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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ガス分離回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/06 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
B01D53/06 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020032596
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133323
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390020215
【氏名又は名称】株式会社西部技研
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和行
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-187698(JP,A)
【文献】特開2007-187386(JP,A)
【文献】特開2005-164182(JP,A)
【文献】特開平03-258324(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069607(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/051800(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/06
B01D 53/18
C01B 32/40
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着ハニカムロータを有し、前記吸着ハニカムロータを回転方向に、処理ゾーン、プレパージゾーン、再生ゾーンに分割し、前記処理ゾーンに処理対象ガスを通風し、目的ガスをハニカムに吸着させて除去し、前記吸着ハニカムロータの前記再生ゾーンを通過したガスを二路に分岐し、一部を前記プレパージゾーンに送り、前記プレパージゾーンを通過したガスを装置外に排気し、残りの一部を前記吸着ハニカムロータの再生ゾーンに戻して再生循環して脱着した目的ガスで増量した容積分を回収することを特徴とするガス分離回収装置。
【請求項2】
前記吸着ハニカムロータは50℃以下の温度で低温再生可能な吸着材を担持したものであって、前記吸着ハニカムロータの前記再生ゾーンの前に再生用送風機を設け、再生用ガスの加熱には前記再生用送風機による昇温を利用したことを特徴とする請求項1に記載のガス分離回収装置。
【請求項3】
前記吸着ハニカムロータの前記再生ゾーンの前に再生用ガスの加熱手段としてさらに再生ヒータを設けたことを特徴とする請求項1または2いずれか一項に記載のガス分離回収装置。
【請求項4】
前記吸着ハニカムロータの前記処理ゾーンの前に冷却手段を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のガス分離回収装置。
【請求項5】
請求項4に記載の前記冷却手段は冷水コイルまたは直膨コイルのいずれか一方または両方を用いたことを特徴とするガス分離回収装置。
【請求項6】
前記ハニカムロータの前記再生ゾーンの前に再生用ガスの加熱手段としてさらに再生ヒータを設け、前記冷却手段にヒートポンプの蒸発器を用い、前記再生ヒータにヒートポンプの凝縮器を用いたことを特徴とする請求項4に記載のガス分離回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のガス成分から構成される処理対象ガスから目的ガスを分離し、回収するために、目的ガスを選択吸着する吸着材が担持された吸着ハニカムロータを用いて温度差により吸脱着することを特徴とするガス分離回収装置において、簡素な構成により、目的ガスを所定の濃度で分離回収できるガス分離回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々のガス成分から構成される処理対象ガスから目的ガスを分離し、回収する方法として、ゼオライトや活性炭等の吸着材を用いた吸着法が注目されている。吸着法には圧力差を利用して吸脱着を行うプレッシャースイング法(Pressure Swing Adsorption、以下PSA法)と、温度差を利用して吸脱着を行うサーマルスイング法(Thermal Swing Adsorption、以下TSA法)がある。
【0003】
例えば、目的ガスが二酸化炭素の場合、PSA法ではシリカゲルやゼオライト等を充填した除湿用のPSAで-20℃DP(Dew Point、露点温度)程度まで処理した後に、二酸化炭素分離回収用のPSAに導入して二酸化炭素を回収する(非特許文献1)。しかし、圧力差を利用するため圧力容器が必要で、周辺機器として電磁弁やコンプレッサ、真空ポンプ等の精密機械も必要となり、大型化が困難で、消費電力量が多いという問題がある。
【0004】
一方、TSA法は摂氏50℃(以下、温度は全て「摂氏」とする)以下の温度で二酸化炭素を吸着させ、100~300℃前後の温度に加熱して二酸化炭素を脱着させて回収する方法である。TSA法は、PSA法に必要な真空ポンプ等も必要ないため、比較的小型化や低コスト化が達成できる可能性がある。
【0005】
TSA法の中でも、回転型吸着ハニカムロータを用いる方法は、表面積が大きく、圧力損失が少なく、軽量でありながら強度が高いため、大型化が容易であることから、近年デシカントロータ除湿機、ロータ式VOC(Volatile Organic Compounds、揮発性有機化合物、以下、VOC)濃縮装置等、大型気体処理装置に採用され普及している。
【0006】
目的ガスが二酸化炭素の場合において、特許文献1、2には吸着ハニカムロータを用いた二酸化炭素濃縮回収装置が示されている。特許文献1に開示されたものは、ロータの回転方向に沿って吸着ゾーンと、予熱ゾーンと、低濃度ガスパージゾーンと、加熱ガス循環による脱着ゾーンと、高濃度ガスパージゾーンと、予冷ゾーンと、冷却ゾーンを経て再び吸着ゾーンに戻る構成にすることで、二酸化炭素の回収率と回収濃度を同時に高めることができ、少ない消費エネルギーで効率的に二酸化炭素の濃縮を行うことができる、省エネ性の高い二酸化炭素分離回収装置を実現するものである。
【0007】
特許文献2に開示されたものは、ロータの回転方向に対し、吸着ゾーン、パージゾーン、再生ゾーン、冷却ゾーンに4分割された二酸化炭素分離回収ロータを用いており、二酸化炭素分離回収ロータの前段に除湿ロータを設けることによって、排ガスから除湿された二酸化炭素濃縮ガスを得ると共に、排ガス中の水溶性ガス(NO、SO等)の影響を受けににくく、省エネ性が高い。
【0008】
しかしながら、特許文献1や2に記載のものはゾーンを複数分割しているため、配管や周辺機器が多く複雑な構成となり、イニシャルコストが高く、小型化が難しい。さらに、ゼオライト系吸着材を担持した吸着ハニカムロータを用いる場合は、ゼオライトが二酸化炭素よりも水蒸気を優先的に吸着して、二酸化炭素能力が低下することから、予除湿のためのハニカムロータ除湿機による前処理により露点温度を-20~-60℃DP程度に除湿して導入する必要がある。
【0009】
一方、特許文献3のように、アミン系吸収剤を保持させた吸着ハニカムロータを用いたものは、処理入口および再生入口のエンタルピ差によって二酸化炭素を再生する。再生温度は50℃以下と低く省エネであり、再生用空気のエンタルピを高めることが望ましいので、前段の除湿機は不要であるが、再生入口側を加湿して相対湿度を高めるための湿度調整手段が必要となる。
【0010】
目的ガスが水蒸気やVOC等の場合、それぞれデシカント除湿機やVOC濃縮装置があり、例えば特許文献4や5のようなものが知られている。これらに用いられる吸着ハニカムロータは、通常、ロータの回転方向に吸着ゾーン、再生ゾーン、パージゾーンに分割されており、被処理ガスを吸着ゾーンとパージゾーンに通し、吸着ゾーンを通過したガスは供給先へ供給または排気され、パージゾーンを通過したガスを加熱して再生ゾーンに通し、再生ゾーンを通過したガスを供給先へ供給または排気する構成にしてある。特許文献4のように、濃縮倍率を上げるために再生ゾーンを通過したガスの一部を再び再生入口側へ戻す方法が常套的に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許6498483号公報
【文献】特願2018-175486号
【文献】特許5877922号公報
【文献】特開2006-187698公報
【文献】特開2011-104542公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】「高炉ガスからの二酸化炭素回収用PSAシステムの開発CO2分離における操作条件の影響」、化学工学論文集、39巻 2013 5号 p.439-444
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように、吸着ハニカムロータを用いたガス除去・濃縮回収システムにおいて、ランニングコストを低減するために、特許文献1、2のように処理ゾーンと再生ゾーン以外に複数のゾーンに分割したり、特許文献3のように再生入口の相対湿度を高くするシステムが提案されているが、更なるコストの低減化が求められている。
【0014】
この実情に鑑み、本発明は、特許文献4、5に記載のような従来の吸着ハニカムロータの構成とは異なり、かつ特許文献1、2に記載のものより簡素な装置構成で、種々のガス成分から構成される処理対象ガスから目的ガスを分離し、回収するため、目的ガスを選択吸着する吸着材が担持された吸着ハニカムロータを用いて温度差により吸脱着することを特徴とするガス分離回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、吸着ハニカムロータを有し、前記吸着ハニカムロータを回転方向に、処理ゾーン、プレパージゾーン、再生ゾーンに分割し、前記処理ゾーンに処理対象ガスを通風し、目的ガスをハニカムに吸着させて除去し、前記吸着ハニカムロータの前記再生ゾーンを通過したガスを二路に分岐し、一部を前記プレパージゾーンに送り、前記プレパージゾーンを通過したガスを装置外に排気し、残りの一部を前記吸着ハニカムロータの再生ゾーンに戻して再生循環して目的ガスを濃縮回収することを特徴とする。この時、再生出口の温度は比較的高く、外気を混入せずに吸着ハニカムロータから脱着したガスのみを循環させることで昇温のための加熱エネルギーを抑えることが出来る。また、低温再生可能な吸着材を担持した吸着ハニカムロータを用いれば、再生用送風機による昇温のみで再生用ガスを加熱できるので、再生ヒータ等の加熱手段が不要になり、省エネルギーとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガス分離回収装置は前述の如く構成したもので、簡素な装置構成であっても、種々のガス成分から構成される処理対象ガスから目的ガスを分離し、所定の濃度で濃縮回収することができる。
【0017】
また、低温再生可能な吸着材を担持した吸着ハニカムロータを用いた場合、再生用ガスを昇温する加熱手段として再生用送風機による昇温を利用することで、再生ヒータ等の加熱手段が不要になり、再生エネルギーやランニングコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明のガス分離回収装置の実施例1におけるフロー図である。
図2図2は本発明のガス分離回収装置の実施例2におけるフロー図である。
図3図3は本発明にかかるガス分離回収装置において、吸着ハニカムロータとしてアミン担持固体吸着剤を担持したロータを用いた場合の二酸化炭素分離回収試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の吸着ハニカムロータは、セラミック繊維やガラス繊維等の無機繊維紙、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)等の樹脂製の繊維紙、アルミ等の金属箔、樹脂シート等の不燃性のシートを、コルゲート(波付け)加工し、ロータ状に巻き付けまたは積層加工したもので、シリカゾルやアルミナゾル等の無機系バインダーや酢酸ビニル系やアクリル系等の有機系バインダーを使って、シリカゲルやゼオライト、高分子収着材、活性炭、アミン系吸収剤や炭酸塩系吸収剤を添着した多孔質固体吸着材等、目的ガスに応じた種々の吸着材を担持したロータである。必要に応じて、低温再生可能な吸着材を担持した吸着ハニカムロータとしてもよい。なお、本発明において、「低温再生」とは50℃以下の温度の再生用ガスで再生することとする。
【0020】
本発明のガス分離回収装置において、目的ガスがVOCならば、数百ppmのVOCを数千ppmに濃縮する。目的ガスが水蒸気の場合は、処理対象ガスの水蒸気濃度は数パーセントで、濃縮側である再生出口側の水蒸気濃度も数パーセントオーダーである。二酸化炭素の濃縮は、排ガスから回収であれば、処理対象ガスの二酸化炭素濃度10%前後を濃縮後の濃度数十%にしたり、大気からの濃縮回収であれば、500ppm前後の二酸化炭素を数千ppmに濃縮する。このように、用途に応じて、吸着材の種類を選択し、本発明のガス分離回収装置の最適な運転方法や装置設計を選択する。目的ガスはこれらに限定されるものでなく、吸着材を適宜変更することにより、他の酸性ガスやアルカリ性ガス等にも適用できる。
【実施例1】
【0021】
図1に本発明の実施例1を示す。吸着ハニカムロータ1はロータの回転方向に対し、処理ゾーン2、プレパージゾーン3、再生ゾーン4に分割されており、ギヤードモータ等(図示せず)で矢印の方向に回転し、連続的に処理対象ガスから目的ガスを分離除去し、濃縮回収する。吸着ハニカムロータ1には前述のよう目的ガスに応じた種々の吸着材が担持されている。
【0022】
処理対象ガス(原ガス)はエアフィルターや脱硝装置等の前処理装置(図示せず)を通過し、冷水コイルや直膨コイル等の冷却手段5を通して冷却除湿され、処理ゾーン2に送られる。処理ゾーン2では目的ガスがハニカムに吸着されて分離除去され、ボルテックスブロワ等の処理用送風機7により供給先に供給または排気される。処理ゾーン2を通過するガスはダンパ等の風量調整装置6によってガス流量を調整することができる。
【0023】
再生ゾーン4では、再生用送風機10によって再生循環路を濃縮された目的ガスが循環する。再生用ガスは蒸気コイルやヒータ等の加熱手段8によって加熱されて再生ゾーン4に導入され、ハニカムに吸着した目的ガスが脱着される。再生ゾーン4を出た脱着濃縮された目的ガスは再生循環路を循環することにより、さらに濃度が高まる。再生ゾーン4では、吸着ハニカムロータ1から脱着したガスのみが循環しており、外気の混入が無いので、目的ガスの濃度は高まりやすくなる。再生循環路内のガスは脱着した目的ガスで増量し、増量した容積分が風量調整装置9を通して回収あるいは供給先へ供給、または排気される。また、再生循環ガスの一部はプレパージゾーン3に送られ、排気EAとして装置外へ排出される。プレパージ出口の風量調整装置11により、排出されるガスの流量を調整することができる。プレパージゾーン3は、吸着ハニカムロータ1の回転によってハニカム空隙内の低濃度の目的ガスが処理ゾーン2から再生循環路に流入することを抑制する効果と、吸着ハニカムロータ1のプレヒート効果がある。
【0024】
目的ガスが所定の回収濃度以上になるまで、風量調整装置9を閉じて再生循環しておき、所定の濃度以上になってから風量調整装置9を開けて濃縮目的ガスを回収あるいは供給先へ供給、または排気するようにしてもよい。
【0025】
なお、処理ゾーン2を通過したガスの一部を分岐して、再び処理ゾーンに戻す構成にしてもよい。冷却手段5および加熱手段8には、それぞれヒートポンプの蒸発器(エバポレータ)および凝縮器(コンデンサ)を用いるようにしてもよい。風量調整装置6、9、11は図1に限るものでなく、適宜設けるようにし、増設するようにしてもよい。また、処理用送風機7や再生用送風機10は必要に応じて適切な場所に設けるようにし、増設するように構成してもよい。さらに、濃縮目的ガスの回収位置は図1に限定されるものでなく、再生ゾーン出口すぐや再生ゾーン入口から回収するようにしてもよい。プレパージ出口ガスは通常排気するが、回収率を高めるために回収したり、再び再生循環路に導入するようにしてもよい。
【0026】
再生ゾーン4では、吸着ハニカムロータ1から脱着したガスのみが循環しており、外気の混入が無いので、外気混入によるガス温度の低下が無く、加熱エネルギーをより低減できる可能性がある。
【実施例2】
【0027】
図2に本発明の実施例2を示す。図2におけるガスの流れは基本的に図1と同様であるが、加熱手段8が無く、ヒータレスとして構成してあることに特徴がある。すなわち、吸着ハニカムロータ1は再生用送風機10による昇温のみで、再生用ガスを加熱するので、加熱のためのエネルギーが不要となり、省エネルギーかつランニングコストの低減につながる。
【0028】
吸着ハニカムロータ1には50℃以下の低温で目的ガスを脱着する低温再生可能な吸着材が担持されている。例えば、目的ガスが二酸化炭素の場合、アミン担持固体吸着材等が挙げられる。
【0029】
特許文献4、5に記載のように、通常、吸着ハニカムロータを用いる装置は、再生出口側に再生用送風機を設けてある。これは、再生入口側には加熱手段として再生ヒータ等を設けることも理由の一つであるが、処理ゾーン出口ガスを供給先へ供給する用途の場合、処理入口・処理出口に対して、再生入口・再生出口が負圧となり、再生側から処理側へ脱着した目的ガスのリーク量が低減するので、処理出口側における目的ガスの除去効率が良くなるためである。
【0030】
一方、本発明に係る実施例2の再生用送風機10は再生入口側、すなわち再生ゾーン4の入口すぐ手前に配置してある。再生出口ガスを回収又は供給先へ供給する用途の場合、再生入口・再生出口に対して、処理入口・処理出口が負圧になり、処理側から再生側へ目的ガス濃度の低い処理側のガスのリーク量が低減するため、濃縮性能が向上する。しかし、そのように圧力を制御しても、処理側からの持ち込みがあるため濃縮性能が落ちる可能性がある。そこで、ロータ回転方向に沿って、処理ゾーン2と再生ゾーン4の間にプレパージゾーン3を設けることで、処理側・再生側間のリークを低減するようにしてある。
【0031】
送風機による昇温は送風機の種類によって異なる。プラグファンやターボファン等の遠心送風機であれば3℃程度であるが、高静圧を発生することができる送風機(例えばボルテックスブロワのような渦流送風機)であれば、10℃以上昇温する。再生ゾーン4では、吸着ハニカムロータ1から脱着したガスのみが循環しており、外気の混入が無いので、外気混入によるガス温度の低下が無く、加熱エネルギーをより低減することができる。実施例2における発明では、加熱手段が不要であるヒータレスとして構成することで、再生ヒータや熱交換器が不要であり、装置を小型化できるので、イニシャルコストの低減や装置サイズのコンパクトな設計にもつながる。
【0032】
目的ガスが二酸化炭素の場合、吸着ハニカムロータ1にはアミン担持固体吸着材を担持したロータを用いると、水蒸気の介在によって二酸化炭素の吸着性能は大きく低下しないので、前段に除湿装置が無くとも二酸化炭素を吸着・濃縮することができる。また、低温で再生することにより、熱による性能劣化が低減され、吸着ハニカムロータの長寿命化につながる効果がある。さらに、アミンの分解等による、アミン臭等の吸着ハニカムロータからの臭気発生の抑制も可能となる。同時に水分の吸脱着も行われるので、脱着側で水分が濃縮され、特許文献3のように湿度調整手段がなくとも循環ガスの湿度が増加するため、再生入口側のエンタルピを高めることが出来る。このため、二酸化炭素の濃縮濃度が高まりやすい装置構成となっている。
【0033】
なお、処理ゾーン2を通過したガスの一部を分岐して、再び処理ゾーンに戻す構成にしてもよい。風量調整装置6、9、11は図2に限るものでなく、適宜設けるようにし、増設するようにしてもよい。また、処理用送風機7や再生用送風機10は必要に応じて適切な場所に設けるようにし、増設するように構成してもよい。さらに、濃縮目的ガスの回収位置は図2に限定されるものでなく、再生ゾーン出口すぐや再生ゾーン入口から回収するようにしてもよい。プレパージ出口ガスは通常排気するが、回収率を高めるために回収したり、再び再生循環路に導入するようにしてもよい。
【0034】
図3は本発明にかかるガス分離回収装置において、吸着ハニカムロータとしてアミン担持固体吸着剤を担持したロータを用いた場合の二酸化炭素分離回収試験結果である。処理入口における温度は12℃、二酸化炭素濃度は10%、再生入口温度は45℃に設定した。風量調整装置9により回収流量を変えることにより、回収二酸化炭素濃度は20~30%と変化した。
【0035】
試験結果より試算した二酸化炭素分離回収エネルギーは1.5GJ/t-COであった。他の二酸化炭素分離回収における従来方式と比較すると、アミン液吸収法では2~3GJ/t-CO、特許文献2にかかる二酸化炭素分離回収装置では4GJ/t-COであり、本発明のガス分離回収装置による方法は省エネルギーでランニングコストが低減できる可能性がある。
【0036】
なお、図3は試験結果の一例であり、本発明のガス分離回収装置は、吸着ハニカムロータの吸着材の種類や担持量、処理対象ガス中の目的ガス濃度、再生温度、回収流量などの種々の条件によって、任意に目的ガス回収濃度や回収率を変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のガス分離回収装置によれば、従来より簡素な装置構成で、処理対象ガスから目的ガスを分離除去し、所定の濃度で濃縮回収することができるので、装置を小型化でき、イニシャルコストの低減にもつながる。また、再生循環路には脱着したガスのみが循環しており、外気の混入が無く、外気混入による温度低下がないため、ランニングコストを低減できる可能性がある。さらに、低温再生可能な吸着材を担持した吸着ハニカムロータを用いれば、再生用送風機による昇温のみで再生用ガスを加熱できるので、再生ヒータ等の加熱手段が不要になり、省エネルギーとなる。
【符号の説明】
【0038】
1 吸着ハニカムロータ
2 処理ゾーン
3 プレパージゾーン
4 再生ゾーン
5 冷却手段
6、9、11 風量調整装置
7 処理用送風機
8 加熱手段
10 再生用送風機
図1
図2
図3