(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】付着防止剤噴霧装置
(51)【国際特許分類】
E01C 19/08 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
E01C19/08
(21)【出願番号】P 2020189476
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】御代 哲也
(72)【発明者】
【氏名】阿江 幸己
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0185455(US,A1)
【文献】中国実用新案第201686916(CN,U)
【文献】特開2000-038708(JP,A)
【文献】特開2004-332378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00-19/52
B05B 12/16-12/36
14/00-16/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトプラントのプラント本体及び/またはアスファルト合材サイロの直下に配したアスファルト合材の搬送車両入出用の通路の側部には搬送車両の荷台高さより僅かに高い位置に架台を備え、該架台には鉛直軸を中心として前記通路側へ旋回自在に軸支した旋回アームを略平行に一対備え、該各旋回アーム先端部には前記通路と略平行に配したリンク部材を連結してリンク機構を形成し、前記リンク部材にはその長手方向に沿って複数の付着防止剤噴霧用の噴霧ノズルを備え、付着防止剤噴霧時には前記リンク機構の各旋回アームを通路側に旋回して前記リンク部材の噴霧ノズルを搬送車両の荷台に近接させた状態で付着防止剤を噴霧する噴霧制御器を備えたことを特徴とする付着防止剤噴霧装置。
【請求項2】
前記リンク部材には、リンク部材と略平行に配したサブリンク部材を上下動自在に吊下し、該サブリンク部材にはその長手方向に沿って複数の噴霧ノズルを備え、前記サブリンク部材を下方へ降下させたときには、前記サブリンク部材の噴霧ノズルが小型の搬送車両の荷台に近接する構成としたことを特徴とする請求項1記載の付着防止剤噴霧装置。
【請求項3】
前記サブリンク部材を上方へ上昇させたときには、サブリンク部材の噴霧ノズルが前記リンク部材の噴霧ノズルの一部を兼ねる構成としたことを特徴とする請求項2記載の付着防止剤噴霧装置。
【請求項4】
前記リンク部材には搬送車両の荷台のあおり板内壁面に向けて付着防止剤を噴霧するあおり板用の噴霧ノズルを備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の付着防止剤噴霧装置。
【請求項5】
前記旋回アーム、リンク部材、噴霧ノズルのうち少なくとも何れか一つには付着防止剤保温用のヒータを備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の付着防止剤噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト合材の付着を抑制する付着防止剤の噴霧装置に関し、特にアスファルト合材の搬送車両の荷台に対して付着防止剤を噴霧する噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルト合材製造工場に設置されるアスファルトプラントでは、製造したアスファルト合材をダンプトラック等の搬送車両の荷台に払い出して出荷する際、粘着性を有するアスファルト合材が前記荷台表面に付着するのを抑制すべく、例えば、運転手がその都度荷台に上がり、適宜の容器に入れた重油や軽油、或いは植物性油脂等を主成分とする各種の付着防止剤を手作業にて荷台表面に散布している。
【0003】
ところで、前記搬送車両の荷台は油系の付着防止剤の散布に伴って滑り易い状態にあり、このような荷台に運転手が上がって行う前記作業は転倒や転落等の事故を招く危険性があって安全上好ましいものではなく、また甚だ面倒で運転手に多大な負担を強いるものとなっている。また、付着防止剤の散布量は運転手の判断に委ねられるため、場合によっては付着防止剤が適正量を超えて散布される可能性もあり、その場合には無駄が生じることになる。
【0004】
これに対し、搬送車両の荷台に付着防止剤を自動で散布する散布装置がある(特許文献1参照)。前記散布装置では、搬送車両の荷台位置よりも上方に位置するアスファルトプラントのプラント本体の脚柱等に散布ノズルを固定しておき、アスファルト合材の積み込みのためにプラント本体下位に進入した搬送車両の荷台に向けて前記散布ノズルより所定量の付着防止剤を自動散布する構成としており、運転手の作業安全性の向上及び負担軽減、並びに適量散布が期待できるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来装置では、散布ノズルを搬送車両の荷台位置よりも上方に位置するプラント本体の脚柱等に固定し、ノズル噴射口と荷台表面とは幾分か離間した構成となっているため、風の影響を比較的受けやすいと予想され、仮に強風下では散布ノズルから噴射した付着防止剤の一部が飛散し、場合によっては荷台から外れて運転席側や周辺の地面等に散布されて周辺環境の汚損や無駄を生じる可能性がある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑み、風の影響を抑えられて強風下でもアスファルト合材の搬送車両の荷台に安定して噴霧できる付着防止剤噴霧装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の付着防止剤噴霧装置では、アスファルトプラントのプラント本体及び/またはアスファルト合材サイロの直下に配したアスファルト合材の搬送車両入出用の通路の側部には搬送車両の荷台高さより僅かに高い位置に架台を備え、該架台には鉛直軸を中心として前記通路側へ旋回自在に軸支した旋回アームを略平行に一対備え、該各旋回アーム先端部には前記通路と略平行に配したリンク部材を連結してリンク機構を形成し、前記リンク部材にはその長手方向に沿って複数の付着防止剤噴霧用の噴霧ノズルを備え、付着防止剤噴霧時には前記リンク機構の各旋回アームを通路側に旋回して前記リンク部材の噴霧ノズルを搬送車両の荷台に近接させた状態で付着防止剤を噴霧する噴霧制御器を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載の付着防止剤噴霧装置では、前記リンク部材には、リンク部材と略平行に配したサブリンク部材を上下動自在に吊下し、該サブリンク部材にはその長手方向に沿って複数の噴霧ノズルを備え、前記サブリンク部材を下方へ降下させたときには、前記サブリンク部材の噴霧ノズルが小型の搬送車両の荷台に近接する構成としたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項3記載の付着防止剤噴霧装置では、前記サブリンク部材を上方へ上昇させたときには、サブリンク部材の噴霧ノズルが前記リンク部材の噴霧ノズルの一部を兼ねる構成としたことを特徴としている。
【0011】
また、請求項4記載の付着防止剤噴霧装置では、前記リンク部材には搬送車両の荷台のあおり板内壁面に向けて付着防止剤を噴霧するあおり板用の噴霧ノズルを備えたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項5記載の付着防止剤噴霧装置では、前記旋回アーム、リンク部材、噴霧ノズルのうち少なくとも何れか一つには付着防止剤保温用のヒータを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る請求項1記載の付着防止剤噴霧装置によれば、搬送車両の荷台高さより僅かに高い位置に架台を備え、該架台には通路側へ旋回自在に軸支した旋回アームを略平行に一対備え、該各旋回アームの先端部には前記通路と略平行に配したリンク部材を連結してリンク機構を形成し、前記リンク部材には複数の付着防止剤噴霧用の噴霧ノズルを備え、付着防止剤噴霧時には前記リンク機構の各旋回アームを通路側に旋回して前記リンク部材の噴霧ノズルを搬送車両の荷台に近接させた状態で付着防止剤を噴霧する噴霧制御器を備えたので、付着防止剤を噴霧する際の風の影響を抑えられ、例え強風下でも搬送車両の荷台に付着防止剤を安定して噴霧できる。
【0014】
また、請求項2記載の付着防止剤噴霧装置によれば、前記リンク部材には、サブリンク部材を上下動自在に吊下し、該サブリンク部材には複数の噴霧ノズルを備えると共に、前記サブリンク部材を下方へ降下させたときには、前記サブリンク部材の噴霧ノズルが小型の搬送車両の荷台に近接する構成としたので、搬送車両の中に荷台高さの低い小型の搬送車両が混在している場合でも付着防止剤を荷台へ近接噴霧でき、風の影響を抑えながら安定した噴霧が可能となる。
【0015】
また、請求項3記載の付着防止剤噴霧装置によれば、前記サブリンク部材を上方へ上昇させたときには、サブリンク部材の噴霧ノズルが前記リンク部材の噴霧ノズルの一部を兼ねる構成としたので、小型の搬送車両の荷台への近接噴霧を可能としながらも装置構成の簡略化及び低コスト化が期待できる。
【0016】
また、請求項4記載の付着防止剤噴霧装置によれば、前記リンク部材にはあおり板用の噴霧ノズルを備えたので、荷台の床面だけでなくあおり板内壁面に対するアスファルト合材の付着も効果的に抑制できる。
【0017】
また、請求項5記載の付着防止剤噴霧装置によれば、前記旋回アーム、リンク部材、噴霧ノズルのうち少なくとも何れか一つには付着防止剤保温用のヒータを備えたので、寒冷地や冬期での付着防止剤の凍結や凝固等の不具合を抑制でき、安定した噴霧が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る付着防止剤噴霧装置をアスファルトプラントのプラント本体に設置した状態を示す正面図である。
【
図3】大型の搬送車両に付着防止剤を噴霧する状態を示す
図2に相当する図である。
【
図6】大型の搬送車両に付着防止剤を噴霧する際の付着防止剤噴霧装置の一連の動作を説明する説明図である。
【
図7】小型の搬送車両に付着防止剤を噴霧する際に、旋回アームを通路側に旋回した状態を示す
図2に相当する図である。
【
図8】
図7の状態から、更にサブリンク部材を降下させた状態を示す図である。
【
図11】小型の搬送車両に付着防止剤を噴霧する際の付着防止剤噴霧装置の一連の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る付着防止剤噴霧装置にあっては、アスファルトプラントのプラント本体及び/または該プラント本体で製造したアスファルト合材を一時的に貯蔵するアスファルト合材サイロの直下に配される、アスファルト合材の搬送車両入出用の通路の側部には、搬送車両の荷台高さより僅かに、例えば数十センチ程度高い位置に架台を備える。
【0020】
アスファルト合材の搬送車両としては、一般に、小型の2tまたは4tサイズのトラック、或いは大型の8tまたは10tサイズのトラック等、各種サイズのものが使用され、そのサイズ毎に荷台高さも異なるが、前記架台は、荷台高さが最も高い大型(例えば10tサイズ)の搬送車両の荷台高さより僅かに高い位置に設置すると好ましい。
【0021】
また、前記架台上部には鉛直軸である軸支部を中心として前記通路側へ略水平に旋回自在に軸支した旋回アームを、通路長手方向へ所定間隔で略平行に一対備え、該各旋回アームの先端部には前記通路と略平行に配した、大型の搬送車両の荷台長さと略同じ長さのリンク部材を連結して略平行四辺形状のリンク機構を形成する一方、該リンク機構先端部の前記リンク部材には、その長手方向に沿って複数の付着防止剤噴霧用の噴霧ノズルを備える。
【0022】
また、前記リンク機構を形成する各旋回アームの動作制御、噴霧ノズルからの噴霧制御等、搬送車両の荷台に対して付着防止剤を噴霧するにあたっての各種制御を行う噴霧制御器を備える。なお、前記噴霧制御器を別途備えずに、既設のプラント操作盤等に前記噴霧制御機能を具備するようにしてもよい。
【0023】
また、好ましくは、前記リンク部材には、リンク部材と略平行に配した、小型(例えば2tサイズ)の搬送車両の荷台長さと略同じ長さのサブリンク部材を上下動自在に吊下し、該サブリンク部材にも前記同様にその長手方向に沿って複数の噴霧ノズルを備える。そして、前記リンク機構の各旋回アームを通路側に旋回した上で、前記リンク機構先端部のリンク部材から前記サブリンク部材を下方へ降下させたときには、前記サブリンク部材の噴霧ノズルが小型の搬送車両の荷台に近接する構成とするとよい。これにより、搬送車両の中に荷台高さの低い小型の搬送車両が混在している場合でも付着防止剤を荷台へ近接噴霧可能とする。
【0024】
また、好ましくは、前記サブリンク部材を上方へ上昇させて前記リンク部材と一体に密着させたときには、サブリンク部材の噴霧ノズルが前記リンク部材の噴霧ノズルの一部を兼ねる構成とするとよい。これにより、小型の搬送車両の荷台への近接噴霧を可能としながらも装置構成の簡略化及び低コスト化が期待できるものとする。
【0025】
更に、好ましくは、前記リンク部材及び/または前記サブリンク部材には搬送車両の荷台のあおり板内壁面に向けて付着防止剤を噴霧するあおり板用噴霧ノズルを備える。これにより、搬送車両の荷台の床面だけでなく、あおり板内壁面にまでムラなく付着防止剤を噴霧でき、アスファルト合材の付着をより効果的に抑制可能とする。
【0026】
また更に、好ましくは、前記旋回アーム、リンク部材、サブリンク部材、噴霧ノズルのうち少なくとも何れか一つには付着防止剤保温用のヒータを備える。これにより、寒冷地や冬期にあっても付着防止剤を適度に保温でき、付着防止剤の凍結や凝固等の不具合を抑制可能とする。
【0027】
そして、前記付着防止剤噴霧装置にて搬送車両の荷台へ付着防止剤を噴霧する場合には、前記プラント本体またはアスファルト合材サイロ直下の通路に搬送車両が進入して停車すると、前記噴霧制御器では、搬送車両の荷台高さよりも僅かに高い位置に配した前記リンク機構の各旋回アームを通路側へ略水平に旋回し、前記リンク機構先端部のリンク部材を搬送車両の荷台の車幅方向の略中心線上に位置させ、前記リンク部材の噴霧ノズルを搬送車両の荷台に近接させた状態で付着防止剤を噴霧する。
【0028】
このとき、前記噴霧ノズルと搬送車両の荷台とは近接状態にあるため、風の影響を比較的受けにくく、例え強風下でも付着防止剤を荷台に安定して噴霧することができ、周辺環境の汚損や付着防止剤の無駄を抑制できる。また、近接噴霧として風の影響を受けにくくしたことで、噴霧時の付着防止剤の一層の微粒化(ミスト化)を図れ、荷台床面やあおり板内壁面をより少量の付着防止剤でムラなくコーティングすることが可能となって低コスト化が期待できると共に、あおり板内壁面(垂直面)等での液ダレの軽減効果も期待できる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0030】
図中の1は、アスファルトプラントのプラント本体であって、該プラント本体1は高架台2上に振動篩(図示せず)、骨材貯蔵ビン(図示せず)、ミキサ3等の各種設備を順次積み上げてなり、その直下にアスファルト合材の搬送車両4a、4bの入出用の通路5を配している。前記通路5よりプラント本体1下位に進入して所定位置で停車・待機する搬送車両4a、4bに対し、前記高架台2の最下層のフロア6上の平面視略中心部付近に設置したミキサ3からアスファルト合材を払い出すと、搬送車両4a、4b後方の荷台7部分に落下投入される構成としている。なお、図中の4aは大型(例えば10tサイズ)の搬送車両を、4bは小型(例えば2tサイズ)の搬送車両をそれぞれ表している。
【0031】
図中の8は搬送車両4a、4bの荷台7に対し、アスファルト合材の積み込み前に付着防止剤を噴霧する付着防止剤噴霧装置であって、後述する架台、旋回アーム、リンク部材、サブリンク部材、噴霧ノズル、噴霧制御器等を主体に構成している。
【0032】
前記高架台2の四隅を支持する四本の脚柱9a~9dのうち、前記通路5の一側部に並設される二本の脚柱9a、9bには、大型の搬送車両4aの荷台7高さ(例えば約2.3m程度)より僅かに(数十センチ程度)高い位置に架台10を架設している。前記架台10上部には、鉛直軸である軸支部11を中心として前記通路5側へ旋回自在に軸支した所定長さ(例えば、通路5幅長の半分、またはそれより若干長い程度)の旋回アーム12を略平行に一対備えている。
【0033】
また、前記各旋回アーム12の先端部には前記通路5と略平行に配した、大型の搬送車両4aの荷台7長さと略同じ長さ(例えば、約5m程度)のリンク部材13を連結して、平面視で略平行四辺形状のリンク機構14を形成している一方、該リンク機構14先端部のリンク部材13の下位には、リンク部材13と略平行に配した、小型の搬送車両4bの荷台7長さと略同じ長さ(例えば、約3m程度)のサブリンク部材15を上下動自在に吊下している。
【0034】
前記サブリンク部材15を上下動させる構成としては、前記リンク部材13とサブリンク部材15とを複数の略平行なリンク片16で連結し、上下方向に折り畳み・展開可能に側面視で略平行四辺形状のリンク機構17を形成していると共に、前記リンク片16を適宜の駆動手段(図示せず)にて回動させることで前記サブリンク部材15を上下方向へ昇降可能としている。なお、前記サブリンク部材15の昇降する高さとしては、大型の搬送車両4aの荷台高さと小型の搬送車両4bの荷台高さとの差分程度(例えば、約1m程度)とするとよい。
【0035】
また、前記サブリンク部材15を上下動させる構成としては、何ら上記実施例に限定されるものではなく、例えば、前記リンク部材13に対して前記サブリンク部材15をワイヤー等で吊下し、該ワイヤー等の巻き上げ・繰り出し操作によってサブリンク部材15を上下動させる構成としたり、前記リンク部材13にピストンロッド先端部が真下を向くようにシリンダを固着し、前記ピストンロッド先端部にサブリンク部材15を固着し、前記ピストンロッドの伸縮動作に応じてサブリンク部材15を上下動させる構成とするなど、各種の装置構成を採用し得る。
【0036】
また、前記リンク機構14先端部のリンク部材13には、その長手方向に沿って複数の付着防止剤噴霧用の噴霧ノズル18a、18bを固着している一方、サブリンク部材15にも同様に、その長手方向に沿って複数の付着防止剤噴霧用の噴霧ノズル19a、19bを固着しており、該各噴霧ノズル18a、18b、19a、19bには、付着防止剤の後ダレ防止用に電磁弁やチャッキ弁等の弁体(図示せず)を開閉自在に内蔵している。
【0037】
ここで、図中の18a、19aは、主に搬送車両4a、4bの荷台7の床面7aに対して付着防止剤を噴霧する(噴射口を真下方向に向けた)床面用の噴霧ノズルである一方、図中の18b、19bは、主に搬送車両4a、4bの荷台7のあおり板内壁面7bに対して付着防止剤を噴霧する(噴射口を斜め下方に向けた)あおり板用の噴霧ノズルである。
【0038】
そして、前記リンク機構14の各旋回アーム12を通路5側へ略水平に旋回すると、前記リンク機構14先端部のリンク部材13の噴霧ノズル18a、18b、及びサブリンク部材15の噴霧ノズル19a、19bが大型の搬送車両4aの荷台7上部に近接する構成としていると共に、更にその状態から前記サブリンク部材15を下方へ降下させると、前記サブリンク部材15の噴霧ノズル19a、19bが小型の搬送車両4bの荷台7上部に近接する構成としている。
【0039】
なお、本実施例では、前記サブリンク部材15を上方へ上昇させて前記リンク部材13下面と一体に密着させたときには、
図3に示すように、サブリンク部材15の噴霧ノズル19a、19bが前記リンク部材13の噴霧ノズル18a、18bの一部を兼ねる構成としている。これにより、前記リンク部材13とサブリンク部材15とが平面視で重なり合う箇所への噴霧ノズル18a、18bが不要となり、小型の搬送車両4bの荷台7への近接噴霧を可能としながらも装置構成の簡略化及び低コスト化が期待できるものとしている。
【0040】
また、本実施例では、前記サブリンク部材15の上下動作を上下二段階設定として、大型の搬送車両と小型の搬送車両の各荷台高さに対応(付着防止剤の近接噴霧)可能な構成としたが、必ずしもこれに限定するものではなく、例えば、三段階、或いはそれ以上の多段階設定としてもよい。これにより、例えば、小型の搬送車両でも荷台高さが幾分か異なる2t或いは4tサイズの各車両に対してより適した(隙間の少ない)近接噴霧が可能となる。
【0041】
また、前記リンク部材13やサブリンク部材15、噴霧ノズル18a、18b、19a、19b等には、付着防止剤保温用の、例えばベルトヒータやバンドヒータ等のヒータ20を取り付けている。付着防止剤のうち、重油や軽油等は低温下では粘度が高まって凝固する可能性がある一方、植物性油脂等を界面活性剤を含んだ水と混合・乳化させたものでは液剤中の水分が凍結する可能性があるものの、前記ヒータ20にて、例えば約30℃程度に保温することで前記不具合を未然に防止でき、寒冷地や冬期にあっても好適に使用可能としている。なお、本実施例では、前記ヒータ20をリンク部材13やサブリンク部材15、噴霧ノズル18a、18b、19a、19b部分に備えたが、より上流側の旋回アーム12部分等にも取り付けてもよい。
【0042】
図中の21a、21bは前記高架台2下位の通路5内に進入して停車・待機する搬送車両が大型の搬送車両4aか、小型の搬送車両4bかを自動で判別するための、例えば超音波センサやレーザセンサ等の検知センサであって、前記通路5に沿って所定間隔を置いて一対の検知センサ21a、21bを備えており、例えば、検知センサ21a及び検知センサ21bが共に検知状態であれば、大型の搬送車両4aと判別する一方、検知センサ21aが検知状態で、検知センサ21bが非検知状態であれば、小型の搬送車両4bと判別するシステム構成としている。なお、より多種の搬送車両の種別を判別する必要がある場合には、検知センサの数を増やすことで対応することができる。また、搬送車両のサイズを判別する手段としては、必ずしも上記のような自動判別システムを組む必要は無く、例えば、プラントオペレータ等が目視でその都度判別するようにしてもよく、その場合には、後述する噴霧制御器22に対して判別結果をその都度手動で入力するとよい。
【0043】
また、前記付着防止剤噴霧装置8には、図示はしていないが、前記各種設備以外にも、付着防止剤を貯蔵する貯蔵タンク、該貯蔵タンクから前記旋回アーム12やリンク部材13、サブリンク部材15等を介して各噴霧ノズル18a、18b、19a、19bに付着防止剤を供給するゴムホースや塩ビ管等の供給ライン、前記貯蔵タンクから供給ラインを介して各噴霧ノズル18a、18b、19a、19bに付着防止剤を圧送する供給ポンプ等を具備している。
【0044】
図中の22は、前記リンク機構14を形成する各旋回アーム12の旋回動作や、サブリンク部材15の上下動作等の各動作制御、前記供給ポンプのON/OFF切替による前記各噴霧ノズル18a、18b、19a、19bからの噴霧制御等、搬送車両4a、4bの荷台7に対して付着防止剤を噴霧するにあたっての各種制御を行う噴霧制御器である。
【0045】
続いて、前記付着防止剤噴霧装置8にて、大型の搬送車両4aの荷台7へ付着防止剤を噴霧する場合について
図1~
図6に基づいて説明する。先ず、
図1、
図2に示すように、待機状態にある付着防止剤噴霧装置8では、搬送車両4aが通路5内に進入するのを妨げないように、リンク機構14の各旋回アーム12を通路5一側部側に旋回させ、リンク機構14を折り畳んだ状態で退避させておく。そして、この状態で、
図6の(a)に示すように、搬送車両4aを通路5内にバックで進入させ、所定位置(上位のミキサ3から排出されるアスファルト合材を、車両後方の荷台7の後部側で受け止められる位置)に停車・待機させる。なお、図中のWはアスファルト合材の落下位置を示す。このとき、前記検知センサ21a、21bでは、待機中の前記搬送車両のサイズ(大型か小型か)を判別する。
【0046】
なお、アスファルト合材の受け止め位置を荷台7中央部とせずに荷台7の後部側とするのは、荷台7全体に万遍なくアスファルト合材を積み込むためであり、初めに荷台7後部側に積み込んだ後には、運転手は搬送車両4aを若干バックさせてアスファルト合材の受け止め位置を荷台7前方側にずらし、これを繰り返すことで荷台7全体に一定の層厚でアスファルト合材を積み込み可能としている。したがって、付着防止剤の噴霧を行う、アスファルト合材積み込み前の搬送車両4aの初期停車位置は、図面に示されるように通路5入口側に若干偏っていることとなる。
【0047】
次いで、
図3~
図5及び
図6の(b)に示すように、前記噴霧制御器22では、前記検知センサ21a、21bの判別結果、即ち「通路5内に進入・停車中の車輌が大型の搬送車両4aである。」との判別結果に基づいて、前記リンク機構14の各旋回アーム12を
図6中X方向である通路5側に所定角度旋回(展開)し、前記リンク機構14先端部のリンク部材13を大型の搬送車両4aの荷台7の車幅方向の略中心線上に位置させる。このとき、前記リンク部材13及びサブリンク部材15の各噴霧ノズル18a、18b、19a、19bは、大型の搬送車両4aの荷台7(床面7a、及びあおり板内壁面7b)と近接することになり、この状態を維持したまま前記各噴霧ノズル18a、18b、19a、19bより付着防止剤を一斉に数秒~十数秒程度噴霧する。
【0048】
そして、搬送車両4aの荷台7に対して付着防止剤を所定量噴霧し終えれば、前記リンク機構14の各旋回アーム12を通路5一側部側に旋回させ(折り畳み)、最初の待機状態に復帰させる。そして、荷台7の全面に付着防止剤を噴霧し終えた搬送車両4aに対し、上位のミキサ3からアスファルト合材を払い出して積み込み、積み込みを終えた前記搬送車両4aは舗装現場へと搬送・出荷する。
【0049】
次に、前記付着防止剤噴霧装置8にて、小型の搬送車両4bの荷台7へ付着防止剤を噴霧する場合について
図1、
図2、及び
図7~
図11に基づいて説明する。なお、基本的な動作・制御は前記した大型の搬送車両4aの場合と略同一であるため、重複する部分の説明は省略する。
【0050】
先ず、
図11の(a)に示すように、搬送車両4bを通路5内にバックで進入させ、前記同様に、アスファルト合材の受け止め位置である所定位置に停車・待機させる。このとき、前記検知センサ21a、21bでは、待機中の前記搬送車両のサイズ(大型か小型か)を判別する。
【0051】
次いで、前記噴霧制御器22では、前記検知センサ21a、21bの判別結果、即ち「通路5内に進入・停車中の車輌が小型の搬送車両4bである。」との判別結果に基づき、先ず、
図7及び
図11の(b)に示すように、前記リンク機構14の各旋回アーム12を
図11中X方向である通路5側に所定角度旋回(展開)し、前記リンク機構14先端部のリンク部材13を小型の搬送車両4bの荷台7の車幅方向の略中心線上に位置させる。
【0052】
次いで、
図8~
図10及び
図11の(c)に示すように、前記リンク部材13の下部に吊下した前記サブリンク部材15を
図8中Z方向である下方へと降下させる。このとき、前記サブリンク部材15の各噴霧ノズル19a、19bは、小型の搬送車両4bの荷台7(床面7a、及びあおり板内壁面7b)と近接することになり、この状態を維持したまま前記各噴霧ノズル19a、19bより付着防止剤を一斉に数秒~十数秒程度噴霧する(この間、リンク部材13の各噴霧ノズル18a、18bからの噴霧は行わないように制御する。)。
【0053】
そして、搬送車両4bの荷台7に対して付着防止剤を所定量噴霧し終えれば、前記サブリンク部材15を上昇させてリンク部材13と一体に密着させた後、リンク機構14の各旋回アーム12を通路5一側部側に旋回させ(折り畳み)、最初の待機状態に復帰させる。そして、前記同様に、荷台7への付着防止剤を噴霧し終えた搬送車両4bに対し、アスファルト合材を払い出して積み込み、積み込みを終えた前記搬送車両4bは舗装現場へと搬送・出荷する。
【0054】
ところで、
図6、
図11に示すように、上位のミキサ3からアスファルト合材を受け取るために停車・待機した際の大型及び小型の搬送車両4a、4bの荷台7前端部位置は、荷台7サイズの違いにより通路5前後方向に大きくずれることになる。一方、リンク部材13の高さ位置は、荷台7への付着防止剤の近接噴霧が可能なように、大型の搬送車両4aの荷台高さより僅かに高い位置(小型の搬送車両4bの運転席と同じくらいの高さ位置)としているため、前記リンク機構14の各旋回アーム12を通路5側へ旋回(展開)した際のリンク部材13前端部位置を、大型の搬送車両4aの荷台7前端部位置に揃えようとすると、搬送車両が小型の搬送車両4bである場合には運転席にリンク部材13前端部が接触するおそれがある。
【0055】
そこで、本実施例では、前記各旋回アーム12を通路5幅長の半分よりも若干長く(回転半径を長く)した上で、大型の搬送車両4aの荷台7に噴霧する場合には、
図6の(b)に示すように、前記各旋回アーム12を通路5と直交方向から通路5手前(入口)側に所定角度(例えば約10~30度程度)傾斜させて、リンク部材13を搬送車両4aの荷台7の車幅方向の略中心線上に位置させる構成としている一方、小型の搬送車両4bの荷台7に噴霧する場合には、
図11の(b)、(c)に示すように、前記各旋回アーム12を通路5と直交方向から通路5奥側に所定角度(例えば約10~30度程度)傾斜させて、リンク部材13を搬送車両4bの荷台7の車幅方向の略中心線上に位置させる構成としている。これにより、リンク機構を利用した比較的簡単な装置構成ながらも、リンク機構14先端部のリンク部材13前端部位置を、搬送車両のサイズに応じて通路5前後方向へスライド調整でき、運転席へのリンク部材13の接触といった不具合を防止可能としている。
【0056】
このように、本発明に係る付着防止剤噴霧装置にあっては、搬送車両のサイズ(荷台高さ)にかかわらず、噴霧ノズルと搬送車両の荷台とを近接状態に保ちながら付着防止剤を噴霧可能な構成としたので、例え強風下でも付着防止剤を荷台に安定して噴霧することができ、周辺環境の汚損や付着防止剤の無駄を抑制できる。
【0057】
なお、本実施例では、アスファルトプラントのプラント本体1直下に配される通路5に進入する搬送車両4a、4bに対して付着防止剤を噴霧する場合について説明したが、前記プラント本体1で製造したアスファルト合材を一時的に貯蔵する、アスファルト合材サイロの直下に配される通路に侵入する搬送車両4a、4bに対して付着防止剤を噴霧する場合にも同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、アスファルトプラントのプラント本体やアスファルト合材サイロに限らず、アスファルト合材を搬送する搬送車両に対して付着防止剤を噴霧する場合において広く利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1…プラント本体 2…高架台
3…ミキサ 4a、4b…搬送車両
5…通路 7…荷台
7a…床面(荷台) 7b…あおり板内壁面7b(荷台)
8…付着防止剤噴霧装置 9a~9d…脚柱(高架台)
10…架台 11…軸支部(鉛直軸)
12…旋回アーム 13…リンク部材
14…リンク機構 15…サブリンク部材
18a、18b、19a、19b…噴霧ノズル
20…ヒータ 21a、21b…検知センサ
22…噴霧制御器