(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】レジオネラ属菌培養用の透明培地
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240502BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12Q1/04
(21)【出願番号】P 2019224945
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000120456
【氏名又は名称】栄研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 理
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-187778(JP,A)
【文献】Journal of Clinical Microbiology,1979年,Vol.10, No.4,pp.437-441,https://journals.asm.org/doi/10.1128/jcm.10.4.437-441.1979参照
【文献】Journal of Clinical Microbiology,1990年,Vol.28, No.3,pp.616-618,https://journals.asm.org/doi/10.1128/jcm.28.3.616-618.1990参照
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-38
C12Q 1/00-70
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-シクロデキストリンを
1.0g/L~25.0g/Lの含有量で含むレジオネラ属菌培養用寒天培地。
【請求項2】
β-シクロデキストリンが発育阻害抑制剤である請求項
1に記載の培地。
【請求項3】
β-シクロデキストリンを
1.0g/L~25.0g/Lの含有量で含むレジオネラ属菌培養用寒天培地を用いるレジオネラ属菌の培養方法。
【請求項4】
β-シクロデキストリンを発育阻害抑制剤として用いる請求項
3に記載の培養方法。
【請求項5】
β-シクロデキストリンを含むレジオネラ属菌の発育阻害抑制剤であって、レジオネラ属菌培養用寒天培地中に前記β-シクロデキストリンを1.0g/L~25.0g/L含有させて用いる、発育阻害抑制剤。
【請求項6】
レジオネラ属菌培養用寒天培地中に1.0g/L~25.0g/L含有させて用いるレジオネラ属菌の発育阻害抑制剤としてのβ-シクロデキストリンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境あるいは臨床材料からレジオネラ属菌(Legionella spp.)を分離、或いは鑑別するためのレジオネラ属菌培養培地、特に、透明培地に関する。
【背景技術】
【0002】
レジオネラ菌は、グラム陰性桿菌であり、本来、土壌や淡水等の環境中に生息する環境細菌であったが、その発見は、所謂、在郷軍人病(Legionnaire’s disease)の原因菌として検出されたことに始まる。以降も、レジオネラ属菌がクーリングタワー等の空気調和設備、公衆浴場の給湯設備やシャワーヘッドといった環境水中で発育し、肺炎を引き起こすことが報告されている。
【0003】
レジオネラ属菌の発育条件は一般の細菌に比較して極めて厳しく、初期には1%イソバイタルXと1%ヘモグロビンを添加したミューラーヒントン培地やF-G培地(いずれも透明の培地)が開発されたが、寒天に含まれる発育阻害物質である不飽和脂肪酸の影響により、レジオネラ属菌を十分に発育させることはできなかった。
【0004】
その後、Feeley等によって、レジオネラ属菌の発育培地において、活性炭が、発育阻害物質を吸着することで発育阻害物質の影響を抑制することができ、発育阻害抑制物質として作用することを見出したことにより(非特許文献1)、Charcoal yeast extract agar(CYE寒天培地)を考案した(非選択分離培地)。これ以降、CYE寒天培地をベースに、更に発育性能を高めた非選択分離培地として、Buffered charcoal yeast extract agar(BCYE寒天培地)やBCYE寒天培地にα-ケトグルタル酸カリウムを添加したBCYEα寒天培地(非特許文献2)、或いは、レジオネラ属菌以外の細菌の発育を阻止するための選択剤として抗菌薬を添加して選択性を高めた選択分離培地として、GVP寒天培地(非特許文献3)、GVP寒天培地を更に改良して抗真菌薬を添加したWYOα寒天培地(特許文献1、非特許文献4)やGVPC寒天培地が考案され、これらの培地はレジオネラ属菌の培養培地或いは検出用培地として一般に広く用いられている。
【0005】
しかし、CYE寒天培地以降に考案された上記の培地は、いずれも発育阻害抑制剤として、活性炭を用いていることから、活性炭は不溶性物質であるため、寒天培地中に均一に分散させることは難しく、これらの培地を大量に製造する場合、煩雑かつ特別な操作が必要になる。
また、活性炭を用いるこれらの培地は、活性炭によって培地色が黒色(且つ不透明)となることから、混釈培養法やpH指示薬、発色基質や蛍光基質を添加したレジオネラ属菌の鑑別培地への応用開発に不向きである。また、活性炭が抗菌薬や抗真菌剤等の薬剤を吸着することから、レジオネラ属菌の選択分離培地には、大量の薬剤を添加しなければならない。
【0006】
活性炭によって生じるこれらの問題点を解決する方法として、ウシ血清アルブミンが、レジオネラ属菌の培養培地において、活性炭の代替成分となりうること(非特許文献5)、或いは、培地の固化剤として従来用いられてきた寒天の代わりに微生物産生粘質物であるゼランガムを用いる方法(特許文献2)が見いだされている。
しかし、血清アルブミンは、活性炭と比較して高価であり、原料コストを著しく押し上げることから、コスト低減を厳しく要求される細菌検査分野において、高価な培地を導入・普及させることは難しい。他方、ゼランガムを固化剤とする培地は、ゼランガムの固化を促進するために添加されるNa+、K+、Mg2+、Ca2+等の一価及び/又は二価の金属イオン以外に、ゼランガム以外の培地成分中に含まれるそれらの金属イオンの持込みによってさらに固化が促進されてしまうために固化し易く、その取扱いは極めて難しく、大量生産には不向きである。
【0007】
以上のように、何れの方法によっても、培地作製時の操作性、細菌の培養及び観察に望ましい培地色、つまり培地の透明化、薬剤吸着等による培地コストの上昇といった問題をすべて解決できる方法は得られておらず、これらの問題を解決しうる技術の確立が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭60-199398号公報
【文献】特開平10-309189号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】J. Clin. Microbiol. 10、437-441、1979
【文献】J. Clin. Microbiol. 14、298-303、1981
【文献】Appl. Environ. Microbiol. 42、768-772、1981
【文献】感染症学雑誌、第58巻、1073-1082、1984
【文献】J. Infect. Dis. 147、302-307、1983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、培地の調製/製造時の取扱い性やレジオネラ属菌の発育性に優れ、観察に望ましい培地色のレジオネラ属菌培養用培地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、β-シクロデキストリンを用いることで、レジオネラ属菌の発育性に優れ、観察に望ましい培地色のレジオネラ属菌培養用培地が得られることを見出し、本明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)β-シクロデキストリンを含むレジオネラ属菌培養用寒天培地。
(2)β-シクロデキストリンの含有量が1.0g/L~25.0g/Lである(1)に記載の培地。
(3)β-シクロデキストリンが発育阻害抑制剤である(1)又は(2)に記載の培地。
(4)β-シクロデキストリンを含むレジオネラ属菌培養用寒天培地を用いるレジオネラ属菌の培養方法。
(5)β-シクロデキストリンの含有量が1.0g/L~25.0g/Lである(4)に記載の培養方法。
(6)β-シクロデキストリンを発育阻害抑制剤として用いる(4)又は(5)に記載の培養方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、レジオネラ属菌培養用培地において、β-シクロデキストリンを使用することによって、レジオネラ属菌の発育性および培地の調製/製造時の取扱い性に優れ、観察に望ましい培地色のレジオネラ属菌培養用培地が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0015】
「β-シクロデキストリン」は、シクロヘプタアミロースとも呼ばれる(CAS No.7585-39-9、以下、β-CDと記載する場合もある)。本発明においては、寒天培地成分中に含まれる発育阻害物質の影響を抑制する発育阻害抑制剤として利用する。
【0016】
β-シクロデキストリンは、次の式で表されるようにD-グルコース7分子がα-1,4グリコシド結合により環状に結合した環状オリゴ糖である。食品や医薬品分野で多く用いられているが、レジオネラ属菌の培地に用いられた例はない。
【0017】
【0018】
レジオネラ属菌培養用の培地におけるβ-シクロデキストリンの濃度の下限は、0.1g/L以上、好ましくは0.5g/以上、より好ましくは1.0g/L以上、最も好ましくは2.0g/L以上である。β-シクロデキストリンを0.1g/L以上含むことは、発育阻害物質によるレジオネラ属菌の発育への影響、つまり発育阻害を抑制する効果の点から好ましく、特に2.0g/L以上含むことで、より良好に発育阻害を抑制することができる。β-シクロデキストリンの濃度の上限は、35.0g/L以下、好ましくは25.0g/以下、より好ましくは20.0g/L以下である。
【0019】
本実施形態の培地によれば、β-シクロデキストリンを活性炭やゼランガムの代用として用いることができる。また、β-シクロデキストリンは、その溶解性から培地成分を均一に混合でき、固化できる培地の調製や製造時の取り扱いを容易とすることができる。また、活性炭を用いることにより選択剤等の培地組成成分の吸着が生じるが、本実施形態の培地によれば、そのような吸着を抑制することができるため、培地組成成分の使用量を低減することができる。また、高価な血清の使用を低減もしくは不要とすることもできる等、コストダウンや資源の節約の効果をもたらす。更に、本実施形態の培地によれば、活性炭を用いないことによって培地色を観察に望ましい培地色、特に、透明もしくは半透明とすることができ、このことによって、例えば、実体顕微鏡を用いた斜光法によるコロニー観察においては、従来、活性炭のためにシャーレの表面側から(更にシャーレの蓋天面内側の結露が著しい場合は蓋を外して)観察せざるをえなかったところを、シャーレの裏面(底面)側からでもレジオネラ属菌に特徴的なカットグラス様あるいはモザイク様の外観構造を観察することが可能となる他、鑑別培地の開発や混釈培養への適用の可能性を広げる。
例えば、鑑別培地においては、レジオネラ属菌(或いは菌種)の特異的な資化能や産生酵素を利用して、ブロムチモールブルーやブロムクレゾールパープル等のpH指示薬を添加したり、産生される酵素活性の指標となる発色基質や蛍光基質を添加したりすることで、レジオネラ属菌(或いは菌種)に特異的なコロニー色を呈色させることができるが、本願発明の一実施形態の透明な培地であれば、活性炭を含むため黒色化してしまう培地(BCYEα寒天培地、GVP寒天培地、WYOα寒天培地等)にpH指示薬等を添加した場合と比較して、コロニー色がより明瞭となるため、レジオネラ属菌(或いは菌種)の鑑別が容易となる。
【0020】
レジオネラ属菌培養用の培地としては、CYE寒天培地、BCYE寒天培地、BCYEα寒天培地等の非選択培地、GVP寒天培地、WYOα寒天培地等のレジオネラ属菌の選択分離培地(或は単に選択培地、又は、分離培地ともいう)、また、選択分離と同時に、pH指示薬、発色基質、蛍光基質等の添加剤を利用して検出対象である細菌の生化学的性状を指標として鑑別までを行う鑑別培地(より厳密には、選択鑑別培地、又は、選択分離鑑別培地ともいう)が挙げられるが、レジオネラの培養を目的とする寒天培地であれば、特に限定されず、本明細書においては、特に断りの無い限り、レジオネラ属菌培養用の寒天培地は非選択培地、選択分離培地と鑑別培地を含む。
【0021】
本発明の寒天培地は、固形培地として、平板培地、斜面培地或は高層培地の形態で用いることができ、固化剤としては、寒天、或いは、寒天にカラギーナン等の従来知られているその他の固化剤を併用する場合を含む。
【0022】
一般的に、寒天培地は、ゼリー強度400~600g/cm2、寒天の濃度として1.5%~1.8%(15g/L~18g/L)で調製される。本発明における寒天培地の寒天濃度は、例えば1.5%~1.8%である。或いは、寒天にカラギーナン等を併用する場合、寒天の使用量は減る。このため、寒天に由来する発育阻害物質も減ることから、発育阻害抑制物質としてのβ-シクロデキストリンの使用濃度範囲は低い濃度側へシフトすることになる。
【0023】
本発明の寒天培地をレジオネラ属菌培養用の選択分離培地や選択分離鑑別培地とする場合に使用できる選択剤としては、特に抗真菌剤として、WYOα寒天培地で用いられているアムホテリシンBやGVPC寒天培地で用いられているシクロヘキシミドが挙げられるが、酵母様真菌(カンジダ属菌)や糸状菌(アスペルギルス属菌)等の抑制の目的で一般的に用いられる抗真菌剤であれば特に限定されない。本発明においては、例えば、アムホテリシンBは、5mg/L~80mg/L、好ましくは、5mg/L~70mg/Lで使用することができる。
【0024】
本発明の寒天培地において培養の対象となる微生物は、寒天培地に生育し得るLegionella属菌であるL.pneumophila、L.bozemanii、L.longbeachae、L.micdadei、L.gormanii、L.feeleii、L.jordanis、L.cincinnatiensis、L.oakridgensis、L.cincinnatiensis、L.anisa、L.parisiensis等が具体例として挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【実施例】
【0025】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
本発明培地のレジオネラ属菌の発育性能の評価(効果あり、至適濃度範囲)
β-シクロデキストリン(以下、表中ではβ-CDと表記する)の効果とその濃度の違いによる効果を調べるための実験を行った。
【0027】
(1)培地の調製
表1に示す組成の培地、WYOα培地、活性炭を含まないWYOα培地、活性炭の代わりにβ-シクロデキストリンを0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、8.0、10.0、15.0、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0g/Lで含むWYOα培地を調製した。
表1(A)の各培地成分を精製水990mLに溶解し、121℃で15分間高圧蒸気滅菌した後、55℃の温水浴槽中にて保温し、これに表1(B)の成分であるピロリン酸鉄、バンコマイシン、ポリミキシンBは精製水で溶解し、アホテリシンBは1N NaOH溶液で溶解し、それぞれの濾過滅菌済み溶液を調製して2.5mLずつ添加し、よく攪拌した後、各培地をシャーレに20mLずつ分注し、放冷して固化させた。
【0028】
【0029】
(2)実験方法
試験菌としてLegionella pneumophila 6菌株(社内保存株、菌株番号:EKN3677、EKN3678、EKN3679、EKN3680、EKN3682、A405)を用いた。
それぞれの菌株をBCYEα培地に接種し、37℃、2日間培養した菌体を生理食塩水に懸濁し、McFarland No.1の菌懸濁液を調製した。この菌懸濁液1白金耳を各培地に画線塗抹接種し、37℃、2日間培養した。
【0030】
(3)結果
表2に示すように、WYOα培地では、試験菌6菌株すべてが発育した。活性炭を(β-シクロデキストリンも)含まないWYOα培地では、試験菌は6菌株すべて発育しなかった。β-シクロデキストリンを含むWYOα培地では、β-シクロデキストリン0.5g/L添加培地では、発育しない株(EKN3677、EKN3679、EKN3682)と、微小コロニーの発育がみられた株(EKN3678、EKN3680、A405)とが観察され、1.0g/L添加培地では、試験菌6菌株すべてにおいて微小コロニーの発育が観察され、2.0g/Lから20.0g/L添加培地では、試験菌6菌株すべてにおいて発育が観察され、25.0g/L添加培地では、試験菌6菌株すべてにおいて微小コロニーの発育が観察され、30.0g/L及び35.0g/L添加培地では、試験菌1株(A405)のみで微小コロニーの発育が観察され、β-シクロデキストリンを40.0g/Lで添加した培地では、試験菌は6菌株すべて発育がみられなかった。
【0031】
【実施例2】
【0032】
本発明培地における選択剤の使用量の検討(特に使用量の多い抗真菌剤の活性炭への吸着を回避することによる使用量の低減効果の確認)を行った。
(1)培地の調製
表3に示すWYOα培地、活性炭の代わりにβ-シクロデキストリンを8.0g/Lで含むWYOα培地のそれぞれの組成において、抗真菌剤アムホテリシンBを0、5、10、20、30、40、50、60、70、80mg/Lで含む培地を調製した。
表3(A)の各培地成分を精製水990mLに溶解し、121℃で15分間高圧蒸気滅菌した後、55℃の温水浴槽中にて保温し、これに表3(B)の成分であるピロリン酸鉄、抗菌薬であるバンコマイシン、ポリミキシンBは精製水で溶解し、抗真菌剤であるアムホテリシンBは1N NaOH溶液で溶解し、それぞれの濾過滅菌済み溶液を調製して2.5mLずつ添加し、よく攪拌した後、各培地をシャーレに20mLずつ分注し、放冷して固化させた。
【0033】
【0034】
(2)実験方法
試験菌としてCandida albicans 2菌株(社内保存株、菌株番号:EKN3092、EKN3093)、Candida glabrata 1菌株(社内保存株、菌株番号:EKN3388)を用いた。
それぞれの菌株をポテトデキストロース培地に接種し、37℃、2日間培養した菌体を生理食塩水に懸濁し、McFarland No.1の菌懸濁液を調製した。この菌懸濁液から108~102cfu/mLの菌希釈液を調製し、それぞれの菌希釈液を各培地に接種(ミスラ法を実施)し、37℃、2日間培養した。
【0035】
(3)結果
表4-1に示すように、活性炭の代わりにβ-シクロデキストリンを添加したWYOα培地組成において、アムホテリシンBを5mg/L以上で含む培地では、いずれの試験菌もすべての菌希釈液で発育しなかった。一方、表4-2に示すように、活性炭を含むWYOα培地組成において、アムホテリシンBを5mg/Lで含む培地では、いずれの試験菌も104cfu/mL以上の菌希釈液で発育し、アムホテリシンBを10mg/L以上で含む培地でいずれの試験菌もすべての菌希釈液で発育しなかった。
【0036】
【0037】
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、レジオネラ属菌の発育性および培地の調製や製造(大量生産)時の取扱い性に優れた透明なレジオネラ属菌培養用培地を提供できる。コスト低減や資源節約の効果も期待でき、臨床検査や環境検査の分野に貢献するものである。また、レジオネラ属菌培養用培地の透明化は、長らく検討されずにおかれたCYE寒天培地とは異なる新規培地組成をベースとするレジオネラ属菌用の非選択培地、選択培地や鑑別培地の開発や混釈培養への適用の可能性を広げる点において、レジオネラ属菌研究の更なる発展に寄与しうる。