(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】フェーズドアレイアンテナシステム
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/26 20060101AFI20240502BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240502BHJP
H01Q 1/50 20060101ALI20240502BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20240502BHJP
【FI】
H01Q3/26 Z
H01Q21/06
H01Q1/50
H04B1/38
(21)【出願番号】P 2020561886
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(86)【国際出願番号】 US2019030693
(87)【国際公開番号】W WO2019221936
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-08
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513180451
【氏名又は名称】ヴィアサット,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViaSat,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミーレ、コンラッド
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04682176(US,A)
【文献】特開昭47-012859(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106886619(CN,A)
【文献】特開2014-086946(JP,A)
【文献】R. Maaskant,Applying the active antenna impedance to achieve noise match in receiving array antennas,2007 IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium,2007年06月15日,pp. 5889-5892
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/26
H01Q 21/06
H01Q 1/50
H04B 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号を増幅するための複数の増幅器であって、前記複数の増幅器の各々は、アンテナ素子のアレイのアンテナポートに接続されるように構成されており、かつ前記アンテナポートのアンテナポートインピーダンスに依存する性能特性を有し、前記複数の増幅器の各々は、特定の固定されたアンテナポートインピーダンス値にノイズマッチングされており、各アンテナ素子は、前記複数の信号のうちの1つの信号と通信するように構成されている、複数の増幅器と、
前記アンテナ素子のアレイのそれぞれのアンテナ素子と通信した信号の位相を調整するようにそれぞれ構成された複数の位相シフタと、
コマンドを前記複数の位相シフタに提供するためのコントローラであって、前記提供されたコマンドが、前記アンテナ素子のアレイを含む
フェーズドアレイアンテナのボアサイト方向に関連する走査角範囲内にビームを指向するために、前記複数の位相シフタによって使用される、コントローラと、
を備えるシステムであって、
前記アンテナポートインピーダンス値は、走査角範囲内にあるビームの走査角によって変動し、
前記特定の固定されたアンテナポートインピーダンス値は、前記ボアサイト方向とは異なる特定の走査角に対応するものであり、
前記特定の固定されたアンテナポートインピーダンス値および対応する前記特定の走査角は、走査角範囲内の全ての走査角にわたって、前記フェーズドアレイアンテナの性能メトリックの最小値を最大にするように選択されている、システム。
【請求項2】
さらに複数のインピーダンス整合ネットワークを備え、
各インピーダンス整合ネットワークは、前記アンテナポートにおけるインピーダンスを前記特定の固定されたアンテナポートインピーダンス値に、アンテナポートインピーダンスが前記特定の走査角に対応するときに、前記複数の増幅器の性能特性の最大値が達成されるように調整する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の増幅器の各増幅器は、それぞれのアンテナ素子における送信のために前記複数の信号のうちの信号を増幅するように構成されており、前記性能メトリックは、前記フェーズドアレイアンテナの実効放射電力及び前記フェーズドアレイアンテナの実効等方放射電力のうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の増幅器は、第1の複数の増幅器を含み、当該第1の複数の増幅器の各々は、それぞれのアンテナ素子で受信した複数の信号のうちの信号を増幅するように構成されており、前記性能メトリックは、前記フェーズドアレイアンテナの利得対雑音温度比を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
複数の信号を増幅するための複数の増幅器であって、前記複数の増幅器の各々は、アンテナ素子のアレイのアンテナポートに接続されるように構成されており、かつ前記アンテナポートのアンテナポートインピーダンスに依存する性能特性を有し、前記複数の増幅器の各々は、特定の固定されたアンテナポートインピーダンス値にノイズマッチングされており、前記アンテナ素子のアレイの各アンテナ素子は、前記複数の信号のうちの1つの信号と通信するように構成されている、複数の増幅器と、
前記アンテナ素子のアレイのそれぞれのアンテナ素子と通信した信号の位相を調整するようにそれぞれ構成された複数の位相シフタと、
コマンドを前記複数の位相シフタに提供するためのコントローラであって、前記提供されたコマンドが、前記アンテナ素子のアレイを含む
フェーズドアレイアンテナのボアサイト方向に関連する走査角範囲内にビームを指向するために、前記複数の位相シフタによって使用される、コントローラと、
を備えるシステムであって、
前記アンテナポートインピーダンス値は、走査角範囲内にあるビームの走査角によって変動し、
前記特定の固定されたアンテナポートインピーダンス値は、ボアサイト方向とは異なる特定の走査角に対応するものであり、
前記特定の固定されたアンテナポートインピーダンス値および対応する前記特定の走査角は、
前記フェーズドアレイアンテナの性能メトリックの最大値が、走査角範囲内の全ての走査角にわたって最小化されるように選択されている、システム。
【請求項6】
さらに複数のインピーダンス整合ネットワークを備え、
各インピーダンス整合ネットワークは、前記アンテナポートにおけるインピーダンスを前記特定の固定されたアンテナポートインピーダンス値に、アンテナポートインピーダンスが前記特定の走査角に対応するときに、前記複数の増幅器の性能特性の最大値が達成されるように調整する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数のインピーダンス整合ネットワークの各々は、当該インピーダンス整合ネットワークに関連するアンテナポートと前記複数の増幅器のうちの関連する増幅器との間の直列のインダクタと、分路コンデンサとを備える直列Lネットワークとして実現されており、
前記インダクタのインダクタンスおよび前記分路コンデンサの静電容量は、前記関連する増幅器の入力端で見られる
ソースインピーダンスを、当該ソースインピーダンスについての所望の値に調整するように選択されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記インダクタのインダクタンスおよび前記分路コンデンサの静電容量は、前記ソースインピーダンスについての所望の値が前記特定の固定されたアンテナポートインピーダンスに等しくなるよう選択されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
複数の信号を増幅するための複数の増幅器であって、前記複数の増幅器の各々は、アンテナ素子のアレイのアンテナポートに接続されるように構成されており、かつ前記アンテナポートのアンテナポートインピーダンスに依存する性能特性を有し、前記アンテナ素子のアレイの各アンテナ素子は、前記複数の信号のうちの1つの信号と通信するように構成されている、複数の増幅器と、
前記アンテナ素子のアレイのそれぞれのアンテナ素子と通信した信号の位相を調整するようにそれぞれ構成された複数の位相シフタと、
コマンドを前記複数の位相シフタに提供するためのコントローラであって、前記提供されたコマンドは、前記アンテナ素子のアレイを含む
フェーズドアレイアンテナのボアサイト方向に関連する走査角範囲内にビームを指向するために、前記複数の位相シフタによって使用され、アンテナポートインピーダンス値は、走査角範囲内にあるビームの走査角によって変動し、前記性能特性の最大値が、前記ボアサイト方向とは異なる特定の走査角に対応するアンテナポートインピーダンス値において達成され、前記特定の走査角は、走査角範囲内の全ての走査角にわたって、
前記フェーズドアレイアンテナの性能メトリックの最小値を最大にするように選択されている、コントローラと、
複数のインピーダンス整合ネットワークであって、各インピーダンス整合ネットワークは、前記アンテナポートにおけるインピーダンスを、前記複数の増幅器の性能特性の最大値が、アンテナポートインピーダンス値が前記特定の走査角に対応するときに達成されるように調整し、各インピーダンス整合ネットワークは、当該インピーダンス整合ネットワークに関連するアンテナポートと前記複数の増幅器のうちの関連する増幅器との間の直列のインダクタと、分路コンデンサとを備える直列Lネットワークとして実現されており、前記インダクタのインダクタンスおよび前記分路コンデンサの静電容量は、前記関連する増幅器の入力端で見られる
ソースインピーダンスを、当該ソースインピーダンスについての所望の値に調整するように選択されている、複数のインピーダンス整合ネットワークと、
を備えるシステム。
【請求項10】
前記インダクタのインダクタンスおよび前記分路コンデンサの静電容量は、ソースインピーダンスについての前記所望の値が前記特定の走査角に対応するアンテナポートインピーダンス値に等しくなるよう選択されている、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、通信分野に関し、より具体的には、フェーズドアレイアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレイ又は電気的に走査されるアレイは、アンテナを移動させることなく異なる方向を指すように電子的に誘導することができる電波のビームを形成する、アンテナの被制御アレイである。アレイアンテナでは、送信機からの無線周波電流が、正しい位相関係で個々のアンテナに供給される。これによって、別々のアンテナからの電波を加算して所望の方向の放射を増大させ、一方で、望ましくない方向の放射を抑圧して打ち消す。「ビーム」と称される高利得の指向領域は、各放射素子から放射される信号の位相をシフトさせ、建設的干渉と破壊的干渉とを提供して、ビームを所望の方向に誘導することによって形成される。個々のアンテナによって放射された信号の相対振幅は、アレイの有効放射パターンを決定する。フェーズドアレイは、固定の放射パターンを強調するために、又は方位角方向若しくは仰角方向で迅速に走査するために使用することができる。
【発明の概要】
【0003】
一実施例によれば、ボアサイト方向のビームを有するアンテナ素子のアレイを含むフェーズドアレイアンテナが提供される。複数の位相シフタが、コマンドに応答して、アンテナ素子のアレイと通信した複数の無線周波(radio frequency、RF)信号の位相を調整する。コントローラは、コマンドを複数の位相シフタに提供する。提供されたコマンドは、ボアサイト方向に関連する走査角範囲内でビームを指向するために、複数の位相シフタによって使用される。複数の増幅器が、複数の信号を増幅する。複数の増幅器の各々は、アンテナ素子のアレイのアンテナポートに接続されており、かつアンテナポートのアンテナポートインピーダンスに依存する性能特性を有する。アンテナインピーダンスは、走査角範囲内にあるビームの走査角によって変動し、増幅器は、性能特性が、ボアサイト方向とは異なる、走査角範囲内の特定の走査角に対応するアンテナポートインピーダンスの値において最大となるように構成されている。
【0004】
別の実施例によれば、ボアサイト方向を有するフェーズドアレイアンテナを実現するための方法が提供される。規定された走査角範囲内の走査角が、フェーズドアレイアンテナに対して選択されるが、この選択された走査角は、ボアサイト方向に関連付けられた走査角とは異なるように選択される。フェーズドアレイアンテナを備える複数のアンテナ素子の各々に関連付けられたアンテナポートインピーダンスは、フェーズドアレイアンテナの走査角によって変動する。複数の増幅器は、各々が複数のアンテナ素子の1つのアンテナポートに接続されている。複数の増幅器の各々は、アンテナポートのインピーダンスが選択された走査角に対応するときに、複数の増幅器の性能特性に対する最大値が達成されるように構成されている。
【0005】
更に別の実施例によれば、フェーズドアレイアンテナは、ボアサイト方向のビームを有するアンテナ素子のアレイを含む。第1の組の位相シフタは、アンテナ素子のアレイで受信した無線周波(RF)信号の位相を調整するためのコマンドに応答する。第2の組の位相シフタは、アンテナ素子のアレイによって送信する送信信号の位相を調整するためのコマンドに応答する。コントローラは、第1の組の位相シフタ及び第2の組の位相シフタにコマンドを提供する。提供されたコマンドは、走査角範囲内のビームをボアサイト方向に指向するために使用される。第1の組の増幅器は、アンテナ素子のアレイで受信した信号を増幅する。第1の組の増幅器の各々は、アンテナ素子のアレイのアンテナポートに接続されており、かつアンテナポートのアンテナポートインピーダンスに依存する第1の性能特性を有する。アンテナインピーダンスは、走査角範囲内にあるビームの走査角によって変動し、第1の性能特性は、ボアサイト方向とは異なる第1の走査角に対応するアンテナポートインピーダンスの第1の値において最大となる。第2の組の増幅器は、アンテナ素子のアレイによって送信すべき送信信号を増幅する。第2の組の増幅器の各々は、アンテナ素子のアレイのアンテナポートに接続されており、かつアンテナポートのアンテナポートインピーダンスに依存する第2の性能特性を有し、この第2の性能特性は、それぞれボアサイト方向及び第1の走査角とは異なる第2の走査角に対応するアンテナポートインピーダンスの第2の値において最大となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の前述の及び他の特徴は、添付図面を参照しながら以下の説明を読むことで、本発明に関連する当業者に明らかになるであろう。
【0007】
【
図1】アンテナ利得の低下の一例を示すグラフである。
【0008】
【
図2】本明細書に提示するシステム及び方法に従って調整される増幅器の一実施例の性能を示すグラフである。
【0009】
【
図3】システムに関連付けられた走査角の範囲にわたるアンテナシステムの性能の変動の低減を示すグラフである。
【0010】
【
図4】フェーズドアレイアンテナの一実施例を示すブロック回路図である。
【0011】
【
図5】インピーダンス整合回路によって接続されたアンテナ素子及び低ノイズ増幅器を有するアンテナ経路の概略図である。
【0012】
【
図6】
図2のインピーダンス整合回路を介して提供されるインピーダンス変換の一実施例を示すスミスチャートである。
【0013】
【
図7】
図2のインピーダンス整合回路を介して提供されるインピーダンス変換の別の実施例を示すスミスチャートである。
【0014】
【
図8】ボアサイト方向以外の走査角で最大性能を達成するように構成された増幅器を利用する、フェーズドアレイアンテナの一実施形態を示すブロック回路図である。
【0015】
【
図9】ボアサイト方向以外の走査角で最大性能を達成するように構成された増幅器を利用する、フェーズドアレイアンテナの別の実施形態を示すブロック回路図である。
【0016】
【
図10】ボアサイト方向以外の走査角で最大性能を達成するように構成された増幅器を利用する、フェーズドアレイアンテナの更に別の実施形態を示すブロック回路図である。
【0017】
【
図11】ボアサイト方向を有するフェーズドアレイアンテナを実現するための方法の一実施例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
フェーズドアレイアンテナでは、アンテナが最大利得を提供するボアサイト方向から走査角が変位すると、ビームのアンテナ利得が減少する。これは、走査損失と称される。走査角は、アンテナの座標系内にあり、複数の軸(例えば、方位角及び仰角)に沿って変位し得る。
図1は、フェーズドアレイアンテナのアンテナ素子のアレイのアンテナ利得の減少の1つの例を示すグラフ10であり、垂直軸12には、等方性放射体に対する利得をデシベル(decibels of gain relative to an isotropic radiator、dBi)で表し、水平軸14には、ボアサイト方向に対する角度(この実施例では仰角)を度で表す。プロット16から分かるように、アンテナ利得は、ボアサイト方向から仰角が離れるにつれて、システムに関連付けられた走査角18の範囲にわたって大幅に低下する。
【0019】
フェーズドアレイアンテナのアンテナ素子のアレイに接続された増幅器の性能もまた、アレイのアンテナ素子のアンテナインピーダンスに依存し得、このアンテナインピーダンスは、走査角と共に変化する。アンテナインピーダンスは、種々の要因に基づいて実施形態ごとに異なることがあり、例えば経験的に及び/又は分析的に決定することができる。ボアサイト方向におけるアンテナインピーダンスに対して増幅器性能を最適化することは、ボアサイト方向から離れた走査角での増幅器性能の低下をもたらす。アンテナインピーダンスに対する増幅器感度を軽減するための1つの手法は、それらの間にアイソレータを配置することである。しかしながら、大型のアレイでは、そうすることは、極端に高価になり得る。加えて、アイソレータのRF損失は、アンテナ性能に影響を与える。
【0020】
走査損失と、ボアサイト方向とは異なる走査角において減少した増幅器性能との組み合わせは、共同してアンテナシステムの全体的な性能を著しい低下させる。したがって、本明細書で説明するシステム及び方法は、より高い走査角での利得損失の影響を、増幅器の性能特性が、アンテナ利得が最大であるボアサイト方向とは異なる走査角でのアンテナインピーダンスにおいて最大になるように増幅器を構成することによって、軽減する。本明細書で使用するとき、性能特性の最大とは、位相シフタに提供されたコマンドを介して動作するようにフェーズドアレイアンテナが構成された走査角範囲にわたる相対な最大値を意味する。性能特性は、実施形態ごとに異なることがあり、フェーズドアレイアンテナが送信に使用されるか、及び/又は受信に使用されるかに依存することがある。本明細書で使用するとき、増幅器の「性能特性」は、一般に、増幅器の任意のメトリックを指し、より高い値がより良好な増幅器性能を示す。いくつかの実施形態では、増幅器の「性能特性」の最大は、より低い値がより良好な性能を示すパラメータについては、このパラメータを最小にすることによって達成される。例えば、本明細書で説明するいくつかの実施形態では、増幅器の入力SN比(signal-to-noise ratio、SNR)に対する出力SN比の最大は、そのノイズ指数を最小化することによって達成される。なぜならノイズ指数は、dBでの入力SN比と出力SN比との比だからである。
【0021】
図2は、本明細書に提示されるシステム及び方法に従って構成された増幅器の一実施例の性能を示すグラフ30である。具体的には、増幅器は、性能特性の最大がボアサイト方向とは異なる走査角でのアンテナインピーダンスに対応するように構成されている。増幅器性能は、より高い値がより良好な性能を示す垂直軸32によって表され、仰角は、水平軸34上でボアサイト方向に対する度で表される。プロット36から分かるように、増幅器性能は、ボアサイト方向ではなく、システムに関連付けられた走査角範囲40の中心に向かう走査角で、最大になる最大値38に達する。
【0022】
本明細書において下で詳細に説明するように、このことは、アンテナシステムの性能メトリック、例えば、受信信号の利得対雑音温度比(gain-to-noise temperature ratio、G/T)又は送信信号の等価等方放射電力(equivalent isotropically radiated power、EIRP)の変動を走査角にわたって減少させ、高い走査角での性能を向上させる。
図3は、フェーズドアレイアンテナが動作するように構成される走査角52の範囲にわたる、アンテナシステムにおける性能メトリックの変動の減少を示すグラフ50である。アンテナシステムの性能メトリックは、より高い値がより良好な性能を示す垂直軸54によって表され、仰角は、水平軸56上でボアサイト方向に対する度で表される。第1のプロット58は、本明細書で説明する改善が不十分であるシステムの性能を表す。プロット58から分かるように、このようなシステムのアンテナ性能メトリックは、ボアサイト方向においてその最大であり、仰角がボアサイト方向から変位するにつれて急激に低下する。
【0023】
第2のプロット60は、増幅器の性能特性の最大が、例えば
図2に示されるようなボアサイト方向(この実施例では0度)とは異なる走査角でのアンテナインピーダンスに対応するように、本明細書で説明するように構成された増幅器を利用するシステムの性能を表す。ボアサイトでは、アンテナ利得が最大であり、一方で、増幅器性能は、その最大の性能に対して低下している。したがって、ボアサイト方向でのシステムの全体的な性能は、第1のプロット58で表されるシステムに対してわずかに低下する。より大きい走査角では、アンテナ利得がより低くなるが、増幅器性能は、ボアサイトに対応する最大の性能と比較してあまり低下しない。その結果、アンテナ性能は、アンテナ性能が最大になる位置に到達するまで、仰角がボアサイト方向から離れるにつれて、実際に向上する。一般に、アンテナインピーダンスが調整された走査角とボアサイト方向との間の走査角において最大性能が提供されることが認識されるであろう。次いで、アンテナ性能は、仰角がボアサイトよりも更に離れるにつれて段階的に低下するが、第1のプロット58によって表されるシステムよりもはるかに緩やかであり、走査角範囲52の大部分にわたって優れた性能を提供する。その結果、アンテナ性能は、走査角範囲52にわたって全体的に最大になる。
【0024】
図4は、フェーズドアレイアンテナ100の一実施例を示す。フェーズドアレイアンテナ100は、例示の目的で提供される簡略表現であること、及びアンテナが本明細書に示していない追加の構成要素を含むことができることが認識されるであろう。フェーズドアレイアンテナは、ボアサイト方向のビームを提供するアンテナ素子102のアレイを備える。複数の位相シフタ104は、アンテナ素子102のアレイと通信した複数の無線周波数(RF)信号の位相を調整するためのコマンドに応答する。コントローラ106は、コマンドを複数の位相シフタ104に提供する。コントローラ106は、例えば、1つ以上の特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)として、特殊なフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)チップとしてハードウェアで実装することができ、非一時的媒体に保存されかつ関連付けられたプロセッサによって実行される機械実行可能な命令としてソフトウェアで、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせとして、実装することができる。提供されたコマンドは、ボアサイト方向に関連する走査角範囲内でビームを走査するために、複数の位相シフタ104によって使用される。
【0025】
複数の増幅器108は、複数の信号を増幅する。示される実施形態では、増幅器108は、受信信号を増幅し、したがって、低雑音増幅器として実現することができるが、増幅器の特性は変動し得ることが認識されるであろう。各複数の増幅器108は、アンテナ素子102のアレイのアンテナポートに接続されており、その結果、アンテナポートのアンテナポートインピーダンスに依存する性能特性を有する。アンテナインピーダンスは、走査角範囲内のビームの走査角と共に変動し、増幅器108は、出力SN比対入力SN比などの性能特性の最大が、ボアサイト方向とは異なる、走査角範囲内の特定の走査角に対応するアンテナポートインピーダンスの値において達成されるように構成されている。上述のように、増幅器108の出力SN比対入力SN比を最大にすることは、増幅器108のノイズ指数を最小にすることに相当し、したがって、便宜上、雑音指数を最小にすること(「ノイズマッチング」とも称される)を下で説明する。増幅器108が、特定の走査角に対応する特定のアンテナポートインピーダンス値にノイズマッチングするように構成される様態は、実施形態の間で変化することがある。例えば、増幅器の入力整合ネットワークは、適切なインピーダンス変換を提供するように設計することができ、ノイズマッチングを達成する増幅器バイアス電流を選択することができ、負帰還を使用することができ、又はインピーダンスを選択するための任意の他の適切な方法を用いることができる。
【0026】
図5は、アンテナ素子152と、インピーダンス整合ネットワーク160によって接続された低雑音増幅器(low noise amplifier、LNA)154と、を有するアンテナ経路150のブロック回路図を示す。インピーダンス整合ネットワーク160及びLNA154は、例えば、アンテナ素子152と低雑音増幅器154との間の直列のインダクタ162、及び分路コンデンサ164と共に、直列Lネットワークの増幅器のうちの1つを集合的に実現することができる。インダクタ162のインダクタンス及びコンデンサ164の静電容量の値は、アンテナ素子152のポートにおいて、低雑音増幅器154の入力端で見られるソースインピーダンスを、インピーダンスZ
Aの既知の値から所望の値Z
optに調整するように選択することができる。
【0027】
図6は、
図5のインピーダンス整合ネットワークを介して提供されるインピーダンス変換の一実施例を示すスミスチャート180である。示される実施例では、位相アレイの走査角はボアサイトであり、アンテナポートで見られるインピーダンスは、Z
Aと表記されている。この変換における第1のステップは、インダクタ162からのインダクタンスをアンテナ出力端と直列に配置することである。これは、インピーダンスをスミスチャートのZ
1と表記した位置まで移動させる。インダクタンスの値は、ユニティサークルに沿ってZ
Aから地点Z
1まで移動させるために必要なリアクタンスの値によって決定される。第2のステップは、分路コンデンサを配置して、最適ソースインピーダンスZ
optに到達させることである。コンデンサの値は、位置Z
1からZ
optまで移動させるために必要なサセプタンスによって決定される。
【0028】
図7は、
図5のインピーダンス整合ネットワークを介して提供されるインピーダンス変換の別の実施例を示すスミスチャート190である。示される実施例では、位相アレイの走査角は、ボアサイトとは異なる走査角であり、したがってアンテナポートで見られるインピーダンスは、
図3に示されるものとは異なる。
図4の実施例はまた、
図2に示すインピーダンス整合ネットワークを利用することもできるが、インダクタ162のインダクタンス及びコンデンサ164の静電容量の値は、アンテナポートでのインピーダンスの変化に対して調整するために変更される。
図4の具体的な実施例では、インピーダンス及び静電容量の各々は、
図3で使用した値から増加している。
【0029】
図4に戻ると、図示のフェーズドアレイアンテナ100は、動作中に、ボアサイト方向に関連する所望の走査角方向から信号を受信するように構成されている。複数のアンテナ素子102の各々は、要素信号(本明細書では「受信信号」とも称される)を受信し、これは、次いで、複数の増幅器108のうちの対応する1つによって増幅される。増幅された要素信号は、次いで、複数の位相シフタ104に提供され、これは、コントローラ106からの制御信号(本明細書では「コマンド」とも称される)によって指示されるように、ビームの所望の走査角に基づいて適切な位相シフトを要素信号に適用する。次いで、位相シフトされた要素信号がビーム形成ネットワーク110に提供され、要素信号を組み合わせて所望の走査角に対応するビーム信号を生成する。示される実施形態では、所望の走査角は、位相シフタ104を介して要素信号の位相を調整することによって達成される。いくつかの実施形態では、フェーズドアレイアンテナ100は、制御信号に応答して要素信号の振幅を更に調整するために、振幅調整回路(例えば、可変利得増幅器)を更に含む。
【0030】
低雑音増幅器の雑音指数を決定する1つのパラメータは、その入力端に提示されるソースインピーダンスZsourceである。理想的には、Zsourceは、最低雑音指数(ノイズマッチングと称される)を提供する固定値である。しかしながら、フェーズドアレイアンテナでは、アンテナポートインピーダンスZAは、アクティブインピーダンス又は走査インピーダンスと称され、走査角によって変化し、したがって、ソースインピーダンスは一定でない。
【0031】
本明細書で用いる雑音最適化は、式(1)からより良好に理解することができる。
【数1】
【0032】
式中、Ys=Gs+jBsは、増幅器のアクティブ回路に提示されるソースアドミタンスであり、Yoptは、最小雑音指数をもたらす最適ソースアドミタンスであり、Fminは、Ys=Yoplのときに達成される増幅器のアクティブ回路の最小雑音指数であり、RNは、増幅器のアクティブ回路の等価雑音抵抗であり、Gsは、ソースアドミタンスの実数部であり、Fは、雑音係数である。
【0033】
式(1)から、増幅器に提示された目下のソースアドミタンスYsが最適ソースインピーダンスYoptに等しい場合、式(1)の第2項がゼロになることが分かる。この場合、雑音指数は、達成可能な最小値を想定する。したがって、ボアサイトでのわずかに低い性能を代償にして、より高い走査角でのアンテナシステム100の全体的な性能を向上させるために、低雑音増幅器は、ボアサイト方向とは異なる特定の走査角に対応するアンテナポートインピーダンスZAの特定の値にノイズマッチングするように構成されている。アンテナシステムが、周波数範囲のある信号を受信するために使用される場合、アンテナポートインピーダンスZAの特定の値は、最大周波数、最小周波数、中心周波数、又は範囲内の他の代表周波数を含む、周波数範囲内の周波数のうちの1つに対して選択することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、特定の走査角は、1つ以上の走査角でのアンテナシステムの性能メトリックの結果として生じる値に基づいて選択される。性能メトリックに対して利得対雑音温度比の例を使用することで、フェーズドアレイアンテナ100の最大利得G(θ)が、走査角θの関数であり、最大利得はボアサイトで提供されることが認識されるであろう。同様に、式1で論じたように、雑音指数、したがって雑音温度は、増幅器に提示されたソースアドミタンスと、増幅器の最適ソースアドミタンスとの不整合の関数である。アンテナポートインピーダンス、したがってアドミタンスは、走査角θによって変化し、したがって、雑音係数Fは、走査角及び増幅器に対して選択された最適ソースアドミタンスの関数である。本明細書ではこれを、最適ソースインピーダンスがアンテナポートでのアドミタンスに整合する、特定の走査角θoptとして表す。
【0035】
一実施例では、最も可能性の高い走査角範囲にわたるアンテナシステムの性能メトリックの所定の最小値を提供するために、特定の走査角を選択することができる。特定の走査角はボアサイト方向から離れるように変位しているので、ボアサイト方向からはるかに離れた角度ではインピーダンス不整合が減少することが認識されるであろう。したがって、一実施形態では、アンテナシステムの性能メトリックが範囲内の少なくとも1つの走査角に対する所定の最小値を超えて低下するまで、特定の走査角は、ボアサイト方向から離れた走査角の範囲にわたって変位することができ、ここでは、選択された所定の範囲にわたって最小性能を維持する、ボアサイト方向からの特定の走査角の最大偏位を伴う。
【0036】
別の実施形態では、特定の走査角の値は、所定の走査角範囲にわたって利得対雑音温度比の最小値を最大にするように選択される。この場合、最適化問題は、値を最大にする増幅器のソースアドミタンスを選択することである。
【数2】
【0037】
式中、θiは、走査角の規定された範囲内で変動し[θ1,θN]、T0は、273Kである。
【0038】
走査角による利得の変化、及び走査角による雑音角の変化は、フェーズドアレイアンテナ100の設計に基づいてモデル化することができ、したがって、θoptの最適値は、勾配探索などの適切な最適化アルゴリズムを介して決定することができることが認識されるであろう。代替的に、「ブルートフォース」手法を用いることができ、この手法では、特定の走査角θoptの複数の予め選択された値の各々が評価され、最大値が選択される。
【0039】
この例と一致する1つの実施形態では、走査角は、規定された走査角範囲がフェーズドアンテナアレイ100の動作範囲全体を包含するように、走査角の動作範囲にある最大走査角において、アンテナの性能メトリックに対して少なくとも最小値を維持するために選択される。代替的に、走査角範囲内にある走査角にわたって、又は操作角の選択された適切なサブセットにわたってアンテナシステムの性能メトリックの所定の最小値を提供するために、特定の走査角を選択することもできる。選択された走査角のサブセットは、ボアサイト方向を除外することができることが認識されるであろう。
【0040】
別の実施形態では、特定の走査角は、選択される走査角がボアサイト方向と最大走査角との間の所定の位置にあるように、例えばボアサイト方向と最大走査角との中間にあるように、最大走査角に基づいて選択される。例えば、最大走査角がボアサイト方向から60度の仰角である場合、増幅器108は、30度の仰角に対応するアンテナポートインピーダンスにノイズマッチングすることができる。
【0041】
更なる一実施例では、特定の走査角は、走査角範囲内の全ての走査角又は走査角範囲の適切なサブセットにわたる、性能メトリックの総計が最大になるように選択される。ここでも、利得対雑音温度比を使用することで、規定された走査角範囲[θ
1、θ
N]を通じて値を最大にする特定の走査角θ
optを選択するものとして、最適化問題を表現することができる。
【数3】
【0042】
図8は、ボアサイト方向以外の走査角で最大の性能を発揮するように構成された増幅器を利用する、フェーズドアレイアンテナ200の1つの実施形態を示す。示される実施形態では、位相アレイアンテナ200は、ボアサイト方向に関連する所望の走査角方向に信号を送信するように構成されている。ビーム形成ネットワーク202は、所望の走査角方向に送信することが意図されるビーム信号を受信する。ビーム形成ネットワーク202は、ビーム信号を要素信号(本明細書では、「送信信号」とも称される)に分割し、複数の位相シフタ204に提供する。複数の位相シフタ204の各々は、コントローラ206からの制御信号に応答して、所望のビームの走査角に基づいて、信号に適切な位相シフトを提供する。次いで、位相シフトされた信号は、複数の電力増幅器208によって増幅され、送信のためのアンテナ素子210に提供され、所望の走査角方向への送信ビームを生成する。示される実施形態では、所望の走査角は、位相シフタ204を介して要素信号の位相を調整することによって達成される。いくつかの実施形態では、フェーズドアレイアンテナ100は、制御信号に応答して要素信号の振幅を更に調整するために、振幅調整回路(例えば、可変利得増幅器)を更に含む。
【0043】
電力増幅器は、所与の出力電力レベルのために設計されている。出力電力レベルを決定する1つのパラメータは、その出力電力において提示される負荷インピーダンスZLoadである。理想的には、ZLoadは、電力増幅器が所与の出力電力レベルを発生することを可能にする固定値である。しかしながら、フェーズドアレイアンテナでは、アンテナポートインピーダンスZAは、走査角によって変化し、したがって、負荷インピーダンスZLoadは、一定でない。ボアサイトでのわずかに低い性能を代償にして、より高い走査角での等価放射電力又はアンテナの等価等方放射電力などのアンテナ性能メトリックを向上させるために、電力増幅器208は、ボアサイト方向とは異なる特定の走査角に対応するアンテナポートインピーダンスZAの特定の値において最大出力電力を提供するように構成されている。示される実施形態では、複数のインピーダンス整合ネットワーク212がアンテナ210と増幅器208との間に実装される。インピーダンス整合ネットワーク212は、アンテナインピーダンスを所望の負荷インピーダンスに調整する。一実施形態では、集積回路設計を備えることで、インピーダンス整合ネットワークは、インダクタ及びコンデンサなどの集中構成素子を使用して設計することができる。
【0044】
性能メトリックの実効等方放射電力(EIRP)の例を使用すると、フェーズドアレイアンテナ100の最大電力G(θ)が、走査角θの関数であり、最大利得がボアサイトで提供されることが認識されるであろう。電力増幅器でのインピーダンスとアンテナポートでのインピーダンスとが不整合であると、一部の電力が失われることがある。アンテナポートインピーダンス、したがってアドミタンスは、走査角θによって変動し、したがって、反射電力Rは、走査角の各々及び増幅器に対して選択された最適ソースインピーダンスの関数である。本明細書ではこれを、最適ソースインピーダンスがアンテナポートでのアドミタンスに整合する特定の走査角θoptとして表す。
【0045】
一実施例では、最も可能性の高い走査角範囲にわたってアンテナシステムの性能メトリックの所定の最小値を提供するために、特定の走査角を選択することができる。この特定の走査角はボアサイト方向から離れているので、ボアサイト角からはるかに離れた角度ではインピーダンス不整合が減少することが認識されるであろう。したがって、一実施形態では、アンテナシステムの性能メトリックが範囲内にある少なくとも1つの走査角に対する所定の最小値未満に低下するまで、特定の走査角を、ボアサイト方向から離れた走査角の範囲にわたって変位することができ、この特定の走査角の、ボアサイト方向からの最大偏差は、選択された所定の範囲にわたって最小限の性能を維持する。
【0046】
別の実施形態では、特定の走査角の値は、所定の走査角範囲にわたってERIPの最小値を最大にするように選択される。この場合、最適化問題は、値を最大にする増幅器のソースアドミタンスを選択することである。
【数4】
【0047】
式中、θiは、走査角の規定の範囲内で変位し[θ1、θN]、Pinは、システムに対する電力入力であり、Iisoは、走査角の方向に仮想の無損失等方性アンテナによって放射される電力である。
【0048】
走査角による利得の変化、及び走査角による反射電力の変化は、フェーズドアレイアンテナ100の設計に基づいてモデル化することができ、したがって、θoptの最適値は、勾配探索などの適切な最適化アルゴリズムを介して決定することができることが認識されるであろう。代替的に、「ブルートフォース」手法を用いることができ、この手法では、特定の走査角θoptの予め選択された複数の値の各々が評価され、最大値が選択される。
【0049】
この例と一致する1つの実施形態では、走査角は、規定された走査角範囲がフェーズドアンテナアレイ100の動作角全体を包含するように、走査角の動作範囲の最大走査角においてEIRPに対して少なくとも最小値を維持するように選択される。代替的に、特定の走査角は、走査角範囲内にある走査角の選択された適切なサブセットにわたって、EIRP又は他の性能メトリックの所定の最小値を提供するように、選択することができる。選択された走査角のサブセットは、ボアサイト角を除外することができることが認識されるであろう。
【0050】
別の実施形態では、特定の走査角は、選択された走査角がボアサイト方向と最大走査角との間の所定の位置、例えばボアサイト方向と最大走査角との中間位置にあるように、最大走査角に基づいて選択される。例えば、最大走査角がボアサイト方向から60度の仰角である場合、電力増幅器208は、30度の仰角に対応するアンテナポートインピーダンスにノイズマッチングすることができる。
【0051】
更なる一実施例では、特定の走査角は、走査角範囲内の全ての走査角又は走査角範囲の適切なサブセットにわたる、EIRP又は他の性能メトリックの総計が最大になるように選択される。規定の走査角範囲[θ
1、θ
N]にわたって値を最大にする特定の走査角θ
optを選択することであるとして、最適化問題を表すことができる。
【数5】
【0052】
図9は、ボアサイト方向以外の走査角で最大の性能を発揮するように構成された増幅器を利用する、フェーズドアレイアンテナ300の別の実施形態を示す。示される実施形態では、位相アレイアンテナ300は、ボアサイト方向に関連する所望の走査角方向において無線周波信号を送信及び受信するように、半二重配置で構成されている。半二重配置では、二組の送信/受信(Tx-Rx)スイッチ302及び303を使用して、アンテナ300を、複数のアンテナ素子304の各々の送信経路と受信経路との間で切り替える。送信中に、ビーム形成ネットワーク306は、所望の走査角方向に送信することが意図されるビーム信号を受信する。ビーム形成ネットワーク306は、ビーム信号を要素信号に分割し、複数の位相シフタ308に提供する。複数の位相シフタ308の各々は、コントローラ309からの制御信号に応答して、ビームの所望の走査角に基づいて、信号に適切な位相シフトを提供する。次いで、位相シフトされた信号は、複数の電力増幅器(power amplifier、PA)310~312によって増幅され、送信のためにアンテナ素子304に提供され、所望の走査角方向の送信ビームを形成する。
【0053】
受信中に、複数のアンテナ素子304の各々は、要素信号を受信し、次いで要素信号は、複数の低雑音増幅器(LNA)314~316のうちの対応する1つによって増幅される。次いで、増幅された信号が複数の位相シフタ308に提供され、コントローラ309によって提供されるように、ビームの所望の走査角に基づいて、適切な位相シフトを信号に適用する。次いで、位相シフトされた信号がビーム形成ネットワーク306に提供され、信号を組み合わせて、所望の走査角に対応するビーム信号を形成する。
【0054】
交互作用のため、同じ周波数が使用されると仮定すると、アンテナ素子対走査角のアンテナポートインピーダンスZAは、送信及び受信に対して同じである。しかしながら、アンテナポートインピーダンスの変化による低雑音増幅器の性能変動は、アンテナポートインピーダンスを変動させるための電力増幅器の性能変動とは異なることがある。増幅器性能変動のこれらの相違は、低雑音増幅器314~316及び電力増幅器310~312に対してそれぞれ選択されているアンテナポートインピーダンスの値を異なる値にし、及びしたがって特定の走査角が異なるようにする。利得対雑音温度比などの、受信のための受信性能メトリックは、等価等方放射電力などの、送信のための性能メトリックが電力増幅器310~312の性能変動に依存する仕方とは異なり、低雑音増幅器314~316の性能変動に依存することがある。したがって、いくつかの実施形態では、低雑音増幅器は、第1の走査角に対応するアンテナポートインピーダンスの第1の値でノイズマッチングするように構成されており、一方で、電力増幅器は、第1の走査角とは異なる第2の走査角に対応するアンテナポートインピーダンスの第2の値で出力電力が最大であるように構成されている。
【0055】
図10は、ボアサイト方向以外の走査角で最大の性能を発揮するように構成された増幅器を利用する、フェーズドアレイアンテナ400の更に別の実施形態を示す。示される実施形態では、位相アレイアンテナ400は、ボアサイト方向に関連する所望の走査角方向において無線周波信号を送信及び受信するように、周波数分割二重配置で構成されている。周波数分割二重配置では、二組のダイプレクサ402~404及び406~408が、複数のアンテナ素子410を送信及び受信の両方に使用することを可能にする。送信中に、ビーム形成ネットワーク412は、所望の走査角方向に送信することが意図されるビーム信号を受信する。ビーム形成ネットワーク412は、ビーム信号を要素信号に分割し、複数の位相シフタ414に提供する。複数の位相シフタ414の各々は、コントローラ416からの制御信号に応答して、ビームの所望の走査角に基づいて、信号に適切な位相シフトを提供する。次いで、位相シフトされた信号は、複数の電力増幅器(PA)420~422によって増幅され、送信のためのアンテナ素子410に提供され、所望の走査角方向の送信ビームを形成する。
【0056】
受信中に、複数のアンテナ素子410の各々は、要素信号を受信し、次いで要素信号は、複数の低雑音増幅器(LNA)424~426のうちの対応する1つによって増幅される。次いで、増幅された信号が複数の位相シフタ414に提供され、コントローラ416によって提供されるように、ビームの所望の走査角に基づいて、適切な位相シフトを信号に適用する。次いで、位相シフトされた信号がビーム形成ネットワーク412に提供され、信号を組み合わせて、所望の走査角に対応するビーム信号を形成する。
【0057】
異なる周波数が送信及び受信に使用されるので、アンテナ素子のアンテナポートインピーダンスの走査角にわたる変化は、送信及び受信に対して異なり得る。その結果、異なる値のアンテナポートインピーダンスを、低雑音増幅器及び電力増幅器に対してそれぞれ選択することができる。したがって、いくつかの実施形態では、低雑音増幅器は、第1の走査角に対応するアンテナポートインピーダンスの第1の値でノイズマッチングするように構成されており、一方で、電力増幅器は、第1の走査角とは異なる第2の走査角に対応するアンテナポートインピーダンスの第2の値で出力電力が最大であるように構成されている。
【0058】
前述の構造及び上で説明した特徴の観点から、例示的な方法は、
図11を参照してより良好に認識されるであろう。説明を簡潔にする目的で、
図11の例示的な方法は、順次に実行するものとして示し、説明しているが、本実施例は、示した順序に限定されず、他の実施例では、本明細書に示し、説明するものとは異なる順序で、複数回、及び/又は同時に作用動作が生じ得ることを理解及び認識されたい。更に、記載した全ての作用動作を行って、方法を実施する必要はない。
【0059】
図11は、ボアサイト方向を有するフェーズドアレイアンテナを実現するための方法500の一実施例を示す。502で、選択される走査角がボアサイト方向に関連付けられた走査角とは異なるように、フェーズドアレイアンテナの規定の走査角内で走査角を選択する。504で、各々が複数のアンテナ素子のうちの1つのアンテナポートに接続された複数の増幅器を、アンテナポートのインピーダンスが選択された走査角に対応するときに、複数の増幅器の性能特性の最大値が達成されるように構成する。一実施形態では、増幅器は、複数の増幅器の各々に対してインピーダンス整合ネットワークを設けることによって、増幅器が接続されたアンテナポートのインピーダンスに調整されるよう構成される。
【0060】
走査角は、走査角範囲にわたってフェーズドアレイアンテナの性能メトリックを最大にするように選択することができ、この走査角範囲は、フェーズドアレイアンテナの動作範囲又は動作範囲の適切なサブセットにある全ての走査角を含むことができることが認識されるであろう。フェーズドアレイアンテナの適切な性能メトリックとしては、例えば、利得対雑音温度比、実効放射電力、及び実効等方放射電力を挙げることができる。一実施形態では、走査角は、規定の範囲の全て又はそのサブセット内の全ての走査角にわたってフェーズドアレイアンテナの性能メトリックの関数に対して極値を提供するように選択される。例えば、走査角は、規定の範囲の全て又はそのサブセット内の全ての走査角全体にわたる、性能メトリックの総計を最大にするように選択することができる。代替的に、走査角は、規定の範囲の全て又はそのサブセット内の全ての走査角全体にわたって性能メトリックの最小値を最大にするように選択することができる。
【0061】
アンテナアレイの所望の特性は、アンテナの受信及び送信に対して異なり得る。したがって一実施形態では、ボアサイト方向に関連付けられた走査角とは異なる第1の走査角、並びにボアサイト方向に関連付けられた走査角及び第1の走査角の両方とは異なる第2の走査角、の各々を選択することができる。低雑音増幅器などの、受信信号を増幅する第1の組の増幅器は、アンテナポートのインピーダンスが第1の走査角に対応するときに、第1の性能特性の最大値が達成されるように構成することができ、電力増幅器などの、送信信号を増幅する第2の組の増幅器は、アンテナポートのインピーダンスが第2の走査角に対応するときに、第2の性能特性の最大値が達成されるように構成することができる。したがって、アンテナアレイは、その送信機能及び受信機能の両方に対して最適化することができる。
【0062】
上で説明してきたものは、実施例である。当然ながら、構成要素又は方法論のあらゆる考えられる組み合わせを説明することはできないが、当業者は、多くの更なる組み合わせ及び順列が可能であることを認識するであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲を含む、本出願の範囲内に入る全てのそのような代替例、修正例、及び変形例を包含することを意図している。本明細書で使用するとき、「含む(includes)」という用語は、含むがそれらに限定されないことを意味し、「含んでいる(including)」という用語は、含んでいるがそれらに限定されないことを意味する。「~に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。加えて、本開示又は特許請求の範囲が、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「第1の(a first)」、又は「別の(another)」の要素又はその等価物を列挙する場合、「第1の」又は「別の」要素(又はその等価物)は、1つ又は1つを超えるそのような要素を含み、2つ以上のそのような要素を必要とすることも、除外することもないと解釈されるべきである。