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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】スクリュー圧縮機、および冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/52 20060101AFI20240502BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
F04C18/52
F04C29/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023046485
(22)【出願日】2023-03-23
(65)【公開番号】P2023145387
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2022051658
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 忠司
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-068906(JP,U)
【文献】特開2009-174520(JP,A)
【文献】特開2010-196582(JP,A)
【文献】特開2002-202080(JP,A)
【文献】実開昭50-063607(JP,U)
【文献】実開昭50-063203(JP,U)
【文献】特開2010-127109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/52
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(11)と、
前記ケーシング(11)に収容されて回転駆動されるスクリューロータ(40)と、
前記スクリューロータ(40)の回転に伴って回転するゲートロータ組立体(50)とを備え、
前記ゲートロータ組立体(50)は、
前記スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と噛み合わされる複数の平板状のゲート(53)を有するゲートロータ(51)と、
各前記ゲート(53)を該ゲート(53)の裏面側から支持する複数の第1ゲート支持部(84)を有し、前記ゲートロータ(51)を回転可能に支持する金属製の第1サポート部材(56)と、
円環状に形成された円環部(91)と、該円環部(91)の外周部から外側に放射状に延びるとともに各前記ゲート(53)を該ゲート(53)の表面側から支持する複数の第2ゲート支持部(92)を有する金属製の第2サポート部材(58)を有し、
各前記第2ゲート支持部(92)は、前記ゲート(53)の裏面から表面に向かって働く圧力に対して前記ゲート(53)を補強するように、対応する前記ゲート(53)を支持し、
前記円環部(91)と前記第2サポート部材(58)とは、一体に形成されている
スクリュー圧縮機。
【請求項2】
前記ゲートロータ(51)は、前記第1サポート部材(56)および前記第2サポート部材(58)の間に挟まれ、
各前記ゲート(53)は、前記第1サポート部材(56)および前記第2サポート部材(58)によって、前記第1サポート部材(56)の径方向及び周方向に微小移動可能な状態で保持される
請求項1に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項3】
ケーシング(11)と、
前記ケーシング(11)に収容されて回転駆動されるスクリューロータ(40)と、
前記スクリューロータ(40)の回転に伴って回転するゲートロータ組立体(50)とを備え、
前記ゲートロータ組立体(50)は、
前記スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と噛み合わされる複数の平板状のゲート(53)を有するゲートロータ(51)と、
各前記ゲート(53)を該ゲート(53)の裏面側から支持する複数の第1ゲート支持部(84)を有し、前記ゲートロータ(51)を回転可能に支持する金属製の第1サポート部材(56)と、
各前記ゲート(53)を該ゲート(53)の表面側から支持する複数の第2ゲート支持部(92)を有する金属製の第2サポート部材(58)とを有し、
前記ゲートロータ(51)は、前記第1サポート部材(56)および前記第2サポート部材(58)の間に挟まれ、
各前記ゲート(53)は、前記第1サポート部材(56)および前記第2サポート部材(58)によって、前記第1サポート部材(56)の径方向及び周方向に微小移動可能な状態で保持され、
前記第2サポート部材(58)の各前記第2ゲート支持部(92)は、前記ゲート(53)に向かって突出する突出部(93)を有し、
複数の前記ゲート(53)のそれぞれには、前記第2ゲート支持部(92)の前記突出部(93)が係合する凹部(78)が形成され、
前記凹部(78)の内周面と前記突出部(93)の外周面の間には、該突出部(93)の全周を囲むように隙間(G)が形成される
スクリュー圧縮機。
【請求項4】
前記ゲートロータ(51)は、1つまたは複数の前記ゲート(53)を有する第1ゲートブロック(70a)と、1つまたは複数の前記ゲート(53)を有する第2ゲートブロック(70b)とを含む
請求項2に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項5】
前記ゲートロータ組立体(50)は、前記第1ゲートブロック(70a)および前記第2ゲートブロック(70b)のそれぞれを前記スクリューロータ(40)に押し付ける弾性体(E)を更に有する
請求項4に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項6】
前記第1ゲートブロック(70a)および前記第2ゲートブロック(70b)のそれぞれの各前記ゲート(53)は、前記ゲートロータ(51)の径方向内側から外側に向かって幅が広くなる
請求項4に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載のスクリュー圧縮機を備える冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクリュー圧縮機、および冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作動流体を圧縮する圧縮機が知られている。特許文献1には、複数の螺旋溝が形成されたスクリューロータと、該スクリューロータの回転に伴って回転するゲートロータ組立体を備えたスクリュー圧縮機が開示されている。ゲートロータ組立体は、螺旋溝に噛み合う放射状のゲートを有するゲートロータと、該ゲートロータを支持するロータ支持部材とを有する。スクリュー圧縮機では、スクリューロータの螺旋溝にゲートロータが噛み合うことで、螺旋溝の内部に圧縮室が形成される。ゲートロータは、その表面が圧縮室に面している。
【0003】
特許文献1に記載のゲートロータ組立体では、ロータ支持部材がゲートロータを裏面から支持することにより、スクリュー圧縮機の運転中において、ゲートロータの表面から裏面に向かう方向に作用する圧力に対して、ゲートロータの強度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-007399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクリュー圧縮機の運転中において、稀に、通常とは逆方向であるゲートロータの裏面から表面に向かう方向に大きな圧力が作用する場合がある。この場合、ゲートロータはこの方向に作用する圧力に耐えられず、破損してしまうおそれがあった。
【0006】
本開示の目的は、スクリュー圧縮機の運転中において、通常とは逆方向に生じる圧力に対する強度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、スクリュー圧縮機を対象とし、ケーシング(11)と、前記ケーシング(11)に収容されて回転駆動されるスクリューロータ(40)と、前記スクリューロータ(40)の回転に伴って回転するゲートロータ組立体(50)とを備え、前記ゲートロータ組立体(50)は、前記スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と噛み合わされる複数の平板状のゲート(53)を有するゲートロータ(51)と、各前記ゲート(53)を該ゲート(53)の裏面側から支持する複数の第1ゲート支持部(84)を有し、前記ゲートロータ(51)を回転可能に支持する金属製の第1サポート部材(56)と、各前記ゲート(53)を該ゲート(53)の表面側から支持する複数の第2ゲート支持部(92)を有する金属製の第2サポート部材(58)とを有する。
【0008】
第1の態様では、ゲートロータ組立体(50)は、各ゲート(53)を表面側から支持する第2ゲート支持部(92)を有する金属製の第2サポート部材(58)を備えるので、スクリュー圧縮機(10)の運転中において各ゲート(53)の裏面から表面に向かって働く圧力に対して各ゲート(53)を補強することができる。これにより、スクリュー圧縮機(10)の運転中において通常とは逆方向に生じる圧力に対する強度を向上できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記ゲートロータ(51)は、前記第1サポート部材(56)および前記第2サポート部材(58)の間に挟まれ、各前記ゲート(53)は、前記第1サポート部材(56)および前記第2サポート部材(58)によって、前記第1サポート部材(56)の径方向及び周方向に微小移動可能な状態で保持される。
【0010】
ここで、スクリュー圧縮機(10)の運転に伴ってスクリュー圧縮機(10)の構成部品が熱膨張した場合に、スクリューロータ(40)とゲートロータ組立体(50)との相対的な位置が変化する。このとき、ゲートロータ(51)は、スクリューロータ(40)に過剰な力で押し付けられることで摩耗してしまう。
【0011】
第2の態様では、ゲートロータ(51)は、第1サポート部材(56)および第2サポート部材(58)に挟まれているので、ゲートロータ(51)の回転軸方向の移動が規制される。一方で、各ゲート(53)は、第1サポート部材(56)および第2サポート部材(58)によって、第1サポート部材(56)の径方向及び周方向に微小移動可能な状態で保持されるので、ゲートロータ(51)は径方向および周方向に移動できる。
【0012】
そのため、スクリュー圧縮機(10)の熱膨張に起因してスクリューロータ(40)とゲートロータ組立体(50)との相対的な位置の変化が生じたとしても、各ゲート(53)が径方向及び周方向に僅かに移動することによって、ゲートロータ(51)の位置がスクリューロータ(40)に追従して変化するので、両者は互いに正常に噛み合うことができる。これにより、構成部品の熱膨張に伴うゲートロータ(51)の摩耗を抑制できる。
【0013】
第3の態様は、第2の態様において、前記第2サポート部材(58)の各前記第2ゲート支持部(92)は、前記ゲート(53)に向かって突出する突出部(93)を有し、複数の前記ゲート(53)のそれぞれには、前記第2ゲート支持部(92)の前記突出部(93)が係合する凹部(78)が形成され、前記凹部(78)の内周面と前記突出部(93)の外周面の間には、該突出部(93)の全周を囲むように隙間(G)が形成される。
【0014】
第3の態様では、各ゲート(53)における凹部(78)の内周面と第2ゲート支持部(92)における突出部(93)の外周面との間には該突出部(93)の全周を囲むように隙間(G)が形成されるので、ゲートロータ(51)は径方向および周方向に移動できる。
【0015】
そのため、スクリュー圧縮機(10)の熱膨張に起因してスクリューロータ(40)とゲートロータ組立体(50)との相対的な位置の変化が生じたとしても、突出部(93)と凹部(78)との間に形成された隙間(G)によって、ゲートロータ(51)の位置がスクリューロータ(40)に追従して変化するので、両者は互いに正常に噛み合うことができる。これにより、構成部品の熱膨張に伴うゲートロータ(51)の摩耗を抑制できる。
【0016】
第4の態様は、第2または第3の態様において、前記ゲートロータ(51)は、1つまたは複数の前記ゲート(53)を有する第1ゲートブロック(70a)と、1つまたは複数の前記ゲート(53)を有する第2ゲートブロック(70b)とを含む。
【0017】
第4の態様では、ゲートロータ(51)は複数のゲートブロック(70)に分割されているので、各ゲートブロック(70)が熱膨張の度合いに応じて移動しやすくできる。
【0018】
第5の態様は、第4の態様において、前記ゲートロータ組立体(50)は、前記第1ゲートブロック(70a)および前記第2ゲートブロック(70b)のそれぞれを前記スクリューロータ(40)に押し付ける弾性体(E)を更に有する。
【0019】
第5の態様では、弾性体(E)によって各ゲートブロック(70)がスクリューロータ(40)に押し付けられるので、螺旋溝(41)と各ゲート(53)の先端面との間に形成される隙間を抑制できる。
【0020】
第6の態様は、第4の態様において、前記第1ゲートブロック(70a)および前記第2ゲートブロック(70b)のそれぞれの各前記ゲート(53)は、前記ゲートロータ(51)の径方向内側から外側に向かって幅が広くなる。
【0021】
第6の態様では、各ゲート(53)の幅が径方向内側から外側に向かって広くなっているので、ゲートロータ(51)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)から抜けにくくなる。
【0022】
第7の態様は、冷凍装置を対象とし、第1~第6のいずれか1つの態様のスクリュー圧縮機(10)を備える。
【0023】
第7の態様では、スクリュー圧縮機(10)の運転中において通常とは逆方向の表面側に生じる圧力に対する強度を向上したスクリュー圧縮機(10)を備える冷凍装置(1)を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態に係る冷凍装置の概略の配管系統図である。
図2図2は、スクリュー圧縮機の概略構成を示す縦断面図である。
図3図3は、図2のIII-III線矢視断面図である。
図4図4は、スクリューロータとゲートロータ組立体との噛み合い状態を示す斜視図である。
図5図5は、ゲートロータ組立体の平面図である。
図6図6は、第1サポート部材にゲートロータが組み付けられた状態を示す平面図である。
図7図7は、ゲートブロックの斜視図である。
図8図8は、ゲートロータ組立体のゲートブロック拡大した平面図である。
図9図9は、図8のIX-IX線矢視断面図である。
図10図10は、変形例1に係る図5に相当する図である。
図11図11は、変形例2に係る図8に相当する図である。
図12図12は、変形例3に係る図5に相当する図である。
図13図13は、変形例4に係るゲートロータの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0026】
《実施形態》
(1)冷凍装置の概要
図1に示すように、スクリュー圧縮機(10)は、冷凍装置(1)に設けられる。冷凍装置(1)は、冷媒が充填された冷媒回路(1a)を有する。冷媒回路(1a)は、スクリュー圧縮機(10)、放熱器(3)、減圧機構(4)、および蒸発器(5)を有する。減圧機構(4)は、膨張弁である。冷媒回路(1a)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0027】
冷凍サイクルでは、スクリュー圧縮機(10)によって圧縮された冷媒が、放熱器(3)において空気に放熱する。放熱した冷媒は、減圧機構(4)によって減圧され、蒸発器(5)において蒸発する。蒸発した冷媒は、スクリュー圧縮機(10)に吸入される。
【0028】
冷凍装置(1)は、空気調和装置である。空気調和装置は、冷房専用機、暖房専用機、あるいは冷房と暖房とを切り換える空気調和装置であってもよい。この場合、空気調和装置は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)を有する。冷凍装置(1)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。
【0029】
(2)スクリュー圧縮機
本実施形態のスクリュー圧縮機(10)は、吸入した低圧のガス冷媒を圧縮し、高圧のガス冷媒を吐出する。図2図4に示すように、本実施形態のスクリュー圧縮機(10)は、1つのスクリューロータ(40)を有するシングルスクリュー圧縮機である。また、本実施形態のスクリュー圧縮機(10)は、単段圧縮を行う。
【0030】
(2-1)全体構成
図2および図3に示すように、スクリュー圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、電動機(17)と、駆動軸(18)と、圧縮機構(19)とを備える。ケーシング(11)には、電動機(17)と、駆動軸(18)と、圧縮機構(19)とが収容される。圧縮機構(19)は、1つのスクリューロータ(40)と、2つのゲートロータ組立体(50)を有する。
【0031】
(2-1-1)ケーシング
図2に示すように、ケーシング(11)は、両端が閉塞された円筒状に形成される。ケーシング(11)は、その長手方向が概ね水平方向となる姿勢で配置される。ケーシング(11)は、本体部(12)とシリンダ部(16)とを備える。本体部(12)は、両端が閉塞された横長円筒状に形成される。シリンダ部(16)は、略円筒状に形成され、本体部(12)の長手方向の中央付近に配置される。シリンダ部(16)は、本体部(12)と一体に形成される。シリンダ部(16)の内周面は円筒面となっている。
【0032】
本体部(12)には、吸入口(14)と吐出口(15)とが形成される。吸入口(14)は、ケーシング(11)の一端部(図2における左端部)の上部に形成される。吐出口(15)は、ケーシング(11)の他端部(図2における右端部)の上部に形成される。
【0033】
本体部(12)の内部空間は、低圧空間(S1)と高圧空間(S2)とに仕切られている。低圧空間(S1)は、シリンダ部(16)よりも本体部(12)の一端寄りに形成され、吸入口(14)と連通する。高圧空間(S2)は、シリンダ部(16)よりも本体部(12)の他端寄りに形成され、吐出口(15)と連通する。
【0034】
(2-1-2)電動機、駆動軸
電動機(17)は、低圧空間(S1)に配置される。駆動軸(18)は、電動機(17)とスクリューロータ(40)とを連結する。電動機(17)は、スクリューロータ(40)を回転駆動する。
【0035】
(2-1-3)スクリューロータ
図2に示すように、スクリューロータ(40)は、シリンダ部(16)に回転可能に収容される。図4に示すように、スクリューロータ(40)は、金属製の円柱状の部材である。スクリューロータ(40)の外周面は、潤滑油の油膜を介して、シリンダ部(16)の内周面と摺接する。スクリューロータ(40)は、図4における前側が低圧空間(S1)側に位置し、図4における後側が高圧空間(S2)側に位置する。
【0036】
スクリューロータ(40)の外周部には、複数本(本実施形態では、6本)の螺旋溝(41)が形成される。各螺旋溝(41)は、スクリューロータ(40)の周方向と軸方向とに螺旋状に延びる溝である。6本の螺旋溝(41)は、スクリューロータ(40)の周方向に等角度間隔で配置される。スクリューロータ(40)の各螺旋溝(41)では、駆動軸(18)の一端側(図4における前端側)の端が吸入側端(42)となり、駆動軸(18)の他端側(図4における後端側)の端が吐出側端(43)となっている。
【0037】
スクリューロータ(40)は、吸入側(低圧空間(S1)側)の端部がテーパ状に形成されている。図4に示すスクリューロータ(40)では、該スクリューロータ(40)の吸入側の端面に螺旋溝(41)の吸入側端(42)が開口する一方、該スクリューロータ(40)の吐出側の端面に螺旋溝(41)の吐出側端(43)は開口しない。
【0038】
(2-1-4)ゲートロータ組立体
図3に示すように、各ゲートロータ組立体(50)は、ケーシング(11)の本体部(12)に回転可能に取り付けられる。各ゲートロータ組立体(50)は、ゲートロータ(51)と、第1サポート部材(56)と、第2サポート部材(58)とを1つずつ備える。ゲートロータ組立体(50)では、第1サポート部材(56)、ゲートロータ(51)、および第2サポート部材(58)の順に積層される。ゲートロータ(51)は、第1サポート部材(56)および第2サポート部材(58)に挟まれて保持される。
【0039】
ゲートロータ(51)は、樹脂製の円形平板状の部材である。図4に示すように、ゲートロータ(51)には、複数枚(本実施形態では、10枚)のゲート(53)が放射状に設けられる。各ゲート(53)は、概ね矩形状の平板状の部分である。本実施形態では、ゲートロータ(51)は、各ゲート(53)が互いに別体に形成された複数のゲートブロック(70)で構成される。ゲートロータ(51)の詳細な構造については後述する。
【0040】
ゲート(53)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入し、螺旋溝(41)の壁面と摺動して圧縮室(32)を形成する。ゲートロータ(51)の表面(61)は、圧縮室(32)側の面である。ゲートロータ(51)の裏面(62)は、表面(61)と反対側の面である。
【0041】
第1サポート部材(56)は、金属製の部材である。第1サポート部材(56)は、ゲートロータ(51)の裏面(62)と接するように設けられ、ゲートロータ(51)を支持する。第2サポート部材(58)は、金属製の平板状の部材である。第2サポート部材(58)は、ゲートロータ(51)の表面(61)と接するように設けられ、ゲートロータ(51)を支持する。第1サポート部材(56)および第2サポート部材(58)の詳細な構造についても後述する。
【0042】
図3に示すシリンダ部(16)の左右には、ゲートロータ室(21)が1つずつ形成されている。ゲートロータ組立体(50)は、各ゲートロータ室(21)に1つずつ収容されている。各ゲートロータ室(21)は、低圧空間(S1)に連通する。
【0043】
具体的には、各ゲートロータ室(21)には、軸受ハウジング(22)が設けられる。軸受ハウジング(22)は、金属製の筒状の部材である。軸受ハウジング(22)は、ケーシング(11)の本体部(12)に固定される。ゲートロータ組立体(50)は、軸受を介して軸受ハウジング(22)に回転可能に支持される。
【0044】
図3において、スクリューロータ(40)の右側に配置されたゲートロータ組立体(50)は、ゲートロータ(51)の表面(61)が上を向いている。図3において、スクリューロータ(40)の左側に配置されたゲートロータ組立体(50)は、ゲートロータ(51)の表面(61)が下を向いている。2つのゲートロータ組立体(50)は、スクリューロータ(40)の回転軸に対して互いに軸対称となる姿勢で配置される。各ゲートロータ組立体(50)の回転軸は、スクリューロータ(40)の回転軸に垂直な平面内に延びている。
【0045】
ゲートロータ組立体(50)は、シリンダ部(16)を貫通するように配置される。ゲートロータ組立体(50)は、スクリューロータ(40)の回転に伴って回転する。そして、ゲートロータ組立体(50)の回転に伴って、ゲートロータ(51)のゲート(53)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)へ進入して、スクリューロータ(40)と噛み合わされる。
【0046】
(2-1-5)圧縮室
図2および図3に示すように、スクリュー圧縮機(10)では、スクリューロータ(40)と、ゲートロータ(51)と、ケーシング(11)のシリンダ部(16)とによって、圧縮室(32)(以下、高圧室ともいう)が形成される。圧縮室(32)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の壁面と、ゲートロータ(51)のゲート(53)の表面(61)と、シリンダ部(16)の内周面とによって囲まれた閉空間である。なお、螺旋溝(41)において、ゲート(53)を挟んで圧縮室(32)と反対側に形成される空間は、低圧室となる。低圧室は、圧縮室(32)よりも圧力の低い空間である。
【0047】
(2-2)ゲートロータ組立体の詳細な構成
ゲートロータ組立体(50)の詳細な構成について、図3図9を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、「軸方向」とは、第1サポート部材(56)の第1軸部(82)の軸心の方向のことであり、「径方向」とは、第1軸部(82)の軸心に直交する方向のことであり、「周方向」とは、第1軸部(82)の軸心を基準とした周方向である。また、以下の説明において、「表面」とは、圧縮室(32)側の面のことであり、「裏面」とは、低圧室側の面のことである。
【0048】
(2-2-1)ゲートロータ
図6に示すように、ゲートロータ(51)は、放射状に延びる複数枚(本実施形態では、10枚)のゲートブロック(70)で構成される。ゲートブロック(70)は、1つのゲート(53)を有する第1ゲートブロック(70a)と、1つのゲート(53)を有する第2ゲートブロック(70b)とを含む。各ゲートブロック(70)は樹脂製である。各ゲートブロック(70)は、射出成形によって製造される。各ゲートブロック(70)は、射出成形によって成形された後に機械加工を施してもよい。
【0049】
本実施形態の各ゲートブロック(70)は、1つの基部(71)と、1つのゲート部(72)とを有する。
【0050】
基部(71)は、ゲートブロック(70)におけるゲートロータ組立体(50)の回転軸寄りの部分である。各基部(71)は、互いに隣り合う基部(71)の側面同士が面接触するように、概ね台形状に形成される。
【0051】
ゲート部(72)は、基部(71)の外周部から径方向外側に延びる部分である。ゲート部(72)は、ゲートロータ(51)のゲート(53)を構成する。ゲート部(72)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と噛み合うように、概ね矩形状に形成される。本実施形態のゲート部(72)は、ゲートロータ(51)の径方向内側から外側に向かって、ゲート部(72)の幅は略一定である。
【0052】
図7に示すように、ゲート部(72)は、底面部(74)と、先端壁部(75)と、前側壁部(76)と、後側壁部(77)とで構成される。底面部(74)は、基部(71)から径方向外側に延びる平面部分である。図9に示すように、底面部(74)の厚さは、基部(71)の厚さよりも薄い。言い換えると、底面部(74)は、基部(71)より一段下がっている。
【0053】
先端壁部(75)は、底面部(74)の先端部に設けられる。先端壁部(75)は、底面部(74)から第2サポート部材(58)側(図9における上方)に突出する。前側壁部(76)は、底面部(74)において、ゲートロータ(51)の回転方向Rの前側の側縁部に設けられる。前側壁部(76)は、底面部(74)から第2サポート部材(58)側に突出する。後側壁部(77)は、底面部(74)において、ゲートロータ(51)の回転方向Rの後側の側縁部に設けられる。後側壁部(77)は、底面部(74)から第2サポート部材(58)側に突出する。
【0054】
ゲート部(72)は、凹部(78)を有する。凹部(78)は、ゲート部(72)の底面部(74)、先端壁部(75)、前側壁部(76)、および後側壁部(77)によって囲まれた部分である。凹部(78)の底部は、略矩形状に形成される。凹部(78)は、第1サポート部材(56)側に凹んでいる。
【0055】
(2-2-2)第1サポート部材
図3および図4に示すように、第1サポート部材(56)は、円板部(81)と、第1軸部(82)と、第2軸部(83)と、複数の第1ゲート支持部(84)とを有する。
【0056】
円板部(81)は、やや肉厚の円板状に形成された部分である。第1軸部(82)は、丸棒状に形成された部分である。第1軸部(82)は、円板部(81)の裏面側に設けられる。第1軸部(82)は、円板部(81)の中央部から延びる。第1軸部(82)の軸心は、円板部(81)の軸心と一致する。
【0057】
第2軸部(83)は、円柱状に形成された部分である。第2軸部(83)は、円板部(81)の表面側に設けられる。第2軸部(83)は、円板部(81)の中央部から延びる。第2軸部(83)の軸心は、第1軸部(82)の軸心と一致する。第2軸部(83)の軸心は、円板部(81)の軸心と一致する。第2軸部(83)の断面積は、第1軸部(82)の断面積よりも小さい。第2軸部(83)には、ゲートロータ(51)と第2サポート部材(58)とが嵌められる。ゲートロータ(51)の各ゲートブロック(70)は、第2軸部(83)を取り囲むように配置される。
【0058】
第2軸部(83)の外周面における圧縮室(32)寄りの位置には、不図示の溝が形成される。具体的には、溝は、第2軸部(83)において、第2サポート部材(58)が配置される位置よりも圧縮室(32)側に形成される。溝は、第2軸部(83)の全周に亘って形成される。溝には、止め輪(例えば、サークリップ)が嵌め込まれる。溝に止め輪を嵌め込むことにより、各ゲートブロック(70)および第2サポート部材(58)の軸方向への移動が規制される。言い換えると、止め輪によって第2サポート部材(58)の軸方向の移動が規制されることにより、第1サポート部材(56)と第2サポート部材(58)との間に挟まれた各ゲートブロック(70)は、軸方向への移動が規制される。
【0059】
第1サポート部材(56)は、ゲートロータ(51)のゲート(53)と同数枚(本実施形態では、10枚)の第1ゲート支持部(84)を有する。第1ゲート支持部(84)は、円板部(81)の外周部から径方向外側へ放射状に延びる部分である。各第1ゲート支持部(84)は、対応するゲート部(72)の裏面に沿って延びる。
【0060】
図9に示すように、各第1ゲート支持部(84)は、各ゲート部(72)の裏面の概ね全体を覆う。各第1ゲート支持部(84)は、対応するゲート部(72)の裏面に接触した状態で、対応するゲート部(72)を裏面側から支持する。各第1ゲート支持部(84)は、延伸方向に垂直な断面が略三角形状に形成される。
【0061】
各第1ゲート支持部(84)によって、該第1ゲート支持部(84)に対応する各ゲート部(72)が裏面側から支持されるので、スクリュー圧縮機(10)の運転中に圧縮室(32)での冷媒の圧縮に起因して作用する、ゲートロータ(51)の表面(61)から裏面(62)に向かう方向の圧力に対する強度を確保できる。
【0062】
(2-2-3)第2サポート部材
図4および図5に示すように、第2サポート部材(58)は、円環部(91)と、複数の第2ゲート支持部(92)と有する。
【0063】
円環部(91)は、円環状に形成された部分である。円環部(91)の中央に形成された穴には、第1サポート部材(56)の第2軸部(83)が挿通される。第2サポート部材(58)は、ゲートロータ(51)のゲート(53)と同数枚(本実施形態では、10枚)の第2ゲート支持部(92)を有する。第2ゲート支持部(92)は、円環部(91)の外周部から径方向外側へ放射状に延びる部分である。各第2ゲート支持部(92)は、対応するゲート部(72)の表面に沿って延びる。各第2ゲート支持部(92)は、対応するゲート部(72)の表面に接触した状態で、対応するゲート部(72)を表面側から支持する。
【0064】
各第2ゲート支持部(92)によって、該第2ゲート支持部(92)に対応する各ゲート部(72)が表面側から支持されるので、スクリュー圧縮機(10)の運転中に稀に発生するゲートロータ(51)の裏面(62)側からの圧力に対する強度を向上できる。これにより、通常とは逆方向であるゲートロータ(51)の裏面(62)から表面(61)に向かう方向の圧力に起因するゲートロータ(51)の破損を低減できる。
【0065】
図9に示すように、第2ゲート支持部(92)は、突出部(93)を有する。突出部(93)は、ゲート部(72)に向かって突出する部分である。言い換えると、第2ゲート支持部(92)の厚さは、円環部(91)の厚さよりも厚い。図8に示すように、突出部(93)は、略矩形状に形成される。突出部(93)は、ゲート部(72)の凹部(78)に係合する。突出部(93)は、凹部(78)の底部に面接触する。突出部(93)の面積は、凹部(78)の底部の面積よりも小さい。
【0066】
このように、突出部(93)がゲート部(72)の凹部(78)に係合するので、ゲートブロック(70)が周方向および径方向に大きく移動することを規制できる。
【0067】
(2-2-4)隙間
図8に示すように、凹部(78)の内周面と突出部(93)の外周面の間には、該突出部(93)の全周を囲むように微小な隙間(G)が形成される。詳細には、隙間(G)は、第1隙間(G1)、第2隙間(G2)、第3隙間(G3)、および第4隙間(G4)で構成される。
【0068】
第1隙間(G1)は、前側壁部(76)の内側面と突出部(93)の前側面との間に形成される。第2隙間(G2)は、後側壁部(77)の内側面と突出部(93)の後側面との間に形成される。第3隙間(G3)は、先端壁部(75)の内側面と突出部(93)の先端側面との間に形成される。第4隙間(G4)は、基部(71)の先端面と突出部(93)の基端側面との間に形成される。
【0069】
ここで、スクリュー圧縮機(10)の運転中には、冷媒の圧縮に伴って生じる圧縮熱によってスクリュー圧縮機(10)を構成する部品が熱膨張する。この場合、ケーシング(11)の本体部(12)の熱膨張に伴って、ゲートロータ組立体(50)を支持している軸受ハウジング(22)の位置が変化してしまう。軸受ハウジング(22)の位置の変化に伴いゲートロータ(51)の位置も変化することにより、スクリューロータ(40)とゲートロータ(51)との相対的な位置がずれてしまう。スクリューロータ(40)とゲートロータ(51)との相対的な位置がずれてしまうと、樹脂製のゲートロータ(51)がスクリューロータ(40)に過剰に押し付けられることで摩耗する。ゲートロータ(51)が摩耗すると、圧縮室(32)から冷媒が漏れることで、スクリュー圧縮機(10)の性能を低下させてしまう。
【0070】
これに対し、本実施形態のゲートロータ組立体(50)では、ゲートロータ(51)が、第1サポート部材(56)と第2サポート部材(58)に接触して挟まれているので、ゲートロータ(51)の軸方向への移動が規制される。一方で、各ゲートブロック(70)のゲート部(72)における凹部(78)の内周面と第2サポート部材(58)の突出部(93)の外周面との間に、該突出部(93)の全周を囲むように隙間(G)が形成されているので、各ゲートブロック(70)は、第1サポート部材(56)の表面上を、周方向および径方向に僅かに移動可能に構成される。言い換えると、隙間(G)は、熱膨張に起因するゲートロータ(51)の位置ずれを許容する。これにより、熱膨張によりスクリューロータ(40)に対するゲートロータ(51)の相対的な位置の変化が生じても、隙間(G)によってスクリューロータ(40)に追従してゲートロータ(51)の位置が変化するので、互いに正常に噛み合うことができる。その結果、ゲートロータ(51)の摩耗を抑制できる。
【0071】
(3)運転動作
スクリュー圧縮機(10)では、電動機(17)によってスクリューロータ(40)が駆動される。スクリューロータ(40)が回転すると、スクリューロータ(40)と噛み合ったゲートロータ組立体(50)が回転する。ゲートロータ組立体(50)が回転すると、ゲートロータ(51)のゲート(53)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に進入し、進入した螺旋溝(41)の吸入側端(42)から吐出側端(43)へ向かって相対的に移動する。その結果、圧縮室(32)の容積が次第に縮小し、圧縮室(32)内の冷媒が圧縮される。
【0072】
スクリュー圧縮機(10)では、蒸発器(5)から流出した低圧ガス冷媒が、吸入口(14)から吸い込まれる。吸入口(14)を通って低圧空間(S1)へ流入したガス冷媒は、圧縮室(32)へ流入して圧縮される。圧縮されたガス冷媒は、高圧空間(S2)へ吐出される。高圧空間(S2)へ流入した冷媒は、吐出口(15)を通ってスクリュー圧縮機(10)の外部へ吐出される。吐出口(15)から吐出された高圧ガス冷媒は、放熱器(3)へ向かって流れる。
【0073】
(4)特徴
(4-1)
ゲートロータ組立体(50)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と噛み合わされる複数の平板状のゲート(53)が放射状に形成される樹脂製のゲートロータ(51)と、各ゲート(53)を該ゲート(53)の裏面側から支持する複数の第1ゲート支持部(84)を有し、ゲートロータ(51)を回転可能に支持する金属製の第1サポート部材(56)と、各ゲート(53)を該ゲート(53)の表面側から支持する複数の第2ゲート支持部(92)を有する金属製の第2サポート部材(58)とを有する。
【0074】
ゲートロータ組立体(50)は、各ゲート(53)を表面側から支持する第2ゲート支持部(92)を有する金属製の第2サポート部材(58)を備えるので、スクリュー圧縮機(10)の運転中において各ゲート(53)の裏面から表面に向かって働く圧力に対して各ゲート(53)を補強することができる。これにより、スクリュー圧縮機(10)の運転中において通常とは逆方向に生じる圧力に対する強度を向上できる。
【0075】
(4-2)
ゲートロータ(51)は、第1サポート部材(56)および第2サポート部材(58)との間に挟まれる。第2サポート部材(58)の各第2ゲート支持部(92)は、ゲート(53)に向かって突出する突出部(93)を有する。複数のゲート(53)のそれぞれには、第2ゲート支持部(92)の突出部(93)が係合する凹部(78)が形成される。凹部(78)の内周面と突出部(93)の外周面の間には、該突出部(93)の全周を囲むように隙間(G)が形成される。
【0076】
ゲートロータ(51)は、第1サポート部材(56)および第2サポート部材(58)に挟まれているので、ゲートロータ(51)の回転軸方向の移動が規制される。一方で、各ゲート(53)における凹部(78)の内周面と第2ゲート支持部(92)における突出部(93)の外周面との間には該突出部(93)の全周を囲むように隙間(G)が形成されるので、ゲートロータ(51)は径方向および周方向に移動できる。
【0077】
そのため、スクリュー圧縮機(10)の熱膨張に起因してスクリューロータ(40)とゲートロータ組立体(50)との相対的な位置の変化が生じたとしても、隙間(G)によって、ゲートロータ(51)の位置がスクリューロータ(40)に追従して変化するので、両者は互いに正常に噛み合うことができる。これにより、熱膨張に伴うゲートロータ(51)の摩耗を抑制できる。
【0078】
(4-3)
ゲートロータ(51)は、1つのゲート(53)を有する複数のゲートブロック(70)を有する。このように、ゲートロータ(51)は複数のゲートブロック(70)に分割されているので、各ゲートブロック(70)を熱膨張の度合いに応じて移動しやすくできる。
【0079】
ゲートロータ(51)は複数のゲートブロック(70)に分割されていることにより、各ゲートブロック(70)を射出成形で製造できるので、製造コストを低減できる。
【0080】
(4-4)
ゲートロータ(51)は、樹脂によって構成される。これにより、スクリューロータ(40)との噛み合いにおける摺動部の焼き付きを抑制できる。
【0081】
(4-5)
ゲートロータ(51)は、第1サポート部材(56)および第2サポート部材(58)の間に挟まれる。各ゲート(53)は、第1サポート部材(56)および第2サポート部材(58)によって、第1サポート部材(56)の径方向及び周方向に微小移動可能な状態で保持される。
【0082】
ここで、スクリュー圧縮機(10)の運転に伴ってスクリュー圧縮機(10)の構成部品が熱膨張した場合に、スクリューロータ(40)とゲートロータ組立体(50)との相対的な位置が変化する。このとき、ゲートロータ(51)は、スクリューロータ(40)に過剰な力で押し付けられることで摩耗してしまう。
【0083】
ゲートロータ(51)は、第1サポート部材(56)および第2サポート部材(58)に挟まれているので、ゲートロータ(51)の回転軸方向の移動が規制される。一方で、各ゲート(53)は、第1サポート部材(56)および第2サポート部材(58)によって、第1サポート部材(56)の径方向及び周方向に微小移動可能な状態で保持されるので、ゲートロータ(51)は径方向および周方向に移動できる。
【0084】
そのため、スクリュー圧縮機(10)の熱膨張に起因してスクリューロータ(40)とゲートロータ組立体(50)との相対的な位置の変化が生じたとしても、各ゲート(53)が径方向及び周方向に僅かに移動することによって、ゲートロータ(51)の位置がスクリューロータ(40)に追従して変化するので、両者は互いに正常に噛み合うことができる。これにより、構成部品の熱膨張に伴うゲートロータ(51)の摩耗を抑制できる。
【0085】
(5)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0086】
(5-1)変形例1
上記実施形態のゲートロータ組立体(50)は、各ゲートブロック(70)のそれぞれをスクリューロータ(40)に押し付ける弾性体(E)を有してもよい。具体的には、図10に示すように、弾性体(E)は、各ゲートブロック(70)の基部(71)の基端部と第1サポート部材(56)の第2軸部(83)との間に配置される。本変形例では、弾性体(E)は、コイルばねである。コイルばね(E)は、各ゲートブロック(70)を径方向外側へ押し付ける。弾性体(E)はゴム材であってもよい。
【0087】
上記実施形態の各ゲートブロック(70)は、第1サポート部材(56)の表面上を周方向および径方向に僅かに移動可能に構成されている。そのため、スクリュー圧縮機(10)の回転による遠心力が各ゲートブロック(70)に十分に作用しない場合には、各ゲートブロック(70)の先端面とスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)との間に隙間が形成されてしまう。
【0088】
そこで、本変形例では、ゲートロータ組立体(50)が各ゲートブロック(70)のそれぞれをスクリューロータ(40)に押し付ける弾性体(E)を有することにより、各ゲートブロック(70)の先端面とスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)との間に隙間が形成されることを抑制できる。
【0089】
(5-2)変形例2
図11に示すように、上記実施形態の各ゲートブロック(70)のゲート部(72)は、ゲートロータ(51)の径方向内側から外側に向かって、ゲート部(72)の幅が広くなってもよい。言い換えると、ゲート部(72)は扇形状であってもよい。
【0090】
上記実施形態では、変形例1で述べたように、各ゲートブロック(70)に作用する遠心力が不十分な場合には、各ゲートブロック(70)の先端面とスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)との間に隙間が形成されてしまう。そこで、本変形例では、ゲート部(72)を扇形状にすることにより、ゲートロータ(51)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合ったときに各ゲートブロック(70)が螺旋溝(41)から抜けることを抑制できる。
【0091】
(5-3)変形例3
上記実施形態のゲートブロック(70)は、複数のゲート部(72)を有してもよい。具体的には、例えば図12に示すように、ゲートロータ(51)は、1つの基部(71)および2つのゲート部(72)を有する第1ゲートブロック(70a)と、1つの基部(71)および3つのゲート部(72)を有する第2ゲートブロック(70b)とを含む。本変形例においても、上記実施形態と同様に、熱膨張の度合いに応じて各ゲートブロック(70)が移動しやすいという効果を得ることができる。
【0092】
(5-4)変形例4
図13に示すように、上記実施形態のゲートロータ(51)は、複数のゲートブロック(70)に分割されず、一体に形成されてもよい。本変形例においても、ゲート部(72)の凹部(78)と第2ゲート支持部(92)の突出部(93)との間に隙間(G)が形成されるので、熱膨張に起因するゲートロータ(51)の摩耗を抑制できる。なお、図13では、ゲートロータ(51)に11枚のゲート(53)が設けられている例を示している。
【0093】
(5-5)変形例5
上記実施形態のゲートロータ(51)は、二段圧縮を行うスクリュー圧縮機に設けられてもよい。二段圧縮を行うスクリュー圧縮機では、例えばスクリューロータ(40)の下側の圧縮室(32)を第1圧縮室とし、スクリューロータ(40)の上側の圧縮室(32)を第2圧縮室とする。吸入口(14)を通って低圧空間(S1)へ流入した冷媒は、第1圧縮室へ流入して圧縮される。第1圧縮室において圧縮されて吐出された冷媒は、ケーシング(11)内に形成された通路を通って第2圧縮室へ流入する。第2圧縮室へ流入した冷媒は、圧縮された後に高圧空間(S2)へ吐出される。
【0094】
(5-6)変形例6
上記実施形態のゲートロータ(51)は、樹脂によって構成されていたが、樹脂以外の材質で構成されてもよい。例えば、ゲートロータ(51)は、金属で構成されてもよい。
【0095】
(5-7)変形例7
上記実施形態のゲートロータ組立体(50)の隙間(G)は、第2ゲート支持部(92)に形成される凹部と、ゲート部(72)に形成される突出部との間に形成されてもよい。言い換えると、本変形例では、凹部及び突出部が形成される部材が、上記実施形態と逆であってもよい。
【0096】
本変形例においても、上記実施形態と同様に、各第2ゲート支持部(92)における凹部の内周面とゲート部(72)における突出部の外周面との間には該突出部の全周を囲むように隙間(G)が形成されるので、ゲートロータ(51)は径方向および周方向に移動できる。
【0097】
そのため、スクリュー圧縮機(10)の熱膨張に起因してスクリューロータ(40)とゲートロータ組立体(50)との相対的な位置の変化が生じたとしても、隙間(G)によって、ゲートロータ(51)の位置がスクリューロータ(40)に追従して変化するので、両者は互いに正常に噛み合うことができる。これにより、構成部品の熱膨張に伴うゲートロータ(51)の摩耗を抑制できる。
【0098】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0099】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上説明したように、本開示は、スクリュー圧縮機、および冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0101】
1 冷凍装置
10 スクリュー圧縮機
11 ケーシング
40 スクリューロータ
41 螺旋溝
50 ゲートロータ組立体
51 ゲートロータ
53 ゲート
56 第1サポート部材
58 第2サポート部材
70a 第1ゲートブロック
70b 第2ゲートブロック
78 凹部
84 第1ゲート支持部
92 第2ゲート支持部
93 突出部
E コイルばね(弾性体)
G 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13