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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】マルチコプター
(51)【国際特許分類】
   B64D 9/00 20060101AFI20240502BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240502BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B64D9/00
B64C27/08
B64C39/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020011848
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021037932
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019158909
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】521332501
【氏名又は名称】谷 紳一
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100135839
【弁理士】
【氏名又は名称】大南 匡史
(72)【発明者】
【氏名】谷 紳一
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206954522(CN,U)
【文献】米国特許第9205922(US,B1)
【文献】特開2018-129713(JP,A)
【文献】国際公開第2018/028956(WO,A1)
【文献】特開2020-83209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 9/00,
B64C 27/08,39/02,
B64U 10/13,20/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼が取り付けられた本体部と、補助機器が搭載された機器載置部を有するマルチコプターにおいて、
前記本体部に複数の接続部があり、前記機器載置部にも複数の接続部があり、前記本体側の接続部と、前記載置部側の接続部が線状部材で繋がれていて前記機器載置部が前記本体部から吊り下げられており、
飛行中に、前記本体側の接続部と前記載置部側の接続部との間の線状部材の長さを変更可能であり、
前記本体側の接続部及び前記載置部側の接続部の少なくともいずれかは、線状部材が跨った状態で係合されるものであり、一方側の接続部に係合する線状部材が他方側の接続部のいずれかと係合し、同じ線状部材がさらに一方側の他の接続部と係合しており、
前記線状部材は環状に結合されたものであることを特徴とするマルチコプター。
【請求項2】
前記接続部は、滑車、フック、又はアイボルトを含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチコプター。
【請求項3】
一本の線状部材によって、前記機器載置部が前記本体部から吊り下げられていることを特徴とする請求項又はに記載のマルチコプター。
【請求項4】
前記本体部は環状の支持フレーム部を有し、前記支持フレーム部に前記接続部が直接的又は間接的に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のマルチコプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に「ドローン」と称されるマルチコプターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の回転翼(プロペラ)を有し、垂直離着陸するマルチコプターが知られている。マルチコプターは、当初、玩具として販売されたが、次第に高機能化し、航空写真の撮影や、物資の運搬等の業務用にも使用されつつある。また有人飛行が可能なマルチコプターも開発されている。
【0003】
従来技術におけるマルチコプター100、200のフレーム構造は、図17(a)の様な枝分かれ状や図17(b)の様な放射型であり、その先にモータ106及び回転翼102が取り付けられている。即ち従来技術のマルチコプター100、200は、中央に剛性を有するブロック部107があり、当該ブロック部107から棒状のフレーム部材がのび、その先端側にモータ106及び回転翼102が取り付けられている。
例えば、8個の回転翼のマルチコプターでは、図17(a)の様にブロック部107を中心として十文字(4本)に幹フレーム103があり、各幹フレーム103の先端が二股に枝分かれしていて、各枝部105の先にモータ106が取り付けられている。
【0004】
マルチコプター100を上昇させたりホバリングさせる際には、図18(a)の様に全ての回転翼102を同じ速度で回転させる。
マルチコプター100を前進させる場合には、図18(b)の様に、前方の回転翼102の回転を相対的に低下させ、マルチコプター100自体を前傾姿勢にする。
【0005】
マルチコプター100を回転させる場合には、図18(c)の様に、一つ置きに、高速、低速とする。即ち高速回転の回転翼、低速回転の回転翼、高速回転の回転翼、低速回転の回転翼・・という様に、隣接する回転翼102の回転速度を変えてマルチコプター100自体を回転させる。
マルチコプター100の各回転翼102は、通常、隣接するものの回転方向が逆向きであるから、前記した様に一つ置きに、高速、低速とすることにより、マルチコプター100全体の姿勢を回転させることができる。
【0006】
従来技術のマルチコプター100、200では、中央のブロック部107に、蓄電池や受信機等の補助機器が搭載されている。
即ち従来技術のマルチコプター100、200では、中央のブロック部107が、機器載置部となっている。そして機器載置部と、駆動機器たるモータ106及び回転翼102は、剛性を有する棒状の幹フレーム103等で強固に繋がれている。従来技術のマルチコプター100、200では、駆動機器が取り付けられた部分と、機器載置部とが剛性を有する状態で一体化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-129713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マルチコプターは、より多くの積載重量を確保する目的や、航続距離を長くする目的から、総重量が軽いことが望ましい。
本発明は、軽量化が可能なマルチコプターを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するための態様は、回転翼が取り付けられた本体部と、補助機器が搭載された機器載置部を有するマルチコプターにおいて、前記本体部に複数の接続部があり、前記機器載置部にも複数の接続部があり、前記本体側の接続部と、前記載置部側の接続部が線状部材で繋がれていて前記機器載置部が前記本体部から吊り下げられており、飛行中に、前記本体側の接続部と前記載置部側の接続部との間の線状部材の長さを変更可能であることを特徴とするマルチコプターである。
【0010】
補助機器とは、モータ以外の機器であり、例えば制御装置等の電装機器、発電機、燃料タンク、カメラ、照明装置等が考えられる。すべての補助機器が、機器載置部に搭載されている必要はない。
本態様のマルチコプターでは、線状の部材によって機器載置部が本体部から吊り下げられている。
ここで線状部材は、ワイヤー、ロープ、紐という様な、引っ張り力に抗することができるが、曲げや圧縮力に対しては抗することができない部材である。
線状の部材は、剛性が低いものの、重量は極めて軽い。そのため電装機器等を保持する部材の重量を大幅に低減することができる。
また本態様のマルチコプターでは、飛行中に、本体側の接続部と載置部側の接続部との間の線状部材の長さを変更可能である。そのため、線状部材のたるみをなくすことができる。また、機器載置部の姿勢を保つことも可能である。
【0011】
上記した態様において、前記本体側の接続部及び前記載置部側の接続部の少なくともいずれかは、線状部材が跨った状態で係合されるものであり、一方側の接続部に係合する線状部材が他方側の接続部のいずれかと係合し、同じ線状部材がさら一方側の他の接続部と係合していることが望ましい。
【0012】
本態様によると、本体側の接続部と載置部側の接続部との間の線状部材の長さと、他の箇所の線状部材の長さが連動するので、機器載置部の姿勢を保ちやすい。
【0013】
上記した態様において、線状部材は環状に結合されたものであることが望ましい。
【0014】
本態様によると、より多くの箇所の線状部材の長さが連動するので、線状部材がたるみにくい。また本態様によると、載置部材の姿勢を保ちやすい。
【0015】
上記した各態様において、一本の線状部材によって、前記機器載置部が前記本体部から吊り下げられていることが望ましい。
【0016】
本態様によると、さらに多くの箇所の線状部材の長さが連動するので、線状部材がたるみにくく、且つ載置部材の姿勢を保ちやすい。
【0017】
上記した各態様において、前記本体部は環状の支持フレーム部を有し、前記支持フレーム部に前記接続部が直接的又は間接的に取り付けられていることが望ましい。
【0018】
本態様のマルチコプターでは、本体部が環状の支持フレーム部を有している。
本態様のマルチコプターでは、隣接する回転翼同士が、支持フレーム部によって直接的又は間接的に横つながりとなっている。そのため例えば連接する回転翼の回転速度が違っても、横つながりの部位によって上下方向の変位が抑えられる。また支持フレーム部が環状であるから、一部だけが捩じれることは少ない。
そのため本態様のマルチコプターでは、全ての回転翼の相対位置が飛行中に変化しにくい。
そのためフレーム自体の剛性は従来に比べて小さくて足り、軽量化が可能である。
【0019】
また同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、回転翼が取り付けられた本体部と、補助機器が搭載された機器載置部を有するマルチコプターにおいて、前記機器載置部が前記本体部から吊り下げられていることを特徴とするマルチコプターである。
【0020】
本態様のマルチコプターは、電装機器等の補助機器を保持する部材の重量を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のマルチコプターは、フレームの重量を軽くすることができ、総重量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態のマルチコプターの斜視図である。
図2】(a)は図1のマルチコプターの平面図であり、(b)は他の実施形態のマルチコプターの平面図である。
図3図1のマルチコプターの回転翼と支持フレームとの位置関係をモデル化した説明図である。
図4図1のマルチコプターの回転翼と支持フレームとの力学的関係をモデル化した説明図である。
図5】(a)は図1のマルチコプターの回転翼列の上昇時及びホバリング時における正面図であり、(b)は図1のマルチコプターを前進させる際における回転翼列の側面図であり、(c)は図1のマルチコプターを回転させる際における回転翼列の正面図である。
図6】本発明の他の実施形態のマルチコプターの斜視図である。
図7】(a)(b)は、本発明のさらに他の実施形態のマルチコプターの斜視図である。
図8】(a)(b)は、図7(a)(b)に示すマルチコプターのリブ部の詳細図である。
図9】本発明のさらに他の実施形態のマルチコプターの斜視図である。
図10図9のマルチコプターの上昇時及びホバリング時における吊り下げ部分の状態を示す説明図である。
図11】(a)は、本発明のさらに他の実施形態のマルチコプターの斜視図であり、(b)は、その平面図である。
図12】本発明のさらに他の実施形態のマルチコプターの平面図である。
図13】(a)(b)(c)は、本発明のさらに他の実施形態のマルチコプターの平面図である。
図14】本発明のさらに他の実施形態のマルチコプターの斜視図であり、(a)は本体部が水平姿勢である場合を示し、(b)は本体部が傾斜した場合を示す。
図15】本発明のさらに他の実施形態のマルチコプターであって、(a)はその斜視図であり、(b)は本体部が水平姿勢である場合の正面図であり、(c)は本体部が傾斜した場合を示す。
図16】本発明のさらに他の実施形態のマルチコプターであって、(a)は本体部が水平姿勢である場合の正面図であり、(b)は本体部が傾斜した場合を示す。
図17】(a)(b)は、従来技術のマルチコプターの斜視図である。
図18】(a)は従来技術のマルチコプターの上昇時及びホバリング時における回転翼列の正面図であり、(b)は従来技術のマルチコプターを前進させる際における回転翼列の正面図であり、(c)は従来技術のマルチコプターを回転させる際における回転翼列の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のマルチコプター1は、8個の回転翼2を備えたドローンであり、無線によって遠隔操作される。マルチコプター1は、公知のそれと同様に、回転翼2を回転することによって下降気流による揚力を発生させて中空に浮き上がる。また各回転翼2の回転数を相違させることによって水平方向の成分を有する方向に移動する。即ち、各回転翼2の回転数を相違させることによって横方向に移動させたり、斜め上下方向に移動させたり、自身の姿勢を変更させるといったさまざまな動きをさせることができる。
回転翼2の数は、8個に限定されるものではなく、3個以上であればよい。
【0024】
本実施形態のマルチコプター1は、本体部3と、8個の回転翼2を有している。
本体部3は、環状の支持フレーム部10と、リブ部30と、機器載置部11と、脚部12を有している。
支持フレーム部10は、樹脂等で作られ、無端環状に成形された部分である。本実施形態では、支持フレーム部10の平面形状は、図1図2(a)の様に円形である。
リブ部30は、環状の支持フレーム部10から放射状に外側に向かってのびている。
【0025】
機器載置部11は樹脂その他の素材で作られたものであり、剛性を有した台である。機器載置部11は、例えば盆や箱の様な形であって剛性を有するものである。
機器載置部11は、支持フレーム部10で囲まれる円の中心部にあり、線状部材16によって支持フレーム部10に接続されている。本実施形態で採用する線状部材16は、例えばワイヤーやロープである。即ち線状部材16は、ワイヤーの様に引っ張り力には抗することができるけれども、圧縮力や曲げには抗することができず、形態を維持することができないものである。例えばケブラー(登録商標)の様な、引っ張り強度が高い繊維で作られたロープを線状部材16とすることができる。
【0026】
本実施形態では、線状部材16としてワイヤーが採用されており、3本のワイヤーによって機器載置部11が本体部3の支持フレーム部10から吊り下げられている。機器載置部11は、支持フレーム部10の下にぶら下がっており、少なくとも上方向には自由度がある。
【0027】
本実施形態では、本体部3の環状の支持フレーム部10に、本体側接続部25a、25b、25cがある。また機器載置部11にも載置部側接続部26a、26b、26cがある。
そして本体側接続部25aと、載置部側接続部26aの間が、線状部材16aで繋がれている。同様に本体側接続部25bと、載置部側接続部26bの間が、別の線状部材16bで繋がれている。また本体側接続部25cと、載置部側接続部26cの間が、さらに別の線状部材16cで繋がれている。本実施形態では、本体側接続部25は支持フレーム部10に直接取り付けられているが、他の部材が間に介在されていてもよい。載置部側接続部26についても同様であり、本実施形態では、機器載置部11に直接取り付けられているが、他の部材が間に介在されていてもよい。
【0028】
脚部12は、支持フレーム部10の下に垂下する脚部材15を有している。本実施形態では、脚部12は、4本の脚部材15が等間隔に配置されたものである。
機器載置部11の最低地上高部は、脚部12の最低地上高部よりも高い位置にある。
本実施形態のマルチコプター1では、中央の機器載置部11に、蓄電池7及び制御装置8等の補助機器が搭載されている。
【0029】
本実施形態のマルチコプター1では、図1図2(a)の様に、環状の支持フレーム部10に回転翼2がリブ部30を介して取り付けられている。即ち本実施形態のマルチコプター1では、回転翼2が短いリブ部30を介して間接的に支持フレーム部10に取り付けられている。
回転翼2は、公知のそれと同様、モータ20の出力軸に直接取り付けられている。
そして本実施形態では、図示しない取り付け部材によって、モータ20が支持フレーム部10から張り出されたリブ部30の上部に固定されている。即ち8個のモータ20は、いずれも回転軸が環状の支持フレーム部10に対して所定の角度や姿勢となる様に、環状の支持フレーム部10にリブ部30を介して固定されている。
【0030】
本実施形態のマルチコプター1では、隣接する回転翼2同士が短いリブ部30を介して支持フレーム部10で横つながりとなっているので、回転翼2の揚力に強弱が生じても、一部の回転翼2の位置が突出的に上下方向に変位することは少ない。
また短いリブ部30を介してモータ20の左右両側が支持フレーム部10で支持されているから、捩じれのモーメントに対しても強い。
本実施形態のモータ20が直接的に固定されているのはリブ部30であり、当該リブ部30は片持ち状である。
しかしながら、リブ部30は比較的大きな環状の支持フレーム部10から突出しているので、片持ち状の部分の長さは、従来の枝分かれ構造(図17(a))のものや、放射型(図17(b))のものに比べて短い。
【0031】
そのためリブ部30の撓み等は、従来の枝分かれ構造(図17(a))のものや、放射型(図17(b))のものに比べて小さい。
本実施形態のマルチコプター1の回転翼2と支持フレーム部10との関係をモデル化すると図4の様になる。
本実施形態のマルチコプター1は、支持フレーム部10が環状であるから、リブ部30とモータ20及び回転翼2を一体と仮定した場合、隣接する回転翼2等同士が、支持フレーム部10によって直接的に横つながりに繋がっている。モデル化すると、回転翼2等は図4の様な状態に近いと言える。
この点からも、本実施形態のマルチコプター1は、回転翼2の揚力による上下方向の相対変位等が小さいと言える。
【0032】
本実施形態のマルチコプター1は、公知のマルチコプターと同様、モータ20を駆動して8個の回転翼2を回転し、上昇する。また上昇した位置でホバリングする。
マルチコプター1の上昇時及びホバリング時は、図5(a)の矢印で示すベクトルの様に、図示されている各回転翼2a、2b、2c、2dが発生する揚力は同じであり、8個の回転翼2は無負荷時(地上時)と同じ相対位置及び相対姿勢を保つ。例えば図5の例では、各回転翼2a、2b、2c、2dの回転軸21は、いずれも環状の支持フレーム部10に対して同じ高さの位置にあり、且つ支持フレーム部10に対して垂直となる姿勢を保つことができる。
【0033】
マルチコプター1を前進させる際は、図5(b)の矢印で示すベクトルの様に、図示されている各回転翼2a、2b、2c、2dの内、後半の回転翼2c、2dが発生する揚力が、前半の回転翼2a、2bよりも強い。その結果、マルチコプター1は、図5(b)の様にやや前傾姿勢となる。しかしながら、8個の回転翼2は、無負荷時と同じ相対位置及び相対姿勢を保ち、いずれも同一傾斜平面上に並んでいる。また各回転翼2a、2b、2c、2dの回転軸21についても、環状の支持フレーム部10に対して無負荷時と同じ相対位置及び相対姿勢を保つ。例えば図5の例に従えば、各回転翼2a、2b、2c、2dの回転軸21は、いずれも環状の支持フレーム部10に対して同じ高さの位置を保つ。
【0034】
マルチコプター1を回転(回転方向に姿勢変更)させる際は、図5(c)の矢印で示すベクトルの様に、図示されている各回転翼2a、2b、2c、2dは、発生する揚力が互い違いに強弱となる様に制御されている。
しかしながらマルチコプター1は、図5(c)の様に全体として水平姿勢を保つ。また8個の回転翼2の相対位置及び相対姿勢は変化せず、回転翼2は水平の同一平面上に並ぶ。各回転翼2a、2b、2c、2dの回転軸21は、いずれも環状の支持フレーム部10に対して垂直となる姿勢を保つ。
【0035】
ここでマルチコプター1は、飛行中に各回転翼の相対位置や相対姿勢が変わらないことが重要である。
本実施形態のマルチコプター1は、前記した様に飛行中に各回転翼の相対位置や相対姿勢が変化せず、例えば全ての回転翼2の相対位置が同一平面上に並ぶ。そのため本実施形態のマルチコプター1は、図示しない姿勢制御装置等による微細なコントロールが設計通り正しく機能する。
【0036】
本実施形態のマルチコプター1は、各回転翼2の上下変位や捩じれが生じにくい構造であるから、支持フレーム部10の剛性は、従来技術に比べて低くてもよい。そのため本実施形態のマルチコプター1は、素材の量を減らしたり、単位体積当たりの重量が軽いものを使用することができ、全体の総重量を低減することができる。
さらに本実施形態のマルチコプター1は、機器載置部11の支持構造に特徴がある。即ち本実施形態では、機器載置部11は、線状部材(ワイヤー)16で本体部3から吊り下げることによって、支持されている。
線状部材(ワイヤー)16の単位長さあたりの重量は、支持フレーム部10の単位長さ当たりの重量に比べて極めて軽い。そのため支持構造部の重量が軽く、総重量が軽い。
【0037】
また、本実施形態では、機器載置部11は、支持フレーム部10の下にぶら下がった状態であり、上方向には自由度がある状態であるから、支持フレーム部10に掛かる力は、単に機器載置部11の重量だけである。そのため、支持フレーム部10の剛性は、さほど高くなくても足り、重量の低減に寄与する。
【0038】
また本実施形態のマルチコプター1は、本体部3の外縁が環状であるから、その内側に広い空間を確保することができる。そのため本実施形態のマルチコプター1は、容積が大きな物を搭載することができる。
【0039】
次に、リブ部30の好ましい長さについて説明する。回転翼2の捩じれや撓みによる姿勢変化を防ぐという趣旨からは、リブ部30の長さは短い方が望ましい。
その一方で、下降気流を有効に利用して回転翼2の効率を上げるという観点からは、リブ部30の長さは長い方が良い。
即ち回転翼2が発生させる送風がマルチコプター1のいずれかの部位に当たると、回転翼2が発生させる揚力が減衰する。そのため回転翼2が発生する下降気流の範囲に、マルチコプター1の部材が無いことが望ましい。
【0040】
ここで支持フレーム部10のリブ部30の接続部分は、「T」状であり、平面面積が大きい。
そのため、回転翼2が発生する下降気流の範囲に、支持フレーム部10が入らない様な長さに、リブ部30の長さを設計することが望ましい。
具体的には、図3(a)に示すように、回転翼2の回転軌跡31の最遠部が支持フレーム部10と重ならないことが望ましい。
少なくとも図3(b)に示すように、回転翼2の回転軌跡31の最遠部が支持フレーム部10の内側ラインと重なる程度とし、回転翼2と支持フレーム部10との重なりを少なくするべきである。
もちろん、回転翼2の回転軌跡31の最遠部は、支持フレーム部10の内側ラインよりも外側にあることが望ましい。
【0041】
以上説明した実施形態では、円形環状の支持フレーム部10にリブ部30を介して回転翼2を設置したが、図2(b)の様に、環状の支持フレーム部10の上に、直接的にモータ20及び回転翼2を設置してもよい。
【0042】
また以上説明した実施形態では、支持フレーム部10の平面形状は、円形であるが、楕円形であってもよく、図6の様な多角形であってもよい。図6に示す支持フレーム部10は、四角形であるが、三角形であってもよく、五角以上の多角形であってもよい。いずれにしても、無端環状であれば、本発明の効果を奏することができる。
【0043】
支持フレーム部10とリブ部30は、一体的に成形されたものであってもよいが、支持フレーム部10とリブ部30を個別に成形し、その後で両者を接続することも推奨される。
図7(a)(b)は、支持フレーム部32とリブ構成部材23を個別に成形し、その後で両者を接続した構造のマルチコプター5、6を示す。
マルチコプター5、6で採用する支持フレーム部32は、いずれも環状部46を有し、当該環状部46にリブ取付け部33が設けられている。
【0044】
また、図8に示す様に、リブ構成部材23の端部には、取付け部36が設けられている。本実施形態では、取付け部36はフランジである。
本実施形態では、リブ構成部材23の取付け部36を支持フレーム部32のリブ取付け部33にあわせ、ネジによって両者を固定している。
リブ構成部材23とリブ取付け部33との結合方法は任意であり、ネジ等の一時締結要素を使用する他、接着剤等の永久締結要素によって両者を結合してもよい。
【0045】
本実施形態の様に支持フレーム部32とリブ構成部材23(リブ部)を個別に成形し、その後で両者を接続することにより、支持フレーム部10を共通部品として、複数のサイズのマルチコプターを製作することができる。本実施形態によると、部品の互換性が向上する。
図7(a)に示すマルチコプター5は、一形態として長さの短いリブ構成部材23を支持フレーム部32に取り付けたものである。
これに対して、図7(b)に示すマルチコプター6は、一形態として長さの長いリブ構成部材23を支持フレーム部32に取り付け、大型の回転翼2を搭載したものである。
この様に、本態様によると、サイズの異なるマルチコプター5、6を共通の支持フレーム部32で作ることができるので、金型等の製造コストを低減することができる。
【0046】
以上説明した実施形態のマルチコプター1、5、6では、蓄電池及び制御装置等の電装機器(補助機器)は、中央の機器載置部11に搭載されている。マルチコプター1では、前記した機器載置部11は、線状部材16によって支持フレーム部10、32に接続されている。
【0047】
以上説明した実施形態では、機器載置部11は剛性を有した部材であるが、機器載置部11は剛性を有しないものであってもよい。例えば機器載置部は、網であってもよい。
図9に示すマルチコプター35は、引っ張り強度が高い繊維で作られた網(機器載置部)41を有し、当該網41の中に蓄電池及び制御装置等の電装機器(補助機器)42がある。
そして網41は、図9図10の様に、引っ張り強度が高い繊維で作られたロープ(線状部材)40で支持フレーム部10から吊り下げられている。本実施形態では、3本のロープ(線状部材)40で支持フレーム部10から吊り下げられている。図9図10では、接続部の図示を省略している。
網41の電装機器42とモータ20との間は、図示しない電線で接続されている。
【0048】
マルチコプター35の上昇時及びホバリング時は、図10の様に、網41は支持フレーム部10の中心に垂下する。
【0049】
以上説明した実施形態では、ロープ40等で網41を吊り下げ、当該網41の中に電装機器42を配置した。
網(機器載置部)41の中に入れる機材は、電装機器42に限定されるものではない。
例えば、発電機を備え、当該発電機で発生させた電力によってモータ20を駆動するタイプのマルチコプターであるならば、エンジンジェネレータ(発電機)、ガソリンタンクなど補器類を網41の中に入れてもよい。また拡声器、消火設備、カメラ(暗視カメラなど特殊なものも含む)を網41の中に入れてもよい。
【0050】
以上説明した実施形態では、複数の回転翼2の大きさがすべて同じである。しかしながら本発明は、この構成に限定されるものではなく、径の異なる回転翼が混在していてもよい。
図11に示すマルチコプター50は、6個の回転翼51a、51b、51c、51d、52a、52bを有している。
対向する一組の回転翼52a、52bは、大型である。他の4個の回転翼51a、51b、51c、51dは小型である。
【0051】
小型の回転翼51a、51b、51c、51dは、中心に対して90度ずつ離れた位置に設けられている。
大型の回転翼52a、52bは、180度離れた位置にあり、隣接する小型の回転翼51a、51d、51b、51cとの間には、45度の間隔が確保されている。
なお、各6個の回転翼51a、51b、51c、51d、52a、52bの間隔は、上記したような不均一な角度に限定されるものではなく、例えば均等間隔であってもよい。
【0052】
本実施形態のマルチコプター50は、支持フレーム部32とリブ構成部材53、55を個別に成形し、その後で両者を接続したものである。
即ち支持フレーム部32は、環状部46を有し、当該環状部46にリブ取付け部33が6個設けられている。
6個のリブ取付け部33は、同じ形状且つ同じ大きさであり、環状部46に所定の間隔で設けられている。
【0053】
これに対して、リブ構成部材53a、53b、53c、53d、55a、55bには、長いものと短いものがある。
即ち、大径の回転翼52a、52bが取り付けられるリブ構成部材55a、55bは、他に比べて長さが長い。
【0054】
本実施形態のマルチコプター50では、主として大径の回転翼52a、52bによってマルチコプター50を昇降したり、中空に保持する機能を担わせ、主として小径の回転翼51a、51b、51c、51dによって姿勢制御を行う。
具体的には、マルチコプター50では、大型の回転翼52a、52bは、原則として同じ回転速度で回転される。即ち、回転翼52a、52bを同じ速度であって且つ高速回転することにより、マルチコプター50が上昇する。また同じ速度であって且つ低速回転することにより、マルチコプター50が降下する。さらに同じ速度であって且つ適度の回転速度で回転させることよってマルチコプター50が中空で停止する。
これに対して、小型の回転翼51a、51b、51c、51dは、回転速度が細かく制御され、姿勢を安定させたり、向きや姿勢を変化させ、前進や横行を行う。
【0055】
上記した実施形態では、小型の回転翼51a、51b、51c、51dを4個備えているが、小型の回転翼の個数は限定されるものではない。ただし、小型の回転翼51の個数は、3個以上であることが望ましい。
【0056】
上記した制御方法は、一例を示したものに過ぎず、通常のマルチコプターと同様にすべての回転翼の回転速度を個別に制御してもよい。
【0057】
6個の回転翼51a、51b、51c、51d、52a、52bをすべてモータで回転してもよいが、大径の回転翼52a、52bだけをエンジンで駆動してもよい。
【0058】
図11に示すマルチコプター50では、大径の回転翼52a、52bが、支持フレーム部32の中心に対して遠い位置にあり、小径の回転翼51a、51b、51c、51dが支持フレーム部32の中心に対して近い位置にあるが、遠近の関係は逆であってもよい。
例えば、図12に示すマルチコプター80の様に、大径の回転翼52a、52bが、支持フレーム部32の中心に対して近い位置にあり、小径の回転翼51a、51b、51c、51dが支持フレーム部32の中心に対して遠い位置に配置されていてもよい。
【0059】
大きさが異なる回転翼が混在する構成の実施形態として、図7の様な支持フレーム部32とリブ構成部材23を個別に成形し、その後で両者を接続したものを例に挙げたが、図1に示すマルチコプター1の様な、支持フレーム部10とリブ部30が一体のものであってもよい。
【0060】
ただし、支持フレーム部32とリブ構成部材53、55を個別に成形する構成は、回転翼の径が同一である通常構造のマルチコプターと、径の異なる回転翼が混在するマルチコプターを共通構造の支持フレーム部32で製作することができるという利点がある。即ち、通常レイアウトのマルチコプターと同一構造の支持フレーム部32に、長さの異なるリブ構成部材53、55を介して回転翼51a、51b、51c、51d、52a、52bを取り付けることにより、大きさが異なる回転翼が混在するマルチコプター50を製作することができ、大きさが異なる回転翼が混在するマルチコプター50の構造として適している。
【0061】
また図11に示すマルチコプター50では、機器載置部を網41で形成し、当該網41の中に電装機器42を配置したが、他に例示する様な構造の機器載置部であってもよい。
即ち、前記した各実施形態の構成の一部を相互に置き換えたり、一部を除いてもよい。
【0062】
マルチコプター50では、大径の回転翼52a、52bの中心は、小径の回転翼51a、51b、51c、51dの中心に比べて、マルチコプター50の中心から離れた位置にある。即ちマルチコプター50は、中心からの距離が異なる回転翼が混在している。
全ての回転翼の大きさが同一の場合であって、且つ中心からの距離が異なる回転翼が混在していてもよい。
図13に示すマルチコプター60、61、62は、回転翼の配置が不均一である。また中心からの距離が異なる回転翼が混在している。
図13(a)に示すマルチコプター60は、8個の回転翼63a乃至63hを有している。
マルチコプター60は、円形の支持フレーム部32を有し、当該支持フレーム部32にリブ構成部材53を介して8個の回転翼63a乃至63hが取り付けられている。
マルチコプター60では、6個の回転翼63a、63b、63c、63d、63e、63fは、支持フレーム部32と同心のピッチ円P上に等間隔に配置されている。即ち、6個の回転翼63a、63b、63c、63d、63e、63fは、いずれも支持フレーム部32の中心からの距離が等しい。
【0063】
回転翼63gは、回転翼63bの延長線上に配置され、回転翼63hは、回転翼63eの延長線上に配置されている。回転翼63gと回転翼63hの中心からの距離は等しい。 しかしながら、回転翼63gと回転翼63hの中心からの距離は、他の6個の回転翼63a、63b、63c、63d、63e、63fの中心からの距離よりも長い。
【0064】
マルチコプター60では、4個の回転翼63g、63b、63e、63hが支持フレーム部32の中心を通過する同一直線C-C上に並んでいる。
他の回転翼は、対向するものが、支持フレーム部32の中心を通過する同一直線上に並んでいる。
【0065】
マルチコプター60は、4個の回転翼63g、63b、63e、63hの列(直線C-C)に対して垂直方向に巡行させることが望ましい。即ち、図13(a)の矢印の方向に飛行させることが望ましい。
本実施形態のマルチコプター60では、ピッチ円P上に等間隔に配置された6個の回転翼63a、63b、63c、63d、63e、63fは、全体の重心からの距離が比較的近い。即ち、マルチコプター60は、全体の重心に近い位置に、回転翼63a、63b、63c、63d、63e、63fが設置されている。そのためマルチコプター60は、ヨー(左右の回転)が円滑である。
【0066】
また本実施形態のマルチコプター60では、回転翼63gと回転翼63hは、全体の重心からの距離が比較的遠い。即ち、マルチコプター60は、全体の重心から遠い位置に、回転翼63g、63hが設置されている。そのためマルチコプター60は、ピッチ(前進・後退)の効率が良い。またロール(左右の傾き)も安定する。
【0067】
さらに図13(b)(c)に示す様なレイアウトでもよい。
図13(b)(c)に示すマルチコプター61、62も円形の支持フレーム部32を有し、当該支持フレーム部32は、環状部46にリブ取付け部33が設けられている。マルチコプター61、62では、リブ構成部材53が取り付けられていないリブ取付け部33がある。
【0068】
マルチコプター61、62で採用されているリブ構成部材70は、主幹部71の先端に枝部72があり、各リブ構成部材70にそれぞれ回転翼2が取り付けられている。リブ構成部材70は、主幹部71と枝部72が一体的に成型されたものであるが、両者が個別に成型されて後工程で接合されたものであってもよい。即ちリブの一部を構成する例えば主幹部71のリブ構成部材と、リブの一部を構成する例えば枝部72のリブ構成部材が、ネジ等で結合されたものであってもよい。
マルチコプター61では、径の異なる回転翼が混在している。
【0069】
図11図13に示すマルチコプター50、60、61、62についても、網(機器載置部)41を有し、ロープ(線状部材)40で支持フレーム部32から吊り下げられている。本マルチコプター50、60、61、62では、4本のロープ(線状部材)40で網(機器載置部)41が支持フレーム部32から吊り下げられている。図11図13では、接続部の図示を省略している。
【0070】
以上説明した実施形態では、本体部3の本体側接続部25a、25b、25c等と、機器載置部11の載置部側接続部26a、26b、26c等が、それぞれ一本の線状部材16a、16b、16cで繋がれている。上記した実施形態では、本体部3と機器載置部11、41が、3か所又は4か所で繋がれているが、接続箇所の個数は任意である。
ただし、バランスを考慮すると、本体部と機器載置部を3か所で繋ぐことが推奨される。
また上記した実施形態では、上下の接続部25、26をそれぞれ一本の線状部材で繋いだが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、本体側接続部25a、25b、25cと、機器載置部11の載置部側接続部26a、26b、26cが複数本の線状部材で繋がっていてもよい。例えば、一つの載置部側接続部26aが、2つの本体側接続部25a、25bと繋がれていてもよい。
【0071】
また以上説明した実施形態では、上下を繋ぐ線状部材の長さは変わらないが、これが自動的に変わる機能を付加することにより、線状部材のたるみをなくすことができる。また機器載置部11の姿勢を安定させることができる。
例えば、環状に繋がった一本の線状部材73で、全ての本体側接続部25a、25b、25cと、載置部側接続部26a、26b、26cを連結することにより、飛行中に、本体側の接続部と載置部側の接続部との間の線状部材の長さを自動的に変えて、線状部材のたるみをとり、機器載置部11の姿勢を安定させることができる。
【0072】
以下、図14を参照し、環状に繋がった一本の線状部材73によって、全ての本体側接続部25a、25b、25cと、載置部側接続部26a、26b、26cが、連結されたマルチコプターについて説明する。
図14に示すマルチコプター65は、前記した各実施形態と同様に、本体部3の環状の支持フレーム部10に、本体側接続部25a、25b、25cがある。また機器載置部11にも載置部側接続部26a、26b、26cがある。
本実施形態のマルチコプター65では、すべての接続部25、26に滑車76、77が設けられている。即ち、本体側接続部25aに本体側滑車76aがあり、本体側接続部25bに本体側滑車76bがあり、本体側接続部25cに本体側滑車76cがある。
また載置部側接続部26aには載置部側滑車77aがあり、載置部側接続部26bには載置部側滑車77bがあり、載置部側接続部26cは載置部側滑車77cがある。
【0073】
滑車76、77は、線状部材73を跨がせて係合する跨ぎ係合部材である。滑車76、77は滑り摩擦を転がり摩擦に変換して線状部材73の行き来を円滑に行わせる部材である。本発明は、跨ぎ係合部材を滑車に限定するものではなく、摩擦係数の小さい樹脂を配置してもよい。また単なるフックやアイボルトを跨ぎ係合部材として使用してもよい。
【0074】
そして本実施形態のマルチコプター65では、環状に繋がれた一本の線状部材73が、すべての本体側接続部25a、25b、25cと載置部側接続部26a、26b、26cの間に巻回されている。
図14を参照しつつ説明すると、本体側滑車76aを上に凸の状態で跨いだ線状部材73の延長部が、載置部側滑車77aを下に凸の形で係合して跨ぎ、さらにその先が、本体側滑車76bを上に凸の形で係合して跨ぎ、さらにその先が載置部側滑車77bを下に凸の形で係合して跨ぎ、さらにその先が、本体側滑車76cを上に凸の形で係合して跨ぎ、さらにその先が載置部側滑車77cを下に凸の形で係合して跨ぎ、さらにその先が、本体側滑車76aを上に凸の形で係合して跨いでいる。
【0075】
マルチコプター65は、一つの載置部側接続部26が二つの本体側接続部25から吊り下げられていると言える。
【0076】
本実施形態のマルチコプター65では、本体側接続部25a、25b、25cと載置部側接続部26a、26b、26cとの間の線状部材73の長さを変えることができる。
例えば、本体側接続部25aと載置部側接続部26aの距離を長くし、本体側接続部25cと載置部側接続部26cの距離を短くすることができる。
すなわち本実施形態では、上下の接続部25、26を繋ぐ線が、一本に繋がっているから、特定の位置における本体側接続部25と載置部側接続部26の距離を長くすると、必然的にいずれかの位置の本体側接続部25と載置部側接続部26の距離が短くなる。
【0077】
マルチコプター65では、線状部材73の一部分がたるむと、当該部分の張力が弱まり、他の部分に引っ張られてたるみが解消する。
そのため、マルチコプター65は、機器載置部11の重量バランスと、線状部材73の張力のバランスにより、各部分の上下の接続部25、26の間における線状部材73の長さが、ある程度自動的に変わり、線状部材73がたるみにくい。また機器載置部11の重量バランスと、線状部材73の張力のバランスにより、機器載置部11の姿勢を水平に保とうとする効果がある。
例えば、図14(b)の様に、本体部3の環状の支持フレーム部10が傾斜姿勢となったとき、下に吊り下げられた機器載置部11は、略水平姿勢を保つ。
【0078】
マルチコプター65採用する線状部材73は、環状に繋がれた一本のロープであり、無端構造であるが、長尺であって、両端を有するロープを線状部材として採用し、複数の接続部25、26を跨いで巻回させてもよい。また、複数の接続部25、26を跨いで巻回させる線状部材と、単に上下を繋ぐだけの線状部材を混在させてもよい。
【0079】
図15を参照しつつ、さらにもう一つの実施形態について説明する。
図15に示すマルチコプター81についても、飛行中に、本体側の接続部と載置部側の接続部との間の線状部材の長さを自動的に変えて、機器載置部11の姿勢を安定させることができるものである。
本実施形態のマルチコプター81は、前記した各実施形態と同様に、本体部3の環状の支持フレーム部10に、本体側接続部25a、25b、25cがある。また機器載置部11にも載置部側接続部26a、26b、26cがある。
本実施形態のマルチコプター81では、上下の内の一方の接続部25、26に巻き取り装置83が設けられている。本実施形態では本体側接続部25a、25b、25cにそれぞれ巻き取り装置83a、83b、83cが設けられている。
【0080】
本実施形態で採用されている巻き取り装置83は、一定トルクを発現する定トルク部材を内蔵したものである。具体的には、巻き尺等で採用されているゼンマイによって一定トルクで線状部材16を巻き取るものである。
本実施形態では、本体側接続部25a、25b、25cの巻き取り装置83a、83b、83cと、載置部側接続部26a、26b、26cの間がそれぞれ個別の線状部材16で連結されている。具体的には、本体側接続部25aと、載置部側接続部26aの間が、線状部材16aで繋がれている。同様に本体側接続部25bと、載置部側接続部26bの間が、線状部材16bで繋がれている。また本体側接続部25cと、載置部側接続部26cの間が、線状部材16cで繋がれている。
【0081】
本実施形態のマルチコプター81においては、線状部材16のいずれかがたるむと、巻き取り装置83によって当該線状部材16がまきとられ、たるみが解消する。本実施形態のマルチコプター81においても、機器載置部11の重量バランスと、線状部材16の張力のバランスにより、各部分の上下の接続部25、26の間における線状部材16の長さが、ある程度自動的に変わり、機器載置部11の姿勢を水平に保とうとする作用がある。
例えば、図15(b)の様に、本体部3の環状の支持フレーム部10が水平姿勢である場合は、各線状部材16a、16b、16cの長さが略等しくなり、下に吊り下げられた機器載置部11の姿勢は水平となる。
一方、図15(c)の様に、本体部3の環状の支持フレーム部10が傾斜姿勢となったときでも、下に吊り下げられた機器載置部11は、略水平姿勢を保つ。
【0082】
以上、機器載置部11の重量バランスと、上下の接続部25、26間の張力のバランスにより、各部分の上下の接続部25、26の間における線状部材16の長さを変える構造について説明したが、電気的制御によって上下の接続部25、26の間における線状部材16の長さを変えてもよい。
【0083】
図16に示すマルチコプター85では、上下の内の一方の接続部25、26に電動の巻き取り装置86が設けられている。またマルチコプター85は、図示しない姿勢センサーが機器載置部11に取り付けられており、当該姿勢センサーの信号に応じて、各巻き取り装置が動作し各部分の上下の接続部25、26の間における線状部材16の長さを変えて、機器載置部11の姿勢を水平に維持する。
【0084】
以上説明したマルチコプターは、いずれも環状の支持フレーム部10、32を有しているが、図17(a)のマルチコプター100の様な枝分かれ状のフレームや、図17(b)のマルチコプター200の様な放射状のフレームから線状部材で機器載置部を吊り下げてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1、5、6、35、50、60、61、62、65、80、81、85 マルチコプター
2 回転翼
3 本体部
7 蓄電池(補助機器)
8 制御装置 蓄電池(補助機器)
10、32 支持フレーム部
11 機器載置部
12 脚部
16a、16b、16c 線状部材
20 モータ
25a、25b、25c 本体側接続部
26a、26b、26c 載置部側接続部
40 ロープ(線状部材)
41 網(機器載置部)
42 電装機器(補助機器)
51a、51b、51c、51d、52a、52b 回転翼
73 線状部材
76a、76b、76c 本体側滑車
77a、77b、77c 載置部側滑車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18