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特許7481925像ブレ補正制御装置及び方法、プログラム、記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】像ブレ補正制御装置及び方法、プログラム、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20240502BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240502BHJP
   H04N 23/68 20230101ALI20240502BHJP
   H04N 23/54 20230101ALI20240502BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B17/02
H04N23/68
H04N23/54
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020111909
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022011043
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶村 文裕
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/098305(WO,A1)
【文献】特開2002-354336(JP,A)
【文献】特表2010-515342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
H04N 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得手段と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御手段と、を備え
前記制御手段は、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの前記周期動作を行わせた場合の消費電力が小さい方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御装置。
【請求項2】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得手段と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの駆動電流の制限値が高い方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御装置。
【請求項3】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得手段と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記撮影レンズの焦点距離が所定値未満の場合は、前記第1のブレ補正手段に前記周期動作を行わせ、前記所定値以上の場合は、前記第2のブレ補正手段に前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御装置。
【請求項4】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得手段と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの微小駆動時の位置精度が高い方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御装置。
【請求項5】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得手段と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの前記周期動作を行わせた場合の磁界ノイズの発生が少ない方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記撮像装置に設定されているISO感度が所定値以上の場合に、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの前記周期動作を行わせた場合の磁界ノイズの発生が少ない方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする請求項5に記載の像ブレ補正制御装置。
【請求項7】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得手段と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記像ブレ補正動作を行わない場合は、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうち、像ブレ補正動作を行わない場合の消費電力が大きい方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御装置。
【請求項8】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得手段と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記撮像装置の露光時間が所定値よりも大きい場合は、
前記他方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせるとともに、前記像ブレ補正動作をさらに行わせ、
前記露光時間が所定値以下の場合は、
前記他方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせ、前記像ブレ補正動作を行わせないことを特徴とする像ブレ補正制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記撮像装置の露光時間の間に、前記他方のブレ補正手段に、複数回の前記周期動作を行わせることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の像ブレ補正制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記他方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせるとともに、前記像ブレ補正動作をさらに行わせることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の像ブレ補正制御装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記他方のブレ補正手段に行わせる像ブレ補正の割合を、前記一方のブレ補正手段に行わせる像ブレ補正の割合よりも小さくすることを特徴とする請求項10に記載の像ブレ補正制御装置。
【請求項12】
前記周期動作は、前記撮影レンズにより形成される像を、前記撮像装置の撮像面上で円運動させる動作であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の像ブレ補正制御装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記撮像装置の露光時間に応じて前記周期動作の駆動周波数を変更することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の像ブレ補正制御装置。
【請求項14】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得工程と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御工程と、を備え、
前記制御工程は、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの前記周期動作を行わせた場合の消費電力が小さい方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御方法。
【請求項15】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得工程と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御工程と、を備え、
前記制御工程は、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの駆動電流の制限値が高い方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御方法。
【請求項16】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得工程と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御工程と、を備え、
前記制御工程は、前記撮影レンズの焦点距離が所定値未満の場合は、前記第1のブレ補正手段に前記周期動作を行わせ、前記所定値以上の場合は、前記第2のブレ補正手段に前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御方法。
【請求項17】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得工程と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御工程と、を備え、
前記制御工程は、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの微小駆動時の位置精度が高い方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御方法。
【請求項18】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得工程と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御工程と、を備え、
前記制御工程は、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの前記周期動作を行わせた場合の磁界ノイズの発生が少ない方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御方法。
【請求項19】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得工程と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御工程と、を備え、
前記制御工程は、前記像ブレ補正動作を行わない場合は、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうち、像ブレ補正動作を行わない場合の消費電力が大きい方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする像ブレ補正制御方法。
【請求項20】
振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得工程と、
撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御工程と、を備え、
前記制御工程は、
前記撮像装置の露光時間が所定値よりも大きい場合は、
前記他方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせるとともに、前記像ブレ補正動作をさらに行わせ、
前記露光時間が所定値以下の場合は、
前記他方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせ、前記像ブレ補正動作を行わせないことを特徴とする像ブレ補正制御方法。
【請求項21】
コンピュータを、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の像ブレ補正制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項22】
コンピュータを、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の像ブレ補正制御装置の各手段として機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置における像ブレ補正技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラで撮影を行う場合、撮影者の手振れに起因する像ブレを防止するために、様々な方式の像ブレ補正装置が提案されている。像ブレ補正装置の方式として、補正レンズを光軸に対して略直交する方向にシフトさせる光学式像ブレ補正方式や、撮像素子を光軸に対して略直交する方向にシフトさせる撮像面像ブレ補正方式が知られている。
【0003】
近年、このような像ブレ補正装置を、像ブレ補正以外の目的にも使用することが提案されている。
【0004】
特許文献1には、像ブレ補正装置を用いて撮像素子を微小量の振幅で高周波駆動することにより、被写体光束を撮像素子の複数の画素に入射させて、モアレを除去する光学ローパスフィルタ(以下、LPF)効果を得る撮像装置が開示されている。この駆動方法を以下、LPF駆動と呼ぶ。
【0005】
また、特許文献2には、像ブレ補正手段として補正レンズを有し、補正レンズを上記のようにLPF駆動させることにより、LPF効果を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-163206号公報
【文献】特開2016-14717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術では、次のような課題がある。
【0008】
特許文献1では撮像面像ブレ補正方式、特許文献2では光学式像ブレ補正方式でのLPF駆動について開示されている。一方で、近年のレンズ交換式デジタルカメラにおいては、撮像面像ブレ補正手段を有するカメラに、光学式像ブレ補正手段を有するレンズが装着され、2つの像ブレ補正手段を動かして像ブレ補正を行なう方法が多く採用されてきている。
【0009】
そして、このような2つの像ブレ補正手段を有する構成において、LPF駆動を行う方法については、上記の特許文献1及び特許文献2には開示されておらず、LPF駆動時の像ブレ補正への影響や消費電力を考慮した最適なLPF駆動の方法は提示されていない。
【0010】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮像面像ブレ補正と光学式像ブレ補正の双方が可能な撮像装置において、適切にLPF駆動を行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係わる像ブレ補正制御装置は、振れ検出手段により検出された装置の振れに関する情報を取得する取得手段と、撮影レンズに配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第1のブレ補正手段と、撮像装置に配置され、前記振れに関する情報に基づいて像ブレを補正可能な第2のブレ補正手段のうちの一方のブレ補正手段に、像ブレ補正動作を行わせ、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの他方のブレ補正手段に、光学ローパスフィルタ効果を得るための前記像ブレ補正動作とは異なる周期動作を行わせる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1のブレ補正手段と前記第2のブレ補正手段のうちの前記周期動作を行わせた場合の消費電力が小さい方のブレ補正手段に、前記周期動作を行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮像面像ブレ補正と光学式像ブレ補正の双方が可能な撮像装置において、適切にLPF駆動を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係わる撮像装置としてのデジタルカメラシステムのブロック構成を示す図。
図2】撮像素子の一部を切り出して拡大した図。
図3】撮像素子をLPF駆動させた場合のカメラ側ブレ補正部の駆動量を示す図。
図4】デジタルカメラシステムの撮影動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
(第1の実施形態)
<撮像装置の構成>
図1は、本発明の像ブレ補正制御装置の第1の実施形態であるデジタルカメラシステムのブロック構成を示す図である。
【0016】
図1において、デジタルカメラシステム100は、カメラ本体1に、交換レンズ(撮影レンズ)3が着脱可能に装着されて構成されている。カメラ本体1は、交換レンズ3を通過した光線を受光する撮像素子11、撮像素子11で光電変換されて得られた信号から画像を生成する画像処理部12、画像情報などの情報が記録されるメモリ部13を備える。また、撮影素子11への光線の遮光/通過を制御するフォーカルプレーンシャッター14(以下、シャッター)、ユーザーの操作を認識する操作部15、画像などの表示を行う表示部16、ファインダ光学系21を有する。
【0017】
表示部16は、図1(b)に示すように、カメラ本体1の背面に配置された背面液晶部16aと、ファインダ光学系21に配置され接眼レンズ21aから覗くことができるファインダ表示部16bとを有する。表示部16は、表示画像の制御を行う表示制御部により制御され、ユーザーは背面液晶部16aとファインダ表示部16bのどちらに表示を行うかを任意に切替えることができる。
【0018】
また、カメラ本体1は、撮像素子11を光軸31と略直交する方向にシフト移動させるとともに光軸31に略平行な軸を中心に回転させるカメラ側ブレ補正部17、カメラ本体1の角度ブレの角速度を検出する振動検出手段であるジャイロセンサ18を有する。そして、これらの制御を司るカメラシステム制御部10をさらに有する。なお、カメラシステム制御部10は、後述するブレ補正制御部10aと、LPF駆動選択部10bを包括する。LPF駆動選択部10bは、カメラ側ブレ補正部17と後述するレンズ側ブレ補正部34のどちらをLPF駆動に用いるかを選択する制御を行う。なお、LPF駆動とは、像ブレ補正部を用いて被写体像を像面上で微小量の振幅で高周波駆動することにより、被写体光束を撮像素子の複数の画素に入射させて、モアレを除去する光学ローパスフィルタ(以下、LPF)効果を得る手法である。
【0019】
シャッター14は、先幕と後幕からなるシャッター幕を有し、それぞれのシャッター幕をシャッター開口部内で走行させることにより、交換レンズ3の撮影光学系32から撮像素子11へ入射する光線の遮光及び通過を制御する。シャッター14はカメラシステム制御部10により駆動制御される。
【0020】
一方、交換レンズ3は、光軸31を中心として光線を通過させる撮影光学系32、フォーカスレンズを駆動させるフォーカス駆動部33、シフトレンズ40を光軸31と略直交する方向にシフト移動させるレンズ側ブレ補正部34を有する。さらに、これらの制御を司るレンズシステム制御部30を有する。
【0021】
なお、カメラ本体1と交換レンズ3は、電気的に接続されるレンズ接点20を介して電気的な信号のやり取りを行うことができる。
【0022】
交換レンズ3の撮影光学系32及びシャッター14の開口を通過した光線(光学系により形成された像)に対し、撮像素子11が光電変換を行い、その出力信号が不図示のA/D変換器によりデジタル信号に変換される。画像処理部12は、内部にホワイトバランス回路、ガンマ補正回路、補間演算回路等を有しており、カメラシステム制御部10の指示により、撮像素子11から取得した信号から画像データを生成する。画像処理部12で生成された画像データは、メモリ部13に記憶される。
【0023】
カメラシステム制御部10は、CPU(中央演算処理装置)等を備え、交換レンズ3との通信を含むカメラ本体1の全体動作を制御する。カメラシステム制御部10は、撮像の際のタイミング信号等を生成して各部に出力する。さらに、カメラシステム制御部10は、操作部15に含まれるレリーズボタンが押下されて撮影またはその準備動作の指示を受け付けた場合、その指示に応じて撮像素子11を制御するとともに、レンズシステム制御部30に制御信号を送信する。レリーズボタンは、1段階目の押し込み量である半押し動作と、そこからさらに押し込んだ2段階目の押し込み量である全押し動作を検出することができる。半押し動作が検出されると、オートフォーカス(以下、AF)動作などの撮影準備動作が行われる。さらにその状態からレリーズボタンの全押し動作が検出されると、シャッター14を駆動させて静止画撮影の露光動作が開始される。
【0024】
<像ブレ補正動作>
次に、像ブレ補正動作について説明する。まず、カメラ側での像ブレ補正動作について説明する。
【0025】
ジャイロセンサ18は、角速度センサであり、カメラの回転の角速度を検出する。ジャイロセンサ18の出力信号は、ブレ補正制御部10aに入力され、フィルタ処理、積分処理が行われてカメラの角度ブレ成分が算出される。そして、ブレ補正制御部10aは、この値に基づいて、カメラ側ブレ補正部17の駆動信号を生成する。
【0026】
図1(b)に示すように、光軸31の被写体に向かう方向をZ軸の正の方向、カメラ本体1の上方向をY軸の正の方向、残りの軸の紙面手前方向をX軸の正の方向とする。この場合、ジャイロセンサ18はカメラ本体1の各軸を中心とする回転の角速度を検出することができる。ジャイロセンサ18は各軸方向の3つのセンサが1つのパッケージとして構成されていてもよいし、同一のパッケージが各軸方向に3つ設置されるように構成されていてもよい。
【0027】
カメラ側ブレ補正部17は、ジャイロセンサ18の検出信号に基づいて、撮像素子11を光軸31と略直交するXY平面内でシフト移動させるとともに、光軸31であるZ軸と略平行な軸を中心に回転移動させることにより、像ブレの補正を行なう。撮像素子11を、XY平面内でシフト移動させることにより、カメラのピッチ方向、ヨー方向の角度ブレを補正することができ、撮像素子11を光軸31であるZ軸に略平行な軸を中心に回転移動させることによりロールブレを補正することができる。
【0028】
一方、レンズ側ブレ補正部34には、ブレ補正制御部10aで生成された駆動信号がレンズ接点20、レンズシステム制御部30を介して伝達される。レンズ側ブレ補正部34は、カメラ側ブレ補正部17とは異なり、シフトレンズ40を光軸31と略直交するXY平面内でシフト移動させ、カメラのピッチ方向、ヨー方向の角度ブレのみを補正する。
【0029】
<LPF駆動モード>
次に、図2図3を用いて、カメラ側ブレ補正部17を用いてLPF駆動(周期動作)を行う方法について説明する。
【0030】
図2は、撮像素子11の一部を切り出して拡大した図であり、B(青)画素11a、G(緑)画素11b、G(緑)画素11c、R(赤)画素11dの4画素のみを示している。各画素11a~11cは、前面に配置されたR(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかの色のカラーフィルタを透過して入射した被写体光線の色成分(色帯域)の光を光電変換し、その強さ(輝度)に応じた電荷を蓄積する。
【0031】
図2(a)においては、R,G,Bのベイヤー配列のカラーフィルタが配置された4つの画素が画素ピッチpの間隔でマトリックス状に配置されている状態が示されている。実際の撮像素子では、この配列の画素が多数繰返し配置されている。カメラ側ブレ補正部17でLPF駆動を行なう場合は、図2(a)に示す円形の矢印101のように、撮影光学系32の光軸を中心とする直径dの円弧状に等速で撮像素子11を動かす(円運動させる)。以下、この撮像素子11を円弧状に等速で動かす動作を円動作と呼ぶこととする。円形の矢印101は、各画素11a~11dの略中央を通るように設定されており、直径dは以下の式(1)で示される。
【0032】
d=√2・p …(1)
静止画露光中に上述のような円弧状の動作を行うと、非動作時はB画素11aに入射する光束が各画素11a~11dに均等に入射するので、光学的なローパスフィルタ(LPF)と同等の効果が得られる。LPF効果を得るには、静止画露光中に少なくとも1周期分の上述の円動作を行えばよい。また、複数回の円動作を行う場合には、露光時間中に整数倍周期の円動作を行うことが望ましい。円動作の回数が整数倍になっていない場合は、4つの画素への入射量が異なってしまいムラが発生するが、露光時間に対して十分短い周期の高周波で円動作を行えば、各画素への入射量の差異が小さくなるので、十分なLPF効果を得ることができる。円動作の高周波駆動であれば、露光時間に応じて円動作の周波数を変更する必要がないので制御を簡素化することもできる。
【0033】
本実施形態では、LPF駆動モードでは高周波で円動作駆動を行なうことにより、LPF効果を得るものとする。なお、本実施形態では、円動作の円の直径dを式(1)で示す値としたが、必ずしもそうでなくてよい。円動作の直径を大きくすることにより、LPF効果を強めることができ、直径を小さくすることによりLPF効果を弱めることができる。また、撮像の露光動作の前に表示部16にプレビュー表示をするため、撮像素子11から間欠的に抽出した画素のデータを出力する場合などは、間欠的に抽出する画素の間隔などに合わせて直径dを変更してもよい。
【0034】
また、図2(b)のような駆動によりLPF効果を得るようにしてもよい。図2(b)は、LPF駆動の他の例を示している。図2(b)では、図2(a)と同様に4つの画素11a~11dだけを拡大して示している。図2(b)に示す矢印102のように撮影光学系32の光軸31を幾何中心とする1辺pの矩形状に等速で撮像素子11を動かすことによってもLPF効果を得ることができる。矢印102も、各画素11a~11dの略中央を通るように設定されており、矢印102が描く矩形は、一辺がpの正方形である。このように、撮像素子11を矩形状に動作させる場合も、撮像素子11を光軸に対して周期的に移動させれば、LPF効果を得ることができ、一辺pの長さを調整することにより、LPF効果の強弱を調整することもできる。ユーザーがLPF効果の強弱を選択すると、円動作の直径や矩形の一辺の長さが自動的に切り替わる構成としてもよい。
【0035】
次に、図3を用いて、カメラ側ブレ補正部17の駆動方法について説明する。
【0036】
図3は、図2(a)のように撮像素子11を移動させた場合のカメラ側ブレ補正部17の駆動量を示す図である。図3(a)においては、カメラ側ブレ補正部17によりX方向に移動する駆動量を実線で、Y方向に移動する駆動量を破線で示している。図3(a)では、X方向の駆動は、振幅d/2、周波数f[Hz]の正弦波により行われる。また、Y方向の駆動も同様に、振幅d/2、周波数f[Hz]の正弦波で行われる。ただし、X方向の駆動とY方向の駆動は、π/2だけ位相をずらして行われる。図3(b)は、図3(a)の動作を行った場合の、撮像素子11の中心の移動をXY平面で示した図である。図3(b)に示すように、撮像素子11の中心は半径d/2の円動作をしており、図2(a)で示すような動きとなる。
【0037】
このように、撮像素子11と撮影光学系32の光軸の相対移動量を周期的に変化させ、撮影光学系の光軸を基準として撮像素子が所定の軌跡を描くようにカメラ側ブレ補正部17を駆動させることにより、LPF効果を得ることができる。このような高周波で円動作駆動を行う駆動制御をLPF駆動モードと呼ぶこととする。撮影光学系32の光軸31を基準とした軌跡とは、光軸31に対する相対移動の軌跡であり、光軸がX方向に1動き、撮像素子がX方向に2動いた場合はX方向に1動いたとみなして描く軌跡である。
【0038】
次に、レンズ側ブレ補正部34でのLPF駆動モードについて説明する。レンズ側ブレ補正部34は、LPF駆動モードにおいてシフトレンズ40をX方向とY方向にシフトさせて、図2(a)の画素11aに集光される光束が矢印101のように移動するよう駆動する。このように駆動することで、LPF効果を得ることができる。シフトレンズの駆動量は、シフトレンズ40の移動量に対する撮像面上での移動敏感度により異なるが、図3(a)で示すようにX方向、Y方向にそれぞれ正弦波状の駆動が行われて、円動作が行われる。そして、集光する光束の撮像面上での軌跡が図2(a)の矢印101と一致するように移動される。
【0039】
次にLPF駆動の課題について説明する。LPF駆動では撮像素子11またはシフトレンズ40を高周波で駆動させるため、通常の像ブレ補正の動作に比べて電力の消費が大きくなる傾向にある。像ブレ補正では、被駆動部が一般的に10Hz以下の周波数帯域で駆動される。それに対し、LPF駆動では、上述したように駆動量は像ブレ補正よりも微小であるものの、数100Hzで被駆動部が駆動される。そのため、加速度が大きくなり、消費電力も大きくなる。なお、像ブレ補正と比較した場合のLPF駆動の消費電力の増加の割合は、像ブレ補正方式によって異なり、増加量が少ない方式もある。
【0040】
まず望ましくない例について説明する。望ましくない例では、カメラ側ブレ補正部17及びレンズ側ブレ補正部34がともに高周波な円動作を行い、LPF効果を得る。この場合、上述のLPF駆動とは異なり、カメラ側ブレ補正部17は直径d/2の円弧状に撮像素子11を円動作させ、レンズ側ブレ補正部34は、撮影光学系32を通過して集光する光束が直径d/2の円弧を描くようにシフトレンズ40を円動作させる。シフトレンズ40の円動作は、撮像素子11の円動作と位相がπ異なる波形で行われ、集光される光束と撮像素子11は反転したベクトルの方向に移動する。
【0041】
その結果、集光される光束は像面上では、直径d/2の倍の量を移動するので、どちらか一方のブレ補正部が直径dの円弧状に円動作した場合のLPF駆動と同様の効果が得られる。そして、撮影露光中は、上述のLPF駆動をカメラ側ブレ補正部17及びレンズ側ブレ補正部34のそれぞれが行なうともに、それぞれが手振れによる像ブレの補正のための駆動も行なう。像ブレ補正のための駆動では、ブレ補正制御部10aがカメラ側ブレ補正部17とレンズ側ブレ補正部34のそれぞれでのブレ補正量を算出し、像ブレ補正を実行する。
【0042】
例えば、像ブレ補正に必要な撮像面上での補正駆動量がBである場合、カメラ側ブレ補正部17の駆動量をB/2、レンズ側ブレ補正部34の駆動量をB/2などと設定する。なお、レンズ側ブレ補正部34の駆動量は、説明を分かりやすくするために、シフトレンズ40の移動量ではなく集光された光束の像面上での移動量として説明している。
【0043】
このようにそれぞれのブレ補正部を駆動することにより、像ブレ補正を行ないつつもLPF効果を得ることができる。しかし、上記で望ましくない例と記載したように、ここで説明した方法では、両方のブレ補正部を高周波で駆動するために、両方のブレ補正部での消費電力が大きくなる。また、この方法では、2つのブレ補正部の円動作の位相をπずらす必要があるが、レンズ接点部20を介した通信の遅延などにより2つのブレ補正部の同期が取れない場合、LPF効果が正しく得られないことが考えられる。
【0044】
そこで、本実施形態ではLPF駆動選択部10bにより選択した一方のブレ補正部のみでLPF駆動を行い、もう一方のブレ補正部では像ブレ補正の駆動を行なう。このように、LPF駆動と像ブレ補正を分けて行なうことにより、消費電力を抑制しつつも精度よくLPF効果を得ることができる。
【0045】
<撮像動作>
次に、図4を用いて本実施形態のデジタルカメラシステム100の撮影動作について説明する。図4は、静止画撮影時のLPF動作と像ブレ補正動作を説明するためのフローチャートである。
【0046】
本実施形態におけるカメラ本体1は、メニューを用いてLPF設定を変更することが可能であり、LPFモードがONの場合は、上述した像ブレ補正部のLPF駆動によりLPF効果を得ることができる。一方、LPFモードがOFFの場合は、像ブレ補正部によるLPF駆動を行なわず、LPF効果のない撮影を行なう。ユーザーは、表示部16に表示されたメニュー画面でLPF設定のON/OFFを切替えることができる。
【0047】
図4のフローチャートは、カメラ本体1の電源がONに設定されると開始される。
【0048】
ステップS101では、カメラシステム制御部10は、レンズシステム制御部30と通信し、レンズ側ブレ補正部34にシフトレンズ40のブレ補正駆動を開始させる。レンズ側ブレ補正部34は、ジャイロセンサ18の信号に基づいてシフトレンズ40を駆動し、手振れによる像ブレを補正する動作を行う。
【0049】
ステップS102では、カメラシステム制御部10は、操作部15に配置されたレリーズボタンがユーザーにより半押し操作されたか否かを判定する。レリーズボタンの半押し操作が行われた場合はステップS103に進み、そうでなければ、レリーズボタンの半押し操作が行われるまでステップS102を繰り返す。
【0050】
ステップS103では、カメラシステム制御部10は、AF動作を行い、フォーカスレンズを駆動する。
【0051】
ステップS104では、カメラシステム制御部10は、レリーズボタンが全押しされて静止画露光の命令が下されたか否かを判定する。レリーズボタンの全押し操作が行われた場合はステップS105に進み、そうでなければ、レリーズボタンの全押しが行われるまでステップS104を繰り返す。ステップS101~ステップS104の期間が、静止画撮影の露光前の期間に相当する。
【0052】
ステップS105では、カメラシステム制御部10は、LPF設定がONか否かを判定する。LPF設定がONの場合は、ステップS106に進み、LPF設定がOFFの場合はステップS114に進む。
【0053】
ステップS106では、カメラシステム制御部10は、カメラ側ブレ補正部17、レンズ側ブレ補正部34のうちLPF駆動モードにおいてどちらの方が消費電力が大きいかを判定する。各ブレ補正部のLPF駆動モードでの消費電力は、カメラシステム制御部10やレンズシステム制御部30の記憶部に予め記憶されている。レンズ側ブレ補正部34でのLPF駆動の方がカメラ側ブレ補正部17でのLPF駆動よりも消費電力が大きいと判定された場合は、ステップS107に進み、そうでないと判断された場合は、ステップS112に進む。
【0054】
ステップS107では、カメラシステム制御部10(LPF駆動選択部10b)は、カメラ側ブレ補正部17をLPF駆動モードに設定し、撮像素子11に対して高周波による円動作駆動を行なう。
【0055】
ステップS108では、カメラシステム制御部10は、レンズシステム制御部30と通信して、レンズ側ブレ補正部34を像ブレ補正駆動モードに設定し、像ブレ補正ための駆動を行う。なお、ステップS108での像ブレ補正駆動は、ステップS101での像ブレ補正駆動と特性が異なっていても構わない。
【0056】
ステップS109では、カメラシステム制御部10は、シャッター14を駆動し、撮像素子11を露光させて、静止画の撮影を行なう。
【0057】
ステップS109の静止画の撮影動作が終了すると、ステップS110では、カメラシステム制御部10は、カメラ側ブレ補正部17、レンズ側ブレ補正部34の双方の駆動を停止させる。
【0058】
ステップS111では、カメラシステム制御部10は、操作部15に含まれる電源スイッチが操作され、電源がOFFにされたか否かを判定する。電源がOFFにされたと判定した場合は、このフローチャートの動作を終了し、そうでなければ、ステップS101に戻る。
【0059】
一方、ステップS112では、カメラシステム制御部10(LPF駆動選択部10b)は、レンズ側ブレ補正部34をLPF駆動モードに設定し、シフトレンズ40に対して高周波による円動作駆動を行なう。
【0060】
ステップS113では、カメラシステム制御部10は、カメラ側ブレ補正部17を像ブレ補正駆動モードに設定し、像ブレ補正ための駆動を行う。そしてステップS109に進む。
【0061】
ステップS114では、カメラシステム制御部10は、ステップS105でLPF設定がOFFに設定されていると判断したので、カメラ側ブレ補正部17及びレンズ側ブレ補正部34のLPF動作は行わず、像ブレ補正駆動のみを行う。そしてステップS109に進む。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、静止画撮影時にブレ補正部を用いてLPF駆動を行うことにより、光学LPFを有していなくてもLPF効果を得ることができる。そして、カメラシステム制御部10(LPF駆動選択部10b)が、カメラ側ブレ補正部17、レンズ側ブレ補正部34のLPF駆動時の電力消費に応じて、どちらのブレ補正部でLPF駆動を行うかを判断する。これにより、消費電力を考慮して適切にLPF効果を得ることが可能となる。
【0063】
本実施形態では、一方のブレ補正部はLPF駆動モードでLPF効果を得る動作のみを行い、もう一方(他方)のブレ補正部は像ブレ補正のための動作のみを行った。しかしながら、LPF駆動モードで駆動されるブレ補正部側も、像ブレ補正のための動作を重畳して行っても構わない。
【0064】
例えば、2つのブレ補正部で、像ブレ補正のための駆動量をある比率で分配して像ブレ補正を行う。その場合、像ブレ補正のための駆動のみを行うブレ補正部の駆動量に対して、LPF駆動モードで動作するブレ補正部での像ブレ補正のための駆動量を少ない比率に設定することなどが考えられる。
【0065】
LPF駆動モードに設定されたブレ補正部の像ブレ補正のための駆動量は、LPF駆動に対し精度、電力の観点から影響が少ない量に設定されることが望ましい。また、LPF駆動を行わない方のブレ補正部のみで像ブレ補正を行うと、像ブレを補正しきれない場合にのみ、LPF駆動を行う方のブレ補正部が像ブレ補正のための動作を重畳して行う形態としてもよい。例えば、露光動作前に検出した振れ量が閾値以上であるか否かを判定するステップを設ける。そして、振れ量が閾値未満である場合は露光中にLPF駆動を行わない方のブレ補正部のみで像ブレ補正を行い、閾値以上である場合は、LPF駆動を行う方と行わない方の両方で像ブレ補正を行ってもよい。
【0066】
<その他の構成>
本実施形態では、カメラシステム制御回路10は、カメラ側ブレ補正部17とレンズ側ブレ補正部34のうち、LPF駆動モードでの消費電力が少ない方でLPF駆動モードの動作を行うように説明したが、その他の基準で選択してもよい。
【0067】
例えば、カメラ本体1は、レンズ接点20を介して交換レンズ3に電力を供給するので、交換レンズ3内の駆動部は一般的にカメラ本体1側よりも駆動時の制限電流値が低いことが多い。そのため、レンズ側ブレ補正部34の消費電力の方がLPF駆動モードでの消費電力が小さい場合においても、制限電流値の観点から、カメラ側ブレ補正部17の方をLPF駆動モードで駆動したほうがよい場合もある。そこで、カメラシステム制御部10が、カメラ側ブレ補正部17とレンズ側ブレ補正部34のうち、駆動電流の制限値が高い方を、LPF駆動モードで動作させるブレ補正部として選択してもよい。
【0068】
<駆動の位置精度で判断>
また、カメラ側ブレ補正部17とレンズ側ブレ補正部34のうち、駆動時の精度、特に微小駆動範囲(微小駆動時)での精度が高い方を、LPF駆動モードで動作させるブレ補正部として選択してもよい。例えば、ブレ補正部の可動部は、例えばホール素子などの位置検出センサを用いてXY平面での位置が検出され、位置制御が行われる。位置検出センサの種類によって、LPF駆動のような微小駆動範囲での精度に差が生じる。そこで、カメラ側ブレ補正部17とレンズ側ブレ補正部34のうち、微小駆動範囲での精度が高い方をLPF駆動モードで動作させることにより、精度の高いLPF効果を得ることができる。
【0069】
<焦点距離で判断>
その他、交換レンズ3の焦点距離に応じて、カメラ側ブレ補正部17とレンズ側ブレ補正部34のうちどちらをLPF駆動モードで動作させるかを選択してもよい。例えば、カメラ側ブレ補正部17による撮像素子11の移動量が同じ場合、焦点距離が短い方がブレ補正角度は大きくなる。そこで、焦点距離が所定値未満の場合は、カメラ側ブレ補正部17で像ブレ補正を行い、レンズ側ブレ補正部34をLPF駆動モードで動作させる。一方、焦点距離が所定値以上の場合は、レンズ側ブレ補正部34で像ブレ補正を行い、カメラ側ブレ補正部17をLPF駆動モードで動作させる。このように制御することで、像ブレ補正の補正可能な角度が大幅に低減することなく、適切にLPF効果を得ることができる。
【0070】
<磁界ノイズ強度で判断>
また、カメラ側ブレ補正部17とレンズ側ブレ補正部34のうち、駆動時に発生する磁界ノイズの強度に応じて、どちらをLPF駆動モードで動作させるかを選択してもよい。ブレ補正部の駆動方式には様々なものが挙げられ、駆動アクチュエータの種類、レイアウト、駆動モードによって、アクチュエータを含むブレ補正部から発生する磁界ノイズの強度は異なる。なお磁界ノイズとは、ブレ補正部の磁気回路から発せられる磁場のことを指しており、この磁場が撮像素子に到達することにより、撮像素子で取得される画像にノイズが発生する。
【0071】
本実施形態での磁界ノイズの強度とは、撮像素子11の撮像面に到達する磁場の強度のことを指すこととする。なお、撮像素子11に到達する磁界ノイズは、撮像素子と磁場発生源である磁気回路との距離に反比例し、同じ強度の磁場を発生した場合でも距離が近いと撮像素子に到達する磁界ノイズは強くなる。そのため、カメラ側ブレ補正部17とレンズ側ブレ補正部34がLPF駆動時に同じ強度の磁界ノイズを発する場合は、撮像素子11からの距離が近いカメラ側ブレ補正部17による磁界ノイズの方が強くなる。そこで、カメラ側ブレ補正部17とレンズ側ブレ補正部34のLPF駆動モードで発生する磁場の強さが同等の場合は、撮像素子11から遠い位置にあるレンズ側ブレ補正部34をLPF駆動モードで動作させるブレ補正部として選択してもよい。
【0072】
なお、カメラ本体1で設定されているISO感度が高い場合は、画像に発生するノイズが多くなるので、磁界ノイズの強度の弱い方のブレ補正部を用いてLPF駆動を行うことが望ましい。
【0073】
<組み合わせ>
また、上記で挙げた条件の組み合わせに応じて、カメラ側ブレ補正部17とレンズ側ブレ補正部34のうち、どちらをLPF駆動モードで動作させるかを選択してもよい。例えば、条件の優先度を、LPF駆動時の消費電力、ブレ補正駆動部の微小駆動範囲の精度、撮影光学系32の焦点距離、磁界ノイズ強度の順に設定する。まず、カメラ側ブレ補正部17とレンズ側ブレ補正部34でのLPF駆動時の消費電力を比較し、消費電力の差が閾値以上であれば、消費電力の少ない方のブレ補正部でLPF駆動を行う。消費電力の差が閾値未満であれば、次にブレ補正部の微小駆動範囲の精度を比較する。2つのブレ補正部の微小駆動範囲の精度の差が所定以上であれば、微小駆動範囲の精度の高い方のブレ補正部でLPF駆動を行い、微小駆動範囲の精度の差が所定未満の場合は、次に撮影光学系の焦点距離を比較する。焦点距離が例えば50mm未満または100mm以上などであれば、焦点距離に応じてブレ補正部を選択する。次に磁界ノイズの強度を比較して、どちらのブレ補正部でLPF駆動を行うかを判断する。
【0074】
<停止時>
なお、カメラ本体1が三脚に設置されているなど、手振れが無い、または手振れが小さく、カメラ本体1の像ブレ補正機能の設定がOFFの状態であれば、像ブレ補正動作停止時の消費電力が大きい方のブレ補正部をLPF駆動モードに設定してもよい。
【0075】
例えば、カメラ側ブレ補正部17のアクチュエータが磁石とコイルからなるいわゆるボイスコイルモーター方式(以下、VCM方式)方式である場合について説明する。VCM方式の場合、像ブレ補正動作を行わない場合も撮像素子11を初期位置である中央に保持するために、コイルへの通電が必要であり電力を消費する。レンズ側ブレ補正部がVCMである場合も同様である。
【0076】
一方、カメラ側ブレ補正部17の駆動方式がステッピングモーターとリードスクリューを用いて、可動部を並進移動させる方式(以下、STM方式)の場合、像ブレ補正動作を行わない場合は初期位置に保持する場合もアクチュエータに通電する必要がない。または、通電したとしても電力消費が小さい。レンズ側ブレ補正部がSTM方式である場合も同様である。
【0077】
例えば、レンズ側ブレ補正部34がVCM方式で、カメラ側ブレ補正部17がSTM方式であり、像ブレ補正機能がOFFである場合は、レンズ側ブレ補正部34をLPF駆動モードに設定したほうが、カメラ全体の電力消費を抑制することができる。また、ブレ補正部が像ブレ補正動作を行わない状態で、像ブレ補正機構を初期位置に保持するための電力消費が所定以下であれば、もう一方をLPF駆動モードで駆動するようにしてもよい。なお、ブレ補正部の駆動方式の種類のほか、像ブレ補正を行わない場合、稼働する撮像素子またはシフトレンズをメカ的にロックし保持する機構を有し、ロック中は電力を消費しない機構である場合も、同様に考えることができる。
【0078】
(第2の実施形態)
上記の第1の実施形態で説明したように、静止画撮影においてLPF効果を得るには、静止画露光中に少なくとも1周期分の円動作を行えばよいが、円動作の速度ムラなどを考慮すると高周波で複数回の円動作を行った方が好ましい。ただし、円動作の駆動周波数が固定である場合、静止画露光の時間が長くなるにつれて円動作の回数が増えていく。1回の静止画露光時間中にある一定の回数の円動作を行うことができれば、取得される画像への影響はごく小さい。
【0079】
そこで、第2の実施形態では、静止画露光時間に応じて、LPF駆動モードの円動作の駆動周波数を変更する。円動作の駆動周波数を低くすると、ブレ補正部による消費電力を低減することができる。例えば、静止画撮影前に予め設定された露光時間Tsが所定時間Th未満の間は、円動作の駆動周波数FsをFd[Hz]に設定する。一方、露光時間が所定時間Th以上である場合には、式(2)に示す計算式で円動作の駆動周波数を算出する。
【0080】
Fs=N・(1/Ts) …(2)
ここで、Nは、速度ムラなどを考慮したうえで十分であるとする円動作の回数であり、静止画露光中に円動作がN周期分行われれば取得される画像への影響は少ないものとして設定される値である。式(2)に示すように、静止画露光時間が長くなると、円動作の駆動周波数が低くなっていく。これにより、静止画露光時間に応じて十分なLPF効果を得ながらも消費電力を低減することができる。
【0081】
なお、静止画露光時間が所定値よりも長くなり、LPF駆動モードにおける円動作の駆動周波数が下がると電力の消費が低減されるため、LPF駆動動作と同時に像ブレ補正動作を行ってもカメラ本体1の駆動電流の制限値を超える可能性が低くなる。また、一般的に、露光時間が長いと、ブレ量が大きくなる。よって、静止画露光時間が所定値よりも長い場合は、LPF駆動モードを行うブレ補正部側により、LPF駆動を行いつつも像ブレ補正動作を並行して行ってもよい。その結果、LPF効果を得つつも、ブレ補正の補正量を大きくすることができる。一方、静止画露光時間が所定値以下の場合は、像ブレ補正動作は行わない。
【0082】
(他の実施形態)
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読み出し実行する処理でも実現できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現できる。
【0083】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0084】
1:カメラ本体、3:交換レンズ、10:カメラシステム制御部、11:撮像素子、14:フォーカルプレーンシャッター、17:カメラ側ブレ補正部、18:ジャイロセンサ、30:レンズシステム制御部、34:レンズ側ブレ補正部
図1
図2
図3
図4