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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】虫類特定方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240502BHJP
   G06T 7/10 20170101ALI20240502BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
G06T7/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020132487
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029248
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 文
(72)【発明者】
【氏名】宮田 弘樹
【審査官】小池 正彦
(56)【参考文献】
【文献】特許第6313886(JP,B1)
【文献】特開2014-142833(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1334858(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫類の翅を表す3次元データを取得し、
取得された前記3次元データから複数の屈曲点を抽出し、
抽出された前記複数の屈曲点に基づいて、複数のポリゴンを生成し、
生成された前記複数のポリゴンに基づいて、虫類の翅脈を含む2次元画像である翅脈画像を生成し、
虫類の種類と虫類の翅脈を表す画像とが関連付けられた複数のデータが格納されたデータベース又は前記複数のデータから予め学習された学習済みモデルであって、かつ前記翅脈画像から該翅脈画像に写る虫類の種類を特定するための学習済みモデルを用いて、生成された前記翅脈画像に対応する、虫類の種類を特定する、
処理をコンピュータが実行する虫類特定方法。
【請求項2】
虫類の翅を表す3次元データを取得し、
取得された前記3次元データから、翅のアウトライン及び翅脈を含むポリラインデータを抽出し、
抽出された前記ポリラインデータから抽出される特徴量に基づいて、虫類の種類と虫類の翅脈を表す特徴量とが関連付けられた複数のデータが格納されたデータベース又は前記複数のデータから予め学習された学習済みモデルであって、かつ前記特徴量から虫類の種類を特定するための学習済みモデルを用いて、取得した前記3次元データに対応する、虫類の種類を特定する、
処理をコンピュータが実行する虫類特定方法。
【請求項3】
前記翅脈画像を生成する際に、
虫類の翅脈に関する正解データの特徴量から導かれる予め定められたルールを参照することにより、前記虫類の翅の重なり又は折れ曲がりが解消されるように、前記翅脈画像を生成する、
請求項1に記載の虫類特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虫類特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、捕獲虫類の同定方法が知られている(例えば、特許文献1)。この捕獲虫類の同定方法は、虫類を捕獲した捕虫装置の粘着シートの画像を読み込む。そして、捕獲虫類の同定方法は、虫領域から少なくとも体領域、脚領域及び翅領域を抽出し、抽出された体領域から体長、体幅及び体長と体幅の比を算出し、脚領域から脚長及び脚長と体長の比を算出し、また、翅領域から翅面積及び翅面積と体面積の比を算出して形態的特徴のメルクマールデータを取得する。そして、捕獲虫類の同定方法は、取得されたメルクマールデータを、予め虫ごとに設定されて記憶されている標準メルクマールデータと照合することにより当該虫類を同定する。
【0003】
また、虫の数を計数する画像処理装置が知られている(例えば、特許文献2)。この画像処理装置は、対象画像の解像度が高い場合は、特徴量を用いた処理を行い、対象画像の解像度が低い場合は、テンプレートマッチングを用いた処理を行うことにより、虫の数を計数する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5690856号公報
【文献】特許5812321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、虫類の翅脈に関する情報は、虫類の種類を特定するのに有用な情報である。
【0006】
上記特許文献1の技術は、虫類の翅領域を画像処理によって抽出するものの、翅領域の面積等を用いており翅脈の情報を用いるものではない。また、上記特許文献2の技術も翅脈の情報を用いるものではない。
【0007】
このため、上記特許文献1,2の技術は、虫類の翅脈に関する情報を用いて虫類の種類を特定することができない、という課題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みて成されたものであり、虫類の翅脈に関する情報を用いて虫類の種類を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第1の虫類特定方法は、虫類の翅を表す3次元データを取得し、取得された前記3次元データから複数の屈曲点を抽出し、抽出された前記複数の屈曲点に基づいて、複数のポリゴンを生成し、生成された前記複数のポリゴンに基づいて、虫類の翅脈を含む2次元画像である翅脈画像を生成し、虫類の種類と虫類の翅脈を表す画像とが関連付けられた複数のデータが格納されたデータベース又は前記複数のデータから予め学習された学習済みモデルであって、かつ前記翅脈画像から該翅脈画像に写る虫類の種類を特定するための学習済みモデルを用いて、生成された前記翅脈画像に対応する、虫類の種類を特定する、処理をコンピュータが実行する虫類特定方法である。本発明に係る虫類特定方法によれば、虫類の翅脈に関する情報を用いて虫類の種類を特定することができる。
【0010】
また、本発明に係る第2の虫類特定方法は、虫類の翅を表す3次元データを取得し、取得された前記3次元データから、翅のアウトライン及び翅脈を含むポリラインデータを抽出し、抽出された前記ポリラインデータから抽出される特徴量に基づいて、虫類の種類と虫類の翅脈を表す特徴量とが関連付けられた複数のデータが格納されたデータベース又は前記複数のデータから予め学習された学習済みモデルであって、かつ前記特徴量から虫類の種類を特定するための学習済みモデルを用いて、取得した前記3次元データに対応する、虫類の種類を特定する、処理をコンピュータが実行する虫類特定方法である。本発明に係る虫類特定方法によれば、虫類の翅脈に関する情報を用いて虫類の種類を特定することができる。
【0011】
また、本発明に係る虫類特定方法は、前記翅脈画像を生成する際に、虫類の翅脈に関する正解データの特徴量から導かれる予め定められたルールを参照することにより、前記虫類の翅の重なり又は折れ曲がりが解消されるように、前記翅脈画像を生成するようにすることができる。これにより、虫類の種類を特定するための翅脈画像を適切に生成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、虫類の翅脈に関する情報を用いて虫類の種類を特定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る画像処理システムを示すブロック図である。
図2】カメラによる粘着紙の画像の撮像を説明するための図である。
図3】虫類の翅の部分を表す領域の抽出を説明するための図である。
図4】虫類の翅を表す3次元データの生成を説明するための図である。
図5】屈曲点の抽出とポリゴンの生成とを説明するための図である。
図6】虫類の翅脈に関する正解データの特徴量から導かれる予め定められたルールを説明するための図である。
図7】ルールを考慮した翅脈画像の生成を説明するための図である。
図8】データベースに格納されるデータを説明するための図である。
図9A】虫類の種類の特定を説明するための図である。
図9B】基本翅脈画像と各虫類の翅脈画像とを説明するための図である。
図10】虫類の翅の特徴量の一例を示す図である。
図11】第1実施形態に係る画像処理システムの虫類特定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図12】第2実施形態に係る画像処理システムを示すブロック図である。
図13】ポリラインデータの抽出を説明するための図である。
図14】第2実施形態に係る画像処理システムの虫類特定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図15】虫類の種類を特定する際に用いる学習済みモデルの一例を示す図である。
図16】特徴量の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
[第1実施形態]
【0016】
<本実施形態の画像処理システムの構成>
【0017】
図1は、第1実施形態に係る画像処理システム10の構成の一例を示すブロック図である。画像処理システム10は、機能的には、図1に示されるように、カメラ12と、コンピュータ14と、表示部16とを含んだ構成で表すことができる。
【0018】
カメラ12は、虫類が張り付いている粘着紙の画像を撮像する。
【0019】
図2に、カメラ12による粘着紙の画像の撮像を説明するための図を示す。図2に示されるように、粘着紙Aには虫類が張り付いている。本実施形態のカメラ12は、この粘着紙Aに張り付いている虫類を表す画像Imを撮像する。
【0020】
なお、本実施形態のカメラ12は、ステレオカメラ又は可動式カメラ等である。カメラ12が可動式カメラである場合には、複数の異なる方向から粘着紙Aに張り付いている虫類の画像が撮像される。このため、カメラ12によって撮像された画像に基づいて、当該画像に写る虫類の3次元データを生成することが可能である。
【0021】
コンピュータ14は、CPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ、及びネットワークインタフェース等を含んで構成されている。コンピュータ14は、機能的には、図1に示すように、画像記憶部20と、画像処理部22と、3次元データ取得部24と、屈曲点抽出部26と、ポリゴン生成部28と、翅脈ルール記憶部30と、翅脈画像生成部32と、データベース34と、虫類特定部36とを備えている。
【0022】
画像記憶部20には、カメラ12によって撮像された虫類を表す画像が格納される。
【0023】
画像処理部22は、画像記憶部20に格納された虫類を表す画像から、その虫類の翅の部分を表す領域(以下、単に「翅領域」と称する。)を検出する。
【0024】
図3に、虫類の翅の部分が検出される処理を説明するための図を示す。図3に示されるように、画像処理部22は、既知のセグメンテーションアルゴリズムを用いて、粘着紙の画像から虫類の翅領域を検出する。例えば、画像処理部22は、既知の機械学習アルゴリズムによって予め生成された翅領域検出用の学習済みモデルを用いて、虫類を表す画像からその虫類の翅領域を検出する。
【0025】
3次元データ取得部24は、画像処理部22により検出された虫類の翅領域に対応する、画像記憶部20に格納された虫類の画像を用いて、虫類の翅を表す3次元データを取得する。
【0026】
粘着紙に張り付いている虫類の翅は歪んでいる又は折り重なっていることが多い。このため、歪んでいる翅の部分の画像又は翅が折り重なっている画像を用いて虫類の種類を同定したとしても、その精度は低い。
【0027】
そこで、本実施形態の画像処理システム10では、虫類の翅を表す3次元データを生成し、その3次元データを用いて翅脈の情報である2次元画像を生成し、その2次元画像を用いて虫類の種類を特定する。3次元データには、翅の高さ情報が含まれている。このため、本実施形態の画像処理システム10は、3次元データから2次元画像を生成する際に、3次元データの翅の歪み及び折れ曲がりが解消されるように2次元画像を生成する。これにより、翅が歪んでいる部分又は翅が折り重なっている部分が解消されるため、翅脈から虫類の種類を精度良く特定することができる。
【0028】
図4に、虫類の翅を表す3次元データの生成を説明するための図を示す。図4に示されるように、3次元データ取得部24は、既知の3次元画像処理アルゴリズムを用いて、虫類の翅を表す3次元データTを生成する。なお、3次元データ取得部24は、以下の参考情報に開示されている技術を用いて、虫類の翅を表す3次元データを生成するようにしてもよい。
【0029】
参考情報:「デジタル顕微鏡3D表示機能」、[令和2年3月23日検索]、インターネット<https://www.keyence.co.jp/ss/products/microscope/beginner/technology/3d-displayfunction.jsp>
【0030】
なお、後述する各処理によって、図4に示されるような3次元データTから翅脈画像Wが生成される。
【0031】
屈曲点抽出部26は、3次元データ取得部24により取得された3次元データから複数の屈曲点を抽出する。
【0032】
図5に、屈曲点の抽出とポリゴンの生成とを説明するための図を示す。図5に示されるように、例えば、屈曲点抽出部26は、既知の3次元画像処理アルゴリズムを用いて、虫類の翅を表す3次元データTから複数の屈曲点P,・・・,Pを抽出する。例えば、屈曲点抽出部26は、3次元データTの屈曲線を抽出し、それらの屈曲線の交点を屈曲点として抽出する。
【0033】
ポリゴン生成部28は、屈曲点抽出部26により抽出された複数の屈曲点に基づいて、複数のポリゴンを生成する。例えば、ポリゴン生成部28は、上記図5に示されるように、既知の画像処理アルゴリズムを用いて、複数のポリゴンDを生成する。なお、図5に示されるような、複数のポリゴンDに基づいて翅脈画像Wが生成される。なお、ポリゴン生成部28は、複数のポリゴンに対して所定の角度補正を行った後に、翅脈画像Wを生成するようにしてもよい。
【0034】
翅脈ルール記憶部30には、虫類の翅脈に関する正解データの特徴量から導かれる予め定められたルールが格納されている。例えば、ルールは、図6に示されるようなテーブル形式で翅脈ルール記憶部30に格納される。
【0035】
図6に示されるテーブルR1には、複数のルールZ1,Z2・・・Znが格納される。例えば、「翅室dがあり、前縁脈Cは翅端で終わる」といった虫類の翅脈に関する正解データの特徴量から導かれるルールがテーブルに格納される。または、「翅室bmは先端横脈bm-cuで閉じられ、中脈Mにより常に翅室brと分かれている」といったルールがテーブルに格納される。
【0036】
翅脈画像生成部32は、ポリゴン生成部28により生成された複数のポリゴンに基づいて、虫類の翅脈を含む2次元画像である翅脈画像を生成する。なお、翅脈画像生成部32は、翅脈画像を生成する際に、翅脈ルール記憶部30に格納されたルールを参照することにより、虫類の翅の重なり又は折れ曲がりが解消されるように翅脈画像を生成する。
【0037】
具体的には、例えば、翅脈画像生成部32は翅脈画像を生成する際に、図7に示されるように、画像ImのAt内のポリゴンにおいて、線lと線lとが交差する場合(線lを構成する各画素と線lを構成する各画素のうち、画像上の位置が同一である画素が存在する場合)には、それらの線l,lは翅脈ではなく翅が重なっており、l,lは翅の外形線であると判定して、線l,lが重ならないように、複数のポリゴンから翅脈画像Wを再構成する。
【0038】
また、例えば、翅脈画像生成部32は、ポリゴン内に含まれる、ある翅脈を表す線lの湾曲する角度がX度より小さい場合(図示省略)には、線lが表す翅脈は折れ曲がった状態であるものと判定して、線lが折れ曲がらないように、複数のポリゴンから翅脈画像Wを再構成する。
【0039】
このようにして、翅脈画像生成部32は、翅脈ルール記憶部30に格納された各ルールが満たされるように、複数のポリゴンから翅脈画像を生成する。
【0040】
データベース34には、虫類の種類とその虫類の翅脈を表す画像である基本翅脈画像とが関連付けられた複数のデータが格納される。例えば、データは、図8に示されるようなテーブル形式でデータベース34に格納される。なお、基本翅脈画像とは、該当する虫類の種類の典型的な翅脈画像であり、この基本翅脈画像を元に虫類の種類の特定が行われる。
【0041】
虫類特定部36は、データベース34に格納されている複数のデータを参照して、翅脈画像生成部32により生成された翅脈画像に対応する、虫類の種類を特定する。
【0042】
具体的には、虫類特定部36は、翅脈画像生成部32により生成された翅脈画像から所定の特徴量を抽出する。そして、虫類特定部36は、翅脈画像生成部32により生成された翅脈画像の特徴量と、データベース34に格納されている基本翅脈画像及びデータベース34に格納されている各虫類の正解データの翅脈画像から抽出される特徴量とを比較して、翅脈画像生成部32により生成された翅脈画像がどの虫類の種類に該当するかを特定する。
【0043】
図9Aに、虫類の種類の特定を説明するための図を示す。図9Aに示されるように、虫類特定部36は、翅脈画像生成部32により生成された翅脈画像Imの翅の室r1,d,m2の位置、形状、面積、又は縦横比等を特徴量として抽出する。また、虫類特定部36は、基本翅脈画像ImK1から同様の特徴量を抽出する。更に、虫類特定部36は、各虫類の正解の翅脈画像から特徴量を抽出する。
【0044】
図9Bに、基本翅脈画像と各虫類の正解データの翅脈画像とを説明するための図を示す。図9Bに示されるように、基本翅脈画像ImK1以外にも各虫類の翅脈画像Im,X、Im,Y、Im,Zがデータベース34には格納されている。例えば、翅脈画像Im,Xは虫類Xの正解の翅脈画像であり、翅脈画像Im,Yは虫類Yの正解の翅脈画像であり、翅脈画像Im,Zは虫類Zの正解の翅脈画像である。
【0045】
このため、虫類特定部36は、基本翅脈画像ImK1から特徴量を抽出すると共に、各虫類の正解の翅脈画像Im,X、Im,Y、Im,Zからも特徴量を抽出する。
【0046】
そして、虫類特定部36は、翅脈画像Imの特徴量と、データベース34に格納されている基本翅脈画像ImK1の特徴量及び各虫類の正解の翅脈画像Im,X、Im,Y、Im,Zの特徴量とを比較し、翅脈画像Imに対応する虫類の種類を特定する。
【0047】
なお、図9Aに示されるように、特徴量としては、翅脈画像Imを2値化した後に抽出される翅脈の位置、形状、長さ、又は脈接点等を用いることもできる。この場合には、虫類特定部36は、翅脈画像Imの特徴量と、データベース34に格納されている基本翅脈画像ImK2の特徴量及び各虫類の正解の翅脈画像(図示省略)の特徴量とを比較し、翅脈画像Imに対応する虫類の種類を特定する。
【0048】
また、例えば、図10に示されるように、翅脈画像から複数の特徴量(A,h,bM,Sc,r・m,Rs,C,CuA,CuA,M,M,R)が抽出された場合、MとMの湾曲度合いを表す特徴量Fのみでクロバネキノコバエと特定することもできる。
【0049】
虫類特定部36は、例えば、翅脈画像生成部32により生成された翅脈画像に対応する虫類の種類の候補を確率と共に出力する。例えば、虫類特定部36は、ユスリカ科93%、キノコバエ科5%、タマバエ科2%といった情報を出力する。または、虫類特定部36は、該当する確率が所定値以上の虫類の種類を出力するようにしてもよい。
【0050】
表示部16は、虫類特定部36によって出力された情報を表示する。表示部16は、例えば、ディスプレイ等によって実現される。ユーザは、表示部16に表示された情報を確認し、粘着紙に張り付いている虫類の種類が何であるのかを把握する。
【0051】
<画像処理システムの作用>
【0052】
次に、図11を参照して、第1実施形態の画像処理システム10の作用を説明する。画像処理システム10のコンピュータ14は、カメラ12により画像を受け付けると、画像記憶部20に格納する。そして、画像処理システム10のコンピュータ14は、虫類の種類の特定処理開始の指示信号を受け付けると、図11に示す虫類特定処理ルーチンを実行する。
【0053】
<虫類特定処理ルーチン>
【0054】
ステップS100において、画像処理部22は、画像記憶部20に格納された虫類を表す画像を読み出し、その画像から虫類の翅領域を検出する。
【0055】
ステップS102において、3次元データ取得部24は、上記ステップS100で検出された虫類の翅領域の情報を用いて、虫類の翅を表す3次元データを取得する。
【0056】
ステップS104において、屈曲点抽出部26は、上記ステップS102で取得された3次元データから複数の屈曲点を抽出する。
【0057】
ステップS106において、ポリゴン生成部28は、上記ステップS104で抽出された複数の屈曲点に基づいて、複数のポリゴンを生成する。
【0058】
ステップS108において、翅脈画像生成部32は、上記ステップS106で生成された複数のポリゴンに基づいて、虫類の翅の重なり又は折れ曲がりが解消されるように、虫類の翅脈を含む2次元画像である翅脈画像を生成する。
【0059】
ステップS110において、虫類特定部36は、データベース34に格納されている複数のデータを参照して、上記ステップS108で生成された翅脈画像に対応する、虫類の種類を特定する。
【0060】
ステップS112において、虫類特定部36は、上記ステップS110で特定された虫類の種類を結果として出力する。
【0061】
表示部16には、コンピュータ14から出力された情報が表示される。ユーザは、表示部16に表示された情報を確認し、粘着紙に張り付いている虫類の種類が何であるのかを把握する。
【0062】
以上詳細に説明したように、第1実施形態の画像処理システムにおいて実行される虫類特定方法は、虫類を表す画像から虫類の翅領域を検出する。そして、虫類特定方法は、虫類を表す画像から虫類の翅を表す3次元データを取得し、取得された3次元データから複数の屈曲点を抽出する。そして、虫類特定方法は、抽出された複数の屈曲点に基づいて、複数のポリゴンを生成する。虫類特定方法は、生成された複数のポリゴンに基づいて、虫類の翅脈を含む2次元画像である翅脈画像を生成する。そして、虫類特定方法は、虫類の種類と虫類の翅脈を表す画像とが関連付けられた複数のデータが格納されたデータベースを参照して、生成された翅脈画像に対応する、虫類の種類を特定する。これにより、虫類の翅脈に関する情報を用いて虫類の種類を特定することができる。
【0063】
より具体的には、本実施形態の虫類特定方法は、2次元画像上では歪んでいる又は折り重なっている翅領域を3次元データとして取得し、その3次元データから2次元画像である翅脈画像を生成する。そして、虫類特定方法は、その翅脈画像を用いて虫類の種類を特定する。これにより、虫類の翅脈に関する情報を用いて虫類の種類を精度良く特定することができる。
【0064】
また、専門の知識がないユーザであっても虫類の詳細な分類を行うことができ、手間及び時間を削減した有害生物モニタリング調査が可能となる。更に、従来のシステムよりも高精度の分析が行えるため、虫類の特定と発生源又は誘引源の特定に貢献することができる。
【0065】
[第2実施形態]
【0066】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、3次元データから2次元画像である翅脈画像の生成方法が第1実施形態と異なる。第2実施形態では、3次元データから翅のアウトライン及び翅脈をポリラインデータとして抽出し、そのポリラインデータを用いて2次元画像を生成する。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
図12は、第2実施形態に係る画像処理システム210の構成の一例を示すブロック図である。第2実施形態に係る画像処理システム210のコンピュータ214は、機能的には、図12に示すように、画像記憶部20と、画像処理部22と、3次元データ取得部24と、ポリラインデータ抽出部226と、翅脈ルール記憶部30と、翅脈画像生成部232と、データベース34と、虫類特定部36とを備えている。
【0068】
ポリラインデータ抽出部226は、3次元データ取得部24により取得された3次元データから、翅のアウトライン及び翅脈を含むポリラインデータを抽出する。
【0069】
図13に、ポリラインデータの抽出を説明するための図を示す。図13に示されるように、例えば、ポリラインデータ抽出部226は、3次元データに対して既知のエッジ抽出処理を行い、翅のアウトライン及び翅脈を含むポリラインデータEを抽出する。なお、この場合には、図13に示されるように、交点P・・・Pが抽出されるため、翅脈の特徴量としての長さL,L等も同時に抽出することも可能である。これらの特徴量は、虫類特定部36において用いられる。
【0070】
翅脈画像生成部232は、ポリラインデータ抽出部226により抽出されたポリラインデータに基づいて、虫類の翅脈を含む2次元画像である翅脈画像を生成する。例えば、翅脈画像生成部232は、3次元のポリラインデータをある2次元平面に投影することにより、2次元画像である翅脈画像を生成する。
【0071】
<画像処理システムの作用>
【0072】
次に、図14を参照して、第2実施形態の画像処理システム210の作用を説明する。画像処理システム210のコンピュータ214は、カメラ12により画像を受け付けると、画像記憶部20に格納する。そして、画像処理システム210のコンピュータ214は、虫類の種類の特定処理開始の指示信号を受け付けると、図14に示す虫類特定処理ルーチンを実行する。
【0073】
<虫類特定処理ルーチン>
【0074】
ステップS100~S102及びステップS110~S112は、第1実施形態と同様に実行される。
【0075】
ステップS204において、ポリラインデータ抽出部226は、ステップS102で取得された3次元データから、翅のアウトライン及び翅脈を含むポリラインデータを抽出する。
【0076】
ステップS208において、翅脈画像生成部32は、上記ステップS204で生成されたポリラインデータに基づいて、虫類の翅脈を含む2次元画像である翅脈画像を生成する。
【0077】
なお、第2実施形態に係る画像処理システム210の他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
以上詳細に説明したように、第2実施形態の画像処理システムにおける虫類特定方法は、虫類を表す画像から虫類の翅の領域を検出する。そして、虫類特定方法は、虫類を表す画像から虫類の翅を表す3次元データを取得し、取得された3次元データから翅のアウトライン及び翅脈を含むポリラインデータを抽出する。そして、虫類特定方法は、抽出されたポリラインデータに基づいて、虫類の翅脈を含む2次元画像である翅脈画像を生成する。そして、虫類特定方法は、虫類の種類と虫類の翅脈を表す画像とが関連付けられた複数のデータが格納されたデータベースを参照して、生成された翅脈画像に対応する、虫類の種類を特定する。これにより、虫類の翅脈に関する情報を用いて虫類の種類を特定することができる。
【0079】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0080】
例えば、上記実施形態では、虫類の種類と虫類の翅脈を表す画像とが関連付けられた複数のデータが格納されたデータベースを参照して、生成された翅脈画像に対応する、虫類の種類を特定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、翅脈画像から該翅脈画像に写る虫類の種類を特定するための学習済みモデルを用いて、虫類の種類を特定するようにしてもよい。この場合には、例えば、上記実施形態のデータベース34に格納された複数のデータを学習用データとして用いて、学習済みモデルが予め学習される。図15に、脈画像から該翅脈画像に写る虫類の種類を特定するための学習済みモデルの一例を表す図を示す。
【0081】
例えば、図15に示されるように、ニューラルネットワーク等の学習済みモデルに翅脈画像が入力されると、その翅脈画像が該当する虫類の種類の確率が出力される。例えば、学習済みモデルは、ユスリカ科0.8、キノコバエ科0.1といった確率情報を出力する。このため、虫類特定部36は、それらの確率情報を用いて、翅脈画像がどの種類に該当するのかを特定するようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、3次元データから翅脈画像を生成する際に、ポリゴンデータ又はポリラインデータを用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、以下の参考情報3,4に開示されているような技術を用いるようにしてもよい。
【0083】
参考情報3:[令和2年3月23日検索]、インターネット<https://tamasoft.co.jp/pepakura/productinfo/index.html>
参考情報4:[令和2年3月23日検索]、インターネット<https://www.cadmac.net/products/seg5>
【0084】
また、上記実施形態では、翅脈画像生成部32は、翅脈画像を生成する際に、虫類の翅脈に関する予め定められたルールが満たされるように翅脈画像を生成する場合を例に説明したが、一旦翅脈画像を生成した後にその翅脈画像を補正するようにしてもよい。この場合には、例えば、翅脈画像生成部32は、特許第3837710号公報又は特許第4095768号公報に開示されている技術を用いて、一旦生成された翅脈画像を補正するようにしてもよい。更に、翅脈画像生成部32は、ルールが満たされるまで翅脈画像の補正を繰り返すようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、カメラ12によって取得された画像を用いて3次元データを生成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、虫類が張り付いている粘着紙を、CTスキャン、レーザ、パターン光照射、又は共焦点顕微鏡等のセンサによってセンシングし、3次元データを直接取得するようにしてもよい。この場合には、3次元の点群データとして情報が取得される。
【0086】
また、例えば、粘着紙に複数の虫類が付着している場合には、それらの虫類の種類をカウントし、カウントされた値が一定値以上となった場合にアラートを出力するようにしてもよい。
【0087】
また、上記第2実施形態では、ポリラインデータに基づいて、虫類の翅脈を含む2次元画像である翅脈画像を生成し、当該翅脈画像から特徴量を抽出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ポリラインデータから直接特徴量を抽出し、ポリラインデータから抽出される特徴量に基づいて、取得した3次元データに対応する虫類の種類を特定するようにしてもよい。図16に、ポリラインデータから抽出される特徴量の一例を示す。図16に示されるように、ポリラインデータから翅脈の何れの部分に該当するか(外形線,C1,R1,R2等)が判定され、それらの相対長と相対位置とが特徴量として抽出される。そして、ポリラインデータから抽出される特徴量と、データベースに格納されている、虫類の種類と虫類の翅脈を表す特徴量とが比較され虫類の種類が特定される。なお、虫類の種類の特定には、予め学習された学習済みモデルが用いられてもよい。なお、図16に示される特徴量は、上記各実施形態においても用いることが可能な特徴量である。
【0088】
また、上記では本発明に係るプログラムが記憶部(図示省略)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0089】
10,210 画像処理システム
12 カメラ
14,214 コンピュータ
16 表示部
20 画像記憶部
22 画像処理部
24 3次元データ取得部
26 屈曲点抽出部
28 ポリゴン生成部
30 翅脈ルール記憶部
32,232 翅脈画像生成部
34 データベース
36 虫類特定部
226 ポリラインデータ抽出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
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図16