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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20240502BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020165735
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057461
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一慶
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132988(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017519(WO,A1)
【文献】特開2020-090838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/24
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車両本体と、
前記車両本体の後方に向かって設けられた開口を介して前記車両本体の内部と外部との間で気体を交換するファンと、
前記ファンより後方に設置され、前記車両本体の後方の障害物を検出する障害物検出装置と、
前記障害物検出装置の状態に基づき前記ファンの吸排気を制御するコントローラと、
前記障害物検出装置の温度を検出する温度センサと、を備え、
前記ファンは、正回転することによって前記車両本体の内部から外部に向かって排気を行う排気状態で前記車両本体の内部を冷却し、
前記コントローラは、前記温度センサの検出値が所定温度以上の場合、前記排気状態から、前記車両本体の外部から内部に向かって吸気する吸気状態になるように前記ファンを逆回転させる、
作業機械。
【請求項2】
前記ファンを前記排気状態から、前記車両本体の外部から前記開口を介して内部に向かって吸気する吸気状態に切り替える操作部を更に備え、
前記コントローラは、前記操作部の操作に基づいて、前記排気状態から、前記車両本体の外部から内部に向かって吸気する吸気状態になるように前記ファンを制御する、
請求項に記載の作業機械。
【請求項3】
走行可能な車両本体と、
前記車両本体の後方に向かって設けられた開口を介して前記車両本体の内部と外部との間で気体を交換するファンと、
前記ファンより後方に設置され、前記車両本体の後方の障害物を検出する障害物検出装置と、
前記障害物検出装置の状態に基づき前記ファンの吸排気を制御するコントローラと、を備え、
前記ファンは、正回転することによって前記車両本体の内部から外部に向かって排気を行う排気状態で前記車両本体の内部を冷却し、
前記コントローラは、所定時間ごとに、前記排気状態から、前記車両本体の外部から内部に向かって吸気する吸気状態になるように前記ファンを逆回転させる
作業機械。
【請求項4】
走行可能な車両本体と、
前記車両本体の後方に向かって設けられた開口を介して前記車両本体の内部と外部との間で気体を交換するファンと、
前記ファンより後方に設置され、前記車両本体の後方の障害物を検出する障害物検出装置と、
前記障害物検出装置の状態に基づき前記ファンの吸排気を制御するコントローラと、
前記障害物検出装置の汚れを検出する汚れ検出器と、を備え、
前記ファンは、正回転によって前記車両本体の外部から内部に向かって吸気を行う吸気状態で前記車両本体の内部を冷却し、
前記コントローラは、前記汚れ検出器の検出に基づいて、前記障害物検出装置が汚れていると判断した場合、前記吸気状態から、前記車両本体の内部から外部に向かって排気する排気状態になるように前記ファンを逆回転させる
作業機械。
【請求項5】
前記汚れ検出器は、前記障害物検出装置の表面状態を撮像する撮像装置であり、
前記コントローラは、前記撮像装置で撮像した画像に基づいて、前記障害物検出装置の汚れを判断する、
請求項に記載の作業機械。
【請求項6】
前記車両本体の内部に配置されたエンジンと、
前記ファンと前記エンジンの間に配置されたラジエターと、を更に備えた、
請求項1~のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
前記車両本体は、車体フレームと、前記車体フレームの前方に取り付けられた作業機と、を有する、
請求項1~のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項8】
エンジンの軸出力で駆動するポンプと、
前記ポンプから供給される作動油で駆動するモータと、を更に備え、
前記ファンは、前記モータの軸回転出力で駆動する、
請求項1~およびのいずれか1項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダ等の作業機械において、後方の障害物を検出し衝突を抑制する衝突抑制システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような衝突抑制システムでは、作業機械の後端にレーダ等の検出装置が設けられている。
【0004】
また、ホイールローダでは、車両後方にエンジンルームが設けられている。エンジンルームの後部にはエンジンの冷却水を冷却するためのファンが配置されている。ファンの駆動によって、エンジンルームの後端に形成された開口を介して、エンジンルームの内部と外部の間における吸気または排気が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3219005号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、検出装置をファンよりも車両後端側に設置した場合、例えば排気のときに冷却するように構成されているとき、エンジンルームの内部で温められた温度の高い空気が検出装置に当たる。このため、検出装置の温度が動作範囲を超えて検出装置の検出性能が低下するおそれがある。また、吸気のときに冷却するように構成されているときは、外部の塵等が検出装置の表面に付着し検出性能が低下するおそれがある。
【0007】
本開示は、後方の障害物を検出する性能の低下を抑制することが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の作業機械は、走行可能な車両本体と、ファンと、障害物検出装置と、コントローラとを備える。ファンは、車両本体の後方に向かって設けられた開口を介して車両本体の内部と外部との間で気体を交換する。障害物検出装置は、冷却装置より後方に設置され、車両本体の後方の障害物を検出する。コントローラは、障害物検出装置の状態に基づきファンの吸排気を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、後方の障害物を検出する性能の低下を抑制することが可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示にかかる実施の形態1のホイールローダの側面図。
図2】(a)本開示にかかる実施の形態1のホイールローダの後部を示す斜視図、(b)図2(a)のレーダ装置の拡大図、(c)図2(b)からカバー部を取り外した状態を示す図。
図3】本開示にかかる実施の形態1のホイールローダの後部を示す側面図。
図4】本開示にかかる実施の形態1のホイールローダの冷却装置および制御システムの構成を示す図。
図5】本開示にかかる実施の形態1のホイールローダの制御を示すフロー図。
図6】本開示にかかる実施の形態2のホイールローダの後部を示す斜視図。
図7】本開示にかかる実施の形態2のホイールローダの冷却装置および制御の構成を示す図。
図8】本開示にかかる実施の形態2のホイールローダの制御を示すフロー図。
図9】本開示にかかる実施の形態1の変形例におけるホイールローダの冷却装置および制御の構成を示す図。
図10】本開示にかかる実施の形態2の変形例におけるホイールローダの冷却装置および制御の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示にかかる作業機械の一例としてのホイールローダについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0012】
(ホイールローダの概要)
図1は、本実施の形態のホイールローダ100(作業機械の一例)を示す側面図である。
【0013】
本実施の形態のホイールローダ100は、車両本体1と、冷却装置30(図4参照)と、レーダ装置40(障害物検出装置の一例)と、温度センサ50と、コントローラ60(図4参照)と、を備える。
【0014】
車両本体1は、走行可能である。冷却装置30は、車両本体1のエンジンの冷却水等を冷却する。レーダ装置40は、車両本体1の後方において障害物の検出を行う。温度センサ50は、レーダ装置40の温度を測定する。コントローラ60は、温度センサ50の検出値に基づいて、冷却装置30の吸排気の制御を行う。
【0015】
車両本体1は、車体フレーム2と、作業機3と、一対のフロントタイヤ4(走行輪の一例)、キャブ5、エンジンルーム6、一対のリアタイヤ7(走行輪の一例)、およびステアリングシリンダ9と、カウンタウェイト10と、を備えている。
【0016】
なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席から前方を見た状態を基準とする方向を示す。また、「車幅方向」と「左右方向」は同義である。図1では、前後方向をXで示し、前方向を示すときはXf、後方向を示すときはXbで示す。
【0017】
ホイールローダ100は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行う。
【0018】
車体フレーム2は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11とリアフレーム12と、連結軸部13と、を有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置されている。連結軸部13は、車幅方向の中央に設けられており、フロントフレーム11とリアフレーム12を互いに揺動可能に連結する。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0019】
作業機3は作業機ポンプ(図示せず)からの作動油によって駆動される。作業機3は、フロントフレーム11の前部に揺動可能に取り付けられている。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17と、ベルクランク18と、を有する。
【0020】
ブーム14の基端は、フロントフレーム11の前部に回動可能に取り付けられている。ブーム14の先端は、バケット15の後部に回動可能に取り付けられている。バケット15の後部は、開口15bの反対側である。ブーム14の基端と先端の間には、リフトシリンダ16のシリンダロッドの先端が回動可能に取り付けられている。リフトシリンダ16のシリンダ本体は、フロントフレーム11に回動可能に取り付けられている。
【0021】
ベルクランク18は、一方の端部がバケットシリンダ17のシリンダロッドの先端に回動可能に取り付けられている。ベルクランク18の他方の端部は、バケット15の後部に回動可能に取り付けられている。ベルクランク18は、両端部の間においてブーム14の中央近傍のベルクランクサポート14dに回動可能に支持されている。バケットシリンダ17のシリンダ本体は、フロントフレーム11に回動可能に取り付けられている。バケットシリンダ17の伸縮力は、ベルクランク18によって回転運動に変換されてバケット15に伝達される。
【0022】
バケット15は、前方に向かって開口するようにブーム14の先端に回動可能に取り付けられている。バケットシリンダ17の伸縮によって、バケット15はブーム14に対して回動し、チルト動作およびダンプ動作を行う。
【0023】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されており、内部には、ステアリング操作のためのハンドルや、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後側であってリアフレーム12上に配置されており、エンジン(図示せず)が収納されている。
【0024】
カウンタウェイト10は、リアフレーム12の後部に設けられている。カウンタウェイト10は、エンジンルーム6の下方に配置されている。カウンタウェイト10の一部は、エンジンルーム6よりも後方に位置する。カウンタウェイト10の後方Xb側の端である後端10eが、ホイールローダ100の後端に相当する。
【0025】
(冷却装置30)
図2(a)は、車両本体1の後部を示す斜視図である。図3は、車両本体1の後部を示す側面図である。図3に示すように、エンジンルーム6の内部には、エンジン19と、ラジエター20と、冷却装置30のファン31が前後方向Xに沿って前から順に配置されている。
【0026】
エンジンルーム6は、本体部6aと、グリル6bと、を有している。本体部6aは、エンジン19およびラジエター20の前方、および左右の側方を覆う側板と、上方を覆う天板を形成するように設けられている。
【0027】
グリル6bは、本体部6aの後端に配置されている。グリル6bは、概ねファン31を覆うように形成されている。グリル6bの後面には、格子状の開口6cが形成されている。開口6cを介して、エンジンルーム6の内部と外部の間で吸排気が行われる。なお、図示していないが、グリル6bは、本体部6aに対して上方または左右方向に回動可能であり、エンジンルーム6の内部を清掃することができる。
【0028】
ラジエター20は、例えばエンジン19を冷却する冷却水を、ファン31の駆動により供給される気体と熱交換することによって冷却する。
【0029】
本実施の形態の冷却装置30は、ファン31が冷却対象であるラジエター20の下流側に配置され、ファン31が回転して排気状態(図3の矢印B参照)でラジエター20の冷却が行われる。排気状態は、エンジンルーム6の内部から開口6cを介して外部に向かって気体が排出される状態である。また、吸気状態は、エンジンルーム6の外部から開口6cを介して内部に向かって気体が吸引される状態である。
【0030】
次に、吸気状態と排気状態の間でファン31の回転を切り替え可能な冷却装置30について説明する。
【0031】
図4は、冷却装置30および制御システムの構成を示す図である。図4に示すように、冷却装置30は、上述したファン31と、油圧ポンプ32(ポンプの一例)と、作動油タンク33と、油圧モータ34(モータの一例)と、第1管路35と、第2管路36と、方向制御弁37と、を有している。
【0032】
油圧ポンプ32は、エンジン19の軸出力によって回転駆動される。油圧ポンプ32は、作動油タンク33から作動油を吸い込んで高圧の圧油を吐出し、油圧モータ34に作動油を供給する。
【0033】
油圧モータ34は、油圧ポンプ32によって供給される油圧によって駆動し、軸回転出力でファン31を回転駆動する。
【0034】
第1管路35と第2管路36は、油圧ポンプ32および作動油タンク33を油圧モータ34に接続する。第1管路35および第2管路36は、油圧ポンプ32からの圧油を油圧モータ34に供給または排出する。
【0035】
方向制御弁37は、第1管路35と第2管路36の途中に設けられている。第1管路35のうち油圧ポンプ32から方向制御弁37までの部分を管路部分35aとし、方向制御弁37から油圧モータ34までの部分を管路部分35bとする。また、第2管路36のうち作動油タンク33から方向制御弁37までの部分を管路部分36aとし、方向制御弁37から油圧モータ34までの部分を管路部分36bとする。
【0036】
方向制御弁37は、例えば4ポート3位置の方向制御弁である。方向制御弁37は、ソレノイドバルブである。方向制御弁37は、弁体を有し、コントローラ60からの指令信号に基づいて、停止位置P0、第1位置P1、または第2位置P2のいずれかの位置に弁体が配置するように切り換えられる。停止位置P0では、圧油の供給および排出が停止され、油圧モータ34の回転が停止される。
【0037】
方向制御弁37が停止位置P0から第1位置P1に切り換えられたときには、油圧ポンプ32から管路部分35a、管路部分35b、油圧モータ34、管路部分36b、管路部分36a、および作動油タンク33の順に圧油が供給され、油圧モータ34が正方向に回転する。一方、方向制御弁37が第1位置P1から第2位置P2に切り換えられると、油圧ポンプ32から管路部分35a、管路部分36b、油圧モータ34、管路部分35b、管路部分36a、および作動油タンク33の順に圧油が供給され、油圧モータ34が逆方向に回転する。
【0038】
なお、本実施の形態では、油圧モータ34が正回転したときにファン31が正回転し、排気状態となる。また、油圧モータ34が逆回転したときにファン31が逆回転し、吸気状態となる。
【0039】
すなわち、方向制御弁37を第1位置P1に切り換えた状態で油圧ポンプ32を駆動することによってファン31が正回転し、排気状態となる。また、方向制御弁37を第2位置P2に切り換えた状態で油圧ポンプ32を駆動することによってファン31が逆回転し、吸気状態となる。
【0040】
(レーダ装置40)
レーダ装置40は、図1に示すように、車両本体1の後方における障害物Sの存在を検出する。本実施の形態では、例えば図2(a)に示すように、2つのレーダ装置40が設けられている。一方のレーダ装置40は、リアフレーム12の左右方向における中心軸Aの左側に設けられ、他方のレーダ装置40は中心軸Aの右側に設けられている。2つのレーダ装置40は中心軸Aを挟んで左右対称に配置されている。なお、レーダ装置40の数は特に限定されるものではなく、例えば、リアフレーム12の中心軸A上に1つレーダ装置40が設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【0041】
レーダ装置40は、カウンタウェイト10の上方に配置されている。図2(a)および図3に示すように、レーダ装置40は、グリル6bの下部であってグリル6bの後方Xb側に配置されている。レーダ装置40は、グリル6bに固定されている。
【0042】
レーダ装置40は、例えばミリ波レーダである。レーダ装置40は、送信アンテナから発したミリ波帯の電波が障害物の表面で反射して戻ってくる電波を受信アンテナで検出し、物体までの距離を測定することができる。レーダ装置40による検出結果がプロセッサに送信され、プロセッサは、後進時に所定範囲内に障害物が存在することを検出できる。
【0043】
図2(b)は、レーダ装置40を後方から視た斜視図である。図2(c)は、図2(b)に示す構成からカバー部41bを取り外した状態を示す図である。レーダ装置40は、例えば、筐体41と、検出器42と、を有している。筐体41は、検出器42を収容する。筐体41は、検出器42を支持する支持部41aと、検出器42の表面を覆うカバー部41bと、を有する。支持部41aがグリル6bに固定されている。図2(b)に示すように、検出器42は、筐体41の支持部41aの表面に固定されている。検出器42に、送信アンテナおよび受信アンテナが設けられている。検出器42は、検出面42aが後方を向くように支持部41aに取り付けられている。
【0044】
(温度センサ50)
温度センサ50は、例えば、図2(c)に示すように、レーダ装置40の筐体41の内部に配置されている。温度センサ50は、レーダ装置40の筐体41内の温度を計測しているが、これに限らず、非接触でレーダ装置40(検出面42aやカバー部42b)の表面温度を計測してもよい。
【0045】
図2(a)で示したようにレーダ装置40が複数設けられている場合、温度センサ50は、各々のレーダ装置40に設けられていてもよいし、一部のレーダ装置40にだけ設けられていてもよい。
【0046】
温度センサ50による検出値は、後述する図4に示すように検出信号としてコントローラ60に送信される。
【0047】
(コントローラ60)
コントローラ60は、プロセッサと、記憶装置を含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、プログラムに従ってホイールローダ100の制御のための処理を実行する。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。記憶装置は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置は、ホイールローダ100を制御するためのプログラムおよびデータを記憶している。記憶装置は、例えば、後述する閾値のデータを記憶している
コントローラ60は、通常は、弁体が第1位置P1をとるように方向制御弁37を制御してファン31を正回転させてラジエター20の冷却を行う。
【0048】
コントローラ60には、温度センサ50による検出値が検出信号として入力される。コントローラ60は、温度の閾値を記憶しており、温度センサ50による検出値が閾値以上になった場合には、弁体が第2位置P2をとるように方向制御弁37を制御してファン31を逆回転させる。
【0049】
このように、ファン31を逆回転させることによって吸気状態となり、外部からの空気がレーダ装置40にあたってレーダ装置40が冷却されるため、温度を下げることができる。
【0050】
なお、閾値は、1つだけでも良いが、排気状態から吸気状態に換えるときの温度の閾値と、吸気状態から排気状態に戻すときの温度の閾値を変えてもよい。この場合、吸気状態に変えるときの温度の第1閾値よりも、排気状態に戻す温度の第2閾値を下げる方が好ましい。
【0051】
<動作>
次に、本実施の形態におけるホイールローダ100の制御について説明する。図5は、本実施の形態のホイールローダ100の制御を示すフロー図である。
【0052】
図5では、吸気状態に変えるときの温度の第1閾値よりも、排気状態に戻す温度の第2閾値を低く設定している場合について示す。
【0053】
はじめに、ステップS10において、ホイールローダ100のエンジン19の始動にともなってコントローラ60は、方向制御弁37を弁体が第1位置P1に配置された状態にし、油圧ポンプ32を駆動してファン31を正回転させて排気状態にする。
【0054】
次に、ステップS20において、コントローラ60は、温度センサ50によって検出されたレーダ装置40の温度が第1閾値以上であるか否かを判定する。検出された温度が第1閾値未満の場合、ステップS20の制御が繰り返され、ファン31が正回転している状態が維持される。
【0055】
一方、ステップS20において、温度センサ50によって検出された温度が第1閾値以上と判定された場合、ステップS30において、コントローラ60は、方向制御弁37を第1位置P1から第2位置P2に切り換えて、ファン31を逆回転させて吸気状態にする。
【0056】
次に、ステップS40において、コントローラ60は、温度センサ50によって検出された温度が第2閾値以下であるか否かを判定する。検出された温度が第2閾値よりも大きい場合、ステップS40の制御が繰り返され、ファン31が逆回転している状態が維持される。
【0057】
一方、ステップS40において、温度センサ50によって検出された温度が第2閾値以下と判定された場合、ステップS50において、コントローラ60は、方向制御弁37を第2位置P2から第1位置P1に切り換えて、ファン31を正回転させ、排気状態とする。ステップS50の次に、制御はステップS20に戻り、エンジン19が停止するまで、ステップS20~ステップS50が繰り返される。
【0058】
なお、複数のレーダ装置40の各々に温度センサ50が配置されているように複数の温度センサ50が設けられている場合は、例えば、ステップS20では、いずれか1つの温度センサ50の検出温度が第1閾値以上であるか否かを判定し、1つでも検出温度が第1閾値を超えた場合に、制御はステップS30に進む。また、ステップS40では、全ての検出温度が第2閾値以下であるか否かを判定し、全ての検出温度が第2閾値以下となった場合、制御はステップS50に進む。
【0059】
以上のように、レーダ装置40の温度が上昇した場合には、排気状態からファン31を逆回転させて吸気状態とすることによって、外部からの空気がレーダ装置40にあたり、レーダ装置40を冷却して温度を下げることができる。また、外部から吸気される気体によってレーダ装置40の温度が低下すると、排気状態に戻してラジエター20の冷却を行うことができる。
【0060】
(実施の形態2)
次に、本開示の実施の形態2におけるホイールローダ100について説明する。
【0061】
上記実施の形態1のホイールローダ100では、ラジエター20を排気状態で冷却しているが、本実施の形態2のホイールローダ100では、吸気状態でラジエター20の冷却が行われる。
【0062】
図6は、本実施の形態2のホイールローダ100の後部を示す側面図である。図6に示すように、本実施の形態2のホイールローダ100では、実施の形態1の順番とは異なり、エンジン19、ファン31、およびラジエター20が前後方向Xに沿って前から順に配置されている。このような構成によって、吸気状態(矢印C参照)でラジエター20を冷却することができる。
【0063】
図7は、本実施の形態2のホイールローダ100の冷却装置30および制御の構成を示す図である。本実施の形態2では、方向制御弁37を第1位置P1にしたときに、油圧ポンプ32を駆動させてファン31を回転させると吸気状態となるようにファン31が設置されている。このため、方向制御弁37を第2位置P2にしたとき、油圧ポンプ32を駆動させてファン31を回転させると排気状態となる。
【0064】
図7に示すように、本実施の形態2のホイールローダ100は、温度センサ50に代えて撮像装置70を備えている。撮像装置70は、レーダ装置40の表面状態を撮像する。撮像装置70は、特にレーダ装置40の後方を向くカバー部41bの表面(ミリ波レーダが射出および入射する面)の表面状態を撮像する。撮像した画像データは、コントローラ60に送信される。コントローラ60は、通常は方向制御弁37を第1位置P1に設定して吸気状態にしているが、撮像した画像データを画像解析してレーダ装置40の表面が汚れていると判断した場合は、方向制御弁37を第2位置P2に切り換える。
【0065】
これによって、レーダ装置40に付着した塵等の汚れを吹き飛ばして、汚れを低減することが可能となる。
【0066】
<動作>
次に、本実施の形態2におけるホイールローダ100の制御について説明する。図8は、本実施の形態のホイールローダ100の制御を示すフロー図である。
【0067】
はじめに、ステップS110において、ホイールローダ100のエンジン19の始動にともなってコントローラ60は、方向制御弁37を弁体が第1位置P1に配置された状態に設定し、油圧ポンプ32を駆動してファン31を正回転させて吸気状態とする。
【0068】
次に、ステップS120において、コントローラ60は、撮像装置70によって撮像された画像データを解析し、レーダ装置40の表面が汚れているか否かを判定する。ここで、汚れているか否かの判断は、例えば、初期状態の画像データと、現在の画像データを比較し、レーダ装置40の表面の濃淡が所定の濃淡よりも濃くなった場合が挙げられる。濃淡は、画像データを例えば白黒階調することによって数値として得ることができるため、所定の濃淡も数値として設定することができる。
【0069】
汚れていないと判定された場合、ステップS120の制御が繰り返され、ファン31が正回転して吸気状態が維持される。
【0070】
一方、ステップS120において、レーダ装置40の表面が汚れていると判定された場合、ステップS130において、コントローラ60は、方向制御弁37を第1位置P1から第2位置P2に切り換えて、ファン31を逆回転させて排気状態とする。
【0071】
次に、ステップS140において、コントローラ60は、撮像装置70によって検出された画像データに基づいて汚れが除去されたか否かを判定する。ここで、ステップS140における汚れが除去されたか否かの判定の閾値は、ステップS120における閾値より低い値(白に近い値)とすることができる。汚れが除去されていないと判定された場合、ステップS140の制御が繰り返され、ファン31が逆回転している排気状態が維持される。
【0072】
一方、ステップS140において、汚れが除去されたと判定された場合、ステップS150において、コントローラ60は、方向制御弁37を第2位置P2から第1位置P1に切り換えて、ファン31を正回転させて吸気状態とする。ステップS150の次に、制御はステップS120に戻り、エンジン19が停止するまで、ステップS120~ステップS150が繰り返される。
【0073】
なお、複数のレーダ装置40が設けられている場合は、例えば、ステップS120では、いずれか1つのレーダ装置の表面が汚れていると判定した場合に、制御はステップS130に進む。また、ステップS140では、全てのレーダ装置40の表面から汚れが除去されたと判定した場合、制御はステップS150に進む。
【0074】
以上のように、レーダ装置40の表面が汚れた場合に、吸気状態からファン31を逆回転させて排気状態とすることによってレーダ装置40にエンジンルーム6の内部からの空気を当てることができ、レーダ装置40から汚れを吹き飛ばすことができる。また、汚れが除去されると、排気状態から吸気状態に戻し、ラジエター20を冷却することができる。
【0075】
<特徴>
(1)
本実施の形態1、2のホイールローダ100(作業機械の一例)は、走行可能な車両本体1と、ファン31と、レーダ装置40(障害物検出装置の一例)と、コントローラ60とを備える。ファン31は、車両本体1の後方に向かって設けられた開口6cを介して車両本体1の内部と外部との間で気体を交換する。レーダ装置40は、ファン31より後方に設置され、車両本体1の後方の障害物Sを検出する。コントローラ60は、レーダ装置40の状態に基づきファン31の吸排気を制御する。
【0076】
これにより、例えば実施の形態1のように通常排気状態で冷却する場合、レーダ装置40の温度が高くなったときには、ファン31を吸気状態にしてレーダ装置40の温度を低減することができる。一方、実施の形態2のように通常吸気状態で冷却する場合には、レーダ装置40の汚れがひどくなったときには、ファン31を排気状態にしてレーダ装置40の汚れを除去することができる。
【0077】
このため、レーダ装置40の後方の障害物を検出する性能の低下を抑制することができる。
【0078】
(2)
本実施の形態1のホイールローダ100(作業機械の一例)では、ファン31は、車両本体1の内部から外部に向かって排気を行う排気状態で車両本体1の内部を冷却する。
【0079】
これにより、車両本体1の内部から外部への排気によってレーダ装置40の温度が高くなったときに、ファン31を吸気状態にしてレーダ装置40の温度を下げることができる。
【0080】
(3)
本実施の形態1のホイールローダ100(作業機械の一例)は、温度センサ50を更に備える。温度センサ50は、レーダ装置40の温度を検出する。コントローラ60は、温度センサ50の検出値が所定温度以上の場合、排気状態から、車両本体1の外部から内部に向かって吸気する吸気状態になるようにファン31を制御する。
【0081】
これにより、車両本体1の内部から外部への排気によってレーダ装置40の温度が高くなったことを検出できるため、ファン31を吸気状態にしてレーダ装置40の温度を下げることが可能となる。
【0082】
(4)
本実施の形態2のホイールローダ100(作業機械の一例)では、ファン31は、車両本体1の外部から内部に向かって吸気を行う吸気状態で車両本体1の内部を冷却する。
【0083】
これにより、車両本体1の外部から内部への吸気によってレーダ装置40が汚れたときに、ファン31を排気状態にして汚れを吹き飛ばしレーダ装置40の汚れを低減することができる。
【0084】
(5)
本実施の形態2のホイールローダ100(作業機械の一例)は、撮像装置70(汚れ検出器の一例)を更に備える。撮像装置70は、レーダ装置40の汚れを検出する。コントローラ60は、撮像装置70の検出に基づいて、レーダ装置40が汚れていると判断した場合、吸気状態から、車両本体1の内部から外部に向かって排気する排気状態になるようにファン31を制御する。
【0085】
これにより、車両本体1の外部から内部への吸気によってレーダ装置40が汚れたことを検出できるため、ファン31を排気状態にして汚れを吹き飛ばすことによってレーダ装置40の汚れを低減することができる。
【0086】
(6)
本実施の形態2のホイールローダ100(作業機械の一例)では、撮像装置70(撮像部の一例)は、レーダ装置40の表面状態を撮像する。コントローラ60は、撮像装置70で撮像した画像に基づいて、レーダ装置40の汚れを判断する。
【0087】
これにより、撮像装置70で撮像した画像に基づいて、レーダ装置40の汚れを検出することができる。
【0088】
(7)
本実施の形態1のホイールローダ100(作業機械の一例)は、エンジン19と、ラジエター20と、更に備える。エンジン19は、車両本体1の内部に配置されている。ラジエター20は、ファン31とエンジン19の間に配置されている。
【0089】
これにより、車両本体1の内部から外部に向かって排気を行う排気状態で車両本体1の内部の冷却を行い、レーダ装置40の温度が高くなったときに、ファン31を吸気状態にしてレーダ装置40の温度を下げることができる。
【0090】
(8)
本実施の形態1、2のホイールローダ100(作業機械の一例)では、車両本体1は、車体フレーム2と、車体フレーム2の前方に取り付けられた作業機3と、を有する。
【0091】
これにより、前方に作業機3が設けられたホイールローダ100において、レーダ装置40の後方の障害物を検出する性能の低下を抑制することができる。
【0092】
(9)
本実施の形態1、2のホイールローダ100(作業機械の一例)は、油圧ポンプ32
と、油圧モータ34と、を備える。油圧ポンプ32は、エンジン19の軸出力で駆動する。油圧モータ34は、油圧ポンプ32から供給される作動油で駆動する。ファン31は、油圧モータ34の軸回転出力で駆動する。
【0093】
これにより、油圧駆動によってファン31を回転することができる。
【0094】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0095】
(A)
上記実施の形態1では、温度センサ50の検出値によって排気状態から吸気状態になるようにファン31を自動的に制御しているが、これに限らなくてもよい。例えば、図9に示すように、ファン31の回転を正回転と逆回転の間で切り換える操作スイッチ150(操作部の一例)と、温度センサ50で検出された温度を表示する表示部151が設けられていてもよい。この場合、オペレータが表示部151を確認し、表示部151の温度に基づいて適宜吸気状態とするように、操作スイッチ150を押下すればよい。
【0096】
これにより、表示部151の表示温度に基づいてオペレータが操作スイッチ150を操作することによって、ファン31を吸気状態にしてレーダ装置40の温度を下げることが可能となる。また、オペレータは、表示温度に基づいて吸気状態から排気状態に戻すことができる。
【0097】
(B)
上記実施の形態2では、撮像装置70の画像データに基づいて吸気状態から排気状態になるようにファン31を自動的に制御しているが、これに限らなくてもよい。例えば、図10に示すように、ファン31の回転を正回転と逆回転の間で切り換える操作スイッチ170(操作部の一例)と、撮像装置70で撮像された画像を表示する表示部171が設けられていてもよい。この場合、オペレータが表示部171を確認し、表示部171の画像に基づいて適宜排気状態とするように、操作スイッチ170を押下すればよい。
【0098】
これにより、表示部151の画像に基づいてオペレータが操作スイッチ170を操作することによって、ファン31を排気状態にしてレーダ装置40から汚れを吹き飛ばすことができる。また、オペレータは、画像に基づいて汚れが取り除かれたと判断した場合に吸気状態に戻すことができる。
【0099】
(C)
上記実施の形態1では、温度センサ50の検出値によって排気状態から吸気状態になるようにファン31を自動的に制御しているが、温度センサ50が設けられていなくてもよい。例えば、エンジン19の作動時間における所定時間ごとに自動的に予め設定した時間の間、吸気状態になるようにファン31を自動的に制御してもよい。
【0100】
このように、コントローラ60が、所定時間ごとに、排気状態から吸気状態になるようにファン31を制御することで、レーダ装置40の温度を下げることが可能となる。
【0101】
(D)
上記実施の形態2では、撮像装置70の画像データに基づいて吸気状態から排気状態になるようにファン31を自動的に制御しているが、撮像装置70が設けられていなくてもよい。例えば、エンジン19の作動時間における所定時間ごとに自動的に予め設定した時間の間、排気状態になるようにファン31を自動的に制御してもよい。
【0102】
このように、コントローラ60が、所定時間ごとに、吸気状態から排気状態になるようにファン31を制御することで、レーダ装置40から汚れを取り除くことが可能となる。
【0103】
(E)
上記実施の形態2では、汚れ検出器の一例として撮像装置70を用いて汚れを検出しているが、これに限らなくてもよい。例えば、反射型のレーザセンサ等でレーダ装置40の表面の汚れを検出してもよい。
【0104】
(F)
レーダ装置40の配置は、上記実施の形態の構成に限らず、中心軸Aよりも左側に設けられた1つのレーダ装置40の上方または下方に、1つまたは複数のレーダ装置40を配置してもよい。また、中心軸Aよりも右側に設けられた1つのレーダ装置40の上または下に更に1つまたは複数のレーダ装置40を配置してもよい。
【0105】
(G)
上記実施の形態では、複数のレーダ装置40はリアフレーム12の中心軸Aを基準に左右対称に配置されているが、左右対称でなくてもよい。
【0106】
(H)
上記実施の形態では、レーダ装置40は、グリル6bに固定されているが、これに限るものではなく、例えば、カウンタウェイト10に取り付けられてもよい。カウンタウェイト10に取り付けられる場合、カウンタウェイト10の表面に取り付けられることに限らず、埋め込まれていてもよい。
【0107】
(I)
上記実施の形態では、作業機械の一例としてホイールローダを用いて説明したが、ダンプトラック、モータグレーダ、油圧ショベル、フォークリフト等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本開示の作業機械および作業機械の制御方法によれば、後方の障害物を検出する性能の低下を抑制することが可能な効果を発揮し、ホイールローダ等として有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 :車両本体
6c :開口
31 :ファン
40 :レーダ装置
41 :ファン
50 :温度センサ
60 :コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10