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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】夜間多尿の治療又は予防剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/194 20060101AFI20240502BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240502BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240502BHJP
   A61P 7/12 20060101ALI20240502BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240502BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240502BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A61K31/194
A23L33/10
A61K9/20
A61K45/00
A61P7/12
A61P13/10
A61P13/12
A61P43/00 121
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020553229
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 JP2019040658
(87)【国際公開番号】W WO2020080399
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018195570
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】有賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】西岡 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 里美
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-520980(JP,A)
【文献】特表2007-529493(JP,A)
【文献】International Journal of Urology,2013年,Vol.21,pp.512-517
【文献】International Urogynecology Journal,2017年,Vol.29,pp.1029-1033
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を有効成分として含デスモプレシンを含まない錠剤である、夜間多尿の治療剤又は予防剤。
【請求項2】
クエン酸ナトリウム若しくはその水和物、クエン酸カリウム若しくはその水和物、又はそれらの混合物を有効成分として含デスモプレシンを含まない錠剤である、夜尿症の治療剤又は予防剤。
【請求項3】
医薬である、請求項1又は2に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項4】
V2受容体アゴニストと併用するための、請求項1~3のいずれか1項に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項5】
前記有効成分が、痛風又は高尿酸血症における酸性尿が改善される量で投与するために設計された、請求項1~4のいずれか1項に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項6】
慢性腎臓病の患者に投与するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項7】
クエン酸ナトリウム若しくはその水和物、クエン酸カリウム若しくはその水和物、又はそれらの混合物を有効成分として含デスモプレシンを含まない錠剤である、夜間の排尿回数の抑制剤。
【請求項8】
医薬又は食品である、請求項7に記載の抑制剤。
【請求項9】
前記有効成分が、クエン酸ナトリウム若しくはその水和物、クエン酸カリウム若しくはその水和物、又はそれらの混合物である、請求項1、及び3~6のいずれか1項に記載の抑制剤、治療剤又は予防剤。
【請求項10】
前記有効成分が、クエン酸ナトリウム又はその水和物である、請求項1~9のいずれか1項に記載の抑制剤、治療剤又は予防剤。
【請求項11】
前記有効成分が、クエン酸ナトリウム二水和物及びクエン酸カリウム一水和物の混合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の抑制剤、治療剤又は予防剤。
【請求項12】
前記有効成分が、クエン酸ナトリウム二水和物及びクエン酸カリウム一水和物の混合物であり、それぞれの経口投与量又は摂取量が0.5g~1.5g/日で合計1~3g/日である、請求項1~11のいずれか1項に記載の抑制剤、治療剤又は予防剤。
【請求項13】
1週間以上投与するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の抑制剤、治療剤又は予防剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クエン酸、その薬学的に許容可能な塩若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物、及び炭酸水素ナトリウムの夜間多尿の治療又は予防への使用等に関する。
本願は、2018年10月17日に、日本に出願された特願2018-195570号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速な高齢化に伴い、排尿に関する愁訴が増加している。その一つに夜間多尿がある。夜間多尿とは、夜間就寝中の尿量が多い状態を言い、高齢者では、夜間就寝中の尿量が1日の総尿量の33%を超える場合、若年者では、夜間就寝中の尿量が1日の総尿量の20%を超える場合に夜間多尿であると定義されている(特許文献1、特許文献2)。
夜間多尿は高齢者の30~50%に認められ、夜間就寝中に尿意を覚え排尿のために1回以上起きなければならない“夜間頻尿”と呼ばれる症状の主な原因となる。実際、夜間多尿は、夜間頻尿患者の8割で認められている(非特許文献1)。
上記のように、夜間頻尿の主な原因に夜間多尿があること、高齢者においては、夜間の抗利尿ホルモン:アルギニンバソプレシン(AVP)の分泌が低下することが、夜間尿量の増加の一因と考えられていることから(非特許文献2)、AVPの受容体であって、抗利尿作用を発揮するV2受容体を刺激することで、夜間多尿を改善し、そして、夜間頻尿を改善することが期待されている。実際、V2受容体選択的作動薬であるデスモプレシン(dDAVP)は、夜間尿量及び夜間排尿回数を減少させることが報告されている(非特許文献3、非特許文献4)。
しかしながら、V2受容体作動薬は理論的には体液貯留を促し、低ナトリウム血症の懸念があるため、夜間多尿や夜間頻尿患者の多数を占める高齢者へのV2受容体作動薬の投与の際には血清ナトリウム濃度測定などの注意が必要であることが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/143200号
【文献】国際公開第2012/001469号
【非特許文献】
【0004】
【文献】J.Urol.,2011;186:1358-1363
【文献】Drugs Aging,1999;15:429-437
【文献】J.Urol.,2013;190:958-964
【文献】J.Urol.,2013;190:965-972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの課題は、夜間多尿の治療又は予防に有用な医薬組成物を提供することである。本発明の一つの課題は、夜間排尿回数の低減に有用な医薬又は食品組成物を提供することである。本発明の一つの課題は、夜尿症の治療又は予防に有用な医薬組成物を提供することである。本発明の一つの課題は、V2受容体アゴニストとの併用に有用な医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を行ったところ、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物、及び炭酸水素ナトリウムが、夜間尿量を減少させ、夜間排尿回数を減少させることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、一つの側面において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物、又は炭酸水素ナトリウムを含む、夜間多尿の治療剤又は予防剤を提供する。
【0008】
本発明は、一つの側面において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物、又は炭酸水素ナトリウムを含む、夜間の排尿回数の抑制剤を提供する。
【0009】
本発明は、一つの側面において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物、又は炭酸水素ナトリウムを含む、夜尿症の治療剤又は予防剤を提供する。
【0010】
本発明は、一つの側面において、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物、又は炭酸水素ナトリウムを含む医薬組成物のV2受容体アゴニストとの併用を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明が提供する医薬組成物又は食品組成物により、夜間多尿が抑制され、夜間の排尿回数が低減される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明が提供する医薬組成物は、有効成分として、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含むことができる。クエン酸の薬学的に許容可能な塩の例としては、クエン酸アルカリ金属塩が挙げられる。クエン酸アルカリ金属塩の例としては、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウムが挙げられ、それらの混合物であってもよい。クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウムの例としては、それぞれ安定なクエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)等の水和物であってもよい。
好ましい有効成分の例としては、無水クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム若しくはその水和物又はそれらの混合物が挙げられ、例えば、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)の混合物;又はクエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)及び無水クエン酸の混合物であってもよい。
一つの実施態様において、前記混合物における、クエン酸のナトリウム塩のモル数と、クエン酸のカリウム塩のモル数との混合比は、当業者が適宜設定でき、0.85:1.15~1.15:0.85が好ましく、0.90:1.10~1.10:0.90がより好ましく、0.95:1.05~1.05:0.95がより好ましく、0.99:1.01~1.01:0.99が更に好ましく、1:1が特に好ましい。
一つの実施態様において、前記混合物における、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)のモル数と、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)のモル数との混合比は、当業者が適宜設定でき、0.85:1.15~1.15:0.85が好ましく、0.90:1.10~1.10:0.90がより好ましく、0.95:1.05~1.05:0.95がより好ましく、0.99:1.01~1.01:0.99が更に好ましく、1:1が特に好ましい。
一つの実施態様において、前記混合物における、無水クエン酸のモル数と、クエン酸のナトリウム塩のモル数と、クエン酸のカリウム塩のモル数との混合比は、当業者が適宜設定でき、1:1.7~2.3:1.7~2.3が好ましく、1:1.9~2.1:1.9~2.1がより好ましく、1:1.95~2.05:1.95~2.05が更に好ましく、1:2:2が特に好ましい。
一つの実施態様において、前記混合物における、無水クエン酸のモル数と、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)のモル数と、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)のモル数との混合比は、当業者が適宜設定でき、1:1.7~2.3:1.7~2.3が好ましく、1:1.9~2.1:1.9~2.1がより好ましく、1:1.95~2.05:1.95~2.05が更に好ましく、1:2:2が特に好ましい。
一つの実施態様において、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)の混合比は、当業者が適宜設定でき、例えば、クエン酸カリウムの一水和物とクエン酸ナトリウムの二水和物のモル比を、クエン酸カリウムの一水和物1に対してクエン酸ナトリウムの二水和物を0.01~100とすることができる。混合比をモル比で約1:1としてもよい。
一つの実施態様において、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)及び無水クエン酸の混合物における、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)及び無水クエン酸の混合比は、当業者が適宜設定でき、例えば、クエン酸カリウムの一水和物、クエン酸ナトリウムの二水和物と無水クエン酸のモル比を、クエン酸カリウムの一水和物1に対してクエン酸ナトリウムの二水和物を0.01~100、無水クエン酸を0.01~100とすることができる。混合比をモル比で約2:2:1としてもよい。
また、好ましい有効成分の他の例には、クエン酸ナトリウム又はその水和物が挙げられ、例えば、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)であってもよい。
また、好ましい有効成分の他の例には、クエン酸カリウム又はその水和物が挙げられ、例えば、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)であってもよい。
また、有効成分として、クエン酸又はその水和物、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはその水和物又はそれらの混合物に代えて、炭酸水素ナトリウム(重曹)を使用してもよい。
【0013】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効成分は、クエン酸又はその水和物、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物を含んでもよく、クエン酸又はその水和物、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物のみから構成されてもよい。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効成分は、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物を含んでもよく、クエン酸ナトリウム又はその水和物と、クエン酸カリウム又はその水和物との混合物のみから構成されてもよい。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の有効成分は、クエン酸第一鉄、クエン酸第二鉄及びそれらの水和物(例えば、クエン酸第二鉄水和物)を除く、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物である。
本明細書において、クエン酸又はその水和物、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはその水和物又はそれらの混合物(例えば、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及び、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O))の重量について言及する時は、その重量は乾燥重量であり得る。
【0014】
本発明が提供する医薬組成物は、夜間の尿の産生量を減少させるのに有用であり、そして、夜間の排尿回数を減少させるのに有用である。
よって、本発明は、一つの実施態様において、夜間の尿の産生量低下用医薬組成物を提供し、一つの実施態様において、夜間多尿の治療用又は予防用医薬組成物を提供し、一つの実施態様において、夜間の排尿回数の抑制用医薬組成物を提供し、一つの実施態様において、夜間頻尿の治療用又は予防用医薬組成物を提供し、一つの実施態様において、夜間の尿意抑制用医薬組成物を提供し、一つの実施態様において、夜間多尿による夜間頻尿の治療用又は予防用医薬組成物を提供し、又は一つの実施態様において、男性における夜間多尿による夜間頻尿の治療用医薬組成物を提供する。
本明細書において、夜間多尿とは、夜間の尿量が増加している状態を言い、例えば、高齢者では、夜間就寝中の尿量が1日の総尿量の33%を超える状態、若年者では、夜間就寝中の尿量が1日の総尿量の20%を超える状態を言う。夜間頻尿とは、就寝中に排尿のために1回以上起きなければならない症状を言う。
【0015】
夜間の排尿回数の減少、及び夜間の尿の産生量の低下は、夜尿症の治療又は予防にも有用であり得る。
よって、本発明は、一つの実施態様において、夜尿症の治療又は予防用医薬組成物を提供する。
【0016】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、一日の尿量に影響を及ぼさない。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、一日の排尿回数に影響を及ぼさない。
【0017】
V2受容体アゴニストは、夜間多尿及び夜間頻尿に有効であることが知られている。よって、本発明が提供する医薬組成物は、V2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン又はその薬学的に許容可能な塩、又はそれらの水和物(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物))と併用してもよい。
本発明は、一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物とV2受容体アゴニストとの併用を提供する。併用により、夜間の尿量を減少させ、及び/又は夜間の排尿回数を減少させ得る。よって、本発明は、一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物とV2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン又はその薬学的に許容可能な塩、又はそれらの水和物(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物))とを夜間多尿及び/又は夜間頻尿の治療又は予防のために併用することを提供する。
【0018】
V2受容体アゴニストは、その抗利尿作用により、夜尿症(例えば、尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症)及び中枢性尿崩症の治療に用いられる。本発明が提供する医薬組成物は、V2受容体アゴニストの抗利尿作用を妨げず、むしろ作用機序が異なり協働し得ることから、本発明は、一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物とV2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン又はその薬学的に許容可能な塩、又はそれらの水和物(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物))とを夜尿症(例えば、尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症)及び中枢性尿崩症の治療又は予防のために併用することを提供する。
そして、V2受容体アゴニストは、副作用として低ナトリウム血症が報告されており、本発明が提供する医薬組成物は、クエン酸ナトリウム又はその水和物を含み得るから、その併用により、V2受容体アゴニストの副作用を抑えて、V2受容体アゴニストが発揮する抗利尿作用を増強し得る。
【0019】
よって、本発明は、一つの実施態様において、クエン酸ナトリウム又はその水和物を含む医薬組成物(例えば、クエン酸ナトリウムの二水和物を含む医薬組成物;クエン酸カリウム又はその水和物、及びクエン酸ナトリウム又はその水和物を含む医薬組成物;又はクエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物を含む医薬組成物)とV2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン又はその薬学的に許容可能な塩、又はそれらの水和物(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物))との併用を提供し、一つの実施態様において、クエン酸ナトリウム又はその水和物を含む医薬組成物(例えば、クエン酸ナトリウムの二水和物を含む医薬組成物;クエン酸カリウム又はその水和物、及びクエン酸ナトリウム又はその水和物を含む医薬組成物;又はクエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物を含む医薬組成物)とV2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン又はその薬学的に許容可能な塩、又はそれらの水和物(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物))とを夜間多尿及び/又は夜間頻尿(例えば、夜間多尿(例えば、特発性夜間多尿)による夜間頻尿)の治療又は予防のために併用することを提供する。
【0020】
一つの実施態様において、クエン酸ナトリウム又はその水和物を含む医薬組成物(例えば、クエン酸ナトリウムの二水和物を含む医薬組成物;クエン酸カリウム又はその水和物、及びクエン酸ナトリウム又はその水和物を含む医薬組成物;又はクエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物を含む医薬組成物)とV2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン又はその薬学的に許容可能な塩、又はそれらの水和物(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物))とを夜尿症(例えば、尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症)及び/又は中枢性尿崩症の治療又は予防のために併用することを提供する。
併用は、本発明が提供する医薬組成物とV2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン又はその薬学的に許容可能な塩、又はそれらの水和物(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物))を含む医薬組成物を一つの組成物として投与することによっても、又は別々の組成物として投与することによっても、いずれにより達成されてもよい。
一つの実施態様において、本発明は、i)クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物(例えば、クエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)及びクエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)の混合物、又はクエン酸カリウムの一水和物(C6H5K3O7・H2O)、クエン酸ナトリウムの二水和物(C6H5Na3O7・2H2O)及び無水クエン酸の混合物);及び
ii)V2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン又はその薬学的に許容可能な塩、又はそれらの水和物(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物))を有効成分として含む、医薬組成物を提供する。
本発明は、一つの実施態様において、炭酸水素ナトリウム(重曹)とV2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン又はその薬学的に許容可能な塩、又はそれらの水和物(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物))との併用を提供し、一つの実施態様において、炭酸水素ナトリウム(重曹)とV2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン又はその薬学的に許容可能な塩、又はそれらの水和物(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物))とをi)夜間多尿及び/又は夜間頻尿(例えば、夜間多尿(例えば、特発性夜間多尿)による夜間頻尿)の治療又は予防;又はii)夜尿症(例えば、尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症)及び/又は中枢性尿崩症の治療又は予防のために併用することを提供する。
一つの実施態様において、本発明は、i)炭酸水素ナトリウム(重曹);及び
ii)V2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン又はその薬学的に許容可能な塩、又はそれらの水和物(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物))を有効成分として含む、医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明が提供する医薬組成物の投与対象は、哺乳動物(例えば、ヒト)であってもよく、特に限定されず、当業者により適切に選択され得る。
夜間多尿や夜間の排尿回数の増加は、高齢者に一般的に見られることから、一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、高齢者(例えば、60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、65歳以上75歳未満)に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、40歳以上、50歳以上、40歳以上60歳未満のヒトに投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、男性のヒトに投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、夜間多尿による夜間頻尿が認められる男性のヒトに投与される。
また、慢性腎臓病では、比較的早期(例えば、CKDのステージがG3a又はG3bであるヒト)より、多尿や夜間多尿等の排尿障害が認められる。よって、一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、慢性腎臓病患者(例えば、CKDのステージがG3a又はG3bであるヒト)に投与される。
さらに、夜尿症は、若年者で問題となることから、一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、若年者(例えば、幼児(例えば、3歳以上6歳未満の子供)、小児(例えば、6歳以上の小児)、6歳以上12歳以下の子供、6歳以上15歳以下の子供)に投与される。
【0022】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与対象は、痛風に罹患していない。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与対象は、高尿酸血症に罹患していない。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与対象は、痛風並びに高尿酸血症における酸性尿の改善が必要な対象(例えば、ヒト)ではない。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の投与対象は、アシドーシスの改善が必要な対象(例えば、ヒト)ではない。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は、尿酸降下剤(例えば、尿酸排泄促進剤、尿酸生成阻害剤)と併用されない。
【0023】
本発明が提供する医薬組成物は、ヒト又はその他の哺乳動物に経口又は非経口で投与され、非経口投与の例には、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、関節内投与、経粘膜投与、経皮投与、経鼻投与、直腸投与、髄腔内投与、腹腔内投与、局所投与が挙げられる。投与回数は、当業者が適切に設定でき、例えば、1回/日、2回/日又は3回/日であってもよい。
本発明が提供する医薬組成物は、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物、又は炭酸水素ナトリウムを、そのまま、又は薬学的に許容される担体、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、D-マンニトール、結晶セルロース、ブドウ糖)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP))、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca))、希釈剤(例えば、注射用水、生理食塩水)、及び必要な場合はその他の添加剤(例えば、pH調整剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤)と混合して調製されてもよく、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、注射剤、坐薬等の製剤であり得る。例えば、錠剤とするには、クエン酸、その薬学的に許容可能な塩若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物、又は炭酸水素ナトリウムを、賦形剤(例えば、乳糖、D-マンニトール、結晶セルロース、ブドウ糖)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca))、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP))、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク)等と混合して製剤化してもよい。
本発明に係る錠剤について、以下により詳細に説明する。
【0024】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は錠剤である。本発明が提供する錠剤は、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物、又は炭酸水素ナトリウム、より具体的には、例えば、クエン酸又はその水和物;クエン酸カリウム又はその水和物;クエン酸ナトリウム又はその水和物;クエン酸カリウム又はその水和物、及びクエン酸ナトリウム又はその水和物の混合物;クエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物の混合物;クエン酸又はその水和物、クエン酸カリウム又はその水和物、及びクエン酸ナトリウム又はその水和物の混合物;クエン酸又はその水和物、クエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物の混合物;又は炭酸水素ナトリウム等の有効成分の他、製薬分野において慣用の、薬学的に許容される添加剤を含んでもよい。このような添加剤の例としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、矯味剤、滑沢剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤及び香料が挙げられる。
本発明が提供する錠剤におけるクエン酸又はその水和物;クエン酸カリウム又はその水和物;クエン酸ナトリウム又はその水和物;クエン酸カリウム又はその水和物、及びクエン酸ナトリウム又はその水和物の混合物;クエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物の混合物;クエン酸又はその水和物、クエン酸カリウム又はその水和物、及びクエン酸ナトリウム又はその水和物の混合物;クエン酸又はその水和物、クエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物の混合物;又は炭酸水素ナトリウムの含量は、錠剤に対し10~95重量%、好ましくは30~90重量%であってもよく、より好ましくは60~85重量%であってもよく、1錠あたり10mg~1gであってもよい。
【0025】
本発明が提供する錠剤に使用され得る賦形剤の例には、乳糖(例えば、乳糖水和物、無水乳糖)、グルコース、ショ糖、果糖、マルトース等の糖類、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、D-マンニトール等の糖アルコール類、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン)、結晶セルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、乳酸カルシウム及びエチルセルロースが挙げられ、特に結晶セルロースが好ましい。
本発明が提供する錠剤における賦形剤の含量は、錠剤に対し1~95重量%、好ましくは1~80重量%であってもよく、より好ましくは3~80重量%、更に好ましくは3~20重量%であってもよい。
【0026】
本発明が提供する錠剤に使用され得る結合剤の例には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストリン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリエチレングリコール、アルファー化デンプン(例えば、部分アルファー化デンプン)、寒天及びゼラチンが挙げられ、特にヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
本発明が提供する錠剤における結合剤の含量は、錠剤に対し0.1~30重量%、好ましくは0.1~10重量%であってもよく、より好ましくは0.3~3重量%であってもよい。
【0027】
本発明が提供する錠剤に使用され得る崩壊剤の例には、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポピドン、デンプン(例えば、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン)及びカルメロースが挙げられ、特に部分アルファー化デンプンが好ましい。
本発明が提供する錠剤における崩壊剤の含量は、錠剤に対し0.3~20重量%、好ましくは1~10重量%であってもよく、より好ましくは3~10重量%であってもよい。
【0028】
本発明が提供する錠剤に使用され得る流動化剤の例には、軽質無水ケイ酸、タルク及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。
本発明が提供する錠剤における流動化剤の含量は、錠剤に対し0.03~3重量%、好ましくは0.1~3重量%であってもよく、より好ましくは0.3~3重量%であってもよい。
【0029】
本発明が提供する錠剤に使用され得る矯味剤の例には、リンゴ酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、アスコルビン酸等の酸味料(ただし、前記矯味剤は、本発明の有効成分である、クエン酸若しくはそのアルカリ金属塩、又は炭酸水素ナトリウムを含まない)、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム(登録商標)、ステビア、ソーマチン及びスクラロース等の甘味料が挙げられる。
本発明が提供する錠剤における矯味剤の含量は、錠剤に対し0.03~3重量%、好ましくは0.1~3重量%であってもよく、より好ましくは0.3~3重量%であってもよい。
【0030】
本発明が提供する錠剤に使用され得る滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸、ショ糖脂肪酸エステル、カルナウバロウ、マクロゴール及びフマル酸ステアリルナトリウムが挙げられ、特にステアリン酸マグネシウムが好ましい。
本発明が提供する錠剤における滑沢剤の含量は、錠剤に対し0.1~30重量%、好ましくは0.3~10重量%であってもよく、より好ましくは1~3重量%であってもよい。
【0031】
本発明が提供する錠剤に使用され得るpH調整剤の例には、リン酸塩(例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム)、炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム)、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩及びアミノ酸塩(ただし、前記pH調整剤は、本発明の有効成分である、クエン酸若しくはそのアルカリ金属塩、又は炭酸水素ナトリウムを含まない)が挙げられる。
本発明が提供する錠剤におけるpH調整剤の含量は、錠剤に対し0.1~30重量%、好ましくは0.3~10重量%であってもよく、より好ましくは1~5重量%であってもよい。
【0032】
本発明が提供する錠剤に使用され得る界面活性剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル、マクロゴール及びポロクサマーが挙げられる。
本発明が提供する錠剤における界面活性剤の含量は、錠剤に対し0.01~3重量%、好ましくは0.03~1重量%であってもよく、より好ましくは0.03~0.5重量%であってもよい。
本発明が提供する錠剤に使用され得る安定化剤の例には、リンゴ酸、酢酸、酒石酸、マレイン酸、アスコルビン酸、エデト酸ナトリウム、トコフェロールが挙げられる。
一つの実施態様において、本発明が提供する錠剤の有効成分がクエン酸のアルカリ金属塩(例えば、クエン酸カリウム又はその水和物、及びクエン酸ナトリウム又はその水和物の混合物;、又はクエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物の混合物)である場合、本発明が提供する錠剤は無水クエン酸を安定化剤として含んでもよい。
本発明が提供する錠剤における安定化剤の含量は、錠剤に対し0.01~30重量%、好ましくは0.1~30重量%であってもよく、より好ましくは1~20重量%であってもよい。
【0033】
本発明が提供する錠剤に使用され得る香料の例には、レモン、オレンジ、グレープフルーツ等の柑橘系香料、ペパーミント、スペアミント及びメントールが挙げられ、錠剤中に適量(例えば、錠剤に対し、0.01~1重量%、より好ましくは0.01~0.1重量%)含有することができる
本発明が提供する錠剤における、クエン酸若しくはそのアルカリ金属塩、又は炭酸水素ナトリウムである有効成分及び薬学的に許容される添加剤の合計含量は、錠剤に対し100重量%を超えない。
【0034】
本発明が提供する錠剤は、上記の成分を含有し、コーティング層を施さない素錠とすることもできるし、コーティング層を施したフィルムコーティング錠とすることもできる。コーティング層の含量は、当業者が適宜設定できるが、例えば、素錠に対して、0.1~10重量%であってもよい。コーティング層には、コーティング基剤の他、可塑剤、着色剤や光沢化剤等を適宜含めることができる。
本発明が提供する錠剤に使用され得るコーティング基剤の例には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマー及びポリビニルピロリドンが挙げられ、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。本発明が提供する錠剤におけるコーティング基剤の含量は、錠剤に対し0.01~10重量%、好ましくは0.3~3重量%であってもよい。
【0035】
本発明が提供する錠剤に使用され得るコーティング可塑剤の例には、クエン酸トリエチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール(例えば、マクロゴール6000)が挙げられ、特にマクロゴール6000が好ましい。本発明が提供する錠剤におけるコーティング可塑剤の含量は、錠剤に対し0.01~1重量%、好ましくは0.03~3重量%であってもよい。
本発明が提供する錠剤に使用され得るコーティング着色剤の例には、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、食用青色2号及び食用青色2号アルミニウムレーキが挙げられる。本発明が提供する錠剤におけるコーティング着色剤の含量は、錠剤に対し0.01~1重量%、好ましくは0.03~3重量%であってもよい。
本発明が提供する錠剤に使用され得るコーティング光沢化剤の例には、カルナウバロウが挙げられる。本発明が提供する錠剤におけるコーティング光沢化剤の含量は、錠剤に対し0.0001~0.1重量%、好ましくは0.001~0.01重量%であってもよい。
【0036】
本発明が提供する医薬組成物は、製薬分野において公知の方法により製造することができる。例えば、錠剤とする場合、製造方法には、クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物、又は炭酸水素ナトリウムである有効成分(より具体的には、例えば、クエン酸カリウム又はその水和物;クエン酸ナトリウム又はその水和物;クエン酸カリウムの一水和物及びクエン酸ナトリウムの二水和物の混合物;又は炭酸水素ナトリウム)と添加物を混合する混合工程、造粒工程、打錠工程及び/又はコーティング工程を含み得る。
混合工程は、前記有効成分と、賦形剤、安定化剤、崩壊剤及び/又は結合剤等の添加物とを混合する工程を含み得る。また、打錠工程の前に、前記有効成分と添加剤とを含む混合物を、滑沢剤、矯味剤及び/又は香料と混合する工程を更に含み得る。混合は、V型混合機、W型混合機、コンテナミキサー、タンブラー混合機、撹拌混合機等を用いて行うことができる。
造粒工程は、製薬分野において公知の造粒方法により行うことができる。造粒方法の例には、乾式造粒法、湿式造粒法、流動層造粒法が挙げられる。
【0037】
一つの実施態様として、混合工程で得られた混合物や造粒工程で得られた造粒物は、適宜粉砕及び/又は篩分けすることにより、所望の粒子径を有する混合物や造粒物とされ得る。粉砕は、例えば、ボールミル、ジェットミル、ハンマーミル等の製薬分野において公知の粉砕機で行うことができる。篩分けは、16mesh篩(目開き1000μm)~32mesh篩(目開き500μm)等を用いて行うことができる、
打錠工程は、製薬分野において公知の打錠方法により行うことができる。打錠方法の例には、直接打錠法、乾式打錠法、湿式打錠法、外部滑沢打錠法が挙げられる。例えば、単発式打錠機やロータリー式打錠機等の製薬分野において公知の打錠機を用いて、上記の工程で得られた混合物や造粒物を打錠することができる。単発式打錠機、ロータリー式打錠機等を用いる場合は、1kN~30kNの打錠圧を採用することができる。
コーティング工程は、製薬分野において公知の方法により行うことができる。例えば、コーティング基剤と、可塑剤、着色剤や光沢化剤等を適宜含めたコーティング液を素錠の外側にスプレーコーティングすることにより行うことができる。
【0038】
一つの実施態様において、本発明が提供する錠剤は、前記有効成分、賦形剤(例えば、乳糖、D-マンニトール、結晶セルロース及び/又はブドウ糖)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ゼラチン及び/又はポリビニルピロリドン(PVP))、安定化剤、崩壊剤(例えば、デンプン(例えば、部分アルファー化デンプン)及び/又はカルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca))及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)を混合し、打錠することにより素錠を得て;その素錠の外側に、コーティング基剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はPVP)と、可塑剤(例えば、クエン酸トリエチル及び/又はマクロゴール6000)、着色剤(例えば、三二酸化鉄及び/又は酸化チタン)や光沢化剤(例えば、カルナウバロウ)を含むコーティング層を形成することにより製造することができる。
一つの実施態様において、得られる錠剤の硬度は、10~200N、好ましくは30~150Nであり得る。
【0039】
本発明が提供する医薬組成物中の前記有効成分の量は適宜設定され得る。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物中の前記有効成分のうち、クエン酸のアルカリ金属塩又は炭酸水素ナトリウム等のアルカリ性化剤の量は、アルカリ性化剤の投与量がヒトに投与することにより痛風又は高尿酸血症における酸性尿が改善される量となるように設定されてもよく、例えば、痛風又は高尿酸血症における酸性尿の改善について日本で認可されている1日用量(例えば、アルカリ性化剤がクエン酸製剤の場合:1錠中にクエン酸カリウム(C6H5K3O7・H2O)231.5mg及びクエン酸ナトリウム水和物(C6H5Na3O7・2H2O)195.0mgを含む錠剤を1回2錠、1日3回経口投与、アルカリ性化剤が炭酸水素ナトリウムの場合:1日3~5g経口投与)となるように設定されてもよい。
【0040】
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は錠剤であり、1錠剤中に、アルカリ性化剤としてのクエン酸カリウム一水和物又はクエン酸ナトリウム二水和物を10mg~1g、好ましくは、100mg~500mg、より好ましくは、400mg~500mgを含んでもよい。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は錠剤であり、1錠剤中に、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物を、それぞれ10mg~300mgで、合計20mg~600mg含んでもよく、好ましくは、それぞれ150~250mgで、合計400~500mg、より好ましくは、それぞれ190~240mgで、合計400~450mgを含んでもよい。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は錠剤であり、1錠剤中に、アルカリ性化剤としてのクエン酸カリウム一水和物又はクエン酸ナトリウム二水和物を10mg~1g、好ましくは、100mg~500mg、より好ましくは、400mg~500mgを含み、無水クエン酸を10mg~500mg、好ましくは、10mg~100mg、より好ましくは、50mg~100mg含んでもよい。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は錠剤であり、1錠剤中に、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物を、それぞれ10mg~300mgで、合計20mg~600mg含んでもよく、好ましくは、それぞれ150~250mgで、合計400~500mg、より好ましくは、それぞれ190~240mgで、合計400~450mgを含んでもよく、無水クエン酸を10mg~500mg、好ましくは、10mg~100mg、より好ましくは、50mg~100mg含んでもよい。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物は錠剤であり、1錠剤中に、アルカリ性化剤としての炭酸水素ナトリウムを10mg~1g、好ましくは、100mg~500mg含んでもよい。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物である錠剤は、ゼラチンを含まない。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物である錠剤は、ゼラチン、D-マンニトール、無水クエン酸及びデスモプレシン酢酸塩水和物を含み、有効成分がデスモプレシン酢酸塩水和物のみである口腔内崩壊錠を除く錠剤である。
【0041】
一つの実施態様として、本発明が提供する医薬組成物は錠剤であり、有効成分として、クエン酸カリウム一水和物 231.5mg及びクエン酸ナトリウム二水和物 195.0mgを含み、添加剤として、無水クエン酸、結晶セルロース、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、マクロゴール6000、酸化チタン及びカルナウバロウを含んでもよい。この実施態様において、本発明が提供する錠剤は、添加剤として無水クエン酸を72.5mg含んでもよい。
一つの実施態様として、クエン酸カリウム一水和物 231.5mg及びクエン酸ナトリウム二水和物 195.0mgを含む錠剤を1投与単位としてもよい。
本明細書において、「投与単位」とは、製剤の単位を表し、「1投与単位」とは、製剤の最小単位を表す。したがって、例えば、錠剤であれば、投与単位は各錠剤であり、1投与単位は、1つの錠剤を表す。注射剤であれば、投与単位は、アンプル又はバイアル等の密封容器に入れられた注射剤であり、1投与単位は、1つのアンプル又はバイアル等の密封容器に入れられた注射剤を表す。
本発明が提供する医薬組成物が、ヒト又はその他の哺乳動物に投与される場合、1回あたり、1又は2以上の前記投与単位が投与されてもよく、前記1投与単位が分割されて投与されてもよい。
【0042】
クエン酸、クエン酸の薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物、又は炭酸水素ナトリウムである有効成分の投与量は、前記有効成分の種類、投与方法、投与対象の年齢、体重、性別、症状、薬剤への感受性等に応じて適宜決定されるが、症状の改善の状況に応じて投与量を調節してよい。
【0043】
一つの実施態様において、有効成分としてクエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物の混合物又は炭酸水素ナトリウムをヒトに経口投与する場合は、痛風並びに高尿酸血症における酸性尿の改善のために日本で認可されている1日の投与量(例えば、有効成分がクエン酸製剤の場合:1錠中にクエン酸カリウム(C6H5K3O7・H2O)231.5mg及びクエン酸ナトリウム水和物(C6H5Na3O7・2H2O)195.0mgを含む錠剤を1回2錠、1日3回経口投与、有効成分が炭酸水素ナトリウムの場合:1日3~5g経口投与)を1日の投与量としてもよい。
【0044】
一つの実施態様において、有効成分としてクエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物の混合物をヒトに経口投与する場合は、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物を、それぞれ0.1~5g/日で合計0.2~10g/日、それぞれ0.1~3g/日で合計0.2~6g/日、それぞれ0.5~3g/日で合計1~6g/日、好ましくは、それぞれ0.5~1.5g/日で合計1~3g/日、それぞれ1~1.5g/日で合計2~3g/日、又はそれぞれ0.5~1g/日で合計1~2g/日を投与してもよく、1日1~5回、好ましくは1日3回に分けて投与してもよい。
一つの実施態様において、有効成分としてクエン酸カリウム一水和物又はクエン酸ナトリウム二水和物をヒトに経口投与する場合は、1~10g/日、1~6g/日、2~5.5g/日、1~3g/日、2~3g/日又は1~1.5g/日を投与してもよく、1日1~5回、好ましくは1日3回に分けて投与してもよい。
一つの実施態様において、有効成分として無水クエン酸、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物の混合物をヒトに経口投与する場合は、無水クエン酸を、0.1~2g/日、好ましくは、0.1~1g/日、より好ましくは、0.3~0.6g/日を投与してもよく、そして、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物を、それぞれ0.1~5g/日で合計0.2~10g/日、それぞれ0.1~3g/日で合計0.2~6g/日、それぞれ0.5~3g/日で合計1~6g/日、好ましくは、それぞれ0.5~1.5g/日で合計1~3g/日、それぞれ1~1.5g/日で合計2~3g/日、又はそれぞれ0.5~1g/日で合計1~2g/日を投与してもよく、1日1~5回、好ましくは1日3回に分けて投与してもよい。
一つの実施態様において、有効成分として無水クエン酸をヒトに経口投与する場合は、0.1~2g/日、好ましくは、0.1~1g/日、より好ましくは、0.3~0.6g/日を投与してもよく、1日1~5回、好ましくは1日3回に分けて投与してもよい。
一つの実施態様において、有効成分として炭酸水素ナトリウムをヒトに経口投与する場合は、1~6g/日、好ましくは、1~3g/日、又は3~5g/日を投与してもよく、1日1~5回、好ましくは1日3回に分けて投与してもよい。
【0045】
一つの実施態様において、有効成分の投与量は、有効成分を経口投与することによりヒトの尿(例えば、早朝尿)のpHが、pH6.0~pH7.5、pH6.0~pH7.2、又はpH6.2~pH7.0となるような投与量であってもよい。
一つの実施態様において、有効成分の投与量は、有効成分を経口投与することによりヒトの尿(例えば、早朝尿)のpHが、投与7日後で、H6.0~pH7.5、pH6.0~pH7.2、又はpH6.2~pH7.0となるような投与量であってもよい。
【0046】
本発明が提供する医薬組成物の投与期間は適宜設定され得、例えば、5日間、1週間、2週間、1ヶ月、5日以上10日以下、1週間以上2週間以下、1週間以上1か月以下、5日間以上、1週間以上、2週間以上又は1ヶ月以上で投与されてもよい。
一つの実施態様において、本発明が提供する医薬組成物の薬効は早期に発現し、5日間又は1週間投与(例えば、3回/日の5日間投与又は1週間投与)により薬効が発現する。
【0047】
また、本発明が提供する実施態様の例としては以下が挙げられる。
(1-1)
夜間多尿の治療又は予防用医薬組成物の製造のためのクエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムの使用;
(1-2)
夜間多尿(例えば、特発性夜間多尿)による夜間頻尿の治療又は予防用医薬組成物の製造のためのクエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムの使用;
(1-3)
夜尿症の治療又は予防用医薬組成物の製造のためのクエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムの使用;
(1-4)
夜間の排尿回数の抑制用医薬組成物の製造のためのクエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムの使用;
(2-1)
夜間多尿の治療又は予防に使用するための、クエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む医薬組成物;
(2-2)
夜間多尿(例えば、特発性夜間多尿)による夜間頻尿の治療又は予防に使用するための、クエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む医薬組成物;
(2-3)
夜尿症の治療又は予防に使用するための、クエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む医薬組成物;
(2-4)
夜間の排尿回数の抑制に使用するための、クエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む医薬組成物;
(3-1)
夜間多尿の治療又は予防方法であって、夜間多尿の治療又は予防が必要な対象に、有効量のクエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む医薬組成物を投与することを含む方法;
(3-2)
夜間多尿(例えば、特発性夜間多尿)による夜間頻尿の治療又は予防方法であって、夜間多尿(例えば、特発性夜間多尿)による夜間頻尿の治療又は予防が必要な対象に、有効量のクエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む医薬組成物を投与することを含む方法;
(3-3)
夜尿症の治療又は予防方法であって、夜尿症の治療又は予防が必要な対象に、有効量のクエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む医薬組成物を投与することを含む方法;
(3-4)
夜間の排尿回数の抑制方法であって、夜間の排尿回数の抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む医薬組成物を投与することを含む方法;
(4-1)
医薬組成物がV2受容体アゴニストと併用される、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)及び(3-1)~(3-4)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法;
(4-2)
医薬組成物が慢性腎臓病の患者に投与される、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)及び(4-1)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法;
(4-3)
医薬組成物における、クエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物の含量が、痛風又は高尿酸血症における酸性尿が改善される量である、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)及び(4-1)~(4-2)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法;
(4-4)
クエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物が、クエン酸ナトリウム若しくはその水和物、クエン酸カリウム若しくはその水和物、又はそれらの混合物である、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)及び(4-1)~(4-3)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法;
(4-5)
クエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物が、クエン酸ナトリウム又はその水和物である、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)及び(4-1)~(4-4)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法;
(4-6)
クエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物が、クエン酸ナトリウム二水和物及びクエン酸カリウム一水和物の混合物である、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)及び(4-1)~(4-5)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法;
(4-7)
クエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物が、クエン酸ナトリウム二水和物及びクエン酸カリウム一水和物の混合物であり、それぞれの経口投与量が0.5g~1.5g/日で合計1~3g/日である、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)及び(4-1)~(4-6)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法;
(4-8)
クエン酸若しくはその薬学的に許容可能な塩、若しくはそれらの水和物が、クエン酸、クエン酸ナトリウム二水和物及びクエン酸カリウム一水和物の混合物である、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)及び(4-1)~(4-3)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法;
(4-9)
医薬組成物における、炭酸水素ナトリウムの含量が、アシドーシスの改善、尿酸排泄の促進又は痛風発作の予防に有効な量である、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)及び(4-1)~(4-2)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法;
(4-10)
炭酸水素ナトリウムの経口投与量が3g~5g/日である、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)、(4-1)~(4-2)及び(4-9)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法;
(4-11)
医薬組成物が痛風及び高尿酸血症の患者に投与されない、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)及び(4-1)~(4-10)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法;
(4-12)
医薬組成物が1週間投与される、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)及び(4-1)~(4-11)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法。
(4-13)
医薬組成物がV2受容体アゴニスト(例えば、デスモプレシン酢酸塩水和物)を更に含む、(1-1)~(1-4)、(2-1)~(2-4)、(3-1)~(3-4)及び(4-1)~(4-12)のいずれかに記載の使用、医薬組成物又は方法。
【0048】
本発明はまた、クエン酸、クエン酸の食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、若しくはそれらの混合物、又は炭酸水素ナトリウムを含む食品組成物を提供する。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、健常人に摂取されることにより、有益な効果(例えば、夜間の尿産生量の低減効果、及び夜間の排尿回数の低減効果等)を発揮し得る。
【0049】
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、一日の尿量に影響を及ぼさない。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、一日の排尿回数に影響を及ぼさない。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、高齢者(例えば、60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、65歳以上75歳未満)に摂取される。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、40歳以上、50歳以上、40歳以上60歳未満に投与される。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、若年者(例えば、幼児(例えば、3歳以上6歳未満の子供)、小児(例えば、6歳以上の小児)、6歳以上12歳以下の子供、6歳以上15歳以下の子供)に摂取される。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、加齢が気になるヒトに摂取される。
一つの実施態様において、本発明が提供する食品組成物は、夜間の尿意又は夜間の排尿(例えば、夜間の排尿回数が多いこと)が気になるヒトに摂取される。
本発明が提供する食品組成物中のクエン酸、クエン酸の食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物の含量は、食品の種類により、適宜決定され得る。食品組成物の例には、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病院患者用食品、サプリメントが挙げられる。これら、食品組成物の形態としては、前記効果を奏するための有効量のクエン酸、クエン酸の食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、若しくはそれらの混合物、又は炭酸水素ナトリウムを含み、経口的に摂取可能な形態であれば特に限定されるものではなく、通常の飲食品の形態であってもよいし、前記医薬組成物に適用され得る製剤のうち、経口投与に適した製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、懸濁剤等の製剤として提供されてもよい。これらの製剤の構成及び製造方法については、公知の製剤技術を適用することができる。
例えば、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品又は病院患者用食品の場合、1食分の食品あたり、無水クエン酸を0.03~0.3gの1/3量、クエン酸カリウム一水和物及びクエン酸ナトリウム二水和物を合計で1~3gの1/3量含んでいてもよい。特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病院患者用食品又はサプリメントが錠剤として提供される場合、例えば、1錠あたり、300mg~600mg の錠剤に、70~90重量%のクエン酸、クエン酸の食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を含んでいてもよい。また、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病院患者用食品又はサプリメントが錠剤として提供される場合、例えば、1錠あたり、300mg~600mg の錠剤に、70~90重量%の炭酸水素ナトリウムを含んでいてもよい。
本発明が提供する食品組成物が製剤化されず、通常の飲食品の形態として提供される場合、当該食品の種類により、当業者が適宜製造でき、例えば、食品素材にクエン酸、クエン酸の食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物又はそれらの混合物を配合することにより製造され得、また、例えば、食品素材に炭酸水素ナトリウムを配合することにより製造され得る。
前記飲食品の形態としては、飲料、醤油、牛乳、ヨーグルト、味噌等の液状又は乳状又はペースト状食品;ゼリー、グミ等の半固形状食品;飴、ガム、豆腐、サプリメント等の固形状食品;又は粉末状食品等が挙げられる。
飲料としては、果汁・果実飲料、コーヒー飲料、烏龍茶飲料、緑茶飲料、紅茶飲料、麦茶飲料、野菜飲料、ソフトドリンクである炭酸飲料、果実エキス入り飲料、野菜エキス入りジュース、ニアウオーター、スポーツ飲料、ダイエット飲料等が挙げられる。
飲料には、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を、単独又は組み合わせて配合することができる。
【0050】
また、本発明が提供する実施態様の例としては以下が挙げられる。
(1-1)
夜間の尿産生量の低減用食品の製造のためのクエン酸若しくはその食品として許容可能な塩若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムの使用;
(1-2)
夜間の排尿回数の抑制用食品の製造のためのクエン酸若しくはその食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムの使用;
(2-1)
夜間の尿産生量の低減に使用するための、クエン酸若しくはその食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む食品;
(2-2)
夜間の排尿回数の抑制に使用するための、クエン酸若しくはその食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む食品;
(3-1)
夜間の尿産生量の低減方法であって、夜間の尿産生量の低減が必要な対象に、有効量のクエン酸若しくはその食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む食品を投与することを含む方法;
(3-2)
夜間の排尿回数の抑制方法であって、夜間の排尿回数の抑制が必要な対象に、有効量のクエン酸若しくはその食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物、又は炭酸水素ナトリウムを含む食品を投与することを含む方法;
(4-1)
クエン酸若しくはその食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物が、クエン酸ナトリウム若しくはその水和物、クエン酸カリウム若しくはその水和物、又はそれらの混合物である、(1-1)、(1-2)、(2-1)、(2-2)、(3-1)及び(3-2)のいずれかに記載の使用、食品又は方法;
(4-2)
クエン酸若しくはその食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物が、クエン酸ナトリウム又はその水和物である、(1-1)、(1-2)、(2-1)、(2-2)、(3-1)、(3-2)及び(4-1)のいずれかに記載の使用、食品又は方法;
(4-3)
クエン酸若しくはその食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物が、クエン酸ナトリウム二水和物及びクエン酸カリウム一水和物の混合物である、(1-1)、(1-2)、(2-1)、(2-2)、(3-1)、(3-2)、(4-1)及び(4-2)のいずれかに記載の使用、食品又は方法;
(4-4)
クエン酸若しくはその食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物が、クエン酸ナトリウム二水和物及びクエン酸カリウム一水和物の混合物であり、それぞれの経口摂取量が0.5g~1.5g/日で合計1~3g/日である、(1-1)、(1-2)、(2-1)、(2-2)、(3-1)、(3-2)及び(4-1)~(4-3)のいずれかに記載の使用、食品又は方法;
(4-5)
クエン酸若しくはその食品として許容可能な塩、若しくはそれらの水和物が、クエン酸、クエン酸ナトリウム二水和物及びクエン酸カリウム一水和物の混合物である、(1-1)、(1-2)、(2-1)、(2-2)、(3-1)及び(3-2)のいずれかに記載の使用、食品又は方法;
(4-6)
炭酸水素ナトリウムの経口摂取量が3g~5g/日である、(1-1)、(1-2)、(2-1)、(2-2)、(3-1)及び(3-2)のいずれかに記載の使用、食品又は方法;
(4-7)
食品が、高齢者又は若年者に摂取される、(1-1)、(1-2)、(2-1)、(2-2)、(3-1)、(3-2)及び(4-1)~(4-6)のいずれかに記載の使用、食品又は方法;
(4-8)
食品が、夜間の尿意又は夜間の排尿が気になるヒトに摂取される、(1-1)、(1-2)、(2-1)、(2-2)、(3-1)、(3-2)及び(4-1)~(4-7)のいずれかに記載の使用、食品又は方法。
(4-9)
食品が、加齢が気になるヒトに摂取される、(1-1)、(1-2)、(2-1)、(2-2)、(3-1)、(3-2)及び(4-1)~(4-8)のいずれかに記載の使用、食品又は方法。
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0052】
クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物・クエン酸配合製剤及び炭酸水素ナトリウム(重曹)製剤の、夜間尿量、夜間排尿回数及び尿pHへの効果の確認を目的とした非盲検クロスオーバーテストを、健常男子(29歳~63歳)を対象として実施した(エントリー人数:30名)。被験者に以下の1)~3)の処置を間に1週間以上の間隔を置き行った:
1)クエン酸カリウム(C6H5K3O7・H2O)231.5 mg、クエン酸ナトリウム水和物(C6H5Na3O7・2H2O)195.0 mg及び無水クエン酸 72.5 mgを含有する錠剤を1回2錠、1日3回(朝、昼、夕)、7日間経口投与(A群:クエン酸製剤投与群);
2)炭酸水素ナトリウム500 mgを含む錠剤を1回4錠、1日3回(朝、昼、夕)、7日間経口投与(B群:重曹投与群);
3)薬剤投与無し7日間(C群:コントロール)。
各群の薬剤投与最終日に、ユリンメート(登録商標)P(住友ベークライト株式会社より入手)を用いて、24 時間尿を採取し、排尿ごとに、時刻、尿量、及び、尿pHを記録した。 「22:00 (以降)~早朝第一尿」を「夜間尿」、「第二尿~22:00」を「昼間尿」とした。
「夜間尿」「昼間尿」について、「尿量」「排尿回数」を3群の間で比較した。加えて、「第一尿」「第二尿」のpHに及ぼす効果と尿量との関連を調べた。
なお、畜尿日において、被験者の食事を管理し、被験者間における食事(塩分、糖類、タンパク質摂取量等)の影響をできるだけ排除した。
統計解析は、Wilcoxon符号付順位検定を用いた。
その結果を表1~3に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
その結果、クエン酸製剤の投与(A群)により、コントロール群(C群)に比較し夜間の尿量が減少した(表1)。また、クエン酸製剤の投与(A群)により、コントロール群(C群)に比較し1日尿量における夜間尿の割合が低下した(表1)。重曹製剤の投与(B群)によっても、コントロール群(C群)に比較し夜間の尿量が減少した(表1)。また、重曹製剤の投与(B群)により、コントロール群(C群)に比較し1日尿量における夜間尿の割合が低下した(表1)。
【0057】
排尿回数については、クエン酸製剤の投与(A群)により、コントロール群(C群)に比較し昼間の排尿回数は変わらなかったが、夜間の排尿回数が減少した(表2)。重曹製剤の投与(B群)によっても、コントロール群(C群)に比較し昼間の排尿回数は変わらなかったが、夜間の排尿回数が減少した(表2)。
【0058】
尿pHについては、クエン酸製剤の投与(A群)及び重曹製剤の投与(B群)により、コントロール群(C群)に比較して、顕著に高値となり(アルカリ化され)、試験した投与量では、クエン酸製剤の投与(A群)に比較し、重曹製剤の投与(B群)により、尿のpHはより高くなった(アルカリ化された)(表3)。しかしながら、クエン酸製剤と重曹製剤の尿のアルカリ化の効果の程度は、両製剤の夜間尿量の低下効果の程度に反映されなかった。よって、クエン酸製剤による夜間尿量の低下効果は、尿のアルカリ化だけでなく、クエン酸製剤が有する尿のアルカリ化以外のクエン酸の作用にも起因していることが示唆された(表1及び表3)。同様に、クエン酸製剤と重曹製剤の尿のアルカリ化の効果の程度は、両製剤の夜間排尿回数の低下効果の程度に反映されなかった。よって、クエン酸製剤による夜間排尿回数の低下効果は、尿のアルカリ化だけでなく、クエン酸製剤が有する尿のアルカリ化以外のクエン酸の作用にも起因していることが示唆された(表2及び表3)。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明が提供する医薬組成物等により、哺乳動物において夜間多尿の予防又は治療、夜間排尿回数の低減、夜尿症の予防又は治療等が達成され得る。