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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】厚盛りタックラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/02 20060101AFI20240502BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G09F3/02 A
G09F3/02 F
G09F3/10 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020145449
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040648
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222222
【氏名又は名称】東洋ガラス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政彦
(72)【発明者】
【氏名】田代 優弥
(72)【発明者】
【氏名】内藤 弘規
(72)【発明者】
【氏名】関 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝洋
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-069423(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217989(JP,U)
【文献】実開平06-063356(JP,U)
【文献】特開2012-078822(JP,A)
【文献】特開2017-179241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0253929(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/10
G09F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル貼付面を有する容器の当該貼付面に貼付するための厚盛りタックラベルであって、
前記厚盛りタックラベルは、ラベル本体を含み、
前記ラベル本体は、
一方の面であって、容器への貼付後には表面となる意匠面と、他方の面であって、容器への貼付後には背面となる貼着面とを有する基材シートと、
前記基材シートの前記意匠面側に配置され、凸部を形成するように厚盛り印刷される三次元意匠印刷領域を含む印刷層と、
前記基材シートの前記貼着面側に配置される粘着層と、
前記基材シートに関して前記三次元意匠印刷領域と面対称の位置に設けられ、前記粘着層に接する糊止め加工層とを有する、厚盛りタックラベル。
【請求項2】
前記糊止め加工層は、前記三次元意匠印刷領域の輪郭を超える部分に対応する領域まで配置される、請求項1に記載の厚盛りタックラベル。
【請求項3】
前記超える部分は、輪郭から0.2~1.0mmである、請求項2に記載の厚盛りタックラベル。
【請求項4】
前記糊止め加工層は、前記三次元意匠印刷領域の輪郭を除いて後退した内側部分に対応する領域に配置される、請求項に記載の厚盛りタックラベル。
【請求項5】
前記糊止め加工層は、塗料の塗布により形成されるものであることを特徴とする請求項乃至4のいずれかに記載の厚盛りタックラベル。
【請求項6】
前記基材シートと前記印刷層との間に、少なくとも一つの基材シートと、少なくとも一つの粘着層とが積層され、基材シートと粘着層とが交互になるように配置される、請求項1乃至5のいずれかに記載の厚盛りタックラベル。
【請求項7】
前記印刷層の三次元意匠印刷領域の凸部における厚みが、350μm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の厚盛りタックラベル。
【請求項8】
前記基材シートは、透明又は不透明フィルムであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の厚盛りタックラベル。
【請求項9】
前記厚盛りタックラベルは、前記ラベル本体と、ラベル貼着工程で剥離除去される剥離紙とから構成され、前記剥離紙は、前記ラベル本体の領域の全部を覆って剥離可能に積層されてなることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の厚盛りタックラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タックラベルに係り、特に、印刷層に凸部を形成するように厚盛り印刷されてなる三次元意匠が印刷された厚盛りタックラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
主として液体を充填し、市場に流通される包装用容器(以下、容器という。)は、様々な外形を持つものが知られており、ワイン、ビール、その他の飲料等では円筒状容器が多用されている。
そして、これらの容器の表面には、商品名や内容物の説明文などを印刷した、いわゆるラベルが貼付されているのが一般的である。
【0003】
容器の素材としては、ガラスやPET等のプラスチックを素材としたものや缶、紙等がある。
通常、容器の表面に貼付するラベルは、当該容器の属性である内容物や商品名、製造・販売元名称、所謂、意匠や商標などの文字、マーク等(ここでは、“意匠”と総称する)を印刷した表面を有し、その裏面に塗布した粘着材(あるいは接着材)で容器の表面(胴体外面など)に貼り付けるようになっている。
【0004】
容器の表面へのラベルの貼付は、少量であれば手作業で行われるが、大量の容器へのラベルの貼付は、一般に“タックラベラー”と称される自動貼着装置が使用される。
タックラベラーは、容器搬送手段で連続的に搬入されてくる容器に自動でラベルを貼付し、次の生産ライン或いは出荷ステーションへ搬出するようになっている。
この種のタックラベラーには粘着材を塗布したタックラベルが用いられており、タックラベルを送り出しながら、移動する容器の胴体の側面に当接させ貼付している。
【0005】
このタックラベルは、多数枚が長尺の剥離紙にインラインでドラム状に巻かれ、この状態でタックラベラーの貼付ステーションに装填される。そして、容器が搬送されて貼付ステーションに到来するごとにタックラベルが一枚ずつ送り出されるようになっている。
【0006】
タックラベル(以下、単にラベルとも称する)には、容器への貼付面には接着しないように当該ラベルの一部に“糊止め”と称する加工が施されているものが知られている。
例えば、化粧品等のボトルに貼付されるラベルは、購入者等が容易に除去できるようにするため、背面に粘着材を塗布したラベルの端部に糊止め加工を施している。この端部はボトルから剥がれた状態になっているので、必要ならばこの端部を指で摘まんでラベル全体を容易に剥離することができる。
【0007】
また、タックラベラーに装填する連続したタックラベルセットでは、多数のラベルをインラインで剥離紙に配列し、タックラベラーでラベルを剥離し易くするために各ラベルの先端部に糊止め加工したものなどもある。この種の糊止めに関する従来技術を開示したものとしては、特許文献1、特許文献2、特許文献3などを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-49215号公報
【文献】実用新案登録第3079762号公報
【文献】特開2011-59295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、タックラベルにおいて、ラベルの印字部が凸部に形成されるように厚盛り印刷し、ラベルの表面に三次元の意匠を形成した意匠性の高いタックラベル(以下、厚盛りタックラベルという。)の開発を進めている。
厚盛りタックラベルは、厚みのないタックラベルと異なり、ラベル表面に三次元意匠が凸部となるように印刷されているため、タックラベラーで自動貼付する場合、その貼付工程において、容器の回転搬送速度とラベルの貼付速度との同期が十分に取れていないと、貼付されたラベルにズレ、皺、破断等が発生し、貼付不具合をもたらすことがある。
【0010】
また、容器の曲面にラベルを貼り付けた時、厚盛り印刷された部分による応力が、ラベルの基材シートの容器への粘着力に勝ってしまい剥がれやすく、気泡や皺が入ってしまうという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決して、タックラベルの自動貼付を行うタックラベラーに適用して貼付品質を向上させた厚盛りタックラベルを提供することにある。
【0012】
すなわち、本発明は、タックラベラーを用いた厚盛りタックラベルの貼付プロセスで生じる貼付の不具合を解消し、厚盛りタックラベルによる商品等のアピール効果の向上を実現する厚盛りタックラベルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明に係る厚盛りタックラベルの特徴を表す代表的な構成を以下に記述する。なお、ここでは、本発明の構成を明確にするため、後述する実施例の図面における参照符号を併記するが、本発明はこの参照符号で示される部材、構成に限定されるものではない。
【0014】
本発明に係る厚盛りタックラベルは、ラベル貼付面を有する容器の当該貼付面にタックラベラーで貼付するためのラベルであって、
(1)厚盛りタックラベル8は、ラベル本体83を含み、ラベル本体83は、一方の面であって、容器2への貼付後には表面となる意匠面と、他方の面であって、容器への貼付後には背面となる貼着面とを有する基材シート801と、前記基材シート801の意匠面側に配置され、凸部を形成するように厚盛り印刷される三次元意匠印刷領域803aを含む印刷層803と、基材シート801の貼着面側に配置される粘着層804とを有することを特徴とする。
【0015】
(2)厚盛りタックラベル8は、ラベル本体83を含み、ラベル本体83は、一方の面であって、容器2への貼付後には表面となる意匠面と、他方の面であって、容器への貼付後には背面となる貼着面とを有する基材シート801と、前記基材シート801の意匠面側に配置され、凸部を形成するように厚盛り印刷される三次元意匠印刷領域803aを含む印刷層803と、基材シート801の貼着面側に配置される粘着層804と、基材シート801に関して三次元意匠印刷領域803aと面対称の位置に設けられ、粘着層804に接する糊止め加工層805とを有することを特徴とする。
【0016】
(3)糊止め加工層805は、三次元意匠印刷領域803aの裾野803cに対応する領域803dまで配置されることを特徴とする。
【0017】
(4)糊止め加工層805は、三次元意匠印刷領域803aの輪郭を除いた領域(輪郭からの後退量)803eの内側部分に対応する領域に配置されることを特徴とする。
【0018】
(5)糊止め加工層805は、塗料の塗布により形成されるものであることを特徴とする。
(6)基材シート801と印刷層803との間に、少なくとも一つの基材シート(例えば第2基材シート801a)と、少なくとも一つの粘着層(例えば、粘着層804a)とが積層され、基材シートと粘着層とが交互になるように配置されることを特徴とする。
【0019】
(7)印刷層803の三次元意匠印刷領域803aの凸部における厚みが、350μm以下であることを特徴とする。
【0020】
(8)基材シート801は透明又は不透明フィルムであることを特徴とする。
【0021】
(9)厚盛りタックラベル8は、ラベル本体83と、ラベル貼着工程で剥離除去される剥離紙82とから構成され、剥離紙82は、ラベル本体83の領域の全部を覆って剥離可能に積層されてなることを特徴とする。
【0022】
本発明は、上記の構成及び後述する実施例の構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0023】
上記(1)に記載の本発明に係る厚盛りタックラベルは、凸部を形成するように厚盛り印刷される三次元意匠印刷領域を含む印刷層を備え、基材シートに粘着層を有しているので、容器にしっかりと貼着でき、容器に貼着した際には、容器自身に彫刻を施したような外観を得ることができ、意匠性が高く高級感のある印象を与えることができる。
【0024】
上記(2)(3)(4)(5)に記載の本発明に係る厚盛りタックラベルは、三次元意匠の印刷領域に対応して、粘着層804に糊止め加工層805を設ける構成としたので、三次元意匠印刷領域803aは容器2に粘着されず、容器の表面との間に厚盛りタックラベルの間に空気層を介在することになる。そして、この空気層によりラベルの糊止め加工された部分と容器が粘着しないので、ラベル貼付工程でのラベルにかかる押圧力が分散し、ラベルに局部的な応力が集中しないため、貼付の引きつり皺や延び、あるいは破断等の不具合の発生が回避される。
【0025】
糊止め加工は、三次元意匠(文字、色彩も含む)に対応する部分のみならず、三次元意匠印刷領域の裾野にまで施すことができる。裾野に対応する領域にまで糊止め加工を施すことにより、容器の表面と厚盛りタックラベルの間により多くの空気層を介在することになる。そして、ラベル貼付工程でのラベルにかかる押圧力がより一層分散し、ラベルに局部的な応力が集中せず、貼付の引きつり皺や延び、あるいは破断等の不具合の発生が回避される。
【0026】
なお、基材シート801の材料やその光学的特性(透過性、反射性、あるいは色彩)を設定することで、容器2の表面を透過する光や容器表面や基材シート801で反射(多重反射も含む)する外光、あるいは基材シート801での透過や反射と空気層の光学レンズ作用で三次元意匠に特殊な視覚効果を生じさせることができる。
これにより、三次元意匠印刷はその彫刻効果が強調され、意匠の美的効果が向上し、容器に収容される商品に高級感を付与できる。
【0027】
また、三次元意匠の主要部分(輪郭から若干後退した内側領域)にのみ糊止め加工を施して、容器の表面と厚盛りタックラベルの間に空気層を介在させることもできる。この場合も、ラベル貼付工程でのラベルにかかる押圧力は分散し、ラベルに局部的な応力が集中せず、貼付の引きつり皺や延び、あるいは破断等の不具合の発生が回避される。また、当該三次元意匠の主要部分の光反射効果や透過光効果を他の部分から際立たせる効果(主要部分の高コントラスト化、色彩変化等)も得られる。
【0028】
また、上記の糊止め加工層を塗料の塗布によるものとすることで、厚盛りタックラベルのコストを低減することもできる。
【0029】
上記(6)に記載の本発明に係る厚盛りタックラベルは、基材シートが2段またはそれ以上に構成されているので、厚みが増し、容器への貼付工程において、三次元意匠部分による応力があっても剥がれにくく、気泡や皺が入りにくい。
【0030】
上記(7)に記載の本発明に係る厚盛りタックラベルは、前記印刷層の三次元意匠印刷領域の凸部の厚みが、所定の厚さに印刷されるので、容器に貼付すると、容器に彫刻を施したような高い意匠性を備える。
【0031】
上記(8)に記載の本発明に係る厚盛りタックラベルは、基材シート801を透明又は不透明フィルムとすることができるので、容器の色や形状に合わせて適宜選択し、より三次元意匠の存在感を演出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る厚盛りタックラベルの構造例1及び2を説明する模式断面図。
図2】本発明に係る厚盛りタックラベルの構造例3及び4を説明する模式断面図。
図3】本発明に係る厚盛りタックラベルの実施例1を説明する模式断面図。
図4図3に示した本発明に係る厚盛りタックラベルの実施例1を説明する平面図。
図5】本発明に係る厚盛りタックラベルの実施例2を説明する模式断面図。
図6図5に示した本発明に係る厚盛りタックラベルの実施例2を説明する平面図。
図7】本発明に係る厚盛りタックラベルの実施例3を説明する模式断面図。
図8図7に示した本発明に係る厚盛りタックラベルの実施例3を説明する平面図。
図9】本発明に係る厚盛りタックラベルを自動貼付するタックラベラーの1例を説明する模式図。
図10】本発明に係る厚盛りタックラベルを貼付した容器を説明する(a)外観図、(b)(a)のX-X線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
図1及び図2は、本発明に係る厚盛りタックラベルの構造例を説明する模式断面図で、図1では、構造例1及び2を、図2では、構造例3及び4を示す。
図中、8は厚盛りタックラベル、801は基材シート、803は印刷層、803aは三次元意匠印刷領域、803bは基材シートの意匠面、803cは裾野、804は粘着層、805は糊止め加工層、82は剥離紙、83はタックラベル本体である。
【0035】
本発明において、いずれの構造例においても、貼付前の厚盛りタックラベル8は、ラベル本体83と剥離紙82で構成される。
図1(a)に示す本発明に係る厚盛りタックラベルの構造例1では、ラベル本体83は、一方の面であって、容器への貼付後には表面となる意匠面と、他方の面であって、容器への貼付後には背面となる貼着面とを有する基材シート801と、前記基材シート801の前記意匠面側に配置され、凸部を形成するように厚盛り印刷される三次元意匠印刷領域803aを含む印刷層803と、前記基材シート801の前記貼着面側に配置される粘着層804とを有する。
そして、剥離紙82は、前記ラベル本体83の領域の全部を覆って剥離可能に積層されて構成される。
【0036】
図1(b)に示す本発明に係る厚盛りタックラベルの構造例2では、ラベル本体83は、一方の面であって、容器への貼付後には表面となる意匠面と、他方の面であって、容器2への貼付後には背面となる貼着面とを有する基材シート801と、前記基材シート801の前記意匠面側に配置され、凸部を形成するように厚盛り印刷される三次元意匠印刷領域803aを含む印刷層803と、前記基材シート801の前記貼着面側に配置される粘着層804と、前記基材シート801に関して前記三次元意匠印刷領域803aと面対称の位置に設けられ、前記粘着層に接する糊止め加工層805を有する。
そして、剥離紙82は、前記ラベル本体83の領域の全部を覆って剥離可能に積層されて構成される。
【0037】
また、図2(a)に示す本発明に係る厚盛りタックラベルの構造例3では、前記図1(a)に示す構造例1における前記基材シート801と前記印刷層803との間に、第2基材シート801aが粘着層804aを介して積層され、ラベル本体83は2段の基材シート(801、801a)を備えた構造に構成される。
【0038】
そして、図2(b)に示す本発明に係る厚盛りタックラベルの構造例4では、前記図1(b)に示す構造例2における前記基材シート801と前記印刷層803との間に、第2基材シート801aが粘着層804aを介して積層され、ラベル本体83は2段の基材シート(801、801a)を備えた構造に構成される。
【0039】
上記、構造例に示すように、本発明にかかる厚盛りタックラベル8を構成するラベル本体83は、基材シート801とその一方の面(表面、意匠面ともいう。)に印刷層803を、他方の面(背面、貼着面ともいう。)に粘着層804を有する。
そして、構造例3及び4におけるラベル本体83は、基材シート801と第2基材シート801aの2段に積層されて構成される。なお、実施例では、基材シート801のみを用いた厚盛りタックラベルと、基材シート801と第2基材シート801aを用いた厚盛りタックラベルを開示しているが、本発明はそれに限定されるものではなく、3枚以上の基材シートを用いた厚盛りタックラベルであってもよく、各基材シートは、粘着層により接着される。
【0040】
前記基材シート801、第2基材シート801aは、その材料として、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、ユポ(ユポ・コーポレーションの登録商標)、塩ビ等から適宜、デザインや容器の材質等に合わせて選択される。特に三次元意匠印刷領域803aの三次元意匠の立体的効果、高い意匠性を発揮するために、前記材料の透明フィルムまたは不透明フィルムが好適である。
また、上記構造例1~4において、基材シート801、第2基材シート801aの厚さは、30~70μmで構成され、特に40~60μmの厚さであると、貼付工程で皺や気泡が入りにくく好適である。
【0041】
そして前記基材シート801の貼着面側に配置される粘着層804、804aは、容器への貼着に適した材料であれば特に限定されず、アクリル系、ゴム系、シリコーン系粘着剤などが選択される。なお、上記各構造例において、前記粘着層804、804aの厚さは、10~30μmで構成されているが、粘着剤の種類や特性によって適宜厚さを調整することができる。
【0042】
本発明にかかる厚盛りタックラベルは、基材シート801の意匠面側に、凸部を形成するように厚盛り印刷された三次元意匠印刷領域803aを有する。
三次元意匠印刷領域803aに形成される三次元意匠は、例えば、200μm以上突出し凸部を形成するようにインキを厚く盛りあげ、基材シート801の意匠面側に凹凸を形成するように形成される。このように厚盛りに印刷された三次元意匠により、厚盛りタックラベル8は立体的で意匠性の高いものとなる。
本発明において、三次元意匠印刷領域803aに形成される三次元意匠の凸部における厚みhは、350μm以下で構成される事が好ましい。350μmを超える厚みだと、容器への貼付工程において、凸部による応力が強く、剥がれやすく、気泡や皺が入り易くなるためである。
三次元意匠の凸部における厚みhは、好ましくは200~350μm、より好ましくは240~280μmが好適である。
厚盛り印刷のインキとしては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、あるいは、これらの混合物などの合成樹脂のインキが挙げられ、厚盛りが可能なインキであれば、特に限定されない。
なお、基材シートが2段またはそれ以上の場合(例えば、構造例3及び4の場合)、透明な基材シート801a、透明な粘着層804a、透明な三次元意匠印刷領域803aとなるように各材料を選択し、かつ、基材シート801上の三次元印刷領域803aに対応する部分に着色層(図示しない)を設けることにより、三次元意匠印刷領域803aがあたかも着色されているように見えるようにすることができ、装飾性の高いものとなる。
【0043】
図1及び2に示す構造例1~4において、基材シート801と印刷層803の間に、ラミネート層802(図3参照)を積層する構成であってもよい。ラミネート層802を設けることで、光沢感を与えることができ、より意匠性を高めることができる。
ラミネート層802は、PP(ポリプロピレン)やPET(ポリエステル)などで、その厚みはおよそ15~50μmで構成される。
【0044】
図1(b)に示す構造例2及び図2(b)に示す構造例4において、基材シート801の他方の面で、容器2への貼付後には背面となる貼着面に形成された粘着層804の表面上には、基材シート801に関して三次元意匠印刷領域803aと面対称の位置(領域)に糊止め加工層805が形成されている。この糊止め加工層805は粘着層804の粘着機能を阻害して容器のラベル貼付面にラベル本体の特定部分(三次元意匠印刷領域803aと面対称の部分)が粘着しない役目を有する。
【0045】
粘着層804に糊止め加工層805を設けることで、容器2に粘着されていない三次元意匠印刷領域803aと容器2の表面との間に空気層が介在する。
この空気層によりラベルが容器2に粘着されずラベル貼付工程でのラベルにかかる押圧力が分散し、ラベルに局部的な応力が集中しないため、貼付の引きつり皺や延び、あるいは破断等の不具合の発生が回避される。
【0046】
本発明にかかる厚盛りタックラベルにおいて、前記糊止め加工層805は、塗料の塗布、例えばニス塗りにより形成される。なお、糊止め加工層805は、凸部に三次元意匠が形成された三次元意匠印刷領域803aと容器2の表面との間に空気層を形成するものであり、容器2に非粘着となる方法であれば、その形成方法は限定されない。
【0047】
本発明にかかる厚盛りタックラベルにおいて、糊止め加工層が形成される構造の実施例を図3図8に基づいて詳細に説明する。図3図8は、各実施例の模式断面図及び説明用の平面図である。
図3に示す実施例1は、構造例2の構成と同様に、ラベル本体83と剥離紙82で構成される厚盛りタックラベル8であり、基材シート801と、その一方の面に印刷層803を、他方の面に粘着層804を有し、さらに、基材シート801と印刷層803の間にラミネート層802を積層して構成される。
実施例1は、基材シート801を軸として三次元意匠印刷領域803aと面対称の位置に、粘着層804の粘着性を阻害する糊止め加工層805が形成されている。前記糊止め加工層805は、接着を希望しない領域に塗料を塗布することで形成している。本実施例では三次元意匠印刷領域803aに対応する領域にニスを塗布して糊止め加工層805を形成している。
【0048】
図4は、図3に示した厚盛りタックラベルの実施例1について、具体的な意匠で示す平面図である。本実施例における三次元意匠は、漢字の「海」であり、三次元意匠印刷領域803aと、ハッチングで示す糊止め加工層805の領域が一致している。
【0049】
図5は、本発明に係る厚盛りタックラベルの糊止め加工層が形成される構造の実施例2を説明する模式断面図である。また、図6は、図5に示す実施例2を説明する平面図である。
実施例2も、構造例2の構成と同様に、ラベル本体83と剥離紙82で構成される厚盛りタックラベル8であり、基材シート801と、その一方の面に印刷層803を、他方の面に粘着層804を有し、さらに、基材シート801と印刷層803の間にラミネート層802を積層して構成される。
そして、糊止め加工層805は、三次元意匠印刷領域803aの輪郭を超えて、当該三次元意匠印刷領域803aの裾野803cを含んだ部分に対応する領域まで設けられている。前記三次元意匠印刷領域803aの輪郭からの超え量803dは、例えば、0.2~1.0mm程度、望ましくは0.5mm程度である。
なお、三次元意匠印刷領域803aの輪郭線から少し超える領域(超え量803dの部分)を、ここでは、便宜上“裾野”と表記している。
【0050】
前記実施例2を平面で示す図6は、三次元意匠「海」が印刷された三次元意匠印刷領域803aの外側に延在する領域(裾野)に亘って当該三次元意匠「海」を覆う糊止め加工が施されている。糊止め加工層805をハッチングで示す。
【0051】
前記実施例1及び2によれば、三次元意匠印刷領域803aに対応する部分が粘着されず、容器に貼付された際には、容器2との間に空気層が形成されるので、容器2へのラベル貼付工程において、剥がれにくく、皺や気泡が入りにくい。そして、容器2に貼付すると、三次元意匠印刷はその彫刻効果が強調され、意匠の美的効果が向上し、容器に収容される商品に高級感を付与できる。そして、三次元意匠の全体が外光の反射効果や容器の透過光等がラベルの意匠全体として美的外観効果の向上が可能となる。
【0052】
図7は、本発明に係る厚盛りタックラベルのさらに他の実施例を説明する模式断面図であり、図8は、図7に示す実施例を説明する平面図である。
図7に示す実施例3も、構造例2の構成と同様に、ラベル本体83と剥離紙82で構成される厚盛りタックラベル8であり、基材シート801と、その一方の面に印刷層803を、他方の面に粘着層804を有し、さらに、基材シート801と印刷層803の間にラミネート層802を積層して構成される。
そして、実施例3では、糊止め加工層805は、三次元意匠印刷領域803aの輪郭に沿って、当該三次元意匠印刷領域803aの前記輪郭から内側に後退した領域の内側に形成されてなる。
前記三次元意匠印刷領域803aの輪郭から内側に後退した領域は、図5では、輪郭からの後退量803eであり、その内側は糊止め加工が施され、糊止め加工層805を形成している。
【0053】
三次元意匠の輪郭から若干、例えば、輪郭からの後退量803eとして0.2~1.0mm程度後退した内側の主要部分にのみ糊止め加工を施すことで、上記実施例1や2と同様の貼付工程における不具合の発生を回避できるとともに、当該主要部分の光反射効果や透過光効果を他の部分から際立たせる効果(主要部分の高コントラスト化、色彩変化等)が得られる。
【0054】
基材シート801は、意匠製作者の感性で、透明フィルム、不透明フィルム、彩色透明フィルム、光反射フィルム等を採用することで三次元意匠の視覚効果を向上できる。
【0055】
上記実施例1~3は、構造例2の場合について説明したが、基材シート801と第2基材シート801aが2段に積層される構造例4においても同様に、三次元意匠印刷領域803aと面対称の位置に、粘着層804の粘着性を阻害する糊止め加工層805が形成することができ(実施例1)、三次元意匠印刷領域803aの外側に延在する領域(裾野)に亘る対応する位置に糊止め加工層805を形成することもでき(実施例2)、三次元意匠印刷領域803aの輪郭に沿って、当該三次元意匠印刷領域803aの前記輪郭から内側に後退した領域の内側に対応する位置に糊止め加工層805を形成(実施例3)するものであってもよい。
【0056】
図9は、本発明に係る厚盛りタックラベルを自動貼付するタックラベラーの1例を説明する模式図である。なお、回転テーブル1の中心から放射状に延びる直線は、容器の位置を明確にするための仮想線で、破線は容器の移動中心の軌跡を示す。
【0057】
容器2の搬送手段である回転テーブル1には、複数の容器受台10が等間隔で設けてあり、容器供給機構3の搬入コンベア31で搬送されてきた容器(ラベル未貼付)2は容器ローディング手段(スターホイール)300で容器受台10に一本ずつ載置される。容器2は太矢印に示した方向(ここでは、反時計周り)に回転する回転テーブル1で、先ず、〈1〉ラベルタッキング部250の外側ガイド93に到達する。ラベルタッキング部250では厚盛りタックラベルの剥離紙82から剥離される厚盛りタックラベル本体83の先端が剥離されて、容器2と外側ガイド93の間の押圧で容器のラベル貼付面に部分貼付(タック)される。
【0058】
厚盛りタックラベルの先端がタックされた容器2は、剥離紙82が完全に剥離された厚盛りタックラベル本体83が外側ガイド93に当接しない状態で移動し、〈2〉ラベル貼付部を構成する内側ガイド94に到達する。
【0059】
容器2は、〈3〉内側ガイド94の上を転動しながら移動することで厚盛りタックラベル本体83の全体が容器に貼付される。厚盛りタックラベル本体83が貼付された容器2L(容器+ラベル)は回転テーブル1の回転で容器搬出機構4のアンローディング手段(スターホイール)400により搬出コンベア41に移載されて次の工程(検査、出荷ステーション等)に渡される。
【0060】
図10は、本発明に係る厚盛りタックラベルを貼付した容器を説明する(a)外観図、(b)(a)のX-X線断面図である。容器2にタックラベル本体83Tを貼付した容器2Lは、あたかも容器の表面に三次元意匠が施されたもののごときデザインの様相を呈する。
【0061】
表面自体に三次元の意匠を形成した容器(表面に凹凸がある容器)にラベルを貼付するには、熱収縮性材料で構成したシートを用いて、貼付→加熱収縮工程を必要とし、ラベル貼付がコスト高になる。本発明の厚盛りタックラベルを用いて容器の平坦な表面に貼付することで、高級感のある疑似的三次元意匠容器を容易に得ることができる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・容器搬送手段(回転テーブル)
2・・・容器
2・・・容器(ラベル未貼付)
2L・・・容器(ラベル貼付済)
3・・・容器供給機構
31・・・搬入コンベア
4・・・容器搬出機構
41・・・搬出コンベア
8・・・厚盛りタックラベル
801・・・基材シート
802・・・ラミネート層
803・・・印刷層
803a・・・三次元意匠印刷領域
803c・・・裾野
803d・・・輪郭からの超え量
803e・・・輪郭からの後退量
804・・・粘着層
805・・・糊止め加工層
82・・・剥離紙
83・・・タックラベル本体
93・・・外側ガイド
94・・・内側ガイド
10・・・容器受け台
300・・・ローディング手段
400・・・アンローディング手段
h・・・三次元意匠の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10