(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】超電導層の接続構造、超電導線材、超電導コイル、超電導機器、及び超電導層の接続方法
(51)【国際特許分類】
H01B 12/06 20060101AFI20240502BHJP
C01G 1/00 20060101ALI20240502BHJP
C01G 3/00 20060101ALI20240502BHJP
H01F 6/06 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H01B12/06 ZAA
C01G1/00 S
C01G3/00
H01F6/06 500
H01F6/06 140
H01F6/06 150
(21)【出願番号】P 2020147013
(22)【出願日】2020-09-01
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】萩原 将也
(72)【発明者】
【氏名】江口 朋子
(72)【発明者】
【氏名】アルベサール 恵子
(72)【発明者】
【氏名】服部 靖
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/211764(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/211766(WO,A1)
【文献】特開2016-110816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 12/06
C01G 1/00
C01G 3/00
H01F 6/06
H10N 60/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の超電導層と、
第2の超電導層と、
前記第1の超電導層と前記第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子を含み、前記結晶粒子の粒径分布が、バイモーダル分布を含む接続層と、
を備え
、
前記バイモーダル分布は、第1のピークを含む第1の分布と、第2のピークを含む第2の分布を有し、
前記第1のピークに対応する第1の粒径は、前記第2のピークに対応する第2の粒径よりも大きく、
前記第1の分布に対応する粒径を有する前記結晶粒子は、板状又は扁平形状の結晶粒子を含む、超電導層の接続構造。
【請求項2】
前記第1の粒径は、100nm以上10μm以下である請求項
1記載の超電導層の接続構造。
【請求項3】
前記第1の粒径は、前記第2の粒径の10倍以上である請求項
1又は請求項
2記載の超電導層の接続構造。
【請求項4】
前記結晶粒子の中で、粒径が100nm以上10μm以下の結晶粒子の個数の割合が1%以上50%以下である請求項1ないし請求項
3いずれか一項記載の超電導層の接続構造。
【請求項5】
前記接続層は、
希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む第1の粒子と、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む第2の粒子と、銅(Cu)及び酸素(O)を含む第3の粒子と、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第4の粒子とからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの粒子を含む請求項1ないし請求項
4いずれか一項記載の超電導層の接続構造。
【請求項6】
前記接続層は、ナトリウム(Na)を含む請求項1ないし請求項
5いずれか一項記載の超電導層の接続構造。
【請求項7】
第1の超電導層と、
第2の超電導層と、
前記第1の超電導層と前記第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子と、
希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む第1の粒子と、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む第2の粒子と、銅(Cu)及び酸素(O)を含む第3の粒子と、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第4の粒子とからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの粒子と、
を含む接続層と、
を備え
、
前記結晶粒子は、板状又は扁平形状の結晶粒子を含む、超電導層の接続構造。
【請求項8】
第1の超電導層を含む第1の超電導線材と、
第2の超電導層を含む第2の超電導線材と、
第1の面と前記第1の面と対向する第2の面を有する第3の超電導層と、
前記第1の超電導層と前記第3の超電導層の間、及び、前記第2の超電導層と前記第3の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子を含み、前記結晶粒子の粒径分布が、バイモーダル分布を含む接続層と、
を備え、
前記第1の超電導層及び前記第2の超電導層は、前記第3の超電導層の前記第1の面の側に位置
し、
前記バイモーダル分布は第1のピークを含む第1の分布と、第2のピークを含む第2の分布を有し、
前記第1のピークに対応する第1の粒径は、前記第2のピークに対応する第2の粒径よりも大きく、
前記第1の分布に対応する粒径を有する前記結晶粒子は、板状又は扁平形状の結晶粒子を含む、超電導線材。
【請求項9】
前記第1の粒径は、100nm以上10μm以下である請求項
8記載の超電導線材。
【請求項10】
前記第1の粒径は、前記第2の粒径の10倍以上である請求項
8又は請求項
9記載の超電導線材。
【請求項11】
第1の超電導層を含む第1の超電導線材と、
第2の超電導層を含む第2の超電導線材と、
第1の面と前記第1の面と対向する第2の面を有する第3の超電導層と、
前記第1の超電導層と前記第3の超電導層との間、及び、前記第2の超電導層と前記第3の超電導層との間に設けられ、
希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子と、
希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む第1の粒子と、バリウム(Ba)、炭素(C)、酸素(O)を含む第2の粒子と、銅(Cu)及び酸素(O)を含む第3の粒子と、バリウム(Ba)、銅(Cu)及び酸素(O)を含む第4の粒子とからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの粒子と、
を含む接続層と、
を備え、
前記第1の超電導層及び前記第2の超電導層は、前記第3の超電導層の前記第1の面の側に位置
し、
前記結晶粒子は、板状又は扁平形状の結晶粒子を含む、超電導線材。
【請求項12】
前記接続層は、前記第1の超電導線材と前記第2の超電導線材との間に存在しない請求項
8ないし請求項
11いずれか一項記載の超電導線材。
【請求項13】
前記第1の超電導層と前記第3の超電導層との間の前記接続層と、前記第2の超電導層と前記第3の超電導層との間の前記接続層は連続する請求項
8ないし請求項
12いずれか一項記載の超電導線材。
【請求項14】
前記第1の超電導層の一部に接する第1の保護層と、
前記第2の超電導層の一部に接する第2の保護層と、を更に備え、
前記第3の超電導層に接する保護層は、備えない請求項
8ないし請求項
13いずれか一項記載の超電導線材。
【請求項15】
請求項
8ないし請求項
14いずれか一項記載の超電導線材を備える超電導コイル。
【請求項16】
請求項
15記載の超電導コイルを備える超電導機器。
【請求項17】
第1の超電導層と第2の超電導層とを準備し、
希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子と、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む第1の粒子と、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む第2の粒子と、銅(Cu)及び酸素(O)を含む第3の粒子と、を含むスラリーを作製し、
前記第2の超電導層の上に、前記スラリーを塗布し、
前記スラリーを間に挟んで、前記第1の超電導層と前記第2の超電導層を重ね合わせ、
第1の温度で第1の熱処理を行い、
前記第1の熱処理と同じ酸素分圧、又は、前記第1の熱処理よりも高い酸素分圧を有する雰囲気中で、第2の温度の第2の熱処理を行う超電導層の接続方法。
【請求項18】
前記第1の温度は800℃以下である請求項
17記載の超電導層の接続方法。
【請求項19】
前記第2の温度は前記第1の温度より低い請求項
17又は請求項
18記載の超電導層の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超電導層の接続構造、超電導線材、超電導コイル、超電導機器、及び超電導層の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、核磁気共鳴装置(NMR)や磁気共鳴画像診断装置(MRI)では、強い磁場を発生させるために超電導コイルが用いられる。超電導コイルは、巻枠に超電導線材を巻き回すことにより形成されている。
【0003】
超電導線材を長尺化するために、例えば、複数の超電導線材を接続する。例えば、2本の超電導線材の端部を接続構造を用いて接続する。超電導線材を接続する接続構造には、低い電気抵抗と高い機械的強度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5828299号公報
【文献】特許6675590号公報
【文献】特許6178779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる超電導層の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の超電導層の接続構造は、第1の超電導層と、第2の超電導層と、第1の超電導層と第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子を含み、前記結晶粒子の粒径分布が、バイモーダル分布を含む接続層と、を備え、前記バイモーダル分布は、第1のピークを含む第1の分布と、第2のピークを含む第2の分布を有し、前記第1のピークに対応する第1の粒径は、前記第2のピークに対応する第2の粒径よりも大きく、前記第1の分布に対応する粒径を有する前記結晶粒子は、板状又は扁平形状の結晶粒子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図。
【
図2】第1の実施形態の接続層の一部の拡大模式断面図。
【
図3】第1の実施形態の接続層に含まれる結晶粒子の粒径分布を示す図。
【
図4】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層との準備の説明図。
【
図5】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の保護層と第2の保護層の除去の説明図。
【
図6】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第2の超電導層の上へのスラリーの塗布の説明図。
【
図7】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層を向き合わせた状態の説明図。
【
図8】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層を重ね合わせた状態の説明図。
【
図9】第1の実施形態の超電導層の接続方法の第1の超電導層と第2の超電導層を加圧した状態の説明図。
【
図10】第1の実施形態と第2の比較例の電気抵抗率の温度依存性を示す図。
【
図11】第2の実施形態の接続層の一部の拡大模式断面図。
【
図12】第3の実施形態の接続層の一部の拡大模式断面図。
【
図13】第4の実施形態の超電導線材の模式断面図。
【
図14】第4の実施形態の超電導線材の変形例の模式断面図。
【
図15】第6の実施形態の超電導線材の模式断面図。
【
図16】第6の実施形態の超電導線材の第1の変形例の模式断面図。
【
図17】第6の実施形態の超電導線材の第2の変形例の模式断面図。
【
図18】第7の実施形態の超電導コイルの模式斜視図。
【
図19】第7の実施形態の超電導コイルの模式断面図。
【
図20】第8の実施形態の超電導機器のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書中、粒子等の「粒径」とは、別段の記載のない限り、粒子の長径である。粒子の長径とは、粒子の外周の任意の2点間の長さの中の最大の長さである。なお、粒子の短径とは、粒子の外周の任意の2点間の長さの中の最小の長さである。粒子の長径及び短径は、例えば、走査電子顕微鏡画像(SEM画像)の画像解析により求めることが可能である。
【0010】
粒子等に含まれる元素の検出及び元素の原子濃度の測定は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX)又は波長分散型X線分析法(WDX)を用いて行うことが可能である。また、粒子等に含まれる物質の同定は、例えば、粉末X線回折法を用いて行うことが可能である。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の超電導層の接続構造は、第1の超電導層と、第2の超電導層と、第1の超電導層と第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子を含み、結晶粒子の粒径分布が、バイモーダル分布を含む接続層と、を備える。また、上記接続層は、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む第1の粒子と、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む第2の粒子と、銅(Cu)及び酸素(O)を含む第3の粒子と、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第4の粒子とからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの粒子を含む。
【0012】
図1は、第1の実施形態の超電導層の接続構造の模式断面図である。第1の実施形態の接続構造100は、2つの超電導層を物理的及び電気的に接続する構造である。接続構造100は、例えば、2本の超電導線材を接続し、超電導線材を長尺化するために用いられる。
【0013】
接続構造100は、第1の超電導部材10、第2の超電導部材20、及び接続層30を備える。接続構造100は、第1の超電導部材10と第2の超電導部材20が、接続層30によって接続される構造である。接続層30は、第1の超電導部材10と第2の超電導部材20との間に設けられる。
【0014】
第1の超電導部材10は、第1の基板12、第1の中間層14、第1の超電導層16を備える。第2の超電導部材20は、第2の基板22、第2の中間層24、第2の超電導層26を備える。
【0015】
第1の基板12は、例えば、金属である。第1の基板12は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第1の基板12は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0016】
第1の超電導層16は、例えば、酸化物超電導層である。第1の超電導層16は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の超電導層16は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及び、ルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0017】
第1の超電導層16は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の超電導層16は、例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、YBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、又はEuBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0018】
第1の超電導層16は、例えば、ぺロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0019】
第1の超電導層16は、例えば、第1の中間層14の上に、金属有機物堆積法(Metal Organic Deposition法:MOD法)、パルスレーザ蒸着法(Pulsed Laser Deposition法:PLD法)、又は、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition法:MOCVD法)を用いて形成される。
【0020】
第1の中間層14は、第1の基板12と第1の超電導層16との間に設けられる。第1の中間層14は、例えば、第1の超電導層16に接する。第1の中間層14は、第1の中間層14の上に形成される第1の超電導層16の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0021】
第1の中間層14は、例えば、希土類酸化物を含む。第1の中間層14は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第1の中間層14は、例えば、第1の基板12側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0022】
第2の基板22は、例えば、金属である。第2の基板22は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第2の基板22は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0023】
第2の超電導層26は、例えば、酸化物超電導層である。第2の超電導層26は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の超電導層16は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0024】
第2の超電導層26は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の超電導層16は、例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、YBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、又はEuBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0025】
第2の超電導層26は、例えば、ぺロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0026】
第2の超電導層26は、例えば、第2の中間層24の上に、MOD法、PLD法、又はMOCVD法を用いて形成される。
【0027】
第2の中間層24は、第2の基板22と第2の超電導層26との間に設けられる。第2の中間層24は、例えば、第2の超電導層26に接する。第2の中間層24は、第2の中間層24の上に形成される第2の超電導層26の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0028】
第2の中間層24は、例えば、希土類酸化物を含む。第2の中間層24は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第2の中間層24は、例えば、第2の基板22側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0029】
接続層30は、第1の超電導層16と第2の超電導層26との間に設けられる。接続層30は、第1の超電導層16に接する。接続層30は、第2の超電導層26に接する。
【0030】
接続層30は、酸化物超電導層である。接続層30は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。接続層30は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及び、ルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0031】
図2は、第1の実施形態の接続層の一部の拡大模式断面図である。
【0032】
接続層30は、第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、第4の粒子36、及び空孔37を含む。接続層30は、第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36が焼結することにより形成されている。
【0033】
第1の結晶粒子31及び第2の結晶粒子32は、結晶粒子の一例である。
【0034】
接続層30は、多孔質である。接続層30に含まれる粒子の間に空孔37(Void)が存在する。
【0035】
第1の結晶粒子31は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の結晶粒子31は、希土類酸化物である。第1の結晶粒子31は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。
【0036】
第1の結晶粒子31は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の結晶粒子31は、例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、YBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、又はEuBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0037】
第1の結晶粒子31は、例えば、板状又は扁平形状である。扁平形状とは、粒子のアスペクト比が2以上であることを意味する。粒子のアスペクト比とは、粒子の短径に対する長径の比(長径/短径)である。
【0038】
第1の結晶粒子31の粒径の中央値は、例えば、100nm以上10μm以下である。より好ましい範囲は、例えば、1μm以上5μm以下である。
【0039】
第1の結晶粒子31は、超電導体である。
【0040】
第2の結晶粒子32は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の結晶粒子32は、希土類酸化物である。第2の結晶粒子32は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶または多結晶である。第2の結晶粒子32は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0041】
第2の結晶粒子32は、例えば、第1の結晶粒子31と同一の希土類元素を含む。第2の結晶粒子32の化学組成は、例えば、第1の結晶粒子31の化学組成と同一である。第2の結晶粒子32の化学組成と、第1の結晶粒子31の化学組成とが同一の場合、第1の結晶粒子31と第2の結晶粒子32の接続性が向上するため好ましい。
【0042】
第2の結晶粒子32は、例えば、第1の結晶粒子31と異なる希土類元素を含んでも構わない。第2の結晶粒子32の化学組成は、例えば、第1の結晶粒子31の化学組成と異なっても構わない。
【0043】
第2の結晶粒子32は、例えば、球状又は不定形状である。第2の結晶粒子32のアスペクト比は、例えば、2未満である。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、例えば、10nm以上1μm未満である。
【0044】
第2の結晶粒子32は、例えば、超電導体である。
【0045】
第1の結晶粒子31の結晶性は、例えば、第2の結晶粒子32の結晶性よりも良好である。結晶性が良好であるとは、例えば、結晶中の欠陥密度が低いことを意味する。また、例えば、多結晶質の結晶粒子を構成する結晶のグレインサイズが大きいことを意味する。
【0046】
図3は、第1の実施形態の接続層に含まれる結晶粒子の粒径分布を示す図である。
図3は、接続層30に含まれる第1の結晶粒子31と第2の結晶粒子32の両方の結晶粒子の粒径分布を示す。
【0047】
図3に示すように、接続層30に含まれる結晶粒子の粒径分布は、バイモーダル分布を含む。バイモーダル分布は、第1のピーク(
図3中のPk1)を含む第1の分布と、第2のピーク(
図3中のPk2)を含む第2の分布を有する。
【0048】
なお、接続層30に含まれる結晶粒子の粒径分布は、ピークが3個以上となるマルチモーダル分布であっても構わない。
【0049】
第1のピークPk1に対応する結晶粒子の粒径が第1の粒径(
図3中のd1)である。第2のピークPk2に対応する結晶粒子の粒径が第2の粒径(
図3中のd2)である。
【0050】
第1の粒径d1は、第2の粒径d2よりも大きい。第1の粒径d1は、例えば、第2の粒径d2の10倍以上1000倍以下である。
【0051】
第1の粒径d1は、例えば、100nm以上10μm以下である。第2の粒径d2は、例えば、10nm以上1μm未満である。
【0052】
第1の分布には、主に第1の結晶粒子31が含まれる。第2の分布には、主に第2の結晶粒子32が含まれる。
【0053】
第1の分布に対応する粒径を有する結晶粒子は、例えば、板状又は扁平形状の結晶粒子を含む。例えば、第1の分布に対応する粒径を有する結晶粒子の中で、板状又は扁平形状の結晶粒子の個数の割合が、その他の形状の結晶粒子の個数の割合よりも大きい。
【0054】
第2の分布に対応する粒径を有する結晶粒子は、例えば、球状又は不定形状の結晶粒子を含む。例えば、第2の分布に対応する粒径を有する結晶粒子の中で、球状又は不定形状の結晶粒子の個数の割合が、その他の形状の結晶粒子の個数の割合よりも大きい。
【0055】
第1の結晶粒子31及び第2の結晶粒子32の両方の結晶粒子の中で、粒径が100nm以上10μm以下の結晶粒子の個数の割合は、例えば、1%以上50%以下である。
【0056】
第1の粒子33は、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む。第1の粒子33と第2の結晶粒子32は、同一の希土類元素(RE)を含む。第1の粒子33は、例えば、RE2O3(REは希土類元素)で表記される化学組成を有する。
【0057】
第1の粒子33は、例えば、結晶質である。第1の粒子33は、例えば、球状又は不定形状である。第1の粒子33の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第1の粒子33の粒径の中央値は、例えば、1nm以上100nm未満である。
【0058】
第2の粒子34は、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む。第2の粒子34は、例えば、BaCO3で表記される化学組成を有する。
【0059】
第2の粒子34は、例えば、結晶質である。第2の粒子34は、例えば、球状又は不定形状である。第2の粒子34の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第2の粒子34の粒径の中央値は、例えば、1nm以上1μm未満である。
【0060】
第3の粒子35は、銅(Cu)及び酸素(O)を含む。第3の粒子35は、例えば、CuOで表記される化学組成を有する。
【0061】
第3の粒子35は、例えば、結晶質である。第3の粒子35は、例えば、球状又は不定形状である。第3の粒子35の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の中央値よりも小さい。第3の粒子35の粒径の中央値は、例えば、1nm以上100nm未満である。
【0062】
第4の粒子36は、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第4の粒子36は、例えば、BaCuxOy(0≦x≦2、0<y≦4)で表記される化学組成を有する。
【0063】
第4の粒子36は、例えば、結晶質である。第4の粒子36は、例えば、球状又は不定形状である。第4の粒子36の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第4の粒子36の粒径の中央値は、例えば、1nm以上1μm未満である。
【0064】
第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36の化学組成は異なる。また、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36の化学組成は、第1の結晶粒子31及び第2の結晶粒子32のいずれとも化学組成が異なる。
【0065】
第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36の中で、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36の個数の割合は、例えば、0.1%以上10%以下である。
【0066】
なお、接続層30の中に、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36から選ばれる1種類の粒子のみが含まれる構成とすることも可能である。また、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36から選ばれる2種類の粒子のみが含まれる構成とすることも可能である。また、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36から選ばれる3種類の粒子のみが含まれる構成とすることも可能である。
【0067】
接続層30は、例えば、ナトリウム(Na)を含む。接続層30に含まれるナトリウム(Na)の原子濃度は、例えば、0.01%以上1%以下である。
【0068】
接続層30に含まれるナトリウム(Na)の原子濃度は、例えば、EDX又はWDXを用いて行うことが可能である。ナトリウム(Na)の原子濃度は、WDX又はEDXで測定された全原子の量を分母とする原子濃度である。
【0069】
次に、第1の実施形態の超電導層の接続方法の一例について説明する。
図4、
図5、
図6、
図7、
図8、及び
図9は、第1の実施形態の超電導層の接続方法の説明図である。
【0070】
第1の実施形態の超電導層の接続方法は、第1の超電導層と第2の超電導層とを準備し、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子と、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む第1の粒子と、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む第2の粒子と、銅(Cu)及び酸素(O)とを含む第3の粒子と、を含むスラリーを作製し、第2の超電導層の上に、スラリーを塗布し、スラリーを間に挟んで、第1の超電導層と第2の超電導層を重ね合わせ、第1の温度で第1の熱処理を行い、第1の熱処理と同じ酸素分圧、又は、第1の熱処理よりも高い酸素分圧を有する雰囲気中で、第2の温度の第2の熱処理を行う。
【0071】
最初に、第1の超電導層16と第2の超電導層26とを準備する。第1の超電導部材10と第2の超電導部材20とを準備する(
図4)。
【0072】
第1の超電導部材10は、第1の基板12、第1の中間層14、第1の超電導層16、第1の保護層18を備える。第1の保護層18は、第1の超電導層16の上に設けられる。第1の保護層18は、第1の超電導層16を保護する機能を有する。
【0073】
第1の保護層18は、例えば、金属である、第1の保護層18は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0074】
第2の超電導部材20は、第2の基板22、第2の中間層24、第2の超電導層26、第2の保護層28を備える。第2の保護層28は、第2の超電導層26の上に設けられる。第2の保護層28は、第2の超電導層26を保護する機能を有する。
【0075】
第2の保護層28は、例えば、金属である、第2の保護層28は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0076】
次に、第1の超電導層16の上の第1の保護層18を除去する。次に、第2の超電導層26の上の第2の保護層28を除去する(
図5)。第1の保護層18及び第2の保護層28は、は、例えば、ウェットエッチング法を用いて除去する。
【0077】
次に、スラリー29を作製する。スラリー29は、第1の結晶粒子31、第1の粒子33、第2の粒子34、及び第3の粒子35を含む。
【0078】
第1の結晶粒子31は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の結晶粒子31は、希土類酸化物である。第1の結晶粒子31は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。
【0079】
第1の結晶粒子31は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。第1の結晶粒子31は、例えば、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、YBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)、又はEuBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0080】
第1の結晶粒子31は、例えば、板状又は扁平形状である。第1の結晶粒子31の粒径の中央値は、例えば、100nm以上10μm以下である。
【0081】
第1の結晶粒子31は、例えば、希土類酸化物の超電導体を、粉砕することによって形成される。希土類酸化物の超電導体は、例えば、粉末原料を焼成することで形成される。例えば、MOD法、PLD法、MOCVD法を用いて形成される。希土類酸化物の超電導体を粉砕して形成された第1の結晶粒子31は、板状又は扁平形状を呈する。
【0082】
第1の粒子33は、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む。第1の粒子33は、例えば、RE2O3(REは希土類元素)で表記される化学組成を有する。
【0083】
第1の粒子33は、例えば、結晶質である。第1の粒子33は、例えば、球状又は不定形状である。第1の粒子33の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第1の粒子33の粒径の中央値は、例えば、1nm以上100nm未満である。
【0084】
第2の粒子34は、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む。第2の粒子34は、例えば、BaCO3で表記される化学組成を有する。
【0085】
第2の粒子34は、例えば、結晶質である。第2の粒子34は、例えば、球状又は不定形状である。第2の粒子34の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第2の粒子34の粒径の中央値は、例えば、1nm以上1μm未満である。
【0086】
第3の粒子35は、銅(Cu)及び酸素(O)を含む。第3の粒子35は、例えば、CuOで表記される化学組成を有する。
【0087】
第3の粒子35は、例えば、結晶質である。第3の粒子35は、例えば、球状又は不定形状である。第3の粒子35の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第3の粒子35の粒径の中央値は、例えば、1nm以上100nm未満である。
【0088】
スラリー29は、例えば、焼結助剤及び増粘剤を含む。焼結助剤は、例えば、アルギン酸ナトリウムである。
【0089】
次に、第2の超電導層26の上に、スラリー29を塗布する(
図6)。
【0090】
次に、例えば、第2の超電導層26を反転し、スラリー29を間に挟んで、第1の超電導層16と第2の超電導層26を向き合わせる(
図7)。そして、第1の超電導層16と第2の超電導層26を重ね合わせる(
図8)。
【0091】
次に、重ね合わせた第1の超電導層16と第2の超電導層26を、第2の超電導層26から第1の超電導層16に向かう方向に加圧する(
図9)。例えば、重ね合わせた部分に錘を乗せることで加圧する。例えば、プレス機を用いて加圧する。例えば、加圧のための冶具を作製し、挟み込むことで加圧することもできる。冶具を用いた場合には、接続の後に冶具を取り外しても良いし、冶具を取り付けたままでも良い。冶具を取り外すとコイルを巻回しやすくなるため、取り外すことが好ましい。
【0092】
次に、第1の温度で第1の熱処理を行う。第1の熱処理は、第1の超電導層16と第2の超電導層26が加圧された状態で行う。
【0093】
第1の温度は、例えば、500℃以上850℃以下である。例えば、600℃以上800℃以下が好ましい。第1の熱処理は、例えば、大気圧で行う。第1の熱処理は、例えば大気雰囲気中、Ar雰囲気中、窒素雰囲気中、酸素雰囲気中、Arと酸素の混合雰囲気中、又は窒素と酸素の混合雰囲気中で行う。
【0094】
第1の熱処理により、第1の粒子33、第2の粒子34、及び第3の粒子35が反応して、超電導体である第2の結晶粒子32が形成される。第1の粒子33、第2の粒子34、及び第3の粒子35は、超電導体である第2の結晶粒子32の原料である。
【0095】
第2の結晶粒子32は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の結晶粒子32は、希土類酸化物である。第2の結晶粒子32は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。第2の結晶粒子32は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0096】
第2の結晶粒子32は、例えば、球状又は不定形状である。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、例えば、10nm以上1μm未満である。
【0097】
なお、第2の結晶粒子32の形成に寄与しなかった第1の粒子33、第2の粒子34、及び第3の粒子35は、接続層30の中に残存する。
【0098】
第1の熱処理により、第2の粒子34、及び第3の粒子35が反応して、第4の粒子36が形成される。
【0099】
第4の粒子36は、バリウム(Ba)、銅(Cu)及び酸素(O)を含む。第4の粒子36は、例えば、BaCuxOy(0≦x≦2、0<y≦4)で表記される化学組成を有する。
【0100】
第4の粒子36は、例えば、結晶質である。第4の粒子36は、例えば、球状又は不定形状である。第4の粒子36の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第4の粒子36の粒径の中央値は、例えば、1nm以上1μm未満である。
【0101】
第1の熱処理により、第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36が焼結する。
【0102】
次に、第2の温度で第2の熱処理を行う。第2の熱処理は酸素を含む雰囲気中で行われる。第2の熱処理は、第1の熱処理と同じ酸素分圧、又は、第1の熱処理よりも高い酸素分圧を有する雰囲気中で行われる。第2の熱処理は酸素アニールである。
【0103】
第2の温度は、例えば、第1の温度よりも低い。第2の温度は、例えば、400℃以上600℃以下である。第2の熱処理は、第1の熱処理の後に第2の温度よりも低い温度まで冷却してから、第2の温度に再加熱して行っても良い。また、第2の熱処理は、第1の熱処理の後に第2の温度まで連続的に降温させて行っても良い。
【0104】
第2の熱処理は、例えば、大気圧中で行われる。第2の熱処理の雰囲気の酸素分圧は、例えば、30%以上である。
【0105】
第1の熱処理及び第2の熱処理により、接続層30が形成される。
【0106】
以上の方法により、第1の超電導層16と第2の超電導層26とが接続される。以上の方法により、第1の実施形態の接続構造100が形成される。
【0107】
次に、第1の実施形態の超電導層の接続構造、及び超電導層の接続方法の作用及び効果について説明する。
【0108】
例えば、核磁気共鳴装置(NMR)や磁気共鳴画像診断装置(MRI)では、強い磁場を発生させるために超電導コイルが用いられる。超電導コイルは、巻枠に超電導線材を巻き回すことにより形成されている。
【0109】
超電導線材を長尺化するために、例えば、複数の超電導線材を接続する。例えば、2本の超電導線材の端部を、接続構造を用いて接続する。超電導線材を接続する接続構造には、低い電気抵抗と高い機械的強度が求められる。
【0110】
第1の実施形態の超電導層の接続方法は、第1の超電導層16と第2の超電導層26とを接続する際に、第1の結晶粒子31と、第1の粒子33、第2の粒子34、及び第3の粒子35とを混合したスラリー29を用いる。第1の結晶粒子31は、希土類酸化物の超電導体である。第1の粒子33、第2の粒子34、及び第3の粒子35は、希土類酸化物の超電導体の原料である。超電導体の結晶粒子と、超電導体の原料となる複数の粒子とを混合したスラリー29を用いて接続層30を形成することで、低い電気抵抗と高い機械的強度を備えた接続構造100が実現できる。以下、詳述する。
【0111】
第1の比較例の超電導層の接続方法として、超電導体の結晶粒子を含み、超電導体の原料となる複数の粒子を含まないスラリーを用いて接続層を形成する場合を考える。超電導体粒子同士の焼結温度は、超電導体の原料粒子同士の焼結温度、あるいは、超電導体の原料粒子と超電導体粒子との焼結温度に比べて高い。
【0112】
このため、超電導体の結晶粒子のみを含むスラリーから接続層を形成する場合、焼結のための熱処理を、例えば、900℃以上の高温で行う必要がある。高温で焼結を行わないと、超電導体粒子同士の結合が弱くなり、接続層の機械的強度が低くなる。
【0113】
しかし、高温で焼結を行うと、超電導層の超電導性が劣化又は消失するおそれがある。超電導層の超電導性の劣化又は消失は、例えば、超電導層と中間層との反応や、超電導層の相変化により生ずると考えられる。
【0114】
したがって、超電導体の結晶粒子のみを含むスラリーを用いて、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える接続構造を形成することは困難である。
【0115】
第2の比較例の超電導層の接続方法として、超電導体の結晶粒子を含まず、超電導体の原料となる複数の粒子を含むスラリーを用いて接続層を形成する場合を考える。
【0116】
上述のように、超電導体の原料粒子同士の焼結温度は、超電導体粒子同士の焼結温度と比較して低い。したがって、第2の比較例の場合、第1の比較例の場合と比べ、低温で焼結を行っても粒子間の焼結が進み、接続層の機械的強度を高くすることが可能である。また、原料粒子の反応により、超電導体の結晶粒子が形成され、接続層が超電導性を備える。したがって、低い電気抵抗を実現することが期待できる。
【0117】
図10は、第1の実施形態の接続構造の作用及び効果の説明図である。
図10は、第1の実施形態の接続方法で形成された超電導層の接続構造100と、第2の比較例の接続方法で形成された超電導層の接続構造の、電気抵抗率の温度依存性を示す図である。
【0118】
図10の場合、測定した接続構造には、第1の実施形態の場合、第2の比較例の場合、いずれもGdBa
2Cu
3O
δ(6≦δ≦7)の化学組成の結晶粒子が含まれる。また、第1の実施形態の場合、第2の比較例の場合、いずれの場合も焼結の温度は800℃である。
【0119】
図10から明らかなように、第1の実施形態の接続方法で形成された超電導層の接続構造100は、良好な超電導特性を示す。したがって、低い電気抵抗が実現される。一方、第2の比較例の接続方法で形成された超電導層の接続構造は、超電導特性を示さず、高い電気抵抗を示す。
【0120】
第2の比較例の超電導層の接続構造が、超電導体の結晶粒子が形成されているにも関わらず、超電導特性を示さず、高い電気抵抗を示すのは、以下の理由が考えられる。
【0121】
第1の理由は、超電導体の結晶粒子の粒子径が小さく、接続層の中に占める粒子界面の割合が高くなるため、界面抵抗が支配的になることである。第2の理由は、低温で焼結を行っているため、超電導体の結晶性が悪いことである。
【0122】
第1の実施形態の超電導層の接続構造100は、あらかじめスラリー29に含まれていた第1の結晶粒子31の粒径は、原料粒子の反応によって形成される第2の結晶粒子32の粒径よりも大きい。すなわち、接続層30の中の超電導体の結晶粒子の粒径分布は、バイモーダル分布を含む。大きな粒径の結晶粒子が存在することで、接続層30の中に占める粒子界面の割合が低くなる。
【0123】
また、あらかじめスラリー29に含まれる第1の結晶粒子31の結晶性は、低温での原料粒子の反応によって形成される第2の結晶粒子32の結晶性よりも良好である。第1の結晶粒子31は、例えば、高温で焼結を行うことで形成されているからである。
【0124】
したがって、第1の実施形態の超電導層の接続構造100は、第2の比較例の接続構造に比べ、良好な超電導特性を示し、低い電気抵抗が実現できると考えられる。
【0125】
また、第1の実施形態の超電導層の接続構造100は、超電導体の原料粒子同士の焼結作用、及び、超電導体の結晶粒子と原料粒子との焼結作用により、接続層30の機械的強度が高くなる。
【0126】
第1の実施形態の超電導層の接続構造100は、第1の実施形態の超電導層の接続方法を用いることにより、容易に形成することができる。
【0127】
接続層30の第1のピークPk1に対応する第1の粒径d1は、100nm以上10μm以下であることが好ましく、500nm以上8μm以下であることがより好ましく、1μm以上5μm以下であることが更に好ましい。上記下限値を上回ることで、接続層30の中に占める粒子界面の割合が低くなる。したがって、接続構造100の電気抵抗が低下する。また、上記上限値を下回ることで、接続層30の中に占める粒子界面の割合が高くなる。したがって、接続構造100の機械的強度が向上する。
【0128】
第1の粒径d1は、第2の粒径d2の10倍以上1000倍以下であることが好ましく、50倍以上500倍以下であることがより好ましい。上記下限値を上回ることで、接続層30の中に占める粒子界面の割合が低くなる。したがって、接続構造100の電気抵抗が低下する。また、上記上限値を下回ることで、接続層30の中に占める粒子界面の割合が高くなる。したがって、接続構造100の機械的強度が向上する。
【0129】
第1の結晶粒子31及び第2の結晶粒子32の両方の結晶粒子の中で、粒径が100nm以上10μm以下の結晶粒子の個数の割合は、1%以上50%以下であることが好ましく、10%以上30%以下であることがより好ましい。上記下限値を上回ることで、接続層30の中に占める粒子界面の割合が低くなる。したがって、接続構造100の電気抵抗が低下する。また、上記上限値を下回ることで、接続層30の中に占める粒子界面の割合が高くなる。したがって、接続構造100の機械的強度が向上する。
【0130】
接続層30は、ナトリウム(Na)を含むことが好ましい。接続層30が、ナトリウム(Na)を含むことで、接続層30の中の粒子の焼結性が向上する。よって、接続構造100の機械的強度が向上する。
【0131】
接続層30に含まれるナトリウム(Na)の原子濃度は、0.01%以上1%以下であることが好ましく、0.1%以上0.5%以下であることがより好ましい。上記下限値を上回ることで、接続層30の中の粒子の焼結性が更に向上する。よって、接続構造100の機械的強度が更に向上する。
【0132】
第1の熱処理の第1の温度は、850℃以下であることが好ましく、800℃以下であることがより好ましく、750℃以下であることが更に好ましく、700℃以下であることが最も好ましい。上記上限値を下回ることで、接続構造100の超電導特性の劣化が抑制できる。
【0133】
以上、第1の実施形態の超電導層の接続構造、及び超電導層の接続方法によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0134】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の超電導層の接続構造は、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む第1の粒子と、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む第2の粒子と、銅(Cu)及び酸素(O)を含む第3の粒子と、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第4の粒子を含まない点で、第1の実施形態の超電導層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0135】
図11は、第2の実施形態の接続層の一部の拡大模式断面図である。
【0136】
接続層30は、第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、及び空孔37を含む。接続層30は、第1の結晶粒子31及び第2の結晶粒子32が焼結することにより形成されている。
【0137】
接続層30は、多孔質である。接続層30では、粒子の間に空孔37が存在する。
【0138】
第1の結晶粒子31は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の結晶粒子31は、希土類酸化物である。第1の結晶粒子31は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。第1の結晶粒子31は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0139】
第1の結晶粒子31は、例えば、板状又は扁平形状である。第1の結晶粒子31の粒径の中央値は、例えば、100nm以上10μm以下である。
【0140】
第1の結晶粒子31は、超電導体である。
【0141】
第2の結晶粒子32は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の結晶粒子32は、希土類酸化物である。第2の結晶粒子32は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。第2の結晶粒子32は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0142】
第2の結晶粒子32は、例えば、第1の結晶粒子31と同一の希土類元素を含む。第2の結晶粒子32の化学組成は、例えば、第1の結晶粒子31の化学組成と同一である。第2の結晶粒子32の化学組成と、第1の結晶粒子31の化学組成とが同一の場合、第1の結晶粒子31と第2の結晶粒子32の接続性が向上するため好ましい。
【0143】
第2の結晶粒子32は、例えば、第1の結晶粒子31と異なる希土類元素を含んでも構わない。第2の結晶粒子32の化学組成は、例えば、第1の結晶粒子31の化学組成と異なっても構わない。
【0144】
第2の結晶粒子32は、例えば、球状又は不定形状である。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、例えば、10nm以上1μm未満である。
【0145】
第2の結晶粒子32は、超電導体である。
【0146】
第2の実施形態の超電導層の接続構造は、第1の実施形態の超電導層の接続方法と、同様の接続方法を用いて形成される。
【0147】
第1の実施形態の超電導層の接続方法と同様の方法で、スラリー29を作製する際に、第1の粒子33、第2の粒子34、及び第3の粒子35の量比及び混合方法を適切に調整する。これにより、原料粒子が全て反応して、第2の結晶粒子32となり、原料粒子が接続層30の中に残存しないようにする。
【0148】
第2の実施形態の接続層30は、第1の実施形態の接続層30と比較して、接続層30の中の導電性の第2の結晶粒子32の占有割合が増加する。したがって、第2の実施形態の超電導層の接続構造は、第1の実施形態の超電導層の接続構造と比較して、電気抵抗が更に低下する。
【0149】
以上、第2の実施形態の超電導層の接続構造によれば、第1の実施形態と同様、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0150】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の超電導層の接続構造は、第1の超電導層と、第2の超電導層と、第1の超電導層と第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子と、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む第1の粒子と、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む第2の粒子と、銅(Cu)及び酸素(O)を含む第3の粒子と、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第4の粒子とからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの粒子と、を含む接続層と、を備える。第3の実施形態の超電導層の接続構造は、結晶粒子の粒径分布が、明瞭なバイモーダル分布を含まない点で、第1の実施形態の超電導層の接続構造と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0151】
図12は、第3の実施形態の接続層の一部の拡大模式断面図である。
【0152】
接続層30は、第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、第4の粒子36、及び空孔37を含む。接続層30は、第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36が焼結することにより形成されている。
【0153】
接続層30は、多孔質である。接続層30の粒子の間に空孔37が存在する。
【0154】
第1の結晶粒子31は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の結晶粒子31は、希土類酸化物である。第1の結晶粒子31は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。第1の結晶粒子31は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0155】
第1の結晶粒子31は、例えば、板状又は扁平形状である。第1の結晶粒子31の粒径の中央値は、例えば、1nm以上10μm以下である。
【0156】
第1の結晶粒子31は、超電導体である。
【0157】
第2の結晶粒子32は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の結晶粒子32、希土類酸化物である。第2の結晶粒子32は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。第2の結晶粒子32は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0158】
第2の結晶粒子32は、例えば、第1の結晶粒子31と同一の希土類元素を含む。第2の結晶粒子32の化学組成は、例えば、第1の結晶粒子31の化学組成と同一である。第2の結晶粒子32の化学組成と、第1の結晶粒子31の化学組成とが同一の場合、第1の結晶粒子31と第2の結晶粒子32の接続性が向上するため好ましい。
【0159】
第2の結晶粒子32は、例えば、第1の結晶粒子31と異なる希土類元素を含んでも構わない。第2の結晶粒子32の化学組成は、例えば、第1の結晶粒子31の化学組成と異なっても構わない。
【0160】
第2の結晶粒子32は、例えば、球状又は不定形状である。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、例えば、1nm以上10μm以下である。
【0161】
第2の結晶粒子32は、超電導体である。
【0162】
接続層30に含まれる結晶粒子の粒径分布は、明瞭なバイモーダル分布を含まない。
【0163】
第1の結晶粒子31の結晶性は、例えば、第2の結晶粒子32の結晶性よりも良好である。結晶性が良好であるとは、例えば、結晶中の欠陥密度が低いことを意味する。また、例えば、多結晶質の結晶粒子を構成する結晶のグレインサイズが大きいことを意味する。
【0164】
第1の粒子33は、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む。第1の粒子33と第2の結晶粒子32は、同一の希土類元素(RE)を含む。第1の粒子33は、例えば、RE2O3(REは希土類元素)で表記される化学組成を有する。
【0165】
第2の粒子34は、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む。第2の粒子34は、例えば、BaCO3で表記される化学組成を有する。
【0166】
第3の粒子35は、銅(Cu)及び酸素(O)を含む。第3の粒子35は、例えば、CuOで表記される化学組成を有する。
【0167】
第4の粒子36は、バリウム(Ba)、銅(Cu)及び酸素(O)を含む。第4の粒子36は、例えば、BaCuxOy(0≦x≦2、0<y≦4)で表記される化学組成を有する。
【0168】
なお、接続層30の中に、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36から選ばれる1種類の粒子のみが含まれる構成とすることも可能である。また、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36から選ばれる2種類の粒子のみが含まれる構成とすることも可能である。また、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36から選ばれる3種類の粒子のみが含まれる構成とすることも可能である。
【0169】
第3の実施形態の超電導層の接続構造は、第1の実施形態の超電導層の接続方法と、同様の接続方法を用いて形成される。
【0170】
第1の実施形態の超電導層の接続方法と同様の方法で、スラリー29を作製する際に、第1の結晶粒子31の粒径を適切に選択し、熱処理条件を適切に調整することで第2の結晶粒子32の粒径を制御する。これにより、接続層30に含まれる結晶粒子の粒径分布が、明瞭なバイモーダル分布を含まないようにできる。
【0171】
第3の実施形態の接続層30は、第1の実施形態の接続層30と比較して、接続層30の中に占める粒子界面の割合が高くなる、又は空孔の割合が減少する。したがって、第3の実施形態の超電導層の接続構造は、第1の実施形態の超電導層の接続構造と比較して、機械的強度が更に高くなる。
【0172】
以上、第3の実施形態の超電導層の接続構造によれば、第1の実施形態と同様、低い電気抵抗と高い機械的強度を実現できる。
【0173】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の超電導線材は、第1の超電導層を含む第1の超電導線材と、第2の超電導層を含む第2の超電導線材と、第1の面と前記第1の面と対向する第2の面を有する第3の超電導層と、第1の超電導層と第3の超電導層との間、及び、第2の超電導層と第3の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子を含み、結晶粒子の粒径分布が、バイモーダル分布を含む接続層と、を備え、第1の超電導層及び第2の超電導層は、第3の超電導層の前記第1の面の側に位置する。第4の実施形態の超電導線材は、第1の超電導線材と第2の超電導線材を接続する構造として、第1の実施形態の超電導層の接続構造を用いる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0174】
図13は、第4の実施形態の超電導線材の模式断面図である。第4の実施形態の超電導線材400は、第1の超電導線材401、第2の超電導線材402、及び接続部材403を備える。第4の実施形態の超電導線材400は、第1の超電導線材401と第2の超電導線材402が、接続部材403を用いて接続されることで、長尺化されている。
【0175】
第1の超電導線材401は、第1の基板12、第1の中間層14、第1の超電導層16、第1の保護層18を備える。第2の超電導線材402は、第2の基板22、第2の中間層24、第2の超電導層26、第2の保護層28を備える。接続部材403は、第3の基板42、第3の中間層44、第3の超電導層46を備える。
【0176】
第1の基板12は、例えば、金属である。第1の基板12は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第1の基板12は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0177】
第1の超電導層16は、例えば、酸化物超電導層である。第1の超電導層16は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の超電導層16は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0178】
第1の超電導層16は、例えば、ぺロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0179】
第1の超電導層16は、例えば、第1の中間層14の上に、MOD法、PLD法、又は、MOCVD法を用いて形成される。
【0180】
第1の中間層14は、第1の基板12と第1の超電導層16との間に設けられる。第1の中間層14は、例えば、第1の超電導層16に接する。第1の中間層14は、第1の中間層14の上に形成される第1の超電導層16の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0181】
第1の中間層14は、例えば、希土類酸化物を含む。第1の中間層14は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第1の中間層14は、例えば、第1の基板12側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0182】
第1の保護層18は、第1の超電導層16の上に設けられる。第1の保護層18は、例えば、第1の超電導層16に接する。第1の保護層18は、第1の超電導層16を保護する機能を有する。
【0183】
第1の保護層18は、例えば、金属である、第1の保護層18は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0184】
第2の基板22は、例えば、金属である。第2の基板22は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第2の基板22は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0185】
第2の超電導層26は、例えば、酸化物超電導層である。第2の超電導層26は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の超電導層26は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0186】
第2の超電導層26は、例えば、ぺロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0187】
第2の超電導層26は、例えば、第2の中間層24の上に、金属有機物堆積法MOD法、PLD法、又は、MOCVD法を用いて形成される。
【0188】
第2の中間層24は、第2の基板22と第2の超電導層26との間に設けられる。第2の中間層24は、例えば、第2の超電導層26に接する。第2の中間層24は、第2の中間層24の上に形成される第2の超電導層26の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0189】
第2の中間層24は、例えば、希土類酸化物を含む。第2の中間層24は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第2の中間層24は、例えば、第2の基板22側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0190】
第2の保護層28は、第2の超電導層26の上に設けられる。第2の保護層28は、例えば、第2の超電導層26に接する。第2の保護層28は、第2の超電導層26を保護する機能を有する。
【0191】
第2の保護層28は、例えば、金属である、第2の保護層28は、例えば、銀(Ag)又は銅(Cu)を含む。
【0192】
第3の基板42は、例えば、金属である。第3の基板42は、例えば、ニッケル合金又は銅合金である。第3の基板42は、例えば、ニッケルタングステン合金である。
【0193】
第3の超電導層46は、第1の面及び第2の面を有する。第1の超電導層16及び第2の超電導層26は、第3の超電導層46の第1の面の側に位置する。
図13において、第1の面は第3の超電導層46の下面、第2の面は第3の超電導層46の上面である。第1の超電導層16及び第2の超電導層26は、第3の超電導層46の下面側に位置する。
【0194】
第3の超電導層46は、例えば、酸化物超電導層である。第3の超電導層46は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第3の超電導層46は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0195】
第3の超電導層46は、例えば、ぺロブスカイト構造を有する単結晶を含む。
【0196】
第3の超電導層46は、例えば、第3の中間層44の上に、MOD法、PLD法、又は、MOCVD法を用いて形成される。
【0197】
第3の中間層44は、第3の基板42と第3の超電導層46との間に設けられる。第3の中間層44は、例えば、第3の超電導層46に接する。第3の中間層44は、第3の中間層44の上に形成される第3の超電導層46の結晶配向性を向上させる機能を有する。
【0198】
第3の中間層44は、例えば、希土類酸化物を含む。第3の中間層44は、例えば、複数の膜の積層構造を備える。第3の中間層44は、例えば、第3の基板42側から、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、酸化セリウム(CeO2)が積層された構造を有する。
【0199】
例えば、第3の超電導層46に接する保護層は設けられない。例えば、第3の超電導層46に接する金属の保護層は設けられない。例えば、第3の超電導層46に接する銀(Ag)、又は銅(Cu)を含む保護層は設けられない。
【0200】
接続層30は、第1の超電導層16と第3の超電導層46との間に設けられる。接続層30は、第1の超電導層16に接する。接続層30は、第3の超電導層46に接する。
【0201】
接続層30は、第2の超電導層26と第3の超電導層46との間に設けられる。接続層30は、第2の超電導層26に接する。接続層30は、第3の超電導層46に接する。
【0202】
第1の超電導層16と第3の超電導層46との間の接続層30と、第2の超電導層26と第3の超電導層46との間の接続層30は連続している。
【0203】
接続層30は、例えば、第1の超電導層16と第2の超電導層26との間に存在しない。第1の超電導層16と第2の超電導層26との間は、例えば、空隙(air gap)である。
【0204】
接続層30は、酸化物超電導層である。接続層30は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。接続層30は、例えば、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。接続層30は、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から成る群のうちの少なくとも1つの希土類元素(RE)を含む。
【0205】
第4の実施形態の接続層30は、
図2に示す第1の実施形態の接続層30と同様の構成を備える。
【0206】
接続層30は、第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、第4の粒子36、及び空孔37を含む。接続層30は、第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36が焼結することにより形成されている。
【0207】
接続層30は、多孔質である。接続層30の粒子の間に空孔37が存在する。
【0208】
第1の結晶粒子31は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の結晶粒子31は、希土類酸化物である。第1の結晶粒子31は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。第1の結晶粒子31は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0209】
第1の結晶粒子31は、例えば、板状又は扁平形状である。第1の結晶粒子31の粒径の中央値は、例えば、100nm以上10μm以下である。
【0210】
第1の結晶粒子31は、超電導体である。
【0211】
第2の結晶粒子32は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の結晶粒子32は、希土類酸化物である。第2の結晶粒子32は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。第2の結晶粒子32は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0212】
第2の結晶粒子32は、例えば、第1の結晶粒子31と同一の希土類元素を含む。第2の結晶粒子32の化学組成は、例えば、第1の結晶粒子31の化学組成と同一である。第2の結晶粒子32の化学組成と、第1の結晶粒子31の化学組成とが同一の場合、第1の結晶粒子31と第2の結晶粒子32の接続性が向上するため好ましい。
【0213】
第2の結晶粒子32は、例えば、第1の結晶粒子31と異なる希土類元素を含んでも構わない。第2の結晶粒子32の化学組成は、例えば、第1の結晶粒子31の化学組成と異なっても構わない。
【0214】
第2の結晶粒子32は、例えば、球状又は不定形状である。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、例えば、10nm以上1μm未満である。
【0215】
第2の結晶粒子32は、超電導体である。
【0216】
接続層30に含まれる結晶粒子の粒径分布は、バイモーダル分布を含む。バイモーダル分布は、第1のピーク(
図3中のPk1)を含む第1の分布と、第2のピーク(
図3中のPk2)を含む第2の分布を有する。
【0217】
なお、接続層30に含まれる結晶粒子の粒径分布は、ピークが3個以上となるマルチモーダル分布であっても構わない。
【0218】
第1のピークに対応する結晶粒子の粒径が第1の粒径(
図3中のd1)である。第2のピークに対応する結晶粒子の粒径が第2の粒径(
図3中のd2)である。
【0219】
第1の粒径d1は、第2の粒径d2よりも大きい。第1の粒径d1は、例えば、第2の粒径d2の10倍以上1000倍以下である。
【0220】
第1の粒径d1は、例えば、100nm以上10μm以下である。第2の粒径d2は、例えば、10nm以上1μm未満である。
【0221】
第1の分布には、主に第1の結晶粒子31が含まれる。第2の分布には、主に第2の結晶粒子32が含まれる。
【0222】
第1の分布に対応する粒径を有する結晶粒子は、例えば、板状又は扁平形状の結晶粒子を含む。第2の分布に対応する粒径を有する結晶粒子は、例えば、球状又は不定形状の結晶粒子を含む。
【0223】
第1の結晶粒子31と分布及び第2の結晶粒子32の両方の結晶粒子の中で、粒径が100nm以上10μm以下の結晶粒子の個数の割合は、例えば、1%以上50%以下である。
【0224】
第1の粒子33は、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む。第1の粒子33と第2の結晶粒子32は、同一の希土類元素(RE)を含む。第1の粒子33は、例えば、RE2O3(REは希土類元素)で表記される化学組成を有する。
【0225】
第1の粒子33は、例えば、結晶質である。第1の粒子33は、例えば、球状又は不定形状である。第1の粒子33の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第1の粒子33の粒径の中央値は、例えば、1nm以上100nm未満である。
【0226】
第2の粒子34は、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む。第2の粒子34は、例えば、BaCO3で表記される化学組成を有する。
【0227】
第2の粒子34は、例えば、結晶質である。第2の粒子34は、例えば、球状又は不定形状である。第2の粒子34の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第2の粒子34の粒径の中央値は、例えば、1nm以上1μm未満である。
【0228】
第3の粒子35は、銅(Cu)及び酸素(O)を含む。第3の粒子35は、例えば、CuOで表記される化学組成を有する。
【0229】
第3の粒子35は、例えば、結晶質である。第3の粒子35は、例えば、球状又は不定形状である。第3の粒子35の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第3の粒子35の粒径の中央値は、例えば、1nm以上100nm未満である。
【0230】
第4の粒子36は、バリウム(Ba)、銅(Cu)及び酸素(O)を含む。第4の粒子36は、例えば、BaCuxOy(0≦x≦2、0<y≦4)で表記される化学組成を有する。
【0231】
第4の粒子36は、例えば、結晶質である。第4の粒子36は、例えば、球状又は不定形状である。第4の粒子36の粒径の中央値は、第1の結晶粒子31の粒径の中央値よりも小さい。第4の粒子36の粒径の中央値は、例えば、1nm以上1μm未満である。
【0232】
第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36の化学組成は異なる。また、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36の化学組成は、第1の結晶粒子31及び第2の結晶粒子32のいずれとも化学組成が異なる。
【0233】
第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36の中で、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36の個数の割合は、例えば、0.1%以上10%以下である。
【0234】
なお、接続層30の中に、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36から選ばれる1種類の粒子のみが含まれる構成とすることも可能である。また、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36から選ばれる2種類の粒子のみが含まれる構成とすることも可能である。また、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36から選ばれる3種類の粒子のみが含まれる構成とすることも可能である。
【0235】
接続層30は、例えば、ナトリウム(Na)を含む。接続層30に含まれるナトリウム(Na)の原子濃度は、例えば、0.01%以上1%以下である。
【0236】
接続層30に含まれるナトリウム(Na)の原子濃度は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX)又は波長分散型X線分析法(WDX)を用いて行うことが可能である。ナトリウム(Na)の原子濃度は、WDX又はEDXで測定された全原子の量を分母とする原子濃度である。
【0237】
第4の実施形態の超電導線材400では、例えば、第1の超電導線材401から、接続層30、接続部材403、及び接続層30を通って第2の超電導線材402に電流が流れる。
【0238】
第1の超電導線材401と接続部材403とが接続層30を用いて接続されることで、第1の超電導線材401と接続部材403とを接続する接続構造は、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える。また、第2の超電導線材402と接続部材403とが接続層30を用いて接続されることで、第2の超電導線材402と接続部材403とを接続する接続構造は、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える。
【0239】
したがって、第1の超電導線材401と第2の超電導線材402とを接続する接続構造は、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える。よって、超電導線材400は、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える。
【0240】
なお、3本以上の超電導線材を接続し、更に長尺化した超電導線材を形成することも可能である。
【0241】
第4の実施形態の超電導線材では、第1の実施形態の超電導層の接続構造を用いる場合を例に説明したが、第1の実施形態の超電導層の接続構造に代えて、第2の実施形態の接続構造を用いることも可能である。すなわち、接続層30に第2の実施形態の記載の接続層を用いることも可能である。
【0242】
(変形例)
図14は、第4の実施形態の超電導線材の変形例の模式断面図である。第4の実施形態の変形例の超電導線材410は、補強材60を備える点で、第4の実施形態の超電導線材400と異なる。
【0243】
補強材60は、第1の超電導線材401と第2の超電導線材402との間に設けられる。補強材60は、例えば、第1の超電導層16と第2の超電導層26との間に設けられる。
【0244】
補強材60は、例えば、第1の超電導線材401及び第2の超電導線材402に接する。補強材60は、例えば、接続層30に接する。
【0245】
補強材60を備えることで、超電導線材410の機械的強度が向上する。
【0246】
補強材60は、例えば、金属又は樹脂である。補強材60は、例えば、はんだである。補強材60は、例えば、銀(Ag)及びインジウム(In)を含むはんだである。
【0247】
以上、第4の実施形態によれば、2本の超電導線材の接続により長尺化された、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える超電導線材が実現できる。
【0248】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の超電導線材は、第1の超電導層を含む第1の超電導線材と、第2の超電導層を含む第2の超電導線材と、第1の面と第1の面と対向する第2の面を有する第3の超電導層と、第1の超電導層と第3の超電導層との間、及び、第2の超電導層と第3の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子と、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む第1の粒子、バリウム(Ba)、炭素(C)、酸素(O)を含む第2の粒子、銅(Cu)及び酸素(O)を含む第3の粒子、バリウム(Ba)、銅(Cu)及び酸素(O)を含む第4の粒子からなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの粒子と、を含む接続層と、を備え、第1の超電導層及び第2の超電導層は、第3の超電導層の前記第1の面の側に位置する。第5の実施形態の超電導線材は、接続層に第3の実施形態と同様の接続層を備える点で、第4の実施形態の超電導線材と異なる。以下、第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0249】
第5の実施形態の接続層30は、
図12に示す第3の実施形態の接続層30と同様の構成を備える。
【0250】
接続層30は、第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、第4の粒子36、及び空孔37を含む。接続層30は、第1の結晶粒子31、第2の結晶粒子32、第1の粒子33、第2の粒子34、第3の粒子35、及び第4の粒子36が焼結することにより形成されている。
【0251】
接続層30は、多孔質である。接続層30の粒子の間に空孔37が存在する。
【0252】
第1の結晶粒子31は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第1の結晶粒子31は、希土類酸化物である。第1の結晶粒子31は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。第1の結晶粒子31は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0253】
第1の結晶粒子31は、例えば、板状又は扁平形状である。第1の結晶粒子31の粒径の中央値は、例えば、1nm以上10μm以下である。
【0254】
第1の結晶粒子31は、超電導体である。
【0255】
第2の結晶粒子32は、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む。第2の結晶粒子32は、希土類酸化物である。第2の結晶粒子32は、例えば、ペロブスカイト構造を有する単結晶又は多結晶である。第2の結晶粒子32は、例えば、(RE)Ba2Cu3Oδ(REは希土類元素、6≦δ≦7)で表記される化学組成を有する。
【0256】
第2の結晶粒子32は、例えば、第1の結晶粒子31と同一の希土類元素を含む。第2の結晶粒子32の化学組成は、例えば、第1の結晶粒子31の化学組成と同一である。第2の結晶粒子32の化学組成と、第1の結晶粒子31の化学組成とが同一の場合、第1の結晶粒子31と第2の結晶粒子32の接続性が向上するため好ましい。
【0257】
第2の結晶粒子32は、例えば、第1の結晶粒子31と異なる希土類元素を含んでも構わない。第2の結晶粒子32の化学組成は、例えば、第1の結晶粒子31の化学組成と異なっても構わない。
【0258】
第2の結晶粒子32は、例えば、球状又は不定形状である。第2の結晶粒子32の粒径の中央値は、例えば、1nm以上10μm以下である。
【0259】
第2の結晶粒子32は、超電導体である。
【0260】
接続層30に含まれる結晶粒子の粒径分布は、明瞭なバイモーダル分布を含まない。
【0261】
第1の結晶粒子31の結晶性は、例えば、第2の結晶粒子32の結晶性よりも良好である。
【0262】
以上、第5の実施形態によれば、2本の超電導線材の接続により長尺化された、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える超電導線材が実現できる。
【0263】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の超電導線材は、接続層が互いに離間した第1の領域と第2の領域を含む点で、第4又は第5の実施形態の超電導線材と異なる。以下、第4又は第5の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0264】
図15は、第6の実施形態の超電導線材の模式断面図である。第6の実施形態の超電導線材600は、第1の超電導線材401、第2の超電導線材402、及び接続部材403を備える。第6の実施形態の超電導線材600は、第1の超電導線材401と第2の超電導線材402が、接続部材403を用いて接続されることで、長尺化されている。
【0265】
第1の超電導線材401は、第1の基板12、第1の中間層14、第1の超電導層16、第1の保護層18を備える。第2の超電導線材402は、第2の基板22、第2の中間層24、第2の超電導層26、第2の保護層28を備える。接続部材403は、第3の基板42、第3の中間層44、第3の超電導層46を備える。
【0266】
接続層30は、第1の領域30aと第2の領域30bを含む。第1の領域30aと第2の領域30bは離間する。
【0267】
第1の領域30aは、第1の超電導層16と第3の超電導層46との間に設けられる。第1の領域30aは、第1の超電導層16に接する。第1の領域30aは、第3の超電導層46に接する。
【0268】
第2の領域30bは、第2の超電導層26と第3の超電導層46との間に設けられる。第2の領域30bは、第2の超電導層26に接する。第2の領域30bは、第3の超電導層46に接する。
【0269】
第6の実施形態の接続層30は、
図2に示す第1の実施形態の接続層30、
図11に示す第2の実施形態の接続層30、又は
図12に示す第3の実施形態の接続層30と同様の構成を備える。第1の領域30a及び第2の領域30bは、
図2に示す第1の実施形態の接続層30、
図11に示す第2の実施形態の接続層30、又は
図12に示す第3の実施形態の接続層30と同様の構成を備える。
【0270】
第6の実施形態の超電導線材600では、例えば、第1の超電導線材401から、接続層30の第1の領域30a、接続部材403、及び接続層30の第2の領域30bを通って第2の超電導線材402に電流が流れる。
【0271】
(第1の変形例)
図16は、第6の実施形態の超電導線材の第1の変形例の模式断面図である。第6の実施形態の第1の変形例の超電導線材610は、第1の超電導層16の第3の超電導層46に対向する面の一部が露出し、第2の超電導層26の第3の超電導層46に対向する面の一部が露出する点で、第6の実施形態の超電導線材600と異なる。
【0272】
第1の超電導層16の上面の、第2の超電導層26側の端部の近傍に、接続層30が存在しない領域がある。また、第2の超電導層26の上面の、第1の超電導層16側の端部の近傍に、接続層30が存在しない領域がある。
【0273】
(第2の変形例)
図17は、第6の実施形態の超電導線材の第2の変形例の模式断面図である。第6の実施形態の第2の変形例の超電導線材620は、補強材60を備える点で、第1の変形例の超電導線材610と異なる。
【0274】
補強材60は、第1の超電導線材401と第2の超電導線材402との間に設けられる。補強材60は、例えば、第1の超電導層16と第2の超電導層26との間に設けられる。補強材60は、例えば、第1の超電導層16と第3の超電導層46との間に設けられる。補強材60は、例えば、第2の超電導層26と第3の超電導層46との間に設けられる。補強材60は、例えば、第1の領域30aと第2の領域30bとの間に設けられる。
【0275】
補強材60を備えることで、超電導線材620の機械的強度が向上する。
【0276】
補強材60は、例えば、金属又は樹脂である。補強材60は、例えば、はんだである。補強材60は、例えば、銀(Ag)及びインジウム(In)を含むはんだである。
【0277】
以上、第6の実施形態によれば、2本の超電導線材の接続により長尺化された、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える超電導線材が実現できる。
【0278】
(第7の実施形態)
第7の実施形態の超電導コイルは、第4ないし第6の実施形態の超電導線材を備える。以下、第4ないし第6の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0279】
図16は、第7の実施形態の超電導コイルの模式斜視図である。
図17は、第7の実施形態の超電導コイルの模式断面図である。
【0280】
第7の実施形態の超電導コイル700は、例えば、NMR、MRI、重粒子線治療器、又は、超電導磁気浮上式鉄道車両などの超電導機器の磁場発生用のコイルとして用いられる。
【0281】
超電導コイル700は、巻枠110、第1の絶縁板111a、第2の絶縁板111b、及び巻線部112を備える。巻線部112は、超電導線材120と、線材間層130を有する。
【0282】
図16は、第1の絶縁板111a、及び第2の絶縁板111bを除いた状態を示す。
【0283】
巻枠110は、例えば、繊維強化プラスチックで形成される。超電導線材120は、例えば、テープ形状である。超電導線材120は、
図16に示すように、巻回中心Cを中心に、同心円状のいわゆるパンケーキ形状に巻枠110に巻き回される。
【0284】
線材間層130は、超電導線材120を固定する機能を有する。線材間層130は、超電導線材120が、超電導機器の使用中の振動や、互いの摩擦により破壊されることを抑制する機能を有する。
【0285】
第1の絶縁板111a及び第2の絶縁板111bは、例えば、繊維強化プラスチックで形成される。第1の絶縁板111a及び第2の絶縁板111bは、巻線部112を外部に対して絶縁する機能を有する。巻線部112は、第1の絶縁板111aと第2の絶縁板111bとの間に位置する。
【0286】
超電導線材120には、第4ないし第6の実施形態の超電導線材が用いられる。
【0287】
以上、第7の実施形態によれば、低い電気抵抗と高い機械的強度を備える超電導線材を備えることで、特性の向上した超電導コイルが実現できる。
【0288】
(第8の実施形態)
第8の実施形態の超電導機器は、第7の実施形態の超電導コイルを備えた超電導機器である。以下、第7の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0289】
図18は、第8の実施形態の超電導機器のブロック図である。第8の実施形態の超電導機器は、重粒子線治療器800である。重粒子線治療器800は、超電導機器の一例である。
【0290】
重粒子線治療器800は、入射系50、シンクロトロン加速器52、ビーム輸送系54、照射系56、制御系58を備える。
【0291】
入射系50は、例えば、治療に用いる炭素イオンを生成し、シンクロトロン加速器52に入射するための予備加速を行う機能を有する。入射系50は、例えば、イオン発生源と線形加速器を有する。
【0292】
シンクロトロン加速器52は、入射系50から入射された炭素イオンビームを治療に適合したエネルギーまで加速する機能を有する。シンクロトロン加速器52に、第7の実施形態の超電導コイル700が用いられる。
【0293】
ビーム輸送系54は、シンクロトロン加速器52から入射された炭素イオンビームを照射系56まで輸送する機能を有する。ビーム輸送系54は、例えば、偏向電磁石を有する。
【0294】
照射系56は、ビーム輸送系54から入射された炭素イオンビームを照射対象である患者に照射する機能を備える。照射系56は、例えば、炭素イオンビームを任意の方向から照射可能にする回転ガントリーを有する。回転ガントリーに、第7の実施形態の超電導コイル700が用いられる。
【0295】
制御系58は、入射系50、シンクロトロン加速器52、ビーム輸送系54、及び照射系56の制御を行う。制御系58は、例えば、コンピュータである。
【0296】
第8の実施形態の重粒子線治療器800は、シンクロトロン加速器52及び回転ガントリーに、第7の実施形態の超電導コイル700が用いられる。したがって、特性の優れた重粒子線治療器800が実現される。
【0297】
第8の実施形態では、超電導機器の一例として、重粒子線治療器800の場合を説明したが、超電導機器は、核磁気共鳴装置(NMR)、磁気共鳴画像診断装置(MRI)、又は、超電導磁気浮上式鉄道車両であっても構わない。
【実施例】
【0298】
(実施例1)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を2cm、残りの2本を10cmとした。2cmの線は両端部間を、10cmの2本は片方の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0299】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を930℃で焼結することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体を粉砕することで、粒径の中央値(粒径)が3μm程度の超電導体粉末を作製した。
【0300】
得られた超電導体粉末と、粒径が50nm程度のGd2O3粉末と、粒径が70nm程度のBaCO3粉末と、粒径が30nm程度のCuO粉末とを乳鉢を用いて混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0301】
得られたスラリーを、上記2cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図13に示す構造となるように、2cmの超電導線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの超電導線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだまま炉に入れ、板の上面に錘を乗せて接続部分に加重を印加した。
【0302】
錘を乗せたまま、大気雰囲気中で780℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0303】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な超電導転移を確認した。本接続構造の、超電導転移後の電気抵抗値を基準値1.0として、以下実施例、比較例において相対電気抵抗値を示す。
【0304】
実施例1の接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。実施例1の接続構造の両端に引張荷重を印加し、接続部が剥がれたときの荷重を基準値1.0として、以下実施例、比較例において相対強度を示す。
【0305】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、板状又は扁平形状のGdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第1の結晶粒子と、不定形状のGdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第2の結晶粒子とが確認された。第1の結晶粒子の粒径(第1の粒径)は5μm程度であり、第2の結晶粒子の粒径(第2の粒径)は90nm程度であり、バイモーダルな分布であった。
【0306】
接続部には、Gd2O3、BaCO3、CuO及びGdとCuとOの化合物が存在した。また、微量のNaも確認された。
【0307】
(実施例2)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を2cm、残りの2本を10cmとした。2cmの線は両端部間を、10cmの2本は片方の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0308】
MOD法で作製されたGdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を粉砕することで、粒径の中央値(粒径)が50nm程度の超電導体粉末を作製した。
【0309】
得られた超電導体粉末と、粒径が50nm程度のGd2O3粉末と、粒径が70nm程度のBaCO3粉末と、粒径が30nm程度のCuO粉末とをジルコニアビーズを用いて、ビーズミルで混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0310】
得られたスラリーを、上記2cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図13に示す構造となるように、2cmの超電導線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの超電導線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0311】
窒素と酸素の混合雰囲気中で750℃に加熱し、第1の熱処理を行った。酸素濃度は20%とした。その後、室温付近まで冷却し、大気雰囲気中で550℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0312】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な超電導転移を確認し、相対電気抵抗値は1.0であった。
【0313】
実施例2の接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は1.0であった。
【0314】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、板状又は扁平形状のGdBa2Cu3O7-δ組成の第1の結晶粒子と、不定形状のGdBa2Cu3O7-δ組成の第2の結晶粒子とが確認された。第1の結晶粒子と第2の結晶粒子の粒径はいずれも100nm程度であり、バイモーダルな分布は確認されなかった。
【0315】
接続部には、Gd2O3、BaCO3、CuO及びGdとCuとOの化合物が存在した。また、微量のNaも確認された。
【0316】
(実施例3)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を3cm、残りの2本を10cmとした。3cmの線は両端部を、10cmの2本は端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0317】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を930℃で焼結することで、GdBa2Cu3O7-δ組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体を粉砕することで、粒径の中央値(粒径)が3μm程度の超電導体粉末を作製した。
【0318】
得られた超電導体粉末と、粒径が50nm程度のGd2O3粉末と、粒径が70nm程度のBaCO3粉末と、粒径が30nm程度のCuO粉末とをジルコニアビーズを用いて、ビーズミルで混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0319】
得られたスラリーを、上記3cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図15に示す構造となるように、3cmの超電導線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの超電導線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0320】
窒素と酸素の混合雰囲気中で750℃に加熱し、第1の熱処理を行った。酸素濃度は20%とした。その後、室温付近まで冷却し、大気雰囲気中で550℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0321】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な超電導転移を確認し、相対電気抵抗値は0.5であった。
【0322】
実施例3の接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は0.8であった。
【0323】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、板状又は扁平形状のGdBa2Cu3O7-δ組成の第1の結晶粒子と、不定形状のGdBa2Cu3O7-δ組成の第2の結晶粒子とが確認された。第1の結晶粒子の粒径は3μm程度であり、第2の結晶粒子の粒径は80nm程度であり、バイモーダルな分布であった。
【0324】
接続部には、微量のNaが確認されたが、Gd2O3、BaCO3、CuO及びGdとCuとOの化合物は確認されなかった。
【0325】
(実施例4)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3O7-δ層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を3cm、残りの2本を10cmとした。3cmの線は両端部を、10cmの2本は端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0326】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を930℃で焼結することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体を粉砕することで、粒径の中央値(粒径)が5μm程度の超電導体粉末を作製した。
【0327】
得られた超電導体粉末と、粒径が50nm程度のGd2O3粉末と、粒径が800nm程度のBaCO3粉末と、粒径が30nm程度のCuO粉末とを乳鉢を用いて混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0328】
得られたスラリーを、上記3cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図15に示す構造となるように、3cmの超電導線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの超電導線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだ状態で接続部分に加重が印加されるようにネジ止めをし、そのまま炉に入れた。
【0329】
Ar雰囲気中で800℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、500℃に冷却して炉に酸素ガスを導入し、酸素雰囲気中で500℃に保持して、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0330】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、93K付近で明確な超電導転移を確認し、相対電気抵抗値は0.8であった。また、本接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は0.7であった。
【0331】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、板状又は扁平形状のGdBa2Cu3O7-δ組成の第1の結晶粒子と、不定形状のGdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の第2の結晶粒子とが確認された。第1の結晶粒子の粒径(第1の粒径)は7μm程度であり、第2の結晶粒子の粒径(第2の粒径)は5μm程度であり、明確なバイモーダルな分布は確認されなかった。
【0332】
接続部には、Gd2O3、BaCO3、CuO及びGdとCuとOの化合物が存在した。また、微量のNaも確認された。
【0333】
(実施例5)
粒径の中央値(粒径)が10μm程度の超電導体粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0334】
(実施例6)
第1の熱処理温度を740℃としたこと以外は、実施例2と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0335】
(実施例7)
粒径の中央値(粒径)が12μm程度の超電導体粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0336】
(実施例8)
粒径の中央値(粒径)が700nm程度の超電導体粉末を作製したこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0337】
(実施例9)
粒径の中央値(粒径)が1μm程度の超電導体粉末を作製し、この超電導体粉末を撹拌機で攪拌し、粒子形状を不定形状にしたこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0338】
(実施例10)
アルギン酸ナトリウムを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0339】
(実施例11)
粒径が50nm程度のGd2O3粉末と、粒径が70nm程度のBaCO3粉末と、粒径が30nm程度のCuO粉末に対する、超電導体粉末混合量を低減したこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0340】
(実施例12)
粒径が50nm程度のGd2O3粉末と、粒径が70nm程度のBaCO3粉末と、粒径が30nm程度のCuO粉末に対する、超電導体粉末混合量を低減したこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0341】
(実施例13)
Gd(ガドリニウム)をY(イットリウム)に変え、第1の熱処理温度を800℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0342】
(実施例14)
Gd(ガドリニウム)をEu(エルビウム)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして接続構造を形成し、測定、観察をおこなった。
【0343】
(比較例1)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を2cm、残りの2本を10cmとした。2cmの線は両端部間を、10cmの2本は片方の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0344】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を930℃で焼結することで、GdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体を粉砕することで、粒径の中央値(粒径)が3μm程度の超電導体粉末を作製した。
【0345】
得られた超電導体粉末に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとし、上記2cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図13に示す構造と同様の構造となるように、2cmの超電導線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの超電導線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだまま炉に入れ、板の上面に錘を乗せて接続部分に加重を印加した。
【0346】
錘を乗せたまま、大気雰囲気中で950℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0347】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、明確な超電導転移が確認されず、高い抵抗値を示した。
【0348】
比較例1の接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は2であった。
【0349】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、板状又は扁平形状のGdBa2Cu3O7-δ組成で、粒径3μm程度の第1の結晶粒子と、微量のNaが確認された。
【0350】
(比較例2)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3Oδ(6≦δ<7)層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を2cm、残りの2本を10cmとした。2cmの線は両端部間を、10cmの2本は片方の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0351】
粒径が50nm程度のGd2O3粉末と、粒径が70nm程度のBaCO3粉末と、粒径が30nm程度のCuO粉末とを乳鉢を用いて混合した。得られた混合粉に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとした。
【0352】
得られたスラリーを上記2cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図13に示す構造と同様の構造なるように、2cmの超電導線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの超電導線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだまま炉に入れ、板の上面に錘を乗せて接続部分に加重を印加した。
【0353】
錘を乗せたまま、大気雰囲気中で780℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0354】
接続後の超電導線材の両端に端子をつけ、電気抵抗の温度依存性を測定したところ、明確な超電導転移が確認されず、高い抵抗値を示した。
【0355】
比較例2の接続構造は、80Kまで温度を低下させても室温と同等の接続性を維持し、室温から80Kまでの熱収縮に耐える接続強度を有していた。相対接続強度は1であった。
【0356】
接続部断面をSEM及びSEM-EDXで観察したところ、不定形状のGdBa2Cu3O7-δ組成で、粒径100nm程度の第1の結晶粒子が確認された。接続部には、Gd2O3、BaCO3、CuO及びGdとCuとOの化合物が存在した。また、微量のNaも確認された。
【0357】
(比較例3)
ハステロイ基材上に中間層とGdBa2Cu3Oδ(6≦δ≦7)層(酸化物超電導層)が形成され、銀及び銅の保護層で覆われた、酸化物超電導線材を3本用意した。それぞれの長さは1本を2cm、残りの2本を10cmとした。2cmの線は両端部間を、10cmの2本は片方の端部から1cmの部分を、硝酸及びアンモニアと過酸化水素の混合溶液を用いてウェットエッチングし、酸化物超電導層を露出させた。
【0358】
Gd2O3とBaCO3とCuOの粉末を用意し、適宜秤量したのちに、十分混合し、混合粉末を圧縮成形して圧粉体を作製した。得られた圧粉体を930℃で焼結することで、GdBa2Cu3O7-δ組成の酸化物超電導体を作製した。得られた酸化物超電導体を粉砕することで、粒径の中央値(粒径)が3μm程度の超電導体粉末を作製した。
【0359】
得られた超電導体粉末に水とアルギン酸ナトリウムを加え、スラリーとし、上記2cmの超電導線材の、露出させた酸化物超電導層に塗布した後、
図13に示す構造となるように、2cmの超電導線材のスラリーを塗布した部分と、10cmの超電導線材の超電導層を露出させた部分とを向かい合わせて重ね合わせ、上下から板で挟み込んだ。板で挟み込んだまま炉に入れ、板の上面に錘を乗せて接続部分に加重を印加した。
【0360】
錘を乗せたまま、大気雰囲気中で800℃に加熱し、第1の熱処理を行った。その後、室温付近まで冷却し、炉に酸素ガスを導入して、酸素雰囲気中で500℃に加熱し、第2の熱処理を行い、超電導線材の接続構造を形成した。
【0361】
比較例3の試料は、炉から取り出すとすぐに剥がれ、接続構造を成していなかった。
【0362】
表1に、実施例1ないし実施例14、及び、比較例1ないし比較例3で得られた試料の評価結果を示す。
【0363】
【0364】
表1から、第1の超電導層と、第2の超電導層と、上記第1の超電導層と上記第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子を含み、上記結晶粒子の粒径分布が、バイモーダル分布を含む接続層と、を備える超電導層の接続構造である、実施例1、実施例3、実施例5、及び、実施例7ないし実施例14は、バイモーダル分布を含まない比較例1ないし比較例3に比して、低い電気抵抗を有していることがわかる。
【0365】
また、表1から、実施例1、実施例3、実施例5、及び実施例7ないし実施例14のうち、(1)第1の粒径が100nm以上10μm以下、(2)第1の粒径が第2の粒径の10倍以上、(3)第1の分布に対応する粒子形状が板状又は扁平形状、(4)粒径が100nm以上10μm以下の結晶粒子の個数の割合が1%以上50%以下、(5)第1の粒子と第2の粒子と第3の粒子と第4の粒子とからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの粒子を含む、(6)ナトリウムを含む、という項目を満たす実施例1、実施例5、実施例8、実施例11、実施例14は、上記(1)ないし(6)の項目のうち少なくともひとつを満たしていない、実施例3、実施例7、実施例9、実施例10、実施例12、実施例13に比して、低い電気抵抗または高い機械的強度を有していることがわかる。
【0366】
また、表1から、第1の超電導層と、第2の超電導層と、上記第1の超電導層と上記第2の超電導層との間に設けられ、希土類元素(RE)、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む結晶粒子と、希土類元素(RE)及び酸素(O)を含む第1の粒子と、バリウム(Ba)、炭素(C)、及び酸素(O)を含む第2の粒子と、銅(Cu)及び酸素(O)を含む第3の粒子と、バリウム(Ba)、銅(Cu)、及び酸素(O)を含む第4の粒子とからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つの粒子と、を含む接続層と、を備える超電導層の接続構造である、実施例2、実施例4、実施例6は、第1の粒子と第2の粒子と第3の粒子と第4の粒子を含まない、比較例1、及び比較例3に比して、低い電気抵抗を有していることがわかる。
【0367】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0368】
16 第1の超電導層
26 第2の超電導層
30 接続層
31 第1の結晶粒子
32 第2の結晶粒子
33 第1の粒子
34 第2の粒子
35 第3の粒子
36 第4の粒子
46 第3の超電導層
100 接続構造
400 第4の実施形態の超電導線材
600 第6の実施形態の超電導線材
700 超電導コイル
800 重粒子線治療器