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特許7481781水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム及び水生生物の養殖方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム及び水生生物の養殖方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
A01K63/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024022555
(22)【出願日】2024-02-19
【審査請求日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2023223598
(32)【優先日】2023-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523457349
【氏名又は名称】株式会社ベルデアクア
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和政
(72)【発明者】
【氏名】玉井 一誠
(72)【発明者】
【氏名】竹廣 洋児
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-254577(JP,A)
【文献】特開2009-055821(JP,A)
【文献】特開2002-186994(JP,A)
【文献】特開2000-279052(JP,A)
【文献】特開2003-225654(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031827(WO,A1)
【文献】特開2015-192612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生物を養殖する槽であり且つ海水の飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムであって、
前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも固形物を除去する除去部と、
前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において、前記飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させる電気分解部と、
前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、
オゾンを発生させるオゾン発生部と、
前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において前記飼育水に含まれるアンモニウムイオンを検出するアンモニウムイオンセンサと、
を有し、
前記飼育槽内の飼育水を、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域、前記第4領域の順に循環させて前記第4領域を通過した後に前記飼育槽に戻すように循環経路が構成され、
前記除去部は、前記オゾン発生部で発生したオゾンを含む泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機を備え、
前記残留塩素除去部は、前記第3領域において残留オゾンを除去する
水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項2】
水生生物を養殖する槽であり且つ海水の飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムであって、
前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも固形物を除去する除去部と、
前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において、前記飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させる電気分解部と、
前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、
オゾンを発生させるオゾン発生部と、
前記第2領域を通過してから前記第3領域に流入するまでの前記飼育水に含まれる残留塩素の濃度を検出する第1残留塩素センサと、
前記第3領域を通過してから前記飼育槽に戻るまでの第4領域において前記飼育水に含まれる残留塩素の濃度を検出する第2残留塩素センサと、
を有し、
前記飼育槽内の飼育水を、前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域、前記第4領域の順に循環させて前記第4領域を通過した後に前記飼育槽に戻すように循環経路が構成され、
前記除去部は、前記オゾン発生部で発生したオゾンを含む泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機を備え、
前記残留塩素除去部は、前記第3領域において残留オゾンを除去し、
更に、
前記第1残留塩素センサの計測結果に基づいて前記電気分解部の電気分解を制御する制御部と、
前記第2残留塩素センサによって所定の計測結果が得られた場合に、前記第4領域の前記飼育水から残留塩素を除去又は前記第4領域の前記飼育水を前記飼育槽に戻すことを停止する処置部と、を有する
水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項3】
前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において前記飼育水に含まれるアンモニウムイオンを検出するアンモニウムイオンセンサを含む
請求項2に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項4】
前記除去部は、
当該除去部の前工程の領域から導入される前記飼育水を貯める貯留槽と、
前記貯留槽に貯留された前記飼育水を前記泡沫分離機に導入する導入部と、
前記泡沫分離機を経た前記飼育水を前記貯留槽に戻す導出部と、
前記貯留槽に貯められた前記飼育水を当該除去部の後工程の領域に排出する排出部と、
を具備する
請求項1又は請求項2に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項5】
前記除去部は、当該除去部の前工程の領域から供給される前記飼育水を導入路によって前記泡沫分離機に導入した後、前記泡沫分離機を通過させ、前記導入路の入口が配置される導入元の領域とは異なる当該除去部の後工程の領域に導出する
請求項1又は請求項2に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項6】
前記アンモニウムイオンセンサの計測結果に基づいて前記電気分解部の電気分解を制御する制御部を備える
請求項1に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項7】
前記第2領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する領域において前記飼育水に含まれる残留塩素を検出する残留塩素センサを含み、
前記制御部は、前記アンモニウムイオンセンサの計測結果及び前記残留塩素センサの計測結果に基づいて前記電気分解部の電気分解を制御する
請求項6に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項8】
前記第2領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する領域において前記飼育水に含まれる残留塩素を検出する残留塩素センサを含む
請求項1に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項9】
前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において前記飼育水に含まれる残留塩素を検出する残留塩素センサと、
前記残留塩素センサによって所定の計測結果が得られた場合に、前記第4領域の前記飼育水から残留塩素を除去又は前記第4領域の前記飼育水を前記飼育槽に戻すことを停止する処置部と、
を有する請求項1に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項10】
前記処置部は、前記残留塩素センサの検出値が所定値を超えた場合に前記飼育槽に戻る前の前記飼育水に対して残留塩素と中和反応を生じさせる中和剤を供給する中和剤供給部を備える
請求項9に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項11】
前記除去部を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する電気分解槽と、
前記電気分解槽を通過した前記飼育水が貯留され又は流動し、前記電気分解槽で生じた前記塩素酸化合物と前記飼育水に含まれるアンモニア又はアンモニウムイオンの反応時間を確保する反応槽と、
前記反応槽を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する残留塩素除去槽と、
前記残留塩素除去槽を通過した前記飼育水が貯留され又は流動し、前記飼育槽に戻る前の前記飼育水の水質を検査する待機槽と、
前記電気分解槽を通過してから前記残留塩素除去槽に流入するまでの前記飼育水に含まれる残留塩素を検出する第1残留塩素センサと、
前記待機槽の前記飼育水に含まれる残留塩素を検出する第2残留塩素センサと、
前記アンモニウムイオンセンサの計測結果及び前記第1残留塩素センサの計測結果に基づいて前記電気分解部の電気分解を制御する制御部と、
前記第2残留塩素センサによって所定の計測結果が得られた場合に、前記第4領域の前記飼育水から残留塩素を除去又は前記第4領域の前記飼育水を前記飼育槽に戻すことを停止する処置部と、
を有し、
前記第2領域は、少なくとも前記電気分解槽の内部領域を含み、
前記第3領域は、少なくとも前記残留塩素除去槽の内部領域を含み、
前記第4領域は、少なくとも前記待機槽の内部領域を含む
請求項1又は請求項3に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項12】
前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において前記飼育水のpHを計測するpHセンサと、
前記pHセンサの計測結果に基づいて、前記第4領域又は前記第4領域から前記飼育槽までの領域のpHを調整するpH調整部と、
を有する請求項1又は請求項2に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【請求項13】
請求項1又は請求項2に記載の循環式処理システムを用い、前記第3領域において残留塩素の除去および残留オゾンの除去を行う水生生物の養殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム及び水生生物の養殖方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水生生物を養殖するシステムの一例として、閉鎖循環式養殖システムが知られている。閉鎖循環式養殖システムは、残餌や生物が排出する糞尿を、濾過槽で分解及び浄化し、水を循環させる方式のものである。一般的な閉鎖循環式養殖システムでは、飼育水中の窒素化合物の分解及び浄化に、微生物を活用する方式が主流となっている。この種の技術として、特許文献1のようなものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7345037号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される養殖管理システムでは、水槽内での水生生物の代謝活動や残餌などの有機物の分解によりアンモニアが発生するため、飼育水を循環させてろ過槽に通すことで生物ろ過させ、そのアンモニアを分解して毒性の低い硝酸に変化させる。ろ過槽には、酸素を含む水中でアンモニアを酸化して亜硝酸ひいては硝酸に変化させる硝化細菌(微生物)が保持されている。
【0005】
しかし、特許文献1のように、微生物を利用した浄化方法を採用すると、浄化能力が微生物に依存してしまうという問題がある。
【0006】
本開示の目的の一つは、水生生物の養殖を行う上で、微生物への依存を抑えた方法で水中のアンモニア又はアンモニウムイオンをより効果的に分解することができ、且つ、アンモニアやアンモニウムイオン以外の汚染要素を効果的に除去し得る技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つである水生生物の養殖に用いる循環式水処理システムは、
水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムであって、
前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも固形物を除去する除去部と、
前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において、前記飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させる電気分解部と、
前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、
を有し、
更に、オゾンを発生させるオゾン発生部を有し、
前記除去部は、前記オゾン発生部で発生したオゾンを含む泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機を備え、
前記残留塩素除去部は、前記第3領域において残留オゾンを除去する。
【0008】
本開示の一つである水生生物の養殖に用いる循環式水処理システムは、
水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムであって、
前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも固形物を除去する除去部と、
前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において、前記飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させる電気分解部と、
前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、
を有し、
更に、前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において、前記飼育水に含まれるアンモニウムイオンを検出するアンモニウムイオンセンサを有する。
【0009】
本開示の一つである水生生物の養殖に用いる循環式水処理システムは、
水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムであって、
前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも固形物を除去する除去部と、
前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において、前記飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させる電気分解部と、
前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、
を有し、
前記除去部は、
泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機と、
当該除去部の前工程の領域から導入される前記飼育水を貯める貯留槽と、
前記貯留槽に貯留された前記飼育水を前記泡沫分離機に導入する導入部と、
前記泡沫分離機を経た前記飼育水を前記貯留槽に戻す導出部と、
前記貯留槽に貯められた前記飼育水を当該除去部の後工程の領域に排出する排出部と、
を具備する。
【0010】
本開示の一つである水生生物の養殖に用いる循環式水処理システムは、
水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムであって、
前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも固形物を除去する除去部と、
前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において、前記飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させる電気分解部と、
前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、
を有し、
前記除去部は、泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機を備え、当該除去部の前工程の領域から供給される前記飼育水を導入路によって前記泡沫分離機に導入した後、前記泡沫分離機を通過させ、前記導入路の入口が配置される導入元の領域とは異なる当該除去部の後工程の領域に導出する。
【0011】
本開示の一つである水生生物の養殖方法は、
固形物を除去する除去部と、電気分解を行う電気分解部と、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、を有するとともに、水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムを用い、
前記除去部により、前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも前記固形物を除去し、
前記電気分解部により、前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において前記飼育水を電気分解して塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させ、
前記残留塩素除去部により、前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去し、
更に、前記循環式処理システムにおいてオゾンを発生させるオゾン発生部を設け、
前記除去部において、泡沫分離機を設け、
前記泡沫分離機により、前記オゾン発生部で発生したオゾンを含む泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させ、
前記残留塩素除去部により、前記第3領域において少なくとも残留塩素及び残留オゾンを除去する。
【0012】
本開示の一つである水生生物の養殖方法は、
固形物を除去する除去部と、電気分解を行う電気分解部と、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、を有するとともに、水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムを用い、
前記除去部により、前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも前記固形物を除去し、
前記電気分解部により、前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において前記飼育水を電気分解して塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させ、
前記残留塩素除去部により、前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去し、
更に、前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において前記飼育水に含まれるアンモニウムイオンをアンモニウムイオンセンサによって検出する。
【0013】
本開示の一つである水生生物の養殖方法は、
固形物を除去する除去部と、電気分解を行う電気分解部と、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、を有するとともに、水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムを用い、
前記除去部により、前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも前記固形物を除去し、
前記電気分解部により、前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において前記飼育水を電気分解して塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させ、
前記残留塩素除去部により、前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去し、
更に、前記除去部において、泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機と、前記飼育水を貯める貯留槽と、前記飼育水を前記泡沫分離機に導入する導入部と、前記飼育水を前記貯留槽に戻す導出部と、前記飼育水を排出する排出部と、を設け、
前記除去部では、当該除去部の前工程の領域から導入される前記飼育水を前記貯留槽に貯め、前記貯留槽に貯留された前記飼育水を前記導入部によって前記泡沫分離機に導入し、前記泡沫分離機を経た前記飼育水を前記導出部によって前記貯留槽に戻し、前記貯留槽に貯められた前記飼育水を前記排出部によって当該除去部の後工程の領域に排出する。
【0014】
本開示の一つである水生生物の養殖方法は、
固形物を除去する除去部と、電気分解を行う電気分解部と、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、を有するとともに、水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムを用い、
前記除去部により、前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも前記固形物を除去し、
前記電気分解部により、前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において前記飼育水を電気分解して塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させ、
前記残留塩素除去部により、前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去し、
更に、前記除去部において、泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機を設け、
前記除去部では、当該除去部の前工程の領域から供給される前記飼育水を導入路によって前記泡沫分離機に導入した後、前記泡沫分離機を通過させ、前記導入路の入口が配置される導入元の領域とは異なる当該除去部の後工程の領域に導出する。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る技術は、微生物への依存を抑えた方法で水中のアンモニア又はアンモニウムイオンをより効果的に分解することができ、且つ、アンモニアやアンモニウムイオン以外の汚染要素を効果的に除去し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態の循環式水処理システムを概念的に例示する説明図である。
図2図2は、図1の循環式水処理システムの電気的構成を簡略的に例示するブロック図である。
図3図3は、図1の循環式水処理システムの除去部、電気分解槽等の構成を簡略的に例示する説明図である。
図4図4は、図3の構成を更に具体化した例を示す説明図である。
図5図5は、図1の循環式水処理システムの電気分解槽、反応槽等の構成を簡略的に例示する説明図である。
図6図6は、図1の循環式水処理システムの電気分解槽を図5とは異なる方向から見た構成を簡略的に例示する説明図である。
図7図7は、図1の循環式水処理システムの残留塩素除去槽、待機槽等の具体例を示す説明図である。
図8図8は、第2実施形態の循環式水処理システムの除去部、電気分解槽等の構成を簡略的に例示する説明図である。
図9図9は、第3実施形態の循環式水処理システムの電気分解槽、反応槽等の構成を簡略的に例示する説明図である。
図10図10は、第4実施形態の循環式水処理システムの残留塩素除去槽、切替部、待機槽等の具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の〔1〕~〔20〕の各々は、本開示に含まれる特徴的技術の一例である。
【0018】
〔1〕 水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムであって、
前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも固形物を除去する除去部と、
前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において、前記飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させる電気分解部と、
前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、
を有し、
更に、オゾンを発生させるオゾン発生部を有し、
前記除去部は、前記オゾン発生部で発生したオゾンを含む泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機を備え、
前記残留塩素除去部は、前記第3領域において残留オゾンを除去する
水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0019】
水生生物の養殖において飼育水の水質を維持するためには、水生生物が排泄する糞、残餌、寄生虫などの固形物を取り除き、養殖システム外に排出する必要がある。更に、アンモニア、亜硝酸、硝酸などの窒素化合物成分は、可能な限り無害化する必要がある。この点に関し、上記〔1〕の循環式水処理システムは、以下のような第1の作用、効果を生じさせる。まず、上記〔1〕の循環式水処理システムは、第1領域の飼育水に含まれる固形物を、除去部によって取り除くことができる。更に、上記〔1〕の循環式水処理システムは、第1領域を通過した後の第2領域において、電気分解部によってアンモニア又はアンモニウムイオンを分解することができ、しかも、塩分を含む飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物(例えば次亜塩素酸ナトリウム)を生成した上で、この塩素酸化合物を飼育水内に存在するアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させて直接的に窒素に分解することができるため、分解の過程で、亜硝酸、硝酸などの発生を確実に抑制することができる。しかも、上記〔1〕の循環式水処理システムは、除去部によって固形物の除去を行った上で飼育水の電気分解を行うため、固形物が電気分解を阻害することを確実に抑制することができ、電気分解を良好に行いやすい。更に、上記〔1〕の循環式水処理システムは、残留塩素除去部により第3領域の残留塩素を除去することができるため、電気分解に基づく塩素酸化合物の生成によってアンモニア又はアンモニウムイオンの分解を可能としつつ、分解に使用されなかった塩素酸化合物が第3領域の飼育水に残存したとしても、この塩素酸化合物を除去することができる。このように、上記〔1〕の循環式水処理システムでは、第3領域を通過した後の飼育水に糞や残餌などの固形物の残留することを確実に抑制することができ、アンモニア、亜硝酸、硝酸などの窒素化合物成分が残留することも確実に抑制することができるため、飼育水の清浄化、無害化の面で極めて有利である。
【0020】
更に、上記〔1〕の循環式水処理システムは、以下の第2の作用、効果も生じさせる。
この循環式水処理システムは、オゾン発生部で発生したオゾンを含む泡沫を泡沫分離機で発生させ、オゾンを含む泡沫に対して第1領域の飼育水に含まれる固形物を吸着させることができる。つまり、この循環式水処理システムは、第1領域の飼育水が泡沫分離機を通過する過程で、固形物の除去だけでなく、オゾンによる殺菌や消毒も行うことができ、水生生物の生育を阻害する要因である、ウイルス、細菌、寄生虫の影響を確実に抑制することができる。しかも、この循環式水処理システムは、固形物の除去を行う泡沫分離機においてオゾンを作用させるという特徴的な技術により、殺菌や消毒をより効率的且つより効果的に行うことができる。
【0021】
〔2〕 前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において前記飼育水に含まれるアンモニウムイオンを検出するアンモニウムイオンセンサを含む
〔1〕に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0022】
上記〔2〕の循環式水処理システムは、第2領域でアンモニアやアンモニウムイオンの分解を行った後の第4領域において飼育水に含まれるアンモニウムイオンを検査することができる。但し、塩分を含有する飼育水内のアンモニウムイオンをアンモニウムイオンセンサによって検出する場合、妨害物質(アンモニウムイオンセンサがアンモニウムイオンと誤認識しやすい物質)が飼育水内に含まれている可能性が高く、何ら措置を講じないでアンモニウムイオンセンサによって検出を行うと、妨害物質の影響によりアンモニウムイオンを正確に検出できない虞がある。しかし、上記〔2〕の循環式水処理システムは、第1領域において固形物の除去を行い、第3領域において活性炭による除去を行った上で、第4領域においてアンモニウムイオンの検出を行うことができるため、妨害物質が効果的に除去された飼育水において、アンモニウムイオンの濃度変動を精度良く検出することができる。
【0023】
〔3〕 水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムであって、
前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも固形物を除去する除去部と、
前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において、前記飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させる電気分解部と、
前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、
を有し、
更に、前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において、前記飼育水に含まれるアンモニウムイオンを検出するアンモニウムイオンセンサを有する
水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0024】
上記〔3〕の循環式水処理システムでも、上述の第1の作用、効果が生じる。よって、上記〔3〕の循環式水処理システムでも、第3領域を通過した後の飼育水に糞や残餌などの固形物の残留することを確実に抑制することができ、アンモニア、亜硝酸、硝酸などの窒素化合物成分が残留することも確実に抑制することができるため、飼育水の清浄化、無害化の面で極めて有利である。
【0025】
上記〔3〕の循環式水処理システムは、更に、以下の作用、効果も生じる。
この循環式水処理システムは、第2領域でアンモニアやアンモニウムイオンの分解を行った後の第4領域において飼育水に含まれるアンモニウムイオンを検査することができる。但し、塩分を含有する飼育水内のアンモニウムイオンをアンモニウムイオンセンサによって検出する場合、妨害物質(アンモニウムイオンセンサがアンモニウムイオンと誤認識しやすい物質)が飼育水内に含まれている可能性が高く、何ら措置を講じないでアンモニウムイオンセンサによって検出を行うと、妨害物質の影響によりアンモニウムイオンを正確に検出できない虞がある。しかし、上記〔3〕の循環式水処理システムは、第1領域において固形物の除去を行い、第3領域において残留塩素除去部による除去を行った上で、第4領域においてアンモニウムイオンの検出を行うことができるため、妨害物質が効果的に除去された飼育水において、アンモニウムイオンの濃度変動を精度良く検出することができる。
【0026】
〔4〕 前記除去部は、
当該除去部の前工程の領域から導入される前記飼育水を貯める貯留槽と、
前記貯留槽に貯留された前記飼育水を前記泡沫分離機に導入する導入部と、
前記泡沫分離機を経た前記飼育水を前記貯留槽に戻す導出部と、
前記貯留槽に貯められた前記飼育水を当該除去部の後工程の領域に排出する排出部と、
を具備する
〔1〕又は〔2〕に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0027】
上記〔4〕の循環式水処理システムは、除去部によって固形物を除去する際に、前工程の領域から導入される飼育水を一旦は貯留槽にため、この貯留槽から泡沫分離機に導入して固形物を除去した後、泡沫分離機に戻すように動作させることができる。除去部がこのように構成されていれば、飼育水を循環させる過程で貯留槽がバッファとなり、泡沫分離機への導入の速度や泡沫分離機からの導出の速度が他の工程の循環の速度と異なっていても、他の工程において水位が大きく変動しにくい。
【0028】
〔5〕 水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムであって、
前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも固形物を除去する除去部と、
前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において、前記飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させる電気分解部と、
前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、
を有し、
前記除去部は、
泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機と、
当該除去部の前工程の領域から導入される前記飼育水を貯める貯留槽と、
前記貯留槽に貯留された前記飼育水を前記泡沫分離機に導入する導入部と、
前記泡沫分離機を経た前記飼育水を前記貯留槽に戻す導出部と、
前記貯留槽に貯められた前記飼育水を当該除去部の後工程の領域に排出する排出部と、
を具備する
水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0029】
上記〔5〕の循環式水処理システムでも、上述の第1の作用、効果が生じる。よって、上記〔5〕の循環式水処理システムでも、第3領域を通過した後の飼育水に糞や残餌などの固形物の残留することを確実に抑制することができ、アンモニア、亜硝酸、硝酸などの窒素化合物成分が残留することも確実に抑制することができるため、飼育水の清浄化、無害化の面で極めて有利である。
【0030】
上記〔5〕の循環式水処理システムは、更に、以下の作用、効果も生じる。
この循環式水処理システムは、除去部によって固形物を除去する際に、前工程の領域から導入される飼育水を一旦は貯留槽にため、この貯留槽から泡沫分離機に導入して固形物を除去した後、泡沫分離機に戻すように動作させることができる。除去部がこのように構成されていれば、飼育水を循環させる過程で貯留槽がバッファとなり、泡沫分離機への導入の速度や泡沫分離機からの導出の速度が他の工程の循環の速度と異なっていても、他の工程において水位が大きく変動しにくい。
【0031】
〔6〕 前記除去部は、当該除去部の前工程の領域から供給される前記飼育水を導入路によって前記泡沫分離機に導入した後、前記泡沫分離機を通過させ、前記導入路の入口が配置される導入元の領域とは異なる当該除去部の後工程の領域に導出する
〔1〕又は〔2〕に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0032】
上記〔6〕の循環式水処理システムは、除去部によって固形物を除去する際に、前工程の領域から供給される飼育水を導入路によって泡沫分離機に導入した後、泡沫分離機を通過させ、導入路の入口が配置される導入元の領域とは異なる後工程の領域に導出するため、循環する飼育水を、より確実に泡沫分離機を通過させることができ、固形物の除去の効果や、オゾンによる殺菌、消毒の効果をより一層高めることができる。
【0033】
〔7〕 水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムであって、
前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも固形物を除去する除去部と、
前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において、前記飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させる電気分解部と、
前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、
を有し、
前記除去部は、泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機を備え、当該除去部の前工程の領域から供給される前記飼育水を導入路によって前記泡沫分離機に導入した後、前記泡沫分離機を通過させ、前記導入路の入口が配置される導入元の領域とは異なる当該除去部の後工程の領域に導出する
水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0034】
上記〔7〕の循環式水処理システムでも、上述の第1の作用、効果が生じる。よって、上記〔7〕の循環式水処理システムでも、第3領域を通過した後の飼育水に糞や残餌などの固形物の残留することを確実に抑制することができ、アンモニア、亜硝酸、硝酸などの窒素化合物成分が残留することも確実に抑制することができるため、飼育水の清浄化、無害化の面で極めて有利である。
【0035】
更に、上記〔7〕の循環式水処理システムは、更に、以下の作用、効果も奏する。
上記〔7〕の循環式水処理システムは、除去部によって固形物を除去する際に、前工程の領域から供給される飼育水を導入路によって泡沫分離機に導入した後、泡沫分離機を通過させ、導入路の入口が配置される導入元の領域とは異なる後工程の領域に導出するため、循環する飼育水を、より確実に泡沫分離機を通過させることができ、固形物の除去の効果や、オゾンによる殺菌、消毒の効果をより一層高めることができる。
【0036】
〔8〕 前記アンモニウムイオンセンサの計測結果に基づいて前記電気分解部の電気分解を制御する制御部を備える
〔2〕又は〔3〕に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0037】
上記〔8〕の循環式水処理システムは、妨害物質が効果的に除去された飼育水においてアンモニウムイオンの濃度の変動を精度良く計測した上で、この計測結果を利用して、電気分解を制御することができる。よって、この循環式水処理システムは、残留塩素除去部を通過した後の第4領域に存在するアンモニウムイオンの度合いに合わせた電気分解が可能である。
【0038】
〔9〕 前記第2領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する領域において前記飼育水に含まれる残留塩素を検出する残留塩素センサを含み、
前記制御部は、前記アンモニウムイオンセンサの計測結果及び前記残留塩素センサの計測結果に基づいて前記電気分解部の電気分解を制御する
〔8〕に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0039】
上記〔9〕の循環式水処理システムは、電気分解を行う第2領域を通過した後の飼育水に含まれる残留塩素の度合い、及び残留塩素除去部を通過した後の第4領域に存在するアンモニウムイオンの度合いに合わせて、電気分解を制御することができる。
【0040】
〔10〕 前記第2領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する領域において前記飼育水に含まれる残留塩素を検出する残留塩素センサを含む
〔1〕から〔9〕のいずれか一つに記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0041】
上記〔10〕の循環式水処理システムは、電気分解を行う第2領域を通過した後の飼育水に含まれる残留塩素の度合いを検査することができ、検査結果を特徴的な制御や処理に役立てることができる。
【0042】
上記〔10〕の構成を応用した制御や処理としては、残留塩素センサが検出した残留塩素の度合いに応じた電気分解を行う制御であってもよく、残留塩素センサが検出した残留塩素が所定値を超えた場合に残留塩素を除去や中和を行う制御であってもよく、残留塩素の度合いに基づいてアンモニアやアンモニウムイオンの度合いを間接的に把握したり、その度合いに基づく制御を行ったりしてもよい。いずれにしても、残留塩素センサが第2領域を通過した後の飼育水に含まれる残留塩素の度合いを検査することで、制御や処理をより一層高度化することができる。
【0043】
〔11〕 前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において前記飼育水に含まれる残留塩素を検出する残留塩素センサと、
前記残留塩素センサによって所定の計測結果が得られた場合に、前記第4領域の前記飼育水から残留塩素を除去又は前記第4領域の前記飼育水を前記飼育槽に戻すことを停止する処置部と、
を有する〔1〕から〔9〕のいずれか一つに記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0044】
上記〔11〕の循環式水処理システムは、第2領域を通過した後の飼育水に含まれる残留塩素の度合いによっては、第4領域の飼育水から残留塩素を除去するか又は第4領域の飼育水を飼育槽に戻すことを停止することができ、残留塩素が存在する飼育水がそのまま飼育槽に戻されるリスクを抑えることができる。
【0045】
〔12〕 前記処置部は、前記残留塩素センサの検出値が所定値を超えた場合に前記飼育槽に戻る前の前記飼育水に対して残留塩素と中和反応を生じさせる中和剤を供給する中和剤供給部を備える
〔10〕又は〔11〕に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0046】
上記〔12〕の循環式水処理システムは、残留塩素センサの検出値が所定値を超えた場合に飼育槽に戻る前の飼育水に対して残留塩素と中和反応を生じさせる中和剤を供給することができるため、第4領域の飼育水に残留塩素が一定程度含まれる場合には、飼育水に含まれる残留塩素を中和させて確実に低減させることができる。
【0047】
〔13〕 前記除去部を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する電気分解槽と、
前記電気分解槽を通過した前記飼育水が貯留され又は流動し、前記電気分解槽で生じた前記塩素酸化合物と前記飼育水に含まれるアンモニア又はアンモニウムイオンの反応時間を確保する反応槽と、
前記反応槽を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する残留塩素除去槽と、
前記残留塩素除去槽を通過した前記飼育水が貯留され又は流動し、前記飼育槽に戻る前の前記飼育水の水質を検査する待機槽と、
前記電気分解槽を通過してから前記残留塩素除去槽に流入するまでの前記飼育水に含まれる残留塩素を検出する第1残留塩素センサと、
前記待機槽の前記飼育水に含まれる残留塩素を検出する第2残留塩素センサと、
前記アンモニウムイオンセンサの計測結果及び前記第1残留塩素センサの計測結果に基づいて前記電気分解部の電気分解を制御する制御部と、
前記第2残留塩素センサによって所定の計測結果が得られた場合に、前記第4領域の前記飼育水から残留塩素を除去又は前記第4領域の前記飼育水を前記飼育槽に戻すことを停止する処置部と、
を有し、
前記第2領域は、少なくとも前記電気分解槽の内部領域を含み、
前記第3領域は、少なくとも前記残留塩素除去槽の内部領域を含み、
前記第4領域は、少なくとも前記待機槽の内部領域を含む
〔2〕又は〔3〕に記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0048】
上記〔13〕の循環式水処理システムは、電気分解槽で塩素酸化合物(例えば次亜塩素酸ナトリウム)を発生させてアンモニアやアンモニウムイオンの分解を行うが、電気分解槽で分解しきれないアンモニアやアンモニウムイオンを反応槽において塩素酸化合物と反応させることができる。よって、電気分解槽においてある程度の流動性があり、アンモニアやアンモニウムイオンが反応しきれずに電気分解槽から排出されたとしても、反応槽において反応を促進することができる。この循環式水処理システムは、このようにアンモニアやアンモニウムイオンをより確実に反応させる一方で、残留塩素除去槽の後工程において待機槽を確保し、飼育槽に戻る前の飼育水内のアンモニウムイオンをアンモニウムイオンセンサで検査し且つ残留塩素を第2残留塩素センサによって検査することができる。更に、この循環式水処理システムは、電気分解槽を通過してから残留塩素除去槽に流入するまでの飼育水に含まれる残留塩素も第1残留塩素センサによって検査することができる。そして、この循環式水処理システムは、2種類の残留塩素センサの計測結果を別々の用途に用いることができ、アンモニウムイオンセンサの計測結果及び第1残留塩素センサの計測結果を利用して電気分解を制御し、第2残留塩素センサの計測結果(第2領域を通過した後の飼育水に含まれる残留塩素の度合い)が所定の計測結果である場合には、第4領域の飼育水から残留塩素を除去するか又は第4領域の飼育水を飼育槽に戻すことを停止することができ、残留塩素が存在する飼育水がそのまま飼育槽に戻されるリスクを抑えることができる。
【0049】
〔14〕 前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において前記飼育水のpHを計測するpHセンサと、
前記pHセンサの計測結果に基づいて、前記第4領域又は前記第4領域から前記飼育槽までの領域のpHを調整するpH調整部と、
を有する
〔1〕から〔13〕のいずれか一つに記載の水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム。
【0050】
上記〔14〕の循環式水処理システムは、電気分解部での電気分解に基づいてアンモニア又はアンモニウムイオンを分解し、その後に残留塩素除去部によって残留塩素の除去を行った後、飼育槽に戻す前の飼育水のpHをpHセンサによって検査することができる。上述の構成のように、電気分解部の後工程で残留塩素除去部によって残留塩素を除去する方式では、残留塩素除去部を経由した後の飼育水のpHがばらつく懸念がある。従って、上記〔14〕の循環式水処理システムのように、残留塩素除去部よりも下流側の第4領域において飼育水のpHをpHセンサによって検査し、その計測結果に基づいてpHを調整すれば、第4領域に入り込む飼育水のpHがばらついたとしても、正確性の高い計測結果に基づいてpHを適切に調整しやすい。
【0051】
〔15〕 固形物を除去する除去部と、電気分解を行う電気分解部と、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、を有するとともに、水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムを用い、
前記除去部により、前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも前記固形物を除去し、
前記電気分解部により、前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において前記飼育水を電気分解して塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させ、
前記残留塩素除去部により、前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去し、
更に、前記循環式処理システムにおいてオゾンを発生させるオゾン発生部を設け、
前記除去部において、泡沫分離機を設け、
前記泡沫分離機により、前記オゾン発生部で発生したオゾンを含む泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させ、
前記残留塩素除去部により、前記第3領域において少なくとも残留塩素及び残留オゾンを除去する
水生生物の養殖方法。
【0052】
上記〔15〕の水生生物の養殖方法でも、上述の第1の作用、効果が生じる。よって、上記〔15〕の水生生物の養殖方法でも、第3領域を通過した後の飼育水に糞や残餌などの固形物の残留することを確実に抑制することができ、アンモニア、亜硝酸、硝酸などの窒素化合物成分が残留することも確実に抑制することができるため、飼育水の清浄化、無害化の面で極めて有利である。
【0053】
更には、上記〔15〕の養殖方法は、更に、以下の作用、効果も生じさせる。
上記〔15〕の養殖方法は、オゾン発生部で発生したオゾンを含む泡沫を泡沫分離機で発生させ、オゾンを含む泡沫に対して第1領域の飼育水に含まれる固形物を吸着させる。つまり、この養殖方法は、第1領域の飼育水が泡沫分離機を通過する過程で、固形物の除去だけでなく、オゾンによる殺菌や消毒も行うことができ、水生生物の生育を阻害する要因である、ウイルス、細菌、寄生虫の影響を確実に抑制することができる。しかも、固形物の除去を行う泡沫分離機においてオゾンを作用させるという特徴的な技術により、殺菌や消毒をより効率的且つより効果的に行うことができる。
【0054】
〔16〕 前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において、前記飼育水に含まれるアンモニウムイオンをアンモニウムイオンセンサによって検出する
〔15〕に記載の水生生物の養殖方法。
【0055】
上記〔16〕の養殖方法は、第2領域でアンモニアやアンモニウムイオンの分解を行った後の第4領域において飼育水に含まれるアンモニウムイオンを検査することができる。但し、塩分を含有する飼育水内のアンモニウムイオンをアンモニウムイオンセンサによって検出する場合、妨害物質(アンモニウムイオンセンサがアンモニウムイオンと誤認識しやすい物質)が飼育水内に含まれている可能性が高く、何ら措置を講じないでアンモニウムイオンセンサによって検出を行うと、妨害物質の影響によりアンモニウムイオン濃度の変動を正確に検出できない虞がある。しかし、上記〔16〕の養殖方法は、第1領域において固形物の除去を行い、第3領域において残留塩素除去部による除去を行った上で、第4領域においてアンモニウムイオンの検出を行うことができるため、妨害物質が効果的に除去された飼育水において、アンモニウムイオン濃度の変動を精度良く検出することができる。
【0056】
〔17〕 固形物を除去する除去部と、電気分解を行う電気分解部と、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、を有するとともに、水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムを用い、
前記除去部により、前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも前記固形物を除去し、
前記電気分解部により、前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において前記飼育水を電気分解して塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させ、
前記残留塩素除去部により、前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去し、
更に、前記第3領域を通過した前記飼育水が前記飼育槽に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において前記飼育水に含まれるアンモニウムイオンをアンモニウムイオンセンサによって検出する
水生生物の養殖方法。
【0057】
上記〔17〕の水生生物の養殖方法でも、上述の第1の作用、効果が生じる。よって、上記〔17〕の水生生物の養殖方法でも、第3領域を通過した後の飼育水に糞や残餌などの固形物の残留することを確実に抑制することができ、アンモニア、亜硝酸、硝酸などの窒素化合物成分が残留することも確実に抑制することができるため、飼育水の清浄化、無害化の面で極めて有利である。
【0058】
上記〔17〕の養殖方法は、更に、以下の作用、効果も生じる。
この養殖方法は、第2領域でアンモニアやアンモニウムイオンの分解を行った後の第4領域において飼育水に含まれるアンモニウムイオンを検査することができる。但し、塩分を含有する飼育水内のアンモニウムイオンをアンモニウムイオンセンサによって検出する場合、妨害物質(アンモニウムイオンセンサがアンモニウムイオンと誤認識しやすい物質)が飼育水内に含まれている可能性が高く、何ら措置を講じないでアンモニウムイオンセンサによって検出を行うと、妨害物質の影響によりアンモニウムイオンを正確に検出できない虞がある。しかし、上記〔17〕の養殖方法は、第1領域において固形物の除去を行い、第3領域において残留塩素除去部による除去を行った上で、第4領域においてアンモニウムイオンの検出を行うことができるため、妨害物質が効果的に除去された飼育水において、アンモニウムイオンの濃度変動を精度良く検出することができる。
【0059】
〔18〕 固形物を除去する除去部と、電気分解を行う電気分解部と、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、を有するとともに、水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムを用い、
前記除去部により、前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも前記固形物を除去し、
前記電気分解部により、前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において前記飼育水を電気分解して塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させ、
前記残留塩素除去部により、前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去し、
更に、前記除去部において、泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機と、前記飼育水を貯める貯留槽と、前記飼育水を前記泡沫分離機に導入する導入部と、前記飼育水を前記貯留槽に戻す導出部と、前記飼育水を排出する排出部と、を設け、
前記除去部では、当該除去部の前工程の領域から導入される前記飼育水を前記貯留槽に貯め、前記貯留槽に貯留された前記飼育水を前記導入部によって前記泡沫分離機に導入し、前記泡沫分離機を経た前記飼育水を前記導出部によって前記貯留槽に戻し、前記貯留槽に貯められた前記飼育水を前記排出部によって当該除去部の後工程の領域に排出する
水生生物の養殖方法。
【0060】
上記〔18〕の水生生物の養殖方法でも、上述の第1の作用、効果が生じる。よって、上記〔18〕の水生生物の養殖方法でも、第3領域を通過した後の飼育水に糞や残餌などの固形物の残留することを確実に抑制することができ、アンモニア、亜硝酸、硝酸などの窒素化合物成分が残留することも確実に抑制することができるため、飼育水の清浄化、無害化の面で極めて有利である。
【0061】
上記〔18〕の養殖方法は、更に、以下の作用、効果も生じる。
この養殖方法は、除去部によって固形物を除去する際に、前工程の領域から導入される飼育水を一旦は貯留槽にため、この貯留槽から泡沫分離機に導入して固形物を除去した後、泡沫分離機に戻すように動作させることができる。除去部がこのように構成されていれば、飼育水を循環させる過程で貯留槽がバッファとなり、泡沫分離機への導入の速度や泡沫分離機からの導出の速度が他の工程の循環の速度と異なっていても、他の工程において水位が大きく変動しにくい。
【0062】
〔19〕 固形物を除去する除去部と、電気分解を行う電気分解部と、少なくとも残留塩素を除去する残留塩素除去部と、を有するとともに、水生生物を養殖する槽であり且つ塩分を含む飼育水が収容された飼育槽内の前記飼育水を前記飼育槽外で処理した後、処理後の前記飼育水を前記飼育槽に戻すように循環させる循環式処理システムを用い、
前記除去部により、前記飼育槽から送られる前記飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも前記固形物を除去し、
前記電気分解部により、前記第1領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第2領域において前記飼育水を電気分解して塩素酸化合物を発生させ、発生した前記塩素酸化合物を前記飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させ、
前記残留塩素除去部により、前記第2領域を通過した前記飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去し、
更に、前記除去部において、泡沫を発生させ、前記第1領域の前記飼育水に含まれる前記固形物を前記泡沫に吸着させる泡沫分離機を設け、
前記除去部では、当該除去部の前工程の領域から供給される前記飼育水を導入路によって前記泡沫分離機に導入した後、前記泡沫分離機を通過させ、前記導入路の入口が配置される導入元の領域とは異なる当該除去部の後工程の領域に導出する
水生生物の養殖方法。
【0063】
上記の〔19〕の水生生物の養殖方法でも、上述の第1の作用、効果が生じる。よって、上記の〔19〕の水生生物の養殖方法でも、第3領域を通過した後の飼育水に糞や残餌などの固形物の残留することを確実に抑制することができ、アンモニア、亜硝酸、硝酸などの窒素化合物成分が残留することも確実に抑制することができるため、飼育水の清浄化、無害化の面で極めて有利である。
【0064】
上記〔19〕の養殖方法は、除去部によって固形物を除去する際に、前工程の領域から供給される飼育水を導入路によって泡沫分離機に導入した後、泡沫分離機を通過させ、導入路の入口が配置される導入元の領域とは異なる後工程の領域に導出するため、循環する飼育水を、より確実に泡沫分離機を通過させることができ、固形物の除去の効果や、オゾンによる殺菌、消毒の効果をより一層高めることができる。
【0065】
〔20〕 制御部により、前記アンモニウムイオンセンサの計測結果に基づいて前記電気分解部の電気分解を制御する
〔16〕又は〔17〕に記載の水生生物の養殖方法。
【0066】
上記〔20〕の養殖方法は、妨害物質が効果的に除去された飼育水においてアンモニウムイオンの濃度の変動を精度良く計測した上で、この計測結果を利用して、電気分解を制御することができる。よって、この養殖方法では、残留塩素除去部付近を通過した後の第4領域に存在するアンモニウムイオンの度合いに合わせた電気分解が可能である。
【0067】
<第1実施形態>
1.水生生物の養殖に用いる循環式水処理システム1の概要
図1に例示される循環式水処理システム1は、水生生物の養殖に用いられるシステムである。循環式水処理システム1は、塩分を含む飼育水が収容された飼育槽3内の飼育水を飼育槽3の外部で処理した後、処理後の飼育水を飼育槽3に戻すように循環させる閉鎖循環式養殖システムとして構成され、水を循環利用する方式とされている。循環式水処理システム1は、飼育槽3内で水生生物を養殖する場合、飼育槽3の内部で水生生物を継続的に飼育しつつ、飼育槽3での飼育中に飼育水内に残存した残餌や生物が排出する糞尿を、飼育槽3からを水を循環させて再び飼育槽3に戻すまでの過程で分解し浄化するように動作する。
【0068】
図1のように、循環式水処理システム1は、主に、飼育槽3、除去部5、電気分解槽11、反応槽15、濾過タンク17、活性炭槽21、待機槽(水質調整槽)25、処置部31などを備える。更に、循環式水処理システム1は、温調機35、フィルタ37なども備える。循環式水処理システム1の電気的構成は、例えば、図2のようになっている。飼育槽3の内部で飼育することができる水生生物の種類は様々であり、例えば、魚類、甲殻類、貝類などが好適例として挙げられ、これら以外の種類(例えば、イカ、タコ等)であってもよい。
【0069】
2.各部の構成、動作
(飼育槽)
図1に示される飼育槽3は、水生生物を飼育し、養殖する槽である。飼育槽3の内部には、人工海水や天然海水などの塩分を含んだ飼育水が収容され、この飼育水内で魚介類などの水生生物が飼育される。図1の例では、複数(例えば4つ)の飼育槽3が設けられ、これらの飼育槽3内の飼育水は、フィルタ37に集められるように誘導されてフィルタ37によって濾過され、フィルタ37から複数の飼育槽3に分配されるように内部循環する構成となっている。飼育槽3内の飼育水の水温は、温調機35によって所望の設定温度に調整される。なお、図1の例では、複数の飼育槽3が用いられるが単一の水槽によって構成されてもよい。
【0070】
(除去部)
図1に示される除去部5は、飼育槽3から送られる飼育水が貯留される又は流動する第1領域において、少なくとも固形物を除去するように機能する。飼育槽3の飼育水は流路41を通って除去部5に誘導される。図3のように、除去部5は、オゾン発生機9と、泡沫分離機7と、貯留槽60と、導入部62と、導出部64と、排出部66とを備える。図3等において符号Wは、循環する飼育水の一部を概念的に示す。
【0071】
貯留槽60は、除去部5の前工程の領域から導入される飼育水を貯める槽である。図1の例では、除去部5の前工程の領域は、飼育槽3内の領域である。飼育槽3から貯留槽60へ飼育水を流動させる方法は、ポンプを用いて流動させる方法であってもよく、高低差を利用して流動させる方法であってもよい。
【0072】
オゾン発生機9は、オゾン発生部の一例に相当し、例えば公知の方法でオゾンを発生させ、発生させたオゾンを泡沫分離機7に供給する。オゾン発生機9からのオゾンを泡沫分離機7に導入する方法は特に限定されないが、例えば、公知の泡沫分離機において泡発生部に設けられた空気を導入するための導入口から、オゾン発生機9で発生したオゾンを供給する方法が挙げられる。泡沫分離機7は、オゾン発生機9で発生したオゾンを含む泡沫を発生させ、飼育槽3から送られた飼育水が貯留される又は流動する第1領域の飼育水に含まれる固形物を泡沫に吸着させるように動作する。図3の例では、第1領域は、貯留槽60の内部領域である。
【0073】
導入部62は、貯留槽60に貯留された飼育水を泡沫分離機7の内部に導入する流路である。導出部64は、泡沫分離機7を経た飼育水を、泡沫分離機7から貯留槽60に戻す流路である。排出部66は、貯留槽60に貯められた飼育水を除去部5の後工程の領域に排出する流路を有する。図1図3の例では、除去部5の後工程の領域は、電気分解槽11内の領域である。
【0074】
除去部5では、泡沫分離機7に導入された飼育水に含まれる糞、残餌などの固形物、魚介類の代謝物の除去タンパク質、菌、ウイルス、寄生虫などを、泡沫分離機7内で発生する細かい泡に付着させて飼育水から除去する。しかも、泡沫分離機7内で発生する泡は、オゾンを含む気泡であるため殺菌力が高く、この殺菌力は、泡沫分離機7を通過して導出部64に戻る飼育水にも作用する。このような動作により、後工程の電気分解槽11に汚れが流出することを確実に抑制し、汚れが電気分解槽11の電気分解を妨害することを確実に抑制する。
【0075】
図3の例では、貯留槽60の底60Aの近くに流路41が連通しており、流路41からの飼育水は貯留槽60の側部における下端寄りの位置から貯留槽60内に供給される。導入部62における導入口(飼育水を取り込む入口)は、貯留槽60内において底60A寄りの位置に配置され、流路41から貯留槽60内に導入された直後の飼育水を取り込みやすくなっている。一方、泡沫分離機7を通過した飼育水は、導出部64によって流路41よりも排出部66に近い位置に導出される。導出部64の導出口(飼育水を放出する出口)は、貯留槽60の底60Aよりも水面W1に近い位置に配置される。排出部66は、貯留槽60内の飼育水を貯留槽60の外部に向けて流す流路として構成される。排出部66は、貯留槽60内において所定の第1高さよりも下側に位置する水を貯留槽60の外部に誘導せず、上記第1高さよりも上側に位置する水を貯留槽60の外部に誘導するように構成される。上記第1高さは、排出部66の流路内壁面における貯留槽60との境界の下端の高さであり、貯留槽60内の飼育水の水面が、この第1高さよりも高い場合には、第1高さよりも高い領域の水が排出部66から排出されるようになっている。
【0076】
図3に示される除去部5の構成は、より具体的には、図4のように構成することができる。図4の具体例では、泡沫分離機7において泡発生部8と泡沫分離槽7Aとが設けられている。更に、管として構成された導入部62の導入口(取水口)が貯留槽60の底部付近且つ貯留槽60における流路45に近い位置に配置され、この導入口を覆うように、フィルタ61が設けられている。貯留槽60に貯留される飼育水のうち、フィルタ61を通過し得る飼育水が導入部62から泡沫分離機7へ導入される。フィルタ61は、粒径の大きい物体の通過を遮断し、粒径の小さい物体の通過を許容するように構成され、例えば、網状に構成されている。なお、図4には図示されていないが、導入部62を通って泡沫分離機7に流入させるように飼育水を流動させるポンプが設けられていてもよい。
【0077】
図4の構成において、泡発生部8は、導入部62から流入する飼育水に対してオゾン発生機9で生成されたオゾンを含む気体を注入し、泡発生部8を通過する飼育水内にオゾンを含む気体の泡を含有させる。泡発生部8を通過した飼育水は、オゾンを含む気泡を含有する飼育水として、管として構成される導入部63を介して泡沫分離槽7Aに流入する。泡沫分離槽7Aでは、固形物が付着した気泡が水面付近に集まるように分離され、集まった気泡は、排出路65を通って泡沫分離槽7Aの外部に排出される。一方、泡沫分離槽7Aの下部側の飼育水は、管として構成された導出部64によって貯留槽60の水面付近に排出される。導出部64の出口(排出口)は、貯留槽60内に貯留される飼育水において一定方向に渦が生じるように配置される。排出用の流路として構成される排出部66は、貯留槽60の水面近くに配置され、貯留槽60内に貯留される飼育水の上澄みが排出部66から排出されるようになっている。
【0078】
(電気分解槽)
図5に示される電気分解槽11は、電気分解を行う槽であり、除去部5を通過した飼育水が貯留される又は流動する槽である。電気分解槽11の内部領域は、上記の第1領域(図3の例では、貯留槽60内の領域)を通過した飼育水が貯留される又は流動する領域であり、第2領域の一例に相当する。電気分解槽11には電気分解部13が設けられる。電気分解部13は、上記第2領域において、飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物(例えば次亜塩素酸ナトリウム)を発生させ、発生した塩素酸化合物を飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させ、アンモニア又はアンモニウムイオンを分解する。更に、電気分解槽11内では、電気分解部13によって塩素酸化合物を発生させるため、飼育水の殺菌、脱臭、脱色を行うことができる。
【0079】
電気分解槽11では、以下の式(1)に示される電気分解が行われる。
2NaCl+3HO→NaClO+NaCl+2HO+H↑・・・(1)
【0080】
そして、以下の式(2)(3)に示される化学反応により、アンモニアの分解、又は、アンモニウムイオンの分解が行われる。
2NH+3NaClO→N↑+3NaCl+3HO・・・(2)
2NH +3NaClO→N↑+3HO+3NaCl+2H・・・(3)
【0081】
図5に示される電気分解槽11において、当該電気分解槽11の内部領域は、電極部55が配置され且つ電気分解が行われる「領域」である。電気分解槽11には、電気分解部13が設けられている。電気分解部13は、上記「領域」(第2領域)に配置される第1電極55A及び第2電極55Bを有する電極部55と、第1電極55Aと第2電極55Bの電極間に電圧を印加する電圧印加部51とを有する。
【0082】
電圧印加部51は、制御装置52と駆動回路53とを有する。制御装置52は、情報処理部、記憶部、通信部などを有する情報処理装置であり、各種制御や各種演算を行い得る装置である。駆動回路53は、制御装置52からの指令に応じて、第1電極55Aと第2電極55Bの電極間に電圧を印加する回路である。
【0083】
電極部55は、第1電極55A及び第2電極55Bを保持する電極保持部55Cを具備し、第1電極55Aと第2電極55Bと電極保持部55Cとが一体的に構成されている。一体的に構成された電極部55が、電気分解槽11に対して着脱される。電極部55を電気分解槽11に対して着脱可能にする構成は特に限定されないが、例えば、装着時には電気分解槽11に設けられた載置台に対して電極保持部55Cを載置し、取り外し時には、電極保持部55Cを載置台から離脱させるような構成が挙げられる。図5の例では、複数の第1電極55Aと複数の第2電極55Bが設けられ、複数の第1電極55A及び複数の第2電極55Bはいずれも、金属材料によって板状に構成されている。電極部55では、第1電極55Aと第2電極55Bとが間隔をあけて交互に配置される。複数の第1電極55Aは互いに短絡して構成され、駆動回路53の第1の端子に対して導電路54Aを介して電気的に接続される。複数の第2電極55Bは互いに短絡して構成され、駆動回路53の第2の端子に対して導電路54Bを介して電気的に接続される。図5の例では、第1電極55Aと第2電極55Bとが間隔をあけて交互に配置される。
【0084】
電気分解槽11に用いられる電極は、海水で腐食されず、塩素酸化合物の発生効率の高い金属材料が望ましい。例えば、チタンの表面を白金イリジウム合金によって被覆してなる電極を好適に用いることができる。白金は導電性、耐腐食性に優れ、イリジウムは、耐久性、化学安定性に優れ、白金イリジウム合金は、表面が均一で滑らかな特性を有する。チタンの表面を白金イリジウム合金によって被覆してなる電極は、陽極にも、陰極にも用いることができる。なお、ここで説明した電極の例はあくまで一例であり、後述される電極の反転方法が用いられない場合には、チタンをルテニウムによって被覆した電極などを陽極に用いてもよく、その他の材料を用いてもよい。
【0085】
電極部55の一部又は全部が、電気分解槽11内において飼育水の水面W2側に配置され、第1電極55Aと第2電極55Bとの間に飼育水が介在するように配置される。一方で、電気分解槽11には、水流発生部57が設けられ、水流発生部57によって電極部55の下側から上側(電極部側)に向かう水流を発生させるようになっている。
【0086】
水流発生部57は、電気分解槽11の外部から流路42を通って電気分解槽11内に導入された飼育水を、電気分解槽11内において電極部55の下側から上側に上昇させるように流す構造を有する。流路42は、排出部66を通って排出される飼育水を電気分解槽11内に流す流路であり、排出部66によって構成されていてもよく、排出部66に続く流路として構成されていてもよい。水流発生部57は、第1仕切壁57Aを有する。第1仕切壁57Aは、電気分解槽11における所定の上流領域と所定の下流領域とを仕切る壁である。上記下流領域は、第1仕切壁57Aよりも下流側の領域であって、且つ、電極部55が設けられた領域である。上記上流領域は、第1仕切壁57Aよりも上流側且つ上記下流領域よりも上流側の領域である。
【0087】
図5の例では、上記上流領域は、第1仕切壁57Aと電気分解槽11の外周壁及び底壁11Zにおける第1仕切壁57Aよりも上流側の部分とによって構成される第1飼育水流動室11Aの内部領域であり、流路42から飼育水が流れ込む領域である。第1飼育水流動室11Aにおいて底壁側には、第1飼育水流動室11A内の飼育水を第2飼育水流動室へと移動させるための開口部が設けられている。図5の例では、当該開口部は、第1仕切壁57Aの下端部と電気分解槽11の外周壁及び底壁11Zとによって構成される。
【0088】
上記下流領域は、第1仕切壁57Aと、第2仕切壁57Bと、電気分解槽11の外周壁及び底壁11Zにおける第1仕切壁57Aと第2仕切壁57Bの間の部分とによって構成される第2飼育水流動室11Bの内部領域であり、電極部55の一部又は全部が配置される領域である。第2飼育水流動室11Bにおいて第2仕切壁57Bの上端部の高さは、電気分解槽11の外周壁の上端部の高さよりも低くなっており、第2飼育水流動室11Bに第2仕切壁57Bの上端部を超える水が入り込んだ場合には第2仕切壁57Bを超えて第2飼育水流動室11Bの下流側に水が流れるようになっている。このように構成されるため、第2飼育水流動室11Bでは、下側の上記開口部から飼育水が導入され、第2仕切壁57Bの上端部を超えるように飼育水が導出される。従って、電極部55の下側から電極部55側に向かって上昇するように飼育水の水流が発生する。
【0089】
なお、図5の例では、第2仕切壁57Bが設けられているが、第2仕切壁57Bが設けられていなくてもよい。この場合、電気分解槽11において第1仕切壁57Aよりも下流側全体が上記下流領域であり、第1仕切壁57Aと、電気分解槽11の外周壁及び底壁11Zにおける第1仕切壁57Aよりも下流側の部分とによって第2飼育水流動室11Bが構成される
【0090】
図6のように、電気分解槽11には、誘導部58が設けられる。誘導部58は、電気分解槽11内で電極部55から沈み落ちた析出物を電気分解槽11内の所定位置に向けて誘導しつつ集めるように機能する。図5図6の例では、上記所定位置は、底壁11Zの一部の上側の位置である。図5図6の例では、第2飼育水流動室11Bよりも下流側において、第2仕切壁57Bと電気分解槽11の外周壁及び底壁11Zにおける第2仕切壁57Bよりも下流側の部分とによって、第3飼育水流動室11Cが構成され、第3飼育水流動室11Cにおける底壁11Zの一部の上側の位置が上記所定位置とされている。誘導部58は、上下方向に対して傾斜した傾斜面を有する傾斜部58Aを備える。傾斜部58A,58Bの傾斜面は第3飼育水流動室11Cの内壁面を構成し、第3飼育水流動室11C内では沈下する物体(例えば析出物)が傾斜部58Aの傾斜面に達した場合に、更に沈下する過程で当該傾斜面によって案内され、底壁11Zの上記所定位置付近に誘導されるようになっている。傾斜部58A,58Bの傾斜面は、これら傾斜面に沿って沈下する物体を、上下方向と直交する所定の第1方向に移動させるように(具体的には、第1方向において排出部59側に移動させるように)案内する。
【0091】
図5図6のように、電気分解槽11には、排出部59が設けられる。図5の例では、2か所に排出部59が設けられる。但し、この例に限定されず、排出部59の数は1であってもよく、3以上であってもよい。排出部59は、電気分解槽11内で電極部55から沈み落ちた析出物を排出する管59Aとこの管59Aを開閉する開閉部59Bを有する。排出部59は、電極部55よりも下位置において析出物を管59Aの内部に取り込み、析出物を電気分解槽11から管59Aを通して排出するように機能する。
【0092】
図5図6の例では、開閉部59Bは、例えば手動操作によって管59Aを遮断する状態と開放する状態とに切り替える開閉栓である。なお、開閉部59Bは、制御によって開閉が切り替えられる電磁弁などであってもよい。いずれにしても、開閉部59Bが開放状態となった場合、電気分解槽11内の上記所定位置付近から飼育水が管59Aを通って排出される。上記所定位置付近に析出物が沈殿する場合には、析出物が飼育水と共に管59Aを通って排出される。なお、図5図6の例では、管59Aは、電気分解槽11において常設された固定管であるが、電気分解槽11に対して装着及び離脱が可能な管であってもよい。また、上記所定位置付近から管を介して排出する場合、電気分解槽11内の水圧を利用して排出してもよく、ポンプなどによって吸引又は流動させるように排出してもよい。
【0093】
図5図6のように、電気分解槽11には、第1誘導路56が設けられる。第1誘導路56は誘導路の一例に相当する。第1誘導路56は、電気分解槽11内において第1の高さよりも下側に位置する水を電気分解槽11の外部に誘導せず、第1の高さよりも上側に位置する水を電気分解槽11の外部に誘導するように流路として機能する。第1の高さは、所定高さの一例に相当する。図5の例では、電気分解槽11内の飼育水の水面W2が第1誘導路56の入口(電気分解槽11の出口である第1誘導路56との境界部)における流路内壁面の下端位置よりも上位置となっており、電気分解槽11内の飼育水の水面付近の水が第1誘導路56の底部の高さを超えて第1誘導路56へと流れ込むようになっている。図5の例では、第1誘導路56の入口における流路内壁面の下端の高さが第1の高さ(所定高さ)であり、この第1の高さ(所定高さ)は、電極部55の下端よりも上位置となっている。電極部55の下端の高さは、複数の第1電極55A及び複数の第2電極55Bのうちの最も低い位置の高さである。第1誘導路56は、電気分解槽11内の飼育水を反応槽15に向けて流すように機能する。
【0094】
(反応槽)
反応槽15は、電気分解槽11から流路43を通って供給される飼育水を貯留し、貯留される飼育水に含まれるアンモニア又はアンモニウムイオンと、電気分解槽11で生じた塩素酸化合物(例えば次亜塩素酸ナトリウム)との反応時間を確保し、これらの化学反応を促進する槽である。流路43は、第1誘導路56によって構成されていてもよく、第1誘導路56に続く流路として構成されていてもよい。電気分解槽11内において飼育水内に存在していたアンモニア又はアンモニウムイオンの全てが電気分解槽11内で塩素酸化合物と反応しきれずに残存したまま電気分解槽11から流出し、電気分解槽11で生じた塩素酸化合物が反応しきれずに電気分解槽11から流出した場合、反応槽15内で上記(2)の式、又は上記(3)の式のいずれか又は両方の化学反応が生じ、アンモニア又はアンモニウムイオンが分解される。
【0095】
図5のように、反応槽15には、第2誘導路72が設けられる。第2誘導路72は、反応槽15内において第2の高さよりも下側に位置する水を反応槽15の外部に誘導せず、第2の高さよりも上側に位置する水を反応槽15の外部に誘導するように流路として機能する。図5の例では、反応槽15内の飼育水の水面W3が第2誘導路72の入口(反応槽15の出口である第2誘導路72との境界部)における流路内壁面の下端位置よりも上位置となっており、反応槽15内の飼育水の水面付近の水が、第2誘導路72の底部の高さを超えて第2誘導路72へと流れ込むようになっている。図5の例では、第2誘導路72の入口における流路内壁面の下端の高さが第2の高さである。第2誘導路72は、反応槽15内の飼育水を反応槽15の後工程に向けて流すように機能する。
【0096】
反応槽15の後工程には、残留塩素を検出するための検出領域を構成する濾過タンク17が設けられる。濾過タンク17は、反応槽15から流路44を通って供給される飼育水を貯留し、流路45へと導出するように構成された部分である。流路44は、第2誘導路72を通って排出される飼育水を濾過タンク17内に流す流路であり、第2誘導路72によって構成されていてもよく、第2誘導路72に続く流路として構成されていてもよい。図1の例では、流路44、濾過タンク17、流路45によって反応槽15から活性炭槽21へと飼育水を導く流路が構成されているが、反応槽15から活性炭槽21へ飼育水が流れる構成であれば、他の構成(例えば、濾過タンク17が設けられずに反応槽15から活性炭槽21へと管が続く構成)が用いられてもよい。
【0097】
第1残留塩素センサ19は、電気分解槽11を通過してから残留塩素除去槽(具体的には活性炭槽21)に流入するまでの飼育水に含まれる残留塩素の濃度を検出するセンサであり、例えば、反応槽15から活性炭槽21までの間に飼育水が流れる領域において飼育水に含まれる残留塩素の濃度を検出する。図1に示される代表例では、第1残留塩素センサ19は、濾過タンク17内の飼育水に含まれる残留塩素を検出する。本明細書において、残留塩素とは、飼育水内に残留する結合塩素及び遊離塩素を意味する。飼育水内に含まれる結合塩素の量と遊離塩素の量を合わせた総塩素量が、残留塩素量である。第1残留塩素センサ19が、反応槽15と活性炭槽21の間の領域において飼育水に含まれる残留塩素を検出することにより、電気分解槽11及び反応槽15でのアンモニア又はアンモニウムイオンの分解で残存した塩素酸化合物量を計測することができる。
【0098】
(残留塩素除去槽)
図5の例では、残留塩素除去槽の一例として活性炭槽21が設けられている。残留塩素除去槽は、飼育水から少なくとも残留塩素を除去する槽であり、残留塩素除去部に飼育水を通すことで、飼育水から残留塩素を除去するように機能する。図5に例示される活性炭槽21は、反応槽15を通過した飼育水が貯留される槽であり、具体的には、第1残留塩素センサ19が配置された検出領域(図1の例では濾過タンク17内の領域)よりも下流側に設けられる槽である。活性炭槽21は、電気分解槽11で発生した塩素酸化合物(例えば次亜塩素酸ナトリウム)などを除去する槽として機能する。活性炭槽21には、活性炭を備えた活性炭部23が設けられ、活性炭部23が残留塩素除去部の一例に相当する。活性炭部23は、活性炭により、活性炭槽21内の飼育水から少なくとも残留塩素及び残留オゾンを除去する。図1の例では、活性炭槽21の内部領域が第3領域の一例に相当し、第2領域を通過した飼育水が貯留される又は流動する領域である。
【0099】
活性炭槽21では、例えば、以下の式(4)のように反応し、アンモニアやアンモニウムイオンの分解に使用されなかった余剰の塩素酸化合物を除去することができる。
HClO+C→CO+H+Cl・・・(4)
【0100】
図5に例示される活性炭槽21は、例えば図7のように構成することができる。図7の例では、活性炭槽21が、飼育水を通す流路として構成され、且つ、当該流路の内部空間には活性炭の粒が充填される形態で活性炭部23が構成されている。活性炭槽21では、活性炭部23内の隙間(具体的には活性炭の粒が充填された内部空間の隙間)を飼育水が流動するように構成され、活性炭槽21の入口21Aから流入した飼育水が、活性炭槽21内の多数の粒の隙間を通過する過程で、飼育水に含まれる残留塩素や残留オゾンが活性炭に吸着し、出口21Bから排出される飼育水は、塩素やオゾンの一部又は全部が除去された飼育水となる。
【0101】
(待機槽)
流路45から活性炭槽21内に導入された飼育水は、活性炭槽21の内部領域を通過して流路46に排出され、流路46を通って待機槽25に流入する。待機槽25は、活性炭槽21を通過した飼育水が貯留され、飼育槽3に戻る前の水質を検査する槽である。待機槽25の内部領域は、第4領域の一例に相当し、上述の第3領域を通過した飼育水が飼育槽3に戻る前に貯留される又は流動する領域である。
【0102】
第2残留塩素センサ27は、上述の第3領域を通過した飼育水が飼育槽3に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において飼育水に含まれる残留塩素の濃度を検出するセンサであり、図1の例では、待機槽25内の飼育水に含まれる残留塩素の濃度を検出する。第2残留塩素センサ27は、活性炭部23に設けられた活性炭の劣化などによって残留塩素が流出した場合に、このような流出による残留塩素の濃度変動をより正確に検知することができる。
【0103】
アンモニウムイオンセンサ29は、上述の第3領域を通過した飼育水が飼育槽3に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において飼育水に含まれるアンモニウムイオンの濃度を検出するセンサであり、図1の例では、待機槽25内の飼育水に含まれるアンモニウムイオンの濃度を検出する。アンモニウムイオンセンサ29は、電気分解槽11や反応槽15によってアンモニウムイオンが完全に反応しきれずに残存した場合、このアンモニウムイオンの濃度変動をより正確に検知することができる。
【0104】
pHセンサ28は、上述の第3領域を通過した飼育水が飼育槽3に戻る前に貯留される又は流動する第4領域において飼育水のpH(水素イオン指数)を計測するセンサである。図1の例では、pHセンサ28は、待機槽25内の飼育水のpHを計測し、待機槽25内の飼育水のpHを特定する値を制御装置52に与える。
【0105】
待機槽25では、曝気装置(図示省略)により曝気を行い、飼育水からCO2を除去する。そして、待機槽25内の飼育水は流路47を通って飼育槽3に流入するようになっている。待機槽25から流路47を介して飼育槽3に飼育水を流す動作は、待機槽25から飼育槽3へ継続的に飼育水を流す状態と、待機槽25から飼育槽3へ飼育水が流れることを停止又は遮断する状態とに切り替えることができるようになっている。
【0106】
3.循環式水処理システム1の制御
(制御のための構成)
循環式水処理システム1では、飼育槽3内の飼育水を、除去部5、電気分解槽11、反応槽15、濾過タンク17、活性炭槽21、待機槽25の順に循環させる。飼育槽3から飼育水を循環させて飼育槽3に戻す循環経路の途中には、飼育水を流動させるポンプ(図示省略)が複数箇所に設けられている。図2に示される制御装置52は、上記ポンプの駆動や停止を制御する。更に、制御装置52は、温調機35の駆動や停止、オゾン発生機9の駆動や停止、泡沫分離機7の駆動や停止、電気分解部13の駆動や停止、処置部31の動作などを制御する。
【0107】
図2に示される制御装置52には、第1残留塩素センサ19の検出値、第2残留塩素センサ27の検出値、pHセンサ28の検出値、アンモニウムイオンセンサ29の検出値が入力される。第1残留塩素センサ19から入力される検出値は、上述の検出領域(具体的には濾過タンク17内)の飼育水に含まれる残留塩素の濃度を示す値である。第2残留塩素センサ27から入力される検出値は、上述の第4領域(具体的には待機槽25内)の飼育水に含まれる残留塩素の濃度を示す値である。pHセンサ28から入力される検出値は、上述の第4領域(具体的には待機槽25内)の飼育水のpH(水素イオン指数)を示す値である。アンモニウムイオンセンサ29から入力される検出値は、上述の第4領域(具体的には待機槽25内)の飼育水に含まれるアンモニウムイオンの濃度を示す値である。
【0108】
(電気分解の制御)
制御装置52は、制御部の一例に相当し、電気分解部13の電気分解を制御する。制御装置52は、アンモニウムイオンセンサ29の計測結果及び第1残留塩素センサ19の計測結果に基づいて電気分解部13の電気分解を制御してもよく、アンモニウムイオンセンサ29の計測結果に基づいて電気分解部13の電気分解を制御してもよく、第1残留塩素センサ19の計測結果に基づいて電気分解部13の電気分解を制御してもよい。制御装置52は、アンモニウムイオンセンサ29の計測結果に基づいて電気分解部13の電気分解を制御する場合、例えば、アンモニウムイオンセンサ29の検出値が所定値以下になるように第1電極55Aと第2電極55Bとの間で流す電流をフィードバック制御してもよい。制御装置52は、第1残留塩素センサ19の計測結果に基づいて電気分解部13の電気分解を制御する場合、例えば、第1残留塩素センサ19の検出値が所定範囲内になるように、第1電極55Aと第2電極55Bとの間で流す電流をフィードバック制御してもよい。
【0109】
本実施形態で用いる飼育水(例えば海水)においてアンモニア濃度と有効塩素の濃度を把握する場合、不連続点塩素処理法に基づいて把握することできる。例えば、飼育水においてアンモニア及びアンモニウムイオンの濃度が有効残留塩素の濃度に対して一定濃度以上となっている第1状態では、塩素酸化合物の添加量が大きいほど有効残留塩素濃度も上昇する。一方、アンモニア又はアンモニウムイオンは存在するが、アンモニア及びアンモニウムイオンの濃度が有効残留塩素の濃度に対して上記一定濃度以下である第2状態では、アンモニア又はアンモニウムイオンとの反応で消費されるため、塩素酸化合物を添加しても有効残留塩素濃度は減少する。そして、アンモニア及びアンモニウムイオンが存在しない第3状態では、塩素酸化合物の添加量が大きいほど有効残留塩素濃度も上昇する。飼育水のpH、塩分濃度、温度が一定であれば、上記一定濃度は固定値として考えることができる。
【0110】
制御装置52は、電気分解部13において第1電極55Aと第2電極55Bの間に流れる電流を検出可能に構成され、第1電極55Aと第2電極55Bの間に流れる電流を継続的に監視する。第1電極55Aと第2電極55Bとの間に流れる電流を制御装置52が監視する構成は様々な構成を採用することができ、例えば、上記電流を電流センサによって検出し、電流センサが検出した値を制御装置52が取得する構成であってもよく、その他の構成であってもよい。そして、制御装置52は、アンモニウムイオンセンサ29及び第1残留塩素センサ19のいずれかの検出値又は両方の検出値に基づいて、第1電極55Aと第2電極55Bの間で流す電流を制御する。
【0111】
制御装置52は、アンモニウムイオンセンサ29及び第1残留塩素センサ19の両方の検出値に基づいて第1電極55Aと第2電極55Bの間で流す電流を制御するように第1の電流制御を行ってもよい。第1電極55Aと第2電極55Bの間で流す電流を大きくするほど、電気分解が促進され、塩素酸化合物の発生量が大きくなる。よって、制御装置52は、第1の電流制御を行う場合、アンモニウムイオンセンサ29が検出するアンモニウムイオン濃度の値(検出値)が第1閾値以下となるように第1電極55Aと第2電極55Bの間で流す電流を調整する。第1閾値は0であってもよく、0よりも少し大きい値であってもよい。一方、アンモニア及びアンモニウムイオンが存在しない状態では、第1電極55Aと第2電極55Bの間で流す電流を大きくするほど、有効塩素濃度が上昇する。よって、制御装置52は、アンモニウムイオンセンサ29の検出値が第1閾値以下となる電流範囲、且つ、第1残留塩素センサ19が検出する残留塩素量の値(検出値)が第2閾値以下となる電流範囲となるように第1電極55Aと第2電極55Bの間で流す電流を調整する。
【0112】
制御装置52は、第1残留塩素センサ19の検出値を用いず、アンモニウムイオンセンサ29の検出値に基づいて第1電極55Aと第2電極55Bとの間で流す電流を制御するように第2の電流制御を行ってもよい。制御装置52は、第2の電流制御を行う場合も、アンモニウムイオンセンサ29が検出するアンモニウムイオン濃度の値(検出値)が第1閾値以下となるように第1電極55Aと第2電極55Bの間で流す電流を調整する。第1閾値は0であってもよく、0よりも少し大きい値であってもよい。制御装置52は、第2の電流制御を行う場合、「第1電極55Aと第2電極55Bの間を流れる電流を設定電流値に制御して一定時間電気分解を行った後、アンモニウムイオンセンサ29が検出するアンモニウムイオン濃度の値(検出値)を確認する電流調整制御」を繰り返す。この制御では、前回の電流調整制御においてアンモニウムイオンセンサ29の検出値が第1閾値を超えていれば、その前回の電流調整制御で用いられた設定電流値から所定割合(例えば10%)増大させた電流値を次の設定電流値とするように次の電流調整制御を行う。一方、前回の電流調整制御においてアンモニウムイオンセンサ29の検出値が第1閾値以下であれば、その前回の電流調整制御で用いられた設定電流値を次の設定電流値とするように次の電流調整制御を行う。このようにすることで、アンモニウムイオンセンサ29の検出値が第1閾値以下になるまで少しずつ電流を増大させながら電気分解を行うことができ、アンモニウムイオンセンサ29の検出値が第1閾値以下となった場合には、その電流状態を維持しながら電気分解を行うことができる。
【0113】
制御装置52は、アンモニウムイオンセンサ29の検出値を用いず、第1残留塩素センサ19の検出値に基づいて第1電極55Aと第2電極55Bとの間で流す電流を制御するように第3の電流制御を行ってもよい。制御装置52は、第3の電流制御を行う場合、「第1電極55Aと第2電極55Bの間を流れる電流を設定電流値に制御して一定時間電気分解を行った後、第1残留塩素センサ19が検出する残留塩素量の値(検出値)を確認する電流調整制御」を繰り返す。この制御では、前々回の電流調整制御での設定電流値に対して前回の電流調整制御での設定電流値を所定割合(例えば10%)増大させた場合において、前々回の電流調整制御で検出された残留塩素量の値(検出値)よりも、前回の電流調整制御で検出された残留塩素量の値(検出値)のほうが小さい場合、上述の第2状態であると推定することができるため、この場合、次の電流調整制御(今回の電流調整制御)では、前回の電流調整制御で用いられた設定電流値から所定割合(例えば10%)増大させた電流値を設定電流値とするように電流調整制御を行う。つまり、検出される残留塩素量の値が減少する間は、設定電流値を少しずつ上昇させるように各回の電流調整制御を行う。一方、このように設定電流値を少しずつ上昇させる制御を行っている場合において、前々回の電流調整制御での設定電流値に対して前回の電流調整制御での設定電流値を所定割合(例えば10%)増大させた場合に、前々回の電流調整制御で検出された残留塩素量の値(検出値)よりも、前回の電流調整制御で検出された残留塩素量の値(検出値)のほうが大きい場合には、上述の第3状態であると推定することができるため、この場合、次の電流調整制御(今回の電流調整制御)では、前回の電流調整制御で用いられた設定電流値から所定割合(例えば10%)減少させた電流値を設定電流値とするように電流調整制御を行う。なお、前々回の電流調整制御での設定電流値に対して前回の電流調整制御での設定電流値を所定割合(例えば10%)減少させた場合において、前々回の電流調整制御で検出された残留塩素量の値(検出値)よりも前回の電流調整制御で検出された残留塩素量の値(検出値)のほうが小さい場合には、次の電流調整制御(今回の電流調整制御)では、前回の電流調整制御で用いられた設定電流値から所定割合(例えば10%)減少させた電流値を設定電流値とするように電流調整制御を行い、前々回の電流調整制御で検出された残留塩素量の値(検出値)よりも前回の電流調整制御で検出された残留塩素量の値(検出値)のほうが大きい場合には、次の電流調整制御(今回の電流調整制御)では、前回の電流調整制御で用いられた設定電流値から所定割合(例えば10%)増大させた電流値を設定電流値とするように電流調整制御を行えばよい。
【0114】
(残留塩素の監視に基づく制御)
処置部31は、第2残留塩素センサ27によって所定の計測結果が得られた場合に、第4領域の飼育水から残留塩素を除去するように動作してもよく、第4領域の飼育水を飼育槽3に戻すことを停止するように動作してもよい。
【0115】
例えば、処置部31は、第2残留塩素センサ27が検出する残留塩素の濃度(検出値)が所定値を超えた場合に飼育槽3に戻る前の飼育水に対して中和剤を供給してもよい。中和剤は、例えば、チオ硫酸ナトリウム、カテキン、ポリフェノール、システインなどを好適に用いることができる。図7の例では、処置部31の少なくとも一部を構成する要素として、第4領域の飼育水に対して中和剤を供給する中和剤供給装置31Aが設けられる。具体的には、例えば、制御装置52及び中和剤供給装置31Aが、処置部31及び中和剤供給部として機能し、第2残留塩素センサ27が検出する残留塩素の濃度(検出値)が所定値を超えた場合に、制御装置52が中和剤供給装置31Aに対して中和剤投入指令を与え、この中和剤投入指令に応じて、中和剤供給装置が「残留塩素と中和反応を生じさせる中和剤」を待機槽25内に投入するように動作してもよい。
【0116】
処置部31は、第2残留塩素センサ27が検出する残留塩素の濃度の検出値が所定値を超えた場合に、待機槽25から飼育槽3に飼育水を戻さずに、待機槽25から別領域に飼育水を流すように流路を切り替えるように動作してもよい。例えば、流路47の途中に三方弁(図示省略)を設け、流路47を流れる飼育水の供給先が三方弁によって飼育槽3と別領域とに切り替えられるようになっていてもよい。この例では、制御装置52及び上記三方弁を処置部31として機能させることができる。具体的には、制御装置52は、第2残留塩素センサ27が検出する残留塩素の濃度の検出値が所定値以下である場合に、三方弁からの供給先を飼育槽3とし、第2残留塩素センサ27が検出する残留塩素の濃度の検出値が所定値を超える場合には、三方弁からの供給先を別領域とするように制御を行えばよい。
【0117】
或いは、処置部31は、第2残留塩素センサ27が検出する残留塩素の濃度の検出値が所定値を超えた場合に、待機槽25から飼育槽3に飼育水を流す流路を遮断して飼育槽3に飼育水を戻すことを停止させてもよく、システム1での飼育水の循環を停止させて飼育槽3に飼育水を戻すことを停止させてもよい。例えば、流路47の途中に開閉弁(図示省略)を設け、開閉弁が開放状態となっている場合に、流路47の流動が許容され、開閉弁が遮断状態となっている場合に、流路47の流動が遮断されるようにしてもよい。この例では、制御装置52及び上記開閉弁を処置部31として機能させることができる。具体的には、制御装置52は、第2残留塩素センサ27が検出する残留塩素の濃度の検出値が所定値以下である場合に、開閉弁を開放状態とし、第2残留塩素センサ27が検出する残留塩素の濃度の検出値が所定値を超える場合には、開閉弁を遮断状態とするように制御を行えばよい。この例では、開閉弁を遮断状態とする場合、待機槽25が溢れないように、システムにおいて飼育水を循環させるポンプの駆動を停止させてもよく、待機槽25の水面が一定レベルを超えた場合に、待機槽25から別領域に飼育水が逃げるように流路が設けられる構成としてもよい。
【0118】
(pHの監視に基づく制御)
本実施形態では、第4領域の飼育水に対してpH調整材を供給するように調整材供給装置32が設けられる。図7の例では、調整材供給装置32は、待機槽25内の飼育水にpH調整材を供給する構成をなしている。制御装置52は、調整材供給装置32に対して供給時期と供給速度の指示を与え、調整材供給装置32は制御装置52から指示された供給時期に、制御装置52から指示された供給速度でpH調整材を供給する。
【0119】
調整材供給装置32から供給するpH調整材としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれかを好適に用いることができ、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれかを用いることがより好ましく、炭酸ナトリウムを用いることがより一層好ましい。pH調整材として炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどを用いる場合、いずれかを含有する水溶液を用いるとよい。pHの大きい炭酸ナトリウムを用いると、強アルカリであるため、飼育水のpHを上昇させやすく、イオンバランスが崩れにくいというメリットがある。炭酸水素ナトリウムは、イオンバランスが崩れにくく、pHの緩衝機能を発揮し得るというメリットがある。なお、海水に含まれるマグネシウムの析出によるpH調整効果の阻害を防ぐため、pH調整材のpHは、11.5以下であることが好ましい。
【0120】
制御装置52による制御の方法は様々であるが、例えば、制御装置52は、pHセンサ28が検出した飼育水のpHが第1基準値以下となった場合に、当該第1基準値よりも大きいpHのpH調整材を所定の供給速度で供給するように調整材供給装置32を動作させ、調整材供給装置32がpH調整材を供給している状態でpHセンサ28が検出した飼育水のpHが第2基準値を超えた場合に調整材供給装置32によるpH調整材の供給を停止させるようにオンオフ制御を行ってもよい。なお、上述の例では、第1基準値と第2基準値は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0121】
なお、pH調整材の消費量を低減するため、炭酸カルシウムの固形物(例えば、ペレット等)を第4領域(例えば、流路46、47や待機槽25の内部領域)に設けてもよい。
【0122】
上述の例では、pH調整材の投入タイミングを制御するが、このような方法に代えて、pH調整材を継続的に一定の供給速度で供給してもよい。
【0123】
4.電極の清浄化
図5のように、本実施形態では、制御装置52及び駆動回路53が電圧印加部51として機能する。電圧印加部51は、第1電極55Aを陽極とし且つ第2電極55Bを陰極とするように電圧を印加して上記「領域」内(具体的には電気分解槽11内)で電気分解を行う第1状態と、第2電極55Bを陽極とし且つ第1電極55Aを陰極とするように電圧を印加する第2状態とに切り替えるように動作する。例えば、電圧印加部51は、第1状態を継続させて飼育水を電気分解する動作と、第2状態を継続させて飼育水を電気分解する動作とを、定期的に切り替える。定期的に切り替える場合の切り替えの周期は、例えば、数十分おきであってもよく、数時間おきであってもよく、1日おきであってもよく、これ以外の周期であってもよい。
【0124】
電圧印加部51が第1状態と第2状態を切り替えるタイミングは、定期的なタイミングに限定されず、予め定められた条件が成立したタイミングであってもよい。例えば、前回の切替時点から循環式水処理システム1の稼働時間が一定時間に達したタイミングで切り替えてもよく、何らかのセンサによる検出値が所定値となったタイミングであってもよく、ランダムに決定されるタイミングであってもよく、これら以外のタイミングであってもよい。
【0125】
本実施形態では、流路42からの電気分解槽11への飼育水の導水及び電気分解槽11から第1誘導路56への飼育水の排水を連続的に継続するように「飼育水の入れ替え」を行いながら、電圧印加部51によって第1電極55Aを陽極とし且つ第2電極55Bを陰極とするように電圧を継続的に印加する第1状態の動作を継続的に行い、第1状態の動作中に切り替え条件が成立した場合、上述の「飼育水の入れ替え」を行いながら第1状態から第2状態への切り替えを行い、切替後には、上述の「飼育水の入れ替え」を行いながら第2電極55Bを陽極とし且つ第1電極55Aを陰極とするように電圧を継続的に印加する第2状態の動作を継続的に行い、第2状態の動作中に切り替え条件が成立した場合、上述の「飼育水の入れ替え」を行いながら第2状態から第1状態の切り替えを行うといった流れで、第1状態の動作と第2状態の動作とを交互に行う。なお、第1状態の動作の継続中や第2状態の動作の継続中には、動作を中断せずに連続させてもよく、何らかの理由によって一時的に動作を中断することがあってもよい。
【0126】
5.効果の例
水生生物の養殖において飼育水の水質を維持するためには、水生生物が排泄する糞、残餌、寄生虫などの固形物を取り除き、養殖システム外に排出する必要がある。更に、アンモニア、亜硝酸、硝酸などの窒素化合物成分は、可能な限り無害化する必要がある。この点に関し、循環式水処理システム1及び当該システム1を用いた養殖方法では、上述の第1領域の飼育水に含まれる固形物等を、泡沫分離機7を備える除去部5によって取り除くことができる。更に、循環式水処理システム1は、上記第1領域を通過した後の第2領域において、電気分解部13によってアンモニア又はアンモニウムイオンを分解することができ、しかも、塩分を含む飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物(例えば次亜塩素酸ナトリウム)を生成した上で、この塩素酸化合物を飼育水内に存在するアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させて直接的に窒素に分解することができるため、分解の過程で、亜硝酸、硝酸などの発生を確実に抑制することができる。また、循環式水処理システム1は、除去部5によって固形物の除去を行った上で飼育水の電気分解を行うため、固形物が電気分解を阻害することを確実に抑制することができ、電気分解を良好に行いやすい。更に、循環式水処理システム1は、上記第2領域を通過した飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、活性炭により残留塩素を除去することができる。よって、アンモニアの分解に使用されなかった塩素酸化合物が上記第3領域の飼育水に含有されていたとしても、この塩素酸化合物を活性炭部23によって効果的に除去することができる。このように、循環式水処理システム1では、上記第3領域を通過した後の飼育水において糞や残餌などの固形物が確実に低減しており、アンモニア、亜硝酸、硝酸などの窒素化合物成分も確実に抑えられているため、飼育水の清浄化、無害化の面で極めて有利である。
【0127】
従来技術としては、特許文献1のように、微生物を用いてアンモニアを分解して硝酸等に変化させる技術が存在する。しかし、この種の技術では、水生生物の種類や飼育密度等によって飼育環境(例えば、新陳代謝や水質など)が変わり得る場合、飼育環境に応じた適切な制御を行うことが難しい。
【0128】
例えば、水生生物には、20℃以下の低温を好む生物もいれば、25℃以上の温度帯を好む生物もいる。これに対し、アンモニアの分解に寄与する微生物は、一般的に20℃以下では活性が弱くなるため、低温度帯では、浄化・分解能力を担保するために微生物の絶対量を増やす必要があり、微生物の絶対量が増えるほど濾過槽の必要サイズは大きくなってしまう。ゆえに、この種の技術では、常温でも低温でも浄化や分解を十分に行うためには、低温を想定して微生物の絶対量を大きくしておき、それに対応させて濾過槽のサイズを大きくするような過剰な設備設計にならざるを得ない。一方、25℃以上の高温度帯では、微生物の活性が向上し、アンモニアの分解や浄化は比較的早く進むが、高温度帯では病原菌の繁殖も活発となるため、薬剤の投与や水替えの頻度を増やさなければならず、生産性や作業性の低下を招きやすいという問題がある。
【0129】
これに対し、上述の循環式水処理システム1及び上述の養殖方法は、微生物への依存を抑えた方法で水中のアンモニアやアンモニウムイオンをより効果的に分解することができ、上記の問題を解決しやすい。しかも、アンモニアやアンモニウムイオン以外の汚染要素(飼育水に含まれる糞、残餌などの固形物、魚介類の代謝物の除去タンパク質、菌、ウイルス、寄生虫など)も効果的に除去することができ、相乗効果を発揮することができる。
【0130】
更に、循環式水処理システム1は、オゾン発生機9で発生したオゾンを含む泡沫を泡沫分離機7で発生させ、第1領域の飼育水に含まれる固形物をオゾンを含む泡沫に対して吸着させるように動作する。つまり、この循環式水処理システム1は、第1領域の飼育水が泡沫分離機を通過する過程で、固形物の除去だけでなく、オゾンによる殺菌や消毒も行うことができ、水生生物の生育を阻害する要因である、ウイルス、細菌、寄生虫の影響を、より一層確実に抑制することができる。しかも、固形物の除去を行う泡沫分離機7においてオゾンを作用させるという特徴的な技術により、殺菌や消毒をより効率的且つより効果的に行うことができる。
【0131】
更に、循環式水処理システム1は、第2領域でアンモニアの分解を行った後の領域において飼育水に含まれるアンモニウムイオンをアンモニウムイオンセンサ29によって検査することができる。但し、塩分を含有する飼育水内のアンモニウムイオンをアンモニウムイオンセンサ29によって検出する場合、妨害物質(アンモニウムイオンセンサ29がアンモニウムイオンと誤認識しやすい物質)が飼育水内に含まれている可能性が高く、何ら措置を講じないでアンモニウムイオンセンサ29によって検出を行うと、妨害物質の影響によりアンモニウムイオンを正確に検出できない虞がある。しかし、循環式水処理システム1は、第3領域を通過した飼育水が飼育槽3に戻る前に貯留される又は流動する第4領域においてアンモニウムイオンセンサ29によって検査することで、この問題に対応することができる。つまり、循環式水処理システム1は、第1領域において固形物の除去を行い、第3領域において活性炭による除去を行った上で、第4領域においてアンモニウムイオンの検出を行うことができるため、妨害物質が効果的に除去された飼育水において、アンモニウムイオンの濃度変動を精度良く検出することができる。
【0132】
また、循環式水処理システム1は、除去部5によって固形物を除去する際に、前工程の領域から導入される飼育水を一旦は貯留槽60にため、この貯留槽60から泡沫分離機7に導入して固形物を除去した後、泡沫分離機7に戻すように動作させることができる。除去部5がこのように構成されていれば、飼育水を循環させる過程で貯留槽60がバッファとなり、泡沫分離機7への導入の速度や泡沫分離機7からの導出の速度が他の工程の循環の速度と異なっていても、他の工程において水位が大きく変動しにくい。
【0133】
更に、循環式水処理システム1は、アンモニウムイオンセンサ29の計測結果に基づいて電気分解部13の電気分解を制御する制御装置52(制御部)を備えており、妨害物質が効果的に除去された飼育水においてアンモニウムイオンの濃度変動を精度良く計測可能とした上で、この計測結果を利用して、電気分解を制御することができる。よって、この循環式水処理システム1は、活性炭部23を通過した後の第4領域に存在するアンモニウムイオンの度合いに合わせた電気分解が可能である。
【0134】
更に、循環式水処理システム1は、上述の第2領域を通過した飼育水が飼育槽3に戻る前に貯留される又は流動する領域において飼育水に含まれる残留塩素を検出する残留塩素センサを含み、制御装置52(制御部)は、アンモニウムイオンセンサ29の計測結果及び残留塩素センサの計測結果に基づいて電気分解部13の電気分解を制御する。このように、循環式水処理システム1は、電気分解を行う第2領域を通過した後の飼育水に含まれる残留塩素の度合い、及び活性炭部23を通過した後の第4領域に存在するアンモニウムイオンの度合いに合わせて、電気分解を制御することができる。
【0135】
更に、循環式水処理システム1は、上述の第4領域の飼育水に含まれる残留塩素を検出する第2残留塩素センサ27によって所定の計測結果が得られた場合に、処置部31は、上記第4領域の飼育水から残留塩素を除去又は上記第4領域の飼育水を飼育槽3に戻すことを停止する。この循環式水処理システム1は、上述の第2領域を通過した後の飼育水に含まれる残留塩素の度合いによっては、第4領域の飼育水から残留塩素を除去するか又は第4領域の飼育水を飼育槽3に戻すことを停止することができ、残留塩素が存在する飼育水がそのまま飼育槽3に戻されるリスクを抑えることができる。
【0136】
循環式水処理システム1は、第2残留塩素センサ27の検出値が所定値を超えた場合に飼育槽3に戻る前の飼育水に対して残留塩素と中和反応を生じさせる中和剤を供給することができるため、第4領域の飼育水に残留塩素が一定程度含まれる場合には、飼育水に含まれる残留塩素を中和させて確実に低減させることができる。
【0137】
循環式水処理システムは、電気分解槽11で塩素酸化合物を発生させてアンモニアやアンモニウムイオンの分解を行うが、電気分解槽11で分解しきれないアンモニアやアンモニウムイオンを反応槽15において塩素酸化合物と反応させることができる。よって、電気分解槽11においてある程度の流動性があり、アンモニアが反応しきれずに電気分解槽11から排出されたとしても、反応槽15において反応を促進することができる。この循環式水処理システム1は、このようにアンモニアやアンモニウムイオンをより確実に反応させる一方で、活性炭槽21の後工程において待機槽25を確保し、飼育槽3に戻る前の飼育水内のアンモニウムイオンをアンモニウムイオンセンサ29で検査し且つ残留塩素を第2残留塩素センサ27によって検査することができる。一方で、電気分解槽11を通過してから待機槽25に流入するまでの飼育水に含まれる残留塩素も第1残留塩素センサ19によって検査することができる。そして、2種類の残留塩素センサの計測結果を別々の用途に用いることができ、アンモニウムイオンセンサ29の計測結果及び第1残留塩素センサ19の計測結果を利用して電気分解を制御し、一方で、第2残留塩素センサ27の計測結果(第2領域を通過した後の飼育水に含まれる残留塩素の度合い)によっては、第4領域の飼育水から残留塩素を除去するか又は第4領域の飼育水を飼育槽3に戻すことを停止することができ、残留塩素が存在する飼育水がそのまま飼育槽3に戻されるリスクを抑えることができる。
【0138】
<第2実施形態>
次の説明は第2実施形態に関する。
第2実施形態に係る循環式水処理システム1及びこのシステム1を用いた養殖方法は、図1に示される除去部5として、図3図4のような構成に代えて図8のような構成が用いられている点が第1実施形態と異なる点であり、除去部5の構成以外は第1実施形態と同一である。よって、以下の説明では、図3以外の構成については、図1図2図5図6図7の構成等が用いられているものとして、これらの図に付される符号や名称等が適宜用いられる。
【0139】
図8の例では、除去部5は、当該除去部5の前工程の領域から導入される飼育水を泡沫分離機7に導入した後、泡沫分離機7を通過させて上記前工程の領域とは異なる後工程の領域に導出するように構成されている。上記前工程の領域は、飼育槽3内の領域である。上記後工程の領域は、電気分解槽11内の領域である。除去部5では、除去部5の前工程の領域から供給される飼育水を流路41(流路41は導入路の一例に相当)によって泡沫分離機7に導入した後、泡沫分離機7を通過させ、流路41(導入路)の入口が配置される導入元の領域(例えば、飼育槽3内の領域)とは異なる「除去部5の後工程の領域」(例えば、電気分解槽11内の領域)に導出する。除去部5では、飼育槽3から流路41を介して流入する飼育水の全量が泡沫分離機7内に送り込まれ、飼育槽3から泡沫分離機7を経由することなく電気分解槽11に流れる流路が存在しない構成となっており、泡沫分離機7に送り込まれた飼育水のうち、泡沫分離機7において泡とともに除去される除去物以外は、泡沫分離機7から流路43を介して電気分解槽11内に送り込まれるようになっている。なお、泡沫分離機7の動作は第1実施形態と同様であり、この例でも、泡沫分離機7においてオゾンを含む気泡を発生させる。
【0140】
このように、第2実施形態の循環式水処理システム1は、除去部5によって固形物を除去する際に、前工程の領域から導入される飼育水を泡沫分離機7に導入した後、泡沫分離機7を通過させて前工程の領域とは異なる後工程の領域に導出するため、循環する飼育水を、より確実に泡沫分離機7を通過させることができ、固形物の除去の効果や、オゾンによる殺菌、消毒の効果をより一層高めることができる。
【0141】
<第3実施形態>
次の説明は第3実施形態に関する。
第3実施形態に係る循環式水処理システム1及びこのシステム1を用いた養殖方法は、図5のような構成に代えて図9のような構成が用いられている点が第1実施形態と異なる点であり、具体的には、図5の構成に加えて傾斜部58C,58D,58E,58F、排出部110,112が設けられている点以外は第1実施形態と同一である。よって、以下の説明では、図5以外の構成については、図1図4図6図7の構成等が用いられているものとして、これらの図に付される符号や名称等が適宜用いられる。
【0142】
図9のように、電気分解槽11には、排出部59に加え、排出部110が設けられる。排出部110は、電気分解槽11内で電極部55から沈み落ちた析出物を排出する管110Aとこの管110Aを開閉する開閉部110Bを有する。排出部110は、電極部55よりも下位置において析出物を管110Aの内部に取り込み、析出物を電気分解槽11から管110Aを通して排出するように機能する。開閉部110Bは、例えば手動操作によって管110Aを遮断する状態と開放する状態とに切り替える開閉栓である。なお、開閉部110Bは、制御によって開閉が切り替えられる電磁弁などであってもよい。いずれにしても、開閉部110Bが開放状態となった場合、電気分解槽11内の所定位置付近から飼育水が管110Aを通って排出される。上記所定位置付近に析出物が沈殿する場合には、析出物が飼育水と共に管110Aを通って排出される。
【0143】
図9の例では、傾斜部58A,58Bに加え、傾斜部58Cが設けられる。傾斜部58Cの傾斜面は、上下方向に対して傾斜しており、傾斜部58Cは、傾斜部58Cの傾斜面に沿って沈下する物体を上下方向及び上記第1方向と直交する第2方向に移動させるように(具体的には、第2方向において排出部59側に移動させるように)案内する。更に、図9の例では、傾斜部58Dが設けられる。傾斜部58Dの傾斜面は、上下方向に対して傾斜しており、傾斜部58Dは、傾斜部58Dに沿って沈下する物体を上記第2方向に移動させるように(具体的には、第2方向において排出部110側に移動させるように)案内する。
【0144】
図9の例では、反応槽15においても、排出部112が設けられる。排出部112は、反応槽15内で沈み落ちた析出物を排出する管112Aとこの管112Aを開閉する開閉部112Bを有する。排出部112は、沈下する物体を管112Aの内部に取り込み、管112Aを通して排出するように機能する。開閉部112Bは、例えば手動操作によって管112Aを遮断する状態と開放する状態とに切り替える開閉栓である。なお、開閉部112Bは、制御によって開閉が切り替えられる電磁弁などであってもよい。いずれにしても、開閉部112Bが開放状態となった場合、反応槽15内の所定位置付近から飼育水が管112Aを通って排出される。上記所定位置付近に物体が沈殿する場合には、当該物体が飼育水と共に管112Aを通って排出される。反応槽15においても、傾斜部58E,58Fが設けられる。傾斜部58E,58Fの傾斜面は、上下方向に対して傾斜しており、傾斜部58E,58Fの各々は、各傾斜部の傾斜面に沿って沈下する物体を上記第2方向に移動させるように(具体的には、第2方向において排出部112側に移動させるように)案内する。
【0145】
なお、図9の例では、管59A,110A,112Aは、常設された固定管であるが、装着及び離脱が可能な管であってもよい。また、いずれの管でも、排出する場合には、槽内の水圧を利用して排出してもよく、ポンプなどによって吸引又は流動させるように排出してもよい。
【0146】
<第4実施形態>
次の説明は第4実施形態に関する。
第4実施形態に係る循環式水処理システム1及びこのシステム1を用いた養殖方法は、図7のような構成に代えて図10のような構成が用いられている点が第1実施形態と異なる点であり、図7の構成に加え、流路46の途中に切替部140が設けられる点が第1実施形態と異なり、それ以外の構成は第1実施形態と同一である。よって、以下の説明では、切替部140以外の構成については、図1図7の構成等が用いられているものとして、これらの図に付される符号や名称等が適宜用いられる。
【0147】
第4実施形態の循環式水処理システム1では、切替部140において切替弁142が設けられており、切替弁142は、残留塩素除去槽(例えば活性炭槽21)から流路46に排出された飼育水を流す経路を、第2除去部146を通さない流路143A、又は、第2除去部146を通す流路143Bのいずれかに切り替えることができる。
【0148】
第2除去槽144は、飼育水を通す流路として構成され、且つ、当該流路の内部空間には残留塩素を除去する成分(例えば、亜硫酸カルシウムの粒)が充填される構成で、第2除去部146が構成される。第2除去槽144は、入口と出口を有する流路として構成され、代表例では、内部空間に亜硫酸カルシウムの粒が充填される。切替弁142からの流出先が流路143Bとなるように切替弁142が設定されている場合、切替弁142を通過して第2除去槽144の入口から流入した飼育水が、第2除去槽144の内部空間の隙間(多数の亜硫酸カルシウムの隙間)を通過する過程で、飼育水に含まれる残留塩素や残留オゾンが亜硫酸カルシウムによって除去され、第2除去槽144の出口から下流側の流路46に排出される飼育水は、塩素やオゾンの一部又は全部が除去された飼育水となる。
【0149】
このような構成において、制御装置52は、第2残留塩素センサ27が検出する残留塩素の濃度が基準値以下である場合に残留塩素除去槽(例えば活性炭槽21)から流路143Aに飼育水を流し、流路143Bに飼育水を流さないように切替弁142を切り替える。一方、制御装置52は、第2残留塩素センサ27が検出する残留塩素の濃度が基準値を超える場合には、残留塩素除去槽(例えば活性炭槽21)から流路143Bに飼育水を流し、流路143Aに飼育水を流さないように切替弁142を切り替える。このようにすると、第2残留塩素センサ27が検出する残留塩素の濃度が相対的に高くなった場合に、残留塩素除去槽(例えば活性炭槽21)からの飼育水が第2除去部146を流れるように切り替えることができ、第2除去部146によっても残留塩素を除去することができる。なお、ここで説明される制御方法はあくまで一例であり、第2除去槽144に飼育水を流すタイミングや期間は上述の例に限定されない。
【0150】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明された実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。さらに、上述された実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0151】
上述の実施形態では、泡沫分離機7に対して気体としてオゾンが供給され、オゾンを含有する泡を発生させるが、オゾンではなく、他の気体(例えば空気)が供給され、他の気体の泡を発生させる構成であってもよい。
【0152】
上述の実施形態では、飼育水を貯留する部分を有する槽として構成された電気分解槽11の内部領域が第2領域であるが、電気分解槽11が貯留する部分を有さない流路として構成され、この内部領域が第2領域とされてもよい。
【0153】
上述の実施形態では、反応槽15は、飼育水を貯留する部分を有する槽として構成されるが、貯留する部分を有さない流路として構成されていてもよい。
【0154】
上述の実施形態では、第1残留塩素センサ19が濾過タンク17内の飼育水の残留塩素の濃度を検出するように配置されているが、反応槽15から活性炭槽21までの間の流路内の残留塩素の濃度を検出するように構成されていてもよい。
【0155】
上述の実施形態では、飼育水を貯留する部分を有する槽として構成された活性炭槽21の内部領域が第3領域であるが、活性炭槽21が貯留する部分を有さない流路として構成され、この内部領域が第3領域とされてもよい。
【0156】
上述の実施形態では、飼育水を貯留する部分を有する槽として構成された待機槽25の内部領域が第4領域であるが、待機槽25が貯留する部分を有さない流路として構成され、この内部領域が第4領域とされてもよい。
【0157】
上述の実施形態では、図1図7のように、残留塩素除去槽として、活性炭の粒が充填されてなる活性炭部23を有する活性炭槽21が設けられるが、活性炭部23の活性炭の粒に代えて、亜硫酸カルシウムの粒を用い、亜硫酸カルシウムの粒が充填された構成としてもよい。この例でも、残留塩素除去槽は、入口と出口を有する流路として構成することができ、当該流路の内部空間に亜硫酸カルシウムの粒を充填させるように構成することができる。この例でも、残留塩素除去槽の入口から流入した飼育水が、内部空間の隙間(多数の亜硫酸カルシウムの隙間)を通過する過程で、飼育水に含まれる残留塩素や残留オゾンが亜硫酸カルシウムによって除去され、出口から排出される飼育水は、塩素やオゾンの一部又は全部が除去された飼育水となる。
【0158】
第4実施形態の図10の構成では、流路46の途中に切替部140が設けられるが、第1~第3実施形態のいずれの構成においても、図1の構成において流路47の途中(例えば、図1における二点鎖線Xの位置)に切替部140を設けてもよく、この場合、上述の第4実施形態と同様の制御を行うことで、待機槽25から流路47に排出された飼育水を流す経路を、第2除去部146を通さない流路143A、又は、第2除去部146を通す流路143Bのいずれかに切り替えるようにし、流路143A、又は、第2除去部146のいずれかを通過した飼育水が飼育槽3に供給されるように構成してもよい。
【0159】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0160】
1 :循環式水処理システム
3 :飼育槽
5 :除去部
7 :泡沫分離機
9 :オゾン発生機
11 :電気分解槽
11A :第1飼育水流動室
11B :第2飼育水流動室
11C :第3飼育水流動室
11Z :底壁
13 :電気分解部
15 :反応槽
17 :濾過タンク
19 :第1残留塩素センサ
21 :活性炭槽(残留塩素除去槽)
23 :活性炭部(残留塩素除去部)
25 :待機槽
27 :第2残留塩素センサ
29 :アンモニウムイオンセンサ
31 :処置部
35 :温調機
37 :フィルタ
41,42,43,44,45,46,47 :流路
51 :電圧印加部
52 :制御装置
53 :駆動回路
54A :導電路
54B :導電路
55 :電極部
55A :第1電極
55B :第2電極
55C :電極保持部
56 :第1誘導路
57 :水流発生部
57A :第1仕切壁
57B :第2仕切壁
58 :誘導部
58A,58B :傾斜部
59 :排出部
59A :管
59B :開閉部
60 :貯留槽
60A :底
62 :導入部
64 :導出部
66 :排出部
72 :第2誘導路
W1 :水面
W2 :水面
W3 :水面
【要約】
【課題】微生物への依存を抑えた方法で水中のアンモニア又はアンモニウムイオンを効果的に分解し、且つ、アンモニアやアンモニウムイオン以外の汚染要素を効果的に除去する。
【解決手段】循環式処理システム1は、除去部5と電気分解部13と残留塩素除去部とを備える。除去部5は、飼育槽3から送られた飼育水が貯留される又は流動する第1領域の飼育水に含まれる固形物を除去する。電気分解部13は、第1領域を通過した飼育水が貯留される又は流動する第2領域において、飼育水を電気分解することにより塩素酸化合物を発生させ、発生した塩素酸化合物を飼育水内のアンモニア又はアンモニウムイオンと反応させる。残留塩素除去部は、第2領域を通過した飼育水が貯留される又は流動する第3領域において、少なくとも残留塩素を除去する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10