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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ダンパー装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20240502BHJP
   F16F 9/02 20060101ALI20240502BHJP
   F16F 9/58 20060101ALI20240502BHJP
   F16J 15/3236 20160101ALI20240502BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20240502BHJP
   B60R 7/06 20060101ALN20240502BHJP
   B60R 7/04 20060101ALN20240502BHJP
【FI】
F16F9/32 M
F16F9/02
F16F9/58 Z
F16J15/3236
F16J15/3232 101
B60R7/06 G
B60R7/04 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020178188
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069167
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 淳
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/167336(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047775(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
F16F 9/02
F16F 9/58
F16J 15/3236
F16J 15/3232
B60R 7/06
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と開口部を有するシリンダと、
前記シリンダ内を軸方向に進退可能なピストンと、
前記ピストンの外周に設けられ、前記シリンダの内周に当接するシールリングと、を備え、
前記ピストンは、
前記シールリングに巻回される柱部と、
前記柱部の軸方向両端側に位置し、前記柱部の外周面よりも径方向外向きに張り出すように形成され、前記シールリングの軸方向への移動を規制する第1規制部および第2規制部と、を有し、
前記柱部は、外周面に径方向外向きに突出し、且つ前記第2規制部から軸方向に延びる突出部を有し、
前記第1規制部は、前記第2規制部と対向する面を切り欠くように形成され、前記突出部に軸方向に連なって位置する切欠部を有し、
前記シールリングは、前記第2規制部に対してシール可能に設けられ、前記ピストンの移動によって前記切欠部に部分的に入るように変形する変形状態をとることが可能であり、
前記シールリングが前記変形状態である場合、および前記シールリングが前記切欠部に入らない通常状態である場合に、前記シールリングは、前記突出部によって前記シリンダの内周面に押し当てられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
前記シールリングは、
環状に形成された胴部と、
環状に形成され、前記胴部の軸方向端部から径方向外向きに張り出すリップ部と、を有し、
前記胴部は、前記第2規制部に軸方向に当接して前記ピストン側のシールとなり、
前記リップ部は、前記シリンダの内周面に当接して前記シリンダ側のシールとなることを特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記胴部に当接することを特徴とする請求項2に記載のダンパー装置。
【請求項4】
前記胴部の内径は、前記柱部の外周面の外径より大きいことを特徴とする請求項2または3に記載のダンパー装置。
【請求項5】
該ダンパー装置は、固定体と開閉体とに連結され、
前記ピストンに連結し、前記ピストンに外力を伝達可能な伝達部をさらに備え、
前記シリンダは、前記固定体および前記開閉体の一方に取り付けられる第1軸支部を有し、
前記伝達部は、前記固定体および前記開閉体の他方に取り付けられる第2軸支部を有し、
前記第1軸支部の貫通孔と前記第2軸支部の貫通孔とは平行な軸を有し、
前記突出部は、前記第1軸支部および前記第2軸支部の軸方向に沿って突出することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のダンパー装置。
【請求項6】
底部と開口部を有するシリンダと、
前記シリンダ内を軸方向に進退可能なピストンと、
前記ピストンの外周に設けられ、前記シリンダの内周に当接するシールリングと、を備え、
前記ピストンは、
前記シールリングに巻回される柱部と、
前記柱部の軸方向両端側に位置し、前記柱部の外周面よりも径方向外向きに張り出すように形成され、前記シールリングの軸方向への移動を規制する第1規制部および第2規制部と、を有し、
前記柱部は、
外周面に径方向外向きに突出する突出部と、
前記柱部を窪まして形成された窪み部と、を有し、
前記第1規制部は、前記第2規制部と対向する面を切り欠くように形成され、前記突出部に軸方向に連なって位置する切欠部を有し、
前記シールリングは、前記第2規制部に対してシール可能に設けられ、前記ピストンの移動によって前記切欠部に部分的に入るように変形する変形状態をとることが可能であり、
前記シールリングが前記変形状態である場合、および前記シールリングが前記切欠部に入らない通常状態である場合に、前記シールリングは、前記突出部によって前記シリンダの内周面に押し当てられていることを特徴とするダンパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ内を進退可能なピストンと、ピストンの外周に設けられるシールリングとを備えるダンパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筒状のシリンダーと、シリンダー内を移動するピストンと、シリンダーの一端に設けられるキャップとを備えるエアダンパーが開示されている。ピストンは、Oリングを代替する円環状のシール突起を有する。キャップは、シリンダ室を外部につなぐオリフィスを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-65116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術では、ピストンが急速に移動した場合、シリンダ室の空気の移動がオリフィスから適度に発生せず、シリンダ室の圧力によってピストンが逆方向に戻されることがある。
【0005】
本発明の目的は、ピストンが急速に移動した場合にシリンダ室内の圧力によってピストンが移動した方向とは逆方向に戻りにくいダンパー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のダンパー装置は、底部と開口部を有するシリンダと、シリンダ内を軸方向に進退可能なピストンと、ピストンの外周に設けられ、シリンダの内周に当接するシールリングと、を備える。ピストンは、シールリングに巻回される柱部と、柱部の軸方向両端側に位置し、柱部の外周面よりも径方向外向きに張り出すように形成され、シールリングの軸方向への移動を規制する第1規制部および第2規制部と、を有する。柱部は、外周面に径方向外向きに突出する突出部を有する。第1規制部は、第2規制部と対向する面を切り欠くように形成され、突出部に軸方向に連なって位置する切欠部を有する。シールリングは、第2規制部に対してシール可能に設けられ、ピストンの移動によって切欠部に部分的に入るように変形する変形状態をとることが可能であり、シールリングが変形状態である場合、およびシールリングが切欠部に入らない通常状態である場合に、シールリングは、突出部によってシリンダの内周面に押し当てられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ピストンが急速に移動した場合にシリンダ室内の圧力によってピストンが移動した方向とは逆方向に戻りにくいダンパー装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例のダンパー装置の斜視図である。
図2】実施例のダンパー装置の分解図である。
図3図3(a)は、伝達部およびピストンの側面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すピストンの線分A-A断面図である。
図4図4(a)は、シールリングの正面図であり、図4(b)は、図4(a)に示すシールリングの線分B-B断面図であり、図4(c)は、図4(b)に示すシールリングの部分拡大図である。
図5】ピストンを通る位置でのダンパー装置の断面図である。
図6図6(a)および図6(b)は、シールリングの動作について説明するための図であり、ダンパー装置のピストン部分の断面図である。
図7】シールリングおよびピストンの側面図であり、シールリングがピストンの切欠部に入り込んだ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施例のダンパー装置10の斜視図である。また、図2は、実施例のダンパー装置10の分解図である。ダンパー装置10は、たとえば車両のグローブボックスに取り付けられ、グローブボックスの開閉体(ふた部材)の開閉動作に減衰力を付与する。また、ダンパー装置10は、車両のコンソールボックスに取り付けられ、コンソールボックスの開閉体の開閉に減衰力を付与してもよい。グローブボックスやコンソールボックスが固定体として機能し、ダンパー装置10は、固定体と、固定体の開口を開閉する開閉体とに連結される。
【0010】
ダンパー装置10は、シリンダ12、伝達部14、ガイド部16、キャップ18、シールリング20およびピストン22を備える。ダンパー装置10は粘性流体として空気を用いて粘性抵抗を発生させる。
【0011】
シリンダ12は、第1軸支部36、底部40、開口部42、保持部44および係止孔46を有する。シリンダ12は、円筒状に形成され、一端に底部40を有し、他端に開口部42を有する。第1軸支部36は、シリンダ12の外周面から径方向外向きに張り出し、固定体および開閉体の一方が挿入される貫通孔を有し、固定体および開閉体の一方に軸支される。
【0012】
保持部44は、底部40に形成され、キャップ18を保持する。係止孔46は、シリンダ12の内周面に形成され、ガイド部16を係止する。
【0013】
伝達部14は、棒状に形成され、シリンダ12の開口部42から挿入される。伝達部14は、ピストンに外力を伝達する。伝達部14は、固定体および開閉体の他方に軸支される第2軸支部38を有する。第2軸支部38は、固定体および開閉体の他方が挿入される貫通孔を有する。第1軸支部36および第2軸支部38の貫通孔は平行である。
【0014】
ガイド部16は、シリンダ12の開口部42に取り付けられ、伝達部14の進退をガイドする。ガイド部16は、伝達部14を挿通するガイド孔16aと、シリンダ12の係止孔46に係止する係止爪16bとを有する。
【0015】
キャップ18は、保持部44によって底部40に取り付けられ、オリフィスとなる微少な孔を有しており、シリンダ12の底部40側にオリフィスを形成する。
【0016】
シールリング20は、ピストン22の外周に設けられ、シリンダ12内を第1室と第2室に区分けし、シリンダ12の内周に当接する。シールリング20は、ゴム材料で形成され、変形可能である。
【0017】
ピストン22は、伝達部14の一端に設けられ、シリンダ12内に配置され、シリンダ12内を軸方向に進退可能である。ピストン22は、伝達部14と一体に設けられる。
【0018】
図3(a)は、伝達部14およびピストン22の側面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すピストン22の線分A-A断面図である。ピストン22は、柱部24、第1規制部26および第2規制部28を有する。
【0019】
第1規制部26および第2規制部28は、柱部24の軸方向両端に位置し、柱部24の外周面30より径方向外向きに張り出すように形成される。第1規制部26および第2規制部28は、ピストン22の進退時に、柱部24に巻回されたシールリング20の軸方向の移動を規制する。
【0020】
第1規制部26は、軸方向に凹んで形成された切欠部34を有する。切欠部34は、図3(a)に示すように、第2規制部28と対向する面に形成される。切欠部34の両方の端部34aは、段差状に形成され、所定の角度幅を有しており、例えば120度の角度幅を有する。切欠部34を形成することで、シールリング20が部分的に切欠部34に入り込むように変形できる。第2規制部28が第1規制部26と対向する面は一様であり、切り欠きは形成されていない。
【0021】
柱部24は、第1規制部26および第2規制部28の間に位置する。柱部24は、円柱状に形成され、外周面30に窪み部31と突出部32と円弧部33とを有する。突出部32は、外周面30に径方向外向きに突出して形成され、窪み部31は、突出部32の周方向の両側に窪んで形成される。円弧部33は、柱部24の外周面30の半分以上を占め、滑らかに形成される。
【0022】
図3(b)に示すように、突出部32は、円弧部33の外接円33aよりも径方向外向きに突出する。これにより、柱部24に巻回されたシールリング20が突出部32に当接する。
【0023】
突出部32は、第2規制部28から第1規制部26の切欠部34に亘って形成される。切欠部34は、第2規制部28と対向する第1規制部26の対向面を切り欠くように形成され、突出部32に軸方向に連なって位置する。周方向位置において、切欠部34の両方の端部34aの間に突出部32が位置する。これにより、シールリング20が突出部32に当接した状態を維持したまま切欠部34側に入り込む変形ができる。
【0024】
突出部32は、第1軸支部36および第2軸支部38の軸方向に沿って突出する。これにより、第1軸支部36および第2軸支部38から入力される外力の影響を受けづらい位置に突出部32を配置でき、外力によってピストン22が偏心した場合に突出部32がシリンダ12の内周面から離れることを抑えられる。
【0025】
図4(a)は、シールリング20の正面図であり、図4(b)は、図4(a)に示すシールリング20の線分B-B断面図であり、図4(c)は、図4(b)に示すシールリング20の部分拡大図である。シールリング20は、胴部50、第1リップ部52および第2リップ部54を有する。シールリング20の断面は、Y字形状に形成される。
【0026】
胴部50、第1リップ部52および第2リップ部54は、いずれも環状に形成される。第1リップ部52は、胴部50の軸方向端部50aから遠ざかる方向および径方向外向きに張り出し、胴部50の軸方向端部50aから斜め外向きに張り出す。第2リップ部54は、胴部50の軸方向端部50aから径方向内向きに張り出し、胴部50から斜め内向きに張り出す。第1リップ部52および第2リップ部54は、軸方向において胴部50の軸方向端部50aに向かって接近するように形成され、二股に形成される。第1リップ部52および第2リップ部54は、胴部50より薄く、撓みやすい。第1リップ部52は、径方向外向きに張り出しているため、シリンダ12の内周面に当接可能である。
【0027】
シールリング20の線部分の幅Wは、第1リップ部52と第2リップ部54とを含む径方向の幅Wであって、シールリング20の最外径と最内径との差を半分にして導出できる。
【0028】
図5は、ピストン22を通る位置でのダンパー装置10の断面図である。突出部32がシールリング20に当接して、シールリング20をシリンダ12の内周面に押し当てている。突出部32とシリンダ12の内周面との間隔Dは、シールリング20の幅Wよりも小さいため、シールリング20が潰れるようにシリンダ12の内周面に押し当てられる。
【0029】
シールリング20の最外径、つまり第1リップ部52の外径は、シリンダ12の内径より大きい。これにより、第1リップ部52がシリンダ12の内周面に当たった状態が維持される。シールリング20の最内径、つまり第2リップ部54の内径は、円弧部33の外径より大きい。つまり、第2リップ部54は、柱部24の円弧部33に当接してもしなくてもよい。突出部32が当接するシールリング20の当接部分は、その当接によって部分的に拡径してもよい。
【0030】
図6(a)および図6(b)は、シールリング20の動作について説明するための図であり、ダンパー装置10のピストン22部分の断面図である。図6(a)は、シールリング20が変形していない状態を示し、図6(b)は、シールリング20が変形して切欠部34に入り込んだ状態を示す。
【0031】
シールリング20は、シリンダ12とピストン22に当接して、シリンダ12内を底部40側の第1室60と開口部42側の第2室62に区分する。胴部50は、第2規制部28に対して軸方向に当接してピストン22側のシールとなる。また、第1リップ部52は、シリンダ12の内周面に対して径方向に当接してシリンダ12側のシールとなる。これにより、シールリング20がシリンダ12とピストン22を隙間なく塞ぐ。
【0032】
図6(a)に示すシールリング20では、突出部32に当接する部分はシリンダ12の内周面に押しつけられているが、突出部32に当接しない部分はシリンダ12の内周面に押しつけられていない。シールリング20の内周側の胴部50および第2リップ部54は、突出部32に当接する。これにより、第1リップ部52を安定してシリンダ12に押し当てられる。
【0033】
図6(a)に示すピストン22は、開閉体の開き動作によって伝達部14が引っ張られてシリンダ12の開口部42側に進行し、シールリング20は、ピストン22の移動によって第2規制部28に当接した通常状態が維持される。ピストン22が開口部42側に進行すると、第1室60は体積増加によって負圧になり、抵抗力を発生する。これにより、開閉体がゆっくり開かれる。また、第1室60の負圧は、キャップ18に形成されたオリフィスによって解消される。
【0034】
ここで、開閉体が急激に開かれると、第1室60が負圧になりすぎてピストン22を引き戻す力が大きくなり、開かれた開閉体が閉じる方向に戻される。第1室60の負圧によってピストン22およびシールリング20に退行方向の力が加わり、ピストン22およびシールリング20が退行すると、図6(b)に示すように、シールリング20が切欠部34に入り込むように変形する変形状態となる。突出部32と当接するシールリング20の当接部分は、突出部32によってシリンダ12の内周面に、その当接部分以外の部分よりも強く押し当てられており、その当接部分がピストン22とずれて、切欠部34に入るように変形し易い。
【0035】
図7は、シールリング20およびピストン22の側面図であり、シールリング20がピストン22の切欠部34に入り込んだ状態を示す。つまり、図7に示すシールリング20は、図6(b)に示すシールリング20が部分的に変形した状態と同じ状態であり、ピストン22の移動によって切欠部34に部分的に入るように変形する変形状態をとることが可能である。
【0036】
シールリング20が切欠部34に入り込むように変形することで、胴部50が第2規制部28から離れ、ピストン22とのシールが解除される。これにより、第2室62側の空気が、窪み部31などのシールリング20の内側を通って、第2規制部28とシールリング20の隙間から第1室60に入り込む。そのため、第1室60の負圧が解消され、ピストン22の引き戻しが止められて、急激に開かれた開閉体が閉じる動きが解除される。負圧解消後に開閉体が開き動作を行う際、切欠部34に入り込んだシールリング20の一部分だけを復元するだけで、第2規制部に対してシールした状態に戻るため、負圧解消後にすぐに減衰力を発揮できる。
【0037】
シールリング20が変形状態である場合、およびシールリング20が切欠部34に入らない通常状態である場合に、シールリング20は、突出部32によってシリンダ12の内周面に押し当てられている。つまり、シールリング20が通常状態でも変形状態でも突出部32によってシリンダ12に押し当てられている。これにより、シールリング20が通常状態から変形状態になる際に、突出部32による押し当てが維持され、スムーズに変形できる。
【0038】
胴部50は、第2規制部28に対して軸方向に当接してピストン22側のシールとなっているため、ピストン22側のシールを解除するには、シールリング20が第2規制部28から少しでも離れればよい。シールリング20の変形量が小さくてもシール解除できるため、シール解除を容易に設定できる。また、シールリング20の変形量が小さくてよいため、ピストン22を負圧によって引き戻す動きを素早く解除できる。
【0039】
胴部50の内径R2は、柱部24の外周面30の外径より大きい。胴部50の内径R2は、柱部24の円弧部33の外径R1よりも大きく、突出部32を含む柱部24の外径よりも大きい。これにより、シールリングが柱部24の外周面30とシリンダ12の内周面に密着する場合と比べて、シールリング20とシリンダ12の内周面との摺動を容易にして、ピストン22の移動を滑らかにできる。
【0040】
シールリング20が変形状態である場合、およびシールリング20が切欠部34に入らない通常状態である場合に、シールリング20は、突出部32によってシリンダ12の内周面に押し当てられている。これにより、シールリング20が通常状態でも変形状態でも突出部32によってシリンダ12に押し当てられ、押し当てられた部分がピストン22とずれて変形状態になりやすくなる。
【0041】
シールリング20は、突出部32により部分的にシリンダ12に押し当てられ、部分的に変形する。これにより、シールリング20とシリンダ12の摩擦抵抗を抑えることができる。また、シールリング20が部分的に変形することで、自身の復元力で通常状態に素早く戻ることができる。これにより、シールリング20が復元するまでのピストン22の空走距離を短くすることができる。
【0042】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0043】
例えば、実施例では、オリフィスがキャップ18に形成されていたが、この態様に限られず、ピストン22に形成されてもよい。また、実施例では、シリンダ12およびピストン22の断面が真円状に形成されていたが、この態様に限られず、長孔状や楕円状であってもよい。
【0044】
また、実施例では、第1規制部26が開口部42側に位置し、第2規制部28が底部40側に位置する態様を示したが、この態様に限られず、第1規制部26が底部40側に位置し、第2規制部28が開口部42側に位置してもよい。これにより、シールリング20がシール解除するタイミングが、ピストン22の移動に対して逆になる。つまり、ピストン22の急激な押し込みによって第1室60が過度に正圧になり、ピストン22が戻されたときにシールリング20が切欠部34に入り込んでシール解除する。
【符号の説明】
【0045】
10 ダンパー装置、 12 シリンダ、 14 伝達部、 16 ガイド部、 18 キャップ、 20 シールリング、 22 ピストン、 24 柱部、 26 第1規制部、 28 第2規制部、 30 外周面、 31 窪み部、 32 突出部、 33 円弧部、 34 切欠部、 36 第1軸支部、 38 第2軸支部、 40 底部、 42 開口部、 44 保持部、 46 係止孔、 50 胴部、 50a 軸方向端部、 52 第1リップ部、 54 第2リップ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7