(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】保護膜形成用複合シート、及び半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
H01L21/78 M ZNM
(21)【出願番号】P 2020559101
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046361
(87)【国際公開番号】W WO2020116278
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2018228523
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 尚哉
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145938(WO,A1)
【文献】特開2009-013183(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069638(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/103902(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188216(WO,A1)
【文献】特開2017-011199(JP,A)
【文献】特開2008-280520(JP,A)
【文献】特開2017-119749(JP,A)
【文献】特開2016-096239(JP,A)
【文献】特開2013-120839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持シートと、前記支持シートの一方の面上に形成された保護膜形成用フィルムと、を備えた、保護膜形成用複合シートであって、
前記保護膜形成用複合シート中の、前記支持シート側の最表層の表面抵抗率が、1.0×10
11Ω/□以下であり、
70℃で1分加熱した後の前記保護膜形成用複合シートから、大きさが10cm×20cmである試験片を切り出し、前記試験片中の前記支持シート側の最表層を、ポーラステーブルの表面に接触させることにより、前記試験片を前記ポーラステーブル上に載置し、大きさが6cm×10cm×2cmであり、質量が1kgである錘の、大きさが6cm×10cmの面を、前記試験片中の保護膜形成用フィルムに接触させて、前記錘を前記保護膜形成用フィルム上に載置し、前記試験片の前記ポーラステーブルとの接触面に対して平行な方向に、前記錘を10mm/minの速度で移動させ、前記錘の移動開始直前における荷重を測定したとき、前記荷重の測定値が20N以下である、保護膜形成用複合シート。
【請求項2】
前記保護膜形成用フィルムが熱硬化性であり、
前記表面抵抗率が、前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成用フィルムが、130℃で2時間熱硬化した後の表面抵抗率である、請求項1に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項3】
前記支持シートが、基材と、前記基材の片面又は両面上に形成された帯電防止層と、を備えているか、又は、
前記支持シートが、帯電防止層として、帯電防止性を有する基材を備えた、請求項1又は2に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項4】
前記基材の片面又は両面上に形成された帯電防止層の厚さが、100nm以下である、請求項3に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項5】
前記支持シートの全光線透過率が80%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項6】
面積が2cm×2cmで平面状である押圧面を有する押圧手段の前記押圧面に、フランネル布を被せ、前記フランネル布を被せた前記押圧面を、前記帯電防止層の表面に押し当て、この状態で、前記押圧手段によって125g/cm
2の荷重を前記帯電防止層に加えて押圧しながら、前記押圧手段を10cmの直線距離で10回往復運動させることにより、前記帯電防止層を擦った後、前記帯電防止層のこの擦った面のうち、面積が2cm×2cmの領域を目視観察したとき、傷が認められない、請求項3
又は4に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程と、
前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムを硬化させて、保護膜を形成する工程と、
前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜又は保護膜形成用フィルムを切断して、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた、切断後の前記保護膜又は保護膜形成用フィルムと、前記切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムの前記支持シート側とは反対側の面上に設けられた半導体チップと、を備えた積層体を作製する工程と、
前記積層体中の、前記切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムを備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップする工程と、を有し、
さらに、前記積層体を作製する工程と、前記ピックアップする工程と、の間に、テーブル上で固定されている前記積層体を、前記テーブルから引き離す工程を有し、
前記引き離す工程において、テーブル上で固定されている前記積層体は、その前記支持シート側の最表層の表面において前記テーブルに接触しており、前記テーブルの前記積層体の固定面がセラミック製又はステンレス鋼製である、半導体チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成用複合シート、及び半導体チップの製造方法に関する。本願は、2018年12月5日に日本に出願された特願2018-228523号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を適用した半導体装置の製造が行われている。フェースダウン方式においては、回路形成面上にバンプ等の電極を有する半導体チップが用いられ、前記電極が基板と接合される。このため、半導体チップの回路形成面とは反対側の面(裏面)は剥き出しとなることがある。
【0003】
この剥き出しとなった半導体チップの裏面には、保護膜として、有機材料を含有する樹脂膜が形成され、保護膜付き半導体チップとして半導体装置に取り込まれることがある。保護膜は、ダイシング工程やパッケージングの後に、半導体チップにおいてクラックが発生するのを防止するために利用される。
【0004】
このような保護膜を形成するためには、例えば、支持シート上に保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムを備えて構成された保護膜形成用複合シートが使用される。保護膜形成用フィルムは、硬化によって保護膜を形成可能である。また、支持シートは、保護膜形成用フィルム又は保護膜を裏面に備えた半導体ウエハを、半導体チップへ分割するときに、半導体ウエハを固定するために使用できる。さらに支持シートは、ダイシングシートとしても利用可能であって、保護膜形成用複合シートは、保護膜形成用フィルムとダイシングシートとが一体化されたものとして使用することも可能である。
【0005】
保護膜形成用複合シートは、より具体的には、以下のように使用される。
すなわち、まず、半導体ウエハの前記裏面に、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを貼付して、積層体(以下、「分割前積層体」と略記する)を得る。
【0006】
次いで、前記分割前積層体中の保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜を形成し、この積層体(以下、「硬化済み積層体」と略記する)を、ダイシングテーブル上に固定する。又は、前記分割前積層体中の保護膜形成用フィルムを硬化させずにそのままの状態で、ダイシングテーブル上に固定する。
次いで、前記硬化済み積層体の場合には、ダイシングテーブル上に固定された状態のこの積層体において、半導体ウエハを分割し、保護膜を切断して、支持シート上に、切断後の保護膜と、分割後の半導体ウエハ(すなわち半導体チップ)と、をこの順に備えた積層体(以下、「硬化及び分割済み積層体」と略記する)を得る。又は、前記分割前積層体の場合には、ダイシングテーブル上に固定された状態のこの積層体において、半導体ウエハを分割し、保護膜形成用フィルムを切断して、支持シート上に、切断後の保護膜形成用フィルムと、半導体チップと、をこの順に備えた積層体(以下、「未硬化及び分割済み積層体」と略記する)を得る。ここで行っているのは、いずれも、通常のダイシングである。
【0007】
次いで、硬化及び分割済み積層体又は未硬化及び分割済み積層体の、ダイシングテーブル上での固定状態を解除し、これら積層体を洗浄用テーブル上に搬送して、このテーブル上に固定する。
次いで、洗浄用テーブル上に固定された状態のこれら積層体(すなわち、硬化及び分割済み積層体又は未硬化及び分割済み積層体)を水で洗浄し、前工程でのダイシング時に生じ、付着した切削屑を洗い流して取り除く。この切削屑は、半導体ウエハ、保護膜又は保護膜形成用フィルムに由来する。洗浄は、通常、洗浄用テーブルを回転させながら行う。
【0008】
次いで、この洗浄後の、硬化及び分割済み積層体又は未硬化及び分割済み積層体の、洗浄用テーブル上での固定状態を解除し、これら積層体を乾燥用テーブル上に搬送して、このテーブル上に固定する。
次いで、乾燥用テーブル上に固定された状態のこれら積層体(すなわち、硬化及び分割済み積層体又は未硬化及び分割済み積層体)を乾燥させ、前工程での洗浄時に付着した水を取り除く。乾燥は、通常、乾燥用テーブルを回転させながら行う。
【0009】
次いで、この乾燥後の、硬化及び分割済み積層体又は未硬化及び分割済み積層体の、乾燥用テーブル上での固定状態を解除し、次工程を行う装置に、これら積層体を搬送して、次工程を行う。そして、最終的に、切断済みの保護膜を裏面に備えた半導体チップ(保護膜付き半導体チップ)、又は、切断済みの保護膜形成用フィルムを裏面に備えた半導体チップ(保護膜形成用フィルム付き半導体チップ)を、支持シートから引き離してピックアップする。切断済みの保護膜形成用フィルムは、いずれかの段階で硬化させ、保護膜とする。
【0010】
以上のように、硬化及び分割済み積層体又は未硬化及び分割済み積層体は、いずれかのテーブル上に固定され、作業が行われた後、この固定状態を解除され、次工程を行う箇所に搬送される。これら積層体は、例えば、いずれのテーブルにおいても、吸着によって固定され、吸着の解除後に、テーブルから引き離されて、次の箇所に搬送される。通常、これらテーブルはいずれも、その厚さ方向において貫通する空隙部を有しており、テーブルの前記積層体と接触している側とは反対側が減圧されることにより、前記積層体はテーブル上で吸着され、固定される。本明細書においては、このような固定用のテーブルを吸着テーブルと称することがある。
【0011】
一方で、硬化及び分割済み積層体又は未硬化及び分割済み積層体は、上記のとおり、搬送のために、テーブルでの吸着による固定を解除し、テーブルから引き離すときに、帯電し易い。このような帯電は、互いに接触している層同士の剥離によって、これら層が帯電する、いわゆる「剥離帯電」の1種である。このように帯電し、そのときの帯電量が多くなると、静電気の影響で、半導体チップ中の回路が破壊されてしまうことがある。なかでも、上記のようにこれら積層体を、乾燥用テーブル上に固定して乾燥した後に、テーブルから引き離すときに、特に帯電量が多くなり易く、特に回路が破壊され易い。従来の保護膜形成用複合シートには、その帯電を防止する目的で、いずれかの層に帯電防止剤を含有するものがある。しかし、このような従来の保護膜形成用複合シートを用いただけでは、帯電による半導体チップ中の回路の破壊を抑制することは困難である。
【0012】
これに対して、剥離帯電を抑制する半導体加工用シートとして、基材上に粘着剤層が積層されたダイシングテープ(前記支持シートに相当)と、前記粘着剤層上に形成された接着シートと、を有するダイシングテープ一体型接着シートであって、剥離速度10m/分、剥離角度150°で、前記粘着剤層と前記接着シートとを剥離した際の剥離帯電圧の絶対値が0.5kV以下である、ダイシングテープ一体型接着シートが開示されている(特許文献1参照)。特許文献1によれば、このダイシングテープ一体型接着シートを用いることにより、接着シートを裏面に備えた半導体チップをダイシングテープから引き離す、いわゆるピックアップを行ったとき、接着シートとダイシングテープとの間における剥離帯電を抑制し、静電気の発生を抑制して、この静電気による半導体チップ上の回路の破壊を抑制可能である、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、剥離帯電のし易さは、通常、互いに接触している面の影響を大きく受ける。そして、特許文献1で開示されているダイシングテープの表面は、吸着テーブルの表面とは、構成材料と表面状態が大きく相違している。したがって、特許文献1で開示されているダイシングテープ一体型接着シートを用いた場合に、先に説明したように、硬化及び分割済み積層体又は未硬化及び分割済み積層体を吸着テーブルから引き離すときに、帯電による半導体チップ中の回路の破壊を抑制できるか、定かではない。
【0015】
本発明は、支持シートと保護膜形成用フィルムを備えた保護膜形成用複合シートであって、これを用いて得られた、支持シートと、切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムと、半導体チップと、がこの順に積層されて構成された積層体を、テーブル上で固定されている状態とし、次いで、前記積層体を、テーブル上の固定面から引き離すときに、帯電による半導体チップ中の回路の破壊を抑制できる保護膜形成用複合シート、及び、前記保護膜形成用複合シートを用いた半導体チップの製造方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に形成された保護膜形成用フィルムと、を備えた、保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用複合シート中の、前記支持シート側の最表層の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下であり、70℃で1分加熱した後の前記保護膜形成用複合シートから、大きさが10cm×20cmである試験片を切り出し、前記試験片中の前記支持シート側の最表層を、ポーラステーブルの表面に接触させることにより、前記試験片を前記ポーラステーブル上に載置し、大きさが6cm×10cm×2cmであり、質量が1kgである錘の、大きさが6cm×10cmの面を、前記試験片中の保護膜形成用フィルムに接触させて、前記錘を前記保護膜形成用フィルム上に載置し、前記試験片の前記ポーラステーブルとの接触面に対して平行な方向に、前記錘を10mm/minの速度で移動させ、前記錘の移動開始直前における荷重を測定したとき、前記荷重の測定値が20N以下である、保護膜形成用複合シートを提供する。
【0017】
本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、前記保護膜形成用フィルムが熱硬化性であり、前記表面抵抗率が、前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成用フィルムが、130℃で2時間熱硬化した後の表面抵抗率であってもよい。
本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、前記支持シートが、基材と、前記基材の片面又は両面上に形成された帯電防止層と、を備えているか、又は、前記支持シートが、帯電防止層として、帯電防止性を有する基材を備えていてもよい。
本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、前記基材の片面又は両面上に形成された帯電防止層の厚さが、100nm以下であってもよい。
【0018】
本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、前記支持シートの全光線透過率が80%以上であってもよい。
本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、面積が2cm×2cmで平面状である押圧面を有する押圧手段の前記押圧面に、フランネル布を被せ、前記フランネル布を被せた前記押圧面を、前記帯電防止層の表面に押し当て、この状態で、前記押圧手段によって125g/cm2の荷重を前記帯電防止層に加えて押圧しながら、前記押圧手段を10cmの直線距離で10回往復運動させることにより、前記帯電防止層を擦った後、前記帯電防止層のこの擦った面のうち、面積が2cm×2cmの領域を目視観察したとき、傷が認められなくてもよい。
また、本発明は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程と、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムを硬化させて、保護膜を形成する工程と、前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜又は保護膜形成用フィルムを切断して、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた、切断後の前記保護膜又は保護膜形成用フィルムと、前記切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムの前記支持シート側とは反対側の面上に設けられた半導体チップと、を備えた積層体を作製する工程と、前記積層体中の、前記切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムを備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップする工程と、を有し、さらに、前記積層体を作製する工程と、前記ピックアップする工程と、の間に、テーブル上で固定されている前記積層体を、前記テーブルから引き離す工程を有し、前記引き離す工程において、テーブル上で固定されている前記積層体は、その前記支持シート側の最表層の表面において前記テーブルに接触しており、前記テーブルの前記積層体の固定面がセラミック製又はステンレス鋼製である、半導体チップの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、支持シートと保護膜形成用フィルムを備えた保護膜形成用複合シートであって、これを用いて得られた、支持シートと、切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムと、半導体チップと、がこの順に積層されて構成された積層体を、テーブル上で固定されている状態とし、次いで、前記積層体を、テーブル上の固定面から引き離すときに、帯電による半導体チップ中の回路の破壊を抑制できる保護膜形成用複合シート、及び、前記保護膜形成用複合シートを用いた半導体チップの製造方法、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
【
図14A】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を、途中まで模式的に説明するための断面図である。
【
図14B】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を、途中まで模式的に説明するための断面図である。
【
図14C】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を、途中まで模式的に説明するための断面図である。
【
図14D】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を、途中まで模式的に説明するための断面図である。
【
図15A】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を、
図14に引き続いて模式的に説明するための断面図である。
【
図15B】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を、
図14に引き続いて模式的に説明するための断面図である。
【
図15C】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を、
図14に引き続いて模式的に説明するための断面図である。
【
図15D】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を、
図14に引き続いて模式的に説明するための断面図である。
【
図16A】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図16B】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図16C】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図16D】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図16E】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図17A】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図17B】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図17C】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図17D】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図17E】本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図18】保護膜形成用複合シートを用いて得られた試験片の静止摩擦力を測定するときの、試験片の配置形態の一例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
◇保護膜形成用複合シート
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に形成された保護膜形成用フィルムと、を備えた、保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用複合シート中の、前記支持シート側の最表層の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下であり、70℃で1分加熱した後の前記保護膜形成用複合シートから、大きさが10cm×20cmである試験片を切り出し、前記試験片中の前記支持シート側の最表層を、ポーラステーブルの表面に接触させることにより、前記試験片を前記ポーラステーブル上に載置し、大きさが6cm×10cm×2cmであり、質量が1kgである錘の、大きさが6cm×10cmの面を、前記試験片中の保護膜形成用フィルムに接触させて、前記錘を前記保護膜形成用フィルム上に載置し、前記試験片の前記ポーラステーブルとの接触面に対して平行な方向に、前記錘を10mm/minの速度で移動させ、前記錘の移動開始直前における荷重を測定したとき、前記荷重の測定値(本明細書においては、「静止摩擦力」と称することがある)が20N以下となる。
【0022】
前記保護膜形成用複合シートは、このように、前記表面抵抗率が1.0×1011Ω/□以下であり、平常時の帯電(本明細書においては、「平常時帯電」と称することがある)が抑制される。
一方、半導体ウエハと前記保護膜形成用複合シートを用いて、裏面に保護膜を備えた半導体チップを製造する過程では、支持シートと、切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムと、半導体チップと、がこの順に積層されて構成された積層体を作製する。そして、この積層体の取り扱い時には、この積層体を、テーブル上で固定した状態とし、次いで、テーブル上の固定面から引き離す、という操作を行う。前記保護膜形成用複合シートにおいて、前記表面抵抗率が1.0×1011Ω/□以下であり、かつ、前記静止摩擦力が20N以下であることにより、前記積層体の引き離し時の帯電(本明細書においては、「引き離し時帯電」と称することがある)が抑制される。その結果、この引き離し時の半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。裏面に保護膜を備えた半導体チップの製造方法については、後ほど詳しく説明する。
【0023】
なお、本明細書においては、「保護膜形成用複合シートの表面抵抗率」とは、特に断りのない限り、上述の保護膜形成用複合シート中の、支持シート側の最表層の表面抵抗率を意味する。また、「積層体の静止摩擦力」又は「試験片の静止摩擦力」とは、特に断りのない限り、上述の方法で求められた静止摩擦力を意味する。また、「半導体チップ中の回路の破壊」とは、特に断りのない限り、上述の前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊を意味する。
【0024】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、例えば、その中のいずれかの層が帯電防止剤を含有していることにより、平常時帯電の抑制効果を有する。
前記保護膜形成用複合シートにおいて、その平常時帯電の抑制効果の程度、換言すると、前記表面抵抗率の高さは、例えば、帯電防止剤を含有する層(本明細書においては、包括的に「帯電防止層」と称することがある)の帯電防止剤の含有量を調節することにより、調節できる。
【0025】
また、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいて、その引き離し時帯電の抑制効果の程度、換言すると、前記静止摩擦力の大きさは、前記保護膜形成用複合シート中の、前記支持シート側の最表層の構成(例えば、表面状態又は硬さ等)を調節することにより、調節できる。ここで、前記最表層の表面状態としては、例えば、表面粗さ等の、表面の凹凸度が挙げられる。
【0026】
<保護膜形成用複合シート中の、支持シート側の最表層の表面抵抗率>
保護膜形成用複合シートの前記表面抵抗率は、1.0×1011Ω/□以下であり、9.5×1010Ω/□以下であることが好ましく、例えば、5.0×1010Ω/□以下、6.0×109Ω/□以下、及び1.0×109Ω/□以下のいずれかであってもよい。前記表面抵抗率が前記上限値以下であることで、保護膜形成用複合シートの平常時帯電が抑制される。
【0027】
保護膜形成用複合シートの前記表面抵抗率の下限値は、小さいほど好ましく、特に限定されない。例えば、前記表面抵抗率が1.0×105Ω/□以上である保護膜形成用複合シートは、より容易に製造できる。
【0028】
前記保護膜形成用複合シートの前記表面抵抗率は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記表面抵抗率は、1.0×105~1.0×1011Ω/□であることが好ましく、1.0×105~9.5×1010Ω/□であることがより好ましく、例えば、1.0×105~5.0×1010Ω/□、1.0×105~6.0×109Ω/□、及び1.0×105~1.0×109Ω/□のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記表面抵抗率の一例である。
【0029】
保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムが硬化性を有する場合には、後述する熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、ここまでで説明した、保護膜形成用複合シートの前記表面抵抗率は、保護膜形成用フィルムが硬化する前の表面抵抗率であってもよいし、保護膜形成用フィルムが硬化した後の表面抵抗率であってもよい。
【0030】
前記保護膜形成用複合シートの前記表面抵抗率は、実施例においても後述するように、保護膜形成用複合シート中の支持シート側の最表層を測定対象とし、表面抵抗率計を用いて、印加電圧を100Vとして、測定できる。
【0031】
<熱硬化性の保護膜形成用フィルムが熱硬化した後の前記表面抵抗率>
保護膜形成用フィルムが、後述するように熱硬化性である場合には、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムが熱硬化した後の、保護膜形成用複合シートの前記表面抵抗率が、上述の表面抵抗率の条件(例えば、1.0×1011Ω/□以下等の上限値や下限値)を満たすことが好ましく、この場合の保護膜形成用複合シートは、その中の保護膜形成用フィルムが130℃で2時間熱硬化したものであることが好ましい。すなわち、このような保護膜形成用複合シートの一実施形態としては、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムが、130℃で2時間熱硬化した後の、前記表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下であるものが挙げられる。ただし、これは、上述の表面抵抗率の条件を満たす保護膜形成用複合シートの一例である。
【0032】
<熱硬化性の保護膜形成用フィルムが熱硬化する前の前記表面抵抗率>
保護膜形成用フィルムが、後述するように熱硬化性である場合には、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムが熱硬化する前の、保護膜形成用複合シートの前記表面抵抗率が、上述の表面抵抗率の条件(例えば、1.0×1011Ω/□以下等の上限値や下限値)を満たしてもよい。
【0033】
ただし、本実施形態においては、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムが熱硬化する前の、保護膜形成用複合シートの前記表面抵抗率は、5.0×1010Ω/□以下であることが好ましく、例えば、6.0×109Ω/□以下、5.0×108Ω/□以下、及び3.0×108Ω/□以下のいずれかであってもよい。熱硬化前の表面抵抗率が前記上限値以下であることで、保護膜形成用フィルムが熱硬化した後の保護膜形成用複合シートの平常時帯電が、より抑制される。
【0034】
保護膜形成用フィルムが熱硬化する前の、保護膜形成用複合シートの前記表面抵抗率の下限値は、小さいほど好ましく、特に限定されない。例えば、熱硬化前の前記表面抵抗率が1.0×105Ω/□以上である保護膜形成用複合シートは、より容易に製造できる。
【0035】
保護膜形成用フィルムが熱硬化する前の、保護膜形成用複合シートの前記表面抵抗率は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、熱硬化前の前記表面抵抗率は、1.0×105~5.0×1010Ω/□であることが好ましく、例えば、1.0×105~6.0×109Ω/□、1.0×105~5.0×108Ω/□、及び1.0×105~3.0×108Ω/□のいずれかであってもよい。ただし、これらは、熱硬化前の前記表面抵抗率の一例である。
【0036】
保護膜形成用フィルムが熱硬化性である場合には、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、上述の、熱硬化性の保護膜形成用フィルムが熱硬化した後の前記表面抵抗率の条件と、熱硬化性の保護膜形成用フィルムが熱硬化する前の前記表面抵抗率の条件と、をともに満たすことが好ましい。
【0037】
<保護膜形成用複合シートから作製した試験片の静止摩擦力>
70℃で1分加熱した後の前記保護膜形成用複合シートから作製した前記試験片の静止摩擦力は、20N以下であり、18N以下であることが好ましく、例えば、16N以下、及び14N以下のいずれかであってもよい。前記表面抵抗率が1.0×1011Ω/□以下であり、かつ、前記静止摩擦力が前記上限値以下であることで、前記積層体の引き離し時帯電が抑制され、その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
なお、試験片を作製する際の「70℃で1分加熱」という加熱条件は、保護膜形成用複合シートの使用時に、このシートを、その中の保護膜形成用フィルムによって半導体ウエハに貼付するときに、保護膜形成用フィルムを軟化させてその貼付を容易とするために、望ましい加熱条件と同じである。
【0038】
前記試験片の静止摩擦力の下限値は、小さいほど好ましく、特に限定されない。例えば、前記静止摩擦力が1N以上である保護膜形成用複合シートは、より容易に製造できる。
【0039】
前記試験片の静止摩擦力は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記静止摩擦力は、1~20Nであることが好ましく、1~18Nであることがより好ましく、例えば、1~16N、及び1~14Nのいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記静止摩擦力の一例である。
【0040】
前記試験片の静止摩擦力は、より具体的には、以下に示す方法で求められる。
すなわち、まず、保護膜形成用複合シートを70℃で1分加熱する。これは、保護膜形成用複合シート中の、前記支持シート側の最表層を、70℃で1分加熱するための操作である。
次いで、この加熱後の保護膜形成用複合シートから、大きさが10cm×20cmである試験片を切り出す。
次いで、得られた試験片を、ポーラステーブル上に載置する。このとき、試験片中の、前記支持シート側の最表層を、ポーラステーブルの表面に接触させる。換言すると、このとき、試験片中の保護膜形成用フィルムを、上向きにして露出させる。なお、本明細書においては、試験片を構成する各層も、加熱前の保護膜形成用複合シートを構成する各層の名称で呼ぶ。
次いで、このように、ポーラステーブル上に載置されている状態の試験片中の保護膜形成用フィルムの露出面に、錘を載置する。この錘は、大きさが6cm×10cm×2cmで、質量が1kgのものであり、金属製であっても(すなわち金属錘であっても)よいし、非金属製であっても(すなわち非金属錘であっても)よい。このとき、錘は、その大きさが6cm×10cmの面を、保護膜形成用フィルムに接触させる。
次いで、試験片の前記ポーラステーブルとの接触面(換言すると、試験片中の保護膜形成用フィルムの表面)に対して平行な方向に、錘を10mm/minの速度で移動させる。このとき、錘に対しては、前記接触面に対して平行な方向にのみ、力を加え、前記接触面に対して垂直な方向には、力を加えずに、錘を移動させる。そして、このときの錘の移動開始直前における荷重(「ピーク試験力」ともいう)を測定する。この測定値は、静止摩擦力に相当する。
【0041】
図18は、上述の試験片の静止摩擦力を測定するときの、試験片の配置形態の一例を模式的に示す側面図である。ここでは、試験片1の支持シート側の最表層の露出面(表面)1bを、ポーラステーブル4の表面4aに接触させ、試験片1の支持シート側とは反対側の最表層(すなわち、保護膜形成用フィルム)の露出面(表面)1aを、上向きにしている。そして、錘5を、試験片1の前記露出面1aに載置して、錘5を矢印IIの方向に移動させ、静止摩擦力を測定する場合について示している。符号5bは、錘5の試験片1との接触面(換言すると、大きさが6cm×10cmの面)を示す。矢印IIの方向は、試験片1の前記露出面1bに対して平行な方向である。
【0042】
前記テーブルの、前記積層体の固定面の構成材料は、通常、セラミック又はステンレス鋼である。また、テーブルの前記固定面は、平滑ではなく、微細な凹凸形状を有していることがある。これは、吸着テーブルに見られる特徴である。吸着テーブルとは、その厚さ方向において貫通する空隙部を有しており、前記固定面側とは反対側が減圧されることによって、固定対象物(ここでは前記積層体)を前記固定面上で吸着し、固定可能となっているテーブルである。吸着テーブルとしては、通常、多孔質状(ポーラス構造)のもの、メッシュ状のもの、貫通孔が設けられたプレート状のもの等が使用される。吸着テーブルは、前記固定面においても前記空隙部を有しているために、前記固定面は微細な凹凸形状を有している。吸着テーブルを用いた場合には、固定面がこのような凹凸形状を有していないテーブルを用いた場合よりも、その固定面上で固定されている積層体を引き離したときに、この積層体において生じる引き離し時帯電の量が多くなる。
一方、上述のポーラステーブルの表面(前記試験片の固定面)の粗さは、実際に使用するテーブルの表面(前記積層体の固定面)の粗さに対して、同等以上である。したがって、前記試験片と前記ポーラステーブルとの間の前記静止摩擦力が20N以下という小さい値となる場合には、実際にテーブルから前記積層体を引き離したときに、半導体チップ中の回路の破壊を抑制可能な程度に、前記積層体において生じる引き離し時帯電の量を低減できる。
【0043】
本実施形態においては、前記ポーラステーブルの表面(前記試験片の固定面)における凹凸差が、5μm以下であることが好ましい。これは、実際に使用するテーブルの表面(前記積層体の固定面)における凹凸差が、通常、5μm以下であるためである。
なお、本明細書において、「面における凹凸差」とは、面の凸部の頂上と、この凸部に隣接する凹部の底と、の段差を意味する。
【0044】
以下、前記保護膜形成用複合シートを構成する各層について、詳細に説明する。
【0045】
◎支持シート
前記支持シートは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層の構成材料及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0046】
なお、本明細書においては、支持シートの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0047】
支持シートは、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、支持シートはエネルギー線を透過させるものが好ましい。
例えば、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、支持シートを介して光学的に検査するためには、支持シートは透明であることが好ましい。
【0048】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味する。エネルギー線の例としては、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
また、本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0049】
支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材上に形成された粘着剤層と、を備えたもの;基材のみからなるもの;等が挙げられる。
【0050】
一方、上述のとおり、前記保護膜形成用複合シートにおいては、その中のいずれかの層を、帯電防止層とすることができる。
このような場合、好ましい前記支持シートとしては、例えば、基材を備え、かつ、保護膜形成用複合シート中においては、前記基材の、前記保護膜形成用フィルム側とは反対側に位置する面上に形成された帯電防止層(本明細書においては、「背面帯電防止層」と略記することがある)を備えた支持シート;帯電防止層として、帯電防止性を有する基材(本明細書においては、「帯電防止性基材」と略記することがある)を備えた支持シート;基材を備え、かつ、保護膜形成用複合シート中においては、前記基材の、前記保護膜形成用フィルム側に位置する面上に形成された帯電防止層(本明細書においては、「表面帯電防止層」と略記することがある)を備えた支持シートが挙げられる。前記帯電防止層(背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層)は、いずれも帯電防止剤を含有する。
【0051】
すなわち、好ましい前記保護膜形成用複合シートとしては、前記支持シートが、基材と、前記基材の片面又は両面上に形成された帯電防止層と、を備えた保護膜形成用複合シート;前記支持シートが、帯電防止層として、帯電防止性を有する基材(すなわち、帯電防止性基材)を備えた保護膜形成用複合シートが挙げられる。
本明細書において、「基材の片面上に形成された帯電防止層」とは、「前記背面帯電防止層又は表面帯電防止層」を意味する。そして、「基材の両面上に形成された帯電防止層」とは、「前記背面帯電防止層及び表面帯電防止層の組み合わせ」を意味する。
これらの中でも、前記支持シートが前記基材及び背面帯電防止層を備えた保護膜形成用複合シート、又は、前記支持シートが前記帯電防止性基材を備えた保護膜形成用複合シート、がより好ましい。
【0052】
前記保護膜形成用複合シートとしては、帯電防止層として、前記背面帯電防止層と、前記帯電防止性基材と、前記表面帯電防止層と、のいずれにも該当しない層を備えたシートも挙げられる。
例えば、帯電防止層は、保護膜形成用フィルムの支持シート側とは反対側の面上に設けられていてもよいし、保護膜形成用フィルムが帯電防止性を有していてもよい。しかし、このような保護膜形成用複合シートを用いて、十分に帯電を抑制しつつ、半導体装置を製造する場合には、帯電防止層(すなわち、保護膜形成用フィルムの支持シート側とは反対側の面上に設けられた帯電防止層、又は、帯電防止性を有する保護膜形成用フィルム)が半導体チップに貼付された状態を経て、帯電防止層が半導体装置に組み込まれることになる。このような場合、半導体装置を製造する過程で、帯電防止層を介して保護膜形成用フィルム又は保護膜を、半導体ウエハ又は半導体チップに貼付した状態や、帯電防止性を有する保護膜形成用フィルム又は保護膜を、半導体ウエハ又は半導体チップに貼付した状態を、安定に維持できない可能性がある。また、半導体装置中で帯電防止層が、半導体装置の構造の安定性、又は半導体装置の性能に、悪影響を与える可能性がある。
また、例えば、帯電防止層は、保護膜形成用フィルムの支持シート側の面上に設けられていてもよい。しかし、このような保護膜形成用複合シートを用いて半導体装置を製造する場合には、保護膜形成用フィルム又は保護膜が貼付された半導体チップを、支持シート上の帯電防止層から引き離してピックアップするときに、帯電防止層が介在することが原因となって、工程異常が発生する可能性がある。
一方、帯電防止層として、前記背面帯電防止層、前記帯電防止性基材又は前記表面帯電防止層を用いることにより、前記積層体の引き離し時帯電だけでなく、保護膜形成用複合シートの製造過程や保存過程でのより多くの場面において、帯電に起因する不具合の発生を抑制できる。
以上のような観点から、前記保護膜形成用複合シートは、帯電防止層として、前記背面帯電防止層、前記帯電防止性基材又は前記表面帯電防止層を備えていることが好ましい。
【0053】
前記保護膜形成用複合シートの全体構成の例を、帯電防止層の配置形態ごとに、以下、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0054】
まず初めに、帯電防止層として前記背面帯電防止層を備えた保護膜形成用複合シートについて、説明する。
【0055】
図1は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート101は、支持シート10と、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に形成された保護膜形成用フィルム13と、を備えている。
【0056】
支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11a上に形成された粘着剤層12と、基材11の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)11b上に形成された背面帯電防止層17と、を備えている。すなわち、支持シート10は、背面帯電防止層17、基材11及び粘着剤層12がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。支持シート10の第1面10aは、換言すると、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aである。
【0057】
すなわち、保護膜形成用複合シート101は、背面帯電防止層17、基材11、粘着剤層12及び保護膜形成用フィルム13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。また、保護膜形成用複合シート101は、さらに保護膜形成用フィルム13上に剥離フィルム15を備えている。
【0058】
保護膜形成用複合シート101においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない面と、治具用接着剤層16の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)16aに、剥離フィルム15が積層されている。
【0059】
保護膜形成用複合シート101においては、剥離フィルム15と、この剥離フィルム15と直接接触している層との間に、一部隙間が生じていてもよい。
例えば、ここでは、治具用接着剤層16の側面16cに、剥離フィルム15が接触(積層)している状態を示しているが、前記側面16cには、剥離フィルム15が接触していないこともある。また、ここでは、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16の近傍領域に、剥離フィルム15が接触(積層)している状態を示しているが、前記領域には、剥離フィルム15が接触していないこともある。
また、治具用接着剤層16の第1面16a及び側面16cの境界は、明確に区別できない場合もある。これらは、治具用接着剤層を備えた、他の実施形態の保護膜形成用複合シートにおいても、同様である。
【0060】
支持シートに用いられる加工前の基材において、通常、その片面又は両面は、凹凸形状を有する凹凸面となっている。これは、このような凹凸面を有していないと、基材を巻き取ってロールとしたときに、基材同士の接触面が貼り付いてブロッキングしてしまい、使用が困難になるためである。基材同士の接触面のうち、少なくとも一方が凹凸面であれば、接触面の面積が小さくなるために、ブロッキングが抑制される。
したがって、保護膜形成用複合シート101においては、基材11の第1面11a及び第2面11bのいずれか一方又は両方は、凹凸面であってもよい。そして、基材11の第1面11a及び第2面11bのいずれか一方のみが凹凸面である場合には、どちらが凹凸面であってもよい。この場合、他方は、凹凸度が低い平滑面となる。
このような凹凸面及び平滑面の条件は、基材11を備えた他の保護膜形成用複合シートにおいても同様である。
【0061】
治具用接着剤層16は、リングフレーム等の治具に、保護膜形成用複合シート101を固定するために用いる。
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造を有していてもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造を有していてもよい。
【0062】
背面帯電防止層17は、帯電防止剤を含有する。これにより、保護膜形成用複合シート101中の、支持シート10側の最表層である背面帯電防止層17の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下となる。そして、保護膜形成用複合シート101の平常時帯電が抑制される。
さらに、背面帯電防止層17の構成が調節されている。これにより、70℃で1分加熱した後の保護膜形成用複合シート101から作製した前記試験片の静止摩擦力が、20N以下となる。そして、保護膜形成用複合シート101を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。調節される背面帯電防止層17の構成としては、例えば、先の説明のとおり、背面帯電防止層17の保護膜形成用フィルム13側とは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)17bの表面状態や、背面帯電防止層17の硬さ等が挙げられる。
なお、符号17aは、背面帯電防止層17の保護膜形成用フィルム13側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある。)を示す。
【0063】
保護膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0064】
図2は、本発明の他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0065】
ここに示す保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成用フィルムの形状及び大きさが異なり、治具用接着剤層が保護膜形成用フィルムの第1面ではなく、粘着剤層の第1面に積層されている点以外は、
図1に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0066】
より具体的には、保護膜形成用複合シート102において、保護膜形成用フィルム23は、粘着剤層12の第1面12aの一部の領域、すなわち、粘着剤層12の幅方向(
図2における左右方向)における中央側の領域に、積層されている。さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない面、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。そして、保護膜形成用フィルム23の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)23aと、治具用接着剤層16の第1面16aとに、剥離フィルム15が積層されている。
【0067】
保護膜形成用複合シート102を上方から見下ろして平面視したとき、保護膜形成用フィルム23の第1面23aは、粘着剤層12の第1面12a(すなわち、保護膜形成用フィルム23が積層されている領域と積層されていない領域とを合わせた領域)よりも表面積が小さく、例えば、円形状等の平面形状を有する。
【0068】
保護膜形成用複合シート102においては、剥離フィルム15と、この剥離フィルム15と直接接触している層との間に、一部隙間が生じていてもよい。
例えば、ここでは、保護膜形成用フィルム23の側面23cに、剥離フィルム15が接触(積層)している状態を示しているが、前記側面23cには、剥離フィルム15が接触していないこともある。また、ここでは、粘着剤層12の表面12aのうち、保護膜形成用フィルム23及び治具用接着剤層16が積層されていない領域に、剥離フィルム15が接触(積層)している状態を示しているが、前記領域には、剥離フィルム15が接触していないこともある。
また、保護膜形成用フィルム23の第1面23a及び側面23cの境界は、明確に区別できない場合もある。これらは、同様の形状及び大きさの保護膜形成用フィルムを備えた、他の実施形態の保護膜形成用複合シートにおいても、同様である。
【0069】
保護膜形成用複合シート102中の、支持シート10側の最表層である背面帯電防止層17の表面抵抗率は、1.0×1011Ω/□以下であり、保護膜形成用複合シート102の平常時帯電が抑制される。
さらに、前記試験片の静止摩擦力が20N以下であり、保護膜形成用複合シート102を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0070】
保護膜形成用複合シート102は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の第1面23aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0071】
図3は、本発明のさらに他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート103は、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、
図2に示す保護膜形成用複合シート102と同じである。
【0072】
保護膜形成用複合シート103中の、支持シート10側の最表層である背面帯電防止層17の表面抵抗率は、1.0×1011Ω/□以下であり、保護膜形成用複合シート103の平常時帯電が抑制される。
さらに、前記試験片の静止摩擦力が20N以下であり、保護膜形成用複合シート103を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0073】
保護膜形成用複合シート103は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の第1面23aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0074】
図4は、本発明のさらに他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート104は、粘着剤層12と、保護膜形成用フィルム23と、の間に、さらに中間層18を備えている点以外は、
図3に示す保護膜形成用複合シート103と同じである。保護膜形成用複合シート104は、粘着剤層12の第1面12a上に、中間層18を備えている。中間層18の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)18aは、保護膜形成用フィルム23の積層面である。
【0075】
すなわち、保護膜形成用複合シート104は、背面帯電防止層17、基材11、粘着剤層12、中間層18及び保護膜形成用フィルム23がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。また、保護膜形成用複合シート104は、さらに保護膜形成用フィルム23上に剥離フィルム15を備えている。
【0076】
保護膜形成用複合シート104において、中間層18は、保護膜形成用フィルム23と粘着剤層12との間に配置されており、最表層とはならない中間位置に配置されている。
中間層18は、このような配置位置でその機能を発揮するものであれば、特に限定されない。
中間層18として、より具体的には、例えば、一方の面が剥離処理されている剥離性改善層が挙げられる。前記剥離性改善層とは、保護膜形成用フィルム又は保護膜を備えた半導体チップを、支持シートから引き離して(剥離させて)ピックアップするときに、この半導体チップの支持シートからの剥離性を向上させる機能を有する。
【0077】
中間層18の第1面18aは、保護膜形成用フィルム23の粘着剤層12側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)23bと接触している。
保護膜形成用複合シート104を上方から見下ろして平面視したとき、中間層18の形状(すなわち、平面形状)及び大きさは、中間層18がその機能を発揮可能である限り、特に限定されない。ただし、中間層18の機能を十分に発揮させるためには、中間層18の第1面18aは、保護膜形成用フィルム23の第2面23bの全面と接触していることが好ましい。そのために、中間層18の第1面18aは、保護膜形成用フィルム23の第2面23bに対して、同等以上の面積を有することが好ましい。一方、中間層18の粘着剤層12側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)18bは、粘着剤層12の第1面12aの全面と接触していてもよいし、粘着剤層12の第1面12aの一部の領域のみと接触していてもよい。ただし、中間層18の機能を十分に発揮させるためには、粘着剤層12の第1面12aは、中間層18の第2面18bの全面と接触していることが好ましい。
好ましい中間層18としては、例えば、その第1面18aの面積及び形状が、保護膜形成用フィルム23の第2面23bの面積及び形状と、同等であるものが挙げられる。
【0078】
保護膜形成用複合シート104においては、剥離フィルム15と、この剥離フィルム15と直接接触している層との間に、一部隙間が生じていてもよい。
例えば、ここでは、中間層18の側面18cに、剥離フィルム15が接触(積層)している状態を示しているが、前記側面18cには、剥離フィルム15が接触していないこともある。また、ここでは、粘着剤層12の第1面12aのうち、中間層18が積層されていない領域には、中間層18の近傍領域も含めて、剥離フィルム15が接触(積層)している状態を示しているが、前記第1面12aのうち、中間層18の近傍領域には、剥離フィルム15が接触していないこともある。
また、中間層18の第1面18a及び側面18cの境界は、明確に区別できない場合もある。
【0079】
保護膜形成用複合シート104中の、支持シート10側の最表層である背面帯電防止層17の表面抵抗率は、1.0×1011Ω/□以下であり、保護膜形成用複合シート104の平常時帯電が抑制される。
さらに、前記試験片の静止摩擦力が20N以下であり、保護膜形成用複合シート104を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0080】
保護膜形成用複合シート104は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の第1面23aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、中間層18が積層されていない領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0081】
図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート105は、粘着剤層12を備えていない点以外は、
図1に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。換言すると、保護膜形成用複合シート105は、支持シート10に代えて、粘着剤層12を備えていない支持シート20を備えている点以外は、保護膜形成用複合シート101と同じである。基材11の第1面11aは、換言すると、支持シート20の保護膜形成用フィルム13側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)20aである。
【0082】
保護膜形成用複合シート105中の、支持シート20側の最表層である背面帯電防止層17の表面抵抗率は、1.0×1011Ω/□以下であり、保護膜形成用複合シート105の平常時帯電が抑制される。
さらに、前記試験片の静止摩擦力が20N以下であり、保護膜形成用複合シート105を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0083】
保護膜形成用複合シート105は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0084】
帯電防止層として前記背面帯電防止層を備えた保護膜形成用複合シートは、
図1~
図5に示すものに限定されない。例えば、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図1~
図5に示す保護膜形成用複合シートの一部の構成が変更又は削除されたものや、
図1~
図5に示す保護膜形成用複合シートにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0085】
図5に示す保護膜形成用複合シートは、粘着剤層を備えていない。粘着剤層を備えていない本実施形態の保護膜形成用複合シートとしては、これ以外にも、例えば、
図2~
図4に示す保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層が省略されたものが挙げられる。
【0086】
また、
図1、
図2及び
図5に示す保護膜形成用複合シートは、治具用接着剤層を備えている。治具用接着剤層を備えた本実施形態の保護膜形成用複合シートとしては、これら以外にも、例えば、
図4に示す保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層の第1面に治具用接着剤層が新たに設けられたものが挙げられる。この場合、前記第1面上での、治具用接着剤層の配置位置は、
図1、2及び5に示す保護膜形成用複合シートの場合と同様であってよい。
【0087】
また、
図3~
図4に示す保護膜形成用複合シートは、治具用接着剤層を備えていない。治具用接着剤層を備えていない本実施形態の保護膜形成用複合シートとしては、これら以外にも、例えば、
図1及び
図5に示す保護膜形成用複合シートにおいて、治具用接着剤層が省略されたものが挙げられる。
【0088】
また、
図4に示す保護膜形成用複合シートは、中間層を備えている。中間層を備えた本実施形態の保護膜形成用複合シートとしては、これ以外にも、例えば、
図1、
図2及び
図5に示す保護膜形成用複合シートにおいて、保護膜形成用フィルムの第2面側に中間層が新たに設けられたものが挙げられる。この場合、前記第2面上での、中間層の配置形態は、
図4を引用して説明した場合と同様であってよい。
【0089】
また、
図1~
図5に示す保護膜形成用複合シートは、背面帯電防止層、基材、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルム以外に、何も備えていないか、粘着剤層のみを備えているか、又は、粘着剤層及び中間層のみを備えている。本実施形態の保護膜形成用複合シートとしては、これら以外にも、例えば、
図1~
図5に示す保護膜形成用複合シートにおいて、背面帯電防止層、基材、粘着剤層、中間層、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルム、のいずれにも該当しない、他の層を備えたものが挙げられる。
【0090】
また、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいては、各層の大きさや形状は、目的に応じて任意に調節できる。
【0091】
次に、帯電防止層として前記帯電防止性基材を備えた保護膜形成用複合シートについて、説明する。
【0092】
図6は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート201は、支持シート30と、支持シート30の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)30a上に形成された保護膜形成用フィルム13と、を備えている。
【0093】
支持シート30は、帯電防止性基材11’と、帯電防止性基材11’の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11a’上に形成された粘着剤層12と、を備えている。すなわち、支持シート30は、帯電防止性基材11’及び粘着剤層12が、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。支持シート30の第1面30aは、換言すると、粘着剤層12の第1面12aである。なお、符号11b’は、帯電防止性基材11’の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示している。
【0094】
すなわち、保護膜形成用複合シート201は、帯電防止性基材11’、粘着剤層12及び保護膜形成用フィルム13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。また、保護膜形成用複合シート201は、さらに保護膜形成用フィルム13上に剥離フィルム15を備えている。
【0095】
保護膜形成用複合シート201においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない面と、治具用接着剤層16の第1面16aとに、剥離フィルム15が積層されている。
【0096】
保護膜形成用複合シート201は、背面帯電防止層17及び基材11の積層物に代えて、帯電防止性基材11’を備えている点以外は、
図1に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0097】
帯電防止性基材11’は、帯電防止剤を含有する。これにより、保護膜形成用複合シート201中の、支持シート30側の最表層である帯電防止性基材11’の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下となる。そして、保護膜形成用複合シート201の平常時帯電が抑制される。
さらに、帯電防止性基材11’の構成が調節されている。これにより、70℃で1分加熱した後の保護膜形成用複合シート201から作製した前記試験片の静止摩擦力が、20N以下となる。そして、保護膜形成用複合シート201を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。調節される帯電防止性基材11’の構成としては、例えば、先の説明のとおり、帯電防止性基材11’の第2面11b’の表面状態や、帯電防止性基材11’の硬さ等が挙げられる。
【0098】
帯電防止性基材11’としては、例えば、さらに帯電防止剤を含有している点以外は、上述の基材11と同じものが挙げられる。
【0099】
保護膜形成用複合シート201は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0100】
図7は、本発明の他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート202は、保護膜形成用フィルムの形状及び大きさが異なり、治具用接着剤層が保護膜形成用フィルムの第1面ではなく、粘着剤層の第1面に積層されている点以外は、
図6に示す保護膜形成用複合シート201と同じである。
換言すると、保護膜形成用複合シート202は、背面帯電防止層17及び基材11の積層物に代えて、帯電防止性基材11’を備えている点以外は、
図2に示す保護膜形成用複合シート102と同じである。
【0101】
すなわち、保護膜形成用複合シート202は、帯電防止性基材11’、粘着剤層12及び保護膜形成用フィルム23がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。また、保護膜形成用複合シート202は、さらに保護膜形成用フィルム23上に剥離フィルム15を備えている。
【0102】
保護膜形成用複合シート202中の、支持シート30側の最表層である帯電防止性基材11’の表面抵抗率は、1.0×1011Ω/□以下であり、保護膜形成用複合シート202の平常時帯電が抑制される。
さらに、前記試験片の静止摩擦力が20N以下であり、保護膜形成用複合シート202を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0103】
保護膜形成用複合シート202は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の第1面23aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0104】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート203は、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、
図7に示す保護膜形成用複合シート202と同じである。
換言すると、保護膜形成用複合シート203は、背面帯電防止層17及び基材11の積層物に代えて、帯電防止性基材11’を備えている点以外は、
図3に示す保護膜形成用複合シート103と同じである。
【0105】
保護膜形成用複合シート203中の、支持シート30側の最表層である帯電防止性基材11’の表面抵抗率は、1.0×1011Ω/□以下であり、保護膜形成用複合シート203の平常時帯電が抑制される。
さらに、前記試験片の静止摩擦力が20N以下であり、保護膜形成用複合シート203を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0106】
保護膜形成用複合シート203は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の第1面23aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0107】
図9は、本発明のさらに他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート204は、粘着剤層12と、保護膜形成用フィルム23と、の間に、さらに中間層18を備えている点以外は、
図8に示す保護膜形成用複合シート203と同じである。
【0108】
すなわち、保護膜形成用複合シート204は、帯電防止性基材11’、粘着剤層12、中間層18及び保護膜形成用フィルム23がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。また、保護膜形成用複合シート204は、さらに保護膜形成用フィルム23上に剥離フィルム15を備えている。
【0109】
さらに換言すると、保護膜形成用複合シート204は、背面帯電防止層17及び基材11の積層物に代えて、帯電防止性基材11’を備えている点以外は、
図4に示す保護膜形成用複合シート104と同じである。
【0110】
保護膜形成用複合シート204中の、支持シート30側の最表層である帯電防止性基材11’の表面抵抗率は、1.0×1011Ω/□以下であり、保護膜形成用複合シート204の平常時帯電が抑制される。
さらに、前記試験片の静止摩擦力が20N以下であり、保護膜形成用複合シート204を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0111】
保護膜形成用複合シート204は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の第1面23aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、中間層18が積層されていない領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0112】
図10は、本発明のさらに他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート205は、粘着剤層12を備えていない点以外は、
図6に示す保護膜形成用複合シート201と同じである。換言すると、保護膜形成用複合シート205は、支持シート30に代えて、粘着剤層12を備えていない支持シート40を備えている点以外は、保護膜形成用複合シート201と同じである。
【0113】
支持シート40は、帯電防止性基材11’のみからなる。ここでは、帯電防止性基材11’の第1面11a’は、換言すると、支持シート40の保護膜形成用フィルム13側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)40aであり、保護膜形成用フィルム13の積層面である。
【0114】
すなわち、保護膜形成用複合シート205は、帯電防止性基材11’及び保護膜形成用フィルム13がこの順に積層されて、構成されている。また、保護膜形成用複合シート205は、さらに保護膜形成用フィルム13上に剥離フィルム15を備えている。
【0115】
さらに換言すると、保護膜形成用複合シート205は、背面帯電防止層17及び基材11の積層物に代えて、帯電防止性基材11’を備えている点以外は、
図5に示す保護膜形成用複合シート105と同じである。
【0116】
保護膜形成用複合シート205中の、支持シート40側の最表層である帯電防止性基材11’の表面抵抗率は、1.0×1011Ω/□以下であり、保護膜形成用複合シート205の平常時帯電が抑制される。
さらに、前記試験片の静止摩擦力が20N以下であり、保護膜形成用複合シート205を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0117】
保護膜形成用複合シート205は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0118】
帯電防止層として前記帯電防止性基材を備えた本実施形態の保護膜形成用複合シートは、
図6~
図10に示すものに限定されない。例えば、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図6~
図10に示す保護膜形成用複合シートの一部の構成が変更又は削除されたものや、
図6~
図10に示す保護膜形成用複合シートにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0119】
図10に示す保護膜形成用複合シートは、粘着剤層を備えていない。粘着剤層を備えていない本実施形態の保護膜形成用複合シートとしては、これ以外にも、例えば、
図7~
図9に示す保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層が省略されたものが挙げられる。
【0120】
また、
図6、
図7及び
図10に示す保護膜形成用複合シートは、治具用接着剤層を備えている。治具用接着剤層を備えた本実施形態の保護膜形成用複合シートとしては、これら以外にも、例えば、
図9に示す保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層の第1面に治具用接着剤層が新たに設けられたものが挙げられる。この場合、前記第1面上での、治具用接着剤層の配置位置は、
図6、7及び10に示す保護膜形成用複合シートの場合と同様であってよい。
【0121】
また、
図8~
図9に示す保護膜形成用複合シートは、治具用接着剤層を備えていない。治具用接着剤層を備えていない本実施形態の保護膜形成用複合シートとしては、これら以外にも、例えば、
図6及び
図10に示す保護膜形成用複合シートにおいて、治具用接着剤層が省略されたものが挙げられる。
【0122】
また、
図9に示す保護膜形成用複合シートは、中間層を備えている。中間層を備えた本実施形態の保護膜形成用複合シートとしては、これ以外にも、例えば、
図6、
図7及び
図10に示す保護膜形成用複合シートにおいて、保護膜形成用フィルムの第2面に中間層が新たに設けられたものが挙げられる。この場合、前記第2面上での、中間層の配置形態は、
図9を引用して説明した場合と同様であってよい。
【0123】
また、
図6~
図10に示す保護膜形成用複合シートは、帯電防止性基材、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルム以外に、何も備えていないか、粘着剤層のみを備えているか、又は、粘着剤層及び中間層のみを備えている。本実施形態の保護膜形成用複合シートとしては、これら以外にも、例えば、
図6~
図10に示す保護膜形成用複合シートにおいて、帯電防止性基材、粘着剤層、中間層、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルム、のいずれにも該当しない、他の層を備えたものが挙げられる。
【0124】
また、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルムと、この剥離フィルムと直接接触している層との間に、一部隙間が生じていてもよい。
また、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいては、各層の大きさや形状は、目的に応じて任意に調節できる。
【0125】
次に、帯電防止層として前記表面帯電防止層を備えた保護膜形成用複合シートについて、説明する。
【0126】
図11は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート301は、支持シート50と、支持シート50の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)50a上に形成された保護膜形成用フィルム13と、を備えている。
【0127】
支持シート50は、基材11と、基材11の第1面11a上に形成された表面帯電防止層19と、表面帯電防止層19の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)19a上に形成された粘着剤層12と、を備えている。すなわち、支持シート50は、基材11、表面帯電防止層19及び粘着剤層12がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。支持シート50の第1面50aは、換言すると、粘着剤層12の第1面12aである。
なお、符号19bは、表面帯電防止層19の基材11側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある。)を示す。
【0128】
すなわち、保護膜形成用複合シート301は、基材11、表面帯電防止層19、粘着剤層12及び保護膜形成用フィルム13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。また、保護膜形成用複合シート301は、さらに保護膜形成用フィルム13上に剥離フィルム15を備えている。
【0129】
保護膜形成用複合シート301においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない面と、治具用接着剤層16の第1面16aに、剥離フィルム15が積層されている。
【0130】
保護膜形成用複合シート301は、基材11の第2面11b上に背面帯電防止層17を備えておらず、基材11の第1面11a上、より具体的には基材11と粘着剤層12との間、に表面帯電防止層19を備えている点以外は、
図1に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0131】
表面帯電防止層19は、先に説明した背面帯電防止層17と同様のものである。
すなわち、保護膜形成用複合シート301は、保護膜形成用複合シート101において、帯電防止層の配置位置が、基材11の第2面11b上から、基材11と粘着剤層12との間、に変更されたものであるともいえる。
【0132】
表面帯電防止層19は、帯電防止剤を含有する。これにより、保護膜形成用複合シート301中の、支持シート50側の最表層である基材11の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下となる。そして、保護膜形成用複合シート301の平常時帯電が抑制される。
さらに、基材11の構成が調節されている。これにより、70℃で1分加熱した後の保護膜形成用複合シート301から作製した前記試験片の静止摩擦力が、20N以下となる。そして、保護膜形成用複合シート301を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。調節される基材11の構成としては、例えば、先の説明のとおり、基材11の第2面11bの表面状態や、基材11の硬さ等が挙げられる。
【0133】
保護膜形成用複合シート301は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0134】
帯電防止層として前記表面帯電防止層を備えた保護膜形成用複合シートは、
図11に示すものに限定されない。例えば、本実施形態の保護膜形成用複合シートとしては、
図2~
図5に示す保護膜形成用複合シートにおいて、背面帯電防止層を備えておらず、基材の第1面に表面帯電防止層を備えるように構成したもの(換言すると、帯電防止層の配置位置が、基材の第2面から基材の第1面に変更されたもの)等も挙げられる。
【0135】
さらに、帯電防止層として前記表面帯電防止層を備えた保護膜形成用複合シートとしては、上述のものに限定されず、先に説明した、背面帯電防止層を備えた保護膜形成用複合シートにおいて、帯電防止層の配置位置が、基材の第2面から基材の第1面に変更されたものがすべて挙げられる。
【0136】
本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいても、各層の大きさや形状は、目的に応じて任意に調節できる。
【0137】
ここまでは、帯電防止層として、背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層からなる群より選択される1種のみを備えた保護膜形成用複合シートについて、説明してきたが、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、帯電防止層として、背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層からなる群より選択される2種以上(すなわち2種又は3種)を備えていてもよい。このような保護膜形成用複合シートの剥離帯電の抑制効果は、特に高く、その結果、保護膜形成用フィルムと半導体ウエハとの間の異物混入の抑制効果が、特に高くなる。
【0138】
このような保護膜形成用複合シートのうち、帯電防止層として、前記背面帯電防止層及び帯電防止性基材の両方を備えた保護膜形成用複合シートとしては、例えば、
図1~
図5に示す保護膜形成用複合シートにおいて、基材11を、帯電防止性基材(例えば、
図6~
図10に示す保護膜形成用複合シート中の帯電防止性基材11’)に置き換えたものが挙げられる。換言すると、これら保護膜形成用複合シートは、
図6~
図10に示す保護膜形成用複合シートにおいて、帯電防止性基材11’の第2面11b’に、さらに背面帯電防止層(例えば、
図1~
図5に示す保護膜形成用複合シート中の背面帯電防止層17)を設けたものである。
【0139】
図12に示す保護膜形成用複合シート401は、
図1に示す保護膜形成用複合シート101において、基材11を帯電防止性基材11’に置き換えたものである。保護膜形成用複合シート401は、基材11に代えて、帯電防止性基材11’を備えている点以外は、保護膜形成用複合シート101と同じである。
保護膜形成用複合シート401中の支持シート60は、背面帯電防止層17、帯電防止性基材11’及び粘着剤層12がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。支持シート60の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)60aは、換言すると、粘着剤層12の第1面12aである。
【0140】
背面帯電防止層17及び帯電防止性基材11’は、帯電防止剤を含有する。これにより、保護膜形成用複合シート401中の、支持シート60側の最表層である背面帯電防止層17の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下となる。そして、保護膜形成用複合シート401の平常時帯電が抑制される。
さらに、背面帯電防止層17の構成が調節されている。これにより、70℃で1分加熱した後の保護膜形成用複合シート401から作製した前記試験片の静止摩擦力が、20N以下となる。そして、保護膜形成用複合シート401を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0141】
保護膜形成用複合シート401は、保護膜形成用複合シート101及び保護膜形成用複合シート201の場合と同じ方法で使用される。
【0142】
背面帯電防止層及び帯電防止性基材の両方を備えた、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいても、各層の大きさや形状は、目的に応じて任意に調節できる。
【0143】
一方、帯電防止層として、前記帯電防止性基材及び表面帯電防止層の両方を備えた保護膜形成用複合シートとしては、例えば、
図6~
図10に示す保護膜形成用複合シートにおいて、帯電防止性基材11’と、その第1面11a’側で帯電防止性基材11’に隣接する層(より具体的には、粘着剤層12又は保護膜形成用フィルム13)と、の間に、さらに表面帯電防止層(例えば、
図11に示す保護膜形成用複合シート301中の表面帯電防止層19)を設けたものが挙げられる。
【0144】
図13に示す保護膜形成用複合シート501は、その一例であり、
図11に示す保護膜形成用複合シート301において、基材11を帯電防止性基材11’に置き換えたものである。保護膜形成用複合シート501は、基材11に代えて、帯電防止性基材11’を備えている点以外は、保護膜形成用複合シート301と同じである。
保護膜形成用複合シート501中の支持シート70は、帯電防止性基材11’、表面帯電防止層19及び粘着剤層12がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。支持シート70の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)70aは、換言すると、粘着剤層12の第1面12aである。
【0145】
帯電防止性基材11’及び表面帯電防止層19は、帯電防止剤を含有する。これにより、保護膜形成用複合シート501中の、支持シート70側の最表層である帯電防止性基材11’の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下となる。そして、保護膜形成用複合シート501の平常時帯電が抑制される。
さらに、帯電防止性基材11’の構成が調節されている。これにより、70℃で1分加熱した後の保護膜形成用複合シート501から作製した前記試験片の静止摩擦力が、20N以下となる。そして、保護膜形成用複合シート501を用いて得られた前記積層体の引き離し時帯電が抑制される。その結果、前記積層体の引き離し時における半導体チップ中の回路の破壊が抑制される。
【0146】
保護膜形成用複合シート501は、保護膜形成用複合シート301及び保護膜形成用複合シート201の場合と同じ方法で使用される。
【0147】
帯電防止性基材及び表面帯電防止層の両方を備えた、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいても、各層の大きさや形状は、目的に応じて任意に調節できる。
【0148】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、帯電防止層として、前記背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層をすべて備えていてもよい。
【0149】
背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層をすべて備えた保護膜形成用複合シートとしては、例えば、支持シートと、前記支持シートの一方の面(すなわち第1面)上に形成された保護膜形成用フィルムと、を備え、前記支持シートは、背面帯電防止層、帯電防止性基材、表面帯電防止層及び粘着剤層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されており、前記粘着剤層が前記保護膜形成用フィルム側に向けて配置されている保護膜形成用複合シート、が挙げられる。
このような保護膜形成用複合シートとして、より具体的には、
図12に示す保護膜形成用複合シート401において、帯電防止性基材11’と、粘着剤層12と、の間に、さらに表面帯電防止層(例えば、
図11に示す表面帯電防止層19)が設けられたものが挙げられる。
【0150】
また、背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層をすべて備えた保護膜形成用複合シートとしては、例えば、支持シートと、前記支持シートの一方の面(すなわち第1面)上に形成された保護膜形成用フィルムと、を備え、前記支持シートは、背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されており、前記表面帯電防止層が前記保護膜形成用フィルム側に向けて配置されている保護膜形成用複合シート、が挙げられる。
このような保護膜形成用複合シートとして、より具体的には、
図12に示す保護膜形成用複合シート401において、粘着剤層12に代えて表面帯電防止層(例えば、
図11に示す表面帯電防止層19)が設けられたものが挙げられる。
【0151】
ただし、これらは、背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層をすべて備えた保護膜形成用複合シートの一例である。
【0152】
上述のとおり、背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層からなる群より選択される2種以上を備えた保護膜形成用複合シートは、1種のみを備えた保護膜形成用複合シートよりも、その平常時帯電の抑制効果が高く、この点で有利である。これに対して、背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層からなる群より選択される1種のみを備えた保護膜形成用複合シートでも、十分な平常時帯電の抑制効果を有しており、かつこのようなシートは、安価且つ簡便に製造できる点で有利である。
【0153】
ここまで、帯電防止層の配置形態ごとに、前記保護膜形成用複合シートの全体構成について説明してきたが、引き続き、支持シートについて、説明する。
【0154】
<支持シートの全光線透過率>
前記保護膜形成用複合シート中の支持シートの全光線透過率は、特に限定されないが、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。前記支持シートの全光線透過率が前記下限値以上であることで、保護膜又は保護膜形成用フィルムのレーザー印字性、及び、保護膜の印字視認性が向上し、半導体チップ若しくは保護膜の割れ又は欠けを、より高精度に検査できる。
【0155】
前記保護膜形成用複合シート中の支持シートの全光線透過率の上限値は、特に限定されず、高いほど好ましい。支持シートの製造の容易さ、及び、支持シートの構成の自由度の高さ等を考慮すると、支持シートの全光線透過率は、99%以下であることが好ましい。
【0156】
支持シートの全光線透過率は、実施例においても後述するように、JIS K 7375:2008に準拠して、測定できる。
【0157】
<支持シートのヘーズ>
前記保護膜形成用複合シート中の支持シートのヘーズは、特に限定されないが、55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、45%以下であることが特に好ましい。前記支持シートのヘーズが前記上限値以下であることで、保護膜又は保護膜形成用フィルムのレーザー印字性、保護膜の印字視認性、半導体チップ若しくは保護膜の割れ又は欠けの検査適性が向上する。
【0158】
前記保護膜形成用複合シート中の支持シートのヘーズの下限値は、特に限定されず、低いほど好ましい。支持シートの製造の容易さ、及び、支持シートの構成の自由度の高さ等を考慮すると、支持シートのヘーズは、40%以上であってもよい。
【0159】
支持シートのヘーズは、JIS K 7136-2000に準拠して、測定できる。
【0160】
<帯電防止層の耐擦傷性>
前記保護膜形成用複合シート中の帯電防止層の耐擦傷性は、前記複合シートの保護膜形成用フィルムの検査性に影響を与える。「帯電防止層の耐擦傷性」とは、帯電防止層が他の物によって擦られたときに、帯電防止層のこの擦られた面における傷のつき難さを意味する。
帯電防止層の耐擦傷性が高ければ、帯電防止層の表面は全面に渡って、他の物との接触時において、傷がつき難い。したがって、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、帯電防止層を介して、センサーを用いて、又は目視により、光学的に検査したときに、検査箇所による検査結果のばらつきが抑制され、かつ、高精度に検査できる。これに対して、帯電防止層の耐擦傷性が低ければ、帯電防止層の表面の少なくとも一部は、他の物との接触時において、傷がつき易い。したがって、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、上記のように検査したときに、検査箇所による検査結果のばらつきが発生し、かつ、検査精度が低くなってしまう。
【0161】
帯電防止層の耐擦傷性は、以下の方法で評価できる。
すなわち、まず、帯電防止層に荷重を加えるために用いる押圧手段の表面(以下、「押圧面」と称する)に、フランネル布を被せる。このとき、前記押圧手段の前記押圧面は、面積が2cm×2cmの正方形で平面状であるものとする。また、フランネル布の厚さは、特に限定されず、例えば、評価結果の信頼性が極めて高いという点においては、1~4μmであってよい。前記押圧面に被せるのは、1枚のフランネル布であってもよいし、2枚以上のフランネル布が、これらの厚さ方向において積層されて構成されたフランネル布の積層シートであってもよい。前記積層シート中の各フランネル布の厚さは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。前記積層シートを用いる場合には、その全体の厚さ、すなわち、前記積層シート中の各フランネル布の厚さの合計が、1~4μmであってよい。
【0162】
次いで、前記フランネル布を被せた前記押圧手段の前記押圧面を、前記帯電防止層の表面に押し当てる。
次いで、このようにフランネル布を介して、押圧手段を帯電防止層に押し当てた状態で、押圧手段によって125g/cm2の荷重を帯電防止層に加えて押圧しながら、押圧手段を10cmの直線距離で10回往復運動させる。これにより、フランネル布を介して125g/cm2の荷重を加えながら、帯電防止層を擦る。このとき、帯電防止層の表面のうち、フランネル布によって擦られるのは、幅2cm、長さ10cmの領域となる。
【0163】
次いで、帯電防止層の、このフランネル布を介して擦った面のうち、面積が2cm×2cmの領域を目視観察し、傷の有無を確認することで、帯電防止層の耐擦傷性を評価できる。例えば、観察箇所に傷が存在すれば、すじ状の傷が認められたり、観察面の光反射性が低下して、つやの低下が認められたりする。傷が認められなければ、耐擦傷性が高いと判定でき、傷が認められれば、耐擦傷性が低いと判定できる。
帯電防止層の表面のうち、目視観察する前記領域は、フランネル布によって擦られた、幅2cm、長さ10cmの領域中のいずれであってもよく、例えば、前記領域中の長さ方向における中央部を含む領域であってもよいし、同じ方向における端部を含む領域であってもよい。
【0164】
前記保護膜形成用複合シート中の帯電防止層は、上述の方法により、その耐擦傷性を評価したときに、傷が認められないことが好ましい。ここで、帯電防止層とは、先に説明した背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層を意味しており、より好ましい保護膜形成用複合シートとしては、例えば、このような耐擦傷性を有する背面帯電防止層又は帯電防止性基材を備えたものが挙げられる。
【0165】
例えば、保護膜形成用複合シートが、帯電防止層として、背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層からなる群より選択される2種以上を備えている場合には、少なくとも保護膜形成用複合シートの最外層が、耐擦傷性の評価対象であることが好ましい。より具体的には、例えば、保護膜形成用複合シートが、背面帯電防止層及び帯電防止性基材をともに備えている場合、及び、背面帯電防止層及び表面帯電防止層をともに備えている場合には、少なくとも背面帯電防止層が、耐擦傷性の評価対象であることが好ましい。例えば、保護膜形成用複合シートが、帯電防止性基材及び表面帯電防止層をともに備えている場合には、少なくとも帯電防止性基材が、耐擦傷性の評価対象であることが好ましい。例えば、保護膜形成用複合シートが、背面帯電防止層、帯電防止性基材及び表面帯電防止層をすべて備えている場合には、少なくとも背面帯電防止層が耐擦傷性の評価対象であることが好ましい。
【0166】
次に、支持シートを構成する各層について、さらに詳細に説明する。
【0167】
○基材
帯電防止性基材以外の基材について、以下説明する。本明細書においては、特に断りのない限り、単なる「基材」とは、「帯電防止性基材以外の基材」を意味する。
【0168】
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0169】
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0170】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0171】
基材の厚さは、30~300μmであることが好ましく、50~140μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、前記保護膜形成用複合シートの可撓性と、半導体ウエハ又は半導体チップへの貼付性と、がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0172】
基材は、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような厚さの精度が高い基材を構成するのに使用可能な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0173】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0174】
基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
例えば、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、基材を介して光学的に検査するためには、基材は透明であることが好ましい。
【0175】
基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、中間層又は保護膜形成用フィルム)との接着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;等が表面に施されていてもよい。また、基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
【0176】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0177】
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0178】
なお、本明細書において、「粘着性樹脂」には、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方が包含される。例えば、前記粘着性樹脂には、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含まれる。
【0179】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0180】
粘着剤層の厚さは1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0181】
粘着剤層は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、粘着剤層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
例えば、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、粘着剤層を介して光学的に検査するためには、粘着剤層は透明であることが好ましい。
【0182】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよい。すなわち、粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を容易に調節できる。
【0183】
<<粘着剤組成物>>
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
粘着剤層のより具体的な形成方法は、他の層の形成方法とともに、後ほど詳細に説明する。
【0184】
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0185】
基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に粘着剤層を積層すればよい。また、基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、基材上に粘着剤層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
【0186】
粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、粘着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する粘着剤組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0187】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性粘着剤を含有する粘着剤組成物、すなわち、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0188】
<粘着剤組成物(I-1)>
前記粘着剤組成物(I-1)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
【0189】
[粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
前記アクリル系樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体が挙げられる。
前記アクリル系樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0190】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシル等が挙げられる。
【0191】
粘着剤層の粘着力が向上する点から、前記アクリル系重合体は、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有することが好ましい。そして、粘着剤層の粘着力がより向上する点から、前記アルキル基の炭素数は、4~12であることが好ましく、4~8であることがより好ましい。また、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0192】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中の不飽和基と反応することで、アクリル系重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
【0193】
官能基含有モノマー中の前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
すなわち、官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0194】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0195】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0196】
官能基含有モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0197】
前記アクリル系重合体を構成する官能基含有モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0198】
前記アクリル系重合体において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、1~35質量%であることが好ましく、2~32質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。
【0199】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0200】
前記アクリル系重合体を構成する前記他のモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0201】
前記アクリル系重合体は、上述の非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)として使用できる。
一方、前記アクリル系重合体中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基(エネルギー線重合性基)を有する不飽和基含有化合物を反応させたものは、上述のエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)として使用できる。
【0202】
粘着剤組成物(I-1)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0203】
粘着剤組成物(I-1)において、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0204】
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物は、分子量が比較的大きく、粘着剤層の貯蔵弾性率を低下させにくいという点では、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0205】
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0206】
前記粘着剤組成物(I-1)において、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0207】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
【0208】
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士を架橋する。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
粘着剤の凝集力を向上させて粘着剤層の粘着力を向上させる点、及び入手が容易である等の点から、架橋剤はイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0209】
粘着剤組成物(I-1)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0210】
前記粘着剤組成物(I-1)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0211】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0212】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0213】
粘着剤組成物(I-1)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0214】
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0215】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)、層間移行抑制剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0216】
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制するための成分である。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
また、層間移行抑制剤とは、例えば、保護膜形成用フィルム等の、粘着剤層に隣接する層に含有されている成分が、粘着剤層へ移行することを抑制するための成分である。層間移行抑制剤としては、移行抑制対象と同じ成分が挙げられ、例えば、移行抑制対象が保護膜形成用フィルム中のエポキシ樹脂である場合には、同種のエポキシ樹脂を使用できる。
【0217】
粘着剤組成物(I-1)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0218】
粘着剤組成物(I-1)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0219】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
【0220】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0221】
前記溶媒としては、例えば、粘着性樹脂(I-1a)の製造時に用いたものを粘着性樹脂(I-1a)から取り除かずに、そのまま粘着剤組成物(I-1)において用いてもよいし、粘着性樹脂(I-1a)の製造時に用いたものと同一又は異なる種類の溶媒を、粘着剤組成物(I-1)の製造時に別途添加してもよい。
【0222】
粘着剤組成物(I-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0223】
粘着剤組成物(I-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0224】
<粘着剤組成物(I-2)>
前記粘着剤組成物(I-2)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)を含有する。
【0225】
[粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0226】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0227】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0228】
粘着剤組成物(I-2)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0229】
粘着剤組成物(I-2)において、粘着剤組成物(I-2)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、10~90質量%であることが特に好ましい。
【0230】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0231】
粘着剤組成物(I-2)における前記架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0232】
前記粘着剤組成物(I-2)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
【0233】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-2)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-2)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0234】
粘着剤組成物(I-2)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0235】
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0236】
[その他の添加剤、溶媒]
粘着剤組成物(I-2)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
また、粘着剤組成物(I-2)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-2)における、前記その他の添加剤及び溶媒としては、それぞれ、粘着剤組成物(I-1)における、その他の添加剤及び溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する、その他の添加剤及び溶媒は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-2)の、その他の添加剤及び溶媒の含有量は、それぞれ、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0237】
<粘着剤組成物(I-3)>
前記粘着剤組成物(I-3)は、上述の様に、前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
【0238】
粘着剤組成物(I-3)において、粘着剤組成物(I-3)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0239】
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー及びオリゴマーが挙げられ、粘着剤組成物(I-1)が含有するエネルギー線硬化性化合物と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0240】
前記粘着剤組成物(I-3)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~300質量部であることが好ましく、0.03~200質量部であることがより好ましく、0.05~100質量部であることが特に好ましい。
【0241】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-3)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0242】
粘着剤組成物(I-3)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0243】
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
【0244】
[その他の添加剤、溶媒]
粘着剤組成物(I-3)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
また、粘着剤組成物(I-3)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-3)における、前記その他の添加剤及び溶媒としては、それぞれ、粘着剤組成物(I-1)における、その他の添加剤及び溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する、その他の添加剤及び溶媒は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-3)の、その他の添加剤及び溶媒の含有量は、それぞれ、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0245】
<粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物>
ここまでは、粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)及び粘着剤組成物(I-3)について主に説明したが、これらの含有成分として説明したものは、これら3種の粘着剤組成物以外の全般的な粘着剤組成物(本明細書においては、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物」と称する)でも、同様に用いることができる。
【0246】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物としては、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物以外に、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物も挙げられる。
非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)が挙げられ、アクリル系樹脂を含有するものが好ましい。
【0247】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、1種又は2種以上の架橋剤を含有することが好ましく、その含有量は、上述の粘着剤組成物(I-1)等の場合と同様とすることができる。
【0248】
<粘着剤組成物(I-4)>
粘着剤組成物(I-4)で好ましいものとしては、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)と、架橋剤と、を含有するものが挙げられる。
【0249】
[粘着性樹脂(I-1a)]
粘着剤組成物(I-4)における粘着性樹脂(I-1a)としては、粘着剤組成物(I-1)における粘着性樹脂(I-1a)と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0250】
粘着剤組成物(I-4)において、粘着剤組成物(I-4)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
【0251】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
【0252】
粘着剤組成物(I-4)における架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0253】
前記粘着剤組成物(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~47質量部であることがより好ましく、0.3~44質量部であることが特に好ましい。
【0254】
[その他の添加剤、溶媒]
粘着剤組成物(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
また、粘着剤組成物(I-4)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-4)における、前記その他の添加剤及び溶媒としては、それぞれ、粘着剤組成物(I-1)における、その他の添加剤及び溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する、その他の添加剤及び溶媒は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-4)の、その他の添加剤及び溶媒の含有量は、それぞれ、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0255】
後述する保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性である場合、粘着剤層は非エネルギー線硬化性であることが好ましい。これは、粘着剤層がエネルギー線硬化性であると、エネルギー線の照射によって保護膜形成用フィルムを硬化させるときに、粘着剤層も同時に硬化するのを抑制できないことがあるためである。粘着剤層が保護膜形成用フィルムと同時に硬化してしまうと、保護膜形成用フィルムの硬化物及び粘着剤層がこれらの界面において剥離不能な程度に貼り付いてしまうことがある。その場合、保護膜形成用フィルムの硬化物、すなわち保護膜を裏面に備えた半導体チップ(すなわち保護膜付き半導体チップ)を、粘着剤層の硬化物を備えた支持シートから剥離させることが困難となり、保護膜付き半導体チップを正常にピックアップできなくなってしまう。粘着剤層が非エネルギー線硬化性であれば、このような不具合を確実に回避でき、保護膜付き半導体チップをより容易にピックアップできる。
【0256】
ここでは、粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合の効果について説明したが、支持シートの保護膜形成用フィルムと直接接触している層が粘着剤層以外の層であっても、この層が非エネルギー線硬化性であれば、同様の効果を奏する。
【0257】
<<粘着剤組成物の製造方法>>
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)や、粘着剤組成物(I-4)等の粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0258】
○背面帯電防止層
前記背面帯電防止層は、シート状又はフィルム状であり、帯電防止剤を含有する。
前記背面帯電防止層は、前記帯電防止剤以外に、樹脂を含有していてもよい。
【0259】
背面帯電防止層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0260】
背面帯電防止層の厚さは、200nm以下であることが好ましく、180nm以下であることがより好ましく、例えば、100nm以下であってもよい。厚さが200nm以下である背面帯電防止層においては、十分な帯電防止能を維持しつつ、帯電防止剤の使用量を低減できるため、このような背面帯電防止層を備えた保護膜形成用複合シートのコストを低減できる。さらに、背面帯電防止層の厚さが100nm以下である場合には、上述の効果に加え、背面帯電防止層を備えていることによる、保護膜形成用複合シートの特性の変動を最小限に抑制できるという効果も得られる。前記特性としては、例えば、エキスパンド性が挙げられる。
ここで、「背面帯電防止層の厚さ」とは、背面帯電防止層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる背面帯電防止層の厚さとは、背面帯電防止層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0261】
背面帯電防止層の厚さは、10nm以上であることが好ましく、例えば、20nm以上、30nm以上、40nm以上、及び65nm以上のいずれかであってもよい。厚さが前記下限値以上である背面帯電防止層は、形成がより容易であり、かつ、構造がより安定である。
【0262】
背面帯電防止層の厚さは、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、背面帯電防止層の厚さは、10~200nmであることが好ましく、例えば、20nm~200nm、30~200nm、40~180nm、及び65~100nmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、背面帯電防止層の厚さの一例である。
【0263】
背面帯電防止層は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、背面帯電防止層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
例えば、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、背面帯電防止層を介して光学的に検査するためには、背面帯電防止層は透明であることが好ましい。
【0264】
<<帯電防止組成物(VI-1))>>
背面帯電防止層は、前記帯電防止剤を含有する帯電防止組成物(VI-1)を用いて形成できる。例えば、背面帯電防止層の形成対象面に帯電防止組成物(VI-1)を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に背面帯電防止層を形成できる。帯電防止組成物(VI-1)における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、背面帯電防止層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
背面帯電防止層のより具体的な形成方法は、他の層の形成方法とともに、後ほど詳細に説明する。
【0265】
帯電防止組成物(VI-1)の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、上述の粘着剤組成物の場合と同じ方法であってよい。
【0266】
基材上に背面帯電防止層を設ける場合には、例えば、基材上に帯電防止組成物(VI-1)を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に背面帯電防止層を積層すればよい。また、基材上に背面帯電防止層を設ける場合には、例えば、剥離フィルム上に帯電防止組成物(VI-1)を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に背面帯電防止層を形成しておき、この背面帯電防止層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、基材上に背面帯電防止層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
【0267】
帯電防止組成物(VI-1)の乾燥条件は、特に限定されないが、帯電防止組成物(VI-1)は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する帯電防止組成物(VI-1)は、例えば、40~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0268】
帯電防止組成物(VI-1)は、前記帯電防止剤以外に、前記樹脂を含有していてもよい。
【0269】
[帯電防止剤]
前記帯電防止剤は、導電性化合物等、公知のものでよく、特に限定されない。前記帯電防止剤は、例えば、低分子化合物及び高分子化合物(換言すると、オリゴマー又はポリマー)のいずれであってもよい。
【0270】
前記帯電防止剤のうち、低分子化合物としては、例えば、各種イオン液体が挙げられる。
前記イオン液体としては、例えば、ピリミジニウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩、イミダゾリウム塩、モルホリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩等、公知のものが挙げられる。
【0271】
前記帯電防止剤のうち、高分子化合物としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート(本明細書においては、「PEDOT/PSS」と称することがある)、ポリピロール、カーボンナノチューブ等が挙げられる。前記ポリピロールは、複数個(多数)のピロール骨格を有するオリゴマー又はポリマーである。
【0272】
帯電防止組成物(VI-1)が含有する帯電防止剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0273】
帯電防止組成物(VI-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する帯電防止剤の含有量の割合(すなわち、背面帯電防止層における、背面帯電防止層の総質量に対する、帯電防止剤の含有量の割合)は、例えば、0.1~30質量%、及び0.5~15質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、保護膜形成用複合シートの剥離帯電の抑制効果が高くなり、その結果、保護膜形成用フィルムと半導体ウエハとの間の異物混入の抑制効果が高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、背面帯電防止層の強度がより高くなる。
【0274】
[樹脂]
帯電防止組成物(VI-1)及び背面帯電防止層が含有する前記樹脂は、硬化性及び非硬化性のいずれであってもよく、硬化性である場合、エネルギー線硬化性及び熱硬化性のいずれであってもよい。
【0275】
好ましい前記樹脂としては、例えば、バインダー樹脂として機能するものが挙げられる。
【0276】
前記樹脂として、より具体的には、例えば、アクリル系樹脂等が挙げられ、エネルギー線硬化性アクリル系樹脂であることが好ましい。
帯電防止組成物(VI-1)及び背面帯電防止層における前記アクリル系樹脂としては、例えば、前記粘着剤層におけるアクリル系樹脂と同じものが挙げられる。帯電防止組成物(VI-1)及び背面帯電防止層における前記エネルギー線硬化性アクリル系樹脂としては、例えば、前記粘着剤層における粘着性樹脂(I-2a)と同じものが挙げられる。
【0277】
帯電防止組成物(VI-1)及び背面帯電防止層が含有する前記樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0278】
帯電防止組成物(VI-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する前記樹脂の含有量の割合(すなわち、背面帯電防止層における、背面帯電防止層の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合)は、例えば、30~99.9質量%、35~98質量%、60~98質量%、及び85~98質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、背面帯電防止層の強度がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、帯電防止層の帯電防止剤の含有量をより多くすることが可能となる。
【0279】
[エネルギー線硬化性化合物、光重合開始剤]
帯電防止組成物(VI-1)は、エネルギー線硬化性の前記樹脂を含有する場合、エネルギー線硬化性化合物を含有していてもよい。
また、帯電防止組成物(VI-1)は、エネルギー線硬化性の前記樹脂を含有する場合、前記樹脂の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤を含有していてもよい。
帯電防止組成物(VI-1)が含有する、前記エネルギー線硬化性化合物及び光重合開始剤としては、例えば、それぞれ、粘着剤組成物(I-1)が含有する、エネルギー線硬化性化合物及び光重合開始剤と同じものが挙げられる。
帯電防止組成物(VI-1)が含有する、エネルギー線硬化性化合物及び光重合開始剤は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
帯電防止組成物(VI-1)の、エネルギー線硬化性化合物及び光重合開始剤の含有量は、それぞれ、特に限定されず、前記樹脂、エネルギー線硬化性化合物又は光重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0280】
[その他の添加剤、溶媒]
帯電防止組成物(VI-1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
また、帯電防止組成物(VI-1)は、上述の粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
帯電防止組成物(VI-1)が含有する、前記その他の添加剤及び溶媒としては、それぞれ、上述の粘着剤組成物(I-1)が含有する、その他の添加剤(ただし、帯電防止剤を除く)及び溶媒と同じものが挙げられる。さらに、帯電防止組成物(VI-1)が含有する前記その他の添加剤としては、上記のもの以外にも、乳化剤も挙げられる。さらに、帯電防止組成物(VI-1)が含有する溶媒としては、上記のもの以外にも、エタノール等の他のアルコール;2-メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル)、2-エトキシエタノール(エチレングリコールモノエチルエーテル)、1-メトキシ-2-プロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)等のアルコキシアルコール等も挙げられる。
帯電防止組成物(VI-1)が含有する、その他の添加剤及び溶媒は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
帯電防止組成物(VI-1)の、その他の添加剤及び溶媒の含有量は、それぞれ、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0281】
<<帯電防止組成物(VI-1)の製造方法>>
帯電防止組成物(VI-1)は、前記帯電防止剤と、必要に応じて前記帯電防止剤以外の成分等の、帯電防止組成物(VI-1)を構成するための各成分を配合することで得られる。
帯電防止組成物(VI-1)は、配合成分が異なる点以外は、上述の粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0282】
○帯電防止性基材
前記帯電防止性基材は、シート状又はフィルム状であり、帯電防止性を有し、さらに前記基材と同様の機能も有する。
前記保護膜形成用複合シートにおいて、帯電防止性基材は、先に説明した基材と、背面帯電防止層と、の積層物と同様の機能を有し、この積層物に代えて配置できる。
帯電防止性基材は、帯電防止剤及び樹脂を含有し、例えば、さらに帯電防止剤を含有する点以外は、先に説明した基材と同様であってよい。
【0283】
帯電防止性基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0284】
帯電防止性基材の厚さは、例えば、先に説明した基材の厚さと、同様であってよい。帯電防止性基材の厚さがこのような範囲であることで、前記保護膜形成用複合シートの可撓性と、半導体ウエハ又は半導体チップへの貼付性と、がより向上する。
ここで、「帯電防止性基材の厚さ」とは、帯電防止性基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる帯電防止性基材の厚さとは、帯電防止性基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0285】
帯電防止性基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、背面帯電防止層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
例えば、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、帯電防止性基材を介して光学的に検査するためには、帯電防止性基材は透明であることが好ましい。
【0286】
帯電防止性基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、中間層又は保護膜形成用フィルム)との接着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;等が表面に施されていてもよい。また、帯電防止性基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
【0287】
<<帯電防止組成物(VI-2))>>
帯電防止性基材は、例えば、前記帯電防止剤及び樹脂を含有する帯電防止組成物(VI-2)を成形することで製造できる。帯電防止組成物(VI-2)における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、帯電防止性基材における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0288】
帯電防止組成物(VI-2)の成形は、公知の方法で行えばよく、例えば、前記基材の製造時において、前記樹脂組成物を成形する場合と同じ方法で行うことができる。
【0289】
[帯電防止剤]
帯電防止組成物(VI-2)が含有する帯電防止剤としては、前記背面帯電防止層が含有する帯電防止剤と同じものが挙げられる。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する帯電防止剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0290】
帯電防止組成物(VI-2)及び帯電防止性基材において、前記帯電防止剤及び樹脂の合計含有量に対する、前記帯電防止剤の含有量の割合は、7.5質量%以上であることが好ましく、8.5質量%以上であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、保護膜形成用複合シートの剥離帯電の抑制効果が高くなり、その結果、保護膜形成用フィルムと半導体ウエハとの間の異物混入の抑制効果が高くなる。
【0291】
帯電防止組成物(VI-2)及び帯電防止性基材において、前記帯電防止剤及び樹脂の合計含有量に対する、前記帯電防止剤の含有量の割合の上限値は、特に限定されない。例えば、帯電防止剤の相溶性がより良好となる点では、前記割合は20質量%以下であることが好ましい。
【0292】
前記帯電防止剤の含有量の割合は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記割合は、7.5~20質量%であることが好ましく、8.5~20質量%であることがより好ましい。ただし、これらは、前記割合の一例である。
【0293】
[樹脂]
帯電防止組成物(VI-2)及び帯電防止性基材が含有する樹脂としては、前記基材が含有する樹脂と同じものが挙げられる。
帯電防止組成物(VI-2)及び帯電防止性基材が含有する前記樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0294】
帯電防止組成物(VI-2)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する前記樹脂の含有量の割合(すなわち、帯電防止性基材における、帯電防止性基材の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合)は、30~99.9質量%であることが好ましく、35~98質量%であることがより好ましく、60~98質量%であることがさらに好ましく、85~98質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、帯電防止性基材の強度がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、帯電防止性基材の帯電防止剤の含有量をより多くすることが可能となる。
【0295】
[光重合開始剤]
帯電防止組成物(VI-2)は、エネルギー線硬化性の前記樹脂を含有する場合、前記樹脂の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤を含有していてもよい。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する、前記光重合開始剤としては、例えば、粘着剤組成物(I-1)が含有する光重合開始剤と同じものが挙げられる。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
帯電防止組成物(VI-2)の光重合開始剤の含有量は、特に限定されず、前記樹脂又は光重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0296】
[添加剤、溶媒]
帯電防止組成物(VI-2)は、前記帯電防止剤、樹脂及び光重合開始剤以外に、これらのいずれにも該当しない、充填材、着色剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する前記添加剤としては、上述の粘着剤組成物(I-1)が含有する、その他の添加剤(ただし、帯電防止剤を除く)と同じものが挙げられる。
また、帯電防止組成物(VI-2)は、その流動性を向上させるために、溶媒を含有していてもよい。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する、前記溶媒としては、上述の粘着剤組成物(I-1)が含有する溶媒と同じものが挙げられる。
帯電防止組成物(VI-2)が含有する、帯電防止剤及び樹脂は、それぞれ、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
帯電防止組成物(VI-2)の、添加剤及び溶媒の含有量は、それぞれ、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0297】
<<帯電防止組成物(VI-2)の製造方法>>
帯電防止組成物(VI-2)は、前記帯電防止剤と、前記樹脂と、必要に応じてこれら以外の成分等の、帯電防止組成物(VI-2)を構成するための各成分を配合することで得られる。
帯電防止組成物(VI-2)は、配合成分が異なる点以外は、上述の粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0298】
○表面帯電防止層
前記表面帯電防止層は、保護膜形成用複合シートにおけるその配置位置が、前記背面帯電防止層とは異なるが、その構成自体は、前記背面帯電防止層と同じである。例えば、表面帯電防止層は、帯電防止組成物(VI-1)を用いて、先に説明した背面帯電防止層の形成方法と同じ方法で形成できる。そこで、表面帯電防止層の詳細な説明は省略する。
保護膜形成用複合シートが表面帯電防止層及び背面帯電防止層をともに備えている場合、これら表面帯電防止層及び背面帯電防止層は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0299】
◎中間層
前記中間層は、シート状又はフィルム状である。
先の説明のとおり、好ましい中間層としては、一方の面が剥離処理されている剥離性改善層が挙げられる。前記剥離性改善層としては、例えば、樹脂層と、前記樹脂層上に形成された剥離処理層と、を備えて構成された、複数層からなるものが挙げられる。保護膜形成用複合シート中で、剥離性改善層は、その剥離処理層を保護膜形成用フィルム側に向けて、配置されている。
【0300】
剥離性改善層のうち、前記樹脂層は、樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで作製できる。
そして、剥離性改善層は、前記樹脂層の一方の面を剥離処理することで製造できる。
【0301】
前記樹脂層の剥離処理は、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系又はワックス系等の、公知の各種剥離剤によって行うことができる。
前記剥離剤は、耐熱性を有する点では、アルキッド系、シリコーン系又はフッ素系の剥離剤であることが好ましい。
【0302】
前記樹脂層の構成材料である樹脂は、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
前記樹脂で好ましいものとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
【0303】
前記中間層は、剥離性改善層であるか否かによらず、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。例えば、中間層が剥離性改善層である場合には、前記樹脂層と、前記剥離処理層とは、いずれも、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。
【0304】
中間層の厚さは、その種類に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
例えば、剥離性改善層の厚さ(樹脂層及び剥離処理層の合計の厚さ)は、10~2000nmであることが好ましく、25~1500nmであることがより好ましく、50~1200nmであることが特に好ましい。剥離性改善層の厚さが前記下限値以上であることで、剥離性改善層の作用がより顕著となり、さらに、剥離性改善層の切断等の破損を抑制する効果がより高くなる。剥離性改善層の厚さが前記上限値以下であることで、後述する保護膜付き付き半導体チップ又は保護膜形成用フィルム付き半導体チップのピックアップ時に、これらチップを突き上げる力がこれらチップに伝達され易くなり、ピックアップをより容易に行うことができる。
【0305】
中間層は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、中間層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
例えば、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、中間層を介して光学的に検査するためには、中間層は透明であることが好ましい。
【0306】
◎保護膜形成用フィルム
前記保護膜形成用フィルムは、硬化によって保護膜となる。この保護膜は、半導体ウエハ又は半導体チップの裏面(換言すると、電極形成面とは反対側の面)を保護するためのものである。保護膜形成用フィルムは、軟質であり、貼付対象物に容易に貼付できる。
【0307】
本明細書において、「保護膜形成用フィルム」とは硬化前のものを意味し、「保護膜」とは、保護膜形成用フィルムを硬化させたものを意味する。
また、本明細書において、保護膜形成用フィルムが硬化した後であっても、支持シート及び保護膜形成用フィルムの硬化物(換言すると、支持シート及び保護膜)の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
【0308】
前記保護膜形成用フィルムは、例えば、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれかであってもよいし、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有していてもよいし、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有していなくてもよい。保護膜形成用フィルムが硬化性を有しない場合には、後述するような、保護膜形成用フィルムによる、保護膜形成用複合シートの半導体ウエハへの貼付が完了した段階で、保護膜形成用フィルムからの保護膜の形成が完了したものとみなす。
【0309】
保護膜形成用フィルムは、その硬化性の有無、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保護膜形成用フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0310】
保護膜形成用フィルムの厚さは、保護膜形成用フィルムの硬化性の有無、そして、硬化性である場合には、保護膜形成用フィルムが熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、1~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることが特に好ましい。保護膜形成用フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成できる。また、保護膜形成用フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが避けられる。
ここで、「保護膜形成用フィルムの厚さ」とは、保護膜形成用フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成用フィルムの厚さとは、保護膜形成用フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0311】
<<保護膜形成用組成物>>
保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、保護膜形成用フィルムは、その形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。保護膜形成用組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成用フィルムにおける前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
熱硬化性保護膜形成用フィルムは、熱硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成できる。なお、本明細書においては、保護膜形成用フィルムが、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有する場合、保護膜の形成に対して、保護膜形成用フィルムの熱硬化の寄与が、エネルギー線硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成用フィルムを熱硬化性のものとして取り扱う。反対に、保護膜の形成に対して、保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化の寄与が、熱硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成用フィルムをエネルギー線硬化のものとして取り扱う。
【0312】
保護膜形成用組成物の塗工は、例えば、上述の粘着剤組成物の塗工の場合と同じ方法で行うことができる。
【0313】
保護膜形成用組成物の乾燥条件は、保護膜形成用フィルムの硬化性の有無、そして、硬化性である場合には、保護膜形成用フィルムが熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、特に限定されない。ただし、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。ただし、熱硬化性保護膜形成用組成物は、この組成物自体と、この組成物から形成された熱硬化性保護膜形成用フィルムと、が熱硬化しないように、加熱乾燥させることが好ましい。
【0314】
以下、熱硬化性保護膜形成用フィルム及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムについて、順次説明する。
【0315】
○熱硬化性保護膜形成用フィルム
熱硬化性保護膜形成用フィルムを半導体ウエハの裏面に貼付し、熱硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り、特に限定されず、熱硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの熱硬化時の加熱温度は、100~200℃であることが好ましく、110~180℃であることがより好ましく、120~170℃であることが特に好ましい。そして、前記熱硬化時の加熱時間は、0.5~5時間であることが好ましく、0.5~3時間であることがより好ましく、1~2時間であることが特に好ましい。
【0316】
好ましい熱硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するものが挙げられる。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。また、熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0317】
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)>
好ましい熱硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)(本明細書においては、単に「組成物(III-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0318】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0319】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、フェノキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0320】
重合体成分(A)における前記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制される。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0321】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~70℃であることが好ましく、-30~50℃であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが前記下限値以上であることで、例えば、保護膜形成用フィルムの硬化物と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が適度に向上する。また、アクリル系樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルム及びその硬化物の被着体との接着力が向上する。
【0322】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0323】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0324】
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0325】
アクリル系樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
【0326】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0327】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0328】
本発明においては、重合体成分(A)として、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル系樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、樹脂膜の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0329】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0330】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0331】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0332】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0333】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、重合体成分(A)の含有量の割合)は、重合体成分(A)の種類によらず、5~85質量%であることが好ましく、5~80質量%であることがより好ましく、例えば、5~65質量%、5~50質量%、及び5~35質量%のいずれかであってもよい。
【0334】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III-1)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III-1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0335】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化させるための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0336】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0337】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0338】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0339】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた樹脂膜付き半導体チップの信頼性が向上する。
【0340】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0341】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化性、並びに硬化後の樹脂膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~950g/eqであることがより好ましい。
【0342】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0343】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0344】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0345】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0346】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は、軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0347】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0348】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0349】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~200質量部であることがより好ましく、例えば、1~100質量部、1~50質量部、1~25質量部、及び1~10質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0350】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、20~500質量部であることが好ましく、25~300質量部であることがより好ましく、30~150質量部であることがさらに好ましく、例えば、35~100質量部、及び40~80質量部のいずれかであってもよい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、例えば、保護膜形成用フィルムの硬化物と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。
【0351】
[硬化促進剤(C)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、組成物(III-1)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0352】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0353】
硬化促進剤(C)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性保護膜形成用フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなる。その結果、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性がより向上する。
【0354】
[充填材(D)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化して得られた保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0355】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましい。
【0356】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0357】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、充填材(D)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合)は、5~80質量%であることが好ましく、10~70質量%であることがより好ましく、例えば、20~65質量%、30~65質量%、及び40~65質量%のいずれかであってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、上記の、保護膜の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0358】
[カップリング剤(E)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化物は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0359】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0360】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0361】
カップリング剤(E)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0362】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0363】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0364】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物と、の反応物を意味する。前記アダクト体の例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
【0365】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0366】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0367】
架橋剤(F)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(A)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(F)がイソシアネート基を有し、重合体成分(A)が水酸基を有する場合、架橋剤(F)と重合体成分(A)との反応によって、熱硬化性保護膜形成用フィルムに架橋構造を簡便に導入できる。
【0368】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0369】
架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III-1)において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0370】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0371】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0372】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0373】
前記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0374】
重合に用いる前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0375】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0376】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、組成物(III-1)において、組成物(III-1)の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0377】
[光重合開始剤(H)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0378】
組成物(III-1)における光重合開始剤(H)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0379】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光重合開始剤(H)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0380】
光重合開始剤(H)を用いる場合、組成物(III-1)において、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0381】
[着色剤(I)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、着色剤(I)を含有していてもよい。
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0382】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0383】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0384】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する着色剤(I)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0385】
着色剤(I)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量を調節し、保護膜の光透過性を調節することにより、保護膜に対してレーザー印字を行った場合の印字視認性を調節できる。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量を調節することで、保護膜の意匠性を向上させたり、半導体ウエハの裏面の研削痕を見え難くすることもできる。これらの点を考慮すると、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、着色剤(I)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、着色剤(I)の含有量の割合)は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~7.5質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、着色剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、前記割合が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの光透過性の過度な低下が抑制される。
【0386】
[汎用添加剤(J)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0387】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0388】
[溶媒]
組成物(III-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III-1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0389】
組成物(III-1)が含有する溶媒は、組成物(III-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0390】
組成物(III-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0391】
<<熱硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>>
組成物(III-1)等の熱硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
熱硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0392】
○エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムを半導体ウエハの裏面に貼付し、エネルギー線硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化時における、エネルギー線の照度は、120~280mW/cm2であることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cm2であることが好ましい。
【0393】
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムとしては、エネルギー線硬化性成分(a)を含有するものが挙げられ、エネルギー線硬化性成分(a)及び充填材を含有するものが好ましい。
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
【0394】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)>
好ましいエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)(本明細書においては、単に「組成物(IV-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0395】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するとともに、硬化後に硬質の樹脂膜を形成するための成分でもある。
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0396】
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が反応してなるアクリル系樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0397】
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、半導体ウエハや半導体チップ等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0398】
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリル系モノマーと、前記官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよく、重合方法についても公知の方法を採用できる。
【0399】
前記官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0400】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0401】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0402】
前記官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマーが好ましい。
【0403】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0404】
前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0405】
また、前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0406】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0407】
前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する前記非アクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0408】
前記アクリル系重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量に対する、前記官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル系重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた前記アクリル系樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に容易に調節可能となる。
【0409】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記アクリル系重合体(a11)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0410】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおける、前記フィルムの総質量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合)は、1~70質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが特に好ましい。
【0411】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0412】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が、その1分子中に有する前記エネルギー線硬化性基の数は、特に限定されず、例えば、目的とする保護膜に求められる収縮率等の物性を考慮して、適宜選択できる。
例えば、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
【0413】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0414】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0415】
前記アクリル系樹脂(a1-1)において、前記アクリル系重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、保護膜の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0416】
前記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0417】
前記重合体(a1)が、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものである場合、前記重合体(a1)は、前記アクリル系重合体(a11)を構成するものとして説明した、上述のモノマーのいずれにも該当せず、かつ架橋剤と反応する基を有するモノマーが重合して、前記架橋剤と反応する基において架橋されたものであってもよいし、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来する、前記官能基と反応する基において、架橋されたものであってもよい。
【0418】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記重合体(a1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0419】
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)中の前記エネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0420】
前記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0421】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0422】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分を構成する樹脂にも該当するが、本発明においては前記化合物(a2)として取り扱う。
【0423】
前記化合物(a2)の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0424】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記化合物(a2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0425】
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、前記エネルギー線硬化性成分(a)として前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
前記重合体(b)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0426】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0427】
アクリル系重合体(b-1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0428】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、先に説明したとおりである。
【0429】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、先に説明した、アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマー(アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等)と同じものが挙げられる。
【0430】
前記環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0431】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0432】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0433】
少なくとも一部が架橋剤によって架橋された、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、前記重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤と反応したものが挙げられる。
前記反応性官能基は、架橋剤の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物である場合には、前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤がエポキシ系化合物である場合には、前記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、半導体ウエハや半導体チップの回路の腐食を防止するという点では、前記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0434】
前記反応性官能基を有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、少なくとも前記反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b-1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、前記アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、前記反応性官能基を有するものを用いればよい。反応性官能基として水酸基を有する前記重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた前記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が前記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
【0435】
反応性官能基を有する前記重合体(b)において、これを構成する構成単位の全量に対する、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0436】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、組成物(IV-1)の造膜性がより良好となる点から、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0437】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0438】
組成物(IV-1)としては、前記重合体(a1)及び前記化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。そして、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに前記(a1)を含有することも好ましい。また、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有せず、前記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0439】
組成物(IV-1)が、前記重合体(a1)、前記化合物(a2)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、組成物(IV-1)において、前記化合物(a2)の含有量は、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0440】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおける、前記フィルムの総質量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合)は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。エネルギー線硬化性成分の含有量の前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0441】
組成物(IV-1)は、前記エネルギー線硬化性成分以外に、目的に応じて、熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0442】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤としては、それぞれ、組成物(III-1)における熱硬化性成分(B)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、光重合開始剤(H)、着色剤(I)及び汎用添加剤(J)と同じものが挙げられる。
【0443】
例えば、前記エネルギー線硬化性成分及び熱硬化性成分を含有する組成物(IV-1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、このエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムから形成された樹脂膜の強度も向上する。
また、前記エネルギー線硬化性成分及び着色剤を含有する組成物(IV-1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、先に説明した熱硬化性保護膜形成用フィルムが着色剤(I)を含有する場合と同様の効果を発現する。
【0444】
組成物(IV-1)において、前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤は、それぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0445】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0446】
組成物(IV-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(IV-1)が含有する溶媒としては、例えば、組成物(III-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(IV-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
組成物(IV-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0447】
<<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>>
組成物(IV-1)等のエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0448】
◎剥離フィルム
前記剥離フィルムは、前記保護膜形成用複合シートが、その保護膜形成用フィルム側の最表層として備えていてもよい、任意の構成要素である。保護膜形成用フィルム上に剥離フィルムを備えた状態となっている保護膜形成用複合シートにおいて、この剥離フィルムを保護膜形成用フィルムから取り除いたとき、保護膜形成用複合シートは剥離帯電が抑制される。
【0449】
前記剥離フィルムは、公知のものでよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート製フィルム等の樹脂製フィルムの片面が、シリコーン処理等の剥離処理を施されたものが挙げられる。
前記剥離フィルムは、上述の中間層としての剥離性改善層と、同様の構成を有していてもよい。
【0450】
前記剥離フィルムの厚さは、特に限定されず、例えば、10~1000μm等であってもよい。
【0451】
前記保護膜形成用複合シートの一実施形態としては、例えば、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に形成された保護膜形成用フィルムと、を備えた、保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用複合シート中の、前記支持シート側の最表層の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下であり、70℃で1分加熱した後の前記保護膜形成用複合シートから、大きさが10cm×20cmである試験片を切り出し、前記試験片中の前記支持シート側の最表層を、ポーラステーブルの表面に接触させることにより、前記試験片を前記ポーラステーブル上に載置し、大きさが6cm×10cm×2cmであり、質量が1kgである錘の、大きさが6cm×10cmの面を、前記試験片中の保護膜形成用フィルムに接触させて、前記錘を前記保護膜形成用フィルム上に載置し、前記試験片の前記ポーラステーブルとの接触面に対して平行な方向に、前記錘を10mm/minの速度で移動させ、前記錘の移動開始直前における荷重を測定したとき、前記荷重の測定値が20N以下であり、前記支持シートが、基材と、前記基材の片面又は両面上に形成された帯電防止層と、を備えているか、又は、前記支持シートが、帯電防止層として、帯電防止性を有する基材を備え、前記帯電防止層は、ピリミジニウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩、イミダゾリウム塩、モルホリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート、ポリピロール及びカーボンナノチューブからなる群より選択される1種又は2種以上を含有するものが挙げられる。
【0452】
前記保護膜形成用複合シートの一実施形態としては、例えば、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に形成された保護膜形成用フィルムと、を備えた、保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用複合シート中の、前記支持シート側の最表層の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下であり、70℃で1分加熱した後の前記保護膜形成用複合シートから、大きさが10cm×20cmである試験片を切り出し、前記試験片中の前記支持シート側の最表層を、ポーラステーブルの表面に接触させることにより、前記試験片を前記ポーラステーブル上に載置し、大きさが6cm×10cm×2cmであり、質量が1kgである錘の、大きさが6cm×10cmの面を、前記試験片中の保護膜形成用フィルムに接触させて、前記錘を前記保護膜形成用フィルム上に載置し、前記試験片の前記ポーラステーブルとの接触面に対して平行な方向に、前記錘を10mm/minの速度で移動させ、前記錘の移動開始直前における荷重を測定したとき、前記荷重の測定値が20N以下であり、前記支持シートが、基材と、前記基材の片面又は両面上に形成された帯電防止層と、を備えているか、又は、前記支持シートが、帯電防止層として、帯電防止性を有する基材を備え、前記帯電防止層は、ピリミジニウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩、イミダゾリウム塩、モルホリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート、ポリピロール及びカーボンナノチューブからなる群より選択される1種又は2種以上を含有し、前記基材の片面又は両面上に形成された帯電防止層の合計の厚さが10~200nmであるものが挙げられる。
【0453】
前記保護膜形成用複合シートの一実施形態としては、例えば、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に形成された保護膜形成用フィルムと、を備えた、保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用複合シート中の、前記支持シート側の最表層の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下であり、70℃で1分加熱した後の前記保護膜形成用複合シートから、大きさが10cm×20cmである試験片を切り出し、前記試験片中の前記支持シート側の最表層を、ポーラステーブルの表面に接触させることにより、前記試験片を前記ポーラステーブル上に載置し、大きさが6cm×10cm×2cmであり、質量が1kgである錘の、大きさが6cm×10cmの面を、前記試験片中の保護膜形成用フィルムに接触させて、前記錘を前記保護膜形成用フィルム上に載置し、前記試験片の前記ポーラステーブルとの接触面に対して平行な方向に、前記錘を10mm/minの速度で移動させ、前記錘の移動開始直前における荷重を測定したとき、前記荷重の測定値が20N以下であり、前記支持シートが、基材と、前記基材の片面又は両面上に形成された帯電防止層と、を備えているか、又は、前記支持シートが、帯電防止層として、帯電防止性を有する基材を備え、前記帯電防止層は、ピリミジニウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩、イミダゾリウム塩、モルホリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート、ポリピロール及びカーボンナノチューブからなる群より選択される1種又は2種以上を含有し、前記帯電防止性を有する基材は、前記帯電防止剤と樹脂とを含み、前記帯電防止性を有する基材において、前記帯電防止剤及び樹脂の合計含有量に対する、前記帯電防止剤の含有量の割合が、7.5質量%以上であるものが挙げられる。
【0454】
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層することで製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0455】
例えば、支持シートを製造するときに、基材上又は帯電防止性基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上又は帯電防止性基材上に、上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。この方法は、基材又は帯電防止性基材の前記凹凸面上に粘着剤層を積層する場合と、基材又は帯電防止性基材の前記平滑面上に粘着剤層を積層する場合と、のいずれにおいても適用できる。そして、この方法は、特に、前記凹凸面上に粘着剤層を積層する場合に好適である。その理由は、この方法を適用した場合に、基材又は帯電防止性基材の前記凹凸面と、粘着剤層と、の間において、空隙部の発生を抑制する高い効果が得られるためである。
【0456】
支持シートを製造するときに、基材上又は帯電防止性基材上に、背面帯電防止層又は表面帯電防止層を積層する場合も同様である。
この場合には、粘着剤組成物に代えて帯電防止組成物(VI-1)を用いる点以外は、上述の粘着剤層を積層する方法と同じ方法で、基材上又は帯電防止性基材上に、背面帯電防止層又は表面帯電防止層を積層できる。
【0457】
一方、基材上又は帯電防止性基材上に粘着剤層を積層する場合には、上述の様に、基材上又は帯電防止性基材上に粘着剤組成物を塗工する方法に代えて、以下の方法も適用できる。
すなわち、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材又は帯電防止性基材の一方の表面と貼り合わせる方法でも、粘着剤層を基材上又は帯電防止性基材上に積層できる。そして、この方法は、特に、前記平滑面上に粘着剤層を積層する場合に好適である。その理由は、この方法を適用した場合に、基材又は帯電防止性基材の前記平滑面と、粘着剤層と、の間であれば、空隙部の発生を抑制する高い効果が得られるためである。
【0458】
支持シートを製造するときに、剥離フィルムを用いて、基材上又は帯電防止性基材上に、背面帯電防止層又は表面帯電防止層を積層する場合も同様である。
この場合には、粘着剤組成物に代えて帯電防止組成物(VI-1)を用いる点以外は、上述の、剥離フィルムを用いて粘着剤層を積層する方法と同じ方法で、基材上又は帯電防止性基材上に、背面帯電防止層又は表面帯電防止層を積層できる。
【0459】
ここまでは、基材上又は帯電防止性基材上に、粘着剤層、背面帯電防止層又は表面帯電防止層を積層する場合を例に挙げたが、上述の方法は、例えば、基材上又は帯電防止性基材上に中間層を積層する場合など、他の層を積層する場合にも適用できる。
【0460】
一方、例えば、基材上又は帯電防止性基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成用フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成用フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成用フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、基材上に積層済みのいずれかの層(以下、「第1層」と略記する)上に、新たな層(以下、「第2層」と略記する)を形成して、連続する2層の積層構造(換言すると、第1層及び第2層の積層構造)を形成する場合には、前記第1層上に、前記第2層を形成するための組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させる方法が適用できる。
ただし、第2層は、これを形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、第1層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
ここでは、粘着剤層上に保護膜形成用フィルムを積層する場合を例に挙げたが、例えば、粘着剤層上に中間層を積層する場合、中間層上に保護膜形成用フィルムを積層する場合、表面帯電防止層上に粘着剤層を積層する場合など、対象となる積層構造は、任意に選択できる。
【0461】
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
【0462】
なお、保護膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、保護膜形成用フィルム)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることで、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートが得られる。
【0463】
◇半導体チップの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、半導体チップの製造に用いることができる。
このときの半導体チップの製造方法としては、例えば、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程(以下、「貼付工程」と略記することがある)と、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムを硬化させて、保護膜を形成する工程(以下、「保護膜形成工程」と略記することがある)と、前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜又は保護膜形成用フィルムを切断して、支持シートと、前記支持シートの一方の面(換言すると第1面)上に設けられた、切断後の前記保護膜又は保護膜形成用フィルムと、前記切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムの前記支持シート側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)上に設けられた半導体チップと、を備えた積層体を作製する工程(以下、「積層体作製工程」と略記することがある)と、前記積層体中の、前記切断後の保護膜又は保護膜形成用フィルムを備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップする工程(以下、「ピックアップ工程」と略記することがある)と、を有し、さらに、前記積層体作製工程と、前記ピックアップ工程と、の間に、テーブル上で固定されている前記積層体を、前記テーブルから引き離す工程(以下、「積層体引き離し工程」と略記することがある)を有し、前記積層体引き離し工程において、テーブル上で固定されている前記積層体は、その前記支持シート側の最表層の表面において前記テーブルに接触しており、前記テーブルの前記積層体の固定面がセラミック製又はステンレス鋼製である、ものが挙げられる。
前記製造方法においては、前記貼付工程後に、前記保護膜形成工程、積層体作製工程、積層体引き離し工程及びピックアップ工程を行う。そして、前記積層体作製工程、積層体引き離し工程及びピックアップ工程を、この順に行うが、保護膜形成工程は、貼付工程後であれば、いずれの段階で行ってもよい。また、保護膜形成用フィルムが硬化性を有しない場合には、前記保護膜形成工程は行わない。
【0464】
前記保護膜形成用複合シートの使用対象である半導体ウエハの厚さは、特に限定されないが、後述する半導体チップへの分割がより容易となる点では、30~1000μmであることが好ましく、100~400μmであることがより好ましい。
【0465】
以下、図面を参照しながら、上述の製造方法について説明する。
図14~
図17は、本発明の一実施形態に係る半導体チップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。ここでは、保護膜形成用複合シートが
図1に示すものである場合の製造方法を例に挙げて、説明する。
【0466】
本実施形態の製造方法(本明細書においては、「製造方法(1)」と称することがある)は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程(貼付工程)と、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムを硬化させて、保護膜を形成する工程(保護膜形成工程)と、前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜を切断して、支持シートと、前記支持シートの一方の面(第1面)上に設けられた、切断後の前記保護膜と、前記切断後の保護膜の前記支持シート側とは反対側の面(第1面)上に設けられた半導体チップと、を備えた積層体(以下、「第1積層体」と略記することがある)を作製する工程(以下、「第1積層体作製工程」と略記することがある)と、前記第1積層体中の、前記切断後の保護膜を備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップする工程(ピックアップ工程)と、を有し、さらに、前記第1積層体作製工程と、前記ピックアップ工程と、の間に、テーブル上で固定されている前記第1積層体を、前記テーブルから引き離す工程(以下、「積層体引き離し工程」と略記することがある)を有し、前記積層体引き離し工程において、テーブル上で固定されている前記第1積層体は、その前記支持シート側の最表層の表面において前記テーブルに接触しており、前記テーブルの前記第1積層体の固定面がセラミック製又はステンレス鋼製となっている。
図14~
図15は、このような製造方法(1)の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
【0467】
製造方法(1)において、
図1に示す保護膜形成用複合シート101を用いる場合、
図14Aに示すように、保護膜形成用フィルム101から剥離フィルム15を取り除く。
なお、ここでは便宜上、剥離フィルム15を取り除いた後の保護膜形成用複合シートも、符号101を付して示している。
【0468】
製造方法(1)の前記貼付工程においては、
図14Bに示すように、半導体ウエハ9の裏面9bに、保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成用フィルム13を貼付する。
貼付工程においては、保護膜形成用フィルム13を加熱することにより軟化させて、半導体ウエハ9に貼付してもよい。その場合、例えば、保護膜形成用フィルム13を、70℃で1分加熱した後、直ちに半導体ウエハ9に貼付してもよい。
なお、ここでは、半導体ウエハ9において、回路面上のバンプ等の図示を省略している。
【0469】
製造方法(1)の貼付工程後は、前記保護膜形成工程において、半導体ウエハ9に貼付した後の保護膜形成用フィルム13を硬化させて、
図14Cに示すように、保護膜13’を形成する。このとき、保護膜形成用フィルム13が熱硬化性である場合には、保護膜形成用フィルム13を加熱することにより、保護膜13’を形成する。保護膜形成用フィルム13がエネルギー線硬化性である場合には、支持シート10を介して保護膜形成用フィルム13にエネルギー線を照射することにより、保護膜13’を形成する。
なお、ここでは、保護膜形成用フィルム13が保護膜13’となった後の保護膜形成用複合シートを、符号101’で示している。これは、以降の図においても同様である。
【0470】
保護膜形成工程において、保護膜形成用フィルム13の硬化条件、すなわち、熱硬化時の加熱温度及び加熱時間、並びに、エネルギー線硬化時のエネルギー線の照度及び光量は、先に説明したとおりである。
【0471】
製造方法(1)の保護膜形成工程後は、前記第1積層体作製工程において、半導体ウエハ9を分割し、保護膜13’を切断して、
図14Dに示すように、支持シート10と、支持シート10の第1面10a上に設けられた、切断後の保護膜130’と、切断後の保護膜130’の第1面130a’上に設けられた半導体チップ9’と、を備えた第1積層体901を作製する。このとき、保護膜13’は半導体チップ9’の周縁部に沿った位置で切断(分割)される。第1積層体901中、切断後の保護膜130’を備えた半導体チップ9’は、複数個存在する。
【0472】
前第1積層体作製工程において、半導体ウエハ9を分割し、保護膜13’を切断する方法は、公知の方法でよい。
このような方法としては、例えば、ダイシングブレードを用いて、半導体ウエハ9を保護膜13’ごと分割(切断)する方法;半導体ウエハ9の内部に設定された焦点に集束するようにレーザー光を照射して、半導体ウエハ9の内部に改質層を形成し、次いで、この改質層が形成され、かつ裏面9bには保護膜13’が貼付された半導体ウエハ9を、この保護膜13’とともに、保護膜13’の表面方向にエキスパンドして、保護膜13’を切断するとともに、改質層の部位において半導体ウエハ9を分割する方法等が挙げられる。
【0473】
前記第1積層体作製工程においては、半導体ウエハ9に貼付されている保護膜形成用複合シート101’をテーブル7に固定して、第1積層体901の作製を行うことができる。ここで、符号7aは、テーブル7が固定対象物(ここでは、保護膜形成用複合シート101’)を固定するための面、すなわち固定面を示す。テーブル7上で固定されている第1積層体901は、その中の背面帯電防止層17の第2面17bにおいて、テーブル7に接触している。テーブル7の固定面7aと、保護膜形成用複合シート101’中の背面帯電防止層17の第2面とは、互いに密着している。
テーブル7の固定面7aは、セラミック製又はステンレス鋼製である。
【0474】
テーブル7としては、例えば、その厚さ方向において貫通する空隙部を有しており、テーブル7の固定対象物と接触している側、すなわち固定面7a側、とは反対側が減圧されることにより、前記固定対象物をテーブル7上で吸着し、固定できるもの(すなわち、吸着テーブル)が挙げられる。
なお、
図14以降の図において、テーブルとしては、その固定対象物の固定部位のみを示しており、その他の構成の図示は省略している。
【0475】
テーブル7の固定面7aにおいては、先の説明のとおり、凹凸差が5μm以下であることが好ましい。
【0476】
製造方法(1)の第1積層体作製工程後は、前記ピックアップ工程に先立ち、前記積層体引き離し工程において、
図15Aに示すように、テーブル7上で固定されている第1積層体901を、テーブル7から引き離す。このとき、例えば、テーブル7として吸着テーブルを用いた場合には、減圧を解除することにより、第1積層体901のテーブル7上での固定状態を解除できる。
保護膜形成用複合シート101’中の、背面帯電防止層17の第2面17bが、上述の表面抵抗率及び静止摩擦力の条件を満たすことにより、積層体引き離し工程においては、帯電による半導体チップ9’中の回路の破壊が抑制される。
【0477】
前記積層体引き離し工程を行う理由は、第1積層体作製工程の後、少なくともピックアップ工程を行うために、第1積層体901を搬送する必要があるためである。このような第1積層体901の搬送を必要とする工程としては、ピックアップ工程以外の他の工程も該当し得る。前記他の工程としては、以下に示すものが挙げられる。
【0478】
例えば、上述の半導体ウエハ9の分割と、保護膜13’の切断を行ったとき(すなわち、ダイシングを行ったとき)に、半導体ウエハ9又は保護膜13’に由来する切削屑が生じ、この切削屑が第1積層体901に付着することがある。本実施形態の第1積層体作製工程とピックアップ工程との間においては、第1積層体901を水で洗浄し、この切削屑を洗い流して取り除く工程(以下、「洗浄工程」と略記することがある)を、前記他の工程として行うことができる。
【0479】
前記洗浄工程においては、
図15Bに示すように、搬送した第1積層体901をテーブル6上に固定し、この状態の第1積層体901を水で洗浄する。すなわち、この場合のテーブル6は、洗浄用テーブルである。
洗浄工程においては、洗浄用テーブルとしてのテーブル6は、その固定面6aに対して直交する方向を回転軸の軸方向として、回転可能となっていてもよい。このようなテーブル6を用いる場合には、テーブル6を回転させながら、第1積層体901を水で洗浄してもよい。回転可能なテーブル6は、このように回転可能である点を除けば、上述のテーブル7と同様であってよい。例えば、テーブル6は、その厚さ方向において貫通する空隙部を有しており、テーブル6の固定対象物と接触している側、すなわち固定面6a側、とは反対側が減圧されることにより、前記固定対象物をテーブル6上で吸着し、固定できるもの(すなわち、吸着テーブル)であってもよい。
【0480】
前記洗浄工程においては、第1積層体作製工程の場合と同様に、テーブル6上で固定されている第1積層体901は、その中の背面帯電防止層17の第2面17bにおいて、テーブル6に接触している。テーブル6の固定面6aと、保護膜形成用複合シート101’中の背面帯電防止層17の第2面とは、互いに密着している。
【0481】
前記洗浄工程を行った場合、洗浄工程後は、前記ピックアップ工程に先立ち、
図15Cに示すように、再度、積層体引き離し工程を行い、テーブル6上で固定されている第1積層体901を、テーブル6から引き離す。このとき、例えば、テーブル6として吸着テーブルを用いた場合には、減圧を解除することにより、第1積層体901のテーブル6上での固定状態を解除できる。
本工程においても、保護膜形成用複合シート101’中の、背面帯電防止層17の第2面17bが、上述の表面抵抗率及び静止摩擦力の条件を満たすことにより、帯電による半導体チップ9’中の回路の破壊が抑制される。
【0482】
前記洗浄工程を行った場合、本実施形態の第1積層体作製工程とピックアップ工程との間においては、洗浄後の第1積層体901を乾燥させ、前工程での洗浄時に付着した水を取り除く工程(以下、「乾燥工程」と略記することがある)を、前記他の工程として行うことができる。前記乾燥工程を洗浄工程とは異なる場所で行う必要がある場合、洗浄工程後の第1積層体901を搬送する必要がある。
【0483】
前記乾燥工程においても、
図15Bに示すように、第1積層体901をテーブル6上に固定し、この状態の第1積層体901を乾燥させる。すなわち、この場合のテーブル6は、乾燥用テーブルである。なお、本実施形態においては、乾燥工程において、洗浄工程で用いたテーブル6を引き続き用いてもよいし、洗浄工程で用いたものとは別途にテーブル6を用いてもよい。乾燥工程において、洗浄工程で用いたものとは別途にテーブル6を用いる場合、乾燥工程で用いるテーブル6の種類は、洗浄工程で用いたテーブル6の種類と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
乾燥工程における、テーブル6上での第1積層体901の固定方法は、前記洗浄工程での固定方法と同様である。
【0484】
前記乾燥工程を行った場合、乾燥工程後は、上述の洗浄工程後の場合と同様に、前記ピックアップ工程に先立ち、
図15Cに示すように、再度、積層体引き離し工程を行い、テーブル6上で固定されている第1積層体901を、テーブル6から引き離す。少なくとも、後述するピックアップ工程は、前記乾燥工程とは異なる場所で行う必要があり、本実施形態においては、乾燥工程後の第1積層体901を搬送する必要がある。
本工程においても、保護膜形成用複合シート101’中の、背面帯電防止層17の第2面17bが、上述の表面抵抗率及び静止摩擦力の条件を満たすことにより、帯電による半導体チップ9’中の回路の破壊が抑制される。
【0485】
製造方法(1)の前記他の工程後は、前記ピックアップ工程において、
図15Dに示すように、搬送した第1積層体901中の、切断後の保護膜130’を備えた半導体チップ9’を、支持シート10から引き離してピックアップする。ここでは、ピックアップの方向を矢印Iで示しているが、これは以降の図においても同様である。半導体チップ9’を保護膜130’ごと支持シート10から引き離すための引き離し手段8としては、真空コレット等が挙げられる。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜付き半導体チップとして得られる。
製造方法(1)で得られた保護膜付き半導体チップにおいては、回路の破壊が抑制されている。
【0486】
製造方法(1)の一例としては、前記貼付工程、保護膜形成工程、第1積層体作製工程、積層体引き離し工程、洗浄工程、積層体引き離し工程、乾燥工程、積層体引き離し工程及びピックアップ工程を、この順に有するものが挙げられる。
【0487】
製造方法(1)においては、保護膜形成工程後に積層体作製工程(すなわち、第1積層体作製工程)を行うが、本実施形態に係る半導体チップの製造方法においては、保護膜形成工程を行わずに積層体作製工程を行い、積層体作製工程後に保護膜形成工程を行ってもよい(本実施形態を「製造方法(2)」と称することがある)。
【0488】
すなわち、本実施形態の製造方法(製造方法(2))は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程(貼付工程)と、前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜形成用フィルムを切断して、支持シートと、前記支持シートの一方の面(第1面)上に設けられた、切断後の前記保護膜形成用フィルムと、前記切断後の保護膜形成用フィルムの前記支持シート側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)上に設けられた半導体チップと、を備えた積層体(以下、「第2積層体」と略記することがある)を作製する工程(以下、「第2積層体作製工程」と略記することがある)と、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルム(切断後の保護膜形成用フィルム)を硬化させて、保護膜を形成し、支持シートと、前記支持シートの第1面上に設けられた、切断後(切断済み)の前記保護膜と、前記切断後の保護膜の第1面上に設けられた半導体チップと、を備えた第1積層体を得る工程(保護膜形成工程)と、前記第1積層体中の、前記切断後の保護膜を備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップする工程(ピックアップ工程)と、を有し、さらに、前記第2積層体作製工程と、前記ピックアップ工程と、の間に、テーブル上で固定されている前記第2積層体又は第1積層体を、前記テーブルから引き離す工程(以下、「積層体引き離し工程」と略記することがある)を有し、前記積層体引き離し工程において、テーブル上で固定されている前記第2積層体又は第1積層体は、その前記支持シート側の最表層の表面において前記テーブルに接触しており、前記テーブルの前記第2積層体又は第1積層体の固定面がセラミック製又はステンレス鋼製となっている。
図16は、このような製造方法(2)の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
【0489】
製造方法(2)においても、
図1に示す保護膜形成用複合シート101を用いる場合、
図16Aに示すように、製造方法(1)の場合と同様に、保護膜形成用フィルム101から剥離フィルム15を取り除く。
【0490】
製造方法(2)の前記貼付工程も、
図16Bに示すように、製造方法(1)の貼付工程と同様の方法で(
図14Bに示すように)行うことができる。
【0491】
製造方法(2)の貼付工程後は、前記第2積層体作製工程において、半導体ウエハ9を分割し、保護膜形成用フィルム13を切断して、
図16Cに示すように、支持シート10と、支持シート10の第1面10a上に設けられた、切断後の保護膜形成用フィルム130と、切断後の保護膜形成用フィルム130の第1面130a上に設けられた半導体チップ9’と、を備えた第2積層体902を作製する。このとき、保護膜形成用フィルム13は半導体チップ9’の周縁部に沿った位置で切断(分割)される。第2積層体902中、切断後の保保護膜形成用フィルム130を備えた半導体チップ9’は、複数個存在する。
【0492】
製造方法(2)の第2積層体作製工程後は、前記保護膜形成工程において、切断後の保護膜形成用フィルム130を硬化させて、
図16Dに示すように、半導体チップ9’に保護膜130’を形成する。これにより、支持シート10と、支持シート10の第1面10a上に設けられた、切断後の保護膜130’と、切断後の保護膜130’の第1面130a’上に設けられた半導体チップ9’と、を備えた第1積層体901を得る。
製造方法(2)における保護膜形成工程は、製造方法(1)における保護膜形成工程と同様の方法で行うことができる。製造方法(2)の保護膜形成工程で得られる第1積層体901は、製造方法(1)の第1積層体作製工程で得られる第1積層体901と同じである。
本工程を行うことにより、製造方法(1)の第1積層体作製工程終了後、すなわち、
図14Dと同じ状態の保護膜付き半導体チップが得られる。
【0493】
製造方法(2)の第2積層体作製工程後は、前記ピックアップ工程に先立ち、前記積層体引き離し工程において、テーブル上で固定されている第1積層体又は第2積層体を、前記テーブルから引き離す。
【0494】
例えば、前記第2積層体作製工程後には、保護膜形成工程を行うために、第2積層体902の搬送が必要である。また、前記第2積層体作製工程後には、半導体ウエハ9又は保護膜形成用フィルム13に由来し、第2積層体902に付着している切削屑を、第2積層体902から洗い流して取り除く工程(すなわち洗浄工程);前記洗浄工程による洗浄後の第2積層体902を乾燥させ、洗浄時に付着した水を取り除く工程(すなわち乾燥工程)を行うことができ、これら工程の前にも第2積層体902の搬送が必要である。これら洗浄工程及び乾燥工程、並びに各工程間の第2積層体902の搬送は、第1積層体901に代えて第2積層体902を用いる点を除けば、製造方法(1)の場合と同じ方法で行うことができる。
このような第2積層体902の搬送に先立ち、第2積層体902を前記テーブルから引き離すときには、製造方法(1)において、
図15Cに示すように、テーブル6上で固定されている第1積層体901を、テーブル6から引き離す場合と同じ方法を、第2積層体902に適用できる。そして、この場合にも、製造方法(1)の場合と同様に、保護膜形成用複合シート101中の、背面帯電防止層17の第2面17bが、上述の表面抵抗率及び静止摩擦力の条件を満たすことにより、帯電による半導体チップ9’中の回路の破壊が抑制される。
【0495】
一方、例えば、保護膜形成工程後は、前記ピックアップ工程を行うために、第1積層体901の搬送が必要である。このときの第1積層体901の搬送は、製造方法(1)の場合と同じ方法で行うことができる。そして、第1積層体901を前記テーブルから引き離すときには、製造方法(1)において、
図15Cに示すように、テーブル6上で固定されている第1積層体901を、テーブル6から引き離す場合と同じ方法を適用すればよい。この場合にも、製造方法(1)の場合と同様に、保護膜形成用複合シート101’中の、背面帯電防止層17の第2面17bが、上述の表面抵抗率及び静止摩擦力の条件を満たすことにより、帯電による半導体チップ9’中の回路の破壊が抑制される。
【0496】
製造方法(2)の前記ピックアップ工程においては、
図16Eに示すように、第1積層体901中の、切断後の保護膜130’を備えた半導体チップ9’を、支持シート10から引き離してピックアップする。
製造方法(2)におけるピックアップ工程は、製造方法(1)におけるピックアップ工程と同様の方法で(
図15Dに示すように)行うことができる。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜付き半導体チップとして得られる。
製造方法(2)で得られた保護膜付き半導体チップにおいても、回路の破壊が抑制されている。
【0497】
製造方法(2)の一例としては、貼付工程、第2積層体作製工程、積層体引き離し工程、洗浄工程、積層体引き離し工程、乾燥工程、積層体引き離し工程、保護膜形成工程、積層体引き離し工程及びピックアップ工程を、この順に有するものが挙げられる。
【0498】
製造方法(1)及び(2)においては、保護膜形成工程後にピックアップ工程を行うが、本実施形態に係る半導体チップの製造方法においては、保護膜形成工程を行わずにピックアップ工程までを行い、ピックアップ工程後に保護膜形成工程を行ってもよい(本実施形態を「製造方法(3)」と称することがある)。
すなわち、本実施形態の製造方法(製造方法(3))は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程(貼付工程)と、前記半導体ウエハを分割し、前記保護膜形成用フィルムを切断して、支持シートと、前記支持シートの一方の面(第1面)上に設けられた、切断後の前記保護膜形成用フィルムと、前記切断後の保護膜形成用フィルムの前記支持シート側とは反対側の面(第1面)上に設けられた半導体チップと、を備えた積層体(第2積層体)を作製する工程(第2積層体作製工程)と、前記第2積層体中の、前記切断後の保護膜形成用フィルムを備えた半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップする工程(ピックアップ工程)と、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルム(切断及びピックアップ後の保護膜形成用フィルム)を硬化させて、保護膜を形成し、切断後(切断済み)の前記保護膜を備えた半導体チップを得る工程(保護膜形成工程)と、を有し、さらに、前記第2積層体作製工程と、前記ピックアップ工程と、の間に、テーブル上で固定されている前記第2積層体を、前記テーブルから引き離す工程(以下、「積層体引き離し工程」と略記することがある)を有し、前記積層体引き離し工程において、テーブル上で固定されている前記第2積層体は、その前記支持シート側の最表層の表面において前記テーブルに接触しており、前記テーブルの前記第2積層体の固定面がセラミック製又はステンレス鋼製となっている。
図17は、このような半導体チップの製造方法の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
【0499】
製造方法(3)においても、
図1に示す保護膜形成用複合シート101を用いる場合、
図17Aに示すように、製造方法(1)の場合と同様に、保護膜形成用フィルム101から剥離フィルム15を取り除く。
【0500】
製造方法(3)の前記貼付工程及び第2積層体作製工程は、それぞれ、
図17B~
図17Cに示すように、製造方法(2)の貼付工程及び第2積層体作製工程と同じ方法で(
図15B~
図15Cに示すように)行うことができる。
【0501】
製造方法(3)の第2積層体作製工程後は、前記ピックアップ工程に先立ち、前記積層体引き離し工程において、テーブル上で固定されている第2積層体を、前記テーブルから引き離す。
【0502】
例えば、前記第2積層体作製工程後には、前記ピックアップ工程を行うために、第2積層体902の搬送が必要である。また、前記第2積層体作製工程後には、半導体ウエハ9又は保護膜形成用フィルム13に由来し、第2積層体902に付着している切削屑を、第2積層体902から洗い流して取り除く工程(すなわち洗浄工程);前記洗浄工程による洗浄後の第2積層体902を乾燥させ、洗浄時に付着した水を取り除く工程(すなわち乾燥工程)を行うことができ、これら工程の前にも第2積層体902の搬送が必要である。これら洗浄工程及び乾燥工程、並びに各工程間の第2積層体902の搬送は、第1積層体901に代えて第2積層体902を用いる点を除けば、製造方法(1)の場合と同じ方法で行うことができる。
このような第2積層体902の搬送に先立ち、第2積層体902を前記テーブルから引き離すときには、製造方法(1)において、
図15Cに示すように、テーブル6上で固定されている第1積層体901を、テーブル6から引き離す場合と同じ方法を、第2積層体902に適用できる。そして、この場合にも、製造方法(1)の場合と同様に、保護膜形成用複合シート101中の、背面帯電防止層17の第2面17bが、上述の表面抵抗率及び静止摩擦力の条件を満たすことにより、帯電による半導体チップ9’中の回路の破壊が抑制される。
【0503】
製造方法(3)の前記ピックアップ工程においては、
図17Dに示すように、第2積層体902中の、切断後の保護膜形成用フィルム130を備えた半導体チップ9’を、支持シート10から引き離してピックアップする。
製造方法(3)におけるピックアップ工程は、製造方法(1)及び(2)におけるピックアップ工程と同様の方法で(
図15D及び
図16Eに示すように)行うことができる。
【0504】
製造方法(3)の前記保護膜形成工程においては、ピックアップ後の保護膜形成用フィルム130を硬化させて、
図17Eに示すように、保護膜130’を形成する。
保護膜形成用フィルム13が熱硬化性である場合には、製造方法(3)における保護膜形成工程は、製造方法(1)及び(2)における保護膜形成工程と同様の方法で行うことができる。保護膜形成用フィルム13がエネルギー線硬化性である場合には、製造方法(3)における保護膜形成工程は、保護膜形成用フィルム130へのエネルギー線の照射を、支持シート10を介して行う必要がない点以外は、製造方法(1)及び(2)における保護膜形成工程と同様の方法で行うことができる。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜付き半導体チップとして得られる。
製造方法(3)で得られた保護膜付き半導体チップにおいても、回路の破壊が抑制されている。
【0505】
製造方法(3)の一例としては、貼付工程、第2積層体作製工程、積層体引き離し工程、洗浄工程、積層体引き離し工程、乾燥工程、積層体引き離し工程、ピックアップ工程及び保護膜形成工程を、この順に有するものが挙げられる。
【0506】
製造方法(1)~(3)においては、先に説明したとおり、半導体ウエハ9を分割して半導体チップ9’を得る方法として、ダイシングブレードを用いずに、半導体ウエハ9の内部に改質層を形成し、この改質層の部位において半導体ウエハ9を分割する方法を適用できる。この場合、前記第1積層体作製工程又は第2積層体作製工程のうち、半導体ウエハ9の内部に改質層を形成する工程は、改質層の部位において半導体ウエハ9を分割する工程より前の段階であれば、いずれの段階で行ってもよく、例えば、貼付工程の前、貼付工程と保護膜形成工程との間、等のいずれかの段階で行うことができる。
【0507】
ここまでは、
図1に示す保護膜形成用複合シート101を用いた場合の、半導体チップの製造方法について説明したが、本発明の半導体チップの製造方法は、これに限定されない。
例えば、本発明の半導体チップの製造方法は、
図2~
図5に示す保護膜形成用複合シート102~105、
図6~
図10に示す保護膜形成用複合シート201~205、
図11~
図13に示す保護膜形成用複合シート301、401及び501等、
図1に示す保護膜形成用複合シート101以外のものを用いても、同様に半導体チップを製造できる。
このように、他の実施形態の保護膜形成用複合シートを用いる場合には、これらシートの構造の相違に基づいて、上述の製造方法において、適宜、工程の追加、変更、削除等を行って、半導体チップを製造すればよい。
【0508】
◇半導体装置の製造方法
上述の製造方法により、保護膜付き半導体チップを得た後は、公知の方法により、この半導体チップを、基板の回路面にフリップチップ接続した後、半導体パッケージとし、この半導体パッケージを用いることにより、目的とする半導体装置を製造できる(図示略)。
【実施例】
【0509】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0510】
<帯電防止組成物>
実施例又は比較例で用いた帯電防止組成物を以下に示す。
帯電防止組成物(VI-1)-1:ポリピロールを反応性乳化剤によって乳化し、有機溶媒に溶解させて得られたポリピロール溶液。
帯電防止組成物(VI-1)-2:出光興産社製「UVH515」
【0511】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(A)]
(A)-1:アクリル酸n-ブチル(10質量部)、アクリル酸メチル(70質量部)、メタクリル酸グリシジル(5質量部)及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(15質量部)を共重合してなるアクリル系樹脂(重量平均分子量400000、ガラス転移温度-1℃)。
[熱硬化性成分(B)]
・エポキシ樹脂(B1)
(B1)-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER1055」、エポキシ当量800~900g/eq)
(B1)-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本触媒社製「BPA328」、エポキシ当量235g/eq)
(B1)-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200HH」、エポキシ当量274~286g/eq)
・熱硬化剤(B2)
(B2)-1:ジシアンジアミド(熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、三菱化学社製「DICY7」、活性水素量21g/eq)
[硬化促進剤(C)]
(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ-PW」)
[充填材(D)]
(D)-1:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、エポキシ系化合物で表面修飾されたシリカフィラー、平均粒子径500nm)
[着色剤(I)]
(I)-1:カーボンブラック(三菱化学社製「MA600B」)
【0512】
[実施例1]
<<保護膜形成用複合シートの製造>>
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)の製造>
重合体成分(A)-1(150質量部)、エポキシ樹脂(B1)-1(10質量部)、エポキシ樹脂(B1)-2(60質量部)、エポキシ樹脂(B1)-3(30質量部)、熱硬化剤(B2)-1(2.4質量部)、硬化促進剤(C)-1(2.4質量部)、充填材(D)-1(320質量部)、及び着色剤(I)-1(1.16質量部)を混合し、さらに、これらの合計濃度が55質量%となるように、メチルエチルケトンで希釈して、熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)を調製した。
【0513】
<保護膜形成用フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ40μmの熱硬化性の保護膜形成用フィルムを製造した。
【0514】
<帯電防止層の形成>
基材として、一方の面の表面粗さRaが0.2μmであり、他方の面の表面粗さRaがこの値よりも小さく、このように一方の面が凹凸面であり、他方の面が平滑面である、ポリプロピレン製基材(厚さ80μm)を準備した。
このポリプロピレン製基材の前記凹凸面に、バーコーターを用いて、前記帯電防止組成物(VI-1)-1を塗布し、100℃で2分乾燥させることにより、前記基材上に、厚さ75nmの背面帯電防止層を形成した。
【0515】
<粘着剤組成物(I-4)の製造>
アクリル系重合体(100質量部)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「JER828」)(前記エポキシ樹脂の量として30質量部)、及び3官能キシリレンジイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製「タケネートD110N」)(前記架橋剤の量として35質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有し、前記アクリル系重合体、エポキシ樹脂及び架橋剤の合計濃度が35質量%の非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)を調製した。前記アクリル系重合体は、アクリル酸-2-エチルヘキシル(60質量部)、メタクリル酸メチル(30質量部)、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(10質量部)を共重合してなる、重量平均分子量が600000の共重合体である。
【0516】
<支持シートの製造>
上述の保護膜形成用フィルムの製造時に用いたものと同じ剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その剥離処理面に、上記で得られた粘着剤組成物(I-4)を塗工し、120℃で2分加熱乾燥させることにより、厚さ5μmの非エネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。
次いで、この剥離フィルム及び粘着剤層の積層物のうち、粘着剤層の露出面(換言すると、粘着剤層の剥離フィルム側とは反対側の面)と、上記で得られた基材及び背面帯電防止層の積層物のうち、基材の露出面(換言すると、基材の背面帯電防止層側とは反対側の面)と、を貼り合わせた。これにより、背面帯電防止層、基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、剥離フィルム付きの支持シートを製造した。
【0517】
<保護膜形成用複合シートの製造>
上記で得られた支持シートにおいて、剥離フィルムを取り除いた。そして、この支持シートのうち、新たに生じた粘着剤層の露出面(換言すると、粘着剤層の基材側とは反対側の面)と、上記で得られた剥離フィルム及び保護膜形成用フィルムの積層物のうち、保護膜形成用フィルムの露出面(換言すると、保護膜形成用フィルムの剥離フィルム側とは反対側の面)と、を貼り合わせた。これにより、背面帯電防止層(厚さ75nm)、基材(厚さ80μm)、粘着剤層(厚さ5μm)、保護膜形成用フィルム(厚さ40μm)及び剥離フィルム(厚さ38μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された保護膜形成用複合シートを得た。この保護膜形成用複合シートにおいては、背面帯電防止層、基材及び粘着剤層の積層体(換言すると、支持シート)の平面形状を、直径が270mmの円形とし、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムの積層体の平面形状を、直径が210mmの円形として、これら2つの円が同心となるようにした。
次いで、剥離フィルムを取り除き、保護膜形成用フィルムの露出面(換言すると、保護膜形成用フィルムの粘着剤層側とは反対側の面、又は第1面)のうち、保護膜形成用フィルムの周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層を設けた。
次いで、保護膜形成用フィルムの第1面と、治具用接着剤層の第1面とに、先に取り除いたものと同じ剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を貼り合わせた。
以上により、
図1に示す構成で、かつ、保護膜形成用フィルムの大きさが支持シートの大きさよりもわずかに小さくなっている、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートを製造した。
表1に、保護膜形成用複合シートを構成する各層を示す。層の欄の「-」との記載は、保護膜形成用複合シートがその層を備えていないことを意味する。
【0518】
<<保護膜形成用複合シートの評価>>
<保護膜形成用フィルムが熱硬化する前の、保護膜形成用複合シートの表面抵抗率の測定>
表面抵抗率計(アドバンテスト社製「R12704 Resistivity chamber」)を用い、上記で得られた保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを熱硬化させることなく、印加電圧を100Vとして、このシート中の背面帯電防止層の、基材側とは反対側の露出面において、表面抵抗率を測定した。結果を、表1中の「保護膜形成用複合シートの熱硬化前の表面抵抗率(Ω/□)」の欄に示す。
【0519】
<保護膜形成用フィルムが熱硬化した後の、保護膜形成用複合シートの表面抵抗率の測定>
上記の熱硬化前の表面抵抗率を測定した保護膜形成用複合シートを用い、その中の保護膜形成用フィルムを、130℃で2時間熱硬化させた。次いで、この熱硬化後の保護膜形成用複合シート中の背面帯電防止層の表面抵抗率を、上記と同じ方法で測定した。結果を、表1中の「保護膜形成用複合シートの熱硬化後の表面抵抗率(Ω/□)」の欄に示す。
【0520】
<保護膜形成用複合シートの静止摩擦力の測定>
上記で得られた保護膜形成用複合シートを70℃で1分加熱した。次いで、この加熱後のシートを用いて、
図18を参照して説明した方法により、背面帯電防止層の静止摩擦力を測定した。より具体的には、以下のとおりである。
すなわち、上記の加熱後の保護膜形成用複合シートから、大きさが10cm×20cmである試験片を切り出した。
ダイシング装置中の8インチポーラステーブル(DISCO社製「MOKFRA05Z」)を、万能材料試験機(エー・アンド・デイ社製「RTG-1225」)に載置し、前記試験片を、このポーラステーブル上に載置した。このとき、試験片中の背面帯電防止層を、ポーラステーブルの表面に接触させた。
次いで、この状態の試験片中の保護膜形成用フィルムの露出面に、大きさが6cm×10cm×2cmであり、質量が1kgである金属錘を載置した。このとき、金属錘の大きさが6cm×10cmの面を、保護膜形成用フィルムに接触させた。
次いで、試験片の前記ポーラステーブルとの接触面に対して平行な方向に、前記錘を10mm/minの速度で移動させ、このときの前記錘の移動開始直前における荷重(ピーク試験力)を測定して、この測定値を静止摩擦力として採用した。結果を、表1中の「保護膜形成用複合シートの静止摩擦力」の欄に示す。
【0521】
<支持シートの全光線透過率の測定>
上記で得られた支持シートについて、JIS K 7375:2008に準拠し、分光光度計(島津製作所社製「UV-VIS-NIR SPECTROPHOTOMETER UV-3600」)を用いて、全光線透過率(%)を測定した。結果を表1に示す。
【0522】
<帯電防止層の耐擦傷性の評価>
上記で得られた支持シート中の背面帯電防止層について、下記方法で耐擦傷性を評価した。
すなわち、大栄科学精器製作所製の平面摩耗試験機「PA-2A」を用い、その中のヘッドの押圧面に、フランネル布を被せた。前記押圧面は平面状であり、その面積は2cm×2cmであった。フランネル布としては、その厚さが先に説明した範囲内にあるものを用いた。このフランネル布を被せたヘッドの押圧面を、背面帯電防止層の表面に押し当て、この状態で、ヘッドによって125g/cm2の荷重を背面帯電防止層に加えて押圧しながら、ヘッドを10cmの直線距離で10回往復運動させることにより、フランネル布を介して125g/cm2の荷重を加えながら、背面帯電防止層を擦った。そして、背面帯電防止層のこの擦った面のうち、面積が2cm×2cmの領域を目視観察して、傷が認められなかった場合を「A」と判定し、傷が認められた場合を「B」と判定して、帯電防止層の耐擦傷性を評価した。
結果を、表1中の「帯電防止層又は基材の耐擦傷性」の欄に示す。
【0523】
<<半導体チップの製造>>
上記で得られた保護膜形成用複合シートを用い、製造方法(1)を採用して、保護膜付き半導体チップを製造した。このとき、前記貼付工程、保護膜形成工程、第1積層体作製工程、積層体引き離し工程、洗浄工程、積層体引き離し工程、乾燥工程、積層体引き離し工程及びピックアップ工程を、この順に行うことによって、保護膜付き半導体チップを製造した。各工程のより詳細な条件は、以下に示すとおりである。
【0524】
すなわち、前記貼付工程においては、半導体ウエハとして、8インチシリコンミラーウエハ(厚さ350μm)を用い、そのミラー面(裏面)に対して、70℃で1分加熱した保護膜形成用フィルムによって、保護膜形成用複合シートを貼付した。
【0525】
前記保護膜形成工程においては、保護膜形成用フィルムを130℃で2時間熱硬化させた。
【0526】
前記第1積層体作製工程においては、ダイシング装置(Disco社製「DFD6362」)を用いてダイシングすることにより、シリコンミラーウエハを分割して、大きさが5mm×5mmのシリコンチップを得た。このときのダイシングは、ダイシングブレードの移動速度を50mm/sec、ダイシングブレードの回転数を30000rpmとして行った。また、このとき同時に、保護膜も切断した。
【0527】
前記第1積層体作製工程とその直後の積層体引き離し工程においては、テーブルとして、その第1積層体の固定面がセラミック製であり、かつ凹凸差が5μm以下となっている吸着テーブルを用いた。前記洗浄工程とその直後の積層体引き離し工程、並びに、前記乾燥工程とその直後の積層体引き離し工程、のいずれにおいても、第1積層体作製工程とその直後の積層体引き離し工程の場合と同一種の吸着テーブルを用いた。
【0528】
前記乾燥工程においては、洗浄後の第1積層体を、室温下で送風乾燥させた。
【0529】
前記ピックアップ工程においては、ピックアップ・ダイボンディング装置(キャノンマシナリー社製「BESTEM D-02」)を用い、常温下で、乾燥後の第1積層体を固定した後、この第1積層体と、これを固定しているリングフレームと、の間に、3mmの高低差を新たに発生させた。そして、この状態で、第1積層体に対して、その背面帯電防止層側から力を加えて突き上げることにより、切断後の保護膜を裏面に備えたシリコンチップ(保護膜付き半導体チップ)を、前記支持シートから引き離してピックアップした。このとき、突き上げ部として1個の突起(ピン)を用い、その突き上げ高さを0.6mmとし、突き上げ速度を20mm/sとし、突き上げ保持時間を30ミリ秒として、前記保護膜付きシリコンチップを突き上げた。
以上により、半導体チップとして、大きさが5mm×5mm、厚さが350μmであるシリコンチップを得た。その裏面に備えた保護膜の大きさは、この半導体チップの大きさと同等であった。
【0530】
<<半導体チップの評価>>
<半導体チップ中の回路の破壊抑制性の評価>
上記で得られた保護膜付き半導体チップ中の回路の破壊の有無を、以下に示す方法で評価した。
すなわち、基板(ウォルツ社製「WLP(s)400P-2」、3cm□)を用い、ここに保護膜付き半導体チップのバンプ形成面を接触させて、この保護膜付き半導体チップをボンディングした。前記基板は、その回路面のうち、4辺の周縁部近傍の領域に、辺に沿って複数個の電極を有している。保護膜付き半導体チップは、前記基板の回路面の中央部に配置して、保護膜付き半導体チップが、前記基板の対向する2辺の周縁部に沿って配置されている電極間に位置するようにした。
次いで、前記基板の対向する2辺のうちの1辺に沿って配置されている1個の電極と、残りの1辺に沿って配置されている1個の電極と、の両方に、テスター(日置電機社製「カードハイテスタ3244-60」)の端子をそれぞれ1本ずつ接触させ、この状態で、前記テスターによる導通試験を行った。さらに、対向する2個の電極として、他の組み合わせを順次選択し、この導通試験を繰り返し行った。そして、テスターによる抵抗の測定値に明確な変化がない場合には、半導体チップ中の回路が破壊されていないと判断し、「A」と判定した。これに対して、テスターによる抵抗の測定値に明確な変化があった場合には、半導体チップ中の回路が破壊されていると判断し、「B」と判定した。
結果を、表1中の「半導体チップ中の回路の破壊抑制性」の欄に示す。
【0531】
<保護膜形成用複合シートの製造及び評価、半導体チップの製造及び評価>
[実施例2]
前記帯電防止組成物(VI-1)-1に代えて前記帯電防止組成物(VI-1)-2を用い、その塗布量を変更し、50℃で1分乾燥させることにより、基材上に厚さ170nmの背面帯電防止層を形成した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造及び評価し、半導体チップを製造及び評価した。本実施例で製造した保護膜形成用複合シートは、背面帯電防止層(厚さ170nm)、基材(厚さ80μm)、粘着剤層(厚さ5μm)、保護膜形成用フィルム(厚さ40μm)及び剥離フィルム(厚さ38μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、
図1に示す構成で、かつ、保護膜形成用フィルムの大きさが支持シートの大きさよりもわずかに小さくなっている、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートである。
結果を表1に示す。
【0532】
[実施例3]
前記帯電防止組成物(VI-1)-2の塗布量を変更して、背面帯電防止層の厚さを170nmに代えて50nmとした点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造及び評価し、半導体チップを製造及び評価した。本実施例で製造した保護膜形成用複合シートは、背面帯電防止層(厚さ50nm)、基材(厚さ80μm)、粘着剤層(厚さ5μm)、保護膜形成用フィルム(厚さ40μm)及び剥離フィルム(厚さ38μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、
図1に示す構成で、かつ、保護膜形成用フィルムの大きさが支持シートの大きさよりもわずかに小さくなっている、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートである。
結果を表1に示す。
【0533】
[実施例4]
<<保護膜形成用複合シートの製造>>
<帯電防止性基材の製造>
ウレタンアクリレート樹脂及び光重合開始剤を含有し、ウレタンアクリレート樹脂の含有量に対する光重合開始剤の含有量の割合が3質量%である組成物に対して、帯電防止剤としてホスホニウム系イオン液体(ホスホニウム塩からなるイオン液体)を配合し、撹拌することにより、エネルギー線硬化性の帯電防止組成物(VI-2)を得た。このとき、帯電防止組成物(VI-2)において、帯電防止剤及びウレタンアクリレート樹脂の合計含有量に対する、帯電防止剤の含有量の割合は、9質量%とした。
【0534】
次いで、ファウンテンダイ方式により、上記で得られた帯電防止組成物(VI-2)をポリエチレンテレフタレート製の工程フィルム(東レ社製「ルミラーT60 PET 50 T-60 トウレ」、 厚さ50μm品)上に塗布し、厚さ80μmの塗膜を形成した。そして、紫外線照射装置(アイグラフィクス社製「ECS-401GX」)を用い、高圧水銀ランプ(アイグラフィクス社製「H04-L41」)を用いて、ランプの高さを150mm、ランプ出力を3kw(換算出力120mW/cm)、波長365nmの光線の照度を271mW/cm2、光量を175mJ/cm2として、この塗膜に対して紫外線を照射した。
次いで、剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET3801」、厚さ38μm)を用い、その剥離処理面を、この紫外線照射後の塗膜に貼り合わせた。
次いで、上記と同じ紫外線照射装置及び高圧水銀ランプを用いて、ランプの高さを150mm、波長365nmの光線の照度を271mW/cm2、光量を600mJ/cm2として、前記剥離フィルムを介して、前記塗膜に対して紫外線を2回照射することにより、前記塗膜(より具体的には、前記ウレタンアクリレート樹脂)を紫外線硬化させた。
次いで、この紫外線硬化後の塗膜から、前記工程フィルム及び剥離フィルムを取り除き、ポリウレタンアクリレート及びホスホニウム系イオン液体を含有し、厚さが80μmである帯電防止性基材を得た。得られた帯電防止性基材において、帯電防止剤及びポリウレタンアクリレートの合計含有量に対する、帯電防止剤の含有量の割合は、9質量%である。表1中の「帯電防止剤(含有量の割合(質量%))」の欄に、この数値を示す。
【0535】
<支持シートの製造>
実施例1の場合と同じ方法で、剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面に、厚さ5μmの非エネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。
次いで、この剥離フィルム及び粘着剤層の積層物のうち、粘着剤層の露出面(換言すると、粘着剤層の剥離フィルム側とは反対側の面)と、上記で得られた帯電防止性基材の一方の面と、を貼り合わせた。これにより、帯電防止性基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、剥離フィルム付きの支持シートを製造した。
【0536】
<保護膜形成用複合シートの製造>
背面帯電防止層及び基材を備えた前記支持シートに代えて、上記で得られた、帯電防止性基材を備えた支持シートを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、帯電防止性基材(厚さ80μm)、粘着剤層(厚さ5μm)、保護膜形成用フィルム(厚さ40μm)及び剥離フィルム(厚さ38μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、さらに治具用接着剤層を備えた、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートを製造した。この剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートにおいて、帯電防止性基材及び粘着剤層の積層体(換言すると、支持シート)の平面形状は、直径が270mmの円形であり、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムの積層体の平面形状は、直径が210mmの円形であり、これら2つの円は同心である。この剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートは、
図6に示す構成で、かつ、保護膜形成用フィルムの大きさが支持シートの大きさよりもわずかに小さくなっている。
【0537】
<<保護膜形成用複合シートの評価>>
上記で得られた保護膜形成用複合シートについて、実施例1の場合と同じ方法で、評価を行った。保護膜形成用複合シートの表面抵抗率及び静止摩擦力は、いずれも帯電防止性基材において測定し、耐擦傷性の評価は、帯電防止性基材に対して行った。結果を表1に示す。
【0538】
<<半導体チップの製造及び評価>>
上記で得られた保護膜形成用複合シートを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、半導体チップを製造及び評価した。結果を表1に示す。
【0539】
<保護膜形成用複合シートの製造及び評価、半導体チップの製造及び評価>
[実施例5]
前記帯電防止組成物(VI-1)-2の塗布量を変更して、背面帯電防止層の厚さを170nmに代えて15nmとした点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造及び評価し、半導体チップを製造及び評価した。本実施例で製造した保護膜形成用複合シートは、背面帯電防止層(厚さ15nm)、基材(厚さ80μm)、粘着剤層(厚さ5μm)、保護膜形成用フィルム(厚さ40μm)及び剥離フィルム(厚さ38μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、さらに治具用接着剤層を備えた、
図1に示す構成で、かつ、保護膜形成用フィルムの大きさが支持シートの大きさよりもわずかに小さくなっている、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートである。
結果を表1に示す。
【0540】
[比較例1]
背面帯電防止層を形成しなかった点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造及び評価し、半導体チップを製造及び評価した。本比較例で製造した保護膜形成用複合シートは、基材(厚さ80μm)、粘着剤層(厚さ5μm)、保護膜形成用フィルム(厚さ40μm)及び剥離フィルム(厚さ38μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、さらに治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シートであり、
図1において背面帯電防止層を備えておらず、かつ、保護膜形成用フィルムの大きさが支持シートの大きさよりもわずかに小さくなっている、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートである。なお、本比較例においては、保護膜形成用複合シートの表面抵抗率及び静止摩擦力は、いずれも基材において測定し、耐擦傷性の評価は、基材に対して行った。
結果を表1に示す。
【0541】
[比較例2]
帯電防止性基材として、帯電防止剤の含有量を低減したものを用いた点以外は、実施例4の場合と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造及び評価し、半導体チップを製造及び評価した。得られた帯電防止性基材において、帯電防止剤及びポリウレタンアクリレートの合計含有量に対する、帯電防止剤の含有量の割合は、3質量%である。表1中の「帯電防止剤の含有量の割合」の欄に、この数値を示す。
本比較例で製造した保護膜形成用複合シートは、帯電防止性基材(厚さ80μm)、粘着剤層(厚さ5μm)、保護膜形成用フィルム(厚さ40μm)及び剥離フィルム(厚さ38μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、さらに治具用接着剤層を備えており、
図6に示す構成で、かつ、保護膜形成用フィルムの大きさが支持シートの大きさよりもわずかに小さくなっている、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートである。
結果を表1に示す。
【0542】
【0543】
上記結果から明らかなように、実施例1~5の保護膜形成用複合シートにおいては、背面帯電防止層又は帯電防止性基材の表面抵抗率が、保護膜形成用フィルムを熱硬化させる前は2.1×105~3.5×1010Ω/□であり、保護膜形成用フィルムを熱硬化させた後は1.3×106~9.2×1010Ω/□であって、これら保護膜形成用複合シートは、平常時において帯電防止性に優れていた。そして、これら保護膜形成用複合シートを用いて得られた半導体チップにおいて、回路は破壊されていなかった。これら保護膜形成用複合シートにおいては、背面帯電防止層又は帯電防止性基材の静止摩擦力が12~18Nであり、テーブル上で固定されている前記積層体(すなわち、第1積層体又は第2積層体)を、テーブル上の固定面から引き離すときに、前記積層体の帯電抑制効果が高かった。
【0544】
実施例1~5の保護膜形成用複合シート中の支持シートの全光線透過率は、80%以上(80~92%)であり、これら複合シートは好ましい光学特性を有していた。
【0545】
実施例1~3、5の保護膜形成用複合シート中の背面帯電防止層と、実施例4の保護膜形成用複合シート中の帯電防止性基材と、の耐擦傷性はいずれも高く、これら複合シートの保護膜形成用フィルムの検査性は、良好であった。
【0546】
これに対して、比較例1の保護膜形成用複合シートにおいては、基材の表面抵抗率が、保護膜形成用フィルムを熱硬化させる前は5.0×1015Ω/□であり、保護膜形成用フィルムを熱硬化させた後は5.6×1015Ω/□であって、この保護膜形成用複合シートは、平常時において帯電防止性に劣っていた。そして、この保護膜形成用複合シートを用いて得られた半導体チップにおいて、回路は破壊されていた。この保護膜形成用複合シートにおいては、基材の静止摩擦力が11Nであるが、このシートの帯電防止性が低いため、テーブル上で固定されている積層体を、テーブル上の固定面から引き離すときに、前記積層体の帯電抑制効果が低かった。
【0547】
比較例2の保護膜形成用複合シートにおいては、帯電防止性基材の表面抵抗率が、保護膜形成用フィルムを熱硬化させる前は1.5×1011Ω/□であり、保護膜形成用フィルムを熱硬化させた後は8.4×1011Ω/□であって、この保護膜形成用複合シートは、平常時において帯電防止性に劣っていた。そして、この保護膜形成用複合シートを用いて得られた半導体チップにおいて、回路は破壊されていた。この保護膜形成用複合シートにおいては、基材の静止摩擦力が18Nであるが、このシートの帯電防止性が低いため、テーブル上で固定されている積層体を、テーブル上の固定面から引き離すときに、前記積層体の帯電抑制効果が低かった。
【0548】
比較例1の保護膜形成用複合シート中の基材の耐擦傷性は低く、この複合シートの保護膜形成用フィルムの検査性は、劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0549】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0550】
1・・・試験片
1a・・・試験片の支持シート側とは反対側の最表層の表面(露出面)
101,102,103,104,105,201,202,203,204,205,301・・・保護膜形成用複合シート
10,20,30,40,50・・・支持シート
10a,20a,30a,40a,50a・・・支持シートの第1面
11・・・基材
11a・・・基材の第1面
11b・・・基材の第2面
11’・・・帯電防止性基材
12・・・粘着剤層
13,23・・・保護膜形成用フィルム
130・・・切断後の保護膜形成用フィルム
13’・・・保護膜
130’・・・切断後の保護膜
15・・・剥離フィルム
17・・・背面帯電防止層
19・・・表面帯電防止層
4・・・ポーラステーブル
4a・・・ポーラステーブルの表面
5・・・錘
5b・・・錘の試験片との接触面
6,7・・・テーブル
6a,7a・・・テーブルの固定面
9・・・半導体ウエハ
9b・・・半導体ウエハの裏面
9’・・・半導体チップ
901・・・第1積層体
902・・・第2積層体
II・・・錘の移動方向