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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/10 20060101AFI20240502BHJP
   A01B 63/106 20060101ALI20240502BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20240502BHJP
   A01D 34/835 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A01B63/10 A
A01B63/106
A01D34/64 H
A01D34/64 M
A01D34/835
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020122671
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019089
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】頭司 宏明
(72)【発明者】
【氏名】藤元 隆史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 謙二
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176154(JP,A)
【文献】特開平11-170904(JP,A)
【文献】特開2019-064542(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0176563(US,A1)
【文献】特開2017-135986(JP,A)
【文献】特開2001-275409(JP,A)
【文献】特開平09-154308(JP,A)
【文献】特開平08-242610(JP,A)
【文献】特開2000-072060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/00-63/12
A01D 34/64
A01D 34/835
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
進行方向に対して左右に一対で設けられ、畦上を走行する走行部と、
畦上を走行しながら作業を行う作業部と、
前記機体と前記走行部とを連結し、左右の前記走行部をそれぞれ独立に昇降動作させる昇降機構と、
自機の傾きを検知する傾き検知部と、
前記傾き検知部によって検知された傾きがしきい値以上になったときに前記昇降機構を制御する制御部と、
自機の走行速度を検知する速度検知部と、
を有し、
前記制御部は、前記傾き検知部によって検知された傾き及び前記速度検知部によって検知された速度に基づいて前記昇降機構の駆動速度を制御する農作業機。
【請求項2】
機体と、
進行方向に対して左右に一対で設けられ、畦上を走行する走行部と、
畦上を走行しながら作業を行う作業部と、
前記機体と前記走行部とを連結し、左右の前記走行部をそれぞれ独立に昇降動作させる昇降機構と
の形状を取得する形状取得部と、
記形状取得部によって取得された畦の形状に基づいて自機の傾きを予測し、前記昇降機構を制御する制御部と、
を有する農作業機。
【請求項3】
前記形状取得部は、自機に備えられ、自機の前方の畦の形状を検知する、請求項に記載の農作業機。
【請求項4】
前記形状取得部は、自機の位置情報が示す位置において、事前に取得された畦の形状に関する情報を情報処理装置から取得する、請求項に記載の農作業機。
【請求項5】
前記形状取得部は、自機の位置情報と前記位置情報が示す位置における前記昇降機構の制御履歴とに基づいて前記事前に取得された畦の形状に関する情報を取得する、請求項に記載の農作業機。
【請求項6】
前記作業部は草刈作業部又は搬送作業部を含む、請求項1乃至のいずれか一に記載の農作業機。
【請求項7】
前記制御部は、前記走行部及び前記作業部を制御し、
前記制御部による制御に応じて前記走行部により自走する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項8】
前記昇降機構は、前記走行部を前記機体から遠ざける方向に移動させつつ、進行方向とは逆方向に前記走行部を移動させる、請求項1乃至のいずれか一に記載の農作業機。
【請求項9】
前記昇降機構は、前記走行部の移動軌跡が進行方向に対して平行となるように、前記走行部を移動させるよう構成されており、
前記制御部は、左右の前記走行部のうち相対的に高い位置にある前記走行部側に前記走行部の進行方向を変えるように、相対的に低い位置にある前記走行部を後方に移動させる、又は左右の前記走行部の速度を制御する請求項1乃至のいずれか一に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦用に適した農作業機に関する。特に、畦上を好適に走行可能な農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畦の天面又は法面に生えた雑草等を除去するためには、定期的に畦の草刈り作業を行う必要があった。特許文献1には、無線通信による遠隔操作によって畦の上を走行しながら、天面及び法面の草刈り作業を行う草刈作業機が開示されている。特許文献1に記載された草刈作業機は、走行部に一対のクローラベルトを有しており、これら一対のクローラベルトを用いて畦の上を走行できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-157762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された草刈作業機は、進行方向に対して左右に一対で設けられたクローラベルトにより前後に移動するだけの構成であるため、例えば畦の天面に傾斜又は段差がある場合に、草刈作業機がバランスを崩しやすいという問題がある。草刈作業機がバランスを崩して傾くと、草刈作業機は、傾斜面を下方に向かって走行してしまい、畦に沿って走行することが困難となる。また、草刈作業機がバランスを崩した場合、軟弱地盤や崩れやすい畦上では、草刈作業機が畦上から転落して、機体の破損や作物への損害を生じさせる恐れもある。そのため、従来の草刈作業機では、機体が傾いた状態になると、その都度草刈作業機の方向を修正する操作が必要となっており、ユーザーに負担を強いるものだった。
【0005】
本発明の一実施形態の課題は、畦の上を安定して走行可能な畦用の農作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態における農作業機は、機体と、進行方向に対して左右に一対で設けられ、畦上を走行する走行部と、畦上を走行しながら作業を行う作業部と、前記機体と前記走行部とを連結し、左右の前記走行部をそれぞれ独立に昇降動作させるリンク機構と、自機の傾きを検知する傾き検知部と、前記傾き検知部によって検知された傾きがしきい値以上になったときに前記リンク機構を制御する制御部と、を有する。
【0007】
自機の走行速度を検知する速度検知部をさらに有し、前記制御部は、前記傾き検知部によって検知された傾き及び前記速度検知部によって検知された速度に基づいて前記リンク機構を制御してもよい。
【0008】
本発明の一実施形態における農作業機は、機体と、進行方向に対して左右に一対で設けられ、畦上を走行する走行部と、畦上を走行しながら作業を行う作業部と、前記機体と前記走行部とを連結し、左右の前記走行部をそれぞれ独立に昇降動作させるリンク機構と、自機の傾きを検知する傾き検知部と、畦の形状を取得する形状取得部と、前記傾き検知部によって検知された傾き及び前記形状取得部によって取得された畦の形状に基づいて前記リンク機構を制御する制御部と、を有する
【0009】
前記形状取得部は、自機に備えられ、自機の前方の畦の前記形状を検知してもよい。
【0010】
前記形状取得部は、自機の位置情報が示す位置において、事前に取得された畦の形状に関する情報を情報処理装置から取得してもよい。
【0011】
前記形状取得部は、自機の位置情報と前記位置情報が示す位置における前記リンク機構の制御履歴とに基づいて前記事前に取得された畦の形状に関する情報を取得してもよい。
【0012】
前記作業部は草刈作業部又は搬送作業部を含んでもよい。
【0013】
前記制御部は、前記走行部及び前記作業部を制御し、前記制御部による制御に応じて前記走行部により自走してもよい。
【0014】
前記リンク機構は、前記走行部を前記機体から遠ざける方向に移動させつつ、進行方向とは逆方向に前記走行部を移動させてもよい。
【0015】
前記リンク機構は、前記走行部の移動軌跡が、進行方向に対して平行となるように前記走行部を移動するよう構成されており、前記制御部により前記リンク機構を制御すると、前記走行部は、傾いた自機の左右の前記走行部のうち高い方の前記走行部側に進行方向を変えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、畦の上を安定して走行可能な畦用の農作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態の畦用草刈り機の構成を示す平面図である。
図2】一実施形態の畦用草刈り機の構成を示す左側面図である。
図3】一実施形態の畦用草刈り機の構成を示す背面図である。
図4】一実施形態の畦用草刈り機の構成を示す背面図である。
図5】一実施形態の畦用草刈り機の構成を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の畦用の農作業機について説明する。但し、本発明の畦用の農作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号又は同一の符号の後にアルファベットを付し、その繰り返しの説明は省略する。また、進行方向に対する左右の位置に同一又は類似の部材が設けられている場合、当該部材の符号の後にL(左側の部材)又はR(右側の部材)を付する。左右の部材を特に区別しない場合は、L及びRを省略して説明する。
【0019】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「上」は、畦用の農作業機が畦に対して作業を行いながら進行する状態において、畦から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は、「上」とは反対の方向を示す。「前」は、走行部に対して作業部が位置する方向を示し、「後」は、「前」とは反対の方向を示す。また、「左」又は「右」は、畦用の農作業機の「前」に対する「左」又は「右」を示す。
【0020】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、畦用の農作業機の各構成部位の左右方向の長さを「幅」と呼ぶ。また、平面視における畦用草刈り機の中心線(進行方向に平行で、かつ、畦用草刈り機の中心を通る線)を基準としたとき、相対的に、中心線に近い側を「内側」と呼び、中心線から遠い側を「外側」と呼ぶ。
【0021】
以下の実施形態では、農作業機としてリモートコントローラ(リモコン)式の畦用草刈り機を例示するが、この構成に限定されない。例えば、以下の実施形態に示す農作業機は、草刈り機以外に例えば畦の上を移動するトロッコのような搬送作業機など、畦上を走行しながら作業を行う畦用の農作業機であってもよい。なお、畦上とは、畦の天面及び法面の両方を指してもよく、いずれか一方を指してもよい。また、当該農作業機はリモコン式でなくてもよい。例えば、手押し式又は自走式の農作業機であってもよい。また、特に技術的な矛盾が生じない限り、異なる実施形態間の技術を組み合わせることができる。
【0022】
<第1実施形態>
[農作業機の構成]
本実施形態の農作業機100は、前進しながら畦の草刈り作業を行う草刈り機である。具体的には、リモコンにより遠隔制御され、畦の上を走行して草刈り作業を行う草刈り機である。図1は、第1実施形態の畦用草刈り機(農作業機100)の構成を示す平面図である。図2は、第1実施形態の畦用草刈り機(農作業機100)の構成を示す左側面図である。図3は、第1実施形態の畦用草刈り機(農作業機100)の構成を示す背面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施形態の農作業機100は、機体10、走行部20、作業部30、制御部40、第1リンク機構50、第2リンク機構60、検知部70、形状取得部80、及び位置情報取得部90を含む。機体10と走行部20とは第1リンク機構50によって連結される(図2参照)。機体10と作業部30とは第2リンク機構60によって連結される。形状取得部80及び位置情報取得部90は、下方が拡開した門型の取付部材85によって機体10に取り付けられている(図1ないし図3参照)。取付部材85は、機体10の前方(作業部30側)から上方に向かって延びている(図2参照)。形状取得部80は、取付部材85の上端部の下面側に配置されている。位置情報取得部90は、取付部材85の上端部の上面側に配置されている。
【0024】
機体10は、農作業機100の骨格をなすフレームである。機体10は、金属材料(例えば、鋼材、アルミニウム材)、繊維強化プラスチック(FRP)材料等を用いて構成することができるが、この例に限られるものではない。
【0025】
走行部20は、農作業機100の走行手段として機能する。図1及び図3に示すように、本実施形態の走行部20は、進行方向に対して左右に一対で設けられ、畦200上を走行する走行部20L及び20Rを有する。なお、本実施形態では走行部20としてクローラが用いられた構成を例示するが、クローラの代わりにタイヤが用いられてもよい。走行部20Lは、農作業機100の進行方向に向かって左側に設けられた走行手段であり、走行部20Rは、右側に設けられた走行手段である。なお、走行部20Rの構造は、走行部20Lと同じであるため、ここでは走行部20Lのみについて説明する。
【0026】
図2に示すように、走行部20Lは、クローラベルト21L、駆動輪22L、従動輪23L及びクローラフレーム24Lを含む。クローラベルト21Lは、駆動輪22L及び従動輪23Lに架け渡され、駆動輪22Lの回転に従って回転する。本実施形態において、クローラベルト21Lは、弾性部材(具体的にはゴム)で構成され、複数のラグ部(突出部)を有している。なお、クローラベルト21Lは金属部材であってもよい。また、駆動輪22Lと従動輪23Lとの間にクローラベルト21Lの脱離防止のためのガイドが設けられていてもよい。駆動輪22Lは、制御部40に設けられたバッテリ42を電源として駆動する駆動部45(図3参照)から伝達された動力により回転する。本実施形態では、駆動部45として、モータを用いる。駆動輪22Lの回転による動力は、クローラベルト21Lを介して従動輪23Lに伝達する。クローラフレーム24Lは、駆動輪22L及び従動輪23Lをそれぞれ回転可能に支持する。
【0027】
図3に示すように、クローラベルト21Lは、外側ラグ部21La、内側ラグ部21Lb、及びベルト部21Lcを有する。クローラベルト21Rもクローラベルト21Lと同様の構成を有する。換言すると、走行部20は、外側端部に配置された一対の外側ラグ部21La及び21Ra、並びに、一対の外側ラグ部21La及び21Raの間に配置された内側ラグ部21Lb及び21Rbを有する。外側ラグ部21Laの高さは、内側ラグ部21Lbの高さよりも高い。同様に、外側ラグ部21Raの高さは、内側ラグ部21Rbの高さよりも高い。つまり、本実施形態の走行部20は、内側から外側に向かって高さが高くなるように、高さの異なる少なくとも二種類のラグ部が設けられている。
【0028】
図3に示すように、外側ラグ部21La及び21Raは、それぞれ内側から外側に向かって徐々に高さが高くなる略台形形状を有している。すなわち、走行部20Lの外側ラグ部21La及び走行部20Rの外側ラグ部21Raが、それぞれ畦200の天面201と法面202との境界の形状に沿うように構成されている。なお、「畦200の・・・形状に沿う」とは、図3に示すように、凸状の畦の外形に合わせた凹状の空間が形成されるという意味であり、厳密に、畦の外形に一致又は相似する凹状の空間が形成されることまで限定するものではない。例えば、畦の外形は略台形状であるため、凹状の空間も畦の形状に合わせた略台形状となる。ただし、図3に示す例は、あくまで一例であって、外側ラグ部21La及び外側ラグ部21Raが、畦の形状に沿うことを必須とするものではない。
【0029】
図1及び図2に示すように、作業部30は、畦に生えた雑草等の草を刈る作業(草刈り作業)を行う草刈作業部として機能する。作業部30は、ケーシング31、刃部32及び駆動部33を含む。ケーシング31は、刃部32を覆う筐体であり、土、小石、草などの飛散を防ぐとともに、刃部32を固定するフレームとして機能する。刃部32は、複数の草刈り刃で構成された部位であり、複数の草刈り刃が回転することにより畦に生えた草を刈る。駆動部33は、刃部32を回転させるための動力を発生する部位である。本実施形態では、駆動部33としてモータを用い、駆動部33の電源として、制御部40に設けられたバッテリ42(図1参照)を用いる。なお、本実施形態では、農作業機100として、作業部30が草刈り機である構成を例示したが、作業部30として畦上(畦200の天面201及び法面202のいずれも含む)を走行しながら作業を行うその他の作業機が用いられてもよい。なお、当然のことながら、本農作業機100は、畦上以外の平地を走行しながら作業を行うことができる。また、本実施形態では、作業部30が畦200の天面201に対して草刈作業を行う構成を例示したが、本実施形態の作業部30に加えて又は本実施形態の作業部30に代えて、畦200の法面202に対して草刈作業を行う作業部を設ける構成としてもよい。
【0030】
図2に示すように、第1リンク機構50は、機体10と走行部20とを連結するように設けられ、機体10と走行部20との間の位置関係を相対的に変化(機体10に対して走行部20を離接させることで、走行部20を地面に対して昇降動作)させる機能を有する。第1リンク機構50Lは、農作業機100の進行方向に向かって左側のリンク機構であり、走行部20Lに連結される。第1リンク機構50R(図1及び図3参照)は、右側のリンク機構であり、走行部20Rに連結される。詳細は後述するが、第1リンク機構50L及び50Rはそれぞれ独立に制御され、走行部20L及び20Rをそれぞれ独立に昇降動作させる。
【0031】
第1リンク機構50Lは、リンクアーム51L、リンクアーム52L、及び電動シリンダ53Lを含む(図2参照)。第1リンク機構50Rは、リンクアーム51R、リンクアーム52R及び電動シリンダ53Rを含む(図1及び図2参照)。なお、第1リンク機構50Rの構造は、第1リンク機構50Lと同じであるため、以下では第1リンク機構50Lのみについて説明する。
【0032】
図2に示すように、第1リンク機構50Lにおいて、リンクアーム51Lは、一端(前端)がクローラフレーム24Lに回動可能に連結されたクローラ側アームと、クローラ側アームから屈曲部で上方に屈曲し、他端(後端)が電動シリンダ53Lに回動可能に連結されたシリンダ側アームと、を有している。電動シリンダ53Lは、機体10の後端に設けられた支持ブラケットに支持されており、機体10の上方後方側に配置されている。リンクアーム51Lは、屈曲部において機体10に回動可能に連結(支持)される。リンクアーム52Lは、リンクアーム51Lのクローラ側アームに対して平行かつ後方側に配置されており、一端(前端)がクローラフレーム24Lに連結され、他端(後端)が機体10に連結される。
【0033】
これにより、リンクアーム51L、リンクアーム52L、クローラフレーム24L、及び機体10によって平行リンク機構が構成される。したがって、電動シリンダ53Lを伸縮させて平行リンク機構を動作させると、リンクアーム51L及びリンクアーム52Lが機体に対してそれぞれ回動し、機体10に対して走行部20を昇降動作させることができるようになっている。すなわち、電動シリンダ53Lが伸長すると、リンクアーム51Lのシリンダ側アームが前方に回動すると共に、リンクアーム51Lのクローラ側アーム及びリンクアーム52Lが機体10に対して後方に向かって回動し、機体10と走行部20Lとが相対的に離間、すなわち、機体10に対して走行部20Lが(相対的に)下降する。一方、電動シリンダ53Lが収縮すると、リンクアーム51Lのシリンダ側アームが後方に回動すると共に、リンクアーム51Lのクローラ側アーム及びリンクアーム52Lが機体10に対して前方に向かって回動し、機体10と走行部20とが相対的に近接、すなわち、機体10に対して走行部20Lが(相対的に)上昇する。なお、平行リンク機構が動作する際に、上面から見たときの走行部20の移動軌跡は、走行部20の進行方向に対して平行である。本明細書において、走行部の移動軌跡という場合、上記のように農作業機100を上面から見たときの走行部20の移動軌跡を意味する。
【0034】
なお、上記のように、第1リンク機構50Lは、機体10に対して走行部20を離間(機体10に対して走行部20を相対的に下降)させるとき、リンクアーム51Lが回動するため、走行部20Lは機体10に対して後方に移動する。換言すると、農作業機100前進時、第1リンク機構50Lにより走行部20Lは進行方向とは逆方向に移動させられ、走行部20L(クローラベルト21L)の地面と接触する接地側には、後ろ向きの力が作用する。また、このとき、電動シリンダ53Lが伸長するものの、電動シリンダ53Rは動かないため、機体10には平面視時計回り(電動シリンダ53Lの位置する側とは逆の右回り)の力が作用する。この結果、機体10に対して走行部20を離間させるよう第1リンク機構50Lを動作させると、機体10及び走行部20Lの前側が農作業機100の中心側(電動シリンダ53Lの位置する側とは逆側、すなわち右側)を向くようになっている。
【0035】
機体10に対して走行部20を近接(機体10に対して走行部20を相対的に上昇)させるときには、第1リンク機構50Lにより電動シリンダ53Lを収縮させ、走行部20Lを前方に移動させる。走行部20Lを前方に移動させると、20L(クローラベルト21L)の地面と接触する側には、前向きの力が作用する。また、電動シリンダ53Lの収縮により、機体10には平面視反時計回り(電動シリンダ53Lの位置する側と同じ左回り)の力が作用する。これにより、機体10及び走行部20の前側は、農作業機100の外側(電動シリンダ53Lの位置する側と同じ側、すなわち左側)を向くようになっている。なお、本実施形態では、電動シリンダ53Lが最も収縮した状態(図2参照)を基準に動作制御されているが、電動シリンダ53Lが最も収縮した状態と最も伸長した状態との間の位置(例えば両者の中間の位置)、又は電動シリンダ53Lが最も伸長した状態を基準に動作制御を行うようにしてもよい。
【0036】
第2リンク機構60は、機体10と作業部30との間に設けられ、機体10と作業部30との間の位置関係を相対的に変化(作業部30を地面に対して昇降動作)させる機能を有する。第2リンク機構60は、リンクアーム61、リンクアーム62、作業部側ブラケット63、機体側ブラケット64、及び電動シリンダ65を含む。作業部側ブラケット63は、作業部30の後端に後方に向かい上側に張り出すように固定される。機体側ブラケット64は、機体10の前端に固定される。リンクアーム61は、一端が作業部側ブラケット63に連結され、他端が電動シリンダ65に連結される。また、リンクアーム61は、屈曲部を有し、当該屈曲部において機体側ブラケット64に回動可能に連結される。リンクアーム62は、一端が作業部側ブラケット63に連結され、他端が機体側ブラケット64に連結される。これにより、リンクアーム61、リンクアーム62、作業部側ブラケット63、及び機体側ブラケット64によって平行リンク機構が構成される。したがって、電動シリンダ65を伸縮させて平行リンク機構を動作させることにより、作業部30を昇降動作させることができる。
【0037】
検知部70は、傾き検知部71、速度検知部72、及び作業高検知部73を含む。傾き検知部71、速度検知部72、及び作業高検知部73は、後述する制御部40のカバー部材44に格納されている。なお、本実施形態では、検知部70は少なくとも傾き検知部71及び速度検知部72を備えていればよく、作業高検知部73が省略されてもよい。
【0038】
傾き検知部71は、農作業機100の進行方向に延びる軸を中心とした回動方向における農作業機100の傾きを検知する。換言すると、傾き検知部71は、農作業機100をその進行方向に見た場合(例えば農作業機100を後ろから見た場合)における農作業機100の傾きを検知する。具体的には、傾き検知部71は、主に重力の向きを基準とした農作業機100の傾きを検知する。傾き検知部71として、例えばジャイロと加速度計を搭載した慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いることができるが、農作業機100の傾きを検知することができるセンサであれば、その他のセンサを用いることができる。なお、傾き検知部71は、水平状態を基準として傾きを検知してもよく、水平から一定角度傾いた状態を基準として傾きを検知してもよい。また、傾き検知部71は、検知した傾きだけでなく、傾きを検知したときの角加速度を検知し、これらの値に基づいて傾きを評価してもよい。
【0039】
速度検知部72は、農作業機100の走行速度を検知する。速度検知部72は、駆動輪22L、従動輪23Lの角速度又は単位時間当たりの回転数に基づいて走行速度を検知してもよく、農作業機100の位置情報に基づいて走行速度を検知してもよい。
【0040】
作業高検知部73は、鉛直方向における走行部20に対する作業部30の高さを検知する。作業高検知部73として、第2リンク機構60の回動部に取り付けられるポテンショメータが用いられてもよく、電動シリンダ65に設けられるピストンロッドの位置センサが用いられてもよい。又は、作業高検知部73として、レーザ光などを用いた光センサが用いられてもよく、超音波センサが用いられてもよい。
【0041】
制御部40は、走行部20、作業部30、第1リンク機構50、及び第2リンク機構60を制御する機能を有する。制御部40は、走行部20及び作業部30を制御し、農作業機100を走行させながら農作業を行う。本実施形態の制御部40は、バッテリ42、コントローラ43、及びカバー部材44を含む。バッテリ42は、作業部30を駆動する駆動部33の電源、及び走行部20を駆動する駆動部45の電源として機能する。また、バッテリ42は、第1リンク機構50及び第2リンク機構60を動作させる電動シリンダ53L、53R、65の電源としても機能する。
【0042】
コントローラ43は、走行部20、作業部30、第1リンク機構50、及び第2リンク機構60を制御する中枢となる部位であり、例えば、演算装置、メモリ、及び通信回路等を備えた電子回路基板を有する。コントローラ43は、リモコン(図示せず)から取得した信号に基づく制御を実行する機能を有する。また、コントローラ43は、上記検知部70によって検知された情報、又は上記形状取得部80によって取得された畦200の形状に基づいて走行部20、作業部30、第1リンク機構50、及び第2リンク機構60の少なくともいずれか1つの制御を実行する。コントローラ43が、例えば農作業機100の傾き情報など、検知部70によって検知された情報に基づいて制御を実行する場合、コントローラ43にしきい値が設定されてもよい。この場合、コントローラ43は、例えば検知された農作業機100の傾きが所定のしきい値以上になった場合に上記の制御を実行する。コントローラ43は、電動シリンダ53L及び53Rをそれぞれ独立に制御することで、第1リンク機構50L及び50Rをそれぞれ独立に制御する。また、コントローラ43は、位置情報取得部90が取得した位置情報やサーバ等から取得した指令に基づく制御などの各種制御を実行する機能を有していてもよい。
【0043】
カバー部材44は、バッテリ42、コントローラ43、傾き検知部71、速度検知部72、及び作業高検知部73を保護する役割を有する。
【0044】
位置情報取得部90として、全球測位衛星システム(GNSS)を含む。位置情報取得部90は、農作業機100が走行している位置を示す位置情報を取得する。また、位置情報取得部90は、例えばサーバなどの外部の情報処理装置に対して各種情報を送受信する通信部(例えば、アンテナ)を有する。
【0045】
[コントローラ43の制御]
図4及び図5を用いて、コントローラ43の制御について説明する。図4及び図5は、第1実施形態の畦用草刈り機の構成を示す背面図である。例えば、図4に示すように、畦200の天面201の一部が崩れている場合、第1リンク機構50L及び50Rがそれぞれ独立して制御されておらず、走行部20Lと機体10との距離が走行部20Rと機体10との距離と同じだと、農作業機100が傾いてしまう。
【0046】
図4に示すような状態になった場合、傾き検知部71は農作業機100の右側が下方に傾いていること及びその傾斜角度を検知する。そして、コントローラ43は傾き検知部71によって検知された農作業機100の傾斜方向及び傾斜角度に基づいて、農作業機100の傾きを補正するように第1リンク機構50を制御する。より具体的には、コントローラ43では、農作業機100の傾斜角度に対して、第1リンク機構50の電動シリンダ53の伸び量が予め関連付けされて規定されており、コントローラ43は、傾き検知部71の検知結果に基づいて、所定の伸び量となるよう電動シリンダ53の駆動を制御する。図4の例の場合、右側の第1リンク機構50Rの電動シリンダ53Rを伸長させることでリンクアーム51R及び52Rを回動させ、右側の走行部20Rを機体10から遠ざける。その結果、図5に示すように農作業機100の傾きが補正される。本実施形態の農作業機100では、機体10の水平が保たれるように農作業機100の傾斜方向に基づいて左右の第1リンク機構50のどちらを動作させるかが決定され、農作業機100の傾斜角度に基づいて第1リンク機構50の動作量が決定される。
【0047】
なお、上記農作業機100の制御部40は、鉛直方向において、機体10が傾斜したときに下側に位置する側の第1リンク機構50を電動シリンダ53により駆動し、走行部20を後方に回動させて機体10と走行部20とを相対的に離間させることにより機体10の水平を保つように制御しているが、これに限定されるものではない。機体10が傾斜したとき、鉛直方向において、上側に位置する第1リンク機構50を電動シリンダ53により駆動し、走行部20を前方に回動させて機体10と走行部20とを相対的に近接させることにより機体10の水平を保つように制御することも当然に可能である。なお、本実施形態の構成によれば、上記どちらの制御を行っても、農作業機100は畦200の低い部分から高い部分に向かって上るよう走行するため、農作業機100が畦200から転落することを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、傾きが検知されたときの農作業機100の左右の走行部20のうち低い方の走行部20が下降しつつ後方に移動する。そのため、農作業機100の進行方向は、当該傾きを表す傾斜面を登る側、つまり傾いた農作業機100の左右の走行部20のうち高い方の走行部20側に変わる。その結果、走行部20は当該傾斜面の高い側に向かって走行する。ただし、農作業機100が傾いたときに農作業機100の進行方向を上記のように変える構成は、上記の構成に限定されない。例えば、走行部20が昇降する際に、走行部20が前後方向に移動しない又は農作業機100の進行方向に影響を与えるほどには前後方向に移動しない場合、走行部20の昇降動作に合わせて走行部20の走行速度が変化してもよい。例えば、走行部20L側が下方になるように農作業機100が傾いた場合、走行部20Lの下降動作に合わせて走行部20Lの走行速度が早くなるように制御してもよい。この場合、農作業機100が水平に近づくにつれて、走行部20Lの走行速度が遅くなり、走行部20Rと同じ走行速度になる。
【0049】
制御部40のコントローラ43に傾きのしきい値が設定されている場合、農作業機100の傾きがしきい値以上になった場合に、コントローラ43が第1リンク機構50を制御する。つまり、傾きのしきい値は、第1リンク機構50の動作要否を決定するものであり、コントローラ43は、農作業機100の傾きがしきい値以下の場合は、第1リンク機構50を制御しない。例えば、農作業機100の傾きがα°未満の場合、農作業機100が傾いてもコントローラ43は第1リンク機構50を制御しない。一方、農作業機100の傾きがα°以上の場合、コントローラ43は農作業機100の傾きを補正するように第1リンク機構50を制御する。上記の構成を換言すると、コントローラ43は、しきい値未満の農作業機100の傾きを許容して、傾きの補正をしない。
【0050】
ここで、農作業機100の走行速度が速いと傾斜角度が小さくても農作業機100が転倒しやすくなる。そこで、本実施形態では、農作業機100の走行速度に基づいて、第1リンク機構50(電動シリンダ)の動作(駆動速度)を制御している。例えば、コントローラ43は、農作業機100の傾きが検知された場合、農作業機100の走行速度が速くなるほど、第1リンク機構50をより機敏に動作させるべく電動シリンダを素早く伸縮制御する。なお、コントローラ43に、第1リンク機構50(電動シリンダ)の駆動速度と農作業機100の走行速度を関連付けさせた参照テーブルを記憶させておき、この参照テーブルに基づいて、農作業機100の走行速度によって第1リンク機構50の駆動速度を段階的に変化させることも可能である。
【0051】
また、上記傾きのしきい値が設定される場合には、第1リンク機構50の制御に代え、農作業機100の走行速度に基づいて、傾きのしきい値を変更するような構成とすることも可能である。この場合、農作業機100を走行させながら適宜傾きのしきい値を変更させ、農作業機100の走行速度が相対的に速い場合は、上記のしきい値を小さい値に設定する。例えば、農作業機100の走行速度が所定のしきい値を超えた場合、上記の傾きのしきい値をαからαよりも小さい値に変更する。なお、傾きのしきい値は、農作業機100の走行速度と比例させて連続的に変更するようにしてもよいし、コントローラ43に傾きのしきい値と農作業機100の走行速度を関連付けさせた参照テーブルを記憶させておき、この参照テーブルに基づいて、農作業機100の走行速度に対応する傾きのしきい値を段階的に変更するようにしてもよい。なお、上述した第1リンク機構50の駆動速度制御と傾きのしきい値変更による制御を組み合わせて行うことも当然に可能である。
【0052】
このように、コントローラ43は、傾き検知部71及び速度検知部72によって検知された農作業機100の傾き及び走行速度に基づいて第1リンク機構50を制御している。なお、上記の本実施形態では、農作業機100は少なくとも機体10、走行部20、作業部30、制御部40、第1リンク機構50、第2リンク機構60、及び検知部70を備えていればよく、形状取得部80及び位置情報取得部90が省略されてもよい。
【0053】
[変形例1]
変形例1に係るコントローラ43の制御について説明する。変形例1の農作業機100は、形状取得部80によって検知された農作業機100の前方の畦200の形状に基づいて、第1リンク機構50を制御する。
【0054】
図1及び図2に示すように、形状取得部80はセンサを有し、農作業機100の前方の畦200の形状を取得する。センサはカメラで構成され、形状取得部80は、カメラにより得られた画像データに基づいて畦200の形状を取得する。なお、カメラに代え、上記センサを、レーザ光などを用いた光センサや、超音波センサで構成することも可能である。この場合、畦の形状をより正確に把握するため、機体の左右方向含め複数センサを備えることが好ましい。なお、センサの配置位置は上記位置に限定されず、作業部30に設けることも可能である。
【0055】
例えば、コントローラ43は、上記の形状取得部80(センサ)によって検知された畦200の形状に合わせて第1リンク機構50の動作を制御する。例えば、畦200の形状が相対的に急峻であれば、その畦200の形状に合わせて電動シリンダ53を相対的に高速で動作させ、畦200の形状が相対的に緩やかであれば、その畦200の形状に合わせて電動シリンダ53を相対的に低速で動作させる。
【0056】
この場合、コントローラ43は、傾き検知部71が農作業機100の傾きを検知してから第1リンク機構50の制御を行ってもよく、農作業機100の傾きが検知される前に第1リンク機構50の制御を行ってもよい。後者の場合、コントローラ43は、形状取得部80によって検知された畦200の形状及び農作業機100の走行速度に基づいて、農作業機100が傾くタイミングを予測し、その予測に基づいて第1リンク機構50を制御してもよい。形状取得部80を用いた第1リンク機構50の制御は、上記の傾き検知部71及び速度検知部72を用いた第1リンク機構50の制御の代わりに行われてもよく、共に行われてもよい。
【0057】
[変形例2]
次に、変形例2に係るコントローラ43の制御について説明する。変形例2の農作業機100では、形状取得部80が、自機の位置情報が示す位置において、事前に取得された畦の形状に関する情報を情報処理装置から取得する。具体的には、農作業機100の位置情報取得部90は、農作業機100が現在走行している位置において事前に取得された畦200の形状に関する情報を外部の情報処理装置から受信する。事前に取得された畦の形状に関する情報は、例えば上記の形状取得部80によって取得されたものや、以下の様に第1リンク機構50の制御履歴など自機が事前に取得した情報であってもよく、その他の方法で取得した情報であってもよい。
【0058】
[変形例3]
次に、変形例3に係るコントローラ43の制御について説明する。変形例3の農作業機100は、作業部30によって作業が行われた畦200の形状を農作業機100の記憶装置に記憶する、又は外部の情報処理装置に送信する。農作業機100は、傾き検知部71によって検知された農作業機100の傾き及び第1リンク機構50の制御履歴によって、畦200の形状を計算することができる。このように計算された畦200の形状に関する情報は、位置情報取得部90によって取得された農作業機100の位置情報と関連付けられて農作業機100の記憶装置に記憶される、又は外部の情報処理装置に送信され、当該情報処理装置によって記憶される。変形例3の農作業機100では、過去の作業時に上記のようにして計算された畦200の形状又は制御履歴そのものに基づいてコントローラ43の制御を行う。
【0059】
[変形例4]
例えば、農作業機が畦用の搬送作業機の場合、農作業機は上記の草刈作業部(作業部30)の代わりに、例えばコンテナなど、搬送する物を載せるための搬送作業部を有していてもよい。
【0060】
[その他の変形例]
上記の農作業機100の傾きを補正する補正機能は、有効又は無効を設定することができる。当該補正機能を無効にした場合は上記の機能を実行させない。つまり、例えば、補正機能が無効の場合、図4に示す状態になった場合であっても、第1リンク機構50の制御は行われない。上記補正機能の有効又は無効の設定は、例えばコントローラ43を用いて行うことができる。ただし、当該設定は位置情報取得部90と通信可能な携帯通信端末やサーバなどの情報処理装置によって行われてもよい。
【0061】
電動シリンダ53及び65には、ピストンロッドの伸縮位置を示す位置センサが設けられていてもよい。この場合、例えば傾き検知部71は、ピストンロッドの位置が伸長状態又は収縮状態の限界に近づいていることを示すアラート機能を備えていてもよい。当該アラート機能によって、電動シリンダ53及び65の伸縮動作によって各々のシリンダストロークに余裕が無くなり、第1リンク機構50及び第2リンク機構60が制御不能になった場合、又はシリンダストロークの残りが僅かになり、第1リンク機構50及び第2リンク機構60がもう少しで制御不能になる場合、作業者への注意喚起、及び/又は、農作業機100の停止又は低速度化させる。
【0062】
また、農作業機100は、作業高検知部73によって検知された、走行部20に対する作業部30の鉛直方向の高さ(位置)に基づいて、第1リンク機構50を制御してもよい。この場合、第2リンク機構60が設けられていなくてもよく、第2リンク機構60の動作が停止されていてもよい。つまり、第2リンク機構60の代わりに第1リンク機構50によって、走行部20に対する作業部30の高さが調整されてもよい。作業高検知部73を用いた第1リンク機構50の制御は、上記の傾き検知部71及び速度検知部72を用いた第1リンク機構50の制御、及び/又は、形状検知部74を用いた第1リンク機構50の制御の代わりに行われてもよく、共に行われてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、リモートコントローラによる制御に基づいて走行する草刈り機を例示したが、この例に限られるものではない。例えば、本実施形態の農作業機の構成は、人が操作するタイプの草刈り機に対しても適用可能である。又は、本実施形態の農作業機の構成は、センサ情報、位置情報等に基づいて自己の走行経路を自動制御する自走式の農作業機に対しても適用可能である。このような農作業機は、無人走行となる場合が多いため、本実施形態の構成により畦の上を安定に移動できることは大きなメリットである。
【0064】
また、本実施形態では、走行部20の駆動輪22Lを駆動するための駆動部45の動力源や、作業部30の刃部32を回転させるための動力源として、駆動部33(具体的には、モータ)を使用する例を示した。しかし、この例に限らず、これら駆動部の動力源として、エンジンを用いることも可能である。例えば、農作業機100に対してエンジンを搭載し、エンジンから出力された動力を、ベルト等を介して駆動輪22Lや刃部32へ伝達することが可能である。
【0065】
また、刃部32の動力源として搭載したエンジンを発電機として使用することにより、バッテリ42の電力消費分を蓄電することが可能である。具体的には、ベルト等を介してオルタネータにエンジンの動力を伝達し、オルタネータによって動力を電気エネルギーに変換してバッテリ42に蓄電することができる。
【0066】
さらに、本変形例では、刃部32を回転させる動力源としてエンジンを用いる例を示したが、単に、発電機としてエンジンを用いることも可能である。すなわち、図1に示した農作業機100のように、バッテリ42を電源として、駆動部33により刃部32を駆動し、駆動部45により走行部20を駆動しつつ、バッテリ42の蓄電用に別途エンジンを使用することも可能である。この場合、小型のエンジンを搭載するだけで足りるため、農作業機の小型化を図りつつ、大出力のバッテリを用いることができる。
【0067】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は前述の本実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、本実施形態(変形例を含む)を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、前述した各機能は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各機能に共通する技術事項については、明示の記載がなくても本実施形態に含まれる。
【0068】
前述した本実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0069】
10:機体、 20:走行部、 21:クローラベルト、 21a:外側ラグ部、 21b:内側ラグ部、 21c:ベルト部、 22:駆動輪、 23:従動輪、 24:クローラフレーム、 30:作業部、 31:ケーシング、 32:刃部、 33:駆動部、 40:制御部、 42:バッテリ、 43:コントローラ、 44:カバー部材、 45:駆動部、 50:第1リンク機構、 51:リンクアーム、 52:リンクアーム、 53:電動シリンダ、 60:第2リンク機構、 61:リンクアーム、 62:リンクアーム、 63:作業部側ブラケット、 64:機体側ブラケット、 65:電動シリンダ、 70:検知部、 71:傾き検知部、 72:速度検知部、 73:作業高検知部、 80:形状取得部、 90:位置情報取得部、 100:農作業機、 200:畦、 201:天面、 202:法面
図1
図2
図3
図4
図5