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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
B65D81/38 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020063598
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160752
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000152930
【氏名又は名称】株式会社日本デキシー
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】才高 聖士
(72)【発明者】
【氏名】関口 徹
(72)【発明者】
【氏名】一條 義法
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇広
(72)【発明者】
【氏名】永田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 朋彦
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-025007(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02647586(EP,A1)
【文献】特開2004-315065(JP,A)
【文献】特開2019-023098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
B65D 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向けて開口し、上領域と前記上領域の下方に位置する下領域とを有して形成された筒状の胴体部を有する外容器と、
前記上領域に係合する係合部と、前記上領域と対向する上側壁部と、前記上側壁部の下方に位置し、前記下領域と対向する下側壁部と、を有し、前記外容器の内側に配置された内容器と、
前記外容器の上端部と前記内容器との間に設けられる上部空間層と、前記外容器の前記胴体部と前記内容器との間に設けられる側部空間層と、を含む空間層と、
を備え、
前記係合部は、前記内容器の前記開口側に位置するつば先端部を有し、
前記つば先端部は、前記内容器の内側を向いており、
前記内容器は、前記上側壁部と前記下側壁部との間に周接部を有し、
前記周接部は、前記外容器に当接し、
前記側部空間層は、
前記周接部より上方に位置し、前記胴体部の前記上領域と前記上側壁部との間に設けられる第一層と、
前記周接部より下方に位置し、前記胴体部の前記下領域と前記下側壁部との間に設けられる第二層と、
を有し、
前記係合部は、前記上側壁部よりも上方において、開口面に沿う平坦部を有し、
前記上側壁部は、上方から下方へ向かうにつれて直径が漸次大きくなり、
前記上部空間層は、前記平坦部の下方に設けられ、
前記上部空間層と前記側部空間層の前記第一層とは連通している、
ことを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器であって、
前記周接部は、前記内容器の高さ方向における中央部よりも前記上領域側に設けられ、
前記第二層の大きさは、前記第一層の大きさより大きいことを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の容器であって、
前記外容器は、前記上領域の上端に前記係合部と係合されるとともに前記外容器の周縁部に沿って中心軸を有するカール部を有し、
前記係合部により前記外容器と前記内容器とが係合される前の状態において、前記係合部と前記周接部とで前記外容器の前記カール部を挟み込むことを特徴とする容器。
【請求項4】
請求項3に記載の容器であって、
前記外容器と前記内容器とが係合された状態において、
前記つば先端部は、前記カール部の外周部より前記内容器の内側に位置していることを特徴とする容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の容器であって、
前記外容器及び前記内容器は、同軸の中心軸線を有する筒状に形成され、
前記外容器及び前記内容器は、互いに前記中心軸線回りに回動可能に設けられていることを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙製の外容器と合成樹脂製の内容器とを組み合わせた二重構造の容器の構成が開示されている。容器には、例えば食品が収容され、これらの食品は、容器内に熱湯を供給し、又は電子レンジ等を用いて加熱調理される場合がある。食品が加熱調理された後、使用者は、容器を手で保持しながら食品を食べる。このため、これらの容器では、高い断熱性を確保するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、底部に向かって直径が小さくなるテーパ状筒胴部を有しその上部の段部を介して直径が狭まる逆テーパ帯状部が形成された容器本体と、容器胴部に巻着されるテーパ状筒状体に形成された紙製外装体と、を備える容器の構成が開示されている。テーパ状筒状体の上部には、筒内方へ折り曲げて形成されるとともに逆テーパ帯状部に圧接される上辺部折曲部が形成されている。テーパ状筒状体の下部には、筒内方へ折り曲げて形成されるとともに容器本体の底部より下方に延設された下辺部折曲部が形成されている。特許文献1に記載の技術によれば、容器本体に紙製外装体を巻着する簡易な構成により断熱効果を得るとともに、接着剤を使うことなく容器本体と紙製外装体を強固に固定できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-23098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これらの容器では、収容された食品を食べる際に、容器の周縁部(フランジ部)に口を当てて食べる場合がある。このため、使用者の使用感を向上するためには、手で保持される容器の胴体部に加えて、容器のフランジ部についても高い断熱性が要求される。
特許文献1に記載の技術にあっては、紙製外装体の上辺部折曲部が容器本体の逆テーパ帯状部に圧接されているので、紙製外装体と容器本体とが接触し易く、特にフランジ部において高い断熱効果が得られないおそれがあった。また、容器本体の端部が容器の外径側に向けて突出しているので、口を当てた際の口当たりが悪くなるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、簡素な構成により高い断熱効果を得るとともに、使用者の使用感を向上した容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
(1)上方に向けて開口し、上領域と前記上領域の下方に位置する下領域とを有して形成された筒状の胴体部を有する外容器と、前記上領域に係合する係合部と、前記上領域と対向する上側壁部と、前記上側壁部の下方に位置し、前記下領域と対向する下側壁部と、を有し、前記外容器の内側に配置された内容器と、前記外容器の上端部と前記内容器との間に設けられる上部空間層と、前記外容器の前記胴体部と前記内容器との間に設けられる側部空間層と、を含む空間層と、を備え、前記係合部は、前記内容器の前記開口側に位置するつば先端部を有し、前記つば先端部は、前記内容器の内側を向いている。
【0008】
(2)上記(1)に記載の容器において、前記内容器は、前記上側壁部と前記下側壁部との間に周接部を有し、前記周接部は、前記外容器に当接し、前記側部空間層は、前記周接部より上方に位置し、前記胴体部の前記上領域と前記上側壁部との間に設けられる第一層と、前記周接部より下方に位置し、前記胴体部の前記下領域と前記下側壁部との間に設けられる第二層と、を有する、構成を採用してもよい。
【0009】
(3)上記(2)に記載の容器において、前記周接部は、前記内容器の高さ方向における中央部よりも前記上領域側に設けられ、前記第二層の大きさは、前記第一層の大きさより大きい、構成を採用してもよい。
【0010】
(4)上記(2)又は(3)のいずれか1つに記載の容器において、前記外容器は、前記上領域の上端に前記係合部と係合されるとともに前記外容器の周縁部に沿って中心軸を有するカール部を有し、前記係合部により前記外容器と前記内容器とが係合される前の状態において、前記係合部と前記周接部とで前記外容器の前記カール部を挟み込む、構成を採用してもよい。
【0011】
(5)上記(4)に記載の容器において、前記外容器と前記内容器とが係合された状態において、前記つば先端部は、前記カール部の外周部より前記内容器の内側に位置している、構成を採用してもよい。
【0012】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の容器において、前記係合部は、前記上側壁部よりも上方において、開口面に沿う平坦部を有する、構成を採用してもよい。
【0013】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の容器において、前記外容器及び前記内容器は、同軸の中心軸線を有する筒状に形成され、前記外容器及び前記内容器は、互いに前記中心軸線回りに回動可能に設けられている、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記(1)に記載の本発明の容器によれば、外容器と内容器とが組み合わされて形成された二重構造の容器において、外容器の上端部と内容器との間に上部空間層が設けられる。これにより、容器のフランジ部に対応する上端部において外容器と内容器との間に空気の断熱層を設けて、容器の断熱性能を高めることができる。特に使用者が容器のフランジ部に口を当てて使用する場合に、フランジ部の断熱性能を高めることで、口当たりを良好にできる。また、外容器の胴体部と内容器との間に側部空間層が設けられる。これにより、使用者が手で保持する容器の胴体部の断熱性能を向上できる。内容器は、外容器の上領域に係合する係合部を有するので、容易に内容器と外容器とを組み合わせることができるとともに、内容器と外容器とを係合するだけで容易に空間層を設けることができる。
係合部のつば先端部は、内容器の内側を向いている。これにより、容器のフランジ部において、つば先端部が外側を向く従来技術と比較して、使用者が容器のフランジ部に口を当てて使用する際の口当たりを良好にできる。
したがって、簡素な構成により高い断熱効果を得るとともに、使用者の使用感を向上した容器を提供できる。
【0015】
上記(2)に記載の本発明の容器によれば、上側壁部と下側壁部との間に周接部が設けられ、周接部は、外容器に当接する。また、周接部より上方に第一層が設けられ、周接部より下方に第二層が設けられる。このように、内容器に周接部が設けられることにより、内容器の剛性を高めるとともに、側部空間層を第一層と第二層とに分割して設けることができる。第一層は上領域に設けられるので、フランジ部が設けられる上領域において第一層による空気の断熱層を設けて、容器の断熱性能を高めることができる。これにより、フランジ部の断熱性能を高めて、口当たりを良好にできる。第二層は下領域に設けられるので、使用者が手で保持する容器の胴体部の断熱性能を向上できる。
さらに、周接部が外容器に内側から当接するので、例えば使用者が手で保持した場合等、容器の外側から外力が加えられた場合に、内容器と外容器とが近接することを抑制できる。これにより、側部空間層の厚みが減少するのを抑制できる。よって、簡素な構成により断熱効果を高く維持できるとともに、容器の剛性を向上し、安定性を高めることができる。
【0016】
上記(3)に記載の本発明の容器によれば、周接部は、高さ方向における中央部よりも上領域側に設けられ、第二層の大きさは、第一層の大きさより大きい。周接部が上領域側に設けられることにより、周接部と係合部とが高さ方向において近い位置に配置される。これにより、周接部と係合部とにより外容器の上領域に位置する部分を厚さ方向の両側から挟むことができる。よって、係合部による係合強度を向上できる。また、周接部が上領域側に設けられることにより、上領域近傍における内容器の剛性を高めることができる。よって、内容器の変形等により第一層の厚みが減少することを抑制し、使用者の口当たりを良好にすることができる。
【0017】
上記(4)に記載の本発明の容器によれば、外容器は、係合部と係合されるカール部を有し、係合部により外容器と内容器とが係合される前の状態(以下、中間製品状態という。)において、内容器の係合部と周接部とで外容器の胴体部を挟み込む。外容器はカール部を有するので、外容器がカール部を有しないで形成される場合と比較して、係合部による係合強度を高めることができる。係合部がカール部に沿って係合されることにより、内容器のつば先端部が外側に向かって突出するのを抑制し、フランジ部における口当たりを良好にできる。また、内容器のつば先端部をカール部に沿って形成することにより、上領域の剛性を高めることができる。さらに、カール部により空気による断熱層が形成されるので、より一層容器のフランジ部における断熱性能を高めることができる。
中間製品状態において、内容器の係合部と周接部とで外容器の胴体部が挟み込まれている。これにより、例えば製造時において係合作業により縁部分にフランジ部を形成する際に、内容器と外容器とを仮固定できる。よって、係合する際に内容器と外容器の位置がずれ難くなるので、フランジ部の形成時における製品不良の発生を抑制できる。
【0018】
上記(5)に記載の本発明の容器によれば、外容器と内容器とが係合された状態において、内容器のつば先端部は、カール部の外周部より内容器の内側に位置している。これにより、つば先端部がカール部(すなわち、外容器の上端部)より外側に突出する従来技術と比較して、容器のフランジ部における口当たりを良好にできる。
よって、使用者の使用感を向上した容器とすることができる。
【0019】
上記(6)に記載の本発明の容器によれば、係合部は、開口面に沿う平坦部を有する。これにより、例えば容器の開口を閉塞するための蓋等を別途設けた場合に、蓋との接触面積を増やし、密封性を高めることができる。また、蓋の取り付け強度を向上し、蓋と容器とを合わせた製品全体の剛性を高めることができる。
【0020】
上記(7)に記載の本発明の容器によれば、外容器及び内容器は、例えば接着等により完全に固定されることなく互いに回動可能に設けられている。このように、外容器と内容器とが互いに回動可能に組み合わされているので、接着等により外容器と内容器との間が密封されることなく、外容器と内容器との間に空気を流通させることができる。空気の通気性が上がることにより、外容器及び内容器間の断熱性能を向上できる。また、接着されることで外容器及び内容器に変形が生じるのを抑制できるので、容器の剛性を向上できるとともに、口当たりを良好にできる。さらに、接着工程が不要となるので、製造工程を削減できる。よって、簡素な構成により高い断熱効果及び使用者の使用感向上を実現した容器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る容器の部分断面図。
図2図1のA部拡大図。
図3】中間製品状態における図1のA部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。また、以下の説明において上方及び下方は、重力上下方向における上方及び下方と一致している。
【0023】
(容器)
図1は、実施形態に係る容器1の部分断面図である。図2は、図1のA部拡大図である。
図1に示すように、容器1は、うどん、そば、らーめん等の各種の麺類や、スープ、総菜等の比較的高い温度で提供される食品の包装容器として使用される。容器1は、例えばチルド食品の包装容器として利用される。加えて、容器1は、例えば熱湯を加えて喫食する即席食品の容器としても利用される。使用者は、容器1内に熱湯を供給し、又は電子レンジ等を用いて食品を加熱調理した後、これらの容器1を手で保持しながら食品を喫食する。
【0024】
容器1は、上方に開口する開口部6を有するカップ状に形成されている。本実施形態の容器1は、上下方向における上方から下方に向かうにつれて直径が小さくなる筒状に形成されている。容器1は、詳しくは後述する紙製の外容器2と合成樹脂製の内容器3とが重ね合された二重容器構造となっている。開口部6が位置する容器1の上端部には、フランジ部7が設けられている。フランジ部7は、例えば使用者が容器1に直接口を当てて容器1内の食品を食べる場合に、使用者の口が当たる容器1の周縁部である。
容器1は、外容器2と、内容器3と、空間層4と、を有する。
【0025】
(外容器)
外容器2は、厚紙やボール紙等の紙材料により形成されている。外容器2は、上方に開口するカップ状に形成されている。外容器2は、胴体部20と、外側底部21と、を有する。
胴体部20は、上下方向に沿う中心軸線Oを中心とする円筒状に形成されている。胴体部20は、開口部6が位置する上方から下方に向かうにつれて直径が漸次小さくなっている。胴体部20は、上下方向の上方(開口部6側)に設けられる上領域22と、上領域22より下方に設けられる下領域23と、を有する。なお、以下の説明では、中心軸線Oに直交する方向を径方向といい、中心軸線O回りの方向を周方向という場合がある。
【0026】
上領域22は、例えば使用者が容器1内の食品を食べる際に、主に使用者の口が接触する部分である。上領域22の上端部は、開口部6となっている。図2に示すように、上領域22の上端部には、カール部24が設けられている。カール部24は、胴体部20の上方の端部(すなわち、上領域22の上端部)が外容器2の外径側に向けて巻回されることにより、外容器2の周縁部に沿って中心軸を有する管状に形成されている。カール部24は、外容器2の周方向の全周に亘って形成されている。カール部24は、容器1のフランジ部7を構成している。
【0027】
図1に示すように、下領域23は、胴体部20のうち、上領域22より下方に位置する部分である。下領域23は、例えば使用者が容器1内の食品を食べる際に、主に使用者が手で把持する部分である。本実施形態において、下領域23の上下方向に沿う高さ寸法L2は、上領域22の上下方向に沿う高さ寸法L1より大きい。
【0028】
外側底部21は、胴体部20の下端部と対応する位置に設けられている。外側底部21は、上下方向から見て、中心軸線Oを中心とする円形状に形成されている。外側底部21の外周部は、下領域23に接続されている。これにより、外側底部21は、胴体部20における下方の開口を閉塞している。本実施形態において、外側底部21は、上下方向において、下領域23の最も下方に位置する最下端部25よりも上方に設けられている。なお、外側底部21は、下領域23の最下端部25と上下方向において同等の位置に設けられていてもよい。
【0029】
(内容器)
内容器3は、外容器2の内側に重ねて配置されている。内容器3は、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂材料により形成されている。内容器3は、上方に開口するとともに、外容器2と同軸の中心軸線Oを有するカップ状に形成されている。外容器2と内容器3とが重ねて配置された状態で、外容器2及び内容器3は、互いに中心軸線O回りに回動可能となっている。内容器3は、側壁部30と、内側底部31と、を有する。
側壁部30は、中心軸線Oを中心とする円筒状に形成されている。側壁部30の直径は、外容器2の胴体部20の直径より小さい。側壁部30は、外容器2の胴体部20に沿って設けられている。側壁部30は、上側壁部32と、下側壁部33と、周接部35と、係合部34と、を有する。
【0030】
上側壁部32は、上下方向において、外容器2の上領域22と対応する位置に設けられている。上側壁部32は、筒状に形成されている。上側壁部32は、外容器2の上領域22に対して内径側に所定の隙間をあけて対向配置されている。上側壁部32は、上方から下方へ向かうにつれて直径が漸次大きくなっている。
【0031】
下側壁部33は、上下方向において、外容器2の下領域23と対応する位置に設けられている。下側壁部33は、筒状に形成されている。下側壁部33は、外容器2の下領域23に対して内径側に所定の隙間をあけて対向配置されている。下側壁部33は、上方から下方へ向かうにつれて直径が漸次小さくなっている。
【0032】
周接部35は、上側壁部32と下側壁部33との間に設けられている。周接部35は、容器1の外径側に向かって突出している。周接部35は、外容器2の内面に当接している。周接部35は、内容器3の周方向の全周に亘って形成されている。上側壁部32及び下側壁部33は、周接部35を介して接続されている。周接部35は、内容器3の高さ方向(上下方向)における中央部よりも外容器2の上領域22側(開口部6側)に位置している。換言すれば、外容器2の上領域22と下領域23との境界部は、外容器2における中央部よりも開口部6側に位置している。
【0033】
図2に示すように、係合部34は、上側壁部32の上端部に接続されて上側壁部32と一体に設けられている。係合部34は、外容器2の上領域22に係合する。具体的に、係合部34は、外容器2のカール部24に沿って熱かしめされることにより、カール部24と係合する。係合部34は、容器1のフランジ部7を構成している。係合部34は、上側壁部32の上端部に接続される平坦部37と、平坦部37に接続される第一延設部38と、第一延設部38に接続される第二延設部39と、を有する。
【0034】
平坦部37は、上側壁部32より上方に設けられている。平坦部37は、上側壁部32の上端部から内容器3の外径側へ向かって延びている。平坦部37は、外容器2のカール部24より上方に位置している。平坦部37の外径側の端部は、径方向においてカール部24の外周部24aと同等の位置まで延びている。平坦部37は、内容器3のうち最も上方に位置する部分とされ、その上面は、中心軸線Oと直交する平面とほぼ平行な平坦状に形成されている。平坦部37は、開口部6の開口面に沿って設けられている。平坦部37は、例えば容器1の開口部6を閉塞するための蓋(不図示)を別途設けた場合、蓋の下面と当接する。
【0035】
第一延設部38は、平坦部37の外径側の端部に接続されている。第一延設部38は、平坦部37の外径側の端部から、カール部24の形状に沿って外径側に凸となるように下方に湾曲している。第一延設部38は、カール部24より外径側に設けられている。第一延設部38は、平坦部37との間に角部を有することなく平坦部37と接続されている。
【0036】
第二延設部39は、第一延設部38の下端部に接続されている。第二延設部39は、第一延設部38の下端部から、カール部24の下端に沿って内径側に向かって湾曲している。第二延設部39は、カール部24より下方に設けられている。第二延設部39は、第一延設部38との間に角部を有することなく第一延設部38と接続されている。
【0037】
第二延設部39のうち、第一延設部38に接続された端部とは反対側の端部は、内容器3の開口部6側の端部でもあるつば先端部36とされている。つば先端部36は、内容器3の内径側を向いている。つば先端部36は、少なくともカール部24の外周部24aより内径側に位置している。本実施形態において、つば先端部36は、外容器2における胴体部20の外周面に当接している。これにより、内容器3のつば先端部36が容器1の外部に突出することが抑制されている。
【0038】
このように形成された係合部34は、平坦部37、第一延設部38及び第二延設部39により外容器2のカール部24を囲うとともに、上側壁部32との間で外容器2の上領域22を挟み込む。これにより、カール部24と係合部34とが熱かしめされ、内容器3と外容器2とが離脱不能に係合される。係合部34により外容器2と内容器3とが係合された状態(以下、最終製品状態という。)で、外容器2及び内容器3は、互いに中心軸線O回りに回動可能となっている。
【0039】
図1に戻って、内側底部31は、側壁部30の下端部に接続されている。内側底部31は、外側底部21より上方に間隔をあけて外側底部21と対向配置されている。内側底部31は、上下方向から見て、中心軸線Oを中心とする円形状に形成されている。内側底部31及び側壁部30は、例えば射出成型やブロー成型、圧縮成型等により一体形成されている。
【0040】
(空間層)
空間層4は、外容器2と内容器3との間に設けられている。本実施形態において、空間層4には、空気が満たされている。空間層4は、空気による断熱層を形成することにより、外容器2と内容器3との間の熱伝達を抑制している。
空間層4は、上部空間層9と、側部空間層10と、底部空間層8と、を有する。
【0041】
図2に示すように、上部空間層9は、外容器2の上端部と内容器3との間に設けられている。具体的に、上部空間層9は、外容器2のカール部24より上方かつ内容器3の平坦部37より下方であって、カール部24と係合部34との間に設けられている。よって、カール部24と平坦部37とは、互いに空気が流通可能な所定の大きさの隙間(つまり、上部空間層9)を介して対向配置されている。
【0042】
図1及び図2に示すように、側部空間層10は、外容器2の胴体部20と内容器3の側壁部30との間に設けられている。側部空間層10は、第一層11と、第二層12と、を有する。
第一層11は、周接部35より上方に位置している。第一層11は、胴体部20の上領域22と内容器3の上側壁部32との間に設けられている。第一層11の上下方向に沿う高さ寸法は、上領域22の上下方向に沿う高さ寸法L1と同等となっている。
第二層12は、周接部35より下方に位置している。第二層12は、胴体部20の下領域23と内容器3の下側壁部33との間に設けられている。第二層12の上下方向に沿う高さ寸法は、下領域23の上下方向に沿う高さ寸法L2と同等となっている。本実施形態において、第二層12の大きさは、第一層11の大きさより大きい。ここで、第一層11及び第二層12の大きさとは、各層11,12の上下方向に沿う高さ寸法及び体積を指す。すなわち、第二層12の上下方向に沿う高さ寸法L2は、第一層11の上下方向に沿う高さ寸法L1より大きく、第二層12の体積は、第一層11の体積より大きい。
【0043】
図1に示すように、底部空間層8は、外容器の外側底部21と内容器3の内側底部31との間に設けられている。底部空間層8は、側部空間層10と連通している。底部空間層8は、外側底部21と内側底部31とが対向する領域の全体に設けられている。つまり、外側底部21と内側底部31とは互いに接触することなく対向配置されている。
【0044】
(容器の組み立て)
次に、上述の外容器2と内容器3とを組み合わせて容器1を組み立てる手順について説明する。図3は、係合部34により外容器2と内容器3とが係合される前の状態(以下、中間製品状態という。)における図1のA部拡大図である。
容器1の組み立て手順では、まず、カップ状に形成された外容器2及び内容器3をそれぞれ準備する。次に、外容器2の内側に内容器3を重ねる。この状態が中間製品状態である。中間製品状態では、内容器3と外容器2とが互いに着脱可能となっている。最後に、係合部34により外容器2と内容器3とを係合する(熱かしめする)。これにより、内容器3と外容器2とが離脱不能に係合された状態(最終製品状態)の容器1が完成する。
【0045】
ここで、図3に示すように、外容器2と内容器3とが重ねられ、かつ係合部34による係合が行われる前の中間製品状態において、内容器3は、外容器2に対して仮固定されている。容器1は、中間製品状態と最終製品状態との間で、係合部34の第二延設部39及びつば先端部36の形状及び位置(向き)が異なる。具体的に、中間製品状態において、第二延設部39は、第一延設部38の下端部から、内径側に凸となるように断面半円形状に湾曲している。中間製品状態において、つば先端部36は、カール部24の外周部24aより外径側に位置するとともに、容器1の外径側を向いている。このとき、第二延設部39の少なくとも一部は、カール部24の外周部24aよりも内径側に位置している。
【0046】
中間製品状態において、外容器2の上領域22は、第二延設部39のうちカール部24の外周部24aよりも内径側に位置する部分と、周接部35と、により径方向に挟み込まれている。よって、上領域22及びその上部に設けられたカール部24が係合部34と周接部35との間に引っ掛るので、上領域22及びカール部24の容易な離脱が抑制されている。
一方、中間製品状態において、例えば内容器3を外容器2に対して取り外す方向及び取り付ける方向に所定の力を加えた場合は、第二延設部39がカール部24により外径側に押し広げられる。これにより、第二延設部39と周接部35との隙間が広がるので、係合部34に対して上領域22及びカール部24を取り外し又は取付可能となっている。つまり、外容器2と内容器3と着脱可能に仮固定されている。
【0047】
上述の中間製品状態から最終製品状態に形成するためには、中間製品状態の第二延設部39を熱により変形させてつば先端部36が内径側を向くようにかしめる(図2の状態)。これにより、係合部34がカール部24に強固に係合し、内容器3と外容器2とが離脱不能に係合された最終製品状態となる。
【0048】
(作用、効果)
上述の容器1によれば、外容器2と内容器3とが組み合わされて形成された二重構造の容器1において、外容器2の上端部と内容器3との間に上部空間層9が設けられる。これにより、容器1の周縁部(フランジ部7)に対応する上端部において外容器2と内容器3との間に空気の断熱層を設けて、容器1の断熱性能を高めることができる。特に使用者が容器1のフランジ部7に口を当てて使用する場合に、フランジ部7の断熱性能を高めることで、口当たりを良好にできる。また、外容器2の胴体部20と内容器3との間に側部空間層10が設けられる。これにより、使用者が手で保持する容器1の胴体部20の断熱性能を向上できる。内容器3は、外容器2の上領域22に係合する係合部34を有するので、容易に内容器3と外容器2とを組み合わせることができるとともに、内容器3と外容器2とを係合するだけで容易に空間層4を設けることができる。
係合部34のつば先端部36は、内容器3の内側を向いている。これにより、容器1のフランジ部7において、つば先端部36が外側を向く従来技術と比較して、使用者が容器1のフランジ部7に口を当てて使用する際の口当たりを良好にできる。
したがって、簡素な構成により高い断熱効果を得るとともに、使用者の使用感を向上した容器1を提供できる。
【0049】
上側壁部32と下側壁部33との間に周接部35が設けられ、周接部35は、外容器2に当接する。また、周接部35より上方に第一層11が設けられ、周接部35より下方に第二層12が設けられる。このように、内容器3に周接部35が設けられることにより、内容器3の剛性を高めるとともに、側部空間層10を第一層11と第二層12とに分割して設けることができる。第一層11は上領域22に設けられるので、フランジ部7が設けられる上領域22において第一層11による空気の断熱層を設けて、容器1の断熱性能を高めることができる。これにより、フランジ部7の断熱性能を高めて、口当たりを良好にできる。第二層12は下領域23に設けられるので、使用者が手で保持する容器1の胴体部20の断熱性能を向上できる。
さらに、周接部35が外容器2に内側から当接するので、例えば使用者が手で保持した場合等、容器1の外側から外力が加えられた場合に、内容器3と外容器2とが近接することを抑制できる。これにより、側部空間層10の厚みが減少するのを抑制できる。よって、簡素な構成により断熱効果を高く維持できるとともに、容器1の剛性を向上し、安定性を高めることができる。
【0050】
周接部35は、高さ方向における中央部よりも上領域22側に設けられ、第二層12の大きさは、第一層11の大きさより大きい。周接部35が上領域22側に設けられることにより、周接部35と係合部34とが高さ方向において近い位置に配置される。これにより、周接部35と係合部34とにより外容器2の上領域22に位置する部分を厚さ方向の両側から挟むことができる。よって、係合部34による係合強度を向上できる。また、周接部35が上領域22側に設けられることにより、上領域22近傍における内容器3の剛性を高めることができる。よって、内容器3の変形等により第一層11の厚みが減少することを抑制し、使用者の口当たりを良好にすることができる。
【0051】
外容器2は、係合部34と係合されるカール部24を有し、係合部34により外容器2と内容器3とが係合される前の状態(中間製品状態)において、内容器3の係合部34と周接部35とで外容器2の胴体部20を挟み込む。外容器2はカール部24を有するので、外容器2がカール部24を有しないで形成される場合と比較して、係合部34による係合強度を高めることができる。係合部34がカール部24に沿って係合されることにより、内容器3のつば先端部36が外側に向かって突出するのを抑制し、フランジ部7における口当たりを良好にできる。また、内容器3のつば先端部36をカール部24に沿って形成することにより、上領域22の剛性を高めることができる。さらに、カール部24により空気による断熱層が形成されるので、より一層容器1のフランジ部7における断熱性能を高めることができる。
【0052】
中間製品状態において、内容器3の係合部34と周接部35とで外容器2の胴体部20が挟み込まれている。これにより、例えば製造時において係合作業により周縁部にフランジ部7を形成する際に、内容器3と外容器2とを仮固定できる。よって、係合する際に内容器3と外容器2の位置がずれ難くなるので、フランジ部7の形成時における製品不良の発生を抑制できる。
【0053】
外容器2と内容器3とが係合された状態において、内容器3のつば先端部36は、カール部24の外周部24aより内容器3の内側に位置している。これにより、つば先端部36がカール部24(すなわち、外容器2の上端部)より外側に突出する従来技術と比較して、容器1のフランジ部7における口当たりを良好にできる。
よって、使用者の使用感を向上した容器1とすることができる。
【0054】
係合部34は、開口面に沿う平坦部37を有する。これにより、例えば容器1の開口を閉塞するための蓋等を別途設けた場合に、蓋との接触面積を増やし、密封性を高めることができる。また、蓋の取り付け強度を向上し、蓋と容器1とを合わせた製品全体の剛性を高めることができる。
【0055】
外容器2及び内容器3は、例えば接着等により完全に固定されることなく互いに回動可能に設けられている。このように、外容器2と内容器3とが互いに回動可能に組み合わされているので、接着等により外容器2と内容器3との間が密封されることなく、外容器2と内容器3との間に空気を流通させることができる。空気の通気性が上がることにより、外容器2及び内容器3間の断熱性能を向上できる。また、接着されることで外容器2及び内容器3に変形が生じるのを抑制できるので、容器1の剛性を向上できるとともに、口当たりを良好にできる。さらに、接着工程が不要となるので、製造工程を削減できる。よって、簡素な構成により高い断熱効果及び使用者の使用感向上を実現した容器1とすることができる。
【0056】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上述の実施形態では、周接部35は、周方向の全周に亘って設けられる構成としたが、これに限られない。周接部35は、例えば周方向に沿って複数離間して設けられてもよい。
また、周接部35の上下方向に沿う高さ位置は、上述した実施形態に限定されない。
【0057】
内容器3は周接部35を有することなく形成されてもよい。すなわち、側部空間層10は、第一層11のみを有してもよい。但し、周接部35と係合部34とで胴体部20の上領域22を挟み込むことにより中間製品状態において仮固定ができる点や、容器1の剛性を向上できる点等において、周接部35を有する本実施形態の構成は優位性がある。
【0058】
外容器2及び内容器3の材料は、上述した実施形態に限定されない。
容器1の形状は、円筒状でなくてもよい。すなわち、中心軸線Oに直交する断面視において、容器1の外形は、例えば矩形状や多角形状、楕円形状等、円形状以外の形状となるように形成されてもよい。
【0059】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1:容器、2:外容器、3:内容器、4:空間層、9:上部空間層、10:側部空間層、11:第一層、12:第二層、20:胴体部、22:上領域、23:下領域、24:カール部、24a:(カール部の)外周部、32:上側壁部、33:下側壁部、34:係合部、35:周接部、36:つば先端部、37:平坦部、O:中心軸線
図1
図2
図3