(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20240502BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240502BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240502BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H02J3/00 170
G06Q50/06
H02J13/00 301A
H02J3/14 130
H02J3/00 130
(21)【出願番号】P 2020202125
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】小野 謙次
(72)【発明者】
【氏名】大槻 知史
(72)【発明者】
【氏名】重松 宗一郎
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-058007(JP,A)
【文献】特開2018-005296(JP,A)
【文献】特開2014-014251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0161298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
G06Q 50/06
H02J 13/00
H02J 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家のそれぞれについて、過去の受電電力の履歴情報に基づいて、単位時間ごとの事業者想定需要と需要家の実需要との差分の標準偏差を計算する計算部と、
前記複数の需要家を、対応する前記標準偏差に基づいてランク付けするランク付け部と、
前記ランク付け部でランク付けされた前記複数の需要家のそれぞれのランクを含むランキング情報に基づいて、需要家名と、対応するランクと、対応する前記標準偏差と、対応する推定電力削減量と、推定電力削減量と、電力使用量が想定範囲内に収まる時間割合を示す推定滞在率とをリスト形式で表示部に表示させる表示制御部と、
前記リストに表示された個々の需要家を選択するか否かを指示する選択指示部と、を備える、情報処理装置。
【請求項2】
複数の需要家のそれぞれについて、過去の受電電力の履歴情報に基づいて、単位時間ごとの事業者想定需要と需要家の実需要との差分の標準偏差を計算する計算部と、
前記複数の需要家を、対応する前記標準偏差に基づいてランク付けするランク付け部と、
前記標準偏差が所定の閾値以下である需要家を選択する需要家選択部と、を備える、情報処理装置。
【請求項3】
前記ランク付け部でランク付けされた前記複数の需要家のランキング情報を格納するランク格納部を備える、請求項1
又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ランク付け部は、前記標準偏差が小さい程ランクが高くなるように、前記複数の需要家をランク付けする、請求項
3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記ランク格納部は、前記複数の需要家のそれぞれのランクを含む前記ランキング情報と、対応する前記標準偏差とを格納する、請求項3
又は4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記ランク格納部に格納される前記ランキング情報に基づいて、需要家名と、対応するランクと、対応する前記標準偏差と、対応する推定電力削減量と、推定電力削減量と、電力使用量が想定範囲内に収まる時間割合を示す推定滞在率とをリスト形式で表示部に表示させる表示制御部と、
前記リストに表示された個々の需要家を選択するか否かを指示する選択指示部と、
を備える、請求項
3乃至5のいずれか一項に情報処理装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記選択指示部で選択指示した需要家の組合せと、電力使用指令値と、当該組合せにおける前記推定電力削減量及び前記推定滞在率とを前記表示部に表示させる、請求項
6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記標準偏差が所定の閾値以下である需要家を選択する需要家選択部を備える、請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記需要家選択部で選択された需要家の中から、電力需要調整を要請する2以上の需要家の組み合わせを最適化する最適化部を、備える、請求項
2又は8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記最適化部は、所定の時間範囲ごとに、前記
ランク付け部でランク付けされた前記複数の需要家のランキング情報に基づいて前記2以上の需要家の組み合わせを最適化する、請求項
9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記最適化された前記需要家の組み合わせにおける電力使用量が電力制限要請量を中心とする所定範囲内に収まる時間割合を示す滞在率を計算する滞在率計算部を備える、請求項
9又は10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記
ランク付け部でランク付けされた前記複数の需要家のランキング情報に基づいて、需要家名と、対応するランクと、対応する前記標準偏差と、対応する推定電力削減量と、推定電力削減量と、電力使用量が想定範囲内に収まる時間割合を示す推定滞在率とをリスト形式で表示部に表示させる表示制御部と、
前記リストに表示された個々の需要家を所定の時間帯ごとに選択するか否かを指示する選択指示部と、を備える、請求項
9乃至11のいずれか一項に情報処理装置。
【請求項13】
前記表示制御部は、前記選択指示部で選択指示した需要家の組合せと、電力使用指令値と、当該組合せにおける前記推定電力削減量及び前記推定滞在率とを前記所定の時間帯ごとに表示させる、請求項
12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
それぞれ少なくとも一部が異なる前記需要家を組み合わせた2つ以上のリストパターンを生成するリストパターン生成部を備え、
前記最適化部は、電力使用指令値に基づいて、最適な前記リストパターンを選択する、請求項
9乃至13のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
電力制限要請に応じる優先度を示すランクと、需要家の識別情報と、単位時間ごとの事業者想定需要と需要家の実需要との差分の標準偏差と、推定電力削減量と、電力使用量が想定範囲内に収まる時間割合を示す推定滞在率とをリスト形式で表示部に表示させる第1表示制御部と、
前記リストに表示された個々の需要家を選択するか否かを指示する選択指示部と、
前記選択指示部で選択指示した需要家の組合せと、電力使用指令値と、当該組合せにおける前記推定電力削減量及び前記推定滞在率を前記表示部に表示させる第2表示制御部と、を備える、情報処理装置。
【請求項16】
前記選択指示部は、前記リストに表示された個々の需要家を所定の時間帯ごとに選択するか否かを指示し、
前記第2表示制御部は、前記選択指示部で選択指示した需要家の組合せと、電力使用指令値と、当該組合せにおける前記推定電力削減量及び前記推定滞在率とを前記所定の時間帯ごとに表示させる、請求項
15に記載の情報処理装置。
【請求項17】
複数の需要家のそれぞれについて、過去の受電電力の履歴情報に基づいて、単位時間ごとの事業者想定需要と需要家の実需要との差分の標準偏差を計算するステップと、
前記複数の需要家を、対応する前記標準偏差に基づいてランク付けするステップと、
前記ランク付けされた前記複数の需要家のそれぞれのランクを含むランキング情報と、
前記ランキング情報に基づいて、需要家名と、対応するランクと、対応する前記標準偏差と、対応する推定電力削減量と、推定電力削減量と、電力使用量が想定範囲内に収まる時間割合を示す推定滞在率とをリスト形式で表示部に表示させるステップと、
前記リストに表示された個々の需要家を選択するか否かを指示するステップと、
を備える、情報処理方法。
【請求項18】
コンピュータに、
複数の需要家のそれぞれについて、過去の受電電力の履歴情報に基づいて、単位時間ごとの事業者想定需要と需要家の実需要との差分の標準偏差を計算するステップと、
前記複数の需要家を、対応する前記標準偏差に基づいてランク付けするステップと、
前記ランク付けされた前記複数の需要家のそれぞれのランクを含むランキング情報と、
前記ランキング情報に基づいて、需要家名と、対応するランクと、対応する前記標準偏差と、対応する推定電力削減量と、推定電力削減量と、電力使用量が想定範囲内に収まる時間割合を示す推定滞在率とをリスト形式で表示部に表示させるステップと、
前記リストに表示された個々の需要家を選択するか否かを指示するステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力需要のピーク時の電力消費を抑制して電力供給の安定化を図るために、デマンドレスポンス(電力削減)の要請に対して電力削減を行うネガワットアグリゲーション事業が注目されている。ネガワットとは、事業所や家庭などの個々の需要家が節電をしたり自家発電をするなどして、電力供給と同等の価値を生み出す技術である。ネガワットアグリゲーション事業とは、複数の需要家の電力削減量を取りまとめて電力供給事業者と取引を行う事業である。
【0003】
電力の安定供給の実現のために需給調整市場の開設が検討されている。需給調整市場では、卸電力市場における電力計画提出締め切り(ゲートクローズ)後に生じる電力の需給変動を調整する市場である。需要家が消費する電力は日々変動し、時間帯によっても変動する。このため、需給調整市場に参加するネガワットアグリゲーション事業者は、デマンドレスポンスの要請に応えられるように、ネガワットを行う事業家を選定する必要がある。
【0004】
しかしながら、デマンドレスポンスの要請に対して、ネガワットを行う事業家を選定する最適な手法については、何ら提案されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様では、電力消費を抑制して電力供給の安定化を図ることができる情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、複数の需要家のそれぞれについて、過去の受電電力の履歴情報に基づいて、単位時間ごとの事業者想定需要と需要家の実需要との差分の標準偏差を計算する計算部と、
前記複数の需要家を、対応する前記標準偏差に基づいてランク付けするランク付け部と、を備える、情報処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態による情報処理装置を備えた情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態による情報処理装置を備えた情報処理システムの具体的なブロック図。
【
図3】実需要履歴に格納されている各需要家の過去の実需要情報の一例を示す図。
【
図4】DBに格納されているDR条件の一例を示す図。
【
図5】第1の実施形態によるDR計画装置の処理動作を示すフローチャート。
【
図6】DR要請が想定される3時間を30単位に分割した場合の
図5のステップS5の処理結果を示す図。
【
図9】
図8の実験結果を表示部に表示出力する画面表示例を示す図。
【
図10】第2の実施形態による情報処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図11】第2の実施形態によるDR計画装置の処理動作を示すフローチャート。
【
図13】第2の実施形態による画面表示例を示す図。
【
図14】第3の実施形態による画面表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムの実施形態について説明する。以下では、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムの主要な構成部分を中心に説明するが、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムには、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による情報処理装置1を備えた情報処理システム2の概略構成を示すブロック図である。
図1の情報処理装置1は、デマンドレスポンス(以下、DRと呼ぶこともある)要請に対してネガワットを行うことができる需要家をランク付けするものであり、以下ではデマンドレスポンス計画装置又はDR計画装置1と呼ぶこともある。DR要請があったときに、その要請に対してネガワットを行う複数の需要家を束ねることにより、DR要請に応えられる時間をできるだけ長くする必要がある。本明細書では、DR要請に応えられる時間の割合を滞在率と呼ぶ。例えば、DR要請のあった全期間でその要請に応えることができれば、滞在率100%となる。
【0011】
本明細書では、
図1の情報処理システム2をDR計画システム2と呼ぶこともある。また、本明細書では、
図1の情報処理システム2内の情報処理装置1をデマンドレスポンス計画装置(DR計画装置1)と呼ぶこともある。
【0012】
図1の情報処理システム2は、DR計画装置1と、系統運用者システム3と、1つ又は複数の需要家システム4とを備えている。
図1のDR計画装置1は、系統運用者システム3との間で情報通信を行うことができ、かつ需要家システム4との間でも情報通信を行うことができる。これらの情報通信は、インターネット回線を用いてもよいし、専用回線を用いてもよい。また、これらの情報通信は、必ずしもネットワーク回線で行う必要はなく、電話回線などの通信媒体で行ってもよい。
【0013】
系統運用者システム3は、例えば電力供給事業者のシステムである。需要家システム4は、事業所や家庭などの電力需要者のシステムである。DR計画装置1には、複数の需要家システム4が接続されている。
【0014】
図2は第1の実施形態による情報処理装置1(DR計画装置1)を備えた情報処理システム(DR計画システム)2の具体的なブロック図である。
図2のDR計画システム2は、DR計画装置1と、通信インタフェース部(通信I/F)11と、入出力インタフェース部(入出力I/F)12とを備えている。通信I/F11には、
図1に示した系統運用者システム3と、複数の需要家システム4とが接続されている。入出力I/F12には、操作入力部13と表示部14が接続されている。操作入力部13と表示部14は、DR計画装置1の一部とみなしてもよい。
【0015】
DR計画装置1は、需要家ランク付け部21と、需要家ランクデータベース(需要家ランクDB)22と、履歴情報作成部23と、実需要履歴データベース(実需要履歴DB)24と、DR条件データベース(DR条件DB)25とを有する。
【0016】
需要家ランク付け部21は、DR要請に対してネガワットを行う複数の需要家を束ねたときに、滞在率をより向上させることができる需要家をランク付けする。需要家ランクDB22は、需要家ランク付け部21が作成した各需要家のランキング情報を格納する。
【0017】
履歴情報作成部23は、各需要家の過去の実需要情報を作成する。実需要履歴DB24は、履歴情報作成部23が作成した実需要情報を格納する。
【0018】
DR条件DB25は、系統運用者システム3からのDR要請に関する条件を格納する。DR要請は、例えば系統運用者システム3から送信される指令値などである。
【0019】
需要家ランク付け部21は、時間方向標準偏差計算部26と、時間方向標準偏差DB27と、需要家ランク計算部28とを有する。
【0020】
時間方向標準偏差計算部26は、実需要履歴DB24に格納されている各需要家の過去の実需要情報から、単位時間ごとの事業者想定需要を算出するとともに、事業者想定需要と実需要との差分を算出し、単位時間ごとの差分の標準偏差(以下、時間方向標準偏差と呼ぶ)を算出する。
【0021】
時間方向標準偏差DB27は、需要家ごとに、時間方向標準偏差計算部26により計算された時間方向標準偏差を格納する。
【0022】
需要家ランク計算部28は、時間方向標準偏差DB27に格納されている時間方向標準偏差を昇順に並び替えて、各需要家をランクづける。時間方向標準偏差が小さいほど、事業者想定需要と実需要との差分のバラツキが小さいことを示しており、差分のバラツキが小さい需要家ほど、高いランクに設定される。
【0023】
図3は実需要履歴DB24に格納されている各需要家の過去の実需要情報の一例を示す図である。
図3の例では、実需要履歴DB24には、需要家の識別情報(ID)ごとに、各日付の単位時間ごとの実需要情報が格納されている。
図3の実需要情報を示す数値の単位は、kWhである。
図3に格納される実需要情報は、例えばスマートメータで計測されたデータを履歴情報作成部23で整形した値である。なお、各需要家の実需要情報を取得する手段は任意であり、必ずしもスマートメータの計測値である必要はない。
【0024】
図3の例では、実需要情報DBに1分単位の実需要情報を格納しているが、単位時間の時間幅は任意である。また、実需要情報DBに格納される実需要情報の単位は任意であり、必ずしもkWhには限らない。さらに、実需要格納DBに格納される実需要情報の単位時間の時間幅は、需要家ごとに異なっていてもよい。
【0025】
図4はDR条件DB25に格納されているDR条件の一例を示す図である。DR条件DB25に格納されるDR条件は、DR要請に関する諸条件である。より具体的な例として、DR条件は、DRを実施する日時、DRを実施する時間帯、DR要請の指令値、DR要請を行う需要家の候補情報、DR要請時の需要家ごとの供出可能電力量などである。
【0026】
図5は第1の実施形態によるDR計画装置1の処理動作を示すフローチャートである。
図5のフローチャートを実行するにあたって、履歴情報作成部23は、各需要家の実需要情報を実需要履歴DB24に格納しておく。まず、時間方向標準偏差計算部26は、実需要履歴DB24から各需要家の過去の実需要情報を取得する(ステップS1)。次に、時間方向標準偏差計算部26は、取得された各需要家の過去の実需要情報に基づいて、各日の事業者想定需要を算出する(ステップS2)。ステップS2では、例えばエネルギ・リソース・アグリゲーション・ビジネスに関するガイドラインに記載されているように、標準ベースラインとされるHigh4of5(当日調整あり)法、High4of5(当日調整なし)法、同等日採用法などの任意の手法を採用して、事業者想定需要を算出する。
【0027】
上述したステップS1~S2の処理は、すべての需要家について繰り返される(ステップS3)。これにより、すべての需要家の事業者想定需要が算出される。
【0028】
次に、時間方向標準偏差計算部26は、過去N日のDR要請候補日の所定の時間帯における事業者想定需要と実需要との差分を単位時間ごとに算出する(ステップS4)。次に、時間方向標準偏差計算部26は、単位時間ごとの差分についての時間方向標準偏差を算出する(ステップS5)。この時間方向標準偏差は、時間方向標準偏差DB27に格納される。
【0029】
上述したステップS4~S5の処理は、すべての需要家について繰り返される(ステップS6)。これにより、すべての需要家の時間方向標準偏差が算出されて、時間方向標準偏差DB27に格納される。
【0030】
次に、需要家ランク計算部28は、時間方向標準偏差DB27に格納された各需要家の時間方向標準偏差を例えば昇順に並べて、各需要家をランク付けする(ステップS7)。各需要家のランキング情報は、需要家ランクDB22に格納される(ステップS8)。
【0031】
図5のフローチャートの処理を行うことで、各需要家の過去の実需要情報に基づいて各需要家をランク付けするため、各需要家のランキング情報に基づいてDR要請に応じる最適な需要家を選定できる。
【0032】
次に、
図5のステップS4とS5の処理について詳細に説明する。ステップS4では、過去の特定の日におけるDR要請が想定される時間帯で、ある需要家の実需要と事業者想定需要との差分を計算する。この差分は、過去のN(Nは2以上の整数)日のDR要請が想定される時間帯のそれぞれで計算される。例えば、需給調整市場においては、DR要請の継続時間は例えば3時間であるため、過去のN日の任意の3時間について差分を計算する。なお、需給調整市場以外の他の電力市場を考慮に入れる場合は、継続時間を3時間以外にしてもよい。
【0033】
図5のステップS5では、算出された差分をM分単位で分割し、全ての単位時間での差分の絶対値に基づいて、時間方向標準偏差を計算する。分割する単位時間は、想定する電力市場で異なる。例えば、需給調整市場の商品の一つである三次調整力(2)では、評価時間単位が5分であるため、5分単位で分割する。一方、市場参入後のアセスメントでは、評価時間単位が30分であるため、30分単位で分割する。
【0034】
図6はDR要請が想定される3時間を30単位に分割した場合の
図5のステップS5の処理結果を示す図である。
図6は、需要家αの実需要のグラフg1及び事業者想定需要のグラフg2と、需要家βの実需要のグラフg3及び事業者想定需要のグラフg4を示している。各グラフの横軸は時間、縦軸は電力量である。
【0035】
グラフg1、g2からわかるように、需要家αの実需要と事業者想定需要の変動トレンドは似ており、実需要と事業者想定需要の差分の変動は小さい。このため、需要家αの時間方向標準偏差は小さくなる。具体的には、需要家αの30分単位の差分の絶対値は、時間方向に順に、(100.3, 122.7, 113.7, 94.9, 107.1, 114.4)であり、この数値列の時間方向標準偏差は、9.3になる。
【0036】
これに対して、グラフg3、g4からわかるように、需要家βの実需要は事業者想定需要に対して大きく変動しており、実需要と事業者想定需要の差分の時間単位ごとの変動量は大きくなる。このため、需要家βの時間方向標準偏差は大きくなる。具体的には、需要家βの30分単位の差分の絶対値は、時間方向に順に、(67.9, 87.0, 51.1, 60.5, 169.9, 156.4)であり、この数値列の時間方向標準偏差は46.9になる。
【0037】
本発明者は、DR要請等の指令値に対して上下制約のある許容範囲内に実需要を抑えることに対する時間方向標準偏差の有効性を実証する実験を行った。本実験では、事業者想定需要の値をゼロとし、実需要を表す波形のモデルとして、時間方向標準偏差により高ランクに位置づけられる矩形波と、低ランクに位置づけられるサイン波とをランダムに生成する。nを実需要波形のサンプルを指定するインデックスとし、サイン波Fnと矩形波Gnは、以下のように表される。
【数1】
【0038】
ここで、式(2)のサイン波は、式(3)の関係を満たす。
【数2】
【0039】
式(1)、(2)において、N(0, σ2)は分散がσ2の正規分布から得られるランダムな値を表す。サイン波は、事業者想定需要の周辺で振動する波形を表し、矩形波は事業者想定需要のオフセットとして存在する波形を表す。サイン波は実需要と事業者想定需要の差分が大きく変動するような需要家のモデルとなっており、矩形波は実需要と事業者想定需要の差分が正規分布により表されるランダムな変動のみである安定した需要家モデルとなっている。
【0040】
すなわち、時間方向標準偏差によるランク付けでは、前者は低ランク、後者は高ランクに位置付けられる。また、FnとGnのベースラインと受電電力の差分の面積を表すRMSが等しくなるように設定されている。これら実需要波形及び事業者想定需要において、時間方向標準偏差の値の低い順およびRMSの低い順という二つのランク付けを用いて束ね、上下制約のある領域に二種類の束ねた需要家による実需要が全て滞在する確率を比較する。
【0041】
次に、実証実験の詳細について記す。実験は、以下のように行われる。
【0042】
1)σ2=0.5を固定パラメータとして、その他のパラメータを、-50≦An≦-5、又は5≦An≦50、5≦ωn≦20、0≦φn≦2πの間でランダムに決定して、Fn及びGnの波形をそれぞれ50個生成し、計100個の波形を生成する。
2)生成した波形を混ぜ合わせて、それぞれの波形に対して、a)時間方向標準偏差が小さい順、b)RMSが小さい順に、ランク付けを行う。
3)ランク付けした波形から、高ランクに位置づけられた50個の波形を抽出して束ねる。
4)ゼロで表される事業者想定需要の周囲の±150の範囲を上下制約のある許容範囲内とみなし、束ねた波形の全点で許容範囲内に滞在しているかを調べる。
5)実験を1000回繰り返して、全点で許容範囲内に滞在している回数を調査して比較する。
【0043】
実験の結果は、時間方向標準偏差法でランク付けをした場合、全点で許容範囲内に滞在している確率は47.8%、RMSが小さい順でランク付けをした場合、全点で許容範囲内に滞在している確率は14.3%となり、時間方向標準偏差法の方が優位であるとの結果が得られた。
【0044】
図7は実験結果の波形を示す図である。
図7の左側の図は、すべての需要家の上述した矩形波とサイン波を重ね合わせた波形g5を示してる。
図7の右側の上の図は、全ての需要家について差分の時間方向標準偏差を計算してソートし、時間方向標準偏差が小さい順に所定数の需要家を抽出して、各需要家の対応する矩形波を重ね合わせた波形g6と、事業者想定需要の波形g7とを示している。時間方向標準偏差法による選別では、束ねた波形が事業者想定需要に対して一定のオフセットをもって存在しており、すべての需要家の実需要が許容範囲内に収まっていることが観察できる。
【0045】
これに対して、
図7の右側の下の図は、全ての需要家について差分のRMSEによりソートして、RMSが小さい順に所定数の需要家の波形を束ねた波形g8と、事業者想定需要の波形g9である。RMSが小さい順による選別では、束ねた波形が事業者想定需要に対して揺らいでおり、一部許容範囲内に収まっているが、全ての点が許容範囲に収まる結果にはなっていない。
【0046】
このように、時間方向標準偏差による選別では、RMSによる選別よりも、RMSが比較的大きくなるが、事業者想定需要に対して実需要が安定している波形を高ランクに位置付ける時間方向標準偏差法の方が、上下制約のある許容範囲内に滞在する需要家を選別する手法として優位性を持つ。
【0047】
図8は実験結果のデータを示す図であり、需要家ランクDB22に格納されるランキング情報を示している。
図8に示すように、需要家ランクDB22には、各需要家のランクを表すランキング情報と、対応する時間方向標準偏差とが格納されている。
図8に示すように、需要家ランクDB22は、DR条件DB25に格納されているDR要請を行う候補である個々の需要家に対して、束ねることで滞在率が効率的に向上するランクと時間方向標準偏差の値とを格納する。
図8に示すように、時間方向標準偏差が小さい需要家ほど、ランクが高くなる。
【0048】
図9は
図8の実験結果を表示部14に表示出力する画面表示例を示す図である。
図9は、ネガワットアグリゲーション事業者のPC等に表示される画面例である。
図9の画面は、リスト表示領域と、ランキング計算ボタンと、需要家組合せ結果表示領域とを有する。
【0049】
リスト表示領域は、ランキング情報、チェックリスト、需要家名、バラツキ度、累積推定削減量、及び累積推定滞在率の対応関係をリストアップしたものである。
図9のバラツキ度は、
図8の時間方向標準偏差をわかりやすく表現した用語である。チェックリストは、需要家ごとにユーザがチェックを入れることができる。ユーザがチェックを入れた需要家が選択される。ここで、ユーザとは、ネガワットアグリゲーション事業者の作業員である。このように、チェックリストは、リストに表示された個々の需要家を選択するか否かを指示する選択指示部として機能する。
図9の画面表示は、DR計画装置1内の不図示の表示制御部により実行される。表示制御部は、ランクDB22に格納されるランキング情報に基づいて、需要家名と、対応するランクと、対応する時間方向標準偏差と、対応する推定電力削減量と、推定電力削減量と、電力使用量が想定範囲内に収まる時間割合を示す推定滞在率とをリスト形式で表示部14に表示させる。
【0050】
図9の画面内で、ユーザがチェックリストにチェックを入れた状態でランキング計算ボタンを操作すると、需要家組合せ結果表示領域に、需要家を組み合わせた結果が表示される。需要家組合せ結果表示領域には、選択した需要家の名称又は識別番号と、指令量と、バラツキ度と、推定削減量と、推定滞在率とが表示される。ユーザは、リスト表示領域内の任意の需要家を選択することで、選択された需要家の組合せによるバラツキ度、電力の推定削減量、及び推定滞在率を迅速に把握できる。
【0051】
このように、第1の実施形態では、各需要家の実需要と事業者想定需要との差分を算出し、差分の時間単位ごとの標準偏差(時間方向標準偏差)を算出する。そして、各需要家の時間方向標準偏差に基づいて、各需要家をランク付けする。これにより、実需要と事業者想定需要との差分のバラツキが小さい需要家ほどランクを高くすることができる。DR要請があったときに、ランキング情報に基づいてDR要請に応える需要家を選択することで、DR要請期間中の滞在率がより向上するような需要家を選択できる。
【0052】
(第2の実施形態)
図10は第2の実施形態による情報処理装置1の概略構成を示すブロック図である。
図10では、
図2と共通する構成部分には同一符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0053】
図10の情報処理装置1(DR計画装置1)は、
図2と同様に、需要家ランク付け部21と、需要家ランクDB22と、履歴情報作成部23と、実需要履歴DB24と、DR条件DB25とを有する。この他、
図10のDR計画装置1は、最適需要家組合せ選択部31と、DR要請需要家組合せDB32とを有する。
【0054】
最適需要家組合せ選択部31は、需要家ランクDB22に格納されたランキング情報に基づいて、最適な需要家の組合せを選択する。最適需要家組合せ選択部31は、需要家ランク付け部21と需要家ランクDB22を有し、さらに最適需要家組合せ計算部33を有する。最適需要家組合せ計算部33は、各需要家の時間方向標準偏差に基づいて、最適な需要家の組合せを計算する。DR要請需要家組合せDB32は、最適な需要家の組合せと推定滞在率を格納する。
【0055】
図11は第2の実施形態によるDR計画装置1の処理動作を示すフローチャートである。まず、最適需要家組合せ選択部31は、実需要履歴DB24に格納されている過去の各需要家の実需要情報を取得する(ステップS11)。次に、最適需要家組合せ選択部31は、取得された実需要情報に基づいて、各日の事業者想定需要を算出する(ステップS12)。
【0056】
次に、最適需要家組合せ計算部33は、需要家ランクDB22から、需要家IDと、対応するランキング情報及び時間方向標準偏差を取得する(ステップS13)。次に、最適需要家組合せ計算部33は、時間方向標準偏差の閾値を設定し、その閾値を下回る時間方向標準偏差の値VRを持つ需要家を、需要家の組合せを最適化するための候補として選択する(ステップS14)。
【0057】
次に、ステップS14で選択された需要家の候補の中で、需要家の合計削減量が指令値にできるだけ近づくように、需要家の組合せを最適化する(ステップS15)。需要家の組合せは、ランダムに選択してもよいし、全ての組合せを調べてもよい。あるいは、シミュレーテッド・アニーリング、タブーサーチ、遺伝的アルゴリズム等の公知のメタヒューリスティック手法を用いてもよい。
【0058】
次に、ステップS15で最適化した需要家の組合せにおける推定滞在率を計算する(ステップS16)。次に、最適な需要家の組合せと推定滞在率を、DR要請需要家組合せDB32に格納する(ステップS17)。
【0059】
図11のフローチャートの処理を実行することにより、需要家の過去の実需要情報とランキング情報に基づいて、DR要請に応じる最適な需要家の組合せを選定できる。
【0060】
以下、
図11のステップS15の処理について詳述する。ステップS15では、ステップS14で選択された需要家の組合せにおける推定滞在率を算出する。以下では、需給調整市場を想定し、三次調整力(2)の商品を前提とした滞在率計算について説明するが、上下制約のある領域に実需要を滞在させる評価指標を用いた電力市場であれば、どの市場でも適用可能である。また、評価する推定滞在率は、過去N日のDR要請候補日の指定時間帯の平均滞在率でもよいし、同時間帯で滞在率が100%になる日の割合でもよい。
【0061】
また、三次調整力(2)における滞在率とは、実需要の応動実績が評価時間単位において許容範囲内にある割合を指す。ここで、応動実績とは、DR要請日の実需要と事業者想定需要の差分を表す。また、許容範囲とは、例えば、需給調整市場の三次調整力(2)で規定された以下の場合である。
【0062】
1)指令値変更に伴い応動している時間を含まない場合は、指令量±供出可能量×10%
2)増加方向への指令値変更に伴い応動している時間を含む場合は、変更前の指令量-供出可能量×10%から、変更後の指令量+供出可能量×10%
3)減少方向への指令値変更に伴い応動している時間を含む場合は、変更前の指令量+供出可能量×10%から、変更後の指令量-供出可能量×10%
を満たす領域を指す。
【0063】
ここで、指令値とは、需要抑制として与えられた電力量であり、供出可能量は、契約している需要家群が需要抑制できる最大量を指す。三次調整力(2)では、事前審査において供出可能量を決定するが、第2の実施形態では、供出可能な各需要家の需要抑制における契約量の総和である例を示した。また、第2の実施形態では、指令量は変動せず常にゼロであり、評価時間単位は5分、評価する滞在率は過去30日のDR候補日の指定時間帯の平均滞在率とした例を示した。
【0064】
上述した条件を考慮に入れると、評価時間帯を識別するt、需要家を識別するrを用いて、ランキング上位Rmaxまで束ねる場合の第2の実施形態における許容範囲は、以下の式(4)で表される。
【数3】
【0065】
また、上述した条件を考慮すると、この許容範囲に属する割合である滞在率は、各評価時間単位に対して、以下の式(5)で表される。
【数4】
【0066】
例えば、過去30日のDR要請候補日が20日あり、継続時間が3時間で、評価時間単位が5分の場合、総評価時間単位数Tは、T=720となる。
【0067】
図12は
図11のフローチャートの処理結果の一例を示す図である。
図12の例では、DR条件DB25に格納されていたDR要請の候補である個々の需要家に対して、滞在率の向上を確保した上で、指令値にできるだけ近い最適な需要家の組合せと、その組合せにおける累積推定削減量と推定滞在率が得られる。
【0068】
図13は第2の実施形態による画面表示例を示す図である。
図13の例では、DR条件DB25に格納されているDR条件と、需要家ランクDB22に格納されているランキング情報及び累積推定滞在率とを表示する例を示している。
図13は、ネガワットアグリゲーション事業者のPC等に表示される画面例である。
【0069】
第1の実施形態では、需要家の組合せをユーザがチェックリストの中から手動で選択していが、第2の実施形態では、需要家の組合せを自動的に行う。
図13では、選択されなかった需要家をグレイで表示している。なお、必要に応じて、第1の実施形態と同様に、ユーザが手動で需要家の組合せを設定変更できるようにしてもよい。
【0070】
このように、第2の実施形態では、各需要家の時間方向標準偏差を算出して、時間方向標準偏差に基づいて各需要家をランク付けした後、時間方向標準偏差が閾値を下回る需要家を選択し、選択した需要家の中から、合計削減量が指令値にできるだけ近づくような需要家の組合せを自動的に選択する。これにより、ユーザが需要家を選択しなくて済み、ユーザの手間を省くことができる。また、本実施形態によれば、最適化された需要家の組合せを自動的に選択できる。
【0071】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、DR要請期間中に、各需要家がネガワットを行う時間帯を任意に選択できるようにしたものである。第3の実施形態は、系統運用者システム3からの指令値がDR要請期間中で変化する場合に有効になる。
【0072】
図14は第3の実施形態による画面表示例を示す図である。
図14は、ネガワットアグリゲーション事業者のPC等に表示される画面例である。
図14の例では、
図13の画面表示例を含み、かつ時間帯ごとにDR要請に応じるか否かを選択できるようにしている。より具体的には、
図14の画面表示例では、30分ごとに、各需要家の削減量期待値が表示されている。ネガワットアグリゲーション事業者の作業員は、各需要家の任意の時間帯を選択して、DR要請に応じるか否かを設定変更できるようにしている。
図14の例で、グレイで表示されている時間帯はDR要請に応じないことを示している。
【0073】
図14のように、DR要請期間中の任意の時間帯に、各需要家がDR要請に応じるか否かを任意に設定変更できるため、DR要請期間中に系統運用者システム3からの指令値が変化しても、変化後の指令値に最適な受容者の組合せを選定できる。
【0074】
(第4の実施形態)
上述した第1~第3の実施形態では、DR要請日の前日の入札時点、又はDR要請直前の状態における需要家の選択を行う例を説明したが、第4の実施形態では、需要家リストパターンの作成について説明する。
【0075】
需要家リストパターンとは、需給調整市場における三次調整力(2)の需要家(リソースとも呼ぶ)の入札における需要家の組合せのパターンと各需要家の供出可能量(入札量の上限)を指す。具体的には、地域(属地エリア)ごと、かつ3か月ごと(4/1、7/1、10/1、1/1開始の4つのスケジュールごと)に事前に最大10パターンまで登録できる。ただし、需要家リストパターンごとに削減性能に関する事前審査を受ける必要があるため、入札タイミングよりも数か月以上前に需要家リストを選定する必要がある。
【0076】
ここで、入札段階においては、需要家リストパターンのいずれかの組合せでしか入札できない点がポイントであり、入札時の状況を想定して、需要家リストパターンを作成する必要がある。
【0077】
図15は需要家リストパターンの一例を示す図である。ここでリソースとは、需要家の削減リソースを指しており、リソース1からリソース10まで計10の需要家がいることを表している。ここでは、この10の需要家の組合せを最大10パターン登録した例を示している。
図15では、各パターンは、(1)~(10)までの識別番号を付している。
【0078】
以下では、
図15とは異なる需要家リストパターンの作成方法を説明する。この場合に入力として必要なデータは第1の実施形態の場合と同じであり、第1の実施形態のステップS5まで実行することで需要家のランキングが得られる。以下、需要家1~N(Nは需要家の総数)はこのランキング順に並んでいるものと仮定する。また需要家kの需要家の供出可能量(たとえば契約量とする)をF(k)としておく。
【0079】
ランキングされた需要家列に基づいて、たとえば下記の方法により需要家数をベースとして、需要家リストパターンを作成することができる。
【0080】
すなわち、パターンk(k=1~10)の需要家の組合せを
パターンk: 需要家1~需要家 floor(k * N/10):
とすることで実現できる。ここでfloor(x)はxの整数部分を表す関数とする。
これをkについて展開すると、
パターン(1): 需要家1~需要家 floor(N/10):
パターン(2): 需要家1~需要家 floor(2N/10):
パターン(3): 需要家1~需要家 floor(3N/10):
・・・
パターン(9): 需要家1~需要家 floor(9N/10):
パターン(10): 需要家1~需要家 N:
となり、パターン(1)の場合に最小需要家数の需要家リストとなり、バターン(10)の場合には全需要家による需要家リストとなる。
【0081】
例えば、計30の需要家の場合のように総需要家数が10の倍数の場合には、
パターン(1): 需要家1~需要家3:
パターン(2): 需要家1~需要家6:
パターン(3): 需要家1~需要家9
・・・
パターン(10): 需要家1~需要家30
と3需要家ずつ増えていくようなリストパターンとなる。
【0082】
一方、25需要家のケースでは
パターン(1): 需要家1~需要家2:
パターン(2): 需要家1~需要家5:
パターン(3): 需要家1~需要家7:
・・・
パターン(10): 需要家1~需要家25
といったように、需要家が2または3ずつ増えていくようなリストパターンとなる。
【0083】
このように、需要家リストを入れ子状に定義しておくと、需要家群としての削減目標が少ないと想定される場合、入札直前の期間における需要家の時間方向標準偏差が大きくなりそうな場合などには、少ない需要家の組合せ(つまり番号の小さいパターン)で、入札することで、より成功率を高められる効果がある。なぜなら、例えば常に全需要家(つまりパターン(10))で入札する場合は、変動の大きな需要家を含んでしまい、かえって成功率が下がる場合があるからである。
【0084】
なお、最初の手法では、需要家数に基づいて均等割りする方法について述べたが、例えば、パターンk(k=1~10)の需要家の組合せを、
パターンk: 需要家1~需要家s (sは、需要家s以下の供出可能量の和(式(6))が全需要家の供出量の和(式(7))のk/10を超える最小のs)のように決めることで、供出可能量ができるだけ均等になるような需要家リストパターンを作成してもよい。
【数5】
【0085】
また、均等である必要はなく、削減量として想定される量付近に、供出可能量の和がくるようなパターンを、重点的に選ぶような方針を採ってもよい。
【0086】
また特定の需要家(たとえば需要家3とする)が、削減量が大きいものの、時期によって削減量の変動が大きいといったケースでは、需要家3を含むパターンを5通り、需要家3を含まないパターンを5通り作ることにより、入札時の状況により使い分けるというような方針を採ってもよい。
【0087】
このように、第4の実施形態では、需要家の数が少しずつ増えるような複数の需要家リストパターンを予め生成しておくことにより、需要電力の削減目標に応じて、最適な需要家リストパターンを迅速かつ信頼性よく選択できる。
【0088】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 情報処理装置(DR計画装置)、2 情報処理システム(DR計画システム)、3 系統運用者システム、4 需要家システム、11 通信I/F、12 入出力I/F、13 操作入力部、14 表示部、21 需要家ランク付け部、22 需要家ランクDB、23 履歴情報作成部、24 実需要履歴DB、25 DR条件DB、26 時間方向標準偏差計算部、27 時間方向標準偏差DB、28 需要家ランク計算部、31 最適需要家組合せ選択部、32 DR要請需要家組合せDB、33 最適需要家組合せ計算部