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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240502BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20240502BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240502BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J153/02
C09J11/08
G09F3/10 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019211800
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021080425
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将司
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝和
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052279(JP,A)
【文献】特開2019-195928(JP,A)
【文献】特開2016-074814(JP,A)
【文献】特開2013-216853(JP,A)
【文献】特開2018-070858(JP,A)
【文献】特開2018-168252(JP,A)
【文献】特開2017-116938(JP,A)
【文献】特開2018-116146(JP,A)
【文献】特開2019-52280(JP,A)
【文献】特開平2-92982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00ー 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
G09F 1/00- 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、粘着剤層と、を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層が、スチレン系樹脂(A)及び粘着付与樹脂(B)を含有する粘着剤組成物から形成された層であり、
前記スチレン系樹脂(A)が、スチレン-イソプレンジブロック共重合体(SI)及びスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)を含み、且つ前記スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)の含有量が、前記スチレン系樹脂(A)の全量基準で、35質量%以上60質量%以下であり、
前記スチレン系樹脂(A)の質量平均分子量が20万以上であり、
前記スチレン-イソプレンジブロック共重合体(SI)及び前記スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)の合計含有量が、前記スチレン系樹脂(A)の全量基準で、90質量%~100質量%であり、
前記粘着付与樹脂(B)が、ロジン系樹脂及び芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂から選ばれる1種以上を含み、
前記粘着付与樹脂(B)と前記スチレン系樹脂(A)との質量比[(B)/(A)]が、1.0未満であり、
前記粘着付与樹脂(B)と前記スチレン系樹脂(A)中の前記スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)との質量比[(B)/(SIS)]が、2.3以下であり、
前記粘着剤層の粘着表面同士を貼合して用いられる、粘着シート。
【請求項2】
前記粘着付与樹脂(B)と前記スチレン系樹脂(A)中のイソプレン由来の構成単位(A-I)との質量比[(B)/(A-I)]が、1.2以下である、請求項に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂(A)中のスチレン由来の構成単位(A-S)の含有量が、前記スチレン系樹脂(A)の全量基準で、25質量%未満である、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記基材の表面の一部に前記粘着剤層が積層した構成を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記基材の表面の一部に積層した前記粘着剤層が2箇所以上存在する、請求項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層の粘着表面の一部が、2箇所以上表出している、もしくは、2箇所以上表出可能である、請求項に記載の粘着シート。
【請求項7】
対象物に巻き付けて、識別ラベル又はタグとして用いる、請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、各種被着体を固定する際に利用される。
また、粘着シートは、各種物品を結束するための結束用粘着テープ、並びに各種ケーブル及びコード並びに配管等に巻き付けて行き先や内容物を表示するための表示ラベル(識別ラベルともいう)やタグ等としても利用されている。
【0003】
ところで、近年、粘着シートの粘着剤層を形成するための粘着剤用の材料が各種検討されている。このような材料の一つとして、スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含むスチレン系樹脂が挙げられる。当該スチレン系樹脂は、物理的架橋によりポリスチレン相を形成しているため、室温付近で高い凝集力を示す。また、濡れ性にも優れる。一方で、当該スチレン系樹脂自体は粘着力がないことから、当該スチレン系樹脂に粘着付与樹脂を添加することによって、粘着力に優れる粘着剤層を形成することが行われている。例えば、特許文献1には、前記スチレン系樹脂100質量部に対し、粘着付与樹脂として脂肪族芳香族共重合樹脂100質量部及び芳香族変性テルペン系樹脂30質量部を添加して、粘着剤層を形成することが記載されている(引用文献1の実施例1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-240457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、前記スチレン系樹脂に粘着付与樹脂を混合した粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層は、被着体に粘着剤層を貼付するまでの間又は粘着剤層同士を貼合するまでの間に、粘着力が経時的に低下する場合があることがわかった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含むスチレン系樹脂並びに粘着付与樹脂を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートについて、粘着力に優れると共に、被着体に粘着剤層を貼付するまでの間又は粘着剤層同士を貼合するまでの間における、粘着力の経時的な低下が抑制された粘着剤層を有する粘着シートを提供することを課題とする。
なお、本明細書では、「被着体に粘着剤層を貼付するまでの間又は粘着剤層同士を貼合するまでの間における、粘着力の経時的な低下」のことを、単に「粘着力の経時的な低下」ともいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、前記スチレン系樹脂中のスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の含有量を特定の範囲とすること、粘着付与樹脂と前記スチレン系樹脂との質量比を特定の範囲とすること、及び粘着付与樹脂と前記スチレン系樹脂中のスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体との質量比を特定の範囲とすることによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記[1]~[9]に関する。
[1]基材と、粘着剤層と、を有する粘着シートであって、前記粘着剤層が、スチレン系樹脂(A)及び粘着付与樹脂(B)を含有する粘着剤組成物から形成された層であり、前記スチレン系樹脂(A)が、スチレン-イソプレンジブロック共重合体(SI)及びスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)を含み、且つ前記スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)の含有量が、前記スチレン系樹脂(A)の全量基準で、35質量%以上であり、前記粘着付与樹脂(B)が、ロジン系樹脂及び芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂から選ばれる1種以上を含み、前記粘着付与樹脂(B)と前記スチレン系樹脂(A)との質量比[(B)/(A)]が、1.0以下であり、前記粘着付与樹脂(B)と前記スチレン系樹脂(A)中の前記スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)との質量比[(B)/(SIS)]が、2.5未満である、粘着シート。
[2]前記粘着付与樹脂(B)と前記スチレン系樹脂(A)との質量比[(B)/(A)]が、1.0未満である、[1]に記載の粘着シート。
[3]前記粘着付与樹脂(B)と前記スチレン系樹脂(A)中のイソプレン由来の構成単位(A-I)との質量比[(B)/(A-I)]が、1.2以下である、[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[4]前記スチレン系樹脂(A)中のスチレン由来の構成単位(A-S)の含有量が、前記スチレン系樹脂(A)の構成単位の全量基準で、25質量%未満である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の粘着シート。
[5]前記粘着剤層の粘着表面同士を貼合して用いられる、[1]~[4]のいずれか1つに記載の粘着シート。
[6]前記基材の表面の一部に前記粘着剤層が積層した構成を有する、[1]~[5]のいずれか1つに記載の粘着シート。
[7]前記基材の表面の一部に積層した前記粘着剤層が2箇所以上存在する、[6]に記載の粘着シート。
[8]前記粘着剤層の粘着表面の一部が、2箇所以上表出している、もしくは、2箇所以上表出可能である、[6]に記載の粘着シート。
[9]対象物に巻き付けて、識別ラベル又はタグとして用いる、[1]~[8]のいずれか1つに記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含むスチレン系樹脂並びに粘着付与樹脂を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートについて、粘着力に優れると共に、被着体に粘着剤層を貼付するまでの間又は粘着剤層同士を貼合するまでの間における、粘着力の経時的な低下が抑制された粘着剤層を有する粘着シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の粘着シートの構成の一例を示す、第1の態様の粘着シートの断面模式図である。
図2】本発明の粘着シートの構成の一例を示す、第2の態様の粘着シートの断面模式図である。
図3】本発明の粘着シートの構成の一例を示す、第3の態様の粘着シートの断面模式図である。
図4】本発明の粘着シートの構成の一例を示す、第4の態様の粘着シートの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の粘着シートの態様]
本発明の粘着シートは、基材と、粘着剤層と、を有する粘着シートであって、前記粘着剤層が、スチレン系樹脂(A)及び粘着付与樹脂(B)を含有する粘着剤組成物から形成された層である。
前記スチレン系樹脂(A)は、スチレン-イソプレンジブロック共重合体(SI)及びスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)を含み、且つ前記スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)の含有量が、前記スチレン系樹脂(A)の全量基準で、35質量%以上である。
前記粘着付与樹脂(B)は、ロジン系樹脂及び芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂から選ばれる1種以上を含む。
前記粘着付与樹脂(B)と前記スチレン系樹脂(A)との質量比[(B)/(A)]は、1.0以下である。
前記粘着付与樹脂(B)と前記スチレン系樹脂(A)中の前記スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)との質量比[(B)/(SIS)]は、2.5未満である。
【0012】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記要件を満たす粘着剤組成物から粘着剤層を形成することによって、粘着力に優れると共に、粘着力の経時的な低下が抑制された粘着剤層とできることを見出した。
粘着力に優れると共に、粘着力の経時的な低下が抑制された粘着剤層とできる理由については、上記要件を満たす粘着剤組成物から粘着剤層を形成することによって、スチレン系樹脂(A)中のイソプレンドメインの運動性が低下して、粘着付与樹脂(B)のイソプレンドメインへの相溶状態が安定に維持され、粘着付与樹脂(B)の粘着剤層表層へのブリードアウトが抑えられるためと推察される。
【0013】
以下、本発明の粘着シートの構成、本発明の粘着シートを構成する部材(基材、粘着剤層、剥離ライナー、及び非粘着性層)、本発明の粘着シートを製造する方法、並びに本発明の粘着シートの用途について、詳細に説明する。
【0014】
<粘着シートの構成>
本発明の粘着シートは、基材と粘着剤層とを有する。
本発明の一態様の粘着シートは、基材及び粘着剤層のみからなる粘着シートであってもよいが、これら以外の層を有していてもよい。例えば、粘着剤層の粘着表面上に、さらに剥離ライナーが積層した構成であってもよい。
また、本発明の一態様の粘着シートは、基材と粘着剤層とが直接積層した構成であってもよいが、基材と粘着剤層との間に他の層を有する構成であってもよい。
【0015】
図1~4に、本発明の粘着シートの構成の一例として、第1~4の態様の粘着シートの断面模式図を示す。
【0016】
本発明の一態様の粘着シートとしては、基材の表面の一部に粘着剤層が積層した構成を有する粘着シートが好ましく、基材の表面の一部に積層した粘着剤層が2箇所以上存在する粘着シートがより好ましい。
このような態様の粘着シートとしては、図1の第1の態様の粘着シート、及び、図2の第2の態様の粘着シートが挙げられる。
【0017】
また、本発明の別の一態様の粘着シートとしては、前記粘着剤層の粘着表面の一部が、2箇所以上表出している、もしくは、2箇所以上表出可能である粘着シートが挙げられる。当該態様の粘着シートでは、表出している、もしくは、表出させた粘着表面同士を貼合して用いられる。
このような態様の粘着シートとしては、図3の第3の態様の粘着シート、及び、図4の第4の態様の粘着シートが挙げられる。
【0018】
以下、図1~4に示す第1~4の態様の粘着シートについて詳細に説明する。
【0019】
(本発明の粘着シートの第1の態様)
本発明の第1の態様である、図1(a)に示す粘着シート1Aは、基材10の一方の表面10bの両端に、第1粘着剤層21及び第2粘着剤層22が積層した構成を有する。
図1(a)に示す粘着シート1Aは、第1粘着剤層21の粘着表面21aと、第2粘着剤層22の粘着表面22aとを貼合して用いられることが好ましい。ここで、2つの粘着剤層の粘着表面同士を貼合した際、基材10の表面10bが内側となり、表面10aが外側となることが好ましい。
例えば、粘着シート1Aを、各種ケーブル及びコード等に取り付ける場合、粘着シート1Aが基材10の表面10bの一部に粘着剤層が積層した構成であるため、各種ケーブル及びコード等とは、基材10の表面10bが触れ合う。
ここで、粘着シート1Aの2つの粘着剤層の粘着表面同士を貼合した際には、基材の表面10b側には粘着表面が無いため、粘着剤層が付着することによる、各種ケーブル及びコード等の被着体への汚染を防ぐことができる。また、粘着剤層同士を貼合するまでの間において、粘着剤層の粘着力の経時的な低下が起こり難く、粘着力も優れることから、粘着シートを長期間保管した後に粘着剤層同士を貼合して用いた場合であっても、粘着シートの被着体からの脱落等が生じ難い。
【0020】
なお、粘着シート1Aを識別ラベルとして使用する際、基材10の表面10aに、識別用の各種情報が記載されている又は記載可能であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の一態様の粘着シートにおいて、図1(b)に示す粘着シート1Bのように、第1粘着剤層21及び第2粘着剤層22の粘着表面上に、更に剥離ライナー31、32が積層した構成としてもよい。
なお、図1(b)に示す粘着シート1Bでは、2枚の剥離ライナー31、32を有する構成であるが、1枚の剥離ライナーが第1粘着剤層21及び第2粘着剤層22の粘着表面上に積層した構成であってもよい。
【0022】
(本発明の粘着シートの第2の態様)
本発明の第2の態様である、図2(a)に示す粘着シート2Aは、基材10の一方の表面10aの一端に第1粘着剤層21が積層し、他方の表面10bの第1粘着剤層21側とは反対側の一端に第2粘着剤層22が積層した構成を有する。
この粘着シート2Aも、第1粘着剤層21の粘着表面21aと、第2粘着剤層22の粘着表面22aとを貼合して用いられる。
【0023】
なお、粘着表面21a及び粘着表面22aを貼合する際に、貼合の仕方によって、基材10の表面10aが外側に位置するように2つの粘着剤層の粘着表面同士を貼合することもでき、また、表面10bが外側に位置するように2つの粘着剤層の粘着表面同士を貼合することもできる。
そのため、粘着シート2Aを識別ラベルとして使用する際、基材10の少なくとも一方の表面に、識別用の各種情報が記載されている又は記載可能であることが好ましい。
【0024】
また、粘着シート2Aにおいて、基材10の表面10a及び表面10bに、互いに異なる識別用の各種情報が記載されている又は記載可能であるような構成であってもよい。
このような構成の粘着シート2Aである場合、粘着表面同士の貼合の仕方を選択することで、外側に位置する基材10の表面を変えることができるため、一つの粘着シートで2種の情報を外側に表示することが可能となる。
【0025】
なお、図2(a)の粘着シート2Aにおいても、図2(b)に示す粘着シート2Bのように、第1粘着剤層21及び第2粘着剤層22の粘着表面上に、更に剥離ライナー31、32が積層した構成としてもよい。
【0026】
(本発明の粘着シートの第3の態様)
本発明の第3の態様である、図3(a)に示す粘着シート3は、基材10、粘着剤層20、及び剥離ライナー30がこの順で積層し、剥離ライナー30が切込部X1、X2を含む構成を備える。
剥離ライナー30が有する切込部X1、X2は、剥離ライナー30の両端の剥離ライナー端部301、302をそれぞれ除去できるように設けられている。
【0027】
図3(b)は、切込部X1、X2に沿って剥離ライナー端部301、302をそれぞれ除去した後の状態を示す粘着シート3の断面模式図である。
図3(b)に示すように、粘着シート3は、切込部X1、X2に沿って剥離ライナー端部301、302をそれぞれ除去することで、粘着剤層20の粘着表面の一部である2箇所の粘着表面201a、202aを表出させることができる。
【0028】
図3に示す粘着シート3は、剥離ライナー端部301、302をそれぞれ除去した後に表出した粘着表面201aと粘着表面202aとを貼合して用いられることが好ましい。
この粘着シート3では、基材10の表面10aが外側に位置するように2つの粘着表面同士を貼合されるため、基材10の表面10aに、識別用の各種情報が記載されている又は記載可能であることが好ましい。
また、粘着シート3の表出した粘着表面同士を貼合した場合、剥離ライナー30が内側に位置する。そのため、粘着シート3を各種ケーブル及びコード等に取りつけた際、粘着剤層が付着することによる、各種ケーブル及びコード等の被着体への汚染を防ぐことができる。また、粘着剤層同士を貼合するまでの間において、粘着剤層の粘着力の経時的な低下が起こり難く、粘着力も優れることから、粘着シートを長期間保管した後に粘着剤層同士を貼合して用いた場合であっても、粘着シートの被着体からの脱落等が生じ難い。
【0029】
(本発明の粘着シートの第4の態様)
本発明の第4の態様である、図4に示す粘着シート4は、基材10、粘着剤層20、及び非粘着性層40を有し、粘着剤層20の粘着表面の一部に非粘着性層が積層し、粘着剤層20の粘着表面の一部である2箇所の粘着表面201a、202aが表出した構成を有する。
なお、図4に示す粘着シート4は、粘着表面201a、202aが表出しているが、これらの粘着表面上に剥離ライナーが積層した構成の粘着シートとしてもよい。この態様の粘着シートにおいては、当該剥離ライナーを除去することで、粘着表面201a、202aを表出させることができる。
【0030】
図4に示す粘着シート4は、表出している粘着表面201aと粘着表面202aとを貼合して用いられる。
この粘着シート4では、基材10の表面10aが外側に位置するように2つの粘着表面同士を貼合されるため、基材10の表面10aに、識別用の各種情報が記載されている又は記載可能であることが好ましい。
また、粘着シート4の表出した粘着表面同士を貼合した場合、非粘着性層40が内側に位置する。
非粘着性層40の表面は、粘着性を有さないため、粘着シート4を各種ケーブル及びコード等に取り付けた際、粘着剤層が付着することによる、各種ケーブル及びコード等の被着体への汚染を防ぐことができる。また、粘着剤層同士を貼合するまでの間において、粘着剤層の粘着力の経時的な低下が起こり難く、粘着力も優れることから、粘着シートを長期間保管した後に粘着剤層同士を貼合して用いた場合であっても、粘着シートの被着体からの脱落等が生じ難い。
【0031】
(本発明の一態様の粘着シートの好適な要件)
本発明の一態様の粘着シートにおいて、各種ケーブル及びコード等の被着体への装着後に、これらが粘着表面によって汚染されるのを防ぐ観点から、互いに貼合する粘着剤層の粘着表面の形状が、互いに略同一であることが好ましい。
例えば、図1(a)の粘着シート1A及び図2(b)の粘着シート2Aにおいては、第1粘着剤層21の粘着表面21aと、第2粘着剤層22の粘着表面22aとが、互いに略同一の形状であることが好ましい。
また、図3の粘着シート3及び図4の粘着シート4においては、表出している、もしくは、表出可能な粘着表面201aと粘着表面202aとが、互いに略同一の形状であることが好ましい。
なお、本明細書において、「互いに貼合する粘着剤層の粘着表面の形状が、互いに略同一である」とは、対象となる2つの粘着表面を重ね合わせた際に、重なり合う共通部分の面積100%に対する、形状が異なる部分の面積割合が10%未満であることを意味する。
【0032】
本発明の粘着シートは、粘着剤層の粘着力に優れ、特に、粘着剤層の粘着表面同士を貼合した際、粘着表面同士の接着力が高い。しかも、粘着剤層同士を貼合するまでの間において、粘着剤層の粘着力の経時的な低下が起こり難いため、粘着シートを長期間保管した後に粘着剤層同士を貼合して用いた場合であっても、剥がれ難く、識別ラベル又はタグ等として好適に使用し得る。
【0033】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、粘着剤層の粘着表面同士を貼合した際の粘着表面同士の接着力としては、好ましくは40.0N/25mm以上、より好ましくは45.0N/25mm以上、更に好ましくは48.0N/25mm以上、より更に好ましくは50.0N/25mm以上である。
なお、本明細書において、上記の粘着表面同士の接着力は、実施例に記載の方法に基づき測定された値を意味する。
また、粘着シートを温度70℃の高温環境下で3日間静置した後に粘着剤層の粘着表面同士を貼合した際の粘着表面同士の接着力も、上記範囲であることが好ましい。
【0034】
<基材>
本発明の粘着シートが有する基材としては、用途に応じて適宜選択されるが、例えば、紙基材、金属基材、不織布等の多孔質基材、及び樹脂フィルム等が挙げられる。
【0035】
紙基材を構成する紙材としては、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、クラフト紙、含浸紙、中質紙、硫酸紙、及び薄葉紙等が挙げられる。
【0036】
金属基材を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、及び金等が挙げられる。
【0037】
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエステル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を含むことが好ましい。
【0038】
これらの樹脂フィルムは、1種の樹脂のみから構成されたものであってもよく、2種以上の樹脂から構成されたものであってもよい。
また、樹脂フィルムは、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
さらに、樹脂フィルムは、内部に空洞を含む空洞含有層を有する樹脂フィルムであってもよい。なお、当該空洞含有層の少なくとも一方の表面側に、さらに空洞を含まない樹脂層が積層した樹脂フィルムとしてもよい。
加えて、樹脂フィルムは、これらの樹脂と共に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0039】
これらの基材は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて複層体としてもよい。
基材として用いる複層体としては、紙基材を樹脂でラミネートしたラミネート基材、樹脂フィルムの表面に金属膜を有する金属膜付き樹脂フィルム等が挙げられる。
【0040】
ラミネート基材としては、上記の紙基材を、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0041】
金属膜付き樹脂フィルムが有する金属膜は、アルミニウム、スズ、クロム、チタン等の金属から形成することができる。
樹脂フィルムの表面に金属膜を形成する方法としては、これらの金属を、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD(physical vapor deposition)法により蒸着する方法や、上記金属からなる金属箔を一般的な接着剤を用いて貼付する方法等が挙げられる。
【0042】
なお、本発明の一態様で用いる基材が、樹脂フィルム又はラミネート基材である場合、粘着剤層との密着性を向上させる観点から、これらの基材の表面に対して、酸化法及び凹凸化法等の表面処理、並びにプライマー処理から選択される1種以上の処理を施してもよい。
酸化法としては、特に限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、及びオゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。
凹凸化法としては、特には限定されず、例えば、サンドブラスト法、及び溶剤処理法等が挙げられる。
【0043】
本発明の一態様で用いる基材としては、使用時における粘着シートの破断を防止する観点、及び、シワが入るのを防止する観点から、樹脂フィルム、及びラミネート基材が好ましく、さらに各種ケーブル及びコードへの巻き付き性を良好なものとする観点から、樹脂フィルムがより好ましく、ポリエステル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を含む樹脂フィルムが更に好ましく、ポリエステル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を含み、空洞含有層を有する樹脂フィルムがより更に好ましい。
【0044】
使用時に、折り曲げ易いと共に、形状維持性にも優れた粘着シートとする観点から、本発明の一態様で用いる基材の剛軟度としては、好ましくは0.10~0.45mN、より好ましくは0.14~0.28mN、更に好ましくは0.18~0.24mNである。
また、同様の観点から、本発明の一態様で用いる基材の引裂強さとしては、好ましくは100~1000mN、より好ましくは200~500mN、更に好ましくは250~350mNである。
なお、本明細書において、基材の剛軟度及び引裂強さは、実施例に記載の方法に基づいて測定された値を意味する。
加えて、基材の剛軟度及び引裂強さは、基材の成形時の流れ方向(MD方向)及びMD方向に対して直角方向(TD方向)の少なくとも一方に沿って測定して得られる値が、上記範囲に属していればよい。
また、基材のMD方向及びTD方向の特定が難しい場合には、基材が長方形であれば、基材の縦方向及び横方向のいずれか一方に沿って剛軟度又は引裂強さが、上記範囲に属していればよい。
【0045】
基材の厚さとしては、好ましくは10~500μm、より好ましくは15~300μm、更に好ましくは20~200μm、より更に好ましくは25~100μmである。
【0046】
<粘着剤層>
本発明の粘着シートが有する粘着剤層は、スチレン系樹脂(A)及び粘着付与樹脂(B)を含有する粘着剤組成物から形成された層である。
前記スチレン系樹脂(A)は、スチレン-イソプレンジブロック共重合体(SI)及びスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)を含み、且つ前記スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)の含有量が、前記スチレン系樹脂(A)の全量基準で、35質量%以上である。
前記粘着付与樹脂(B)は、ロジン系樹脂及び芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂から選ばれる1種以上を含む。
前記粘着付与樹脂(B)と前記スチレン系樹脂(A)との質量比[(B)/(A)]は、1.0以下である。
前記粘着付与樹脂(B)と前記スチレン系樹脂(A)中の前記スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)との質量比[(B)/(SIS)]は、2.5未満である。
上記要件を満たす粘着剤組成物から粘着剤層を形成することによって、経時的な粘着力の低下が抑制された粘着剤層となる。
【0047】
本発明の一態様の粘着シートの粘着剤層の厚さとしては、好ましくは10~150μm、より好ましくは15~120μm、更に好ましくは18~90μm、より更に好ましくは20~60μmである。
【0048】
粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレン系樹脂(A)及び粘着付与樹脂(B)と共に、他の樹脂成分や、後述する粘着剤用添加剤を含有してもよい。
ただし、本発明の一態様において、スチレン系樹脂(A)及び粘着付与樹脂(B)の合計含有量は、粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは90~100質量%、より好ましくは92~100質量%、更に好ましくは95~100質量%、より更に好ましくは98~100質量%である。
なお、本明細書において、「粘着剤組成物の有効成分」とは、当該粘着剤組成物に含まれる成分から、水や有機溶媒等の溶媒を除いた成分を指す。
【0049】
<スチレン系樹脂(A)>
本発明で用いる粘着剤組成物は、スチレン系樹脂(A)を含有する。
スチレン系樹脂(A)は、スチレン-イソプレンジブロック共重合体(SI)(以下、「SI樹脂」ともいう)及びスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)(以下「SIS樹脂」ともいう)を含み、且つSIS樹脂の含有量が、スチレン系樹脂(A)の全量基準で、35質量%以上である。
SIS樹脂の含有量が、スチレン系樹脂(A)の全量基準で、35質量%未満であると、イソプレンドメインの運動性が増加し、粘着付与樹脂(B)のブリードアウトが経時的に生じて、粘着剤層の粘着力が経時的に低下することがある。
粘着付与樹脂(B)の経時的なブリードアウトを抑制する観点から、SIS樹脂の含有量は、スチレン系樹脂(A)の全量基準で、好ましくは38質量%、より好ましくは40質量%、更に好ましくは41質量%以上、より更に好ましくは42質量%以上、更になお好ましくは43質量%以上である。
また、スチレン系樹脂(A)の凝集力と濡れ性とのバランスを良好なものとして、粘着剤層の粘着力をより高めやすくする観点から、SIS樹脂の含有量は、スチレン系樹脂(A)の全量基準で、好ましくは60質量%以下、より好ましくは57質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
【0050】
本発明の一態様において、スチレン系樹脂(A)中のSI樹脂及びSIS樹脂の合計含有量は、スチレン系樹脂(A)の全量基準で、好ましくは90~100質量%、より好ましくは92~100質量%、更に好ましくは95~100質量%、より更に好ましくは98~100質量%、更になお好ましくは100質量%である。
【0051】
また、本発明の一態様において、スチレンに由来する構成単位(A-S)の含有量は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、スチレン系樹脂(A)の構成単位の全量(100質量%)基準で、好ましくは25質量%未満、より好ましくは5~24質量%、更に好ましくは8~20質量%、より更に好ましくは10~20質量%、更になお好ましくは12~18質量%、一層好ましくは13~16質量%である。
【0052】
さらに、本発明の一態様において、イソプレンに由来する構成単位(A-I)の含有量は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、スチレン系樹脂(A)の構成単位の全量(100質量%)基準で、好ましくは75質量%超、より好ましくは76~95質量%、更に好ましくは80~92質量%、より更に好ましくは80~90質量%、更になお好ましくは82~88質量%、一層好ましくは84~87質量%である。
【0053】
スチレン系樹脂(A)の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは10万~50万、より好ましくは15万~45万、更に好ましくは20万~40万である。
なお、本明細書において、「質量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0054】
<スチレン系樹脂(A)以外の粘着性樹脂>
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレン系樹脂(A)以外の質量平均分子量(Mw)が1万以上の粘着性樹脂を含有してもよいが、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、当該粘着性樹脂の含有量は、少ないほど好ましい。
【0055】
スチレン系樹脂(A)以外の粘着性樹脂の含有量としては、粘着剤組成物中に含まれるスチレン系樹脂(A)の全量100質量部に対して、好ましくは0~10質量部、より好ましくは0~5質量部、更に好ましくは0~1質量部、より更に好ましくは0~0.01質量部であり、更になお好ましくは、スチレン系樹脂(A)以外の粘着性樹脂を含まないことである。
【0056】
このような粘着性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂(A)以外のスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂等から選択される1種以上が挙げられる。
【0057】
<粘着付与樹脂(B)>
本発明で用いる粘着剤組成物は、ロジン系樹脂及び芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂から選ばれる1種以上の粘着付与樹脂(B)を含有する。
本発明においては、上述のスチレン系樹脂(A)と、特定の粘着付与樹脂(B)とを組み合わせて含有することで、粘着剤層の粘着力を良好なものとできる。
【0058】
なお、本明細書において、粘着付与樹脂(B)とは、粘着性樹脂の粘着力を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が通常1万未満のオリゴマーであり、上述の粘着性樹脂とは区別されるものである。
【0059】
粘着付与樹脂(B)として選択し得る、芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂は、イソプレンに由来する構成単位を有し、水素化されておらず、フェノール変性及び芳香族変性が施されていない樹脂であればよい。なお、芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂は、芳香族変性テルペン樹脂及びテルペンフェノール樹脂等のように、芳香族構造を有するテルペン系樹脂とは明確に区別される。
【0060】
芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂等が挙げられる。
【0061】
また、粘着付与樹脂(B)として選択し得る、ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンフェノール樹脂、ロジンエステル、及び安定化ロジンエステル等が挙げられ、安定化ロジンエステルが好ましい。なお、安定化ロジンエステルとは、不均化、二量化、及び水素化等から選択される一種以上の処理が施された安定化ロジンをエステル化して得られるロジン系樹脂である。なお、ロジン系樹脂については、上記の化合物が水素化された水素化ロジン系樹脂であってもよい。
【0062】
本発明の一態様において、粘着剤層の粘着力をより良好なものとする観点から、粘着付与系樹脂(B)としては、芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂及び安定化ロジンエステルから選ばれる1種以上であることが好ましく、芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂であることがより好ましい。
そして、芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂の中でも、テルペン樹脂が好ましい。
【0063】
粘着付与樹脂(B)の軟化点としては、粘着剤層の粘着力を良好なものとしやすくする観点から、好ましくは70~140℃、より好ましくは80~135℃、更に好ましくは85~130℃、より更に好ましくは95℃~125℃、更になお好ましくは105~125℃である。
なお、本明細書において、粘着付与樹脂(B)の軟化点は、JIS K2207:2006に準拠して測定した値を意味する。
また、2種以上の粘着付与樹脂(B)を併用している場合、各粘着付与樹脂(B)の軟化点と配合量から算出した加重平均の値が上記範囲であることが好ましい。
【0064】
本発明の一態様において、粘着付与樹脂(B)の含有量は、粘着剤組成物中のスチレン系樹脂(A)の全量100質量部に対して、100質量部以下である。
粘着付与樹脂(B)の含有量が、粘着剤組成物中のスチレン系樹脂(A)の全量100質量部に対して、100質量部よりも多いと、粘着付与樹脂(B)のブリードアウトが経時的に生じて、粘着剤層の粘着力が経時的に低下することがある。一方で、粘着付与樹脂(B)の含有量が、粘着剤組成物中のスチレン系樹脂(A)の全量100質量部に対して、100質量部以下であると、スチレン系樹脂(A)に粘着付与樹脂(B)が相溶しやすくなり、粘着付与樹脂(B)の経時的なブリードアウトを抑制することができる。
ここで、粘着付与樹脂(B)のブリードアウトが経時的に生じるのをより抑制しやすくする観点から、粘着付与樹脂(B)の含有量は、粘着剤組成物中のスチレン系樹脂(A)の全量100質量部に対して、好ましくは100質量部未満、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは85質量部以下、より更に好ましくは80質量部以下、更になお好ましくは75質量部以下である。
また、粘着剤層の粘着力を十分に確保しやすくする観点から、粘着付与樹脂(B)の含有量は、粘着剤組成物中のスチレン系樹脂(A)の全量100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは55質量部以上、更に好ましくは60質量部以上である。
【0065】
<粘着付与樹脂(B)以外の粘着付与樹脂>
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(B)以外の粘着付与樹脂を含有してもよい。
粘着付与樹脂(B)以外の粘着付与樹脂としては、例えば、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、及び石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特に、芳香族変性テルペン樹脂及びテルペンフェノール樹脂は、スチレン系樹脂(A)のスチレンドメインとの相溶性が高いため、スチレン系樹脂(A)の特徴である凝集力を低下させ、粘着剤層の粘着力を低下させやすい。また、本発明者らの検討によると、水素化石油樹脂等の石油樹脂についても、粘着剤層の粘着力を低下させやすいことが確認されている。そのため、粘着剤層の粘着力を良好なものとしやすくする観点から、粘着付与樹脂(B)以外の粘着付与樹脂の含有量は、少ないほど好ましい。
【0066】
粘着付与樹脂(B)以外の粘着付与樹脂の含有量としては、粘着剤組成物中に含まれる粘着付与樹脂(B)の全量100質量部に対して、好ましくは0~10質量部、より好ましくは0~5質量部、更に好ましくは0~1質量部、より更に好ましくは0~0.01質量部である。更になお好ましくは、粘着付与樹脂(B)以外の粘着付与樹脂を含まないことである。
【0067】
<粘着付与樹脂(B)とスチレン系樹脂(A)との質量比>
本発明で用いる粘着剤組成物の、粘着付与樹脂(B)とスチレン系樹脂(A)との質量比[(B)/(A)]は、1.0以下である。
[(B)/(A)]が、1.0よりも大きいと、粘着剤層の粘着力を良好なものとし難くなり、粘着付与樹脂(B)の経時的なブリードアウトが生じて、粘着剤層の粘着力が経時的に低下することがある。一方で、[(B)/(A)]が1.0以下であると、スチレン系樹脂(A)に粘着付与樹脂(B)が相溶しやすくなり、粘着付与樹脂(B)の経時的なブリードアウトを抑制することができる。また、粘着剤層の粘着力も優れたものとできる。
ここで、粘着付与樹脂(B)のブリードアウトが経時的に生じるのをより抑制しやすくする観点から、[(B)/(A)]は、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.90以下、更に好ましくは0.85以下、より更に好ましくは0.80以下、更になお好ましくは0.75以下である。
また、粘着剤層の粘着力を十分に確保しやすくする観点から、[(B)/(A)]は、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.55以上、更に好ましくは0.60以上である。
【0068】
<粘着付与樹脂(B)とイソプレン由来の構成単位(A-I)との質量比>
本発明で用いる粘着剤組成物の、粘着付与樹脂(B)とイソプレン由来の構成単位(A-I)との質量比[(B)/(A-I)]は、1.2以下であることが好ましい。[(B)/(A-I)]は、スチレン系樹脂(A)中のイソプレンドメインに対する粘着付与樹脂(B)の含有量を示す指標であり、1.2以下であることで、粘着付与樹脂(B)がイソプレンドメインに相溶しやすく、粘着付与樹脂(B)の経時的なブリードアウトも抑制しやすいといえる。また、粘着剤層の粘着力を十分に確保しやすい。
かかる観点から、[(B)/(A-I)]は、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下、更に好ましくは1.0以下である。
また、粘着剤層の粘着力を十分に確保しやすくする観点から、[(B)/(A-I)]は、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.65以上、更に好ましくは0.70以上である。
【0069】
<粘着付与樹脂(B)とスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)との質量比>
本発明で用いる粘着剤組成物の、粘着付与樹脂(B)とスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(SIS)との質量比[(B)/(SIS)]は、2.5未満である。
[(B)/(SIS)]が2.5以上であると、粘着剤層の粘着力を十分に確保することができない。しかも、粘着付与樹脂(B)の経時的なブリードアウトが生じる。なお、[(B)/(SIS)]は、イソプレンドメインの運動性を支配するSIS樹脂の含有量に対して、粘着付与樹脂(B)の含有量を規定したパラメータであり、イソプレンドメインの運動性の抑制と、粘着付与樹脂(B)の含有量との関係を規定しているともいえる。[(B)/(SIS)]が小さいほど、SIS樹脂に起因する拘束力が作用しやすくなってイソプレンドメインの運動性が抑制されつつ、粘着付与樹脂(B)がブリードアウトし難い状態であるといえる。逆に、[(B)/(SIS)]が大きいほど、SIS樹脂に起因する拘束力が作用し難くなってイソプレンドメインの運動性が高まり、粘着付与樹脂(B)がブリードアウトしやすい状態であるといえる。
ここで、粘着剤層の粘着力を十分に確保しやすくすると共に、粘着付与樹脂(B)の経時的なブリードアウトを抑制しやすくする観点から、[(B)/(SIS)]は、好ましくは2.4以下、より好ましくは2.35以下、更に好ましくは2.3以下である。
また、粘着剤層の粘着力を十分に確保しやすくする観点から、[(B)/(SIS)]は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上、更に好ましくは1.4以上である。
【0070】
<粘着剤用添加剤>
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに一般的な粘着剤用添加剤を含有してもよい。
このような粘着剤用添加剤としては、例えば、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防錆剤、抗菌材、防虫剤、香料、顔料、染料、硬化剤、硬化助剤、及び触媒等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
なお、本発明の一態様で用いる粘着剤組成物において、粘着剤層の粘着力の経時的な低下を抑制する観点から、可塑剤の含有量は少ないほど好ましい。可塑剤は、粘着剤層中に含まれていると、ブリード物となり、粘着剤層の粘着力を経時的に低下させる要因となる場合がある。
このような可塑剤としては、例えば、流動パラフィン等が挙げられる。
【0072】
具体的な可塑剤の含有量としては、粘着剤組成物中に含まれるスチレン系樹脂(A)及び粘着付与樹脂(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0~5質量部、より好ましくは0~1質量部、更に好ましくは0~0.1質量部、より更に好ましくは可塑剤を含有しないことである。
【0073】
また、本発明の一態様で用いる粘着剤組成物において、粘着剤層の粘着力を良好なものとしやすくする観点から、充填材の含有量も、少ないほど好ましい。
充填材としては、例えば、導電性フィラー、金属酸化物、シリカ等が挙げられる。
具体的な充填材の含有量としては、粘着剤組成物中に含まれるスチレン系樹脂(A)及び粘着付与樹脂(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0~5質量部、より好ましくは0~1質量部、更に好ましくは0~0.1質量部、より更に好ましくは充填材を含有しないことである。
【0074】
<剥離ライナー>
本発明の一態様の粘着シートが有する剥離ライナーとしては、両面剥離処理をされた剥離ライナーや、片面剥離処理された剥離ライナー等が用いられ、剥離ライナー用基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離ライナー用基材としては、例えば、グラシン紙、上質紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、又はポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0075】
剥離ライナーの厚さは、適宜設定されるが、好ましくは10~200μm、より好ましくは25~150μmである。
【0076】
<非粘着性層>
図4に示す粘着シート4のように、本発明の一態様の粘着シートは、粘着剤層の粘着表面の一部に非粘着性層を有する構成としていてもよい。
非粘着性層の構成材料としては、用途に応じて適宜選択されるが、例えば、上述の基材としても用いられる各種紙材;アルミニウム、銅、銀、金等を含む金属膜;アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、アセチルセルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂等から選ばれる1種以上の非粘着性樹脂を含む樹脂膜等が挙げられる。
【0077】
なお、非粘着性層が樹脂膜から構成されている場合、当該樹脂膜は、上述の非粘着性樹脂と共に、顔料や染料等の着色剤、充填剤、溶剤等を含有するインキを用いて形成されたものであってもよい。
【0078】
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、反応染料、直接染料、油溶性染料、分散染料、カチオン染料等が挙げられる。
【0079】
充填剤としては、微粒子から構成されていることが好ましく、無機粒子であってもよく、有機粒子であってもよい。
微粒子の平均粒子径としては、通常0.01~100μmである。
【0080】
充填剤として用いられる、無機粒子としては、例えば、金属、金属酸化物(シリカ、アルミナ、ベーマイト、酸化チタン等)、鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ノントロナイト、ソーコナイト等のスメクタイト、及び、ベントナイト等)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等が挙げられる。
充填剤として用いられる、有機粒子としては、例えば、アクリルビーズ等が挙げられる。
【0081】
非粘着性層の厚さとしては、好ましくは0.05~16μm、より好ましくは0.1~12μm、更に好ましくは0.5~8μmである。
【0082】
非粘着性層の形成方法としては、非粘着性層の構成材料によって適宜選択することができる。
例えば、非粘着性層が紙材から構成されている場合、粘着剤層の粘着表面に当該紙材を積層して形成することができる。
非粘着性層が金属膜から構成されている場合、粘着剤層の粘着表面に対して、蒸着によって形成することが好ましい。
【0083】
非粘着性層が樹脂膜から構成されている場合、粘着剤層の粘着表面上に、非粘着性樹脂を含む樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させて形成することができる。
この際、樹脂組成物は、希釈溶媒を加えて、溶液の形態としてもよい。
また、塗布方法としては、公知の方法が適用できるが、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等の印刷によって行われてもよい。
さらに、剥離ライナーの剥離処理面上に、上記の方法で樹脂膜を形成した後、当該樹脂膜と粘着剤層の粘着表面とを貼り合せて形成することもできる。
【0084】
<粘着シートの製造方法>
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限はなく、粘着シートの構成によって適宜選択される。
粘着剤層の形成方法としては、基材又は剥離ライナーの剥離処理面上に、上述の粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させて、粘着剤層を形成することが好ましい。
なお、基材や剥離ライナーの剥離表面上への塗布の作業性を向上させるために、粘着剤組成物は、更に希釈溶媒で希釈して、溶液の形態とすることが好ましい。
【0085】
希釈溶媒としては、例えば、水、並びに、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、トルエン、キシレン、n-プロパノール、及びイソプロパノール等の有機溶媒が挙げられる。
粘着剤組成物の溶液の固形分濃度としては、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~65質量%、更に好ましくは15~60質量%である。
【0086】
粘着剤組成物の溶液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法等が挙げられる。
また、塗布方法として、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等の印刷によって行われてもよい。
【0087】
具体的な製造方法として、図1に示す、本発明の第1の態様の粘着シート、及び、図2に示す、本発明の第2の態様の粘着シートの製造方法としては、例えば、基材10の所定の表面上に、粘着性組成物の溶液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させて、第1粘着剤層21及び第2粘着剤層22を形成する工程を有する製造方法が挙げられる。
なお、第1粘着剤層21及び第2粘着剤層22の形成は、同時に行うことが好ましいが、別々に行ってもよい。
【0088】
また、本発明の第1及び第2の態様の粘着シートの別の製造方法としては、剥離ライナーの剥離処理面上に、粘着剤組成物の溶液を用いて、上記と同様にして、粘着剤層を形成した後、剥離ライナー及び粘着剤層からなる積層体を所定の大きさに切断し、基材の所定の位置に、切断した積層体の粘着剤層の粘着表面を貼り合せて製造する方法も挙げられる。
【0089】
図3に示す、本発明の第3の態様の粘着シートの製造方法としては、例えば、基材及び剥離ライナーのいずれか一方の表面上に、粘着剤組成物の溶液を用いて、上記と同様にして、粘着剤層を形成し、当該粘着剤層上に、他方の剥離ライナー又は基材を積層して積層体を得る工程を有する製造方法が挙げられる。
なお、上記工程で使用する剥離ライナーは、予め切込部が設けられていてもよい。
また、切込部を設けていない剥離ライナーを使用する場合、上記工程で積層体を得た後、積層体の剥離ライナー側から、所定の位置で厚さ方向に向かい切断することで切込部を設けることができる。
【0090】
図4に示す、本発明の第4の態様の粘着シートの製造方法としては、例えば、基材の表面上に、粘着剤組成物の溶液を用いて、上記と同様にして、粘着剤層を形成し、当該粘着剤層の粘着表面の所定の位置に、非粘着性層を形成する工程を有する製造方法が挙げられる。
非粘着性層の形成方法としては、上述の方法が挙げられ、非粘着剤層の構成材料により適宜選択される。
なお、非粘着性層を形成した後、さらに粘着剤層の表出している粘着表面及び非粘着性層の表面上に、さらに剥離ライナーを積層してもよい。
【0091】
<粘着シートの用途>
本発明の粘着シートは、粘着力に優れると共に、粘着力の経時的な低下が抑制された粘着剤層を有し、結束用粘着テープ、表示ラベル(識別ラベル)、又はタグ等として好適に使用し得る。
したがって、本発明の粘着シートは、各種物品を結束するための結束用粘着テープ、各種ケーブル及びコードに巻き付けて識別ラベル、並びにタグ等として用いることが好ましい。より具体的には、自動車製造工場等において、車両内のケーブル及びコードに巻き付けて識別ラベル又はタグ等として用いることが好ましい。
【実施例
【0092】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
[各種物性値の測定方法]
本実施例における各種物性値の測定方法は、以下に記載のとおりである。
【0094】
(1)質量平均分子量(Mw)
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL-H」、「TSK gel GMHXL」(2本)、及び「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0095】
(2)軟化点
JIS K2207:2006に基づく環球法に準拠して測定した。
【0096】
(3)基材の剛軟度
実施例及び比較例で使用した基材を、長さ38mm×幅25mmの長方形に裁断したものを測定用サンプルとした。
当該測定用サンプルについて、剛軟度試験機(株式会社東洋精機製作所製、製品名「ガーレ式柔軟度試験機」)を使用し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、JIS L 1096(2010)8.22.1のガーレ法に準じて、基材の成形時の流れ方向(MD方向)と、MD方向に対して直角方向(TD方向)とで、基材の剛軟度をそれぞれ測定した。
【0097】
(4)基材の引裂強さ
実施例及び比較例で使用した基材を、長さ75mm×幅63mmの長方形に裁断したものを測定用サンプルとした。
当該測定サンプルを4枚重ね、エルメンドルフ引裂試験機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、JIS K 7128-2(1998)に準じて、引き裂き試験を、基材のMD方向とTD方向とでそれぞれ4回行った。そして、MD方向及びTD方向で測定した各4つの値の平均値(基材4枚分の引裂強さ)をそれぞれ算出し、その平均値の1/4の値を、その基材の引裂強さとした。
【0098】
(5)粘着剤層の厚さ
定圧厚さ測定器(株式会社テクロック製、製品名「PG-02J」)を使用し、JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠して測定した。
【0099】
[実施例1~14、比較例1~7]
表1に示す種類及び配合量(固形分比)の各成分を添加し、さらにトルエンで希釈して、撹拌して、固形分濃度50質量%の粘着剤組成物の溶液をそれぞれ調製した。
そして、幅300mmの剥離ライナーの剥離処理面に、当該剥離ライナーの両端から100mmまでの2領域に、調製した粘着剤組成物の溶液を塗布して塗膜をそれぞれ形成し、2つの当該塗膜を、100℃、1分間で乾燥して、厚さ55μmの粘着剤層をそれぞれ形成した。
次いで、基材である、空洞含有層を有するポリエステル系フィルム(1)(東洋紡株式会社製、製品名「クリスパーK2411」、厚さ50μm、剛軟度:MD方向=0.25mN、TD方向=0.28mN、引裂強さ:MD方向=319mN、TD方向=294mN)の片面と、形成した2つの粘着剤層の粘着表面とを貼り合わせ、図1(a)に示す粘着シート1Aと同じ構成を有する、粘着シートを作製した。
【0100】
粘着剤組成物の調製に使用した、表1に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
<スチレン系樹脂(A)>
・スチレン系樹脂(1):SIS樹脂(トリブロック体)/SI樹脂(ジブロック体)=74/26(質量%)の混合樹脂、スチレン含有量=14質量%、Mw=20.7万。
・スチレン系樹脂(2):SIS樹脂(トリブロック体)/SI樹脂(ジブロック体)=22/78(質量%)の混合樹脂、スチレン含有量=15質量%、Mw=35.4万。
【0101】
<粘着付与樹脂(B)>
・B1:芳香族構造を有しない非水素化テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、製品名「YSレジンPX1150N」、テルペン樹脂、軟化点=115℃)
・B2:ロジン系樹脂(ハリマ化成株式会社製、製品名「ハリタックF105」、安定化ロジンエステル、軟化点=105℃)
・B3:水素化石油樹脂(荒川化学工業株式会社製、製品名「アルコンP-115」、軟化点=115℃)
・B4:芳香族変性テルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、製品名「YSレジンTO105」、軟化点=105℃)
・B5:テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、製品名「YSポリスターG125」、軟化点=125℃)
【0102】
実施例及び比較例で作製した粘着シートを用いて、以下の方法に基づき、「粘着表面同士の貼付直後の接着力」を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0103】
<粘着表面同士の貼付直後の接着力(シート促進前)>
粘着シートの粘着塗布部分/粘着未塗布部分/粘着塗布部分が100mmずつこの順で含まれる様に25mm×300mmの大きさに切断し、基材/粘着剤層/剥離ライナーを積層してなる試験片を作製した。剥離ライナーを除去して、表出した粘着剤層の表面同士を貼り合わせた。
貼り合わせた後、粘着剤未塗布部分の真ん中(未塗布部分100mmのうちの両側から50mmの部分)をハサミで裁断した。
貼付直後、JIS Z0237:2000に基づき、粘着シートの両端を引っ張り速度300mm/分にて、2箇所の未塗布部分からT字型に引き剥がす際の抵抗力を、粘着表面同士の貼付直後の接着力(シート促進前)として測定した。
【0104】
<粘着表面同士の貼付直後の接着力(シート促進後)>
試験片を、70℃の高温環境下に3日間静置した後、剥離ライナーを除去して、表出した粘着剤層の表面同士を貼り合わせたこと以外は、「粘着表面同士の貼付直後の接着力(シート促進前)」と同様の方法で、粘着表面同士の貼付直後の接着力(シート促進後)を測定し、粘着シートの粘着剤層の粘着力の経時的な低下について検討した。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
表1より、本発明の要件を満たす、実施例1~14で作製した粘着シートは、シート促進前及びシート促進後共に、粘着表面同士の貼付直後の接着力が優れることがわかる。また、この結果から、実施例1~14で作製した粘着シートは、粘着剤層の粘着力が良好であり、被着体に粘着剤層を貼付するまでの間又は粘着剤層同士を貼合するまでの間における、粘着剤層の粘着力の経時的な低下が抑制されていることもわかる。
一方、表2より、本発明の要件の一部を満たさない、比較例1~7で作製した粘着シートは、いずれも、シート促進前及びシート促進後のいずれか一方及び双方について、粘着表面同士の貼付直後の接着力が劣ることがわかる。
具体的には、比較例1で作製した粘着シートは、シート促進後の接着力が劣ることがわかる。また、比較例2~7で作製した粘着シートは、シート促進前の接着力が低く、シート促進後の接着力もシート促進前と同等であるか又はシート促進前よりも劣ることがわかる。
これらの結果から、比較例1で作製した粘着シートは、被着体に粘着剤層を貼付するまでの間又は粘着剤層同士を貼合するまでの間において、粘着剤層の粘着力が経時的に低下していることがわかる。また、比較例2~7で作製した粘着シートは、粘着剤層の粘着力が低く、被着体に粘着剤層を貼付するまでの間又は粘着剤層同士を貼合するまでの間において、粘着力の経時的な低下が生じる恐れもあることがわかる。
【符号の説明】
【0108】
1A、1B、2A、2B、3、4 粘着シート
10 基材
10a、10b 表面
20 粘着剤層
201a、202a 粘着表面
21 第1粘着剤層
22 第2粘着剤層
21a、22a 粘着表面
30、31、32 剥離ライナー
301、302 剥離ライナー端部
40 非粘着性層
X1、X2 切込部
図1
図2
図3
図4