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特許7481698二酸化炭素分離装置、二酸化炭素分離方法、燃料合成装置および燃料合成方法
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  • 特許-二酸化炭素分離装置、二酸化炭素分離方法、燃料合成装置および燃料合成方法 図1
  • 特許-二酸化炭素分離装置、二酸化炭素分離方法、燃料合成装置および燃料合成方法 図2A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離装置、二酸化炭素分離方法、燃料合成装置および燃料合成方法
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/00 20060101AFI20240502BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240502BHJP
【FI】
F25J3/00
C01B32/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024023548
(22)【出願日】2024-02-20
【審査請求日】2024-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501152282
【氏名又は名称】有限会社入交昭一郎
(73)【特許権者】
【識別番号】320011199
【氏名又は名称】株式会社石川エナジーリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】入交 昭一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 満
(72)【発明者】
【氏名】茅沼 秀高
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-312818(JP,A)
【文献】特開平10-132201(JP,A)
【文献】特開2009-077457(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113351207(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0130805(KR,A)
【文献】特開2000-274214(JP,A)
【文献】国際公開第2023/008584(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0137728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00-5/00
B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
B01J 3/00-3/08
C10L 1/00-1/32
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素と、酸素と、二酸化炭素と、を含む大気である空気から前記二酸化炭素を分離する装置であり、
前記空気を調温する調温部と、
前記空気を加圧する加圧部と、
前記空気から前記二酸化炭素を分離する分離部と、を具備し、
前記調温部および前記加圧部は、前記空気の温度および圧力を、前記酸素および前記窒素が気体または超臨界の状態であり、且つ、前記二酸化炭素が液体の状態である帯域とし、
前記分離部は、液体の状態である前記二酸化炭素を、前記空気から分離することを特徴とする二酸化炭素分離装置。
【請求項2】
前記調温部および前記加圧部は、前記空気の温度および圧力を、前記酸素および前記窒素が気体の状態であり、且つ、前記二酸化炭素が液体の状態である帯域とすることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項3】
前記分離部は、重力沈降または遠心分離により、前記二酸化炭素を、前記空気から分離することを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項4】
窒素と、酸素と、二酸化炭素と、を含む大気である空気から前記二酸化炭素を分離する方法であり、
前記空気の温度および圧力を、前記酸素および前記窒素が気体または超臨界の状態であり、且つ、前記二酸化炭素が液体の状態である帯域とし、
液体の状態である前記二酸化炭素を、前記空気から分離することを特徴とする二酸化炭素分離方法。
【請求項5】
請求項1に記載された前記二酸化炭素分離装置と、燃料合成部と、を有し、
前記燃料合成部は、前記二酸化炭素分離装置により前記空気から分離された前記二酸化炭素から燃料を合成することを特徴とする燃料合成装置。
【請求項6】
請求項4に記載された二酸化炭素分離方法を有し、
前記空気から分離された前記二酸化炭素から燃料を合成することを特徴とする燃料合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中から二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中における二酸化炭素の濃度は、増加の傾向にある。具体的には、日本国気象庁の報告によると、大気中における二酸化炭素の世界平均濃度は、1985年は340ppmであったものが、2020年には410ppmまで上昇している。
【0003】
大気中における二酸化炭素濃度の長期的な濃度増加の要因には、人間活動に伴う化石燃料の消費、セメント生産、森林破壊などの土地利用の変化などが挙げられる。排出された二酸化炭素の一部は植物や海洋によって吸収されるが、残りは大気中に蓄積される。よって、人間活動が現在の状態で続けば、大気中における二酸化炭素の濃度は、更に上昇するものと考えられる。
【0004】
一方、現在の地球は過去1400年の間で最も暖かくなっている。地球温暖化は、平均的な気温の上昇のみならず、異常高温(熱波)や大雨・干ばつの増加などのさまざまな気候の変化をともなう。その影響は、早い春の訪れなどによる生物活動の変化や、水資源や農作物への影響など、自然生態系や人間社会にすでに現れている。将来、地球の気温はさらに上昇すると予想され、水、生態系、食糧、沿岸域などでより深刻な影響が生じると考えられる。
【0005】
大気中における二酸化炭素の濃度上昇と地球温暖化との因果関係は、現時点では正確には明らかにされていないものの、両者の間には明確な相関関係が存在する。よって、大気中における二酸化炭素の濃度上昇を抑制することにより、地球温暖化を抑制することが期待される。
【0006】
以下の各特許文献には、気体から二酸化炭素を分離する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6086998号公報
【文献】特開2010-266154号公報
【文献】特開2009-262016号公報
【文献】特許第3778674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、全地球規模で大気中に含まれる二酸化炭素の濃度を低減させようとすると、種々な課題が予測される。
【0009】
一般に、大気は、窒素(78.08%)、酸素(20.95%)、アルゴン(0.93%)、二酸化炭素(0.03%)で大部分が構成されているとされている。かかる構成の空気から、二酸化炭素を効果的に分離する方法は、未だに確立されていない。
【0010】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、大気等の空気から二酸化炭素を効果的に分離できる二酸化炭素分離装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、窒素と、酸素と、二酸化炭素と、を含む大気である空気から前記二酸化炭素を分離する装置であり、前記空気を調温する調温部と、前記空気を加圧する加圧部と、前記空気から前記二酸化炭素を分離する分離部と、を具備し、前記調温部および前記加圧部は、前記空気の温度および圧力を、前記酸素および前記窒素が気体または超臨界の状態であり、且つ、前記二酸化炭素が液体の状態である帯域とし、前記分離部は、液体の状態である前記二酸化炭素を、前記空気から分離することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る二酸化炭素分離装置および燃料合成装置を示すブロック図である。
図2A】窒素の温度-圧力線図である。
図2B】酸素の温度-圧力線図である。
図2C】二酸化炭素の温度-圧力線図である。
図3】窒素、酸素および二酸化炭素の温度-圧力線図である。
図4】窒素、酸素および二酸化炭素の温度-圧力線図である。
図5】本発明の実施形態に係る二酸化炭素分離方法および燃料合成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る二酸化炭素分離装置10および燃料合成装置16を示すブロック図である。
【0021】
二酸化炭素分離装置10は、窒素と、酸素と、二酸化炭素と、を含む空気から二酸化炭素を分離する装置である。具体的には、二酸化炭素分離装置10は、調温部11と、加圧部12と、分離部13と、演算制御部17と、を主要に具備する。更に、二酸化炭素分離装置10は、空気貯留部14を有する。更に、二酸化炭素分離装置10は、分離部13が分離した液状の二酸化炭素を貯留するための、図示しない二酸化炭素貯留部を備えても良い。
【0022】
空気貯留部14は、例えば大気である空気を貯留するためのタンクである。空気貯留部14は、内部に貯留される空気を密閉できる構成を有する。更に、空気貯留部14は、空気貯留部14の内部において空気を効果的に液化させるために、断熱構造を有しても良い。また、空気貯留部14には、空気貯留部14の内部に貯留された温度センサが備えられても良い。更に、空気貯留部14には、空気貯留部14の内部に貯留された空気の圧力を検知する圧力センサが備えられても良い。温度センサおよび圧力センサは、計測した値を示す電気信号を、演算制御部17に伝送する。
【0023】
調温部11は、空気を調温するように構成される。具体的には、調温部11は、空気貯留部14の内部に貯留された空気を冷却または加熱するように構成される。調温部11が、加熱装置として機能する場合は、調温部11は、空気貯留部14を周囲から加熱するように構成された、電熱線またはヒートポンプ等から構成される。一方、調温部11が冷却装置として機能する場合は、空気貯留部14を周囲から冷却するように構成された冷凍サイクル、例えば、蒸気圧縮型冷凍サイクルまたは空気圧縮型冷凍サイクルから構成される。
【0024】
加圧部12は、空気を加圧するように構成される。具体的には、加圧部12は、例えば、空気貯留部14の内部に貯留された空気を圧縮するコンプレッサである。
【0025】
分離部13は、空気から二酸化炭素を分離するように構成される。具体的には、分離部13は、液体の状態である二酸化炭素を、空気から分離する。分離部13は、重力沈降または遠心分離により、二酸化炭素を空気から分離する。
【0026】
重力沈降により液状の二酸化炭素を空気から分離する場合は、分離部13は、たとえば空気貯留部14の下端に形成された排出口である。液体の状態である二酸化炭素は、気体である酸素および窒素の比重よりも大きい。よって、液体の状態である二酸化炭素を、空気貯留部14の下端に形成された排出口である分離部13から外部に導出する。これにより、液状の二酸化炭素を空気から分離できる。
【0027】
遠心分離により液状の二酸化炭素を空気から分離する場合は、液状の二酸化炭素を含む空気を、遠心分離機である分離部13により回転させる。これにより、比重が大きい液状の二酸化炭素は、半径方向外側に集合し、その後空気から分離することができる。
【0028】
前述した調温部11および加圧部12は、空気の温度を、酸素および窒素が気体または超臨界の状態であり、且つ、二酸化炭素が液体の状態である温度帯域とする。かかる事項は、図4等を参照して後述する。
【0029】
演算制御部17は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の半導体素子から成る。演算制御部17は、記憶部としてRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の半導体記憶装置を含んでも良い。かかる記憶部は、プログラム、パラメータ等を記憶する。演算制御部17は、記憶部から読み出したプログラム、パラメータ等に基づき、後述する機能や方法を実行する。
【0030】
燃料合成装置16は、二酸化炭素分離装置10に加えて、燃料合成部15を有する。燃料合成装置16は、具体的には、二酸化炭素分離装置10の分離部13により得られた液状の二酸化炭素から、合成燃料を生成する。かかる合成方法は、図4等を参照して後述する。
【0031】
ここで、図2A図2Bおよび図2Cを参照して、空気を構成する各成分の物性を説明する。図2A図2Bおよび図2Cにおいて、横軸は温度を示し、縦軸は圧力を示す。
【0032】
図2Aは、窒素の温度-圧力線図である。図2Aを参照して、窒素は、温度および圧力に応じて、固体、液体、気体または超臨界状態となる。本実施形態では、後述する様に、窒素が気体または超臨界の状態となるように、空気の温度および圧力を制御する。
【0033】
図2Bは、酸素の温度-圧力線図である。前述した窒素と同様に、酸素も温度および圧力に応じて、その相状態を変化させる。本実施形態では、後述する様に、酸素が気体または超臨界の状態となるように、空気の温度および圧力を制御する。
【0034】
図2Cは、二酸化炭素の温度-圧力線図である。前述した窒素および酸素と同様に、二酸化炭素も温度および圧力に応じて、その相状態を変化させる。本実施形態では、後述する様に、二酸化炭素が液体の状態となるように、空気の温度および圧力を制御する。
【0035】
図3および図4は、窒素、酸素および二酸化炭素の温度-圧力線図である。図3および図4では、窒素の相変化を実線で示し、酸素の相変化を点線で示し、二酸化炭素の相変化を一点鎖線で示す。更に、図3および図4では、二酸化炭素を空気から分離すること可能とする、温度および圧力の帯域をハッチングで示す。図3では、二酸化炭素が液相となり、窒素および酸素が気相または超臨界状態となる領域をハッチングで示す。図4では、二酸化炭素が液相となり、窒素および酸素が気相となる領域をハッチングで示す。
【0036】
相変化を起こす温度および圧力は、窒素、酸素および二酸化炭素で異なる。本実施形態では、後述する様に、この差異を用いて、二酸化炭素を空気から分離する。
【0037】
図5は、実施形態に係る二酸化炭素分離方法および燃料合成方法を示すフローチャートである。図5および前述した各図を参照して、本実施形態にかかる二酸化炭素分離方法および燃料合成方法を説明する。
【0038】
本実施形態にかかる二酸化炭素分離方法は、窒素と、酸素と、二酸化炭素と、を含む空気から二酸化炭素を分離する方法である。また、本実施形態にかかる二酸化炭素分離方法では、空気の温度および圧力を、酸素および窒素が気相または超臨界の状態であり、且つ、二酸化炭素が液体の状態である帯域とし、液体の状態である二酸化炭素を、空気から分離する。また、本実施形態にかかる燃料合成方法は、かかる二酸化炭素分離方法に加えて、空気から分離された二酸化炭素から燃料を合成するステップを有する。
【0039】
以下では、ステップS10からステップS12が、二酸化炭素分離方法である。また、これらのステップにステップS13を加えたものが、燃料合成方法である。
【0040】
ステップS10では、演算制御部17は、空気の温度を調整する。具体的には、先ず、大気である空気を、図1に示した空気貯留部14に導入し、空気貯留部14を密閉状態とする。次に、演算制御部17は、調温部11により、空気貯留部14に貯留された空気の温度を、所定の温度帯域とする。
【0041】
更に、ステップS11では、演算制御部17は、空気の圧力を調整する。具体的には、例えばコンプレッサである加圧部12により、空気貯留部14に貯留された空気の圧力を、所定の圧力温度帯域とする。
【0042】
ここで、ステップS10およびステップS11は、同時に実行しても良いし、ステップS10の後にステップS11を実行しても良いし、ステップS11の後にステップS10を実行しても良い。
【0043】
ステップS10およびステップS11における、空気の温度および圧力は、窒素および酸素の状態によって異なる。
【0044】
図3では、温度-圧力線図において、二酸化炭素が液相であり、窒素が気相または超臨界状態であり、更に、酸素が気相または超臨界状態である領域を、ハッチングで示している。かかる領域の温度帯域は、二酸化炭素の溶解線以上であり、二酸化炭素の臨界点である31.1℃以下である。また、かかる領域の圧力帯域は、二酸化炭素の沸騰線よりも高い圧力帯域とされる。
【0045】
例えば、空気貯留部14に貯留された空気圧力が2MPa、温度-40℃の場合(P1)では、二酸化炭素が液相であり、窒素および酸素は気相である。かかる場合の密度は、窒素が29.6kg/mであり、酸素が34.2kg/mであり、二酸化炭素が1119kg/mである。この場合、液相である二酸化炭素の密度は、気相である窒素および酸素よりも遙かに大きい。よって、後のステップにおいて、この密度差を用いて、二酸化炭素を空気から分離することができる。
【0046】
また、空気貯留部14に貯留された空気圧力が10MPa、温度20℃の場合(P2)は、二酸化炭素が液相であり、窒素および酸素は超臨界状態である。かかる場合の密度は、窒素が115.0kg/mであり、酸素が138.7kg/mであり、二酸化炭素が856.3kg/mである。この場合、液相である二酸化炭素の密度は、超臨界状態である窒素および酸素よりも大きい。よって、後のステップにおいて、この密度差を用いて、二酸化炭素を分離することができる。
【0047】
図4では、温度-圧力線図において、二酸化炭素が液相であり、窒素および酸素が気相である領域をハッチングで示している。かかる領域の温度帯域は、二酸化炭素の溶解線以上であり、-1℃以下である。ここで、温度帯域の上限値である-1℃は、窒素の臨界圧力を示すラインと、二酸化炭素の沸騰線とが交差する点P3の温度である。また、かかる領域の圧力帯域は、二酸化炭素の沸騰線以上であり、且つ、3.4MPa以下とされる。ここで、圧力帯域の上限値である3.4MPaは、窒素の臨界圧力である。
【0048】
前述した様に、かかる領域(例えば前述したP1)であれば、液相である二酸化炭素の密度は、気相である窒素および酸素よりも遙かに大きい。よって、後のステップにおいて、この密度差を用いて、二酸化炭素を分離することができる。
【0049】
ステップS12では、演算制御部17は、液相の二酸化炭素を空気から分離する。具体的には、ステップS10およびステップS11により、空気貯留部14に貯留された空気の温度および圧力は、図3にハッチングで示す領域と成っている。
【0050】
図3のハッチングを付した領域において、窒素および酸素は気相または超臨界状態であり、二酸化炭素は液相である。前述した様に、空気貯留部14に貯留された空気圧力が2MPa、温度-40℃のときの密度は、窒素が29.6kg/mであり、酸素が34.2kg/mであり、二酸化炭素が1119kg/mである。よって、二酸化炭素の密度は、窒素および酸素よりも遙かに大きい。
【0051】
このことから、本ステップでは、この密度差を利用して、窒素および酸素から二酸化炭素を容易に分離できる。この分離方法としては、重力沈降または遠心分離を利用できる。重力沈降を用いる場合は、空気貯留部14の下部に排出部を設け、当該排出部から液相の二酸化炭素を引き抜き、引き抜いた二酸化炭素を別の容器に貯留する。遠心分離を用いる場合は、遠心分離機により空気を回転させ、半径方向外側に移動した二酸化炭素を空気貯留部14から引き抜き、引き抜いた二酸化炭素を別の容器に貯留する。
【0052】
ステップS13では、演算制御部17は、分離された二酸化炭素から燃料を合成する。具体的には、ステップS12において空気から分離した二酸化炭素から、合成燃料を製造する。本ステップでは、先ず、特定の光触媒を用いて、二酸化炭素と水から活性化水を作る。次に、活性化水に二酸化炭素と種油を反応させることで、種油と同じ組成である合成燃料を連続的に生成する。ここで、種油としては、例えば、軽油、重油、灯油、ガソリン、ケロシン等を採用できる。
【0053】
本実施形態にかかる二酸化炭素の分離および燃料合成には、エネルギが必要とされる。このエネルギとしては、風力発電や太陽光発電等から得られる自然エネルギ(クリーンエネルギ)を用いることが望ましい。このようにすることで、地球環境に与える負荷を小さくして、二酸化炭素分離および燃料合成を行うことができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 二酸化炭素分離装置
11 調温部
12 加圧部
13 分離部
14 空気貯留部
15 燃料合成部
16 燃料合成装置
17 演算制御部
【要約】
【課題】大気等の空気から二酸化炭素を効果的に分離できる二酸化炭素分離装置等を提供する。
【解決手段】二酸化炭素分離装置10は、窒素と、酸素と、二酸化炭素と、を含む空気から二酸化炭素を分離する装置である。具体的には、二酸化炭素分離装置10は、調温部11と、加圧部12と、分離部13と、を主要に具備する。調温部11は、空気を調温するように構成される。加圧部12は、空気を加圧するように構成される。分離部13は、空気から二酸化炭素を分離するように構成される。調温部11および加圧部12は、空気の温度を、酸素および窒素が気体の状態であり、且つ、二酸化炭素が液体の状態である温度帯域とする。分離部13は、液体の状態である二酸化炭素を、空気から分離する。分離部13は、重力沈降または遠心分離により、二酸化炭素を、空気から分離する。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5