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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】画像形成装置、およびシート判定装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20240502BHJP
   B65H 7/12 20060101ALI20240502BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G03G15/00 303
B65H7/12
G03G15/00 480
G03G21/00 370
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020090825
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021189204
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市野 敏之
(72)【発明者】
【氏名】西村 直記
(72)【発明者】
【氏名】熊田 博光
(72)【発明者】
【氏名】門出 昌文
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-034667(JP,A)
【文献】特開2014-235232(JP,A)
【文献】特開2019-123606(JP,A)
【文献】特開2017-167184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
B65H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に設けられた超音波センサと、
前記超音波センサの出力信号に基づき前記画像形成装置を制御する制御手段と、
前記超音波センサの出力信号に基づき気圧を推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された気圧に基づき画像形成条件を決定する決定手段と、を有し、
前記制御手段は、シートが前記超音波センサを通過している期間において前記超音波センサから出力される出力信号に基づき前記シートの種類を判別する判別手段を含み、
前記超音波センサは、前記シートの種類を判別するためと、前記気圧を推定するためとで兼用されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、シートが前記超音波センサを通過している期間において前記超音波センサから出力される出力信号に基づき前記シートの重送を検知する検知手段を含み、
前記超音波センサは、さらに、前記シートの重送を検知するために使用されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成装置に関連した温度を取得する取得手段と、
予め取得された基準気圧と、基準温度と、前記シートが前記超音波センサを通過していない期間において前記超音波センサから出力される出力信号のレベルである基準レベルとを記憶する記憶手段と、をさらに有し、
前記推定手段は、前記取得手段により取得された温度と、前記シートが前記超音波センサを通過していない期間において前記超音波センサから出力される出力信号のレベルと、前記記憶手段から読み出された、前記基準気圧と、前記基準温度と、前記基準レベルとに基づき前記気圧を推定するように構成されていることを特徴とする請求項またはに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、さらに、前記気圧を推定するための関数またはテーブルを記憶しており、
前記推定手段は、前記取得手段により取得された温度と、前記シートが前記超音波センサを通過していない期間において前記超音波センサから出力される出力信号のレベルと、前記記憶手段から読み出された、前記基準気圧と、前記基準温度と、前記基準レベルとを前記関数または前記テーブルに適用することで前記気圧を推定するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記画像形成装置の外気温度または前記画像形成装置の定着手段の温度を検知する温度センサを含むことを特徴とする請求項またはに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記推定手段に前記気圧を推定することを許可する許可条件が満たされているかどうかを判定する判定手段をさらに有し、
前記推定手段は、前記許可条件が満たされている場合に前記気圧の推定を実行し、前記許可条件が満たされていない場合に前記気圧の推定を実行しないことを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記許可条件は、前記温度センサの温度と前記超音波センサとの温度との差が所定閾値以下であることを含む請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記許可条件は、前記画像形成装置が画像を形成していない時間が所定時間以上であることを含む請求項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記判別手段により判別された前記シートの種類に基づき第一画像形成条件を決定し、
前記決定手段は、前記気圧に基づき第二画像形成条件を決定するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記シートの種類の選択を受け付ける選択手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記選択手段により受け付けられたシートの種類に基づき第一画像形成条件を決定し、
前記決定手段は、前記気圧に基づき第二画像形成条件を決定するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記選択手段により受け付けられたシートの種類に基づき前記検知手段で使用される検知閾値を設定する設定手段をさらに有し、
前記検知手段は、前記設定手段により設定された前記検知閾値と、前記シートが前記超音波センサを通過している期間において前記超音波センサから出力される出力信号のレベルとに基づき前記シートの重送を検知するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第一画像形成条件は、前記画像形成装置に設けられた定着手段の定着条件を含み、
前記第二画像形成条件は、前記画像形成装置の現像電圧または帯電電圧を含むことを特徴とする請求項ないし11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
シートを搬送する搬送路に設けられた超音波センサと、
前記シートが前記超音波センサを通過している期間において前記超音波センサから出力される出力信号に基づき前記シートの種類を判別する判別手段と、
前記シートが前記超音波センサを通過していない期間において前記超音波センサから出力される出力信号に基づき気圧を推定する推定手段と、を有し、
前記超音波センサは、前記シートの種類を判別するためと、前記気圧を推定するためとで兼用されることを特徴とするシート判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気圧推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置はシートの種別に応じて画像形成条件を制御する。特許文献1は、超音波センサを用いてシートの坪量を検知することを提案している。音波は、空気の密度により伝わりにくさ(音響インピーダンス)が変化するという性質を有している。したがって、音波の受信レベルは超音波センサの設置場所における気圧の影響を受ける。特許文献2は、超音波センサを用いて気圧を推定し、推定された気圧を用いてシートの重送を判別するための閾値を設定することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-107030号公報
【文献】特開2017-039589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気圧を用いて画像形成条件を決定するためには、気圧を高精度に取得することが求められる。しかし、高精度の気圧計は高価であるため、比較的に安価な構成で精度よく気圧を取得できることが必要である。そこで、本発明は、比較的に安価な構成で精度よく気圧を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、たとえば、
画像形成装置に設けられた超音波センサと、
前記超音波センサの出力信号に基づき前記画像形成装置を制御する制御手段と、
前記超音波センサの出力信号に基づき気圧を推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された気圧に基づき画像形成条件を決定する決定手段と、を有し、
前記超音波センサは、前記画像形成装置を制御するためと、前記気圧を推定するためとで兼用されることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、比較的に安価な構成で精度よく気圧を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電子機器の一例である画像形成装置を示す図。
図2】シート判定装置を示す図。
図3】駆動信号および受信信号を示す図。
図4】気圧または温度に対する受信レベルを示す図。
図5】坪量に対する評価値(IR値)を示す図。
図6】気圧推定方法を示すフローチャート。
図7】画像形成装置を示す図。
図8】重送判定装置を示す図。
図9】坪量に対する受信レベルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態が詳しく説明される。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一または同様の構成に同一の参照番号が付され、重複した説明は省略される。
【0009】
本実施形態では、基準環境で測定された基準パラメータと画像形成装置の設置場所で測定された超音波の受信レベルとを用いて、当該設置場所における気圧が推定される。基準環境とは、たとえば、画像形成装置を製造する工場であってもよい。基準パラメータは、たとえば、基準温度、基準気圧、および、シートを介さない超音波の受信レベル(基準受信レベル)であってもよい。設置場所で測定される超音波の受信レベルは、シートを介さない超音波の受信レベルであってもよい。これにより、比較的に安価な構成で精度よく気圧を取得することが可能となる。
【0010】
<実施例1>
[画像形成装置]
図1が示すように、画像形成装置1は、中間転写ベルト17を用いてフルカラー画像をシートPに形成する電子写真方式の画像形成装置である。画像形成部50は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)といった四色のトナーを重ね合わせることでカラー画像を形成する。なお、参照符号の末尾に付与されているYMCKの文字はトナーの色を示しており、四色に共通する事項が説明される際には、YMCKの文字は省略される。
【0011】
感光ドラム11は静電潜像およびトナー画像を担持する感光体および像担持体である。帯電ローラ12は感光ドラム11の表面電位が一様な電位となるように感光ドラム11の表面を帯電させる。露光装置13は画像データに対応した光で感光ドラム11上を走査することで静電潜像を形成する。トナーカートリッジ14はトナーを収容するプロセスカートリッジである。現像ローラ15はトナーを用いて静電潜像を現像してトナー画像を形成する。一次転写ローラ16はトナー画像を感光ドラム11から中間転写ベルト17へ転写する。中間転写ベルト17上に順番に四色のトナー画像を重ねて転写されることでフルカラー画像が形成される。中間転写ベルト17は二次転写ローラ19へトナー画像を搬送する。
【0012】
給紙カセット2は複数のシートPを収容する収容庫である。給紙ローラ4は、シートPをピックアップして搬送路へ送り出す。搬送路には搬送ローラ5およびレジストローラ6が配置されている。搬送ローラ5およびレジストローラ6は、二次転写ローラ19へシートPを搬送する。
【0013】
二次転写ローラ19はトナー画像を中間転写ベルト17からシートPへ転写する。定着器20は、シートPを搬送しながら、シートPとトナー画像に熱と圧力を加えて、トナー画像をシートP上に定着させる。排紙ローラ21は、定着器20によって定着が行われたシートPを排紙する。
【0014】
温度センサ40は画像形成装置1の外気温度を検知する。シート判別装置30はシートPの種別(例:坪量)を検知するメディアセンサである。制御部10は、シートPの種別に応じて画像形成条件を制御する。
【0015】
ここで、紙種と画像形成条件(例:二次転写の条件、定着条件)との関係は以下の通りである。一般的に、シートPの坪量に依存してシートPの抵抗値が変化する。そこで、制御部10は、坪量(紙種)に応じてトナーを転写するための二次転写の条件を制御する。シートPの坪量に依存してシートPの熱容量が異なる。したがって、制御部10は、坪量(紙種)に応じてトナーを定着するための定着温度、定着時間、および搬送速度などの定着条件を制御する。このように紙種(坪量)に応じて適切な画像形成条件が異なるため、制御部10は、シート判別装置30によって判別された紙種に応じて画像形成条件を設定する。
【0016】
[シート判別装置]
図2はシート判別装置30と制御部10を示している。シート判別装置30は、超音波センサ31、発信制御部234、および検知部235を有している。超音波センサ31は坪量を検知するセンサとして利用される。超音波センサ31は発信部232と受信部233とを有している。発信部232は超音波を発信する超音波素子を有する。受信部233は超音波を受信する超音波素子を有する。発信部232は、発信制御部234から入力される駆動信号に応じた周波数(例:40kHz)の音波を発信する。受信部233は発信部232から発信された音波を受信して、受信された音波の音圧に応じた受信信号を検知部235へ出力する。実施例1では、音波の周波数が40kHzと仮定されているが、これは一例に過ぎない。周波数は、シートPの坪量の特性値を検知可能な周波数であればよい。
【0017】
発信部232と受信部233は、シートPを介して音波を送受信できるように、シートPの搬送路の近傍に配設される。発信制御部234は、制御部10からの駆動信号を増幅して発信部232を駆動する増幅回路を有する。検知部235は、受信部233から出力された検知信号を増幅する増幅回路と、増幅された検知信号を半波整流して受信信号を生成する整流回路とを有する。検知部235により生成された受信信号は、制御部10のCPU200のADポートに入力される。ADポートは、入力されたアナログ信号をサンプリングしてデジタル値に変換するAD変換回路を含む。
【0018】
制御部10はCPU200と記憶部210を有している。記憶部210はROM領域とRAM領域とを有している。CPU200は、記憶部210のROM領域に記憶されている制御プログラムを実行することで、様々な機能を実現する。とりわけ、CPU200は、超音波センサ31を駆動するための駆動信号を生成したり、ADポートに入力された受信信号に基づきシートPの坪量を演算したり、気圧を推定したりする。
【0019】
CPU200は、ADポートで受信信号を変換して得られたデジタル値に基づいて受信信号のピーク値を受信レベルとして抽出する。ピーク値の代わりに、受信信号のレベルに関する特性値(例:実効値、平均値)が採用されてもよい。
【0020】
Va演算部201は、シートPを介さずに超音波センサ31により取得された受信信号の受信レベルVaを演算する。「シートPを介さず」とは、発信部232と受信部233との間にシートPが存在していないことを意味する。Vp演算部202は、シートPを介して超音波センサ31により取得された受信信号の受信レベルVpを演算する。IR演算部203はIR値を演算する。IR値は、坪量演算に使用されるパラメータ(評価値)である。IR値の詳細は後述される。坪量演算部204は、IR値を用いてシートPの坪量を演算する。条件制御部206は、坪量に基づき画像形成条件(例:定着条件)を制御したり、気圧に基づき画像形成条件(例:帯電条件、現像条件)を制御したりする。坪量に基づき画像形成条件を制御する手法としてはすでに知られている手法が使用されてもよい。気圧推定部205は、温度センサ40により取得された温度Ta、記憶部210に記憶されている基準パラメータおよび受信レベルVaに基づき気圧を推定する。
【0021】
現像電源221は、現像を促進するために現像ローラ15に印加される現像電圧(現像バイアス)を生成する電源回路である。帯電電源222は、感光ドラム11を帯電させるために帯電ローラ12に印加される帯電電圧(帯電バイアス)を生成する電源回路である。定着器20は、ヒータを有し、坪量に応じて決定された定着温度が得られるようにヒータを制御する。
【0022】
[タイムチャート]
図3は駆動信号と受信信号との関係を示している。縦軸は駆動信号のレベルと受信信号のレベルを示す。横軸は時間を示す。駆動信号は一定周期のパルス波(バースト波)である。一例として周波数は40kHzである。パルス数は2パルスである。検知部235で生成された受信信号の受信レベルは、受信部233によって受信された音波の音圧に相関している。受信信号は、発信部232の音波の周波数と同じ40kHzの半波毎にピーク値を持つ。駆動信号のパルス数は2パルスであるが、受信信号の波形の個数は2を超える。これは、発信部232または受信部233で残響が発生するからである。制御部10は、複数の波形のうち時間軸上で2番目の波形を検知し、そのピーク値を抽出する。Va演算部およびVp演算部は、駆動信号と同期した任意の所定時間範囲(検知ウインドウ)において受信信号を検知することで、2番目の波形のピーク値(受信レベルVa,Vb)を取得する。図3が示すように、所定時間範囲の始点は駆動信号の出力を開始したタイミングであってもよい。所定時間範囲の幅(長さ)は、発信部232と受信部233との距離と超音波の音速との関係から予め計算して設定される。
【0023】
制御部10は、シートPが発信部232と受信部233の間を搬送されている期間において、発信制御部234に駆動信号を送信し、複数のピーク値を順次抽出する。シートPを介して超音波を受信したときの受信レベルVpは、主にシートPの坪量に依存して変化する。よって、制御部10は、シートPに起因した受信レベルVpの変化を用いることで、シートPの坪量を検知する。
【0024】
[検知結果の補正]
●位置のばらつき
受信部233と発信部232の位置関係が設計上で想定された関係に対してばらつく。このばらつきは、超音波センサ31の製造工程で発生したり、超音波センサ31を画像形成装置1への取り付ける工程で発生したりする。このばらつきは超音波の受信レベルのばらつきをもたらす。そこで、IR演算部203は、シートPがないときの受信レベルVaと、シートPがあるときの受信レベルVpとに基づき位置補正係数Iを演算する。
【0025】
I=Vp/Va ・・・ (1)
●環境のばらつき
超音波センサ31の周囲環境(例:気圧、気温)に応じて坪量の検知結果がばらつく。気圧や気温に依存して空気が膨張または収縮することで、空気の密度が変化する。一般的に、空気の密度が小さいと超音波は伝わりにくくなる。逆に、空気の密度が大きいと超音波は伝わりやすい。即ち、周囲の環境に依存して音の伝わりにくさ(周囲環境の音響インピーダンス)が変化する。
【0026】
図4(A)は気圧と受信レベルの関係を示すグラフである。縦軸は受信レベルを示す。横軸は気圧を示す。気圧が低くなるにしたがって空気の密度が小さくなるため、受信レベルが低くなる。図4(B)は気温と受信レベルの関係を示すグラフである。縦軸は受信レベルを示す。横軸は温度を示す。温度が高くなるにしたがって空気の密度が小さくなるため、受信レベルが低くなる。このように、超音波センサ31の受信レベルは、気圧や気温による音響インピーダンスの変化によって変動する。
【0027】
工場出荷時などに基準環境パラメータが取得されてもよい。ここでは、画像形成装置1の工場出荷時に基準気圧A0および基準気温T0が測定され、記憶部210のROM領域に格納される。また、超音波センサ31をシートPが通過していないときの受信レベルである基準受信レベルVa0も測定されて記憶部210に格納される。IR演算部203は、基準受信レベルVa0と、シートPの坪量検知を行う直前に取得された受信レベルVaとに基づき環境補正係数Rを演算する。
【0028】
R=Va0/Va ・・・ (2)
IR演算部203は、位置補正係数Iおよび環境補正係数Rを演算することで、位置のばらつきと環境のばらつきが検知精度に与える影響を軽減する。IR演算部203は、位置補正係数Iと環境補正係数Rを乗算してIR値を演算する。
【0029】
IR=I×R ・・・ (3)
図5は、26種類のシートPを電子秤で測定して得られた坪量の実測値と、(3)式を用いて演算されたIR値との関係を示している。縦軸はIR値を示す。横軸は坪量を示す。シートPの坪量が多くなるにしたがって、IR値が低下して行く。これは、坪量が多くなるにしたがって、シートPを透過する超音波の減衰量が多くなるためである。坪量演算部204は、図5に示された坪量とIR値との関係を表す近似式Xを用いることで、IR値からシートPの坪量Gを演算する。
【0030】
G=X(IR) ・・・ (4)
さらに、条件制御部206は、坪量Gに基づき画像形成条件(例:定着温度または搬送速度)Uを決定する。
【0031】
U=V(G) ・・・ (5)
ここで、関数Vは坪量に対する定着条件を演算するための式である。画像形成装置1の工場出荷時に様々な坪量に対して実験またはシミュレーションを実行することで、関数Vは決定される。関数Vは坪量と定着条件との関係を保持したテーブルであってもよい。関数Vまたはテーブルは記憶部210に格納される。
【0032】
[気圧演算方法]
前述されたよう記憶部210は、基準気圧A0、基準気温T0、および基準受信レベルVa0を記憶している。一方、画像形成装置1に搭載された温度センサ40は、画像形成装置1の内部の温度Tを検知する。
【0033】
図4(B)が示すように、超音波センサ31の周辺の温度が変化すると、その受信レベルも変化してしまう。温度センサ40が超音波センサ31の近傍に設置されると、温度Tを用いて精度よく気圧Aが求められる。なお、超音波センサ31に対して専用の温度センサを設けると、画像形成装置1のコストアップに繋がってしまう。よって、別の目的で画像形成装置1に搭載されている温度センサを利用できれば、安価な気圧推定装置が実現される。このように超音波センサ31に加えて温度センサについても他の目的と兼用可能とすることで、さらに安価な気圧推定装置が実現されよう。
【0034】
実施例1では、温度センサ40は、画像形成装置1の外気温度を検知する目的で設置されている。しかし、他の目的で画像形成装置1に備えられている温度センサが使用されてもよい。たとえば、定着器20を構成するセラミックヒータに近接し、セラミックヒータを所望の温度に保つよう通電を制御する目的で備えられている定着温度センサが使用されてもよい。露光装置13に近接して配置された温度センサが使用されてもよい。露光装置13を構成するレンズおよびミラーなどの部材を保持するモールド材は熱変形する。熱変形は、露光装置13のレーザ光の照射位置の変化をもたらす。よって、この温度センサの検知結果に応じCPU200は、レーザ光の照射タイミングを制御して、レーザ光の照射位置を補正する。
【0035】
超音波センサ31の近傍に温度センサ40が配置されていない場合、超音波センサ31の温度と温度センサ40の温度が一致する条件下で、温度が測定される必要がある。たとえば、画像形成動作が終了してから一定の時間が経過していることが条件とされてもよい。これは、一定時間が経過すると、超音波センサ31の温度と温度センサ40の測定温度とがほぼ一致するからである。
【0036】
画像形成装置1の設置場所で、制御部10はシートPの坪量検知を行う直前にシートPがないときの受信レベルVaを取得してもよい。ここで、直前とは、給紙ローラ4がシートPの給紙を開始したタイミングから、シートPの先端が超音波センサ31に到着するまでの期間をいう。
【0037】
気圧推定部205は、基準気圧A0、基準気温T0、基準受信レベルVa0、画像形成装置1の設置場所における温度T、および受信レベルVaから気圧Aを演算する。基準気圧A0、基準気温T0、および基準受信レベルVa0は記憶部210から読み出される。気圧Aは、たとえば、次式から演算されてもよい。
【0038】
A=A0×(Va/Va0)×((T×T0.5)/(T0×T00.5)) ・・・ (6)
[気圧に応じた画像形成条件]
●現像電圧
現像方式としてジャンピング方式が採用されている場合、感光ドラム11と現像ローラ15との間にギャップが設けられる。現像電源221が直流と交流とを重畳して生成した現像電圧を現像ローラ15に印可することで、このギャップに現像電界が生じる。交流電圧としては正弦波、三角波、または矩形波などが採用される。現像ローラ15から感光ドラム11に向かう方向にトナーを付勢する電界を形成する現像電圧のピーク値はVmaxと呼ばれる。感光ドラム11から現像ローラ15に向かう方向にトナーを付勢する電界を形成する現像電圧のピーク値はVminと呼ばれる。
【0039】
高画質化は、たとえば、最大画像濃度を高くすることで実現される。最大画像濃度とは、画像データにおける各画素がとりうる最大濃度(階調)に対応したトナー画像の最大濃度である。画像濃度を高めるためには、現像ローラ15上のトナーをより多く感光ドラム11上に移動させればよい。そのための方法の一つとしてVmaxを増大する方法がすでに知られている。しかし、Vmaxを増大させると感光ドラム11と現像ローラ15との間でリークが発生する可能性が高くなる。このリークにより感光ドラム11や現像ローラ15に損傷が発生しうる。
【0040】
特に気圧の低い高地では、リークが発生する限界値が、低地に比べて低くなる。一方で、低地では限界値が相対的に高くなる。画像形成装置1は高地であっても、低地であっても精度よく画像を形成できなければならない。そのため、Vmaxの値は、高地を想定して決定された限界値以下となるように決定される。これは、低地では、Vmaxをより高く設定可能であるにも拘らず、高地のための限界値によって制限を受けることを意味する。よって、低地と高地の両方において、高画質化を達成することは困難であった。
【0041】
仮に、画像形成装置1の設置場所における気圧Aを高精度に取得できれば、気圧Aに基づき、その設置場所に適した現像電圧を決定可能となる。つまり、各設置場所に応じて、リークを発生させることなく、高画質化を達成可能な、現像電圧を設定することが可能となる。
【0042】
Vmax=Y(A) ・・・(7)
ここで関数Yは、様々な気圧AとVmaxとの関係を表す数式であり、予め記憶部210のROM領域に記憶されており、CPU200によって利用される。
【0043】
●帯電電圧
感光ドラム11は、感光ドラム11に接触している帯電ローラ12に画像形成装置1の帯電電源222から直流の帯電電圧(帯電バイアス)Vdを印可される。これにより、感光ドラム11の表面電位がVDとなる。感光ドラム11の表面電位VDは放電開始電圧Vsの影響を受ける。
【0044】
VD=Vd-Vs ・・・ (8)
パッシェンの法則によれば、気圧が低くなるほど、放電開始電圧Vsは低くなる。そのため、画像形成装置1の設置場所における気圧の影響により、表面電位VDにはばらつきが生じていた。よって、低地と高地との両方で、高画質を達成することは困難であった。
【0045】
画像形成装置1の設置場所における気圧Aを高精度に取得できれば、帯電電圧Vdを、気圧Aに基づき適切に設定可能となる。これにより、様々な設置場所において表面電位VDを安定化させることが可能となり、高画質な画像が得られる。
【0046】
Vd=Z(A) ・・・(9)
ここで関数Zは、様々な気圧Aと帯電電圧Vdとの関係を表す数式であり、予め記憶部210のROM領域に記憶されており、CPU200によって利用される。
【0047】
[フローチャート]
図6はCPU200が実行する気圧演算処理を含む画像形成条件の制御方法を示すフローチャートである。画像形成装置1の電源がONされると、CPU200は以下の処理を実行する。
【0048】
S601でCPU200は温度条件が満たされているどうかを判定する。温度条件とは、温度Tの取得が許可される条件である。温度条件は、たとえば、超音波センサ31の温度と温度センサ40の温度がほぼ一致する条件である。両者が完全に一致することは必要ではなく、両者の差の絶対値が所定閾値以下となればよい。たとえば、温度条件は、前回の画像形成が終了したタイミングから所定時間が経過していることであってもよい。CPU200は、記憶部210のRAM領域に記憶されている画像形成履歴を参照して前回の画像形成が終了したタイミングを取得してもよい。また、所定時間も記憶部210に記憶されており、CPU200によって読み出されて使用される。あるいは、前回の印刷ジョブにおける画像形成枚数が少ない場合は所定時間が相対的に短く設定されてもよい。前回の印刷ジョブにおける画像形成枚数が多い場合は所定時間が相対的に長く設定されてもよい。このように、CPU200は、画像形成履歴から前回の印刷ジョブにおける画像形成枚数を取得し、画像形成枚数に基づき所定時間を決定し、所定時間に基づき温度条件を決定してもよい。温度条件が満たされてない場合、CPU200は温度Tを取得しない。一方、温度条件が満たされている場合、CPU200はS602に進む。
【0049】
S602でCPU200(気圧推定部205)は温度センサ40の検知結果に基づき温度Tを取得する。S603でCPU200(Va演算部201)は、超音波センサ31を駆動して、シートPが超音波センサ31を通過していないときの受信レベルVaを取得する。
【0050】
S604でCPU200(気圧推定部205)は基準気圧A0、基準気温T0、基準受信レベルVa0、温度T、および受信レベルVaを用いて気圧Aを演算する。たとえば、気圧推定部205は、記憶部210から基準気圧A0、基準気温T0、および基準受信レベルVa0を読み出して取得する。さらに、気圧推定部205は、これらのパラメータを(6)式に代入することで気圧Aを求める。
【0051】
S605でCPU200は、ユーザから印刷指示を入力されたかどうかを判定する。CPU200は、印刷指示が入力されるまで、ここで待機する。印刷指示が入力されると、CPU200はS605に進む。
【0052】
S606でCPU200(条件制御部206)は気圧Aに基づき画像形成条件を決定する。条件制御部206は、(7)式を用いて限界値Vmaxを求め、限界値Vmax以下となるように現像電圧を決定する。また、条件制御部206は、(9)式を用いて帯電電圧Vdを決定する。その後、CPU200は、印刷ジョブと画像形成条件にしたがって画像形成装置1を制御してシートPに画像を形成する。
【0053】
さらに、CPU200(条件制御部206)は、坪量に基づき画像形成条件(例:定着条件)を決定する。上述されたように、CPU200はシート判別装置30を用いてIR値を求め、IR値に基づき坪量を演算し、坪量に基づき定着条件を決定する。
【0054】
実施例1によれば、基準気圧A0、基準気温T0、基準受信レベルVa0、温度T、および受信レベルVaに基づき気圧Aが精度よく推定される。ここで、温度Tは温度センサ40により取得されるが、温度センサ40は他の目的(例:外気温度、定着温度、露光装置13の温度の取得)のためにセンサである。よって、気圧Aを取得するための専用の温度センサは不要である。また、気圧Aを測定するための気圧センサも不要である。よって、安価に気圧Aを取得することが可能となる。なお、気圧Aを推定するために必要となる受信レベルVaは、シート判別装置30に設けられた超音波センサ31により取得可能である。よって、気圧Aを取得するための専用の超音波センサは不要である。よって、安価に気圧Aを取得することが可能となる。さらに、気圧Aに基づき画像形成条件が制御されるため、様々な気圧において高画質化が達成される。高画質化とは、たとえば、より高濃度のトナー画像をシートPに形成できることである。
【0055】
<実施例2>
実施例1では、シートPの種別を判別するための超音波センサ31を用いて、気圧Aが推定されている。実施例2では、シートPの重送を判定するための超音波センサを用いて気圧Aが推定される。つまり、気圧の推定方法自体は実施例1と実施例2とでは共通である。実施例1と実施例2とでは、受信レベルを取得するための超音波センサ31の目的が異なるにすぎない。実施例2では、シートPの種別は、ユーザにより設定されてもよい。
【0056】
[画像形成装置]
図7は実施例2の画像形成装置1を示している。実施例2において実施例1と共通する事項には同一の参照符号が付与されており、その説明は援用される。図7が示すように、実施例2では、重送判別装置700が給紙ローラ4よりも下流側であって搬送ローラ5よりも上流側に設けられている。給紙カセット2から二枚以上のシートPが給紙されてしまうことがある。この現象は重送とよばれる。通常は一枚ずつシートPが搬送ローラ5へ渡される。重送判別装置700が重送を検知すると、CPU200は、給紙ローラ4および搬送ローラ5などを停止させる。
【0057】
[重送検知]
図8は重送判別装置700と制御部10とを示している。重送判別装置700はシート判別装置30とよく似ており、音波の周波数が300kHzである点だけ異なる。パルス数が2であることや、二番目の波形のピーク値が検知される点も実施例2は実施例1と共通している。シート判別装置30の代わりに重送判別装置700から出力される受信信号の受信レベルが用いられて気圧Aが推定される。また、実施例2では、ユーザ等により入力されたシートPの種別情報(坪量)に基づき画像形成条件(定着条件)が決定される。そのため、実施例2ではIR演算部203と坪量演算部204は省略可能である。
【0058】
CPU200は閾値設定部801と重送検知部802を有している。閾値設定部801はシートPの紙種(例:坪量)を考慮して閾値Vthを決定して重送検知部802に設定する。シートPの紙種(例:坪量)は、たとえば、入力部804からユーザによって入力されてもよい。重送検知部802が閾値Vthと受信レベルVpに基づき重送を検知すると、CPU200はモータ803を停止させる。モータ803は、給紙ローラ4および搬送ローラ5を駆動するモータである。閾値Vthは(10)式を満たすように決定される。
【0059】
Vpdouble < Vth < Vpsingle ・・・ (10)
ここで、Vpsingleは一枚のシートPが超音波センサ31を搬送(単送)されている場合の受信レベルである。Vpdoubleは二枚のシートPが超音波センサ31を搬送(重送)されている場合の受信レベルである。重送時の受信レベルVpdoubleは、単送時の受信レベルVpsingleと比較して、小さくなる。これは、重なっているシートPの枚数が増加すればするほど、超音波の減衰量が増加して、受信レベルが小さくなるためである。したがって、重送時の受信レベルVpdoubleと単走時の受信レベルVpsingleの間に、閾値Vthが設定される。
【0060】
図9はシートPの坪量と受信レベルVpsingle、Vpdoubleとの関係の一例を示す。縦軸は受信レベルを示す。横軸は坪量を示す。シートPの坪量が多くなるにしたがって受信レベルVpsingle、Vpdoubleが低下する。重送時の受信レベルVpdoubleは、単走時の受信レベルVpsingleの凡そ半分程度になっている。これは重送時のシートPの厚みが、単走時のシートPの厚みの二倍になっているためである。重送時に二枚のシートPの間に空気層ができていた場合は、さらに受信レベルが低下する。
【0061】
図9が示すように、受信レベルVpsingle、Vpdoubleは、坪量が増加するにつれて、減少する。仮に、坪量が120gsmであるときのVpsingleとVpdoubleとの中間値が閾値Vthとして固定されたとする。この場合、120gsmよりも大きな坪量のシートPでは、一枚のシートPであっても、受信レベルVpsingleが閾値Vthよりも小さくなってしまう。これは、重送の誤検知を招く。120gsmよりも小さな坪量のシートPでは、VpdoubleがVthを超えてしまうことがある。この場合、実際にシートPの重送が発生しているにも拘らず、単送と誤検知されてしまう。
【0062】
したがって、閾値VthはシートPの紙種(坪量)に応じて適切に設定される必要がある。たとえば、ユーザは、入力部804(画像形成装置1に備えられている表示パネルまたは、画像形成装置1に接続されるパーソナルコンピュータなどの外部装置)を介して、シートPの紙種を選択する。記憶部210には、様々なシートPの紙種と、それに対応する適切な閾値Vthとが格納されている。閾値設定部801は、入力された紙種(坪量)に対応した閾値Vthを記憶部210から読み出して重送検知部802に設定する。
【0063】
閾値Vthは、実験またはシミュレーションに基づき決定される。たとえば、様々な紙種のシートPの坪量が電子秤で測定される。また、様々な紙種のシートPについて、単送時の受信レベルと、重送時の受信レベルとが測定される。各坪量ごとに(10)式を満たすように閾値Vthが決定され、坪量(紙種)と関連付けて閾値Vthが記憶部210のROM領域に格納される。閾値Vthは、シートPの坪量の面内ばらつきや重送判別装置700を構成する電気部品のばらつきなどを考慮して、さらに調整されてもよい。面内ばらつきとは、一枚のシートPであっても坪量が一様でないことを意味する。
【0064】
実施例2によれば、重送検知のための超音波センサ31を利用して気圧Aが推定される。そのため、比較的に安価な構成で精度よく気圧を取得することが可能となる。さらに、気圧Aに基づき画像形成条件が制御されるため、様々な気圧において高画質化が達成される。
【0065】
<実施例から導き出される技術思想>
[観点1]
超音波センサ31は、画像形成装置1に設けられた超音波センサの一例である。CPU200は超音波センサ31の出力信号に基づき画像形成装置1を制御する制御手段の一例である。気圧推定部205は超音波センサ31の出力信号に基づき気圧を推定する推定手段の一例である。条件制御部206は、推定手段により推定された気圧に基づき画像形成条件を決定する決定手段の一例である。実施例1、2で説明されたように、超音波センサ31は、画像形成装置1を制御するため(第一目的)と、気圧を推定するため(第二目的)とで兼用される。これにより、比較的に安価な構成で精度よく気圧を取得することが可能となる。
【0066】
[観点2]
実施例1で説明されたように、坪量演算部204は、シートが超音波センサを通過している期間において超音波センサから出力される出力信号に基づきシートの種類を判別する判別手段として機能してもよい。この場合、超音波センサ31は、シートの種類を判別するためと、気圧を推定するためとで兼用される。シートが超音波センサを通過している期間とは、シートが発信部と受信部との間に存在する期間を意味する。シートが超音波センサを通過していない期間とは、シートが発信部と受信部との間に存在しない期間を意味する。
【0067】
[観点3]
実施例2で説明されたように、重送検知部802は、超音波センサ31をシートが搬送されている期間において超音波センサ31から出力される出力信号に基づきシートの重送を検知する検知手段として機能してもよい。この場合、超音波センサ31は、シートの重送を検知するためと、気圧を推定するためとで兼用される。
【0068】
[観点4]
温度センサ40は画像形成装置1に関連した温度(例:定着温度、外気温度)を取得する取得手段として機能する。記憶部210は予め取得された基準気圧と、基準温度を記憶する。さらに、記憶部210は、シートが超音波センサを通過していない期間において超音波センサから出力される出力信号のレベルである基準レベルを記憶する。気圧推定部205は、取得手段により取得された温度と、シートが超音波センサを通過していない期間において超音波センサから出力される出力信号のレベルと、記憶手段から読み出された情報に基づき気圧を推定する。この情報は、たとえば、基準気圧と、基準温度と、基準レベルである。このように、既知または基準となる環境下で取得されたパラメータを利用することで、さらに、精度よく気圧を推定することが可能となる。
【0069】
[観点5]
(6)式に関連して説明されたように、記憶部210は、さらに、気圧を推定するための関数またはテーブルを記憶していてもよい。気圧推定部205はこの関数またはテーブルに適用することで気圧を推定してもよい。関数またはテーブルに、取得手段により取得された温度と、シートが超音波センサを通過していない期間において超音波センサから出力される出力信号のレベルと、記憶手段から読み出された、基準気圧と、基準温度と、基準レベルとが適用される。
【0070】
[観点6]
温度センサ40は画像形成装置の外気温度または画像形成装置の定着手段の温度を検知する温度センサであってもよい。これにより、気圧を推定するための専用の温度センサが不要となるため、さらに、安価に気圧を推定することが可能となろう。
【0071】
[観点7]
S601に関連して説明されたように、CPU200は、推定手段に気圧を推定することを許可する許可条件(例:温度条件)が満たされているかどうかを判定する判定手段として機能してもよい。気圧推定部205は、許可条件が満たされている場合に気圧の推定を実行し、許可条件が満たされていない場合に気圧の推定を実行しない。これにより、さらに、精度よく気圧を推定することが可能となる。
【0072】
[観点8、9]
許可条件は、温度センサの温度と超音波センサとの温度との差が所定閾値以下であることであってもよい。所定閾値は、必要とされる気圧の推定精度が達成されるように、予め実験またはシミュレーションを実行することで、決定される。これは、前回の画像形成が終了したタイミングからの経過時間が所定時間以上であることに、置換されてもよい。許可条件は、画像形成装置1が画像を形成していない時間が所定時間以上であることであってもよい。所定時間は、必要とされる気圧の推定精度が達成されるように、予め実験またはシミュレーションを実行することで、決定される。なお、時間の測定はCPU200が備えるRTC(リアルタイムクロック)またはカウンタ回路などにより実行されてもよい。
【0073】
[観点10、13]
実施例1で説明されたように、CPU200は、判別手段により判別されたシートの種類に基づき第一画像形成条件を決定してもよい。CPU200は、気圧に基づき第二画像形成条件を決定するように構成されていてもよい。たとえば、第一画像形成条件は、画像形成装置1に設けられた定着手段の定着条件を含んでもよい。たとえば、第二画像形成条件は、画像形成装置1の現像電圧または帯電電圧を含んでもよい。
【0074】
[観点11]
入力部804は、シートの種類の選択を受け付ける選択手段として機能する。CPU200は、選択手段により受け付けられたシートの種類に基づき第一画像形成条件を決定してもよい。CPU200は、気圧に基づき第二画像形成条件を決定してもよい。
【0075】
[観点12]
閾値設定部801は、選択手段により受け付けられたシートの種類に基づき検知手段で使用される検知閾値を設定する設定手段として機能する。重送検知部802は、設定手段により設定された検知閾値と、シートが超音波センサを通過している期間において超音波センサから出力される出力信号のレベルとに基づきシートの重送を検知してもよい。
【0076】
[観点14]
図2が示すように、シート判別装置30および制御部10はシート判定装置を形成している。超音波センサ31は、シートを搬送する搬送路に設けられた超音波センサの一例である。坪量演算部204は、シートが超音波センサ31を通過している期間において超音波センサ31から出力される出力信号に基づきシートの種類を判別する判別手段として機能する。気圧推定部205は、超音波センサ31をシートが搬送されていない期間において超音波センサ31から出力される出力信号に基づき気圧を推定する推定手段として機能する。超音波センサ31は、シートの種類を判別するためと、気圧を推定するためとで兼用される。
【0077】
[観点15]
図8が示すように、重送判別装置700と制御部10などは重送判定装置を形成している。重送検知部802は、シートが超音波センサを通過している期間において超音波センサから出力される出力信号に基づきシートの重送を検知する検知手段として機能する。気圧推定部205は、シートが超音波センサ31を通過していない期間において超音波センサ31から出力される出力信号に基づき気圧を推定する推定手段として機能する。超音波センサ31は、シートの重送を判別するためと、気圧を推定するためとで兼用される。
【0078】
[観点16]
実施例1、2から導き出されるように、本発明は、気圧推定装置を提供する。超音波センサ31は、気圧を推定する第二目的とは異なる第一目的のために設けられた超音波センサの一例である。CPU200は、超音波センサ31から出力される出力信号に基づき第一目的のために電子機器を制御する制御手段として機能する。画像形成装置1、シート判定装置および重送判定装置などは電子機器の一例である。この場合、第一目的は、画像形成条件を決定すること、シートの種類(例:坪量)を判定すること、または、シートの重送を判定することであってもよい。気圧推定部205は、超音波センサ31から出力される出力信号に基づき第二目的(例:気圧推定)のために気圧を推定する推定手段として機能する。
【0079】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。したがって、発明の範囲を公にするために請求項が添付される。
【符号の説明】
【0080】
1:画像形成装置、32:超音波センサ、10:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9