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特許7481912カートリッジおよびカートリッジの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】カートリッジおよびカートリッジの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/18 20060101AFI20240502BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G03G21/18 185
B41J2/175 175
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020100670
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021196407
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽
(72)【発明者】
【氏名】野口 香織
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 恭徳
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-71130(JP,A)
【文献】特開2005-31652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/18
G03G 15/08
G03G 21/00
G03G 15/00
B41J 2/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置の装置本体に着脱可能に設けられたカートリッジであって、
前記カートリッジは、メモリと前記メモリを支持するメモリ支持部材とを有し、
前記メモリは、
カートリッジに関する情報を記憶する半導体デバイスと、
前記半導体デバイスを保護する封止材と、
前記半導体デバイスの情報を前記画像形成装置本体に伝達するために前記画像形成装置本体が有する本体電気接点と電気的に接続可能なカートリッジ電気接点と
を有し、
前記メモリの封止材と、前記メモリ支持部材とが同じ種類の熱可塑性樹脂を含有しており、
前記封止材と、前記メモリ支持部材とは接合面を有し、
前記接合面の少なくとも一部が、溶剤により溶着固定されていることを特徴とするカートリッジ。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂である請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記溶剤が、テルペン系溶剤である請求項1又は2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記スチレン系樹脂が、ポリスチレンである請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記テルペン系溶剤が、d-リモネンである請求項3に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記封止材が、無機充填剤、及びエポキシ樹脂を含む請求項1~5のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記封止材が含有する前記熱可塑性樹脂の含有量が、封止材の質量を基準として、2~40質量%である請求項6に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記無機充填剤の含有量が、封止材の質量を基準として、40~95質量%であり、
前記エポキシ樹脂の含有量が、封止材の質量を基準として、3~30質量%である請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記メモリ支持部材がメモリ封止材接地面に溝を有する請求項1~8のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記封止材が前記メモリ支持部材と対向する対向面に溝を有する請求項1~9のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のカートリッジを製造するカートリッジの製造方法であって、
前記封止材と前記メモリ支持部材とを、溶剤により溶着固定することを特徴とするカートリッジの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置の装置本体に着脱可能に設けられたカートリッジおよびカートリッジの製造方法に関するものである。
ここで、画像形成装置とは、記録媒体に画像を形成する手段を指している。具体的には、例えば電子写真画像形成方式を用いて記録媒体に画像を形成するものである。電子写真画像形成装置の例としては、例えば、電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えばレーザープリンタ、LEDプリンタ等)、ファクシミリ装置、ワードプロセッサ及びこれらの複合機(マルチファンクションプリンター等)が含まれる。
【0002】
また、インクカートリッジから供給されるインクを用いるインクジェット方式プリンタも含まれる。
更には、インクリボンを用いた、タイプライター、ドットインパクト方式のプリンタ、熱転写型のプリンタも含まれる。
【0003】
以降は、電子写真画像形成方式を例に用いて説明する。
また、カートリッジとは、記録媒体に画像を形成する、電子写真方式の場合のトナー、インクジェット方式の場合のインク、インクリボンを用いる方式の場合のインクを有するユニット品である。
前述のとおり、電子写真画像形成装置のカートリッジを例に用いて説明する。
【背景技術】
【0004】
従来、電子写真画像形成プロセスを用いた画像形成装置においては、電子写真感光体ドラム及び前記電子写真感光体ドラムに作用するプロセス手段を一体的にカートリッジ化したプロセスカートリッジ方式が採用されている。このカートリッジは画像形成装置本体に着脱可能とされている。このプロセスカートリッジ方式によれば、画像形成装置のメンテナンスをサービスマンによらずユーザー自身で行うことができるので、格段に操作性を向上させることができる。そのため、このプロセスカートリッジ方式は、画像形成装置において広く用いられている。
【0005】
特許文献1に開示されているように、近年種々のサービス情報やプロセス情報を記録するメモリ手段(記録手段)をプロセスカートリッジに搭載した製品が実現されている。画像形成装置本体は、このプロセスカートリッジのメモリ情報を活用することにより、画質やプロセスカートリッジのメンテナンスをより一層向上させている。
特許文献2には、メモリ手段は、カートリッジ枠体の座面に、接着剤や両面テープ等にて取付けられることが開示されている。
特許文献3には、スチレン系樹脂により形成されている部品間の接合に、テルペン系溶剤により溶着固定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-330335号公報
【文献】特開2018-109732号公報
【文献】特開2005-31652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様の目的は、画像形成装置の装置本体に着脱可能なカートリッジであって、安価でかつ接着力をコントロール可能な接着手段によってメモリ手段が固定されたカートリッジを提供することにある。
「接着力をコントロール可能」とは、接着する部位が明確であり、その面積により接着力が想定できる等のことを意味する。
また本発明の他の態様の目的は、画像形成装置の装置本体に着脱可能なカートリッジの製造方法であって、安価でかつ接着力をコントロール可能な接着手段によってメモリ手段が固定されたカートリッジの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、
記録媒体に画像を形成する画像形成装置の装置本体に着脱可能に設けられたカートリッジであって、
前記カートリッジは、メモリと前記メモリを支持するメモリ支持部材とを有し、
前記メモリは、
カートリッジに関する情報を記憶する半導体デバイスと、
前記半導体デバイスを保護する封止材と、
前記半導体デバイスの情報を前記画像形成装置本体に伝達するために前記画像形成装置本体が有する本体電気接点と電気的に接続可能なカートリッジ電気接点と、
を有し、
前記メモリの封止材と、前記メモリ支持部材とが同じ種類の熱可塑性樹脂を含有しており、
前記封止材と、前記メモリ支持部材とは接合面を有し、
前記接合面の少なくとも一部が、溶剤により溶着固定されている、カートリッジが提供される。
また本発明の他の態様によれば、上記のようなカートリッジの製造方法であって、前記封止材と前記メモリ支持部材とを、溶剤により溶着固定するカートリッジの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、画像形成装置の装置本体に着脱可能なカートリッジであって、安価でかつ接着力をコントロール可能な接着手段によってメモリ手段が固定されたカートリッジを提供することが可能となる。更には、接着力をコントロール可能な接着手段を提供することで、安定した接着強度を、確保することができる。すなわち品質の安定化がはかられる。
また本発明の他の態様によれば、画像形成装置の装置本体に着脱可能なカートリッジの製造方法であって、安価でかつ接着力をコントロール可能な接着手段によってメモリ手段が固定されたカートリッジの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るカートリッジの要部の分解斜視図
図2】実施の形態に係る画像形成装置の断面概略図
図3】カートリッジの横断面概略図
図4】非駆動側から見たカートリッジの外観斜視図
図5】カートリッジの駆動側部分の斜視図
図6】現像装置の分解斜視図
図7a】メモリの外観斜視図
図7b】メモリの外観側面図
図8】カートリッジの装置本体への着脱構成の説明図
図9a】実施例におけるカートリッジの要部の分解斜視図
図9b】溶剤を塗布した後にメモリを取り付ける実施例を説明するための斜視図
図9c】溶剤を塗布する前にメモリを取り付ける実施例を説明するための斜視図
図10a図9a、図9bに示すメモリ及びメモリ支持部の斜視図
図10b図10aに示すメモリ支持部の断面図
図11図10aに示すメモリ支持部にメモリを取り付けた状態を示す斜視図
図12】溶剤を塗布した後にメモリを取り付ける他の実施例を説明するための斜視図
図13】溶剤を塗布する前にメモリを取り付ける他の実施例を説明するための斜視図
図14】溶剤のニゲ溝を設けたメモリ支持部の斜視図
図15図14に示すメモリ支持部にメモリを取り付けた状態を示す斜視図
図16】圧入部を設けたメモリ支持部の斜視図
図17図16に示すメモリ支持部にメモリを取り付けた状態を示す斜視図
図18図16に示すメモリ支持部にメモリを取り付けた状態を示す平面図
図19】封止材に溝を設けたメモリの斜視図
図20図19に示すメモリの側面図
図21図19に示すメモリをメモリ支持部に取り付けた状態を示す斜視図
図22】従来のカートリッジの要部の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るカートリッジ及びこれを用いる画像形成装置について図面を用いて説明する。
以下の実施の形態では電子写真画像形成装置として4個のプロセスカートリッジが着脱可能なフルカラー電子写真画像形成装置を例示している。また、以下に説明する実施の形態では、画像形成装置の一態様としてプリンタを例示している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置にも適用することができる。
【0012】
《画像形成装置の概略構成》
まず、本実施の形態に係る画像形成装置1について図2の断面概略図を用いて説明する。この画像形成装置1は、電子写真プロセスを用いた4色フルカラーレーザプリンタであり、外部ホスト装置300から制御回路部(制御手段:制御部)100に入力する画像情報(電気的画像信号)に基づいて記録媒体Sにカラー画像形成を行う。外部ホスト装置300はパソコン、イメージリーダ、ファクシミリ、ネットワーク等である。
【0013】
画像形成装置1は画像形成プロセスに寄与するカートリッジが取り外し可能に装着された状態で記録媒体に画像を形成するプロセスカートリッジ方式である。本実施の形態の画像形成装置1は4つのプロセスカートリッジP(PY、PM、PC、PK:以下、カートリッジと記す)を装置本体2に取り外し可能に装着して、記録媒体Sにカラー画像を形成するものである。
【0014】
ここで、画像形成装置1に関して、装置開閉ドア3を設けた側を正面(前面)、正面と反対側の面を背面(後面)とする。また、画像形成装置1を正面から見て右側を駆動側、左側を非駆動側と称す。
装置本体2の内部には第1のカートリッジPY、第2のカートリッジPM、第3のカートリッジPC、第4のカートリッジPKの4つのカートリッジPが水平方向に配置されている。各カートリッジPは、それぞれ同様の電子写真プロセス機構を有しており、収容している現像剤(以下、トナーと称す)の色が各々異なるものである。各カートリッジPには装置本体2の駆動出力部(不図示)から回転駆動力が伝達される。また、各カートリッジPには装置本体2のバイアス出力部(不図示)からバイアス電圧(帯電バイアス、現像バイアス等)が供給される。
【0015】
各カートリッジPは一体型のプロセスカートリッジである。
図3に示すように、各カートリッジPはクリーニングユニット8と現像装置9とを有する。
現像装置9はクリーニングユニット8に対して軸W1を中心に揺動可能に結合されている。
クリーニングユニット8は、潜像が形成される回転可能な像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、感光体ドラムと称す)4と、この感光体ドラム4に作用するプロセス手段としての帯電手段5及びクリーニング手段7を備えている。帯電手段5としては接触帯電部材である帯電ローラを用いている。クリーニング手段7としてはクリーニングブレードを用いている。
【0016】
現像装置9は一成分非磁性現像剤(以下、トナーと記す)を用いた接触現像装置であり、現像枠体26に対して現像手段6としての現像剤担持体(以下、現像ローラと称す)が配設されている。現像枠体26は現像剤収容室(現像剤収容部)26cを備え、トナーが収容されている。
第1のカートリッジPYは、現像剤収容室26c内にイエロー(Y)色のトナーを収容しており、感光体ドラム4の表面にY色トナー像を形成する。第2のカートリッジPMは、現像剤収容室26c内にマゼンタ(M)色のトナーを収容しており、感光体ドラム4の表面にM色トナー像を形成する。第3のカートリッジPCは、現像剤収容室26c内にシアン(C)色のトナーを収容しており、感光体ドラム4の表面にC色トナー像を形成する。第4のカートリッジPKは、現像剤収容室26c内にブラック(K)色のトナーを収容しており、感光体ドラム4の表面にK色のトナー像を形成する。
【0017】
上記4つのカートリッジPの上方には、露光手段としてのレーザスキャナユニットLBが設けられている。このレーザスキャナユニットLBは、画像情報に対応してレーザ光Zを出力する。そして、レーザ光Zは、カートリッジPの露光窓部10を通過して感光体ドラム4の表面を走査露光する。また、上記4つのカートリッジPの下方には、転写部材としての中間転写ベルトユニット11が設けられている。この中間転写ベルトユニット11は、駆動ローラ13、ターンローラ14、テンションローラ15を有し、可撓性を有する無端状(エンドレス)の転写ベルト12が掛け渡されている。
【0018】
各カートリッジPの感光体ドラム4は、その下面が転写ベルト12の上面に接している。その接触部が一次転写部である。転写ベルト12の内側には、感光体ドラム4に対向させて1次転写ローラ16が設けられている。ターンローラ14には転写ベルト12を介して2次転写ローラ17が当接している。転写ベルト12と2次転写ローラ17の接触部が2次転写部である。
【0019】
中間転写ベルトユニット11の下方には給送ユニット18が設けられている。この給送ユニット18は記録媒体Sを積載して収容した給紙トレイ19と給紙ローラ20を有する。図2における装置本体2の内部の左上方(背面側上方)には、定着ユニット21と排出ユニット22が設けられている。装置本体2の上面は排出トレイ23とされている。記録媒体Sは定着ユニット21に設けられた定着手段により未定着のトナー像が固着像として定着されて画像形成物として排出トレイ23へ排出される。給送ユニット18から排出ユニット22までの記録媒体搬送経路が記録媒体を搬送する搬送手段である。
【0020】
《画像形成動作》
フルカラー画像を形成するための動作は次のとおりである。各カートリッジPの感光体ドラム4が所定の速度で回転駆動される(図3における矢印D方向、図2において反時計回り)。転写ベルト12も感光体ドラム4の回転に順方向(図2における矢印C方向)に感光体ドラム4の速度に対応した速度で回転駆動される。レーザスキャナユニットLBも駆動される。
【0021】
レーザスキャナユニットLBの駆動に同期して、各カートリッジPにおいて帯電ローラ5が感光体ドラム4の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する。レーザスキャナユニットLBは各感光体ドラム4の表面を対応する色の画像信号に応じてレーザ光Zで走査露光する。これにより、各感光体ドラム4の表面に対応色の画像信号に応じた静電潜像が形成される。
【0022】
静電潜像は、所定の速度で回転駆動(図3において矢印E方向、図2において時計回り)される現像ローラ6によりトナー像として現像される。
上記のような電子写真画像形成プロセス動作により、第1のカートリッジPYの感光体ドラム4にはフルカラー画像のY色成分に対応するY色トナー像が形成される。そのトナー像が転写ベルト12上に一次転写される。
第2のカートリッジPMの感光体ドラム4にはフルカラー画像のM色成分に対応するM色トナー像が形成される。そのトナー像が、転写ベルト12上にすでに転写されているY色トナー像に重畳されて一次転写される。
【0023】
また、第3のカートリッジPCの感光体ドラム4にはフルカラー画像のC色成分に対応するC色トナー像が形成される。そのトナー像が、転写ベルト12上にすでに転写されているY色とM色のトナー像に重畳されて一次転写される。
第4のカートリッジPKの感光体ドラム4にはフルカラー画像のK色成分に対応するK色トナー像が形成される。そのトナー像が、転写ベルト12上にすでに転写されているY色とM色とC色のトナー像に重畳されて1次転写される。
このようにして、転写ベルト12上にY色、M色、C色、及びK色の4色フルカラーの未定着の重畳転写トナー像が形成される。
【0024】
一方、給送ユニット18から所定の制御タイミングで記録媒体Sが1枚ずつ分離されて給送される。その記録媒体Sは、所定の制御タイミングで2次転写ローラ17と転写ベルト12との当接部である2次転写部に導入される。これにより、記録媒体Sが2次転写部で挟持搬送されていく過程で、転写ベルト12上の4色重畳のトナー像が記録媒体Sの面に順次に一括して2次転写される。そして、トナー像の2次転写を受けた記録媒体Sは定着ユニット21に導入されて定着処理を受け、フルカラー画像形成物として排出トレイ23へ排出される。
【0025】
《カートリッジPの構成》
次に、カートリッジPの構成について説明する。各カートリッジPは、それぞれ同様の電子写真プロセス機構を有しており、収容しているトナーの色が各々異なるものである。
図3はカートリッジPの断面概略図、図4は非駆動側から見たカートリッジPの斜視図、図5はカートリッジPの駆動側部分の斜視図、図6は現像装置4の分解斜視図である。カートリッジPは、感光体ドラム4の回転軸線aの方向を長手方向とする横長の形状であり、クリーニングユニット8と、現像装置9と、駆動側カバー部材24と、非駆動側カバー部材25とを有する。
【0026】
1)クリーニングユニット8の構成
図3に示すように、クリーニングユニット8は、感光体ドラム4と、帯電ローラ5と、クリーニングブレード7とを有するクリーニング容器29により構成される。感光体ドラム4は、駆動側カバー部材24側の軸受部24Hと非駆動側カバー部材25側の軸受部25Hとによって回転可能に支持されている。そして、感光体ドラム4は駆動側カバー部材24側のドラム駆動カップリング4a(図5)に対して装置本体2側の駆動出力カップリング(不図示)が係合してモータ(不図示)の駆動力を得て図3における矢印D方向に回転駆動される。
【0027】
クリーニング容器29は、画像形成のためのプロセス手段としての帯電ローラ5とクリーニングブレード7とを保持するための枠体として機能している。帯電ローラ5は、クリーニング容器29の駆動側と非駆動側との帯電ローラ軸受27によって両端部を回転可能に支持されており、感光体ドラム4の表面に接触して従動回転し、帯電バイアスの供給を受けて感光体ドラム4の表面を帯電させる。このとき、感光体ドラム4の表面を均一に帯電させるため、帯電ローラ5の両端部は加圧バネ28によって感光体ドラム4の表面に加圧されている。
【0028】
クリーニングブレード7はクリーニング容器29に固定されており、先端の弾性ゴム部を感光体ドラム4の回転方向(図3における矢印D方向)に対してカウンター方向に当接させて設けている。画像形成時には、感光体ドラム4上に残留した転写残トナーを掻きとって感光体ドラム4の表面をクリーニングする。このとき、転写残トナーを十分に掻き取るためにクリーニングブレード7の先端は感光体ドラム4の表面に対して所定の圧をもって当接している。
【0029】
また、クリーニングブレード7によって感光体ドラム4の表面から掻き取られた転写残トナーは、廃トナーとしてクリーニング容器29の廃トナー収容部29cに収容される。そのためクリーニング容器29には、感光体ドラム4やクリーニングブレード7との隙間からの廃トナーの漏れ出しを防止するための廃トナー回収シート部材44を感光ドラム4の長手方向に固定している。また、クリーニングブレー7ドの長手方向両端部にクリーニングブレード端部シール部材(不図示)が設けられている。
【0030】
2)現像装置9の構成
図3図6とを用いて現像装置9の構成を説明する。現像装置9は現像手段としての現像ローラ(現像剤担持体)6の回転軸線方向を長手方向とする横長の形状である。現像ローラ6の他に、現像枠体26、現像ブレード31、現像剤供給ローラ33、現像端部シール部材34R・34L、可撓性シート部材35、供給ローラ軸シール37R・37Lなどによって構成される。
【0031】
また、現像ローラ6の芯材(芯金)6aと現像剤供給ローラ33の芯材(芯金)33aとの駆動側端部にはそれぞれ現像ローラギア40と供給ローラギア41とが配置され、現像駆動入力ギア42と噛み合っている。現像駆動入力ギア42は、現像駆動カップリング42aを備えている。この現像駆動カップリング42a(図5図6)に対して装置本体2側の駆動出力カップリング(不図示)が係合して装置本体2の駆動モータ(不図示)の駆動力の伝達がなされる。これにより、現像ローラ6と現像剤供給ローラ33とが所定の速度で回転駆動される(図3における矢印E方向と矢印F方向)。
【0032】
現像ブレード31は、厚み0.1mm程度の弾性を有する金属薄板であり、現像ローラ6の回転軸線方向に長い部材である。現像ブレード31は支持板金32に支持されており、支持板金32が現像枠体26に対して取り付けられている。現像ブレード31と支持板金32とによって現像ブレードユニット30が構成されている。現像ブレード31の短手方向の自由端は現像ローラ6の回転方向(図3における矢印E方向)に対してカウンター方向に当接している。現像ブレード下シール36は、現像枠体26と現像ブレードユニット30との間の長手方向全域の隙間を埋めるように配置され、トナー漏れを防止している。
【0033】
図6に示すように、現像端部シール部材34R・34Lは、現像枠体26の開口部の両端に配置され、現像ブレード31および現像ローラ6と、現像枠体26との隙間からのトナー漏れを防止している。
また、可撓性シート部材35は、現像枠体26の開口部における現像ブレード31と対向する側の長手方向側面に現像ローラ6と当接するように配置され、現像枠体26と現像ローラ6との隙間からのトナー漏れを防止している。また、供給ローラ軸シール37R・37Lは、現像剤供給ローラ33の芯材33aにおける現像枠体26の外側に露出した部分に装着されており、現像枠体26に設けられた芯材通し穴と芯材33aとの隙間からのトナー漏れを防止している。現像装置9は駆動側カバー部材24と非駆動側カバー部材25との間に軸W1により揺動可能に支持されている。すなわち、クリーニングユニット8と現像装置9とは軸W1により互いに結合されている。そして、現像装置9は、自由状態において、現像ローラ6がクリーニングユニット8側の感光体ドラム4に対して所定の押圧力で当接するように、付勢部材(不図示)により軸W1を中心に回動付勢されている。現像駆動カップリング42aは軸W1の軸線bと同軸に配設されている。
【0034】
各カートリッジPは装置本体2の装着部に所定に装着されている状態においてクリーニングユニット8が装置本体側の位置決め部に位置決め固定されている。現像装置9は画像形成装置の画像形成時には自由状態にされる。すなわち、現像ローラ6がクリーニングユニット8側の感光体ドラム4に対して所定の押圧力で当接するように付勢部材により軸W1を中心に回動付勢されている。
【0035】
そして、画像形成時には、駆動により現像剤供給ローラ33と現像ローラ6とが回転して摺擦することで現像剤収容室26c内のトナーが現像ローラ6上に担持される。現像ブレード31は、現像ローラ6の周面に形成されるトナー層の厚みを規制すると共に、当接圧により現像ローラ6との間で摩擦帯電による電荷をトナーに付与する。そして、現像ローラ6と感光体ドラム4との接触部で現像ローラ6上の電荷を帯びたトナーが感光体ドラム4上の静電潜像に付着し、潜像が現像される。
また、現像装置9は画像形成装置の非画像形成時には現像ローラ6が感光体ドラム4から離間する方向に装置本体側の作用部材(不図示)により付勢部材に抗して軸W1を中心に回動された位置に保持される。
【0036】
《カートリッジPの装置本体2への着脱構成》
図2及び図8を用いて、各カートリッジP(PY・PM・PC・PK)の装置本体2への着脱動作について説明する。
図2は、引き出しユニット51が各カートリッジPを装置本体2の内側に装着する装着位置に移動されて、かつ装置開閉ドア3が閉じられている状態を示している。
本実施の形態の画像形成装置において、各カートリッジの交換は、使用者が各カートリッジを引き出しユニット(カートリッジトレイ)51に乗せ、フロントアクセスにより交換する方式である。引き出しユニット51が各カートリッジPを着脱可能に支持する。引き出しユニット51はレール部材45に対して、カートリッジPを装置本体2の外側において着脱できる引き出し位置と、装置本体2の内側に装着する装着位置と、の間を直線移動(押し込み/引き出し)可能に構成されている。
【0037】
図8は装置開閉ドア3が開かれて、かつ引き出しユニット51が各カートリッジPを装置本体2の外側において着脱できる引き出し位置に移動されている状態時を示している。
矢印D2は引き出しユニット51の引き出し移動方向、矢印D1は引き出しユニット51の押し込み移動方向である。引き出しユニット51の引き出し移動方向D2と押し込み移動方向D1は実質的に水平方向である。
【0038】
各カートリッジPの装置本体2への装着動作について説明する。使用者は装置開閉ドア3をヒンジ軸3aを中心に回動して開ける。そして、装置本体2内の引き出しユニット51を引き出し移動して装置本体2の外側において各カートリッジPを着脱できる引き出し位置に位置させる。
ここで、装置開閉ドア3の開き動作に連動して、各カートリッジPのドラム駆動カップリング4aと現像駆動カップリング42aに対する装置本体側の駆動出力部の接続が解除される。各カートリッジPにおけるクリーニングユニット8の装置本体側位置決め部(不図示)に対する押さえ込みが解除される。また、各カートリッジPに対する装置本体側のバイアス出力部の接続が解除される。また、各カートリッジPにおけるメモリ200の電気接点200a・200bに対する本体電気接点の接続が解除される。
【0039】
また、レール部材45或いは中間転写ベルトユニット11の移動により各カートリッジPの感光体ドラム4と転写ベルト12との離間がなされる。この状態において、引き出しユニット51を装置本体2内の装着位置から引き出し位置に移動することが可能となる。
引き出しユニット51が引き出し位置に移動された状態において、カートリッジPを引き出しユニット51に対して着脱交換することができる。すなわち、カートリッジPは、引き出しユニット51から矢印C2の方向に取り出され、矢印C1の方向(実質的に重力方向)からカートリッジトレイ43に装着され、保持される。
【0040】
各カートリッジPは、その長手方向(感光体ドラム4の軸線方向)が引き出しユニット51の移動方向と直交する方向となるように、移動方向に並べて配列されている。また、引き出しユニット51には、4つのカートリッジP(PY、PM、PC、PK)を装着するための4つのカートリッジ装着部51aが一列に設けられている。そして、4つのカートリッジ装着部51aの端部には、装着するカートリッジPのトナーの色に応じてそれぞれ異なった本体色表示ラベル53(53Y、53M、53M、53K)が設けられている。
【0041】
各本体色表示ラベル53はそれぞれ第1~第4のカートリッジに設けた色表示部材80に対応するものである。具体的には、図8に示すように、所定の色のトナーを収納するカートリッジPと、そのカートリッジPを装着するカートリッジ装着部51aには、トナー色によってそれぞれ同じ表示を付した色表示部材80と本体色表示ラベル53が設けられている。
【0042】
これにより、使用者は、カートリッジPを新規の装置本体2に装着する際や、あるいは、カートリッジPの寿命によりカートリッジPを交換する際に、色表示部材80とカートリッジ装着部51aの前面に設けられた本体色表示ラベル53とを視認する。そして、色表示部材80と本体色表示ラベル53とが一致することを確認することで、カートリッジPを対応するカートリッジ装着部51aに正しく装着することができる。
【0043】
一方、色表示部材80と本体色表示ラベル53とが一致していない場合には、カートリッジPが誤挿入されたことを視覚的に認識することができるため、カートリッジPのカートリッジ装着部51aへの誤挿入を防止することができる。なお、万が一、カートリッジPが無理やり誤挿入された場合でも、カートリッジPやカートリッジ装着部51aに識別用の突起や切欠きを設けるものではないため、カートリッジPや装置本体2を破損することはない。
【0044】
引き出しユニット51の所定のカートリッジ装着部51aに対応する必要なカートリッジPについての新旧交換操作をしたら、引き出しユニット51を装置本体2内に十分に押し込み移動する。そして、装置開閉ドア3を閉じ込む。
ここで、装置開閉ドア3の閉じ込み動作に連動して、レール部材45或いは中間転写ベルトユニット11の移動により各カートリッジPの感光体ドラム4と転写ベルト12との接触がなされる。各カートリッジPにおけるクリーニングユニット8の装置本体側位置決め部(不図示)に対する押さえ込みがなされる。各カートリッジPのドラム駆動カップリング4aと現像駆動カップリング42aに対する装置本体側の接続がなされる。
【0045】
また、各カートリッジPに対する装置本体側のバイアス出力部の接続がなされる。また、各カートリッジPにおけるメモリ200の電気接点200a・200bに対する本体電気接点の接続がなされる。
これにより各カートリッジPが装置本体2に対して所定の装着位置に装着された状態となり、画像形成装置1は画像形成動作が可能となる。
【0046】
3)メモリ
各カートリッジPには、それぞれ、カートリッジPのロット番号、画像形成装置の特性およびプロセス手段の特性等の情報を記憶するメモリ200が設けられている。また、カートリッジPが収納するトナーの色等の種類に応じてそれぞれ識別できるように色表示部材80(80Y、80M、80C、80K)が設けられている(図4参照)。
【0047】
各カートリッジPは、それぞれ、装置本体2内の装着部に所定に装着されている状態においてメモリ200側の電気接点(カートリッジ電気接点)に対して装置本体側の本体電気接点(接点部材)が電気的に接続する。これにより、装置本体2側の制御回路部100とカートリッジP側のメモリ200との間で情報の授受が可能となる。制御回路部100はメモリ200に格納した情報をやり取りすることで、カートリッジPの使用状況等の状態を把握して、情報に応じて画像形成の制御を行う。これによって、最良の条件で画像形成を行う。
【0048】
図7aは本実施の形態におけるメモリ200の外観斜視図である。図7bは側面図である。メモリ200は、半導体デバイス200eを保持した基板200c、一対のカートリッジ電気接点200a、200b、半導体デバイス200e及び基板200cの表面を覆うように形成されている封止材200dから構成されている。そして、メモリ200は、駆動側カバー部材24に設けられた後述するメモリ支持部(メモリ支持手段)24aに取り付けられている。
【0049】
すなわち、メモリ200はカートリッジPのプロセス手段に関する情報を装置本体2が有する制御回路部100に伝達するために、装置本体2が有する本体電気接点(不図示)と電気的に接続可能なカートリッジ電気接点200a、200bを有している。
カートリッジ電気接点200a、200bは、カートリッジPが装置本体2に装着された際に、装置本体2側の本体電気接点(不図示)と電気的に接続する。そして、本体電気接点を介してメモリ200に記憶した情報を装置本体2側の制御回路部に伝達する。メモリ200は、カートリッジ電気接点200a、200bが外側になるように、メモリ支持部24aに取り付けられている。
封止材200dについて図1図7a及び図7bを用いて詳細に説明する。
【0050】
<従来>
従来より封止材は、情報を記憶する半導体デバイス200eを保護する目的で、基板200cと半導体デバイス200eとを覆うように形成されている。形成方法としては生産性、コスト等の面から樹脂封止が一般的であり、熱硬化樹脂を用いた封止用成形材料を用いている。前記封止成形材料は、円柱状のタブレットに打錠成形されていることが多い。前記タブレットを用いてトランスファ成形方法等を用いることが一般的である。
【0051】
封止材としてはこれまで無機充填剤であるシリカと熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂との混合物を主材としたものが主流である。
封止材に求められる機能としては、使用環境に耐える、耐熱性(ガラス転移点等)、成形後のメモリそのものの反りを一定量に抑える必要があるため、線膨張係数、成形性(粘度)、強度等がある。
以上より、一般的な封止材は、封止材100質量部中に、シリカ90質量部、エポキシ樹脂10質量部を含有する。
【0052】
図22に示すように、従来のメモリ92は、メモリ支持部材であるカバー部材95に、接着塗布装置90から塗布された接着剤91もしくは両面テープ等によって固定されている。
カバー部材95は、熱可塑性樹脂を用いており、中でもコスト的にも、成形性にも優れているという観点からポリスチレンを含む樹脂にて構成されている材料を用いている。
【0053】
<本発明>
カートリッジは、メモリとメモリを支持するメモリ支持部材とを有する。
メモリは、
カートリッジに関する情報を記憶する半導体デバイスと、
前記半導体デバイスを保護する封止材と、
前記半導体デバイスの情報を前記画像形成装置本体に伝達するために前記画像形成装置本体が有する本体電気接点と電気的に接続可能なカートリッジ電気接点と
を有する。
メモリの封止材と、メモリ支持部材とは同じ種類の熱可塑性樹脂を含有している。
封止材と、メモリ支持部材とは接合面を有する。
接合面の少なくとも一部が、溶剤により溶着固定される。
【0054】
封止材200dには、
カバー部材24を構成する材料の処方の中の少なくとも1種、もしくは
カバー部材24の表面の一部を構成する材料の処方の中の少なくとも1種、
と同じ種類の熱可塑性樹脂が含まれる。「表面の一部」には、2色成形(ダブルモールド)や別部材の成形、組み込み、貼り付けによって表面の一部となったものも含まれる。
封止材200dに、カバー部材24等を構成する材料の処方の中の少なくとも1種と同じ種類の熱可塑性樹脂が含まれることで、メモリの封止材とメモリ支持部材(カバー部材)とを一体化するにあたり、双方を溶融する溶剤を使用することが可能となる。双方もしくは一方が溶融され、組付けされることで一体化した際、強固に接合することが可能となる。もしくは、組付けされた状態で、溶剤を塗布することで、前記同じ種類の熱可塑性樹脂を含む両方の部材(封止部材とメモリ支持部材)が溶融し一体化されることもできる。かかる溶融一体化についてより詳細に説明する。
【0055】
~封止材の材料について~
熱可塑性樹脂選定のプロセスを説明する。
前記のとおり、消耗品であるカートリッジの枠体材料としては、ポリスチレンをメインとした、ハイインパクトポリスチレン(以下HIPS)が採用されている。以降はHIPSを採用しているカートリッジに関して記載するが、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PPO(ポリフェニレン-オキシド)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂を採用してもよい。PP等の熱可塑性樹脂を主たる材料とするカートリッジに関しては、PP等の熱可塑性樹脂を含む封止材を使用すればよい。あくまで、封止材とメモリ支持部材とに同じ種類の熱可塑性樹脂が各々に含有されていれば良い。
【0056】
封止材の処方を決定するにあたり、封止材に求められる各特性(耐熱性、反り対策、溶融粘度)の見直しを行い、ポリスチレン(以下PS)の含有量を決定した。
一般的なメモリは、プリント基板に電子部品を実装するリフロー工程に耐える耐熱性と、製品に搭載されている間の環境温度に耐えうる耐熱性とを有する必要がある。その結果、145℃程度の耐熱性が必要とされている。しかしながら、本発明に係るカートリッジは、使用環境温度が最大60℃であり、さらにはメモリの製造工程においても前記リフロー工程が含まれない。このため、封止材に要求される耐熱性(耐熱温度)を下げることが可能となり、従来のエポキシ樹脂(ガラス転移点150℃)にポリスチレン(ガラス転移点90℃)を混ぜたとしても、耐熱性に関しては問題ない。
【0057】
次に、封止材に求められるメモリの反り対策に関するものである。基板200cに対して封止材200dの線膨張係数が大きいため、成形(トランスファー成形)後、図7b中の矢印Mが示すように反りが発生する。この反りを低減することを目的の一つとして、封止材には、無機充填剤が充填されており、一般的にはシリカが用いられている。また、従来の封止材は、封止材100質量部に対して、シリカ80~90質量部とエポキシ樹脂10~20質量部とが用いられることが一般的である。
従来の封止材にPS樹脂を含有させると、無機充填剤の比率が低下する。エポキシの線膨張係数1.4×10-5(/K)に対してPSの線膨張係数数8×10-5(/K)であることから、PSの含有量が増すと、総じて反りMは増大する傾向にある。
また、カートリッジに用いるメモリ200として、生産過程で前記大きさに切断する前の複数個が一体化されたものを用いる場合もあって、メモリ200の大きさは、5mm×5.5mm程度となることもある。このような場合には、後工程の切断工程に問題ない範囲でPSの含有量を決定した。
【0058】
次に、封止材に求められる成形時の溶融粘度に関するものである。
図7bに示すように、メモリ200は半導体デバイス200eと基板200cをワイヤ200fで配線している。この状態で、封止材を成形するため、封止材の溶融粘度は前記ワイヤを変形、切断しない粘度であることが必要である。封止材にスチレン系材料を含有する場合、無機充填剤であるシリカの含有量(比率)が減少する。シリカの含有量が低下すると、封止材の溶融粘度は低下する傾向にあり前記ワイヤの変形、切断には有利となる。しかしながらスチレン系材料が含有されると溶融粘度は上昇する傾向にある。
上記の点のほかにも、難燃性、吸湿性、強度等も考慮し、封止材料の処方を決定した。
【0059】
また、メモリ200を、メモリ支持部24aに安価な装置及び安価な接着手段にて、固定するために、メモリ支持部24aとメモリ200とは同じ種類の熱可塑性樹脂を含む。
メモリ支持部24aがスチレン系樹脂によって形成されている場合、メモリ200の封止材もスチレン系樹脂を含有する。
その場合、接着する目的の溶剤には、テルペン系溶剤を用いることが好ましい(特許文献3参照)。
具体的にはd-リモネンを用いることが好ましい。接着強度は、封止材中のPS含有量が多いほど、強度は強くなる。
以上のカートリッジに求められる封止材の必要機能を考慮し、材料処方を決定した。
【0060】
封止材の質量を基準として、
(A)無機充填剤(一例としてシリカ)を40~95質量%、
(B)エポキシ樹脂を3~30質量%、
(C)熱可塑性樹脂(一例としてポリスチレン)を2~40質量%
含有することで前述の必要機能を得ることができる。
本実施例では、ポリスチレン系の材料を含有する部材間の溶着のために、溶剤としてd-リモネンを用いたが、ポリスチレン系の樹脂を溶融することができる溶剤であれば他の溶剤でもかまわない。熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂以外の樹脂の場合は、前記の封止材に求められる機能を考慮し、熱可塑性樹脂の含有量を決定すれば良い。溶剤においても、その熱可塑性樹脂を溶融する溶剤を用いることで、メモリとメモリ支持部材の接着が可能となる。
尚、封止材に含有される熱可塑性樹脂とメモリ支持部材に含有される熱可塑性樹脂とが、“同じ種類”であるとは、例えば、スチレン系樹脂とスチレン系樹脂、ポリエステルとポリエステル、といった樹脂の種類が同じことを意味する。また、最も好ましくは、いずれもがポリスチレンである場合である。
【0061】
封止材タブレット(トランスファー成形するための材料)を成形する方法としては、封止材料を成形するために材料をフィルム状に加工した後、粉砕してタブレットを成形する方法がある。
封止材を作製し、成形する場合は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤などを所定の配合量に秤量し、必要に応じてミキサー等で予備混合する。その後、ミキシングロール、押出機、らいかい機などによって混練を行う一般的方法を用いて加熱混練することにより、粉末状やシート状の封止用成形材料が調製できる。このときに、各種材料を均一に混合するために溶剤を用いても良い。
【0062】
また、各種配合成分は、全て同時に添加しても良いが、添加順序を適宜設定することもできる。また、必要に応じて各種配合成分を予備混練することもできる。例えば、エポキシ樹脂と硬化剤、硬化剤と硬化促進剤、エポキシ樹脂及び/又は硬化剤と離型剤、エポキシ樹脂及び/又は硬化剤と応力緩和剤、充填剤とカップリング剤等を室温で又は加熱下に予備混練して用いてもよい。
【0063】
得られた封止用成形材料をタブレット成形機で成形することにより封止材タブレットが製造される。すなわち、封止用成形材料を冷却し、必要に応じてハンマーミル等で粉砕して所定の粒径に整粒した後、タブレット成形機を用いて使用目的に応じて成形条件に合うような寸法及び質量にタブレット化される。
タブレット化する場合は、タブレット成形の離型性を向上させるために、離型剤を用いて成形されてもよい。
【0064】
離型剤を使用する場合は、溶剤に溶解した離型剤をタブレット成形機のパンチの封止材料との接触面に供給して、前記パンチ面上に離型剤層を形成させる。その後、前記タブレット成形機に供給した封止用成形材料を打錠成形することにより、封止材タブレットが製造される。
本発明において用いられる離型剤としては、特に制限はないが、たとえば、以下のものが挙げられ、以下のものを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ジメチルポリシロキサンを主成分とするオルガノポリシロキサン等のシリコーン系離型剤、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキル含有重合物等のフッ素系離型剤、ポリビニルアルコール等のアルコール系離型剤、パラフィン、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン等のワックス類またはポリスチレン樹脂など。
【0065】
本発明において用いられる溶剤としては、離型剤を溶解できるものであれば特に制限はなく、たとえば、ヘキサン、ペンタン、ハイドロフルオロエーテル、デカフルオロペンタン等の一般的な溶剤を使用することができる。しかし、封止材タブレットを製造する作業環境が20℃程度の作業環境であっても、タブレット成形機が局所的に50℃近くに達することがある。そのため、安全性、作業性の観点からは、溶剤がハイドロフルオロエーテル、デカフルオロペンタン等の引火性がない溶剤であることが好ましい。引火性がない溶剤を用いることによって、安全装置の削減や点検の低減が図れる。ここで、引火性がない溶剤としては、20℃において引火性がない溶液が好ましく、50℃以上において引火性がない溶液がさらに好ましい。
【0066】
離型剤と溶剤の使用割合は、離型剤が溶剤に溶解していれば特に制限はないが、製品特性の観点からは、溶剤に対して離型剤が0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。
溶剤に溶解した離型剤(以下、「離型剤溶液」という)をタブレット成形機のパンチ面に供給して、パンチ面上に離型剤層を形成させる方法としては特に制限はなく、例えば以下の一般的手法が挙げられる。焼付け塗装等の塗装コーティング、スプレーノズルで噴霧する等のスプレーコーティングなど。操作性が優れているという観点からはスプレーコーティングが好ましい。離型剤溶液を空気等の流体に混ぜてスプレーコーティングしてもよい。パンチ面への離型剤溶液の供給は、タブレット成形機の連続成形動作に連動させて適当な間隔で断続して行うことが好ましい。
【0067】
パンチ面上に形成された離型剤層の厚さは、優れた離型性が得られ、かつ外観不良の発生を回避できるという観点から0.001~0.07μmであることが必要で、優れた離型性及び接着性が得られるという観点からは0.01~0.02μmが好ましい。ここで、離型剤層の厚さとは、1回の離型剤溶液の供給工程により得られるものを意味し、実測値又は理論値から求められる。理論値から求める場合は、パンチの表面積、離型剤の溶剤希釈率及び供給量から算出できる。
離型剤層は、パンチ面上の一部に形成されてもかまわないが、優れた離型性が得られるという観点からはパンチ面上の全体に形成されることが好ましく、パンチ面上に均一に形成されることがより好ましい。
【0068】
~メモリの固定方法~
本発明の実施例に係る、メモリ200のメモリ支持部材への取付方法及び固定方法について図10a、図10b、及び図11を用いて詳細に説明する。
前述したように、メモリ200は、駆動側カバー部材24の上面に取り付けられている。駆動側カバー部材24には、メモリ200を支持するためのメモリ支持部24aが設けられている。本実施例において該メモリ支持部24aはメモリ200を挿入するため一方向が開放されたスリット部(開放部24b)である。
【0069】
図10bは図4に示すR-R線に沿う断面図であり、メモリ200はメモリ支持部24aのメモリ封止材接地面24a5に支持され、さらにメモリ支持部24aの凸部24a1により矢印Z方向へ抜けることを防止している。また、メモリ200はメモリ支持部24aの内面24a3により矢印Y方向への移動が規制される。内面24a3がY方向の移動規制部となる。メモリ封止材接地面24a5がZ方向(下方向)の移動規制部、凸部24a1がZ方向(上方向)の移動規制部となる。
【0070】
また、メモリ200の挿入方向先端側はメモリ支持部24aの開放部24bとは反対側の奥面24a4で規制される。メモリ200の挿入方向後端側は特に規制しなくてもよいし、スナップフィット等の手段(不図示)で規制でもよい。前記の移動規制としてY方向もしくはZ方向規制部の一部にメモリ200を拘束する圧入部93(図16図18参照)を設けてもよい。この圧入部93は、後述する、溶着固定が完結するまでの間、メモリ200が、メモリ支持部24aから脱落することを防止する目的としても用いることができる。
【0071】
次にメモリ200のメモリ支持部24材である駆動側カバー部材24への固定方法につて図9a、図9b、図9c、及び図10bを用いて説明する。
メモリ支持部24aがポリスチレン系樹脂で形成されている場合、メモリ200の封止材にポリスチレン系樹脂を含有する。その場合、接着(溶着)する目的の溶剤には、テルペン系溶剤が好ましく、中でもd-リモネンが好ましい。
メモリ支持部24aがポリスチレン系樹脂で形成されている場合に、テルペン系溶剤(例えば、d-リモネン)を用いることが好ましい理由は、テルペン系溶剤がスチレン系樹脂を溶解するメカニズムにある(特許文献3)。接合される部品が、各々スチレン系樹脂を含んでいる場合にテルペン系溶剤が用いられると、テルペン系溶剤により部品の表層のみが溶解され、溶解部が密着し、一体化される。その後、テルペン系溶剤は、蒸発及び拡散することで、メモリ支持部24aのメモリ封止材接地面24a5と、メモリ200が有するメモリ封止材接地面24a5の対向面200d1からなくなる。その結果、封止材200dのメモリ封止材接地面24a5の対向面200d1と、メモリ支持部24aのメモリ封止材接地面24a5とが固定される。
【0072】
固定(溶着)に用いられるテルペン系溶剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。d-リモネン、l-リモネン、dl-リモネン、d-α-ピネン、d-β-ピネン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、2-カレン、d-3-カレン、l-3-カレン、フェランドレン。中でも、d-リモネン、l-リモネン又はdl-リモネンを用いることが好ましく、d-リモネンを用いることが特に好ましい。d-リモネンは、粘度は25℃で0.98cPと水とほぼ同等であるため、前記のように、微小空間を浸透する毛細管現象による供給が可能である。
【0073】
そのため、図9c、図13に示すように、メモリ支持部24aにメモリ200が取付けられた状態で、溶剤塗布装置60にて、d-リモネン61を塗布することで、メモリ封止材接地面24a5と、その対向面200d1との界面にリモネンが供給される。その結果、両部材の界面に存在するスチレン系樹脂が溶融し、密着し、一体化することで前記のとおり固定される。前記リモネン61を塗布する溶剤塗布装置60は、とても安価な装置である。
【0074】
d-リモネンの塗布タイミングは、図9b、図12に示すように、メモリ支持部24aにメモリ200を取り付ける前に、塗布し、塗布した後にメモリ200を取り付けてもよい。この場合は、前記毛細管現象を用いるためにD-リモネンによる部品間溶着は、溶着する部品間の界面が、接触もしくは近接している必要がある。前記近接とは、0.15mm以下の状態を意味する。これは、リモネンにより溶融したスチレン樹脂を含む各部品が溶融し、部品間の界面が接触することで接触した界面が溶着されるメカニズムのため、溶着できる部品間の隙間の目安である。
そのため、上記のメモリ200を移動規制するように設けたメモリ支持部24aの封止材200dとの隙間が0.15mm程度以下である部分と、接触している部分については、溶着(固定)される。
そのため、封止材側面200d3と、メモリ支持部24aの内面24a3との隙間も0.15mm以下であれば、同様に溶着固定される。
【0075】
図14図15図19図20図21を用いて他の実施例について説明する。前記のとおり、D-リモネンでの部品間溶着は、溶着する部品間の界面が、接触もしくは近接(0.15mm程度以下)している必要がある。
逆にいえば、この状態でないと溶着することができない。この特性(メカニズム)を利用することで、溶着固定したい箇所を特定(限定)することができる。
メモリ支持部24aのメモリ封止材接地面24a5に、メモリ200の封止材200dと接触、又は近接しないようにニゲ溝92を設けて、リモネンによる溶着を回避し、溶着面積を減少させることで、溶着強度を落とすこともできる(図14図15)。溶着強度を増す場合は、溶着面積を増やせばよい。すなわち溶着面積の増減によって溶着強度をコントロールすることが可能である。
図19図20に示すように、封止材200dのメモリ支持部24aと対向する対向面200d1に溝200d2を設けることによって溶着面積を減少させても良い。
【0076】
テルペン系溶剤としては、あらかじめポリスチレンをテルペン系溶剤中に溶かしたものを用いても良い。質量基準で10数%程度ポリスチレンを溶解したものであれば、接合(溶着)強度はテルペン系溶剤単独の場合とほぼ同様の効果が得られるが、多量に溶解した場合には、溶剤の粘度が上昇し、毛細管現象が生じにくくなってしまう傾向がある。
毛細管現象が生じにくくなってしまった場合は、テルペン系溶剤をメモリ支持部24aのメモリ封止材接地面24a5に塗布した後に、メモリ200を組付ければよい。(図9b、図12参照)
【0077】
また、他の材料との混合液、例えばIPA(イソプロピルアルコール)とd-リモネンとの混合液を用いると2部品間が十分に結合するまでの時間を短縮することができる。
本実施例としては、メモリ200は、駆動側カバー部材24をメモリ支持手段(メモリ支持部材)として、このカバー部材24に設けられたメモリ支持部24aに取り付けた。しかし、メモリ支持手段が駆動側カバー部材24ではなく、クリーニンングユニット8や現像装置9に設けられてももちろんかまわない。
【0078】
本発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置の装置本体に着脱可能に設けられたカートリッジに関するものであり、前記実施例として説明した、電子写真技術及びそのカートリッジに限定されるものではない。画像形成装置とは、記録媒体に画像を形成する手段を意味する。具体的には、例えば電子写真画像形成方式を用いて記録媒体に画像を形成するものである。電子写真画像形成装置の例としては、例えば、電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えばレーザープリンタ、LEDプリンタ等)、ファクシミリ装置、ワードプロセッサ及びこれらの複合機(マルチファンクションプリンター等)が含まれる。
また、インクカートリッジから供給されるインクを用いるインクジェット方式プリンタも含まれる。
更には、インクリボンを用いた、タイプライター、ドットインパクト方式のプリンタ、熱転写型のプリンタも含まれる。
また、カートリッジとは、記録媒体に画像を形成する、電子写真方式の場合のトナー、インクジェット方式の場合のインク、インクリボンを用いる方式の場合のインクを有するユニット品である。
【符号の説明】
【0079】
1・・画像形成装置、2・・装置本体、
S・・記録媒体、P・・カートリッジ、
24・・メモリ支持手段(駆動側カバー部材)、24a・・メモリ支持部、
25・・非駆動側カバー部材
92・・従来のメモリ、
100・・制御回路部
200・・メモリ、200a、200b・・カートリッジ電気接点、
200c・・基板、200d・・封止材、200e・・半導体デバイス、

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22