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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】制御装置及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/242 20240101AFI20240502BHJP
   B25J 9/00 20060101ALI20240502BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20240502BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G05D1/242
B25J9/00 Z
B25J13/08 Z
B25J19/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020132003
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028534
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮫田 芳富
(72)【発明者】
【氏名】小川 純平
(72)【発明者】
【氏名】西川 浩行
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-164911(JP,A)
【文献】特開2006-234523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
B25J 19/06
B25J 9/00
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能に構成されたロボット本体に接続される通信インタフェースである第1接続部と、
前記ロボット本体に設置された超音波センサアレイに接続されるセンサインタフェースである第2接続部と、
少なくとも2つの検出用波形が所定の時間間隔を空けて配列される送信信号を前記超音波センサアレイに前記第2接続部を介して送信し、前記検出用波形の超音波が前記ロボット本体の周辺に存在する物体に反射した反射波の受信信号を前記第2接続部を介して前記超音波センサアレイから取得し、前記検出用波形に対応する前記受信信号毎に遅延加算処理を実行し、前記遅延加算処理の処理結果から前記検出用波形の超音波を受けた際の前記物体の位置をそれぞれ検出し、検出した前記物体の位置の変化量から前記物体の速度を検出し、検出した前記物体の速度に基づいて前記第1接続部を介して前記ロボット本体の動作を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記物体の各々について検出した速度から速度分布を導出し、前記速度分布に表れる前記速度の傾向に基づいて前記物体の各々が動体物か否かを判定し、前記動体物と判定した物体との接触を回避する動作を前記ロボット本体に実行させる、制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出用波形としてパルス状の波形を少なくとも2つ含んだ前記送信信号を前記超音波センサアレイに前記第2接続部を介して送信する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出用波形としてバースト状の波形を少なくとも2つ含んだ前記送信信号を前記超音波センサアレイに前記第2接続部を介して送信する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、周波数が異なる前記検出用波形を含んだ前記送信信号を前記超音波センサアレイに前記第2接続部を介して送信する、請求項1~3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記物体の速度が閾値以上の場合に当該物体を動体物と判定し、当該動体物との接触を回避する動作を前記ロボット本体に実行させる、請求項1~4の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ロボット本体の移動速度とは異なる速度の物体を動体物と判定し、当該動体物との接触を回避する動作を前記ロボット本体に実行させる、請求項1~4の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記動体物が前記ロボット本体に近付く速度と、前記動体物と前記ロボット本体との距離との関係に基づいて、前記動体物が前記ロボット本体に接触する可能性があるか否かを判定し、接触する可能性があると判定した場合に、前記動体物との接触を回避する動作を前記ロボット本体に実行させる、請求項1、5または6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記動体物との接触を回避する動作として、前記ロボット本体の移動速度を制限する、請求項1、5~7の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記動体物との接触を回避する動作として、前記物体が存在しない位置に前記ロボット本体を移動させる、請求項1、5~7の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
移動可能に構成されたロボット本体と制御装置とを有するロボットシステムであって、
前記制御装置は、前記ロボット本体に接続される通信インタフェースである第1接続部と、前記ロボット本体に設置された超音波センサアレイに接続されるセンサインタフェースである第2接続部と、少なくとも2つの検出用波形が所定の時間間隔を空けて配列される送信信号を前記超音波センサアレイに前記第2接続部を介して送信し、前記検出用波形の超音波が前記ロボット本体の周辺に存在する物体に反射した反射波の受信信号を前記第2接続部を介して前記超音波センサアレイから取得し、前記検出用波形に対応する前記受信信号毎に遅延加算処理を実行し、前記遅延加算処理の処理結果から前記検出用波形の超音波を受けた際の前記物体の位置をそれぞれ検出し、検出した前記物体の位置の変化量から前記物体の速度を検出し、検出した前記物体の速度に基づいて前記第1接続部を介して前記ロボット本体の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記物体の各々について検出した速度から速度分布を導出し、前記速度分布に表れる前記速度の傾向に基づいて前記物体の各々が動体物か否かを判定し、前記動体物と判定した物体との接触を回避する動作を前記ロボット本体に実行させる、ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置及びロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流や流通、製造現場等では業務効率の向上のため、ロボットの導入が積極的に行われている。例えば、運搬用の自動搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)や、商品を組み上げるアームロボット等、様々なロボットの導入が進められている。
【0003】
ところで、上記のロボットでは、人や作業対象外の物体と接触しないよう動作を制御するため、ロボット周辺に存在する物体を、超音波を用いて検出するものが存在している。例えば、従来、超音波センサアレイを用いて、静止物のみが存在する場合の計測結果又は当該計測結果との差分から求められる計測結果を記憶し、新たな計測結果との差分から動体物を検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-085866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、記憶した過去の計測結果と現在の計測結果とから対応する物体を特定することは難しく、物体の速度を求めることは困難である。そのため、従来の技術では、静止物を動体物と誤検出してしまう可能性があり、ロボットの動作にも影響が及ぶ可能性があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、超音波を用いて検出した物体の速度に基づきロボットの動作を制御することが可能な制御装置及びロボットシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の制御装置は、第1接続部と、第2接続部と、制御部とを備える。第1接続部は、移動可能に構成されたロボット本体に接続される。第2接続部は、前記ロボット本体に設置された超音波センサアレイに接続される。制御部は、少なくとも2つの検出用波形が所定の時間間隔を空けて配列される送信信号を前記超音波センサアレイに前記第2接続部を介して送信し、前記検出用波形の超音波が前記ロボット本体の周辺に存在する物体に反射した反射波の受信信号を前記第2接続部を介して前記超音波センサアレイから取得し、前記検出用波形に対応する前記受信信号毎に遅延加算処理を実行し、前記遅延加算処理の処理結果から前記検出用波形の超音波を受けた際の前記物体の位置をそれぞれ検出し、検出した前記物体の位置の変化量から前記物体の速度を検出し、検出した前記物体の速度に基づいて前記第1接続部を介して前記ロボット本体の動作を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るロボットシステムの構成の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、実施形態に係るロボット制御装置及び協調制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る協調制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態の信号生成部が生成する送信信号の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態の信号生成部が生成する送信信号の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態の信号生成部が生成する送信信号の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態の遅延加算部が行う遅延加算処理を説明するための図である。
図8図8は、実施形態に係る遅延加算部、位置検出部及び速度検出部の動作を説明するための図である。
図9図9は、実施形態の協調制御装置が行う協調制御処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、変形例1に係るロボットシステムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る制御装置及びロボットシステムを、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係るロボットシステムの構成の一例を模式的に示す図である。図1では、ロボット10が走行するエリアを上方から見た状態を模式的に示している。なお、図中に示すX方向及びY方向は、互いに直交する水平面に沿う方向を意味する。また、Z方向は、X方向及びY方向に直交する、鉛直方向を意味する。
【0011】
図1に示すように、ロボットシステム1は、ロボット10を有する。本実施形態のロボット10は、自動搬送車(AGV)である。ロボット10は、ワークWを所定の搬送先へと搬送する。
【0012】
ワークWは、例えば台車であり、ロボット10が走行可能な倉庫内等のエリアに置かれる。なお、図1では、2台のワークW(W1、W2)を図示しているが、ワークWの台数はこれに限らないものとする。
【0013】
ロボット10は、自動又は手動で接続されたワークW(台車)を牽引して、例えば所定の位置まで自律走行する。なお、ロボット10が走行するエリア内には、ワークWの他、エリア内で作業する人(以下、作業員Hともいう)が存在しているものとする。
【0014】
ロボット10は、図1に示すように、本体部11、車輪12、駆動機構13、ロボット制御装置14、センサ部15、及び協調制御装置16等を備える。
【0015】
本体部11は、例えば略箱型の形状を有し、4つの側面11a、11b、11c、11dを備える。本体部11は、車輪12によって移動可能に支持される。本体部11の内部には、駆動機構13、ロボット制御装置14及び協調制御装置16等が搭載される。ここで、ロボット10から、協調制御装置16を取り除いたものが、本実施形態のロボット本体に対応する。なお、以下では、側面11aの方向をロボット10の前方として説明を進める。
【0016】
車輪12は、本体部11の対向する一対の側面11b、11cにおいて、それぞれ対向する位置に離間した状態で配置される。車輪12の各々は、駆動機構13により駆動されることにより、ロボット10を前進、後退及び旋回させる。ロボット10の旋回は、対となる車輪12の回転速度を相違させて実現する構成としてもよいし、車輪12を回動させて実現する構成としてもよい。なお、図1では、車輪12を4個設けた例を示しているが、車輪12の数はこれに限らないものとする。
【0017】
駆動機構13は、動力モータ等の駆動源を有し、車輪12を回転駆動する。具体的には、駆動機構13は、ロボット制御装置14の制御の下、車輪12を回転駆動することで、ロボット10を走行させる。
【0018】
ロボット制御装置14は、ロボット10のAGV機能を司る制御装置である。具体的には、ロボット制御装置14は、駆動機構13を制御することで、自装置を自律走行させる。例えば、ロボット制御装置14は、自装置が牽引するワークWを所定の搬送先に搬送するための経路を算出し、算出した経路で自装置を移動させる等の制御を行う。また、例えば、ロボット制御装置14は、作業員Hに追従してフロア内を移動する等の制御を行う。なお、ロボット制御装置14は、エリア内における自装置の位置や、搬送先の位置を特定することが可能な機能やマップ情報等を保持しているものとする。
【0019】
また、ロボット制御装置14は、協調制御装置16と協働することで、エリア内に存在する物体との接触(或いは衝突)を回避するための動作をロボット10に行わせる。ここで、「物体」とは、ロボット10自身が牽引するワークW以外の他のワークW、作業員H等を意味する。なお、本実施形態では、静止物に比べて接触の可能性がより高い、作業員H等の動体物との接触回避動作について説明する。
【0020】
センサ部15は、本体部11の側面等に設置され、ロボット10の周辺の存在する物体を超音波によってセンシングする。具体的には、センサ部15は、複数の超音波センサ151が、少なくとも一方向(例えば、水平方向)に配列された超音波センサアレイによって実現される。超音波センサ151の各々は、例えば圧電セラミック等の圧電素子によって形成される。
【0021】
なお、図1では、本体部11が有する4つの側面11a~11dのうち、3つの側面11a、11b、11cにセンサ部15を設置した例を示しているが、センサ部15の設置数や設置位置はこれに限定されるものではない。例えば、センサ部15は、4つの側面11a~11dの全てに設置してもよいし、側面11aにのみ設置してもよい。
【0022】
センサ部15は、協調制御装置16の制御の下、ロボット10の外部に向けて超音波(以下、送信波ともいう)を送信する。センサ部15から送信された送信波は音速で空気中を伝播し、作業員H等の物体に反射する。センサ部15は、物体に反射した超音波(以下、反射波ともいう)を受信し、反射波の音圧に応じた信号値を受信信号として取得する。なお、図1に示すセンシング範囲Aは、ロボット10の前方のセンサ部15から送信される送信波の伝播する範囲を示している。センサ部15は、このセンシング範囲A内に存在する物体の反射波を受信する。
【0023】
協調制御装置16は、本実施形態における制御装置の一例である。協調制御装置16は、センサ部15のセンシング結果に基づいて、ロボット10の周辺に存在する物体を検出する。また、協調制御装置16は、物体の検出結果に基づいて、ロボット10の動作を制御するための動作指示情報を生成しロボット制御装置14に出力する。そして、ロボット制御装置14は、協調制御装置16から入力される動作指示情報を受けて、ロボット10の動作を制御する。
【0024】
次に、図2を参照して、ロボット制御装置14及び協調制御装置16のハードウェア構成について説明する。図2は、ロボット制御装置14及び協調制御装置16のハードウェア構成の一例を示す図である。なお、図2では、ロボット制御装置14及び協調制御装置16と、他のハードウェアとの関係を説明するため、駆動機構13及びセンサ部15もあわせて図示している。
【0025】
図2に示すように、ロボット制御装置14は、プロセッサ141と、メモリ142と、駆動機構インタフェース143と、通信インタフェース144とを備える。
【0026】
プロセッサ141は、ロボット制御装置14の制御部である。プロセッサ141は、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現される。
【0027】
メモリ142は、プロセッサ141が実行する各種のプログラムや設定情報等を記憶する。メモリ142は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、半導体メモリ素子やハードディスク等の補助記憶装置によって実現される。プロセッサ141は、メモリ142に記憶されたプログラムと協働し、駆動機構13の動作を制御することでロボット10の自律走行機能を実現させる。
【0028】
駆動機構インタフェース143は、駆動機構13を接続するためのインタフェースである。通信インタフェース144は、例えばUSB(ユニバーサルシリアルバス)等の所定の通信規格に準拠した通信インタフェースである。
【0029】
ロボット制御装置14は、通信インタフェース144を介して、協調制御装置16と通信可能に接続される。例えば、プロセッサ141は、ロボット10の走行状態や、ロボット10の移動速度、移動方向等を示した状態情報を、通信インタフェース144を介して協調制御装置16に通知する。また、プロセッサ141は、協調制御装置16から送信される後述する動作指示情報を、通信インタフェース144を介して受け付ける。
【0030】
なお、ロボット10の状態情報は、駆動機構13の駆動状態や駆動制御の内容から抽出される形態としてもよい。また、図示しない速度センサやジャイロセンサ等のセンサ装置を別途設け、センサ装置のセンシング結果をロボット10の状態情報として用いる形態としてもよい。
【0031】
一方、協調制御装置16は、プロセッサ161と、メモリ162と、センサインタフェース163と、通信インタフェース164とを備える。
【0032】
プロセッサ161は、協調制御装置16の制御部である。プロセッサ161は、例えばCPU、FPGA、ASIC等によって実現される。なお、プロセッサ161は、制御部の一例である。
【0033】
メモリ162は、プロセッサ161が実行する各種のプログラムや設定情報等を記憶する。メモリ162は、ROMやRAM等の主記憶装置、半導体メモリ素子やハードディスク等の補助記憶装置によって実現される。プロセッサ161は、メモリ162に記憶されたプログラムと協働することで、後述する機能部を実現させる。
【0034】
センサインタフェース163は、第2接続部の一例である。センサインタフェース163は、センサ部15を接続するためのインタフェースである。通信インタフェース164は、第1接続部の一例である。通信インタフェース164は、通信インタフェース144と同様の通信規格に準拠した通信インタフェースである。
【0035】
協調制御装置16は、通信インタフェース164を介して、ロボット10本体のロボット制御装置14と通信可能に接続される。例えば、プロセッサ161は、ロボット制御装置14から送信されるロボット10の状態情報を、通信インタフェース144を介して受け付ける。また、プロセッサ141は、後述する動作指示情報を、通信インタフェース144を介してロボット制御装置14に送信する。
【0036】
次に、図3を参照して、協調制御装置16の機能構成について説明する。図3は、協調制御装置16の機能構成の一例を示す図である。なお、図3では、協調制御装置16の機能部とセンサ部15との対応関係を示すため、センサ部15をあわせて図示している。
【0037】
図3に示すように、協調制御装置16は、信号生成部1611と、遅延加算部1612と、位置検出部1613と、速度検出部1614と、判定部1615と、ロボット動作制御部1616とを機能部として備える。
【0038】
これら機能部の一部又は全ては、プロセッサ161が、メモリ162に記憶されたプログラムを実行することで実現されるソフトウェア構成であってもよい。また、これら機能部の一部又は全ては、プロセッサ161等が備える専用回路によって実現されるハードウェア構成であってもよい。
【0039】
信号生成部1611は、センサ部15が送信する超音波(送信波)の波形を表す信号(以下、送信信号ともいう)を生成する。具体的には、信号生成部1611は、所定の時間間隔毎に、少なくとも2つの検出用波形が所定の時間間隔を空けて配列された送信信号を生成する。ここで、検出用波形は、物体を検出するための波形であり、例えばパルス状の波形(以下、パルス波形ともいう)やバースト状の波形(以下、バースト波形ともいう)で表される。以下、図4図6を参照して、信号生成部1611が生成する送信信号について説明する。
【0040】
図4図6は、信号生成部1611が生成する送信信号の一例を示す図である。例えば、信号生成部1611は、検出用波形としてパルス波形を用いる場合、図4に示すように、パルス状の波形P1(P11、P12)を2つ含んだ信号を、所定の時間間隔(以下、時間ΔT2)毎に生成する。
【0041】
ここで、波形P11と波形P12との間には、例えば1ミリ秒等の時間ΔT1(ミリ秒)の間隔が設けられる(但し、ΔT1≦ΔT2)。つまり、この送信信号では、波形P11の送信波(以下、パルス波ともいう)を送信した後、時間ΔT1が経過したタイミングで波形P12のパルス波を送信することが規定されている。
【0042】
また、例えば、信号生成部1611は、検出用波形としてバースト波形を用いる場合、図5に示すように、連続パルスで構成されるバースト状の波形P2(P21、P22)を2つ含んだ送信信号を、所定の時間ΔT2毎に生成する。
【0043】
ここで、波形P21と波形P22との間には、パルス波形と同様に、時間ΔT1(ミリ秒)の間隔が設けられる。つまり、この送信信号では、波形P21の送信波(以下、バースト波とも)を送信した後、時間ΔT1が経過したタイミングで波形P22のバースト波を送信することが規定されている。
【0044】
なお、時間ΔT1や時間ΔT2の値は、物体検出を行う範囲や、送信波の送信に伴う直接波の影響等に応じて調整することが好ましい。また、時間ΔT1や時間ΔT2の値は、パルス波とバースト波とで異ならせてもよい。
【0045】
また、パルス波及びバースト波の周波数や振幅、波長(パルス幅)は任意に調整することが可能である。例えば、図6に示すように、1回目の送信波と2回目の送信波とで周波数を異ならせてもよい。
【0046】
図6は、信号生成部1611が生成する送信信号の一例を示す図であり、1回目のバースト波(波形P21)と2回目のバースト波(波形P22)とで周波数を異ならせた例を示している。ここでは、2回目の波形P22の周波数を、1回目の波形P21の周波数よりも大きくした例を示している。
【0047】
このように、信号生成部1611は、1度の送信信号に、周波数を異ならせた検出用波形を含めることで、検出用波形によって送信される送信波の識別性を向上させることができる。これにより、例えば、1回目のバースト波の反射波が、2回目のバースト波の直接波に重なって受信された場合や、2回目のバースト波の反射波が、次の送信信号の1回目のバースト波の直接波に重なって受信された場合であっても、各波形の周波数でフィルタ処理を施すことで、反射波を容易に区別(抽出)することができる。
【0048】
なお、信号生成部1611は、パルス波形及びバースト波形の何れか一方を選択して送信信号を生成できるものとするが、その選択方法は特に問わないものとする。
【0049】
例えば、切り替えスイッチや設定情報等により、パルス波形及びバースト波形の何れか一方が選択される構成としてもよい。一般的に、バースト波は、パルス波と比較し、遠方の物体まで検出することができるが、検出可能な範囲はパルス波と比較して狭くなる傾向がある。また、パルス波は、バースト波と比較し、比較的近距離の物体検出に留まるが、検出可能な範囲はバースト波と比較して広いという傾向がある。そのため、ユーザは、ロボット10の使用環境に応じて、パルス波とバースト波とを切り替えることが好ましい。
【0050】
また、例えば、信号生成部1611は、パルス波とバースト波とを交互に切り替えながら送信信号を生成したり、パルス波の送信信号を複数回生成した後、バースト波の送信信号を複数回生成したりする等、自動で切り替える構成としてもよい。
【0051】
センサ部15は、信号生成部1611で生成された送信信号に基づいて送信波を送信し、送信した送信波が物体に反射した反射波を受信する。具体的には、センサ部15では、1又は複数の超音波センサ151が送信信号に応じた超音波を発することで、センサ部15から送信波が送信される。また、超音波センサ151の各々は、物体に反射した送信波(反射波)を受信し、その受信結果を電気信号に変換した受信信号を、メモリ162等を介して遅延加算部1612に出力する。
【0052】
遅延加算部1612は、センサ部15による反射波の受信結果に基づいて、物体が存在する位置(方位と距離)や当該物体の速度を検出可能とするための遅延加算処理を実行する。具体的には、遅延加算部1612は、超音波センサ151の各々から受信信号を取得すると、物体の方位を特定するため、各超音波センサ151の受信信号を所定の遅延時間だけ遅延させて、方位ごとに加算する遅延加算処理を実行する。
【0053】
図7は、遅延加算部1612が行う遅延加算処理を説明するための図である。ここでは、センサ部15は、図7に示すように一方向に配列された4つの超音波センサ151a~151dを備えるものとする。
【0054】
物体に反射した反射波の超音波センサ151a~151dに対する入射角度が角度θである場合、反射波の同位相の波面WFが超音波センサ151a~151dの各々に到達する時間は、超音波センサ151a~151dの配置間隔に応じた時間だけ遅延する。例えば、超音波センサ間の間隔がd(mm)であり、超音波の速度(音速)がv(mm/ミリ秒)であるとすると、超音波センサ151aから超音波センサ151dにかけて、時間差T=dsinθ/v(ミリ秒)ずつ反射波の到達時間が遅延することになる。つまり、超音波センサ151aに到達した反射波の時間を0とすると、超音波センサ151bではTミリ秒後に、超音波センサ151cではT×2ミリ秒後に、超音波センサ151dではT×3ミリ秒後に、反射波が到達することになる。
【0055】
そこで、遅延加算部1612は、任意の入射角度θに対して上記式から求められる時間差0、T、T×2、T×3に基づき、超音波センサ151a~151dの受信信号を遅延させて当該受信信号を加算する処理を実行する。ここで、入射角度θは、例えば5度ずつ等の角度幅で処理してもよい。
【0056】
なお、遅延加算部1612は、センサ部15から送信波が送信される毎に、センサ部15から送信波が送信されてから、超音波センサ151の各々に反射波が到達するまでの時間、つまり超音波センサ151の各々から受信信号を取得するまでの時間Taを計時し、計時した時間Taに基づいて上述の遅延加算処理を行うものとする。遅延加算処理の方法は、上記の例に限らず、公知の技術を用いることが可能である。
【0057】
また、上述したように、信号生成部1611が生成する送信信号には、少なくとも2回の検出用波形が含まれている。つまり、一度の送信信号では、時間ΔT1を隔てて送信波が2回送信されるため、送信波の送信毎に物体で反射した反射波(受信信号)を受信することになる。そのため、遅延加算部1612では、送信波の送信毎に上述の遅延加算処理を実行する。具体的には、遅延加算部1612は、送信波の送信後の時間ΔT1の間、受信信号の遅延加算処理を実行する。
【0058】
図3に戻り、位置検出部1613は、遅延加算部1612の遅延加算処理の結果に基づいて、センサ部15のセンシング範囲A内に存在する物体の位置を検出する。ここで、物体の位置は、ロボット10(センサ部15)に対して物体が存在する方位と、ロボット10(センサ部15)と物体との間の距離とを意味する。
【0059】
具体的には、位置検出部1613は、遅延加算処理の結果に基づき、受信信号の加算値のピークが相対的に大きくなる入射角度θを物体が存在する方位として検出する。例えば、位置検出部1613は、送信波の送信後の時間ΔT1の間、受信信号の加算値を入射角度毎に求め、その最大値が所定の閾値を超えていれば、その入射角度の方向に物体が存在すると判断する。
【0060】
以下、遅延加算処理で生成された加算信号のうち、物体が存在する方位として検出された入射角度θの加算値をピーク信号ともいう。また、1度の送信信号で送信される2回の送信波のうち、1回目の送信波の反射波から導出されたピーク信号を最初のピーク信号、2回目の送信波の反射波から導出されたピーク信号を次のピーク信号ともいう。また、物体が存在する方位をインデックス「i」で表す。
【0061】
位置検出部1613は、遅延加算処理の結果に基づき、物体までの距離を検出する。具体的には、位置検出部1613は、物体が存在すると判断された各方位iについて、最初のピーク信号がセンサ部15に到達した時間Tai(ミリ秒)を下記式(1)に適用することで、その方位iに存在する物体Oiまでの距離Dai(mm)を算出する。
Dai=Tai×v/2 …(1)
【0062】
また、位置検出部1613は、最初のピーク信号と同様に、次のピーク信号がセンサ部15に到達した時間Tbi(ミリ秒)を下記式(2)に適用することで、その方位iに存在する物体Oiまでの距離Dbi(mm)を算出する。
Dbi=(Tbi-ΔTi)×v/2 …(2)
【0063】
速度検出部1614は、位置検出部1613の検出結果に基づき、センサ部15のセンシング範囲A内に存在する物体の、ロボット10(センサ部15)に対する相対的な移動速度(以下、単に速度ともいう)を検出する。
【0064】
具体的には、速度検出部1614は、物体が存在すると判断された各方位iについて、位置検出部1613で検出された距離Dai及び距離Dbiを、下記式(3)に適用することで、その方位に存在する物体Oiの速度Vi(mm/ミリ秒)を算出する。
Vi=(Dbi-Dai)/ΔT1…(3)
【0065】
ここで、Viが負の値となる場合、物体Oiがロボット10に近付きつつあることを意味する。また、Viが正の値となる場合、物体Oiがロボット10から離れつつあることを意味する。また、Viがゼロ又は略ゼロとなる場合、ロボット10に対し物体Oiが静止している状態にあることを意味する。
【0066】
なお、物体Oiが高速(例えば、音速に近い速度)で移動しているような場合、同一の物体Oiが検出される方位が相違する可能性がある。しかしながら、本実施形態で想定している動体物は作業員Hであるため音速と比較し遥かに低速であり、またロボット10自身の旋回速度も音速と比較し遥かに低速である。また、一度の送信信号で送信される検出用波形の時間間隔も1mm/ミリ秒等の微小な値となっているため、この時間間隔の間に物体Oiが移動できる距離は微小となる。そのため、2回の送信波で検出される同一の物体Oiについての方位iは、略同等の方位となる。したがって、2回の送信波で検出される同一方位iの位置距離Dai、Dbiは、同一の物体Oiが2回の送信波を受けた際の、ロボット10との距離を意味する。また、上記式(3)で算出される速度Viは、同一の物体Oiが2回の送信波を受ける間に移動した、その移動速度を意味する。
【0067】
このように、位置検出部1613及び速度検出部1614は、一度の送信信号で送信された2回の送信波の受信結果から、センサ部15のセンシング範囲A内に存在する各物体Oiの位置(方位iと距離Dai、Dbi)と速度Viとを検出する。
【0068】
なお、位置検出部1613及び速度検出部1614は、ロボット制御装置14から送信される状態情報に基づき、ロボット10の移動速度及び移動方向を加味した上で、物体Oiの位置や速度の検出を行うものとする。例えば、速度検出部1614は、ロボット10の移動速度及び移動方向と、位置検出部1613が検出した各物体の方位及び距離との関係に基づき、各物体の速度の値やベクトルを比較可能な形態に正規化してもよい。なお、ロボット10の移動速度及び移動方向を加味した位置及び速度の計算方法については、公知の技術を用いることが可能である。
【0069】
図8は、遅延加算部1612、位置検出部1613及び速度検出部1614の動作を説明するための図である。図8では、図1に示したロボット10と各物体(ワークW1、W2、作業員H)との位置関係を表している。
【0070】
例えば、図8では、ロボット10から見て位置A1には、ワークW1が存在する。この場合、ワークW1に反射した反射波の遅延加算処理の結果は、位置A1の方位で大きくなる。ここで、ピーク信号Pa1は、最初のピーク信号を意味し、ピーク信号Pa2は、次のピーク信号を意味する。また、位置A2存在する作業員Hについても、位置A2の方位で最初のピーク信号Pb1と次のピーク信号Pb2とが得られる。さらに、位置A3存在するワークW2についても同様に、位置A3の方位で最初のピーク信号Pc1と次のピーク信号Pc2とが得られる。
【0071】
また、図8に示す、ロボット10(センサ部15)と各ピーク信号との間の長さは、ピーク信号がセンサ部15に到達するまでの時間長を表している。つまり、ロボット10(センサ部15)と各ピーク信号との間の長さは、ロボット10と各物体との間の距離に対応している。
【0072】
この場合、位置検出部1613は、位置A1、位置A2、位置A3の各方位に物体(ワークW1、W2、作業員H)が存在すると判定し、ピーク信号がセンサ部15に到達するまでの時間長から、各物体までの距離を検出する。
【0073】
また、速度検出部1614は、最初のピーク信号の到達タイミングと、次のピーク信号の到達タイミングとの差分値に基づき、各方位に存在する物体(ワークW1、W2、作業員H)の速度を検出する。
【0074】
図3に戻り、判定部1615は、速度検出部1614の検出結果に基づき、センシング範囲A内に存在する物体が動体物か否かを判定する。具体的には、判定部1615は、速度検出部1614で検出された物体の速度に基づき、その物体が動体物か否かを判定する。ここで、動体物か否かの判定には種々の方法を採用することが可能である。
【0075】
例えば、判定部1615は、物体の速度が所定の閾値以上である場合に、その物体を動体物と判定する。また、物体の速度が閾値未満の場合は、その物体を静止物と判定する。ここで、動体物の判定に係る閾値は任意の値を設定することが可能であるとするが、ロボット10の使用環境に応じた値を設定することが好ましい。
【0076】
また、他の判定方法として、判定部1615は、ロボット10の移動速度と異なる速度を有する物体が存在した場合、その物体を動体物と判定してもよい。例えば、ロボット10が静止しているような場合、ロボット10に対する静止物の速度は、ロボット10と同じ速度ゼロとなる。一方で、動体物の場合には、ロボット10とは異なる速度が検出されることになる。
【0077】
そこで、判定部1615は、各物体から検出した速度に基づき、ロボット10の速度とは異なる速度を有する物体が存在した場合に、その物体を動体物と判定する。このような判定方法を用いることで、多数のワークWが存在するエリアの中から、動体物である作業員Hを効率的に識別することができる。
【0078】
また、他の判定方法として、判定部1615は、速度検出部1614が測定した各物体の速度から、速度の分布(以下、速度分布ともいう)を導出し、当該速度分布に基づいて、動体物か否かを判定してもよい。
【0079】
例えば、ロボット10が移動しているような場合、ロボット10に対する静止物の速度は、ロボット10の移動速度に応じた値となる。一方、動体物の場合には、静止物とは異なる速度を示すことになる。そのため、例えば、動体物の一例である作業員Hの人数に比較し、ワークW等の静止物が多くあるような現場の場合では、静止物から検出される速度は略同等の分布傾向を示すことになる。一方、動体物から検出される速度は、静止物とは異なる分布傾向を示し、外れ値等の形態で出現することになる。
【0080】
そこで、判定部1615は、各物体の速度から導出した速度分布に基づき、他の速度とは異なる分布傾向を有する速度が存在した場合に、その速度に対応する物体を動体物と判定する。このような判定方法を用いることで、多数のワークWが存在するエリアの中から、動体物である作業員Hを効率的に識別することができる。
【0081】
さらに、判定部1615は、物体を動体物と判定した場合、その物体について位置検出部1613で検出された距離と、速度検出部1614で検出された速度とに基づき、自己のロボット10に接触する可能性があるか否を判定する。
【0082】
具体的には、判定部1615は、自己のロボット10に近付きつつある物体の速度が第1閾値以上であり、且つ当該物体との距離が第2閾値未満の場合に、その物体を接触の可能性のある回避対象物と判定する。ここで、回避対象物の判定に係る閾値には任意の値を設定することが可能である。また、距離は次のピーク信号の到達タイミングに基づき検出された距離(距離Dbi)を用いることが好ましい。
【0083】
なお、判定部1615は、送信信号が送信される毎に、この送信信号に伴い実行された遅延加算部1612、位置検出部1613及び速度検出部1614の処理結果から上記の判定を行うものとするが、判定の対象はこれに限らないものとする。例えば、判定部1615は、時系列的に連続して送信された複数回の送信信号の処理結果に基づき、上記の判定を行ってもよい。
【0084】
例えば、送信信号毎に物体の速度が検出されるため、時系列的に連続する2回の送信信号からは速度の変化量、つまり加速度を導出することができる。そこで、判定部1615は、時系列的に連続する2回の送信信号で検出された同一の物体の速度から加速度を新たな指標として導出し、その加速度を加味して動体物か否かの判定や、回避対象物の判定を行ってもよい。一例として、判定部1615は、物体の速度及び加速度が所定の閾値値以上であり、且つ当該物体との距離が所定の閾値未満の場合に、その物体を接触する可能性のある回避対象物と判定する。
【0085】
ロボット動作制御部1616は、判定部1615の判定結果に基づき、ロボット10の動作を指示した動作指示情報を生成する。また、ロボット動作制御部1616は、生成した動作指示情報を、通信インタフェース164を介してロボット制御装置14に出力することで、動作指示情報で指示した動作をロボット10に実行させる。
【0086】
例えば、ロボット動作制御部1616は、ロボット10が走行中である場合、回避対象物と判定された物体Oiまでの距離Dbiと速度Viとから、その物体Oiとの接触を回避することが可能な制限速度Vhを導出し、制限速度Vhを指示した動作指示情報を生成する。制限速度Vhは、例えば、下記式(4)に基づいて導出することができる。
Vh=(Dbi-Vi×(T1+T2))/(T1+T2) …(4)
【0087】
ここで、時間T1は、一度の送信信号の送信で速度Viの導出に要する時間、或いは送信信号全体の送信時間に時間ΔT2を加算した時間を意味する。また、時間T2は、指示情報をロボット制御装置14に出力してから、実際にロボット10の動作に反映されるまでの時間を意味する。なお、時間T1及び時間T2は予め設定された固定値を用いてもよい。また、ロボット10が走行中か否かの判定は、ロボット制御装置14から送信される状態情報に基づいて行うものとする。
【0088】
また、他の制御例として、ロボット動作制御部46は、ロボット10が走行中である場合に、ロボット10を緊急停止させることを指示した動作指示情報を生成してもよい。
【0089】
また、ロボット動作制御部46は、ロボット10が停止中又は所定の速度以下で低速走行中であるような場合、回避対象物が存在する方位以外の方向にロボット10を移動させることを指示した動作指示情報を生成する。この場合、ロボット動作制御部46は、物体が検出された位置に基づき、ロボット10を移動させることが可能な位置を特定する。例えば、ロボット動作制御部46は、物体が存在しない位置にロボット10を移動させることを指示した動作指示情報を生成する。
【0090】
なお、上述したように、時系列的に連続する複数回の送信信号の処理結果を用いる場合には、検出された移動体の位置を時系列順にトレースすることで、その移動体が移動している方向(進路)を予測することができる。この場合、ロボット動作制御部46は、回避対象物の進路を新たな指標として用いることで、回避対象物の予測進路とは異なる方向をロボット10の移動先としてもよい。
【0091】
一方、ロボット制御装置14では、ロボット動作制御部46から動作指示情報を受け付けると、動作指示情報で指示された内容に基づき駆動機構13の動作を制御する。例えば、ロボット制御装置14は、動作指示情報で制限速度Vhが指示された場合、ロボット10の速度が制限速度Vh以下となるように駆動機構13の動作を制御する。また、例えば、ロボット制御装置14は、動作指示情報で緊急停止が指示された場合、駆動機構13の動作を制御することで、ロボット10を停止させる。また、例えば、ロボット制御装置14は、動作指示情報で移動先の位置が指示された場合、駆動機構13の動作を制御することで、ロボット10を指示された位置に移動させる。
【0092】
これにより、ロボット10では、回避対象物との接触を避けることができるとともに、自装置が回避対象物の移動の妨げとなるような事態を抑制することができる。
【0093】
以下、図9を参照して、協調制御装置16の動作例について説明する。図9は、協調制御装置16が行う協調制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0094】
まず、信号生成部1611は、少なくとも2回の検出用波形(送信波)を含んだ送信信号を生成する(ステップS11)。次いで、信号生成部1611は、生成した送信信号をセンサ部15に供給することで、センサ部15から送信信号を送信させる(ステップS12)。
【0095】
センサ部15は、送信波を送信した後、送信した送信波が物体に反射した反射波を受信する。例えば、センサ部15を構成する超音波センサ151の各々は、受信した反射波を電気信号に変換し、変換した電気信号を受信信号としてメモリ162に保持する。
【0096】
続いて、遅延加算部1612は、センサ部15が受信した受信信号をメモリ162から取得する(ステップS13)。遅延加算部1612は、超音波センサの各々で受信された受信信号を所定時間遅延させて各方位の加算信号を取得する遅延加算処理を実行する(ステップS14)。
【0097】
次いで、位置検出部1613は、ステップS14の遅延加算処理の処理結果により得られたピーク信号に基づき、物体が存在する位置(方位、距離)を検出する(ステップS15)。なお、位置検出部1613は、1度の送信信号で得られた最初のピーク信号と次のピーク信号との各々について、物体が存在する位置をそれぞれ検出する。
【0098】
続いて、速度検出部1614は、ステップS15で検出された各物体の位置の変化量に基づき、当該物体の速度を検出する(ステップS16)。
【0099】
続いて、判定部1615は、ステップS17の検出結果に基づき、検出された物体が動体物(例えば、作業員H)か否かを判定する(ステップS17)。物体が動体物でないと判定した場合(ステップS17;No)、判定部1615はステップS21に処理を進める。
【0100】
また、判定部1615は、検出された物体を動体物と判定した場合(ステップS17;Yes)、その物体とロボット10との位置関係や速度の関係に基づき、接触する可能性があるか否かを判定する(ステップS18)。接触する可能性がないと判定した場合(ステップS18;No)、判定部1615はステップS21に処理を進める。また、接触する可能性があると判定した場合(ステップS18;Yes)、判定部1615は、該当する物体を回避対象物に設定し、ステップS19に処理を進める。
【0101】
続くステップS19では、ロボット動作制御部1616は、回避対象物に設定された物体の位置及び速度等に基づき、当該回避対象物物体との接触を回避するための動作を指示した動作指示情報を生成する(ステップS19)。例えば、ロボット動作制御部46は、上記式(4)によってロボットの速度の上限値(制限速度)を決定し、その制限速度を指示した動作指示情報を生成する。
【0102】
続いて、ロボット動作制御部1616は、生成した動作指示情報を、通信I/F31を介してロボット制御装置14に出力し(ステップS20)、ステップS21に処理を進める。これにより、ロボット制御装置14は、協調制御装置16から入力された動作指示情報に基づき駆動機構13の動作を制御することで、回避対象物との接触を回避するための動作をロボット10に行わせる。
【0103】
続いて、プロセッサ161は、協調制御処理を終了するか否かを判定し、継続すると判定した場合には(ステップS21;No)、ステップS11に処理を戻す。また、プロセッサ161は、ロボット10の動作が停止される等の理由により、協調制御処理の終了が指示されたと判定すると(ステップS21;Yes)、本処理を終了する。
【0104】
以上のように、本実施形態のロボットシステム1及び協調制御装置16では、一度の送信信号の送信で得られる反射波の受信結果(受信信号)から、センシング範囲Aに存在する物体の位置と速度とを検出することができる。したがって、ロボットシステム1及び協調制御装置16では、動体物(作業員H)か静止物(ワークW)かの判定を効率的に行うことができる。
【0105】
また、ロボットシステム1及び協調制御装置16では、検出した物体の速度を基に動体物か静止物かを判定するため、動体物の判定をより確実に行うことができる。これにより、ワークW等の静止物を作業員Hと誤検出したことで生じるロボット10の誤動作(例えば走行速度の低下や停止)を防ぐことができるため、ロボット10を効率的に動作させることができる。
【0106】
また、ロボットシステム1及び協調制御装置16では、検出した物体の速度を基に動体物か否かを判定し、その判定結果に応じてロボット10に回避動作等を行わせる。したがって、ロボットシステム1及び協調制御装置16では、検出した物体の速度に基づきロボット10の動作を制御することができる。
【0107】
また、ロボットシステム1及び協調制御装置16では、動体物と判定した物体の移動方向や速度、距離等に基づいて、物体がロボット10に接触する可能性があるか否かを判定し、接触の可能性がある場合には、ロボット10に回避動作を実行させる。これにより、ロボットシステム1及び協調制御装置16では、ロボット10が動体物(作業員H)に接触することを防ぐことができるため、作業員Hの安全を確保することができるとともに、ロボット10が作業員Hの移動の妨げになることを抑制することができる。また、物体がロボット10に接触する可能性がある場合にのみロボット10を回避動作させることができるため、ロボット10を効率的に動作させることができる。
【0108】
以上説明した実施形態は、上述の各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0109】
(変形例1)
上述の実施形態では、協調制御装置16は、ロボット10に一体的に設けられる構成としたが、これに限らず、ロボット10と別体としてもよい。例えば、図10に示すように、ロボット10a(ロボット制御装置14a)と協調制御装置16aとを有線又は無線等で接続することで、協調制御装置16aを独立した装置構成としてもよい。
【0110】
ここで、図10は、上記実施形態の変形例1に係るロボットシステムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0111】
ロボット10aは、図1で説明したロボット10から、協調制御装置16を取り除いたものである。ロボット制御装置14aは、上述したプロセッサ141、メモリ142及び駆動機構インタフェース143に加えて、センサインタフェース145と、通信インタフェース146とを備えている。
【0112】
センサインタフェース145は、センサ部15を接続するためのインタフェースである。通信インタフェース146は、協調制御装置16aを接続するためのインタフェースである。通信インタフェース146は、有線の通信インタフェースであってもよいし、無線の通信インタフェースであってもよい。
【0113】
協調制御装置16aは、上述した実施形態の協調制御装置16に対応する制御装置である。協調制御装置16aは、上述したプロセッサ161、メモリ142に加えて、通信インタフェース165を備えている。
【0114】
通信インタフェース165は、第1接続部及び第2接続部の一例である。通信インタフェース165は、通信インタフェース146と同様の通信規格に準拠した通信インタフェースである。例えば、通信インタフェース165が、有線の通信インタフェースである場合、協調制御装置16aは、ロボット10aに着脱自在な形態で実装される。また、通信インタフェース165が、無線の通信インタフェースである場合、協調制御装置16aは、無線ネットワーク等を介して遠隔でロボット10aに接続されることになる。後者の場合、協調制御装置16aは、複数台のロボット10aを統括的に管理するサーバー装置等としてもよい。
【0115】
また、本変形例の構成では、信号生成部1611及び遅延加算部1612の機能部を、ロボット制御装置14aが備えてもよいし、協調制御装置16aが備えてもよい。
【0116】
前者の場合、ロボット制御装置14aのプロセッサ141が、信号生成部1611として機能することで、上述した送信信号を生成し、センサインタフェース145に接続されたセンサ部15に対し、生成した送信信号を供給する。また、プロセッサ141は、遅延加算部1612として機能することで、センサ部15で受信された受信信号に基づき上述の遅延加算処理を実行し、その処理結果を、通信インタフェースを介して協調制御装置16aに送信する。
【0117】
後者の場合、協調制御装置16aの信号生成部1611は、上述した送信信号を生成し、生成した送信信号を、通信インタフェース165を介してロボット制御装置14aに送信する。ロボット制御装置14aのプロセッサ141は、協調制御装置16から送信された送信信号を、センサインタフェース145に接続されたセンサ部15に供給する。また、ロボット制御装置14aのプロセッサ141は、センサ部15で受信された受信信号を、通信インタフェースを介して協調制御装置16aに送信する。そして、協調制御装置16aの遅延加算部1612は、ロボット制御装置14aから送信された受信信号に基づき、遅延加算処理を実行する。
【0118】
なお、協調制御装置16aでは、遅延加算処理の処理結果に基づき、位置検出部1613、速度検出部1614、判定部1615及びロボット動作制御部1616が動作することで、上述した動作指示情報が生成される。そして、協調制御装置16からロボット制御装置14aに動作指示情報が提供されることで、回避対象物に対する回避動作がロボット10aで実行される。
【0119】
このような構成とすることで、上述の実施形態と同様の効果を奏することができるため、上述の実施形態と同様に動体物である作業員Hの検出と、作業員Hとの接触回避を効率的に行うことができる。
【0120】
(変形例2)
上述の実施形態では、協調制御装置16は、ロボット10が動体物である物体と接触する可能性のある場合に、その動体物との接触を回避する動作をロボット10に実行させる形態を説明した。しかしながらこの形態に限らず、協調制御装置16は、接触の可能性がない動体物についても、接触を回避する動作をロボット10に実行させてもよい。
【0121】
例えば、ロボット動作制御部1616は、判定部1615で動体物と判定された場合、ロボット10の速度を所定量減速させる等することで、接触を回避する動作をロボット10に実行させてもよい。
【0122】
また、上述の実施形態では、動体物についてのみ接触回避の動作をロボット10に行わせるものとしたが、これに限らず、例えば公知の技術等を用いることで、静止物に対する接触回避の動作をロボット10に行わせてもよい。
【0123】
(変形例3)
上述の実施形態では、ロボット10を自動搬送車としたが、ロボット10は、移動可能な構成であれば、この形態に限定されないものとする。例えば、ロボット10は、3次元方向に移動可能なアームを有する、商品の組み立てを行うアームロボット等であってもよい。
【0124】
以上、本発明のいくつかの実施形態(変形例)を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0125】
1 ロボットシステム
10、10a ロボット
11 本体部
12 車輪
13 駆動機構
14、14a ロボット制御装置
15 センサ部
151 超音波センサ
16、16a 協調制御装置
161 プロセッサ
162 メモリ
163 センサインタフェース
164 通信インタフェース
165 通信インタフェース
1611 信号生成部
1612 遅延加算部
1613 位置検出部
1614 速度検出部
1615 判定部
1616 ロボット動作制御部
W、W1、W2 ワーク
H 作業員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10