(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】凍結乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 5/06 20060101AFI20240502BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
F26B5/06
F26B25/00 B
(21)【出願番号】P 2019043355
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-02-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(72)【発明者】
【氏名】小川 智宏
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-016047(JP,A)
【文献】特開2003-222467(JP,A)
【文献】特開平07-027479(JP,A)
【文献】特開平04-083573(JP,A)
【文献】特表2015-500973(JP,A)
【文献】特開昭63-231194(JP,A)
【文献】特開2015-055454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/06
F26B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容する容器と、該容器の内部を減圧するための減圧手段及び該減圧手段により減圧される前記容器内の圧力を検出する圧力検出手段と、被処理物を加熱する加熱手段と、を備え、
前記加熱手段を駆動した状態で制御するよう構成され、前記圧力検出手段により検出される前記容器内の圧力に基づいて、前記加熱手段の温度が上下するように制御する制御部を備え
、
前記制御部は、前記減圧手段が減圧することで前記圧力検出手段により検出される容器内の圧力が所定圧力まで小さくなると、前記加熱手段の温度が最大温度と最小温度との間の設定温度となるように前記駆動を制御し、該設定温度となるように前記駆動を制御した状態で前記圧力が前記所定圧力より小さい圧力である下限圧力以下になると、前記加熱手段の温度が前記設定温度より上がるように該加熱手段の駆動を制御することを特徴とする凍結乾燥装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記圧力検出手段により検出される圧力が上がるときの昇圧に関する閾値に基づいて前記加熱手段の温度が下がるように該加熱手段の駆動を制御することを特徴とする請求項
1に記載の凍結乾燥装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記圧力検出手段により検出される圧力に基づいて、前記容器の回転または前記容器に設けられる翼の回転を制御することを特徴とする請求項1
又は2に記載の凍結乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物の乾燥を凍結乾燥により行うための凍結乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記凍結乾燥装置は、乾燥対象となる被処理物を載置する複数の棚を有する乾燥庫と、該乾燥庫内を減圧するための減圧手段と、乾燥庫の壁面に設けられ熱媒流体を循環させるジャケットと、を備えている。そして、ジャケットの温度が棚に載置した被処理物の温度に略等しい温度になるように熱媒流体の流量を制御している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、ジャケットの温度を被処理物の温度と等しくなるように熱媒流体の流量を制御すると、次のような不都合が発生する。つまり、被処理物全体の温度を、温度の低い部分に合わせて温度を制御する場合には、乾燥速度が遅くなり乾燥に時間が掛かる。また、乾燥速度を速くするためにジャケット温度を高くし過ぎた場合には、被処理物が崩壊温度(コラプス温度)以上になり、被処理物が融解するコラプスを発生することがあり、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであって、乾燥速度を速い状態で維持しながらも、コラプスの発生を防止できる凍結乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明の凍結乾燥装置は、前述の課題解決のために、被処理物を収容する容器と、該容器の内部を減圧するための減圧手段及び該減圧手段により減圧される前記容器内の圧力を検出する圧力検出手段と、被処理物を加熱する加熱手段と、を備え、前記圧力検出手段により検出される前記容器内の圧力に基づいて、前記加熱手段の温度が上下するように制御する制御部を備えていることを特徴としている。
【0007】
上記のように、圧力検出手段で容器内の圧力を検出することによって、容器の内部の減圧状態を把握することができる。そして、制御部が、圧力検出手段により検出される容器内の圧力に基づいて、加熱手段の温度が上下するように制御することによって、乾燥速度が速い状態で維持しながらも、減圧状態が悪化して被処理物がコラプスすることを防止することができる。
【0008】
また、本発明の凍結乾燥装置は、前記制御部は、前記圧力検出手段により検出される圧力が下がるときの降圧に関する閾値に基づいて前記加熱手段の温度が上がるように該加熱手段の駆動を制御する構成であってもよい。
【0009】
上記のように、制御部が、圧力検出手段により検出される圧力が下がるときの降圧に関する閾値に基づいて前記加熱手段の温度が上がるように加熱手段の駆動を制御することによって、凍結乾燥を良好に行うことができる。
【0010】
また、本発明の凍結乾燥装置は、前記制御部は、前記圧力検出手段により検出される圧力が上がるときの昇圧に関する閾値に基づいて加熱手段の温度が下がるように加熱手段の駆動を制御する構成であってもよい。
【0011】
上記のように、制御部が、圧力検出手段により検出される圧力が上がるときの昇圧に関する閾値に基づいて加熱手段の温度が下がるように加熱手段の駆動を制御することによって、減圧状態が悪化して被処理物がコラプスすることを防止することができる。
【0012】
また、本発明の凍結乾燥装置は、前記制御部は、前記圧力検出手段からの検出信号に異常があると判断した場合には、前記加熱手段の駆動を予め決められた時間に基づいて制御する構成であってもよい。
【0013】
上記構成のように、制御部は、圧力検出手段からの検出信号に異常があると判断した場合には、加熱手段の駆動を予め決められた時間に基づいて制御することによって、被処理物の凍結乾燥を良好に行わせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器内の圧力に基づいて、加熱手段の温度が上下するように制御することによって、乾燥速度が速い状態で維持しながらも、コラプスの発生を防止できる凍結乾燥装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】同減圧乾燥装置に備えるフィルタの取付部分の拡大図である。
【
図4】同減圧乾燥装置の容器を180度回転させた状態を示す側面図である。
【
図5】同減圧乾燥装置に備えるフィルタのフィルタ部を支持する支持枠の正面図である。
【
図8】
図5におけるVIII-VIII線断面図である。
【
図10】同減圧乾燥装置に備えるフィルタのフィルタ部の正面図である。
【
図12】(a)~(e)はフィルタの別の形態を示す概略図である。
【
図13】乾燥時間に対する容器内の圧力値とジャケット温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る凍結乾燥装置の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、凍結乾燥装置1は、被処理物を収容する回転可能に支持された容器2と、容器2の内部の気体を吸引して内部を減圧状態(真空状態ともいう)にするための真空配管3と、容器2の内部に供給された被処理物が真空配管3内に吸引されることを防止するためのフィルタ4と、を備えている。本願発明の凍結乾燥装置1は、竪型凍結乾燥機や遊星運動型凍結乾燥機などのような撹拌翼式凍結乾燥機であってもよく、本願発明の制御を適用することができる。前記竪型凍結乾燥機は、具体的には、竪型の逆円錐型容器に撹拌翼を組み合わせた凍結乾燥機である。また、前記遊星運動型凍結乾燥機は、具体的には、逆円錐型の密封容器内で、自公転するスクリュー翼によって内容物に三次元運動を与えることにより凍結乾燥を行う凍結乾燥機である。
【0018】
前記凍結乾燥装置1は、凍結した被処理物が供給された容器2を減圧状態にしつつ、容器2を回転させることによって、被処理物に含まれる固体(氷)を気体(水蒸気)へ状態変化(昇華)させることで被処理物を乾燥させるようにしている。容器2の回転は、被処理物の状態に応じて間欠的に回転させる又は連続して回転させることになるが、場合によっては、正回転と逆回転とを繰り返すように回転させてもよい。
【0019】
容器2は、内部空間を画定する本体壁21と、本体壁21の上端を開閉する蓋22と、を備えている。本体壁21は、被処理物を収容できるように略ダブルコーン型(外形が略8角形)に構成されている。この本体壁21の外側を覆うように本体壁21の外側に隙間を空けてジャケット23が配置されている。
【0020】
本体壁21の上端部には、本体壁21の上端とジャケット23の上端との隙間を閉じるとともに供給される被処理物を受け取るための開口24Kが形成された円筒状の接続端部24を備えている。接続端部24の上端の径方向内側に、後述するフィルタ部41のフランジ部41Fを載置するための断面がL字状で円環状の段部24Dが形成されている。
【0021】
また、接続端部24の下端面24Aは、下方側ほど外拡がりとなるテーパー面に構成され、そのテーパー面の角度を本体壁21の内面のテーパー面21Aと面一になるように同一角度にしている。
【0022】
蓋22は、真空配管3を貫通接続するための円形の貫通孔22Aを備えており、真空配管3を接続するための接続部を構成している。この接続部(蓋22)を接続端部24に上方から押し付けて該接続端部24を閉じることで容器2内が密閉された状態になる。なお、蓋22は、手動操作力により開閉できるように構成されていてもよいし、電動モータ等のアクチュエータ(図示せず)の動力を用いて開閉可能に構成されていてもよい。
【0023】
また、容器2の下端部に乾燥処理された被処理物を排出するための開閉可能な排出部25を備えている。蓋22と排出部25とが上下方向で対向する位置に配置されている。また、容器2内の圧力を検出する圧力検出手段17(
図14参照)を備えている。この圧力検出手段17は、容器2内に設けられた圧力センサから構成されている。
【0024】
本体壁21とジャケット23との隙間に加熱手段18(
図14)により加熱された熱媒が熱媒供給用ホース5から供給されて容器2が加熱されるように構成されており、被処理物の乾燥をより促進することができる。なお、供給された熱媒は、熱媒回収用ホース6で回収されて前記加熱手段により設定温度まで加熱された後に熱媒供給用ホース5を通して容器2に供給されるように構成されている。熱媒としては温水を用いているが、加熱された気体であってもよいし、加熱手段であるヒータにより容器2を直接加熱する構成であってもよい。また、ジャケット23の温度を検出する温度検出手段19(
図14参照)を備えている。この温度検出手段19は、温度検出手段19は、ジャケット23に設けられた温度センサから構成されている。
【0025】
容器2のジャケット23の相対向する両横側面に、中空の回転軸部7,8が取り付けられている。これら回転軸部7,8は、一対の軸受台9,10の上端に取り付けられた軸受装置11,12に回転自在に支持されている。なお、
図1において左側の回転軸部7の基端側(容器2側)には、ボックス13が取り付けられている。また、一対の軸受台9,10の下端は、床等に配置される架台14に支持されている。そして、
図1の右側の軸受台10に取り付けられているモータ15により容器2が真空配管3及び一対の回転軸部7,8と一緒に水平軸芯X回りに回転する。
図4に、容器2を
図1の状態から180度回転させた状態を示している。
【0026】
真空配管3は、アーチ形状に構成され、前記蓋22に一端部(下端部)が貫通して取り付けられる直線状の第1管31と、第1管31の他端部(上端部)に突き合わした状態で一端部(下端部)が連結される円弧状の第2管32と、第2管32の他端部(左端部)に突き合わした状態で一端部が連結されるフレキシブルホース33と、フレキシブルホース33の他端部(左端部)に突き合わした状態で一端部が連結される略L字状の第3管34と、第3管34の他端部(下端部)に突き合わした状態で連結される直線状の第4管35と、を備えている。フレキシブルホース33を設けることによって、蓋22の開閉時に発生する真空配管3の長さ変化を吸収することができるようにしている。
【0027】
第4管35の他端部(下端部)は、前記左側の回転軸部7に貫通して取り付けられる。前記左側の回転軸部7の左端部は、減圧真空配管16Fを備えた直線状の管16の一端部に連通した状態で連結されている。なお、第5管16は、左側の軸受台9に固定されている。したがって、減圧真空配管16Fにホースを介して接続されている減圧ポンプ(図示せず)を作動させることによって、減圧真空配管16F、管16、真空配管3を通して容器2内の気体を吸引することにより減圧することで、容器2内を減圧状態にする。前記減圧ポンプと、減圧真空配管16Fを備える管16と、真空配管3とから、容器2の内部を減圧するための減圧手段を構成している。
【0028】
フィルタ4は、フィルタ部41(
図10及び
図11参照)と、フィルタ部41を支持する支持枠42(
図5~
図9参照)と、を備えている。
【0029】
フィルタ部41は、
図10及び
図11に示すように、縫製された複数枚(ここでは2枚)の網状体41A,41Bと、前記蓋22を閉塞した時にシールするためのシール材としての2枚のリング状で板状のシールガスケット41C,41Dと、これらシールガスケット41C,41D間に挟まれる合成樹脂製(例えばポリプロピレン)のリング状で板状の円板41Eと、を備えている。なお、前記網状体41A,41Bは、全域に亘って通気性を有しており、より一層吸気効率を上げることができる。この網状体41A,41Bは、不織布から構成されてもよい。
【0030】
網状体41A,41Bは、下端が開放された縦壁部を構成する第1の網状体41Aと、開放された下端を覆うカバー部としての横壁部を構成する第2の網状体41Bと、を備えている。この第2の網状体41Bの外周縁を上方側へ折り曲げて第1の網状体41Aの下端部に縫い付けることで両網状体41A,41Bを連結している。また、第1の網状体41Aの上端縁を外折りにし、その外折した部分41aで上下方向中間に円板41Eを挟んだ上下一対のシールガスケット41C,41Dを包むように内側に折り返し、折り返した先端部を第1の網状体41Aの横側部に縫い付けることにより、上端にシールガスケット41C,41Dを有するフランジ部41Fを有する有底筒状(鍔付きハット形状)のフィルタ部41が構成される。
【0031】
支持枠42は、
図5~
図9に示すように、下端に位置して底部を形成する多数の開口42aが形成された円形で合成樹脂製(金属製でもよい)の多孔板42Aと、上端に位置して円形のフランジ部42bを形成するリング状で合成樹脂製(金属製でもよい)の上側リング部材42Bと、上側リング部材42Bと多孔板42Aとを上下方向で連結するための複数本(16本)の丸棒42Cと、丸棒42Cの上下方向略中央部に取り付けられる中心部が開口42dされた中間リング部材42Dと、中間リング部材42Dと多孔板42Aとの間でかつ周方向において一つ置きの丸棒42Cの内側から中心に向かうように取り付けられる縦長状の複数枚(8枚)の補強板42Eと、丸棒42Cの上端部の外周面に装着されて厚み分だけ外側に少し張り出す合成樹脂製(金属製でもよい)で板状のリング状の張り板42Fと、を備えている。
【0032】
支持枠42は、フィルタ部41よりも僅かに小さな径寸法を有する有底筒状(鍔付きハット形状)に構成されている。したがって、支持枠42にフィルタ部41を下方から被せることによって、一体化することができる(
図3参照)。このように支持枠42とフィルタ部41とが一体化された支持枠42のフランジ部42bの下方に位置するフィルタ部41のフランジ部41Fを、接続端部24の段部24Dに載置させる。この状態で蓋22を上方から押圧することで容器2内を密閉状態にしている。
【0033】
前述したようにフィルタ4が、接続部(蓋22)から容器2の内部側へ突出する縦壁部を構成する第1の網状体41Aを備えているので、横壁部を構成する第2の網状体41B及び縦壁部を構成する第1の網状体41Aを通して吸引することによって、気体の通気面積を増大させることができる。これにより、容器の内部の圧力を効率よく下げて、乾燥効率を上げることができる。
【0034】
具体的には、フィルタ4の縦壁部(第1の網状体41A)の延出端(図では下端)が、本体壁21の接続端部24の最下端24Eよりも容器2の内部側へ延びている。このように、フィルタ4の縦壁部(第1の網状体41A)の延出端が、本体壁21の接続端部24の最下端24Eよりも容器2の内部側へ延びていれば、容器2が駆動回転されている間にフィルタ4が、被処理物で覆われることがあっても、フィルタ4の縦壁部(第1の網状体41A)の延出端部側が早めに露出することができるので、吸気効率を上げることができる。この実施形態では、フィルタ4の縦壁部(第1の網状体41A)の延出端(図では下端)が、本体壁21の接続端部24の最下端24Eよりも容器2の内部側へ延びているが、被処理物が乾燥処理される処理空間G内であればどの位置にあってもよい。処理空間Gは、容器2の回転により容器2の内部の被処理物が移動しながら乾燥処理される空間であり、本体壁21の接続端部24の内側面とフィルタ4の縦壁部(第1の網状体41A)の外面との隙間Sも含む。したがって、接続部である蓋22の下面から接続端部24の段部24Dよりも下方で、かつ、接続端部24の上側の下端24Fまでの間にフィルタ4の縦壁部(第1の網状体41A)の延出端(図では下端)が位置するようにフィルタ4を構成してもよいし、接続端部24の上側の下端24Fから最下端24Eまでの間にフィルタ4の縦壁部(第1の網状体41A)の延出端(図では下端)が位置するようにフィルタ4を構成してもよい。なお、前記隙間Sをシール性を有する部材で埋めて実施してもよい。この場合、接続端部24の上側の下端24Fから下方が処理空間Gとなる。例えば、
図1に示す容器2に被処理物Dを供給した時の被処理物Dの上面ラインを第1ラインR1に設定すると、
図4に示す容器2を180度回転させたときには、被処理物の上面ラインが第2ラインR2となる。つまり
図4に示す第2ラインR2では、フィルタ4の一部(ここでは、延出端4T及び縦壁部(第1の網状体41A)の一部(延出端部))が露出する。このような被処理物の供給量に設定すると、フィルタ4の延出端4Tを延出方向(
図1では下方向)に更に延ばすことも可能である。つまり、
図1において、被処理物の第2ラインR2から水平軸芯Xまでの第1上下高さLで形成される容器2の第1処理空間内の任意の上下位置及び水平軸芯Xから更に下方へ第1上下高さLで形成される容器2の第2処理空間内の任意の上下位置までフィルタ4の延出端4Tを延出方向(
図1では下方向)に延ばすことができる。
図1では、最大でフィルタ4を延出端4T1まで延ばした場合を破線で示し、このように伸ばしても、
図1に示すように供給された被処理物の第1ラインR1に当接することがなく、しかも
図4に示す容器2を180度回転させた場合でも、縦壁部(第1の網状体41A)の少なくとも一部が被処理物により覆われることがない。この容器2では、水平軸芯Xを挟んで上側の処理空間に対して、下側の処理空間が第2上下高さl分だけ長く設定されているため、フィルタ4の延出端4Tを
図1において水平軸芯Xから第1上下高さLに第2上下高さl分を足した高さまでフィルタ4を延ばすことができる。
図1では、最大でフィルタ4を延出端4T2まで延ばした場合を示し、このように延ばしても、
図1に示すように供給された被処理物の第1ラインR1に当接することがなく、しかも
図4に示す容器2を180度回転させた場合でも、縦壁部(第1の網状体41A)の少なくとも一部が被処理物により覆われることがない。
【0035】
例えば、前記構成のフィルタ4を備える容器2に収容可能な全容量の1%~80%容量(好ましくは、1%~65%、より好ましくは1%~45%)の被処理物を容器2内に収容して容器2を回転させながら乾燥処理する場合(特に、
図4に示す容器2を180度回転させた場合)に、縦壁部(第1の網状体41A)の少なくとも一部が被処理物により覆われることなく被処理物から露出するように該縦壁部を形成することが好ましい。このように縦壁部を形成することにより、露出した縦壁部の一部からも吸引して吸気効率を上げることができる。前記容量を1%~80%にした場合(容量が多い場合)には、容量を1%~65%や1%~45%にした場合に比べてフィルタ4の高さを高くしなければならないため、吸気効率を高めることができる反面、フィルタ4の高さが高くなる分、フィルタ4にかかるコストや強度面(耐久面)において不利になる。また、前記構成のフィルタ4を備える容器2を回転させながら被処理物の乾燥処理が終了した時の被処理物量が前記容器の全容量の0.1%~80%(好ましくは、0.1%~65%、より好ましくは0.1%~45%、更に好ましくは0.1%~10%)である場合に、縦壁部(第1の網状体41A)の少なくとも一部が被処理物により覆われることなく被処理物から露出するように該縦壁部を形成することが好ましい。このように縦壁部を形成することにより、露出した縦壁部の一部からも吸引して吸気効率を上げることができる。この場合も同様に、被処理物の乾燥処理が終了した時の被処理物量が前記容器の全容量の0.1%~80%にした場合(被処理物量が多い場合)には、被処理物量が前記容器の全容量の0.1%~65%や0.1%~45%にした場合に比べてフィルタ4の高さを高くしなければならないため、吸気効率を高めることができる反面、フィルタ4の高さが高くなる分、フィルタ4にかかるコストや強度面(耐久面)において不利になる。
【0036】
また、前記凍結乾燥装置1には、
図14に示すように、圧力検出手段17により検出される容器2内の圧力に基づいて、加熱手段18の温度が上下するように加熱手段18の駆動を制御する制御部20を備えている。
【0037】
制御部20は、圧力検出手段17により検出される圧力が下がるときの降圧に関する第1閾値に基づいて加熱手段18の温度が上がるように加熱手段18の駆動を制御し、かつ、圧力検出手段17により検出される圧力が上がるときの昇圧に関する第2閾値に基づいて加熱手段18の温度が下がるように加熱手段18の駆動を制御する。
図13のグラフに示すように、降圧に関する第1閾値は、減圧が促進されて容器2内の温度を上げてもコラプスの発生にはならずに乾燥速度が速い状態で維持できる容器2内の圧力の下限値26である。また、昇圧に関する第2閾値は、乾燥速度が過大な状態やフィルタの詰まり等により減圧度が悪くなり、コラプスの発生を招くことが予想される容器2内の圧力の上限値27である。
【0038】
図13の細い破線28が、容器2内の圧力が次第に減圧されている正常運転時の容器2内の圧力値を示している。そして、圧力検出手段17により検出される圧力値が、上限値27と下限値26の間に入っている場合には、
図13の実線29で示すように、ジャケット温度が太い破線30で示す最大温度よりも少し下がった設定温度(ここでは-10度)を維持するように加熱手段18の駆動を制御する。ここでは、ジャケット温度の最大温度(太い破線30で示す温度)とジャケット温度の最小温度(一点鎖線36で示す温度)の略中間に位置する温度に前記設定温度を設定しているが、ジャケット温度の最大温度よりも低い任意の温度に設定することもできる。また、乾燥運転中に、圧力検出手段17により検出される圧力値が、上限値27よりも大きくなると、ジャケット温度を下げるように加熱手段18の駆動を制御する。また、前記の場合とは反対に、圧力検出手段17により検出される圧力値が、下限値26と略同じ又は下限値26よりも小さくなると、制御部20は、容器2内の減圧が促進されたと判断して、ジャケット温度を前記設定温度から徐々に上昇させるように加熱手段18の駆動を制御する。
【0039】
また、ジャケット温度の最小温度(一点鎖線36で示す温度)までジャケット温度を下げても、圧力検出手段17により検出される圧力値が圧力の上限値27を超える場合は、減圧ポンプの異常や、配管や蓋等からの気体の漏れによる密閉異常が発生していると制御部20が判断して、エラーである旨を作業者にブザーや表示ランプ等の報知手段を用いて報知するとともに、凍結乾燥装置1の運転を一旦中断してもよい。
【0040】
実際の乾燥工程において、制御部20により、加熱手段18の駆動を制御することについて
図13のグラフに基づいて説明する。
【0041】
容器2内に供給された被処理物の凍結乾燥を行うために起動スイッチ(図示せず)を押すと、減圧ポンプが駆動され、容器2内の気体を吸引して減圧を開始する。減圧ポンプを所定時間駆動すると、容器2内の圧力(細い破線28参照)が上限値27に達した後、更に容器2内の圧力が所定値まで小さくなる。なお、容器2内の圧力が、所定時間経過しても上限値27に達しない場合には、制御部20が、何らかのトラブルが発生していると判断して、エラーである旨を作業者にブザーや表示ランプ等の報知手段を用いて報知するとともに、凍結乾燥装置1の運転を一旦中断してもよい。
【0042】
前述した容器2内の圧力が所定値まで小さくなり、所定時間が経過すると、下限値26と略同じ又は下限値26よりも容器2内の圧力が小さくなると(
図13のポイント37の時点を参照)、制御部20は、減圧が進んだと判断して、ジャケット温度を前記設定温度から徐々に上昇させるように加熱手段18の駆動を制御して被処理物を乾燥させる。容器2内の圧力が上限値27よりも小さくなって(下がって)から、上限値27を越える場合には、制御部20は、ジャケット温度を下げるように加熱手段18の駆動を制御する。
【0043】
また、制御部20は、乾燥初期の時は、容器2を間欠回転又は低速回転させる制御を行い、減圧が進んでジャケット温度を上昇させる時は、ジャケット温度の回転を徐々に速くする制御を行う。そして、乾燥の終わりの時期、つまりジャケット温度を最大温度(
図13では20℃)まで上げた後は、回転を更に速くする。このようにジャケット温度に合わせて容器2の回転数を制御することが好ましい。このように制御することで、乾燥終期の乾燥速度を促進して乾燥時間の短縮化を図ることも可能である。
【0044】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
前記実施形態では、容器2が開閉自在な蓋22を備えていたが、容器2内に被処理物を外部から供給するための開口を容器2の周面に設けて実施することができる。この場合、開口が接続部を構成する。
【0046】
また、前記実施形態では、フィルタ4を鍔付きのハット形状に構成したが、
図12(a)~(e)のような形状であってもよい。なお、図ではフィルタ部41を示し、支持枠42は図示していない。
図12(a)では、縦壁部である第1の網状体41Aの延出端(図では下端)を覆うカバー部である第2の網状体41Bを、中心部側ほど下方に突出する円錐状に構成している。
図12(b)では、縦壁部である第1の網状体41Aの延出端を覆うカバー部である第2の網状体41Bを、中心部側ほど上方に凹んだ逆円錐状に構成している。
図12(c)では、縦壁部である第1の網状体41Aを下方に向かうほど内側に位置する先窄まり形状にし、第1の網状体41Aの延出端を覆うカバー部である第2の網状体41Bを、中心部側ほど下方に突出する円錐状に構成している。
図12(d)では、縦壁部である第1の網状体41Aを下方に向かうほど外側に位置する拡張形状に構成し、第1の網状体41Aの延出端を覆うカバー部である第2の網状体41Bを水平面形状にしている。
図12(e)では、カバー部の無い縦壁部である第1の網状体41Aのみで構成されている。具体的には、である第1の網状体41Aが6つの面41Hを有する椀形状に構成されている。このように、フィルタ部41の形状又は構成は自由に変更できる。また、フィルタ部41は、複数の襞を備えたプリーツ構造を有したものであってもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、フィルタ4を、フィルタ部41と、支持枠42と、を備えた場合を示したが、保形強度を有するフィルタ部41のみでフィルタ4を構成してもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、縦壁部である第1の網状体41Aを全域に亘って通気性を有する構成としたが、一部にのみ通気性を有する構成としてもよい。また、第1の網状体41Aの延出端を覆うカバー部である第2の網状体41Bを、全域に亘って通気性を有する構成としたが、一部にのみ通気性を有する構成としてもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、降圧に関する閾値を下限値とし、昇圧に関する閾値を上限値とした。これに対して、降圧に関する閾値を、容器2内における圧力が降下する降下割合(降下率)を予め設定し、容器2内における圧力の降下割合(降下率)が、設定された降下割合(降下率)以上になったときに、ジャケット温度を上昇させるようにしてもよい。また、昇圧に関する閾値を、容器2内における圧力が上昇する上昇割合(上昇率)を予め設定し、容器2内における圧力の上昇割合(上昇率)が、設定された上昇割合(上昇率)以上になったときに、ジャケット温度を下げるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…凍結乾燥装置、2…容器、3…真空配管、4…フィルタ、5…熱媒供給用ホース、6…熱媒回収用ホース、7,8…回転軸部、9,10…軸受台、11,12…軸受装置、13…ボックス、14…架台、15…モータ、16…管、16F…減圧真空配管、17…圧力検出手段、18…加熱手段、19…温度検出手段、20…制御部、21…本体壁、21A…テーパー面、22…蓋、22A…貫通孔、23…ジャケット、24…接続端部、24A…下端面、24D…段部、24E…最下端、24F…上側の下端、24K…開口、25…排出部、26…下限値、27…上限値、28…細い破線、29…実線、30…太い破線、31…第1管、32…第2管、33…フレキシブルホース、34…第3管、35…第4管、36…一点鎖線、37…ポイント、41…フィルタ部、41A…第1の網状体(縦壁部)、41B…第2の網状体(横壁部)、41C,41D…シールガスケット、41E…円板、41F…フランジ部、41H…6つの面、41a…外折した部分、42…支持枠、42A…多孔板、42B…上側リング部材、42C…丸棒、42D…中間リング部材、42E…補強板、42F…張り板、42a…開口、42b…フランジ部、42d…開口、G…処理空間、S…隙間、X…水平軸芯