(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】工具位置決め装置および同装置を備える自動部品締結機
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
B23P19/06 Q
(21)【出願番号】P 2020058779
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】安積 慶一
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-195864(JP,A)
【文献】特開2013-139070(JP,A)
【文献】特開2000-218562(JP,A)
【文献】特開平06-143059(JP,A)
【文献】実開昭55-060969(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定作業を行う工具を昇降自在に案内する案内部材、当該案内部材に向かって拡開されるガイド部と当該ガイド部に連通し、かつ案内部材に当接してこれを所定作業位置に対応させる位置決め凹部とが直接または間接的に配置される位置設定治具、前記案内部材を二次元方向に移動可能に保持し、かつこれを前記位置設定治具のガイド部に押付ける付勢手段からなることを特徴とする工具位置決め装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、案内部材が取付けられる案内部材保持具、当該案内部材保持具を位置設定治具のガイド部に向かう方向に押付けるエアシリンダおよび当該方向と交差する方向に案内部材保持具またはエアシリンダを移動可能に保持するスライドテーブルからなることを特徴とする請求項1に記載の工具位置決め装置。
【請求項3】
前記位置設定治具は、位置決め凹部の縁部が案内部材保持具の保持個所近くで案内部材に当接するように配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の工具位置決め装置。
【請求項4】
前記案内部材は、工具を昇降自在に案内する案内パイプであって、前記位置設定治具の位置決め凹部はU形状をなすことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の工具位置決め装置。
【請求項5】
前記工具は、複数個設けられることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の工具位置決め装置。
【請求項6】
前記位置設定治具は、少なくとも2個の腕部を有し、当該腕部の少なくとも対向する2個に当該腕部から離脱可能に取付けられる支持具により支持されることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の工具位置決め装置。
【請求項7】
前記位置設定治具は、工具に当たらない位置で放射状に延びる3個以上の腕部を持ち、かつ当該位置設定治具は少なくとも2個の腕部で
治具取付ブロックと支持具とにより所定の位置でその姿勢を水平に保持され、他の腕部の少なくとも一つで
位置決め用ブロックと嵌合部材とによりその姿勢が保持されることを特徴とする請求項1~
5の何れかに記載の工具位置決め装置。
【請求項8】
前記位置設定治具は、
工具に当たらない位置で放射状に延びる3個以上の腕部を持ち、かつ当該位置設定治具は少なくとも2個の腕部で治具取付ブロックと支持具により所定の位置でその姿勢を水平に保持され、他の腕部で治具取付ブロックと支持具とによりその姿勢が保持されることを特徴とする請求項1~
5の何れかに記載の工具位置決め装置。
【請求項9】
昇降駆動源により昇降自在な昇降台に保持されて所定の作業を行う締付工具、締付工具を昇降自在に案内する案内部材、前記締付工具に向かって拡開されるガイド部と当該ガイド部に連通し、かつ案内部材に当接してこれを所定作業位置に対応させる位置決め凹部とが直接または間接的に配置される位置設定治具、前記案内部材を二次元方向に移動可能に保持し、かつこれを前記位置設定治具のガイド部に押付ける付勢手段からなる工具位置決め装置を備えることを特徴とする自動部品締結機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定置式の自動ねじ締め機や自動リベットかしめ機や部品挿入機等の作業機が持つ工具を所定作業位置に位置決めする工具位置決め装置および同装置を備える自動部品締結機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじ、ボルト等の締結部品を締結するねじ締め機の駆動ビット、リベットをかしめるリベットかしめ機のステム、各種部品を所定位置に挿入する部品挿入機の圧入ビット等の工具を複数個持つ作業機にあっては、あらかじめ作業位置に応じて工具の位置が固定されている。そのため、この種の作業機は特定の製品の組立て使用される専用機となっており、ライフサイクルが長い製品の場合には、支障がない。しかしながら、ライフサイクルの短い製品の組立ての場合には新たな作業位置に応じて都度工具の取付け位置を変更しなければならず、その作業が面倒なばかりか、その変更作業に長時間を要しており、この作業を簡単、かつ短時間で行える汎用性の高い作業機が要望されている。
【0003】
この要望に沿って、各種製品の組立て、特にねじ、ボルト等の締結部品により製品を組立てる際には、締結部品の締付位置に応じて駆動ビットを簡単に位置決めできる装置が各種創案されている。その具体例として、実開平2-15229号公報に記載された可変ピッチ多軸締付装置や、実開昭56-42829号公報に記載された多軸式空気工具のピッチ変換装置がある。
【0004】
前記可変ピッチ多軸締付装置51は、
図13に示すように可動支持枠52の下面に取付けられたガイドレール53を有し、このガイドレール53にはスライダ54,54を介してナットランナ支持ブロック55(以下、支持ブロックという)が取付けられている。この支持ブロック55は、後記するナットランナ58がガイドレール53の延びる方向に力を受けると、スライダ54とともに移動するように構成されている。また、前記支持ブロック55の下面には、支持ピン56が下方に延びるように植設されており、この支持ピン56にはアーム57の一端が回動可能に取付けられている。
【0005】
このアーム57の上部には、ナットランナ58が、下部には下方に延びる支持スリーブ59が取付けられている。この支持スリーブ59には、前記アーム57を貫通して位置するナットランナ58の連結ユニット60が回転自在に案内されており、この連結ユニット60に連結されるソケット61に回転が伝達される構成となっている。また、前記アーム57には下方に延びるガイドピン62が植設されており、このガイドピン62の先端は円錐状に形成され、後述のガイド孔63bに嵌合可能に構成されている。
【0006】
前記ガイドピン62の下方にはガイドプレート枠63が回転自在に配置されており、当該ガイドプレート枠63にはその接線方向に延びる4枚のプレート部63aが取付けられている。これらプレート部63aには、それぞれ異なる作業位置に対応するガイド孔63bが設けられており、ナットランナ58が下降するにともなって、前述のガイドピン62がプレート部63aの嵌合孔63bに進入できる。この間、ナットランナ58が前記嵌合孔63aにより決まる作業位置まで移動する方向の力を受けるので、支持ブロック55とともにガイドレール53の延びる方向に移動する。前記ガイドピン62が嵌合孔63bに嵌合する位置まで下降すると、ナットランナ58がガイド孔63bにより決まる作業位置に位置決めされ、前述の可変ピッチ多軸締付装置51は締付位置の異なる製品の組立てにあっても使用可能で、その汎用性の向上が図られている。
【0007】
また、前述したもう一つの具体例である多軸式空気工具71のピッチ変換装置72は、
図14(a)に示すように一定間隔をおいて配置された上基板(図示せず)と下基板73、下基板73に取付けられた基準位置空気工具74a、上下両基板それぞれに取付けられたガイドレール(図示せず)に沿って摺動する3個の上スライダ(図示せず)と3個の下スライダ75、上下で対をなすスライダそれぞれに直立姿勢を保持して取付けられた3個の空気工具74bおよび3個の下スライダ75に跨ってこれらの上面で摺動するピッチ変換板76からなっている。前記基準位置空気工具74aは、他の空気工具74bと同一高さとなるように配置され、3個の空気工具74bとともにピッチ変換板76の摺動方向に一列をなすように配置されている。また、前記基準空気工具74aおよび空気工具74bは、下基板73に設けられた嵌合孔73a(
図14(a),(b)参照)から下方に突出している。しかも、前記嵌合孔73aにあっては空気工具74bの移動方向の長さが異なっており、当該長さは3個の空気工具74bが基準空気工具74a側から順に移動量d,2d,3dを持つ長さとなっている。
【0008】
前記ピッチ変換板76には、3個の空気工具74bがそれぞれ貫通する嵌合孔76aが設けられており(
図14(a).(c)参照)、シリンダ(図示せず)の作動によりピッチ変換板76がA方向またはB方向に摺動するように構成されている。また、このピッチ変換板76は、その摺動により空気工具74bを嵌合孔76aの縁部で係止して移動させ、下基板73の嵌合孔73aの縁部に当接させて停止させるように構成されている。
【0009】
前記ピッチ変換板76に設けられる3個の嵌合孔76aにあっては、ピッチ変換板76の摺動方向の長さが異なる構成となっている。すなわち、基準空気工具74a側から順に嵌合孔76aの長さは基準空気工具74aから最遠の位置にある空気工具74bが移動量3dだけ移動する時、残りの2個の空気工具74b、74bが当接するまでの移動量2d,dを持つ長さとなっている。これにより、ピッチ変換板76をB方向の最前進位置からA方向に移動量3d分摺動させると、ピッチ変換板76がA方向の最後退位置に位置する。この時、各空気工具74bがピッチ変換板76の嵌合孔76aの縁部と下基板73の嵌合孔73aの縁部とにより挟まれ、基準空気工具74aから所定ピッチPで位置決めされる。また、ピッチ変換板76がA方向の最後退位置からB方向の最前進位置まで摺動する時には、3個の空気工具74bが嵌合孔76aの縁部で基準空気工具74a側から順に移動量d、2d、3d分移動して、これら基準空気工具74aおよび3個の空気工具74bを新ピッチP+dで位置決めされる。これにより、前述のピッチ変換装置72は4個の空気工具74a,74b、74b、74bをピッチの異なる2列の締付位置に対応させることが可能となっており、その汎用性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実開平2-15229号公報
【文献】実開昭56-42829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の可変ピッチ多軸締付装置51および多軸式空気工具71のピッチ変換装置72にあっては、何れも組立てる製品が変更になって締付位置が変更されても、これに対応して各装置が持つソケット61や空気工具74a,74bを移動させて、新たな締付位置に対応して位置決めすることができる。しかしながら、可変ピッチ多軸締付装置51にあっては締付サイクルごとにガイドピン62とガイドプレート枠63のプレート部63aとが接触を繰り返す。そのため、ガイトピン62やプレート部63aに設けられたガイド孔63bの周囲が摩耗し、当該装置の使用頻度が増すにつれて、位置決め精度が低くなるという問題が生じている。また、この可変ピッチ多軸締付装置51ではソケット61の数に対応してガイドプレート枠63を増設しなければならず、装置が高価となってしまうという問題が生じている。さらに、この可変ピッチ多軸締付装置51では組立てられる製品が変更され、締付位置が各プレート部63aの嵌合孔63bにより決まる4個の締付位置以外になる場合には、各ソケット61に対応して増設されたガイドプレート枠63すべてを取り換えねばならず、その取り換え作業に要する時間が工具の個数に応じて増大し、汎用性が限定されるという問題が生じている。
【0012】
また、前述の多軸式空気工具71のピッチ変換装置72の場合には、締付位置の変更はピッチ変換板76の摺動方向に限定されるばかりか、組立てられる製品の変更により締付位置を前述の2種類の配列以外の締付位置に変更する場合には、当該ピッチ変換装置自体を分解して、上基板、下基板73およびピッチ変換板76を取り換えねばならず、その取り換え作業が面倒で、かつ長時間を要し、汎用性が限定的となるという問題が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記問題をすべて解決するために発明されたもので、所定作業を行う工具を昇降自在に案内する案内部材、当該案内部材に向かって拡開されるガイド部と当該ガイド部に連通し、かつ案内部材に当接してこれを所定作業位置に対応させる位置決め凹部とが直接または間接的に配置される位置設定治具、前記案内部材を二次元方向に移動可能に保持し、かつこれを前記位置設定治具のガイド部に押付ける付勢手段からなることを特徴としている。
【0014】
前述の構成によれば、付勢手段の作動により案内部材が位置設定治具に配置されるガイド部に押付けられるので、案内部材がガイド部の壁面に当接する。この時、案内部材にはガイド部の壁面に沿って滑る方向の力が生じるので、案内部材にはガイド部の壁面から付勢手段の押付け方向と交差する方向の分力が生じる。この分力により、二次元方向に可動に保持される案内部材が付勢手段の押付け方向と交差する方向に移動することができる。そのため、前記案内部材が付勢手段の押付け方向に移動し続けると、ガイド部の壁面を倣いながら位置決め凹部に向かい、これに嵌合する。これにより、案内部材に案内される工具が位置決め凹部により決まる作業位置に位置決めされる。この位置決めに際して、案内部材と位置決め凹部の壁面とは一定の位置で接触状態を保っているので、所定作業が繰り返し行われても、案内部材、位置決め凹部の縁部の何れも摩耗することは皆無となり、位置決め精度が低下することも皆無となる。
【0015】
また、作業位置が変更になっても、工具側を分解する必要がなく、作業位置に対応する位置決め凹部が配置された位置設定治具を取り換えるだけの簡単な作業で済み、その取り換え作業も短時間となるばかりか、作業位置の設定が二次元方向で可能で、かつ汎用性の高い工具位置決め装置を提供できる。しかも、付勢手段に保持される工具が複数個となっても、これら工具に対応する複数個の位置決め凹部を1枚の位置設定治具に配置するだけでよい。これにより、工具の作業位置の変更に際しては、工具の個数に関係なく、1枚の位置設定治具を取り換えるだけでよく、安価な装置で可能となるばかりか、その取り換え作業を短時間で行うことができる。
【0016】
本発明に係る付勢手段は、案内部材が取付けられる案内部材保持具、当該案内部材保持具を位置設定治具のガイド部に向かう方向に押付けるエアシリンダおよび当該方向と交差する方向に案内部材保持具またはエアシリンダを移動可能に保持するスライドテーブルからなる構成であることが望ましい。この構成によれば、エアシリンダの通電時には、案内部材保持具に保持される案内部材が位置設定治具の位置決め凹部に押付けられて位置決めされる。また、エアシリンダへの通電が停止すると、案内部材保持具がフリーな状態となり、これに保持される案内部材および工具を作業位置の上方から取り除くことができ、位置設定治具の取り換え作業を円滑に行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る位置設定治具は案内部材を位置決めする時の工具の傾きを小さくするため、位置決め凹部の縁部が案内部材保持具の保持個所近くで案内部材に当接するように配置されることが望ましい。
【0018】
さらに、本発明に係る案内部材は工具の位置決めを円滑に行うとともに工具の位置を保持できるようにするため、工具を昇降自在に案内する案内パイプであって、前記位置設定治具の位置決め凹部はU形状をなすことが望ましい。
【0019】
しかも、本発明に係る工具は複数個設けられることが望ましい。この場合、工具および当該工具を保持する付勢手段が複数個となっても、これら工具に対応する複数個の位置決め凹部が配置される位置設定治具が1枚あればよい。そのため、複数の作業位置の変更があっても、当該作業位置に対応する位置決め凹部が配置される位置設定治具を1枚取り換えるだけでよく、工具の個数の増加に関係なく、1個の工具の場合と変わりなく一定の時間で取り換え作業を行うことができるばかりか、安価な装置を提供することができる。
【0020】
その他に、本発明に係る位置設定治具は少なくとも2個の腕部を有し、当該腕部の少なくとも対向する2個に当該腕部から離脱可能に取付けられる支持具により支持されることが望ましい。当該位置設定治具によれば、作業位置に対応する位置決め凹部を複数個の工具それぞれに対応して配置できるばかりか、位置設定治具の着脱も腕部から支持具を離脱させるだけでよく、極めて簡単な作業で済み、その取り換え作業を短時間で行うことができる。
【0021】
また、本発明に係る位置設定治具は工具に当たらない位置で放射状に延びる3個以上の腕部を持ち、かつ当該位置設定治具は少なくとも2個の腕部で治具取付ブロックと支持具とにより所定の位置でその姿勢を水平に保持され、他の腕部の少なくとも一つで位置決め用ブロックと嵌合部材とによりその姿勢が保持される構成であることが望ましい。当該位置設定治具によれば、前述の位置設定治具の効果に加え、位置設定治具の着脱に際して、支持具を離脱させれば、位置設定治具がその重みで嵌合部材とともに抜け落ちることができ、位置設定治具の着脱をより簡単に行うことができる構成でありながら、位置設定治具を安定した姿勢に保持した状態で所定の作業を行うことができる。
【0022】
その上に、本発明に係る位置設定治具は工具に当たらない位置で放射状に延びる3個以上の腕部を持ち、かつ当該位置設定治具は少なくとも2個の腕部で治具取付ブロックと支持具により所定の位置でその姿勢を水平に保持され、他の腕部で治具取付ブロックと支持具とによりその姿勢が保持される構成であることが望ましい。この構成によれば、位置設定治具の安定姿勢を治具取付ブロックと支持具とで保っているので、位置設定治具の着脱に際して、支持具を離脱させれば、位置設定治具がその重みで抜け落ちることができ、位置設定治具の取り換えをより簡単に行うことができる。
【0023】
本発明のもう一つは、昇降駆動源により昇降自在な昇降台に保持されて所定の作業を行う締付工具、締付工具を昇降自在に案内する案内部材、前記締付工具に向かって拡開されるガイド部と当該ガイド部に連通し、かつ案内部材に当接してこれを所定作業位置に対応させる位置決め凹部とが直接または間接的に配置される位置設定治具、前記案内部材を二次元方向に移動可能に保持し、かつこれを前記位置設定治具のガイド部に押付ける付勢手段からなる工具位置決め装置を備える自動締結機であることを特徴としている。
【0024】
この構成によれば、付勢手段が作動すると案内部材が位置設定治具に配置されるガイド部に押付けられるので、案内部材がガイド部の壁面に当接する。この時、案内部材にはガイド部の壁面に沿って滑る方向の力が生じるので、案内部材にはガイド部の壁面から付勢手段の押付け方向と交差する方向の分力が生じる。この分力により、二次元方向に移動可能に保持される案内部材が付勢手段の押付け方向と交差する方向に移動することができる。そのため、案内部材がガイド部の壁面を倣いながら位置決め凹部に向かって移動し、これに嵌合する。これにより、案内部材に案内される締付工具が位置決め凹部により決まる所定締付位置に位置決めされ、以後この状態で締付作業を繰り返し行うことができる。
【0025】
前述の位置決めに際して、案内部材と位置決め凹部の縁部とは、作業中は一定の位置で接触状態を保っているので、作業が繰り返し行われても、案内部材、位置決め凹部の縁部の何れも摩耗することは皆無となる。また、締付工具が複数個配置されても、それぞれ対応する位置決め凹部が配置される位置設定治具に取り換えるだけでよく、簡単、かつ短時間で取り換え作業を行うことができ、安価で汎用性に高い部品自動締結機を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明した本発明によれば、所定の作業を行う工具が当接するガイド部と所定作業位置に対応する位置決め凹部とを有する位置設定治具に当該工具を押付け、これをガイド部により位置決め凹部に誘導して位置決めを行うことができるばかりか、当該位置設定治具を取り換えるだけで、新たな作業位置を持つ締付対象のワークに対応することができる工具位置決め装置および同装置を備える自動部品締結機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る工具位置決め装置の要部を説明する概略図。
【
図2】本発明の実施形態に係る多軸ボルト締め機を説明する全体図。
【
図6】本発明の実施形態に係る位置設定治具の拡大平面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る付勢手段の一部を切欠いた要部断面図。
【
図8】本発明の実施形態に係る付勢手段の作動前(a)、作動後(b)の状態を説明する動作説明図。
【
図9】本発明の実施形態に係る付勢手段による工具位置決め動作の説明図。
【
図10】本発明の実施形態に係る自動部品締結機を構成する4個のチャックユニットの配置と、当該チャックユニット内を挿通する駆動ビットの位置決め範囲との説明図。
【
図11】本発明の実施形態に係る締付対象のワークの種類に応じてあらかじめ用意される位置設定治具の拡大平面図。
【
図12】本発明の実施形態に係る締付対象のワークの種類に応じてあらかじめ用意されるもう一つの位置設定治具の拡大平面図。
【
図13】従来の可変ピッチ多軸締付装置の一部を切欠いた要部断面図。
【
図14】従来の多軸式空気工具のピッチ変換装置の要部構造(a)および下基板の嵌合孔(b)並びにピッチ変換板の嵌合孔(c)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る工具位置決め装置を当該装置が付設される作業機の一例の自動締結機、特に複数個のボルトを同時に締付ける多軸ボルト締め機(以下、本ボルト締め機という)について、図面に基づき説明する。本ボルト締め機1は、
図2に示すように基台2に直立して固定される取付フレーム3を有し、この取付フレーム3にはその直立方向と平行に延びる2本のガイドロッド4,4が並列に設けられている。これらガイドロッド4,4には、それぞれに沿って摺動する摺動スリーブ5,5を介して昇降台6が昇降可能に取付けられている。また、前記取付フレーム3にはその直立方向と平行に昇降駆動源の一例である昇降シリンダ7が取付けられており、この昇降シリンダ7のロッド7aが前記昇降台6に連結されている。これにより、昇降台6はガイドロッド4,4に沿って昇降シリンダ7の所定ストローク分往復移動することができる。
【0029】
前記昇降台6には、水平方向に延びる上板8が一体に固定されており、この上板8には一定間隔をおいて併置される2個の回転駆動源のモータ9,9が並列に配置されている。これら4個のモータ9はそれぞれ減速部9aを有しており、その出力軸9bは前記上板8から下方に突出するように配置されている。また、これら4個の出力軸9bのそれぞれには、2個のユニバーサルジョイント10a,10aと、これらの間で下側のユニバーサルジョイン10aをコイルばね10bにより付勢しながら収縮可能に連結する連結機構10cと、下側のユニバーサルジョイント10aに連接される連接軸10dとを介して、駆動ビット11が連結されている(
図7参照)。これにより、駆動ビット11は常時下方に付勢され、一定の推力を持つ構成となっている。前記駆動ビット11は、ボルト締付用に限定されるものではなく、図示はしないが、ねじ締付用のドライバビットであっても、また吸着機能を持つナット締付用ビットであってもよい。
【0030】
前記取付フレーム3には、
図2および
図3に示すように2個の取付具3a,3aを介して昇降台6および上板8の下方に位置するように下板12が固定されている。この下板12は、前記上板8と所定間隔をおいて平行に延びており、前述の4本の連接軸10dに対応する位置に当該連接軸10dが挿通して水平方向に移動可能な空隙12aが削設されている。この空隙12aにより、連接軸10dは後記する工具位置決め装置13の作動により支障なく移動できる。なお、前記下板12は取付フレーム3に沿って昇降可能に配置されてもよく、この場合には下板12は上板8と一体に下降し、所定位置で停止するように構成すればよい。
【0031】
前記下板12の下面側には、
図3および
図7に示すように本発明の要部である工具位置決め装置13と、ボルトpが締付けられる締付対象のワーク(図示せず)を押さえる昇降自在なワーク押え(図示せず)とが取付けられている。前記工具位置決め装置13は、前述の4個の連接軸10dそれぞれに対して配置されており、しかもこれら連接軸10dに囲まれる区域内の中心方向に向かって後記案内パイプ21を位置決め可能に構成されている。
【0032】
これら工具位置決め装置13は、何れも同一構造をなしており、以下1個の工具位置決め装置について説明する。この工具位置決め装置13は、
図1および
図7に示すように下板12に配置される付勢手段14と、位置設定治具29とから構成されている。前記付勢手段14はエアシリンダの一例のガイドシリンダ15を有し、このガイドシリンダ15は下面側に全長にわたって延びるガイド条15aaを有するシリンダ本体15aと、当該ガイド条15aaに嵌合しかつこれに沿って移動するスライダ部15bと、シリンダ本体15a内のピストン(図示せず)に連結され、かつ下板12に沿って伸縮する2本のロッド15cとからなっている。また、このガイドシリンダ15のスライダ部15bには前記ロッド15cを一体に連結する連結板15dが直交するように固定されており、ガイドシリンダ15のロッド15cが伸縮するにともなって、スライダ部15bが前進後退するように構成されている。前記ガイドシリンダ15は、図示はしないが、スライダ部15bを下板12に沿って前進後退可能に取付けることにより、これに連結される1本のロッドを備えるシリンダ(図示せず)あるいは当該スライダ部15bを常時付勢するばね(図示せず)に代えることができる。
【0033】
前記スライダ部15bの下面には、
図1および
図7に示すようにテーブル台16が固定されており、このテーブル台16にはスライダ部15bの移動方向と交差する方向に摺動可能な摺動部17aを有するスライドテーブル17が固定されている。このスライドテーブル17の摺動部17aには、前記テーブル台16と平行に延びる保持具取付台18が固定されており、この保持具取付台18の端部近くにはテーブル台16の下面側に植設されたガイドピン19を案内する案内溝18aが削設されている。この案内溝18aは、スライドテーブル17の摺動部17aの移動方向と平行に延び、かつその移動距離に対応する長さを有している。これにより、当該保持具取付台18がスライドテーブル17の摺動部17aとともに移動する際、揺動せずに円滑に移動できる。前記スライドテーブル17は、ガイドシリンダ15のスライダ部15bと一体に前進後退するように構成されているが、スライドテーブル17を下板12に取付けて、スライドテーブル17の摺動部17aにガイドシリンダ15を取付けてもよい。
【0034】
前記保持具取付台18には、案内部材保持具20がその延びる方向に突出して固定されており、この案内部材保持具20には案内部材の一例の案内パイプ21が直立した姿勢に保持されて取付けられている。これにより、案内パイプ21を前記ガイドシリンダ15の前進動作にともなってその前進方向と、スライドテーブル17の摺動部17aの移動方向との二次元方向に移動可能に保持する付勢手段14が構成される。なお、前記案内部材は外形が円形の案内パイプ21で説明されているが、外形が矩形またはその他の形状であってもよく、この場合には後記位置決め凹部30bをその外形に対応する形状にしておけばよい。
【0035】
前記案内パイプ21の上端は、
図2および
図7に示すように前述の下板12に削設された空隙12aを通って上方に突出しており、本ボルト締め機1の電源投入前、すなわちガイドシリンダ15の通電停止時には、モータ9の出力軸9bと駆動ビット11に連接される連接軸10dとの間に配置された連結機構10cのコイルばね10bの作用により、これらが一直線となり、空隙12aの縁部近くに位置している(
図3参照)。また、この案内パイプ21には前記駆動ビット11とこれに連接される連接軸10dの一部とが回転自在、かつ昇降自在に配置されている。さらに、この案内パイプ21は水平方向に移動する方向の力を受けると、前述の2個のユニバーサルジョイント10aと連結機構10cとの作用により連接軸10dおよび駆動ビット11を上昇させる。これと同時に、案内パイプ21は水平方向に移動することができ、案内パイプ21に案内される駆動ビット11の締付位置を変更できる。
【0036】
前記案内パイプ21の上端には、通過検出センサ22が配置されており、前記連接軸10dの上部に取付けられた検出用ドグ22aの通過を検出して連接軸10dに連接される駆動ビット11の下限位置を検出するように構成されている。なお、前記付勢手段14は、通過検出センサ22の配置に支障のない範囲で、下板12の上面側に取付けられてもよい。この場合には、後記チャックユニット23は下板12の近くに取付け可能となり、本ボルト締め機1の全長を短くすることができる。
【0037】
前記案内パイプ21の下端には、開閉自在な一対のチャック爪23aを有するチャックユニット23が連接されており、当該チャック爪23a上に部品供給装置(図示せず)からエア給送されるボルトpを駆動ビット11の下方に位置させる構成となっている。このチャックユニット23は、前記駆動ビット11が貫通する際に、チャック爪23aを押し開き、チャック爪23aに保持されるボルトpをチャックユニット23から下方に押出すように構成されている。また、このチャックユニット23はその厚みにも拘らず、4個の案内パイプ21に案内される駆動ビット11を最小間隔で配置できるようにこれらに囲まれる区域の中心付近から放射状に延びるように配置されている(
図10参照)。さらに、このチャックユニット23は前述のモータ9の回転を受けて回転する連接軸10dおよび駆動ビット11並びにこれらを案内する案内パイプ21とともに、単軸の締付工具を構成しており(
図2参照)、本ボルト締め機1はこの単軸の締付工具を4台備える構成となっている。なお、前記チャックユニット23のチャック爪23aは、図示はしないが、ボルトpのエア給送時および駆動ビット11がボルトpに嵌合する時に開放されないようにチャック爪閉止手段により閉止され、駆動ビット11が通過する時に開放される構成としてもよい。
【0038】
また、本発明の要部の工具位置決め装置に係る位置設定治具29は、
図1、
図4および
図5に示すように下板12の下面に対向して取付けられる治具取付ブロック24,24およびこれらと交差して対向して取付けられる位置決め用ブロック27,27の下面に当接して配置されている。これら治具取付ブロック24,24および位置決め用ブロック27,27は、何れも前記付勢手段14に当接しない位置で、下板12から垂下するように固定されている。前記治具取付ブロック24,24それぞれには、支持具取付金具25,25を介して支持具の一例のプランジャ26,26が取付けられており、対向するプランジャ26に向かって常時は支持具取付金具25から突出する支持部26a,26aを有している。また、これら支持部26a,26aは支持具取付金具25内の後退位置で停止可能に構成されており、位置設定治具29をこれら支持部26a,26aにより両側から水平姿勢に保持するとともに、位置設定治具29から離脱可能な構成となっている。
【0039】
前記位置設定治具29を水平に保持する位置決め用ブロック27、27は、六角柱に形成されており、その下端にはそれぞれ所定深さの嵌合孔27a,27aが設けられている(以下、1個の嵌合穴について説明する)。前記嵌合孔27aには、後記位置決めブッシュ29bが抜け落ち可能に嵌合しており、当該位置決めブッシュ29の落下を防止するために嵌合孔27aには位置決め用ブロック27の側面に取付けられた止ねじ28が突出可能に設けられている。
【0040】
また、前記位置設定治具29は、
図4、
図5および
図6に示すように隣接する2個の案内パイプ21,21間で放射状に延びる4個の腕部29aと、当該腕部29aの隣接する2個に跨ってそれぞれ取付けられるカム部材30とからなっている。前記位置設定治具29の腕部29aの対向する2個は、治具取付ブロック24,24の下面に当接する部分となっており、これら腕部29aの下面は一部削り取られ、この部分に前記プランジャ26の支持部26aが位置する構成となっている。
【0041】
前記腕部29a中、他の対向する2個は位置決め用ブロック27,27の下面に当接する部分となっており、これら腕部29aの位置決め用ブロック27,27に対応する位置には嵌合部材の一例の位置決めブッシュ29b,29bが植設されている。この構成により、当該腕部29aが位置決め用ブロック27の下面に当接する際には、位置決めブッシュ29bが位置決め用ブロック27の嵌合孔27aに嵌合し、位置設定治具29の姿勢が保持されている。なお、前記位置決め用ブロック27を、すべて治具取付ブロック24として位置設定治具29を4個のプランジャ26で保持してもよく、また腕部29aの一つに位置決めブッシュ29bを植設するだけとしてもよい。さらに、前記位置設定治具29の腕部29aは4個に限定されるものではなく、駆動ビット11の個数に応じて、駆動ビット11に当接しない範囲の2個以上であればよい。この場合、位置設定治具29を保持するプランジャ26の個数も、同様に駆動ビット11に当接しない範囲の2個以上であってもよい。
【0042】
前記カム部材30は、それぞれ前述の案内パイプ21に対応して位置し、それぞれ案内パイプ21に向かって拡開されるガイド部30aとこれに連通し、かつ案内パイプ21を位置決めする位置決め凹部30bとを有している。前記ガイド部30aは、その壁面が前記案内部材保持具20の保持個所近くで案内パイプ21に当接するように位置設定治具29の高さが設定されており(
図8(b)参照)、案内パイプ21がガイド部30aの縁部に押付けられる時に、その傾きが小さくなるように構成されている。
【0043】
前記ガイド部30aの壁面は、案内パイプ21が当接する時には案内パイプ21を位置決め凹部30bに誘導できるように案内パイプ21の前進方向に対して傾斜するように形成されている。また、前記位置決め凹部30bの壁面の縁部は案内パイプ21を位置決め後も確実に保持できるようにU字状に形成されており、これら位置決め凹部30bの中心、すなわち円弧状縁部の中心までの距離は各駆動ビット11の所定締付位置に対応するように設定されている。これにより、案内パイプ21は二次元方向に移動可能な付勢手段14の作用で、ガイド部30aの壁面への押付け方向と、当該ガイド部30aの壁面に誘導されて生じる押付け方向と交差する方向とでなる二次元方向に移動できる。そのため、前記4個の案内パイプ21で囲まれる区域内であって隣接する2個の腕部29a間で、
図10に示す位置決め範囲(斜線部参照)での設定が可能となっている。なお、前記ガイド部30aおよび位置決め凹部30bは、カム部材30を介して位置設定治具29に間接的に設けられているが、直接位置設定治具29の隣接する二つの腕部29a間の形状を変更して、この部分に設けるようにしてもよい。また、これらガイド部30aおよび位置決め凹部30bが配置された位置設定治具29は、付勢手段14を下板12の上面に取付けるようにすれば、下板12の上面または下面に直接取付けることができる。
【0044】
上記本ボルト締め機において、
図8(a)に示すように電源投入前には案内パイプ21および駆動ビット11はカム部材30から離れ、下板12に設けられた空隙12aの縁部近くに位置している。この状態から、電源投入と同時に、各付勢手段14のガイドシリンダ15が通電され、
図8(b)に示すようにガイドシリンダ15が前進動作して、そのロッド15cとともにスライダ部15bが前進する。
【0045】
これにともなって、スライドテーブル17およびその摺動部17aに取付けられた保持具取付台18および案内部材保持具20が同方向に前進する。この時、
図9に示すように案内パイプ21は位置設定治具29に取付けられたカム部材30のガイド部30aの壁面に押付けられる方向に前進し、ガイド部30aの壁面に当接する。このガイド部30aの壁面は、案内パイプ21を位置決め凹部30bに誘導するように案内パイプ21の前進方向に対して傾斜しているので、案内パイプ21にはガイド部30aの壁面に沿って滑る方向の力が生じる。これにより、ガイドシリンダ15の前進方向と交差する方向の分力が生じ、この分力によりスライドテーブル17の摺動部17aがその分力の方向に摺動する。そのため、案内パイプ21はガイドシリンダ15の前進動作にともなって、ガイド部30aの壁面を倣いながら位置決め凹部30bに向かい、これに嵌合する。この嵌合により、案内パイプ21、連接軸10dおよび駆動ビット11が位置決め凹部30bにより決まる締付位置に位置決めされる。この位置決めに際して、案内パイプ21が位置決め凹部30bの壁面の縁部に押付けられて一定の位置で接触状態を保っているだけであるので、所定締付作業が繰り返し行われても、案内パイプ21、位置決め凹部30bの縁部の何れも摩耗することは皆無となる。
【0046】
この状態で、各駆動ビット11に対応する締付位置を持つワークが所定位置に供給され、ワーク押さえにより固定されると、昇降シリンダ7が駆動され、そのロッド7aに連結された昇降台6とともに上板8が下降する(
図2参照)。これにともなって、モータ9の回転を受けて回転する連接軸10dおよび駆動ビット11が下降するので、駆動ビット11はチャックユニット23内を回転しながら下降する。この駆動ビット11は、チャックユニット23内を通過する際に、一対のチャック爪23aに保持されるボルトpの頭部に嵌合し、当該ボルトpをチャックユニット23から押し出し、これを所定締付位置で締付けることができる。
【0047】
また、ワークが変更されて締付位置が変更になった場合には、本ボルト締め機1の電源が遮断され、工具位置決め装置13のガイドシリンダ15の通電が停止されて、ガイドシリンダ15がフリーの状態となる。この時、案内パイプ21に案内されている駆動ビット11はモータ9との間に設けられた連結機構10cのコイルばね10bの復元力により、伸長状態になる(
図2参照)。これにともなって、連結機構10cに連接される連接軸10dおよび駆動ビット11がモータ9の出力軸9bと一直線なる方向の力を受けるので、この力で案内部材保持具20がスライドテーブル17の摺動部17aおよびガイドシリンダ15のロッド15cを本ボルト締め機1の電源投入前の状態(
図8(a)参照)に復帰させる。これにより、位置設定治具29の下方から案内部材保持具20が案内パイプ21とともに取り除かれる。なお、締付位置が変更になった際、ガイドシリンダ15が後退動作することにより、ロッド15cを本ボルト締め機1の電源投入前の状態(
図8(a)参照)に復帰させる構成であってもよい。
【0048】
その後、治具取付ブロック24に取付けられたプランジャ26の支持部26aが位置設定治具29の腕部29aから離脱すると(
図1および
図4参照)、位置設定治具29の重みで腕部29aの位置決めブッシュ29bが位置決め用ブロック27から抜け落ちるので(
図1および
図4参照)、これを手で保持して下方から取外し、新たな位置設定治具29に取り換えることができる。
【0049】
なお、本ボルト締め機1での締付作業開始前に、ワークの種類に応じた締付位置に対応する位置決め凹部30bを有するカム部材30を備える複数個の位置設定治具29,29(
図11および
図12参照)を別に用意しておき、ワークの種類が変更になる毎に、これら位置設定治具29,29からワークの種類に対応するものを取出し、これに取り換えることにより、極めて迅速、かつ簡単な作業でワークに応じた新たな締付位置に案内パイプ21および連接軸10dを位置決めすることができる。
【0050】
以上説明したように、本発明は所定作業を行う駆動ビット11を昇降自在に案内する案内パイプ21、当該案内パイプ21に向かって拡開されるガイド部30aとこれに連通し、かつ案内パイプ21に当接してこれを所定作業位置に対応させる位置決め凹部30bとが直接または間接的に配置される位置設定治具29、前記案内パイプ21を二次元方向に移動可能に保持し、かつこれを前記位置設定治具29のガイド部30aに押付けるガイドシリンダ15からなることを特徴としている。
【0051】
本発明は、上記構成により、ガイドシリンダ15の作動により案内パイプ21が位置設定治具29に配置されるガイド部30aに押付けられるので、案内パイプ21がガイド部30aの壁面に当接する。この時、案内パイプ21にはガイド部30aの壁面に沿って滑る方向の力が生じるので、案内パイプ21にはガイド部30aの壁面からガイドシリンダ15の押付け方向と交差する方向の分力が生じる。この分力により、二次元方向に移動可能に保持される案内パイプ21がガイドシリンダ15の押付け方向と交差する方向に移動することができる。そのため、前記案内パイプ21がガイドシリンダ15の押付け方向に移動し続けると、ガイド部30aの壁面を倣いながら位置決め凹部30bに向かい、これに嵌合する。これにより、案内パイプ21に案内される駆動ビット11が位置決め凹部30bにより決まる締付位置に位置決めされる。この位置決めに際して、案内パイプ21と位置決め凹部30bの壁面とは一定の位置で接触状態を保っているので、所定締付作業が繰り返し行われても、案内パイプ21、位置決め凹部30bの縁部の何れも摩耗することは皆無となり、位置決め精度が低下することも皆無となる。
【0052】
また、上記構成によれば、締付位置が変更になっても、締付工具側を分解する必要がなく、締付位置に対応する位置決め凹部30bが配置された位置設定治具29を取り換えるだけの簡単な作業で済み、その取り換え作業も短時間となるばかりか、二次元方向の締付位置の設定が可能で、締付位置の設定に制限を受けることがない汎用性の高い工具位置決め装置13を提供できる。しかも、駆動ビットが複数個となっても、これら駆動ビットに対応する複数個の位置決め凹部30bを1枚の位置設定治具29に配置するだけでよい。これにより、駆動ビット11の締付位置の変更に際しては、駆動ビット11の個数に関係なく、1枚の位置設定治具29を取り換えるだけでよく、安価な装置で可能となるばかりか、その取り換え作業を短時間で行うことができる。
【0053】
本発明に係る付勢手段14は、案内パイプ21が取付けられる案内部材保持具20、当該案内部材保持具20を位置設定治具29のガイド部30aに向かう方向に押付けるガイドシリンダ15および当該方向と交差する方向に案内部材保持具20またはガイドシリンダ15を移動可能に保持するスライドテーブル17からなる構成であってもよい。この場合、ガイドシリンダ15の通電時には、案内部材保持具20が位置設定治具29の位置決め凹部30bに押付けられて位置決めされる。また、ガイドシリンダ15への通電が停止すると、案内部材保持具20がフリーな状態となり、これに保持される案内パイプ21および駆動ビット11を締付位置の上方から取り除くことができ、位置設定治具29の取り換え作業を円滑に行うことができる。
【0054】
本発明に係る位置設定治具29は、位置決め凹部30bの縁部が案内部材保持具20の保持個所近くで案内パイプ21に当接するように配置されてもよい。これにより、案内パイプ21を位置決めする時の駆動ビット11の傾きが小さくなり、駆動ビット11の正確な位置決めができる。
【0055】
本発明に係る案内部材は駆動ビット11を昇降自在に案内する案内パイプ21であって、前記位置設定治具29の位置決め凹部30bはU形状をなす構成であってもよい。この構成により、駆動ビット11の位置決めを円滑に行うとともに、駆動ビット11の位置を保持することができる。
【0056】
本発明に係る駆動ビット11は、複数個設けられてもよい。この場合、駆動ビット11およびこれを保持する付勢手段14が複数個となっても、これら駆動ビット11に対応する複数個の位置決め凹部30bが配置される位置設定治具29が1枚あればよい。そのため、複数の締付位置の変更があっても、当該締付位置に対応する位置決め凹部30bが配置される位置設定治具29を1枚取り換えるだけでよく、駆動ビット11の個数の増加に関係なく、1個の駆動ビット11の場合と変わりなく一定の時間で取り換え作業を行うことができ、しかも安価な装置を提供することができる。
【0057】
本発明に係る位置設定治具29は少なくとも2個の腕部29aを有し、当該腕部29aの少なくとも対向する2個に当該腕部29aから離脱可能に取付けられるプランジャ26の支持部26aにより支持される構成であってもよい。この構成によれば、締付位置に対応する位置決め凹部30bを複数個の駆動ビット11それぞれに対応して配置できるばかりか、位置設定治具29の着脱も腕部29aからプランジャ26の支持部26aを離脱させるだけでよく、極めて簡単な作業で済み、その取り換え作業を短時間で行うことができる。
できる。
【0058】
また、本発明に係る位置設定治具29は駆動ビット11に当たらない位置で放射状に延びる3個以上の腕部29aを持ち、かつ当該位置設定治具29は少なくとも2個の腕部29aで治具取付ブロック24とプランジャ26とにより所定の位置でその姿勢を水平に保持され、他の腕部29aの少なくとも一つで位置決め用ブロック27と位置決めブッシュ29bとによりその姿勢が保持される構成であってもよい。当該位置設定治具29によれば、前述の位置設定治具29の効果に加え、位置設定治具29の着脱に際して、プランジャ26を離脱させれば、位置設定治具29がその重みで位置決めブッシュ29bとともに抜け落ちることができ、位置設定治具29の着脱をより簡単に行うことができる構成でありながら、位置設定治具29を安定した姿勢に保持した状態で所定の作業を行うことができる。
【0059】
さらに、本発明に係る位置設定治具29は駆動ビット11に当たらない位置で放射状に延びる3個以上の腕部29aを持ち、かつ当該位置設定治具29は少なくとも2個の腕部29aで治具取付ブロック24とプランジャ26とにより所定の位置でその姿勢を水平に保持され、他の腕部29aで治具取付ブロック24とプランジャ26とによりその姿勢が保持される構成であってもよい。この構成によれば、位置設定治具29の安定姿勢を治具取付ブロック24とプランジャ26とで保っているので、位置設定治具29の着脱に際して、プランジャ26の支持部26aを離脱させれば、位置設定治具29がその重みで抜け落ちることができ、位置設定治具の取り換えをより簡単に行うことができる。
【0060】
本発明のもう一つは、昇降シリンダ7により昇降自在な昇降台6に保持されて所定の締付作業を行う駆動ビット11、駆動ビット11を昇降自在に案内する案内パイプ21、前記駆動ビット11に向かって拡開されるガイド部30aと当該ガイド部30aに連通し、かつ案内パイプ21に当接してこれを所定締付位置に対応させる位置決め凹部30bとが直接または間接的に配置される位置設定治具29、前記案内パイプ21を二次元方向に移動可能に保持し、かつこれを前記位置設定治具29のガイド部30aに押付けるガイドシリンダ15からなる工具位置決め装置13を備える自動部品締結機であることを特徴としている。
【0061】
この構成によれば、ガイドシリンダ15が作動すると案内パイプ21が位置設定治具29に配置されるガイド部30aに押付けられるので、ガイド部30aの壁面に当接する。この時、案内パイプ21にはガイド部30aの壁面に沿って滑る方向の力が生じるので、案内パイプ21にはガイド部30aの壁面からガイドシリンダ15の押付け方向と交差する方向の分力が生じる。この分力により、二次元方向に移動可能に保持される案内パイプ21がガイドシリンダ15の押付け方向と交差する方向に移動することができる。そのため、案内パイプ21がガイド部30aの壁面を倣いながら位置決め凹部30bに向かって移動し、これに嵌合する。これにより、案内パイプ21に案内される駆動ビット11が位置決め凹部30bにより決まる所定締付位置に位置決めされるので、以後この状態で締付作業を繰り返し行うことができる。
【0062】
この位置決めに際して、案内パイプ21と位置決め凹部30bの縁部とは、作業中は一定の位置で接触状態を保っているので、締付作業が繰り返し行われても、案内パイプ21、位置決め凹部30bの縁部の何れも摩耗することは皆無となる。また、駆動ビット11が複数個配置されても、それぞれ対応する位置決め凹部30bが配置された位置設定治具29に取り換えるだけでよく、簡単、かつ短時間で取り換え作業を行うことができ、安価で汎用性の高い部品自動締結機を提供することができる。
【0063】
なお、本発明の実施形態に係る自動部品締結機は多軸ボルト締め機について説明されているが、リベットをかしめるステムが複数個配置された多軸のリベットかしめ機、あるいは部品を挿入する圧入工具が複数個配置された部品挿入機であってもよい。また、本発明に係る工具位置決め装置は工具のみを所定位置に移動させる構成に限定されているが、単軸のボルト締め機、リベットかしめ機、部品挿入機を位置決めするようにしてもよい。その他、本発明の各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…多軸ボルト締め機、
6…昇降台、
7…昇降シリンダ、
11…駆動ビット、
13…工具位置決め装置、
14…付勢手段、
15…ガイドシリンダ、
17…スライドテーブル、
20…案内部材保持具、
21…案内パイプ、
26…プランジャ、
29…位置設定治具、
29a…腕部、
29b…位置決めブッシュ、
30…カム部材、
30a…ガイド部、
30b…位置決め凹部、