(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】スマートリング
(51)【国際特許分類】
G08C 17/00 20060101AFI20240502BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20240502BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20240502BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240502BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240502BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G08C17/00 Z
A61B5/01 100
A61B5/1455
A61B5/11 200
A61B5/00 B
G08C19/00 V
(21)【出願番号】P 2023204988
(22)【出願日】2023-12-04
【審査請求日】2023-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523458531
【氏名又は名称】WhiteLab株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147393
【氏名又は名称】堀江 一基
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英之
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-158864(JP,A)
【文献】特表2017-506376(JP,A)
【文献】特開2021-52553(JP,A)
【文献】特開2021-124915(JP,A)
【文献】特許第6803076(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00 - 25/04
A61B 5/00 - 5/0538
A61B 5/1455
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング内周の少なくとも一部を構成しており装着者の指の皮膚に接触する接触部を介して体温が伝わり
、半導体の熱励起電荷を用いる半導体増感型熱利用発電により発電し
、単位時間当たりの発電量が略一定である熱発電素子と、
前記熱発電素子が発電した電気を蓄える蓄電部と、
前記装着者の身体活動に関する情報を取得するセンサ部と、
前記センサ部が取得した情報を送信する送信部と、
前記蓄電部に蓄えられる電気を用いて、前記センサ部および前記送信部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記蓄電部に蓄えられる電気量が所定値を超えたことを検知し、前記センサ部および前記送信部を
周期的に動作させるスマートリング。
【請求項2】
前記送信部は、情報の送信のみを行い、受信を行わない請求項1に記載のスマートリング。
【請求項3】
前記制御部は、前記センサ部および前記送信部を動作させたのち、前記蓄電部に蓄えられる電気量が所定値を超えたことを検知するまでの間、前記センサ部および前記送信部に給電しない請求項1に記載のスマートリング。
【請求項4】
前記蓄電部はコンデンサである請求項1に記載のスマートリング。
【請求項5】
前記制御部は、前記蓄電部に蓄える電気量が、前記センサ部による情報の取得および前記送信部による情報の送信を含む一連の動作を行うことができる第1の値を超えたことを検知し、前記センサ部および前記送信部に前記一連の動作を行わせる請求項1に記載のスマートリング。
【請求項6】
前記センサ部は、体温を測定する体温センサ部と、体の動きを測定する体動センサ部と、血中酸素飽和度を測定するSpO
2センサ部との少なくとも一つを有する請求項1に記載のスマートリング。
【請求項7】
前記熱発電素子が発電し前記蓄電部が蓄える電気を所定の電圧値に変換する電圧変換部を有し、前記電圧変換部は、第1の電圧を出力する第1電圧変換部と、第1の電圧より低い第2の電圧を出力する第2電圧変換部と、を有する請求項1に記載のスマートリング。
【請求項8】
前記制御部を構成する第1のICは、前記送信部を構成する第2のICとは別体である請求項1に記載のスマートリング。
【請求項9】
前記センサ部が少なくとも実装される基板および前記熱発電素子の外周側の少なくとも一部を覆う固体断熱材部をさらに有する請求項1に記載のスマートリング。
【請求項10】
前記制御部および前記送信部が少なくとも実装される基板を有し、前記基板は半径方向に重なる3層以上の多層構造を有し、
前記蓄電部は、前記基板において最も外周側に位置する最外層と、最も内周側に位置する最内層の間に配置される請求項1に記載のスマートリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体に装着して用い、通信機能を有する指輪型のスマートリングに関する。
【背景技術】
【0002】
身体に装着して用い、装着者の体温や血中酸素濃度、体の動きなどを測定し、測定結果をスマートフォンなどに通信する各種のスマートデバイスが提案されている。たとえば、手首に装着する時計型のスマートウォッチとしては、多種の機能を有するものが提案されている。
【0003】
一方、スマートウォッチなどのスマートデバイスの課題として、外部からの給電が必要であることが挙げられる。商用電源や外部バッテリーなどに接続して充電している時間は、スマートデバイスを装着者から外す必要があったり、装着者の移動範囲を制限したりする問題がある。このような課題を解決する方法の一つとして、装着者の熱や装着者の動きによって発電する発電部を有する指輪型健康状態モニタリングデバイスが提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/123216号公報
【文献】国際公開第2016/123206号公報
【文献】特許第6803076号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、指輪型のスマートリングのような小型のデバイスに搭載する発電部で発電可能な発電量には限りがある。そのため、従来の指輪型のスマートリングでは、各部の制御や通信等に必要な電気エネルギーが発電量に対して大きすぎ、外部から給電をせずに持続的に動作させることが難しいという課題を有する。
【0006】
そこで、本発明は、外部から給電をせずに持続的に動作させることが可能なスマートリングを、熱発電素子を用いて実現する技術に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスマートリングは、
リング内周の少なくとも一部を構成しており装着者の指の皮膚に接触する接触部を介して体温が伝わり発電する熱発電素子と、
前記熱発電素子が発電した電気を蓄える蓄電部と、
前記装着者の身体活動に関する情報を取得するセンサ部と、
前記センサ部が取得した情報を送信する送信部と、
前記蓄電部に蓄えられる電気を用いて、前記センサ部および前記送信部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記蓄電部に蓄えられる電気量が所定値を超えたことを検知し、前記センサ部および前記送信部を動作させる。
【0008】
本発明に係るスマートリングは、接触部を介して体温が伝わり発電する熱発電素子を有しており、熱源である体温はほぼ一定であり、指輪型であるため皮膚と接触部との接触面積もほぼ変動せず、かつ、常時装着していても邪魔にならない。そのため、このようなスマートリングでは、継続的かつ安定的な発電が可能である。また、スマートリングの制御部は、蓄電部に蓄える電気量が所定値を超えたことを検知してセンサ部や送信部を動作させる。このようなスマートリングでは、センサ部や送信部の動作時以外は、制御部、通信部およびセンサ部の動作について、制御部が蓄電部の電気量を検知できれば足りるため、各部の制御や通信等に必要な電気エネルギーを低減し、外部から給電をせずに持続的に動作することが可能である。
【0009】
また、たとえば、前記送信部は、情報の送信のみを行い、受信を行わないものであってもよい。
【0010】
スマートリング等に備えられる送信部としては、受信部を兼ねるものを採用することも考えられるが、情報の送信のみを行い、受信を行わないものとすることにより、回路構成をシンプルにして小型化・低消費電力化することができる。また、送信機能のみを行うことにより、このような送信部を用いるスマートリングは、受信待機時の電力消費がなく、また、受信待機のON・OFFを切り換えるスイッチも必要ないため、動作に必要な電気エネルギーを低減できる。
【0011】
また、たとえば、前記制御部は、前記センサ部および前記送信部を動作させたのち、前記蓄電部に蓄えられる電気量が所定値を超えたことを検知するまでの間、前記センサ部および前記送信部に給電しないものであってもよい。
【0012】
このような制御部を有するスマートリングは、センサ部や送信部の動作時以外の電力消費を低減し、外部から給電をせずに持続的に動作することが可能である。
【0013】
また、たとえば、前記蓄電部はコンデンサであってもよい。
【0014】
蓄電部を、電解コンデンサ、セラミックコンデンサ、電気二重層キャパシタなどのコンデンサとすることは、化学変化による充電式電池を用いる場合にくらべて、スマートリング全体としての小型化・省電力化に関して有利である。
【0015】
また、たとえば、前記制御部は、前記蓄電部に蓄える電気量が、前記センサ部による情報の取得および前記送信部による情報の送信を含む一連の動作を行うことができる第1の値を超えたことを検知し、前記センサ部および前記送信部に前記一連の動作を行わせるものであってもよい。
【0016】
制御部が、電気量が第1の値を超えたことを検知して一連の動作を行わせることにより、スマートリング内に情報を記憶しておく必要がないため、小型化・省電力化に関して有利である。また、制御部による検知および制御を、センサ部と送信部とをまとめて行うことにより、制御部の構成をシンプルにすることができる。
【0017】
また、たとえば、前記センサ部は、体温を測定する体温センサ部と、体の動きを測定する体動センサ部と、血中酸素飽和度を測定するSpO2センサ部との少なくとも一つを有してもよい。
【0018】
スマートリングが有するセンサ部としては、特に限定されないが、体温センサ部や体動センサ部やSpO2センサ部が、指輪型のスマートリングに搭載するセンサ部として好適である。
【0019】
また、たとえば、前記熱発電素子が発電し前記蓄電部が蓄える電気を所定の電圧値に変換する電圧変換部を有し、前記電圧変換部は、第1の電圧を出力する第1電圧変換部と、第1の電圧より低い第2の電圧を出力する第2電圧変換部と、を有してもよい。
【0020】
このようなスマートリングでは、高い電圧が必要な部分には第1の電力を供給して動作させるとともに、低い電圧で動作可能な部分については、第2の電圧を供給することで、消費電力を低減することができる。
【0021】
また、たとえば、前記制御部を構成する第1のICは、前記送信部を構成する第2のICとは別体であってもよい。
【0022】
送信部と制御部とを別のICとすることで、送信部および制御部をシンプルで小型の構成にしてリング状のケースに収納しやすくするとともに、発熱部分を分散することにより、安定した効率的な動作が可能である。また、制御部のICを独立させることで、送信部、センサ部および蓄電部を包括的に制御するものとして制御部を設計しやすい利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るスマートリングの外観図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すスマートリングの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すスマートリングの概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すスマートリングで採用する回路の一例を示す概念図である。
【
図5】
図5は、蓄電部の電気量の時間変化を表す概念図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るスマートリングで採用する回路の一例を示す概念図である。
【
図7】
図7は、第1変形例に係るスマートリングを、リングの軸方向から見た模式的な外観図である。
【
図8】
図8は、第2変形例に係るスマートリングにおけるリングの半径方向に沿う方向の断面を示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、第3変形例に係るスマートリングに用いる基板の断面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態に係るスマートリング10の外観図である。
図1に示すように、スマートリング10は、円環状の外形状を有しており、たとえば、リング内周10aに、人の手のいずれかの指を通して装着して使用する。リングの内径は10.0~30.0mm程度、リングの幅(軸方向の長さ)は2.0~20mm程度、リングの厚み(半径方向の幅)は1.0~8.0mm程度である。
【0025】
図2は、
図1に示すスマートリング10の分解斜視図である。スマートリング10は、外ケース12、基板14、熱発電素子20、内ケース18などを有する。スマートリング10の外ケース12は、円環をなすリング形状を有する。外ケース12は、外ケース12の内周側に基板14や熱発電素子20等を収納できるように、軸方向の両端に内径側へ突出する縁が形成されている。
【0026】
基板14は、フレキシブルプリント基板(FPC)や、リジット基板などで構成される。基板14には、後述する熱発電素子20が接続される他、蓄電部30、センサ部40としての体温センサ部41、制御部50、電圧変換部60などが実装されている。基板14は、表裏両面に実装可能であることが、小型化および各種ICを装着者の皮膚72(
図3参照)側と、皮膚72側とは反対側の外ケース12側とに配置できる点などから好ましいが、特に限定されない。
【0027】
熱発電素子20は、装着者の体温が伝わることにより発電する。熱発電素子20は、半導体の熱励起電荷を用いるもの(「半導体増感型熱利用発電」とも言う。)や、導体や半導体のゼーベック効果を利用したものなどが挙げられるが、特に限定されない。熱発電素子20は、装着者の指の皮膚72に接触する接触部22を介して熱が伝わり発電する。
図1に示すように、接触部22はスマートリング10のリング内周10aの少なくとも一部を構成しており、装着者の指の皮膚72に接触する(
図3参照)。接触部22は、たとえば、熱発電素子20の半導体等に効率的に熱を伝えられるように、熱伝導性のよい金属等で構成することができる。
【0028】
内ケース18は、Cリング状の外形状を有しており、スマートリング10のリング内周10aの少なくとも一部を構成する。内ケース18は、外ケース12との間に基板14を収納するとともに、リングの途切れ部分から接触部22を露出させる。また、内ケース18は、体温センサ部41の検出部41aを、スマートリング10のリング内周10aに露出させる貫通孔が形成されている。
【0029】
ただし、内ケース18としては、
図2にしめすようなCリング状のもののみには限定されず、外ケース12と同様に円環状の外形状を有していてもよい。この場合、内ケース18自体が、熱発電素子20の接触部22であってもよく、このような態様も、接触部22の皮膚72との接触面積を広げる観点から好ましい。
【0030】
図3は、
図1に示すスマートリング10の概略構成を示すブロック図である。また、
図4は、
図1に示すスマートリング10で採用する回路の一例を示す概念図である。
図3に示すように、スマートリング10は、熱発電素子20が発電した電気を蓄える蓄電部30を有する。熱発電素子20が発電した電気は、蓄電部30に送られ、蓄電部30に溜められる。蓄電部30は、
図2に示す基板14に実装されている。
【0031】
図4に示す例では、蓄電部30はコンデンサであり、蓄電部30を、電解コンデンサ、セラミックコンデンサ、電気二重層キャパシタなどのコンデンサとすることは、スマートリング10の小型化・省電力化に関して有利である。ただし、蓄電部30としてはコンデンサのみには限定されず、化学変化による充電式電池を用いてもよい。
【0032】
また、
図3には示されていないが、スマートリング10は、熱発電素子20で発電した電気を蓄電部30に溜める際や、蓄電部30で溜めた電気を制御部50等に送る際に、電気を所定電圧に変換するDCーDCコンバータなど(フライバックコンバータ76や電圧変換部60等参照)を有していてもよい。
図4に示す例では、スマートリング10には、熱発電素子20と蓄電部30との間、より具体的には熱発電素子20と電圧変換部60との間に、フライバックコンバータ76が設けられている。フライバックコンバータ76は、熱発電素子20の発電した電気を所定の電圧まで昇圧して、電圧変換部60や蓄電部30に送ることができる。
【0033】
また、
図4に示す例では、スマートリング10には、熱発電素子20と蓄電部30との間、より具体的にはフライバックコンバータ76と蓄電部30との間に、電圧変換部60が設けられている。電圧変換部60は、熱発電素子20が発電し蓄電部30が蓄える電気を所定の電圧値に変換する。
図4に示すように、電圧変換部60は、蓄電部30で溜まった電気を所定の電圧値(VSYS)に変換して出力する。電圧変換部60によって出力される所定の電圧値(VSYS)の電気は、制御部50や、送信部80や、体温センサ部41の動作に用いられる。
【0034】
図3に示すセンサ部40は、後述する制御部50からの制御を受けて動作し、スマートリング10の装着者の身体活動に関する情報78を取得する。制御部50は、たとえば、センサ部40へ給電することによりセンサ部40を動作させ、また、センサ部40への給電を停止することでセンサ部40を動作させないようにすることができる。
【0035】
図4に示す例では、センサ部40として装着者の体温を測定する体温センサ部41を有する。体温センサ部41は、たとえば、皮膚の表面温度を抵抗変化等により検出するサーミスタを有するものや、皮膚表面から生じる赤外線を集光して温度を検出するものなどが挙げられる。センサ部40は、制御部50から給電されると、装着者の体温に関する情報78を取得し、取得した情報78を直接または制御部50を介して送信部80に伝える。
【0036】
スマートリング10が有するセンサ部40としては、
図4に示す体温センサ部41のみには限定されず、体の動きを測定する体動センサ部や、血中酸素飽和度を測定するSpO
2センサ部など、装着者の身体活動に関する各種の情報を取得できるセンサを採用可能である(
図6参照)。また、センサ部40は、装着者の身体活動に関する1種類の情報を取得するものであってもよいが、複数のセンサ部を組み合わせ、装着者の身体活動に関する複数種類の情報を取得可能であってもよい。
【0037】
図3に示す送信部80は、後述する制御部50からの制御を受けて動作し、センサ部40が取得した情報78を送信する。送信部80は、たとえばBLEモジュール等で構成される。制御部50は、たとえば、送信部80へ給電することにより送信部80を動作させ、また、送信部80への給電を停止することで送信部80を動作させないようにすることができる。
【0038】
送信部80は、たとえば、情報78の送信先である外部機器に対する所定の通信プロトコルを確立し、センサ部40が取得した情報78を所定の周波数帯の信号に変換し、外部機器に対して情報78を送信する。スマートリング10が情報78を送信する外部機器としては、たとえばスマートフォンのような携帯型情報端末や、パーソナルコンピュータや、スマートリング専用の受信端末などが挙げられるが、特に限定されない。また、送信部80としては、たとえばBluetooh(登録商標)等として規格化される2.4GHz帯で情報78を送信するものや、Wi-fi(登録商標)等として規格化される2.4GHz帯、5GHz帯、60GHz帯で情報78を送信するものが挙げられるが、特に限定されない。
【0039】
また、
図2に示すように、制御部50を構成する第1のICと、送信部80を構成する第2のICとは別体となっており、基板14に対して個別に実装されている。すなわち、送信部80を制御する制御部50を、送信部80自体とは別体のICとしている。このような構成とすることで、送信部80および制御部50をシンプルで小型の構成にして、リング状のケースに収納しやすくするとともに、発熱部分を分散することにより、安定した効率的な動作が可能となる。また、制御部50のICをセンサ部40や送信部80から独立させることで、送信部80、センサ部40および蓄電部30を包括的かつ効率的に制御する制御部50を実現できる。
【0040】
また、送信部80は、情報74の送信のみを行い、送信部80およびスマートリング10の他の部分は、無線通信による情報の受信を行わないものであることが、スマートリング10の電力消費を低減し、持続的な動作を可能とする発電量を低減する観点から好ましい。ただし、送信部80は、情報の送受信機能を有していてもよい。なお、制御部50、送信部80およびセンサ部40は、モジュール化されていてもよい。
【0041】
図3に示す制御部50は、蓄電部30に蓄えられる電気を用いて、センサ部40および送信部80を制御する。制御部50は、マイクロコントローラ等の制御回路で構成される。制御部50は、蓄電部30に蓄えられる電気量が所定値を超えたことを検知し、センサ部40および送信部80を動作させることができる。
【0042】
図4に示すように、蓄電部30に蓄えられる電気は、電圧変換部60により所定の電圧値VSYSに変換され、制御部50、センサ部40(体温センサ部41)および送信部80に給電されるようになっている。ただし、センサ部40および送信部80への給電および給電停止の切り換えは、制御部50によって制御される。
【0043】
たとえば、制御部50は、センサ部40および送信部80を動作させたのち、蓄電部30に蓄えられる電気量が所定値を超えたことを検知するまでの間、センサ部40および送信部80に給電しないように制御することができる。
図5は、スマートリング10における制御部50による制御の一例を表したものであり、蓄電部30が蓄える電気量の時間変化を示すグラフである。
【0044】
図5に示すt0~t1、t2~t3、t4~t5の間、
図3に示す蓄電部30が蓄える電気量は、所定の値Q1を超えていない。この間、
図4に示す制御部50は、センサ部40および送信部80への給電を停止しており、センサ部40の検知動作は行われず、送信部80による情報の送信も行われない。なお、制御部50は、
図4に示す蓄電部30を構成するコンデンサの電圧(電位差)VSTRG等により、蓄電部30が蓄える電気量を検知することができる。
【0045】
また、スマートリング10では、熱源である体温はほぼ一定であり、指輪であるため皮膚と接触部22との接触面積もほぼ変動しないので、熱発電素子20による単位時間当たりの発電量は略一定である。また、上述したように、スマートリング10での電力消費は、制御部50によって低く抑えられている。したがって、t0~t1、t2~t3、t4~t5の間、蓄電部30が蓄える電気量は、略一定のペースで増加する(蓄電時間)。
【0046】
次に、蓄電部30が蓄える電気量が増加して所定の値Q1を超えると、これを制御部50が、コンデンサの電圧VSTRGの変化から検知する(
図5のt1、t3、t5)。蓄電部30が蓄える電気量が所定の値Q1を超えたことを検知した制御部50は、センサ部40および送信部80への給電を開始し、センサ部40に装着者の身体活動に関する情報を取得させ、さらに、取得した情報を送信部80に送信させる。
【0047】
センサ部40による情報の取得および送信部80による情報の送信が終了すると、制御部50は、センサ部40および送信部80への給電を停止する(
図5のt2、t4、t6)。センサ部40と送信部80が動作しているt1~t2、t3~t4、t5~t6の間、蓄電部30の電気量は、これらの動作により消費されて減少する(検出・送信時間)。
【0048】
ここで、センサ部40による情報の取得と、送信部80による情報の送信に必要な電気量(
図5におけるQ1ーQ0)は予め把握しておくことができる。したがって、制御部50が検知する所定の値Q1は、蓄電部30が蓄える電気量がセンサ部40による情報の取得および送信部80による情報の送信を含む一連の動作を行うことができる第1の値(
図5におけるQ1ーQ0)とすることができる。
【0049】
このように、制御部50が、センサ部40による情報の取得および送信部80による情報の送信を含む一連の動作を連続して行わせるように制御することで、スマートリング10内に情報を記憶しておく必要がないため、小型化・省電力化に関して有利である。また、
図4に示すような構成であれば、制御部50が検知する所定の値Q1は、センサ部40および送信部80の一連の動作を連続して行うための1つの値で足り、検知後の制御も1パターンで足りるため、制御部50の回路を単純化することができる。
【0050】
また、
図5に示すように、制御部50は、たとえ時間に関する情報を取得しなくても、蓄電部30が蓄える電気量が所定の値Q1を超えたことを検知する度に、センサ部40および送信部80による一連の動作を周期的に行うことができる。したがって、このようなスマートリング10では、時間情報を取得できる振動素子などを常時動作させなくても、熱発電素子による発電によって蓄電部30の電気量が時間に略比例して増加する性質を用いて、周期的な情報の取得および送信を行うことができるため、消費電力の抑制および小型化の観点で効果的である。ただし、スマートリング10の制御部50は、時間情報を取得できるタイマー等を用いて動作するものであってもかまわない。
【0051】
上述のように、スマートリング10は、接触部22を介して体温が伝わり発電する熱発電素子20を有しており、熱源である体温はほぼ一定であり、指輪型であるため皮膚72と接触部22との接触面積もほぼ変動せず、かつ、常時装着していても邪魔にならない。また、スマートリング10の制御部50は、蓄電部30に蓄える電気量が所定の値Q1を超えたことを検知してセンサ部40や送信部80を動作させる。このようなスマートリング10では、センサ部40や送信部80の動作時以外は、制御部50が蓄電部30の電気量を検知できれば足りるため、各部の制御や通信等に必要な電気エネルギーを低減し、外部から給電をせずに持続的に動作することが可能である。
【0052】
また、スマートリング10では、時間計測素子や受信部を省略したりすることにより、特に制御部50および送信部80についてシンプルに構成することで、小型化・低消費電力化することができる。
【0053】
図6は、本発明の第2実施形態に係るスマートリング110で採用する回路の一例を示す概念図である。第2実施形態に係るスマートリング110は、センサ部140が体温センサ部41に加えて体動センサ部142およびSpO
2センサ部143を有する点や、電圧変換部160が第1電圧変換部161と第2電圧変換部162を有する点で、
図4に示すスマートリング10とは異なるが、その他の点ではスマートリング10と同様である。スマートリング110の説明では、スマートリング10との相違点を中心に行い、スマートリング10との共通点については説明を省略する。
【0054】
図6に示すように、スマートリング110は、センサ部140が、
図4と同様の体温センサ部41に加えて、体動センサ部142およびSpO
2センサ部143を有する。体動センサ部142およびSpO
2センサ部143も、体温センサ部41と同様に、制御部50が給電・給電停止を切り換えることにより、制御部50により制御される。
【0055】
体動センサ部142は、ジャイロセンサ等を有しており、装着者の体の動きを検出する。SpO
2センサ部143は、LEDによる発光部と、光電変換素子などによる受光部を有しており、装着者の血中酸素飽和度(SpO
2)を検出する。体動センサ部142およびSpO
2センサ部143で取得された装着者の身体活動に関する各種の情報は、体温センサ部41で取得された情報78(
図3参照)と同様に、送信部80に伝えられる。送信部80は、
図4に示す送信部80と同様に制御部50によって制御され、センサ部140の各部分で取得された情報を、外部機器に送信する。
【0056】
図6に示すように、スマートリング110の蓄電部130は、並列接続した複数(
図6では3つ)のコンデンサにより構成される。蓄電部130を構成するコンデンサの数や、蓄電部130の静電容量については、センサ部140等の構成により適宜変更することができる。
【0057】
スマートリング110の電圧変換部160は、第1電圧変換部161と第2電圧変換部162とを有する。電圧変換部160は、
図4に示す電圧変換部60と同様に、熱発電素子20が発電し蓄電部130が蓄える電気を、所定の電圧値に変換する。
図6に示すように、電圧変換部160の第1電圧変換部161は第1の電圧VSYSを出力し、第2電圧変換部162は、第1の電圧VSYSより低い第2の電圧1V8を出力する。第1電圧変換部161および第2電圧変換部162は、DCーDCコンバータ等で構成される。
【0058】
第1の電圧VSYSは、比較的高い電圧を必要とする制御部50、送信部80およびSpO
2センサ部143の一部の動作に用いられ、第2の電圧1V8は、比較的低い電圧で動作する体温センサ部41、体動センサ部142およびSpO
2センサ部143の他の一部の動作に用いられる。スマートリング110の制御部50は、
図4に示す制御部50と同様に、蓄電部130に蓄えられる電気量が所定値を超えたことを検知し、体温センサ部41、体動センサ部142およびSpO
2センサ部153を含むセンサ部140と、送信部80とを動作させることができる。
【0059】
制御部50は、たとえば、体温センサ部41、体動センサ部142およびSpO2センサ部143による複数の異なる情報の取得動作と、これら複数の異なる情報の送信部80による送信動作を全て行うことができる電気量が、蓄電部130に蓄えられたことを検知する。さらに、制御部50は、所定の電気量が蓄電部130に蓄えられたことを検知した後、センサ部140による情報の取得動作と取得した情報の送信部80による送信動作が連続的に行われるように、センサ部140および送信部80等を制御する。
【0060】
図6に示すスマートリング110は、高い電圧が必要な部分には第1の電圧VSYSを供給して動作させるとともに、低い電圧で動作可能な部分については、第2の電圧1V8を供給することで、センサ部140の各部分で必要とされる電圧が異なる場合などにおいて、消費電力を低減することができる。その他、スマートリング110は、スマートリング10との共通点については、スマートリング10と同様の効果を奏する。
【0061】
上述のように、複数の実施形態を挙げて本発明に係るスマートリング10、110を説明してきたが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではなく、他の多くの実施形態や変形例が、本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。たとえば、本発明に係るスマートリングは、熱発電素子20による発電のみで消費する全ての電力を賄うものであってもよいが、太陽電池のような他の発電素子や、充電式の電池などを併用する構成もあり得る。本発明に係るスマートリングは、他の電池等を併用する場合であっても、電池の充電頻度や交換頻度を下げる効果を有し、また、熱発電素子20による安定的な発電により、他の電池等からの電力が途絶えた場合であっても、一定レベル以上の動作を持続できる。
【0062】
また、たとえば、
図2に示す熱発電素子20の大きさ等は特に限定されないが、スマートリング10におけるより大きい角度範囲に配置されていてもよい。
図7は、第1変形例に係るスマートリング210を、リングの軸方向から見た模式的な外観図である。
図7に示すように、スマートリング210の熱発電素子220および接触部222は、スマートリング210の周方向における角度θの範囲に配置されている。熱発電素子220または接触部222が配置される角度範囲θは、180~360度とすることが、熱発電素子220の発電量を高める観点から好ましい。ただし、基板214の配置スペースを広く確保したい場合などには、熱発電素子220または接触部222が配置される角度範囲θを180度未満としてもよい(
図2参照)。なお、
図7では、ケースなどについては、図示を省略している。
【0063】
図8は、第2変形例に係るスマートリング310におけるリングの半径方向に沿う方向の断面を示す概略断面図である。スマートリング310は、センサ部等が実装される基板(
図2参照)や熱発電素子320などの外周側の少なくとも一部を覆う固体断熱材部396を有する。
図8に示すように、固体断熱材部396は、熱発電素子320における接触部322とは反対側を向く外周側表面を覆うように、外ケース12と熱発電素子320の間に充填されている。固体断熱材部396としては、熱伝導率が0.1W/(m・K)より小さいものであれば特に限定されないが、絶縁性を有するマトリクス(基材)に中空マイクロビースが分散されているものなどが挙げられる。
図8に示すようなスマートリング310では、発電に用いる熱がスマートリング310から散逸することを防止することができ、熱発電素子320における発電量を高めることができる。なお、固体断熱材部396は、ゲル状であってもよい。また、固体断熱部396は、センサ部等が実装される基板の外周側を覆うことにより、センサ部の検出値が外部からの熱の影響を受ける問題を防止することも好ましい。固体断熱部396は、基板や熱発電素子320を直接覆ってもよいが、外ケース12などの他の部材や空間を間に挟んで、基板や熱発電素子320の外側を覆う形態であってもよい。
【0064】
図9は、第3変形例に係るスマートリングに用いる基板414の断面構造を示す模式図である。
図9では図示されていないが、基板414には、制御部および送信部(
図2参照)が少なくとも実装される。基板414は、リングの半径方向に重なる3層以上の多層構造を有する。基板414は、最も外周側に位置する最外層414aと、最も内周側に位置する最内層414bの間に挟まれた中間層414cを有し、中間層414cには、蓄電部430を構成するコンデンサが形成されている。このようなスマートリングでは、基板414の最外層414aと最内層414bとの間に、蓄電部430を構成するコンデンサを配置しており、基板414が蓄電部430を内蔵する構成である。このようなスマートリングでは、蓄電部430を薄型化できるため、基板の外側表面または内側表面にコンデンサ等を実装する場合にくらべて、実装した素子を含めて考えた場合における基板414の半径方向に関する最大厚みを低減することができる。
【符号の説明】
【0065】
10、110…スマートリング
10a…リング内周
12…外ケース
14…基板
18…内ケース
20…熱発電素子
22…接触部
30、130…蓄電部
40、140…センサ部
41…体温センサ部
41a…検出部
80…送信部
50…制御部
60、160…電圧変換部
161…第1電圧変換部
162…第2電圧変換部
72…皮膚
78…情報
76…フライバックコンバータ
142…体動センサ部
143…SpO2センサ部
【要約】
【課題】外部から給電をせずに持続的に動作させることが可能なスマートリングを、熱発電素子を用いて実現する。
【解決手段】リング内周の少なくとも一部を構成しており装着者の指の皮膚に接触する接触部を介して体温が伝わり発電する熱発電素子と、前記熱発電素子が発電した電気を蓄える蓄電部と、前記装着者の身体活動に関する情報を取得するセンサ部と、前記センサ部が取得した情報を送信する送信部と、前記蓄電部に蓄えられる電気を用いて、前記センサ部および前記送信部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記蓄電部に蓄えられる電気量が所定値を超えたことを検知し、前記センサ部および前記送信部を動作させるスマートリング。
【選択図】
図1