張弁36は、開度調節されている。第1~第3分岐ユニット6a、6b、6cにおいては、第1調節弁66a、66b、66cが開状態に制御され、第2調節弁67a、67b、67cが閉状態に制御される。これにより、利用ユニット3a、3b、3cの利用側熱交換器52a、52b、52cの全てが冷媒の放熱器として機能する。そして、利用ユニット3a、3b、3cの利用側熱交換器52a、52b、52cと熱源ユニット2の二次側圧縮機21の吐出側とは、吐出流路24、第1熱源配管28、二次側第1連絡管8、第1分岐配管63a、63b、63c、合流配管62a、62b、62c、第1分岐接続管15a、15b、15c、第1利用配管57a、57b、57cを介して接続された状態になっている。また、二次側過冷却膨張弁48aおよびバイパス膨張弁46aは、閉状態に制御される。利用ユニット3a、3b、3cにおいては、利用側膨張弁51a、51b、51cは、開度調節されている。
【0131】
このような二次側冷媒回路10において、二次側圧縮機21で圧縮され吐出された高圧冷媒は、二次側切換機構22において開状態に制御された第2切換弁22bを通じて、第1熱源配管28に送られる。第1熱源配管28に送られた冷媒は、第1閉鎖弁32を通じて、二次側第1連絡管8に送られる。
【0132】
そして、二次側第1連絡管8に送られた高圧冷媒は、3つに分岐されて、運転中の利用ユニットである各利用ユニット3a、3b、3cの第1分岐配管63a、63b、63cに送られる。第1分岐配管63a、63b、63cに送られた高圧冷媒は、第1調節弁66a、66b、66cを通過し、合流配管62a、62b、62cを流れる。その後、第1分岐接続管15a、15b、15cおよび第1利用配管57a、57b、57cを流れた冷媒が、利用側熱交換器52a、52b、52cに送られる。
【0133】
そして、利用側熱交換器52a、52b、52cに送られた高圧冷媒は、利用側熱交換器52a、52b、52cにおいて、室内ファン53a、53b、53cによって供給される室内空気と熱交換を行う。これにより、利用側熱交換器52a、52b、52cを流れる冷媒は、放熱する。室内空気は、加熱されて室内に供給される。これにより、室内空間が暖房される。利用側熱交換器52a、52b、52cにおいて放熱した冷媒は、第2利用配管56a、56b、56cを流れて、開度調節されている利用側膨張弁51a、51b、51cを通過する。その後、第2分岐接続管16a、16b、16cを流れた冷媒は、各分岐ユニット6a、6b、6cの第3分岐配管61a、61b、61cを流れる。
【0134】
そして、第3分岐配管61a、61b、61cに送られた冷媒は、二次側第3連絡管7に送られて合流する。
【0135】
そして、二次側第3連絡管7に送られた冷媒は、第3閉鎖弁31を通じて、熱源側膨張弁36に送られる。熱源側膨張弁36に送られた冷媒は、熱源側膨張弁36において流量調節された後、カスケード熱交換器35に送られる。カスケード熱交換器35では、二次側流路35aを流れる二次側の冷媒は蒸発して低圧のガス冷媒となって二次側切換機構22に送られ、カスケード熱交換器35の一次側流路35bを流れる一次側の冷媒は凝縮する。そして、二次側切換機構22に送られた二次側の低圧のガス冷媒は、二次側吸入流路23および二次側アキュムレータ30通じて、二次側圧縮機21の吸入側に戻される。
【0136】
このようにして、暖房運転における動作が行われる。
【0137】
(9-3)冷房主体運転
冷房主体運転では、例えば、利用ユニット3a、3bの利用側熱交換器52a、52bが冷媒の蒸発器として機能し、かつ、利用ユニット3cの利用側熱交換器52cが冷媒の放熱器として機能する運転を行う。冷房主体運転では、カスケード熱交換器35は、二次側の冷媒の放熱器として機能する。冷房主体運転では、冷凍サイクルシステム1の一次側冷媒回路5aおよび二次側冷媒回路10は、
図5に示されるように構成される。
図5の一次側冷媒回路5aに付された矢印および二次側冷媒回路10に付された矢印は、冷房主体運転時の冷媒の流れを示している。
【0138】
具体的には、一次側ユニット5においては、一次側切換機構72を第5接続状態(
図5の一次側切換機構72の実線で示された状態)に切り換えることによって、カスケード熱交換器35を一次側の冷媒の蒸発器として機能させるようになっている。これにより、一次側ユニット5では、一次側圧縮機71から吐出された一次側の冷媒は、一次側切換機構72を通過して、一次側熱交換器74において一次側ファン75から供給される外気と熱交換を行うことで凝縮する。一次側熱交換器74において凝縮した一次側の冷媒は、全開状態に制御された一次側第1膨張弁76を通過し、一部の冷媒が、一次側過冷却熱交換器103を通じて第1液閉鎖弁108に向けて流れ、他の一部の冷媒が、一次側過冷却回路104に分岐して流れる。一次側過冷却回路104を流れる冷媒は、一次側過冷却膨張弁104aを通過する際に減圧される。一次側第1膨張弁76から第1液閉鎖弁108に向けて流れる冷媒は、一次側過冷却熱交換器103において、一次側過冷却膨張弁104aで減圧されて一次側過冷却回路104を流れる冷媒との間で熱交換を行い、過冷却状態となるまで冷却される。過冷却状態となった冷媒は、一次側第1連絡管111、第2液閉鎖弁106、第1接続配管115の順に流れ、一次側第2膨張弁102において減圧される。一次側第2膨張弁102において減圧された冷媒は、カスケード熱交換器35の一次側流路35bを流れる際に、二次側流路35aを流れる二次側の冷媒と熱交換することで蒸発し、第2接続配管113を通じて第2ガス閉鎖弁107に向けて流れる。第2ガス閉鎖弁107を通過した冷媒は、一次側第2連絡管112と第1ガス閉鎖弁109を通過した後、一次側切換機構72に至る。一次側切換機構72を通過した冷媒は、第1吸入流路125aにおいて一次側過冷却回路104を流れた冷媒と合流した後、一次側アキュムレータ105および第2吸入流路125bを介して、一次側圧縮機71に吸入される。
【0139】
また、熱源ユニット2においては、二次側切換機構22を第1接続状態(第1切換弁22aが開状態で第3切換弁22cが閉状態)でかつ第3接続状態(第2切換弁22bが開状態で第4切換弁22dが閉状態)に切り換えることによって、カスケード熱交換器35を二次側の冷媒の放熱器として機能させるようになっている。また、熱源側膨張弁36は、開度調節されている。第1~第3分岐ユニット6a、6b、6cにおいては、第1調節弁66c、および、第2調節弁67a、67bが開状態に制御され、かつ、第1調節弁66a、66b、および、第2調節弁67cが閉状態に制御される。これにより、利用ユニット3a、3bの利用側熱交換器52a、52bが冷媒の蒸発器として機能し、かつ、利用ユニット3cの利用側熱交換器52cが冷媒の放熱器として機能する。また、利用ユニット3a、3bの利用側熱交換器52a、52bと熱源ユニット2の二次側圧縮機21の吸入側とが二次側第2連絡管9を介して接続された状態になり、かつ、利用ユニット3cの利用側熱交換器52cと熱源ユニット2の二次側圧縮機21の吐出側とが二次側第1連絡管8を介して接続された状態になっている。また、二次側過冷却膨張弁48aは、二次側過冷却熱交換器47の出口を二次側第3連絡管7に向けて流れる二次側の冷媒の過冷却度が所定値になるように開度制御されている。バイパス膨張弁46aは、閉状態に制御される。利用ユニット3a、3b、3cにおいては、利用側膨張弁51a、51b、51cは、開度調節されている。
【0140】
このような二次側冷媒回路10において、二次側圧縮機21で圧縮され吐出された二次側の高圧冷媒は、その一部が、二次側切換機構22、第1熱源配管28および第1閉鎖弁32を通じて、二次側第1連絡管8に送られ、残りが、二次側切換機構22および第3熱源配管25を通じて、カスケード熱交換器35の二次側流路35aに送られる。
【0141】
そして、二次側第1連絡管8に送られた高圧冷媒は、第1分岐配管63cに送られる。第1分岐配管63cに送られた高圧冷媒は、第1調節弁66cおよび合流配管62cを通じて、利用ユニット3cの利用側熱交換器52cに送られる。
【0142】
そして、利用側熱交換器52cに送られた高圧冷媒は、利用側熱交換器52cにおいて、室内ファン53cによって供給される室内空気と熱交換を行う。これにより、利用側熱交換器52cを流れる冷媒は、放熱する。室内空気は、加熱されて室内に供給されて、利用ユニット3cの暖房運転が行われる。利用側熱交換器52cにおいて放熱した冷媒は、第2利用配管56cを流れ、利用側膨張弁51cにおいて流量調節される。その後、第2分岐接続管16cを流れた冷媒は、分岐ユニット6cの第3分岐配管61cに送られる。
【0143】
そして、第3分岐配管61cに送られた冷媒は、二次側第3連絡管7に送られる。
【0144】
また、カスケード熱交換器35の二次側流路35aに送られた高圧冷媒は、カスケード熱交換器35において、一次側流路35bを流れる一次側の冷媒と熱交換を行うことによって放熱する。カスケード熱交換器35において放熱した二次側の冷媒は、熱源側膨張弁36において流量調節された後、二次側レシーバ45に流入する。二次側レシーバ45から流出した冷媒の一部は、二次側過冷却回路48に分岐して流れ、二次側過冷却膨張弁48aにおいて減圧された後に、二次側吸入流路23に合流する。二次側過冷却熱交換器47では、二次側レシーバ45から流出した冷媒の他の一部が、二次側過冷却回路48を流れる冷媒によって冷却された後、第3閉鎖弁31を通じて、二次側第3連絡管7に送られて、利用側熱交換器52cにおいて放熱した冷媒と合流する。
【0145】
そして、二次側第3連絡管7において合流した冷媒は、2つに分岐して、分岐ユニット6a、6bの各第3分岐配管61a、61bに送られる。その後、第2分岐接続管16a、16bを流れた冷媒は、各第1~第2利用ユニット3a、3bの第2利用配管56a、56bに送られる。第2利用配管56a、56bを流れる冷媒は、利用ユニット3a、3bの利用側膨張弁51a、51bを通過する。
【0146】
そして、開度調節されている利用側膨張弁51a、51bを通過した冷媒は、利用側熱交換器52a、52bにおいて、室内ファン53a、53bによって供給される室内空気と熱交換を行う。これにより、利用側熱交換器52a、52bを流れる冷媒は、蒸発し、低圧のガス冷媒となる。室内空気は、冷却されて室内に供給される。これにより、室内空間が冷房される。利用側熱交換器52a、52bにおいて蒸発した低圧のガス冷媒は、第1~第2分岐ユニット6a、6bの合流配管62a、62bに送られる。
【0147】
そして、合流配管62a、62bに送られた低圧のガス冷媒は、第2調節弁67a、67bおよび第2分岐配管64a、64bを通じて、二次側第2連絡管9に送られて合流する。
【0148】
そして、二次側第2連絡管9に送られた低圧のガス冷媒は、第2閉鎖弁33、第2熱源配管29、二次側吸入流路23および二次側アキュムレータ30を通じて、二次側圧縮機21の吸入側に戻される。
【0149】
このようにして、冷房主体運転における動作が行われる。
【0150】
(9-4)暖房主体運転
暖房主体運転では、例えば、利用ユニット3a、3bの利用側熱交換器52a、52bが冷媒の放熱器として機能し、かつ、利用側熱交換器52cが冷媒の蒸発器として機能する運転を行う。暖房主体運転では、カスケード熱交換器35は、二次側の冷媒の蒸発器として機能する。暖房主体運転では、冷凍サイクルシステム1の一次側冷媒回路5aおよび二次側冷媒回路10は、
図6に示すように構成される。
図6の一次側冷媒回路5aに付された矢印および二次側冷媒回路10に付された矢印は、暖房主体運転時の冷媒の流れを示している。
【0151】
具体的には、一次側ユニット5においては、一次側切換機構72を第6運転状態に切り換えることによって、カスケード熱交換器35を一次側の冷媒の放熱器として機能させるようになっている。一次側切換機構72の第6運転状態は、
図6の一次側切換機構72において破線で示された接続状態である。これにより、一次側ユニット5では、一次側圧縮機71から吐出され、一次側切換機構72を通過して、第1ガス閉鎖弁109を通過した一次側の冷媒は、一次側第2連絡管112と第2ガス閉鎖弁107を通過して、カスケード熱交換器35の一次側流路35bに送られる。カスケード熱交換器35の一次側流路35bを流れる冷媒は、二次側流路35aを流れる二次側の冷媒と熱交換することで凝縮する。カスケード熱交換器35において凝縮した一次側の冷媒は、第1接続配管115、全開状態に制御された一次側第2膨張弁102、第2液閉鎖弁106、一次側第1連絡管111、第1液閉鎖弁108、一次側過冷却熱交換器103の順に流れて、一次側第1膨張弁76において減圧される。なお、暖房主体運転時には、一次側過冷却膨張弁104aは閉状態に制御されることで、一次側過冷却回路104には冷媒は流れないため、一次側過冷却熱交換器103における熱交換も行われない。なお、一次側第1膨張弁76は、例えば、一次側圧縮機71に吸入される冷媒の過熱度が所定値となるように弁開度が制御される。一次側第1膨張弁76において減圧された冷媒は、一次側熱交換器74において一次側ファン75から供給される外気と熱交換を行うことで蒸発し、一次側切換機構72、一次側アキュムレータ105を通過して、一次側圧縮機71に吸入される。
【0152】
熱源ユニット2においては、二次側切換機構22を第2接続状態でかつ第3接続状態に切り換える。二次側切換機構22の第2接続状態は、第1切換弁22aが閉状態で第3切換弁22cが開状態の接続状態である。二次側切換機構22の第3接続状態は、第2切換弁22bが開状態で第4切換弁22dが閉状態の接続状態である。これによって、カスケード熱交換器35を二次側の冷媒の蒸発器として機能させるようになっている。また、熱源側膨張弁36は、開度調節されている。第1~第3分岐ユニット6a、6b、6cにおいては、第1調節弁66a、66b、および、第2調節弁67cが開状態に制御され、かつ、第1調節弁66c、および、第2調節弁67a、67bが閉状態に制御される。これによって、利用ユニット3a、3bの利用側熱交換器52a、52bは冷媒の放熱器として機能し、利用ユニット3cの利用側熱交換器52cは冷媒の蒸発器として機能する。そして、利用ユニット3cの利用側熱交換器52cと熱源ユニット2の二次側圧縮機21の吸入側とは、第1利用配管57c、第1分岐接続管15c、合流配管62c、第2分岐配管64c、および二次側第2連絡管9を介して接続された状態になる。また、利用ユニット3a、3bの利用側熱交換器52a、52bと熱源ユニット2の二次側圧縮機21の吐出側とは、吐出流路24、第1熱源配管28、二次側第1連絡管8、第1分岐配管63a、63b、合流配管62a、62b、第1分岐接続管15a、15b、第1利用配管57a、57bを介して接続された状態になっている。また、二次側過冷却膨張弁48aおよびバイパス膨張弁46aは、閉状態に制御される。利用ユニット3a、3b、3cにおいては、利用側膨張弁51a、51b、51cは、開度調節されている。
【0153】
このような二次側冷媒回路10において、二次側圧縮機21で圧縮され吐出された二次側の高圧冷媒は、二次側切換機構22、第1熱源配管28および第1閉鎖弁32を通じて、二次側第1連絡管8に送られる。
【0154】
そして、二次側第1連絡管8に送られた高圧冷媒は、2つに分岐されて、運転中の利用ユニットである各第1利用ユニット3aと第2利用ユニット3bにそれぞれ接続されている第1分岐ユニット6aと第2分岐ユニット6bの第1分岐配管63a、63bに送られる。第1分岐配管63a、63bに送られた高圧冷媒は、第1調節弁66a、66b、合流配管62a、62b、および第1分岐接続管15a、15bを通じて、第1利用ユニット3aと第2利用ユニット3bの利用側熱交換器52a、52bに送られる。
【0155】
そして、利用側熱交換器52a、52bに送られた高圧冷媒は、利用側熱交換器52a、52bにおいて、室内ファン53a、53bによって供給される室内空気と熱交換を行う。これにより、利用側熱交換器52a、52bを流れる冷媒は、放熱する。室内空気は、加熱されて室内に供給される。これにより、室内空間が暖房される。利用側熱交換器52a、52bにおいて放熱した冷媒は、第2利用配管56a、56bを流れ、開度調節されている利用側膨張弁51a、51bを通過する。その後、第2分岐接続管16a、16bを流れた冷媒は、分岐ユニット6a、6bの第3分岐配管61a、61bを介して、二次側第3連絡管7に送られる。
【0156】
そして、二次側第3連絡管7に送られた冷媒は、その一部が、分岐ユニット6cの第3分岐配管61cに送られ、残りが、第3閉鎖弁31を通じて、熱源側膨張弁36に送られる。
【0157】
そして、第3分岐配管61cに送られた冷媒は、第2分岐接続管16cを介して、利用ユニット3cの第2利用配管56cを流れ、利用側膨張弁51cに送られる。
【0158】
そして、開度調節されている利用側膨張弁51cを通過した冷媒は、利用側熱交換器52cにおいて、室内ファン53cによって供給される室内空気と熱交換を行う。これにより、利用側熱交換器52cを流れる冷媒は、蒸発し、低圧のガス冷媒となる。室内空気は、冷却されて室内に供給される。これにより、室内空間が冷房される。利用側熱交換器52cにおいて蒸発した低圧のガス冷媒は、第1利用配管57cと第1分岐接続管15cを通過し、合流配管62cに送られる。
【0159】
そして、合流配管62cに送られた低圧のガス冷媒は、第2調節弁67cおよび第2分岐配管64cを通じて、二次側第2連絡管9に送られる。
【0160】
そして、二次側第2連絡管9に送られた低圧のガス冷媒は、第2閉鎖弁33、第2熱源配管29、二次側吸入流路23および二次側アキュムレータ30を通じて、二次側圧縮機21の吸入側に戻される。
【0161】
また、熱源側膨張弁36に送られた冷媒は、開度調節されている熱源側膨張弁36を通過した後、カスケード熱交換器35の二次側流路35aにおいて、一次側流路35bを流れる一次側の冷媒と熱交換を行う。これにより、カスケード熱交換器35の二次側流路35aを流れる冷媒は、蒸発して低圧のガス冷媒になり、二次側切換機構22に送られる。二次側切換機構22に送られた低圧のガス冷媒は、二次側吸入流路23において利用側熱交換器52cにおいて蒸発した低圧のガス冷媒と合流する。合流した冷媒は、二次側アキュムレータ30を介して、二次側圧縮機21の吸入側に戻される。
【0162】
このようにして、暖房主体運転における動作が行われる。
【0163】
(10)余剰冷媒制御
図7に、余剰冷媒制御のフローチャートを示す。
【0164】
余剰冷媒制御は、カスケード熱交換器35の一次側流路35bにおいて液状態の一次側の冷媒が滞留することで生じるカスケード熱交換器35における熱交換効率の低下を抑制させるための制御である。余剰冷媒制御は、本実施形態においては、暖房運転または暖房主体運転が行われている際に、所定開始条件を満たすことで行われる。
【0165】
なお、以下では、暖房運転時に所定条件を満たすことで行われる余剰冷媒制御を例に挙げて説明する。また、余剰冷媒制御中の冷凍サイクルシステム1における一次側の冷媒および二次側の冷媒が流れる様子を
図8に示す。
【0166】
ステップS1では、制御部80は、冷凍サイクルシステム1において暖房運転を行う。
【0167】
一次側冷媒回路5aにおいては、制御部80における一次側制御部70が、一次側ユニット5の各部の制御を行う。ここで、一次側制御部70は、カスケード熱交換器35の一次側流路35bにおいて凝縮する一次側の冷媒の凝縮温度が所定の凝縮温度目標値となるように、一次側圧縮機71の回転数を制御する。具体的には、一次側制御部70は、一次側吐出圧力センサ78が検出する一次側の冷媒の圧力に相当する一次側の冷媒の飽和温度が、所定の凝縮温度目標値となるように、一次側圧縮機71の回転数を制御する。また、一次側制御部70は、一次側第2膨張弁102を全開状態に制御し、一次側過冷却膨張弁104aを閉状態に制御する。さらに、一次側制御部70は、一次側第1膨張弁76の弁開度を、一次側圧縮機71が吸入する一次側の冷媒の過熱度が所定値になるように制御する。具体的には、一次側制御部70は、一次側吸入温度センサ81が検出する一次側の冷媒の温度から、一次側吸入圧力センサ79が検出する一次側の冷媒の圧力に相当する一次側の冷媒の飽和温度を差し引くことで得られる過熱度が、所定値になるように、一次側第1膨張弁76を制御する。
【0168】
また、二次側冷媒回路10においては、制御部80における熱源側制御部20が熱源ユニット2の各部を制御し、制御部80における分岐ユニット制御部60a、60b、60cが分岐ユニット6a、6b、6cの各部を制御し、制御部80における利用側制御部50a、50b、50cが利用ユニット3a、3b、3cの各部を制御する。ここで、熱源側制御部20は、利用側熱交換器52a、52b、52cにおける放熱負荷に応じた回転数となるように、二次側圧縮機21の回転数を制御する。また、熱源側制御部20は、二次側過冷却膨張弁48aおよびバイパス膨張弁46aを閉状態に制御する。さらに、熱源側制御部20は、熱源側膨張弁36の弁開度を、二次側圧縮機21が吸入する二次側の冷媒の過熱度が所定値になるように制御する。具体的には、熱源側制御部20は、二次側吸入温度センサ88が検出する二次側の冷媒の温度から、二次側吸入圧力センサ37が検出する二次側の冷媒の圧力に相当する二次側の冷媒の飽和温度を差し引くことで得られる過熱度が、所定値になるように、熱源側膨張弁36を制御する。また、分岐ユニット制御部60a、60b、60cは、第1調節弁66a、66b、66cを開状態とし、第2調節弁67a、67b、67cを閉状態に制御する。また、利用側制御部50a、50b、50cは、利用側膨張弁51a、51b、51cの開度を制御している。
【0169】
ステップS2では、制御部80は、冷凍サイクルシステム1が所定開始条件を満たしているか否かを判断する。所定開始条件は、カスケード熱交換器35の一次側流路35bにおいて液状態の一次側の冷媒が滞留しているか否かを判断するものである。本実施形態では、カスケード熱交換器35の一次側流路35bの出口を流れる一次側の冷媒の過冷却度が所定値以上になっている場合に、所定開始条件を満たすと判断される。具体的には、制御部80における熱源側制御部20が、カスケード熱交換器35の一次側流路35bにおける一次側の冷媒の凝縮温度から、一次側第1温度センサ121によって検出される一次側の冷媒の温度を差し引くことで得られる過冷却度が、所定値以上になっているか否かを判断する。ここで、本実施形態においては、熱源側制御部20は、一次側制御部70から一次側吐出圧力センサ78の検出圧力の情報を受け取ることにより、当該情報の圧力に相当する一次側の冷媒の飽和温度を、一次側の冷媒の凝縮温度として把握している。そして、所定開始条件を満たしていると判断された場合には、ステップS3に移行し、所定開始条件を満たしていないと判断された場合には、ステップS2を継続させる。
【0170】
ステップS3では、制御部80は、余剰冷媒制御を開始する。余剰冷媒制御では、制御部80において、熱源側制御部20から送信される所定開始条件を満たした旨の情報を受け取った一次側制御部70が、一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を閉状態から全開状態に制御する。
【0171】
ステップS4では、制御部80は、冷凍サイクルシステム1が所定終了条件を満たしているか否かを判断する。所定終了条件は、カスケード熱交換器35の一次側流路35bにおいて液状態の一次側の冷媒の滞留が改善しているか否かを判断するものである。本実施形態では、カスケード熱交換器35の一次側流路35bの出口を流れる一次側の冷媒の過冷却度が所定値未満になっている場合に、所定終了条件を満たすと判断される。なお、所定終了条件における所定値は、所定開始条件における所定値よりも小さい値とすることができる。また、一次側流路35bの出口を流れる一次側の冷媒の過冷却度の判定については、ステップS2と同様である。そして、所定終了条件を満たしていると判断された場合には、ステップS5に移行し、所定終了条件を満たしていないと判断された場合には、ステップS3を継続させる。
【0172】
ステップS5では、制御部80は、余剰冷媒制御を終了する。具体的には、制御部80における一次側制御部70が、一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を閉状態に制御する。これにより、冷凍サイクルシステム1は、余剰冷媒制御が行われる前の運転状態に復帰する。
【0173】
(11)実施形態の特徴
二元冷凍サイクルを行う冷凍サイクルシステムでは、一次側の冷媒と二次側の冷媒とをプレート熱交換器等で構成されたカスケード熱交換器において熱交換させる。ここで、例えば、利用側の負荷変動等によりカスケード熱交換器に流入する二次側の冷媒の温度が低下し、カスケード熱交換器において一次側の冷媒の過冷却度が増大すると、カスケード熱交換器における一次側流路の全体に占める液冷媒の領域が増大してしまう。このため、カスケード熱交換器において、二次側の冷媒との熱交換により一次側の冷媒を相変化させることが可能な領域が小さくなり、熱交換効率が低下する。そうすると、カスケード熱交換器の一次側流路に送られた一次側のガス冷媒が凝縮しにくくなり、一次側冷媒回路における高圧が上昇しがちになる。これにより、凝縮圧力を一定に維持する制御を行っている一次側圧縮機は、高圧の上昇を抑制させるために回転数が低下するように制御される。ここで、一次側冷媒回路における一次側の冷媒の循環量は低下してしまうが、二次側冷媒回路における二次側の冷媒の循環量は変わらないため、カスケード熱交換器の一次側流路を流れる一次側の冷媒は、二次側の冷媒によりさらに冷却される。したがって、カスケード熱交換器の一次側流路において液状態の一次側冷媒が占める割合がさらに増大してしまう状態になる。
【0174】
特に、二元冷凍サイクルを行う冷凍サイクルシステムにおいて、二次側冷媒回路における二次側の冷媒の循環量が、二次側冷媒回路の利用側熱交換器での負荷に応じて制御されている場合には、一次側冷媒回路における一次側の冷媒の循環量が低下したとしても、当該一次側の冷媒の循環量の低下に伴う二次側の冷媒の循環量の調節が困難であるため、カスケード熱交換器の一次側流路において液状態の一次側冷媒が占める割合が増大している状況を解消させることが困難になる。
【0175】
また、一次側冷媒回路において予め充填されている一次側の冷媒の充填量が多めである場合においては、上記状況が生じやすい。さらに、一次側冷媒回路の液冷媒の流路において余剰冷媒を貯留できるレシーバが設けられていない場合には、上記状況を解消させることが特に困難となる場合がある。
【0176】
これに対して、本実施形態の冷凍サイクルシステム1では、カスケード熱交換器35の一次側流路35bが一次側冷媒の凝縮器として機能する暖房運転および暖房主体運転時に、所定開始条件が満たされることでカスケード熱交換器35の一次側流路35bにおいて一次側の液冷媒の滞留が生じていることを把握する。本実施形態では、カスケード熱交換器35の一次側流路35bの一次側の液冷媒の過冷却度が所定値以上である場合に、滞留が生じていると判断している。これは、カスケード熱交換器35の一次側流路35bで一次側の液冷媒が滞留している場合には、一次側流路35bにおいて凝縮した一次側の冷媒が一次側流路35bから流出しにくくなり、二次側流路35aを流れる二次側の冷媒によって冷却される時間が長くなることにより、一次側流路35bにおける一次側の液冷媒の過冷却度が増した状態となるからである。そして、本実施形態の冷凍サイクルシステム1では、このようにしてカスケード熱交換器35の一次側流路35bで一次側の液冷媒が滞留していることを把握すると、余剰冷媒制御を開始する。余剰冷媒制御では、一次側冷媒回路5aにおいて液冷媒が流れている領域が一次側過冷却回路104を介して一次側圧縮機71の吸入側に接続された状態となる。このため、滞留していた一次側の液冷媒が一次側圧縮機71の吸入側に向けて流れ、一次側流路35bにおける一次側の液冷媒の滞留を解消させることができる。これにより、カスケード熱交換器35における一次側の冷媒と二次側の冷媒との熱交換効率が改善される。
【0177】
また、一次側冷媒回路5aでは、一次側過冷却回路104が、一次側吸入流路125に設けられた一次側アキュムレータ105の上流側に接続されている。このため、余剰冷媒制御を行う場合においても、一次側アキュムレータ105において一次側の液冷媒を貯留することができるため、一次側圧縮機71に液冷媒が供給されることを避けることができる。特に、余剰冷媒制御において、一次側過冷却膨張弁104aを全開状態に制御することで、カスケード熱交換器35の一次側流路35bにおける液冷媒の滞留を迅速に解消させる場合においても、一次側圧縮機71に液冷媒が供給されることが抑制される。
【0178】
さらに、以上の本実施形態の冷凍サイクルシステム1では、二次側冷媒回路10において、冷媒として二酸化炭素の冷媒を用いた場合には、地球温暖化係数(GWP)を低く抑えることができる。また、利用側において冷媒漏洩が生じたとしても、冷媒にフロンが含まれていないため、利用側においてフロンが流出することがない。
【0179】
また、以上の本実施形態の冷凍サイクルシステム1では、二元冷凍サイクルが採用されているため、二次側冷媒回路10において十分な能力を出すことが可能となっている。
【0180】
(12)他の実施形態
(12-1)他の実施形態A
上記実施形態では、余剰冷媒制御を行う際に一次側過冷却膨張弁104aを開ける場合を例として挙げて説明した。
【0181】
これに対して、
図9に示すように、上記実施形態の一次側冷媒回路5aにおける一次側過冷却回路104と一次側過冷却膨張弁104aおよび一次側過冷却熱交換器103の代わりに、または、これに加えて、一次側接続回路134(バイパス回路に相当)および一次側接続膨張弁134a(制御弁に相当)を備えていてもよい。
【0182】
一次側接続回路134は、液接続配管126のうちの第2液接続配管126bと、一次側吸入流路125のうちの第1吸入流路125aと、を接続する回路である。一次側接続膨張弁134aは、一次側接続回路134に設けられており、一次側接続回路134を通過する一次側の冷媒の量を調節するために開度調節可能な電動膨張弁である。
【0183】
そして、余剰冷媒制御を行う際に、一次側接続膨張弁134aを開ける制御を行い、一次側接続回路134に一次側の冷媒を流すことにより、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0184】
(12―2)他の実施形態B
上記実施形態では、余剰冷媒制御を行う際に一次側過冷却膨張弁104aを開ける場合を例として挙げて説明した。
【0185】
これに対して、
図10に示すように、上記実施形態の一次側冷媒回路5aにおける一次側過冷却回路104と一次側過冷却膨張弁104aおよび一次側過冷却熱交換器103の代わりに、または、これに加えて、一次側レシーバ145と、一次側バイパス回路144(バイパス回路に相当)と、一次側バイパス膨張弁144a(制御弁に相当)を備えていてもよい。
【0186】
一次側レシーバ145は、液接続配管126のうちの第2液接続配管126bに設けられた冷媒容器であり、一次側の冷媒を貯留することが可能である。一次側レシーバ145からは、第2液接続配管126bのうち一次側レシーバ145内と一次側第1膨張弁76とを接続する配管と、第2液接続配管126bのうち一次側レシーバ145内と第1液閉鎖弁108とを接続する配管と、一次側バイパス回路144と、が延び出している。一次側バイパス回路144は、一次側レシーバ145の内部における気相領域から延び出しており、一次側吸入流路125のうちの第1吸入流路125aに接続されている回路である。一次側バイパス膨張弁144aは、一次側バイパス回路144に設けられており、一次側バイパス回路144を通過する一次側の冷媒の量を調節するために開度調節可能な電動膨張弁である。
【0187】
そして、余剰冷媒制御を行う際に、一次側バイパス膨張弁144aを開ける制御を行い、一次側バイパス回路144に一次側の冷媒を流すことにより、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、一次側冷媒回路5aが一次側レシーバ145を備えることにより、カスケード熱交換器35の一次側流路35bにおける液冷媒の滞留を発生しにくくさせることができる。
【0188】
(12-3)他の実施形態C
上記実施形態では、余剰冷媒制御時に、一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を全開とする場合を例として挙げて説明した。
【0189】
これに対して、余剰冷媒制御において、上記実施形態の一次側過冷却膨張弁104aや、上記他の実施形態Aの一次側接続膨張弁134aや、上記他の実施形態Bの一次側バイパス膨張弁144aの弁開度について、全開とするのではなく、所定の開度に制御するようにしてもよい。
【0190】
例えば、余剰冷媒制御においては、一次側圧縮機71の吸入する一次側の冷媒の過熱度が所定値となるように、一次側過冷却膨張弁104aや一次側接続膨張弁134aや一次側バイパス膨張弁144aの弁開度を制御してもよい。
【0191】
また、例えば、余剰冷媒制御では、一次側過冷却膨張弁104aや一次側接続膨張弁134aや一次側バイパス膨張弁144aの弁開度は、カスケード熱交換器35の一次側流路35bの出口を流れる一次側の冷媒の過冷却度に応じて制御してもよい。具体的には、ここで、カスケード熱交換器35の一次側流路35bの出口を流れる一次側の冷媒の過冷却度が大きくなるほど弁開度が大きくなるように、一次側過冷却膨張弁104aや一次側接続膨張弁134aや一次側バイパス膨張弁144aを制御してもよい。
【0192】
(12-4)他の実施形態D
上記実施形態では、余剰冷媒制御により一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を全開状態に制御する場合を例に挙げて説明した。
【0193】
これに対して、余剰冷媒制御では、一次側過冷却膨張弁104aを制御するだけでなく、さらに、二次側圧縮機21の回転数を制御するようにしてもよい。例えば、二次側圧縮機21の回転数を、所定開始条件を満たした際の回転数よりも下げるように制御することにより、カスケード熱交換器35における一次側の冷媒と二次側の冷媒との熱交換を抑制させ、一次側流路35bの一次側の冷媒の過冷却度を小さく抑えることが可能になる。これにより、カスケード熱交換器35の一次側流路35bにおいて一次側の液冷媒が滞留する状態を抑制させることが可能になる。
【0194】
なお、余剰冷媒制御では、二次側圧縮機21の回転数を低下させる制御よりも、一次側過冷却膨張弁104aの弁開度の制御を優先させて行うことが好ましい。例えば、一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を増大させる制御または開度を全開にする制御を開始した後、所定時間経過しても所定開始条件を満たす状態が継続されてしまう場合もしくは所定時間経過しても所定終了条件を満たす状態とならない場合に、二次側圧縮機21の回転数を低下させる制御を開始させるようにしてもよい。
【0195】
(12-5)他の実施形態E
上記実施形態では、カスケード熱交換器35の一次側流路35bの出口を流れる一次側の冷媒の過冷却度が所定値未満になっている場合に余剰冷媒制御を終了させる場合を例に挙げて説明した。
【0196】
これに対して、余剰冷媒制御を終了させるための条件は、これに限られず、例えば、余剰冷媒制御を開始してから所定時間が経過した場合に、余剰冷媒制御を終了させるようにしてもよい。
【0197】
(12-6)他の実施形態F
上記実施形態では、カスケード熱交換器35の一次側流路35bの出口を流れる一次側の冷媒の過冷却度が所定値以上になっている場合に余剰冷媒制御を開始させる場合を例に挙げて説明した。
【0198】
これに対して、余剰冷媒制御を開始させるための所定開始条件は、これに限られず、以下に示す他の条件としてもよい。
【0199】
例えば、所定開始条件は、一次側冷媒回路5aにおける一次側の冷媒の高圧圧力から二次側冷媒回路10における二次側の冷媒の低圧圧力を差し引いて得られる値が所定値以上であることであってもよい。この場合には、例えば、一次側制御部70から一次側吐出圧力センサ78の検出圧力の情報を受け取った熱源側制御部20が、当該情報の圧力を一次側の冷媒の高圧圧力として把握してもよい。そして、熱源側制御部20が、当該一次側の冷媒の高圧圧力から二次側吸入圧力センサ37によって検出される二次側の冷媒の低圧圧力を差し引いた値が所定値以上になっているか否かを判断することで、所定開始条件を判断してもよい。
【0200】
また、所定開始条件は、例えば、一次側冷媒回路5aにおける一次側の冷媒の凝縮温度から二次側冷媒回路10における二次側の冷媒の蒸発温度を差し引いて得られる値が所定値以上であることであってもよい。この場合には、例えば、一次側制御部70から一次側吐出圧力センサ78の検出圧力の情報を受け取った熱源側制御部20が、当該情報の圧力に相当する一次側の冷媒の飽和温度を、一次側の冷媒の凝縮温度として把握してもよい。また、熱源側制御部20は、二次側吸入圧力センサ37によって検出される二次側の冷媒の圧力に相当する飽和温度を、二次側の冷媒の蒸発温度として把握してもよい。そして、熱源側制御部20が、当該一次側の冷媒の凝縮温度から当該二次側の冷媒の蒸発温度を差し引いた値が所定値以上になっているか否かを判断することで、所定開始条件を判断してもよい。なお、一次側の冷媒と二次側の冷媒とで、冷媒の温度圧力特性が異なる場合には、一次側の冷媒の高圧圧力と二次側の冷媒の低圧圧力との差により所定開始条件を判断するよりも、一次側の冷媒の高圧圧力に相当する一次側の冷媒温度と二次側の冷媒の低圧圧力に相当する二次側の冷媒温度との差により所定開始条件を判断するほうが好ましい。これは、カスケード熱交換器35の一次側流路35bにおいて一次側の液冷媒の滞留が生じていることをより正確に把握しやすいためである。また、プレート熱交換器等で構成されるカスケード熱交換器35では、一次側流路35bの中間位置の冷媒温度や二次側流路35aの中間位置の冷媒温度を検出するための温度センサの設置が困難である場合があるため、冷媒の圧力から換算した冷媒の温度を用いて判断することが好ましい。なお、二次側冷媒回路10において暖房運転または暖房主体運転が行われている際には、熱源側制御部20は、二次側圧縮機21が吸入する二次側の冷媒の過熱度が所定値となるように、熱源側膨張弁36の弁開度を制御している。ここで、カスケード熱交換器35において、一次側流路35bの一次側の液冷媒が滞留している状況になると、二次側流路35aを流れる二次側の冷媒を十分に蒸発させることが難しくなり、二次側の冷媒の過熱度が低下しがちになる。そうすると、熱源側制御部20は、二次側の冷媒の過熱度の低下を抑制するために、熱源側膨張弁36の弁開度を絞るように制御するため、二次側の冷媒の低圧圧力が低下し、二次側の冷媒の蒸発温度が低下する。したがって、一次側の冷媒の凝縮温度から二次側の冷媒の蒸発温度を差し引いて得られる値が増大した場合に、カスケード熱交換器35の一次側流路35bで一次側の液冷媒の滞留が生じていると推測することができる。
【0201】
また、所定開始条件は、例えば、一次側冷媒回路5aにおける一次側の冷媒の凝縮温度からカスケード熱交換器35の二次側流路35aに流入する二次側の冷媒の温度を差し引いて得られる値が所定値以上であることであってもよい。この場合には、例えば、一次側制御部70から一次側吐出圧力センサ78の検出圧力の情報を受け取った熱源側制御部20が、当該情報の圧力に相当する一次側の冷媒の飽和温度を、一次側の冷媒の凝縮温度として把握してもよい。そして、熱源側制御部20が、当該一次側の冷媒の凝縮温度から二次側第1温度センサ83によって検出される二次側の冷媒の温度を差し引いた値が所定値以上になっているか否かを判断することで、所定開始条件を判断してもよい。なお、二次側流路35aに流入する二次側の冷媒の温度の低下は、二次側の冷媒の低圧圧力が低下および二次側の冷媒の蒸発温度の低下に対応して生じるものである。
【0202】
(12-7)他の実施形態G
上記実施形態では、カスケード熱交換器35の一次側流路35bの出口を流れる一次側の冷媒の過冷却度が所定値以上になっている場合に余剰冷媒制御を開始させる場合を例に挙げて説明した。
【0203】
これに対して、余剰冷媒制御を開始させるための所定開始条件は、これに限られず、例えば、以下に示す他の条件のように、熱源ユニット2が備えるセンサのみから熱源側制御部20が判断するようにしてもよい。すなわち、熱源側制御部20が、一次側ユニット5の一次側制御部70からの情報を得ること無く、所定開始条件を判断できるようにしてもよい。
【0204】
例えば、所定開始条件は、カスケード熱交換器35の一次側流路35bから流出する一次側の冷媒の温度と、カスケード熱交換器35の二次側流路35aに流入する二次側の冷媒の温度と、の差が所定値以下であることであってもよい。この場合には、例えば、熱源側制御部20は、一次側第1温度センサ121が検出する温度から二次側第1温度センサ83が検出する温度を差し引いて得られる値が所定値以下であるか否かを判断することで、所定開始条件を判断してもよい。ここで、カスケード熱交換器35において、一次側流路35bから流出する一次側の冷媒と二次側流路35aに流入する二次側の冷媒との温度差が小さくなっている場合には、一次側流路35bの一次側の冷媒が冷却されすぎた状態でカスケード熱交換器35内に滞っている状態にあるものと推測することができる。
【0205】
また、所定開始条件は、例えば、二次側圧縮機21が吸入する二次側の冷媒の過熱度が所定値以下であることであってもよい。この場合には、例えば、熱源側制御部20は、二次側吸入圧力センサ37により検出される二次側の冷媒圧力に相当する二次側の冷媒の飽和温度を把握することができる。そして、熱源側制御部20は、当該飽和温度から二次側吸入温度センサ88が検出する二次側の冷媒の温度を差し引いて得られる値が所定値以上であるか否かを判断することで、所定開始条件を判断してもよい。ここで、二次側圧縮機21が吸入する二次側の冷媒の過熱度が小さくなっている場合には、カスケード熱交換器35の二次側流路35aにおいて二次側の冷媒を一次側の冷媒により十分に加熱することができておらず、一次側流路35bにおいて一次側の液冷媒が滞留している状態にあるものと推測することができる。
【0206】
また、所定開始条件は、例えば、熱源側膨張弁36の弁開度が所定開度よりも小さいことであってもよい。この場合には、例えば、熱源側制御部20は、熱源側膨張弁36の制御開度が所定開度よりも小さいか否かを判断することで、所定開始条件を判断してもよい。ここで、二次側冷媒回路10が暖房運転または暖房主体運転を行っている際には、熱源側膨張弁36は、二次側圧縮機21が吸入する二次側の冷媒の過熱度が所定値となるように制御されている。このため、カスケード熱交換器35の二次側流路35aにおいて二次側の冷媒が一次側の冷媒と十分に熱交換されずに、二次側圧縮機21が吸入する二次側の冷媒が湿り気味になる場合には、熱源側膨張弁36の弁開度は小さく制御されることになる。これにより、熱源側膨張弁36の弁開度が小さく制御されている場合においても、一次側流路35bにおいて一次側の液冷媒が滞留している状態にあるものと推測することができる。
【0207】
以上の所定開始条件の判断によれば、熱源側制御部20は、熱源ユニット2が備えるセンサの検出値のみを用いて所定開始条件の判断を行うことができる。このため、熱源側制御部20は、一次側ユニット5が備えるセンサの情報に頼ることなく、所定開始条件の判断を行うことが可能になる。特に、一次側ユニット5の一次側制御部70が、一次側ユニット5の備えるセンサの検出値を熱源ユニット2の熱源側制御部20に送信しない設計となっている場合や、熱源ユニット2の熱源側制御部20が一次側ユニット5の一次側制御部70からの一次側ユニット5の備えるセンサの検出値の情報を受け取らない設計となっている場合においても、熱源側制御部20が所定開始条件を満たすか否かを判断することが可能になる。
【0208】
なお、熱源側制御部20が所定開始条件の判断を行う場合には、判断の正確性の観点から、上述の所定開始条件が優先されるものの、以下に挙げる所定開始条件であってもよい。具体的には、熱源側制御部20は、二次側冷媒回路10における低圧冷媒の圧力が所定値以下であること、二次側冷媒回路10における二次側の冷媒の蒸発温度が所定値以下であること、カスケード熱交換器35の二次側流路35aに流入する二次側の冷媒の温度が所定値以下であること、二次側冷媒回路10における高圧冷媒の圧力が所定値以下であること、二次側冷媒回路10における二次側の冷媒の凝縮温度が所定値以下であること、二次側圧縮機21が吸入する二次側の冷媒の温度が所定値以下であること、利用側熱交換器52a、52b、52cを通過した空気の温度が所定値以下であること、のいずれかによって所定開始条件を判断するようにしてもよい。
【0209】
(12-8)他の実施形態H
上記実施形態の余剰冷媒制御では、熱源側制御部20から送信される所定開始条件を満たした旨の情報を受け取った一次側制御部70が、一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を制御する場合を例に挙げて説明した。
【0210】
これに対して、余剰冷媒制御では、所定開始条件を満たしたことを判断した熱源側制御部20が、一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を直接制御するようにしてもよい。ここでいう直接制御とは、熱源側制御部20が、一次側制御部70を介して一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を制御することである。具体的には、熱源側制御部20が一次側制御部70へ一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を制御する制御指示を送り、一次側制御部70は、受信した制御指示に基づいて一次側過冷却膨張弁104aに対して弁開度の制御指示を送ることになる。
【0211】
このようにして、一次側過冷却膨張弁104aは、余剰冷媒制御時以外では一次側制御部70によって開度が制御され、余剰冷媒制御時には熱源側制御部20によって制御されてもよい。
【0212】
(12-9)他の実施形態I
上記実施形態では、熱源側制御部20から送信される所定開始条件を満たした旨の情報を受け取った一次側制御部70が、一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を制御する場合を例に挙げて説明した。
【0213】
これに対して、冷凍サイクルシステム1としては、熱源側制御部20が送信した所定開始条件を満たした旨の情報を一次側制御部70が受け取ることができないシステム構成であってもよく、熱源側制御部20が一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を直接制御できないシステム構成であってもよい。その代わりに、冷凍サイクルシステム1としては、所定開始条件を満たしたことを把握した熱源側制御部20が、一次側制御部70に対して、間接的な指示を行うことで、熱源側制御部20が間接的に一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を制御可能なシステム構成とすることができる。
【0214】
このような冷凍サイクルシステム1としては、例えば、熱源側制御部20が、一次側制御部70に対して、一次側冷媒回路5aにおける一次側の冷媒の凝縮温度目標値の制御指令を送信可能であり、一次側制御部70が、熱源側制御部20が送信した当該凝縮温度目標値の制御指令を受け取ることが可能であるシステム構成であってもよい。そして、一次側制御部70は、一次側冷媒回路5aにおける一次側の冷媒の高圧圧力が所定値以上になった場合に、一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を上げるまたは全開にする制御を行うように構成されていてよい。
【0215】
以上の構成によれば、所定開始条件を満たしたことを把握した熱源側制御部20が、一次側制御部70に対して、一次側冷媒回路5aにおける一次側の冷媒の凝縮温度目標値を上昇させる制御指令を送信した場合には、一次側制御部70は、上昇した凝縮温度目標値が実現されるように、一次側圧縮機71の回転数を増大させることになる。しかし、所定開始条件を満たした状態のカスケード熱交換器35では、一次側の冷媒と二次側の冷媒との熱交換の効率が低下している状態であるため、一次側の高圧冷媒がカスケード熱交換器35の一次側流路35bに供給されたとしても、一次側の冷媒は効率良く凝縮することができない。したがって、一次側冷媒回路5aにおいては、一次側の冷媒の高圧圧力が上昇することになる。そして、このように一次側冷媒回路5aにおける一次側の冷媒の高圧圧力が所定値以上に上昇した場合には、一次側制御部70によって、一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を上げるまたは全開にする制御が開始される。これにより、カスケード熱交換器35における一次側の冷媒と二次側の冷媒との熱交換効率を改善させることが可能になる。
【0216】
なお、例えば、一次側ユニット5が、冷凍サイクルシステム1のために特別に設計されたものではなく、利用側熱交換器を有する利用ユニットと熱源側熱交換器および圧縮機を有する熱源ユニットとが接続されて一元冷凍サイクルを行う冷凍装置での熱源ユニットを流用したものである場合には、熱源側制御部20が送信した所定開始条件を満たした旨の情報を一次側制御部70が受け取ることができず、一次側過冷却膨張弁104aの弁開度を熱源側制御部20によって直接制御させることができない場合がある。この場合であっても、一元冷凍サイクルを行う冷凍装置では、利用ユニットが有する利用側熱交換器での負荷に応じて、熱源ユニットが有する圧縮機の回転数が制御されるシステム構成が採用されている場合がある。当該システム構成では、利用ユニットが把握した負荷を熱源側に知らせるために、凝縮温度目標値等の制御目標値の制御指示が利用ユニットから熱源ユニットに送信されるシステム構成となっている。このような一元冷凍サイクルの冷凍装置の熱源ユニットを、上記一次側ユニット5として流用した場合には、一次側ユニット5の一次側制御部70は、凝縮温度目標値等の制御目標値の制御指示を受け取ることが可能なものである。したがって、一次側ユニット5として、熱源側制御部20からの所定開始条件を満たした旨の情報を受け取ることができず、熱源側制御部20によって一次側過冷却膨張弁104aの弁開度が直接制御できない、一元冷凍サイクルを行う冷凍装置での熱源ユニットの流用機を用いつつ、余剰冷媒制御を実現することが可能となる。
【0217】
特に、熱源ユニットに対して複数の利用ユニットが接続されて一元冷凍サイクルを行う冷凍装置では、熱源ユニットに予め充填される一次側の冷媒の量が多くなりがちであり、カスケード熱交換器35の一次側流路35bにおける一次側の液冷媒の滞留が生じがちである。このように、一元冷凍サイクルを行う冷凍装置の熱源ユニットを冷凍サイクルシステム1に流用することで、カスケード熱交換器35において一次側の液冷媒の滞留が生じがちであっても、上述の余剰冷媒制御により、当該液冷媒の滞留を解消させことができる。
【0218】
(12-10)他の実施形態J
上記実施形態では、一次側冷媒回路5aにおいて用いられる冷媒としてR32を例示し、二次側冷媒回路10において用いられる冷媒として二酸化炭素を例示した。
【0219】
これに対して、一次側冷媒回路5aにおいて用いられる冷媒としては、特に限定されるものではなく、HFC-32、HFO系冷媒、HFC-32とHFO系冷媒の混合冷媒、二酸化炭素、アンモニア、プロパン等を用いることができる。
【0220】
また、二次側冷媒回路10において用いられる冷媒としては、特に限定されるものではなく、HFC-32、HFO系冷媒、HFC-32とHFO系冷媒の混合冷媒、二酸化炭素、アンモニア、プロパン等を用いることができる。
【0221】
なお、HFO系冷媒としては、例えば、HFO-1234yfやHFO-1234ze等を用いることができる。
【0222】
また、一次側冷媒回路5aと二次側冷媒回路10とでは、同じ冷媒が用いられていてもよいし、異なる冷媒が用いられていてもよい。
【0223】
(12-11)他の実施形態K
上記実施形態では、二次側冷媒回路10として、二次側第1連絡管8と二次側第2連絡管9と二次側第3連絡管7を有する三管式の冷暖同時運転可能な冷媒回路を例に挙げて例示した。
【0224】
これに対して、二次側冷媒回路10としては、冷暖同時運転可能な冷媒回路に限定されるものではなく、熱源ユニット2と利用ユニット3a、3b、3cが2本の連絡配管を介して接続された回路であってもよい。
【0225】
(付記)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0226】
1 :冷凍サイクルシステム
2 :熱源ユニット
3a :第1利用ユニット
3b :第2利用ユニット
3c :第3利用ユニット
4 :二次側ユニット
5 :一次側ユニット
5a :一次側冷媒回路(第1回路)
7 :二次側第3連絡管
8 :二次側第1連絡管
9 :二次側第2連絡管
10 :二次側冷媒回路(第2回路)
11 :熱源側膨張機構
12 :熱源回路
13a-c:利用回路
20 :熱源側制御部(第2制御部)
21 :二次側圧縮機(第2圧縮機)
21a :圧縮機モータ
22 :二次側切換機構
23 :二次側吸入流路
24 :吐出流路
25 :第3熱源配管
26 :第4熱源配管
27 :第5熱源配管
28 :第1熱源配管
29 :第2熱源配管
30 :二次側アキュムレータ
34 :油分離器
35 :カスケード熱交換器
35a :二次側流路
35b :一次側流路
36 :熱源側膨張弁(第2膨張弁)
37 :二次側吸入圧力センサ
38 :二次側吐出圧力センサ
39 :二次側吐出温度センサ
40 :油戻し回路
41 :油戻し流路
42 :油戻しキャピラリーチューブ
44 :油戻し開閉弁
45 :二次側レシーバ
46 :バイパス回路
46a :バイパス膨張弁
47 :二次側過冷却熱交換器
48 :二次側過冷却回路
48a :二次側過冷却膨張弁
50a-c:利用側制御部
51a-c:利用側膨張弁
52a-c:利用側熱交換器(第2熱交換器)
53a-c:室内ファン
56a、56b、56c:第2利用配管
57a、57b、57c:第1利用配管
58a、58b、58c:液側温度センサ
59a、59b、59c:室内吹出温度センサ
60a、60b、60c:分岐ユニット制御部
61a、61b、61c:第3分岐配管
62a、62b、62c:合流配管
63a、63b、63c:第1分岐配管
64a、64b、64c:第2分岐配管
66a、66b、66c:第1調節弁
67a、67b、67c:第2調節弁
70 :一次側制御部(第1制御部)
71 :一次側圧縮機(第1圧縮機)
72 :一次側切換機構
74 :一次側熱交換器(第1熱交換器)
76 :一次側第1膨張弁
77 :外気温度センサ
78 :一次側吐出圧力センサ
79 :一次側吸入圧力センサ
81 :一次側吸入温度センサ
82 :一次側熱交温度センサ
83 :二次側第1温度センサ
84 :レシーバ出口温度センサ
85 :バイパス回路温度センサ
86 :過冷却出口温度センサ
87 :過冷却回路温度センサ
88 :二次側吸入温度センサ
80 :制御部
102 :一次側第2膨張弁
103 :一次側過冷却熱交換器
104 :一次側過冷却回路(バイパス回路)
104a :一次側過冷却膨張弁(制御弁)
105 :一次側アキュムレータ(アキュムレータ)
111 :一次側第1連絡管(第1流路)
112 :一次側第2連絡管
113 :第2接続配管
115 :第1接続配管(第1流路)
121 :一次側第1温度センサ
122 :一次側第2温度センサ
125 :一次側吸入流路(吸入流路)
125a :第1吸入流路(第1吸入配管)
125b :第2吸入流路(第2吸入配管)
126 :液接続配管(第1流路)
134 :一次側接続回路(バイパス回路)
134a :一次側接続膨張弁(制御弁)
144 :一次側バイパス回路(バイパス回路)
144a :一次側バイパス膨張弁(制御弁)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0227】