IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鉗子及び鉗子システム 図1
  • 特許-鉗子及び鉗子システム 図2
  • 特許-鉗子及び鉗子システム 図3
  • 特許-鉗子及び鉗子システム 図4
  • 特許-鉗子及び鉗子システム 図5
  • 特許-鉗子及び鉗子システム 図6
  • 特許-鉗子及び鉗子システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】鉗子及び鉗子システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20240502BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20240502BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B1/018 515
A61B17/94
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023205245
(22)【出願日】2023-12-05
【審査請求日】2023-12-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390011811
【氏名又は名称】コデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】幸田 耕二郎
(72)【発明者】
【氏名】冨水 政昭
(72)【発明者】
【氏名】多賀谷 信美
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-029718(JP,A)
【文献】特開2008-155030(JP,A)
【文献】特開2000-107192(JP,A)
【文献】特開昭56-068444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61B 10/04 -10/06
A61B 17/00 -17/94
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉗子挿入部と、
前記鉗子挿入部内に配置されるとともに、前記鉗子挿入部よりも先端側に突出し、所定の処置を行う処置部と、
を備え、
前記鉗子挿入部は、
前記処置部における基端側の部分が内部に配置された大径筒部と、
前記大径筒部内に配置され、内視鏡における、外部を観察するための内視鏡挿入部が挿入可能な小径筒部と、
を有し、
前記処置部は、互いに開閉可能な2つの把持片を有し、
前記2つの把持片の先端部は、前記大径筒部の軸線に沿う基準面上で開閉し、
前記小径筒部の先端における開口全体は、前記基準面よりも、前記基準面に直交するいずれかの側に配置されている、鉗子。
【請求項2】
前記2つの把持片の開閉範囲を規制する開閉規制部を備える、請求項1に記載の鉗子。
【請求項3】
前記鉗子挿入部は、前記大径筒部における、前記大径筒部の軸線方向の中間部に配置され、前記大径筒部に対する前記小径筒部の位置を固定する固定部を有する、請求項1に記載の鉗子。
【請求項4】
前記処置部は、前記大径筒部に沿う処置軸線に沿って延び、
前記処置部を、前記処置軸線周りに回転させる回転操作部を備える、請求項1に記載の鉗子。
【請求項5】
前記内視鏡の内視鏡本体が取付けられる取付け部を備える、請求項1に記載の鉗子。
【請求項6】
前記小径筒部の小径軸線周りの前記内視鏡挿入部の向きを規制する回転規制部を備える、請求項1に記載の鉗子。
【請求項7】
前記小径筒部内に配置される前記内視鏡挿入部の、前記小径筒部の小径軸線方向の位置を規制する挿入規制部を備える、請求項1に記載の鉗子。
【請求項8】
請求項1に記載の鉗子と、
前記内視鏡と、
を備える、鉗子システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉗子及び鉗子システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療の現場では、様々な形や大きさをした鉗子が、様々な目的で使われている(例えば、特許文献1参照)。
特に近年は、患者の体の負担を小さくするために、低侵襲の内視鏡手術や腹腔鏡手術が主流になってきている。特に消化器外科の手術では、従来の開腹手術は大幅に減り、腹腔鏡手術が70%程度を占めている。腹腔鏡手術は、患者の腹部にカメラ(主内視鏡)や鉗子を通す穴を数か所開けて行われる。
【0003】
腹腔鏡手術では、従来の開腹手術と比べ、多くのメリットが有る。多くのメリットとして、手術後の患者の合併症が少ないこと、縫合範囲が小さいこと、入院日数を大幅に減らすことができること等がある。
また、腹腔鏡手術を行う医師は、手術中に開腹部をのぞき込むための前傾姿勢を長時間取る必要が無い。さらに、カメラが患部をモニターに拡大して映すので、医師は、患部の状態を詳細に判断でき、苦しい前傾姿勢をする必要ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2022-181850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
腹腔鏡手術では、カメラによる死角がある。この死角を低減させるために、腹腔鏡手術で用いられる鉗子とともに、内視鏡(副内視鏡)を用いることが検討されている。
しかしながら、特許文献1の鉗子は、内視鏡と一体に用い難い。
【0006】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、内視鏡と一体に用い易い鉗子、及びこの鉗子を備える鉗子システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)本開示の態様1は、鉗子挿入部と、前記鉗子挿入部内に配置されるとともに、前記鉗子挿入部よりも先端側に突出し、所定の処置を行う処置部と、を備え、前記鉗子挿入部は、前記処置部における基端側の部分が内部に配置された大径筒部と、前記大径筒部内に配置され、内視鏡における、外部を観察するための内視鏡挿入部が挿入可能な小径筒部と、を有し、前記処置部は、互いに開閉可能な2つの把持片を有し、前記2つの把持片の先端部は、前記大径筒部の軸線に沿う基準面上で開閉し、前記小径筒部の先端における開口全体は、前記基準面よりも、前記基準面に直交するいずれかの側に配置されている、鉗子である。
【0008】
この発明では、例えば、腹腔鏡手術において、鉗子の小径筒部内に、内視鏡の内視鏡挿入部を挿入しておく。この状態で、大径筒部よりも先端側等、内視鏡挿入部の外部を内視鏡挿入部により観察しつつ、大径筒部の先端側の部分を、患者の腹部内に挿入していく。そして、処置部により所定の処置を行う。
小径筒部内に内視鏡挿入部を挿入可能であるため、内視鏡挿入部を鉗子挿入部に挿入しやすく、鉗子を内視鏡と一体に用い易くすることができる。
また、内視鏡挿入部は、小径筒部の開口を通して、大径筒部よりも先端側を観察する。そして、2つの把持片の開閉により所定の処置を行う際に、開口全体が、2つの把持片の先端部が開閉する基準面よりも、基準面に直交するいずれかの側に配置されている。従って、内視鏡挿入部により開口を通して観察したときに、2つの把持片の先端部が観察の支障となり難くすることができる。
【0010】
)本開示の態様は、前記2つの把持片の開閉範囲を規制する開閉規制部を備える、()に記載の鉗子であってもよい。
この開示では、例えば、開閉規制部により、開閉する2つの把持片に過剰な力が作用して2つの把持片が損傷するのを抑えることができる。
【0011】
)本開示の態様は、前記鉗子挿入部は、前記大径筒部における、前記大径筒部の軸線方向の中間部に配置され、前記大径筒部に対する前記小径筒部の位置を固定する固定部を有する、(1)又は(2)に記載の鉗子であってもよい。
この開示では、固定部により、軸線方向の中間部という比較的強度が低下する部分における、大径筒部に対する小径筒部の位置を保持することができる。
【0012】
)本開示の態様は、前記処置部は、前記大径筒部に沿う処置軸線に沿って延び、前記処置部を、前記処置軸線周りに回転させる回転操作部を備える、(1)から()のいずれか一に記載の鉗子であってもよい。
この開示では、回転操作部を操作することで、例えば、内視鏡挿入部による外部の視野の向きを変えずに、処置部により所定の処置を行う処置軸線周りの向きを変えることができる。
【0013】
)本開示の態様は、前記内視鏡の内視鏡本体が取付けられる取付け部を備える、(1)から()のいずれか一に記載の鉗子であってもよい。
この開示では、取付け部により、鉗子に内視鏡の内視鏡本体を取付けることにより、医師等の操作者は、鉗子及び内視鏡本体を一体に操作することができる。
【0014】
)本開示の態様は、前記小径筒部の小径軸線周りの前記内視鏡挿入部の向きを規制する回転規制部を備える、(1)から()のいずれか一に記載の鉗子であってもよい。
この開示では、回転規制部により、内視鏡挿入部が小径軸線周りに回転して、内視鏡挿入部による外部の視野の向きが変わるのを抑制することができる。
【0015】
)本開示の態様は、前記小径筒部内に配置される前記内視鏡挿入部の、前記小径筒部の小径軸線方向の位置を規制する挿入規制部を備える、(1)から()のいずれか一に記載の鉗子であってもよい。
この開示では、挿入規制部により、小径筒部に対する内視鏡挿入部の小径軸線方向の位置が変わるのを抑えることができる。
【0016】
)本開示の態様は、(1)から()のいずれか一に記載の鉗子と、前記内視鏡と、を備える、鉗子システムである。
この開示では、内視鏡と一体に用い易い鉗子を用いて鉗子システムを構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の鉗子及び鉗子システムでは、内視鏡と一体に用い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の鉗子システムにおける一部を破断した側面図である。
図2図1中の切断線A1-A1の断面図である。
図3図1におけるA2方向矢視図である。
図4】同鉗子システムの鉗子における要部の平面図である。
図5】同鉗子システムを用いた手技を説明する図である。
図6】本発明の一実施形態の第1変形例の鉗子システムにおける要部の平面図である。
図7】本発明の一実施形態の第3変形例の鉗子システムにおける要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る鉗子及び鉗子システムの一実施形態を、図1から図7を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の鉗子システム1は、副内視鏡(内視鏡)10と、本実施形態の鉗子20と、を備える。副内視鏡10は、内視鏡挿入部11と、内視鏡本体16と、表示部(不図示)と、を有する。
以下では、内視鏡本体16に対する内視鏡挿入部11側(鉗子20における、後述する開閉操作部51に対する鉗子挿入部21側)を、先端側と言う。内視鏡挿入部11に対する内視鏡本体16側(鉗子20における、後述する鉗子挿入部21に対する開閉操作部51側)を、基端側と言う。
【0020】
例えば、内視鏡挿入部11は、外套管12と、投光部13と、撮像部14と、を有する。
外套管12は、管状に形成され、可撓性を有する。投光部13及び撮像部14は、外套管12の先端部内に固定されている。
投光部13は、図示しないLED(Light Emitting Diode)等を有する。投光部13は、先端側に向かって可視光線を発する。投光部13には、電力供給線(不図示)が接続されている。電力供給線は、外套管12内を通して、基端側に向かって延びている。投光部13には、電力供給線を通して所定の電力が供給される。
【0021】
撮像部14は、図示しないCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等の受光素子を有する。撮像部14は、患者の組織等の観察対象物で反射された可視光線を画像に変換する。撮像部14は、この画像を信号に変換する。撮像部14には、信号線(不図示)が接続されている。信号線は、外套管12内を通して、基端側に向かって延びている。撮像部14は、信号線を通して信号を送る。
以上のように、内視鏡挿入部11は、内視鏡挿入部11の先端側等の、内視鏡挿入部11の外部を観察するための装置である。
【0022】
内視鏡本体16は、外套管12の基端部に接続されている。内視鏡本体16には、電力供給線及び信号線が、それぞれ接続されている。例えば、内視鏡本体16は、電力供給線に所定の電力を供給するとともに、撮像部14が送った信号を信号線から受ける。内視鏡本体16は、受けた信号を表示部用に適宜処理する。
表示部は、液晶パネルを有し、内視鏡本体16に接続されている。表示部は、適宜処理された信号に基づく画像を表示する。
次に、鉗子20について説明する。
【0023】
鉗子20は、鉗子挿入部21と、処置部41と、開閉操作部51と、開閉規制部56と、回転操作部61と、を有する。図1及び図2に示すように、鉗子挿入部21は、大径筒部22と、固定部23と、第1小径筒部(小径筒部)24と、第2小径筒部25と、ブラケット26と、を有する。
図1に示すように、大径筒部22は、先端筒片30と、基端筒片31と、を有する。先端筒片30の内径及び基端筒片31の内径は、互いに等しい。先端筒片30の外径及び基端筒片31の外径は、互いに等しい。先端筒片30の長さ及び基端筒片31の長さは、互いに等しい。先端筒片30及び基端筒片31は、同軸に配置されている。
先端筒片30は、基端筒片31よりも先端側に配置されている。
なお、先端筒片30の長さ及び基端筒片31の長さは、互いに異なっていてもよい。
【0024】
以下では、先端筒片30及び基端筒片31の共通軸(大径筒部22の軸線)を、軸線O1と言う。軸線O1に直交する方向を径方向と言い、軸線O1回りに周回する方向を周方向と言う。
基端筒片31には、径方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成されている。貫通孔は、周方向の所定の範囲にわたって延びている。
【0025】
図1及び図2に示すように、固定部23は、先端筒片30の外径に等しい外径を有する、円板状に形成されている。固定部23は、先端筒片30と基端筒片31との間の軸線O1上に配置されている。固定部23には、貫通孔23a,23bが形成されている。貫通孔23a,23bは、固定部23を軸線O1方向に貫通している。例えば、貫通孔23a,23bは、軸線O1を径方向に挟むように配置されている。
固定部23は、先端筒片30及び基端筒片31に、溶接により固定されている。なお、固定部23と、先端筒片30及び基端筒片31と、を固定する方法は溶接に限定されず、接着、圧着等でもよい。
固定部23は、大径筒部22における軸線O1方向の中間部に配置されている。
【0026】
第1小径筒部24及び第2小径筒部25は、それぞれ管状に形成されている。第1小径筒部24の外径及び第2小径筒部25の外径は、先端筒片30の内径及び基端筒片31の内径よりも小さい。第1小径筒部24及び第2小径筒部25は、大径筒部22の先端筒片30及び基端筒片31内に配置されている。
第1小径筒部24は、固定部23の貫通孔23a内に配置されている。第2小径筒部25は、固定部23の貫通孔23b内に配置されている。固定部23は、大径筒部22に対する第1小径筒部24及び第2小径筒部25の位置を固定する。
図1に示すように、ブラケット26は、平板部33と、筒部34と、を有する。
平板部33は、円板状に形成され、軸線O1上に配置されている。平板部33の外径は、先端筒片30の外径に等しい。平板部33には、貫通孔23a,23bと同軸に、貫通孔33a,33bが形成されている。貫通孔33aの内径は、貫通孔23aの内径よりも小さい。
【0027】
筒部34は、筒状に形成されている。筒部34は、平板部33の外周縁から、基端側に向かって突出している。筒部34は、大径筒部22の先端筒片30よりも先端側に配置されている。平板部33における貫通孔33bの周縁部と筒部34との間には、基端側に向かって縮径する段部(符号省略)が形成されている。
筒部34は、先端筒片30に軸線O1方向に突き合わされ、互いに溶接等により固定されている。
【0028】
第1小径筒部24の先端は、ブラケット26の平板部33に、平板部33の基端側から接触している。第1小径筒部24内の空間は、平板部33の貫通孔33aに連通している。第2小径筒部25内の空間は、平板部33の貫通孔33bに連通している。一方で、第2小径筒部25の先端は、平板部33から基端側に離間している。
第1小径筒部24の先端は、平板部33に溶接等により固定されている。
【0029】
ここで、第1小径筒部24の軸線である第1軸線(小径軸線)O4、及び第2小径筒部25の軸線である第2軸線O5を規定する。
第1軸線O4及び第2軸線O5を含む、第1基準面S1を規定する。第1基準面S1に沿うとともに、軸線O4,O5に直交する方向を、直交方向Zと規定する。
直交方向Zのうち、第1軸線O4に対する第2軸線O5側を、第1側Z1と規定する。第2軸線O5に対する第1軸線O4側を、第2側Z2と規定する。
【0030】
軸線O1に沿い、第1基準面S1に直交する第2基準面(基準面)S2を規定する。なお、第2基準面S2は、軸線O1に沿い、第1基準面S1に交差する面であってもよい。
鉗子システム1は、第1基準面S1が上下方向に沿うようにして用いられる。この際に、第1側Z1が上方となるように配置される。
第1小径筒部24には、副内視鏡10の内視鏡挿入部11が挿入可能である。
なお、鉗子20は、鉗子挿入部21の基端側において、大径筒部22、第1小径筒部24、及び第2小径筒部25の位置を固定する基端ブラケットを有してもよい。
【0031】
図1及び図3に示すように、処置部41は公知のリンク構造を有する構成である。処置部41は、支持部材42A,42Bと、第1揺動部材43A,43Bと、第2揺動部材44A,44Bと、操作部材45と、連結部材46(図4参照)と、を有する。
図1に示すように、支持部材42A,42Bは、棒状に形成され、軸線O1方向に延びている。支持部材42Aは、支持部材42Bよりも第1側Z1に配置されている。支持部材42Aと支持部材42Bとの間には、隙間が形成されている。
支持部材42A,42Bにおける基端側の部分は、ブラケット26の段部に固定されている。
【0032】
図1及び図3に示すように、第1揺動部材43A,43Bは、それぞれ全体として軸線O1方向に延びている。第1揺動部材43A,43Bは、互いの基端部に設けられた第1軸部材48を介して回動可能である。第1軸部材48は、直交方向Zに延びている。第1軸部材48の直交方向Zの両端部は、支持部材42A,42Bの先端部に支持されている。
第1揺動部材43Aにおける第1軸部材48よりも先端側の部分が、把持片49Aを構成する。第1揺動部材43Bにおける第1軸部材48よりも先端側の部分が、把持片49Bを構成する。すなわち、処置部41は、2つの把持片49A,49Bを有する。
把持片49A,49Bは、互いに離間して開くとともに、互いに接触して閉じることができる。すなわち、把持片49A,49Bは、互いに開閉可能である。
【0033】
ここで、例えば、把持片49A,49Bにおいて、それぞれの先端から、把持片49A,49Bの軸線O1方向の長さの(1/4)の範囲を、把持片49A,49Bの先端部49aA,49aBと規定する。把持片49A,49Bの一部は、湾曲した形状に形成されている。このため、把持片49A,49Bでは、基端部に対して先端部49aA,49aBが、先端側かつ第2側Z2に移動した形状に配置されている。
先端部49aA,49aBは、第2基準面S2上で開閉する。ここで言う先端部49aA,49aBが第2基準面S2上で開閉するとは、先端部49aA,49aBのいずれかの部分が第2基準面S2に乗った状態で、第2基準面S2に沿って開閉することを意味する。
【0034】
図1に示すように、第2揺動部材44Aの先端部は、第2軸部材(不図示)を介して、第1揺動部材43Aにおける第1軸部材48よりも基端側の部分に対して回動可能である。第2揺動部材44Bの先端部は、第3軸部材(不図示)を介して、第1揺動部材43Bにおける第1軸部材48よりも基端側の部分に対して回動可能である。
操作部材45は、棒状に形成され、軸線O1方向に延びている。操作部材45における基端側の部分は、第2小径筒部25内に配置されている。操作部材45の先端部は、第4軸部材(不図示)を介して、第2揺動部材44Aにおける基端側の部分及び第2揺動部材44Bにおける基端側の部分に対して回動可能である。
【0035】
以上のように、処置部41における、支持部材42A,42B及び操作部材45の基端側の部分は、鉗子挿入部21(大径筒部22)の第2小径筒部25内に配置されている。
処置部41は、大径筒部22に沿う第2軸線O5に沿って延びる。この例では、第2軸線O5は、処置部41の軸線である処置軸線に一致する。
把持片49A,49Bは、鉗子挿入部21よりも先端側に突出し、患者の組織を把持する等の所定の処置を行う。
本実施形態では、第1小径筒部24の先端における開口24aは、第2基準面S2上に配置されている。
【0036】
図4に示すように、連結部材46は、小径部46aと、大径部46bと、を有する。
小径部46aは、棒状に形成され、操作部材45の基端から基端側に向かって突出している。小径部46aの径は、操作部材45の径よりも小さい。
大径部46bは、球状に形成され、小径部46aの基端に設けられている。大径部46bの径は、小径部46aの径よりも大きい。
【0037】
図1に示すように、開閉操作部51は、操作部本体52と、開閉レバー53と、を有する。
操作部本体52は、大径筒部22の基端筒片31の基端部に固定されている。操作部本体52は、基端筒片31の基端部から、第2側Z2に向かって延びている。操作部本体52が延びる先端部には、第1指孔52aが形成されている。
開閉レバー53は、操作部本体52よりも基端側に配置され、基端側と第2側Z2との間の向きに向かって延びている。
【0038】
開閉レバー53の長手方向の中間部は、開閉軸部材54により操作部本体52に回動可能に接続されている。開閉軸部材54は、操作部本体52における直交方向Zの中間部に設けられている。開閉レバー53は、操作部本体52に対して第1基準面S1上で回動する。
操作部本体52における開閉軸部材54が設けられた部分よりも第2側Z2の部分には、雌ネジ52bが形成されている。
開閉レバー53における第2側Z2の部分には、第2指孔53aが形成されている。
図4に示すように、開閉レバー53の第1側Z1の部分における先端側を向く面には、蟻溝(dovetail-groove)53bが形成されている。蟻溝53bは、開閉レバー53における第1側Z1の部分に沿って延びている。開閉レバー53の蟻溝53bには、連結部材46の大径部46bが嵌め合っている。
図1に示すように、開閉レバー53における開閉軸部材54が設けられた部分よりも第1側Z1の部分には、雌ネジ53cが形成されている。
【0039】
開閉規制部56は、第1規制部57と、第2規制部58と、を有する。
この例では、第1規制部57及び第2規制部58には、ネジが用いられている。第1規制部57は、雌ネジ52bに嵌め合っている。第1規制部57は、操作部本体52から開閉レバー53側(基端側)に向かって突出している。第2規制部58は、雌ネジ53cに嵌め合っている。第2規制部58は、開閉レバー53から操作部本体52側(先端側)に向かって突出している。
規制部57,58の突出量は、ネジ嵌合の位置を調節することにより調節することができる。なお、開閉規制部56は、第1規制部57及び第2規制部58の一方のみを有してもよい。
【0040】
回転操作部61は、円筒状に形成され、鉗子挿入部21の基端筒片31に外嵌されている。回転操作部61は、基端筒片31の貫通孔内に配置された連結部材(不図示)を介して、処置部41の支持部材42A,42Bに接続されている。
鉗子挿入部21に対して回転操作部61を軸線O1周りに回転させると、処置部41は第2軸線O5周りに回転する。回転操作部61を回転させる際に、基端筒片31における貫通孔の周縁部に連結部材が周方向に係止することで、回転操作部61の軸線O1周りの回転範囲が規制されている。
鉗子20の各構成は、ステンレス鋼等で形成されている。
【0041】
例えば、操作者は、鉗子20の開閉操作部51を手で握る。このとき、操作部本体52の第1指孔52a内に中指を入れ、開閉レバー53の第2指孔53a内に親指を入れる。
操作者が開閉操作部51を握ると、指孔52a,53aが互いに近づき、第1規制部57が、開閉レバー53に、開閉レバー53の先端側から接触する。鉗子挿入部21に対して操作部材45が基端側に移動し、把持片49A,49Bの先端部49aA,49aBが互いに接触して、2つの把持片49A,49Bが閉じる。このとき、開閉レバー53の蟻溝53b内で、連結部材46の大径部46bが、蟻溝53bに沿って移動する。
一方で、操作者が開閉操作部51を開くと、指孔52a,53aが互いに離間し、第2規制部58が、操作部本体52に、操作部本体52の基端側から接触する。鉗子挿入部21に対して操作部材45が先端側に移動し、把持片49A,49Bの先端部49aA,49aBが互いに離間して、2つの把持片49A,49Bが開く。
【0042】
以上のように、開閉規制部56が有する第1規制部57及び第2規制部58は、把持片49A,49Bの開閉範囲(把持片49A,49Bが閉じたときの把持片49A,49Bがなす角度から、把持片49A,49Bが開いたときの把持片49A,49Bがなす角度までの範囲)を規制する。
【0043】
例えば、大径筒部22の外径は5mmであり、大径筒部22の長さは30cmから40cm程度である。鉗子挿入部21では、大径筒部22内に第1小径筒部24及び第2小径筒部25を配置している。
【0044】
次に、以上のように構成された鉗子システム1の動作について説明する。
例えば、腹腔鏡手術において、鉗子20の第1小径筒部24内に、副内視鏡10の内視鏡挿入部11を挿入しておく。第1小径筒部24内に内視鏡挿入部11を挿入しておくとき、内視鏡挿入部11の先端を、鉗子挿入部21の先端に一致させておくことが好ましい。なお、第1小径筒部24内に内視鏡挿入部11を挿入しておくとき、内視鏡挿入部11の先端を、鉗子挿入部21の先端よりも基端側に配置等してもよい。
副内視鏡10の内視鏡挿入部11は、鉗子20に、自由に取付け及び取外し可能である。
【0045】
図5に示すように、例えば、患者Pのさい帯(へそ)P5、及びさい帯P5の脇となる部分P6に穴(不図示)を開ける。この穴に、トロカー100,101をそれぞれ取付ける。トロカー100を通して、腹部P7に主内視鏡105を挿入する。トロカー101を通して、腹部P7に鉗子システム1の鉗子挿入部21を挿入する。主内視鏡105が取得した画像は、適宜表示される。副内視鏡10が取得した画像は、表示部に表示される。
トロカー100,101を介して腹部P7内に二酸化炭素ガスを注入し、腹部P7を膨らませる。
【0046】
この状態で、操作者は、大径筒部22よりも先端側を内視鏡挿入部11により観察しつつ、大径筒部22の先端側の部分を、トロカー101を通して、患者Pの腹部P7内に挿入していく。そして、処置部41により所定の処置を行う。主内視鏡105では観察し難い部位、主内視鏡105の死角等を、副内視鏡10で観察することができる。
第1小径筒部24内に内視鏡挿入部11を挿入可能であるため、内視鏡挿入部11を鉗子挿入部21に挿入しやすく、鉗子20を副内視鏡10と一体に用い易くすることができる。
【0047】
副内視鏡10及び鉗子20を互いに別々に管理することができるので、例えば、鉗子20だけで保管、洗浄、滅菌を容易に行うことができる。
鉗子20は非能動医療機器なので消耗品でもある。そのため、鉗子20の動きが悪くなると、鉗子20を交換する必要がある。一方で、副内視鏡10は、可動部が無いので、耐久性があり、交換する必要がない。
【0048】
鉗子20は、開閉規制部56を有する。このため、開閉する把持片49A,49Bに過剰な力が作用して把持片49A,49Bが損傷するのを抑えることができる。
鉗子20は、固定部23を有する。固定部23により、軸線O1方向の中間部という比較的強度が低下する部分における、大径筒部22に対する第1小径筒部24の位置を保持することができる。
【0049】
鉗子20は、回転操作部61を有する。従って、回転操作部61を操作することで、例えば、内視鏡挿入部11による先端側の視野の第1軸線O4周りの向きを変えずに、処置部41により所定の処置を行う第2軸線O5周りの向きを変えることができる。
また、本実施形態の鉗子システム1では、副内視鏡10と一体に用い易い鉗子20を用いて鉗子システムを構成することができる。
【0050】
本実施形態の鉗子システムは、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図6に示す第1変形例の鉗子システム2では、本実施形態の鉗子システム1の各構成において、鉗子20に代えて鉗子70を備える。鉗子70は、鉗子20の各構成に加えて、取付け部71を有する。
例えば、取付け部71は、軸線O1方向に延びるとともに、軸線O1方向に見たときに、第1側Z1が開口するU字状に形成されている。例えば、取付け部71は鉗子挿入部21に取付けられている。取付け部71内に副内視鏡10の内視鏡本体16を配置すると、取付け部71に内視鏡本体16が取付けられる。
【0051】
以上のように構成された第1変形例の鉗子システム2では、取付け部71により、鉗子70に副内視鏡10の内視鏡本体16を取付けることにより、医師等の操作者は、鉗子70及び内視鏡本体16を一体に操作することができる。
【0052】
第2変形例の鉗子システムでは、第1小径筒部24の開口24a全体は、第2基準面S2よりも、第2基準面S2に直交するいずれかの側(第1側Z1又は第2側Z2)に配置されている。
第2変形例の鉗子システムでは、内視鏡挿入部11は、第1小径筒部24の開口24aを通して、大径筒部22よりも先端側を観察する。そして、把持片49A,49Bの開閉により所定の処置を行う際に、開口24a全体が、把持片49A,49Bの先端部49aA,49aBが開閉する第2基準面S2よりも、第2基準面S2に直交するいずれかの側に配置されている。従って、内視鏡挿入部11により開口24aを通して観察したときに、把持片49A,49Bの先端部49aA,49aBが観察の支障となり難くすることができる。
【0053】
図7に示す第3変形例の鉗子システム3は、副内視鏡150と、本実施形態の鉗子160と、を備える。
例えば、副内視鏡150の内視鏡挿入部11の外周面には、内視鏡挿入部11の外側に向かって突出する凸条151が形成されている。凸条151は、内視鏡挿入部11に沿って延びている。
鉗子160の第1小径筒部161における内視鏡挿入部11が挿入される部分には、小径孔162及び大径孔163がそれぞれ形成されている。小径孔162の内径は、大径孔163の内径よりも小さい。大径孔163は、小径孔162よりも基端側に配置されている。
小径孔162の内周面には、内視鏡挿入部11の凸条151に嵌め合うキー溝(不図示)が形成されている。キー溝は、第1小径筒部161の第1軸線O4に沿って延びている。なお、凸条151及びキー溝で、第1軸線O4周りの内視鏡挿入部11の向きを規制する回転規制部170を構成する。
【0054】
大径孔163における基端側の部分の内周面には、雌ネジ163aが形成されている。
大径孔163における先端側の部分内には、筒状の押さえ部材164が配置されている。例えば、押さえ部材164は、合成ゴム等で形成することができる。
【0055】
第1小径筒部161の雌ネジ163aには、固定部材165が嵌め合っている。なお、第1小径筒部161の大径孔163、押さえ部材164、及び固定部材165で、挿入規制部171を構成する。
固定部材165は、筒部166と、フランジ部167と、を有する。
筒部166における先端側の部分の外周面には、雌ネジ163aと嵌め合う雄ネジ166aが形成されている。フランジ部167は、筒部166における基端側の部分から外側に向かって突出している。
例えば、固定部材165は、ステンレス鋼等で形成されている。
【0056】
内視鏡挿入部11は、固定部材165の筒部166の筒孔内、押さえ部材164の筒孔内、及び第1小径筒部161の小径孔162内にそれぞれ配置されている。
第1小径筒部161の雌ネジ163aと嵌め合う固定部材165が、押さえ部材164を第1軸線O4方向に圧縮すると、押さえ部材164の内径が小さくなり、押さえ部材164が内視鏡挿入部11を外側から全周にわたって押さえる。従って、第1小径筒部161内に配置される内視鏡挿入部11の、第1軸線O4方向の位置が規制される。
【0057】
以上のように構成された第3変形例の鉗子システム3では、回転規制部170により、内視鏡挿入部11が第1軸線O4周りに回転して、内視鏡挿入部11による外部の視野の向きが変わるのを抑制することができる。
また、挿入規制部171により、第1小径筒部161に対する内視鏡挿入部11の第1軸線O4方向の位置が変わるのを抑えることができる。
なお、鉗子システム3は、回転規制部170及び挿入規制部171の一方を備えればよい。
【0058】
以上、本発明の一実施形態及び変形例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態及び変形例では、鉗子20,70,160は、開閉規制部56及び回転操作部61の少なくとも1つを有さなくてもよい。鉗子挿入部21は、固定部23、第2小径筒部25、及びブラケット26の少なくとも1つを有さなくてもよい。
鉗子20,70,160が第2小径筒部25を有さない場合に、鉗子挿入部21の両ブラケット26により、大径筒部22に対する操作部材45の位置を保持してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,2,3 鉗子システム
10,150 副内視鏡(内視鏡)
11 内視鏡挿入部
20,70,160 鉗子
21 鉗子挿入部
22 大径筒部
23 固定部
24,161 第1小径筒部(小径筒部)
24a 開口
41 処置部
49A,49B 把持片
56 開閉規制部
61 回転操作部
71 取付け部
170 回転規制部
171 挿入規制部
O1 軸線
O4 第1軸線(小径軸線)
O5 第2軸線(処置軸線)
S2 第2基準面(基準面)
【要約】
【課題】内視鏡と一体に用い易い鉗子を提供する。
【解決手段】鉗子1は、鉗子挿入部21と、鉗子挿入部21内に配置されるとともに、鉗子挿入部21よりも先端側に突出し、所定の処置を行う処置部41と、を備え、鉗子挿入部21は、処置部41における基端側の部分が内部に配置された大径筒部22と、大径筒部22内に配置され、内視鏡10における、外部を観察するための内視鏡挿入部11が挿入可能な小径筒部24と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7