(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】多重容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
B65D1/02 111
(21)【出願番号】P 2020100424
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 将
(72)【発明者】
【氏名】中谷 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】村屋 美子
(72)【発明者】
【氏名】葛西 知宏
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-083463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0244196(US,A1)
【文献】特開2020-193007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する内容器と、前記内容器を内包する外容器とを備え
、前記外容器の外首部の外周面
に、その周方向に沿っ
て前記外首部の径方向外方に向けて突出する雄ねじ部と
、前記外首部における前記雄ねじ部よりも下方に位置し、前記外首部の径方向外方に向けて突出するシールフランジ部
とが形成され
、前記外首部の外周面の上下方向における前記雄ねじ部と前記シールフランジ部との間に外気導入口が形成され
、前記内容器の内首部の外周面
に、その周方向に沿っ
て前記内首部の径方向外方に向けて突出
し前記外首部の上端に密着して係合する係合部と
、前記係合部に連接
し前記外首部の内周面に密着して当接する当接面
とが形成され、
前記内容器と前記外容器とが剥離可能に構成された多重容器の製造方法であって、
前記外首部を備え前記外容器に成形される外プリフォームの内側に、前記内首部を備え前記内容器に成形される内プリフォームを挿入して仮止め状態で配置させることにより、仮止め状態の多重プリフォームを得る仮止工程と、
前記仮止工程にて得られた仮止め状態の前記多重プリフォームに対してブロー成形を行い、仮止め状態の前記多重容器を成形するブロー成形工程と、
前記ブロー成形工程にて成形された仮止め状態の前記多重容器における、前記内首部を前記外首部の内部に押し込む内容器押込工程と、を有し、
前記仮止工程にて得られた仮止め状態の前記多重プリフォームにおいて、前記当接面の上下方向の長さ
Tは、
前記外首部の上端面から突出する分の長さT1と、前記外首部の内周面に当接する分の長さT2とからなり、前記長さT1は、前記長さT2よりも長く、前記長さTは、前記外首部の上端から前記外首部の前記雄ねじ部の上側ねじ切り始め部の裏面位置までの上下方向の長さ
H1よりも長
く、
前記内容器押込工程では、前記当接面を前記外首部の内周面に当接させつつ、前記内首部を前記長さT1だけ下方へと押し込むことにより、前記係合部を前記外首部の上端面に当接させる
ことを特徴とする多重容器
の製造方法。
【請求項2】
前記外首部の外周面には、前記雄ねじ部の下端に連接するねじ回り止め部が形成され、
前記外気導入口は、前記ねじ回り止め部に対し、前記外容器の中心軸を中心として周方向に略90度ずれて配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の多重容器
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば飲料、液体の調味料、シャンプー、化粧水等の液体の内容物を収容する内容器と、その内容器を内包する外容器とを備え、内容器と外容器とが剥離可能に構成された多重容器が知られている(例えば特許文献1参照)。この多重容器は、例えば、外プリフォームの内側に内プリフォームを配置してなる多重プリフォームをブロー成形することで成形される。
【0003】
この多重容器は、例えば胴部をスクイズ(圧搾)することで液体の内容物を外部に注出することができ、その注出後には、外気導入口より導入した外気(空気)を外容器と内容器との間に導入することで内容器が収縮しつつ外容器は元の形状に戻るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載の多重容器のように、従来の多くの多重容器では、外気を導入するための外気導入口が外容器の外首部に形成されているが、外容器の外首部と、内容器の内首部とが確固に固定されていないと、その外気導入口から導入された外気が外部に漏れ、外気導入口から導入された外気を外容器と内容器との間に安定的に導入させることができない、といった問題があった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題点を解決することを課題の一例とする。すなわち、本発明の課題の一例は、外容器の外首部と内容器の内首部とを確固に固定しつつ、外容器と内容器との間に外気を安定的に導入可能な多重容器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る多重容器の製造方法は、内容物を収容する内容器と、前記内容器を内包する外容器とを備え、前記外容器の外首部の外周面に、その周方向に沿って前記外首部の径方向外方に向けて突出する雄ねじ部と、前記外首部における前記雄ねじ部よりも下方に位置し、前記外首部の径方向外方に向けて突出するシールフランジ部とが形成され、前記外首部の外周面の上下方向における前記雄ねじ部と前記シールフランジ部との間に外気導入口が形成され、前記内容器の内首部の外周面に、その周方向に沿って前記内首部の径方向外方に向けて突出し前記外首部の上端に密着して係合する係合部と、前記係合部に連接し前記外首部の内周面に密着して当接する当接面とが形成され、前記内容器と前記外容器とが剥離可能に構成された多重容器の製造方法であって、前記外首部を備え前記外容器に成形される外プリフォームの内側に、前記内首部を備え前記内容器に成形される内プリフォームを挿入して仮止め状態で配置させることにより、仮止め状態の多重プリフォームを得る仮止工程と、前記仮止工程にて得られた仮止め状態の前記多重プリフォームに対してブロー成形を行い、仮止め状態の前記多重容器を成形するブロー成形工程と、前記ブロー成形工程にて成形された仮止め状態の前記多重容器における、前記内首部を前記外首部の内部に押し込む内容器押込工程と、を有し、前記仮止工程にて得られた仮止め状態の前記多重プリフォームにおいて、前記当接面の上下方向の長さTは、前記外首部の上端面から突出する分の長さT1と、前記外首部の内周面に当接する分の長さT2とからなり、前記長さT1は、前記長さT2よりも長く、前記長さTは、前記外首部の上端から前記外首部の前記雄ねじ部の上側ねじ切り始め部の裏面位置までの上下方向の長さH1よりも長く、前記内容器押込工程では、前記当接面を前記外首部の内周面に当接させつつ、前記内首部を前記長さT1だけ下方へと押し込むことにより、前記係合部を前記外首部の上端面に当接させることを特徴とする。
【0008】
好適には、前記外首部の外周面には、前記雄ねじ部の下端に連接するねじ回り止め部が形成され、前記外気導入口は、前記ねじ回り止め部に対し、前記外容器の中心軸を中心として周方向に略90度ずれて配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外容器の外首部と内容器の内首部とを確固に固定しつつ、外容器と内容器との間に外気を安定的に導入可能な多重容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の多重ボトルを中心軸Oに沿って切断した縦断面図である。
【
図2】(a)は多重プリフォームの側面図であり、(b)は多重プリフォームを(a)とは異なる方向から見た側面図である。
【
図3】(a)は
図2(a)のI-I線断面図において左側に位置する部分を示す部分断面図であり、(b)は
図2(b)のI’-I’線断面図の右側に位置する部分を示す部分断面図である。
【
図4】(a)は
図3(a)に示す多重プリフォームの部分断面図の一部分を拡大して示す部分拡大断面図であり、(b)は
図3(b)に示す多重プリフォームの部分断面図の一部分を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図7】多重ボトルの製造処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の多重ボトルを中心軸Oに沿って切断した縦断面図である。
図2(a)は、多重プリフォームの側面図であり、
図2(b)は、多重プリフォームを(a)とは異なる方向から見た側面図である。
図3(a)は、
図2(a)のI-I線断面図において左側に位置する部分を示す部分断面図であり、
図3(b)は、
図2(b)のI’-I’線断面図において右側に位置する部分を示す部分断面図である。
図4(a)は、
図3(a)に示す多重プリフォームの部分断面図の一部分を拡大して示す部分拡大断面図であり、
図4(b)は、
図3(b)に示す多重プリフォームの部分断面図の一部分を拡大して示す部分拡大断面図である。
図5は、外プリフォームの斜視図である。
図6は、内プリフォームの斜視図である。
図7は、多重ボトルの製造処理を説明するためのフローチャートである。
【0013】
なお、
図3(a)の部分断面図(すなわち
図2(a)のI-I線断面図)における外プリフォーム2の断面部分は、
図5に示す外プリフォーム2を、軸心Xと後述の上側ねじ切り始め部21b-2とを通過する第1切断面S1で切断して得られるものである。また、
図3(b)の部分断面図(すなわち
図2(b)のI’-I’線断面図)における外プリフォーム2の断面部分は、
図5に示す外プリフォーム2を、軸心Xと、後述の第1外気導入口21e-1の中心及び第2外気導入口21e-2の中心とを通過する第2切断面S2で切断して得られるものである。
【0014】
以下の説明において、多重ボトル100の上下方向は、外容器200及び内容器300の開口している側を多重ボトル100の上方とし、外容器200の外底部204及び内容器300の内底部304の側を多重ボトル100の下方として定義される。また、多重プリフォーム1の上下方向は、外プリフォーム2及び内プリフォーム3の開口している側を多重プリフォーム1の上方とし、外プリフォーム2の底部22a及び内プリフォーム3の底部32aの側を多重プリフォーム1の下方として定義される。
【0015】
[多重ボトル]
図1には、多重容器の一例である本実施形態の多重ボトル100をその中心軸Oに沿って切断した縦断面図が示されている。多重ボトル100は、内容物を収容する内容器300と、内容器300を内包する外容器200とを備え、内容器300と外容器200とが剥離可能に構成されている。なお、この多重ボトル100の中心軸Oは、外容器200及び内容器300それぞれの中心軸と一致する。
【0016】
外容器200は、外首部21と、外首部21に連接する外肩部202と、外肩部202に連接する外胴部203と、外胴部203に連接する外底部204とを有している。また、外容器200の内側に配置されている内容器300は、内首部31と、内首部31に連接する内肩部302と、内肩部302に連接する内胴部303と、内胴部303に連接する内底部304とを有している。
【0017】
図1に示す多重ボトル100において、外容器200の外首部21は、螺旋状の雄ねじ部21bが形成されており、更にシールフランジ部21c及びネックリング部21dが形成されている。また、内容器300の内首部31は、後述の係合部31b及び当接面31cを有しており、この当接面31cが、外首部21の内側に当接されて固定されるようになっている。なお、本実施形態において、「螺旋状」とは、外首部21の外周面21a上を回転しながら上昇又は下降する3次元曲線状をいうが、後の
図4の雄ねじ部21bに示すように、その途中で幾つかの切断部分を有するものを含む意味である。
【0018】
多重ボトル100では、例えば外胴部203をスクイズ(圧搾)することで液体の内容物を外部に注出すると、内容器300の内首部31と外容器200の外首部21との間の隙間から外気が導入され、内容器300の内胴部303を外容器200の外胴部203から容易に剥離させることができる。これにより、内容器300が収縮し、外容器200が元の形状に戻る、ということがスムーズに行われるようになる。
【0019】
このような多重ボトル100は、例えば後述の外プリフォーム2の内側に内プリフォーム3配置されてなる多重プリフォーム1をブロー成形することで製造される。この多重プリフォーム1は、内プリフォーム3の上端が、外プリフォーム2の上端よりも突出した状態(仮止め状態)で配置される。そして、この仮止め状態の多重プリフォーム1に対してブロー成形を行うと、内容器300の上端が外容器200の上端から突出した仮止め状態の多重ボトル100が成形される。
【0020】
この仮止め状態の多重ボトル100において、内容器300を外容器200の内部に深く押し込ませると、外容器200の外肩部202の内面に密着している内容器300が下方に撓み、
図1に示すように、外容器200の外肩部202の内面と、内容器300の内肩部302の外面との間に、空気層Wが形成されるようになる。
【0021】
このような多重ボトル100では、内首部31の当接面31cが外首部21の内周面21gに当接されて固定されることで、外容器200の外首部21と内容器300の内首部31とが確固に固定されるが、この押し込みにより空気層Wが形成されることから、外容器200と内容器300との密着(貼りつき)が解消される。
【0022】
また、ブロー成形においては、後述するように、多重プリフォーム1における外プリフォーム2の外首部21以外の部分と内プリフォーム3の内首部31以外の部分とが膨張して多重ボトル100に成形される。そのため、外首部21及び内首部31は、ブロー成形によっても変形せずに同一形状を保っている。
【0023】
すなわち、外容器200の外首部21は、外プリフォーム2の外首部21と同一形状である。また、内容器300の内首部31は、内プリフォーム3の内首部31と同一形状である。また、このような点から、
図1の多重ボトル100(すなわち外容器200及び内容器300)の中心軸Oは、
図5に示す外プリフォーム2の軸心Xと一致する。本実施形態では、多重ボトル100の外首部21及び内首部31の構成について、多重プリフォーム1を用いて以下に説明する。
【0024】
[多重プリフォーム]
多重ボトル100に成形される多重プリフォーム1について
図2~
図6を参照しながら説明する。多重プリフォーム1は、外容器200に成形される外プリフォーム2の内側に、内容器300に成形される内プリフォーム3が配置されて構成される。この多重プリフォーム1は、内プリフォーム3の内首部31の係合部31bと外プリフォーム2の外首部21の上端面21fとの間に空間(
図4(a)、(b)に示す上下方向の長さT1の空間)が生じるように、内プリフォーム3の上端が外プリフォーム2の上端面21fよりも突出した状態(仮止め状態)で存在する形態となっている。このような仮止め状態の多重プリフォーム1を用いて後述のブロー成形を行うことで上述の仮止め状態の多重ボトル100が成形され、その後の内首部31の押し込みにより、
図1の多重ボトル100が製造される。
【0025】
多重プリフォーム1において、外プリフォーム2は、外容器200に成形されるプリフォームである。
図2~
図5に示すように、外プリフォーム2は、外首部21と、外首部21の下方に連接された外有底円筒体22とによって構成される。この外プリフォーム2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂材料からなり、外プリフォーム成形用金型(図示せず)を用いた射出成形により成形される。
【0026】
また、内プリフォーム3は、内容器300に成形されるプリフォームである。
図2~
図4及び
図6に示すように、内プリフォーム3は、内首部31と、内首部31の下方に連接された内有底円筒体32とによって構成される。この内プリフォーム3は、外プリフォーム2と同様に、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂材料からなり、内プリフォーム成形用金型(図示せず)を用いた射出成形により成形される。
【0027】
図2(a)に示すように、多重プリフォーム1において、内プリフォーム3の内有底円筒体32の底部32aの外面は、外プリフォーム2の外有底円筒体22の底部22aの内面に接触しないようになっている。すなわち、多重プリフォーム1は、内プリフォーム3の底部32aと外プリフォーム2の底部22aとの間に空間が設けられるように構成されている。
【0028】
図2~
図5に示すように、外プリフォーム2における外首部21の外周面21aには、その周方向に沿って、螺旋状の雄ねじ部21bと、外首部21における雄ねじ部21bよりも下方に位置するシールフランジ部21cと、外首部21におけるシールフランジ部21cよりも下方に位置するネックリング部21dとが形成されている。また、外首部21の外周面21aには、雄ねじ部21bの下端に連接するねじ回り止め部21b-10が形成されている。
【0029】
雄ねじ部21bは、ねじ式(雌ねじ)のキャップ(図示せず)を取り付けるために、外首部21の外周面21aの周方向に沿って外首部21の径方向外方に突出すると共に螺旋状に形成されたものとなっている。また、ねじ回り止め部21b-10は、螺旋状の雄ねじ部21bに当接して回転するキャップが回り過ぎることを防止するために、雄ねじ部21bのねじ幅(上下方向の長さ)よりも幅広の形状を有している。
【0030】
図2(a)及び
図5に示すように、雄ねじ部21bは、上端部21b-1と、完全ねじ部21b-3とが、両者の境界である上側ねじ切り始め部21b-2で連接してなる。
【0031】
上端部21b-1は、螺旋の上端を含み、螺旋状に延びる方向に垂直な方向の長さが、その上端から上側ねじ切り始め部21b-2にかけて徐々に大きくなっていく部分である。完全ねじ部21b-3は、上側ねじ切り始め部21b-2からねじ回り止め部21b-10に連接する下端に至るまでの部分であり、螺旋状に延びる方向に垂直な方向の長さが、その上側ねじ切り始め部21b-2からねじ回り止め部21b-10に連接する下端に至るまで略一定となっている。
【0032】
シールフランジ部21cは、上述のキャップに嵌合させるために、外首部21の外周面21aに沿って、外首部21の径方向外方に突出する形状を有している。
【0033】
ネックリング部21dは、搬送時に支持されるために、外首部21の外周面21aに沿って、外首部21の径方向外方に突出する形状を有している。多重プリフォーム1は、このネックリング部21dよりも下方側がブロー成形によって膨張するようになっている。
【0034】
このような雄ねじ部21b、ねじ回り止め部21b-10、シールフランジ部21c、及びネックリング部21dは、何れも、外首部21の径方向外方に突出して肉厚となっている。すなわち、
図2~
図5に示すように、外首部21の外周面21aは、雄ねじ部21b、ねじ回り止め部21b-10、シールフランジ部21c、及びネックリング部21dによって、外首部21の径方向外方に突出する肉厚な肉厚部Nが、多重ボトル100(多重プリフォーム1)の中心軸Oの方向に沿う縦断面視で複数形成されたものとなっている。外プリフォーム2の射出成形によって成形されたこの肉厚部Nは、外プリフォーム2における他の部分よりも冷却され難い部分である。そのため、
図3及び
図4に示す外首部21の内周面21gにおいて、肉厚部Nの裏面位置となる箇所は、外首部21の径方向に僅かな凹みが生じ易くなっている。
【0035】
特に、外首部21の外周面21aにおいて雄ねじ部21bは螺旋状に形成されているため、多重ボトル100(多重プリフォーム1)の中心軸Oの方向に沿う縦断面視で複数の肉厚部Nを有することになる。これにより、外首部21の内周面21gにおける、雄ねじ部21bが設けられた部分の裏面位置には、この凹みが多く生じ易くなっている。
【0036】
そこで、
図2~
図4及び
図6に示すように、内首部31の外周面31aは、十分な長さの当接面31cを有している。この当接面31cは、外首部21の内周面21gに密着して当接することが可能な上下方向の長さ(
図4(a)、(b)に示す長さT)を有する平坦な面となっている。これにより、当接面31cは、凹みが生じ易い雄ねじ部21bの裏面位置を含む内周面21gにも十分に密着して当接させることができる。その結果、
図1に示す外容器200内に内容器300を押し込んだ後の多重ボトル100においては、内首部31を外首部21に確固に固定させることができる。
【0037】
図2~
図5に示すように、外首部21の外周面21aの上下方向における雄ねじ部21bとシールフランジ部21cとの間には、外気を導入するための外気導入口21eとして、第1外気導入口21e-1及び第2外気導入口21e-2が形成されている。また、
図2~
図4及び
図6に示すように、内プリフォーム3の内首部31の外周面31aには、その周方向に沿って、内首部31の径方向外方に向けて突出し、外首部21の上端面21fに密着して係合する上述の係合部31b、及び、係合部31bに連接する当接面31cが形成されている。
【0038】
ここで、
図4を用いて内首部31の当接面31cについて説明する。この
図4(a)、(b)の縦断面視において、当接面31cは、外首部21の内周面21gに密着して当接するのに十分な上下方向の長さTを有する平坦な面である。
図4(a)、(b)に示すように、当接面31cの上下方向の長さTは、仮止め状態において外首部21の上端面21fから突出する分の長さT1と、外首部21の内周面21gに当接する分の長さT2とからなる。
【0039】
図4(a)に示すように、当接面31cの上下方向の長さTは、外首部21の上端面21fから外首部21の雄ねじ部21bの上側ねじ切り始め部21b-2の裏面位置までの上下方向の長さH1よりも長い。
【0040】
当接面31cの上下方向の長さTについて、より具体的に述べると、
図4(b)に示すように、外首部21の上端面21fから外気導入口21e(第1外気導入口21e-1或いは第2外気導入口21e-2)の上端21e-Aまでの上下方向の長さを長さH2とすると、長さTは、長さH2の半分の長さH3よりも長い。
【0041】
上述の内首部31の押し込みでは、内首部31の係合部31bが外首部21の上端面21fに当接されるまで、外首部21の内部において、内首部31の当接面31cを、外首部21の内周面21gに当接しつつ下方へと押し込むようにする。これにより、外首部21と内首部31を確固に固定させることができる。そのため、内首部31の当接面31cは、外首部21内の下方に押し込まれる際に、外首部21の内周面21gに十分に当接(密着)しながら十分に下方に移動することが可能な上下方向の長さTを有する平坦な面となっている。
【0042】
このように、当接面31cの上下方向の長さTが、外首部21の上端面21fから外首部21の雄ねじ部21bの上側ねじ切り始め部21b-2の裏面位置までの上下方向の長さH1よりも長いことで、内首部31の外周面31aは、雄ねじ部21bの形成により多くの凹みが生じ易くなっている内周面21gにも十分に密着される。これにより、外首部21と内首部31とを確固に固定することができる。
【0043】
そして、上述したように、内首部31の押し込みにより、外容器200の外肩部202と内容器300の内肩部302との間に空気層Wが形成されるようになるため、内首部31の当接面31cと外首部21の内周面21gとが十分に密着しても、外気を外気導入口21eから外肩部202と内肩部302との間へと安定的に導入させることができる。
【0044】
図5に示すように、外首部21の外周面21aにおいて、外気導入口21e(第1外気導入口21e-1及び第2外気導入口21e-2)は、雄ねじ部21bの下端に連接するねじ回り止め部21b-10に対し、外プリフォーム2の底部22aの軸心X(すなわち外容器200の中心軸O)を中心として周方向に略90度ずれて配置されている。
【0045】
これは、例えば次の理由によるものである。外プリフォーム2において、外首部21の外周面21aに形成されるねじ回り止め部21b-10は、比較的肉厚になる。その一方で、外プリフォーム2を射出成形する際に用いる外プリフォーム成形用金型(図示せず)の2つの割型同士の接合部分(外プリフォーム2においてパーティングラインが形成される部分)は、空気が抜け易くなっている。
【0046】
そのため、この空気が抜け易い接合部分において、比較的肉厚なねじ回り止め部21b-10が成形されるように、外プリフォーム成形用金型が設計されている。そして、外気導入口21eは、成形された外プリフォーム2のパーティングライン)に対して略垂直な方向から穴形成用のピンを挿すことで形成される。
【0047】
このことから、外首部21の外周面21aにおいて、ねじ回り止め部21b-10に対し、外プリフォーム2の底部22aの軸心Xを中心として周方向に略90度ずれた位置が、穴形成用のピンを挿し易い位置となる。これにより、外気導入口21eは、ねじ回り止め部21b-10に対して上述の略90度ずれた位置に配置されることになる。
【0048】
具体的に、例えば
図5に示すように、第1外気導入口21e-1及び第2外気導入口21e-2は、何れも雄ねじ部21bの下端に連接するねじ回り止め部21b-10に対し、外プリフォーム2の底部22aの軸心X(すなわち外容器200の中心軸O)を中心として周方向に略90度ずれて配置されていると共に、外プリフォーム2の底部22aの軸心X(すなわち外容器200の中心軸O)を中心として周方向に互いに略180度ずれて配置されている。このように、外首部21の外周面21aには、周方向に互いに略180度ずれた第1外気導入口21e-1及び第2外気導入口21e-2が形成されていることにより、外首部21と内首部31との間に十分な量の外気を導入させることができる。
【0049】
また、内首部31の当接面31cと密着して当接している外首部21の内周面21gの直下に第1外気導入口21e-1及び第2外気導入口21e-2が形成されていることで、外気を第1外気導入口21e-1及び第2外気導入口21e-2から外首部21と内首部31との間の上方ではなく下方へと安定的に導入させることができる。
【0050】
そして、このように、第1外気導入口21e-1及び第2外気導入口21e-2は、内首部31の当接面31cと外首部21の内周面21gとが当接(密着)される部分に形成されておらず、後述のブロー成形によっても閉塞が生じ難い箇所に形成されていることから、外首部21と内首部31との間において安定した空気流路を確保することができる。
【0051】
[多重ボトルの製造処理]
次に、
図7のフローチャートを用いて多重ボトル100の製造処理について説明する。
【0052】
(ステップS1:内プリフォーム仮止工程)
ステップS1の内プリフォーム仮止工程では、外プリフォーム2の内側に、内プリフォーム3を挿入して仮止め状態で配置させる。この仮止め状態の配置とは、内プリフォーム3の内首部31の係合部31bと外プリフォーム2の外首部21の上端面21fとの間の上下方向の長さT1の空間に、間隔保持部材としてスペーサ(図示せず)を配置し、これにより、ブロー成形時の外プリフォーム2内における内プリフォーム3の位置を仮固定させている状態をいう。
【0053】
(ステップS2:ブロー成形工程)
ステップS1に続くステップS2のブロー成形工程では、外プリフォーム2内に内プリフォーム3が仮止め状態で配置されてなる多重プリフォーム1をブロー成形装置の多重ボトル成形用金型に装着させ、その仮止め状態の多重プリフォーム1に対してブロー成形を行う。なお、外プリフォーム2及び内プリフォーム3は、この多重ボトル成形用金型に装着される前に、予めブロー成形可能な温度に加熱されることが好ましい。
【0054】
このステップS2では、外プリフォーム2のネックリング部21dをブロー成形装置に支持させるようにして、多重プリフォーム1を装着する。そして、ブロー成形装置におけるブローノズルの気体通路(図示せず)から内プリフォーム3の内部に加圧空気を導入し、同時に気体通路に挿通されたストレッチロッド(図示せず)を底部方向に伸長させることでブロー成形を行う。これにより、係合部31bと上端面21fとの間に、上下方向の長さT1の空間がある状態(仮止め状態)の多重ボトル100が成形される。この仮止め状態の多重ボトル100は、外プリフォーム2から成形される外容器200の外肩部202及び外胴部203の内面と、内プリフォーム3から成形される内容器300の内肩部302及び内胴部303の外面とが密着された状態となっている。
【0055】
(ステップS3:多重ボトル離型工程)
ステップS2に続くステップS3の多重ボトル離型工程では、ブロー成形装置の多重ボトル成形用金型を構成する2つの肩胴部成形用の割型(図示せず)と1つの底部成形型(図示せず)とを分割することにより、ステップS2で成形された仮止め状態の多重ボトル100をブロー成形装置の多重ボトル成形用金型から離型させる。
【0056】
(ステップS4:内容器押込工程)
ステップS3に続くステップS4の内容器押込工程では、ステップS3で離型された仮止め状態の多重ボトル100に対し、上述の間隔保持部材としてのスペーサを取り外した後、内容器300の内首部31の係合部31bが外容器200の外首部21の上端面21fに当接するまで(内首部31の上端が外首部21の上端面21fと略同一面に位置するまで)、内首部31を外首部21の内部に押し込む。これにより、
図1に示すような外容器200の外肩部202の内面と内容器300の内肩部302の外面との間に空気層Wが形成された多重ボトル100が製造される。
【0057】
[変形例]
上述の実施形態は、変形例を含めて各実施形態同士で互いの技術を適用することができる。上述の実施形態は、本発明の内容を限定するものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない程度に変更を加えることができる。
【0058】
例えば、
図1に示す多重ボトル100は、上述の
図2に示す内プリフォーム3の上端が外プリフォーム2の上端面21fよりも突出した仮止め状態の多重プリフォーム1に対してブロー成形を行った後に、内首部31を外首部21の内部に押し込むことで製造される例に限定されない。
【0059】
例えば、
図2(a)、(b)に示す仮止め状態の多重プリフォーム1において、内首部31の係合部31bが外首部21の上端面21fに当接するまで、内首部31を外首部21の内部に押し込み、内プリフォーム3の上端と外プリフォーム2の上端面21fとが略同一面に位置する多重プリフォーム1とした後に、その多重プリフォーム1をブロー成形装置の多重ボトル成形用金型に装着させてブロー成形を行い、その後、成形された多重ボトル100をブロー成形装置の多重ボトル成形用金型から離型させることで、
図1に示す多重ボトル100を製造するようにしてもよい。
【0060】
また、例えば、多重プリフォーム1は、内プリフォーム3が外プリフォーム2の内側に挿入されたときに、このような仮止め状態となること無く、内プリフォーム3の上端と外プリフォーム2の上端とが略同一面に位置するように配置される構成であってもよい。この場合、外プリフォーム2の内側に内プリフォーム3を配置してなる多重プリフォーム1をブロー成形することで、
図1に示す多重ボトル100が製造される。
【0061】
また、上述の実施形態では、外気導入口21eが、第1外気導入口21e-1及び第2外気導入口21e-2といった2つの外気導入口で構成されるようにしたが、外気導入口21eは、これに限定されず、1つ或いは3つ以上の外気導入口で構成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
100 多重ボトル、200 外容器、300 内容器、1 多重プリフォーム、2 外プリフォーム、3 内プリフォーム、21 外首部、21a 外周面、21b 雄ねじ部、21b-1 上端部、21b-2 上側ねじ切り始め部、21b-3 完全ねじ部、21b-10 ねじ回り止め部、21c シールフランジ部、21d ネックリング部、21e 外気導入口、21e-1 第1外気導入口、21e-2 第2外気導入口、21e-A 上端、21f 上端面、21g 内周面、22 外有底円筒体、22a 底部、31 内首部、31a 外周面、31b 係合部、31c 当接面、32 内有底円筒体、32a 底部