(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】遮音壁およびそれに用いられる遮音パネル
(51)【国際特許分類】
E01D 19/10 20060101AFI20240502BHJP
E01F 8/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
E01D19/10
E01F8/00
(21)【出願番号】P 2020117155
(22)【出願日】2020-07-07
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2019160181
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507194017
【氏名又は名称】株式会社高速道路総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】舩橋 修
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 智彦
(72)【発明者】
【氏名】瀧山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】堀田 善彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 賢之
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115572(JP,A)
【文献】特開2019-078103(JP,A)
【文献】特開2006-241749(JP,A)
【文献】特開2005-016111(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0913340(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0001885(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/10
E01F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で立設される支柱
(3)と、前記支柱
(3)どうしの間に設けられる遮音パネル
(1)とを備え、前記支柱
(3)の下端部には基礎
(2)の上面に固定部材
(5)で固定されるベースプレート
(4)が取り付けられ、前記ベースプレート
(4)の上面には前記遮音パネル
(1)の長手方向に延びる横リブ
(4a)が設けられており、前記固定部材
(5)は前記横リブ
(4a)を挟んで正面側および背面側で前記ベースプレート
(4)を貫通して
前記基礎
(2)に埋め込まれるものである遮音壁において、
前記遮音パネル
(1)には、前記ベースプレート
(4)の上方で正面側に開口
する点検部
(17)が設けられ、
前記点検部(17)の背面を形成する背面板(12)は、前記点検部(17)よりも上方において背面を形成する背面板(12)よりも背面側に膨出して、前記固定部材(5)よりも背面側で前記ベースプレート(4)との間を覆っており、
前記点検部
(17)の底壁部に前記横リブ
(4a)よりも背面側で開口する点検口
(17c)が設けられていることを特徴とする遮音壁。
【請求項2】
所定の間隔で立設される支柱
(3)と、前記支柱
(3)どうしの間に設けられる遮音パネル
(1)とを備え、前記支柱
(3)の下端部には基礎
(2)の上面に固定部材
(5)で固定されるベースプレート
(4)が取り付けられ、前記ベースプレート
(4)の上面には前記遮音パネル
(1)の長手方向に延びる横リブ
(4a)が設けられており、前記固定部材
(5)は前記横リブ
(4a)を挟んで正面側および背面側で前記ベースプレート
(4)を貫通して
前記基礎
(2)に埋め込まれるものである遮音壁において、
前記遮音パネル
(1)には、前記ベースプレート
(4)の上方で正面側に開口し背面側に膨出する点検部
(17)が設けられ、
前記遮音パネル(1)が備える吸音材(15)は、前記点検部(17)の上方の上部隔壁(17a)又は受け部材(22)で脱落しないように支持されており、
前記点検部
(17)の底壁部に前記横リブ
(4a)よりも背面側で開口する点検口
(17c)が設けられて、
前記点検口(17c)が前記遮音パネル(1)の正面板(11)と背面板(12)を結ぶ底面板(14)に設けられていることを特徴とする遮音壁。
【請求項3】
前記点検部
(17)の点検口
(17c)が蓋部材
(21)によって開閉可能に閉じられていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の遮音壁に用いられる遮音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音源から発生する騒音を遮る遮音壁と、それに用いられる遮音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路では、一般に、車両の走行によって発生する騒音の周辺地域への拡散を抑えるために、その騒音を遮る遮音壁が設置されている。この遮音壁としては、道路の路側部や中央分離帯等に所定の間隔で立設したH型鋼からなる支柱どうしの間に、吸音材を収納した複数の遮音パネルを設けたタイプのものが多く見られる。このような遮音壁は、線路を走行する鉄道車両や工場等の騒音源から発生する騒音を遮るために設置されることもある。
【0003】
上記のタイプの遮音壁では、通常、基礎の上面に載置されて支柱を支持するベースプレートを支柱の下端部に取り付け、そのベースプレートを貫通して基礎に埋め込まれるアンカーボルト等の固定部材によって、ベースプレートおよび支柱を基礎上に固定している。そして、このような遮音壁には、支柱を強固に支持するために、ベースプレートの上面に遮音パネルの長手方向に延びる横リブと遮音パネルの厚み方向に延びる縦リブを設け、その横リブを挟んで正面側と背面側で固定部材を基礎に埋め込んだものがある(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のような遮音壁の支柱固定構造は、ベースプレートを基礎に固定する固定部材が遮音パネルおよびベースプレートの横リブを挟んで正面側と背面側に配されているので、固定部材の状態を点検する際には、作業者が遮音壁の正面側からの点検と背面側からの点検を別々に行う必要がある。特に、道路における橋や高架の道路等(高架橋)の路側部に設けられた遮音壁の場合、正面側(道路側)の固定部材の点検作業の負荷は小さいが、道路外側となる背面側の固定部材の点検はオーバーフェンス車等の高所作業車を用いて行わなければならず、作業負荷が大きいという問題がある。また、最近では、高架橋については定期的に点検を実施する必要があり、その点検作業に対する負荷軽減の要求が大きくなってきている。
【0006】
そこで、本発明は、支柱どうしの間に遮音パネルを設けた遮音壁において、その支柱を固定するための固定部材の点検を正面側から容易に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の遮音壁は、所定の間隔で立設される支柱と、前記支柱どうしの間に設けられる遮音パネルとを備え、前記支柱の下端部には基礎の上面に固定部材で固定されるベースプレートが取り付けられ、前記ベースプレートの上面には前記遮音パネルの長手方向に延びる横リブが設けられており、前記固定部材は前記横リブを挟んで正面側および背面側で前記ベースプレートを貫通して基礎に埋め込まれるものである遮音壁において、前記遮音パネルは、前記ベースプレートの上方で正面側に開口し背面側に膨出する点検部が設けられ、前記点検部の底壁部に前記横リブよりも背面側で開口する点検口が設けられている構成を採用した。
【0008】
すなわち、遮音壁の遮音パネルに、支柱を支持するベースプレートの上方で正面側に開口し背面側に膨出する点検部を設け、その点検部の底壁部にベースプレートの横リブよりも背面側で開口する点検口を設けることにより、点検作業の際に、横リブよりも背面側に配された固定部材(以下、「背面側の固定部材」ともいう。)の状態も、正面側から遮音パネルの点検部の点検口を通して容易に点検できるようにしたのである。
【0009】
また、本発明の遮音パネルは、所定の間隔で立設される支柱どうしの間に設けられて遮音壁を構成する遮音パネルにおいて、前記支柱の下端部に取り付けられるベースプレートの上方で正面側に開口し背面側に膨出する点検部が設けられ、前記点検部の底壁部の背面側部分に点検口が設けられているものである。
【0010】
すなわち、所定の間隔で立設される支柱どうしの間に遮音パネルを設けてなる遮音壁において、その支柱の下端部に取り付けられたベースプレートは上面に遮音パネルの長手方向に延びる横リブが設けられており、そのベースプレートを基礎の上面に固定する固定部材が、ベースプレートの横リブを挟んで正面側および背面側でベースプレートを貫通して基礎に埋め込まれるものである場合でも、本発明の遮音パネルを用いれば、点検作業の際に、背面側の固定部材の状態も、正面側から遮音パネルの点検部の点検口を通して容易に点検することができる。
【0011】
また、上記の遮音パネルにおいて、前記点検部の点検口が蓋部材によって開閉可能に閉じられている構成とすれば、点検時以外の通常時における遮音性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上述したように、遮音壁に用いられる遮音パネルに、遮音壁の支柱を支持するベースプレートの上方で正面側に開口し背面側に膨出する点検部を設け、その点検部の底壁部に背面側で開口する点検口を設けたので、ベースプレートを基礎に固定する固定部材がベースプレートの上面の横リブを挟んで正面側と背面側に配されている場合でも、点検作業の際に、作業者が背面側の固定部材の状態を正面側から容易に点検することができ、特に高架橋の路側部に設けた遮音壁の点検では、従来のように高所作業車を用いて背面側の点検を行う場合に比べて点検作業の負荷を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】(a)は
図1のIIa-IIa線に沿った断面図、(b)は
図1のIIb-IIb線に沿った断面図
【
図5】
図4に対応して点検時の状態を示す要部拡大断面図
【
図6】
図2(a)に対応して遮音パネルの変形例の長手方向中央部を示す断面図
【
図7】
図2(b)に対応して
図6の遮音パネルの一側部を示す断面図
【
図8】
図7に対応して点検時の状態を示す要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
図1および
図2(a)、(b)は、後述する実施形態の遮音壁に用いられる遮音パネル1を示す。この遮音パネル1は、全体として横長の長方形状で、その正面を形成する正面板11と、背面を形成する背面板12と、左右両側面を形成する側面板13と、底面を形成する底面板14と、その正面板11、背面板12、両側の側面板13および底面板14に囲まれた空間に収納される厚板状の吸音材15と、正面板11の両側縁部を覆う板状のシール材16とを備えている。その正面板11はアルミニウム合金板、背面板12はめっき鋼板もしくはラミネート鋼板、側面板13および底面板14はめっき鋼板でそれぞれ形成され、吸音材15はポリエステル繊維で形成されている。そして、この遮音パネル1の両側の下部には、正面側に開口し背面板12の一部を背壁部とする点検部17が形成されている。
【0015】
前記正面板11は、点検部17の開口部以外の正面部11aにルーバー状に多数の窓孔があけられており、上端に背面側へ折り曲げられた上板部11bを有している。
【0016】
前記背面板12は、背面部12aの上部が正面板11の正面部11aと平行に延び、中央部に遮音パネル1の長手方向に延びる凹部12bが設けられている。この凹部12bは、全体としての断面強度を向上させるためのものである。そして、背面部12aの下部には、凹部12bの下端から斜め下方に直線的に膨出する斜面部分と、その斜面部分の下端から正面板11の正面部11aと平行に延びる部分が形成されている。また、背面板12の上端には、正面側へ折り曲げられ、正面板11の上板部11bと重なった状態でリベット18により連結される上板部12cが設けられており、下端側の両隅にはL字状の切欠き12dが設けられている。
【0017】
前記側面板13は、図示は省略するが、遮音パネル1の側面のうちの上下に延びる矩形部分を形成する部材と、背面板12の背面側への膨出に沿って広がる台形部分を形成する部材とからなり、正面板11にはリベット18で、背面板12にはリベット18もしくはスポット溶接で連結されている。
【0018】
前記底面板14は、正面側から背面側に向かってわずかに下向きに傾斜する状態で、正面側の下向き折曲部を正面板11の正面部11aの下端に、背面側の下向き折曲部を背面板12の背面部12aの下端近傍位置に連結されている。また、底面板14の下面には、両側部以外の部分の全長にわたって、断面略コの字状の支持部材19が開口を下向きにした姿勢でボルトとナットにより取り付けられている。支持部材19は、その両脚部が背面板12の下端と同じ位置まで延びて、底面板14の正面側部分を支持するとともに、正面側の脚部が遮音パネル1の正面の下端部を形成するものとなっている。一方、底面板14の下面の両側部には、支持部材19よりも小さい断面略コの字状の隙間部材20が開口を下向きにした姿勢で図示省略したリベットにより取り付けられている。隙間部材20は、後述するように遮音パネル1を設置した際に、遮音パネル1の両側部の下端側に生じる隙間を塞ぐためのものである。
【0019】
そして、互いに連結されて一体化された正面板11、背面板12、側面板13および底面板14で囲まれた空間のうち、点検部17以外の部分に吸音材15が収納されている。吸音材15は、正面視逆凸形状に一体形成されたものが用いられているが、両側の点検部17の上方に配される、幅狭で背丈の低い矩形のものと、その2つの間の中央部に配される、幅広で背丈の高い矩形のものを用いるようにしてもよい。
【0020】
前記点検部17は、背面板12の背面部12aのうちの膨出部分の一部を背壁部、底面板14の一部を底壁部、側面板13の下部の一部を外側の側壁部としている。そして、上壁部となる上部隔壁17aと内側の側壁部となる側部隔壁17bとで点検部17以外の部位と仕切られ、点検部17以外の部位の内部に収納されている吸音材15が点検部17へ脱落せず、十分な遮音性能が確保されるようになっている。また、底壁部(底面板14の両側部)には、その背面側部分に矩形の点検口17cが開けられ、その点検口17cを開閉可能に閉じる蓋部材21がボルトとナットで取り付けられている。なお、蓋部材21を取り付けるためのナットは、前述の隙間部材20の両脚部間の内側面に溶接されている。
【0021】
図3および
図4は、上述した構成の遮音パネル1を用いた実施形態の遮音壁の要部を示す。この遮音壁は、基礎2の上面に所定の間隔で支柱3を立設し、その支柱3どうしの間に複数の遮音パネル1、1’を設けている。
【0022】
前記支柱3は、H型鋼からなり、下端部に基礎2の上面に載置されるベースプレート4が溶接によって取り付けられている。そして、そのベースプレート4を貫通して基礎2に埋め込まれる固定部材としてのアンカーボルト5によって、ベースプレート4とともに基礎2上に固定されている。
【0023】
前記ベースプレート4は、その上面に遮音パネル1の長手方向(以下、「左右」ともいう。)に延びる横リブ4aと、遮音パネル1の厚み方向(以下、「前後」ともいう。)に延びる縦リブ4bが、それぞれ前後に並ぶものを1対として左右に1対ずつ設けられている。各リブ4a、4bの配置は、1対の縦リブ4bの間に、1対の横リブ4aがそれぞれ縦リブ4bに接しかつ互いの間に隙間をおいた状態で配されており、左右の横リブ4aどうしの間にも隙間があけられている。なお、各横リブ4aは、ベースプレート4の側端面からはみ出してベースプレート4の下面の位置まで広がっている。
【0024】
そして、左右の横リブ4aどうしの隙間に支柱(H型鋼)3のウェブ3aの下端部が配され、左右の縦リブ4bどうしの間に支柱3のフランジ3bの下端部が挟まれる状態で、支柱3とベースプレート4とが一体化されている。また、そのベースプレート4を基礎2に固定するアンカーボルト5は、各対の横リブ4aを挟んで正面側と背面側に配されている。
【0025】
前記遮音パネル1、1’は、支柱3どうしの間の最下段に
図1および
図2に示した遮音パネル1が配置され、その上に従来の遮音パネル1’が複数段積み重ねられる。従来の遮音パネル1’は、最下段に配される実施形態の遮音パネル1のベースとなるもので、遮音パネル1のような点検部は設けられておらず、背面板の背面部にも膨出部分がなく、全体に遮音パネル1と同じ材質の吸音材が収納されている。
【0026】
ここで、各遮音パネル1、1’は、両側部を両側の支柱3のコの字断面内に嵌め込まれている。そのうちの最下段の遮音パネル1は、支持部材19の両脚部の下端と背面板12の切欠き12dのない部分の下端が、両側のベースプレート4の間で基礎2の上面に当接し、背面板12の切欠き12dにベースプレート4の背面側の一隅部が嵌まり込む状態となっている。
【0027】
このとき、遮音パネル1の両側部の下端に設けられた隙間部材20がそれぞれベースプレート4の1対の横リブ4aの間に入り込むことにより、遮音パネル1と横リブ4aの上端縁との隙間が塞がれ、遮音性が高まるようになっている。また、遮音パネル1の点検部17の点検口17cは、1対の横リブ4aよりも背面側に配されたアンカーボルト5の上方で開口し、蓋部材21で閉じられている。
【0028】
この遮音壁は、上記の構成であり、最下段の遮音パネル1に、支柱3を支持するベースプレート4の上方で正面側に開口し背面側に膨出する点検部17を設け、その点検部17の底壁部に背面側のアンカーボルト5の上方で開口する点検口17cを設けたので、点検作業の際に、
図5に示すように、点検口17cを閉じている蓋部材21を取り外すことにより、正面側のアンカーボルト5だけでなく、背面側のアンカーボルト5の状態も正面側から容易に点検することができる。
【0029】
したがって、この遮音壁を高架橋の路側部に設置すると、その高架橋の点検において、従来のように高所作業車を用いて背面側のアンカーボルト5の点検を行う場合に比べて、点検作業の負荷を大幅に軽減することができる。
【0030】
図6乃至
図8は、遮音パネル1の下部側の構造を変形した例を示す。この変形例では、遮音パネル1の底面を形成する底面板14を、背面側から正面側に向かってわずかに下向きに傾斜する状態で、つまり
図1乃至
図5の例と逆に傾斜する状態で配し、その正面側の端部を正面板11の下端に形成した内向き折曲部に、背面側の下向き折曲部を背面板12の背面部12aにそれぞれ連結している。これに伴い、底面板14の下面側に配される支持部材19および隙間部材20も、それぞれの上面部が
図1乃至
図5の例と逆に傾斜する状態で底面板14に取り付けている。そして、正面板11の内向き折曲部には、その折り曲げ位置付近で底面板14と重ならない部位に、長手方向に沿って複数の排水口11cを設けている。
【0031】
また、
図1乃至
図5の点検部17の上部隔壁17aに代えて、点検部17の上部で吸音材15を支持する断面略コの字状の受け部材22を設けている。受け部材22は、その開口を上向きにし、底部が背面側から正面側に向かってわずかに下向きに傾斜する状態で、底部の長手方向両端に形成した取付部22aをそれぞれ点検部17の側部隔壁17bと側面板13に取り付けている。そして、受け部材22の底部には、その正面側の折り曲げ位置付近に、長手方向に沿って複数の排水口22bを設けている。
【0032】
これにより、遮音パネル1の正面板11の窓孔から雨水が内部に浸入しても、浸入した雨水は底面板14に沿って流れたり受け部材22の排水口22bから落ちたりして底面の正面側端部上に集まり、正面板11の排水口11cから支持部材19上面の段差部へ落ちて外部へ排出されるようになっている。このため、浸入した雨水を遮音パネル1内部に滞留させることなく排水して、内部の部品の腐食を防止することができる。
【0033】
さらに、この変形例では、点検部17の点検口17cを開閉可能に閉じる蓋部材21として、ゴム製で、下面側に点検口17cの周縁部に嵌合する突部21aを形成したものを用いており、その突部21aを弾性変形させながら点検口17cを通過させるだけで、蓋部材21を底面板14に着脱できるようになっている。したがって、
図1乃至
図5の例では、蓋部材21をボルトとナットで底面板14へ取り付けているため、アンカーボルト5の点検作業の際に点検口17cの開閉(蓋部材21用のボルトの脱着)に手間がかかるおそれがあるが、この変形例の蓋部材21を用いれば、点検口17cの開閉にも手間がかからず、点検作業をより効率よく行うことができる。
【0034】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0035】
例えば、最下段の遮音パネルの背面は、実施形態では長手方向全長にわたって膨出部分が形成されているが、点検部の位置だけを膨出させるようにしてもよい。
【0036】
また、実施形態では最下段の遮音パネルの点検部の点検口を開閉可能に閉じる蓋部材を設けたが、点検部の正面側の開口を開閉可能に閉じる蓋部材を設けて、アンカーボルトの点検時以外は正面側からの外観が良くなるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1、1’ 遮音パネル
2 基礎
3 支柱
4 ベースプレート
4a 横リブ
4b 縦リブ
5 アンカーボルト(固定部材)
11 正面板
11c 排水口
12 背面板
13 側面板
14 底面板
15 吸音材
17 点検部
17c 点検口
19 支持部材
20 隙間部材
21 蓋部材
22 受け部材
22b 排水口