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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】レンズの調心構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240502BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20240502BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/00 D
G02B7/02 B
G02B7/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020087141
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021182065
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】521351719
【氏名又は名称】東京晨美光学電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112520
【弁理士】
【氏名又は名称】林 茂則
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-103529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00 - 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の鏡筒と、前記第1の鏡筒に収納された1枚のレンズを有する前群と、第2の鏡筒と、前記第2の鏡筒に収納された枚のレンズを有する後群と、が物体側から順に配置された、6枚のレンズで構成される撮像レンズにおいて、
前記前群の最も像側に位置するレンズは、像側の面に、第1光学有効部と、光軸に対して垂直な第1平面部と、を有し、前記第1平面部は、前記第1光学有効部の周囲に位置しており、前記第1平面部は、光軸と平行な方向に突出する第1突起部を有し、
前記後群の最も物体側に位置するレンズは、物体側の面に、第2光学有効部と、光軸に対して垂直な第2平面部と、を有し、前記第2平面部は、前記第2光学有効部の周囲に位置しており、前記第2平面部は、光軸と平行な方向に突出する第2突起部を有し、
前記第1突起部、および前記第2突起部は、それぞれ光軸を中心とした円周上に形成されているとともに、
前記第1突起部の内周面の直径は、前記第2突起部の外周面の直径より大きく、または、前記第1突起部の外周面の直径は、前記第2突起部の内周面の直径より小さく、
前記第1突起部の内周面の直径と前記第2突起部の外周面の直径との差、または、前記第1突起部の外周面の直径と前記第2突起部の内周面の直径との差をD1としたとき、以下の条件式(1)を満足し、
(1)5μm<D1<50μm
前記第1突起部が前記第2平面部に、または前記第2突起部が前記第1平面部に当接した状態で、前記前群を前記後群に対して条件式(1)の範囲内で移動して、撮像レンズの解像性能の出力値がピークとなる位置に調心可能な構造であり、前記第1突起部と前記第2平面部が、または前記第2突起部と前記第1平面部が接着固定されていることを特徴とするレンズの調心構造。
【請求項2】
前記第1突起部の内周面および前記第2突起部の外周面、または、前記第1突起部の外周面および前記第2突起部の内周面は、それぞれ傾斜面で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズの調心構造。
【請求項3】
前記後群は、隣接するレンズの対向する面にそれぞれ、光学有効部と、光軸に対して垂直な平面部と、を有し、前記平面部は、前記光学有効部の周囲に位置し、前記平面部は、光軸と平行な方向に突出する突起部有し、
当該突起部は、それぞれ光軸を中心とした円周上に形成されているとともに、
当該突起部が嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズの調心構造。
【請求項4】
前記隣接するレンズが対向する面の前記平面部に、どちらか一方の前記突起部が当接していることを特徴とする請求項3に記載のレンズの調心構造。
【請求項5】
前記後群のうち、少なくとも1枚のレンズの外周面は、前記第2の鏡筒の内周面に嵌合していることを特徴とする請求項1に記載のレンズの調心構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像レンズを構成するレンズの調心構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な製品にカメラ機能が搭載されるようになった。カメラを通して得られる画像は、高精細な画質が求められるとともに、製品の小型化、薄型化に伴って、撮像レンズも小型化、薄型化への対応が求められている。
【0003】
固体撮像素子は、高精細な画質に対応するために、画素ピッチの縮小化が促進されている。一方、撮像レンズは、高精細な画質に対応するために、構成枚数を増加する傾向にある。しかし、構成枚数が増えるほど、部材の精度、組み合わせ誤差等の影響で、高精度な光軸合わせが困難になる。低背化の要求を満足し、かつ個体撮像素子のパフォーマンスを十分発揮させる撮像レンズを得るには、一層高い精度の光軸合わせが必要である。
【0004】
特許文献1には、光軸調整を容易に行うことができ、かつ薄型化もできるとされたレンズユニットが開示されている。
【0005】
特許文献1には、第1のレンズのフランジ部と枠本体に設けられた突出部の前面とが面一になるようにし、これらの面の少なくとも一方に薄手の遮光フィルムを貼り付ける構成とすることでレンズユニットの薄型化を図り、第2のレンズを光軸方向で位置決めするために枠本体の前端に設けた突出部に枠開口を形成し、この枠開口で固まれた空聞を利用して第1のレンズを光軸と直交する方向に移動して光軸調整を行うレンズユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/047198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のレンズユニットは、絞りの機能を持たせた遮光フィルムの開口部の中心と光軸とを一致させることは困難である。また、第1レンズと第2レンズとの間に遮光フィルムが存在し、遮光フィルムを介して双方の光軸を調整する構造のため、遮光フィルムの厚みや両面の平坦度等の精度のばらつきが、レンズユニットの解像性能を劣化させる等の課題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、高精度なレンズの調心構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のレンズの調心構造は、第1の鏡筒と、第1の鏡筒に収納された少なくとも1枚のレンズを有する前群と、第2の鏡筒と、第2の鏡筒に収納された少なくとも2枚のレンズを有する後群とが、物体側から順に配置された撮像レンズにおいて、前群の最も像側に位置するレンズは、像側の面に、第1光学有効部と、光軸に対して垂直な第1平面部と、を有し、第1平面部は、第1光学有効部の周囲に位置し、第1平面部は、光軸と平行な方向に突出する第1突起部を有し、後群の最も物体側に位置するレンズは、物体側の面に、第2光学有効部と、光軸に対して垂直な第2平面部と、を有し、第2平面部は、第2光学有効部の周囲に位置し、第2平面部は、光軸と平行な方向に突出する第2突起部を有しており、第1突起部、および第2突起部は、それぞれ光軸を中心とした円周上に形成されているとともに、第1突起部の内周面の直径は、第2突起部の外周面の直径より大きく、または、第1突起部の外周面の直径は、第2突起部の内周面の直径より小さく、第1突起部が第2平面部に、または第2突起部が第1平面部に当接した状態で、接着固定されて構成される。
【0010】
上記のレンズの調心構造は、前群に形成された第1突起部と後群に形成された第2突起部が遊嵌されることによって、それぞれの光軸をある程度合わることができる構造になっている。また、突起部が相手のレンズの平面部に当接することで、光軸方向の位置が決まり、所定のレンズ間隔を高精度に維持した状態となる。すなわち、前群を後群に載置すれば、ある程度の解像が生じるため、解像度をモニターするMTF測定器等に初期ピークを発生させることができる。その後、突起部間の間隙内でピークが最大となるよう調整することで精密な調心を行うことができる。
【0011】
なお、調心に使用する解像度の評価器や測定器、調心治具等は、撮像レンズの形状や性能等の仕様に合わせて適宜選択、製作すればよい。
【0012】
また、上記課題を解決するために本発明のレンズの調心構造は、前群に収納されたレンズは、2枚からなり、前群の像側に位置するレンズは、物体側の面に、第3光学有効部と、光軸に対して垂直な第3平面部と、を有し、第3平面部は、第3光学有効部の周囲に位置し、第3平面部は、光軸と平行な方向に突出する第3突起部を有しており、前群の物体側に位置するレンズは、像側の面に、第4光学有効部と、光軸に対して垂直な第4平面部と、を有し、第4平面部は、第4光学有効部の周囲に位置し、第4平面部は、光軸と平行な方向に突出する第4突起部を有しており、第3突起部、および第4突起部は、それぞれ光軸を中心とした円周上に形成されているとともに、第3突起部の外周面の直径は、第4突起部の内周面の直径より小さく、または、第3突起部の内周面の直径は、第4突起部の外周面の直径より大きく、第3突起部が第4平面部に、または第4突起部が第3平面部に当接した状態で、接着固定されている構造を含む。
【0013】
上記のレンズの調心構造は、前群を2枚のレンズで構成する際のものである。例えば、前群の中の物体側(光線入射側)に位置するレンズに正の屈折力を与え、像側に位置するレンズに負の屈折力を与えた構造が考えられる。すなわち、物体側に位置する正のレンズで撮像レンズの薄型化を図り、この正のレンズで発生する色収差を像側に位置する負のレンズが補正する構造である。レンズに強い屈折力を与えると、誤差感度が上昇するためレンズ間の微少な光軸ずれが性能劣化を生じさせる。このような場合、上記のレンズの調心構造にすることで性能劣化を抑制できる。なお、前群に収納される2枚のレンズは、正、負に限定されるものではなく、撮像レンズの仕様、性能に合わせて適宜選択される。例えば、第1レンズが正の屈折力、第2レンズが正の屈折力の組み合わせで薄型化を図る場合や、第1レンズが負の屈折力、第2レンズが正の屈折力の組み合わせや、第1レンズが負の屈折力、第2レンズが負の屈折力の組み合わせ等、本レンズの調心構造は様々なタイプの撮像レンズに適用可能である。
【0014】
また、上記課題を解決するために本発明のレンズの調心構造は、第1突起部の内周面の直径と第2突起部の外周面の直径の差、または、第1突起部の外周面の直径と第2突起部の内周面の直径の差をD1としたとき、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
(1)5μm<D1<50μm
【0015】
条件式(1)は、第1突起部の内周面の直径と第2突起部の外周面の直径の差、または、第1突起部の外周面の直径と第2突起部の内周面の直径の差を適切に規定するものである。条件式(1)の範囲とすることで、前群を後群に載置した際に、解像の初期ピークを出現させることができる。
【0016】
また、上記課題を解決するために本発明のレンズの調心構造は、第3突起部の内周面の直径と第4突起部の外周面の直径の差、または、第3突起部の外周面の直径と第4突起部の内周面の直径の差をD2としたとき、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2)5μm<D2<50μm
【0017】
条件式(2)は、第3突起部の内周面の直径と第4突起部の外周面の直径の差、または、第3突起部の外周面の直径と第4突起部の内周面の直径の差を適切に規定するものである。
【0018】
条件式(2)の範囲とすることで、前群を構成する2枚を重ね合わせたとき、前群として、解像の初期ピークを出現させることができる。
【0019】
また、上記課題を解決するために本発明のレンズの調心構造は、第1突起部の内周面と第2突起部の外周面、または、第1突起部の外周面と第2突起部の内周面は、それぞれ傾斜面で形成されていることが望ましい。
【0020】
第1突起部の内周面と第2突起部の外周面、または、第1突起部の外周面と第2突起部の内周面に、それぞれ傾斜面を形成することによって、前群を後群に載置する際のガイドになるため、組込み時のエラーを防止することができる。
【0021】
また、上記課題を解決するために本発明のレンズの調心構造は、第3突起部の内周面および第4突起部の外周面、または、第3突起部の外周面および第4突起部の内周面は、それぞれ傾斜面が形成されていることが望ましい。
【0022】
第3突起部の内周面と第4突起部の外周面、または、第3突起部の外周面と第4突起部の内周面に、それぞれ傾斜面を形成することによって、それぞれのレンズを重ね合わせる際に傾斜面がガイドになるため、組込み時のエラーを防止することができる。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明のレンズの調心構造において、後群を構成する複数のレンズは、隣接するレンズの対向する面にそれぞれ、光学有効部と、光軸に対して垂直な平面部と、を有し、平面部は、光学有効部の周囲に位置し、平面部は、光軸と平行な方向に突出する突起部有し、突起部は、それぞれ光軸を中心とした円周上に形成されているとともに、隣接するレンズの突起部同士が嵌合されていることが望ましい。
【0024】
後群に収納される複数のレンズを突起部で嵌合させることによって、光軸合わせを容易に行うことができる。
【0025】
また、上記課題を解決するために、本発明のレンズの調心構造において、後群を構成する複数のレンズは、隣接するレンズが対向する面の平面部に、どちらか一方の突起部が当接していることが望ましい。
【0026】
隣接するレンズが対向する面の平面部に、どちらか一方の突起部を当接させることによって、所定のレンズ間隔が決定される。
【0027】
また、上記課題を解決するために、本発明のレンズの調心構造において、後群のうち、少なくとも1枚のレンズの外周面は、第2の鏡筒の内周面に嵌合していることが望ましい。
【0028】
後群のうち、少なくとも1枚のレンズの外周面を、第2の鏡筒の内周面に嵌合させることによって、後群と第2の鏡筒との光軸を合わせることができる。
【0029】
また、上記レンズの調心構造においては、突起部の傾斜面と光軸のなす角度をαとしたとき、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3)10°<α<30°
【0030】
条件式(3)は、各レンズを載置するときに、位置ずれを起こしにくい範囲である。
【0031】
なお、条件式(3)については、以下の条件式(3a)がより好ましい範囲である。
(3a)10°<α<20°
【発明の効果】
【0032】
本発明により、高精度なレンズの調心構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1実施形態に係るレンズの調心構造を備える撮像レンズの構成を示す図である。
図2図1に示す撮像レンズの分解図である。
図3図1に示す撮像レンズの前群と後群の構成を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るレンズの調心構造を備える撮像レンズの構成を示す図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るレンズの調心構造を備える撮像レンズの構成を示す図である。
図6図5に示す撮像レンズの分解図である。
図7図5に示す撮像レンズの前群と後群の構成を示す図である。
図8】本発明における突起部の傾斜面と光軸のなす角度αを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
なお、ここでいう光軸Xとは、撮像レンズの中心軸であり、説明上、一点鎖線で図示するが、物理的な実体を有しないものとする。また、ここでいう光軸が一致する状態とは、光学要求性能を満たす程度、即ち、許容範囲内にその誤差が収まった状態をいうものである。
【0036】
また、説明の便宜上、特定の項目にて説明した構成と同一の機能を有する構成については、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0037】
(第一実施形態)
本発明の第1実施形態について、図1から図3を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るレンズの調心構造を備える撮像レンズ1の断面図を示しており、前群に1枚、後群に5枚のレンズを用いた、全体として6枚で構成される撮像レンズの前群と後群とのレンズの調心構造を示している。
【0038】
図1に示すように、撮像レンズ1を構成するレンズは、物体側(図面上方)から像側(図面下方)に向かって順に、第1の鏡筒101と第1の鏡筒101に収納された第1レンズ10からなる前群110と、第2の鏡筒201と第2の鏡筒201に収納された第2レンズ20、第3レンズ30、第4レンズ40、第5レンズ50、および第6レンズ60とからなる後群120とで構成されている。
【0039】
また、後群120には、第2レンズ20と第3レンズ30との間、第3レンズ30と第4レンズ40との間、第4レンズ40と第5レンズ50との間、第5レンズ50と第6レンズ60との間に、それぞれ遮光板500が配置されている。遮光板500は、撮像レンズ1の内部で発生する不要光を遮光するためのものであり、それぞれのレンズの光学有効部を通過する最大の有効光線の直径とほほ同じ直径の開口部を有する円環状の平板の部材である。なお、遮光板500は、遮光性能を備えた材料で製作されている。
【0040】
次に、図2および図3を用いて前群110、および後群120の構造について以下に説明する。
【0041】
第1の鏡筒101は、物体側開口部101aと像側開口部101bを有する円筒状に形成されている。物体側開口部101aの周囲には、物体側に光軸Xに垂直な面101cが形成され、その像側に光軸Xに垂直な受け面101dが形成されている。また、受け面101dから像側に向かって突出する傾斜面101eが形成されている。なお、物体側開口部101aは撮像レンズの開口絞りになっている。
【0042】
第1レンズ10の物体側の光学有効部11の周囲には、平面部11aと平面部11aよりも物体側に突出する平面部11bが形成され、それぞれの平面は物体側に向かって広がる傾斜面11cで連接されている。
【0043】
第1レンズ10を第1の鏡筒101に挿入すると、第1の鏡筒101の受け面101dに第1レンズ10の平面部11bが当接し、第1の鏡筒101の傾斜面101eに第1レンズ10の傾斜面11cが当接する。第1の鏡筒101の受け面101dに第1レンズ10の平面部11bが当接することで双方の光軸X方向の位置が決定される。第1の鏡筒101の傾斜面1eに第1レンズ10の傾斜面11cが当接することで双方の光軸が一致する。その後、第1レンズ10の外周部13と、第1の鏡筒101の内周部101fとを接着剤300によって固定する。なお、接着剤300はあらかじめ第1の鏡筒101の内周101fに塗布しておいてもよい。また、固定方法については、接着に限らず溶着等を用いてもよい。
【0044】
第2の鏡筒201は、物体側開口部201aと像側開口部201bを有する円筒状に形成されている。物体側開口部201aの周囲には、物体側に光軸Xに垂直な面201cが形成されており、その像側に光軸Xに垂直な受け面201dが形成されている。また、円筒状の内周部の形状は、収納される各レンズの外周の直径に応じて2e、2f、2g,2hの段差を有している。
【0045】
第2レンズ20から第6レンズ60はそれぞれ、物体側および像側の面に、光学有効部と、光軸Xに対して垂直な平面部とを有している。光軸Xに対して垂直な平面部は、光学有効部の周囲に位置している。レンズが対向するレンズ面には、光軸に対して垂直な平面部から突出した円環状の突起部が形成されている。円環状の突起部は、それぞれ光軸を中心とした円周上に形成されており、対向する突起部同士が嵌合されている。また、上記円環状の突起部は、どちらか一方が対向するレンズの光軸Xに対して垂直な平面部に当接している。
【0046】
第2レンズ20の物体側に形成された平面部21aは、第2の鏡筒201の内側に形成された光軸Xに垂直な受け面201dに当接する。第2レンズ20の像側に形成された突起部22bの外周部22cは、第3レンズ30の物体側に形成された突起部31bの内周部31cに嵌合し、第3レンズ30の突起部31bの先端は、第2レンズ20の像側の平面部22aに当接する。これにより、双方のレンズの光軸Xが一致するとともに、レンズ間隔が決定される。遮光板500は第3レンズ30の物体側の突起部31bの内周部31cの内側に配置される。また、遮光板500は、第2レンズ20の像側の突起部22bと第3レンズ30との間に形成された適切な遊間内に配置されている。
【0047】
第3レンズ30の像側に形成された突起部32bの外周部32cは、第4レンズ40の物体側に形成された突起部41bの内周部41cに嵌合する。突起部41bの先端部は、第3レンズ30の像側の平面部32aに当接する。これにより、双方のレンズの光軸Xが一致するとともに、レンズ間隔が決定される。遮光板500は第4レンズ40の物体側の突起部41bの内周部41cの内側に配置される。また、遮光板500は、第3レンズ30の像側の突起部32bと第4レンズ40との間に形成された適切な遊間内に配置されている。
【0048】
第4レンズ40の像側に形成された突起部42bの外周部42cは、第5レンズ50の物体側に形成された突起部51bの内周部51cに嵌合する。突起部51bの先端部は、第4レンズ40の像側の平面部42aに当接する。これにより、双方のレンズの光軸Xが一致するとともに、レンズ間隔が決定される。遮光板500は第5レンズ50の物体側の突起部51bの内周部51cの内側に配置される。また、遮光板500は、第4レンズ40の像側の突起部42bと第5レンズ50との間に形成された適切な遊間内に配置されている。
【0049】
第5レンズ50の像側に形成された突起部52bの外周部52cは、第6レンズ60の物体側に形成された突起部61bの内周部61cに嵌合する。突起部61bの先端部は、第5レンズ50の像側の平面部52aに当接する。これにより、双方のレンズの光軸Xが一致するとともに、レンズ間隔が決定される。遮光板500は第6レンズ60の物体側の突起部61bの内周部61cの内側に配置される。また、遮光板500は、第5レンズ50の像側の突起部52bと第6レンズ60との間に形成された適切な遊間内に配置されている。
【0050】
第2レンズ20から第5レンズ50は、それぞれ第2の鏡筒201と遊嵌された状態になっている。一方、第6レンズ60の外周部63と、第2の鏡筒201の内周部201hとは嵌合されている。従って、第6レンズ60と第2の鏡筒201の光軸Xが一致した状態となる。第6レンズ60と第2の鏡筒201の光軸Xが一致することで、第2レンズ20、第3レンズ30、第4レンズ40、第5レンズ50のそれぞれの光軸Xも第2の鏡筒201の光軸Xに一致した状態となる。
【0051】
なお、第2の鏡筒201の内周部に嵌合させるレンズは、第6レンズ60に限らない。後群120に収納されるレンズのうち1枚のレンズが第2の鏡筒201の内周部に嵌合していればよい。
【0052】
第6レンズ60を第2の鏡筒201に嵌合させたのち、第6レンズ60の像側の平面部62aに接着剤300を塗布して固定する。なお、固定方法については、接着に限らず溶着等を用いてもよい。
【0053】
上記で完成した後群を位置決め治具(図示せず)に載置する。位置決め治具には、たとえばMFT測定器等の光学的な評価器(図示せず)が直結されおり、位置決め治具に載置した状態で、撮像レンズの解像性能の出力値を確認できるようになっている。これらの装置はワークに合わせて適切な形態に改良することで得られる。後群と評価器との平面的な位置調整は、例えばX-Yテーブル等を用いる。
【0054】
後群120を位置決め治具に載置し、評価器から出力されるピーク値が最大になる位置に後群を平面的に調整し固定する。
【0055】
その後、前群110を後群120に載置する。前群110に収納された第1レンズ10は、その像側の面に、第1光学有効部12と、光軸Xに対して垂直な第1平面部12aとを有している。第1平面部12aは、第1光学有効部12の周囲に位置している。第1平面部12aは、光軸Xと平行な方向に突出する第1突起部12bを有している。
【0056】
一方、後群120の最も物体側に位置するレンズ、すなわち第2レンズ20は、その物体側の面に、第2光学有効部21と、光軸Xに対して垂直な第2平面部21aとを有している。第2平面部21aは、第2光学有効部21の周囲に位置している。第2平面部21aは、光軸Xと平行な方向に突出する第2突起部21bを有している。
【0057】
ここで、第1突起部12b、および第2突起部21bは、それぞれ光軸Xを中心とした円周上に円環状に形成されている。第1突起部12bの内周面12cは、第2突起部21bの外周面21cより大きく設定されている。従って、前群110を後群120に載置すると、第1突起部12bと第2突起部21bが遊嵌された状態になる。この直径の差が、図1に示した、調心を行う際の適切な間隙D1となる。また、第1突起部12bおよび第2突起部21bは、その立ち上がり面が傾斜面となっているため、載置する際にガイドとなり、載置時の位置ずれを防止する。さらに、第1突起部12bの先端部が第2平面部21aに当接した状態となるため、前群110と後群120とのレンズ間隔を正確に維持した状態になる。
【0058】
また、前群110と後群120の光軸Xは、それぞれ間隙D1の領域内に位置するため、ある程度光軸Xが合った状態となり、評価器からは初期ピークが出現する。その後、前群を水平に移動してピークが最大になる位置に調整する。このようにして調心した後、前群110と後群120との隙間400から接着剤300を流入して第1平面部と第2平面部とを固定し、撮像レンズ1が完成する。
【0059】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、図4を参照して説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係るレンズの調心構造を備える撮像レンズ2の断面図を示している。第2実施形態は、第1実施形態に比較して前群と後群それぞれの突起部が遊嵌する構造が相違するのみのため、その要旨のみ説明し、共通する部分は同じ符号を付すとともにその説明を省略する。
【0060】
図4に示すように、前群110に収納された第1レンズ10は、その像側の面に、第1光学有効部12と、光軸Xに対して垂直な第1平面部12aとを有している。第1平面部12aは、第1光学有効部12の周囲に位置している。第1平面部12aは、光軸Xと平行な方向に突出する第1突起部12bを有している。
【0061】
一方、後群120の最も物体側に位置するレンズ、すなわち第2レンズ20は、その物体側の面に、第2光学有効部21と、光軸Xに対して垂直な第2平面部21aとを有している。第2平面部21aは、第2光学有効部21の周囲に位置している。第2平面部21aは、光軸Xと平行な方向に突出する第2突起部21bを有している。
【0062】
ここで、第1突起部12b、および第2突起部21bは、それぞれ光軸Xを中心とした円周上に円環状に形成されている。第1突起部12bの外周面12cは、第2突起部21bの内周面21cより小さく設定されている。従って、前群110を後群120に載置すると、第1突起部12bと第2突起部21bが遊嵌された状態になる。この直径の差が、図4に示した、調心を行う際の適切な間隙D1となる。また、第1突起部12bおよび第2突起部21bは、その立ち上がり面が傾斜面となっているため、載置する際にガイドとなり、載置時の位置ずれを防止する。さらに、第1突起部12bの先端部が第2平面部21aに当接した状態となるため、前群110と後群120とのレンズ間隔を正確に維持した状態になる。
【0063】
前群110と後群120の光軸Xは、それぞれ間隙D1の領域内に位置するため、ある程度光軸Xが合った状態となり、評価器からは初期ピークが出現する。その後、前群を水平に移動してピークが最大になる位置に調整する。このようにして調心した後、前群110と後群210との隙間400から接着剤300を流入して、第1レンズ10と第2レンズ20を固定し、撮像レンズ2が完成する。
【0064】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について、図5から図7を参照して説明する。図5は、本発明の第3実施形態に係るレンズの調心構造を備える撮像レンズ3の断面図を示している。第3実施形態は、第1実施形態に比較して前群に収納されるレンズが2枚であり、後群に収納されるレンズが4枚であること、前群の2枚のレンズを調心すること、前群と後群の調心に、前群の像側に位置する第2レンズと、後群の物体側に位置する第3レンズとで行うことが相違する。その要旨のみ説明し、共通する部分は第1実施形態と同じ符号を付すとともにその説明を省略する。
【0065】
図5に示すように、撮像レンズ3を構成するレンズは、物体側(図面上方)から像側(図面下方)に向かって順に、第1の鏡筒101と第1の鏡筒101に収納された第1レンズ10、第2レンズ20からなる前群111と、第2の鏡筒202と第2の鏡筒202に収納された第3レンズ30、第4レンズ40、第5レンズ50、および第6レンズ60とからなる後群121とで構成されている。
【0066】
また、後群121には、第3レンズ30と第4レンズ40との間、第4レンズ40と第5レンズ50との間、第5レンズ50と第6レンズ60との間に、それぞれ遮光板500が配置されている。遮光板500の機能、形状、材質は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0067】
前群111の第1の鏡筒101と第1レンズ10との位置関係等は、第1実施形態と同様である。
【0068】
第3実施形態では、前群111内の第1レンズ10と第2レンズ20とを調心する構造になっている。
【0069】
第2レンズ20を位置決め治具(図示せず)に載置する。位置決め治具には、たとえばMFT測定器等の光学的な評価器(図示せず)が直結されおり、位置決め治具に載置した状態で、撮像レンズの解像性能の出力値を確認できるようになっている。これらの装置はワークに合わせて適切な形態に改良することで得られる。第2レンズ20と評価器との平面的な位置調整は、例えばX-Yテーブル等を用いる。
【0070】
第2レンズ20を位置決め治具に載置し、評価器から出力されるピーク値が最大になる位置に第2レンズ20を平面的に調整し固定する。
【0071】
その後、第1の鏡筒101に収納された状態の第1レンズ10を第2レンズ20に載置する。このとき、第2レンズ20は、その物体側の面に、第3光学有効部21と、光軸Xに対して垂直な第3平面部21aとを有している。第3平面部21aは、第3光学有効部12の周囲に位置している。第3平面部21aは、光軸Xと平行な方向に突出する第3突起部21bを有している。
【0072】
一方、第1レンズ10の像側の面には、第4光学有効部12と、光軸Xに対して垂直な第4平面部12aとを有している。第4平面部12aは、第4光学有効部12の周囲に位置している。第4平面部12aは、光軸Xと平行な方向に突出する第4突起部12cを有している。
【0073】
ここで、第3突起部21b、および第4突起部12bは、それぞれ光軸Xを中心とした円周上に円環状に形成されている。第3突起部21bの外周面21cは、第4突起部12bの内周面12cより小さく設定されている。従って、第1レンズ10を第2レンズ20に載置すると、第3突起部21bと第4突起部12bが遊嵌された状態になる。この直径の差が、図5に示した、調心を行う際の適切な間隙D2となる。また、第3突起部21bおよび第4突起部12bは、その立ち上がり面が傾斜面となっているため、載置する際にガイドとなり、載置時の位置ずれを防止する。さらに、第4突起部12bの先端部が第3平面部21aに当接した状態となるため、第1レンズ10と第2レンズ20とのレンズ間隔を正確に維持した状態になる。
【0074】
第1レンズ10と第2レンズ20の光軸Xは、それぞれ間隙D2の領域内に位置するため、ある程度光軸Xが合った状態となり、評価器からは初期ピークが出現する。その後、第1レンズ10を水平に移動してピークが最大になる位置に調整する。このようにして調心した後、レンズの外周側に接着剤300を流入して第1レンズ10と第2レンズ20とを固定し、前群111が完成する。
【0075】
第3実施形態の後群121は、第1実施形態の後群を5枚から4枚にしたもので、各レンズの光軸合わせ、光軸方向の高さ(レンズ間隔)の設定、鏡筒202との光軸合わせ、鏡筒202とレンズの固定は第1実施形態と同じである。
【0076】
後群121を位置決め治具に載置し、評価器から出力されるピーク値が最大になる位置に後群を平面的に調整し固定する。
【0077】
その後、前群111を後群121に載置する。このとき、前群111の最も像側に位置するレンズ、すなわち第2レンズ20は、その像側の面に、第1光学有効部22と、光軸Xに対して垂直な第1平面部22aとを有している。第1平面部22aは、第1光学有効部22の周囲に位置している。第2平面部22aは、光軸Xと平行な方向に突出する第1突起部22bを有している。
【0078】
一方、後群121の最も物体側に位置するレンズ、すなわち第3レンズ30は、その物体側の面に、第2光学有効部31と、光軸Xに対して垂直な第3平面部31aとを有している。第3平面部31aは、第3光学有効部31の周囲に位置している。第3平面部31aは、光軸Xと平行な方向に突出する第3突起部31cを有している。
【0079】
ここで、第1突起部22b、および第2突起部31bは、それぞれ光軸Xを中心とした円周上に円環状に形成されている。第1突起部22bの外周面22cは、第2突起部31bの内周面31cより小さく設定されている。従って、前群111を後群121に載置すると、第1突起部22bと第2突起部31bが遊嵌された状態になる。この直径の差が、図5に示した、調心を行う際の適切な間隙D1となる。また、第1突起部22bおよび第2突起部31bは、その立ち上がり面が傾斜面となっているため、載置する際にガイドとなり、載置時の位置ずれを防止する。さらに、第2突起部31bの先端部が第1平面部22aに当接した状態となるため、前群111と後群121とのレンズ間隔を正確に維持した状態になる。
【0080】
前群111と後群121の光軸Xは、それぞれ間隙D1の領域内に位置するため、ある程度光軸が合った状態となり、評価器からは初期ピークが出現する。その後、前群111を水平に移動してピークが最大になる位置に調整する。このようにして調心した後、前群111と後群121との隙間400から接着剤300を流入して前群111と後群121とを固定し、撮像レンズ3が完成する。
【0081】
なお、上記第3実施形態は、前群111の第1レンズ10と第2レンズ20とをあらかじめ調心した組立体とした例を説明したが、それに限定されるものではない。例えば、後群121に第2レンズ20を載置して調心後、接着固定し、その後第1レンズ10を載置して調心後、接着固定してもよい。
【0082】
上記実施形態において、第1突起部と第2突起部との間隙(調心範囲)をD1としたとき、以下の条件式(1)を満足するようになっている。
(1)5μm<D1<50μm
条件式(1)を満足することで、前群と後群の調心前の初期解像ピークが出現しやすくなる。
【0083】
また、上記第3実施形態おいて、第3突起部と第4突起部との間隙(調心範囲)をD2としたとき、以下の条件式(2)を満足するようになっている。
(2)5μm<D2<50μm
条件式(2)を満足することで、2枚で構成される前群の調心前の初期解像ピークが出現しやすくなる。
【0084】
また、第一突起部と第2突起部が対向する面には傾斜面が形成されているが、その傾斜面と光軸とのなす角度αは、以下の条件式(3)を満足するようになっている。
(3)10°<α<30°
条件式(3)を満足することで調心時に群を水平方向に移動させたとき、乗り上げによる組立時のエラーを防止できる。
【0085】
(付記事項)
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、各レンズの形状や、レンズの枚数といった基本的構成は適宜選定すればよい。
【符号の説明】
【0086】
1、2、3:撮像レンズ
10:第1レンズ
20:第2レンズ
30:第3レンズ
40:第4レンズ
50:第5レンズ
60:第6レンズ
110、111:前群
120、121:後群
101:第1の鏡筒
201、202:第2の鏡筒
300:接着剤
500:遮光板
12:第1光学有効部
21:第2光学有効部
31:第3光学有効部
12a:第1平面部、第4平面部
21a:第2平面部、第3平面部
12b:第1突起部、第4突起部
21b:第2突起部、第3突起部
X :光軸
L1:第1レンズ
L2:第2レンズ
L3:第3レンズ
L4:第4レンズ
L5:第5レンズ
L6:第6レンズ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8