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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】医療システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/00 20180101AFI20240502BHJP
   A61B 3/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G16H50/00
A61B3/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020080066
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021174428
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】和田 智之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 真幸
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 徳人
(72)【発明者】
【氏名】種石 慶
(72)【発明者】
【氏名】福間 康文
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 正博
(72)【発明者】
【氏名】竹内 楽
(72)【発明者】
【氏名】南出 夏奈
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-36835(JP,A)
【文献】特表2019-528113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0221313(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から眼科的データを取得するための少なくとも1つの眼科検査装置を含む眼科的データ取得部と、
前記患者から内科的データを取得するための少なくとも1つの内科検査装置を含む内科的データ取得部と、
眼科的データ、内科的データ及び診断結果データを含む訓練データを用いた機械学習によって構築された学習済みモデルを用いて推論処理を実行する推論処理部と、
前記推論処理部により実行された前記推論処理の結果を出力する出力部と
を含み、
前記推論処理部は、前記眼科的データ取得部により取得された前記患者の前記眼科的データと、前記内科的データ取得部により取得された前記患者の前記内科的データとに少なくとも基づく前記推論処理を実行して推定診断データを生成する、
医療システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの眼科検査装置は、眼特性データを取得するための眼科測定装置、及び、眼画像データを取得するための眼科撮影装置のいずれか一方又は双方を含み、
前記推論処理部に入力される前記眼科的データは、前記眼科測定装置により前記患者から取得された眼特性データ、及び、前記眼科撮影装置により前記患者から取得された眼画像データのいずれか一方又は双方を含み、
前記学習済みモデルは、眼特性データ及び眼画像データのいずれか一方又は双方と診断結果データとを含む訓練データを用いた機械学習によって構築された第1の学習済みモデルを含む、
請求項1の医療システム。
【請求項3】
前記眼科測定装置は、眼血流測定装置及び眼屈折測定装置のいずれか一方又は双方を含む、
請求項2の医療システム。
【請求項4】
前記眼血流測定装置は、光コヒーレンストモグラフィ装置及びレーザースペックルフローグラフィ装置のいずれか一方又は双方を含む、
請求項3の医療システム。
【請求項5】
前記眼科撮影装置は、光コヒーレンストモグラフィ装置、眼底カメラ、スリットランプ顕微鏡、及び手術用顕微鏡のうちの少なくとも1つを含む、
請求項2~4のいずれかの医療システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの内科検査装置は、聴診音データを取得するための電子聴診器、血中酸素データを取得するための血中酸素測定装置、血流データ及び脈拍データのいずれか一方又は双方を取得するための血流計、呼吸機能データを取得するための呼吸機能測定装置、心電図データ及び心拍データのいずれか一方又は双方を取得するための心電計、血圧データ及び脈拍データのいずれか一方又は双方を取得するための血圧計、並びに、体温データを取得するための体温計のうちの少なくとも1つを含み、
前記推論処理部に入力される前記内科的データは、前記電子聴診器により前記患者から取得された聴診音データ、前記血中酸素測定装置により前記患者から取得された血中酸素データ、前記血流計により前記患者から取得された血流データ及び脈拍データのいずれか一方又は双方、前記呼吸機能測定装置により前記患者から取得された呼吸機能データ、前記心電計により前記患者から取得された心電図データ及び心拍データのいずれか一方又は双方、前記血圧計により前記患者から取得された血圧データ及び脈拍データのいずれか一方又は双方、並びに、前記体温計により前記患者から取得された体温データのうちの少なくとも1つを含み、
前記学習済みモデルは、聴診音データ、血流データ、脈拍データ、呼吸機能データ、心電図データ、心拍データ、血圧データ、及び体温データのうちの少なくとも1つと診断結果データとを含む訓練データを用いた機械学習によって構築された第2の学習済みモデルを含む、
請求項1~5のいずれかの医療システム。
【請求項7】
前記出力部は、前記眼科的データ取得部及び前記内科的データ取得部の双方に対して遠隔位置にある医師端末に向けて前記推論処理の結果を送信する送信部を含む、
請求項1~6のいずれかの医療システム。
【請求項8】
前記推論処理部は、前記患者が肺炎に罹患している確率を求めるための推論処理、前記患者が肺炎を伴う感染性疾患に罹患している確率を求めるための推論処理、前記患者の肺炎の重症度を求めるための推論処理、及び、前記患者の肺炎を伴う感染性疾患の重症度を求めるための推論処理のうちの少なくとも1つを実行する、
請求項1~7のいずれかの医療システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
疾患の症状や重症化の兆候は複雑であり、これらを検出するために様々な技術が開発されてきた。例えば、特許文献1には、輸液による蘇生処置における失血の早期診断やリアルタイム監視や追跡を自動的且つ非侵襲的に行うための技術として、各種のセンサで患者から得られた生理学的データを解析して出血確率を推定する発明が開示されている。また、特許文献2には、高度な医療知識を用いずに感染症のリスクを判定するための技術として、動脈血酸素飽和度、体温及び心拍数の各々の異常の有無から感染症リスクを判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-534421号公報(国際公開第2016/061542号)
【文献】特開2016-123605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の一つの目的は、症状や重症化の兆候を高い精度で検出するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムは、患者から眼科的データを取得するための少なくとも1つの眼科検査装置を含む眼科的データ取得部と、前記患者から内科的データを取得するための少なくとも1つの内科検査装置を含む内科的データ取得部と、眼科的データ、内科的データ及び診断結果データを含む訓練データを用いた機械学習によって構築された学習済みモデルを用いて推論処理を実行する推論処理部と、前記推論処理部により実行された前記推論処理の結果を出力する出力部とを含み、前記推論処理部は、前記眼科的データ取得部により取得された前記患者の前記眼科的データと、前記内科的データ取得部により取得された前記患者の前記内科的データとに少なくとも基づく前記推論処理を実行して推定診断データを生成する。
【0006】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムにおいて、前記少なくとも1つの眼科検査装置は、眼特性データを取得するための眼科測定装置、及び、眼画像データを取得するための眼科撮影装置のいずれか一方又は双方を含んでいてよく、前記推論処理部に入力される前記眼科的データは、前記眼科測定装置により前記患者から取得された眼特性データ、及び、前記眼科撮影装置により前記患者から取得された眼画像データのいずれか一方又は双方を含んでいてよく、前記学習済みモデルは、眼特性データ及び眼画像データのいずれか一方又は双方と診断結果データとを含む訓練データを用いた機械学習によって構築された第1の学習済みモデルを含んでいてよい。
【0007】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムにおいて、前記眼科測定装置は、眼血流測定装置及び眼屈折測定装置のいずれか一方又は双方を含んでいてよい。
【0008】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムにおいて、前記眼血流測定装置は、光コヒーレンストモグラフィ装置及びレーザースペックルフローグラフィ装置のいずれか一方又は双方を含んでいてよい。
【0009】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムにおいて、前記眼科撮影装置は、光コヒーレンストモグラフィ装置、眼底カメラ、スリットランプ顕微鏡、及び手術用顕微鏡のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0010】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムにおいて、前記少なくとも1つの内科検査装置は、聴診音データを取得するための電子聴診器、血中酸素データを取得するための血中酸素測定装置、血流データ及び脈拍データのいずれか一方又は双方を取得するための血流計、呼吸機能データを取得するための呼吸機能測定装置、心電図データ及び心拍データのいずれか一方又は双方を取得するための心電計、血圧データ及び脈拍データのいずれか一方又は双方を取得するための血圧計、並びに、体温データを取得するための体温計のうちの少なくとも1つを含んでいてよく、前記推論処理部に入力される前記内科的データは、前記電子聴診器により前記患者から取得された聴診音データ、前記血中酸素測定装置により前記患者から取得された血中酸素データ、前記血流計により前記患者から取得された血流データ及び脈拍データのいずれか一方又は双方、前記呼吸機能測定装置により前記患者から取得された呼吸機能データ、前記心電計により前記患者から取得された心電図データ及び心拍データのいずれか一方又は双方、前記血圧計により前記患者から取得された血圧データ及び脈拍データのいずれか一方又は双方、並びに、前記体温計により前記患者から取得された体温データのうちの少なくとも1つを含んでいてよく、前記学習済みモデルは、聴診音データ、血流データ、脈拍データ、呼吸機能データ、心電図データ、心拍データ、血圧データ、及び体温データのうちの少なくとも1つと診断結果データとを含む訓練データを用いた機械学習によって構築された第2の学習済みモデルを含んでいてよい。
【0011】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムにおいて、前記出力部は、前記眼科的データ取得部及び前記内科的データ取得部の双方に対して遠隔位置にある医師端末に向けて前記推論処理の結果を送信する送信部を含んでいてよい。
【0012】
幾つかの例示的な態様に係る医療システムにおいて、前記推論処理部は、前記患者が肺炎に罹患している確率を求めるための推論処理、前記患者が肺炎を伴う感染性疾患に罹患している確率を求めるための推論処理、前記患者の肺炎の重症度を求めるための推論処理、及び、前記患者の肺炎を伴う感染性疾患の重症度を求めるための推論処理のうちの少なくとも1つを実行するように構成されていてよい。
【発明の効果】
【0013】
例示的な態様によれば、症状や重症化の兆候を検出する処理の高精度化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】例示的な態様に係る医療システムの構成の一例を表す概略図である。
図2A】例示的な態様に係る医療システムの構成の一例を表す概略図である。
図2B】例示的な態様に係る医療システムの構成の一例を表す概略図である。
図3】例示的な態様に係る医療システムの構成の一例を表す概略図である。
図4】例示的な態様に係る医療システムの構成の一例を表す概略図である。
図5】例示的な態様に係る医療システムの構成の一例を表す概略図である。
図6】例示的な態様に係る医療システムの動作の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示では、医療システムについての幾つかの例示的な態様を説明する。例示的な態様の医療システムは、患者から取得された眼科的データ及び内科的データに基づく診断推論をコンピュータで行うものである。このコンピュータは、典型的には、機械学習により構築された学習モデルを含む。眼科的データは、(主に)眼科分野において使用される検査装置(眼科検査装置)を用いて患者の眼から取得されたデータを含む。内科的データは、(主に)内科分野において使用される検査装置(内科検査装置)を用いて患者の患者から取得されたデータを含む。内科的データは、電子カルテデータ、問診データ、患者背景情報(例えば、年齢、治療歴、病歴、投薬歴、手術歴など)を含んでいてもよい。
【0016】
例示的な態様の医療システムは、眼科的データと内科的データとを総合的に処理することによって、疾患の症状や重症化の兆候といった複雑な生理学的イベントを高い精度で検出することを可能とするものである。これに加え、幾つかの例示的な態様の医療システムは、以下に説明するような背景をも考慮して考案されたものであり、これに対応した効果を奏することができる。
【0017】
医師や看護師等の医療従事者は、院内感染のリスクに晒されている。例えば2020年に発生した新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Desease 2019;COVID-19)のパンデミックでは、多くの患者が殺到した医療機関においてクラスター感染が発生するなど、医療従事者への感染リスクが大きな問題となった。なお、医療従事者への感染リスクの増加は、感染症流行時に限らず、災害や大事故が発生した際にも起こり得る。
【0018】
一般に、感染リスクを低減するには、人と人との距離を十分に確保すること、いわゆるソーシャルディスタンシング(social distancing)が重要とされているが、標準的な医療においてこれを実現することは容易ではない。例えば、心臓、肺、血管等が発生する音を聴くために聴診器を用いる際や、眼を観察するためにスリットランプ顕微鏡を用いる際などには、医師等は患者のすぐそばに居て処置を行う必要がある。
【0019】
幾つかの例示的な態様の医療システムは、眼科検査装置及び内科検査装置からそれぞれ取得されたデータに基づく診断推論の結果を、これらの検査装置に対して遠隔位置にある医師端末に向けて提供するように構成される。これにより、従来は患者のすぐそばに居なければ実施できなかった検査(聴診、スリットランプ検査など)で取得されたデータを診断に利用することが可能となる。すなわち、幾つかの例示的な態様の医療システムによれば、患者と医療従事者との間のソーシャルディスタンシングを適正化することが可能になるとともに、疾患の症状や重症化の兆候といった複雑な生理学的イベントを高い精度で検出することが可能になる。
【0020】
ここで、「遠隔位置」は、患者と医療従事者との間のソーシャルディスタンシングを確保可能な位置関係であればよい。例えば、医師端末は、検査装置とは別の部屋に設置されていてよく、或いは、検査装置とは別の施設に設置されていてよい。
【0021】
なお、完全防護服を着用する場合のように十分な感染症防護体制の下に検査が実施される場合には、ソーシャルディスタンシングを確保しなくてもよい。一部の検査(特定検査)のみが十分な感染症防護体制の下に実施される場合などにおいて、医療システムは、特定検査以外の検査に使用された検査装置のそれぞれに対して遠隔位置にある医師端末に向けて情報を提供するように構成されてよい。
【0022】
本明細書にて引用された文献に記載されている事項や、その他の任意の公知技術によって、例示的な態様を変形することが可能である。この変形は、例えば、付加、組み合わせ、置換、削除、省略、及びその他の加工のいずれかであってよい。
【0023】
本開示において説明される要素の機能の少なくとも一部は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装されていてよい。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能の少なくとも一部を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含んでいてよい。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされ得る。本開示において、回路構成、回路、コンピュータ、プロセッサ、ユニット、手段、部、又はこれらに類する用語は、開示された機能の少なくとも一部を実行するハードウェア、及び/又は、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラムされたハードウェアを含んでいてよい。ハードウェアは、本明細書に開示されたハードウェアであってよく、或いは、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、回路、コンピュータ、プロセッサ、ユニット、手段、部、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであってよく、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用されてよい。
【0024】
以下に説明する例示的な態様を任意に組み合わせてもよい。例えば、2つ以上の例示的な態様を少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。
【0025】
<システムの構成>
例示的な態様の医療システムの構成について幾つかの例を説明する。図1に示す例示的な医療システム1は、眼科的データ取得部10と、内科的データ取得部20と、推論処理部30と、出力部40とを含む。典型的な例において、推論処理部30は、眼科的データ取得部10及び内科的データ取得部20のそれぞれと、通信回線を介して接続されている。この通信回線は、例えば、医療機関内にネットワークを形成していてもよく、また、複数の施設にわたるネットワークを形成していてもよい。この通信回線に適用される通信技術は任意であってよく、有線通信、無線通信、近距離通信などの様々な公知の通信技術のいずれかであってよい。
【0026】
眼科的データ取得部10は、患者から眼科的データを取得するように構成されており、少なくとも1つの眼科検査装置を含む。眼科検査装置は、眼の検査(眼科検査)に使用される装置である。眼科的データ取得部10により取得された眼科的データは、通信回線を通じて推論処理部30に送られる。眼科検査装置の種類には、眼科測定装置と眼科撮影装置とがある。
【0027】
眼科測定装置は、眼特性データを取得するための装置である。眼特性データは、眼の状態を示すデータ(数値データ、評価データなどの特性データ)である。眼科測定装置の種類として、眼血流測定装置、眼屈折測定装置、眼圧計、角膜内皮細胞検査装置(スペキュラーマイクロスコープ)、高次収差測定装置(ウエーブフロントアナライザ)、視力検査装置、視野計、マイクロペリメータ、眼軸長測定装置、網膜電図検査装置、両眼視機能検査装置、色覚検査装置などがある。
【0028】
眼血流測定装置は、例えば、特開2020-48730号公報などに記載された光コヒーレンストモグラフィ(OCT)装置、又は、特表2017-504836号公報などに記載されたレーザースペックルフローグラフィ(LSFG)装置であってよい。
【0029】
眼屈折測定装置(レフラクトメータ、ケラトメータ)、眼圧計(ノンコンタクトトノメータ)、スペキュラーマイクロスコープ、及びウエーブフロントアナライザについては、それぞれの例が特開2018-38518号公報に記載されている。
【0030】
視力検査装置は、例えば、特開2018-110687号公報に記載された、リモート視力検査が可能な装置であってよい。
【0031】
これら以外の種類の眼科測定装置についても、任意の公知の装置を採用することが可能である。
【0032】
眼科撮影装置は、患者から眼画像データを取得するための装置である。眼画像データは、任意の眼科モダリティにより得られた視覚的データである。眼科モダリティは、例えば、写真撮影タイプのモダリティ、又は、スキャンタイプのモダリティであってよい。眼科撮影装置の種類として、光コヒーレンストモグラフィ装置、眼底カメラ、スリットランプ顕微鏡、手術用顕微鏡などがある。
【0033】
光コヒーレンストモグラフィ装置及び眼底カメラは、例えば、特開2020-44027号公報に記載された、各種の撮影準備動作が自動化された装置であってよい。なお、撮影準備動作は、撮影条件を整えるために実行される動作であり、その例として、アライメント調整、フォーカス調整、光路長調整、偏光調整、光量調整などがある。また、撮影準備動作により達成された良好な撮影条件を維持するための動作を自動で実行可能であってよい。このような動作として、眼の動きに合わせた自動アライメント調整(トラッキング)や、眼の動きに合わせた自動光路長調整(Zロック)などがある。
【0034】
スリットランプ顕微鏡は、例えば、特開2019-213734号公報に記載された、遠隔撮影に有効な装置であってよい。
【0035】
手術用顕微鏡は、例えば、特開2002-153487号公報に記載された、遠隔手術に有効な装置であってよい。
【0036】
これら以外の種類の眼科撮影装置についても、任意の公知の装置を採用することが可能である。
【0037】
典型的な眼科検査装置は、上記した幾つかの文献に記載された発明と同様に、遠隔操作や遠隔制御が可能に構成されていてよい。一例として、医療従事者への感染リスクを考慮し、眼科検査装置を用いた検査が行われる検査室と、この眼科検査装置の操作が行われる操作室とを分けることができる。検査室には、眼科検査装置に加え、操作室内の操作者の指示(音声、画像、映像など)を出力するためのスピーカーやディスプレイ、検査室内の被検者(患者)を撮影するためのビデオカメラ、被検者の音声が入力されるマイクロフォン、眼科検査装置に接続されたコンピュータなどが設けられている。一方、操作室には、眼科検査装置を遠隔操作するための機器(コンピュータ、操作パネルなど)、眼科検査装置により取得されたデータを表示するディスプレイ(例えば、検査室内のコンピュータに接続されている)、被検者への指示を入力するためのビデオカメラやマイクロフォン、眼科検査装置に接続されたコンピュータなどが設けられている。このような構成により、操作室内の操作者は、例えばアプリケーションプログラミングインターフェイス(API)を用いて検査室内の眼科検査装置を遠隔操作できるとともに、テレビ電話などを用いて被検者に指示を送ることができる。これにより、被検者から操作者(医療従事者)への感染リスクを大幅に低減することが可能となる。
【0038】
眼科的データ取得部10の構成例を図2A及び図2Bに示す。図2Aに示す眼科的データ取得部10には、K個の眼科検査装置11-kが設けられている。ここで、Kは1以上の整数であり(K≧1)、kは1~Kの範囲に属する整数である(1≦k≦K)。K個の眼科検査装置11-kには、M個の眼科測定装置12-mと、N個の眼科撮影装置13-nとが含まれている。ここで、MとNとの和はKに等しく(M+N=K)、Mは0以上の整数であり(M≧0)、mは0~Mの範囲に属する整数であり(0≦m≦M)、Nは0以上の整数であり(N≧0)、nは0~Nの範囲に属する整数である(0≦n≦N)。
【0039】
図2Bに示す例において、眼科測定装置12-mの個数Mは、1以上の整数である(M≧1)。M個の眼科測定装置12-mには、M個の眼血流測定装置14-mと、M個の眼屈折測定装置15-mとが含まれている。ここで、MとMとの和はMに等しく(M+M=M)、Mは0以上の整数であり(M≧0)、mは0~Mの範囲に属する整数であり(0≦m≦M)、Mは0以上の整数であり(M≧0)、mは0~Mの範囲に属する整数である(0≦m≦M)。
【0040】
内科的データ取得部20は、患者から内科的データを取得するように構成されており、少なくとも1つの内科検査装置を含む。内科検査装置は、(主に)内科分野において使用される装置である。内科的データ取得部20により取得された内科的データは、通信回線を通じて推論処理部30に送られる。内科検査装置には様々な種類があるが、その幾つかを図3に例示する。
【0041】
図3に示す例示的な内科的データ取得部20には、電子聴診器21-pと、血中酸素測定装置22-pと、血流計23-pと、呼吸機能測定装置24-pと、心電計25-pと、血圧計26-pと、体温計27-pとが設けられている。ここで、p~pのそれぞれは0以上の整数であり(p、・・・、p≧0)、p~pの総和は1以上の整数である(p+・・・+p≧1)。
【0042】
電子聴診器21-pは、聴診音データを取得するための装置であり、例えば特開2017-198号公報などに記載された装置であってよい。電子聴診器21-pにより検出される聴診音の種類は任意であり、例えば、気管呼吸音、気管支呼吸音、肺胞呼吸音、心音、及び血流音のうちの少なくとも1つであってよい。
【0043】
血中酸素測定装置22-pは、血中酸素データを取得するための装置であり、例えば特開2019-111010号公報などに記載されたパルスオキシメータであってよい。血中酸素測定装置22-pにより検出される血中酸素データの種類は任意であり、例えば、酸素飽和度、酸素含量、及び酸素供給量のうちの少なくとも1つであってよい。
【0044】
血流計23-pは、血流データ及び/又は脈拍データを取得するため装置であり、例えば、特開2008-36095号公報などに記載された超音波血流計、特開2008-154804号公報などに記載されたレーザー血流計、及び、特開平10-328152号公報などに記載された電磁血流計のいずれかであってよい。血流計23-pにより検出される血流データの種類は任意であり、例えば、血流速度、血流量、及び血流速度分布のうちの少なくとも1つであってよい。
【0045】
呼吸機能測定装置24-pは、呼吸機能データを取得するための装置であり、例えば特表2019-527117号公報に記載された呼吸モニタリングシステムであってよい。呼吸機能測定装置24-pによって検出される呼吸機能データの種類は任意であり、例えば、呼吸数、一回換気量、分時換気量、気管内圧、気速気流量、換気仕事量、吸入気ガス濃度、及び吸気水蒸気のうちの少なくとも1つであってよい。
【0046】
心電計25-pは、心電図データ及び心拍データのいずれか一方又は双方を取得するための装置であり、例えば特開2017-148577号公報に記載された心拍・心電計であってよい。心電計25-pによって検出されるデータは、例えば、心電波形及び心拍数のいずれか一方又は双方であってよい。
【0047】
血圧計26-pは、血圧データ及び脈拍データのいずれか一方又は双方を取得するための装置であり、例えば特開2018-29964号公報に記載されたシステム中の血圧計であってよい。血圧計26-pによって検出されるデータは、例えば、血圧値及び脈拍数のいずれか一方又は双方であってよい。
【0048】
体温計27-pは、体温データを取得するための装置であり、例えば特開2018-29964号公報に記載されたシステム中の体温計であってよい。
【0049】
推論処理部30は、臨床データを含む訓練データを用いた機械学習によって構築された学習済みモデルを用いて推論処理を実行するように構成されている。
【0050】
例えば、訓練データに含まれる臨床データは、臨床的に収集された眼科的データ、内科的データ及び診断結果データを含む。典型的には、眼科的データ、内科的データ及び診断結果データは、臨床症例毎又は患者毎に関連付けられており、診断結果データは、関連する眼科的データ及び内科的データに基づき医師又は他の推論モデル(学習済みモデル)によって求められる。
【0051】
このような訓練データに基づく機械学習(教師あり学習)により、眼科的データ取得部10により患者から取得された眼科的データと内科的データ取得部20により当該患者から取得された内科的データとを入力とし、且つ、推定される診断結果(推定診断データ)を出力とする学習済みモデル(推論モデル)が作成される。
【0052】
推論処理部30は、このようにして得られた学習済みモデルを含んでおり、眼科的データ取得部10により患者から取得された眼科的データと内科的データ取得部20により当該患者から取得された内科的データとを学習済みモデルに入力し、学習済みモデルから出力された推定診断データを出力部40に送る。
【0053】
例示的な態様に使用可能な機械学習アルゴリズムは、教師あり学習に限定されず、例えば、教師なし学習、半教師あり学習、強化学習、トランスダクション、マルチタスク学習などの任意のアルゴリズムであってよく、また、任意の2つ以上のアルゴリズムの組み合わせであってもよい。
【0054】
例示的な態様に使用可能な機械学習技法は任意であり、例えば、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、決定木学習、相関ルール学習、遺伝的プログラミング、クラスタリング、ベイジアンネットワーク、表現学習、エクストリームラーニングマシンなどの任意の技法であってよく、また、任意の2つ以上の技法の組み合わせであってもよい。
【0055】
推論処理部30の構成例を図4に示す。図4に示す例示的な推論処理部30は、Q個の学習済みモデル31-qを含んでいる。ここで、Qは、1以上の整数であり(Q≧1)、qは1~Qの範囲に属する整数である。学習済みモデル31-qは、Q個の第1の学習済みモデル32-qと、Q個の第2の学習済みモデル33-qとを含む。ここで、QとQの和はQに等しく(Q+Q=Q)、Qは0以上の整数であり(Q≧0)、qは0~Qの範囲に属する整数であり(0≦q≦Q)、Qは0以上の整数であり(Q≧0)、qは0~Qの範囲に属する整数である(0≦q≦Q)。
【0056】
第1の学習済みモデル32-qは、眼特性データ及び眼画像データのいずれか一方又は双方と診断結果データとを含む訓練データを用いた機械学習によって構築される。例えば、眼特性データ及び/又は眼画像データは、臨床的に収集される。典型的には、眼特性データ及び/又は眼画像データ並びに診断結果データは、臨床症例毎又は患者毎に関連付けられており、診断結果データは、関連する眼特性データ及び/又は眼画像データに基づき医師又は他の推論モデルによって求められる。
【0057】
このような訓練データに基づく機械学習(教師あり学習)により、眼科的データ取得部10の眼科測定装置12-mにより患者から取得された眼特性データ、及び、眼科撮影装置13-nにより当該患者から取得された眼画像データのいずれか一方又は双方を入力とし、且つ、推定される診断結果(推定診断データ)を出力とする学習済みモデル(推論モデル)が作成される。
【0058】
なお、第1学習済みモデル32-qの構築に用いられる訓練データは、眼特性データ及び眼画像データのいずれか一方又は双方と内科的データと診断結果データとを含んでいてもよい。つまり、第1学習済みモデル32-qの構築に用いられる訓練データは、内科的データを更に含んでいてもよい。この場合、眼科的データ取得部10の眼科測定装置12-mにより患者から取得された眼特性データ、及び、眼科撮影装置13-nにより当該患者から取得された眼画像データのいずれか一方又は双方と、内科的データ取得部20により取得された内科的データとを入力とし、且つ、推定される診断結果(推定診断データ)を出力とする学習済みモデル(推論モデル)が作成される。
【0059】
第2の学習済みモデル33-qは、内科的データと診断結果データとを含む訓練データを用いた機械学習によって構築される。内科データは、例えば、聴診音データ、血流データ、脈拍データ、呼吸機能データ、心電図データ、心拍データ、血圧データ、及び体温データのうちの少なくとも1つである。内科的データは、臨床的に収集される。典型的には、内科的データ及び診断結果データは、臨床症例毎又は患者毎に関連付けられており、診断結果データは、関連する内科的データに基づき医師又は他の推論モデルによって求められる。
【0060】
このような訓練データに基づく機械学習(教師あり学習)により、内科的データ取得部20により患者から取得された内科的データを入力とし、且つ、推定される診断結果(推定診断データ)を出力とする学習済みモデル(推論モデル)が作成される。
【0061】
なお、第2学習済みモデル33-qの構築に用いられる訓練データは、内科的データと眼科的データと診断結果データとを含んでいてもよい。つまり、第2学習済みモデル33-qの構築に用いられる訓練データは、眼科的データを更に含んでいてもよい。この場合、眼科的データ取得部10により取得された眼科的データと、内科的データ取得部20により取得された内科的データとを入力とし、且つ、推定される診断結果(推定診断データ)を出力とする学習済みモデル(推論モデル)が作成される。
【0062】
学習済みモデル31-qが、1つ以上の第1の学習済みモデル32-qと、1つ以上の第2の学習済みモデル33-qとを含む場合(Q≧1、Q≧1)、この学習済みモデル31-qに対し、例えば、以下に列挙するデータのいずれかが入力される:(1A)眼科測定装置12-mにより患者から取得された眼特性データ;(1B)眼科撮影装置13-nにより当該患者から取得された眼画像データ;(2A)電子聴診器21-pにより当該患者から取得された聴診音データ;(2B)血中酸素測定装置22-pにより当該患者から取得された血中酸素データ;(2C)血流計23-pにより当該患者から取得された血流データ及び脈拍データのいずれか一方又は双方;(2D)呼吸機能測定装置24-pにより当該患者から取得された呼吸機能データ;(2E)心電計25-pにより当該患者から取得された心電図データ及び心拍データのいずれか一方又は双方;(2F)血圧計26-pにより当該患者から取得された血圧データ及び脈拍データのいずれか一方又は双方;(2G)体温計27-pにより当該患者から取得された体温データ。
【0063】
眼特性データ(1A)及び/又は眼画像データ(1B)が学習済みモデル31-qに入力された場合、眼特性データ(1A)及び/又は眼画像データ(1B)は、少なくとも第1の学習済みモデル32-qに入力される。第1の学習済みモデル32-qは、入力された眼特性データ(1A)及び/又は眼画像データ(1B)に基づく推論処理を実行して推定診断データを出力する。
【0064】
内科的データ(2A)~(2G)のうちのいずれか1つ以上が学習済みモデル31-qに入力された場合、内科的データ(2A)~(2G)のうちのいずれか1つ以上は、少なくとも第2の学習済みモデル33-qに入力される。第2の学習済みモデル33-qは、入力された内科的データ(2A)~(2G)のうちのいずれか1つ以上に基づく推論処理を実行して推定診断データを出力する。
【0065】
これにより、第1の学習済みモデル32-qの出力としての推定診断データと、第2の学習済みモデル33-qの出力としての推定診断データとが得られる。推論処理部30は、得られた複数の推定診断データに基づいて最終的な推定診断データ(推論処理部30の出力としての推定診断データ)を生成することができる。例えば、推論処理部30は、複数の推定診断データのうちのいずれかを選択することができる(例えば、確信度が最大の推定診断データを選択することができる)。或いは、推論処理部30は、得られた複数の推定診断データのうちの2つ以上を組み合わせて最終的な推定診断データを生成することができる。或いは、推論処理部30は、得られた複数の推定診断データのうちの2つ以上を含めて(列挙して)最終的な推定診断データを生成することができる。
【0066】
なお、眼特性データ(1A)及び/又は眼画像データ(1B)が学習済みモデル31-qに入力された場合、眼特性データ(1A)及び/又は眼画像データ(1B)を第2の学習済みモデル33-qに入力してもよい。この場合、第2の学習済みモデル33-qは、眼特性データ(1A)及び/又は眼画像データ(1B)と内科的データ(2A)~(2G)のうちのいずれか1つ以上とに基づく推論処理を実行して推定診断データを出力することができる。
【0067】
同様に、内科的データ(2A)~(2G)のうちのいずれか1つ以上が学習済みモデル31-qに入力された場合、内科的データ(2A)~(2G)のうちのいずれか1つ以上は、少なくとも第1の学習済みモデル32-qに入力される。この場合、第1の学習済みモデル32-qは、内科的データ(2A)~(2G)のうちのいずれか1つ以上と眼特性データ(1A)及び/又は眼画像データ(1B)とに基づく推論処理を実行して推定診断データを出力することができる。
【0068】
推論処理部30が実行する推論処理の対象(疾患、症状など)は任意であってよい。例えば、推論処理部30は、肺炎に関する推論処理を実行するように構成されてよい。より具体的には、推論処理部30は、対象患者が肺炎に罹患している確率(肺炎罹患確率)を求めるための推論処理、対象患者が肺炎を伴う感染性疾患に罹患している確率(感染性疾患罹患確率)を求めるための推論処理、対象患者の肺炎の重症度(肺炎重症度)を求めるための推論処理、対象患者の肺炎を伴う感染性疾患の重症度(感染性疾患重症度)を求めるための推論処理のうちのいずれかを実行するように構成されてよい。
【0069】
肺炎罹患確率を求める場合、推論処理部30の学習済みモデル31-qは、眼科的データと、内科的データと、肺炎罹患状態を示す診断結果データとを含む訓練データに基づく機械学習によって構築される。更に、眼科的データ取得部10により患者から取得された眼科的データと内科的データ取得部20により当該患者から取得された内科的データとが学習済みモデル31-qに入力され、当該患者の肺炎罹患確率を含む推定診断データが学習済みモデル31-qから出力される。
【0070】
肺炎罹患確率を求める場合、推論処理部30の学習済みモデル31-qは、眼科的データと、内科的データと、肺炎罹患状態を示す診断結果データとを含む訓練データに基づく機械学習によって構築される。更に、眼科的データ取得部10により患者から取得された眼科的データと内科的データ取得部20により当該患者から取得された内科的データとが学習済みモデル31-qに入力され、当該患者の肺炎罹患確率を含む推定診断データが学習済みモデル31-qから出力される。
【0071】
感染性疾患罹患確率を求める場合、推論処理部30の学習済みモデル31-qは、眼科的データと、内科的データと、当該感染性疾患の罹患状態を示す診断結果データとを含む訓練データに基づく機械学習によって構築される。更に、眼科的データ取得部10により患者から取得された眼科的データと内科的データ取得部20により当該患者から取得された内科的データとが学習済みモデル31-qに入力され、当該患者の感染性疾患罹患確率を含む推定診断データが学習済みモデル31-qから出力される。
【0072】
肺炎重症度を求める場合、推論処理部30の学習済みモデル31-qは、眼科的データと、内科的データと、肺炎の状態(例えば、重症度、及び/又は、重症度に関する情報)を示す診断結果データとを含む訓練データに基づく機械学習によって構築される。更に、眼科的データ取得部10により患者から取得された眼科的データと内科的データ取得部20により当該患者から取得された内科的データとが学習済みモデル31-qに入力され、当該患者の肺炎重症度を含む推定診断データが学習済みモデル31-qから出力される。
【0073】
感染性疾患重症度を求める場合、推論処理部30の学習済みモデル31-qは、眼科的データと、内科的データと、当該感染性疾患の状態(例えば、重症度、及び/又は、重症度に関する情報)を示す診断結果データとを含む訓練データに基づく機械学習によって構築される。更に、眼科的データ取得部10により患者から取得された眼科的データと内科的データ取得部20により当該患者から取得された内科的データとが学習済みモデル31-qに入力され、当該患者の感染性疾患重症度を含む推定診断データが学習済みモデル31-qから出力される。
【0074】
肺炎を伴う感染性疾患は、例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)であってよい。また、肺炎を伴う感染性疾患の重症度は、例えば、任意の症状(サイトカインストーム、発熱、結膜充血、鼻詰まり、頭痛、咳、咽頭痛、痰、血痰、倦怠感、息切れ、嘔気、嘔吐、下痢、筋肉痛、関節痛、悪寒など)に関連していてよく、任意の基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)など)、人工透析の適用、特定薬剤(免疫抑制剤、抗癌剤など)の投与など)に関連していてよい。
【0075】
出力部40は、推論処理部30により実行された推論処理の結果を出力する。出力処理の態様は任意であり、例えば、送信、表示、記録、及び印刷のいずれかであってよい。出力部40により出力される情報は、推論処理の結果そのもの(推定診断データ)でもよいし、推論処理の結果を含む情報でもよいし、推論処理の結果を処理して得られた情報でもよい。例えば、医療システム1は、推論処理部30により得られた推定診断データに基づいてレポートを作成するレポート作成部(図示せず)を更に含んでいてよい。この場合、出力部40は、作成されたレポートを出力することができる。
【0076】
出力部40の構成例を図5に示す。図5に示す例示的な出力部40は、送信部41を含む。送信部41は、推論処理部30により実行された推論処理の結果を、眼科的データ取得部10及び内科的データ取得部20の双方に対して遠隔位置にある医師端末に向けて送信する。
【0077】
ここで、出力部40から医師端末への送信は、直接的な送信でもよいし、間接的な送信でもよい。直接的な送信は、推論処理の結果(推定診断データ、レポートなど)を出力部40から医師端末に送信する態様である。また、間接的な送信は、推論処理の結果を医師端末以外の装置(サーバ、データベースなど)に送信するとともに、当該装置を介して医師端末に推論処理の結果を提供する態様である。
【0078】
このように、眼科的データ取得部10及び内科的データ取得部20の双方に対して遠隔位置に医師端末を配置するとともに、眼科的データ取得部10により患者から取得された眼科的データと内科的データ取得部20により当該患者から取得された内科的データとに基づき推論処理部30が生成した推定診断データ(又はこれに基づく情報)を当該医師端末に提供するように構成することで、医師(医療従事者)と患者との間のソーシャルディスタンスを確保することができ、医師(医療従事者)の感染リスクを低減することが可能となる。
【0079】
<システムの使用形態>
例示的な態様に係る医療システム1の使用形態の例を図6のフローチャートを参照して説明する。
【0080】
(S1:学習済みモデルを構築する)
医療システム1の運用の準備として、推論処理部30において用いられる学習済みモデル31-qを構築する。なお、この段階で行われる処理は、既に運用されていた学習済みモデルの更新(パラメータの調整・更新)であってもよい。
【0081】
(S2:患者から眼科的データを取得する)
対象は、例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確定診断がなされた患者、又は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の疑い患者であってよい。医療システム1の眼科的データ取得部10は、所定項目の眼科的データを患者から取得する。
【0082】
(S3:患者から内科的データを取得する)
また、医療システム1の内科的データ取得部20は、所定項目の内科的データを患者から取得する。
【0083】
なお、眼科的データの取得タイミングと内科的データの取得タイミングとの関係は任意である。例えば、眼科的データを取得した後に内科的データを取得してもよいし、内科的データを取得した後に眼科的データを取得してもよいし、眼科的データの取得と内科的データの取得とを並行して行ってもよい。
【0084】
また、眼科的データ取得と内科的データ取得との間の時間差についても任意である。例えば、眼科的データとして眼底血流データを取得し、内科的データとして心拍データを取得する場合、これらの間には元々時間的ずれがあるため、双方を同時に取得する必要はなく、例えば10分程度の時間差があってもよい。ただ、血液循環状態に影響を与える条件(姿勢など)については、眼科的データ取得時と内科的データ取得時とで同じにすることが望ましいと考えられる。他の検査パラメータに影響を与える条件(食事、時間帯、薬剤投与など)についても同様である。
【0085】
(S4:眼科的データと内科的データを学習済みモデルに入力する)
ステップS2で取得された眼科的データと、ステップS3で取得された内科的データは、推論処理部30に送られ、学習済みモデル31-qに入力される。
【0086】
(S5:推定診断データを生成する)
学習済みモデル31-qは、ステップS4で入力された眼科的データ及び内科的データから、推定診断データを生成する。
【0087】
(S6:レポートを作成する)
医療システム1(前述した図示しないレポート作成部)は、ステップS5で生成された推定診断データに基づいてレポートを作成する。
【0088】
(S7:レポートを送信する)
出力部40の送信部41は、ステップS6で作成されたレポートを、眼科的データ取得部10及び内科的データ取得部20の双方に対して遠隔位置にある医師端末に、又は、この医療端末に対する情報提供が可能なコンピュータに、送信する。医師端末は、医師が使用するコンピュータに限定されず、医師以外の医療従事者が使用するコンピュータ(医療従事者端末)であってもよい。
【0089】
このような医療システム1によれば、医療従事者と患者との間のソーシャルディスタンスを確保し、患者から医療従事者への感染のリスクを低減することが可能となる。更に、医療システム1は、眼科的データと内科的データとの双方を入力とした診断推論を自動で行うように構成されているので、従来の技術よりも高い精度で症状や重症化の兆候を検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0090】
1 医療システム
10 眼科的データ取得部
11-k 眼科検査装置
12-m 眼科測定装置
13-n 眼科撮影装置
14-m 眼血流測定装置
15-m 眼屈折測定装置
20 内科的データ取得部
21-p 電子聴診器
22-p 血中酸素測定装置
23-p 血流計
24-p 呼吸機能測定装置
25-p 心電計
26-p 血圧計
27-p 体温計
30 推論処理部
31-q 学習済みモデル
32-q 第1の学習済みモデル
33-q 第2の学習済みモデル
40 出力部
41 送信部

図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6