(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B44C 1/22 20060101AFI20240502BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240502BHJP
A44C 5/00 20060101ALI20240502BHJP
A44C 5/10 20060101ALN20240502BHJP
【FI】
B44C1/22 B
B23K26/364
A44C5/00 E
A44C5/10 510L
(21)【出願番号】P 2020147704
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】有賀 庄作
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸島 功
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070978(JP,A)
【文献】特開2016-190266(JP,A)
【文献】特開2015-066807(JP,A)
【文献】実開平04-100900(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/22
B23K 26/364
A44C 5/00
A44C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に装飾領域を有し、前記装飾領域にレーザ光による加工が施された部品の製造方法であって、
同一方向に延伸する複数の溝によって構成される複数の種類の装飾パターンを前記装飾領域に形成するように前記レーザ光を照射することを含み、
前記溝の延伸方向は、前記複数の種類の装飾パターンごとに異なり、
前記複数
の種類の装飾パターンは、第1装飾パターンと、当該第1装飾パターンを構成する溝とは異なる方向に延伸する溝によって構成される第2装飾パターンと、を含み、
前記第1装飾パターンと前記第2装飾パターンと
は、一部が相互に重なり、かつ相互に異なる外形を有する、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記複数の種類の装飾パターンは、前記第1装飾パターンを構成する溝、および前記第2装飾パターンを構成する溝とは異なる方向に延伸する溝によって構成される第3装飾パターンを更に含み、
前記装飾領域は、前記第1装飾パターン、前記第2装飾パターンおよび前記第3装飾パターンのうち、前記第1装飾パターンと前記第2装飾パターンとのみが重なる領域、前記第2装飾パターンと前記第3装飾パターンとのみが重なる領域、および前記第1装飾パターンと前記第3装飾パターンとのみが重なる領域を含む、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記複数の種類の装飾パターンの間の前記溝の延伸方向の角度差は、20度以上である、
請求項1
または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記複数の種類の装飾パターンの間の前記溝の延伸方向の角度差は、180度を前記装飾パターンの数で除した角度の整数倍である、
請求項1-
3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
表面の装飾領域にレーザ光による加工が施された部品であって、
同一方向に延伸する複数の溝によって構成される、前記装飾領域に形成された複数の種類の装飾パターンを有し、
前記溝の延伸方向は、前記複数の種類の装飾パターンごとに異なり、
前記複数
の種類の装飾パターンは、第1装飾パターンと、当該第1装飾パターンを構成する溝とは異なる方向に延伸する溝によって構成される第2装飾パターンと、を含み、
前記第1装飾パターンと前記第2装飾パターンと
は、一部が相互に重なり、かつ相互に異なる外形を有する、
ことを特徴とする部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計を構成する種々の部品に装飾を施すことがなされている。従来、塗料やメッキを用いた装飾が知られているが、かかる装飾には塗料が剥がれたり欠けたりするという問題点があった。そこで、近年では、レーザ光を用いて部品の表面に装飾加工を施すことがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、腕時計のバンドの内駒及び外駒等の部品の表面にレーザ光を照射することにより、複数の線によって構成された装飾パターンを描画する方法が記載されている。特許文献1に記載の方法によれば、部品の表面にヘアライン模様の風合いに近い模様を描画できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなレーザ光を用いた描画方法において、より多様な風合いの装飾を施すことが求められている。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、レーザ光による装飾において、多様な風合いを表現することを可能とする部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る製造方法は、表面に装飾領域を有し、装飾領域にレーザ光による加工が施された部品の製造方法であって、同一方向に延伸する複数の溝によって構成される複数の種類の装飾パターンを装飾領域に形成するようにレーザ光を照射することを含み、溝の延伸方向は、複数の種類の装飾パターンごとに異なる、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る製造方法において、複数の種類の装飾パターンの外形は、相互に異なる、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る製造方法において、複数の種類の装飾パターンの何れかは、他の種類の装飾パターンと重なるように形成される、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る製造方法において、複数の種類の装飾パターンの間の溝の延伸方向の角度差は、20度以上である、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る製造方法において、複数の種類の装飾パターンの間の溝の延伸方向の角度差は、180度を装飾パターンの数で除した角度の整数倍である、ことが好ましい。
【0012】
本発明に係る部品は、表面の装飾領域にレーザ光による加工が施された部品であって、同一方向に延伸する複数の溝によって構成される、装飾領域に形成された複数の種類の装飾パターンを有し、溝の延伸方向は、複数の種類の装飾パターンごとに異なる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る部品及びその製造方法は、レーザ光による装飾において、多様な風合いを表現することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】溝の形状について説明するための模式図である。
【
図6】レーザ加工装置7の概略構成の一例を示す図である。
【
図7】装飾処理の流れの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0016】
図1は、実施形態に係るバンド1の斜視図である。バンド1は、その両端が腕時計の本体に接続されることにより、腕時計を腕に装着可能とする部材である。バンド1は、中駒2、外駒3、軸部材4、中留5並びに一対のエンドピース6a及び6bを有する。
【0017】
中駒2は、バンド1の延伸方向に沿って複数配列される。外駒3は、中駒2をバンド1の幅方向の両側から挟むように、バンド1の延伸方向に沿って複数配列される。中駒2及び外駒3のそれぞれは、バンド1の延伸方向の両端付近にそれぞれ、幅方向に部材を貫通する貫通孔を有する。軸部材4は、中駒2の貫通孔とその両側の外駒3の貫通孔とに挿通されることにより、中駒2とその両側の外駒3とを接続する。このとき、中駒2とその両側の外駒3とがバンド1の延伸方向に段違いになるように接続されることにより、複数の中駒2及び外駒3が連結される。中駒2及び外駒3は、チタンにより形成されるが、他の金属により形成されてもよく、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネートなどの合成樹脂等により形成されてもよい。
【0018】
中留5は、腕時計の本体の12時側に接続されたバンド1と6時側に接続されたバンド1とを連結する金属製の部材である。エンドピース6a及び6bは、バンド1を腕時計の本体に接続する金属製の部材である。
【0019】
図2は、バンド1の中駒2の近傍を拡大した一部拡大斜視図である。中駒2は、第1中駒面2a、第2中駒面2b及び第3中駒面2cを有する。第1中駒面2aは、バンド1の表側において、バンド1の延伸方向と略平行に延伸する面である。第2中駒面2bは、バンド1の延伸方向と直交する第1中駒面2aの一方の辺から、第1中駒面2aに対して傾斜して延伸する面である。第3中駒面2cは、バンド1の延伸方向と直交する第1中駒面2aの他方の辺から、第1中駒面2aに対して傾斜して延伸する面である。
【0020】
外駒3は、第1外駒面3a、第2外駒面3b及び第3外駒面3cを有する。第1外駒面3aは、バンド1の表側において、バンド1の延伸方向と略平行に延伸する面である。第2外駒面3bは、バンド1の延伸方向と直交する第1外駒面3aの一方の辺から、第1外駒面3aに対して傾斜して延伸する面である。第3外駒面3cは、バンド1の延伸方向と直交する第1外駒面3aの他方の辺から、第1外駒面3aに対して傾斜して延伸する面である。
【0021】
第1中駒面2aは、レーザ光による加工が施される装飾領域である。第1中駒面2aには、複数の種類の装飾パターンが形成される。
【0022】
図3及び
図4は、第1中駒面2aに形成された装飾パターンの一例を示す図である。
図3及び
図4に示す例では、何れもウッドランド調の第1装飾パターン100、第2装飾パターン200及び第3装飾パターン300が相互に重なるように形成されている。
図4は、見やすさのため、
図3における第1装飾パターン100の外形を白色の実線で、第2装飾パターン200の外形を白色の破線で、第3装飾パターン300の外形を白色の一点鎖線でそれぞれ囲んで図示したものである。
図3及び
図4に示されるように、第1装飾パターン100、第2装飾パターン200及び第3装飾パターン300の外形は、相互に異なる。
【0023】
第1装飾パターン100、第2装飾パターン200及び第3装飾パターン300のそれぞれは、同一方向に延伸する複数の溝によって構成される。複数の溝が細かな間隔(例えば、60μm~120μmの間隔)で配置されることにより、装飾パターンが形成された領域が、印刷を施されたかのような風合いで視認される。なお、同一方向とは厳密に同一である場合に限られない。複数の溝は、製造上の誤差と認められる範囲(例えば、±1度以内の範囲)において相互に異なる方向に延伸してもよい。
【0024】
溝の延伸方向は、複数の種類の装飾パターンごとに異なる。
図3及び
図4に示す例では、第1装飾パターン100の複数の溝の延伸方向は方向D1であり、第2装飾パターン200の複数の溝の延伸方向は方向D1に直交する方向D2であり、第3装飾パターン300の複数の溝の延伸方向は方向D1とD2との中間の方向D3である。溝の延伸方向が装飾パターンの種類ごとに異なることにより、各種類の装飾パターンが、相互に異なる色による印刷を施されたかのような風合いで視認される。
図3及び
図4に示す例では、それぞれウッドランド調の外形を有する複数の種類の装飾パターンが、相互に異なる色による印刷を施されたように視認される結果、全体としてウッドランド迷彩のような風合いが表現されている。
【0025】
図5は、溝の形状について説明するための模式図である。第1中駒面2aに形成される複数の溝Cのそれぞれは、円形状の照射面を有するレーザの照射位置を同一方向に延伸する複数の直線Lのそれぞれに沿って徐々に移動させながら、レーザ光を第1中駒面2aに順次照射することにより形成される。これにより、溝Cは、平面視したときにうろこ形状の凹部が連結された形状を有する。ここで直線Lは、溝の延伸方向に該当する。各凹部の幅(すなわち、レーザの照射面の直径D)は、例えば40μmである。
【0026】
図6は、第1中駒面2aに加工を施すレーザ加工装置7の概略構成の一例を示す図である。レーザ加工装置7は、レーザ照射装置71、加工台72及び制御端末8を有する。レーザ照射装置71及び加工台72は、インターネット又はイントラネット等のネットワーク9を介して制御端末8と相互に通信可能に接続される。
【0027】
レーザ照射装置71は、第1中駒面2aにレーザ光を照射する装置である。レーザ照射装置71は、レーザ光を発生するYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ等のレーザ発振器、レーザ光を所定の水平面上の任意の位置に反射させるガルバノスキャナ及び反射されたレーザ光を集光して照射する集光レンズを有する。ガルバノスキャナは、ネットワーク9を介して受信した照射制御信号に基づいてレーザ光を反射させる位置を決定する。これにより、レーザ照射装置71は所定の方向に延伸する複数の溝を形成するようにレーザ光を照射できる。
【0028】
加工台72は、レーザ照射装置71の照射範囲内に配置され、中駒2を載置可能な平板状の載置面を有する。
【0029】
制御端末8は、PC(Personal Computer)又はサーバ等の情報処理端末である。制御端末8は、ネットワーク9を介して制御信号をレーザ照射装置71及び加工台72に送信する。制御端末8は、記憶部81、通信部82及び処理部83を有する。
【0030】
記憶部81は、データ及びプログラムを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。記憶部81は、処理部83による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。記憶部81は、データとして、装飾領域に形成される装飾パターンのデータを記憶する。装飾パターンのデータは、第1中駒面2aに形成される装飾パターンの外形の形状、溝の延伸方向及び溝の間隔等を示す情報を含む。装飾パターンのデータは、レーザ照射面の直径等の情報を含んでもよい。
【0031】
通信部82は、制御端末8をレーザ照射装置71及び加工台72と通信可能にするための構成であり、通信インタフェース回路を備える。通信部82が備える通信インタフェース回路は、有線LAN(Local Area Network)又は無線LAN等の通信インタフェース回路である。通信部82は、処理部83から供給されたデータをレーザ照射装置71に送信する。
【0032】
処理部83は、制御端末8の動作を統括的に制御する構成であり、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部83は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備える。処理部83は、記憶部81に記憶されているプログラムに基づいて、制御端末8の各種処理が適切に実行されるように制御端末8の各構成の動作を制御するとともに、各種処理を実行する。
【0033】
処理部83は、取得部831、照射制御部832及び判定部833を機能ブロックとして有する。これらの機能ブロックは、処理部83によって実行されるプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして制御端末8に実装されてもよい。
【0034】
図7は、レーザ加工装置7によって実行される第1中駒面2aの装飾処理の流れの一例を示すフロー図である。装飾処理は、加工が施されていない中駒2が加工台72に載置された状態で実行される。なお、記憶部81は、中駒2に施される複数の種類の装飾パターン(例えば、
図3に示す第1装飾パターン100、第2装飾パターン200及び第3装飾パターン300)のデータをあらかじめ記憶している。
【0035】
まず、取得部831は、装飾パターンのデータを取得する(S11)。取得部831は、記憶部81に記憶された複数の種類の装飾パターンのデータのうちの何れかの装飾パターンのデータを取得する。
【0036】
続いて、照射制御部832は、同一方向に延伸する複数の溝によって構成される装飾パターンを第1中駒面2aに形成するようにレーザ光を照射する(S12)。照射制御部832は、取得した装飾パターンのデータに基づいて、第1中駒面2aに複数の溝を形成するように、溝の延伸方向に沿って照射位置を徐々に移動させながらレーザ光を順次照射させる照射制御信号を生成する。照射制御部832は、通信部82を介して、生成した照射制御信号をレーザ照射装置71に送信することにより、装飾パターンを形成するようにレーザ光を照射する。
【0037】
続いて、判定部833は、記憶部81にデータが記憶されたすべての装飾パターンが形成されたか否かを判定する(S13)。全ての装飾パターンが形成されたと判定された場合(S13-Yes)、装飾処理は終了する。
【0038】
全ての装飾パターンが形成されていないと判定された場合(S13-No)、装飾処理はS11に戻り、取得部831は、まだ取得されていない装飾パターンのデータのうちの何れかの装飾パターンのデータを取得する。
【0039】
以上説明したように、中駒2は、表面の第1中駒面2aに複数形成された、それぞれが同一方向に延伸する複数の溝によって構成される装飾パターンを有する。また、複数の溝の延伸方向は、装飾パターンごとに異なる。これにより、中駒2は、レーザ光による装飾において、多様な風合いを表現することを可能とする。
【0040】
すなわち、複数の溝によって形成された装飾パターンは、溝の延伸方向、光源の方向及び装飾パターンを目視する方向の関係に応じて異なる風合いに視認される。中駒2は、装飾パターンごとに異なる延伸方向の溝によって構成された複数の装飾パターンを有することで、それぞれの装飾パターンが異なる風合いに視認され、多色印刷にも似た多様な風合いを表現することを可能とする。
【0041】
また、複数の装飾パターンは、他の装飾パターンと重なるように形成される。これにより、中駒2は、目視する方向に応じて複数の装飾パターンの見え方は異ならせ、多様な風合いを表現することを可能とする。
【0042】
すなわち、複数の溝によって形成された装飾パターンは、溝の延伸方向、光源の方向及び装飾パターンを目視する方向の関係に応じて異なる強調度合いで視認される。そして、
図8を用いて後述するように、複数の装飾パターンが重なるように形成される場合において、何れかの装飾パターンが強調されるように視認される場合、その装飾パターンに重なる他の装飾パターンは視認されにくくなる。他方、全ての装飾パターンが同等の強調度合いで視認される場合、全ての装飾パターンが視認される。中駒2において、異なる延伸方向の溝によって構成された複数の装飾パターンが重なるように形成されることにより、視認方向等に応じて装飾パターンの見え方が変化し、多様な風合いを表現することを可能とする。
【0043】
図8は、第1中駒面2aに形成された装飾パターンの一例を示す図である。
図8(a)は
図3に示した第1中駒面2aを
図3の方向D1から撮影した図であり、
図8(b)は第1中駒面2bを
図3の方向D2から撮影した図である。見やすさのため、
図8においては、第1装飾パターン100の外形が白色の実線で囲まれて図示されているが、第2装飾パターン200及び第3装飾パターン300の外形は図示されていない。
【0044】
図8(a)と
図8(b)とを比較すると、
図8(a)に示す例では、第1装飾パターン100、第2装飾パターン200及び第3装飾パターン300が同等の強調度合いで視認される結果、第1装飾パターン100と重なっている第2装飾パターン200及び第3装飾パターン300が相対的に視認されやすい。他方、
図8(b)に示す例では、第1装飾パターン100が他の装飾パターンよりも強調して視認される結果、第1装飾パターン100と重なっている第2装飾パターン200及び第3装飾パターン300が相対的に視認されにくい。このように、異なる延伸方向の溝によって構成された複数の装飾パターンが重なるように形成されることにより、視認方向等に応じて装飾パターンの見え方が変化し、多様な風合いが表現される。
【0045】
上述した説明では、第1装飾パターン100、第2装飾パターン200及び第3装飾パターン300を構成する複数の溝の延伸方向は、方向D1に対してそれぞれ0度、45度及び90度の角度を有するものとしたが、このような例に限られない。溝の延伸方向は装飾パターンごとに異なる限り任意に設定されてよい。もっとも、溝の延伸方向の角度差が大きいほど視認方向等に応じた見え方の変化が大きくなり多様な風合いが表現されることから、複数の種類の装飾パターンの間の溝の延伸方向の角度差は20度以上であることが好ましい。
【0046】
また、複数の装飾パターンの間の溝の延伸方向の角度差は、180度を装飾パターンの数で除した角度の整数倍となるように設定されてもよい。例えば、3つの装飾パターンが形成される場合、それらの溝の延伸方向は所定方向に対してそれぞれ0度、60度、120度の角度を有する。これにより、各装飾パターンの間の見え方の変化が概ね均一となり、多様な風合いが表現される。
【0047】
上述した説明では、3つの装飾パターンが形成されるものとしたが、このような例に限られない。装飾パターンの数は2つでもよく、4つ以上でもよい。もっとも、装飾パターンの数が多くなると複数の装飾パターンの間の溝の延伸方向の角度差が小さくなることから、装飾パターンの数は9つ以下であることが好ましい。
【0048】
上述した説明では、中駒2の第1中駒面2aに装飾パターンが形成されるものとしたが、このような例に限られない。装飾パターンは、第2中駒面2b又は第3中駒面2cに形成されてもよく、外駒3の第1外駒面3a、第2外駒面3b若しくは第3外駒面3c又は中留5等に形成されてもよい。装飾パターンは、腕時計の文字板、裏蓋や地板等の、バンド1に含まれない部品に形成されてもよく、腕時計以外の任意の金属部品又は樹脂部品に形成されてもよい。
【0049】
上述した説明では、第1装飾パターン100、第2装飾パターン200及び第3装飾パターン300はウッドランド調のパターンであるものとしたが、このような例に限られない。各装飾パターンは、ブロック調、ピクセル調等の任意のパターンであってもよい。
【0050】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した各部の処理は、本発明の範囲において、適宜に異なる順序で実行されてもよい。また、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
2 中駒
2a 第1中駒面
2b 第2中駒面
2c 第3中駒面
7 レーザ加工装置
8 制御端末
831 取得部
832 照射制御部
833 判定部