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特許7481691品質評価装置、教師データの作成方法、品質評価処理プログラムおよび品質評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】品質評価装置、教師データの作成方法、品質評価処理プログラムおよび品質評価方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240502BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240502BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20240502BHJP
【FI】
G06T7/00 600
G01N23/04
G06Q50/02
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020065309
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163278
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】水野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】若野 真
(72)【発明者】
【氏名】村上 倫哉
(72)【発明者】
【氏名】永井 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】高辻 英之
【審査官】藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110720937(CN,A)
【文献】特開2010-145135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G06T 1/00- 1/40
G06V 3/00- 7/90
G06V 10/00-20/90
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝類の軟体部の全体に対する外観が透明な部分の割合である前記貝類の身入りの程度により前記貝類の品質を評価する品質評価装置であって、
前記貝類のX線画像を取得して当該X線画像を解析することにより、前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得部と、
前記画像パラメータ取得部が取得した複数種類の前記第1画像パラメータを所定の推定式に代入することにより、前記貝類の身入りの程度の指標となる品質情報のスコアを算出するスコア算出部と、
前記スコア算出部が算出した前記スコアに基づいて前記貝類の品質を評価する品質評価部と、を備えていることを特徴とする品質評価装置。
【請求項2】
前記スコア算出部は、
1つの前記X線画像から取得される複数種類の前記第1画像パラメータと前記品質情報の実測値とを1つのデータセットとした複数の前記データセットの集合である、前記所定の推定式を生成するための画像パラメータサンプルの中から、単位空間となる前記データセットの集合である単位空間サンプルと、前記単位空間サンプル以外の前記データセットの集合である信号サンプルと、を選択し、
複数種類の前記第1画像パラメータごとに、
前記単位空間サンプルの前記第1画像パラメータの平均値である第1平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記第1画像パラメータのそれぞれから前記第1平均値を差し引くことで基準化第1画像パラメータを算出し、
前記単位空間サンプルの前記実測値の平均値である第2平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記実測値のそれぞれから前記第2平均値を差し引くことで基準化実測値を算出し、
前記基準化第1画像パラメータおよび前記基準化実測値を用いて、前記基準化実測値に対する前記基準化第1画像パラメータの比例定数と、SN比とを算出し、
複数種類の前記第1画像パラメータごとの前記比例定数および前記SN比を用いて、前記所定の推定式を生成することを特徴とする請求項1に記載の品質評価装置。
【請求項3】
前記スコア算出部は、
前記画像パラメータ取得部が取得した複数種類の前記第1画像パラメータを前記所定の推定式に代入することにより、前記品質情報の推定値を算出し、
不良品と評価した前記貝類に関する前記品質情報の実測値の分布と前記推定値とのマハラノビス距離を、前記スコアとして算出し、
前記品質評価部は、前記マハラノビス距離と閾値とを比較することにより、前記貝類の品質を評価することを特徴とする請求項2に記載の品質評価装置。
【請求項4】
前記画像パラメータサンプルを用いて、複数種類の前記第1画像パラメータごとに、前記所定の推定式から算出された前記推定値が前記基準化実測値にどの程度近似しているかを示す推定式精度に関する第1要因効果を算出する要因効果算出部をさらに備え、
前記スコア算出部は、前記要因効果算出部が算出した前記第1要因効果を用いて、前記所定の推定式を再生成することを特徴とする請求項3に記載の品質評価装置。
【請求項5】
前記要因効果算出部は、前記X線画像の処理および解析に関連する複数種類の第2画像パラメータごとに、前記推定式精度に関する第2要因効果を算出し、
前記画像パラメータ取得部は、前記要因効果算出部が算出した前記第2要因効果を用いて、前記複数種類の第2画像パラメータの少なくともいずれか1つを再設定することを特徴とする請求項4に記載の品質評価装置。
【請求項6】
前記スコア算出部は、
前記画像パラメータサンプルの複数の前記データセットを教師データとした機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、前記画像パラメータ取得部から取得した複数種類の前記第1画像パラメータの中から、前記画像パラメータサンプルを構成する前記第1画像パラメータを選択し、
選択した前記第1画像パラメータで構成される前記画像パラメータサンプルを用いて、前記所定の推定式を再生成することを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の品質評価装置。
【請求項7】
前記貝類は、牡蠣であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の品質評価装置。
【請求項8】
貝類の身入りの程度により前記貝類の品質を評価する品質評価装置であって、
前記貝類のX線画像を取得して当該X線画像を解析することにより、前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得部と、
前記画像パラメータ取得部が取得した複数種類の前記第1画像パラメータを所定の推定式に代入することにより、前記貝類の身入りの程度の指標となる品質情報のスコアを算出するスコア算出部と、
前記スコア算出部が算出した前記スコアに基づいて前記貝類の品質を評価する品質評価部と、を備えており、
前記スコア算出部は、
1つの前記X線画像から取得される複数種類の前記第1画像パラメータと前記品質情報の実測値とを1つのデータセットとした複数の前記データセットの集合である、前記所定の推定式を生成するための画像パラメータサンプルの中から、単位空間となる前記データセットの集合である単位空間サンプルと、前記単位空間サンプル以外の前記データセットの集合である信号サンプルと、を選択し、
複数種類の前記第1画像パラメータごとに、
前記単位空間サンプルの前記第1画像パラメータの平均値である第1平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記第1画像パラメータのそれぞれから前記第1平均値を差し引くことで基準化第1画像パラメータを算出し、
前記単位空間サンプルの前記実測値の平均値である第2平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記実測値のそれぞれから前記第2平均値を差し引くことで基準化実測値を算出し、
前記基準化第1画像パラメータおよび前記基準化実測値を用いて、前記基準化実測値に対する前記基準化第1画像パラメータの比例定数と、SN比とを算出し、
複数種類の前記第1画像パラメータごとの前記比例定数および前記SN比を用いて、前記所定の推定式を生成することを特徴とする品質評価装置。
【請求項9】
前記スコア算出部は、
前記画像パラメータ取得部が取得した複数種類の前記第1画像パラメータを前記所定の推定式に代入することにより、前記品質情報の推定値を算出し、
不良品と評価した前記貝類に関する前記品質情報の実測値の分布と前記推定値とのマハラノビス距離を、前記スコアとして算出し、
前記品質評価部は、前記マハラノビス距離と閾値とを比較することにより、前記貝類の品質を評価することを特徴とする請求項8に記載の品質評価装置。
【請求項10】
前記画像パラメータサンプルを用いて、複数種類の前記第1画像パラメータごとに、前記所定の推定式から算出された前記推定値が前記基準化実測値にどの程度近似しているかを示す推定式精度に関する第1要因効果を算出する要因効果算出部をさらに備え、
前記スコア算出部は、前記要因効果算出部が算出した前記第1要因効果を用いて、前記所定の推定式を再生成することを特徴とする請求項9に記載の品質評価装置。
【請求項11】
前記要因効果算出部は、前記X線画像の処理および解析に関連する複数種類の第2画像パラメータごとに、前記推定式精度に関する第2要因効果を算出し、
前記画像パラメータ取得部は、前記要因効果算出部が算出した前記第2要因効果を用いて、前記複数種類の第2画像パラメータの少なくともいずれか1つを再設定することを特徴とする請求項10に記載の品質評価装置。
【請求項12】
貝類の身入りの程度により前記貝類の品質を評価する品質評価装置であって、
前記貝類のX線画像を取得して当該X線画像を解析することにより、前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得部と、
前記画像パラメータ取得部が取得した複数種類の前記第1画像パラメータを所定の推定式に代入することにより、前記貝類の身入りの程度の指標となる品質情報のスコアを算出するスコア算出部と、
前記スコア算出部が算出した前記スコアに基づいて前記貝類の品質を評価する品質評価部と、を備えており、
前記スコア算出部は、
1つの前記X線画像から取得される複数種類の前記第1画像パラメータと前記品質情報の実測値とを1つのデータセットとした複数の前記データセットの集合である、前記所定の推定式を生成するための画像パラメータサンプルの中から、単位空間となる前記データセットの集合である単位空間サンプルと、前記単位空間サンプル以外の前記データセットの集合である信号サンプルと、を選択し、
複数種類の前記第1画像パラメータごとに、
前記単位空間サンプルの前記第1画像パラメータの平均値である第1平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記第1画像パラメータのそれぞれから前記第1平均値を差し引くことで基準化第1画像パラメータを算出し、
前記単位空間サンプルの前記実測値の平均値である第2平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記実測値のそれぞれから前記第2平均値を差し引くことで基準化実測値を算出し、
前記基準化第1画像パラメータおよび前記基準化実測値を用いて、前記基準化実測値に対する前記基準化第1画像パラメータの比例定数と、SN比とを算出し、
複数種類の前記第1画像パラメータごとの前記比例定数および前記SN比を用いて、前記所定の推定式を生成し、
前記画像パラメータサンプルの複数の前記データセットを教師データとした機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、前記画像パラメータ取得部から取得した複数種類の前記第1画像パラメータの中から、前記画像パラメータサンプルを構成する前記第1画像パラメータを選択し、
選択した前記第1画像パラメータで構成される前記画像パラメータサンプルを用いて、前記所定の推定式を再生成することを特徴とする品質評価装置。
【請求項13】
コンピュータにより実行されるとともに、貝類のX線画像を解析することにより、前記貝類の軟体部の全体に対する外観が透明な部分の割合である前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得部と、前記画像パラメータ取得部が取得した複数種類の前記第1画像パラメータに基づいて所定の推定式を生成するスコア算出部と、を備えた、前記貝類の身入りの程度により前記貝類の品質を評価することを機械学習する品質評価装置に適用される、学習済みモデルを生成するための教師データの作成方法であって、
前記教師データは、前記スコア算出部が前記所定の推定式を生成する処理に用いられる、1つの前記X線画像から取得される複数種類の前記第1画像パラメータと、前記貝類の身入りの程度の指標となる品質情報の実測値と、を1つのデータセットとした複数の前記データセットのそれぞれに含まれる、複数種類の前記第1画像パラメータと、前記実測値と、を含み、
前記スコア算出部は、
学習モデルに前記教師データを与えて機械学習させることにより、前記学習済みモデルを生成し、
特定の前記第1画像パラメータを前記学習済みモデルに入力することにより、前記学習済みモデルから出力された前記実測値の予測値を取得し、
前記スコア算出部が、複数の前記データセットのそれぞれに含まれる、複数種類の前記第1画像パラメータと、前記実測値と、を前記品質評価装置から取得するステップを含んでいることを特徴とする教師データの作成方法。
【請求項14】
請求項1ならびに8から12のいずれか1項に記載の品質評価装置としてコンピュータを機能させるための品質評価処理プログラムであって、前記画像パラメータ取得部、前記スコア算出部および前記品質評価部としてコンピュータを機能させるための品質評価処理プログラム。
【請求項15】
貝類の軟体部の全体に対する外観が透明な部分の割合である前記貝類の身入りの程度により前記貝類の品質を評価する品質評価装置により実行される品質評価方法であって、
前記貝類のX線画像を取得して当該X線画像を解析することにより、前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得ステップと、
前記画像パラメータ取得ステップにて取得した複数種類の前記第1画像パラメータを所定の推定式に代入することにより、前記貝類の身入りの程度の指標となる品質情報のスコアを算出するスコア算出ステップと、
前記スコア算出ステップにて算出した前記スコアに基づいて前記貝類の品質を評価する品質評価ステップと、を含んでいることを特徴とする品質評価方法。
【請求項16】
前記貝類は、牡蠣であることを特徴とする請求項15に記載の品質評価方法。
【請求項17】
貝類の身入りの程度により前記貝類の品質を評価する品質評価装置により実行される品質評価方法であって、
前記貝類のX線画像を取得して当該X線画像を解析することにより、前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得ステップと、
前記画像パラメータ取得ステップにて取得した複数種類の前記第1画像パラメータを所定の推定式に代入することにより、前記貝類の身入りの程度の指標となる品質情報のスコアを算出するスコア算出ステップと、
前記スコア算出ステップにて算出した前記スコアに基づいて前記貝類の品質を評価する品質評価ステップと、を含んでおり、
前記スコア算出ステップでは、
1つの前記X線画像から取得される複数種類の前記第1画像パラメータと前記品質情報の実測値とを1つのデータセットとした複数の前記データセットの集合である、前記所定の推定式を生成するための画像パラメータサンプルの中から、単位空間となる前記データセットの集合である単位空間サンプルと、前記単位空間サンプル以外の前記データセットの集合である信号サンプルと、を選択し、
複数種類の前記第1画像パラメータごとに、
前記単位空間サンプルの前記第1画像パラメータの平均値である第1平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記第1画像パラメータのそれぞれから前記第1平均値を差し引くことで基準化第1画像パラメータを算出し、
前記単位空間サンプルの前記実測値の平均値である第2平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記実測値のそれぞれから前記第2平均値を差し引くことで基準化実測値を算出し、
前記基準化第1画像パラメータおよび前記基準化実測値を用いて、前記基準化実測値に対する前記基準化第1画像パラメータの比例定数と、SN比とを算出し、
複数種類の前記第1画像パラメータごとの前記比例定数および前記SN比を用いて、前記所定の推定式を生成することを特徴とする品質評価方法。
【請求項18】
前記スコア算出ステップでは、
前記画像パラメータ取得ステップにて取得した複数種類の前記第1画像パラメータを前記所定の推定式に代入することにより、前記品質情報の推定値を算出し、
不良品と評価した前記貝類に関する前記品質情報の実測値の分布と前記推定値とのマハラノビス距離を、前記スコアとして算出し、
前記品質評価ステップでは、前記マハラノビス距離と閾値とを比較することにより、前記貝類の品質を評価することを特徴とする請求項17に記載の品質評価方法。
【請求項19】
前記画像パラメータサンプルを用いて、複数種類の前記第1画像パラメータごとに、前記所定の推定式から算出された前記推定値が前記基準化実測値にどの程度近似しているかを示す推定式精度に関する第1要因効果を算出する要因効果算出ステップをさらに含んでおり、
前記スコア算出ステップでは、前記要因効果算出ステップにて算出した前記第1要因効果を用いて、前記所定の推定式を再生成することを特徴とする請求項18に記載の品質評価方法。
【請求項20】
前記要因効果算出ステップでは、前記X線画像の処理および解析に関連する複数種類の第2画像パラメータごとに、前記推定式精度に関する第2要因効果を算出し、
前記画像パラメータ取得ステップでは、前記要因効果算出ステップにて算出した前記第2要因効果を用いて、前記複数種類の第2画像パラメータの少なくともいずれか1つを再設定することを特徴とする請求項19に記載の品質評価方法。
【請求項21】
貝類の身入りの程度により前記貝類の品質を評価する品質評価装置により実行される品質評価方法であって、
前記貝類のX線画像を取得して当該X線画像を解析することにより、前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得ステップと、
前記画像パラメータ取得ステップにて取得した複数種類の前記第1画像パラメータを所定の推定式に代入することにより、前記貝類の身入りの程度の指標となる品質情報のスコアを算出するスコア算出ステップと、
前記スコア算出ステップにて算出した前記スコアに基づいて前記貝類の品質を評価する品質評価ステップと、を含んでおり、
前記スコア算出ステップでは、
1つの前記X線画像から取得される複数種類の前記第1画像パラメータと前記品質情報の実測値とを1つのデータセットとした複数の前記データセットの集合である、前記所定の推定式を生成するための画像パラメータサンプルの中から、単位空間となる前記データセットの集合である単位空間サンプルと、前記単位空間サンプル以外の前記データセットの集合である信号サンプルと、を選択し、
複数種類の前記第1画像パラメータごとに、
前記単位空間サンプルの前記第1画像パラメータの平均値である第1平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記第1画像パラメータのそれぞれから前記第1平均値を差し引くことで基準化第1画像パラメータを算出し、
前記単位空間サンプルの前記実測値の平均値である第2平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記実測値のそれぞれから前記第2平均値を差し引くことで基準化実測値を算出し、
前記基準化第1画像パラメータおよび前記基準化実測値を用いて、前記基準化実測値に対する前記基準化第1画像パラメータの比例定数と、SN比とを算出し、
複数種類の前記第1画像パラメータごとの前記比例定数および前記SN比を用いて、前記所定の推定式を生成し、
前記画像パラメータサンプルの複数の前記データセットを教師データとした機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、前記画像パラメータ取得ステップにて取得した複数種類の前記第1画像パラメータの中から、前記画像パラメータサンプルを構成する前記第1画像パラメータを選択し、
選択した前記第1画像パラメータで構成される前記画像パラメータサンプルを用いて、前記所定の推定式を再生成することを特徴とする品質評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質評価装置、教師データ、品質評価処理プログラムおよび品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、貝類の貝殻を破壊することなく、貝類の品質を評価する技術が研究開発されている。なお、「貝類の貝殻を破壊することなく」との概念の中には、例えば2つの貝殻が閉じた状態の二枚貝の貝殻を作業員が開けて、二枚貝を開口させることも含まれる。例えば、特許文献1には、貝類にX線を照射することにより貝類の質量または形状を推定し、推定した貝類の質量または形状が異常であると判定した場合に、検査対象となった貝類を不良品として振り分けるX線検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-145135号公報(2010年7月1日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のX線検査装置では、貝類が不良品か否かを振り分ける際の判断指標が貝類の質量または形状のいずれか一方である。貝類の質量だけ、あるいは貝類の形状だけを推定した場合、検査対象となった貝類がどの成長群に属するのかを判定するのには有効であるものの、当該貝類が不良品であるか否かを精度高く振り分ける点では有効とまでは言えない。そのため、特許文献1のX線検査装置には、貝類が不良品であるか否かを精度高く振り分ける点においてなお不十分であるという問題点があった。
【0005】
本発明の一態様は前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、貝類の貝殻を破壊することなく、貝類の品質を精度高く評価することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る品質評価装置は、貝類の身入りの程度により前記貝類の品質を評価する品質評価装置であって、前記貝類のX線画像を取得して当該X線画像を解析することにより、前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得部と、前記画像パラメータ取得部が取得した複数種類の前記第1画像パラメータを所定の推定式に代入することにより、前記貝類の身入りの程度の指標となる品質情報のスコアを算出するスコア算出部と、前記スコア算出部が算出した前記スコアに基づいて前記貝類の品質を評価する品質評価部と、を備えている。
【0007】
貝類の品質を精度高く評価できる指標としては、一般的に貝類の身入りの程度が知られている。その点前記構成によれば、品質評価装置は、貝類のX線画像を解析して取得した第1画像パラメータを所定の推定式に代入し、算出して得た品質情報のスコアに基づいて貝類の品質を評価する。品質情報は貝類の身入りの程度を示す指標であることから、品質評価装置は、貝類の貝殻を破壊することなく、貝類の品質をスコアに基づいて精度高く評価することができる。
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る品質評価装置は、前記スコア算出部は、1つの前記X線画像から取得される複数種類の前記第1画像パラメータと前記品質情報の実測値とを1つのデータセットとした複数の前記データセットの集合である、前記所定の推定式を生成するための画像パラメータサンプルの中から、単位空間となる前記データセットの集合である単位空間サンプルと、前記単位空間サンプル以外の前記データセットの集合である信号サンプルと、を選択し、複数種類の前記第1画像パラメータごとに、前記単位空間サンプルの前記第1画像パラメータの平均値である第1平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記第1画像パラメータのそれぞれから前記第1平均値を差し引くことで基準化第1画像パラメータを算出し、前記単位空間サンプルの前記実測値の平均値である第2平均値を算出して、対応する前記信号サンプルの前記実測値のそれぞれから前記第2平均値を差し引くことで基準化実測値を算出し、前記基準化第1画像パラメータおよび前記基準化実測値を用いて、前記基準化実測値に対する前記基準化第1画像パラメータの比例定数と、SN比とを算出し、複数種類の前記第1画像パラメータごとの前記比例定数および前記SN比を用いて、前記所定の推定式を生成してもよい。
【0009】
前記構成によれば、スコア算出部は、単位空間サンプルおよび信号サンプルを用いて算出された基準化第1画像パラメータおよび基準化実測値に基づいて、所定の推定式を生成する。そのため、品質評価の対象となった貝類のX線画像から取得された複数種類の第1画像パラメータのいずれかに、特殊要因による異常値があったとしても、当該異常値がスコアに及ぼす影響を低減することができる。よって品質評価装置は、品質評価の対象となった貝類の特有の事情にあまり左右されず安定的にスコアを算出できることから、貝類の貝殻を破壊することなく、貝類の品質をより精度高く評価することができる。
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る品質評価装置は、前記スコア算出部は、前記画像パラメータ取得部が取得した複数種類の前記第1画像パラメータを前記所定の推定式に代入することにより、前記品質情報の推定値を算出し、不良品と評価した前記貝類に関する前記品質情報の実測値の分布と前記推定値とのマハラノビス距離を、前記スコアとして算出し、前記品質評価部は、前記マハラノビス距離と閾値とを比較することにより、前記貝類の品質を評価してもよい。
【0011】
前記構成によれば、品質評価装置は、スコアとしてのマハラノビス距離と閾値とを比較することにより、貝類の貝殻を破壊することなく、貝類の品質をより精度高く評価することができる。
【0012】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る品質評価装置は、前記画像パラメータサンプルを用いて、複数種類の前記第1画像パラメータごとに、前記所定の推定式から算出された前記推定値が前記基準化実測値にどの程度近似しているかを示す推定式精度に関する第1要因効果を算出する要因効果算出部をさらに備え、前記スコア算出部は、前記要因効果算出部が算出した前記第1要因効果を用いて、前記所定の推定式を再生成してもよい。
【0013】
前記構成によれば、複数種類の第1画像パラメータごとの第1要因効果に基づいて、どの第1画像パラメータが推定式精度にどの程度の影響を及ぼすかを見極めることができる。そのため品質評価装置は、推定式精度を高める方向に良い影響を及ぼす第1画像パラメータを選択し、選択した第1画像パラメータを含む画像パラメータサンプルを用いて所定の推定式を再生成することにより、推定式精度を高めることができる。よって品質評価装置は、貝類の貝殻を破壊することなく、貝類の品質をより精度高く評価することができる。
【0014】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る品質評価装置は、前記要因効果算出部は、前記X線画像の処理および解析に関連する複数種類の第2画像パラメータごとに、前記推定式精度に関する第2要因効果を算出し、前記画像パラメータ取得部は、前記要因効果算出部が算出した前記第2要因効果を用いて、前記複数種類の第2画像パラメータの少なくともいずれか1つを再設定してもよい。
【0015】
前記構成によれば、複数種類の第2画像パラメータごとの第2要因効果に基づいて、どの第2画像パラメータが推定式精度にどの程度の影響を及ぼすかを見極めることができる。そのため品質評価装置は、第2要因効果を用いて推定式精度を高める方向に良い影響を及ぼす第2画像パラメータを再設定した上で、X線画像の処理および解析を行うことにより、推定式精度を高めることができる。よって品質評価装置は、貝類の貝殻を破壊することなく、貝類の品質をより精度高く評価することができる。
【0016】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る品質評価装置は、前記スコア算出部は、前記画像パラメータサンプルの複数の前記データセットを教師データとした機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、前記画像パラメータ取得部から取得した複数種類の前記第1画像パラメータの中から、前記画像パラメータサンプルを構成する前記第1画像パラメータを選択し、選択した前記第1画像パラメータで構成される前記画像パラメータサンプルを用いて、前記所定の推定式を再生成してもよい。
【0017】
前記構成によれば、スコア算出部は、学習済みモデルを用いることにより、推定式精度を高める方向に良い影響を及ぼす第1画像パラメータを、画像パラメータサンプルを構成する第1画像パラメータとして選択することができる。そのため品質評価装置は、推定式精度を高める方向に良い影響を及ぼす第1画像パラメータで構成された画像パラメータサンプルを用いて所定の推定式を再生成することで、推定式精度を高めることができる。よって品質評価装置は、貝類の貝殻を破壊することなく、貝類の品質をより精度高く評価することができる。
【0018】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る品質評価装置は、前記貝類は、牡蠣であってもよい。前記構成によれば、品質評価装置は、牡蠣の殻を破壊することなく、牡蠣の品質を精度高く評価することができる。
【0019】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る教師データは、貝類のX線画像を解析することにより、前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得部と、前記画像パラメータ取得部が取得した複数種類の前記第1画像パラメータに基づいて所定の推定式を生成するスコア算出部と、を備えた、前記貝類の身入りの程度により前記貝類の品質を評価することを機械学習する品質評価装置に適用される、学習済みモデルを生成するための教師データであって、前記スコア算出部が前記所定の推定式を生成する処理に用いられる、1つの前記X線画像から取得される複数種類の前記第1画像パラメータと、前記貝類の身入りの程度の指標となる品質情報の実測値と、を1つのデータセットとした複数の前記データセットのそれぞれに含まれる、複数種類の前記第1画像パラメータと、前記実測値と、を含み、特定の前記第1画像パラメータを前記学習済みモデルに入力することにより、当該特定の前記第1画像パラメータが、前記所定の推定式から算出された前記品質情報の推定値が基準化した前記実測値にどの程度近似しているかを示す推定式精度に及ぼす影響の程度を出力する処理に用いられる。前記構成によれば、本発明の一態様に係る品質評価装置と同様の効果を奏する教師データを実現することができる。
【0020】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る推定式生成装置は、貝類の身入りの程度により貝類の品質を評価する所定の推定式を生成する推定式生成装置であって、前記貝類のX線画像を取得して当該X線画像を解析することにより、前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得部と、1つのX線画像から前記画像パラメータ取得部が取得する複数種類の前記第1画像パラメータと前記品質情報の実測値とを1つのデータセットとした複数の前記データセットの集合である、前記所定の推定式を生成するための画像パラメータサンプルの中から、単位空間となる前記データセットの集合である単位空間サンプルと、前記単位空間サンプル以外の前記データセットの集合である信号サンプルと、を選択し、複数種類の前記第1画像パラメータごとに、前記単位空間サンプルの前記第1画像パラメータの平均値である第1平均値を算出し、対応する前記信号サンプルの前記第1画像パラメータのそれぞれから前記第1平均値を差し引くことで基準化第1画像パラメータを算出し、前記基準化第1画像パラメータおよび前記基準化実測値を用いて、前記基準化実測値に対する前記基準化第1画像パラメータの比例定数と、SN比とを算出し、複数種類の前記第1画像パラメータごとの前記比例定数および前記SN比を用いて、前記所定の推定式を生成する推定式生成部と、を備えている。前記構成によれば、本発明の一態様に係る品質評価装置と同様の効果を奏する推定式生成装置を実現することができる。
【0021】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る品質評価方法は、貝類の身入りの程度により前記貝類の品質を評価する品質評価装置により実行される品質評価方法であって、前記貝類のX線画像を取得して当該X線画像を解析することにより、前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得ステップと、前記画像パラメータ取得ステップにて取得した複数種類の前記第1画像パラメータを所定の推定式に代入することにより、前記貝類の身入りの程度の指標となる品質情報のスコアを算出するスコア算出ステップと、前記スコア算出ステップにて算出した前記スコアに基づいて前記貝類の品質を評価する品質評価ステップと、を含んでいる。前記構成によれば、本発明の一態様に係る品質評価装置と同様の効果を奏する品質評価方法を実現することができる。
【0022】
本発明の各態様に係る品質評価装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記品質評価装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記品質評価装置をコンピュータにて実現させる品質評価装置の品質評価処理プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、貝類のX線画像を用いて貝類の身入りの程度を推定することにより、貝類の貝殻を破壊することなく、貝類の品質を精度高く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1および2に係る情報処理装置の要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係る品質評価装置による品質評価処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3】牡蠣のX線画像における対象領域の一例である。
図4】TWW実測値-BDW実測値の分布を示すグラフの一例である。
図5】マハラノビス距離と比較する閾値を設定するために用いるグラフの一例である。
図6】前記品質評価装置による推定式の生成・再生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】TWW推定式精度に関する第1要因効果図の一例を示すグラフである。
図8】前段処理パラメータに関する第2要因効果図の一例を示すグラフである。
図9】本発明の実施例における、各生育場で収集した牡蠣のサンプルごとの、目視による品質評価の結果を示すグラフである。
図10】前記の実施例における、牡蠣のTWWと牡蠣の殻の形状との関係を示すグラフである。
図11】前記の実施例における、牡蠣のTWWと牡蠣の可食部のBDWとの関係を示すグラフである。
図12】前記の実施例における、各品質群とマハラノビス距離との関係を示すグラフである。
図13】前記の実施例における、TWW推定値とBDW実測値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態1〕
以下、図1図8を用いて本発明の実施形態1について説明する。説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、後掲の実施形態2では、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0026】
<情報処理装置100等の概要>
図1を用いて、実施形態1に係る情報処理装置100等の概要を説明する。情報処理装置100は、各種情報を処理するとともに貝類の品質評価が可能な装置である。情報処理装置100および後掲の情報処理装置200による品質評価の対象となる貝類の種類は、特に限定されない。一例として、栄螺、鮑、常節などの巻貝を挙げることができる。なお、前記品質評価の対象となる貝類としては、帆立貝、浅利、阿古屋貝などの二枚貝であることが好ましく、同じく二枚貝の牡蠣であることがより好ましい。実施形態1および後掲の実施形態2では、前記品質評価の対象となる貝類として、牡蠣(不図示)を例に挙げて説明する。
【0027】
情報処理装置100は例えば、タブレット端末など可搬型の情報処理装置であってもよいし、デスクトップPC(Personal Computer)など据え置き型の情報処理装置であってもよい。実施形態1および後掲の実施形態2では、情報処理装置100・200がタブレット端末であるものとして説明する。
【0028】
情報処理装置100は、図1に示すように、表示装置1と記憶装置4と制御装置5とを備えている。表示装置1は、実施形態1および後掲の実施形態2ではタッチパネルであり、入力部2と表示部3とが一体化されて設けられている。入力部2は、ユーザ操作を受け付ける、例えば公知のタッチセンサである。ここで、本明細書における「ユーザ」とは、情報処理装置100および後掲の情報処理装置200を用いて牡蠣の品質評価を行う作業者を指す。表示部3は、例えば液晶パネルであり、表示画面に各種画像および貝類の品質評価の結果等を表示する。なお、入力部2と表示部3とが別体として設けられてもよい。
【0029】
記憶装置4には、情報処理装置100が動作するのに必要な各種のプログラムおよびデータが記憶されている。また、ユーザは、記憶装置4に各種のデータ等を記憶させることができる。制御装置5は、情報処理装置100に備えられた各装置および各部を統括的に制御するものである。
【0030】
制御装置5は、品質評価装置10を有している。品質評価装置10は、品質評価の対象となった牡蠣の身入りの程度により、当該牡蠣の品質を評価する装置である。以下、品質評価の対象となった牡蠣を単に「牡蠣」とも称する。以下、本明細書における「牡蠣」は、特段の説明がない限り殻が付いたままの牡蠣のことを指すものとする。
【0031】
「身入りの程度」とは、牡蠣の軟体部(可食部)の状態を総合的に表す指標である。本明細書では身入りの程度を「身入り度」と称し、軟体部の全体に対する外観が透明な部分の割合に応じて、どの程度の身入り度かが特定されるものとする。また、本明細書では、身入り度が高い牡蠣の品質を「良品」で表し、身入り度が中程度の牡蠣の品質を「通常品」で表し、身入り度が低い牡蠣の品質を「不良品」で表す。
【0032】
良品と通常品との境界および通常品と不良品との境界は、ユーザが任意に設定することができる。実施形態1および後掲の実施形態2では、牡蠣の収穫時期(10月~4月)でも「軟体部の全体およびほとんどが透明」な牡蠣を、身入り度が低い牡蠣つまり不良品とする。また、「外套膜の一部が透明」な牡蠣を、身入り度が中程度の牡蠣つまり通常品とする。「外套膜」は、軟体部に含まれる部位である。さらに、「外套膜が透明でなく、白く肥厚している」牡蠣を、身入り度が高い牡蠣つまり良品とする。
【0033】
品質評価装置10は、画像パラメータ取得部11とスコア算出部12と品質評価部13と要因効果算出部14とを有している。画像パラメータ取得部11、スコア算出部12、品質評価部13および要因効果算出部14の各機能・各動作の詳細については後述する。なお、品質評価装置10は、制御装置5と別体で情報処理装置100に内蔵されていてもよいし、情報処理装置100と別体であってもよい。あるいは、品質評価装置10自体が表示装置1と記憶装置4と制御装置5を備えていてもよい。
【0034】
また、情報処理装置100は、図1に示すX線画像生成装置6との間で無線通信等を行うことにより、牡蠣のX線画像(図3参照)を取得する。X線画像生成装置6は、牡蠣のX線画像を生成する公知の装置であり、ベルトコンベア、X線照射部およびX線検出部(いずれも不図示)を備えている。X線画像生成装置6は、ベルトコンベアに牡蠣を載置した状態で当該ベルトコンベアを駆動することにより、牡蠣がX線照射部の直下を通過するようにする。次にX線画像生成装置6は、牡蠣がX線照射部の直下まで移動した時点で、X線照射部が牡蠣にX線を照射する。次にX線画像生成装置6は、X線検出部が、X線照射部から照射されて牡蠣を透過したX線を検出することにより、牡蠣のX線画像を生成する。
【0035】
<品質評価装置10による品質評価処理の流れ>
図2図5を用いて、品質評価装置10による品質評価処理の流れの一例について説明する。はじめに、画像パラメータ取得部11は、X線画像生成装置6から牡蠣のX線画像を取得する(S101)。次に、画像パラメータ取得部11は、複数種類の前段処理パラメータ(第2画像パラメータ)を設定する(S102)。
【0036】
前段処理パラメータは、画像パラメータ取得部11が取得したX線画像の処理および解析に関連する画像パラメータであり、後述の画像特徴パラメータセットを取得するための前段処理に用いられる。前段処理パラメータは、品質評価装置10の設計者またはユーザが任意に設定することができる。
【0037】
実施形態1および後掲の実施形態2では、前段処理パラメータとして、「質量変換」、「処理画像」、「数値化領域」、「数値化領域変化量」、「輝度演算強度」、「共線性処理強度」、「輝度頻度処理範囲」および「輝度基準化処理」のそれぞれを、下記の表1のように第1~第3パターンのいずれかに設定する。画像パラメータ取得部11は、第1~第3パターンのうちで設定したパターンの前段処理パラメータを要因効果算出部14に出力する。
【0038】
【表1】
【0039】
次に画像パラメータ取得部11は、取得したX線画像を解析することにより、画像特徴パラメータセットを取得する。具体的には画像パラメータ取得部11は、X線画像のサイズを、画像特徴パラメータセットを取得するのに適したサイズに調整する(S103)。次に画像パラメータ取得部11は、X線画像中の牡蠣以外の物質の画像部分をノイズとして排除した上で、X線画像の中から牡蠣を示す対象領域を特定する(S104)。X線画像中の対象領域としては、例えば図3で示すようになる。
【0040】
次に画像パラメータ取得部11は、対象領域からX線画像の特徴を示す画像パラメータを複数種類抽出して数値化することにより、複数種類の数値化された画像パラメータで構成される基礎パラメータセットを取得する(S105)。以下、数値化された画像パラメータを「基礎パラメータ」と称する。
【0041】
次に画像パラメータ取得部11は、基礎パラメータセットの中から、特定の基礎パラメータを画像特徴パラメータ(第1画像パラメータ)として抽出することにより、複数種類の画像特徴パラメータで構成される画像特徴パラメータセットを取得する(S106;画像パラメータ取得ステップ)。そして、画像パラメータ取得部11は、取得した画像特徴パラメータセットをスコア算出部12に出力する。
【0042】
画像特徴パラメータは、牡蠣の身入り度の指標となる画像統計値であり、種類に応じて身入り度を示す度合いが異なる。どの種類の基礎パラメータを画像特徴パラメータとするかは、要因効果算出部14による後述の第1要因効果の算出結果に応じて、画像パラメータ取得部11が選択する。
【0043】
実施形態1および後掲の実施形態2では、S106の処理の時点で、画像特徴パラメータとして下記の表2に挙げられた24項目の画像パラメータが抽出される。ここで、下記の表2における24番目の項目「histogram」は、具体的にはX線画像における0~255階調の輝度分布であり、256項目のパラメータを含んでいる。したがって、下記の表2に挙げられた24項目の画像パラメータは、言い換えれば23項目+256項目の画像パラメータとも表現できる。なお、これら24項目の画像パラメータの中から2種類以上の画像パラメータを組み合わせて、新たな画像特徴パラメータとしてもよい。以下の説明では、「複数種類の画像特徴パラメータ」は前記24項目の画像特徴パラメータを指すものとする。
【0044】
【表2】
【0045】
なお、要因効果算出部14による第1要因効果の算出結果に応じて、あるいは要因効果算出部14による第1要因効果の算出結果に拘らず、品質評価装置10の設計者またはユーザが、画像特徴パラメータとする基礎パラメータを任意に選択してもよい。
【0046】
次に、スコア算出部12は、当該スコア算出部12に内蔵された不図示のメモリから所定の推定式を呼び出す。以下、所定の推定式を単に「推定式」と称する。なお、推定式は、前記のメモリではなく例えば記憶装置4に格納されていてもよい。そしてスコア算出部12は、画像特徴パラメータセットを構成する複数種類の画像特徴パラメータを基準化し、基準化した画像特徴パラメータを推定式に代入することにより、品質情報の推定値を算出する(S107)。画像特徴パラメータの基準化については後述する。
【0047】
推定式は、スコア算出部12によって生成・再生成される。生成・再生成された推定式は、前記のメモリあるいは記憶装置4に一旦格納される。スコア算出部12による推定式の生成・再生成の詳細については後述する。なお、推定式はスコア算出部12によって生成・再生成されなくてもよい。この場合、例えば情報処理装置100と別体のサーバ(不図示)が推定式の生成・再生を実行し、スコア算出部12がサーバから最新の推定式を呼び出すことで、品質情報の推定値を算出してもよい。また例えば、予め生成された(かつ再生成されない)推定式を記憶装置4あるいはスコア算出部12の不図示のメモリに格納しておき、スコア算出部12が当該推定式を呼び出すことで、品質情報の推定値を算出してもよい。
【0048】
品質情報は、牡蠣の身入り度の指標となる、牡蠣の特性を示す情報である。牡蠣の特性を示す複数種類の情報の中からどの情報を品質情報とするかについては、品質評価装置10の設計者またはユーザが任意に決定することができる。実施形態1および後掲の実施形態2では、下記の表3に示す「全湿質量」および「乾燥質量」が品質情報となる。以下、下記の表3に倣って、全湿質量をTWWと称し、乾燥質量をBDWと称する。
【0049】
【表3】
【0050】
以下、TWWの推定値を「TWW推定値T」と称し、BDWの推定値を「BDW推定値B」と称する。また、TWW推定値Tの算出に用いられる推定式を「TWW推定式」と称し、BDW推定値Bの算出に用いられる推定式を「BDW推定式」と称する。実施形態1および後掲の実施形態2では、スコア算出部12は、1つの画像特徴パラメータセットを用いてTWW推定値TおよびBDW推定値Bの両方を算出する。
【0051】
次にスコア算出部12は、従前の品質評価で不良品と評価した複数の牡蠣について、それらのTWWの実測値およびBDWの実測値を記憶装置4から呼び出す。以下、TWWの実測値を「TWW実測値」と称し、BDWの実測値を「BDW実測値」と称する。
【0052】
そしてスコア算出部12は、各TWW実測値の平均値である平均TWW実測値Taveを算出するとともに、各BDW実測値の平均値である平均BDW実測値Baveを算出する。なお、平均TWW・BDW実測値Tave・Baveは、スコア算出部12によってされなくてもよい。平均TWW・BDW実測値Tave・Baveは、例えば画像パラメータ取得部11によって算出されてもよい。また例えば、予め算出された平均TWW・BDW実測値Tave・Baveが、記憶装置4あるいはスコア算出部12のメモリに格納されていてもよい。
【0053】
そしてスコア算出部12は、TWW・BDW推定値T・B、ならびに、平均TWW・BDW実測値Tave・Baveを用いて、マハラノビス距離MDを算出する(S108;スコア算出ステップ)。マハラノビス距離MDは、TWW・BDW推定値T・Bに対する、不良品と評価された牡蠣のTWW実測値-BDW実測値の分布からの距離である。以下、不良品と評価された牡蠣のTWW実測値-BDW実測値の分布を「基準データ群」と称する。
【0054】
「基準データ群」を用いてマハラノビス距離MDを説明すれば、マハラノビス距離MDとは、TWW推定値TとBDW推定値Bとの相関が、「基準データ群」を構成するTWW実測値とBDW実測値との相関にどれだけ近似しているかを定量的に表す尺度となる。以下、TWW推定値TとBDW推定値Bとの相関を「第1相関」と称する。また、基準データ群を構成するTWW実測値とBDW実測値との相関を「第2相関」と称する。
【0055】
したがって、マハラノビス距離MDの値が小さくなるほど、つまり第1相関が第2相関に近似しているほど、品質評価の対象となった牡蠣が不良品である確率が高くなる。一方、マハラノビス距離MDの値が大きくなるほど、つまり第1相関が第2相関に近似していないほど、品質評価の対象となった牡蠣が不良品でない確率が高くなる。スコア算出部12は、マハラノビス距離MDを、下記の式(1)~(4)を用いて算出する。下記の式(1)~(4)は、例えばスコア算出部12のメモリに格納されている。
【0056】
【数1】
【0057】
【数2】
【0058】
【数3】
【0059】
【数4】
【0060】
σT;TWW推定値Tの標準偏差
σB;BDW推定値Bの標準偏差
r;T’とD’との相関係数
TWW実測値-BDW実測値の分布をグラフ化した場合、例えば図4に示すようなグラフとなる。図4に示すグラフにおいて、基準データ群は図中の破線で囲まれた領域となる。同グラフにおける前記領域から外れた箇所にプロットされた点の集合は、通常品および良品と評価された牡蠣のTWW実測値-BDW実測値の分布を示す。
【0061】
スコア算出部12によって算出されたマハラノビス距離MDが、TWW・BDW推定値T・Bを総合的に考慮した、牡蠣の身入り度を示すスコアとなる。スコア算出部12は、算出したスコア(具体的にはマハラノビス距離MD)を品質評価部13に出力する。
【0062】
次に品質評価部13は、スコア(具体的にはマハラノビス距離MD)と閾値Eとを比較することにより、牡蠣の品質を評価する(S109;品質評価ステップ)。実施形態1および後掲の実施形態2では、品質評価部13は、牡蠣の品質を評価する前に、ユーザの入力操作に基づいて閾値Eを設定する。具体的には品質評価部13は、従前の品質評価の結果に基づいて予め生成された、マハラノビス距離MDと不良品・通常品・良品の各個体数[個]との関係を示すヒストグラムを用いて閾値Eを設定する。図5にヒストグラムの一例を示す。ヒストグラムは、記憶装置4または品質評価部13の不図示のメモリに格納されている。
【0063】
より詳細には、ユーザが、表示装置1の入力部2を介して例えば「不良品排除率95%となる閾値を設定」との入力操作を行った場合、入力部2が当該入力操作を受け付けて受け付け結果を品質評価部13に出力する。「不良品排除率95%となる閾値」とは、スコアが当該閾値と一致した場合、牡蠣が不良品である確率が95%となるような閾値を指す。受け付け結果を取得した品質評価部13は、記憶装置4(あるいは品質評価部13のメモリ)からヒストグラムを呼び出し、当該ヒストグラムにおける不良品排除率95%となるマハラノビス距離MDを、図5に示すように第1閾値E1として設定する。
【0064】
そしてユーザが、入力部2を介して例えば「不良品・通常品排除率95%となる閾値を設定」との入力操作を行った場合、品質評価部13は、ヒストグラムにおける不良品・通常品排除率95%となるマハラノビス距離MDを、図5に示すように第2閾値E2として設定する。「不良品・通常品排除率95%となる閾値」とは、スコアが当該閾値と一致した場合、牡蠣が不良品および通常品である確率が95%となるような閾値を指す。
【0065】
このように閾値Eとして第1・第2閾値E1・E2を設定した場合、品質評価部13は、スコアが第1閾値E1よりも小さければ牡蠣の品質を不良品と評価する。また、品質評価部13は、スコアが第1閾値E1以上かつ第2閾値E2よりも小さければ牡蠣の品質を通常品と評価する。さらに、品質評価部13は、スコアが第2閾値E2以上であれば牡蠣の品質を良品と評価する。
【0066】
閾値Eの設定は、上述の方法に限定されない。品質評価部13は、例えば図5に示すヒストグラムと異なる別のグラフを用いて第1・第2閾値E1・E2を設定してもよい。前記ヒストグラムと異なる別のグラフとしては、例えばマハラノビス距離MDと正解率[%]との関係を示す第1グラフ、および、マハラノビス距離MDと牡蠣の個体数[個]との関係を示す第2グラフ(ともに不図示)を用いてもよい。第1・2閾値E1・E2の設定方法については上述と同様の方法でよい。S101~S109の一連の処理が終了することにより、品質評価装置10による品質評価処理が終了する。
【0067】
なお、品質評価装置10による品質評価処理の方法は、上述したマハラノビス距離MDと閾値Eとの比較に限定されない。品質評価装置10は、例えば品質評価部13がBDW推定値Bと所定の基準値とを比較することのみにより、牡蠣の品質を評価してもよい。この場合、スコア算出部12は、BDW推定式のみを生成・再生成してBDW推定値Bのみを算出する。そして、スコア算出部12は、BDW推定値Bをそのままスコアとする。
【0068】
また例えば、品質評価装置10は、品質評価部13がTWW推定値Tと所定の第1基準値とを比較して第1比較結果を出力し、BDW推定値Bと所定の第2基準値とを比較して第2比較結果を出力してもよい。そして、品質評価装置10は、品質評価部13が第1比較結果と第2比較結果とを総合考慮することで、牡蠣の品質を評価してもよい。この場合、TWW推定値TおよびBDW推定値Bのそれぞれがスコアとなる。
【0069】
<品質評価装置10による推定式の生成・再生成処理の流れ>
図6図8を用いて、品質評価装置10による推定式の生成・再生成処理の流れを説明する。
【0070】
(推定式の生成処理)
はじめに、画像パラメータ取得部11から画像特徴パラメータセットを取得したスコア算出部12は、画像パラメータサンプルの中から単位空間サンプルと信号サンプルとを選択する(S201)。
【0071】
画像パラメータサンプルは、推定式を生成するためのサンプルであり、複数のデータセットの集合である。1つのデータセットは、従前の品質評価で用いた複数種類の画像特徴パラメータと、当該複数種類の画像特徴パラメータの取得元となるX線画像に映し出された牡蠣の品質情報の実測値とで構成される。
【0072】
実施形態1および後掲の実施形態2では、品質情報がTWW・BDWであることから、画像パラメータサンプルに含まれる品質情報の実測値は、TWW・BDW実測値となる。画像パラメータサンプルは予め記憶装置4に格納されており、スコア算出部12は、単位空間サンプルと信号サンプルとを選択する際に記憶装置4から画像パラメータサンプルを呼び出す。
【0073】
単位空間サンプルは、画像パラメータサンプルを構成する複数のデータセットのうち、単位空間となるデータセットの集合であり、信号サンプルを基準化するためのものである。「単位空間」は、結果が安定した状態にあるサンプルからなる集団(中間的な性質を持つ集団)である。本発明における「単位空間」は、画像パラメータサンプルにおける品質情報(TWW・BDW)の実測値分布であり、均質に出現するサンプル群(画像特徴パラメータおよび品質情報(TWW・BDW)の実測値)で構成されるデータセットとなる。
【0074】
画像パラメータサンプルを構成する複数のデータセットの中から、どのデータセットを単位空間・信号サンプルに含めるかについては、スコア算出部12が、データセットごとに所定の選択条件を充足しているか否か判定することにより決定する。所定の選択条件は、品質評価装置10の設計者またはユーザが任意に設定して、記憶装置4あるいはスコア算出部12のメモリに予め格納しておく。あるいは、ユーザが単位空間・信号サンプルに含めるデータセットを直接選択してもよい。
【0075】
信号サンプルは、画像パラメータサンプルを構成する複数のデータセットのうち、単位空間サンプル以外のデータセットの集合である。信号サンプルの構成要素となる1つのデータセットは、推定式を生成・再生成するために用いられるデータセットである。
【0076】
画像パラメータサンプルは単位空間サンプルと信号サンプルとで構成されていることから、スコア算出部12が単位空間サンプルを選択することにより、信号サンプルが自動的に選択されることになる。
【0077】
以下、単位空間サンプルのデータセットおよび信号サンプルのデータセットを、ともに「メンバー」と称する。また、画像パラメータサンプルを構成する各メンバーにおける複数種類の画像特徴パラメータのそれぞれを、「第1項目、第2項目、…、第k項目」と称する。実施形態1および後掲の実施形態2では、画像特徴パラメータの種類が24種類であることから、「k=24」となる。なお、「k=24」は、前記の表2における24番目の項目「histogram」を1項目としてカウントしたものである。
【0078】
次にスコア算出部12は、単位空間サンプルを構成する第1~第k項目のそれぞれについて、当該単位空間サンプルの全メンバーの平均値を算出する。以下、この平均値を「第1平均値」と称する。また、スコア算出部12は、単位空間サンプルを構成するTWW・BDW実測値のそれぞれについて、当該単位空間サンプルの全メンバーの平均値を算出する(S202)。以下、TWW・BDW実測値のそれぞれの平均値を「第2平均値」と称する。
【0079】
実施形態1および後掲の実施形態2では、スコア算出部12が、画像パラメータサンプルの中から下記の表4に示す単位空間サンプルを選択したものとする。
【0080】
【表4】
【0081】
前記の表4に示すように、スコア算出部12は、画像パラメータサンプルから単位空間サンプルとしてnセット(n;1以上の自然数)のメンバーを選択したものとする。また単位空間サンプルの第1メンバーを例に挙げて説明すれば、第1メンバーでは、第1項目の値が「x11」、第2項目の値が「x12」、第k項目の値が「x1k」となる。さらに第1メンバーでは、TWW実測値が「y11」、BDW実測値が「y12」となる。
【0082】
単位空間サンプルの各平均値については、第1項目の第1平均値が「xave1」、第2項目の第1平均値が「xave2」、第k項目の第1平均値が「xavek」となる。また、TWW実測値の第2平均値が「Mo1」、BDW実測値の第2平均値が「Mo2」となる。
【0083】
スコア算出部12は、第1~第k項目ごとの第1平均値「xavej」を、下記の式(5)を用いて算出する。またスコア算出部12は、TWW・BDW実測値の平均値Mo1・Mo2を、下記の式(6)および(7)を用いて算出する。下記の式(5)~(7)は、例えばスコア算出部12のメモリに格納されている。
【0084】
【数5】
【0085】
【数6】
【0086】
【数7】
【0087】
次にスコア算出部12は、信号サンプルを構成する第1~第k項目のそれぞれについて、当該信号サンプルの全メンバーの各値を基準化する。またスコア算出部12は、信号サンプルを構成するTWW・BDW実測値のそれぞれについても、当該信号サンプルの全メンバーの各値を基準化する(S203)。ここで、実施形態1および後掲の実施形態2では、スコア算出部12が、画像パラメータサンプルの中から下記の表5に示す信号サンプルを自動的に選択したものとする。
【0088】
【表5】
【0089】
前記の表5に示すように、スコア算出部12は、画像パラメータサンプルから信号サンプルとしてlセット(l;単位空間サンプルの全メンバーの個数以上)のメンバーを自動的に選択したものとする。また信号サンプルの第1メンバーを例に挙げて説明すれば、第1メンバーでは、第1項目の値が「x’11」、第2項目の値が「x’12」、第k項目の値が「x’1k」となる。さらに第1メンバーでは、TWW実測値が「y’11」、BDW実測値が「y’12」となる。
【0090】
具体的にはスコア算出部12は、下記の式(8)に示すように、第i(i=1、2、…、l)メンバーの第j(j=1、2、…、k)項目の値x’ijから第j項目の第1平均値xavejを差し引くことで、値x’ijを基準化する。以下、基準化された値x’ijを「基準化項目Xij(基準化第1画像パラメータ)」と称する。
【0091】
またスコア算出部12は、下記の式(9)に示すように、第iメンバーのTWW実測値y’i1から第2平均値Mo1を差し引くことで、TWW実測値y’i1を基準化する。同様にスコア算出部12は、下記の式(10)に示すように、第iメンバーのBDW実測値y’i2から第2平均値Mo2を差し引くことで、BDW実測値y’i2を基準化する。以下、基準化されたTWW・BDW実測値y’i1・y’i2のそれぞれを、「基準化TWW・BDW実測値Mi1・Mi2(基準化実測値)」と称する。
【0092】
【数8】
【0093】
【数9】
【0094】
【数10】
【0095】
以下、全メンバーについて第1~第k項目およびTWW・BDW実測値が基準化された信号サンプルを、「基準化信号サンプル」と称する。実施形態1および後掲の実施形態2では、スコア算出部12は、下記の表6に示す基準化信号サンプルを生成したものとする。スコア算出部12は、生成した基準化信号サンプルを、記憶装置4あるいはスコア算出部12のメモリに格納する。
【0096】
【表6】
【0097】
次にスコア算出部12は、基準化信号サンプルを構成する第1~第k基準化項目のそれぞれについて、比例定数βおよびSN比ηを算出する(S204)。比例定数βは、基準化信号サンプルの全メンバー(基準化データセット)を纏めて1つのメンバーと仮定した場合における、基準化実測値に対する第1~第k基準化項目のそれぞれの比例定数である。実施形態1および後掲の実施形態2では、基準化TWW・BDW実測値が、基準化信号サンプルのメンバーの構成要素となっている。そのためスコア算出部12は、比例定数βとして、基準化TWW実測値に対する第1~第k基準化項目のそれぞれの比例定数である第1比例定数β1と、基準化BDW実測値に対する第1~第k基準化項目のそれぞれの比例定数である第2比例定数β2とを算出する。
【0098】
SN比ηは、基準化信号サンプルの全メンバーを纏めて1つのメンバーと仮定した場合における、基準化実測値と第1~第k基準化項目のそれぞれとの比例関係に対して、第1~第k基準化項目の値がばらついている程度の逆数である。具体的には、第1~第k基準化項目の値がばらついている程度が小さければSN比ηの値が大きくなり、大きければSN比ηの値が小さくなる。スコア算出部12は、SN比ηについても、基準化TWW実測値に関する第1SN比η1と、基準化BDW実測値に関する第2SN比η2とを算出する。
【0099】
以下、第1・第2比例定数β1・β2および第1・第2SN比η1・η2の算出について、第1基準化項目における第1比例定数β11および第1SN比η11を算出する場合を例に挙げて説明する。第1基準化項目における第2比例定数β21および第2SN比η21を算出する場合、ならびに、第2~第k基準化項目における第1・第2比例定数β1・β2および第1・第2SN比η1・η2の算出についても、以下と同様の計算を行う。
【0100】
スコア算出部12は、第1基準化項目における第1比例定数β11および第1SN比η11を、下記の式(11)~(17)を用いて算出する。下記の式(11)~(17)は、例えばスコア算出部12のメモリに格納されている。なお、下記の式(12)が成立するのはSβ11>Ve11の場合であり、Sβ11≦Ve11の場合はβ11=0になる。
【0101】
【数11】
【0102】
【数12】
【0103】
【数13】
【0104】
【数14】
【0105】
【数15】
【0106】
【数16】
【0107】
【数17】
【0108】
r;有効除数
ST11;全変動 (f=l)
Sβ11;比例項の変動 (f=1)
Se11;誤差変動 (f=l-1)
Ve11;誤差分散
実施形態1および後掲の実施形態2では、スコア算出部12は、第1~第k基準化項目のそれぞれにおける第1・第2比例定数β1・β2および第1・第2SN比η1・η2について、下記の表7に示すように算出したものとする。
【0109】
【表7】
【0110】
次にスコア算出部12は、第1~第k基準化項目のそれぞれにおける第1・第2比例定数β1・β2および第1・第2SN比η1・η2を用いて、TWW・BDW推定式を生成する(S205)。具体的にはスコア算出部12は、情報処理装置100が未評価の牡蠣の第1~第k基準化項目をXnew1~Xnewkとして、TWW・BDW推定式を下記の式(18)および(19)のように生成する。以下、情報処理装置100が未評価の牡蠣を「未知サンプル」と称する。また、第1~第k基準化項目Xnew1~Xnewkが、画像特徴パラメータセットを構成する複数種類の画像特徴パラメータのそれぞれを基準化したものに相当する(本明細書の段落0042参照)。
【0111】
【数18】
【0112】
【数19】
【0113】
Tnew;未知サンプルのTWW推定値
Bnew;未知サンプルのBDW推定値
スコア算出部12は、生成したTWW推定式(式(18))およびBDW推定式(式(19))を記憶装置4あるいはスコア算出部12のメモリに一旦格納する。その後は、スコア算出部12が、未知サンプルの第1~第k基準化項目を実際に算出してTWW推定式およびBDW推定式のそれぞれに代入することで、未知サンプルのTWW推定値TnewおよびBDW推定値Bnewを算出する。
【0114】
なお、実施形態1および後掲の実施形態2ではTWW・BDW推定式ともに同じ第1~第k基準化項目を用いて生成しているが、この場合に限定されない。スコア算出部12は、TWW推定式とBDW推定式とで異なる種類・個数の基準化項目を用いて、それぞれの推定式を算出してもよい。
【0115】
(推定式の再生成処理)
次にスコア算出部12は、未知サンプルの全メンバーに含まれる第1~第k基準化項目およびTWW・BDW実測値を基準化した上で、未知サンプルの全メンバーについて、TWW・BDW推定値T・Bを算出する(S206)。具体的にはスコア算出部12は、記憶装置4あるいはスコア算出部12のメモリから、未知サンプル、TWW推定式(式(18))およびBDW推定式(式(19))を呼び出す。そしてスコア算出部12は、第iメンバー(i=1、2、…、l)を構成する第1~第k基準化項目Xi1~XikのそれぞれをTWW・BDW推定式に代入することで、第iメンバーのTWW・BDW推定値Ti・Biを算出する。
【0116】
なお、TWW推定値Tに対してTWW実測値の第2平均値Mo1(表4参照)を加算することにより、基準化されていないTWW実測値に対応するTWW推定値を算出することができる。また、BDW推定値Bに対してBDW実測値の第2平均値Mo2(表4参照)を加算することにより、基準化されていないBDW実測値に対応するBDW推定値を算出することができる。
【0117】
実施形態1および後掲の実施形態2では、スコア算出部12は、未知サンプルの全メンバーのTWW・BDW推定値T・Bについて、下記の表8に示すように算出したものとする。
【0118】
【表8】
【0119】
次にスコア算出部12は、未知サンプルの全メンバーの基準化TWW・BDW実測値およびTWW・BDW推定値T・Bを用いて、推定式精度を算出する(S207)。推定式精度は、推定式から算出された推定値が品質情報の基準化実測値にどの程度近似しているかを示す指標である。
【0120】
実施形態1および後掲の実施形態2では品質情報がTWW・BDWの2種類であることから、スコア算出部12は、推定式精度としてTWW・BDW推定式精度を算出する。TWW推定式精度は、TWW推定値Tが基準化TWW実測値にどの程度近似しているかを示す指標である。BDW推定式精度は、BDW推定値Bが基準化BDW実測値にどの程度近似しているかを示す指標である。
【0121】
スコア算出部12は、TWW推定式精度を、総合推定の第1SN比ηt1[db]として、下記の式(20)~(26)を用いて算出する。説明は省略するものの、BDW推定式精度も総合推定の第2SN比ηt2として算出され、以下と同様の計算が行われる。下記の式(20)は、例えばスコア算出部12のメモリに格納されている。
【0122】
【数20】
【0123】
【数21】
【0124】
【数22】
【0125】
【数23】
【0126】
【数24】
【0127】
【数25】
【0128】
【数26】
【0129】
L;線形式
r;有効除数
ST;全変動 (f=l)
Sβ;比例項の変動 (f=1)
Se;誤差変動 (f=l-1)
Ve;誤差分散
そしてスコア算出部12は、未知サンプルの全メンバー、TWW・BDW推定式精度を、要因効果算出部14に出力する。
【0130】
次に要因効果算出部14は、第1~第25までの実験番号のデータセットのそれぞれについて、TWW・BDW推定式を生成するとともにTWW・BDW推定式精度を算出する(S208)。第1~第25までの実験番号のデータセットについては、後で詳細説明する。
【0131】
具体的には要因効果算出部14は、はじめに、基準化項目の種類数以上の列を有する2水準系直交表(4×素数の2水準系)を生成する。実施形態1および後掲の実施形態2では、要因効果算出部14は、k(=24)列を有する2水準系直交表を生成するものとし、かつ、ペイリーの巡回型2水準系直交表を生成するものとする(後掲の表10参照)。なお、要因効果算出部14は、ペイリーの巡回型2水準系直交表以外の2水準系直交表を生成してもよい。例えば要因効果算出部14は、ペイリーの巡回型2水準系直交表に替えて、L162水準系直交表を含む2^n型2水準系直交表を生成してもよい。要因効果算出部14が1~k列までの各列に第1~第k基準化項目を割り付ける前の、ペイリーの巡回型2水準系直交表の一例を下記の表9に示す。
【0132】
【表9】
【0133】
そして要因効果算出部14は、ペイリーの巡回型2水準系直交表の1~k列までの各列に第1~第k基準化項目を割り付け、同直交表の各行において、第1水準が割り付けられた基準化項目を選択してTWW・BDW推定式を生成するとともにTWW・BDW推定式精度を算出する。ここで、第1~第k基準化項目のそれぞれには、2水準系直交表において第1水準または第2水準のいずれかが割り当てられる。「第1水準」は、割り付けられた基準化項目を推定式生成に用いることを意味し、「第2水準」は、割り付けられた基準化項目を推定式生成に用いないことを意味する。
【0134】
要因効果算出部14によるTWW・BDW推定式の生成処理は、図6のフローチャートにおけるS204からS205までの処理と同様である。また、要因効果算出部14によるTWW・BDW推定式精度の算出処理は、図6のフローチャートにおけるS206からS207までの処理と同様である。
【0135】
上述のようにして、ペイリーの巡回型2水準系直交表の各列に第1~第k基準化項目を割り付け、同直交表の行ごとにTWW・BDW推定式精度を算出した結果の一例を下記の表10に示す。下記の表10において「1」は第1水準を表し、「2」は第2水準を表す。また、同表中の「i」は基準化信号サンプルの各メンバーの番号を表し、「i=1~l」となる。さらに、同表では、TWW・BDW推定式精度を総合推定の第1・第2SN比「ηtj1・ηtj2(j=1~25の自然数)」で表す。なお下記の表10には記載していないものの、実験番号「1」~「25」のいずれのデータセットについても、基準化TWW・BDW実測値ともに、TWW・BDW推定式の生成およびTWW・BDW推定式精度の算出に用いられる。
【0136】
【表10】
【0137】
前記の表10に示すように、例えば実験番号「1」のデータセットについては、第1~第k基準化項目のすべてに第1水準が割り付けられている。つまり、実験番号「1」のデータセットに含まれる「ηt11・ηt12」は、S206の処理においてスコア算出部12から出力されたTWW・BDW推定式精度に相当する。この場合、要因効果算出部14は、TWW・BDW推定式の生成およびTWW・BDW推定式精度の算出を行わない。
【0138】
また例えば、実験番号「2」のデータセットについては、第1基準化項目のみに第2水準が割り当てられており、第2~第k基準化項目には第1水準が割り付けられている。この場合、要因効果算出部14は、基準化信号サンプルの全メンバーにおける第2~第k基準化項目の各値を用いて、TWW・BDW推定式の生成およびTWW・BDW推定式精度の算出を行う。同様に要因効果算出部14は、実験番号「3」のデータセットについては、基準化信号サンプルの全メンバーにおける第1基準化項目および第3~第k基準化項目の各値を用いて、TWW・BDW推定式の生成およびTWW・BDW推定式精度の算出を行う。
【0139】
上述のようにして、要因効果算出部14は、第2水準とする基準化項目の個数を1つに維持しつつ、特定の実験番号のデータセットの処理が終了すると、当該データセットの次の実験番号のデータセットについて処理を実行する。次の実験番号のデータセットの処理に移行する際、要因効果算出部14は、第2水準とする基準化項目を、1つ前の実験番号のデータセットにおいて第2水準とした基準化項目の次の番号の基準化項目に設定する。そして要因効果算出部14は、第k基準化項目が第2水準となる実験番号「25」のデータセットについてまで、TWW・BDW推定式の生成およびTWW・BDW推定式精度の算出を順次行う。
【0140】
次に要因効果算出部14は、基準化項目ごとに、TWW・BDW推定式精度のそれぞれをについて、第1水準の場合における総合推定のSN比ηtの平均値と、第2水準の場合における総合推定のSN比ηtの平均値と、の差分を算出する(S209)。この場合、要因効果算出部14は、基準化項目ごとに、TWWに関する総合推定の第1SN比ηt1における平均値の差分と、BDWに関する総合推定の第2SN比ηt2における平均値の差分と、を算出することになる。
【0141】
以下、第1水準の場合における総合推定のSN比ηtの平均値を「第1水準影響度」と称し、第2水準の場合における総合推定のSN比ηtの平均値を「第2水準影響度」と称する。この呼称に従えば、要因効果算出部14は、TWW・BDWに関する第1水準影響度である「第1水準TWW・BDW影響度」と、TWW・BDWに関する第2水準影響度である「第2水準TWW・BDW影響度」とを算出することになる。また、第1水準TWW影響度と第2水準TWW影響度との差分を「TWW影響度」と称し、第1水準BDW響度と第2水準BDW影響度との差分を「BDW影響度」と称する。
【0142】
次に要因効果算出部14は、基準化項目ごとに、TWW推定式精度に対する第1要因効果とBDW推定式精度に対する第1要因効果とを算出する(S210)。第1要因効果は、第1~第k基準化項目のそれぞれの推定式精度に対する影響度を表す。以下、第1~第k基準化項目のそれぞれのTWW・BDW推定式精度に対する影響度を「第1TWW・BDW要因効果」と称する。
【0143】
具体的には要因効果算出部14は、S209の処理で算出した基準化項目ごとのTWW影響度を、当該基準化項目ごとのTWW推定式精度に対する第1要因効果とする。また要因効果算出部14は、S209の処理で算出した基準化項目ごとのBDW影響度を、当該基準化項目ごとのBDW推定式精度に対する第1要因効果とする。ここで、TWW・BDW影響度の絶対値が大きいほど、当該TWW・BDW影響度に対応する基準化項目のTWW・BDW推定式精度に対する影響度が高いことを意味する。
【0144】
したがって、特定の基準化項目について、第1水準TWW・BDW影響度の絶対値の方が第2水準TWW・BDW影響度の絶対値よりも大きい場合、つまりTWW・BDW影響度の符号がプラスになる場合、その基準化項目を推定式生成に用いた方がTWW・BDW推定式精度が向上することになる。
【0145】
一方、特定の基準化項目について、第1水準TWW・BDW影響度の絶対値の方が第2水準TWW・BDW影響度の絶対値よりも小さい場合、つまりTWW・BDW影響度の符号がマイナスになる場合、その基準化項目を推定式生成に用いない方がTWW・BDW推定式精度が向上することになる。
【0146】
以上のことから、特定の基準化項目についてTWW・BDW影響度の符号がプラスになる場合、その基準化項目はTWW・BDW推定式精度に対してプラスの第1TWW・BDW要因効果を与えることになる。また、TWW・BDW影響度の絶対値が、第1TWW・BDW要因効果のプラスの度合いを示すことになる。一方、特定の基準化項目についてTWW・BDW影響度の符号がマイナスになる場合、その基準化項目はTWW・BDW推定式精度に対してマイナスの第1TWW・BDW要因効果を与えることになる。また、TWW・BDW影響度の絶対値が、第1TWW・BDW要因効果のマイナスの度合いを示すことになる。
【0147】
要因効果算出部14は、上述のようにして基準化項目ごとにTWW・BDW影響度を算出した上で、横軸を第1~第k基準化項目とし縦軸をTWW・BDW影響度差分[db]とする、TWW・BDW推定式精度に関する第1要因効果図を生成する(S211)。以下、TWW・BDW推定式精度に関する第1要因効果図を「第1TWW・BDW要因効果図」と称する。
【0148】
図7に第1TWW要因効果図の一例を示す。図7の例では、基準化項目「m_intden(輝度総和)」が、TWW推定式の生成に当該基準化項目を用いることでTWW推定式精度に最もプラスの影響を及ぼしている。一方、基準化項目「h_29(IMG1において29階調の輝度の出現回数を表すヒストグラム)」は、TWW推定式の生成に当該基準化項目を用いることでTWW推定式精度に最もマイナスの影響を及ぼしている。
【0149】
図7には示されていないものの、要因効果算出部14は実際には、BDW推定式精度に関する第1要因効果図もS210からS211までの処理と同様の処理を実行することで生成する。要因効果算出部14は、第1TWW・BDW要因効果図をスコア算出部12に出力する。
【0150】
なお要因効果算出部14は、第1TWW・BDW要因効果図をスコア算出部12に出力しなくてもよいし、第1TWW・BDW要因効果図自体を生成しなくてもよい。これらの場合、要因効果算出部14は、例えば基準化項目ごとの第1TWW・BDW要因効果(言い換えれば、TWW・BDW影響度差分)をスコア算出部12に出力してもよい。
【0151】
次に要因効果算出部14は、第1~第18までの前段実験番号における前段処理パラメータのセット(以下、「パラメータセット」と称する)の条件下で、TWW・BDW推定式を生成するとともにTWW・BDW推定式精度を算出する(S212)。TWW・BDW推定式の生成およびTWW・BDW推定式精度の算出においては、第1~第18までの実験番号のパラメータセットのいずれの条件下でも、第1~第k基準化項目のすべてを用いる。
【0152】
具体的には要因効果算出部14は、はじめに、画像パラメータ取得部11がS102の処理で設定した8種類の前段処理パラメータ(図2、表1参照)が列ごとに割り付けられた、L18直交表を生成する。実施形態1および後掲の実施形態2では、下記の表11に示すL18直交表が生成されたものとする。
【0153】
【表11】
【0154】
そして要因効果算出部14は、L18直交表の各行(第1~第18の実験番号の行)のそれぞれについて、設定された各前段処理パラメータの条件下でTWW・BDW推定式を生成するとともにTWW・BDW推定式精度を算出する。要因効果算出部14によるTWW・BDW推定式の生成処理は、図6のフローチャートにおけるS204からS205までの処理と同様である。また、要因効果算出部14によるTWW・BDW推定式精度の算出処理は、図6のフローチャートにおけるS206からS207までの処理と同様である。
【0155】
次に要因効果算出部14は、8種類の前段処理パラメータごとに、TWW推定式精度に対する第2要因効果とBDW推定式精度に対する第2要因効果とを算出する(S213)。第2要因効果は、8種類の前段処理パラメータのそれぞれの推定式精度に対する貢献度を表す。以下、8種類の前段処理パラメータのそれぞれのTWW推定式精度に対する貢献度を「第2TWW要因効果」と称し、第1~第k基準化項目のそれぞれのBDW推定式精度に対する貢献度を「第2BDW要因効果」と称する。
【0156】
具体的には要因効果算出部14は、TWW・BDW推定式精度のそれぞれについて、第1~第3パターン(表1参照)のそれぞれにおける総合推定のSN比の平均値を算出する。以下、TWW・BDW推定式精度のそれぞれについて、第1~第3パターンのそれぞれにおける総合推定のSN比の平均値を「第1~第3パターン平均値」と称する。この第1~第3パターン平均値のそれぞれが、第2TWW・BDW要因効果となる。
【0157】
要因効果算出部14は、上述のようにして8種類の前段処理パラメータごとに第1~第3パターン平均値を算出した上で、横軸を8種類の前段処理パラメータとし縦軸を第1~第3パターン平均値[db]とする、推定式精度に関する第2要因効果図を生成する(S214)。要因効果算出部14は、TWW推定式精度に関する第2要因効果図およびBDW推定式精度に関する第2要因効果図の2つの第2要因効果図を生成する。以下、TWW推定式精度に関する第2要因効果図を「第2TWW要因効果図」と称し、BDW推定式精度に関する第2要因効果図を「第2BDW要因効果図」と称する。
【0158】
図8に第2BDW要因効果図の一例を示す。図8の例では、例えば前段処理パラメータ「質量変換」では、「質量変換」が「あり」の方が「なし」よりもBDW推定式精度にプラスの影響を及ぼしている。また例えば、前段処理パラメータ「数値化領域」では、「領域B」がBDW推定式精度に最もプラスの影響を及ぼしているとともに、「領域C」が最もマイナスの影響を及ぼしている。
【0159】
そして要因効果算出部14は、第2TWW・BDW要因効果図を画像パラメータ取得部11に出力する。なお要因効果算出部14は、第2TWW・BDW要因効果図を画像パラメータ取得部11に出力しなくてもよいし、第2TWW・BDW要因効果図自体を生成しなくてもよい。これらの場合、要因効果算出部14は、例えば8種類の前段処理パラメータごとの第2TWW・BDW要因効果(言い換えれば、TWW・BDWに関する第1~第3パターン平均値)を画像パラメータ取得部11に出力してもよい。
【0160】
次に画像パラメータ取得部11は、第2TWW・BDW要因効果図を用いて複数種類の前段処理パラメータの条件を再設定した上で、X線画像から画像特徴パラメータセットを再取得する(S215)。具体的には画像パラメータ取得部11は、はじめに、複数種類の前段処理パラメータごとに、第1~第3パターンの条件の中からTWW・BDW推定式の再生成の前提となる条件を選択する。
【0161】
画像パラメータ取得部11による条件選択の方法は、品質評価装置10の設計者またはユーザが任意に設定することができる。実施形態1および後掲の実施形態2では、画像パラメータ取得部11は、第2TWW・BDW要因効果図を用いて、複数種類の前段処理パラメータごとに第2TWW・BDW要因効果が最も高い条件を特定する。そして画像パラメータ取得部11は、特定した複数種類の前段処理パラメータごとの条件を、TWW・BDW推定式の再生成の前提となる条件として再設定する。
【0162】
そして画像パラメータ取得部11は、再設定した条件下でX線画像から画像特徴パラメータセットを再取得する。画像パラメータ取得部11による画像特徴パラメータセットの再取得処理は、図2のフローチャートにおけるS103からS106までの処理と同様である。画像パラメータ取得部11は、再取得した画像特徴パラメータセットをスコア算出部12に出力する。
【0163】
次にスコア算出部12は、画像パラメータ取得部11が再取得した画像特徴パラメータセットおよび第1TWW・BDW要因効果図を用いて、TWW・BDW推定式を再生成する(S216)。具体的にはスコア算出部12は、はじめに、第1TWW・BDW要因効果図を用いて、画像特徴パラメータセットを構成する複数種類の画像特徴パラメータの中からTWW・BDW推定式の再生成に用いる画像特徴パラメータを選択する。スコア算出部12が選択した各画像特徴パラメータが、新たな画像パラメータサンプルの各データセットを構成する複数種類の画像特徴パラメータとなる。
【0164】
スコア算出部12による画像特徴パラメータの選択方法は、品質評価装置10の設計者またはユーザが任意に設定することができる。例えばスコア算出部12は、第1TWW・BDW要因効果図を用いて、TWW・BDW影響度差分の符号がマイナスであり、かつ、絶対値の大きさが上位3つの基準化項目を特定してもよい。そしてスコア算出部12は、特定した3つの基準化項目以外の基準化項目に対応する画像特徴パラメータを、TWW・BDW推定式の再生成に用いる画像特徴パラメータとして選択してもよい。
【0165】
言い換えればスコア算出部12は、TWW・BDW推定式精度を低下させる方向の第1TWW・BDW要因効果が高い上位3つの基準化項目のそれぞれに対応する画像特徴パラメータについては、TWW・BDW推定式の再生成に用いなくてもよい。
【0166】
また例えば、スコア算出部12は、画像特徴パラメータの選択の基準となる基準SN比を設定してもよい。そしてスコア算出部12は、第1TWW・BDW要因効果が基準SN比以上になる基準化項目に対応する画像特徴パラメータを、TWW・BDW推定式の再生成に用いる画像特徴パラメータとして選択してもよい。
【0167】
そして、スコア算出部12は、選択した画像特徴パラメータを用いてTWW・BDW推定式を再生成する。スコア算出部12によるTWW・BDW推定式の再生成処理は、図6のフローチャートにおけるS201からS205までの処理と同様である。なお、TWW推定式の再生成に用いる画像特徴パラメータとBDW推定式の再生成に用いる画像特徴パラメータとが異なってもよい。S201~S216の一連の処理が終了することにより、品質評価装置10による推定式の生成・再生成処理が終了する。
【0168】
品質評価装置10および後掲の品質評価装置20は、推定式を生成・再生成することから、実質的には推定式生成装置(不図示)としての機能も有することとなる。また、スコア算出部12が実行する推定式の生成・再生成処理は、具体的にはスコア算出部12のうちの推定式生成部(不図示)が実行する。
【0169】
(推定式の生成・再生成処理の変形例)
上述した品質評価装置10による推定式の生成・再生成処理はあくまで一例であり、他の生成・再生成処理を採用してもよい。例えば品質評価装置10は、推定式の生成処理のみを実行し、推定式の再生成処理を実行しなくてもよい。この場合、品質評価装置10は、要因効果算出部14を備えていなくてもよい。
【0170】
また例えば、要因効果算出部14は、第1TWW・BDW要因効果図または第2TWW・BDW要因効果図のいずれか一方のみを生成してもよい。この場合、要因効果算出部14は、第1TWW・BDW要因効果図のみを用いてTWW・BDW推定式を再生成してもよいし、第2TWW・BDW要因効果図のみを用いてTWW・BDW推定式を生成してもよい。
【0171】
また例えば、第1TWW・BDW要因効果図を用いた画像特徴パラメータの選択は、スコア算出部12が行わなくてもよい。同様に、第2TWW・BDW要因効果図を用いた前段処理パラメータの再設定は、画像パラメータ取得部11が行わなくてもよい。これらの場合、例えば要因効果算出部14が、第1TWW・BDW要因効果図および第2TWW・BDW要因効果図を表示装置1の表示部3に出力してもよい。そしてユーザが、表示部3の表示画面に映し出された第1TWW・BDW要因効果図および第2TWW・BDW要因効果図を見ながら、画像特徴パラメータの選択および前段処理パラメータの再設定を行ってもよい。ユーザによる画像特徴パラメータの選択および前段処理パラメータの再設定は、当該ユーザの入力部2を介した入力操作によって行われる。上述した各変形例の内容は、後掲の品質評価装置20にも該当する。
【0172】
〔実施形態2〕
以下、図1を用いて本発明の実施形態2について説明する。実施形態2に係る情報処理装置200は、品質評価装置20のスコア算出部12が、学習済みモデルを用いて画像パラメータサンプルの各メンバーを構成する画像特徴パラメータを決定する点で、実施形態1に係る情報処理装置100と異なる。実施形態2に係る品質評価装置・情報処理装置20・200の構成自体は、図1に示すように、実施形態1に係る品質評価装置・情報処理装置10・100の構成と同様である。
【0173】
<品質評価装置20の特有の処理>
品質評価装置20のスコア算出部12は、学習済みモデルを用いて、記憶装置4から取得した未知サンプルの各データセットを構成する複数種類の画像特徴パラメータの中から、画像パラメータサンプルを構成する画像特徴パラメータを選択する。なお、スコア算出部12は、未知サンプルを当該スコア算出部12のメモリから取得してもよい。
【0174】
学習済みモデルは、未知サンプルの全データセットあるいは一部の複数のデータセットを教師データとして、当該教師データを用いて学習モデルに機械学習させることで生成される。教師データは、未知サンプルの全データセットあるいは一部の複数のデータセットのそれぞれに含まれる複数種類の画像特徴パラメータの値を、入力データとする。また教師データは、複数種類の画像特徴パラメータとで未知サンプルの1つのデータセットを構成するTWW・BDW実測値を、正解データとする。そして教師データは、前記の入力データと前記の正解データとが対応付けられた構造を有している。
【0175】
学習モデルは、スコア算出部12が有していてもよいし、記憶装置4に格納されていてもよい。また例えば、学習モデルは、情報処理装置200と無線通信する不図示のサーバに格納されていてもよい。学習モデルが記憶装置4またはサーバに格納されている場合、スコア算出部12は、記憶装置4またはサーバから学習モデルを呼び出し、スコア算出部12内で学習モデルに前記の教師データを与えて機械学習させてもよい。
【0176】
また、学習モデルがサーバに格納されている場合、スコア算出部12が前記の教師データをサーバに無線送信し、サーバ内で学習モデルに機械学習させてもよい。この場合、サーバ内で生成された学習済みモデルは、サーバからスコア算出部12に無線送信される。
【0177】
学習済みモデルとしては、例えばCNNを用いることができる。また例えば、CNNとRNN(Recurrent Neutal Natwork)とを組み合わせた、あるいはCNNとLSTM(Long Short-Term Memory)とを組み合わせた学習済みモデルを用いることもできる。なお、入力データを構成する画像特徴パラメータが静止画像であるX線画像から取得されることから、学習済みモデルとしてはCNNを用いるのがスペック的に妥当である。
【0178】
学習済みモデルの生成には、多項ロジスティック回帰分析等の公知の機械学習アルゴリズムが使用されてよい。あるいは、公知のニューラルネットワーク技術(例:公知のディープラーニング技術)を用いて学習済みモデルを生成してもよい。スコア算出部12内で学習済みモデルが生成された場合、生成された学習済みモデルは、記憶装置4に格納されてもよいし、無線通信によって前記のサーバに格納されてもよい。
【0179】
スコア算出部12は、上述のようにして生成された学習済みモデルに、未知サンプルを構成する複数種類の画像特徴パラメータの値を順次、あるいは一括して入力する。前記の入力を受け付けた学習済みモデルは、入力データを構成する画像特徴パラメータのそれぞれについて、TWW・BDW推定式精度にどの程度の影響を及ぼすか否かの判断結果を出力する。
【0180】
スコア算出部12は、特定の画像特徴パラメータがTWW・BDW推定式精度を高める方向にどの程度の影響を及ぼすかの判断を、任意の2つのデータセット間における、当該特定の画像特徴パラメータの値の変化量とTWW・BDW実測値の変化量との対応関係に着目して行う。具体的にはスコア算出部12は、任意の2つのデータセット間において、特定の画像特徴パラメータの値の変化量が他の画像特徴パラメータより多い場合に、TWW・BDW実測値の変化量も他の画像特徴パラメータより多くなっていれば、当該特定の画像特徴パラメータがTWW・BDWを示すパラメータとして好適であると判断する。一方、任意の2つのデータセット間において、特定の画像特徴パラメータの値の変化量が他の画像特徴パラメータより多い場合に、TWW・BDW実測値の変化量が他の画像特徴パラメータより少なくなっていれば、スコア算出部12は、当該特定の画像特徴パラメータがTWW・BDWを示すパラメータとして不適であると判断する。
【0181】
上述の手法によって学習済みモデルが良い影響を及ぼす旨の第1判断結果を出力した場合、スコア算出部12は、学習済みモデルが第1判断結果を示した画像特徴パラメータを、画像パラメータサンプルを構成する画像特徴パラメータとして選択する。一方、学習済みモデルが例えば悪い影響を及ぼす旨の第2判断結果を出力した場合、スコア算出部12は、学習済みモデルが第2判断結果を示した画像特徴パラメータを、画像パラメータサンプルを構成する画像特徴パラメータから除外する。
【0182】
そして、画像パラメータサンプルを構成する複数種類の画像特徴パラメータを整理したスコア算出部12は、整理後の画像パラメータサンプルを用いてTWW・BDW推定式を再生成する。
【0183】
〔ソフトウェアによる実現例〕
品質評価装置10・20の制御ブロック(特に画像パラメータ取得部11、スコア算出部12および品質評価部13)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0184】
後者の場合、品質評価装置10・20は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。
【0185】
前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。
【0186】
また、前記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0187】
〔実施例〕
以下、図9図13を用いて本発明の一実施例について説明する。本実施例では、下記の表12に示す性質・生育条件の牡蠣を3081個体収集し、X線画像生成装置6のX線管(X線照射部)の電圧を「弱」・「中」・「強」の3段階に設定して複数種類の態様の牡蠣のそれぞれについて、X線画像を取得した。また本実施例では、実施形態1に係る情報処理装置100を用いて、当該情報処理装置100のユーザ(品質評価の作業者;以下、「ユーザ」)が各種の調査を行ったものとする。X線画像の取得条件およびX線画像の取得枚数を下記の表13に示す。
【0188】
【表12】
【0189】
【表13】
【0190】
次に、3081個体の牡蠣のそれぞれについて、ユーザが目視によって品質評価を行った。目視による品質評価は、軟体部の形状および外套膜の色等に基づいて決まる身入り度の高低で評価し、各牡蠣を「不良品・通常品・良品」の3段階に振り分けた。
【0191】
各海域で収集した牡蠣のサンプルごとの、ユーザの目視による品質評価の結果を図9に示す。図9に示すように、西部海域で収集した牡蠣のサンプルにおける不良品の割合が最も低く、約15.5%であった。一方、東部海域で収集した牡蠣のサンプルにおける不良品の割合が最も高く、約18.6%であった。生育場全体における不良品の割合の平均値は約18%であり、平均的な品質評価能力を有する牡蠣生産出荷業者が不良品を購入する割合(約20%)と同程度であった。
【0192】
<品質情報の選定>
次に、牡蠣の殻を開ける(破壊する)ことなく得られる外観情報を用いた、ユーザの目視による品質評価を検証するために、外観情報の一例である牡蠣のTWWおよび殻の形状(ともに実測値)と牡蠣の品質との関係を調査した。殻の形状については、殻高、殻幅および殻長の3つの項目を設けた。調査結果を図10のグラフに示す。図10に示すように、縦軸・横軸ともに同じ項目のグラフ、および、縦軸と横軸とで項目が異なるグラフのすべてについて、不良品・通常品・良品の各品質分布に明確な差は見られなかった。このことから、牡蠣のTWWおよび殻の形状からでは、牡蠣の品質を推定することが困難であることが判明した。
【0193】
次に、外部情報に加えて内部情報を用いた、ユーザによる目視による品質評価を検証するために、内部情報の一例である牡蠣の可食部のBDW(実測値)と牡蠣の品質との関係を調査した。内部情報は、牡蠣の殻を開ける(破壊する)ことで得られる情報である。調査結果を図11に示す。図11に示すように、縦軸・横軸ともに同じ項目のグラフ、および、縦軸と横軸とで項目が異なるグラフのすべてについて、不良品・通常品・良品の各品質分布に明確な差が見られた。特に、BDWとTWWとの関係では、不良品・通常品・良品の各品質分布に顕著な差が見られた。
【0194】
次に、牡蠣におけるTWWおよび可食部のBDWが、牡蠣の身入り度の指標、言い換えれば牡蠣の品質評価の指標である品質情報になるか否かを調査すべく、各生育場(海域)で収集した牡蠣のサンプルのすべてについてマハラノビス距離MDを算出した。具体的には、縦軸をTWW(実測値)とし横軸をBDW(実測値)としたグラフ(不図示;図4参照)を作成し、当該グラフに牡蠣のサンプルすべてのデータをプロットした。そして、牡蠣のサンプルすべてを、グラフ上で「不良品群・通常品群・良品群」のいずれかの品質群に振り分けた上で、各品質群に含まれる牡蠣のサンプルごとに不良品群からのマハラノビス距離MDを算出した。このマハラノビス距離MDは、実測値のマハラノビス距離となる。
【0195】
マハラノビス距離MDの算出結果のグラフを図12に示す。図12に示すように、不良品群のマハラノビス距離MDについては、最大値が約4.7、最小値が約0.3、平均値が約1.2となった。通常品群のマハラノビス距離MDについては、最大値が約11.7、最小値が約0.2、平均値が約2.8となった。良品群のマハラノビス距離MDについては、最大値が約22.9、最小値が約1.1、平均値が約7.7となった。このように品質群間でマハラノビス距離MDの平均値に明確な差があることから、牡蠣におけるTWWおよび可食部のBDWが品質情報になることが判明した。
【0196】
<第2要因効果図の条件再現性>
次に、画像パラメータ取得部11が第2要因効果図を用いて再設定(図6のフローチャートのS215参照)した複数種類の前段処理パラメータの条件(以下、「再設定条件」と称する)について、第2要因効果図の条件再現性を調査した。なお、本実施例では、第2TWW要因効果図の条件再現性についてのみ調査した。また、本実施例の再設定条件は、実施形態1および2の再設定条件と同様に、複数種類の前段処理パラメータのすべてについて第1~第3パターンの中で第2TWW要因効果が最も高い条件とした。
【0197】
「第2要因効果図の条件再現性」とは、第2要因効果図から推定される推定式精度と、スコア算出部12によって実際に生成された推定式の推定式精度との関係が、再設定条件下と比較条件下との間でどの程度同調しているのかを表す指標である。以下、第2要因効果図から推定される推定式精度を「推定精度」と称し、スコア算出部12によって実際に生成された推定式の推定式精度を「実測精度」と称する。「比較条件」は、L18直交表に現れない任意の条件であり、本実施例では複数種類の前段処理パラメータのすべてについて第1~第3パターンの中で第2TWW要因効果が最も高い条件とした。「推定精度」の概念を用いて「第2要因効果図の条件再現性」を再定義すれば、第2要因効果図から推定される推定精度の再現性を検証するための指標とも言える。
【0198】
この調査には前記の式(18)のTWW推定式を用いた。また、式(18)に代入した各基準化項目に対応する画像特徴パラメータ、比例定数βおよびSN比ηを、下記の表14に示す。下記の表14に示す各画像特徴パラメータは、前記の表2に示す24種類の画像特徴パラメータから任意に選択した17種類の画像特徴パラメータである。さらに、前記の式(18)には、本実施例の品質情報の選定に用いた牡蠣のサンプルの中から任意に選んだ特定の牡蠣のX線画像における、各基準化項目の値を代入した。
【0199】
【表14】
【0200】
本実施例では、再設定条件下で取得した画像特徴パラメータを用いてTWW推定式を生成し、第1実測精度を算出した。また、比較条件下で取得した画像特徴パラメータを用いてTWW推定式を生成し、第2実測精度を算出した。さらに、再設定条件の設定に用いた第2TWW要因効果図から、複数種類の前段処理パラメータが再設定条件の場合の第1推定精度と比較条件の場合の第2推定精度とを推定する。
【0201】
上述のようにして得られた第1・第2推定精度および第1・第2実測精度の結果を、下記の表15に示す。
【0202】
【表15】
【0203】
前記の表15に示すように、推定精度と実測精度とは、再設定条件における第1推定精度と第1実測精度との関係、比較条件における第2推定精度と第2実測精度との関係ともに同調している。このことから、少なくとも第2TWW要因効果図については、条件再現性が高いことが判明した。
【0204】
<推定値と実測値との関係>
次に、実際に生成した推定式を用いて、当該推定式から得られる品質情報の推定値と実測値との関係を調査した。なお本実施例では、BDW推定式から得られるBDW推定値Bと、BDW実測値との関係についてのみ調査した。
【0205】
この調査には前記の式(19)のBDW推定式を用いた。また、式(19)に代入した各基準化項目に対応する画像特徴パラメータ、比例定数βおよびSN比ηを、下記の表16に示す。下記の表16に示す各画像特徴パラメータは、前記の表2に示す24種類の画像特徴パラメータから任意に選択した20種類の画像特徴パラメータである。前記の式(19)には、本実施例の品質情報の選定に用いた牡蠣のサンプルのX線画像における、各基準化項目の値を代入した。また、BDW実測値は、ユーザが前記の牡蠣のサンプルごとに殻を開けて実測した値である。
【0206】
【表16】
【0207】
本実施例では、前記の表16に示すパラメータ・データを用いてBDW推定式を生成し、当該BDW推定式に牡蠣のサンプルのX線画像における各基準化項目の値を代入して、牡蠣のサンプルごとのBDW推定値Bを算出した。そして、牡蠣のサンプルごとのBDW推定値Bと、当該牡蠣のサンプルのそれぞれに対応するBDW実測値との関係をグラフ化した。図13のグラフに、BDW推定値BとBDW実測値との関係を示す。
【0208】
図13に示すように、BDW実測値(図13のグラフ中の「x」)とBDW推定値B(図13の「y」)とは、原点を通る傾きが略0.85の正比例の関係となる。ここで傾きが0.85であり1に近似していることから、少なくとも、本発明の一態様に係る方法で生成されたBDW推定式は、高い精度のBDW推定値を算出できることが判明した。
【0209】
<品質評価の実証実験>
次に、ユーザの目視による品質評価と、本発明の一態様に係る品質評価とで、それぞれ実証実験を行った。なお、ユーザは、平均的な品質評価能力を有する牡蠣生産出荷業者と同等の品質評価能力を有するものとする。以下、前記の目視による品質評価を「人間判別」と称する。また、本発明の一態様に係る品質評価を「画像判別」と称する。
【0210】
具体的には、養殖業者から購入した牡蠣のサンプル28個体について、はじめに人間判別を行った。そして、牡蠣のサンプルのそれぞれについてX線画像を生成し、図2のフローチャートのS102からS108までの処理と同様の処理を行ってマハラノビス距離MD(スコア)を算出した。そして、図2のフローチャートのS109の処理と同様の処理方法で、第1・第2閾値E1・E2を設定して牡蠣のサンプルのそれぞれについて不良品・通常品・良品のいずれかに振り分けた。人間判別および画像判別は、2019年12月5日の同日に行った。
【0211】
第1閾値E1は、本実施例における品質情報の選定で算出した牡蠣のサンプルのマハラノビス距離MDを参考にして、不良品が残存する割合が95%以上となる2.7(第2閾値E1<=2.7)に設定した。また第2閾値E2は、本実施例における品質情報の選定で算出した牡蠣のサンプルのマハラノビス距離MDを参考にして、良品が残存する割合が50%以上となる3.9(第2閾値E2>3.9)に設定した。ここで、実証実験の結果を下記の表17~表19に示す。
【0212】
【表17】
【0213】
【表18】
【0214】
【表19】
【0215】
前記の表17および表18に示すように、人間判別では、通常品・良品の正解数が11個体で不良品の正解数が6個体となった。また、通常品・良品の不正解数が3個体で不良品の不正解数が8個体となった。一方、画像判別では、通常品・良品の正解数が11個体で不良品の正解数が9個体となった。また、通常品・良品の不正解数が8個体で不良品の不正解数が0個体となった。
【0216】
「通常品・良品の不正解数」とは、牡蠣の全サンプルのうち、通常品・良品と判別(人間判別・画像判別)したところ実際には不良品であった牡蠣の個体数を指す。「不良品の不正解数」とは、牡蠣の全サンプルのうち、不良品と判別(人間判別・画像判別)したところ実際には通常品・良品であった牡蠣の個体数を指す。
【0217】
また前記の表19に示すように、人間判別の正解率が61%であったのに対して、画像判別の正解率は71%であった。このことから、画像判別の品質評価能力が、平均的な品質評価能力を有する牡蠣生産出荷業者を基準とした人間判別と同等以上の品質評価能力であることが判明した。また、人間判別の不良品正解率が67%であったのに対して、画像判別の不良品正解率は100%であった。このことから、画像判別の不良品検出能力が、人間判別に比べて顕著に高いことが判明した。
【0218】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0219】
10、20 品質評価装置
11 画像パラメータ取得部
12 スコア算出部
13 品質評価部
14 要因効果算出部
B BDW推定値(推定値)
E 閾値
E1 第1閾値(閾値)
E2 第2閾値(閾値)
T TWW推定値(推定値)
MD マハラノビス距離
β 比例定数
β1 第1比例定数(比例定数)
β2 第2比例定数(比例定数)
η SN比
η1 第1SN比(SN比)
η2 第2SN比(SN比)
ηt 総合推定のSN比(推定式精度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13