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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】プロペラ機構を排除した風力発電機
(51)【国際特許分類】
   F03D 9/12 20160101AFI20240502BHJP
   F03D 9/41 20160101ALI20240502BHJP
【FI】
F03D9/12
F03D9/41
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022092581
(22)【出願日】2022-05-23
(65)【公開番号】P2022122995
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-09-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512176059
【氏名又は名称】藤井 庸之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 庸之
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-137039(JP,A)
【文献】特開2014-095373(JP,A)
【文献】特開2017-075597(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217165(JP,U)
【文献】登録実用新案第3203180(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空の風圧,即ち、風力エネルギーを捕獲する為にお椀形状の開口部を持った複数の集風チャンバー(2)と漏斗型集風器(3)から構成された構造を有する集風タワーによって同風力エネルギーから生成された高圧の動圧、即ち、運動エネルギーを異径通風管によって地上レベルに設置された中央制御室(20)に配管誘導し、同制御室に設けられた風圧制御用ニードルバルブ(1)を経由して、同制御室の地下収納室(19)に装備された発電機(14)に直結されたフライホイール(9)に接続配管して、同制御室に設けられたコンプレッサー(11)によって起動始動した前記フライホイール(9)に前記運動エネルギーをリリースすることによって、同フライホイール(9)は回転持続して自らに運動エネルギーを貯蔵することになり、同運動エネルギーを回転トルクとして前記発電機(14)に放出することによって同発電機(14)は回転して電気エネルギーを創生する構造を有することを特徴とした風力発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力エネルギーを電気エネルギーに変換する風力発電機のニューテクノロジ―に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、風力エネルギーを電気エネルギーに変換する装置はプロペラ型風車発電機が主流を為している。しかし、当プロペラ型機による風力エネルギーの対電気エネルギーの変換率は、概ね40%であり、水力発電の水エネルギー(位置エネルギー)の対電気エネルギーの変換率が80~90%であるのに比べると著しく低い。
この低い最大の要因は、プロペラが捕獲した風力エネルギーの約30%が当プロペラ機構から無駄に流出されていることである。即ち、プロペラの前面から後方に風力が通過しないとプロペラ自体が回転しないというプロペラの本来の原理上の機能が起因している。その他の要因として、プロペラが回転した時にプロペラの円周部位に生じる気流の引きずり運動による風力エネルギーの損失、その他、変速機による機械損失、或いは、電気装備類の抵抗損失、等である。これ等の損失を排除した風力機械のニューテクノロジ―に係わる分野である。
風力発電機は、風力エネルギー(風量x風速)を動力として電気エネルギーを創生する機械である、従って、捕獲された風力エネルギーの対電気エネルギーの変換率の比率が電気エネルギ―の生産量を大きく左右する。同変換率のレベルアップが風力発電機に係わる課題である。
【0003】
捕獲される風力エネルギー(風量x風速)の大小が電気エネルギーの生産量を左右する。同生産量の定義式において電気エネルギーは、風速の3乗に比例して増大すると定義している。従って、風速は電気エネルギーの生産量を左右する最も重要なファクターである。一方、風速の強弱が環境へ与える影響力は大であるのでその風速による威力(風圧力と影響力)を風速のグレード別に下記する。
風速(M/秒)風圧力(pa,パスカル)/Kgf/m2 現象
20 245/25 身体を60度くらいに傾けないと立っいら れない。子供は飛ばされるそうになる。
25 383/39 屋根瓦が飛ばされる。樹木が折れる。
煙突が倒れる。
30 551/56 雨戸または屋根が飛ばされることがある。 電柱が倒れることがある。
35 750/76 自動車や列車の客車が倒れることがある。
40 980/100 身体を45度に傾けないと倒れる。
小石が飛ぶ。
50 1531/156 大抵の木造家屋が倒れる。樹木が根こそぎ になる。
60 2205/225 鉄塔が倒れることがある。
(注)当デ―タ―は東京大学廣井研究室発表のネットWEBサイトより引用したものである。この風圧力は、風圧力(pa,パスカル)=1/2pV^2、p;空気密度、V;風速(m/s)と定義されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当課題は、前記した変換率の低い風力発電機のプロペラ機構を排除して大気中で捕獲された風力エネルギーの略80~90%を回転エネルギーとして発電機に供する機構を持った対電気エネルギーの高変換率を備えた風力発電機を提供することを課題とし、且つ、在来のプロペラ型機に比べて構造をシンプル化することによる建造費の低廉化、並びに、発電機の地上レベル設置によるメインテナンスコストの低廉化を課題とする。加えるに、運転中に低周波音を発しない、鳥類を殺傷しない、景観を損なわない等、環境にやさしい風力発電機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上空の風圧、即ち、風力エネルギーを捕獲する為にお椀形状の開口部を持った複数の集風チャンバー(2)と漏斗型集風器(3)から構成された構造を有するの集風タワーによって上空の風力エネルギー(風圧=風量x風速)を捕獲して前記集風タワー内の流体(空気)流通経路で異径管を採用することによってベルエールの定理(エネルギー保存の法則に相当)により同風力エネルギー(風圧力)を高圧の動圧に変換して同エネルギーの略100%を通風管を通して地上レベルに誘導する新案である。添付(図1)(A)(B)参照
当発明の風力発電機は、同誘導さて来た同エネルギー(風圧力)を一旦、本風力発電機に付属するフライホイールに転送して同フライホイールは回転して同内部に運動エネルギーとして貯蔵する。そして、同フライホイールの機能により同貯蔵エネルギーは平準化された定格トルクを発電機にリリースする。同トルクを発電機が受け入れて回転して電気エネルギーを創生する。この生産プロセスの手段を以って電気エネルギーを創生するプロペラ機構を排除した風力発電機を提供する。同発電機の発電システムは、前記風圧力(動圧)をエネルギー源とする。上記の通り、同動圧は地上レベルに設置された風力発電機の中央制御室(20)に通風管を以って誘導され、同制御室の地下室(19)に設置された発電機(14)に直結されたフライホイール(9)に配管誘導される。添付図(図2)(A)参照
前記フライホイール(9)はその円周部位に空気をジェット噴射する複数の噴射ノズル(10)を備えており、同ノズルより空気をジェット噴射させて回転する機構を備えており、前記誘導された動圧を噴射させて推進力により回転する。そして、回転することによって同フライホイールは自らに運動エネルギーを貯蔵する。
フライホイールの特殊機能により同貯蔵された運動エネルギーは平準化された定格回転トルクを同発電機(14)に放出して同発電機は電気エネルギーを創生する。
本風力発電機は前記集風タワーによって捕獲された風力エネルギー(風圧力)を通風管を経て受け継ぎ、その風圧エネルギーの略100%が回転機構を持つフライホイールに転送されそのエネルギーの略80~90%が回転力に供され電気エネルギーに変換される。このエネルギー変換プロセスによって捕獲された風力エネルギーの対電気エネルギーの変換率を高効率化したことを特徴とする風力発電機を提供する。
参考までに、水力発電は貯水された水エネルギー(位置エネルギー)を導水管を通して搬送途中エネルギーの漏出することが無くそのエネルギーの略100%が水車タービンにリリースされてその内、略80~90%が電気エネルギーに変換される。これを以って、エネルギーの変換率は、80~90%と称されている。
本風力発電機の電気エネルギーの創生プロセスは、水力発電は回転機として水車タービンを適用するが、本風力発電機は回転機としてフライホイールを適用し、その電気エネルギーの創生プロセスは全く水力発電のそれと同類で電気エネルギーに供される風力エネルギーは、略80~90%で漏出するエネルギーは極小である。
この電気エネルギー創生プロセスは上記の水車発電の創生プロセスと同類性を以って理論上に於いて無駄なエネルギーの漏出が無く高レベルのエネルギー変換率を有する風力発電機である。
【0006】
本風力発電機の発電に係わるコンセプト
本風力発電機は、前記段落(0005)記載の通風タワーに依って捕獲された風力エネルギー(風圧力)を動力源として電気エネルギーを創生する。従って、創生される電気ネルギーの容量は捕獲される風圧力(風量x風速)の大小に左右される。そして前記異径管の効用により、同風力エネルギーの全圧が略動圧エネルギーに変換される。
物理的には、エネルギー保存の法則により、変換後の動力エネルギーは、捕獲された風力エネルギーの全圧に等しい、即ち、受風面で捕獲される風力エネルギーの全圧F(N)は、F(N)=1/2xpxAxV^2と定義されている。ここで、pは、空気密度で1.225とし、Aは、受風面積(m^2)、Vは、風速(m/sec.)である。同式F(N)に於いて、異径管の半径を1/2にすると、同異径管の面積(A)は、1/4となり、ベルヌーイの定理により、F(N)は一定で不変であるのだから、V^2は,4倍に増速する。即ち、物理的に可能な限り同面積を縮小することによって、V^2は加速的に増大する。即ち、同面積(A)を1/aにすることによって,V^2は、その逆数のa倍に増大し、以って、動圧(Pa)=1/2xpxV^2は,a倍に増大する。ここに、同面積(A)を縮小することによって、前記全圧F(N)=1/2xpxAxV^2は、略全圧が動圧(Pv)=1/2xpxV^2にエネルギー変換される。 これは、流体の流通経路に於いて当経路の面積を縮小すれば、捕獲された全圧力エネルギーはその縮小比(1/a)の逆数のa倍に応じて動圧に変換されるが、全圧力エネルギーの絶対量は不変であると云うベルヌーイの定理の応用である。
(補足)ベルヌーイの定理
ベルヌーイの定理とは、流体を扱う異径管において、その管のあらゆる断面に於ける流体の運動エネルギー(この場合は、風力エネルギー)の総量は、一定で不変であると云う定理である。即ち、一例として、同異径管の入口に於ける同エネルギーの総量をQ1とし、同異径管の出口の同エネルギーの総量をQ2とした時、Q1=Q2であると云う定理であり、“エネルギー保存の法則”に相当するものである。この定理は、流が完全流体(非粘性、非圧縮性)であることを前提としているが、この完全流体に近い空気や水に対しても現象として適応可能である。即ち、高圧洗浄機、ウオータージェットカッター、或いは、高圧エアーダスタークリーナーなるデバイスは、この定理を応用したものであるが、同カッターはノズルの出口面積の径を、極小の0.1~1.0φm/mにして、高水速を編み出し、約300MPaの高動圧によりあらゆる物体を切断できるというデバイスである。これは、高動圧の効用の一例である。
一方,この風力エネルギーの総量は、地上レベルに設置される当風力発電機として、空気密度(p)は、1.225とし、位置エネルギーは、大気圧としゼロ扱いとし、又、温度条件は常温と云う条件下で、Q1=Q2=1/2xpxAxV^2である。ここで、Aは、同管の断面積で、“pxA”は、単位時間の質量を表す。即ち、異径管に於いて、断面積を縮小したQ2の流速は早くなるので単位時間当りの質量は一定で不変であるので、同エネルギー量は、Q1=Q2であると云う定理である。即ち、“流体の質量保存の法則”である。
そして、風速の強弱がこの動圧(Pv)エネルギーの絶対量を左右することになり、本風力発電機はこの動圧をエネルギー源として電気エネルギーを生産すると云う発電に係わるニューコンセプトである。
風力発電機において、風速(V)が電気エネルギーの生産量を左右するのであるが、上記の通り、プロペラ型風力発電機では、その構造、機構上、カットアウト風速25M/秒を定め、これを超えた運転は構造の強度上不可能としている。即ち、直径が概ね50Mを超える巨大な回転体(プロペラ)を25M/秒を超える強風の中で回転させるにはその構造に係わる強度上、対応が不可能である。更に、プロペラ型機は上空で懸架されたナセルなる容器に発電機、増速機、等の重量物を収納している。従って、このナセルは重量が数十トンに及ぶもので、これを地上レベルより略80Mを超える上空に支柱(タワー)に乗せて懸架する構造である。因って、建造物として重心が可なり上空にある。
斯様に建造物として重心が上空にある時に台風の巨大な風圧に遭遇すると同タワーは前後左右の揺れを生じ、結果、応力歪みを生じ金属疲労によりタワーの倒壊事故に至る。斯様な状況下でプロペラ型風力発電機はカットアウト風速(25M/秒)を定めている。
そこで、台風のようなある程度の強風下でも発電行為を行うには、水力発電、或いは、火力、原子力発電所のように回転機器並びに発電機器の重量物を地上レベルに設置することが物理上、合理である。そして、上空の風力エネルギー(風圧力)を上空で捕獲して通風管によって地上に誘導して、地上レベルで発電行為を行うことが合理的である。
そこで、考案されたのが、上空の高圧力の風力エネルギー(風圧力)を直接に捕獲して、地上レベルに同風圧力を直送する前記段落(0005)記載の集風タワーである。
当特願の発明は、当集風タワーによって捕獲された風力エネルギー(風圧力=動圧)をエネルギー源として発電機に誘導して発電行為を行うプロペラ機構を排除したことを特徴とする風力発電機である。添付(図3)参照)
【0007】
集風タワーによって創生された動圧の応用
本風力発電機に供される風力エネルギー(風圧力)は、前記の集風タワーに依って創生されるものである。当該集風タワーには複数の漏斗型集風器が装備されておりそれぞれ異径管を以って縦列形状に接続装備されている。特徴として異径管を採用している目的は、上記の通り、ベルヌーイの定理により管路面積を縮小して当風圧力を高圧力の動圧に変換する為である。市販されている高圧洗浄機は、この定理を応用したもので、洗浄ノズルの先端を縮小して水道圧の約37倍の動圧を生み出し、これを以って洗浄することを謳い文句としている。又、宇宙ロケットに於いても同エンジンのガスの出口径を狭めることに依って動圧を高めて一層の推進力を得てスピードが増大する機構としている。
当該集風タワーは異径管の採用により同定理に基づいて当風力エネルギー(風圧力)は、高レベルの動圧に変換される。本発明の風力発電機は、この動圧をエネルギー源として電気エネルギーを創生するニューテクノロジ―の風力発電機である。
【0008】
動圧の計算例
ここで、一例として同集風チャンバーの入口面積(E)を20M^2(タテ4mxヨコ5m)とし、上記漏斗型集風器の受風入口の円面積を(F)とし、両者略同
圧(Pv)は、Pv=1/2pV^2より、245(pa,パスカル)→約25Kgf/m^2)である。(pは空気密度で、1.225とする)、添付 (図 1)(B)参照
ここで、前記漏斗型集風器の入口面積(F)の円半径(2.5m)を1/2(半径1.25m)にした場合、上記(F)の面積は、1/4になる。(円の面積、π x r^2より)因って、上記定理より、異径管の出口部位の動圧は、4倍の980(pa)→約
更に、同異径管の管路の円半径を1/2(半径0.625m)にすると、4倍の3920(pa)
1/aにすれば、その逆数のa倍で動圧は増大する。即ち、これは、エネルギー保存の法則に準じるベルヌーイの定理の応用である
因みに、参考までに、火力発電30万KW出力の蒸気タービンの動圧は25Mpa
2である。即ち、1m^2当たり、2,500トンの重力が作用していることである。以上の計算は管路の抵抗ロスが無い場合の値である。又、通風チャンバーの設置位置レベル、或いは、空気の温度差によって若干の値の変動はある。
【0009】
風力エネルギーによる出力計算
風力発電機において同出力計算式は、風力エネルギー=P(W,ワット)=1/2πp・R2・V3と定義されている。ここでpは、空気密度で、1.225、R(m)は、受風面積(円)の半径、V(m/s)は、風速を示す。(因みに、当該集風タワーの風を受ける受風チャンバーは漏斗形状で風の受け入れ部は、真円形を為している)。同計算式より、出力Pを増大させるには、3乗に比例する風速(V)の増大がポイントであることが解る。又、風速から動圧への換算式、動圧(Pa,パスカル)=1/2pV2より、動圧は、風速の2乗に比例していることが解る。即ち、これより風速は、風力エネルギ―の重要なファクターで、風速が2倍になれば動圧は、4倍に増大することが分かる。しかし、エネルギー保存の法則により、通風管内を通過するエネルギーの総量は変わらない。(管内抵抗、温度条件は無視する)
ここで、当該集風タワーにおける集風チャンバーの受風面に働く風圧力エネルギーF(N)は、F(N)=1/2xpxAxV^2で表わされる。ここで、pは、空気密度で1.225で、Aは、受風面積(m^2)、Vは、風速(m/sec.)である。そして仕事量(出力)P(kW)は、P(kW)=Cp(変換率)x1/2xpxAxV^3=Tn/9548と定義されている。
ここで、Tは、回転体が発するトルク、nは、回転体の回転数を表す。
ここに、上記F(N)の計算例を示す。
即ち、p=1.225、A=縦8mx横6m=48m^2、V=20m.V^2=400m.の場合、F(N)=1/2x1.225x48x400=11,760(N)/同ユニットチャンバー、同チャンバーを3段(集風タワーI基)とした場合=35,280(N)が、当該集風タワー1基分の受風力エネルギーである。
ここで、1000kW出力の発電機(回転数100rpm)の要求トルクは、定義式,P(kW)=Tn/9548より逆算して、発電機が必要とするトルクは、T=95,480(N・m)。当トルクより逆算してフライホイールの接戦力F(N)を求める。即ち、:-定義式、T=F(N)xR(m)にて、仮にR=3m.とすると、F(N)=95,480/3≒31,830(N)。 当該集風タワーより転送されてくる風力エネルギーは、上記した35,280.(N)であるので、これは、発電機が要求するトルク(T)を構成する接線力F(N)、31,280.(N)を満足している。
(注)これは出力に係わる理論計算であり、配管通気に係わる配管抵抗、並びに温度条件は無視する。
更に、3000kW出力の発電機(回転数、100rpm)の場合は、当集風タワーを3基連結して風力エネルギーを創生して、当風力発電機に転送する。添付(図4)参照。
当風力発電機は、風力において気象条件がよい洋上に設置することが推奨される。
添付(図5)は、洋上プラットフォームに当風力発電機が設置されたイラスト図である。日本は四方八方が海に囲まれているので洋上風力発電は再生可能エネルギーの開発利用の最有力候補である。
【0010】
本風力発電機の発電に係わるシステムフローを下記する。添付(図6)参照
▲1▼風圧制御ニードルバルブ(1)で設定風圧(以下、動圧と称す)を検知→
▲2▼中央制御盤(18)の指令により電磁弁(5)の開動作によりコンプレッサー(11)による圧搾空気の噴射 →
▲3▼フライホイール(9)の起動始動 →
▲4▼同起動始動後、4~5秒後に前記風圧制御ニードルバルブ(1)の開動作により前記動圧の放出、同時に、前記電磁弁(5)の閉動作、並びに電磁弁(4)の開動作 →
▲5▼前記フライホイール(9)は、前記動圧により回転増速。同フライホイール自体に運動エネルギーを貯蔵 →
▲6▼同ニードルバルブ(1)の動圧制御による前記フライホイール(9)の回転数制御(設定回転数保持)→
▲7▼流体継手(13)のクラッチON動作 →
▲8▼前記フライホイール(9)に貯蔵された運動エネルギーを定格トルクとして発電機(14)に放出→
▲9▼発電機(14)回転始動・発電 →
▲10▼電気エネルギーの創生 → コンバーター・蓄電・送電
【0011】
フライホイールの特性と動力計算
フライホイールは密度が均一な剛体である。回転することによって自らに運動エネルギーを貯蔵する機能を持つ。そして、接続された発電機が要求するトルクを平準化された定格トルクとして放出する特殊機能を有する。このフライホイールの特性を有効利用して発電システムを構築したものが本風力発電機である。
即ち、本風力発電機の中枢機構はフライホイール(9)と発電機(14)である。同フライホイール(9)は、前記の通り、回転することによって運動エネルギーを自らに貯蔵し、負荷側(発電機)に平準化した定格トルクをリリースする特殊機能を有する。
その創生される同トルク(T)の値は、フライホイールの接戦力、F(N)、即ち、フライホイールの質量(KG)に重力加速度(9.8N)を乗じた値に同ホイールの半径(R)を乗じた値である。即ち、T=F(N)*Rである。
一方、エネルギーとは仕事をする能力と定義されている。その仕事Lは、:- 仕事L(N・m)=力F(N)x 移動距離S(m)と定義される。ここで、回転体の移動距離は、円周2πRに回転数(n)を乗じた、2πRn(m)である。従って、仕事の式は、;- 仕事L(N・m)=力F(N)x2πRn(m)
=2πFRn(N・m)
=2πTn(N・m)
と定義される。
上記は、1分間の仕事量である。秒単位(仕事率=動力)に換算すると、:-
動力 P=2πTn(N・m)/60(sec)= Tn/9549(kW)
となる。ここで、 P= 動力(kW),T = トルク(N・m),n= 回転数(rpm)である。
一例として、フライホイールの質量3,500(KG)、半径(R)3(m),回転数(rpm)100(rpm)の場合のフライホイール1段当たりの動力は下記となる。
トルク(N・m)=接線力(N)(3,500kGx9.8)x3(半径、m)=102,900(N・m)
動力P =トルク102,900(N)x100(rpm)/9,549≒ 1,100kW
即ち、同フライホイールは100回転(rpm)することによって、1,100kWの運動(動力)エネルギーを保存することになる。
その為に、前記トルク102,900(N)の外力運動エネルギーを同フライホイールに転送する必要である。ここで、前記集風タワーが風力エネルギー(風圧力)を捕獲して運動エネルギーを創生する。即ち、出力1,100kWを目標として、必要エネルギー、102,900(N)を創生する必要がある。
ここで、一例として、同集風タワーを構成する集風チャンバーの員数を3器とする。添付(図1)参照。風速20m.において、同チャンバー1器当たりの受風面積(縦8mx横6m)を48m^2とする。3器で受風面積は、144m2、従って、受風面の風力エネルギー(風圧力、F(N))は、定義式F(N)=1/2x1.225(空気密度)xA(受風面積)xV^2(風速)より、F(N)=1/2x1.225x144x400=35,280(N)となる。
ここで、同集風タワーを複数基連結して捕獲する風力エネルギーを増大化して出力の増大化を図る。事例として、添付(図4)は、3連式集風タワーのイメージである。従って、合計風力エネルギー(N)は、35,280(N)x3≒106,000(N)の運動エネルギーを同集風タワー3基が創生する。同エネルギー,106,000(N)は、上記の必要エネルギー102,900(N)を満足する。同エネルギー,106,000(N)は、同集風タワーの機構(通風管に異径管を適用)によって略全量が動圧エネルギーに変換されて同フライホイールに転送されて機械(回転)エネルギーにより回転トルクを生み出す。そして、発電機が発電に必要なトルクを同フライホイールがリリースして電気エネルギーを創生する。
【0012】
当風力発電機は、下記を主要構成機器とする。同機器は、中央制御室(20)と地下収納室(20)に収納される、添付(図2)(A)参照
○動圧制御ニードルバルブ(1)
前記集風タワーによって捕獲された風力エネルギー(風圧力⇒動圧)を制御して前記フライホイール(9)の回転数を制御する最も重要な機構の一つである。
同フライホイール(9)は、流体接手(13)を介して発電機(14)に直結されるが、発電機が要求する定格回転数を保持する必要がある。ここ要求に答えるために同フライホイール(9)の回転数を発電機の定格回転数に一致させる必要がある。この手段としてこの風圧制御ニードルバルブ(1)が射出する動圧を制御して自動で同ニードルバルブ(1)の開閉を制御して同動圧を強弱を制御させることによって自動で回転数を制御する方式である。同ニードルバルブ(1)の構造は、添付(7)に図示する。尚、ニードルバルブ(1)の制御動作は、油圧操作によるもので中央制御盤の指令によって自動で行わる。
○フライホイール(9)
本風力発電機の運転開始は、前記集風タワーより通風管を通して圧送されて来る動圧(pa,パスカル)の値が規定値以上であることを前記ニードルバルブ(1)でセンサー検知して中央制御室の指令により行なわれる。このフライホイール(9)は、質量が数トンに及ぶ重量物である。従って、起動で要求される起動トルクは極めて大である。そこで、起動を確実に且つ、機敏に行うためにコンプレッサー(11)による圧搾空気を利用した起動方式を適用する。この起動方式の機構は、特許登録第5413757号の機構を適用する。
即ち、この起動方式の機構は、中央制御盤の指令に依りコンプレッサー(11)付属のエアーボトル(事前に圧搾空気が充填されている)に付属する電磁弁(5)が開動作して圧搾空気が配管を通して主軸(ホローシャフト)に圧送される。同圧搾空気が、同ホローシャフトの空洞部を通過して同フライホイール(9)の円周部位に設けられた複数のエアー噴出ノズルよりジェット噴出され同フライホイール(9)は回転始動する。圧搾空気は潜水艦の魚雷発射装置にも採用されており、その空気威力は実証されており、回転起動方式として問題はない。同圧搾空気は、起動後、即座に前記電磁弁(5)の閉動作により圧送停止する。同フライホイール(9)は回転起動後は、暫時、慣性で回転持続する。依って、起動後、4~5秒で中央制御室の指令で同ニードルバルブ(1)と同バルブに付属する電磁弁(4)の開動作により前記動圧は同フライホイール(9)に圧送されて回転は持続する。センサー検知により同回転数が設定定格回転数に到達後、付属の流体継手(13)がON動作して発電機(14)に同発電機が要求する定格トルクが放出される。同発電機(14)は、同定格トルクにより回転開始して発電して電気エネルギーが創生される。
○流体継手(13)
同トルクの発電機(14)への伝達に於いて流体継手(13)の介在は、フライホイール(9)による回転起動の動力伝達時に生じる衝撃や急停止時の衝撃が液体を通して行われるためその衝撃が緩和され発電機に悪影響を及ぼさない機構として有効である。
○ディスクブレーキ(11)
システム上の不具合でフライホイール(9)の回転制御が不能になった場合、同フライホイールは急速回転増速して回転機構を破壊することが予測される。
その場合に備え、同フライホイールの回転数の上限を設定して同設定値をセンサー検知して中央制御室の指令に依り、ディスクブレーキ(12)付属の電磁弁(12a)の開動作に依り圧搾空気が同ディスクブレーキ(12)にリリースされ同ブレーキが作動して緊急停止する。同時に、中央制御室の指令に依り同電磁弁(12a)は閉動作して同動圧の圧送は停止する。システムの安全機構として、当ディスクブレーキ(12)は必要装備である。
○発電機(14)
仕様
型式 : 立軸永久磁石式多極同期発電機
出力 : 500kW ~ 3000kW
回転数 : 100rpm~ 200rp
当発電機(14)の目的は、前記フライホイール(9)からリリースされて来る平準化された定格トルクを受け入れ回転機構により発電することを目的とする。
ここで、前記フライホイール(9)からリリースされるトルクの値を(T1)とし、当発電機(14)が要求する定格トルクを(T2)の値とすると、設計計画上、T1≧T2であらねばならない。尚、発電機は定格運転において設定定格トルクのみをフライホイール側に要求・吸収して、それ以上のトルクは吸収しない。例え、フライホイール側の貯蔵トルクがその要求より大であっても、即ち、T1-T2=T3のT3トルク分は、残留エネルギーとしてフライホイールに貯蔵される。かくして当発電機によって発電された電気エネルギーは、コンバーターによりAC電源に変換され蓄電・送電される。
○コンプレッサー(10)
本コンプレッサー(10)の第一の目的は、上記の通り、フライホイール(9)を圧搾空気によって起動始動させることで、二つ目の目的は、緊急時に,圧搾空気をディスクブレーキ(12)に送って同フライホイール(9)を緊急停止させることである。
一つ目の目的の前記起動始動については、同フライホイールは質量が1トン以上に及ぶ重量級の回転体である、従って、同ホイールの回転始動トルクが極めて大であるので、その起動を確実にするために圧搾空気によって同ホイールを強制回転させることを目的とする。この圧搾空気の機能については、潜水艦の魚雷発射装置(圧搾空気圧は、略70Kgf/cm^2~140Kgf/cm^2)に流用される等、その噴射空気圧による威力は周知である。
当フライホイールの起動始動のシステムは、特許登録NO.5413757号の起動始動方式を適用する。即ち、回転主軸にホローシャフト(空洞主軸)を採用して、その空洞を通して圧搾空気を同フライホイール(9)の円周部位に設けられた複数の空気噴射ノズルより噴射させて同フライホイールを強制回転させる機構である。
添付 (図2)(B)-2参照
同圧搾空気の空気圧並びに噴射容量は、同フライホイール(9)のスケールに応じて設定される。尚、前記コンプレッサー(11)付属の空気槽は常時、規定の空気圧力が保持され中央制御盤の指令で何時でも即刻、圧搾空気を圧送出来る機構としている。
【0013】
制御用操作電源並びに機器稼働電源
中央制御盤の操作電源、及び、コンプレッサー、油圧装置、等の稼働電源は装備されている太陽光パネルによる電源を流用する。
【発明の効果】
【0014】
第一は、風力エネルギーを捕獲する前記段落(0005)記載の集風タワーと連携使用することによって、前記カットアウト風速(25m/秒)以上の発電運転を可能とする。運転可能な上限風速は、前記通風タワーの風圧に対する建造強度に依存する。実用として本機のカットアウト風速は、少なくと40m/秒まで引き上げることが可能であり、本発明の風力発電機は、在来のプロペラ型風力発電機より高い風速レベルでの発電運転を可能とする。
第二は、本機と前記通風タワーとの連携使用により、風力エネルギーの対電気エネルギーの変換効率を在来のプロペラ型風力発電機の倍以上の変換効率レベル、即ち、捕獲風力エネルギーの80~90%の対電気エネルギーでの変換効率の運転を可能とした。これは、水力発電の水エネルギー(位置エネルギー)の対電気エネルギーの変換率と略同じくするレベルのものである。
第三は、水力発電や火力発電と同様に地上レベルでの本機による発電システムを可能とした。従って、高所建造に比べて全体建造費が安上がりで、又、機器の据付け費も安上がりで、しかも、機器のメインテナンスが地上レベルで行へ容易であるので同メインテナンス費用も安上がりで済むこととなる。
第四は、環境にやさしい風力発電機である。プロペラ型風力発電機は運転中に低周波音を発し近隣住民に健康被害を及ぼしている、又、プロペラが回転中に渡り鳥を殺傷するバードストライクが多発している、等の現象が無い、それに、前記通風タワーと併せ建造するが、沿岸部の灯台と同様に建造物として景観を損なうものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)集風タワー1の外観図及びY部拡大図 (B)漏斗型集風器の組立概念図及び集風チャンバー2の集風・加圧概念図
図2】(A)当風力発電機の装備外観図 (B)-1ラビリンス6の詳細図 (B)-2フライホイールの”E”矢視図集風及び”Y-Y”断面図
図3】当発明の風力発電機と集風タワー(実用新案登録NO.323707号)を併用した発電システム
図4】集風タワー3連式のイメージ図
図5】当発明の風力発電機を設備した洋上風力発電所のイメージ図
図6】当発明の風力発電機の発電システムフローチャート
図7】風圧制御ニードルバルブ1の開閉動作図及び開閉機能図 (A)ニードルバルブの閉動作図 (B)ニードルバルブの開動作図 (C)ニードルバルブの油圧による開閉動作機能図
【符号の説明】
【0016】
1 風圧制御ニードルバルブ
1a 油圧駆動装置
1b ウオームキアー
1c 空気射出ノズル
2 ニードルバルブ制御用油圧発生装置
3 小配管、動圧圧送用
4 電磁開閉弁、ニードルバルブ側
5 電磁開閉弁、コンプレッサー側
6 ラビリンス
7 スラスト&ラジアルベアリング
8 ホロ―シャフト
9 フライホイール
10 ジェット噴射ノズル
11 コンプレッサー
12 ディスクブレーキ
12a 電磁開閉弁、ディスクブレーキ
13 流体接手
14 発電機
15 ラジアルベアリング
16 蓄電池
17 消音器
18 中央制御盤
19 地下収納室、フライホイール
20 中央制御室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7