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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/42 20200101AFI20240502BHJP
   B62J 45/41 20200101ALI20240502BHJP
   B62J 11/00 20200101ALI20240502BHJP
   B62J 17/00 20200101ALI20240502BHJP
   B62J 6/022 20200101ALI20240502BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20240502BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20240502BHJP
【FI】
B62J45/42
B62J45/41
B62J11/00
B62J17/00
B62J6/022
G01S7/03 240
G01S7/03 246
G01S13/931
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019228877
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095060
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 大輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 真二
(72)【発明者】
【氏名】天野 弘章
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/224957(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/180941(WO,A1)
【文献】実開平05-028793(JP,U)
【文献】再公表特許第2017/221410(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 45/40 - 45/42
B62J 11/00 - 11/26
B62J 17/00 - 17/10
B62J 6/02 - 6/03
B62J 23/00
G01S 7/03
G01S 13/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプに支持されており、当該ヘッドパイプの前方に位置する第1フレームと、
前記第1フレームに接続されており、当該第1フレームから下方に延びる複数の延出部と、複数の前記延出部のうち少なくとも2本の前記延出部同士を接続する取付部と、を含む吊下げフレームと、
車両前部に配置され、車両前方に突出して後方に凹部を形成するフロントカウルと、
前記吊下げフレームの前記取付部に支持されるとともに、前記フロントカウルの前記凹部内に配置されるレーダ装置と、
前記吊下げフレームの前記取付部から前方に突出するように当該取付部に接続され、前記レーダ装置が取り付けられるレーダステーと、
を備え、
前記レーダステーは、
前記レーダ装置が第1防振部材を介して取り付けられる第1取付面と、
前記第1取付面とは向きが異なり、前記レーダ装置が第2防振部材を介して取り付けられる第2取付面と、
を含み、
前記第1取付面は、上下方向に垂直な面であり、
前記第2取付面は、前後方向に垂直な面であり、
前記レーダ装置は、背面側から操作することで当該レーダ装置の向きを調整する向き調整機構を含んでおり、
前記レーダステーの前記第2取付面には、前記向き調整機構を操作するための開口部が形成されていることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
ヘッドパイプに支持されており、当該ヘッドパイプの前方に位置する第1フレームと、
前記第1フレームに接続されており、当該第1フレームから下方に延びる複数の延出部と、複数の前記延出部のうち少なくとも2本の前記延出部同士を接続する取付部と、を含む吊下げフレームと、
車両前部に配置され、車両前方に突出して後方に凹部を形成するフロントカウルと、
前記吊下げフレームの前記取付部に支持されるとともに、前記フロントカウルの前記凹部内に配置されるレーダ装置と、
前記吊下げフレームの前記取付部から前方に突出するように当該取付部に接続され、前記レーダ装置が取り付けられるレーダステーと、
を備え、
前記レーダ装置は、当該レーダ装置の向きを調整する向き調整機構を含んでおり、
前記レーダステーは、前記フロントカウルの前記凹部内の下壁と前記レーダ装置が接触しないように、当該レーダ装置を取り付けることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両であって、
前記レーダ装置は、エンジン制御ユニット、リレーボックス、及びヘッドライトの全てよりも下方に配置されていることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1からまでの何れか一項に記載の鞍乗型車両であって、
前方を照射するヘッドライトを備え、
平面視において前記ヘッドライトと前記レーダ装置が重なるように、かつ、前記ヘッドライトよりも前記レーダ装置が低い位置になるように、前記ヘッドライト及び前記レーダ装置が配置されていることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項5】
ヘッドパイプに支持されており、当該ヘッドパイプの前方に位置する第1フレームと、
前記第1フレームに接続されており、当該第1フレームから下方に延びる複数の延出部と、複数の前記延出部のうち少なくとも2本の前記延出部同士を接続する取付部と、を含む吊下げフレームと、
車両前部に配置され、車両前方に突出して後方に凹部を形成するフロントカウルと、
前記吊下げフレームの前記取付部に支持されるとともに、前記フロントカウルの前記凹部内に配置されるレーダ装置と、
車両制御を行うための情報を取得するカメラと、
を備え、
上下方向において上から、前記カメラ、ヘッドライト、前記レーダ装置の順に配置されることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項に記載の鞍乗型車両であって、
前記カメラ、前記ヘッドライト、及び前記レーダ装置が、正面視で上下方向に平行に引いた1本の直線と重なることを特徴とする鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置を備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、前方を探知するレーダ装置を備える自動二輪車を開示する。レーダ装置は、自動二輪車の車体フレームに接続されたブラケットに取り付けられている。また、レーダ装置は、フロントカウルの内部の比較的高い位置(例えば、ヘッドライトと同じ高さの位置)に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-048554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、フロントカウルの内部の比較的低い位置にレーダ装置を取り付けるための構成が開示されていない。また、フロントカウルの内部の比較的低い位置にレーダ装置を取り付ける場合、車体フレームとレーダ装置を接続する部材が長くなる可能性があるため、レーダ装置の姿勢を安定させることが困難になる。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、フロントカウルの内部の比較的低い位置にレーダ装置が配置された鞍乗型車両において、レーダ装置の姿勢を安定させる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の鞍乗型車両が提供される。即ち、この鞍乗型車両は、第1フレームと、吊下げフレームと、フロントカウルと、レーダ装置と、連結部材と、を備える。前記第1フレームは、ヘッドパイプに支持されており、当該ヘッドパイプの前方に位置する。前記吊下げフレームは、前記第1フレームに接続されており、当該第1フレームから下方に延びる複数の延出部と、複数の前記延出部のうち少なくとも2本の前記延出部同士を接続する取付部と、を含む。前記フロントカウルは、車両前部に配置され、車両前方に突出して後方に凹部を形成する。前記レーダ装置は、前記吊下げフレームの前記取付部に支持されるとともに、前記フロントカウルの前記凹部内に配置される。連結部材は、前記フロントカウルの前記凹部と、前記吊下げフレームと、を連結する。
【0008】
これにより、吊下げフレームが1本ではなく少なくとも2本の延出部を含むことで、レーダ装置を支持する取付部を安定させることができる。その結果、レーダ装置を第1フレームよりも下方(比較的下方)に位置させつつ、かつ、レーダ装置の姿勢を安定させることができる。特に、レーダ装置は、電装品の中では比較的重量が重く、かつ、姿勢変化が好ましくない。従って、姿勢を安定させることができるという効果を有効に活用できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フロントカウルの内部の比較的低い位置にレーダ装置が配置された鞍乗型車両において、レーダ装置の姿勢を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の側面図。
図2】自動二輪車の平面図。
図3】支持フレームを後方から見た斜視図。
図4】レーダステー及びレーダを前方から見た斜視図。
図5】レーダステー及びレーダの底面図。
図6】レーダステー及びレーダを後方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、自動二輪車(鞍乗型車両)1に乗車した運転者から見た方向で、自動二輪車1の左右方向を定義する。従って、前後方向は車長方向に一致し、左右方向は車幅方向に一致する。また、上下方向(鉛直方向)は高さ方向に一致する。
【0012】
初めに、本実施形態の自動二輪車1の概要について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、自動二輪車1の側面図である。図2は、自動二輪車1の前部の平面図である。
【0013】
図1に示すように、自動二輪車1は、車体10を備える。車体10は、自動二輪車1の骨格となる複数の車体フレームを含んでいる。自動二輪車1は、車体フレームとして、ヘッドパイプ11と、メインフレーム12と、を備える。なお、本実施形態の車体フレームの構成は一例であり、異なる構成であってもよい。
【0014】
ヘッドパイプ11には、図略のステアリングシャフトを挿入するためのシャフト挿入孔が形成されている。ヘッドパイプ11の上方にはアッパーブラケット13が配置されている。ヘッドパイプ11の下方にはロアブラケット14が配置されている。アッパーブラケット13及びロアブラケット14には、左右のフロントフォーク15を挿入するためのフォーク挿入孔がそれぞれ形成されている。フロントフォーク15の下部にはフロントホイール16が回転可能に取り付けられている。フロントホイール16には、フロントタイヤ17が取り付けられている。また、フロントタイヤ17の上側はフロントフェンダ18で覆われている。
【0015】
メインフレーム12は、ヘッドパイプ11に接続されている。メインフレーム12は、ヘッドパイプ11から後方に延びるように配置されている。メインフレーム12には、直接又は別の部材を介してエンジン21が取り付けられている。メインフレーム12の後部には、スイングアーム22が取り付けられている。スイングアーム22の後部には、リアホイール25が回転可能に取り付けられている。リアホイール25には、リアタイヤ26が取り付けられている。
【0016】
エンジン21が発生させた動力は、図略のドライブチェーンを介してリアホイール25に伝達される。これにより、自動二輪車1を走行させることができる。本実施形態のエンジン21はガソリンエンジンである。なお、ガソリンエンジンに代えて又は加えて他の駆動源、例えば走行用の電動モータが設けられていてもよい。
【0017】
フロントフォーク15の上端の近傍にはハンドルバー型のステアリングハンドル28が配置されている。運転者がステアリングハンドル28を回動させることで、フロントフォーク15が回動するため、自動二輪車1を旋回させて進行方向を変更することができる。また、自動二輪車1は、旋回時に路面に対して旋回中心側に車体10を傾斜させるリーン型車両である。
【0018】
ステアリングハンドル28の後方であって、エンジン21の上方には、エンジン21に供給するための燃料が貯留される燃料タンク29が配置されている。燃料タンク29の後方には、運転者が着座するためのシート30が配置されている。車体10の左側面と右側面にはそれぞれ図略のステップが配置されている。運転者は、シート30に跨って、左右のステップに足を載せる。このように、運転者はシート30に跨って着座するため、自動二輪車1は鞍乗型車両である。
【0019】
ステアリングハンドル28の前方には、ウインドスクリーン31が配置されている。ウインドスクリーン31は、下端部(基端部)から後ろ斜め上方に延びるように配置されている。この構成により、ウインドスクリーン31は、走行風の導風を行って、走行風を運転者に当たりにくくする。また、ウインドスクリーン31は、運転者の視界を確保するために、透明又は半透明であり、可視光を透過可能である。
【0020】
ウインドスクリーン31の後側には、カメラ35が配置されている。カメラ35は、車幅方向の中央と重なるように配置されている。カメラ35はウインドスクリーン31越しに前方を撮影する。カメラ35が取得した前方の画像は、図略の制御部へ出力される。制御部は、前方の画像に基づいて車両制御を行う。例えば、制御部は、前走車、対向車、障害物、又は歩行者等を検出する。制御部は、この検出結果に応じて、ヘッドライト32の照射方向又は照射位置を変更する制御又は、障害物及び歩行者への衝突防止を補助するためにブレーキを作動させる制御を行う。
【0021】
車体10の前部には、前方に光を照射するヘッドライト32が配置されている。ヘッドライト32の光源は、例えば、白熱電球、ハロゲン電球、HID(High-Intensity Discharge)ランプ、発光ダイオード(LED)である。本実施形態のヘッドライト32は、車幅方向の中央と重なるように配置されている。「車幅方向の中央と重なる」とは、例えば平面視において車幅方向の中央を通る仮想線がヘッドライト32と重なることである。ヘッドライト32は、例えば左右1対で設けられていてもよい。
【0022】
自動二輪車1の外表面にはカウルが配置されている。カウルは樹脂製であってレーダ等で用いられる周波数の電磁波を透過する材料で構成されている。カウルは、自動二輪車1の空気抵抗の低減、自動二輪車1が有する各部品の保護、及び外観の向上等の目的で設けられている。
【0023】
本明細書では、主として自動二輪車1の正面及び前部に配置されるカウルをフロントカウル33と称する。なお、自動二輪車1の前部とは、自動二輪車1の車長方向中心よりも前方の部分であり、例えばシート30よりも前方の部分である。フロントカウル33は、前方に突出する形状である。そのため、フロントカウル33の後方には凹部が形成され、この凹部によって空間が形成される。また、フロントカウル33の外形は、前方に近づくに連れて車幅方向のサイズ及び高さ方向のサイズが小さくなる部分を含む。そのため、フロントカウル33内の空間も、前方に近づくに連れて車幅方向のサイズ及び高さ方向のサイズが小さくなる部分を含む。フロントカウル33内には、例えばヘッドライト32が配置されている。
【0024】
次に、自動二輪車1が備えるレーダ装置60について説明する。レーダ装置は、電磁波(赤外線、ミリ波、又はマイクロ波等)を前方に送信するとともに物体で反射した反射波(電磁波)を取得することで物体が存在する方向及び物体までの距離を検出する。従って、レーダ装置60の前方には、電磁波を透過しない物を配置しないことが好ましい。この点、本実施形態のカウルは電磁波を透過可能な材料で構成されているため、電磁波の送受信を妨げない。レーダ装置60の探知結果は上記の制御部へ出力される。制御部は、前方の物体の有無及び物体までの距離等に基づいて、運転者に物体に関する情報を通知したり、物体への衝突防止を補助するためにブレーキを作動させたりする。
【0025】
次に、レーダ装置60を支持するためのフレーム構造について、図3及び図4を参照して説明する。図3に示すように、ヘッドパイプ11は、シャフト挿入孔が形成される筒状部11aと、筒状部11aから前方に延びる取付基部11bと、を備える。筒状部11aと取付基部11bは例えば溶接により接続されている。
【0026】
取付基部11bには、支持フレーム40が取り付けられている。支持フレーム40は、ヘッドパイプ11に接続されており、ヘッドパイプ11よりも前方に位置している。支持フレーム40は、レーダ装置60を含む複数の電装品を支持するためのフレームである。支持フレーム40は、接続フレーム41と、分岐フレーム42と、板状フレーム43と、吊下げフレーム44と、前フレーム45と、を備える。
【0027】
接続フレーム41は、取付基部11bと接続するためのフレームである。接続フレーム41は、取付基部11bを挿入可能に構成されている。接続フレーム41及び取付基部11bは、例えば図略のボルト及びナット等の固定具を用いて接続される。なお、接続フレーム41と取付基部11bを溶接により接続してもよい。
【0028】
分岐フレーム42は、分岐点を含んでいる。分岐フレーム42は、分岐点よりも後方側の合流部42aと、分岐点よりも前方側の分岐部42bと、を備える。合流部42aは、接続フレーム41に接続されている。分岐部42bは、分岐点から車幅方向の一側と他側に広がるように分岐している。
【0029】
板状フレーム43は、L字状の板状の部材である。板状フレーム43は、L字を構成する第1板43a及び第2板43bと、第1板43aと第2板43bを接続する三角状の第3板43cと、を備える。第1板43aは、接続フレーム41及び分岐部42bと接続されている。第1板43aの前側の面には電装品等を取り付ける複数のステー(図略)が接続されている。図4に示すように、第1板43aの前側の空間を、上側から順に第1空間91及び第2空間92と称する。第1空間91及び第2空間92には、それぞれ1又は複数の電装品が配置されている。例えば、ヘッドライト32、エンジン制御ユニット、及びリレーボックスが第1空間91か第2空間92の何れかに配置されている。第2板43bは、吊下げフレーム44に接続されている。また、第2板43bには、脚部43dが接続されている。脚部43dは、フロントカウル33内の空間の下壁33aに接続されている。つまり、吊下げフレーム44は、第2板43b及び脚部43dを介して下壁33aに連結されることとなる。これにより、板状フレーム43の姿勢を安定させることができる。なお、第2板43bと脚部43dを合わせて連結部材430と称することがある。
【0030】
板状フレーム43は、板状に限られない。つまり、接続フレーム41及び分岐フレーム42に接続されるとともに上下方向に延びるあらゆる形状の第1部分と、脚部43dを介して下壁33aに接続されるとともに水平方向に延びるあらゆる形状の第2部分と、を有していればよい。また、これらの第1部分と第2部分が十分な剛性を有していれば、第1部分と第2部分を接続する第3部分(第3板43cに相当)を省略することもできる。
【0031】
吊下げフレーム44は、略U字状のパイプ状の部材である。吊下げフレーム44は、1本のパイプ状の部材を折り曲げた構成である。以下では、吊下げフレーム44を2つの延出部44aと取付部44bに区分して説明する。延出部44aは、下方に(詳細には前斜め下方に)延びる形状である。言い換えれば、延出部44aの長手方向が上下方向(前斜め下方)と一致している。左側の延出部44aの上端は左側の分岐部42bに接続されている。右側の延出部44aの上端は右側の分岐部42bに接続されている。また、延出部44aは、第3板43cに接続されている。左右の延出部44aの下端同士は取付部44bに接続されている。取付部44bは、車幅方向に延びる形状である。
【0032】
本実施形態では吊下げフレーム44は1本パイプを曲げて作成されるが、複数の部材を溶接又は固定具等によって接続することで吊下げフレーム44が作成されてもよい。本実施形態では延出部44aは2本であるが、延出部44aは3本以上であってもよい。本実施形態では延出部44aの下端に取付部44bが接続されるが、延出部44aの中途部に取付部44bが接続されてもよい。
【0033】
前フレーム45は、車幅方向に延びる形状である。前フレーム45は、左右の分岐部42bを接続する。具体的には、前フレーム45の左端が左側の分岐部42bに接続され、前フレーム45の右端が右側の分岐部42bに接続されている。
【0034】
支持フレーム40は、メータステー51と、ミラーステー52と、レーダステー70と、を備える。メータステー51は、メータ装置34を取り付けるための部材であり、分岐フレーム42の分岐点の近傍に接続されている。メータ装置34は、車速及びエンジン回転速度等を表示する表示装置である。メータ装置34は、メータステー51及び他のステーによって取り付けられる。ミラーステー52は、左右のサイドミラーを取り付けるための部材であり、分岐部42bと前フレーム45の両方に接続されている。レーダステー70は、レーダ装置60を取り付けるための部材であり、吊下げフレーム44の取付部44bに接続されている。また、吊下げフレーム44には、レーダステー70以外にも、他の電装品等を取り付けるためのステーが取り付けられていてもよい。
【0035】
次に、図4から図6を参照して、レーダ装置60の構成について説明する。図4から図6に示すように、レーダ装置60は、本体部61と、向き調整機構62と、コネクタ63と、を備える。
【0036】
本体部61は、直方体状のケースを備える。本明細書において、直方体状は、略直方体状を含む。従って、例えば6面のうちの少なくとも1面に曲面又は段差が含まれていても本体部61は「直方体状」に該当する。あるいは、6面のうち少なくとも1面が矩形以外の形状であっても、本体部61は「直方体状」に該当する。この直方体状のケース内には、電磁波を送受信するためのアンテナ及び回路が内蔵されている。本体部61の前面から電磁波が送受信される。
【0037】
向き調整機構62は、レーダ装置60の向き(例えば、上下方向を回転中心とした第1回転角、左右方向を回転中心とした第2回転角)を調整するための機構である。図6に示すように、向き調整機構62は、3つの調整部62aを備える。これらの調整部62aを調整する操作(例えば回転操作)を行うことで、レーダ装置60の向きを調整することができる。また、調整部62aは、本体部61よりも後方に配置されている。そのため、作業者は、レーダ装置60の後ろ側から調整部62aを操作する。
【0038】
コネクタ63は、本体部61の車幅方向の一側の面(左面又は右面)に配置されている。コネクタ63には、本体部61への給電線と、本体部61の探知結果を上述の制御部へ出力する信号線と、が接続される。なお、有線ではなく無線で探知結果を出力してもよい。
【0039】
次に、図4から図6を参照して、レーダ装置60の取付構造について説明する。上述のレーダステー70にはレーダブラケット80が取り付けられており、このレーダブラケット80にレーダ装置60が取り付けられる。これにより、第1空間91及び第2空間92よりも下側の位置にレーダ装置60が取り付けられる。
【0040】
レーダステー70は、第1取付部71と、第2取付部72と、フレーム接続部73と、を備える。
【0041】
第1取付部71は、上下方向に垂直な面(第1取付面)を有する板状の部分である。第1取付部71には、レーダブラケット80を取り付けるための図略の取付孔が形成されている。
【0042】
第2取付部72は、前後方向に垂直な面(第2取付面)を有する板状の部分である。第1取付部71と第2取付部72がなす角は90度であるが、それ以外の角度であってもよい。図6に示すように、第2取付部72には、調整部62aを操作可能にするための開口部72aが形成されている。開口部72aは、貫通孔又は切欠きである。また、第2取付部72には、レーダブラケット80を取り付けるための図略の取付孔が形成されている。
【0043】
フレーム接続部73は、取付部44bに接続されている部分である。フレーム接続部73は、取付部44bの前面に溶接により接続されており、取付部44bよりも前方に突出するように設けられている。これにより、レーダ装置60をより前方に配置することが可能となる。なお、フレーム接続部73は、下壁33aには接触していない。
【0044】
レーダブラケット80は、第1取付部81と、第2取付部82と、を備えるL字の板状の部材である。
【0045】
第1取付部81は、上下方向に垂直な面を有する板状の部分である。第1取付部81を第1取付部71の上面(第1取付面)に載せた後に、図6に示すように、固定具101を用いて第1取付部81が第1取付部71に取り付けられる。また、固定具101と第1取付部81の間には、防振部材(第1防振部材)102が挟み込まれている。これにより、レーダ装置60を防振支持することができる。
【0046】
レーダ装置60をレーダステー70に直接取り付けずにレーダブラケット80を介することで、レーダ装置60の重量を鉛直方向に垂直な面(第1取付部71の上面)に支持させることができる。これにより、レーダ装置60の姿勢を安定させることができる。
【0047】
第2取付部82は、前後方向に垂直な面を有する板状の部分である。第1取付部81と第2取付部82がなす角は90度であるが、それ以外の角度であってもよい。図5に示すように、第2取付部82は、第2取付部72の前面側に固定具103を用いて取り付けられる。また、固定具103と第2取付部82の間には、防振部材(第1防振部材)104が挟み込まれている。これにより、レーダ装置60を防振支持することができる。また、第2取付部82の四隅のうち3つには調整部62aが配置されているので、残りの1つの隅に固定具103及び防振部材104が配置されている。
【0048】
また、第1取付部81を取り付けるための固定具101及び防振部材102の軸方向は上下方向であり、第2取付部82を取り付けるための固定具103及び防振部材104の軸方向は前後方向である。また、防振部材102,104は、主として軸方向の振動を抑制できる。従って、本実施形態のように、防振部材102,104の軸方向が異なることで、レーダ装置60に伝達される様々な方向の振動を抑制できる。
【0049】
また、レーダブラケット80を用いてレーダ装置60をレーダステー70に取り付けた状態において、レーダブラケット80及びレーダ装置60は、下壁33aに接触しない。そのため、レーダ装置60の向きを下向きに調整することができる。一方、このようにレーダ装置60等を支持することで、レーダ装置60、レーダステー70、及びレーダブラケット80の重量を吊下げフレーム44で支持することになるため、吊下げフレーム44が変形したり搖動したりすることが懸念される。しかし、本実施形態では、吊下げフレーム44は連結部材430(第2板43b及び脚部43d)を介して下壁33aに支持されているため、吊下げフレーム44の変形や搖動を防止し、結果としてレーダ装置60の姿勢を安定させることができる。
【0050】
なお、レーダ装置60の向きの調整時にレーダステー70の向きが変化しない構成であれば、レーダステー70の第2取付部72の下端を下壁33aに接触させてもよい。この構成であっても、レーダ装置60の姿勢を安定させることができる。
【0051】
次に、レーダ装置60のレイアウトについて説明する。
【0052】
図1及び図2に示すように、本実施形態のレーダ装置60は、車幅方向の中央と重なるように配置されている。更に、レーダ装置60は、平面視でヘッドライト32と重なるように、かつ、ヘッドライト32の下方に配置されている。本実施形態のフロントカウル33は、前端に近づくに連れて車幅方向のサイズが小さくなる形状である。そのため、前端に配置することが好ましいレーダ装置60とヘッドライト32の両方を車幅方向で並べることが困難となる可能性がある。この点、本実施形態のようにレーダ装置60とヘッドライト32を上下に並べて配置することで、両者をフロントカウル33の前端に配置できる。
【0053】
また、レーダ装置60の探知範囲は制御の内容及び性能等によって異なるが、レーダ装置60は基本的には路上の障害物を探知するため(上空の障害物の探知が不要なので)、例えば左右方向の探知範囲が上下方向の探知範囲よりも広いことがある。この場合、レーダ装置60とヘッドライト32を車幅方向に並べて配置すると、ヘッドライト32がレーダ装置60の少しだけ前方に位置するだけで、レーダ装置60の探知範囲とヘッドライト32が干渉する可能性がある。この点、レーダ装置60とヘッドライト32を上下に並べて配置することで、左右方向の広い範囲を探知可能となる。
【0054】
本実施形態では、レーダ装置60とヘッドライト32に加え、更にカメラ35が上下方向に並べて配置されている。具体的には、図1に示すように、上から順に、カメラ35、ヘッドライト32、レーダ装置60の順に配置される。また、図2に示すように、カメラ35、ヘッドライト32、及びレーダ装置60は、何れも車幅方向の中央と重なるように配置されている。従って、正面視において、カメラ35、ヘッドライト32、及びレーダ装置60は、車幅方向の中央を通る直線と重なる。なお、この構成に代えて、カメラ35、ヘッドライト32、及びレーダ装置60が、車幅方向の中央以外を通るとともに上下方向に平行な1つの直線と重なる構成であってもよい。
【0055】
また、本実施形態のようにレーダ装置60を比較的下方に配置する場合、フロントタイヤ17及びフロントフェンダ18で電磁波が阻害されないことも考慮する必要がある。この点、本実施形態のレーダ装置60(レーダ装置60の車幅方向の中央)は、フロントホイール16の中心よりも前方に配置されている。つまり、フロントタイヤ17及びフロントフェンダ18の高さのピークを過ぎた位置にレーダ装置60が配置されているため、これらによって電磁波が阻害されにくい。
【0056】
以上に説明したように、自動二輪車1は、分岐フレーム42と、吊下げフレーム44と、フロントカウル33と、レーダ装置60と、を備える。分岐フレーム42は、ヘッドパイプ11に支持されており、当該ヘッドパイプ11の前方に位置する。吊下げフレーム44は、分岐フレーム42に接続されており、当該分岐フレーム42から下方に延びる複数の延出部44aと、複数の延出部44aのうち少なくとも2本の延出部44a同士を接続する取付部44bと、を含む。フロントカウル33は、車両前部に配置され、車両前方に突出して後方に凹部を形成する。レーダ装置60は、吊下げフレーム44の取付部44bに支持されるとともに、フロントカウル33の凹部内に配置される。
【0057】
これにより、吊下げフレーム44が1本ではなく少なくとも2本の延出部44aを含むことで、レーダ装置60を支持する取付部44bを安定させることができる。その結果、レーダ装置60を第1フレームよりも下方(比較的下方)に位置させつつ、かつ、レーダ装置60の姿勢を安定させることができる。特に、レーダ装置60は、電装品の中では比較的重量が重く、かつ、姿勢変化が好ましくない。従って、姿勢を安定させることができるという効果を有効に活用できる。
【0058】
また、本実施形態の自動二輪車1は、フロントカウル33の凹部内の下壁33aと、吊下げフレーム44と、を連結する連結部材430を備える。
【0059】
これにより、レーダ装置60の姿勢を一層安定させることができる。
【0060】
また、本実施形態の自動二輪車1は、吊下げフレーム44の取付部44bから前方に突出するように当該取付部44bに接続され、レーダ装置60が取り付けられるレーダステー70を備える。
【0061】
これにより、レーダ装置60を更に前方に配置することができるため、レーダ装置60が送受信する電磁波が遮られにくくなるので、電磁波の送受信をより確実に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態の自動二輪車1において、レーダステー70は、第1取付面(第1取付部71の上面)と、第2取付面(第2取付部72の前面)と、を含む。第1取付面は、レーダ装置60が防振部材102を介して取り付けられる。第2取付面は、第1取付面とは向きが異なり、レーダ装置60が防振部材104を介して取り付けられる。
【0063】
これにより、異なる2方向でレーダ装置60が防振支持されるので、様々な方向の振動をレーダ装置60に伝達しにくくすることができる。
【0064】
また、本実施形態の自動二輪車1において、第1取付面は、上下方向に垂直な面である。第2取付面は、前後方向に垂直な面である。
【0065】
これにより、路面等から伝達される上下方向の振動を第1取付面の防振部材102で抑制できる。また、自動二輪車1の加減速等に伴って吊下げフレーム44が撓むこと等による前後方向の振動を第2取付面の防振部材104で抑制できる。
【0066】
また、本実施形態の自動二輪車1において、レーダ装置60は、背面側から操作することで当該レーダ装置60の向きを調整する向き調整機構62を含んでいる。レーダステー70の第2取付面には、向き調整機構62の調整部62aを操作するための開口部72aが形成されている。
【0067】
これにより、前後方向の振動を抑制する構成と、背面から向き調整機構62を操作可能な構成と、を両立することができる。
【0068】
また、本実施形態の自動二輪車1において、レーダ装置60は、当該レーダ装置60の向きを調整する向き調整機構62を含んでいる。レーダステー70は、フロントカウル33の凹部内の下壁33aとレーダ装置60が接触しないように、当該レーダ装置60を取り付ける。
【0069】
これにより、例えばレーダ装置60を下側に傾斜するように向きを調整しても、レーダ装置60が下壁33aに接触することを防止できる。
【0070】
また、本実施形態の自動二輪車1において、レーダ装置60は、エンジン制御ユニット、リレーボックス、及びヘッドライトの全てよりも下方に配置されている。
【0071】
これにより、吊下げフレーム44を活用してレーダ装置60を比較的下方に配置できる。
【0072】
また、本実施形態の自動二輪車1は、前方を照射するヘッドライト32を備える。平面視においてヘッドライト32とレーダ装置60が重なるように、かつ、ヘッドライト32よりもレーダ装置60が低い位置になるように、ヘッドライト32及びレーダ装置60が配置されている。
【0073】
これにより、吊下げフレーム44を活用してレーダ装置60を比較的下方に配置することで上側に空間が生じるため、この空間にヘッドライト32を配置できる。
【0074】
また、本実施形態の自動二輪車1は、車両制御を行うための情報を取得するカメラ35を更に備える。上下方向において上から、カメラ35、ヘッドライト32、レーダ装置60の順に配置される。
【0075】
これにより、吊下げフレーム44を用いてレーダ装置60を比較的下方に配置することで上側に空間が生じるため、この空間を有効に活用して、カメラ35及びヘッドライト32を配置することができる。
【0076】
また、本実施形態の自動二輪車1において、カメラ35、ヘッドライト32、及びレーダ装置60が、正面視で上下方向に平行に引いた1本の直線と重なる。
【0077】
これにより、カメラ35、ヘッドライト32、及びレーダ装置60の車幅方向の位置が揃うので、自動二輪車1の車幅方向のサイズを小さくすることができる。
【0078】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0079】
上記実施形態のレーダ装置60は、直方体状に限られず、異なる形状であってもよい。また、向き調整機構62及びコネクタ63の位置は、上記実施形態とは異なる位置であってもよい。また、レーダ装置60の本体部61を更に覆うカバーと、向き調整機構62と、が一体的に構成されていてもよい。
【0080】
上記実施形態のレーダステー70は、吊下げフレーム44から前方に突出するが、吊下げフレーム44から異なる方向に突出する構成であってもよい。上記実施形態のレーダステー70は、2つの取付面を有するが、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0081】
上記実施形態のレーダブラケット80は、1つの部材から構成されているが、複数の部材が組み合わされた構成であってもよい。上記実施形態のレーダブラケット80は、2つの取付面を有するが、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0082】
上記実施形態では、本発明を自動二輪車1に適用した例を説明したが、他の鞍乗型車両にも本発明を適用できる。他の鞍乗型車両としては、例えばフロントホイールが2つでリアホイールが1つの車両、フロントホイールが1つでリアホイールが2つの車両、フロントホイールが2つでリアホイールが2つの車両等がある。また、4輪車の例としては、例えば、主として非舗装地を走行するための全地形対応車(All Terrain Vehicle)がある。
【符号の説明】
【0083】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
33 フロントカウル
42 分岐フレーム(第1フレーム)
430 連結部材
44 吊下げフレーム
60 レーダ装置
70 レーダステー
80 レーダブラケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6