(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ロボットおよびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20240502BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B25J19/00 J
B25J9/06 Z
(21)【出願番号】P 2020133538
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】菊池 健太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健一
(72)【発明者】
【氏名】古谷 幸司
(72)【発明者】
【氏名】田畑 壱
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-055440(JP,A)
【文献】特開2010-162666(JP,A)
【文献】特開昭60-044280(JP,A)
【文献】特開2007-038360(JP,A)
【文献】特開2013-094856(JP,A)
【文献】実開平06-064756(JP,U)
【文献】独国実用新案第202009009334(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に固定される基部と、
前記基部に基端側が支持され、前記設置面に対して垂直な第1軸まわりに旋回する第1アームと、
前記第1アームの先端側に基端側が支持され、前記第1軸と平行な第2軸まわりに旋回する第2アームと、
前記第2アームの先端側に基端側が支持され、前記第2軸と平行な第3軸まわりに回転する第3アームと、
前記第3アームの先端側に基端側が支持され、前記第3軸と垂直な第4軸まわりに旋回する第4アームと、
前記第4アームの先端側に基端側が支持され、前記第4軸と平行な第5軸まわりに旋回する第5アームと、
前記第5アームの先端側に基端側が支持され、前記第5軸と垂直な第6軸まわりに回転する第6アームと、
前記第6アームの先端側に基端側が支持され、前記第6軸と直交する第7軸まわりに旋回する第7アームと、
前記第7アームの先端側に基端側が支持され、前記第7軸と直交する第8軸まわりに回転する第8アームと
、
前記基部の内部と前記第1アームの内部とを前記第1軸まわりで連通させる第1中空部と、
ロボットを駆動するアクチュエータに接続される駆動用ケーブルと、
前記第1アームの内部と前記第2アームとを前記第2軸まわりで連通させる第2中空部と
を備え、
前記第2軸と前記第3軸との軸間距離は、
前記第3軸と前記第4軸との軸間距離よりも大きく、
前記第4軸と前記第5軸との軸間距離は、
前記第5軸と前記第7軸との軸間距離よりも小さく
、
前記第2アームは、
前記第1アームの上面側に配置され、前記第2中空部の上端を底面とする窪みと、前記第2アームの延伸向きに延伸する一対の立壁と、前記一対の立壁をつなぐ立壁と、当該立壁に設けられるコネクタとを有し、前記一対の立壁で前記窪みを挟んだ形状を有しており、
前記駆動用ケーブルは、
前記基部の内部から前記第1中空部を通過して前記第1アームの内部へ配索され、前記第1アームの内部から前記第2中空部および前記第2アームの前記窪みを通過して前記コネクタへ接続され、前記第2アームの内部を通過して前記第3アームへ配索されること
を特徴とするロボット。
【請求項2】
前記第8アームの先端側に接続されるエンドエフェクタとして塗布材料を噴出するガンと、
前記ガンへ前記塗布材料を供給する供給用チューブと
を備え、
前記供給用チューブは、
前記基部の内部から前記第1中空部を通過して前記第1アームの内部へ配索されること
を特徴とする請求項
1に記載のロボット。
【請求項3】
前記第2アームは、
前記第1アームの上面側に配置されており、
前記供給用チューブは、
前記第1アームの内部を通過して前記第2軸寄りの下面側から外部へ出て前記第3軸寄りの下面側から前記第2アームへ配索されること
を特徴とする請求項
2に記載のロボット。
【請求項4】
前記第5アーム、前記第6アーム、前記第7アームおよび前記第8アームは、
前記第6軸と前記第8軸とが重なる姿勢において直線状に連通する第5中空部、第6中空部、第7中空部および第8中空部をそれぞれ有しており、
前記供給用チューブは、
第5中空部、第6中空部、第7中空部および第8中空部を通過するように配索されること
を特徴とする請求項
3に記載のロボット。
【請求項5】
前記第4軸および前記第5軸を含む平面よりも前記第7軸が上方となる姿勢で作業対象となるワークの下面側に対する作業を行うこと
を特徴とする請求項
4に記載のロボット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載のロボットと、
前記ロボットの動作を制御するコントローラと
を備えることを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、ロボットおよびロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の関節部をそれぞれ駆動して動作するロボットが知られている。かかるロボットの先端には、溶接や把持といった用途にあわせたエンドエフェクタが取り付けられ、ワークの加工や移動といった様々な作業が行われる。
【0003】
また、上記したロボットを走行台車に載置することで、ロボットを所定の走行向きへ走行させつつ、作業を行わせるロボットシステムも提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のロボットシステムでは、ロボットが載置された走行台車がレールを走行するため、レールから離れた場所ではロボットが作業することはできない。このため、水平向きにおける作業領域を広げようとすると、たとえば、複数の走行レールを平行に設けるなどしてロボットの総数を増やす必要がありコストが増加する。
【0006】
実施形態の一態様は、水平向きにおける作業領域を拡大することができるロボットおよびロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係るロボットは、基部と、第1アームと、第2アームと、第3アームと、第4アームと、第5アームと、第6アームと、第7アームと、第8アームと、第1中空部と、駆動用ケーブルと、第2中空部とを備える。基部は、設置面に固定される。第1アームは、前記基部に基端側が支持され、前記設置面に対して垂直な第1軸まわりに旋回する。第2アームは、前記第1アームの先端側に基端側が支持され、前記第1軸と平行な第2軸まわりに旋回する。第3アームは、前記第2アームの先端側に基端側が支持され、前記第2軸と平行な第3軸まわりに回転する。第4アームは、前記第3アームの先端側に基端側が支持され、前記第3軸と垂直な第4軸まわりに旋回する。第5アームは、前記第4アームの先端側に基端側が支持され、前記第4軸と平行な第5軸まわりに旋回する。第6アームは、前記第5アームの先端側に基端側が支持され、前記第5軸と垂直な第6軸まわりに回転する。第7アームは、前記第6アームの先端側に基端側が支持され、前記第6軸と直交する第7軸まわりに旋回する。第8アームは、前記第7アームの先端側に基端側が支持され、前記第7軸と直交する第8軸まわりに回転する。第1中空部は、前記基部の内部と前記第1アームの内部とを前記第1軸まわりで連通させる。駆動用ケーブルは、ロボットを駆動するアクチュエータに接続される。第2中空部は、前記第1アームの内部と前記第2アームとを前記第2軸まわりで連通させる。前記第2軸と前記第3軸との軸間距離は、前記第3軸と前記第4軸との軸間距離よりも大きく、前記第4軸と前記第5軸との軸間距離は、前記第5軸と前記第7軸との軸間距離よりも小さい。前記第2アームは、前記第1アームの上面側に配置され、前記第2中空部の上端を底面とする窪みと、前記第2アームの延伸向きに延伸する一対の立壁と、前記一対の立壁をつなぐ立壁と、当該立壁に設けられるコネクタとを有し、前記一対の立壁で前記窪みを挟んだ形状を有している。前記駆動用ケーブルは、前記基部の内部から前記第1中空部を通過して前記第1アームの内部へ配索され、前記第1アームの内部から前記第2中空部および前記第2アームの前記窪みを通過して前記コネクタへ接続され、前記第2アームの内部を通過して前記第3アームへ配索される。
【0008】
実施形態の他の態様に係るロボットシステムは、上記したロボットと、コントローラとを備える。コントローラは、前記ロボットの動作を制御する。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、水平向きにおける作業領域を拡大することができるロボットおよびロボットシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るロボットの概要を示す側面模式図である。
【
図3】
図3は、ロボットシステムの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、駆動用ケーブルの配置例を示す側面模式図である。
【
図5】
図5は、供給用チューブの配置例を示す側面模式図である。
【
図6】
図6は、第5アーム~第8アームの連通中空部を示す側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するロボットおよびロボットシステムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下では、ワークの下方に配置されたロボットが、ワークの下面側からシール材などの塗布材料を塗布するシール作業を行う場合について主に説明する。しかしながら、作業内容は、シール材の塗布に限らず、ネジ締め作業や、バッテリなどの部材を取り付ける作業であってもよい。
【0012】
また、以下に示す実施形態では、「直交」、「垂直」、「平行」、「水平」、「鉛直」といった表現を用いるが、厳密にこれらの状態を満たすことを要しない。すなわち、上記した各表現は、製造精度、設置精度、処理精度、検出精度などのずれを許容するものとする。
【0013】
まず、実施形態に係るロボット10について
図1を用いて説明する。
図1は、実施形態に係るロボット10の概要を示す側面模式図である。なお、
図1は、ロボット10を側方からみた模式図に相当する。また、
図1では、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きが正方向であるZ軸、水平向きのX軸およびY軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、以下の説明で用いる他の図面においても示す場合がある。
【0014】
図1に示すように、ロボット10は、ワークWの下方(Z軸負方向側)に設置されており、ワークWの下面側(Z軸負方向側)に対して作業を行う。また、ロボット10は、設置面ISに固定されているので、走行を伴うロボットに比べて設置作業が容易である。これは、走行を伴うロボットではレールや走行台がロボットとは別体であるため水平出しなどの調整作業が複雑であるのに対し、ロボット10の場合には基部Bを接地面ISに固定するだけで済むからである。
【0015】
図1に示したように、ロボット10は、基部Bと、第1アーム11と、第2アーム12と、第3アーム13と、第4アーム14と、第5アーム15と、第6アーム16と、第7アーム17と、第8アーム18とを備える。各アーム(第1アーム11~第8アーム18)は、各軸(第1軸A1~第8軸A8)まわりに旋回または回転する。このように、ロボット10は、いわゆる8軸ロボットである。
【0016】
ここで、「旋回」とは、隣り合うアームのなす角度を変化させる動作を指し、「回転」とは、隣り合うアームのなす角度を変化させずに相対的に回転させる動作を指す。なお、「旋回」とは、回転軸まわりにアームを振り回す動作を指し、「回転」とは、アームの延伸向きが軸に沿うようにアームを回す動作を指すともいえる。
【0017】
基部Bは、床などの設置面ISに固定され、第1アーム11を旋回可能に支持する。第1アーム11は、基部Bに基端側が支持され、設置面ISに対して垂直な第1軸A1まわりに旋回する。第2アーム12は、第1アーム11の先端側に基端側が支持され、第1軸A1と平行な第2軸A2まわりに旋回する。第3アーム13は、第2アーム12の先端側に基端側が支持され、第2軸A2と平行な第3軸A3まわりに回転する。ここで、第3アーム13に設けられる第4軸A4(第4アーム14の旋回軸)は、第3軸A3からシフトしており(水平向きにずれており)、第3アーム13の延伸向きは、第3軸A3の向きとは平行ではない。したがって、第3アーム13は、第3軸A3まわりに旋回するともいえる。
【0018】
第4アーム14は、第3アーム13の先端側に基端側が支持され、第3軸A3と垂直な第4軸A4まわりに旋回する。第5アーム15は、第4アーム14の先端側に基端側が支持され、第4軸A4と平行な第5軸A5まわりに旋回する。第6アーム16は、第5アーム15の先端側に基端側が支持され、第5軸A5と垂直な第6軸A6まわりに回転する。第7アーム17は、第6アーム16の先端側に基端側が支持され、第6軸A6と直交する第7軸A7まわりに旋回する。第8アーム18は、第7アーム17の先端側に基端側が支持され、第7軸A7と直交する第8軸A8まわりに回転する。
【0019】
このように、ロボット10は、水平多関節に相当する第1アーム11および第2アーム12に対し、垂直多関節に相当する第3アーム13~第8アーム18を接続した構成を有する。なお、第3アーム13の回転軸である第3軸A3は、第1アーム11の旋回軸である第1軸A1および第2アーム12の旋回軸である第2軸A2と平行である。したがって、水平多関節に相当する第1アーム11~第3アーム13に対し、垂直多関節に相当する第4アーム14~第8アーム18を接続した構成であるということもできる。
【0020】
また、第8アーム18の先端側には塗布材料を噴出するガンが、エンドエフェクタEEとして着脱可能に接続される。なお、エンドエフェクタEEに塗布材料を供給するチューブやホースの配索については
図5を用いて後述する。また、
図1では、エンドエフェクタEEの一例としてガンを示したが、エンドエフェクタEEは、ネジ締め装置や把持装置などであってもよい。
【0021】
ここで、「垂直」とは、各軸がお互いに垂直だが交わらない、いわゆる「ねじれの位置」の関係を含む。一方、「直交」とは、各軸がお互いに垂直かつ交わることを指す。つまり、「直交」と表現した場合には、「ねじれの位置」の関係を含まない。
【0022】
また、
図1に示したように、第2軸A2と第3軸A3との軸間距離(大きさを「L2」とする)は、第3軸A3と第4軸A4との軸間距離(大きさを「L3」とする)よりも大きい。すなわち、「L2>L3」の関係を有する。このように、「L2>L3」の関係を有する程度に第2アーム12を長くすることで、第3アーム13の水平移動範囲が広くなる。したがって、ワークWに対する作業範囲(XY平面と平行な平面の面積)を拡大することができる。
【0023】
なお、
図1では、第1軸A1と第2軸A2との軸間距離(大きさを「L1」とする)が、「L2」よりも小さく、「L3」よりも大きい場合、すなわち、「L2>L1>L3」の関係を有する場合を示した。しかしながら、これに限らず、「L1=L2>L3」の関係としたり、「L1>L2>L3」の関係としたりすることとしてもよい。
【0024】
また、
図1に示したように、第4軸A4と第5軸A5との軸間距離(大きさを「L4」とする)は、第5軸A5と第7軸A7との軸間距離(大きさを「L5」とする)よりも小さい。すなわち、「L4<L5」の関係を有する。このように、人体に例えるならば、上腕よりも前腕を長くすることで、ロボット10は、いわゆる下肘姿勢を保持したままワークW下面の広範囲に対して作業することができる。したがって、水平向きの作業範囲を拡大することができる。
【0025】
また、
図1に示したように、ロボット10は、第4軸A4および第5軸A5を含む平面P1よりも第7軸A7が上方となる姿勢(下肘姿勢)で作業対象となるワークWの下面側に対する作業を行う。このようにすることで、ロボット10のワークWへの接触を防止しつつワークW下面の広い範囲に渡って作業を行うことができる。
【0026】
なお、
図1では、第4軸A4よりも第5軸A5が下方にある場合を示したが、第5軸A5が第4軸A4よりも上方にあってもよく、第4軸4Aと同じ高さにあってもよい。つまり、ロボット10の作業姿勢は、平面P1よりも第7軸A7が上方にある姿勢であれば足りる。
【0027】
また、
図1では、第8アーム18の回転軸である第8軸A8が鉛直向き(Z軸と平行な向き)で、エンドエフェクタEEであるガンが鉛直上向き(Z軸正方向)に塗布材料を噴出する場合について示した。しかしながら、これに限らず、第8軸A8を鉛直向きからずらして作業を行うこととしてもよい。
【0028】
次に、
図1に示したロボット10を上面視した場合について
図2を用いて説明する。
図2は、ロボット10の上面模式図である。なお、以下の説明では、
図1に示した構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略するか簡単な説明にとどめることとする。
【0029】
図2に示すように、第1軸A1、第2軸A2および第3軸A3は、いずれも鉛直向き(Z軸に沿う向き)であり、お互いに平行である。なお、
図2では、第1軸A1、第2軸A2および第3軸A3が1つの直線上にあるように第1アーム11および第2アーム12を伸ばした姿勢を示している。かかる姿勢で第1アーム11を第1軸A1まわりに旋回させると、第3軸A3の軌跡は、第1軸A1を中心とし、半径が「L1+L2」の円(同図に示した破線の円参照)となる。
【0030】
また、
図2に示したように、第1軸A1、第2軸A2および第3軸A3を通る直線と、第4軸A4とを垂直とする姿勢にすれば、第8軸A8と、第1軸A1との距離を最大にすることができる。つまり、第1軸A1を中心とし、かかる最大距離を半径とする円の範囲でロボット10は作業を行うことができる。
【0031】
また、
図2に示したように、第4軸A4および第5軸A5はお互いに平行である。ここで、
図2では、第7軸A7が第4軸A4および第5軸A5と平行な場合を示しているが、第6アーム16を第6軸A6まわりに回転させると、第7軸A7は、第4軸A4および第5軸A5とは平行とならない。なお、この場合においても、第5軸A5と第7軸A7との軸間距離は変化しない。
【0032】
次に、
図1および
図2に示したロボット10を含むロボットシステム1について
図3を用いて説明する。
図3は、ロボットシステム1の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、ロボットシステム1は、ロボット10と、コントローラ20とを備える。コントローラ20は、ロボット10に接続されている。また、コントローラ20は、制御部21と、記憶部22とを備える。
【0033】
制御部21は、動作制御部21aを備える。記憶部22は、教示情報22aを記憶する。なお、
図3には、説明を簡略化するために、1台のロボット10と1台のコントローラ20とを示したが、1台のコントローラ20に複数台のロボット10を接続することとしてもよい。また、
図3に示した1台のロボット10と1台のコントローラ20との組を複数組設け、各コントローラを束ねる上位のコントローラをさらに設けることとしてもよい。
【0034】
ここで、コントローラ20は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0035】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部21の動作制御部21aとして機能する。また、動作制御部21aをASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0036】
記憶部22は、たとえば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、教示情報22aを記憶することができる。なお、コントローラ20は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。さらに、上記したように、コントローラ20を複数台の相互に通信可能な装置として構成してもよく、上位または下位の装置と通信可能な階層式の装置として構成してもよい。
【0037】
制御部21は、ロボット10の動作制御を行う。なお、コントローラ20が複数台で構成される場合には、制御部21は、コントローラ20間の同期をとる処理を併せて行うこととしてもよい。
【0038】
動作制御部21aは、予め用意された教示情報22aを読み込む。ここで、教示情報22aは、ロボット10へ動作を教示するティーチング段階で作成され、ロボット10の動作経路を規定する「ジョブ」を含んだ情報である。
【0039】
また、動作制御部21aは、読み込んだ教示情報22aに基づいてロボット10を動作させる。さらに、動作制御部21aは、ロボット10の駆動源であるモータ等のアクチュエータにおけるエンコーダ値を用いつつフィードバック制御を行うなどしてロボット10の動作精度を向上させる。
【0040】
次に、ロボット10を駆動するアクチュエータに接続される駆動用ケーブルCの配置例について
図4を用いて説明する。
図4は、駆動用ケーブルCの配置例を示す側面模式図である。なお、
図4では、第4アーム14の先端側以降の図示を省略している。
【0041】
ここで、駆動用ケーブルCは、ロボット10の各アームおよびエンドエフェクタEEを駆動するモータなどの各アクチュエータに対して信号の送受信や給電を行うケーブルに相当する。
【0042】
図4に示すように、ロボット10における基部Bおよび第1アーム11には、第1軸A1に沿う第1中空部S1が設けられる。第1中空部S1は、基部Bの内部と第1アーム11の内部とを第1軸A1まわりで連通させる。なお、
図4に示したように、第1中空部S1は、第1アーム11の上壁を貫通しているが、この点については
図5を用いて後述する。
【0043】
たとえば、第1中空部S1は、第1軸A1を含むように第1軸A1に沿って延伸する円筒状の内壁に相当する。ここで、第1中空部S1は、基部Bに対して第1アーム11を旋回させる中空シャフトの内壁に相当する。なお、中空シャフトは、モータの回転シャフトであってもよく、モータの駆動力が伝達されて回転する減速機のシャフトであってもよい。
【0044】
駆動用ケーブルCは、基部Bの内部から第1中空部S1を通過して第1アーム11の内部へ配索される。このように、第1軸A1に沿う第1中空部S1に駆動用ケーブルCを配索することで、駆動用ケーブルCが第1アーム11の旋回の邪魔にならない。また、駆動用ケーブルCのねじれや傷みを低減することができる。
【0045】
また、
図4に示したように、ロボット10における第1アーム11および第2アーム12には、第2軸A2に沿う第2中空部S2が設けられる。第2中空部S2は、第1アーム11の内部と第2アーム12の内部とを第2軸A2まわりで連通させる。
【0046】
たとえば、第2中空部S2は、第2軸A2を含むように第2軸A2に沿って延伸する円筒状の内壁に相当する。ここで、第2中空部S2は、第1アーム11に対して第2アーム12を旋回させる中空シャフトの内壁に相当する。なお、中空シャフトは、モータの回転シャフトであってもよく、モータの駆動力が伝達されて回転する減速機のシャフトであってもよい。
【0047】
駆動用ケーブルCは、第1アーム11の内部から第2中空部S2を通過して第2アーム12の内部へ配索される。このように、第2軸A2に沿う第2中空部S2に駆動用ケーブルCを配索することで、駆動用ケーブルCが第2アーム12の旋回の邪魔にならない。また、駆動用ケーブルCのねじれや傷みを低減することができる。
【0048】
ここで、
図4に示したように、第2アーム12は、第2中空部S2の上端を底面とする窪みを有しており、第2アーム12の延伸向きに延伸する一対の立壁で窪みを挟んだ形状を有している。そして、一対の立壁をつなぐ立壁には駆動用ケーブルCを接続するコネクタCN41が設けられる。つまり、駆動用ケーブルCは、上面視で視認可能であるので、コネクタCN41への接続作業を容易に行うことができる。また、一対の立壁によって保護されているので、ロボット10の動作に伴って駆動用ケーブルCが障害物に接触する事態を防止することができる。
【0049】
なお、
図4に示したように、ロボット10における第2アーム12および第3アーム13には、第3軸A3に沿う第3中空部S3が設けられる。第3中空部S3は、第2アーム12の内部と第3アーム13の内部とを第3軸A3まわりで連通させる。
【0050】
たとえば、第3中空部S3は、第3軸A3を含むように第3軸A3に沿って延伸する円筒状の内壁に相当する。ここで、第3中空部S3は、第2アーム12に対して第3アーム13を回転させる中空シャフトの内壁に相当する。なお、中空シャフトは、モータの回転シャフトであってもよく、モータの駆動力が伝達されて回転する減速機のシャフトであってもよい。
【0051】
このように、駆動用ケーブルCは、基部Bからロボット10の内部に導入され、第1アーム11、第2アーム12および第3アーム13の内部を通過するように配索される。したがって、ロボット10が動作した場合であっても駆動用ケーブルCが動作の邪魔にならない。また、駆動用ケーブルCを各軸に沿う中空部経由で配索することで、駆動用ケーブルCのねじれや痛みを低減することができる。
【0052】
次に、ロボット10の先端に接続されるエンドエフェクタEE(
図1参照)へ塗布材料を供給する供給用チューブTの配置例について
図5を用いて説明する。
図5は、供給用チューブTの配置例を示す側面模式図である。なお、
図5では、
図4と同様に第4アーム14の先端側以降の図示を省略している。
【0053】
ここで、供給用チューブTは、ロボット10にエンドエフェクタEEとして接続されるガンへ塗布材料を供給するホースやチューブである。なお、
図5には、1本の供給用チューブTを示しているが、2本としてもよいし3本以上とすることとしてもよい。また、以下の説明では、
図4に示した構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略するか簡単な説明にとどめることとする。なお、
図5では、
図4に示した駆動用ケーブルCおよびコネクタCN41の記載を省略している。
【0054】
図5に示すように、供給用チューブTは、基部Bの内部から第1中空部S1を通過して第1アーム11の内部へ配索される。供給用チューブTをこのように配索することで、供給用チューブTが第1アーム11の旋回の邪魔にならない。また、供給用チューブTのねじれや傷みを低減することができる。
【0055】
また、
図5に示すように、第1中空部S1を通過した供給用チューブTは、第1アーム11の上面側に設けられたコネクタCN51に接続される。このように、コネクタCN51を第1アーム11の上面側に設けることで、供給用チューブTをコネクタCN51へ接続する作業を容易に行うことができる。
【0056】
また、コネクタCN51には、第1アーム11の内部を通り、コネクタCN52に接続される供給用チューブTが接続される。ここで、コネクタCN52は、第1アーム11における先端側の下面側に設けられる。なお、コネクタCN52の位置は、上面視で第2軸A2付近であることが好ましい。このようにすることで、第2アーム12の動作に伴う供給用チューブTのねじれを小さくすることができる。
【0057】
そして、コネクタCN52には、ロボット10の外部を通り、コネクタCN53に接続される供給用チューブTが接続される。ここで、コネクタCN53は、第2アーム12における先端側の下面側に設けられる。なお、コネクタCN51、コネクタCN52およびコネクタCN53は、第1軸A1(第1軸A1に平行な第2軸A2および第3軸A3でもよい)に平行な軸まわりに回転するスイベル機構を設けてもよい。
【0058】
このように、供給用チューブTは、第1アーム11の内部を通過して第2軸A2寄りの下面側から外部へ導出され、第3軸A3寄りの下面側から第2アーム12へ配索される。供給用チューブTをこのように配索することで、第1アーム11や第2アーム12が旋回しても供給用チューブTが基部Bと干渉しない。また、供給用チューブTを第2中空部S2経由で第1アーム11の内部から第2アーム12の内部へ配索する場合よりも、第1アーム11および第2アーム12の厚み(Z軸に沿う幅)を小さくすることができる。
【0059】
また、上面視において、コネクタCN52を第1アーム11の先端側に、コネクタCN53を第2アーム12の先端側に、それぞれ配置することで、ロボット10の動作に伴って供給用チューブTがロボット10に挟まる事態を防止することができる。つまり、基部B、第1アーム11および第2アーム12と、供給用チューブTとを干渉しにくくすることができるので、ロボット10の動作可能な領域を拡大することができる。
【0060】
また、コネクタCN53を経由した供給用チューブTは、
図5に示したように、第3アーム13の外部に設けられるコネクタCN54を経由して第3アーム13の外部および第4アーム14の外部に配索される。そして、供給用チューブTは、さらには、第5アーム15の後述する第5中空部H5へ導入される(
図6参照)。なお、
図5では、コネクタCN54が、鉛直上向き(Z軸正方向)に延伸する支持部によって支持される場合を示したが、コネクタCN54を第3アーム13の側面に設けることとしてもよい。
【0061】
次に、ロボット10における第5アーム15~第8アーム18の中空構造について
図6を用いて説明する。
図6は、第5アーム15~第8アーム18の連通中空部Hを示す側面模式図である。なお、
図6では、
図1に示したエンドエフェクタEEの記載を省略している。また、
図6では、
図4に示した駆動用ケーブルCおよびコネクタCN41の記載や、
図5に示したコネクタCN51、コネクタCN52およびコネクタCN53の記載を省略している。
【0062】
また、
図6に示したように、
図5に示した供給用チューブTの配索手法とは異なる配索手法として、供給用チューブTを第1アーム11および第2アーム12の内部に配索することとしてもよい。
【0063】
図6に示したように、第5アーム15、第6アーム16、第7アーム17および第8アーム18は、第6軸A6と第8軸A8とが重なる姿勢において直線状に連通する第5中空部H5、第6中空部H6、第7中空部H7および第8中空部H8をそれぞれ有する。なお、以下では、第5中空部H5~第8中空部H8をまとめて連通中空部Hと呼ぶこととする。
【0064】
供給用チューブTは、第4アーム14の外部を経由して第5アーム15の途中から連通中空部Hの基端側へ導入されて先端側から導出される。そして、供給用チューブTは、
図1に示したエンドエフェクタEEに接続される。
【0065】
このように、供給用チューブTを第5アーム15~第8アーム18の連通中空部H(第5中空部H5~第8中空部H8)に配索することで、供給用チューブTが各アームの動作の邪魔にならない。また、連通中空部Hは、ロボット10が
図6に示した姿勢をとった場合に、直線状であるので、供給用チューブTを直線状にすることができ、塗布材料の供給をスムーズに行うことができる。また、供給用チューブTの屈曲を可能な限り抑制することができる。
【0066】
上述してきたように、実施形態に係るロボット10は、基部Bと、第1アーム11と、第2アーム12と、第3アーム13と、第4アーム14と、第5アーム15と、第6アーム16と、第7アーム17と、第8アーム18とを備える。基部Bは、設置面ISに固定される。第1アーム11は、基部Bに基端側が支持され、設置面ISに対して垂直な第1軸A1まわりに旋回する。第2アーム12は、第1アーム11の先端側に基端側が支持され、第1軸A1と平行な第2軸A2まわりに旋回する。第3アーム13は、第2アーム12の先端側に基端側が支持され、第2軸A2と平行な第3軸A3まわりに回転する。
【0067】
また、第4アーム14は、第3アーム13の先端側に基端側が支持され、第3軸A3と垂直な第4軸A4まわりに旋回する。第5アーム15は、第4アーム14の先端側に基端側が支持され、第4軸A4と平行な第5軸A5まわりに旋回する。第6アーム16は、第5アーム15の先端側に基端側が支持され、第5軸A5と垂直な第6軸A6まわりに回転する。第7アーム17は、第6アーム16の先端側に基端側が支持され、第6軸A6と直交する第7軸A7まわりに旋回する。第8アーム18は、第7アーム17の先端側に基端側が支持され、第7軸A7と直交する第8軸A8まわりに回転する。
【0068】
また、第2軸A2と第3軸A3との軸間距離は、第3軸A3と第4軸A4との軸間距離よりも大きく、第4軸A4と第5軸A5との軸間距離は、第5軸A5と第7軸A7との軸間距離よりも小さい。
【0069】
このように、実施形態に係るロボット10によれば、水平多関節アームに相当する第1アーム11および第2アーム12を備えるので、第3アーム13を水平面に沿うXY座標の任意の位置に移動させることができる。また、第2軸A2と第3軸A3との軸間距離が第3軸A3と第4軸A4との軸間距離よりも大きい程度に第2アーム12が長いので、第3アーム13の水平移動範囲が大きくロボット10の作業領域を拡大することができる。
【0070】
また、第4軸A4と第5軸A5との軸間距離が第5軸A5と第7軸A7との軸間距離よりも小さい、すなわち、上腕(第4アーム14)よりも前腕(第5アーム15+第6アーム16)が長いので、下肘姿勢でワークWにおける下面側の広範囲に対して作業することができる。このように、実施形態に係るロボット10によれば、ワークWに対する水平向きの作業領域を拡大することができる。
【0071】
なお、上述した実施形態では、ロボット10を8軸のロボットとする場合を例示したが、ロボット10を9軸以上のロボットとすることとしてもよく、水平多関節アームに対応する軸数を4軸以上とすることとしてもよい。
【0072】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 ロボットシステム
10 ロボット
11 第1アーム
12 第2アーム
13 第3アーム
14 第4アーム
15 第5アーム
16 第6アーム
17 第7アーム
18 第8アーム
20 コントローラ
21 制御部
21a 動作制御部
22 記憶部
22a 教示情報
A1 第1軸
A2 第2軸
A3 第3軸
A4 第4軸
A5 第5軸
A6 第6軸
A7 第7軸
A8 第8軸
B 基部
C 駆動用ケーブル
CN41、CN51、CN52、CN53、CN54 コネクタ
EE エンドエフェクタ
H 連通中空部
H5 第5中空部
H6 第6中空部
H7 第7中空部
H8 第8中空部
IS 設置面
P1 平面
S1 第1中空部
S2 第2中空部
S3 第3中空部
T 供給用チューブ
W ワーク