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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】軸受を備えたロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/16 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
H02K5/16
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020167894
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2021061742
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】10 2019 126 660.2
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ブラーザー
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017103936(DE,A1)
【文献】特開平11-187637(JP,A)
【文献】特開昭59-137617(JP,A)
【文献】特公昭48-020328(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ磁石(1a)と、固定型の軸(10)に回転可能に支持する軸受(2)を有するロータボディ(3)とを備え、前記軸受(2)は、第1の軸受半割シェル(4)と、第2の軸受半割シェル(5)とを含んでおり、少なくとも前記第1の軸受半割シェル(4)は、前記ロータボディ(3)の内部で前記第2の軸受半割シェル(5)に対して可動に配置されており、前記第1の軸受半割シェル(4)は、前記軸(10)に対して接線方向に配置されたばね弾性要素(6,6a,6b)によって前記ロータボディ(3)に支持されている、電気モータ用のロータ(1)であって、
前記ばね弾性要素(6,6a,6b)は、前記軸(10)の軸線方向に配置された両方の側面に、軸線方向に延在するそれぞれ少なくとも1つの第1の突出部(13a)を有し、前記第1の軸受半割シェルは、その支持面とは反対側に位置している面に、軸線方向で互いに離間された少なくとも2つの第2の突出部(13b)を有し、前記第2の突出部(13b)は、それぞれ半径方向に延在していて、前記第1の突出部(13a)と協働して前記ばね弾性要素(6,6a,6b)を位置決めすることを特徴とする、ロータ(1)。
【請求項2】
前記ばね弾性要素(6,6a,6b)は、前記ばね弾性要素(6)を位置決めする2つの第1の突出部(13a)を、前記軸(10)の軸線方向に配置された両方の前記側面にそれぞれ有していることを特徴とする、請求項1記載のロータ(1)。
【請求項3】
前記ばね弾性要素(6,6a,6b)は、軸近傍の中心領域(31)と、前記中心領域(31)に接続した2つの偏心領域(32)とを有しており、前記偏心領域(32)は、前記中心領域に対して対称的に形成された切欠き(34)を有することを特徴とする、請求項1または2記載のロータ(1)。
【請求項4】
前記ロータボディ(3)は、前記ばね弾性要素(6,6a,6b)を収容する切欠きの内周面に、軸線方向に延在する突出部(21)を有しており、前記突出部(21)は、前記ばね弾性要素(6,6a,6b)に向かい合うように配置されていて、前記ばね弾性要素(6,6a,6b)の最大の撓みを制限していて、
前記第1の軸受半割シェル(4)の前記第2の突出部(13b)は、前記ロータボディ(3)の前記突出部(21)と協働して前記ばね弾性要素(6,6a,6b)の最大の撓みを制限することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載のロータ(1)
【請求項5】
ロータ磁石(1a)と、固定型の軸(10)に回転可能に支持する軸受(2)を有するロータボディ(3)とを備え、前記軸受(2)は、第1の軸受半割シェル(4)と、第2の軸受半割シェル(5)とを含み、少なくとも前記第1の軸受半割シェル(4)は、前記ロータボディ(3)の内部で前記第2の軸受半割シェル(5)に対して可動に配置されており、前記第1の軸受半割シェル(4)は、前記軸(10)に対して接線方向に配置されたばね弾性要素(6b)によって前記ロータボディ(3)に支持されている、電気モータ用のロータ(1)であって、
前記ばね弾性要素(6b)は、軸近傍の中心領域(31)と、前記中心領域(31)に接続した2つの偏心領域(32)とを有し、前記偏心領域(32)は、前記中心領域(31)に対して対称的に形成された切欠き(34)を有していることを特徴とする、ロータ(1)
【請求項6】
前記切欠き(34)は、前記中心領域(31)を起点として前記偏心領域(32)に沿った延在において拡幅していることを特徴とする、請求項3または請求項5記載のロータ(1)。
【請求項7】
前記ばね弾性要素(6)は、前記偏心領域(32)に接続した縁領域(33)を含んでおり、前記縁領域(33)は、切欠きを有しておらず、前記ばね弾性要素(6)は、前記縁領域(33)で前記ロータボディ(3)に支持されることを特徴とする、請求項3、5、及び、6のいずれか1項記載のロータ(1)。
【請求項8】
前記ばね弾性要素(6,6a,6b)はビーム要素であり、前記第1の軸受半割シェル(4)は、前記ビーム要素の長辺側に配置されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のロータ(1)。
【請求項9】
前記軸受半割シェル(4,5)の、前記軸(10)に接触する壁は、支持すべき前記軸(10)に対して対応した形状に形成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のロータ(1)。
【請求項10】
前記ロータボディ(3)は、前記ばね弾性要素(6,6a,6b)を収容する切欠きの内周面に、軸線方向に延在する突出部(21)を有しており、前記突出部(21)は、前記ばね弾性要素(6,6a,6b)に向かい合うように配置されていて、前記ばね弾性要素(6,6a,6b)の最大の撓みを制限していることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のロータ(1)。
【請求項11】
前記ロータボディ(3)は、ウェブ(20)によって画定された中空室(15)有しており、前記中空室(15)、低い慣性モーメントおよび不釣り合いの回避に寄与する、請求項1から10までのいずれか1項記載のロータ(1)。
【請求項12】
前記ロータボディ(3)は、前記ロータ磁石(1a)に形成されたポケット(16)に係合するフックまたは突出部(14)を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のロータ(1)。
【請求項13】
前記ロータボディ(3)は、その軸線方向の端部にそれぞれ1つの固定領域(12)を有しており、前記固定領域(12)は、前記固定領域(12)同士の間に配置された保持領域(11)よりも大きな周長さを有し、前記ロータ磁石(1a)は、前記保持領域(11)に配置され、前記固定領域(12)によって保持されることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のロータ。
【請求項14】
前記ロータボディ(3)のフックまたは突出部(14)は、前記ロータボディ(3)の固定領域(12)に配置されているまたは成形されていることを特徴とする、請求項7または8記載のロータ。
【請求項15】
前記ロータボディ(3)は、前記ばね弾性要素(6,6a,6b)を受ける少なくとも2つの載置部(9)を有し、前記ばね弾性要素(6,6a,6b)は、前記ロータボディ(3)の内部に半径方向でのばね弾性要素の運動が可能に支持されていることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載のロータ(1)。
【請求項16】
前記ロータボディ(3)は、前記ばね弾性要素(6,6a,6b)を受ける少なくとも2つの載置部(9)を有し、
前記ばね弾性要素(6,6a,6b)の前記載置部(9)は、ロータ軸線と前記第1の軸受半割シェル(4)の前記壁の頂点とによって規定された平面から離間されていることを特徴とする、請求項記載のロータ(1)。
【請求項17】
前記ばね弾性要素(6,6a,6b)は、前記ロータボディ(3)の回転運動による励起時に、前記軸(10)に対する前記第1の軸受半割シェル(4)の並進変位を生じさせる、より高い次数の固有モードだけを形成するように構成されていることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載のロータ(1)。
【請求項18】
前記ばね弾性要素(6,6a,6b)は、金属またはプラスチックから成ることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載のロータ(1)。
【請求項19】
前記ばね弾性要素(6,6a,6b)は、前記第1の軸受半割シェル(4)と一体に形成されていることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載のロータ(1)。
【請求項20】
前記載置部(9)同士の間に延在する接続線から前記軸(10)に向かって延びる法線に沿った間隔は、前記法線に沿った前記ばね弾性要素(6,6a,6b)および/または前記第1の軸受半割シェル(4)の延在長さよりも短いことを特徴とする、請求項15記載のロータ(1)。
【請求項21】
請求項1から2のいずれか1項記載のロータ(1)を含む電気モータ。
【請求項22】
ロータ磁石(1a)と、固定型の軸(10)に回転可能に支持する軸受(2)を有するロータボディ(3)とを備え、前記軸受(2)は、第1の軸受半割シェル(4)と、第2の軸受半割シェル(5)とを含み、少なくとも前記第1の軸受半割シェル(4)は、前記ロータボディ(3)の内部で前記第2の軸受半割シェル(5)に対して可動に配置されており、前記第1の軸受半割シェル(4)は、前記軸(10)に対して接線方向に配置されたばね弾性要素(6b)によって前記ロータボディ(3)に支持されている、電気モータ用のロータ(1)であって、
前記ばね弾性要素(6b)は、端面に切欠き(30)を有していることを特徴とする、ロータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定型の軸にロータを回転可能に支持する軸受を備えたロータボディを有し、軸受は、第1の軸受半割シェルと、第2の軸受半割シェルとを含み、少なくとも第1の軸受半割シェルは、ロータボディの内部で第2の軸受半割シェルに対して可動に配置されている、電気モータ用のロータに関する。
【0002】
発明の背景
軸受を備えたロータは、例えば自動車、産業用途または家庭用途において、例えばファンまたは調整システムにおける電気モータ、特にブラシレス直流モータに使用される。通常では、固定型の軸を中心として回転し、この目的のために、相応の軸受を有するロータが使用される。このような軸受は、たいていラジアル滑り軸受として形成されている。可能な限り摩擦の少ない回転のために、軸受と軸との間に径方向間隙が必要となる。しかしながら、この間隙によって、ロータボディの径方向運動が可能となり、このことは、望ましくないノイズ発生に繋がることがある。
【0003】
独国特許出願公開第1932251号明細書に基づいて、固定型の軸受ハウジングが公知である。この公知の軸受ハウジングでは、回転する軸に弾性要素を用いて径方向力が加えられ、予荷重が加えられる。しかしながら、この種の軸受は回転系に使用することができない。なぜならば、モータ回転数が高い場合に、高い慣性モーメントに基づいて、高い慣性力が支持されなければならないからである。回転数が高い場合に、遊びのない支持のために必要な支持圧を維持することができない。
【0004】
さらに、独国特許出願公開第102017103936号明細書に基づいて、ロータ軸にロータを支持するばね弾性要素を備えたロータが公知である。同明細書に開示されたアセンブリは、ばね弾性要素を含んでおり、このばね弾性要素は、その最大の撓みの領域で切欠きによって弱化させられている。別の構成では、この領域で剛性が著しく高められている。すべての構成において、ばね作用は、ばね弾性要素の形状にわたって不均等に分配されている。さらに、例えば切欠きの領域で材料疲労が急速に生じてしまう。
【0005】
したがって、本発明の課題は、回転数が高い場合でも高い支持圧を維持することができる、ロータを回転可能に支持する、遊びのない軸受を備えたロータを提供することである。
【0006】
発明の簡単な説明
この課題は、独立請求項に記載された本発明によって解決される。好適な発展形は従属請求項に認めることができる。
【0007】
本発明によれば、ロータ磁石を保持しかつ中心に軸受を有するロータボディから成るロータが提供されている。ロータ磁石は、周方向で交互に配置された磁極を有する、好ましくはリング状の永久磁性体から成っていてよい。ロータボディは、例えば9つのステータ磁極を有するステータ内に位置している。これらのステータ磁極には、ステータ巻線が巻き付けられている。
【0008】
本発明によれば、冒頭で定義した形態のロータが提供されている。第1の軸受半割シェルは、軸に対して接線方向に配置されたばね弾性要素によってロータボディに支持されている。ばね弾性要素を軸に対して接線方向に配置することによって、半径方向に延在するばね要素を省略することができる。これによって、ロータの慣性モーメントが減少させられる。こうして、不均等な質量分布がほとんど問題にならなくなる。したがって、外乱または非対称の質量分布により発生するロータの振動がより弱く形成される。同時に、慣性モーメントは、ロータ磁石の特別な形状によって減少させられる。ロータボディには、ウェブによって分離される中空室が形成されている。この中空室は、貫通孔の形態で付与されていてもよいし、好ましくはロータボディの一方の終端面で軸線方向の壁によって画定されていてもよい。中空室が形成されていることによって、ロータボディはより軽量になり、これによって、慣性モーメントをほとんど発生させない。同時に、中空室に向かい合って、不釣り合いを回避する突出部が設けられている。ロータボディは、その円形の外縁部に4つのフックを有しており、これらのフックは、ロータ磁石の相応のポケット内に係合している。このことは、例えば、プラスチック製のロータボディが、射出成形法を用いてロータ磁石に取り付けられているか、またはロータボディのフックが、例えば高温かしめされ、ロータ磁石のポケット内に押込み成形され、これによって、ロータ磁石をロータボディに位置固定することによって可能になる。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、ばね弾性要素は、軸の軸線方向に配置された両方の側面に、軸線方向に延在するそれぞれ少なくとも1つの第1の突出部を有しており、第1の軸受半割シェルは、その支持面とは反対側に位置している面に、軸線方向で互いに離間させられた少なくとも2つの第2の突出部を有している。これらの第2の突出部は、それぞれ半径方向に延在していて、第1の突出部と協働してばね弾性要素を位置決めする。
【0010】
好ましくは、ばね弾性要素は、ばね弾性要素を位置決めする2つの第1の突出部を、軸の軸線方向に配置された両方の側面にそれぞれ有している。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、ばね弾性要素は、軸近傍の中心領域と、中心領域に接続した2つの偏心領域とを有しており、偏心領域は、中心領域に対して対称的に形成された切欠きを有している。
【0012】
本発明の両態様は、任意に組み合わせることができる。
【0013】
好ましくは、切欠きは、中心領域を起点として偏心領域に沿った延在のなかで拡幅している。これらの切欠きは、例えば台形に形成されていてよい。この場合、台形の小さい方の底面が中心領域に隣接している。原則的に切欠きへの付形は任意であってよい。これに対して、ばね弾性要素が中心領域に弱化部を可能な限り有していないかまたはほんの少ししか有していないことが重要である。したがって、ばね弾性要素がロータの作動中に最大の撓みを被る領域において弱化させられなくなる。これに対して、偏心領域では、ばね弾性要素の弱化がもたらされており、これによって、ここでは、より大きな撓みが可能になる。したがって、全体として、切欠きによって、ばね弾性要素を、最も強く負荷がかけられる領域において弱化させることなしに、変位に沿ったばね力の線形の推移に近づけることを達成することができる。
【0014】
本発明の幾つかの構成において、さらに好ましくは、ばね弾性要素は、偏心領域に接続した縁領域を含んでおり、縁領域は、切欠きを有していない。特にばね弾性要素は、その縁領域でロータボディに支持することができる。
【0015】
幾つかの構成において、ロータボディは、ばね弾性要素を収容するための切欠きの内周面に、軸線方向に延在する突出部を有していることが提案されている。突出部は、ばね弾性要素に向かい合って位置するように配置されていて、ばね弾性要素の最大の撓みを制限している。特に、第1の軸受半割シェルの第2の突出部は、ばね弾性要素の最大の撓みを制限するために、ロータボディの突出部と協働することが提案されていてよい。
【0016】
好ましくは、ロータボディは、その軸線方向の端部にそれぞれ1つの固定領域を有しており、固定領域は、固定領域同士の間に配置された保持領域よりも大きな周長さを有している。これによって、ロータ磁石が保持領域に配置され、固定領域によって保持することができる。さらに、固定領域に突出部またはフックが配置されているかまたは成形されており、突出部またはフックは、ロータ磁石の切欠きまたはポケット内に係合しているようになっていてよい。したがって、このような構成において、ロータ磁石の一層良好な固定を達成することができる。
【0017】
本発明の幾つかの構成において、ばね弾性要素はビーム要素であり、第1の軸受半割シェルは、ビーム要素の長辺側に配置されている。ビーム要素は板ばねとして作用し、高い緊締力を提供することができる。ビーム要素は単純かつ廉価である。第1の軸受半割シェルがビーム要素の長辺側に配置されていることによって、ビーム要素が大面積にわたって軸受半割シェルに接触することが達成される。これによって、作動中に必要となる緊締力を僅かな押圧によって伝達することができる。
【0018】
本発明の構成では、軸受半割シェルの、軸に接触する壁が、支持すべき軸に対して形状接続的に、好ましくは中空円筒形に形成されている。軸は、軸受半割シェルによって取り囲まれ、ロータボディは、形状接続的に保持される。支持圧は、軸受半割シェルから軸の外面に均等に分配される。このことは、軸と軸受半割シェルとの間における摩耗を減少させる。軸受半割シェルの壁は、摩擦を減少させるために、滑性の材料で付加的にコーティングされていてよい。代替的には、軸受半割シェル自体が滑性の材料から成っている。この材料として、例えば青銅化合物またはプラスチックが可能である。この場合、後者には、好ましくは、軸受摩擦をさらに減少させる材料、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標))が混加される。さらに、固体潤滑剤、例えばモリブデン硫化物またはグラファイトを軸受に混加することができる。代替的または付加的には、液体潤滑剤として軸受用流体、例えばオイルまたはグリースを使用することができる。
【0019】
本発明の構成では、ロータボディは、ばね弾性要素を受けるための少なくとも2つの載置部を有しており、ばね弾性要素は、ロータボディの内側で不静定構造式に支持されている。不静定構造式の支持によって、半径方向でのばね弾性要素の運動が可能になる。これによって、ばね弾性要素と第1の軸受半割シェルとが、ロータボディから切り離されている。取付け時に軸受半割シェルは、ばね弾性要素によって加えられる圧力によって自動的にセンタリングされる。このとき、ばね弾性要素は、ロータボディ内に簡単に挿入することができる。このことは、組付けを簡単にする。
【0020】
本発明の構成では、ばね弾性要素の載置部は、ロータ軸線と第1の軸受半割シェルの壁の頂点とによって規定された平面から離間されている。載置部同士の間の間隔は、組付け時におけるロータボディ内へのばね弾性要素の簡単な挿入を可能にする。
【0021】
本発明の構成では、ばね弾性要素は、ロータボディの回転運動による励起時に、軸に対する第1の軸受半割シェルの並進変位を生じさせる、より高い次数の固有モードだけを形成するように構成されている。回転運動によって励起されるロータの振動によって、ばね弾性要素も励起されて振動する。ばね弾性要素が第1の軸受半割シェルの領域において振動波の腹を形成すると、予荷重が加えられているにもかかわらず、この振動は、保持すべき軸から半径方向への第1の軸受半割シェルの離反を招いてしまう。この離反の結果、増大させられた半径方向遊び(増大させられたラジアル軸受間隙)が発生し、これによって、ロータが軸に対して動くことがある。このことは、望ましくないノイズ発生を招くことになる。したがって、ばね弾性要素は、軸受半割シェルの領域における振動波の腹を回避する振動特性を有するように形成されているとともに寸法設定されている。有利には、ばね弾性要素は、励起時に、軸線を中心とした軸受半割シェルの回転運動が実現するように、軸受半割シェルの領域でのばね弾性要素の変形を生じさせる固有モードを形成する振動特性を有している。これによって、軸受半割シェルの壁が軸に接触し続け、離反が阻止される。したがって、ロータボディの望ましくない半径方向運動が阻止される。これにより、ノイズレベルが低下する。
【0022】
本発明の構成では、ばね弾性要素は、金属またはプラスチックから成っている。高い回転数で回転する大きな直径を有するロータでの使用のために、金属は、高い強度の利点を有している。さらに、金属ばねは、大きな緊締力を提供することができる。多くの個数で製造される小さな直径を有するロータでの使用のためには、プラスチックが有利である。なぜならば、プラスチックは軽量であり、好適に製造することができるからである。
【0023】
本発明の構成では、ばね弾性要素は、第1の軸受半割シェルと一体に形成されている。ビーム要素と第1の軸受半割シェルとは、1つにまとめられた構成部材を形成し、一体の要素として製造することができる。これによって、製造コストが低下させられる。ばね弾性要素、例えば板ばねを別個に製造し、第1の軸受半割シェルを同様に別個に製造することも可能である。次いで、両部材が、ばね弾性要素の第1の突出部と第1の軸受半割シェルの第2の突出部とを用いて互いに位置決めされるかまたは結合される。
【0024】
本発明の構成では、第1の軸受半割シェルおよび/またはばね弾性要素は、比重が小さい材料から成っている。これによって、軸受ひいてはロータの慣性モーメントが一層低下させられる。この場合、ロータはほとんど振動しなくなり、より迅速に加速することができる。
【0025】
ロータボディの一方の軸線方向の端部には、付加的にさらに、別の構成部材を駆動するための歯車が一体成形されている。
【0026】
本発明の構成では、載置部同士の間に延在する接続線から軸に延びる法線に沿った間隔は、法線に沿ったばね弾性要素および/または第1の軸受半割シェルの延在長さよりも短い。この構成では、両軸受半割シェルの間に軸が挿入されていなくても、第1の軸受半割シェルがすでに第2の軸受半割シェルを押圧している。つまり、予荷重を加えた状態においてばね弾性要素および/または第1の軸受半割シェルを組み付けることができる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、請求項1から22に記載のロータを含む電気モータが提供されている。本発明に係るロータは、特に電気モータ、好ましくはブラシレス直流モータまたはステッピングモータへの使用に適している。特にこのような電気モータは、減速伝動装置を備えた、調整部材を調整するための作動駆動装置の一部であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下に、添付の図面に基づいて、本発明の例示的な実施の形態を詳しく説明する。
図1】本発明に係るロータの実施例の軸に半径方向で沿ったA-A断面図である。
図2図1に示した例示的なロータの平面図である。
図3図2に示したロータの分解図である。
図4図2に示したロータの斜視図である。
図5a図1図4に示したロータのばね弾性要素および第1の軸受半割シェルをそれぞれ異なる方向から見た図である。
図5b図1図4に示したロータのばね弾性要素および第1の軸受半割シェルをそれぞれ異なる方向から見た図である。
図5c図1図4に示したロータのばね弾性要素および第1の軸受半割シェルをそれぞれ異なる方向から見た図である。
図5d】ばね弾性要素および軸受半割シェルの代替的な構成を示す図である。
図6a】ばね弾性要素の代替的な構成の平面図である。
図6b】ばね弾性要素の代替的な構成の斜視図である。
図7図2に示したロータを備えた駆動装置の平面図である。
図8図7に示した駆動装置の斜視図である。
【0029】
図面の説明
図1には、ロータ磁石1aを備えた本発明に係るロータ1の第1実施例の断面図A-Aが示されている。本発明は、軸受2を備えたロータボディ3を含んでおり、このロータボディ3がロータ磁石1aを含んでいる。ロータ磁石1aは永久磁性リングである。この永久磁性リングは、ロータボディ3によって把持されており、このロータボディ3は、例えば射出成形法または高温かしめ法を用いてロータ磁石1aに取り付けられる。ロータボディ3の内側には軸受2が配置されている。軸受2内には軸10が配置されており、この軸10は、図2において明らかであるように、第1の軸受半割シェル4と第2の軸受半割シェル5との間に回転可能に支持されている。
【0030】
図2には、本発明によるロータボディ3が平面図で示されており、このロータボディ3は、ロータ磁石1aを保持していて、第2の軸受半割シェル5と一体に形成されている。ロータボディ3は、ロータ磁石1aに不動に結合されている。平面図においてさらに認めることができるように、ロータボディ3を回転するように支持するために、第1の軸受半割シェル4は、ばね弾性要素6と協働する。代替的な構成では、ばね弾性要素6は、第1の軸受半割シェル4と一体に形成されていてよい。ばね弾性要素6は、本実施例ではビーム(梁)要素6として形成されている。ばね弾性要素6は、載置部9を介して緊締されていて、したがって、軸10を第1の軸受半割シェル4を用いて第2の軸受半割シェル5に押し付けており、これによって、軸10が回転可能に支持されている。さらに、ロータボディ3は、3つの中空室15も有している。これらの中空室15は、ロータボディ3の重量を減じるために製作されており、このことは、さらに、慣性モーメントを低下させる。中空室15の間には、それぞれ1つのウェブ20が存在している。付加的にロータボディ3は、内周面に突出部21を有しており、この突出部21は、ばね弾性要素6の最大の撓みを制限している。また、ここには、9つのステータ磁極23を備えたステータ22が概略的に示されている。ステータ巻線は、ここでは図面を見やすくする理由から図示されていない。
【0031】
さらに図2には、ロータボディ3の2つの貫通孔40が示されている。したがって、軸10を案内している同心に配置された第3の貫通孔と一緒に、全部で3つの貫通孔が、ばね弾性要素6,6a,6bの組付けのために提供される。組付けのためには、まず、3つの貫通孔を通して案内される3つのロッドにロータボディ3が被せられていればよい。次いで、後続のステップにおいて、ばね弾性要素6,6a,6bを第1の軸受半割シェル4に配置し、両部材を一緒に3つのロッドに外嵌すればよい。いま、ロータボディ3がばね弾性要素6,6a,6bの方向へとロッドから再び引き下げられると、ロータボディ3が、ばね弾性要素6,6a,6bを第1の軸受半割シェル4と一緒に連行し、両部材がロータボディ3内に位置決めされる。
【0032】
図3には、本発明に係るロータが分解図で示されている。ここでは、ロータボディ3の、ロータ磁石1aが配置される保持領域11を良好に認めることができる。ロータ磁石1aは、ロータボディ3の軸線方向の端部に形成された固定領域12によって保持される。固定領域には、さらに突出部14が固定のために形成されており、この突出部14は、ロータ磁石1aに形成されたポケット16内に係合する。ロータボディ3は、射出成形法を用いてロータ磁石1a内に埋め込まれ、これによって、組み付けられる。
【0033】
さらに、ここでも、ばね弾性要素6を認めることができる。ばね弾性要素6は、軸10の軸線方向に配置された側面に、それぞれ2つの突出部を有している。図3には、さらに歯車17も認められ、この歯車17は、ロータボディ3の一方の側に取り付けられている。軸10が軸受2に差し込まれ、次いで、歯車17が軸10に回転可能に支持される。続いて、軸10は、第2の軸受半割シェル5と第1の軸受半割シェル4とを用いて回転可能に支持される。このとき、第1の軸受半割シェル4は、ばね弾性要素6に支持されている。さらに、ばね弾性要素6は、2つの載置部9を介してロータボディに支持されている。
【0034】
図4には、図2に示されたロータボディを備えた本発明に係るロータが斜視図で示されている。この図では、中空室15と、ばね弾性要素6の最大の撓みを制限するための突出部21とを特に良好に認めることができる。さらに、突出部21、中空室15及びウェブ20は、1つには、中空室15によって重量が低く抑えられ、もう1つには、質量重心が同心状に置かれて不釣り合いが発生しないように形成されかつ互いに調整されている。これらの手段によって、重量が低く抑えられ、ひいては、発生する慣性モーメントも、回転可能に支持された別のロータボディよりも小さくなる。
【0035】
図5a~図5cには、ばね弾性要素6の構成が種々異なる見方で詳細に示されている。さらに、第1の軸受半割シェルの、支持面とは反対側に位置している面が軸線方向において互いに離間された第2の突出部13bを備えている様子が認められる。ばね弾性要素6は、ばね弾性要素6のそれぞれ2つの第1の突出部13aが軸受半割シェル4の2つの第2の突出部13bのうちの一方と協働し、両部材を互いに位置決めしかつ/または互いに固定するように、第1の軸受半割シェル4の背面に配置されている。これによって、両部材を一緒にロータボディに簡単に組み付けることができる。第2の突出部13bに向かい合って、ロータボディの内周面にばね弾性要素6の最大の撓みを制限するための突出部21が成形されている。ここで、ばね弾性要素6が撓むと、第2の突出部13bが突出部21に当接し、これによって、ばね弾性要素6の最大の撓みが制限される。ばね弾性要素6は、第1の突出部13aを除いて、実質的に長方形に形成されている。
【0036】
本実施例では、ばね弾性要素6は打抜き部材、特に打ち抜かれたばね金属薄板である。本実施例では、さらに端面に、第1の突出部のそばに形成された小さな切欠き30を認めることができる。この切欠き30は、打抜きプロセスの実施に拠るものであり、この箇所において、打抜き部材が最後に金属薄板から解離される。
【0037】
図5dには、ばね弾性要素6および軸受半割シェル4aの代替的な構成が示されている。この構成では、ばね弾性要素6aは、軸線方向に配置された両側面に、それぞれ1つの突出部13aだけを有している。この構成では、ばね弾性要素6aを位置決めしかつ/または固定するために、突出部13aが軸受半割シェル4aのそれぞれ2つの突出部13bと協働する。この実施形態の1つの変化形態では、それぞれ2つよりも多くの突出部13bが、ばね弾性要素6aのそれぞれ1つの突出部13aと協働してもよい。また、それぞれ2つの突出部13bが互いに結合されて、1つの突出部を形成してもよい。
【0038】
図6aおよび図6bには、ばね弾性要素6bの1つの構成が互いに異なる見方で示されている。ばね弾性要素6bは、軸近傍の1つの中心領域31と、この中心領域31に続く2つの偏心領域32とを有している。偏心領域32は、中心領域31に対して対称的に形成された切欠き34を有している。偏心領域32には、それぞれ1つの縁領域33が続いている。この縁領域33自体は切欠きを有していない。ばね弾性要素6bは、その縁領域33でロータボディ3の載置部9に支持もしくは支承されている。この実施例では、切欠き34は台形に形成されていて、縁領域33の方向に拡幅している。
【0039】
図7および図8には、本発明に係るロータを備えたアクチュエータが平面図および斜視図で示されている。ロータ1、ステータ22及び減速伝動装置が、ハウジング50内に配置されており、ハウジングのカバーは示されていない。ロータ1は、ここでは、3つの相巻線を備えて形成されていて、ロータボディ3の上に配置された溝絶縁体51を有している。溝絶縁体51には固定突出部52が形成されており、この固定突出部52は、ハウジングの相応の突出部に固定される。ロータに形成された歯車17は、減速伝動装置の3つの中間歯車53を駆動し、これらの中間歯車53は、他方で被駆動歯車54を駆動する。被駆動歯車54は、本実施例では負荷にトルクを伝達するための中空軸55と一体に形成されている。中間歯車53は二重歯車として形成されている。
【符号の説明】
【0040】
1 ロータ
1a ロータ磁石
2 軸受
3 ロータボディ
4 第1の軸受半割シェル
5 第2の軸受半割シェル
6,6a,6b ばね弾性要素/ビーム要素
7 壁
8 切欠き
9 載置部
10 軸
11 保持領域
12 固定領域
13a 第1の突出部
13b 第2の突出部
14 (固定領域の)突出部
15 中空室
16 ポケット
17 歯車
20 ウェブ
21 突出部
22 ステータ
23 磁極
30 切欠き
31 中心領域
32 偏心領域
33 縁領域
34 (ばね弾性要素の)切欠き
40 組付け切欠き
50 ハウジング
51 溝絶縁体
52 固定突出部
53 中間歯車
54 被駆動歯車
55 中空軸
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図7
図8