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特許7482005液体試料中の成分の磁気抽出のための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】液体試料中の成分の磁気抽出のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20240502BHJP
   C07K 1/14 20060101ALN20240502BHJP
   C12M 1/32 20060101ALN20240502BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALN20240502BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20240502BHJP
【FI】
G01N1/28 J
C07K1/14
C12M1/32
C12Q1/00
C12Q1/68
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020197234
(22)【出願日】2020-11-27
(62)【分割の表示】P 2018557781の分割
【原出願日】2016-11-25
(65)【公開番号】P2021063811
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2020-12-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】16168001.2
(32)【優先日】2016-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16180724.3
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アリックス, ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ミナッシアン, エドガール
(72)【発明者】
【氏名】レイモン, ジャン-クロード
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデルズ, フィリップ
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】加々美 一恵
【審判官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-537427(JP,A)
【文献】国際公開第2007/081000(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 基部(34);
- ウェル支持体(18a、18b)を取り外し可能に収容できる、基部(34)に作製された凹部(56);
- 液体をピペットすることを目的とするテーパープロファイル(21)を含む少なくとも一のチューブ状ピペットコーン(20)を備えたピペット(12)を挿入することができる第1のハウジング(38)を含むピペット支持体(36)であって、ピペットコーン(20)の軸(X)に平行な方向において基部(34)に対して並進運動可能であり、テーパープロファイル(21)がウェル支持体(18a、18b)のウェル(62、69)に挿入される第1の位置と、前記テーパープロファイル(21)が前記ウェル(62、69)の外側にある少なくとも一の第2の位置の間で運動可能である、ピペット支持体;
- 磁化部分(16)を取り外し可能に収容できる第2のハウジング(78)であって、ピペット支持体(36)が第1の位置にあるときにテーパープロファイル(21)より上の位置でピペットコーン(20)のそれぞれに対向し、ピペット支持体(36)が第2の位置にあるときにテーパープロファイル(21)に対向する、第2のハウジング
を備えるピペットホルダー(14)。
【請求項2】
第2のハウジング(78)が基部(34)中に作製されている、請求項1に記載のピペットホルダー。
【請求項3】
ピペット支持体(36)が第2の位置にあるときに、テーパープロファイル(21)より上の位置で各ピペットコーンを対向させるために、磁化部分(16)が取り外し可能に挿入されうるピペット支持体(36)中の第3のハウジングを備える、請求項1又は2に記載のピペットホルダー。
【請求項4】
第2及び第3のハウジングが連通し、ピペット支持体が、第3のハウジング中に磁化部分を取り外し可能に維持することが可能な手段を含む、請求項3に記載のピペットホルダー。
【請求項5】
- 基部(34)が少なくとも一の回転できる歯車(42)を備え;且つ
- ピペット支持体(36)が、歯車(42)の回転中にピペット支持体を基部(34)に対して並進運動させるために、歯車(42)と係合するラック(40)を備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載のピペットホルダー。
【請求項6】
少なくとも第1の位置にピペット支持体(36)をロック及びアンロックするための装置を備える、請求項5に記載のピペットホルダー。
【請求項7】
歯車を回すために歯車にしっかりと結合され、且つ、別のピペットホルダーの歯車にしっかりと結合されたハンドル(50)に取り外し可能に設置できる少なくとも一のハンドル(50)を含む、請求項5又は6に記載のピペットホルダー。
【請求項8】
液体形態の生物学的試料に含有される、磁性粒子と結合することができる成分を抽出するためのシステムであって、
- 液体をピペットすることを目的とするテーパープロファイル(21)を含む少なくとも一のチューブ状ピペットコーン(20)と、各ピペットコーン(20)に吸引及び排出のための回路とを備えるピペット(12);
- 少なくとも一のウェル支持体(18a、18b);
- 以下:
○基部(34);
○各ウェル支持体を取り外し可能に収容できる、基部(34)に作製された凹部(56);
○ピペット(12)が挿入される、基部(34)の凹部(56)に開口している第1のハウジング(38)を含むピペット支持体(36)であって、ピペットコーン(12)の軸(X)に平行な方向において基部(34)に対して並進運動可能であり、テーパープロファイル(21)がウェル支持体(18a、18b)のウェル(62、69)に挿入される第1の位置と、前記テーパープロファイル(21)が前記ウェル(62、69)の外側にある少なくとも一の第2の位置の間で運動可能である、ピペット支持体;
○ピペット支持体が第1の位置にあるときにテーパープロファイル(21)より上の位置でピペットコーン(20)のそれぞれに対向し、ピペット支持体が第2の位置にあるときにテーパープロファイル(21)に対向する、第2のハウジング(78)
を備えるピペットホルダー(14);及び
- 第2のハウジング(78)に取り外し可能に挿入された磁化部分(16)
を含むシステム。
【請求項9】
ピペットホルダーが請求項1から7のいずれか一項に記載のものである、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子を使用する、溶液中に含有される成分の抽出の分野に関する。
【0002】
本発明は、特に生物学的試料の調製の分野、特にin vitro診断の実施において、溶液中に存在する生物学的起源(核酸、微生物、タンパク質、ペプチド等)の被分析物を捕捉することにより、使用することができる。
【背景技術】
【0003】
「BOOM(登録商標)」技術は、生物学的試料中に存在する核酸の抽出のために元来開発され、米国特許第5234809号に記載されており、それは、液体試料中に問題の生物と結合することができる磁性粒子を導入し、その後、一又は複数の磁石により試料と磁性粒子を分離することからなる。このように捕捉された粒子は、その後、後続の処置、例えばそれらの成分を回収溶液中に放出することに供されうる。この技術の有効性により、多くの装置が特にDNA及びRNAに関して開発及び販売されてきたが、これらは手動装置(例えば出願人のNucliSENS-miniMAG(登録商標))及び自動化装置(出願人のNucliSENS-easyMAG(登録商標))の両方である。しかしながら、これらの自動化装置には様々な制限がある。
【0004】
第1の制限は、それらの多価及び大きさに関する。実際、これらの装置は、通常、使用者に改変することができない一連の処理を実行するよう設計されている、重く大きな自動化装置である。よって、自動化装置は、単一タイプの抽出のため、例えば、核酸の精製のために設計されるが、磁気免疫濃縮(magnetic immunoconcentration)を実行することができない。
【0005】
第2の制限は、抽出中に使用される様々な液体を注入及び吸引するための回路に関する。液体の数が多いため、これは数多く及び/又は複雑でもある回路を意味する。さらに、夾雑物の可能性により、これらの注入/吸引回路は定期的に洗浄されなければならず、これは、装置が運転休止になることを意味する。
【0006】
第3の制限は、捕捉前に、磁性粒子を含む試料の均質性を得るため、問題の被分析物の前記粒子により捕捉を最大化するため、又は磁性粒子を効率的に洗浄するために行われる撹拌操作に関する。このタイプの撹拌は、通常、複雑な機構、例えば磁性粒子の運動を引き起こす可動性の磁石に基づくものを必要とする。
【0007】
第4の制限は、抽出中に使用される様々な液体に関する。通常、抽出のために行われる工程は、単一容器中で実施されるか又はそれから出発する。結果として、この容器は、抽出プロセスの全体的な効率を制限する、関連するすべての液体(例えば、試料、様々な洗浄溶液、溶出溶液など)について同一の容積を固定する。実際、一部の処理(例えば洗浄)は、完全に効率的であるためには大量を必要とするが、他の処理は少量の液体しか必要としない(例えば溶出)。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、抽出中に使用される液体の容積(特に最大10ml)を非常に自由に選択することができる磁性粒子によって、液体試料中の成分の抽出のための方法を提供することである。
【0009】
このため、本発明の主題は、液体形態の生物学的試料に含有される、磁性粒子と結合することができる成分を抽出するための方法であって、
- 試料を磁性粒子と混合する段階;
- 液体をピペットすることを目的とした先端を含むチューブ状のピペットコーン内へと、ウェルから混合物を吸引する段階;
- ピペットコーンの内壁上に、
○「捕捉」ゾーンと呼ばれる、ピペットコーンの先端上の前記コーンの所定のゾーンに磁性粒子を引付及び保持することができる第1の磁界を、ピペットコーンに適用することにより;及び、
○ウェル内へ、ピペットコーンに含有される混合物を吸引及び排出する少なくとも一のサイクルを適用することにより;
磁性粒子を捕捉する段階;
- ピペットコーンの内壁上に捕捉された粒子を、
○ピペットコーンに含有される混合物を排出することにより;及び
○洗浄溶液を含有するウェルから、ピペットコーン内へ洗浄溶液を吸引及び排出する少なくとも一のサイクルを適用することにより;
洗浄する少なくとも一の段階;
- 第1の磁界に関してピペットコーンの相対運動を行うことにより、ピペットコーンの内壁上の磁性粒子を、捕捉ゾーンからピペットコーンの先端へ移動させる段階;並びに
- ピペットコーンの先端に移動した前記磁性粒子を、溶液を含有する回収ウェルへ移送する段階
を含む方法である。
【0010】
言い換えれば、本発明は、前記ピペットコーンの先端をウェルに浸す間に吸引及び排出を行うことができるピペットコーンを利用する。そのようなサイクルのおかげで、抽出が行われる容積、すなわちコーンよりもはるかに大きな容積の、試料中に存在する粒子の全てを捕捉することが可能である。吸引及び排出サイクルの数を調節することによって、試料自体の容積よりもはるかに大きい累積量の液体をコーンに通すことさえ可能である。同様に、抽出中適切な場合に使用される洗浄溶液の容積は、コーンの容積よりもはるかに大きくすることができる。その部分に関して、移動段階は、非常に小さな容積のウェルに浸すことができるコーンの一部、先端に磁性粒子を局在化させることを可能にする。したがって、必要に応じて回収溶液の容積を少なくすることができる。よって、回収溶液の容積は、試料の体積及び抽出が行われるピペットコーンの容積とは無関係である。それゆえに、本発明のおかげで、使用される液体の各容積を最適化し、よって抽出を最適化することが結果的に可能である。
【0011】
さらに、チューブ型コーンの形状及び吸引/排出サイクルによって、コーン内での試料の効率的な撹拌(例えば、捕捉の前に行われる撹拌)、及び効率的な洗浄が得られ、これは、可動性磁気タイプの機構に頼らない。さらに、本発明者らは、粒子がピペットコーンの壁面に捕捉されるとしても、コーン内で効率的な洗浄が得られることに注目した。大量の洗浄液を使用することができ、洗浄の効率をさらに高めることができる。結果として、抽出の全工程(撹拌、捕捉、洗浄、回収溶液への移送)はピペットコーン中で行うことができる。
【0012】
一実施態様によれば、第1の磁界の運動は、ピペットコーンを前記コーンの縦軸に平行に動かし、第1の磁界を一定に保つことからなり、ピペットコーンの縦軸は、ピペットコーンの運動中に第1の磁界から等しい距離にとどまる。
【0013】
言い換えれば、粒子の移動は、単に、ピペットコーンを例えば永久磁石に対して動かすことにより、行うことができる。
【0014】
一実施態様によれば、移送段階は、
- ピペットコーンの先端を回収ウェル中に置くこと;及び
- ピペットコーンの先端に含有される磁性粒子を回収ウェル中に移動させるように、回収ウェルの底部から第2の磁界を適用すること
を含む。
【0015】
特に、第2の磁界は、部分的に又は完全にピペットコーンの先端の下に配置された磁石によって生成される。ピペットコーンに適用される第1の磁界は、第2の磁界の適用中に失活される。
【0016】
言い換えれば、第2の磁界は、単に粒子を回収ウェルに引付けることを可能にし、これにより、回収ウェル中の磁性粒子の回収速度及び回収される粒子の数が増加する。さらに、第2の磁界は、回収ウェル中の磁性粒子を自動的に捕捉する。例えば、回収溶液が溶出剤である場合、粒子に結合した成分は放出され、技術者は、磁性粒子を含まない溶液を直接ピペットすることができる。
【0017】
好ましい一変化形によれば、移送段階は、第1の磁界の失活と、その後にピペットコーンの先端へと、回収ウェルの溶液を吸引及び排出するサイクルの適用を含み、前記適用は、
- 第1の頻度でサイクルを適用する第1の段階;
- その後の、第1の頻度より低い第2の頻度でサイクルを適用する第2の段階
を含む。
【0018】
第1の段階は、ピペットコーン上に捕捉された粒子の塊(「ペレット」とも呼ばれる)を効率的に分解し、よって、回収溶液中に粒子を再懸濁することを可能にする。第2の段階は、磁界の影響下での粒子の移動に対抗せずに、同時に溶液を撹拌し続けることを可能にする。これにより、回収速度及び回収ウェル内に回収される粒子の数をさらに増加させることが可能になる。さらに、溶液が、磁性粒子によって捕捉された成分を放出する機能を有する溶出剤である場合、これらのサイクルは、溶出剤中の粒子を撹拌する効果を有し、特に、溶出溶液が加熱工程なしで磁性粒子から被分析物を分離することに使用されるとき、溶出剤の効率を高める。
【0019】
一実施態様によれば、捕捉段階の前に、本発明は、ピペットに含有される混合物を、ピペットコーン内へ前記混合物を吸引及び排出する少なくとも一のサイクルを適用することにより、撹拌する段階を含む。チューブ型であるコーンの形状のために、コーンの断面に対して高い容積のスループットを得ることができ、結果として効率的に撹拌することができる。液体の流れによって自然発生する高乱流がコーン中に存在し、前記乱流は撹拌の効率を高める。有利には、この効果を高めるために使い捨てアクセサリーがコーン内に設けられる。
【0020】
第一の実施態様によれば、本方法は、移送段階の前に、
- 磁界を失活させること;
- 洗浄溶液を含有するウェルから、ピペットコーン内へ洗浄溶液を吸引及び排出する少なくとも一のサイクルを適用することによって、捕捉された粒子を放出すること;

○ピペットコーンに第1の磁界を適用することによって、及び
○洗浄溶液を含有するウェル内へ、ピペットコーンに含有される混合物を吸引及び排出する少なくとも一のサイクルを適用することによって、
ピペットコーンの内壁上に捕捉する第2の段階を適用すること
により、ピペットコーンの内壁上に捕捉された粒子を洗浄する少なくとも一の段階を含む。
【0021】
一実施形態によれば、捕捉された粒子の放出は、ピペットコーン中に捕捉された粒子のペレット上で前記溶液のメニスカスの上下運動を行うような方法でサイクルを適用する段階を含み、前記メニスカスの上下運動は、ピペットコーンの全長よりも短いコーンの一部上で行われる。
【0022】
より具体的には、捕捉された粒子の放出は、コーン洗浄溶液を完全に吸引及び排出するような方法でサイクルを適用する第2の段階を含む。第2の段階のサイクル適用の頻度は、第1の段階のサイクル適用の頻度よりも低い。
【0023】
特に、捕捉された粒子の放出前に、本方法は、二つの異なる洗浄溶液中で行われる少なくとも二つの洗浄段階を含む。
【0024】
この実施態様は、生物学的試料に含有される成分が核酸(例えばDNA、RNA)であるとき、特に有利である。
【0025】
別の実施態様によれば、生物学的試料に含有される成分は微生物(例えばバクテリア、真菌、酵母)であり、本方法は、単一の捕捉段階及び単一の洗浄段階を含む。
【0026】
特に、試料と磁性粒子との混合物は、1ミリリットル超、好ましくは2ミリリットル以上の容積を有し、回収ウェルの容積は、200マイクロリットル以下、好ましくは100マイクロリットル以下である。
【0027】
第一の実施態様によれば、本方法は、移送段階の前に、
- 前記ピペットコーン内へと、洗浄溶液を吸引すること;
- その後、磁性粒子に適用される第1の磁界を、ピペットコーンの内壁上に前記粒子を捕捉するために、調節すること;
- その後、ピペットコーン洗浄液体を排出すること
により、ピペットコーンの内壁上に捕捉された粒子を洗浄する少なくとも一の段階を含む。
【0028】
言い換えれば、磁界の調節は、コーンの壁上の捕捉された粒子のペレットの再組織化を誘導する。特に、ペレットは形を変化させることができ、又はピペットコーンの壁上に広がるか、スリップするか、あるいは「ロール」することができる。このペレットの再組織化は、洗浄の効率をさらに増加させることを可能にし、これは、この再組織化が洗浄溶液の吸引及び排出のサイクルと一緒に行われうるため、なおさらである。
【0029】
特に、第1の磁界の調節は、
- ピペットコーンを前記コーンの縦軸と平行に動かし、第1の磁界を一定に保つこと;及び/又は
- 捕捉された粒子の前に互いに離間した磁石を通過させること
により行われる。
【0030】
言い換えれば、調節は、例えば、磁石のストリップをスライドさせる技術者によって、又は磁石のストリップの並進運動の単純なメカニズムを適用する自動化された装置によって単純に得られる。
【0031】
一実施態様によれば、ピペットコーンの容積は、回収ウェルの容積の少なくとも10倍である。一実施態様によれば、混合物の体積は、ピペットコーンの容積の少なくとも3倍である。
【0032】
一実施態様によれば、成分は、一本鎖又は二本鎖核酸(DNA及び/又はRNA)、微生物、タンパク質並びにペプチドによって形成される群に属する。成分は、磁性粒子に付与された官能化に応じて、他の任意のタイプの分子からなる。
【0033】
本発明の目的は、これまでに記載されている方法を実施するための装置を提供することでもあり、それはあまり大きくなく、実験技術者が使用するのが簡単である。
【0034】
この効果のために、本発明の主題は、
- 基部;
- ウェル支持体を取り外し可能に収容できる、基部に作製された凹部;
- 有利には液体をピペットすることを目的とする先端を含む少なくとも一のチューブ状ピペットコーンを備えたピペットを取り外し可能に挿入することができる、基部の凹部に開口している第1のハウジングを含むピペット支持体であって、ピペットコーンの軸に平行な方向において基部に対して並進運動可能であり、各ピペットコーンの先端がウェル支持体のウェルに挿入される第1の位置と、前記先端が前記ウェルの外側にある少なくとも一の第2の位置の間で運動可能である、ピペット支持体;
- 磁化部分を取り外し可能に収容できる第2のハウジングであって、ピペット支持体が第1の位置にあるときにピペットコーンの先端上の位置でピペットコーンのそれぞれに対向し、ピペット支持体が第2の位置にあるときにピペットコーンの先端に対向する、第2のハウジング
を含むピペットホルダーでもある。
【0035】
言い換えれば、ピペットホルダーはピペットを受領し、技術者は、ピペットを上昇/下降させて、特にピペットコーンの先端中の粒子ペレットの移動を引き起こすことによって、ウェル(プレート、ストリップ等の形態)を基部に導入することによって、及びピペットを作動させることによって、抽出方法の工程を実行する。
【0036】
あまり大きくなく持ち運び可能なピペットホルダーは、電子ピペットが使用されるときには抽出方法の半自動化も可能にする。そのようなピペットは、実際、それを備える各ピペットコーンに吸引及び排出のための回路と、マイクロプロセッサに基づく電子回路とを含む。この電子回路は、ピペットを備える付着面及び/又は(例えばBluetoothタイプの無線接続により)ピペットに接続したコンピュータ/タブレット/スマートフォン等によって、技術者により入力されたセットポイントに応じて吸引/排出回路を制御する。これらのセットポイントは、例えば吸引/排出サイクル指示及び/又はピペットに事前記録された特定のプロトコールの選択からなる。
【0037】
電子ピペットはプログラム可能であるため、所望の特定の磁気捕捉(例えば、核酸精製、磁気免疫濃縮等)に応じて調整することができる抽出方法の定義において多量の多価も得られる。特に、目的の抽出に適したプロトコールは、ピペット中で記録することができ、プロトコールは、吸引及び排出サイクル、サイクル順序、サイクル頻度、サイクル間の時間、規定の容積等に関して規定される。自発的及び半自動化システムはこのように得られる。
【0038】
そして、ピペットコーンはピペットから分離可能であり、したがって、ピペットを長期間にわたって運転休止にすることなく、容易に置き換え可能である。
【0039】
一実施形態によれば、第1のハウジングは、ピペット支持体の第1のハウジングへのピペットの前側の挿入及びピペットの第1のハウジングからのピペットの前側の除去のための開口部を備える。適切な位置のピペット及びコーンの前面の挿入及び除去は、コーン先端を有するピペットホルダーに触れる危険性を最小限に抑え、したがって、ピペットホルダーの汚染の危険性を最小にする。
【0040】
一実施態様によれば、第2のハウジングは基部に作製される。
【0041】
特に、ピペット支持体は、ピペット支持体が第2の位置にあるときに、ピペットコーンの先端上の位置で各ピペットコーンを対向させるために磁化部分が取り外し可能に挿入されうる第3のハウジングを備える。
【0042】
言い換えれば、磁化部分が(例えば一又は複数の永久磁石を含む)第3のハウジングに存在するとき、磁化部分はピペットコーンとしっかりと結合し、したがって、基部に対するそれらの並進運動が後に続く。したがって、そのような運動中、磁化部分は、磁化粒子のペレットをコーンと付着させたままにする。よって、例えば、技術者は、コーン中の粒子ペレットを動かす危険性なく、基部でウェル支持体をより容易に動かすためにピペットを上昇させることができる。
【0043】
特定の一実施態様によれば、第2及び第3のハウジングは連通し、ピペット支持体は、第3のハウジング中に磁化部分を取り外し可能に維持することが可能な手段を含む。この方法では、技術者は磁化部分をピペット支持体から分離することができ、これは、第2のハウジング内に分けられることにより、その後基部に自動的に生じる。この分離は、特に、コーン先端中の磁性粒子の移動操作に関して生じる。
【0044】
一実施態様によれば:
- 基部は少なくとも一の回転できる歯車を備え;
- 且つ、ピペット支持体は、歯車の回転中にピペット支持体を基部に対して並進運動させるために、歯車と係合するラックを備える。
【0045】
特に、ピペットホルダーは、第1の位置にピペット支持体をロック及びアンロックするための装置を備える。特に、ピペットホルダーは、歯車を回すためにしっかりとそれに結合され、且つ、別のピペットホルダーの歯車にしっかりと結合されたハンドルに取り外し可能に設置することが可能な少なくとも一のハンドルを備え、したがって、これは、抽出方法中のピペットコーンの数を増加させることを可能にする。
【0046】
本発明の主題は、液体形態の生物学的試料に含有される、磁性粒子と結合することができる成分を抽出するためのシステムであって、
- 液体をピペットすることを目的とする先端を含む少なくとも一のチューブ状ピペットコーンと、各ピペットコーンに吸引及び排出のための回路とを備えるピペット;
- 少なくとも一のウェル支持体;
- 以下:
○基部;
○各ウェル支持体を取り外し可能に受領できる、基部に作製された凹部;
○有利にはピペットが取り外し可能に挿入される、基部の凹部に開口している第1のハウジングを含むピペット支持体であって、ピペットコーンの軸に平行な方向において基部に対して並進運動可能であり、各ピペットコーンの先端がウェル支持体のウェルに挿入される第1の位置と、前記先端が前記ウェルの外側にある少なくとも一の第2の位置の間で運動可能である、ピペット支持体;
○ピペット支持体が第1の位置にあるときにピペットコーンの先端上の位置でピペットコーンのそれぞれに対向し、ピペット支持体が第2の位置にあるときにピペットコーンの先端に対向する、第2のハウジング
を備えるピペットホルダー;及び
- 第2のハウジングに取り外し可能に挿入された磁化部分
を含むシステムでもある。
【0047】
特に、ピペットホルダーは、上記のピペットホルダーによるものである。
【0048】
本発明の目的は、ピペットコーンの先端から回収ウェルへの磁性粒子の移動のためのウェル支持体を提供することでもある。
【0049】
このため、本発明の主題は、ウェルを受領するための凹部が作製される部分と、前記部分に作製された凹部のそれぞれに対向する少なくとも一の磁石とを含むウェル支持体でもある。
【0050】
本発明は、後に続く添付の図面に関連して例としてのみ与えられた以下の説明を読むことにより、より明確に理解され、図面中の同一の参照符号は同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明による抽出システムの斜視図である。
図2A-B】電子ピペットとその取り外し可能なピペットコーンの正面斜視図である。
図3A-B】本発明によるピペットホルダーの正面斜視図である。
図4A-B】それぞれ、図3Bの平面A-A及びB-Bに沿った、図3のピペットホルダーの詳細断面図である。
図5】ウェルを含む「ディープウェル」プレートの斜視図である。
図6A-B】ラックに挿入することができる、磁気ラック及びPCR溶出ラックの斜視図である。
図7】本発明による磁化された部分の正面図である。
図8】本発明による抽出方法のフローチャートである。
図9】コーンのおよそ半分に置かれた磁性粒子のペレットを有する、本発明によるシステムのピペットコーンの写真である。
図10】前記コーンの先端に置かれたペレットを有するこれらの同じコーンの写真である。
図11】磁性粒子が回収されたPCR溶出チューブの写真である。
図12A】本発明によるピペットホルダーの第2の実施態様を説明する。
図12B】本発明によるピペットホルダーの第2の実施態様を説明する。
図12C】本発明によるピペットホルダーの第2の実施態様を説明する。
図13A-C】本発明によるピペットホルダーの第2の実施態様を説明する。
図14】回転ハンドル手段に結合した、図1の二つのシステムの斜視図である。
図15】ピペットコーンの壁から粒子のペレットを分離するための、前記ペレット上の溶液のメニスカスの上下運動を説明する線図である。
【0052】
図15を除き、実際のシステムの縮小された平面及び写真に対して説明がなされている。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1から図7に関して、液体試料に含有される成分を抽出するためのシステム10(図1)は、電子ピペット12(図2)、ピペット12が挿入されるピペットホルダー14(図3)、ピペットホルダー14に挿入することができる一又は複数のウェル支持体18a、18b(図5及び6)、及び第1の磁化された部分16(図7)を含む。
【0054】
持ち運び可能なピペット12は、ピペットコーン20の列と、コーン20が取り付けられる本体22とを備える(図2A)。この本体20は、コーン20の液体を吸引/排出するための回路(例えば電動機により作動する一連のピストン)と、吸引/排出回路を制御するための電子回路とを収容する。例えばマイクロプロセッサ及び一又は複数のコンピュータメモリを含む電子回路は、プログラム可能であり、その中に組み込まれた、一又は複数のピペットプロトコールを行うための指示を有し、各プロトコールは一又は複数の工程を含む。電子回路は、本体22のハンドル26に収容されるマンマシンインタフェース24を含み、インターフェースは選択及びナビゲーションボタン28のセットと、様々な記録されたピペットプロトコールの視覚化及び選択を可能にするディスプレイスクリーン30を含む。使用者は、特に、無線リンク、例えばBluetoothを通じて電子ピペット12に接続されたコンピュータからの指示を前記ピペットにダウンロードすることにより、電子ピペット12をプログラムすることができる。使用者は、インターフェース24を介して、予備記録されたプロトコールを選択することもできる。さらに、ピペット12は、コーン20のそれぞれに所定の容積の液体を吸引すること、コーンのそれぞれから所定の容積を排出すること、及び様々な時間及び頻度の自動吸引/排出サイクルを行うことが可能である。
【0055】
図2Bでより具体的に説明されるように、チューブ型で縦軸Xを有するコーン20は、本体22から突出する突起32に適合させることにより取り外し可能である。さらに、コーンは、プラスチック、例えばポリプロピレンからなり、これは、コーンを磁界に対して「透明」にする効果を有し、磁性粒子の捕捉を可能にする。これは後に詳述する。そして、各コーン20は、その開口ピペット端部にテーパープロファイル21、又は「先端」を有する。この部分21は、軸Xに垂直な平面内で減少した断面を有し、それ自体既知のように、容器又はウェルへの導入を容易にする。
【0056】
電子ピペット12は、例えばスイスのIntegra Biosciences AG社により販売される「8-channel Viaflo II」モデルであり、このモデルの要素は、米国特許公開第2009/071266号、同第2009/074622号、同第2011/076205号及び同第2008/095671号に記載されている。
【0057】
ピペットホルダー14は(図3A及び3B)は、ワークベンチ(例えば実験台又はベンチ)上に置かれることを目的とする基部34と、基部34に対して動く可動部分36とを含む。「ピペット支持体」とも呼ばれる可動部分36は、ピペット12を取り外し可能に挿入し、図1で説明されているように固定化することができるハウジング38を含む。基部34に対するピペット支持体36の並進運動に関して、支持体36は、一又は複数(例えば二つ)のラック40を含み、それは、回転し、基部34に挿入された軸44に取り付けられた歯車42と係合する。また、一又は複数のロッド46は、支持体36をその並進運動へ誘導するために、(それぞれ基部34で)支持体36に設置されており、(それぞれ支持体36で)基部34のオリフィスにスライドする。一又は二の回転ハンドル50も、使用者が矢印52(図1)の方向においてハンドルを容易に回転することができるようにするために、軸44の末端に結合しており、したがって、矢印54(図1)で説明されるようなピペット支持体36の上昇及び下降を引き起こす。よって、基部34に対するピペット支持体36の並進運動は、ピペット12が支持体36のハウジング38に置かれているときにはコーン20の軸Xに平行であり、したがって、基部34が、支持体36が「上昇」又は「下降」するように水平ワークベンチに置かれているときには重力の方向に平行である。
【0058】
基部34は、ウェル支持体18a、18bの導入及び除去を可能にするように、その前面で開口しており、よって、後者のためのハウジングを規定する。このハウジングは、ピペット12のコーン20が、ピペッが下降するときに前記ウェル支持体に到達することを可能にするように、上部で開口している。よって、以下に詳述するように、ピペット12は、基部34に対して、よって基部に挿入されるウェル支持体18a、18bに対して、複数の位置をとることができる。特に、ピペット12は、コーン20の先端21が支持体18a、18bのウェルに浸る位置と、先端21がウェルに浸らない少なくとも一の位置をとることができ、ウェル支持体が使用者により取り扱われ、磁性粒子がコーン20の中心位置で捕捉されるように、ウェル支持体からの距離がある。
【0059】
図5及び6を参照すると、ウェル支持体は、所望の抽出に応じて複数の形態を有しうる。特に、ウェル支持体は、通常「ディープウェル」タイプの「マイクロプレート」と呼ばれる区分化されたプレート18a(図5)である。このタイプのプレートは、ピペットコーン20の列が浸ることができるウェル52の列60を含む。各列60は、システム10によって行われる抽出工程中に使用される特定の液体をこのように受領することができる。一つの60から他の列への通過は、ピペットコーン20に合わせて、行われるべき工程で必要とされる液体を含有する特定の列60を配置する使用者によって簡潔に行われる。
【0060】
図6Aに記載される別のウェル支持体は、磁化され、磁性粒子のピペットコーン20の先端21からウェル内への移動のために特別に設計される。この目的のため、支持体18bは、ピペットコーン20の列を受領することができるハウジング66の列が作製され、且つ一又は複数の永久磁石、例えばウェル66のそれぞれに近接した永久磁石を含む第2の磁化された部分68に挿入される基部64を含む。磁化された部分68は、ウェル66の下に配置されるか、又は説明されているようにそれらの下部に対向している。よって、ピペットコーン20の先端21は、前記先端がウェル66に浸されているとき、磁化された部分68の上に配置される。そして、支持体18bは、例えば回収された抽出生成物のその後の移送の目的のために、ハウジング66にチューブ69、例えば図6Bで説明されているようなPCR溶出チューブを取り外し可能に受領する磁気ラックとして機能する。
【0061】
後で詳述される方法でコーン20に磁性粒子を捕捉する機能の第1の磁化された部分16は、一又は複数の永久磁石72、有利にはスペース74によって互いに分離された永久磁石の列、さらにより有利には部分16が基部34に完全に挿入されるときに各ピペットコーン20に対向する永久磁石を含む。該部分16は、使用者によるより良好なグリップのためのハンドル76も含む。
【0062】
磁化された部分16を受領するためのハウジング78は基部34に設けられ、ハウジング78は、該部分16がピペットコーン20の先端21で該コーンに対向するように、好ましくは、先端21がウェルに浸るときに、ウェル支持体に保持されるウェルよりも高い高さで中央の区域80に対向するように、置かれる。この方法では、粒子は、コーン中でプラグを形成しないような十分な大きさのコーンの容積で捕捉される。
【0063】
ピペットホルダー14は、支持体36が上昇する速度を制御するための手段も含む。特に、ラック及び歯車は、そのホイール50の半回転(180°)がラック全体を横切ることを可能にするように設計され、遠心ウェイト58は、軸44に対して軸外の方法でハンドル50のそれぞれに統合される。これらの遠心ウェイトは、その重さ及び関連するレバー効果の下で、軸44を回転させる回転カップルを生成すると同時に、使用者によって手で伝達されるカップルを制限する。有利には、図4Aで説明するように、軸44の実質的な部分も同じ目的のために半円筒形の遠心ウェイトから形成される。この機械的な補助は、ピペット支持体を上昇させるのに役立ち、筋骨格系の問題を制限し、使用者が支持体36の昇降速度をより正確に制御することを可能にする制動を行う。
【0064】
支持体36の速度を制御するための他の機構、特に磁気制動を設けることができる。例えば、図4Aを参照すると、遠心ウェイト59は、磁化可能な材料(例えば鋼又は同等物)を含み、第3の磁化部分80(平行六面体又は軸44と同心円の円弧の形状)は基部34に収容され、好ましくは抽出を妨げないように軸44に対して磁化された部分16に対向する。軸の遠心ウェイト59が磁化された部分80の前を通るとき、軸44の回転運動は、発生した制動カップルのために、遅くなる。これにより、一方では、上昇中にピペットを持ち上げるための努力を(使用者の補助として作用することによって)補償することが可能になり、他方では、以下に記載されるようにピペットコーンの底部に磁性粒子が下降することになることが望まれるとき、ピペットが上昇する速度を制御することが可能になる。
【0065】
図4Bに示すように、停止機構もまた有利に設けられる。この変形例では、(例えばエラストマーの)変形可能な材料から作製されるホイール84が軸44に取り付けられ、2つの歯86、88を備える。突起82、例えば半球状突起は、ホイール84に対向する基部84から突出している。使用者が、ホイール50を作動することによりピペット12を上昇させるとき、第1の歯86は突起82に遭遇する。ホイール50に適用された切れ目が増加するとき、歯86は曲がり、突起82を通り、その形状に戻る。この位置において、歯86は突起82上に置くことができ、この歯の硬度は、ピペット12及びピペットホルダー36の重量の作用下で曲がらないように選択される。このようにしてピペットは頂部位置でブロックされ、使用者はホイール50を解放することができる。寸法(例えば長さ及び/又は幅)がより大きい第2の歯88は、それが通過するためにはるかに大きなカップルを必要とし、したがって、使用者がこの歯を制動できる力を展開しない限り、ピペットホルダー36が基部34から外れるのを防止するストッパーを画定する。変形例として、突起82は、基部のハウジング内のバネに取り付けられたボールを含むストッパーによって置き換えられる。したがって、ホイール84は、硬質材料で作製することができる。したがって、第1の歯86の作用は、ボールをそのハウジング内に押し込み、それによって歯86を通過させる効果を有する。
【0066】
現在、液体試料中に含有される成分を磁性粒子によって抽出するための方法が記載されており、この方法は、今説明したシステムによって実施される。該方法は、1mlから5mlの間のピペットコーン当たりの試料容積を処理するための捕捉、洗浄及び溶出する様々な工程を行うために、ピペットホルダー、プログラム可能な電子ピペット及びピペットコーン(例えば1250μlも容積を有するもの)の組み合わせに基づく。磁性粒子の捕捉は、処理される試料の容積の全てについての吸引/排出サイクル中にピペットコーンで連続して行われる。例として、NucliSENS(著作権)化学を用いてウイルス核酸を精製するための方法、すなわち磁性シリカ粒子による核酸の抽出を、図8のフローチャートに関連して説明する。
【0067】
この方法は、精製に必要な様々な試料及び試薬を調製するステップ100から始まり、続いて102において前記精製が行われる。
【0068】
特に、104中、調製100は、一容積の試料に対して二容積の溶解試薬の割合で、ウイルス(ここから核酸を抽出することが望ましい)を含む生物学的試料を、ウイルスの化学的溶解のための試薬(例えばbioMerieuxの参照番号200292の「Nuclisens miniMAG」溶解試薬又はbioMerieuxの参照番号280130の「Nuclisens easyMAG」溶解試薬)と混合させることからなる。その後、混合物は56℃で30分間加熱され、よって、それ自体既知の方法でウイルスから核酸を放出する。核酸と結合する特性を有する磁性シリカ粒子(例えば残留磁化を示してもしなくてもよい常磁性、強磁性又はフェリ磁性コアを有する粒子であって、前記コアがシリカシェルで覆われているもの粒子)は、その後、106で溶解試料中に導入される。
【0069】
調製100は、
- マイクロプレート18aの第1の列の各ウェルが、シリカ粒子を含む溶解試料(以下「溶解試料」と称する)で満たされ、第1の列の各ウェル中の総容積は、5mlのディープウェルマイクロプレートの使用及び電子ピペットにより取り扱われる容積のため、好ましくは1.5ml超であるように;
- マイクロプレート18aの第2の列の各ウェル66が1250μlの洗浄バッファー(例えばbioMerieuxのbMx参照番号280131の「NucliSENS easyMAG Extraction Buffer No.2」)で満たされるように;
- マイクロプレート18aの第3の列の各ウェル66が1250μlの洗浄バッファー(例えばbioMerieuxのbMx参照番号280131の「NucliSENS easyMAG Extraction Buffer No.2」)で満たされるように;
- 磁性ラック18bに挿入される各PCR溶出チューブ69が100μlの容積のバッファー(例えばbioMerieuxの参照番号280132の「NucliSENS easyMAG Extraction Buffer No.3」)で満たされるように、
5mlのウェル62を有するマイクロプレート18aと、磁性ラック18bの0.2mlのPCR溶出チューブ69を満たすことにより、108で継続する。
【0070】
使用者は、その後、
- プレート18aの導入を可能にするように、電子ピペット12をそのコーン20の列とともに、ピペットホルダー14のハウジング38に上昇した位置で配置し;且つ
- プレート18aを、コーン20に合わせて溶解試料を含むウェルの第1列を有する基部34のハウジング56に配置する。
【0071】
抽出102は、溶解試料の均質化で始まる。これを行うために、磁化された部分16は基部34内に配置されず、したがってコーン20に干渉しない。使用者は、コーン20の先端21を、溶解試料を含むプレート18aのウェルの列に浸すように、ホイール50の1つを回転させる。次に、使用者は、ピペット12のインターフェース24によって、コーン20の溶解試料の吸引/排出の少なくとも1つの段階を含む第1のピペットプロトコールを選択し、選択されたプロトコールを起動する。これらの段階(例えば2つ)は、それぞれ少なくとも一の吸引/排出サイクル(例えば5サイクル)を含み、その後に数分間、例えば5分間の待機時間が続く。本発明の目的のために、吸引及び排出サイクルは、プログラムによって他に指定されない限り、少なくとも4分の3、例えば完全にコーンを満たすこと、その後それらを完全に空にすることからなる。
【0072】
均質化が終了すると、コーン20は空であり、それらの先端21は溶解試料を含有するウェルに浸る。精製102は、112で、コーン20の内壁上、溶解試料のシリカ粒子の捕捉を継続する。このため、使用者は、磁化された部分16を基部34のハウジング78に配置し、ピペット12のインターフェース24によって第2のピペットプロトコールを選択し、その後、選択したプロトコールを起動する。第2のプロトコールは、複数の吸引/待機/排出サイクル、例えば10サイクルを含み、吸引操作は、数秒間、例えば約10秒間、排出操作と離れている。各吸引操作及び各排出操作では、溶解試料に含有される粒子の一部は、磁化された部分16によって生成された磁界により、ピペットコーンの壁上に捕捉される。したがって、磁性粒子及び、したがってその結合した核酸は、このように、磁化された部分16に対向する粒子100のペレットの形態で、好ましくは図9に示されるようにコーン20の中腹の中央区分に捕捉される。
【0073】
捕捉が終了すると、溶解試料はコーン20から完全に排出され、磁化された部分16は依然としてその位置にあり、精製102は第1の洗浄工程114を継続する。この目的のため、使用者は、プレート18aをコーン20から放出するように、ピペットホルダー14を上昇させ(ピペット12をそれぞれ上昇させる)、プレート18aの第2の列をコーン20の列と位置合わせし、その後、コーンの先端21をプレート18aのウェルに浸すように、ピペットホルダーを再配置する(ピペットをそれぞれ下降させる)。次に、使用者は、インターフェース24によって、コーン20の溶解試料の吸引/排出の少なくとも1つの段階を含む第3のピペットプロトコールを選択し、その後選択されたプロトコールを起動する。第3のプロトコールは、例えば第1のプロトコールと同一である。粒子ペレット上の洗浄バッファーの繰り返しの通過は、このように、前記粒子を洗浄することを可能にする。この洗浄工程は、有利には、コーン上の粒子を捕捉する磁界の調節と共に完了するか又は行われる。例えば、使用者は、コーン上の粒子ペレットを動かす効果のあるピペット12を上昇及び下降させ、又は、磁化された部分16は永久磁石のセットを含み、使用者は、ペレットを捕捉する磁界の強度及びラインが変化し、同時にコーンに捕捉された粒子を維持するように、ハウジング78から上下運動で磁化された部分16をスライドさせる。磁界の調節は、このように、洗浄中にペレットを再組織化し、その効率を増加させる効果を有する。
【0074】
第2の洗浄操作は、その後、プレート18aの第3の列の洗浄バッファーによって116で行われる。例えば、第1の洗浄バッファーは、コーンから完全に排出され、その後、第1の洗浄操作と同一である第2の洗浄操作が行われる。
【0075】
この第2の洗浄操作に続いて、粒子ペレット200をコーン20の先端21へ移動させる工程が行われる。これを行うには、コーン20は、ペレット200のスライドを容易にし、プレート18aの第2の列と位置合わせされたままにするために、優先的に第2の洗浄バッファーに満たされたままである。その後、使用者は、ピペット12を上昇させるように、ホイール50の一つを回転させる。磁化された部分16は基部34にしっかりと結合しているため、ペレットは、このように、前記部分に対して固定しており、ピペットが上昇する際にコーン20の壁に沿ってスライドすることによって、先端21へ向かって移動する。図10に示されるように、ペレット200がコーンの開放端から数ミリメートル、例えば8mmの平均距離で先端21に存在すると、使用者は、ピペット12の上昇をやめる。その後、この位置で、使用者は、インターフェース24によって、プレート18aのウェルへのコーン20に含有される洗浄バッファーの排出を、選択し、起動する。任意選択的には、洗浄段階の一つ、又は追加の洗浄段階は、磁性粒子を放出するように、且つ洗浄操作を行い、同時に吸引及び排出サイクルによって洗浄溶液中の粒子を撹拌するように、磁化された部分を除去することからなる。その後、粒子は、磁化された部分を再配置することにより、及び、先述のように吸引及び排出サイクルを実施することにより、再度捕捉される。
【0076】
精製102は、コーン20の先端21に存在する磁性粒子をPCR溶出チューブ69に移送する工程120で終了する。このため、使用者は、ピペットホルダー14を上昇させ、プレート18aを除去し、磁性ラック18bをPCRチューブ 69をコーン20と位置合わせするようにハウジング56に配置し、ピペットホルダー14をそのままにし、捕捉された磁性粒子をコーンから放出するために基部14から磁化された部分16を除去する。先端21がチューブ69に浸されると、使用者は、インターフェース24によって、第4のピペットプロトコールを選択し、その後、選択したプロトコールを起動する。このプロトコールの第1の変化形は、コーン20の先端21中の溶出バッファーの吸引及び排出からなり、これは、粒子ペレットの破壊により磁性粒子の再懸濁を可能にする。さらに、サイクルに関して選択される頻度は、チューブ69の各排出で、ラック64に挿入された磁化された部分68の磁界により、磁性粒子の一部がチューブ69で捕捉されることを可能にする。さらに、これらのサイクルは、コーンの壁に接着した粒子を回収するために、先端21を「洗い流す」ことを可能にする。プロトコールの第2の変化形では、吸引及び排出サイクルは、バッファー及び粒子をより激しく撹拌し、したがって溶出チューブ69への移送を容易にする均質化を促進させるように高頻度で最初に行われる。移送工程は、溶出バッファーのチューブ69への完全な排出で終了する。ラック64の磁界の効果の下、磁性粒子はその後、図11に示される表に、溶出バッファーから完全に分離される。使用者は、このように、続く処理、特に、それ自体既知の方法における加熱による核酸の溶出のためにチューブ69を回収することができる。
【0077】
先述のピペットホルダーの実施態様では、磁化された部分16は基部34に挿入される。よって、使用者がプレート18aを前方へ動かしたいときは、この操作を実施するためにピペットを十分高く上昇させるとよい。粒子の先端への移動に関しては、これにより、ペレット200はコーン20の壁上に動き、これは、それ自体の上で回転することができるペレットを「再組織化」する利点を有する。したがって、洗浄の効率はこのように強化される。一方、これは、ペレットをコーンから離さないように、ピペットをあまりにも上昇しないように注意することを意味する。このために、使用者は、コーン開口部からペレットをある距離で保つように、例えば、ピペットホルダーを上昇させるか又は傾けることができる。しかしながら、かなりの重量になりうる装置の繰り返しの上昇を必要とするこの選択肢は、長期において筋骨格系問題をもたらしうる。加えて、使用者は、ペレットがコーンを離れないように、ピペットホルダーを上昇させすぎないように注意することもしなければならない。
【0078】
本発明によるピペットホルダーの第2の実施態様は、ピペットのみを上昇させることによりプレート18a、18bを取り扱うこと、及び、それにより、ピペットホルダー14の上昇を回避し、同時に粒子ペレットがコーンの先端21から距離を保つことを保証することを可能にする。この第2の実施態様、及びここに記載された方法に関して作成された変形例は、図12及び13で説明される。
【0079】
より具体的には、第2の実施態様は、ピペットホルダー14で磁化された部分16を受領する手段により、第1の実施態様とは異なる。特に、基部34は、先述のように磁化された部分16を挿入及び除去するためのハウジング78を含み、ハウジング78は、部分16のハウジング78への垂直な挿入及び除去も可能にするように、その上部130で開口している。ピペット支持体36は、開口ハウジング78、特に可動性のピペット支持体36の後部壁134に付着した磁化可能な材料(例えば鋼製)で作製された一又は複数のブロック132に磁化された部分16を設置するための手段も含む(図12C)。この方法において、図12Bから13Aに示されるように、使用者が(特に洗浄段階中に)ピペットを上昇及び下降させるとき、磁化された部分16は可動性の支持体36にしっかりと結合されており、コーン20に対向したままである。
【0080】
ペレット200のコーン20の先端への移動を行うために、使用者は、部分16のハンドル78に簡潔な下向きの圧力を加えることにより、磁化された部分16をピペット支持体36から切断し、ピペット12を上昇させる。磁化された部分16はブロック134から離れ、よって、基部のハウジング78に残り、したがって基部34にしっかりと結合され、先述(図13A及び13B)のように、コーンの先端21へのペレット200の移動を誘導する。ピペットが上昇されると、使用者はプレート18aを、PCR溶出チューブを備えたラック18bと置き換え、磁化された部分16を除去し、ピペットを再降下させる(図13C、チューブ69は非表示)。変化形として、ピペット支持体36は、使用者が、特に洗浄段階に関して磁化された部分をスライドさせる基部のハウジング78と同様のハウジングを含むことができる。
【0081】
特定の抽出方法が記載されてきた。しかしながら、本発明は、あらゆるタイプの磁性粒子の捕捉と、あらゆるタイプのピペット順序を対象とする。同様に、特定の容積の8のチャンネルを有するピペットが記載されてきた。ピペットは、目的の用途に応じて、あらゆる容積のあらゆる数のチャネルを含むことができる。
【0082】
処理される試料の数を増加させるために、図14に示されるように、本発明による二つの抽出システムを結合することができる。例えば、回転ハンドル50は、二つの抽出が同時に行われるように組み合わせることができ、使用者は、ピペット12を同時に上昇及び下降させる。このために、ピペットは同期させることができ、例えば、一つのピペットを制御すると他のピペットも制御される。
【0083】
同様に、持ち運び可能な半自動化抽出システム、特に日常的に限られた数の抽出が行われている試験室に適したシステムが記載される。しかしながら、本発明は自動化することができる。例えば、ピペットは、ピペットを上昇及び下降させるため、並びに磁石を動かすため(又は電子磁石を活性化/失活するため)のプログラム可能な機構を含む自動化装置に統合される。
【0084】
マイクロプレート18aの第2の列及び第3の列のウェルにおける二つの洗浄操作が記載されてきた。しかしながら、あらゆる数の洗浄操作が存在しうる。同様に、コーンで粒子を捕捉するための単一の工程が記載されてきた後にさらなる捕捉工程が続く、粒子を放出する一又は複数の工程も提供されうる。
【0085】
粒子を放出するために、粒子を捕捉するための磁界は、ハウジングから磁化された部分16を除去することにより失活され、その後、バッファーの吸引/排出のサイクルが、コーンの壁から粒子ペレットを分離するように、及びそれらを分解するように、ピペットコーンで行われる。そのような手順は、1分当たり5サイクルの吸引/排出頻度(コーンにおける完全な吸引及び排出)で、ペレットをコーンの壁から完全に分離するのに10分超かかる。図15を参照すると、ペレット200のより速い放出は、ペレット200上で、バッファー302がコーン20内に形成するメニスカス300の上下運動を行うことによって得られる。特に、メニスカス300がペレット上を通過する頻度を増加させるために、メニスカスがペレット200の両側の限定された経路304を移動するように、吸引/排出サイクルが調整される。同様に、吸引/排出サイクルの頻度は、磁性粒子のペレットが存在するゾーンで、前記通過頻度をさらに増加させるために増加され、特に1秒あたり2サイクルを超えるサイクル頻度が増加する。この手順が適用されるとき、ペレットはコーンから1分未満で分離する。発明者は、ペレットを分離するのに役立つのは、ペレット上をメニスカスが通過することであることに注目してきた。実際、ペレット上をメニスカスが通過することなく(すなわち、ペレットの前に液体の「単純な」運動)、時間を著しく節約せずに、コーン中のバッファーを迅速に撹拌することにより、試験は行われてきた。ペレット放出段階が行われると、前記段階はペレットを分解させる効果も有し、コーン内の完全な吸入/排出による撹拌段階が行われ(例えば1分当たり8回の吸引/排出サイクル)、ペレットの分解を終了させ、粒子を含むバッファーを均質化させる。マイクロプレートのウェル内のこれらの完全な吸引/排出サイクルは、より長い経路にわたってより大きな容積を撹拌し、それによってバッファーの均質化を促進する。
【0086】
ここでは、例えば、磁性シリカ粒子による、特にウイルス由来の核酸(例えばDNA及びRNA)を抽出するための好ましい方法について記載する。この方法は、粒子放出段階、例えば先述のようなもの、その後のバッファー中の洗浄及び粒子の再捕捉の段階を含む。改善された抽出と同様に、著しい時間の節約が得られる。特に、ウイルス溶解工程が行われると、この方法は
1.例えば、先述の方法における、ピペットコーン中で磁性粒子を捕捉する第1の工程;
2.洗浄バッファー(例えばbioMerieuxの参照番号280130の「NucliSENS easyMAG Extraction Buffer No.1」)で満たされたマイクロプレートの異なる列における、その後の第1の洗浄工程、及び好ましくは少なくとも一の第2の洗浄工程。各洗浄操作は、ピペットコーン上に捕捉された粒子を有する洗浄バッファーの吸引/排出のサイクルを含み、少なくとも15秒、好ましくは25秒から35秒の間、例えば30秒、且つ好ましくは1分未満続く;
3.洗浄バッファー(例えばbioMerieuxの参照番号bMx280131の「NucliSENS easyMAGExtraction Buffer No.2」)で満たされたマイクロプレート18aの第3の列における少なくとも一の第3の洗浄工程。この第3の洗浄工程中、粒子を再懸濁するために、磁石を除去することにより粒子は放出され、懸濁液中に粒子を有するバッファーは、マイクロプレート18aの対応するウェルで吸引/排出される。好ましくは先述のようにペレット上をメニスカスが通過する段階を含む第3の洗浄工程は、数分間、特に5分間続く;
4.例えば先述のようにピペットコーン中で粒子を捕捉する第2の工程;
5.任意選択的には、第4の洗浄工程、粒子は洗浄バッファー(例えばbioMerieuxの参照番号bMx280131の「NucliSENS easyMAGExtraction Buffer No.2」)で満たされたマイクロプレート18aの第3の列で捕捉される;
6.粒子ペレットの先端への移動の工程と、その後の、チューブ(例えば溶出バッファー、例えば先述のようなbioMerieuxの参照番号280132の「NucliSENS easyMAG Extraction Buffer No.3」を含むもの)への移送の工程
を含む。
【0087】
NucliSensの洗浄バッファーのラインアップ、特に抽出バッファーNo.1、No.2及びNo.3が記載されている。より一般的には:
- 抽出バッファーNo.1は、シリカのシラノール基と核酸のリン酸基との間に架橋を作成することにより、シリカ上の核酸の捕捉を促進するバッファーである。それには、例えば、グアニジンチオシアネート、つまり、R.Boom等による文献「Rapid and simple method for purification of nucleic acids.」Journal of Clinical Microbiology. 1989;3 495-503に記載されるカオトロピック剤が含まれる。
- 第1及び第2の洗浄操作は、残留マトリックス又は微生物デブリを除去することを可能にする。
- 第3及び第4の洗浄操作は、GuSCNの痕跡と磁性粒子によって捕捉されたDNA/RNAで通常続いて行われるPCR型増幅の阻害剤の痕跡を除去することを可能する。
- PCRコーンに含まれる溶出バッファーは、洗浄バッファーの痕跡を除去することと、溶出工程に最低な条件下にすることを可能にする。
【0088】
以下の表は、記載されたプロトコール(2回の第1の洗浄操作、その後、粒子の放出を伴う第3の洗浄操作)を適用したときの本発明による装置を用いて得られた結果を、先行技術、すなわち、bioMerieux社によって販売され、ウイルスRNA抽出における参照装置であると考えられるMiniMag(登録商標)の装置を用いて得られた結果と比較する。MiniMag(登録商標)のプロトコールは、洗浄バッファー(二つは「NucliSENS easyMAG Extraction Buffer No.1」を、二つは「NucliSENS easyMAGExtraction Buffer No.2」)を用いた四つの洗浄工程を含む。抽出の効率を決定するために、抽出された溶解物のリアルタイムPCR増幅(又は「q-PCR」)を行い、各試料の(「サイクル閾値、試料中の核酸の検出の閾値を数値化する。)を測定する。二重で試験された試料は、25gのラズベリー又は緑タマネギの試料であり、これには純粋な(25g当たりゲノムの500コピーに対応する)メンゴウイルスの溶液が添加されるか、又は1/10に希釈される。
【0089】
これからわかるように、本発明によるウイルスRNAの抽出は、MiniMag(登録商標)を使用して得られるものと同様の結果を示す。加えて、多様な品質の磁性シリカ粒子の様々なバッチで試験が行われた。本発明による抽出は、前記粒子の品質に関して驚くほど非常にロバストであることがわかっている。特に、より低い性能グレードの粒子のバッチを用いて同じ試料について試験を行い、抽出は、先述のように放出/洗浄/再捕捉の工程を含まなかった。この場合、抽出度は低い。欠陥粒子に関して先述の好ましい方法を使用したとき、前の表と同様の結果が得られた。
【0090】
捕捉/洗浄/移動及び移送段階の前に行われる溶解に由来する、本発明の核酸、例えばRNA及び/又はDNAの捕捉への適用が、記載されてきた。本発明はまた、表面が機能化されて(例えば、ファージタンパク質で覆われているか又はそれ自体既知の方法でそのような捕捉に適したポリカチオンで覆われている)微生物を捕捉する磁性粒子による微生物(例えば細菌、真菌、酵母)の捕捉に適用する。それらの捕捉された微生物を有する磁性粒子は、例えば機械的溶解のような溶解を続いて受けるためにチューブに移される。得られた溶解物は、直接、例えばポリメラーゼ連鎖反応増幅(例えば、q-PCR型の定量的PCR)の処理の対象でありうるか、又は先述の核酸抽出方法に従って精製されうる。
【0091】
本発明は、PCRを目的とする微生物試料の調製に特に適している。実際、ピペットコーン中の粒子の捕捉が行われる試料は、非常に大きな容積(例えば数ミリリットル)を有しうるのに対し、粒子が移されるチューブの最終容積は非常に小さい(例えば、200マイクロリットル以下、さらには100マイクロリットル以下)ことがある。大量の試料のために、多くの微生物が捕捉される。非常に小さな最終容積への通過は、微生物を濃縮する効果を有する。したがって、本発明者らは、数ミリリットルの試料からの捕捉の単一段階、続いて単一の洗浄工程が、5マイクロリットルの容積で行われる溶解からのq-PCRによる結果を得るのに十分であることに注目した。
【0092】
特に、41.5℃で5時間、栄養ブロスによる食物マトリックス(チキンエイジルレット)の富化を行った。サルモネラ・ダービー(Salmonella Derby)株による後汚染は、10から10CFU/mlのレベルで行われ、これは食品マトリックス中の病原体の存在下で富化された後に達することができる濃度(すなわち、食品バッチが消費に適さないと判断される濃度)に対応する。汚染された各試料について、二重で二つの手順を行った。一方はbioMerieux(フランス)のGene-up(登録商標)システムを用いた標準化された捕捉プロトコールに従って、もう一方は本発明に従って行われた。
【0093】
Gene-upプロトコールは、20μlの試料を採取し、それを180μlの洗浄バッファーを含有するビーズビーティングチューブに置き、その後ビーズビーティングのためにマイクロプレートシェーカー上で5分間振とうすることによる、試料の「ビーズビーティング」(すなわち、細菌の壁の機械的破壊)工程からなる。最終溶液の5マイクロリットルが採取され、q-PCRに供された。
【0094】
本発明による方法は、その一部として、
1.
a.ピペットコーン中10分間の吸引/排出により撹拌して;
b.「Hyglos Streptavidin」磁性粒子(50μl)を添加し、吸引/排出により15分間撹拌して(細菌-ビオチン化ファージタンパク質複合体は磁性粒子と結合する);
c.磁性粒子を収集する段階のための磁石をコーンに置き;
d.磁性粒子捕捉サイクルを起動して;
2mlの試料をビオチン化ファージタンパク質溶液(最終濃度2μg/ml)と接触させることによる特異的な捕捉工程:
2.TST(Tris Saline Tween)洗浄溶液を含有するウェル中5回の吸引/排出サイクルで洗浄する工程;
3.ビーズビーティング処理に供された5マイクロリットルチューブに磁性粒子を収集する工程であって、ここで、5マイクロリットルの最終溶液はq-PCRに供される、工程
からなる。
【0095】
Gene-up(登録商標)プロトコールによって、及び本発明によって得られた結果を以下の表にまとめる。
【0096】
感度の推定増加は、Gene-up標準プロトコールと比較して2logである。
【0097】
本発明は、様々な磁性捕捉技術(核酸精製、磁性免疫濃縮など)の使用のための多価の問題に答えるものである。進化的であり調整可能である本発明によるシステムは、
- 行われる様々な上述の工程を可能にする、プログラム可能な電子ピペットと支持体との組み合わせからなる自動システムを使用して行われる磁性粒子の捕捉/洗浄/溶出の工程;
- 1から8の数の試料が使用される電子ピペットの構成に応じて処理されること;
- 試料が半自動システムを有する上記で規定された文脈で平行して処理されること;
- 必要に応じて、2のシステムが組み合わされ、処理される試料の数を増加させること;
- 溶出工程が様々なタイプのチューブで行われること:核酸捕捉に関与する(例えばNucliSENS(著作権)化学)ときには磁性シリカ粒子を回収するための0.2mlのPCRチューブ、又は病原体(磁性免疫濃縮)の回収のために使用された磁性粒子の回収の場合はビーズビーティングチューブ。この目的のため、システムは、磁性粒子上の病原体の捕捉/濃縮の工程と、セラミック/ガラスビーズ(例えばCapLyse(著作権)型)による、そのin situ溶解の工程とを可能にする、
を可能にする。

<さらなる実施態様>
[実施態様1]
液体形態の生物学的試料に含有される、磁性粒子と結合することができる成分を抽出するための方法であって、
- 試料を磁性粒子と混合する段階(106);
- 液体をピペットすることを目的とした先端(21)を含むチューブ状のピペットコーン(20)内へと、ウェルから混合物を吸引する段階(110);
- 以下:
○「捕捉」ゾーンと呼ばれる、ピペットコーン(20)の先端上の前記コーンの所定のゾーンに磁性粒子を引付及び保持することができる第1の磁界(16)を、ピペットコーン(20)に適用すること;及び
○ウェル(62)内へと、ピペットコーン(20)に含有される混合物を吸引及び排出する少なくとも一のサイクルを適用すること
により、ピペットコーン(20)の内壁上に磁性粒子を捕捉する段階(112);
- 以下:
○ピペットコーン(20)に含有される混合物を排出すること;及び
○洗浄溶液を含有するウェル(62)から、ピペットコーン(20)内へと、洗浄溶液を吸引及び排出する少なくとも一のサイクルを適用すること
により、ピペットコーン(20)の内壁上に捕捉された粒子を洗浄する少なくとも一の段階(114、116):
- 第1の磁界(16)に関してピペットコーン(20)の相対運動を行うことにより、ピペットコーン(20)の内壁上の磁性粒子を、捕捉ゾーンからピペットコーン(20)の先端(21)へ移動させる段階(118);
- ピペットコーン(20)の先端(21)に移動した前記磁性粒子を、溶液を含有する回収ウェル(69)へ移送する段階(120)
を含む方法。
[実施態様2]
第1の磁界(16)の運動が、ピペットコーン(20)を前記コーン(20)の縦軸(X)に平行に動かし、第1の磁界(16)を一定に保つことからなり、ピペットコーンの縦軸(X)が、ピペットコーン(20)の運動中に第1の磁界(16)から等しい距離にとどまる、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
移送段階(120)が、
- ピペットコーン(20)の先端(21)を回収ウェル(69)中に置くこと;及び
- ピペットコーン(20)の先端(21)に含有される磁性粒子を回収ウェル(69)中に移動させるように、回収ウェル(69)の底部から第2の磁界(68)を適用すること
を含む、実施態様1又は2に記載の方法。
[実施態様4]
第2の磁界(68)が、部分的に又は完全にピペットコーンの先端の下に配置された磁石によって生成される、実施態様3に記載の方法。
[実施態様5]
ピペットコーンに適用される第1の磁界が、第2の磁界の適用中に失活される、実施態様3又は4に記載の方法。
[実施態様6]
移送段階(120)が、第1の磁界(16)の失活と、その後にピペットコーンの先端(21)内へと、回収ウェル(69)の溶液を吸引及び排出するサイクルの適用を含み、前記適用が、
- 第1の頻度でサイクルを適用する第1の段階;
- その後の、第1の頻度より低い第2の頻度でサイクルを適用する第2の段階
を含む、実施態様3から5のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様7]
捕捉段階(112)の前に、ピペットコーンに含有される混合物を、ピペットコーン内へと前記混合物を吸引及び排出する少なくとも一のサイクルを適用することにより、撹拌する段階を含む、実施態様1から6のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様8]
移送段階(120)の前に、
a.磁界を失活させること;
b.洗浄溶液を含有するウェルから、ピペットコーン内へと、洗浄溶液を吸引及び排出する少なくとも一のサイクルを適用することによって、捕捉された粒子を放出すること;
c.
○ピペットコーンに第1の磁界を適用することにより、及び
○洗浄溶液を含有するウェル内へと、ピペットコーンに含有される混合物を吸引及び排出する少なくとも一のサイクルを適用することにより
ピペットコーンの内壁上に捕捉する第2の段階を適用すること;
により、ピペットコーンの内壁上に捕捉された粒子を洗浄する少なくとも一の段階を含む、実施態様1から7のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様9]
捕捉された粒子の放出が、ピペットコーン中に捕捉された粒子のペレット上で前記溶液のメニスカスの上下運動を行うような方法でサイクルを適用する段階を含み、前記メニスカスの上下運動が、ピペットコーンの全長よりも短いコーンの一部上で行われる、実施態様8に記載の方法。
[実施態様10]
捕捉された粒子の放出が、コーン洗浄溶液を完全に吸引及び排出するようにサイクルを適用する第2の段階を含む、実施態様9に記載の方法。
[実施態様11]
第2の段階のサイクルの適用頻度が、第1の段階のサイクルの適用頻度よりも低い、実施態様10に記載の方法。
[実施態様12]
捕捉された粒子の放出の前に、少なくとも二つの洗浄段階が、二つの異なる洗浄溶液において行われる、実施態様8から11のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様13]
生物学的試料に含有される成分が核酸である、実施態様8から12のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様14]
生物学的試料に含有される成分が微生物であり、単一の捕捉段階と単一の洗浄段階とを含む、実施態様1から7のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様15]
試料と磁性粒子との混合物が、1ミリリットル超、好ましくは2ミリリットル以上の容積を有し、回収ウェルの容積が、200マイクロリットル未満、好ましくは100マイクロリットル以下である、実施態様14に記載の方法。
[実施態様16]
移送段階(120)の前に、
- ピペットコーン内に洗浄溶液を吸引すること;
- その後、磁性粒子に適用される第1の磁界を、ピペットコーンの内壁上に前記粒子を捕捉するために、調節すること;
- その後、ピペットコーン洗浄液体を排出すること
により、ピペットコーンの内壁上に捕捉された粒子を洗浄する少なくとも一の段階を含む、実施態様1から15のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様17]
第1の磁界の調節が、
- ピペットコーンを前記コーンの縦軸と平行に動かし、第1の磁界を一定に保つこと;及び/又は、
- 捕捉された粒子の前に互いに離間した磁石を通過させること
により行われる、実施態様16に記載の方法。
[実施態様18]
ピペットコーンの容積が、回収ウェルの容積の少なくとも10倍である、実施態様1から17のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様19]
混合物の体積が、ピペットコーンの容積の少なくとも3倍である、実施態様1から18のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様20]
成分が、核酸、微生物、タンパク質及びペプチドにより形成される群に属する、実施態様1から19のいずれか一項に記載の方法。
[実施態様21]
- 基部(34);
- ウェル支持体(18a、18b)を取り外し可能に収容できる、基部(34)に作製された凹部(56);
- 液体をピペットすることを目的とする先端(21)を含む少なくとも一のチューブ状ピペットコーン(20)を備えたピペット(12)を挿入することができる第1のハウジング(38)を含むピペット支持体(36)であって、ピペットコーン(20)の軸(X)に平行な方向において基部(34)に対して並進運動可能であり、各ピペットコーンの先端(21)がウェル支持体(18a、18b)のウェル(62、69)に挿入される第1の位置と、前記先端(21)が前記ウェル(62、69)の外側にある少なくとも一の第2の位置の間で運動可能である、ピペット支持体;
- 磁化部分(16)を取り外し可能に収容できる第2のハウジング(78)であって、ピペット支持体(36)が第1の位置にあるときにピペットコーン(20)の先端上の位置でピペットコーンのそれぞれに対向し、ピペット支持体(36)が第2の位置にあるときにピペットコーン(20)の先端に対向する、第2のハウジング
を備えるピペットホルダー(14)。
[実施態様22]
第1のハウジング(38)が、第1のハウジング(38)へのピペット(12)の前側の挿入及び第1のハウジングからのピペット(12)の前側の除去のための開口部を備える、実施態様21に記載のピペットホルダー。
[実施態様23]
第2のハウジング(78)が基部(36)中に作製されている、実施態様21又は22に記載のピペットホルダー。
[実施態様24]
ピペット支持体(36)が第2の位置にあるときに、ピペットコーン(20)の先端(21)上の位置で各ピペットコーンを対向させるために、磁化部分(16)が取り外し可能に挿入されうるピペット支持体(36)中の第3のハウジングを備える、実施態様21から23のいずれか一項に記載のピペットホルダー。
[実施態様25]
第2及び第3のハウジングが連通し、ピペット支持体が、第3のハウジング中に磁化部分を取り外し可能に維持することが可能な手段を含む、実施態様24に記載のピペットホルダー。
[実施態様26]
- 基部(34)が少なくとも一の回転できる歯車を備え;且つ
- ピペット支持体(36)が、歯車(42)の回転中にピペット支持体を基部(34)に対して並進運動させるために、歯車と係合するラック(40)を備える、
実施態様21から25のいずれか一項に記載のピペットホルダー。
[実施態様27]
少なくとも第1の位置にピペット支持体(82)をロック及びアンロックするための装置を備える、実施態様26に記載のピペットホルダー。
[実施態様28]
歯車を回すために歯車にしっかりと結合され、且つ、別のピペットホルダーの歯車にしっかりと結合されたハンドル(50)に取り外し可能に設置できる少なくとも一のハンドル(50)を含む、実施態様26及び27に記載のピペットホルダー。
[実施態様29]
液体形態の生物学的試料に含有される、磁性粒子と結合することができる成分を抽出するためのシステムであって、
- 液体をピペットすることを目的とする先端(21)を含む少なくとも一のチューブ状ピペットコーン(20)と、各ピペットコーン(20)に吸引及び排出のための回路とを備えるピペット(12);
- 少なくとも一のウェル支持体(18a、18b);
- 以下:
○基部(34);
○各ウェル支持体を取り外し可能に収容できる、基部(34)に作製された凹部(56);
○ピペット(12)が挿入される、基部(34)の凹部(56)に開口している第1のハウジング(38)を含むピペット支持体(36)であって、ピペットコーン(12)の軸(X)に平行な方向において基部(34)に対して並進運動可能であり、各ピペットコーン(36)の先端(21)がウェル支持体(18a、18b)のウェル(62、69)に挿入される第1の位置と、前記先端(21)が前記ウェル(62、69)の外側にある少なくとも一の第2の位置の間で運動可能である、ピペット支持体;
○ピペット支持体が第1の位置にあるときにピペットコーン(20)の先端(21)上の位置でピペットコーンのそれぞれに対向し、ピペット支持体が第2の位置にあるときにピペットコーンの先端に対向する、第2のハウジング(78)
を備えるピペットホルダー(14);及び
- 第2のハウジング(78)に取り外し可能に挿入された磁化部分(16)
を含むシステム。
[実施態様30]
ピペットホルダーが実施態様21から28に記載のものである、実施態様29に記載のシステム。
[実施態様31]
ウェル(69)を受領するための凹部(66)が作製される部分(64)と、前記部分(64)に作製される凹部(66)のそれぞれに対向する少なくとも一の磁石(68)とを含むウェル支持体(18b)。
図1
図2A-B】
図3A-B】
図4A-B】
図5
図6A-B】
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A-C】
図14
図15