(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 33/02 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
H02K33/02 A
(21)【出願番号】P 2020106666
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】森 亮
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-311367(JP,A)
【文献】特開2019-013086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および可動体と、
前記支持体および前記可動体に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、
前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、
前記接続体は、前記可動体の振動方向の一端側に配置される第1接続体、および、前記可動体の振動方向の他端側に配置される第2接続体を備え、
前記第1接続体および前記第2接続体は、筒状であり、
前記第1接続体の内周部および前記第2接続体の内周部は、前記可動体および前記支持体の一方に接続され、
前記第1接続体の外周部および前記第2接続体の外周部は、前記可動体および前記支持体の他方に接続され、
前記第1接続体は、前記第2接続体とは反対側を向く第1接続体第1端面を備え、
前記第2接続体は、前記第1接続体とは反対側を向く第2接続体第1端面を備え、
前記可動体が原点位置に位置する状態において、
前記第1接続体第1端面は、内周側に向かうに従って振動方向の他方側に向かう傾斜面になっており、
前記第2接続体第1端面は、内周側に向かうに従って振動方向の一方側に向かう傾斜面になっていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記可動体が原点位置に位置する状態において、
前記第1接続体第1端面は、内周縁が外周縁よりも前記第2接続体側に位置し、
前記第2接続体第1端面は、内周縁が外周縁よりも前記第1接続体側に位置することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1接続体および前記第2接続体は、ゲル状部材であり、
前記第1接続体は、前記第1接続体第1端面とは反対側を向く第1接続体第2端面を備え、前記第1接続体第2端面は、前記第1接続体第1端面の側に凹んでおり、
前記第2接続体は、前記第2接続体第1端面とは反対側を向く第2接続体第2端面を備え、前記第2接続体第2端面は、前記第2接続体第1端面の側に凹んでいることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記磁気駆動機構は、磁石およびコイルを備え、
前記可動体は、前記支持体の内周側で前記磁石および前記コイルのうちの一方を含む被支持部材を支持する支軸と、前記支軸の一端側に固定される第1内枠部材と、前記支軸の他端側に固定される第2内枠部材と、を備え、
前記支持体は、前記第1内枠部材と径方向で対向する第1外枠部材と、前記第2内枠部材と径方向で対向する第2外枠部材と、前記第1外枠部材および前記第2外枠部材の外周側を囲む筒状のケースを備え、
前記第1接続体は、前記第1内枠部材および前記第1外枠部材に接続され、
前記第2接続体は、前記第2内枠部材および前記第2外枠部材に接続され、
第1接続体第1端面の内周縁と第1内枠部材の外周面とのなす角度は鈍角であり、第1接続体第1端面の内周縁と第1内枠部材の外周面とのなす角度は鈍角であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記第1内枠部材は、前記第1外枠部材の前記第2接続体側の端部よりも前記第2接続体側に突出しており、
前記第2内枠部材は、前記第2外枠部材の前記第1接続体側の端部よりも前記第1接続体側に突出していることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1内枠部材は、前記支軸が圧入される第1固定部を備え、
前記第2内枠部材は、前記支軸が圧入される第2固定部を備えることを特徴とする請求項4または5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第1内枠部材は、前記被支持部材に前記支軸の一端側から当接し、
前記第2内枠部材は、前記被支持部材に前記支軸の他端側から当接することを特徴とする請求項4から6の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を支持体に対して相対移動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータとして、支持体および可動体と、支持体に対して可動体を振動させる磁気駆動機構を備えるとともに、可動体と支持体とを弾性および粘弾性を備えた接続体によって接続したものがある。特許文献1には、直方体状のカバーの内部に可動体を配置し、可動体をカバーの長手方向に振動させるアクチュエータが開示される。特許文献1のアクチュエータでは、接続体は、シート状ゲルを矩形に切断したゲル状部材である。可動体は、磁石が固定されたヨークを備えており、接続体(ゲル状部材)は、厚さ方向の一方の面がヨークに接着され、他方の面がカバー部材に接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、筒状のケースの内側に可動体を収容し、可動体を軸線方向に振動させるアクチュエータを提案している。可動体は、ケースの中心において軸線方向に延びる支軸を備えており、支軸の軸線方向の両端が円筒状の接続体を介してケースに接続される。接続体はゲル状部材であり、ケースの両端は蓋部材によって塞がれている。
【0005】
上記のような構造のアクチュエータでは、可動体が軸線方向に振動する際、接続体の内周部に応力が集中する。従って、接続体の内周部が可動体から剥がれるおそれがある。接続体が可動体からはがれやすいと、アクチュエータの耐久性が低下する。
【0006】
また、可動体が軸線方向に振動するアクチュエータでは、ケースの両端を塞ぐ蓋部材と可動体との衝突を回避するために、可動体と蓋部材との間にクリアランスを設けなければならない。従って、アクチュエータが軸線方向に大型化する。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、可動体の両端を接続体によって支持体に接続したアクチュエータの小型化、および、耐久性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、支持体および可動体と、前記支持体および前記可動体に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、前記接続体は、前記可動体の振動方向の一端側に配置される第1接続体、および、前記可動体の振動方向の他端側に配置される第2接続体を備え、前記第1接続体および前記第2接続体は、筒状であり、前記第1接続体の内周部および前記第2接続体の内周部は、前記可動体および前記支持体の一方に接続され、前記第1接続体の外周部および前記第2接続体の外周部は、前記可動体および前記支持体の他方に接続され、前記可動体が原点位置に位置する状態において、前記第1接続体は、内周部が外周部に対して前記第2接続体の側に引っ張られてせん断変形しており、前記第2接続体は、内周部が外周部に対して前記第1接続体の側に引っ張られてせん断変形していることを特徴とする。
【0009】
本発明では、可動体が原点位置に位置するとき、可動体の振動方向の一端側に配置される第1接続体と、可動体の振動方向の他端側に配置される第2接続体は、第1接続体の内周部と第2接続体の内周部とが互いに接近する方向に引っ張られてせん断変形している。このように、第1接続体と第2接続体の内周部が可動体の振動方向の中央に向かって引っ張られた状態にしておけば、可動体の振動方向のサイズを小さくできるとともに、可動体の振動方向の両側に確保すべきクリアランスを小さくできる。従って、アクチュエータを小型化できる。また、第1接続体と第2接続体の内周部は、可動体の振動時に応力が集中する部位であるが、この部位を予め可動体の振動方向の中央に向かって引っ張って接続体をせん断変形させておくことにより、可動体が振動したときに両接続体の内周部に加わる応力を緩和できる。従って、両接続体の内周部が可動体および支持体の一方から剥がれるおそれが少ないので、アクチュエータの耐久性を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記第1接続体は、前記第2接続体とは反対側を向く第1接続体第1端面を備え、前記第2接続体は、前記第1接続体とは反対側を向く第2接続体第1端面を備え、前記可動体が原点位置に位置する状態において、前記第1接続体第1端面は、内周縁が外周縁よりも前記第2接続体側に位置し、前記第2接続体第1端面は、内周縁が外周縁よりも前記第1接続体側に位置する。このように、第1接続体第1端面および第2接続体第1端面は、原点位置において、内周縁が可動体の振動方向の中央に向かって凹んだ形状になっているので、可動体が振動したときに、第1接続体第1端面と第1内枠部材の外周面とのなす角度、および、第2接続体第1端面と第2内枠部材の外周面とのなす角度が小さくなりにくい。従って、可動体が振動したときに、両接続体の内周部が可動体および支持体の一方から剥がれるおそれが少ないので、アクチュエータの耐久性を高めることができる。
【0011】
本発明において、前記第1接続体および前記第2接続体は、ゲル状部材であり、前記第1接続体は、前記第1接続体第1端面とは反対側を向く第1接続体第2端面を備え、前記第1接続体第2端面は、前記第1接続体第1端面の側に凹んでおり、前記第2接続体は、前記第2接続体第1端面とは反対側を向く第2接続体第2端面を備え、前記第2接続体第2端面は、前記第2接続体第1端面の側に凹んでいる。接続体がゲル状部材である場合には、注型により製造することにより、成形時に接続体をゲル状部材自体の接着力によって内枠部材と外枠部材に接続して部品化できる。注型により接続体を製造する場合には、一方の端面(第1接続体第1端面と第2接続体第1端面)は型部材によって成形される平坦面になり、他方の端面(第1接続体第2端面と第2接続体第2端面)はゲル材料の表面張力によって凹面になる。成形時に接続体を内枠部材と外枠部材に接続して部品化すれば、アクチュエータの組立時に、接着剤を用いて接続体を固定する工程を行う必要がない。従って、接続体の取り扱いが容易であり、アクチュエータの組立を容易にすることができる。
【0012】
本発明において、前記磁気駆動機構は、磁石およびコイルを備え、前記可動体は、前記支持体の内周側で前記磁石および前記コイルのうちの一方を含む被支持部材を支持する支軸と、前記支軸の一端側に固定される第1内枠部材と、前記支軸の他端側に固定される第2内枠部材と、を備え、前記支持体は、前記第1内枠部材と径方向で対向する第1外枠部材と、前記第2内枠部材と径方向で対向する第2外枠部材と、前記第1外枠部材および前記第2外枠部材の外周側を囲む筒状のケースを備え、前記第1接続体は、前記第1内枠部材および前記第1外枠部材に接続され、前記第2接続体は、前記第2内枠部材および前記第2外枠部材に接続される。このような構成では、支軸を中心にして組み立てた可動体の両端を第1接続体および第2接続体によって支持できるので、可動体を安定して支持できる。また、第1接続体は第1内枠部材と第1外枠部材の径方向の隙間に配置され、第2接続体は第2内枠部材と第2外枠部材の径方向の隙間に配置されるので、振動方向と異なる方向に可動体が動きにくい。従って、可動体が意図しない方向に動いて支持体と衝突する
おそれが少ない。
【0013】
本発明において、前記第1内枠部材は、前記第1外枠部材の前記第2接続体側の端部よりも前記第2接続体側に突出しており、前記第2内枠部材は、前記第2外枠部材の前記第1接続体側の端部よりも前記第1接続体側に突出している。このように、内枠部材が外枠部材から突出していれば、接続体の裏表が一目でわかる。従って、第1接続体と第2接続体を軸線方向で逆向きにして組み立てる作業を容易に、且つ、間違いなく行うことができる。
【0014】
本発明において、前記第1内枠部材は、前記支軸が圧入される第1固定部を備え、前記第2内枠部材は、前記支軸が圧入される第2固定部を備えることが好ましい。このように、圧入によって第1内枠部材および第2内枠部材を固定すれば、ねじなどの固定部品およびねじ穴を設ける必要がないので、第1内枠部材および第2内枠部材を製造する際に材料の歩留まりが良く、加工コストも低い。従って、部品コストが低い。
【0015】
本発明において、前記第1内枠部材は、前記被支持部材に前記支軸の一端側から当接し、
前記第2内枠部材は、前記被支持部材に前記支軸の他端側から当接することが好ましい。このようにすると、第1内枠部材と第2内枠部材によって被支持部材を軸線方向に位置決めできる。従って、被支持部材に含まれる磁石またはコイルの位置決めが容易である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可動体が原点位置に位置するとき、可動体の振動方向の一端側に配置される第1接続体と、可動体の振動方向の他端側に配置される第2接続体は、第1接続体の内周部と第2接続体の内周部とが互いに接近する方向に引っ張られてせん断変形している。このように、第1接続体と第2接続体の内周部が可動体の振動方向の中央に向かって引っ張られた状態にしておけば、可動体の振動方向のサイズを小さくできるとともに、可動体の振動方向の両側に確保すべきクリアランスを小さくできる。従って、アクチュエータを小型化できる。また、第1接続体と第2接続体の内周部は、可動体の振動時に応力が集中する部位であるが、この部位を予め可動体の振動方向の中央に向かって引っ張って接続体をせん断変形させておくことにより、可動体が振動したときに両接続体の内周部に加わる応力を緩和できる。従って、両接続体の内周部が可動体および支持体の一方から剥がれるおそれが少ないので、アクチュエータの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの斜視図である。
【
図2】
図1に示すアクチュエータの分解斜視図である。
【
図3】
図1に示すアクチュエータの断面図(
図1のA-A断面図)である。
【
図4】内枠部材および外枠部材が固定された接続体の断面図である。
【
図6】可動体が原点位置に位置するときの接続体の形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明において、可動体3の中心軸線が延在する方向を軸線L方向とし、軸線L方向の一方側をL1とし、軸線L方向の他方側をL2とする。本発明を適用したアクチュエータ1は、可動体3が支持体2に対して軸線L方向に振動する。
【0019】
以下に説明する実施形態では、可動体3は、支持体2の内周側に配置されるが、本発明
では、可動体3が支持体2の外周側に配置される態様を採用してもよい。また、以下に説明する実施形態では、可動体3を支持体2に対して振動させる磁気駆動機構6は、可動体3に配置される磁石61と、支持体2に配置されるコイル62とを備えているが、本発明では、磁石61とコイル62の配置を逆にした構成を採用してもよい。すなわち、磁気駆動機構6は、可動体3に配置されるコイル62と、支持体2に配置される磁石61とを備えている態様であってもよい。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すアクチュエータ1の分解斜視図である。
図3、
図4は、
図1に示すアクチュエータ1の断面図である。
図3は、
図1のA-A位置で切断した断面図である。アクチュエータ1は、支持体2と、可動体3と、支持体2および可動体3に接続された接続体10と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6とを備える。接続体10は、弾性および粘弾性のうちの少なくとも一方を備える。磁気駆動機構6は、可動体3に配置される磁石61と、支持体2に配置されるコイル62とを備えており、支持体2に対して可動体3を軸線L方向に相対移動させる。
図3に示すように、可動体3は、軸線L方向の一方側L1の端部、および軸線L方向の他方側L2の端部の各位置において、接続体10を介して支持体2と接続される。
【0021】
(支持体)
支持体2は、筒状のケース20と、ケース20の軸線L方向の一方側L1の開口を塞ぐ第1蓋部材21と、ケース20の軸線L方向の他方側L2の開口を塞ぐ第2蓋部材22と、ケース20の内周側で第1蓋部材21と第2蓋部材22との間に配置されるコイルホルダ4を有する。本形態では、ケース20、第1蓋部材21、第2蓋部材22、およびコイルホルダ4は樹脂製である。また、支持体2は、コイルホルダ4の内周側に嵌まる第1外枠部材51と、第1外枠部材51に対して軸線L方向の他方側L2に離間した位置でケース20の内周側に嵌まる第2外枠部材52を有する。第1外枠部材51と第2外枠部材52とは同一形状であり、軸線L方向で逆向きに配置される。
【0022】
(接続体)
接続体10は、第1外枠部材51の内周面に接合された環状の第1接続体11と、第2外枠部材52の内周面に接合された環状の第2接続体12を備える。可動体3の軸線L方向(すなわち、可動体の振動方向)の一端側に第1接続体11が配置され、可動体3の軸線L方向の他端側に第2接続体12が配置される。第1接続体11および第2接続体12はゲル状部材であり、ゲル状部材自身の粘着性によって、第1外枠部材51および第2外枠部材52に接合される。第1接続体11および第2接続体12は、例えば、針入度が90度から110度のシリコーンゲルからなる。本形態では、第1外枠部材51をコイルホルダ4に圧入して固定することにより、第1接続体11が支持体2に接続される。また、第2外枠部材52をケース20に圧入して固定することにより、第2接続体12が支持体2に接続される。
【0023】
(コイルホルダ)
図2に示すように、コイルホルダ4は、環状の第1外枠部材固定部41と、第1外枠部材固定部41から軸線L方向の他方側L2へ突出する胴部42とを備えており、胴部42の周りにコイル62が配置される。コイル62から引き出されたコイル線63の端部は、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41から径方向外側へ突出する2本の端子ピン64に絡げられている。
図1に示すように、端子ピン64はケース20の外部へ突出しており、配線基板7に接続される。
【0024】
図3に示すように、コイルホルダ4は、第1外枠部材51を軸線L方向に位置決めする
第1段部44を備える。第1外枠部材固定部41は第1外枠部材51の外周側を囲んでいる。第1外枠部材固定部41の内周面には、軸線L方向の他方側L2に凹む第1凹部43が設けられ、第1外枠部材51は、第1凹部43に圧入される。第1段部44は、第1凹部43の軸線L方向の他方側L2の端部に設けられている。本形態では、第1外枠部材51の外周面に形成された環状段部511が第1段部44に対して軸線L方向に当接する。
【0025】
(ケース)
ケース20は、円筒状のケース本体24と、ケース本体24の内周側に配置される第2外枠部材固定部25を備える。
図2に示すように、第2外枠部材固定部25は、ケース本体24の内周面から内周側に突出しており、ケース本体24と一体に成形される。
図3、
図4に示すように、第2外枠部材固定部25は、コイルホルダ4に対して軸線L方向の他方側L2に離間した位置に配置される。
【0026】
ケース20は、第2外枠部材52を軸線L方向に位置決めする第2段部45を備える。
図3に示すように、第2外枠部材固定部25の内周面には、軸線L方向の一方側L1に凹む第2凹部46が設けられ、第2外枠部材52は、第2凹部46に圧入される。第2段部45は、第2凹部46の軸線L方向の一方側L1の端部に設けられている。本形態では、第2外枠部材52の外周面に形成された環状段部521が第2段部45に対して軸線L方向に当接する。
【0027】
また、ケース20は、コイルホルダ4を軸線L方向に位置決めする第3段部47を備える。
図3に示すように、第3段部47は、ケース本体24の内周面に形成される。ケース本体24の内周面には、軸線L方向に延びる複数の溝部29が形成され、各溝部29の軸線L方向の他方側L2の端部に第3段部47が形成されている。一方、
図2、
図3に示すように、コイルホルダ4は、第1外枠部材固定部41の外周面から突出する複数の凸部49を備える。支持体2を組み立てる際、コイルホルダ4の各凸部49は、ケース本体24の各溝部29に軸線L方向の一方側L1から嵌め込まれ、第3段部47に対して軸線L方向に当接する。これにより、コイルホルダ4がケース本体24に圧入されて固定されるとともに、コイルホルダ4が軸線L方向に位置決めされる。
【0028】
(蓋部材)
図3に示すように、第1蓋部材21は、コイルホルダ4に設けられた第1外枠部材固定部41の軸線L方向の一方側L1からケース本体24に固定されている。また、第2蓋部材22は、第2外枠部材固定部25の軸線L方向の他方側L2からケース本体24に固定されている。
図2に示すように、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、軸線L方向から見て円形の蓋部26と、蓋部26の外周縁に等間隔で配置された複数の係止部27を備える。本形態では、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、3個所の係止部27を備える。係止部27は、蓋部26から外周側へ拡がる方向に傾斜して延びる爪部である。
【0029】
係止部27は、径方向に弾性変形して蓋部26と共にケース本体24の内周側に押し込まれる。ケース20は、係止部27がケース20の内側から外れることを規制する規制部28を備える。規制部28は、ケース本体24の端部から内周側に突出する凸部である。
図1、
図2に示すように、規制部28は、ケース本体24の軸線L方向の一方側L1および他方側L2の端部に、それぞれ、3個所ずつ等間隔で配置される。規制部28は、係止部27の先端に対して軸線L方向に当接する。
【0030】
第1蓋部材21は、係止部27および規制部28による係止構造と、接着剤による固定と、溶着とを併用してケース20に固定される。接着剤は、硬化後にケース20の一方側L1の端部と第1蓋部材21との隙間を封止する封止材となるように塗布される。従って
、組立後の支持体2では、第1蓋部材21とケース20との隙間は、接着剤(図示せず)によって封止される。
【0031】
第1蓋部材21は、溶着によってコイルホルダ4に固定され、コイルホルダ4を介してケース20に固定される。
図2、
図3に示すように、第1蓋部材21は、蓋部26から軸線L方向の他方側L2に突出する複数の溶着用凸部210を備える。一方、
図3に示すように、コイルホルダ4は、蓋部26と軸線L方向に対向する複数の溶着用凹部410を備える。本形態では、溶着用凸部210および溶着用凹部410は、周方向に等間隔で3個所に配置される。第1蓋部材21をケース20に固定する際には、
図3に示すように、各溶着用凸部210がコイルホルダの溶着用凹部410に溶着される。
【0032】
第2蓋部材22は、第1蓋部材21と同様に、係止部27および規制部28による係止構造と、接着剤による固定と、溶着とを併用してケース20に固定される。接着剤は、硬化後にケース20の他方側L2の端部と第2蓋部材22との隙間を封止する封止材となるように塗布される。従って、組立後の支持体2では、第2蓋部材22とケース20との隙間は、接着剤(図示せず)によって封止される。
【0033】
第2蓋部材22は、溶着によってケース20の第2外枠部材固定部25に固定される。
図2、
図3に示すように、第2蓋部材22は、蓋部26から軸線L方向の一方側L1に突出する複数の溶着用凸部220を備える。一方、第2外枠部材固定部25は、蓋部26と軸線L方向に対向する複数の溶着穴250を備える。本形態では、溶着用凸部220および溶着穴250は、周方向に等間隔で3個所に配置される。第2蓋部材22をケース20に固定する際には、
図3に示すように、各溶着用凸部220が第2外枠部材固定部25の溶着穴250に溶着される。
【0034】
図2に示すように、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41は、ケース本体24に設けられた3個所の規制部28と軸線L方向で重なる部分を内周側に切り欠いた溝部48を備える。従って、コイルホルダ4をケース本体24の内部に挿入する際に、第1外枠部材固定部41と規制部28とが干渉することが回避される。
【0035】
(配線引き出し部)
図1に示すように、支持体2は、磁気駆動機構6のコイル62から引き出したコイル線63を絡げた端子ピン64を外部に引き出すための配線引き出し部60を備える。配線引き出し部60は、ケース20の軸線L方向の一方側L1の縁を軸線L方向の他方側L2に切り欠いた切欠き部65と、第1蓋部材21の外周縁の周方向の一部から軸線L方向の他方側L2に延びるカバー66との間に設けられた隙間である。
【0036】
切欠き部65の内周側には、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41が配置される。本形態では、第1外枠部材固定部41から外周側に延びる2本の端子ピン64が配線引き出し部60に配置される。各端子ピン64の根本には、コイル62から引き出されたコイル線63が絡げられている。
【0037】
図2に示すように、切欠き部65の周方向の両側の縁には、それぞれ、径方向外側に開口する溝部67が形成されている。カバー66は、ケース本体24の外周面と略同一面上に位置する湾曲形状をしており、カバー66の周方向の両側の縁には、径方向内側に突出する係止部68が設けられている。切欠き部65に対して軸線L方向の一方側からカバー66が挿入される際、切欠き部65の周方向の両側の縁に設けられた2本の溝部67にそれぞれカバー66の係止部68が挿入される。これにより、切欠き部65の縁がカバー66によって係止されるので、切欠き部65の幅が拡がってケース20が変形することが抑制される。
【0038】
ケース20は、切欠き部65の他方側L2に形成された基板固定部69を備える。配線引き出し部60には、基板固定部69に固定される配線基板7の端部が配置される。端子ピン64は、配線基板7の縁に設けられた保持溝71に位置決めされ、保持溝71の縁に形成されたランドと電気的に接続される。配線基板7には、コイル62に対する給電用のリード線8が接続される。基板固定部69は、配線基板7に対して周方向に隣接する位置でリード線8を保持するリード線保持部690を備える。
【0039】
基板固定部69は、切欠き部65に配置された配線基板7の縁を係止する爪部691を備える。配線基板7は、爪部691による係止構造と、接着剤による固定とを併用して基板固定部69に固定される。配線基板7を固定する接着剤は、配線基板7とケース20との隙間、および、カバー66の先端と配線基板7との隙間を封止する封止材となるように塗布される。従って、組立後の支持体2では、配線基板7とケース20との隙間、および、配線基板7と第1蓋部材21との隙間は、接着剤(図示せず)によって完全に封止されている。また、第1蓋部材21をケース20に固定する際、カバー66と切欠き部65との隙間にも接着材が塗布される。従って、カバー66と切欠き部65との隙間も、接着剤(図示せず)によって封止される。
【0040】
(可動体)
図2、
図3に示すように、可動体3は、支持体2の径方向の中心において軸線L方向に延びる支軸30を有する。支軸30には、筒状の第1内枠部材36、および筒状の第2内枠部材37によって、磁石61およびヨーク35が固定される。支軸30は金属製の丸棒である。第1内枠部材36および第2内枠部材37は、金属製の円筒体であり、第1内枠部材36および第2内枠部材37には円形の貫通穴が設けられている。第1内枠部材36および第2内枠部材37は同一形状であり、軸線L方向に逆向きに配置される。
【0041】
第1内枠部材36は第1外枠部材51と径方向に対向しており、第1内枠部材36と第1外枠部材51の間に第1接続体11が配置される。また、第2内枠部材37は第2外枠部材52と径方向に対向しており、第2内枠部材37と第2外枠部材52の間に第2接続体12が配置される。上記のように、第1接続体11および第2接続体12はゲル状部材であり、ゲル状部材自身の粘着性によって、第1接続体11が第1内枠部材36に接合され、第2接続体12が第2内枠部材37に接合されている。第1内枠部材36および第2内枠部材37に支軸30を圧入して固定することにより、第1接続体11および第2接続体12が可動体3に接続される。
【0042】
図3に示すように、第1内枠部材36の内周面には、軸線L方向の他方側L2の端部に径方向内側に突出した環状突部361が形成されている。第1内枠部材36を支軸30に圧入した際、支軸30は環状突部361に圧入される。従って、環状突部361は、支軸30が圧入される第1固定部である。また、第2内枠部材37の内周面には、軸線L方向の一方側L1の端部に径方向内側に突出した環状突部371が形成されている。第2内枠部材37を支軸30に圧入した際、支軸30は環状突部371に圧入される。従って、環状突部371は、支軸30が圧入される第2固定部である。
【0043】
磁石61は、支軸30が貫通する軸穴610が設けられており、支軸30の軸線L方向の略中央に固定される。ヨーク35は、磁石61に軸線L方向の一方側L1で重なる第1ヨーク31と、磁石61に軸線L方向の他方側L2で重なる第2ヨーク32を備える。第1ヨーク31は、支軸30が貫通する軸穴310が設けられた円板状であり、磁石61と第1ヨーク31とは外径が等しい。第2ヨーク32は、カップ状の第1磁性部材33と、円板状の第2磁性部材34の2つの部材からなる。第1磁性部材33は、支軸30が貫通する軸穴330が設けられた円形の端板部331と、端板部331の外縁から軸線L方向
の一方側L1に延びる円筒部332とを有する。本形態では、第1磁性部材33の端板部331が磁石61の軸線L方向の他方側L2の端面に固定される。第2磁性部材34は、支軸30が貫通する軸穴340を備えており、第1磁性部材33の端板部331に対して磁石61とは反対側から固定される。
【0044】
可動体3は、磁石61およびヨーク35を構成する各部材の軸穴310、610、330、340に支軸30を貫通させた状態で、磁石61およびヨーク35の軸線L方向の両側で第1内枠部材36および第2内枠部材37を支軸30に固定する。その結果、第1内枠部材36が軸線L方向の一方側L1から磁石61およびヨーク35を支持し、第2内枠部材37が軸線L方向の他方側L2から磁石61およびヨーク35を支持する結果、磁石61およびヨーク35は、支軸30に固定される。
【0045】
磁石61およびヨーク35は、第1内枠部材36および第2内枠部材37によって支軸30に固定される被支持部材を構成している。環状突部361(第1固定部)は、第1内枠部材36の軸線L方向の他方側L2の端部に設けられて、磁石61およびヨーク35(被支持部材)に軸線L方向の一方側L1から当接する。また、環状突部371(第2固定部)は、第2内枠部材37の軸線L方向の一方側L1の端部に設けられて、磁石61およびヨーク35(被支持部材)に軸線L方向の他方側L2から当接する。
【0046】
第2ヨーク32は、第1磁性部材33の円筒部332の内径が、磁石61および第1ヨーク31の外径より大きい。従って、磁石61および第1ヨーク31を円筒部332の底部である円形の端板部331に重ねると、円筒部332は、磁石61の外周面および第1ヨーク31の外周面から径方向外側に離間した位置で磁石61の外周面および第1ヨーク31の外周面に対向する。本形態では、円筒部332と磁石61の外周面との間にコイル62の一部が配置される。また、円筒部332と第1ヨーク31の外周面との間にコイル62の一部が配置される。
【0047】
(接続体の製造方法)
図4は、内枠部材および外枠部材が固定された接続体10の断面図である。
図4(a)は、第1内枠部材36および第1外枠部材51が固定された第1接続体11の断面図であり、
図4(b)は、第2内枠部材37および第2外枠部材52が固定された第2接続体12の断面図である。第1接続体11および第2接続体12は、ゲル材料を成形したゲル状部材であり、注型により製造される。
【0048】
図4(a)に示すように、第1接続体11は、成形される際に第1外枠部材51および第1内枠部材36が接合されて部品化されている。また、
図4(b)に示すように、第2接続体12は、成形される際に第2外枠部材52および第2内枠部材37が接合されて部品化されている。従って、アクチュエータ1を組み立てる際には、ゲル状部材を接着する工程を行わずに、支持体2と可動体3とを接続することができる。
【0049】
図5は、接続体10の製造方法の説明図である。以下、
図5を参照して第1接続体11の製造方法を説明する。第2接続体12の製造方法は、第1接続体11の製造方法と同一であるため、説明を省略する。
図5に示すように、第1工程では、製造用治具90に設けられた円形凹部91の中央から突出するピン92を第1内枠部材36に挿入し、円形凹部91の底面94に第1内枠部材36を当接させる。また、円形凹部91の内周面に第1外枠部材51を内接させ、円形凹部91の底面94に第1外枠部材51を当接させる。これにより、第1内枠部材36と第1外枠部材51が位置決めされ、第1内枠部材36と第1外枠部材51の間に環状の隙間Sが形成される。
【0050】
本形態では、第1内枠部材36は、支軸30を固定するための環状突部361(第1固
定部)を備えている。製造用治具90に第1内枠部材36を位置決めする際、環状突部361が配置される側とは反対側からピン92を挿入し、環状突部361が配置される側とは反対側の端面を円形凹部91の底面94に当接させる。
【0051】
第2工程では、第1内枠部材36と第1外枠部材51との隙間Sにディスペンサー93からゲル材料Gを充填する。なお、隙間Sにゲル材料Gを入れる前に、第1内枠部材36の外周面360および第1外枠部材51の内周面510にプライマー13を塗布しておく。プライマー13の塗布は、第1内枠部材36と第1外枠部材51を製造用治具90に位置決めする前に行ってもよいし、位置決めした後に行ってもよい。
【0052】
第3工程では、ゲル材料Gを製造用治具90ごと加熱し、規定の温度で規定の時間維持することにより硬化させる。これにより、隙間Sにはゲル状部材である第1接続体11が形成される。ゲル材料Gは、加熱硬化する際に、プライマー13に接する部分がプライマー13と反応して、第1内枠部材36の外周面360および第1外枠部材51の内周面510に固定される。従って、第1接続体11は、第1接続体11自体の接着力によって第1内枠部材36および第1外枠部材51に固定される。
【0053】
第4工程では、完成した第1接続体11を第1内枠部材36および第1外枠部材51と共に製造用治具90から取り外す。例えば、円形凹部91の底面94に突き出しピンを配置するための貫通孔(図示せず)を設けておき、突き出しピンを用いて、第1内枠部材36および第1外枠部材51と共に第1接続体11を製造用治具90から取り外す。
【0054】
(組立前の接続体の形態)
図4(a)、
図4(b)は、アクチュエータ1を組み立てる前の、部品の状態の第1接続体11および第2接続体12を示しており、第1接続体11および第2接続体12がせん断変形していない状態を示す。まず、
図4(a)、
図4(b)を参照して、せん断変形していない第1接続体11および第2接続体12の形状を説明する。
【0055】
図4(a)に示すように、第1接続体11は、軸線L方向の一方側L1を向く第1接続体第1端面111と、軸線L方向の他方側L2を向く第1接続体第2端面112を備える。
図4(b)に示すように、第2接続体12は、軸線L方向の他方側L2を向く第2接続体第1端面121と、軸線L方向の一方側L1を向く第2接続体第2端面122を備える。第1接続体11と第2接続体12は逆向きに配置され、第1接続体第2端面112と第2接続体第2端面122とが対向する。
【0056】
第1接続体第1端面111および第2接続体第1端面121は、円形凹部91の底面94によって成形される。従って、第1接続体11がせん断変形していない状態では、第1接続体第1端面111は平坦面であり、第1内枠部材36の一方側L1の端面、および、第1外枠部材51の一方側L1の端面と同一面上に位置する(
図4(a)参照)。同様に、第2接続体12がせん断変形していない状態では、第2接続体第1端面121は平坦面であり、第2内枠部材37の他方側L2の端面、および、第1外枠部材51の一方側L1の端面と同一面上に位置する(
図4(b)参照)。
【0057】
第1接続体第2端面112および第2接続体第2端面122は凹面である。第1接続体第2端面112および第2接続体第2端面122は、成形時にゲル材料Gの表面張力によって凹んだ形状に成形されている。
【0058】
本形態では、第1内枠部材36は、第1外枠部材51よりも軸線L方向の長さが大きい。そのため、第1内枠部材36は、第1外枠部材51の他方側L2の端部よりも他方側L2に突出している。同様に、第2内枠部材37は、第2外枠部材52よりも軸線L方向の
長さが大きく、第2外枠部材52の一方側L1の端部よりも一方側L1に突出している。アクチュエータ1を組み立てる際、第1内枠部材36が突出する側と、第2内枠部材37が突出する側とが対向するように組み立てることにより、第1接続体第2端面112と第2接続体第2端面122とが対向するように第1接続体11と第2接続体12とが組み立てられる。
【0059】
(組立後の接続体の形態)
図6は、可動体3が原点位置に位置するときの接続体10の形態を模式的に示す断面図であり、アクチュエータ1が組み立てられたときの第1接続体11および第2接続体12の形態を示している。なお、
図6では、実際のアクチュエータ1よりも第1接続体11および第2接続体12のせん断変形量(距離H)を大きく表示している。
【0060】
アクチュエータ1は、可動体3が原点位置にある状態において、第1接続体11と第2接続体12が軸線L方向で逆向きにせん断変形した状態となるように構成されている。
図3に示すように、第1内枠部材36と第2内枠部材37は、軸線L方向の両側から被支持部材(磁石61およびヨーク35)に当接して被支持部材を支持する。これにより、第1内枠部材36の一方側L1の端面と第2内枠部材37の他方側L2の端面との距離H1が規定される。一方、第1外枠部材51と第2外枠部材52は、コイルホルダ4の第1段部44とケース20の第2段部45によって軸線L方向に位置決めされる。これにより、第1外枠部材51の一方側L1の端面と第2外枠部材52の他方側L2の端面との距離H2が規定される。アクチュエータ1は、距離H1が距離H2よりも所定寸法小さくなるように、各部材の寸法および配置が決定されている。
【0061】
本形態では、距離H1が距離H2よりも小さいので、
図6(a)、
図6(b)に示すように、第1内枠部材36と第1外枠部材51、および、第2内枠部材37と第2外枠部材52は、それぞれ、
図4(a)、
図4(b)に示した部品の状態から軸線L方向に相対移動している。第1内枠部材36の第1外枠部材51に対する相対移動量、および、第2内枠部材37の第2外枠部材52に対する相対移動量をHとすると、H=(H2-H1)÷2である。
【0062】
このように、第1内枠部材36と第1外枠部材51、および、第2内枠部材37と第2外枠部材52が軸線L方向に相対移動したことによって、第1接続体11と第2接続体12は、軸線L方向にせん断変形している。より詳細には、第1接続体11は、内周部が外周部に対して軸線L方向の他方側L2(すなわち、第2接続体12の側)に引っ張られてせん断変形している。また、第2接続体12は、内周部が外周部に対して軸線L方向の一方側L1(すなわち、第1接続体11の側)に引っ張られてせん断変形している。すなわち、第1接続体11と第2接続体12は、内周部が互いに接近する方向に引っ張られて軸線L方向で逆向きにせん断変形している。
【0063】
本形態では、部品の状態では平坦面であった第1接続体第1端面111は、
図6(a)に示すように、内周縁が外周縁に対して他方側L2(すなわち、第2接続体12が配置される側)に位置しており、内周側に向かうに従って他方側L2に向かう傾斜面になっている。そのため、第1接続体第1端面111の内周縁と第1内枠部材36の外周面360とのなす角度θは鈍角になっている。同様に、部品の状態では平坦面であった第2接続体第1端面121は、
図6(b)に示すように、内周縁が外周縁に対して一方側L1(すなわち、第1接続体11が配置される側)に位置しており、内周側に向かうに従って一方側L1に向かう傾斜面になっている。そのため、第2接続体第1端面121の内周縁と第2内枠部材37の外周面370とのなす角度θは鈍角になっている。
【0064】
図4(a)に示すように、第1接続体11がせん断変形していない状態では、第1接続
体第1端面111と第1内枠部材36の外周面360とのなす角度は90°になっているが、本形態では、上記のように第1接続体11がせん断変形したことにより、角度θが90°よりも大きい。可動体3が原点位置にある状態で角度θが大きければ、可動体3が軸線L方向に振動した際に角度θが小さくなりにくいので、第1接続体11の内周部に加わる応力を緩和できる。従って、第1接続体11が第1内枠部材36の外周面360から剥がれにくい。同様に、第2接続体12が第2内枠部材37の外周面370から剥がれにくい。よって、アクチュエータ1の耐久性を高めることができる。
【0065】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1は、支持体2および可動体3と、支持体2および可動体3に接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備え接続体10と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6を有する。接続体10は、可動体3の軸線L方向(すなわち、可動体3の振動方向)における一端側に配置される第1接続体11、および、可動体3の軸線L方向における他端側に配置される第2接続体12を備える。第1接続体11および第2接続体12は筒状であり、第1接続体11の内周部および第2接続体12の内周部は、可動体3に接続され、第1接続体11の外周部および第2接続体12の外周部は、支持体2に接続される。可動体3が原点位置に位置する状態において、第1接続体11は、内周部が外周部に対して第2接続体12の側に引っ張られてせん断変形しており、第2接続体12は、内周部が外周部に対して第1接続体11の側に引っ張られてせん断変形している。
【0066】
このように、本形態では、可動体3が原点位置に位置するとき、第1接続体11の内周部と第2接続体12の内周部とが互いに接近する方向に引っ張られてせん断変形している。これにより、可動体3の軸線L方向のサイズを小さくできるとともに、可動体3の軸線L方向の両側に確保すべきクリアランスを小さくすることができる。従って、アクチュエータ1の軸線L方向の長さを小さくすることができる。また、第1接続体11と第2接続体12の内周部は、可動体3の振動時に応力が集中する部位であるが、この部位を予め可動体3の振動方向の中央に向かって引っ張ってせん断変形させておけば、上記のように、可動体3が振動したときに第1接続体11と第2接続体12の内周部に加わる応力を緩和できる。従って、第1接続体11と第2接続体12の内周部が可動体3から剥がれるおそれが少ない。よって、アクチュエータ1の耐久性が高い。
【0067】
ここで、本形態では、原点位置における第1接続体11および第2接続体12のせん断変形量(
図6に示す距離H)は小さいので、可動体3が原点位置に位置するときの第1接続体11および第2接続体12のばね定数は、第1接続体11および第2接続体12がせん断変形していないときのばね定数と略等しい。従って、可動体3の振動特性に影響を及ぼさずに、アクチュエータ1の小型化を図ることができる。
【0068】
本形態では、第1接続体11は、第2接続体12とは反対側(一方側L1)を向く第1接続体第1端面111を備え、第2接続体12は、第1接続体11とは反対側(他方側L2)を向く第2接続体第1端面121を備える。可動体3が原点位置に位置する状態において、第1接続体第1端面111および第2接続体第1端面121は、可動体3に接続される内周縁が可動体3の軸線L方向の中央に向かって凹んだ形状になっている。すなわち、第1接続体第1端面111の内周縁は、第1接続体第1端面111の外周縁よりも第2接続体12側(他方側L2)に位置し、第2接続体第1端面121の内周縁は、第2接続体第1端面121の外周縁よりも第1接続体11側(一方側L1)に位置する。原点位置においてこのような端面形状になっていれば、可動体3が振動したときに、第1内枠部材36の外周面360と第1接続体第1端面111とのなす角度θ、および、第2内枠部材37の外周面370と第2接続体第1端面121とのなす角度θが小さくなりにくい。従って、可動体3が振動したときに第1接続体11が第1内枠部材36の外周面360から
剥がれるおそれが少なく、第2接続体12の内周部が第2内枠部材37の外周面370から剥がれるおそれが少ない。よって、アクチュエータ1の耐久性を高めることができる。
【0069】
本形態では、第1接続体11は、第1接続体第1端面111とは反対側(他方側L2)を向く第1接続体第2端面112を備えており、第1接続体第2端面112は、第1接続体第1端面111の側(一方側L1)に凹んでいる。また、第2接続体12は、第2接続体第1端面121とは反対側(一方側L1)を向く第2接続体第2端面122を備え、第2接続体12第2端面は、第2接続体第1端面121の側(他方側L2)に凹んでいる。本形態では、第1接続体11および第2接続体12がゲル状部材であり、注型により製造されている。そのため、第1接続体第2端面112および第2接続体第2端面122は、ゲル材料の表面張力によって凹面になっている。注型により製造することにより、製造が容易であるとともに、成形時に第1接続体11をゲル状部材自体の接着力によって第1内枠部材36と第1外枠部材51に接続でき、第2接続体12をゲル状部材自体の接着力によって第2内枠部材37と第2外枠部材52に接続できる。従って、アクチュエータ1の組立時に、接着剤を用いて第1接続体11および第2接続体12を固定する工程を行う必要がない。よって、第1接続体11および第2接続体12の取り扱いが容易であり、アクチュエータ1の組立が容易である。
【0070】
本形態では、磁気駆動機構6は、磁石61およびコイル62を備えており、可動体3は、支持体2の内周側で磁石61を含む被支持部材(磁石61およびヨーク35)を支持する支軸30と、支軸30の一端側に固定される第1内枠部材36と、支軸30の他端側に固定される第2内枠部材37を備える。支持体2は、第1内枠部材36と径方向で対向する第1外枠部材51と、第2内枠部材37と径方向で対向する第2外枠部材52を備える。第1接続体11は、第1内枠部材36および第1外枠部材51に接続され、第2接続体12は、第2内枠部材37および第2外枠部材52に接続される。このように、本形態では、支軸30を中心にして組み立てた可動体3の両端を第1接続体11および第2接続体12によって支持するので、可動体3を安定して支持できる。また、第1接続体11は第1内枠部材36と第1外枠部材51の径方向の隙間に配置され、第2接続体12は第2内枠部材37と第2外枠部材52の径方向の隙間に配置されるので、振動方向と異なる方向に可動体3が動きにくい。従って、可動体3が意図しない方向に動いて支持体2と衝突するおそれが少ない。
【0071】
本形態では、第1内枠部材36は、第1接続体11および第1外枠部材51よりも第2接続体12側(他方側L2)に突出しており、第2内枠部材37は、第2接続体12および第2外枠部材52よりも第1接続体11側(一方側L1)に突出している。このように、内枠部材が外枠部材から突出していれば、第1接続体11および第2接続体12の裏表が一目でわかる。従って、第1接続体11と第2接続体12を軸線L方向で逆向きにして組み立てる作業を容易に、且つ、間違いなく行うことができる。
【0072】
本形態では、第1内枠部材36は、支軸30が圧入される環状突部361(第1固定部)を備え、第2内枠部材37は、支軸30が圧入される環状突部371(第2固定部)を備える。このように、圧入によって第1内枠部材36および第2内枠部材37を固定すれば、ねじなどの固定部品を必要とせず、部品形状を単純化できる。従って、部品コストの低減を図ることができる。
【0073】
本形態では、第1内枠部材36は、被支持部材(磁石61およびヨーク35)に支軸30の一端側から当接し、第2内枠部材37は、被支持部材(磁石61およびヨーク35)に支軸30の他端側から当接するので、第1内枠部材36と第2内枠部材37によって被支持部材(磁石61およびヨーク35)を軸線L方向に位置決めできる。従って、被支持部材(磁石61およびヨーク35)に含まれる磁石61またはコイル62の位置決めが容
易である。
【符号の説明】
【0074】
1…アクチュエータ、2…支持体、3…可動体、4…コイルホルダ、6…磁気駆動機構、7…配線基板、8…リード線、10…接続体、11…第1接続体、12…第2接続体、13…プライマー、20…ケース、21…第1蓋部材、22…第2蓋部材、24…ケース本体、25…第2外枠部材固定部、26…蓋部、27…係止部、28…規制部、29…溝部、30…支軸、31…第1ヨーク、32…第2ヨーク、33…第1磁性部材、34…第2磁性部材、35…ヨーク、36…第1内枠部材、37…第2内枠部材、41…第1外枠部材固定部、42…胴部、43…第1凹部、44…第1段部、45…第2段部、46…第2凹部、47…第3段部、48…溝部、49…凸部、51…第1外枠部材、52…第2外枠部材、60…配線引き出し部、61…磁石、62…コイル、63…コイル線、64…端子ピン、65…切欠き部、66…カバー、67…溝部、68…係止部、69…基板固定部、71…保持溝、90…製造用治具、91…円形凹部、92…ピン、93…ディスペンサー、94…底面、111…第1接続体第1端面、112…第1接続体第2端面、121…第2接続体第1端面、122…第2接続体第2端面、210、220…溶着用凸部、250…溶着穴、310、330、340…軸穴、331…端板部、332…円筒部、360…外周面、361…環状突部(第1固定部)、370…外周面、371…環状突部(第2固定部)、410…溶着用凹部、510…内周面、511…環状段部、521…環状段部、610…軸穴、690…リード線保持部、691…爪部、G…ゲル材料、L…軸線、L1…軸線方向の一方側、L2…軸線方向の他方側、S…隙間