(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】レーザー加工をシミュレートするための方法および該方法を使用するレーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240502BHJP
B23K 26/36 20140101ALI20240502BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/36
(21)【出願番号】P 2020560598
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2019051916
(87)【国際公開番号】W WO2019145515
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-10
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】518047322
【氏名又は名称】レーザー エンジニアリング アプリケーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルネール,ダビド
(72)【発明者】
【氏名】カングエイロ,リリアナ
(72)【発明者】
【氏名】マルタン,ポール-エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ラモス デ カンポス,ホセ-アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】クピジエウィクズ,アクセル
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/113302(WO,A1)
【文献】特開平06-285654(JP,A)
【文献】特開2007-152420(JP,A)
【文献】特開2001-219341(JP,A)
【文献】特開2005-177843(JP,A)
【文献】特開昭56-033191(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0155017(US,A1)
【文献】特表2014-509942(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0092966(US,A1)
【文献】特表2013-518730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0239063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工レーザービームを放射することが可能なレーザー加工システムによる材料のレーザー加工をシミュレートするための方法であって、
(a)中央ユニットに、
-加工されるべき前記材料に関連する情報であって、
○前記材料内の前記加工レーザービームの侵入深度に対するデルタδ、
○加工を可能にする前記レーザービームの最小エネルギー密度に対するしきい値フルエンスF
th、
○単一ポイントでの前記レーザービームのパルス数に対する前記しきい値フルエンスF
thの依存性に関連する、0~1の間のインキュベーション係数S、
○複素屈折率n+ik、
を含む、加工されるべき前記材料に関連する情報、
-前記レーザー加工システムに関する情報であって、
○前記加工レーザービームの偏光に関する情報、
○前記加工レーザービームのパルスエネルギーE
p、
○焦点における前記加工レーザービームの直径w、
○1~20の間の前記加工レーザービームのガウス次数p、
○前記加工レーザービームのパルスnのパルス繰り返し率PRR、
○前記加工レーザービームの波長
を含む、前記レーザー加工システムに関する情報
を提供するステップ
(a)と、
(b)前記中央ユニットで決定することであって、
-加工されるべき前記材料に関する前記情報、および、
-前記レーザー加工システムに関する前記情報
に基づいて前記中央ユニットで、
前記レーザー加工システムで加工されるべき前記材料の加工の前記シミュレーションに対応する2次元および/または3次元の加工プロファイル
を決定するステップ
(b)と、
を含む、方法。
【請求項2】
-前記レーザー加工システムが、
加工されるべき前記材料の
表面に実質的に平行な方向xに移動するレーザー加工ビームを放射することが可能なシステムであり、
-前記ステップ(a)が、前記レーザー加工システムに関する以下の情報:
加工されるべき前記材料の前記表面からの前記レーザー加工ビーム
の焦点の距離、
加工されるべき前記材料に対する前記レーザー加工ビームの移動速度(v)、
加工されるべき前記材料の前記表面に対する前記加工レーザービームの入射角、
加工されるべきラインの数、
以前に定義された前記ラインの間の距離、
加工されるべき各ライン上の前記加工レーザービームのパスの数
を提供するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザー加工システムが、
加工されるべき前記材料の
表面に実質的に垂直な回転軸を中心に回転するレーザー加工ビームを放射することが可能なシステムであり、
前記ステップ(a)が、前記レーザー加工システムに関する情報:
前記レーザー加工ビームの回転速度ω
回転する前
記レーザー
加工ビームが
、前記レーザー加工ビーム
の全ての回転位置用の固定スポットを表現する、加工されるべき前記材料の表面からの距離BFG、
回転する前記レーザー
加工ビームが集束する加工されるべき前記材料の表面からの距離BFI、
加工されるべき前記材料の前記表面の法線に対して前
記レーザー
加工ビームのすべての
回転位置に対する
、回転する前
記レーザー
加工ビームの入射角β、
回転する前
記レーザー加
工ビームの起動時間
を提供するステップをさらに含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加工レーザービームが、回転軸および加工されるべき前記材料の前記表面から前記距離BFGに位置する回転点の周りを回転する加工レーザービームであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
2次元および/または3次元の前記加工プロファイルを決定する前記ステップ
(b)が、以下の式:
により、
回転する前
記レーザー
加工ビームによる前記材料の加工の歳差半径r
Pを決定するステップを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
回転する前記
レーザー加工ビームの2つの連続するパルスnが、距離dxだけ離れており、2次元の前記加工プロファイルを決定するステップ
(b)が、以下の式:
により、アブレーション深度z
nを計算するステップを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
2次元の前記加工プロファイルを決定するステップ
(b)が、以下の式:
により、前
記レーザー
加工ビームのパルスに対するアブレーションされたクレータ半径r
cを決定するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記加工プロファイルが、
加工されるべき前記材料
の表面に実質的に平行な方向を表す軸y、および
加工されるべき前記材料の前記表面に実質的に垂直な方向を表す軸zであって、前記軸zが
、加工されるべき前記材料の前記表面に対するアブレーション深度z
nに対応する、軸z
に従って2次元で定義されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
デルタδが定数パラメータであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記中央ユニットが、2次元および/または3次元の前記加工プロファイル
を決定するためのコンピュータプログラムを実行するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記コンピュータプログラムを実行するように構成された前記中央ユニットが、非物質化された記憶および計算手段、たとえばクラウド、詳細にはサービスとしてのプラットフォーム、より詳細にはサービスとしてのソフトウェアにアクセス可能であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
加工されるべき前記材料に関する前記情報が材料データベースから導出され、各材料が以下の情報
デルタδ、
しきい値フルエンスFth、
インキュベーション係数S、
複素屈折率n+ik、
を含み、前記中央ユニットが、前記材料データベースと通信するための通信手段を備える
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記中央ユニットが、前記
材料データベースからの加工されるべき前記材料に関する情報に基づいて、かつ前記レーザー加工システムに関する情報に基づいて、2次元の前記加工プロファイルを決定することができるように、シミュレーション手段を備えることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、
(c)レーザー加工システムであって、
加工されるべき前記材料
を含むレーザー加工システムを提供するステップ
(c)であって、
前記レーザー加工システムが、
加工されるべき前記材料上にレーザー加工ビームを放射するためのレーザー光源、
前記レーザー光源からの前記加工レーザービームの前記放射を制御するための制御ユニット、
を備える、前記レーザー加工システム、
前記制御ユニットを制御するための前記中央ユニット、
材料データベースと通信するため
の通信手段、
前記中央ユニットから前記
材料データベースへの通信用の通信手段
を備える、ステップ
(c)と、
(d)前記レーザー加工
システムに関する情報で構成された前記レーザー光源を用いて前記材料を加工するステップ
(d)と
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザー加工
システムが、
加工結果を提供するために前記中央ユニットに接続された加工されるべき前記材料の状態の分析ユニット
をさらに備え、
以下の
(e)前記ステップ
(d)の後に前記分析ユニットで加工結果を取得するステップ
(e)、
(f)前記加工結果および
前記レーザー加工システムに関する情報を前記中央ユニットに送信するステップ
(f)であって、前記中央ユニットが、加工されるべき前記材料に関する情報を決定するように構成される、ステップ
(f)、
(g)前記中央ユニットから加工されるべき前記材料に関する前記情報で前記材料データベースを強化するステップ
(g)
が実施されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
中央ユニットを備えるレーザー加工システムであって、
前記レーザー加工システムは、加工レーザービームを放射することが可能なレーザー加工システムによる材料のレーザー加工をシミュレートするための方法を実行するように構成され、
前記方法は、
(a)前記中央ユニットで、
-加工されるべき前記材料に関連する情報であって、
○前記材料内の前記加工レーザービームの侵入深度に対するデルタδ、
○加工を可能にする前記レーザービームの最小エネルギー密度に対するしきい値フルエンスF
th
、
○単一ポイントでの前記レーザービームのパルス数に対する前記しきい値フルエンスF
th
の依存性に関連する、0~1の間のインキュベーション係数S、
○複素屈折率n+ik、
を含む、加工されるべき前記材料に関連する情報、
-前記レーザー加工システムに関する情報であって、
○前記加工レーザービームの偏光に関する情報、
○前記加工レーザービームのパルスエネルギーE
p
、
○焦点における前記加工レーザービームの直径w、
○1~20の間の前記加工レーザービームのガウス次数p、
○前記加工レーザービームのパルスnのパルス繰り返し率PRR、
○前記加工レーザービームの波長
を含む、前記レーザー加工システムに関する情報
を受信するステップ(a)と、
(b)前記中央ユニットで決定するステップであって、
-加工されるべき前記材料に関する前記情報、および、
-前記レーザー加工システムに関する前記情報
に基づいて前記中央ユニットで、
前記レーザー加工システムで加工されるべき前記材料の加工の前記シミュレーションに対応する2次元および/または3次元の加工プロファイル
を決定するステップ(b)と、
を含む、レーザー加工システム。
【請求項17】
加工されるべき前記材料に前記レーザービームを向けるための光学ユニットを備えることを特徴とする、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
加工されるべき前記材料に前記レーザービームを向けるための前記光学ユニットが前記レーザービームの歳差運動を可能にすることを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
中央ユニットを備えるレーザー加工システムにおいて、コンピュータに請求項1に記載の方法を
実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項20】
請求項19に記載の前記コンピュータプログラムが記録される、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様によれば、本発明は、材料のレーザー加工をシミュレートするための方法に関する。第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様の方法で得られたシミュレーションに基づいて材料の加工を実行するためのレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザービームは、特に工作物の加工に使用される。レーザービームにさらされた材料の一部を溶融、蒸発、または昇華させることが可能である。レーザービームによる工作物の加工により、たとえば、高効率の切削、穴あけ、溝入れ、表面テクスチャリングが可能になる。
【0003】
レーザー加工装置は、1ns未満の持続時間、およびJ/cm2のオーダーのパルスあたりの高エネルギーを有するレーザービームパルスを使用することが増えている。所望の目標の加工を得るために、レーザー加工装置を定義し、パラメータ化する必要がある。次いで、任意の新しく定義された目標の加工用ならびに任意の新しい材料用のレーザー加工パラメータを定義することが必要である。
【0004】
新しい目標の加工を実行し、かつ/または新しい材料を使用するとき、選択された材料に対する目標の加工を達成するためのレーザー加工パラメータを設定するために、予備加工実験を実行する必要がある。多数の予備実験がしばしば必要であり、これにはオペレータによるレーザー加工装置の長時間の使用、ならびに多数の材料サンプルが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決される必要がある技術的な問題は、レーザー加工装置を使用せずにレーザー加工パラメータを定義するための方法、ならびに多数の材料サンプルおよびそれらの特性をもつことである。特に、レーザー加工システムを使用する必要なしにレーザー加工の結果を予測できることは有用なはずである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、本発明の目的の1つは、レーザー加工パラメータに基づいて、レーザー加工の信頼できるシミュレーションのための方法を提供することである。
【0007】
この目的のために、本発明者らは、加工レーザービームを放射することが可能なレーザー加工システムによる材料のレーザー加工をシミュレートするための方法を提案し、方法は以下のステップを含む。
a)中央ユニットに以下を提供すること、
-以下を含む、加工されるべき材料に関連する情報、
○材料内の加工レーザービームの侵入深度に対するデルタδ
○加工を可能にするレーザービームの最小エネルギー密度に対するしきい値フルエンスFth、
○単一ポイントでのレーザービームのパルス数に対するしきい値フルエンスFthの依存性に関連する、0から1の間のインキュベーション係数S、
○複素屈折率n+ik、
-以下を含む、レーザー加工システムに関する情報、
○加工レーザービームの偏光に関する情報、
○加工レーザービームのパルスエネルギーEp、
○焦点における加工レーザービームの直径w、
○1から20の間の加工レーザービームのガウス次数p、
○加工レーザービームのパルスnのパルス繰り返し率PRR、
○加工レーザービームの波長、
b)以下に基づいて中央ユニットで決定すること、
-加工されるべき材料に関する情報、および
-レーザー加工システムに関する情報、
レーザー加工システムで加工されるべき材料の加工のシミュレーションに対応する2次元および/または3次元の加工プロファイル。
【0008】
本発明によるシミュレーション方法は、特に、レーザー材料相互作用の適切な考察、およびシミュレーション方法におけるその実施のおかげで、技術的問題を解決することを可能にする。本発明のシミュレーション方法は、同じレーザー加工パラメータで得られた実験結果に非常に近いシミュレーション結果を得るために、複雑な物理現象のシミュレーションのための数値的手法を提案する。実際、従来技術のシミュレーションツールは分析手法を使用しているので、分析モデルの解像度は、計算能力の観点から非常に要求が高いことが頻繁であり、たとえば、シミュレーションが材料の表面に垂直でない入射角を有する入射レーザービームを提示するときに特定のシミュレーションを可能にしない。
【0009】
本発明の方法は、最適な加工パラメータ、好ましくは可能な限り近い目標の加工に従って部片が加工されることを可能にする最適な加工パラメータの決定を可能にする。そのような方法は、多数のコストがかかる加工パラメータ調整に頼ることなしに、良好な加工品質を保証することを可能にする。実際、本発明によって提案される方法は、以前の加工実験中に、またはレーザー光源もしくは加工されるべき材料に関する情報を含むデータベースから、加工中にレーザービームと加工されるべき材料との間の相互作用の物理パラメータを考慮に入れることを可能にする。好ましくは、本発明の方法は、ステップa)の前に、中央ユニットを提供するステップを提供することを予測する。
【0010】
本発明者らは、レーザー加工に関連する4つの材料パラメータ(デルタ、しきい値フルエンス、インキュベーション係数、複素屈折率)を制御ユニットが考慮することにより、経験的な実験に頼ることなく、レーザー加工装置の使用範囲を拡大するために、達成されるべき加工に非常に近い加工シミュレーションを得ることが可能になるという驚くべき方式で観察した。
【0011】
優先的には、加工されるべき材料に関する情報は、加工されるべき材料とのレーザー加工ビームの相互作用に関する情報である。優先的には、加工レーザービームの偏光に関する情報は、垂直または水平のP/S偏光の選択肢から選択される。優先的には、加工レーザービームのパルスエネルギーEpは、μJで表される。優先的には、焦点における加工レーザービームの直径wはウエストサイズwに対応する。優先的には、加工レーザービームの1つのガウス次数は1~10の間である。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、材料パラメータは、最適化ステップの後にデータベースに記憶される。データベース内の材料パラメータを最適化するステップは、実験的に測定された材料パラメータと分析モデルに基づいて推定された材料パラメータの比較を含む。0.92~1の間でなければならないR2の分析に基づく比較により、データベースに記録された材料パラメータで起こり得るエラーの減少によるシミュレーション中のエラーを最小化するために、データベース内の材料パラメータの最適化が可能になる。詳細には、材料パラメータのデルタδを決定するステップは、実験測定値とフルエンスの関数としてのアブレーション深度のモデルとの間の比較を実行することによって行われる。デルタδの値は、R2によって測定されたこれら2つの曲線の重ね合わせが0.92~1の間になるまで、数回の繰り返し後に決定される。
【0013】
本発明の数値的手段は、材料の表面上の加工レーザービームの各パルスの到達を連続的にシミュレートすることを可能にする。材料表面のトポロジーは次のパルスの前に更新される。したがって、本発明のシミュレーションは、各パルスのレーザー材料相互作用の理解に基づき、他の従来技術の分析方法と比較して、それを特に正確かつ現実的にする。
【0014】
本発明の方法は、レーザー加工パラメータがシミュレーションによって予測されることを可能にし、それらが、目標のタイプの加工(彫刻、切削、穴あけ、溶接)を得るために、レーザー加工装置によって工作物に適用されることを可能にする。各材料のこれらの特性/性質(物理的機能と学習済み機能の両方)は、所望の加工を得るために適用されるべき最適な加工パラメータ(レーザー条件)を予測することを可能にする。
【0015】
好ましくは、
-レーザー加工システムは、材料の加工面に実質的に平行な方向xに移動するレーザー加工ビームを放射することが可能なシステムであり、
-ステップa)は、レーザー加工システムに関する以下の情報、
○加工されるべき材料の表面からのレーザー加工ビームの焦点の距離、
○加工されるべき材料に対するレーザー加工ビームの移動速度(v)、
○加工されるべき材料の表面に対する加工レーザービームの入射角、
○加工されるべきラインの数
○以前に定義されたラインの間の距離、
○加工されるべき各ライン上の加工レーザービームのパスの数
の情報を提供することをさらに含む。
【0016】
たとえば、焦点が表面上にあるとき、加工されるべき材料の表面からのレーザー加工ビームの焦点の距離は0である。好ましくは、移動速度は方向xに設定される。たとえば、レーザービームが基板の表面と90°の角度をなすとき、加工されるべき材料の表面に対する加工レーザービームの入射角は0°である。たとえば、加工されるべきラインの数は少なくとも1つであり、無限につながる可能性がある。好ましくは、加工されるべきラインの数は、ライン間の距離パラメータに関連してトレンチ幅が定義されることを可能にする。優先的には、ラインの間の距離またはピッチは、1つのラインの中心から別の隣接するラインの中心までの距離である。たとえば、加工されるべき各ライン上の加工レーザービームのパスの数はレイヤの数である。レーザービームの通過回数が10に等しいということは、レーザービームが同じラインに沿って10回通過することを意味する。
【0017】
好ましくは、レーザー加工システムは、材料の加工面に実質的に垂直な回転軸を中心に回転するレーザー加工ビームを放射することが可能なシステムであり、その点で、ステップa)は、レーザー加工システムに関する情報、
○回転軸のまわりのレーザービームの回転速度ω、
○回転レーザービームがすべての回転レーザー加工ビーム位置用の固定スポットを表現する、加工されるべき材料の表面からの距離BFG、
○回転レーザービームが集束する加工されるべき材料の表面からの距離BFI、
○材料の表面の法線に対する回転レーザービームのすべての位置に対する回転加工レーザービームの入射角β、
○回転加工レーザービームの起動時間、
を提供することをさらに含む。
【0018】
好ましくは、レーザー加工ビームの回転速度は、レーザー加工ビームの回転を可能にする光学要素の回転速度である。たとえば、そのような光学要素は、ミラー、プリズムなどである。加工されるべき材料の表面からの距離BFGは、回転レーザービームが回転レーザー加工ビームのすべての位置用の固定スポット、すなわち、レーザー加工ビームがその周りを回転するポイントを表現する。好ましくは、回転レーザービームが集束する、加工されるべき材料の表面からの距離BFI、たとえば、0に等しい距離BFIは、回転レーザービームのすべての位置でレーザービームが材料の表面に集束することを意味する。好ましくは、加工されるべき材料の平らな表面からの距離BFIは平面である。好ましくは、材料表面の法線に対する回転レーザービームのすべての位置に対する回転加工レーザービームの入射角β、表面に対して0°は、回転レーザービームが表面から90°の角度、または材料の表面の法線から0°を表現することを意味する。好ましくは、回転加工レーザービームの起動時間は、加工されるべき材料の厚さおよびタイプ、ならびに他のレーザーパラメータに依存する。この実施形態は、直線または負の側面(一般に側面の向き)を有することを可能にするレーザーパラメータを正確にシミュレートすることを可能にするので、特に有利である。
【0019】
好ましくは、加工レーザービームは、回転軸および加工されるべき材料の表面から距離BFGに位置する回転点の周りを回転する加工レーザービームである。
【0020】
好ましくは、2次元および/または3次元の加工プロファイルを決定するステップb)は、以下の式によって回転加工レーザービームによる材料の加工の歳差半径r
Pを決定するステップを含む。
好ましくは、回転加工ビームの2つの連続するパルスnは、好ましくは半径r
pの円に沿って、距離dxだけ離れている。
【0021】
好ましくは、2次元の加工プロファイルを決定するステップb)は、以下の式により、加工レーザービームのパルスに対するアブレーションされたクレータ半径r
cを決定するステップを含む。
【0022】
好ましくは、2次元の加工プロファイルを決定するステップb)は、以下の式により、アブレーション深度z
nを計算するステップを含む。
【0023】
好ましくは、この加工プロファイルは、以下に従って2次元で定義される。
-加工されるべき材料の表面に実質的に平行な方向を表す軸y、および
-加工されるべき材料の表面に実質的に垂直な方向を表す軸zであり、軸zは材料の表面に対するアブレーション深度znに対応する。
【0024】
好ましくは、デルタδは定数パラメータである。デルタδに定数パラメータを使用すると、適用される加工条件にかかわらず、材料ごとに定数デルタパラメータδを使用することが可能になるので、特に有利である。発明者らは、定数デルタδの使用は多数の科学出版物の教示に反することを発見した。詳細には、材料のデルタδはレーザービームのパルス数の関数として変化するべきことがしばしば受け入れられているが、デルタδは材料の固有の特性であり、モデルの近似変数と見なされるべきではない。
【0025】
好ましくは、中央ユニットは、2次元および/または3次元の加工プロファイルを決定するためのコンピュータプログラムを実行するように構成される。
【0026】
好ましくは、本発明のデータベースは、以下に定義される少なくとも1つのタイプの情報:材料特性、1つまたは複数のレーザーパルスに対する材料の応答の記憶を可能にする。たとえば、データベースは材料特性を含む。
【0027】
好ましくは、加工されるべき材料に関する情報は材料データベースから取得され、各材料は以下の情報を含み、
○材料への加工レーザービームの侵入深度に対するデルタδ、
○加工を可能にするレーザービームの最小エネルギー密度に対するしきい値フルエンスFth、
○同じポイントでのレーザービームのパルス数に対するしきい値フルエンスの依存性に関連する、0から1の間のインキュベーション係数S、
○複素屈折率n+ik、
および、その点で、中央ユニットは、材料データベースと通信するための通信手段を備える。
【0028】
好ましくは、本発明の方法は、ユーザによって定義されたパラメータで取得可能な加工を観察するためのシミュレーションを実行することを可能にするか、または実行するために適用される。これは、特に、加工の実現可能性を確認するか、または加工シーケンスを定義することができるために使用される。
【0029】
中央ユニットは、好ましくは、2次元のレーザー加工プロファイルをシミュレートするためのコンピュータプログラムを実行するように設定される。
【0030】
好ましくは、本発明の方法は、モデル化手段および/またはシミュレーション手段を実行するためのコンピュータプログラムを中央ユニットに提供するステップを含む。好ましくは、モデル化/シミュレーションおよび/または機械学習手段は、物理的パラメータを互いに関連付けるためのアルゴリズムに基づくモデルを含む。コンピュータプログラムの一例はソフトウェアである。好ましくは、モデル化手段および/または機械学習手段は、データベースに記憶することができるデータを生成するために使用される。
【0031】
好ましくは、コンピュータプログラムを実行するように構成された中央ユニットは、非物質化された記憶および計算手段、たとえばクラウド、詳細にはサービスとしてのプラットフォーム、より詳細にはサービスとしてのソフトウェアにアクセス可能である。
【0032】
サービスとしてのソフトウェアは、このコンピュータプログラムがユーザに利用可能に作成されることを提供する。コンピュータプログラムは、webブラウザを使用して操作するか、または中央ユニット上のリースホールドウェイにインストールすることができる。ユーザは、更新の実行、セキュリティパッチの追加、およびサービスの可用性の確保について心配する必要はない。
【0033】
たとえば、本発明による方法は、レーザー加工装置を用いて加工を実行したいユーザが正しい加工パラメータを選択するのを助けるインターネットプラットフォームである。好ましくは、本発明による方法は意思決定支援ツールである。好ましくは、シミュレーション中にユーザによって中央ユニットに提案された加工パラメータは、ユーザによる検証の後に制御ユニットに直接送信される。
【0034】
好ましくは、中央ユニットは、データベースからの加工されるべき材料に関する情報に基づいて、かつレーザー加工システムに関する情報に基づいて、2次元の加工プロファイルを決定することができるように、モデル化手段およびシミュレーション手段を備える。
【0035】
好ましくは、方法は、以下の追加ステップをさらに含み、
a)以下を含むレーザー加工システムを提供することであって、
-加工されるべき材料、
-以下を備えるレーザー加工システム、
○加工されるべき材料上にレーザー加工ビームを放射するためのレーザー光源、
○レーザー光源からのレーザー加工ビームの放射を制御するための制御ユニット、
-制御ユニットを制御するための中央ユニット、
-データベースと通信するための通信手段、
-中央ユニットからデータベースへの通信のための通信手段、
b)レーザー加工パラメータで構成されたレーザー光源で材料を加工することを含む、方法。
【0036】
好ましくは、レーザー加工装置および分析ユニットは、特に、機械内およびターゲット上の電力を測定するために機械の多くのポイントに設置されたセンサ、ビーム分析器、(たとえば、Shack-Hartmannによる)波面分析器、M2計測器、ビームの伝搬に沿ったウエスト(ビーム幅が最小になる位置)の位置およびサイズの予測を用いてビームの伝搬を計算するための計測器、(たとえば、Nanoscanによる)スポットのサイズおよび工作物上の位置の測定値を裏付けるための手段を備える。好ましくは、レーザー光源は、超短レーザー光源、すなわち、100ps未満のレーザーパルスを送るためのものである。
【0037】
好ましくは、加工システムは、たとえばOCT(光コヒーレントトモグラフィ)を用いて、または干渉計を用いて加工した後に、リアルタイムで結果を分析するための手段を含む。たとえば、OCTおよび/または共焦点OCTによるリアルタイムで結果を分析するための手段は、材料の物理的な特性を推論し、また得られた結果を確認し誤差を推論することを可能にし、それに従って、シミュレーションに使用されたアルゴリズムによって計算された1つまたは複数のパラメータの修正に適用することができる。
【0038】
この特定の実施形態で提示される本発明の方法はまた、基準に従って、または所望の結果の誤差間隔内で、各材料に固有の最適なレーザーパラメータのシミュレーションによる予測を可能にする材料データベースを提供および供給することを目的とする。本発明は、様々なレーザー光源(レーザーシステム装置)を装備することができるレーザー加工システム、レーザービーム管理システム(ビーム管理)、工作物に対するレーザービームの相対配置を可能にする加工ユニット、および実行された加工に対して結果が取得されることを可能にする分析ユニットを含む。本発明の利点は、材料特性の記憶を可能にする材料データベースを有することである。この材料データベースにより、過去の実験結果が現在の実験と互換性があるとき、特に加工されるべき材料がデータベース内で知られているとき、過去の実験結果から恩恵を受けるために、新しい加工の開始から材料特性を有することが可能になる。
【0039】
好ましくは、レーザー加工装置は以下をさらに備え、
○加工結果を提供するために中央ユニットに接続された加工されるべき材料の状態の分析ユニット、
および、以下の追加ステップが実装されること、
c)ステップd)の後に分析ユニットで加工結果を取得すること、
d)加工結果および加工パラメータを中央ユニットに送信することであって、中央ユニットが、加工されるべき材料に関する情報を決定するように構成される、送信すること、
e)中央ユニットからの加工されるべき材料に関する情報で材料データベースを強化すること、を備える。
【0040】
本発明のこの好ましい実施形態は、測定または他の外部要因による誤差を低減するために、記載された最適化アルゴリズム/最適化が中央ユニットによって適用され得る、本発明による材料データベースの強化を可能にする。
【0041】
中央ユニットによって使用されるデータ
中央処理ユニットによって使用されるデータは、以下の特性:目標の結果または達成されるべき結果を表現するデータ、ユーザパラメータ、機械関連特性、既定のテストに対応する命令、加工されるべき材料に関連するパラメータ、データベースに記憶された材料に関連するパラメータ、データベースに記憶され、前の加工中に取得された材料に関連するパラメータ、学習機能を含むアルゴリズム、最適な加工パラメータ、レーザービームを測定するための手段からのデータ、結果を分析するための手段からのデータを有する少なくとも1つのデータタイプを含む。好ましくは、上述されたデータのタイプは注釈が付けられる。
【0042】
データクリーニング
【0043】
本発明の好ましい実施形態によれば、収集された、またはデータベースに存在するデータのクリーニングステップが提供される。このステップにより、データベースから収集されたデータまたはオンラインで測定されたデータの一貫性が保証され、外れ値または欠損値がなくなる。
【0044】
目標の結果および既定の結果
【0045】
本発明による実行されるべき特定のタスクまたは達成されるべき結果または目標の加工結果または既定の目標結果は、本発明のユーザが現象をモデル化/シミュレートすることによって解決しようとする問題に対応する。本発明は、複数の目標加工結果を考慮することを可能にし、目標加工結果の各々は、異なるシミュレーションアルゴリズムの選択肢を必要としてよい。
【0046】
好ましくは、レーザー加工システムの中央ユニットは、システムに含まれるすべてのユニット、詳細には、少なくともレーザー光源、ビーム管理装置、ビーム移動/集束ユニット、分析ユニット、データベース、材料データベース、観察ユニット、ユニット、モデル化/シミュレーションを実装するためのユニット、既定のテスト特性を含むユニットの制御を含む。中央ユニットは、たとえば、いくつかの入出力インターフェースを有するコンピュータである。中央ユニットは、好ましくは、ネットワーク、たとえば、インターネットに接続され、たとえば、ユニットの再配置がモデル化/シミュレーションを実装することを可能にする。モデル化/シミュレーションを実行するためのユニットがレーザー加工システム内に物理的に存在しないことの利点は、ハードウェアリソース、たとえば、モデル化/シミュレーションを実行するために必要な計算能力を必要としない中央ユニットが利用可能であることである。これにより、レーザー加工専用の中央ユニットを有するレーザー加工システムを有することも可能になる。好ましくは、データベースは中央サーバにも記憶され、好ましくは、中央サーバは、モデル化/シミュレーションを実装するためのユニットと同じ場所に配置される。
【0047】
好ましくは、データベースは、以下のタイプ:学習済み機能、材料の物理的な特性のうちの少なくとも1つの材料に関する情報を含む。
【0048】
好ましくは、材料の物理的な特性は、以下の特性:デルタ、しきい値フルエンス、最大効率フルエンスのうちの少なくとも1つを含む。
【0049】
好ましくは、加工されるべき材料の状態の分析ユニットは、光学検出ユニットである。
【0050】
好ましくは、レーザー加工パラメータは、以下のパラメータ、
-加工されるべき材料上のレーザービームのスキャン速度、
-レーザー光源によって放射される毎秒のパルス数、
-レーザー光源によって放射される波長、
-加工されるべき材料上のレーザー光源のスポットサイズ、
-レーザー光源によって放射されるパルス当たりのエネルギー、
-工作物上のビームの入射角、
-加工すされるべきパスまたはレイヤの数、
-2つの隣接する継ぎ目間の距離、
-旋光システムの毎分の回転数、
のうちの少なくとも1つを含む。
【0051】
好ましくは、制御ユニットは、レーザー光源から加工されるべき材料への光ビームを制御するようにさらに構成される。
【0052】
好ましくは、方法は、以下の追加ステップ、
f)中央ユニットによって加工されるべき材料の識別を可能にする、加工されるべき材料に関する情報を取得することをさらに含む。
【0053】
好ましくは、方法は、以下の追加ステップ、
g)加工されるべき材料の加工に基づいて加工戦略をさらに決定するをさらに含む。
【0054】
好ましくは、方法は、以下の追加ステップ、
h)加工されるべき材料に、所定の光ビームパラメータを有する光ビームを照射すること、
i)光学検出ユニットにより、光ビームによる加工されるべき材料の照射によって生成された結果を取得すること、
j)結果を中央ユニットに送信し、加工されるべき材料に光ビームを照射することによって生成された結果にアクセスすること、
k)中央ユニットを用いて、結果から材料に関する少なくとも1つのレーザー加工パラメータを抽出すること、
l)材料に関する少なくとも1つのレーザー加工パラメータをデータベースに記録すること、
をさらに含む。
【0055】
第2の態様によれば、本発明者らは、本発明の第1の態様による方法のステップを実行するように適合された手段を備えるレーザー加工システムを提案する。
【0056】
本発明の第1の態様による方法について記載された様々な変形および利点は、必要な変更を加えて第2の態様のシステムに適用される。
【0057】
好ましくは、システムは、加工されるべき材料にレーザービームを向けるための光学ユニットをさらに備える。
【0058】
好ましくは、加工されるべき材料にレーザービームを向けるための光学ユニットは、レーザービームの歳差運動を可能にする。
【0059】
第3の態様によれば、本発明者らは、本発明の第1の態様による方法を実装するためのコンピュータプログラムを提案する。
【0060】
本発明の第1の態様による方法および本発明の第2の態様によるシステムについて記載された様々な変形および利点は、必要な変更を加えて第3の態様のコンピュータプログラムに適用される。
【0061】
好ましくは、コンピュータプログラムは、本発明の第2の態様によるレーザー加工システムに、本発明の第1の態様による方法のステップを実行させる命令を含む。
【0062】
第4の態様によれば、本発明者らは、本発明の第3の態様に従ってコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ可読媒体を提案する。
【0063】
本発明の第1の態様による方法、本発明の第2の態様によるシステム、および本発明の第3の態様によるコンピュータプログラムについて記載された様々な変形および利点は、必要な変更を加えて第4の態様のコンピュータ可読媒体に適用される。
【0064】
工作物の材料に関連するレーザー加工パラメータに基づいてレーザー加工パラメータを決定すること
【0065】
工作物を加工するように決定されると、この工作物の目標の加工が設定される。好ましくは、工作物の目標の加工は、穴、溝、チャネル、カットアウト、またはオペレータが工作物で実行したいアブレーション加工、スルー加工、もしくはノンスルー加工によって得られる他の加工である。好ましくは、目標の加工は、2次元空間内で、より好ましくは、3次元空間内で定義される。たとえば、目標の加工は、アブレーションされるべき材料の量を定義する。目標の加工は、たとえば、透明な材料の光学特性におけるカットまたは変化に対応することができる。
【0066】
可能な限り最小の加工許容差で目標の加工を実行するためには、加工パラメータは、工作物の性質、すなわち、その組成、元の形状、および使用されるレーザー光源の特性に従って決定されなければならない。本発明の方法は、必ずしも前もって経験的試験に頼ることがないレーザー加工パラメータの決定を可能にする。実際、後で詳述される様々なモデルを使用した結果、かつ光ビームが照射されたときの工作物の材料の相互作用パラメータを知ることにより、レーザー加工パラメータを決定することが可能である。本発明の方法に従って実施されるときに決定されるレーザー加工パラメータにより、レーザー加工システムで加工するときに得られるはずの加工を得ることが可能になる。
【0067】
レーザー加工パラメータは、好ましくは、レーザー加工装置に対して定義され、以下、
-工作物上のレーザービームのスキャン速度、
-レーザー光源によって放射される毎秒のパルス数、
-レーザー光源によって放射される波長、
-加工されるべき材料上のレーザー光源のスポットサイズ、
-レーザー光源によって放射されるパルス当たりのエネルギー、
-レーザー光源によって放射されるパルス持続時間、
を含むが、それらに限定されない。
【0068】
工作物は、それが作られる材料およびその寸法によって定義される。たとえば、材料の位置および材料が存在しない位置を明確に定義するために、寸法は多次元空間内で定義することができる。寸法は、たとえば、工作物の粗さを定義することができ、たとえば、それが面によって定義されるとき、粗さは工作物の各面に対して定義することができる。
【0069】
以下に記載される式からδを決定することは可能であるが、この計算を行うために必要なすべてのパラメータ、定数、または係数を有することは常に容易ではあるとは限らない。本発明の方法の結果、特定のパラメータのばらつきを考慮しながら実験的にδを決定することが可能である。これを行うために、例として
図7aおよび
図7bに示されたように、一定の電力値および増加する速度値、ならびに一定の速度値および増加する電力値を用いて、材料の表面全体にわたってスキャンが生成されなければならない。好ましくは、最大深度が測定され、以下に記載される対応するモデルで得られた値と比較されるべきである。モデルで使用された値δは、実験点とモデル化された点との間の十分な一致が得られるまで調整されなければならない。
【0070】
より一般的には、吸収係数として記載され、較正係数として数学的に使用される係数δ。係数δは、インキュベーション係数Sに起因して蓄積されたパルスの数とともに変化することが従来技術から知られているので、アブレーションしきい値の場合と同様に、係数δは、δ(N)=δ(1)N(S-1)である。
【0071】
本発明の数値シミュレーションでは、係数δは、アブレーションプロファイルの数値計算全体を通して一定であると見なされ、それにより、同じ処理パラメータで実験的に得られた結果と非常に類似する結果が得られる。
【0072】
D2法を使用するアブレーションしきい値の決定
【0073】
D
2法によるアブレーションしきい値の決定は、すべてのタイプの材料のアブレーションしきい値を決定するための、最も受け入れられ、広く使用されている方法である。この方法は、ガウスビームエネルギープロファイルに使用される(
図1を参照)。この方法は、材料の表面でのガウスビームの半径ωおよびインキュベーション係数を推定する可能性を提供するという利点をもつ。
【0074】
レーザービーム軸に垂直な平面内のフルエンス(またはエネルギー密度)は、
【0075】
によって与えられ、ここで、rはビーム軸までの距離であり、ω
2は最大強度のe
-2における材料の表面でのビームの半径である。ビームが表面に集束した場合、
ω=ω
0であり、F
0は(r=0での)最大フルエンスであり、以下によって計算され与えられる。
【0076】
【0077】
1つまたは複数のレーザーパルスで生成されたアブレーションクレータの直径は、最大フルエンスの関数として表現することができる。
【0078】
【0079】
ここで、Fthはアブレーションしきい値である。F0はEPとともに直線的に増加するので、ビームの半径ωは、式3を使用して、パルスエネルギーの対数の関数として、クレータ直径D2のグラフから推定することができる。半径ωは、実験結果によって定義された曲線の傾きから計算することができる。
【0080】
【0081】
アブレーションしきい値は、パルスエネルギーの対数の関数として電力2でのクレータ直径(D2)を表すグラフ内でゼロに等しいクレータ直径に電力2でのクレータ直径を外挿することによって計算することができる。
【0082】
一般に、アブレーションしきい値は、加工されるべき材料の表面上の同じ点に入射するパルスの数を増やすことによって減少する。この挙動は、フルエンスがしきい値フルエンスよりも低い場合でも、各パルスで作成された欠陥の蓄積によって引き起こされる放射線吸収率の増加に起因する。放射線吸収率のそのような増加は、以下の式(5)および(6)によって表されるインキュベーション因子またはインキュベーション係数によって特徴付けることができる。
【0083】
【0084】
Fth(N)がN個のパルス用のアブレーションしきい値のフルエンスであるとき、Fth(1)は単一のパルス用のアブレーションしきい値のフルエンスであり、Sはインキュベーション係数である。S=1は、インキュベーションがないことを意味する、すなわち、アブレーションしきい値はパルス数に依存しない。ほとんどの材料のS<1の場合、アブレーションしきい値はパルス数の増加とともに減少する。
【0085】
一般に、インキュベーションまたはしきい値フルエンスの減少は、大部分の材料、特に最も一般的に使用される材料の最初の100パルスの間により顕著である。
【0086】
D
2法を適用してアブレーションしきい値、インキュベーション係数、および必要な場合ビーム半径を見つけるために、
図2に示されたように、パルス数およびパルスエネルギーが増加するクレータ行列が生成されなければならない。十分な実験ポイントをもつために、少なくとも20のエネルギー値および100パルス未満のいくつかのパルス数値が必要とされる。各クレータの直径は、光学顕微鏡または電子顕微鏡で取得された画像から測定されなければならない。
【0087】
対角スキャン法を使用するアブレーションしきい値の決定
【0088】
対角スキャン法またはD-Scan法は、アブレーションしきい値の値を決定するための幾何学的方法である。D-Scan法はD2法の代替方法であり、実験時間および実行されるべき測定の数の点でより効率的かつ高速であるという利点をもつ。D2法と比較されたこの方法の欠点は、ビーム半径を決定するための方法に関係し、それはパラメータの測定および計算にとって常に重要である。
【0089】
対角スキャン法は、移動速度を変えながら、様々なビームエネルギーおよび可変数のパルスを使用して、ビームの焦点に対して対角線にサンプルを移動させることを含む(
図3)。D-Scan法を実施することを可能にする実験は、アブレーションされた表面の決定を含む。アブレーションされた表面は、放射力が以下によって定義される臨界値を超えたポイントに対応する。
【0090】
【0091】
ここで、Ithは強度の単位のアブレーションしきい値であり、
【0092】
【0093】
によって与えられ、ここで、P
0は最大パルス電力であり、ρ
maxはアブレーション領域の最大幅である(
図3)。アブレーションしきい値は、
【0094】
【0095】
によって与えられ、ここで、τpはパルス持続時間である。
【0096】
D-Scan法を適用してアブレーションしきい値およびインキュベーション係数を見つけるために、スキャンは、
図3に示されたように、様々な数の重ね合わされたパルスを測定するために、様々なエネルギー値および移動速度で生成されなければならない。ローブのより広い部分に対応するポイントに重ね合わされたパルスの数は、
【0097】
【0098】
によって与えられ、ここで、fはパルス周波数であり、vyは軸yの方向の速度である。
【0099】
表皮深度法を使用するδの決定
【0100】
電子フォノン結合時間がパルス持続時間より長いので、超短レーザーパルスと固体との間の相互作用中、電子は自分のエネルギーをイオンに転送する時間をもたない。これらの条件下では、電子密度は一定のままであると見なすことができ、固体内の電磁場は、材料の式と組み合わせてマクスウェルの式を使用して計算することができる。この場合、材料表面上のレーザーの電場は、材料表面に対する深度とともに指数関数的に減少すると考えることもできる。
【0101】
【0102】
ここで、δは浸透深度または表皮深度である。材料の表面はx=0に対応し、式(12)はx>0の場合に有効である。一般に、吸収深度は、
【0103】
【0104】
のように表され、ここで、κは屈折率の虚数部である。
【0105】
ここで、ε=ε´+iε´´は誘電関数であり、ω
Lはレーザーの周波数である。誘電関数は、以下の計算用のDrude式において考慮することができる。
【0106】
【0107】
ここで、
【0108】
【0109】
ωpeは電子プラズマの周波数であり、veffは電子とイオンの格子との間の有効衝突周波数であり、meおよびneは、それぞれ、伝導電子の質量および密度である。衝突率が高い場合、veff>>ωであり、したがって、
ε´´>>ε´であり、式(13)は以下の形式に縮小することができる。
【0110】
【0111】
アブレーション深度によるδの決定
【0112】
表皮深度法によるδの決定のための非平衡条件下では、電子熱伝導時間(theat)、または電子が表皮層の領域内で熱平衡に到達するための時間も、レーザーパルス持続時間より長い。時間theatは、熱拡散係数を以下のように表すと、以下の式によって近似することができる。
【0113】
【0114】
ここで、KTは熱拡散係数であり、leおよびveは、それぞれ、平均自由電子経路およびその速度である。
【0115】
この場合のエネルギー保存の法則は、表皮層でのエネルギーの吸収によって引き起こされる電子温度の変化を表現する形式をもつことができる。
【0116】
【0117】
ここで、Qは表皮層で吸収されるエネルギーフローである。
【0118】
【0119】
ここで、A=I/I0は吸収係数であり、I0=cE2/4πは入射レーザー強度である。したがって、吸収係数および表皮深度は、レーザー周波数ωL、伝導電子密度ne、電子-電子および電子-イオン衝突の有効周波数veff、レーザーの入射角および偏光の関数である。
【0120】
フルエンスFの超高速レーザーで生成されたクレータの深度zは、以下の式によれば、ビームの浸透深度と同程度である。
【0121】
【0122】
ここで、Fthはアブレーション用のしきい値フルエンスであり、δは2つの温度式内の近似およびフルエンス範囲に応じていくつかの解釈を持つ長さである。通常、低フルエンス領域では、δは光吸収係数に関連し、より高いフルエンスの場合は、電子散乱および時間相互作用持続時間などの熱パラメータに関連する。多くの材料では、高フルエンスおよび低フルエンスでのFthおよびδの値が異なり、境界は材料に依存する。次いで、各材料は、所与のフルエンスゾーン内のパラメータのセット(δ、Fth)によって表される。ガウス強度プロファイルを有するレーザービーム用のレーザーフルエンスFは、
【0123】
【0124】
によって与えられ、ここで、rは半径距離(レーザービームの中心からの距離)であり、F0はフルエンスピークまたはビームの中心でのフルエンスであり、ω0は最大強度の1/e2でのビームの半径である。最大フルエンスF0は、パルスエネルギーEpから取得することができる。
【0125】
【0126】
ガウスビームを照射した後のパルスアブレーションの深度は、以下の関係によって与えられる。
【0127】
【0128】
このモデルは、適用されたフルエンスに対する材料の応答のみに基づく。この手法によって記載されるすべての幾何学的効果は、フルエンスの時間的分布または空間的分布に関連する。
【0129】
マルチパルス照射の場合、表面トポグラフィが平坦ではなく放物面になり、連続する各レーザーパルスの後にその深度が増加することが考慮されなければならない。したがって、アブレーション寸法をより正確に予測するために、いくつかの考慮事項が不可欠である。見逃されるべきでない最初の条件は、インキュベーション、またはパルス数でアブレーションしきい値を下げることである。第2に、エネルギー吸収および反射に対する局所表面角度の影響が考慮されなければならない。
【0130】
最後に、マルチパルス照射は、通常、より深いクレータまたはレーザースキャンを得るために使用されるので、フルエンスのガウスビームの深度による変動も考慮されなければならない。
【0131】
この説明は、アブレーションしきい値に関して比較的低いフルエンスに対して有効である。より高いフルエンスでは、電子散乱またはレーザーと物質の相互作用の持続時間などの熱パラメータも考慮されなければならない。
【0132】
ラインアブレーション
【0133】
ほとんどのアプリケーションでは、サンプルまたはビームが動いている場合、静的な説明は関係がない。数値の説明は動的な状況の場合使用することができる。速度vを有する方向xの動きを考える。レーザーのパルス繰り返し率はPRRなので、2つの連続するパルス間の距離Δxは以下のようである。
【0134】
【0135】
この場合、放射対称性を仮定することは可能でなく、フルエンスはこの場合xおよびyの位置の関数である。次いで、1回のパスで材料によって見られたパルス数Nを入力する必要がある。アブレーション深度は、この場合、以下の式に従って表すことができる。
【0136】
【0137】
ここで、Δxは2つの連続するパルス間の距離であり、F
0はピークフルエンスであり、Fthはアブレーションしきい値のフルエンスであり、w0はポイントの半径である。Xはv/PRRによって与えられ、ここで、vは掃引速度であり、PRRはパルス繰り返し率である。
【0138】
ビームの集束位置がクレータまたはラインの深度の増加で補正されない場合、それは通常のケースであり、前の式において、ω0がω(z)によって置き換えられるべきである。クレータプロファイルは、以下によって定義されるZ(y)「ライン」プロファイルになる。
【0139】
【0140】
前の式の分析計算を実行するために、パルス数がyに依存する、すなわち、それはラインプロファイル全体に沿って同じでないことに留意されたい。パルス数は、以下の式により、ラインに垂直な方向に決定することできる。
【0141】
【0142】
1つのパス用のサンプルポイントによって見られるパルスの総数は2N+1であることに留意することが重要である。この表現はいくつかのコメントにつながる。まず第1に、複数の静的パルスの場合のように、ラインプロファイルはもはや放物線でない。第2に、Δの値に応じて、パルスの最大数は、小さい、たとえば10未満であってよい。ほとんどの材料では、前の3つの式によって現実的な結果を得るために、インキュベーション効果も考慮されなければならない。
【0143】
材料がラインに沿ってアブレーションされるとき、J/cm2で表されるフルエンス(F)は、以下の式により、ラインに垂直な方向に表すことができる。
【0144】
【0145】
Δxは2つの連続するパルスの中心間の距離を表現し、ここで、F0はレーザービームk…のピークフルエンスであり、ω0は最小ビーム幅である。
【0146】
アブレーションしきい値FthはJ.cm-2のフルエンスに関連するパラメータなので、アブレーションしきい値に関する以下の仮定が好まれる。
-デブリの再堆積はごくわずかである、
-アブレーション速度は前のパルスとの相互作用の影響を受けない、
-材料の表面上の熱の蓄積、もしくは熱の影響、またはプラズマ吸収は存在しない、
-内部反射は存在しない。
【0147】
レーザー処理機のパフォーマンスに関して、レーザービームのアブレーション率は以下の式によって定義することができる。
【0148】
【0149】
フルーエンスアブレーション率も以下の式によって定義することができる。
【0150】
【0151】
次いで、最大アブレーション率は以下の式によって定義することができる。
【0152】
【0153】
アブレーション率を定義する式は、以下のパラメータが考慮されることを可能にしないので、制限がある。
-加工部品のコニシティによる飽和、
-反射率(S、P)、
-インキュベーション、
-熱効果。
【0154】
上記のパラメータは、目標の加工用の加工パラメータを予測するためのモデルで考慮に入れることができる。これらのアブレーションプロファイルを定義する式を用いてレーザービームのすべてのフルエンス範囲のアブレーションプロファイルをシミュレーションすることにより、これらの式において考慮されていないパラメータを変更する。そのような方法は、あまりに遅い方法であり、あまりに多くの実験を必要とする。
【0155】
限られた数のパラメータで実験設計を実行し、最終結果に最大の影響を与えるパラメータを識別する。
【0156】
対角スキャンモデル(Diagonal-Scan)を使用するしきい値フルエンスの決定。
【0157】
【0158】
ビームの局所入射角の考察
【0159】
この局所的な表面角度補正を導入する1つの方法は、ビーム方向と表面との間の角度がクレータの縁からクレータの中心まで変化するので、フルエンスがクレータの中心までの距離rとともに変化することを考慮することである。深いクレータの場合、この角度は壁では小さいが、中心で90°に達するはずである。壁のコニシティγ(r)は、考慮されるrでのクレータプロファイルの導関数に直接関連する。
【0160】
【0161】
それは、(下の図では赤い線Lによって示された)クレータプロファイルの各ポイントでの接線の勾配と等しい。したがって、N個のパルスの後のローカルフルエンスF_N(r)は、以下のように簡単に表すことができる。
【0162】
【0163】
上記の式は、フルエンスが1つのパルスから次のパルスまで一定のままである場合でも、たとえば、サンプルにすでに穴が開いている場合または大きなクレータ形状の場合でも使用することができる。
【0164】
非垂直ビーム入射の考察
【0165】
表面に垂直なキャビティ壁を必要とするいくつかのアプリケーションが存在するが、それは、レーザービームが表面に向かって垂直にスキャンされている場合に実現することは困難である。しかしながら、レーザービームが表面に対して傾いている場合は、負または0°の壁のコニシティを取得することができる。これをモデル化するために、ビームに対する表面角度も考慮されなければならない。したがって、前の式は以下のようになる。
【0166】
【0167】
ここで、βは表面の法線とレーザービームとの間の角度である(
図1)。アブレーションの方向は、元の表面に垂直ではなく、ビームの方向に平行であるべきことも考慮されるべきである。したがって、
図18bに示されたように、基準座標はそれに応じて適合されなければならない。
【0168】
前述されたように、関数(27)または(27´)は、ビームが表面に垂直な状態での溝のアブレーションには有効であり得るが、ビームが処理パラメータを使用して負のコニシティにつながる表面の法線に対して傾斜している場合は、有効でなくなる。そのような場合、2つ以上の深度zに対応する位置yが存在する。したがって、この手法で取得することができる最小のコニシティは0°に向かう傾向がある。
【0169】
この制限を克服するために、モデルは、ビームを傾斜させるのではなく、深度を計算する前に表面を傾斜させる(
図17b)ことによってこのタイプの計算を数値的に実行する。そのような方法の利点は、負のコニシティを有する加工のシミュレーションが可能になることである。
【0170】
反射率の考察
【0171】
偏光は、反射ビームの役割のために、金属のレーザーアブレーションプロセスで主要な役割を果たす。入射角αによる反射率の発生は、s、p円偏光用のフレネル公式によって与えられる。
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
材料によって吸収されるフルエンスは、以下の式によって与えられる。
【0176】
【0177】
ここで、Rは偏光放射の方向に応じてRS、RP、またはRcircularである。表面反射率の寄与が考慮に入れられることを可能にする式によって表現された補正に導入する場合、N個のパルス後に吸収されるローカルフルエンスは以下のようになる。
【0178】
【0179】
参照の場合、(
図18b)、α=90°-γを使用する。一般に、金属について、コニシティが低い場合、すなわち、aの値が高い場合、p偏光反射率が低くなり、透過率が向上するので、コニシティが低い場合のアブレーション効率も向上する。斜めビームの場合、βの代わりにα-βを用いて同じ計算を行うことができる。中程度の偏光では、R
sおよびR
pの反射率式を使用してN個のパルス後のローカルフルエンスを定義する式におけるF
0(0)での乗法係数による影響が考慮される。この係数は、20°を超えるコニシティの場合1であり、βの値に応じて、20°未満のコニシティの場合も1に達することができる。
【0180】
従来技術で提案されているものと比較して、本発明のシミュレーション方法は、レーザー放射の波長の関数としてその複素屈折率(n+ik)を決定するために、材料レーザー相互作用パラメータがモデル化され、データベースに追加された各材料が偏光解析法によって分析されることを含む。
【0181】
したがって、反射率は以下のように考慮される。
-反射率は、それぞれ、S、P、または円偏光について、式(38)、(39)、および(40)のフレネル式に従って、Rs、Rp、または(Rs+Rp)/2として計算される。
-0から1の間になる、結果として得られるRは、入射フルエンスから差し引かれ、以下の式によって与えられる吸収フルエンスを与える。
【0182】
Fabsorbed(y)=Fc(0)×sin(γn(y)+β)×(1-R)
【0183】
ガウスビーム伝搬
【0184】
レーザー治療は、通常、特定の焦点距離のレンズを使用して集束した(ガウス)ビームで実行されるので、ほとんどの実験は焦点面までの表面距離を調整せずに実行されるため、ビーム伝播が考慮されなければならない。アブレーションの深度が増加する。焦点面距離の関数としてのビーム半径の変化は、
【0185】
【0186】
によって与えられ、ここで、zRは以下の関係によって与えられるレイリー距離である。
【0187】
【0188】
非垂直入射の場合、
図19に示されたように、幾何補正を適用することにより、zおよび動径座標rの関数としてのフルエンス分布を数値で決定することができる。傾斜角α=90°-βのビームの中心は、以下のように表現することができる。
【0189】
【0190】
ここで、fは表面から焦点面までの距離である。一方、ビームのこの中心軸に垂直で、一般的な点P(r、z)を通るラインは、以下によって与えられる。
【0191】
【0192】
一般的な点P(r、z)でのフルエンスを決定するために、平面zPに沿った強度のガウス分布、および点BP(r、z)と焦点fとの間の距離を知る必要がある。ポイントBPは、2つのラインzBおよびzPの交点から計算することができる。
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
次いで、距離z´およびr´は、ポイントBPおよびPのデカルト座標から容易に取得することができる。
【0197】
【0198】
【0199】
2つの距離z´およびr´から、次いで、ラインzPによって表現されたこの平面上のビームの幅を使用して、ローカルフルエンスを計算することが可能である。
【0200】
【0201】
レーザー治療は、通常、特定の焦点距離のレンズを用いて集束した(ガウス)ビームで実行されるので、ほとんどの実験は、アブレーションの深度が増加するので、焦点面までの表面距離を調整せずに実行されるため、ビーム伝播が考慮されなければならない。
従来技術とは対照的に、中央ユニットによって実装されるアルゴリズムに含まれるモデルは、ビーム伝搬を考慮に入れる。焦点面距離の関数としてのビーム半径の変化は、
によって与えられ、ここで、z_R、レイリーの距離は以下の通りである。
たとえば、これにより、焦点直径30μmおよび波長1030nmのビーム用の焦点面領域内の以下のビーム分布プロファイルが得られる。この場合、レイリー距離は686.27μmである。
【0202】
歳差レーザービームを使用する加工のシミュレーション
【0203】
歳差レーザーアブレーションは、たとえば、ノズルおよびガスを使用すること、またはスキャナヘッドでビームを高速でスキャンすることよりも有利で効率的な、ストレートサイドの切断および穴あけを高速で実行することを可能にする技法である。歳差運動は、レーザーの光路内で回転ミラーまたは他の回転要素を使用することによって実現することができる。回転ミラーを使用すると、ビームの回転速度ω(rpm)、ビームBFG(ベストフォーカス-グローバルビーム)の回転中心の位置、ならびに表面に対するビームBFI(ベストフォーカス個別ビーム)の焦点面および迎え角βを制御することが容易である。
【0204】
このアブレーション構成では、パルスの重ね合わせは、直線的にスキャンされたビームによって生成されるアブレーションとは異なる。ドリル穴のアブレーションプロファイルを決定するために、歳差半径rPおよび角度θに依存するスポット間の距離dxが知られなければならない。
【0205】
歳差半径rPは、
【0206】
によって与えられ、ここで、BFGはビームの回転中心までの距離であり、βは迎え角であり、zは材料表面までの距離である。
【0207】
2つの連続するパルス間の距離dxは、NR個の側面をもつポリゴンの2つの頂点間の距離として計算することができ(式57)、ここで、NRは1回転中のパルスの総数である。NRは、パルス繰返し率PRR(Hz)および回転速度ω(rpm)に依存する(式56)。
【0208】
【0209】
【0210】
したがって、最初のパルスn
0とパルスn
Nとの間の距離dxがアブレーションされたクレータの半径r
cよりも小さい場合、パルス間に重ね合わせが存在し(
図20a)、r
cは以下によって与えられる。
【0211】
【0212】
最後に、中心までの距離の関数として、1回転中に各パルスnによって生成されるアブレーションの深度は、
【0213】
【0214】
によって与えられ、ここで、δは材料への放射の浸透の深度であり、F0は最大フルエンスであり、Fthはアブレーションしきい値であり、wはガウスビームの半径であり、pはガウス次数である。この深度はR回反復されなければならず、ここで、Rは回転の総数であり、
【0215】
【0216】
によって与えられ、ここで、proc.timeは総加工時間である。ガウスビームの半径は、焦点までの距離BFIに依存することにも留意されたい。上述された式では、以下に留意することが重要である:wは加工深度が増加するにつれて変化する。各インパルスの後、加工の一部がすでにアブレーションされている場合、rPは変化する。
【0217】
好ましくは、上述された式は、2次元および/または3次元の加工プロファイルをシミュレートするためのアルゴリズムを実装するために、個別または組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0218】
本発明のこれらおよび他の態様は、本発明の特定の実施形態の詳細な説明において明確にされるべきであり、図の図面に対して参照が行われる。
【
図1】ガウス強度プロファイルを有するビームの主な特性を表す図である。
【
図2】パルス数およびパルスエネルギーが増加するクレータの行列を表す図である。
【
図3b】
図3aに記載されたラインに対して横方向に得られたフルエンスプロファイルの図である。
【
図3c】
図3aに記載されたラインに対して横方向のパルス数Nの分布を表す図である。
【
図4b】
図4aに記載されたラインに対して横方向に得られた溝の深さの図である。
【
図5】レーザーのフルエンスの関数としてアブレーション率(左)および最大アブレーション率を表すラインの断面について得られたシミュレーション結果を示す図である。
【
図6a】D-Scan法を実装するための軸YおよびZの方向へのサンプルの変位を示す図である。
【
図6b】
図6aの実験プロトコルの実装から得られたアブレーションローブの図である。
【
図7a】表皮深度法を使用してδの値を推定するために実行されるべき実験の概略図である。
【
図7b】表皮深度法を使用してδの値を推定するために実行されるべき実験の概略図である。
【
図7c】
図7aに示された実験用のモデルと比較された実験結果を示す図である。
【
図7d】
図7bに示された実験用のモデルと比較された実験結果を示す図である。
【
図8a】5KHzのレーザービームパルス周波数について、
図7aに示された実験からの寸法ρ
minおよびρ
maxについての結果を示す図である。
【
図8b】100KHzのレーザービームパルス周波数について、
図7bに示された実験からの寸法ρ
minおよびρ
maxについての結果を示す図である。
【
図9】
図8aおよび
図8bの5KHzおよび100KHzの実験の結果を、パルス数Nの関数としてフルエンスF
thを示すグラフで示す図である。
【
図10】左側の偏光Sおよび右側の偏光Pに対する入射角の関数として測定されたアブレーションのシミュレーションを示す図である。
【
図11】ガウスビームの伝搬を示し、伝搬距離zの関数としてビーム直径wを表す図である。
【
図12】δの2つの値についての実験結果およびシミュレーション結果を表し、ビームフルエンスの関数として最大深度を表す図である。
【
図13】δの2つの値についての実験結果およびシミュレーション結果を表し、ビームのスキャン速度の関数として最大深度を表す図である。
【
図14a】ステンレス鋼316Lで得られた実験およびシミュレートされたプロファイルを表す図である。
【
図14b】ステンレス鋼316Lで得られた実験およびシミュレートされたプロファイルを表す図である。
【
図15a】ステンレス鋼316Lで得られた実験およびシミュレートされたプロファイルを表す図である。
【
図15b】ステンレス鋼316Lで得られた実験およびシミュレートされたプロファイルを表す図である。
【
図15c】ステンレス鋼316Lで得られた実験およびシミュレートされたプロファイルを表す図である。
【
図16a】ステンレス鋼316Lで得られたスキャンの断面図である。
【
図16b】ステンレス鋼316Lで得られた対応するシミュレートされた断面図である。
【
図17a】垂直入射角を有する加工の概略図である。
【
図17b】非垂直入射角を有する加工の概略図である。
【
図18】非垂直入射でのローカルフルエンスの計算のための実験における光ビームの角度の概略図である。
【
図19a】加工されるべき材料の表面の法線とのゼロでない迎え角を有する加工レーザービームで実行される加工のための従来技術による加工プロファイルのシミュレーションを示す図である。
【
図19b】加工されるべき材料の表面の法線とのゼロでない迎え角を有する加工レーザービームで実行される加工のための本発明の方法の特定の実施形態によるシミュレーションを示す図である。
【
図20a】歳差運動レーザー加工ビームを用いた加工の概略図である。
【
図20b】本発明の方法の特定の実施形態による加工のシミュレーションを示す図である。
【
図20c】本発明の方法の特定の実施形態による加工のシミュレーションを示す図である。
【
図21a】加工の断面画像の形で加工結果を示し、
図21bに示される加工シミュレーションが加工結果に重ね合わされる図である。
【
図21b】本発明の方法の特定の実施形態による加工のシミュレーションを示す図である。
【
図21c】加工の断面画像の形で加工結果を示し、
図21dに示される加工シミュレーションが加工結果に重ね合わされる図である。
【
図21d】本発明の方法の特定の実施形態による加工のシミュレーションを示す図である。
【
図22a】歳差運動または回転加工レーザービームの衝撃点の概略図である。
【
図23】本発明の好ましい実施形態のフロー図である。
【
図24】本発明の好ましい実施形態のフロー図である。
【
図25】本発明の好ましい実施形態のフロー図である。
【
図26】本発明の好ましい実施形態のフロー図である。
【
図27】発明の好ましい実施形態のフロー図である。
【
図28】本発明の好ましい実施形態のフロー図である。
【
図29】本発明の好ましい実施形態のフロー図である。
【
図30】本発明の好ましい実施形態のフロー図である。
【
図31】本発明の好ましい実施形態のフロー図である。 図の図面は縮尺通りではない。一般に、同様の要素は図の中の同様の参照によって表記される。図面内の参照番号の存在は、そのような番号が特許請求の範囲において示されるときでも、限定と見なされなくてよい。 本発明の方法を実装するための実験装置の例
【発明を実施するための形態】
【0219】
上述されたモデルを比較するために実行される実験は、研磨されたステンレス鋼316Lおよび316ならびにTiCr6Sn4のサンプルに対して実行された。テストは、約330fsのパルス持続時間、1030の放射波長、および500kHzで最大出力20WのSatsuma HP2(Amplitude Systems)フェムト秒レーザーを使用して空気中で実行された。ビームは、焦点距離100mmのテレセントリックレンズを使用してサンプルの表面に集束し、D2法を使用して決定された約10μmのスポット半径を生成した。
【0220】
処理されたサンプルの形態学的分析およびトポグラフィ分析は、共焦点光学顕微鏡(Olympus LEXT OLS4100)を使用して実行された。
【0221】
しきい値フルエンス(Fth)値を計算するためにD2法が使用された。δの値を決定するために、パルスエネルギーが増加するいくつかのラインスキャンが生成され、それの深度が測定された。モデルに適用されたδ値は、実験結果との最良の一致が得られるまで変化した。
【0222】
好ましくは、データベースに提供される結果の量が多いほど、レーザー加工パラメータがより正確に決定される。
本発明の特定の実施形態の詳細説明
【0223】
図1は、ガウスレーザービームの強度プロファイルを示す。ビームの中心は、ビーム半径rを定義する横軸に沿った値0によって定義され、最大強度I
0はビームの中心で観測される。ビーム中心に対するビーム半径ω
0は、I
0/2に等しいビーム強度値に対して定義される。
【0224】
図2は、D
2法によるアブレーションしきい値の決定を実装するために加工されるべきクレータ行列を示す。
図2は、本発明のレーザー加工機でクレータ行列を生成するための好ましい実施形態を記載する。
図2に示された行列は、10と110との間の列の各々についてのパルス数、および本発明のレーザー加工機によって提供することができる最大ビーム値の10%と100%の間のビームエネルギーを示す。示されたビームエネルギーおよびパルス数を考慮しながら、そのようなクレータの行列を実現し、続いてこの行列のクレータのトポロジー特性および/または次元特性により、アブレーションしきい値、インキュベーション係数、またはさらにビーム半径を定義することが可能になる。好ましくは、クレータ行列の生成は、
図2の矢印によって示されたように、パルス数およびパルスエネルギーを増やしながら実行されるべきである。十分な実験ポイントをもつために、少なくとも20のエネルギー値および100パルス未満のいくつかのパルス数値が必要とされる。各クレータの直径は、光学顕微鏡もしくは電子顕微鏡、または側面計で取得された画像から測定することができる。
【0225】
図3aは、ラインに沿った複数のパルスを示す。パルスは、ライン上にその中心を有する円によって表される。各円の中心、すなわち、各パルスの最大強度が最大値I
0である点は、Δx=v/PRRのラインに沿って間隔が空けられる。vはビームの移動速度であり、PRRは単位時間あたりのパルス数である。
図3aは、各円の間の距離が各円の半径よりも小さい、ラインに沿ったパルスの場合、統計的にラインのエッジよりも多くのパルスがラインの中心に到達することを示す。
【0226】
図3bは、
図3aに記載されたラインに対して横方向に得られたフルエンスプロファイルを示す。このフルエンスプロファイルは、ラインの中心でのフルエンスがラインのエッジでのフルエンスよりもはるかに高いことを示す。
【0227】
図3cは、
図3aに記載されたラインに対して横方向にパルス数Nの分布を示す。
図3aの説明から予想されるように、統計的には、ラインのエッジよりも多くのパルスがラインの中心に到達する。
【0228】
図4aは、
図3aのように、ラインに沿った複数のパルスを示す。
図4bは、以下の実験パラメータを用いて
図4aに記載されたラインに対して横方向に得られた溝の深さを示す。
-材料:鋼、
-ω
0=12.5μm、
-F=3J/cm2、
-V=50mm/s、
-PRR=200kHz。
【0229】
図7cおよび
図7dは、
図7aおよび7bに記載された実験によって得られた対応するモデルと比較された実験結果を表す。
図7cは、スチール基板上で得られた最大スキャン深度を最大フルエンスの関数として示す。
図7dは、スチール基板上で得られた最大スキャン深度をオフセット速度またはスキャン速度の関数として示す。
【0230】
図8aおよび
図8bは、本発明のアルゴリズムによる回帰がパラメータω
0を決定することを可能にする、
図6aおよび
図6bに記載された実験について得られた点群を示す。
【0231】
図9は、5KHzおよび100KHzの2つのパルス周波数に対するD-scan法の実験結果を示す。これら2つのセットの実験結果の回帰もラインによって示される。これら2つの回帰のパラメータは、Gama、Beta、およびAlfaによって示される。
【0232】
図10は、以下の特性:n=0.9+2.25iをもつ鋼基板との偏光ビームの相互作用のためのパラメータを示す。
図10は、偏光sおよび偏光pのための0°と90°との間の入射角用の相互作用パラメータを示す。偏光pを表す曲線は、90°の入射角で100%の最大値を有する曲線である。
【0233】
図11は、その最小幅でのビーム幅w
zのシミュレーションを示す。最小ビーム幅は、0の値をもつ伝播方向zの距離zで示される。シミュレートされたビームプロファイルは、方向zにおけるビームの発散を示す。
【0234】
図12は、ビームフルエンスの関数としての最大深度に関するδからの2つの値に対する実験結果およびシミュレーションを示す。2J/cm
2未満で4.5J/cm
2を超えるピークフルエンス値の場合、実験結果は、32nmおよび34nmの値δをもつ2つのシミュレーションとは異なる。この図は、可能な限り多くの加工パラメータを考慮に入れるために十分完全なシミュレーションアルゴリズムをもつ必要があることを非常によく示す。したがって、材料レーザー相互作用パラメータを適切に考慮すると、加工結果と一定のデルタに対するシミュレーションの予測との間の良好な相関関係を取得することが可能になる。
【0235】
図13は、ビームスキャン速度の関数として最大深度を示し、実験的なアブレーション結果とビームスキャン速度との間の良好な相関関係を示す。実験結果はまた、32nmから34nmまでδのパラメータを変化させたときに比較的良好な堅牢性を示す。
【0236】
図14aおよび
図14bは、最大フルエンス2.14J/cm
2、掃引速度230mm/s(
図14a)および1.25J/cm
2、掃引速度50mm/s(
図14b、p偏光および250kHzの周波数)を有するステンレス鋼316Lで得られた実験プロファイルおよびシミュレートされたプロファイルを示す。アブレーションの最大深度ならびにアブレーションプロファイルに関して、実験結果とシミュレーション結果との間の良好な対応関係が観察される。一方、アブレーションのエッジでの材料の再堆積は、シミュレーションによって考慮されない。本発明のシミュレーション方法により、適合されたアルゴリズムを開発することによって実験的に実行されたアブレーションのエッジ上の材料の再堆積を考慮することが可能になる可能性がある。
【0237】
図15a、
図15b、および
図15cは、最大フルエンス1.92J/cm
2、スキャン速度100mm/s、周波数100kHzのステンレス鋼316Lで得られた実験プロファイルおよびシミュレートされたプロファイルを表し、
図15aは17スキャン後に得られ、
図15bは33スキャン後に得られ、
図15cは65スキャン後に得られる。
図14aおよび
図14bと同じ観察結果を観察することができる。
【0238】
図16aおよび
図16bは、
図16aではスキャンの断面を示し、最大フルエンス2.9J/cm
2、スキャン速度500mm/s、周波数100kHz、および表面の法線に対して15°傾斜したビームを有する500パスのステンレス鋼316L上で得られたシミュレートされたスキャンに対応するもの(
図16b)を示す。本発明のモデルは、加工されるべき材料に入射するビームの入射角を十分考慮に入れることを可能にする。
図16aに示されたように、重ね合わされた加工(アブレーション)の顕微鏡検査とシミュレーションとの間には良好な対応関係が存在する。
【0239】
図17aおよび
図17bは、工作物の表面に垂直な入射角、および工作物の表面に対する角度90°-βを表現する入射角で得られた加工プロファイルを示す。たとえば、工作物の表面に対する入射角が異なるこれらの概略図により、ローカルフルエンスを計算することが可能になる。
【0240】
図18は、非垂直入射下でのローカルフルエンスの計算のための実験における光ビームの角度の概略図を示す。詳細には、この概略図は、加工されるべき基板での非垂直入射を有するビームの発散を示す。集束ビームのこの発散によって引き起こされる特性がこのように示される。
【0241】
図19aおよび
図19bは、加工されるべき材料の表面の法線とのゼロでない迎え角を有する加工レーザービームで実行される加工のための従来技術(
図19a)による加工プロファイルのシミュレーションと、本発明の特定の実施形態(
図19b)によるシミュレーションとの間の比較例を示す。
図19aと
図19bの両方は、w0=14μm、PRR=200kHz、Δx=0.75μm、F0=8J/cm2、および入射角8°のステンレス鋼で得られたマルチパスプロファイル(どちらの場合も、δ=32nm、Fth(1)=0.1J/cm2、S=0.8、n=0.9-2.25i)である。図の中の数字は、シミュレートされた2次元の加工プロファイルの各々についての加工レーザービームのパス数を示す。したがって、シミュレーションは50、100、200、300、402個のパスについて実行された。材料の表面に対してゼロでない角度を有する加工レーザービームの処理を可能にする本発明の特定の実施形態は、加工が同じレーザーパラメータをどのように使用しているかの非常に代表的なシミュレーションを可能にする。従来技術の方法を使用するシミュレーションの場合、高い数値が、加工フランクが材料の表面に垂直に近づくことを可能にするが、それに到達することはなく、これは、よく制御された材料の表面に対してフランクのコニシティを有する加工のシミュレーションでは問題になることが観察された。実際、よく制御されたビーム角度での加工を可能にする歳差運動または他の加工レーザービームモジュールは、適切なシミュレーションツールを必要とする。本発明の特定の実施形態は、それらのうちの1つであると思われる。
図19aおよび
図19bの縦軸は、μmで表されたシミュレートされたアブレーション深度を表す。
図19aおよび
図19bの横軸は、加工されるべき材料の表面に平行な次元に対応する次元yを表す。
【0242】
図20aは、歳差レーザー加工ビームを用いた加工の概略図を示す。それは、材料の表面に本質的に垂直な軸zに対して、その表面が座標z=0に対応する加工されるべき材料を示す。レーザービームは、特に、回転方向を示す円形矢印によって示されたように、歳差運動中に回転している。ビームはこの円形矢印の側面から生じ、加工されるべき材料に向けられる。加工レーザービームは、歳差レーザービームの軌跡を示すために、材料を通過するように示される。したがって、レーザービームは、材料の表面に本質的に平行な平面BFG上に位置する点BFGを表現する。図に示されたように、歳差ビームは常に点BFGにある同じ点を通過する。さらに、平面BFIは歳差レーザービームが集束する平面である。歳差レーザービームは、材料の表面に垂直であるように表された軸の周りを回転する。したがって、歳差レーザービームは、ビームの回転軸に対するビームのすべての歳差位置についての角度βを表現する。
【0243】
図20b、
図20c、
図21b、および
図21dは、
図20aに概略的に示された歳差レーザービームについての本発明の特定の実施形態による加工シミュレーションを示す。
図20b、
図20c、
図21b、および
図21dは、軸y、zに沿った2次元の加工プロファイルを示し、縦軸は次元z(アブレーションの深度)を表し、横軸は次元yを表す。
図20bは、BFG=150μmおよびBFI=-50μmを用いた歳差レーザー加工ビームのシミュレーションを可能にする、本発明の特定の実施形態によるシミュレーションに対応する。同様に、
図20cは、BFG=-100μmおよびBFI=-500μmを用いて取得された。
図20bおよび
図20cのシミュレーションは、レーザーパラメータ:w
0=10μm、PRR=500kHz、E
p=20μJ、ω=30000rpm、β=4.5°、加工時間=50msを用いて取得された。
図21bは、BFG=0μmおよびBFI=-400μmを用いた歳差レーザー加工ビームのシミュレーションを可能にする、本発明の特定の実施形態によるシミュレーションに対応する。同様に、
図21dは、BFG=-100μmおよびBFI=-500μmを用いて取得された。
図21bおよび
図21dのシミュレーションは、レーザーパラメータ:w
0=12μm、PRR=100kHz、E
p=27μJ、ω=30000rpm、β=4.5°、加工時間=50msを用いて取得された。
【0244】
図21aおよび
図21cは、加工の断面切断画像の形で加工結果を示し、
図21bおよび
図21cに示された加工シミュレーションは、それぞれ、加工結果に重ね合わされる。したがって、加工シミュレーションは、歳差レーザー加工ビーム用の同じパラメータに基づいて得られる加工の良好な予測を可能にすることが観察される。
【0245】
図22aは、歳差運動または回転加工レーザービームの衝撃点の概略図を示し、
図22bは、
図22aの詳細を示す。
図22aは、歳差レーザー加工ビームのパルス重ね合わせを示す。それは平面内、好ましくは材料の表面上でのレーザーパルスの投影なので、ここでは点によって表された軸の周り。したがって、歳差レーザービームの回転軸は、材料の表面に垂直であり、したがって点によって表される。各円は1つのパルスを表す。各パルスの中心は、加工レーザービームの回転軸を中心とする歳差円上に位置する。歳差円は半径r
pを有する。歳差円上の隣接する各円の中心間の距離はdxである。好ましくは、dxは加工中一定である。隣接する各円の中心は、歳差軸に対する角度θを表現する。
図22bは、
図22aの詳細図を表し、その中で、パルスに対応する円の中心は、n
0、n
1、n
2、n
3、・・・と名付けられる。n
0とn
1との間の距離はd
1であり、n
0とn
2との間の距離はd
2であり、n
0とn
3との間の距離はd
3である。
【0246】
図23~
図31は、レーザー加工システムの様々な要素、および可能なステップまたは行うことができる決定を表現するフローチャートを表す。詳細には、これらのフローチャートは、それによって情報を導くことができ、最適なパラメータでの材料の加工、または材料データベースおよび/もしくは機械学習によって学習された機能の強化につながる手段を示す。
【0247】
図23は、本発明に従って利用可能な様々なアクションのステップおよび遷移制御(Grafcet)用の機能グラフまたは機能フローチャートを表す。詳細には、このフローチャートは、材料のパラメータがデータベース内で利用できない場合に、本発明の方法が、加工されるべき材料に関係するデータの取得を可能にするために既定の試験加工の起動に頼るように決定できることを示す。
【0248】
図23は以下の手順を示す。加工されるべき材料がレーザー加工システムに伝達され、レーザー加工システムは、この材料に関する情報が材料データベースまたは学習済み機能のデータベースに存在するかどうかを照会する。肯定的な回答の場合、加工パラメータの手動決定または自動決定を選択することが可能である。
【0249】
加工パラメータが自動化方式で決定される場合、学習システムは、求められる加工結果を知る要求を送信する。達成されるべきこの結果はまた、加工されるべき材料が伝達されたときに伝達することができる。ユーザによって定義された達成されるべき結果(目標結果)に基づいて、レーザー加工システム、詳細には中央ユニットは、加工装置の特性に関する情報、ならびに加工されるべき材料の情報に関するデータベースの1つで利用可能な情報を収集する。次いで、学習中央ユニットは、加工されるべき材料、加工装置の特性、および求められる加工結果の情報を考慮することにより、モデル化および/または機械学習用の手段の活用を可能にする。次いで、学習中央ユニットは最適な加工パラメータを生成することができる。次いで、これらの最適な加工パラメータは、達成されるべき結果に従って加工されるべき材料のレーザー加工を開始するために、レーザー加工装置に送信される。学習中央ユニットがネットワーク接続を介してレーザー加工装置に接続されることが可能であり、その結果、学習中央ユニットは、レーザー加工装置に関連して再配置することができる。
【0250】
加工パラメータが手動で決定される場合、中央ユニットは、達成されるべき結果を得るためにユーザからパラメータを取得する要求を送信する。好ましくは、ユーザによって送信されるパラメータは、ユーザが最適な結果であると信じるパラメータである。しかしながら、レーザー加工システムのオペレータが達成されるべき結果を取得することを可能にするパラメータを指定するために、しばしば、いくつかの反復が必要である。パラメータがユーザによって伝達されると、モデル化手段が実装される。モデル化手段は、好ましくは、提供されたパラメータに基づいて加工の推定を可能にするアルゴリズムを含むモデルを備える。したがって、モデル化手段に結合されたシミュレーション手段は、伝達されたパラメータに基づいて得られることが予想される結果のシミュレーションを実行することを可能にする。次いで、オペレータは、パラメータに基づく結果のシミュレーションを達成されるべき結果と比較することができる。シミュレーションが達成すべき結果に一致しない(または十分に一致する)とオペレータが考え、これを中央ユニットに伝達した場合、中央ユニットは加工パラメータの手動決定または自動決定の間の選択肢を提案する。オペレータは、伝達されたパラメータに基づいて予想された結果のシミュレーションが達成されるべき結果に一致するまで、いくつかの異なる加工パラメータを手動でテストするように決定することができる。オペレータが伝達されたパラメータに基づいて予想された結果(加工)のシミュレーションに満足すると、最後のモデル化およびシミュレーションで使用されたパラメータに基づいて加工を開始するように決定することができる。オペレータはいつでも自動パラメータ検索の使用を選択することができるので、レーザー加工システムは上述された自動モードを使用する。次いで、中央ユニットは、求められる加工結果を知る要求を送信し、上述され、フローチャートによって表された最適な加工パラメータを決定する。手動モードでのモデル化のステップ中、モデル化手段は、材料データベースならびに加工装置の特性にアクセスすることができる。
【0251】
加工されるべき材料に関する情報が材料データベースまたは学習済み機能のデータベースに存在するかどうかについての照会に否定の答えが返された場合、レーザー加工システムは既定の加工テストを定義する。これらの既定の加工テストにより、レーザー加工システムが、材料、好ましくは加工されるべき材料と同一である材料データベース内の材料に対する既定の加工を生成することが可能になり、加工は分析ユニットによって分析され、分析結果は中央ユニットに送信される。
【0252】
分析の結果は、加工されるべき材料に固有の物理的または材料の光相互作用パラメータを抽出するためのモデル化手段に伝達される。加工装置の特性に関する情報を受け取るためのモデル化手段。モデル化手段によって決定されたパラメータは、それを強化するために材料データベースに伝達される加工パラメータである。加工されるべき材料がデータベース内で知られているとき、加工プロセスを、特に、手動(本発明)または自動のパラメータ検索を提案する段階に向けて続行することが可能である。
【0253】
分析結果が中央ユニットに報告されると、加工システムの機能にアクセスできる加工システムの中央ユニットは、加工されている材料に関する情報が生成され、材料データベースに記憶または更新されることを可能にする。
【0254】
前の段落に記載された好ましい実施形態が
図24に示される。したがって、同じデータベースは、機械学習アルゴリズムを実装するための学習データベースを形成するために、同じ材料、材料の物理的な特性、ならびにレーザー加工システムに関する情報を一緒にグループ化するために使用することができる。
図23について記載されたフローチャートは、必要な変更を加えて
図24に適用される。
【0255】
図25は、レーザー加工システム向けの決定論的レジームにおける最適な加工パラメータを決定するための本発明の一実施形態を示す。詳細には、この実施形態は、主として本発明によって記載された既知のアルゴリズムの使用に基づく。この実施形態はまた、本発明のアルゴリズムによって取得されるか、またはユーザによって定義されるレーザーパラメータについて取得されるはずのアブレーションのシミュレーションを可能にする。この図は、
図26~
図28で詳述される実施形態を記載する。これらの実施形態は、
図23および
図24に示されたフローチャートから導出される。
【0256】
図26は、たとえば、既定の試験が加工されており、それについて結果が
図23および
図24について記載されたモデル化手段に伝達される場合に、材料データベースへの物理的材料特性の供給を可能にする本発明の一実施形態を示す。モデル化手段に材料データベースを連結する矢印は、いずれの方向にも解釈することができる。この実施形態の目的は、データベースにおける実験パラメータの決定および記憶である。レーザー加工装置によって実行された加工から、この加工の結果は中央ユニットに伝達され、中央ユニットにより、材料の物理的パラメータを抽出するために実験データが処理されることが可能になる。
【0257】
図27は、必ずしもレーザー加工装置の使用を必要としないシミュレーションを可能にする本発明の一実施形態を示す。材料データベースに以前記憶された材料の物理的な特性により、ユーザパラメータおよび加工装置の特性に従って、加工について得られる可能性がある結果のシミュレーションが可能になる。
【0258】
図28は、達成されるべき結果、レーザー加工装置の特性、および、たとえば前の加工中に観察され、材料データベースに記憶された材料の物理的な特性を含むデータベースから、最適な加工パラメータを決定するための本発明の一実施形態を示す。
【0259】
図29は、本発明の一実施形態、特に、材料の物理的な特性または機械学習によって学習された機能を考慮するための機械学習手段に基づく本発明の一実施形態を示す。学習済み機能は、学習機能に含まれる学習アルゴリズム自体の学習の結果である。この情報は、好ましくは、1つのデータベースまたはいくつかのデータベースに記憶される。この実施形態は、好ましくは、非決定論的な最適パラメータ決定レジームに基づき、すなわち、決定論的な機能を定義するアルゴリズムを含むモデル化手段を必ずしも使用しない。
【0260】
好ましくは、
図29に詳述された実施形態は、その学習済み機能がデータベースに記憶される学習機能を含む。この実施形態により、本発明の方法が、過去の経験および観察に基づいて最適なパラメータを学習および改良することが可能になる。たとえば、最適な加工パラメータを決定するためのアルゴリズムを学習する際に、他のレーザー加工装置で実行された実験が考慮される。この実施形態はまた、目標の加工用の最適な加工パラメータを得るために、実験データを収集するために特定の実験が実行されることを可能にする。たとえば、既定の試験は、本発明のレーザー加工システムにおいて利用可能であり、目標の加工に関して高い忠実度で加工を得ることが必要であると見なされるときに適用可能である。
【0261】
図30は、学習済み機能としての学習機能の自動学習および自動記録を可能にする、
図29の特別な実装形態を示す。
図30は、非決定論的モードにおいて機械学習による学習済み機能のデータベースの供給を示す。好ましくは、この実施形態は、選択された材料で開始することができる既定の加工テストを実施する。たとえば、
図2、
図3a、
図6a、
図6b、
図7a、
図7bにおいて、既定の加工テストが定義される。これらのテストにより、分析ユニットによって取得された加工を特徴付けた後、機械学習および学習済み機能の決定が可能になる。これらのテストの結果、およびこれらのテストを考慮して生成された学習済み機能は、次いで、データベースに記憶される。
【0262】
図31は、加工されるべき材料に対応する学習済み機能に基づいて、中央ユニットまたは学習手段によって生成された最適なパラメータを使用して工作物を加工するための一実施形態を示す。この実施形態により、所望の目標加工に非常に近い加工結果を非常に迅速に得ることが可能になる。
図31は、非決定論的レジームにおける最適な加工パラメータの予測を示す。
【0263】
本発明は、純粋に例示的な値を有し、限定するものと見なされるべきではない特定の実施形態に関して記載された。概して、本発明は、上記に例示および/または記載された例に限定されない。動詞「備える」、「含む」、「成る」、または任意の他の変形形態、ならびにそれらの接合の使用は、言及された要素以外の要素の存在を決して排除することはできない。要素を紹介するための不定冠詞「a」、「an」、または定冠詞「the」の使用は、複数のそのような要素の存在を排除しない。クレーム内の参照番号はそれらの範囲を制限してはいけない。
【0264】
要約すると、本発明は以下のように記載することができる。
以下の、レーザー加工システムによる材料のレーザー加工をシミュレートするための方法であって、
a)中央ユニットであって、
-加工されるべき材料に関する情報:デルタδ、しきい値フルエンス、インキュベーション係数S、複素屈折率n+ik、
-レーザー加工システムに関する情報、
○偏光に関する情報、
○パルスエネルギーEp、
○焦点における加工レーザービームの直径w、
○ガウスからの次数p、
○パルス繰り返し率PRR n、
○波長、
を提供することと、
b)以下に基づく中央ユニットであって、
-加工されるべき材料に関する情報、および
-レーザー加工システムに、
レーザー加工システムで加工されるべき材料の加工のシミュレーションに対応する2次元の加工プロファイル、
を中央ユニットで決定することを含む方法である。