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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20240502BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20240502BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20240502BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20240502BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20240502BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20240502BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20240502BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C11D17/08
B08B3/08 A
C11D1/04
C11D1/14
C11D1/22
C11D1/75
C11D3/04
C11D3/395
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020102677
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021181553
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸進
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156929(JP,A)
【文献】特開2017-057345(JP,A)
【文献】特開2014-005426(JP,A)
【文献】特開2018-168328(JP,A)
【文献】特開2010-150307(JP,A)
【文献】特表2000-515922(JP,A)
【文献】特開2019-001834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00- 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)レイン酸及びそ塩から選択される1種以上を0.005~0.2質量%、
(B)水溶性カルシウム化合物0.1~0.7質量%、
(C)炭素原子数が8~12のアルキル基またはアルキレン基を有するアルキルジメチルアミンオキサイド0.2~10質量%、
(D)アニオン界面活性剤(但し、A成分以外)0.5~5質量%、
(E)水、
を含有し、
(A)成分と(B)成分の質量比が、(B)/(A)=0.1~60であり、(C)成分の内、炭素原子数が8のアルキル基またはアルキレン基を有するアルキルジメチルアミンオキサイドが、液体洗浄剤組成物中に0.1質量%以上あり、かつ、炭素原子数が12を超えるアルキル基またはアルキレン基を有するアルキルジメチルアミンオキサイドを含有しないことを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに(F)アルカリ金属水酸化物を組成物全体に対して0.1~4質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに(G)塩素系酸化剤を有効塩素濃度として、組成物全体に対して0.1~5質量%含有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらに(H)金属イオン封鎖剤を組成物全体に対して1~10質量%含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
さらに(I)芳香族スルホン酸塩を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
上記(D)アニオン界面活性剤が、炭素原子数13~17の2級アルカンスルホン酸ナトリウム、炭素原子数13~17の2級アルカンスルホン酸カリウム、炭素原子数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび炭素原子数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項7】
上記請求項1~6のいずれか一項に記載の液体洗浄剤組成物を水で0.5~10質量%の濃度に希釈して洗浄剤希釈液を調製する工程、前記洗浄剤希釈液を100~300g/Lの泡比重で、被洗浄面1平方メートルあたりに泡300~1500mlを、発泡装置を用いて吹き付ける工程、水ですすぐ工程を含むことを特徴とする洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品加工工場、飲料工場、乳業工場およびビール工場、などで使用される食品飲料製造機器、充填機、調合タンクなどの製造設備の外面、フリーザー、および搬送用コンベア、床など(以下、飲食料品設備用という)の発泡洗浄に用いる洗浄剤組成物および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品工場の製造設備の発泡洗浄剤としては、アルカリ剤を主剤として、アルキルアミンオキサイド、脂肪酸石けん等のアニオン界面活性剤を配合した洗浄剤組成物が使用されていた。
【0003】
例えば、特開2010-150307号公報では、アルカリ剤0.1~5質量%、アニオン界面活性剤0.5~5質量%、炭素原子数が12~18のアルキル基またはアルキレン基を有するアルキルジメチルアミンオキサイド0.5~5質量%、芳香族スルホン酸塩0.5~5質量%、水溶性カルシウム化合物0.1~5質量%、金属イオン封鎖剤1~10質量%配合することにより、すぐれた泡保持性、洗浄性を有するとともに被洗浄面に白化を生じる原因となるケイ酸塩を使用することなくアルミニウムの腐食性を抑制する発泡洗浄剤が開示されている。(特許文献1を参照)
【0004】
また、特許第6611568号では、酸化剤0.1~10質量%、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸及びそれらの塩から選択される1種以上を0.01~0.45質量%、炭素数8~18の炭化水素基を有するアルキルジメチルアミンオキサイド及び/又はアルケニルジメチルアミンオキサイドを0.01~13.5質量%、有機ホスホン酸又はその塩、縮合リン酸又はその塩より選ばれた少なくとも一種以上を0.01~10質量%、配合することにより、洗浄性、起泡性、有効塩素安定性、希釈液安定性、貯蔵安定性に優れ、かつ、すすぎ時の泡切れ性に優れた液体洗浄剤組成物が開示されている。(特許文献2を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-150307号公報
【文献】特許第6611568号
【0006】
しかしながら、特許文献1では泡切れ性に難があり、すすぎ時に泡を流しきるまでに時間をかけて多量の濯ぎ水を用いなければならなく、特許文献2では被洗浄面に白化が生じてしまう原因となる珪酸塩を金属腐食防止性の向上のために用いることが書かれており、被洗浄面の白化だけでなく、白化が生じることによって被洗浄面に汚れが残留しやすくなり洗浄効果が低下するおそれがある。
【0007】
そしてまた、特許文献1に開示されている発泡洗浄剤に特許文献2に開示されているように脂肪酸を配合すると、アルミニウム腐食抑制に配合しているカルシウムと脂肪酸でカルシウム石鹸ができてしまい、貯蔵安定性や希釈液安定性が悪化し、さらに起泡性も悪くなり十分な起泡量が得られないといった課題があり、被洗浄面に白化を生じることなくアルミニウム材質に対して腐食性がなく、さらに、すすぎ時の泡切れ性にすぐれた発泡洗浄剤についての技術は開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
起泡性、貯蔵安定性、希釈液安定性に優れ、被洗浄面に白化を生じることなくアルミニウム材質に対しての腐食を抑制するとともに、すすぎ時の泡切れ性に優れた液体洗浄剤組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、アニオン界面活性剤を配合することにより洗浄性と起泡に優れ、特定の脂肪酸と水溶性カルシウム化合物を特定の比率にて配合することで、すすぎ時の泡切れ性、アルミニウム材質に対しての腐食抑制、貯蔵安定性、希釈液安定性を発揮し、特定のアルキルジメチルアミンオキサイドを特定の割合で配合することにより、泡保持性とすすぎ時の泡切れ性を兼ね備えた液体洗浄剤組成物の完成に至った。
【0010】
また、これら液体洗浄剤組成物を、水で所定の濃度に希釈した洗浄剤希釈液とし、発泡装置を用いて所定の範囲の泡比重、用量で吹き付けて洗浄し、すすぎ、乾燥する洗浄方法を提供する。
【0011】
本発明は、これらの知見に基づくものであり、以下の発明を包含する。
[1](A)ラウリン酸、オレイン酸及びそれらの塩から選択される1種以上を0.005~0.2質量%、
(B)水溶性カルシウム化合物0.1~0.7質量%、
(C)炭素原子数が8~12のアルキル基またはアルキレン基を有するアルキルジメチルアミンオキサイド0.2~10質量%、
(D)アニオン界面活性剤(但し、A成分以外)0.5~5質量%、
(E)水、
を含有し、
(A)成分と(B)成分の質量比が、(B)/(A)=0.1~60であり、(C)成分の内、炭素原子数が8のアルキル基またはアルキレン基を有するアルキルジメチルアミンオキサイドが、液体洗浄剤組成物中に0.1質量%以上あることを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【0012】
[2]さらに、(F)アルカリ剤を組成物全体に対して0.1~4質量%を含有する[1]の液体洗浄剤組成物。
【0013】
[3]さらに、(G)塩素系酸化剤を有効塩素濃度として組成物全体に対して0.1~5質量%を含有する[1]又は[2]の液体洗浄剤組成物。
【0014】
[4]さらに、(H)金属イオン封鎖剤を組成物全体に対して1~10質量%を含有する[1]~[3]のいずれかの液体洗浄剤組成物。
【0015】
[5]さらに(I)芳香族スルホン酸塩を含有する[1]~[4]のいずれかの液体洗浄剤組成物。
【0016】
[6]上記(D)アニオン界面活性剤が、炭素原子数13~17の2級アルカンスルホン酸ナトリウム、炭素原子数13~17の2級アルカンスルホン酸カリウム、炭素原子数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび炭素原子数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である[1]~[5]のいずれかの液体洗浄剤組成物。
【0017】
[7]上記[1]~[6]のいずれかの液体洗浄剤組成物を水で0.5~10質量%の濃度に希釈して洗浄剤希釈液を調製する工程、前記洗浄剤希釈液を100~300g/Lの泡比重で、被洗浄面1平方メートルあたりに泡300~1500mlを、発泡装置を用いて吹き付ける工程、水ですすぐ工程を含むことを特徴とする洗浄方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、[1]により、起泡性、貯蔵安定性、希釈液安定性に優れ、被洗浄面に白化を生じることなくアルミニウム材質に対しての腐食を抑制するとともに、すすぎ時の泡切れ性に優れた液体洗浄剤組成物となり、[2]により、タンパク質汚れに対する洗浄性が向上し、[3]により、タンパク質汚れに対する洗浄性がさらに向上し、[4]により、貯蔵安定性が向上し、[5]により、貯蔵安定性がさらに向上した液体洗浄剤組成物を提供することができる。
【0019】
さらに、[7]により、汚れと洗浄剤組成物とが一定時間接触するため、こすり洗い等の作業による労力を低減することができる洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明の液体洗浄剤組成物(以下、本洗浄剤組成物という)に用いられる(A)成分のラウリン酸とオレイン酸は、泡切れ性の点からオレイン酸が好ましく用いられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0022】
上記(A)成分であるラウリン酸、オレイン酸及びそれらの塩は、本洗浄剤組成物中に0.005~0.2質量%の範囲で配合され、なかでも泡切れ性と貯蔵安定性、希釈液安定性の点から0.01~0.1質量%の範囲で配合されることが好ましい。0.005質量%未満で配合した場合には泡切れ性に乏しく、0.2質量%を超えると貯蔵安定性および希釈液安定性に乏しいものとなる。
【0023】
本発明に用いられる(B)成分の水溶性カルシウム化合物としては、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、酒石酸リンゴ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、などが挙げられる。中でも溶解性、経済性の点から、塩化カルシウム、酢酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0024】
上記(B)成分である水溶性カルシウム化合物は、本洗浄剤組成物中に0.1~0.7質量%の範囲で配合され、なかでもアルミニウム材質への腐食抑制と組成物調製の点から0.2~0.4質量%の範囲で配合されることが好ましい。0.1質量%未満で配合した場合にはアルミニウム材質に影響を与えやすくなり、0.7質量%を超えると貯蔵安定性、洗浄性および発泡性に乏しいものとなる。
【0025】
上記(A)成分と(B)成分の質量比(B)/(A)の値が0.1~60の間が好ましく、1~45の間がより好ましい。0.1を下回るとアルミニウム材質の腐食抑制性が乏しくなり、60を上回ると貯蔵安定性、希釈安定性、発泡性に乏しいものとなる。
【0026】
本発明に用いられる(C)成分のアルキルジメチルアミンオキサイドとしては、炭素原子数8~12のアルキル基またはアルキレン基を有するアルキルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。なかでも、すすぎ時の泡切れ性の観点から炭素原子数8のアルキル基またはアルキレン基を有するアルキルジメチルアミンオキサイドの配合が必須となり、すすぎ時の泡切れ性と発泡性および泡保持性の観点から炭素原子数10~12のアルキル基またはアルキレン基を有するアルキルジメチルアミンオキサイドを組み合わせて用いることがより好ましい。また、炭素原子数が12を超えるアルキル基またはアルキレン基を有するアルキルジメチルアミンオキサイドを用いると、すすぎ時の破泡量がより少なくなる傾向になるため、本洗浄剤組成物として好ましくない。
【0027】
上記(C)成分のアルキルジメチルアミンオキサイドは、本洗浄剤組成物中において、炭素原子数8のアルキル基またはアルキレン基を有するアルキルジメチルアミンオキサイドが0.1質量%以上、且つ、(C)成分の合計が0.2~10質量%の範囲で配合され、なかでも洗浄性の観点から(C)成分の合計が1~4質量%の範囲で配合されることが好ましい。0.2質量%未満で配合した場合には洗浄性能、発泡性、泡保持性および貯蔵安定性に乏しくなり、10質量%を超えて配合しても、これ以上のすすぎ時の泡切れ性、発泡性、泡保持性の効果の向上は見られず、経済的に不利になる。
【0028】
本発明に用いられる(D)成分のアニオン界面活性剤としては、炭素原子数12~16のアルキル硫酸ナトリウム、炭素原子数12~16のアルキル硫酸アンモニウム、炭素原子数13~17の2級アルカンスルホン酸ナトリウム、炭素原子数13~17の2級アルカンスルホン酸カリウム、炭素原子数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、炭素原子数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸カリウム、アルファオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などが挙げられる。なかでも、発泡性や塩素系酸化剤を配合した際の安定性の点から、炭素原子数13~17の2級アルカンスルホン酸ナトリウム、炭素原子数13~17の2級アルカンスルホン酸カリウム、炭素原子数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、炭素原子数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸カリウム、がより好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
上記(D)成分のアニオン界面活性剤は、本洗浄剤組成物中において、0.5~5質量%の範囲で配合され、なかでも洗浄性能の観点から1~4質量%の範囲で配合することが好ましい。0.5質量%未満で配合した場合には洗浄性能、発泡性に乏しくなり、5質量%を超えて配合した場合にはすすぎ時の泡切れ性が乏しいものとなる。
【0030】
本発明に用いられる(E)成分である水としては、水道水、蒸留水、純水、イオン交換水などが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも経済性および貯蔵安定性の点から、水道水、イオン交換水が好ましく用いられる。
【0031】
上記(E)成分の水は本洗浄剤組成物において本洗浄剤組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と、その他の外から加えられる水との総和であり、組成物全体が100質量%となるようにバランス量が配合される。
【0032】
本発明に用いられる(F)成分のアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。中でも、貯蔵安定性の点から、水酸化カリウムが好ましく用いられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0033】
上記(F)成分であるアルカリ金属水酸化物は、本洗浄剤組成物中において、0.1~4質量%の範囲で配合され、好ましくは、洗浄性能およびアルミニウム材質の腐食抑制性の観点から0.5~4質量%の範囲で配合される。0.1質量%未満で配合した場合には洗浄性能に乏しく、4質量%を超えて配合した場合には、アルミニウム材質への影響を抑えにくくなる。
【0034】
本発明に用いられる(G)成分の塩素系酸化剤としては、亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩、塩素酸ナトリウム等の塩素酸塩、過塩素酸ナトリウム等の過塩素酸塩、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等の塩素化シアヌル酸塩が挙げられる。なかでも経済性の観点から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0035】
上記(G)成分である塩素系酸化剤は、本洗浄剤組成物中において有効塩素濃度として0.1~5質量%の範囲で配合され、なかでも、貯蔵安定性および洗浄性の観点から有効塩素濃度として0.5~4質量%の範囲であることが好ましい。0.1質量%未満で配合した場合には汚れの洗浄性に乏しく、また、5質量%を超えて配合した場合には、貯蔵安定性が乏しいものとなる。
【0036】
上記(H)金属イオン封鎖剤としては、アミノトリメチレンホスホン酸ナトリウム、アミノトリメチレンホスホン酸カリウム、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸ナトリウム、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸カリウム、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸ナトリウム、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸カリウム、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸カリウム、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸ナトリウム、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸カリウム、ニトリロ3酢酸3ナトリウム、ニトリロ3酢酸3カリウム、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸2ナトリウム、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸2カリウム、メチルグリシン2酢酸3ナトリウム、メチルグリシン2酢酸3カリウム、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム、エチレンジアミン4酢酸4カリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸3ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸3カリウム、L-グルタミン酸-N,N-2酢酸4ナトリウム、L-グルタミン酸-N,N-2酢酸4カリウム、L-アスパラギン酸-N,N-2酢酸4ナトリウム、L-アスパラギン酸-N,N-2酢酸4カリウム、ジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム、ジエチレントリアミン5酢酸5カリウム、酒石酸2ナトリウム、酒石酸2カリウム、酒石酸ナトリウムカリウムなどが挙げられる。なかでも、経済性および貯蔵安定性の点から2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸ナトリウム、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸カリウムが好ましく用いられる。
【0037】
上記(H)成分の金属イオン封鎖剤は、本洗浄剤組成物中に1~10質量%の範囲で配合され、なかでも、貯蔵安定性およびアルミニウム材質の腐食抑制性の点から1.5~5.5質量%が好ましい。1質量%未満で配合した場合には貯蔵安定性およびアルミニウム材質の腐食抑制性が乏しくなり、また10質量%を超えて配合した場合には、経済性およびアルミニウム材質の腐食抑制性に乏しいものとなる。
【0038】
本発明に用いられる(I)成分の芳香族スルホン酸塩としては、メタキシレンスルホン酸ナトリウム、メタキシレンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウムおよびパラトルエンスルホン酸カリウム、クメンスルホン酸ナトリウムおよびクメンスルホン酸カリウムなどが挙げられる。中でも経済性の点から、メタキシレンスルホン酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0039】
上記(I)成分の芳香族スルホン酸塩は、本洗浄剤組成物中において、0.5~5質量%の範囲で配合され、なかでも貯蔵安定性の観点から1~4質量%の範囲で配合されることが好ましい。0.5質量%未満で配合した場合には貯蔵安定性が乏しく、5質量%を超えて配合した場合には発泡性および貯蔵安定性が乏しいものとなる。
【0040】
そして、本発明の洗浄剤組成物には任意成分として、香料、染料、防腐剤、金属腐食抑制剤、可溶化剤、消泡剤、曇点向上剤などを含有してもよい。
【0041】
つぎに、本発明の洗浄方法について説明する。
【0042】
本発明の洗浄方法は、本洗浄剤組成物を、水で所定の濃度に希釈した洗浄剤希釈液とし、発泡装置を用いて所定の範囲の泡比重、用量で吹き付けて洗浄し、すすぎ、乾燥することにより行われる。詳しくは、本洗浄剤組成物を水で0.5~10質量%の濃度に希釈して洗浄剤希釈液を調製する工程、前記洗浄剤希釈液を100~300g/Lの泡比重で、被洗浄面1平方メートルに対して泡容積として300~1500ml相当を、発泡装置を用いて吹き付ける工程、所定時間(通常、1~20分間)放置する工程、水ですすぐ工程、乾燥する工程(通常、30~60分間、温度10~50℃)で行われる。
【0043】
上記洗浄剤希釈液の濃度が0.5質量%未満であると、所望の洗浄性に乏しい場合があり、また、10質量%を超える場合には洗浄性が飽和となり、経済性に乏しくなるばかりでなくすすぎ性が低下するために好ましくない場合がある。
【0044】
また、上記洗浄剤希釈液を100~300g/Lの泡比重で、被洗浄面1平方メートルあたりに泡容積として300ml未満の吹き付けでは洗浄性に乏しい場合があり、また、泡容積1500mlを超えて吹き付けた場合には経済性の点で好ましくない場合がある。
【0045】
本発明において泡を吹きかけた後に放置する時間としては、例えば1~20分の範囲で設定される。
【0046】
本発明の水ですすぐ工程においては、通常、固定または可動の噴射ノズルからすすぎ水を噴射して行われる。このときのすすぎ水は水道水、軟水を用いてよく、通常、水道水が用いられる。また、このときの水温は特に限定されるものではないが、約25~40℃程度である事がすすぎ効率の点で好ましい。
【0047】
乾燥する工程としては、自然乾燥、所定温度の空気を送風乾燥しても良く、また、必要に応じて加熱乾燥するなどして行っても良い。
【0048】
そして、本発明に用いられる発泡装置としては洗浄溶液とエアーの加圧の機能や水圧を利用した機構を有するものが用いられ、なかでも圧力と流量の調整機能を有するものが好ましい。
【0049】
本発明の液体洗浄剤組成物およびそれを用いた洗浄方法は、食品加工工場、飲料工場、乳業工場およびビール工場などで使用される食品飲料製造機器、充填機、調合タンクなどの製造設備の外面、フリーザー、および搬送用コンベア、床など(飲食料品製造設備用)の発泡洗浄に好適に用いることができる。
【0050】
以下、実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるべきものではない。
【実施例
【0051】
本発明の液体洗浄剤組成物に関し、後記の実施例1~27および比較例1~12の組成(各表の数字の値は質量%であり、有効成分量に換算して示す)の液体洗浄剤組成物(以下、供試洗浄剤組成物という)を調製した。供試洗浄剤組成物の性能評価として貯蔵安定性、希釈液安定性、起泡性、すすぎ性、白色付着物発生の有無、およびアルミニウム材質への影響性、の6項目について試験し、実施例では6項目全てを評価し、比較例では比較対象となる項目を主に評価した。その結果を、後記の表1~表9に併せて示す。なお、各項目の試験方法、評価基準は以下に示すとおりである。
【0052】
(1)貯蔵安定性
〔試験方法〕
各供試洗浄剤組成物100gをポリプロピレン製容器に入れ、-5℃で1ヶ月静置した後に外観を観察した。
〔評価基準〕
〇:透明を保ち安定である
△:沈殿物や分離は見られないが、濁りが生じる
×:沈殿物や分離が生じる
とし、〇を実用性のあるものとして判定した。
【0053】
(2)希釈液安定性
〔試験方法〕
各供試洗浄剤組成物の3%希釈液を水道水を用いて作成し、100gを100mビーカーに入れ25℃で30分間静置した後に外観を観察した。
〔評価基準〕
〇:透明を保ち安定である
△:沈殿物や分離は見られないが、濁りが生じる
×:沈殿物や分離が生じる
とし、〇を実用性のあるものとして判定した。
【0054】
(3)起泡性
〔試験方法〕
各供試洗浄剤組成物の3%希釈液を水道水を用いて作成し、外径28mmの100m比色管へ30m入れ10回強振した直後と2分後の液面から泡上面までの容量を比色管の目盛りより測定した。
〔評価基準〕
〇:強振直後に100m以上あり、2分後も変わらない
△:強振直後に60m以上、100m以下になり、2分後も変わらない
×:強振直後に60m以下、または2分後に泡上面が下がっている
とし、〇を実用性のあるものとして判定した
【0055】
(4)すすぎ性
〔試験方法〕
各供試洗浄剤組成物の3%希釈液を水道水を用いて作成し、外径28mmの100m比色管へ30m入れ10回強振した2分後に泡を比色管に残すように液体部分を流し捨て、泡の残った比色管に洗浄瓶を使用して水道水30gを流し入れ破泡量を比色管のメモリより測定する。水道水を30g入れた後、10回強振し2分間静置する。泡が残留していた場合には、泡を比色管に残すように液体部分を流し捨て、再び水道水30gを流し入れ破泡量を測定し、10回強振し2分間静置する。以下、泡がなくなるまで繰り返す。各すすぎ時の測定した破泡量を比べ最も多かった破泡量を最大破泡量とし、泡がなくなるまで水道水をいれた回数をすすぎ回数として測定する。各すすぎ時の破泡量と最大破泡量から破泡性を、すすぎ回数からすすぎ性を判定した。
〔評価基準〕
(4-1)破泡性
◎:最大破泡量が10m以上、且つ、すすぎ1回目の破泡量が3m以上
〇:最大破泡量が10m以上、且つ、すすぎ1回目の破泡量が3m未満
△:最大破泡量が3m以上、10m未満
×:最大破泡量が3m未満
とし、◎、〇、△を実用性のあるものと判定した。
(4-2)すすぎ回数
〇:すすぎ回数が6回以下
×:すすぎ回数が7回以上
とし、〇を実用性のあるものと判定した。
(4-1)と(4-2)両方ともに実用性のあるものを、すすぎ性として実用性のあるものと判定した。
【0056】
(5)白色付着物発生の有無
〔試験方法〕
各供試洗浄剤組成物の3%希釈液を水道水を用いて作成し、清浄な黒色プラスチック板に希釈液を0.5ml垂らし、40℃に調製したオーブンにて乾燥させた。乾燥後、試験片を水道水の水流で擦らずに約60秒間すすぎ、水分を風乾させ、黒色プラスチック板表面への白色付着物発生の有無を目視で評価判定した。
〔評価基準〕
○:白色付着物は発生しない
×:白色付着物が発生する
とし、○を実用性のあるものと判定した。
【0057】
(6)アルミニウム材質への影響性
〔試験方法〕
各供試洗浄剤組成物の3%希釈液を水道水を用いて作成し、4cm×5cmのアルミニウム試験片を各3%希釈液100mに全浸漬し、25℃で24時間後におけるアルミニウム試験片の表面状態を目視で観察し、以下の評価基準より判定した。
〔評価基準〕
〇:質量損失率が2.9%未満、且つ、光沢度の減少率が65%未満
△:質量損失率が2.9%未満、且つ、光沢度の減少率が65%以上
×:質量損失率が2.9%以上
とし、〇および△を実用性のあるものと判定した。
【0058】
〔(A)成分〕
・オレイン酸
製品名「POFAC 930」、
(Southern Acid Industries社製、有効成分100%)
・ラウリン酸
製品名「ラウリン酸98」、(ミヨシ油脂社製、有効成分100%)
〔比較例用脂肪酸〕
・ステアリン酸
製品名「粉末ステアリン酸さくら」、(日油社製、有効成分100%)
・ミリスチン酸
製品名「POFAC 1498」、
(Southern Acid Industries社製、
有効成分100%)
・ベヘニン酸
製品名「ルナック BA」、(花王社製、有効成分100%)
【0059】
〔(B)成分〕
・酢酸カルシウム
製品名「酢酸カルシウム1水和物」、(米山化学工業社製、有効成分98%)
・塩化カルシウム
製品名「粒状塩化カルシウム」、(トクヤマ社製、有効成分100%)
【0060】
〔(C)成分〕
(C-1)
・オクチルジメチルアミンオキサイド(C8AO)
製品名「ゲナミノックスOC」、
(クラリアントジャパン社製、有効成分30%)
(C-2)
・デシルジメチルアミンオキサイド(C10AO)
製品名「ゲナミノックスK-10」、
(クラリアントジャパン社製、有効成分29%)
・ラウリルジメチルアミンオキサイド(C12AO)
製品名「カデナックスDM12D-W(C)」、
(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、有効成分33%)
〔比較例用アミンオキサイド〕
・ミリスチルジメチルアミンオキサイド(C14AO)
製品名「カデナックスDM14-DN」、
(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、有効成分25%)
【0061】
〔(D)成分〕
・SAS(2級アルカンスルホン酸ナトリウム)
製品名「ウェルクリーンSAS93」、
(WeylChem Performance Products GmbH製、有効成分93%)
・LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸カリウム)
製品名「テイカパワーL121」(テイカ社製、有効成分96%)
水酸化カリウムで中和して供試。
【0062】
〔(F)成分〕
・水酸化カリウム
製品名「48%苛性カリ」、(AGC株式会社製、有効成分48%)
【0063】
〔(G)成分〕
・次亜塩素酸ナトリウム
製品名「低食塩次亜塩素酸ソーダ」、(南海化学社製、有効成分12%)
【0064】
〔(H)成分〕
・2-ホスホノブタン1,2,4-トリカルボン酸3カリウム
製品名「PBTC」、(Connect社製、有効成分50%)
水酸化カリウムで中和して供試。
【0065】
〔(I)成分〕
・メタキシレンスルホン酸ナトリウム
製品名「SXS-Y」、(北星興業社製、有効成分97%)
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
【表9】
【0075】
実施例1~27は、貯蔵安定性、希釈安定性、起泡量、すすぎ性、白色付着物発生の有無、およびアルミニウム材質への影響性の全ての項目において、実効性を有することがわかる。
【0076】
比較例1は、特許文献1にて開示された処方であり、比較例2は炭素原子数が8と14のアルキル基を有するアミンオキサイドを配合した処方であり、比較例3は炭素原子数が10のアルキル基を有するアミンオキサイドのみを配合した処方であるが、すすぎ時の破泡が見られず、すすぎ回数も多いためすすぎ性で十分な効果が得られていないことがわかる。比較例4~6では、脂肪酸の種類を変更しているが、貯蔵安定性と希釈安定性の両方で良好な結果が得られていないことがわかる。比較例7では、水溶性カルシウムを配合していない処方であり、アルミニウム材質へ影響を与えてしまうことがわかる。比較例8では、水溶性カルシウムのかわりに珪酸ナトリウムを配合している処方であり、アルミニウム材質への影響は少ないものの白色付着物が発生していることがわかる。比較例9では、(B)/(A)の値が大きくなるとすすぎ回数は少ないものの破泡がみられなくなることから、発泡洗浄後のすすぎにて泡に水をかけただけでは泡はきえず、結果としてすすぎに時間がかかってしまい、すすぎ時の作業効率が悪いことがわかる。比較例10では、脂肪酸の配合量を必要以上に増やしたところ、希釈安定性が悪化し、起泡量も十分ではなくなることがわかる。比較例11と12では、アニオン界面活性剤の配合量を必要以下に減らしたところ、泡の保持が十分ではなく、必要以上に増やしたところ、破泡がみられなくなり、すすぎ時の作業効率が悪いことがわかる。
【0077】
以上の結果より、実施例1~27の液体洗浄剤組成物は、貯蔵安定性、希釈液安定性に優れ、十分に起泡するとともに、すすぎ性が良好であり、被洗浄面に白化を生じることなくアルミニウム材質に対する腐食抑制に優れた液体洗浄剤組成物であると判断された。