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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】液滴のバンドパスフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240502BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20240502BHJP
   B05B 15/00 20180101ALI20240502BHJP
【FI】
B01J19/00 B
A61L2/20
B05B15/00
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020571543
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 AU2019050597
(87)【国際公開番号】W WO2019241828
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】2018902224
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510339197
【氏名又は名称】サバン ベンチャーズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レア,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】トラン,フオン
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-168706(JP,A)
【文献】実開昭64-032719(JP,U)
【文献】特開昭60-220067(JP,A)
【文献】特開2006-005258(JP,A)
【文献】特開2001-276189(JP,A)
【文献】特開2002-263174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
A61L 2/20
B01D 45/04
B05B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中に浮遊する液滴の集団の液滴サイズ分布を変更する方法であって、
前記ガス中に浮遊する前記液滴の集団を、第1の入力流の方向から、2つの反対向きの第1の出力流の方向への流れ方向の変化に隣接する位置に配置される少なくとも1つのインパクタ領域を含む曲線経路を通して流す工程を備え、
前記液滴の第1の部分は、前記インパクタ領域に衝突して留まり、
前記液滴の第2の部分は、前記ガス中に浮遊したままとなって、前記2つの反対向きの第1の出力流の方向に流れ、
前記ガスが流れる経路の末端部分において、流れ制限部を通過させられた前記液滴のミストが排出され、
前記ガス中に浮遊する液滴は、空気中に浮遊する滅菌剤エアロゾルの液滴である、方法。
【請求項2】
前記第1の出力流中の粒子の前記液滴サイズ分布は、前記第1の入力流中の前記液滴サイズ分布より、より小さい粒子サイズ側に偏っている、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の入力流の方向と前記第1の出力流の方向とが直交する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記インパクタ領域が、前記第1の入力流の方向の直線的な連続性により画定される経路をたどる液滴を受け取るように配置されている、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ミストに1つ以上の屈曲部を通過させて、第n+1番目の入力流の方向から第n+1番目の出力流の方向への直交する流れ方向の変化を引き起こさせる工程をさらに備える、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ミストに屈曲部を通過させて、第2の入力流の方向から第2の出力流の方向への直交する流れ方向の変化を引き起こさせる工程をさらに備える、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の出力流が前記第2の入力流になる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ミストに屈曲部を通過させて、第3の入力流の方向から第3の出力流の方向への直交する流れ方向の変化を引き起こさせる工程をさらに備える、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の出力流が前記第3の入力流になる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
所定の液滴サイズのプロファイルを有するミストを提供するために流路の特性が選択される、請求項1からのうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記流路の特性が経路の直径である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の液滴サイズのプロファイルは、所定の直径以上の液滴を排除または実質的に排除する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記所定の液滴サイズのプロファイルは、前記ミスト中の液滴のMMAD(空気力学的質量中央径)である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記流れ制限部である縮径された出口に、ミストを通過させる工程をさらに備える、請求項1から13のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ガス中に浮遊する液滴は、空気中に浮遊する過酸化水素水溶液または過酢酸水溶液の液滴である、請求項1から14のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ミスト用の液滴バンドパスフィルタであって、
第1の入口導管と、
前記第1の入口導管と直交する少なくとも2つの第1の出口導管と、
前記第1の入口導管の終端に配置され、前記第1の入口導管を通じて、ガスに浮遊する液滴の直線的流れを受け取るように配置されるインパクタ領域と、
前記ガスが流れる経路のミストが排出される末端部分において、縮径された直径を有する流れ制限部と、を備え、
前記ミストの液滴は、滅菌剤エアロゾルの液滴であり、
前記液滴バンドパスフィルタは、医療物品を滅菌するための滅菌チャンバに供給する前記滅菌剤エアロゾルのミストを濾過するためのものである、液滴バンドパスフィルタ。
【請求項17】
各屈曲部が第n+1番目の入口導管と第n+1番目の出口導管とを有するn個の直交屈曲部をさらに備える、請求項16に記載の液滴バンドパスフィルタ。
【請求項18】
第2の入口導管と第2の出口導管とを有する直交屈曲部をさらに備える、請求項16に記載の液滴バンドパスフィルタ。
【請求項19】
前記第1の出口導管は、第2の入口導管と流体連通し、前記第2の入口導管を画定する、請求項16に記載の液滴バンドパスフィルタ。
【請求項20】
第3の入口導管と第3の出口導管とを有する直交屈曲部をさらに備える、請求項16に記載の液滴バンドパスフィルタ。
【請求項21】
前記第2の出口導管は、第3の入口導管と流体連通し、前記第3の入口導管を画定する、請求項18に記載の液滴バンドパスフィルタ。
【請求項22】
それぞれの導管の断面が円形である、請求項16または17に記載の液滴バンドパスフィルタ。
【請求項23】
それぞれの導管が同じ断面積である、請求項16から22のうちのいずれか一項に記載の液滴バンドパスフィルタ。
【請求項24】
前記流れ制限部は、開口部を有するプレートである、請求項16に記載の液滴バンドパスフィルタ。
【請求項25】
前記流れ制限部は、前記流れ方向に寸法が小さくなる管である、請求項24に記載の液滴バンドパスフィルタ。
【請求項26】
直径が10μmを超える液滴を除去するためのバンドパスフィルタを提供するように構成されている、請求項16から25のうちのいずれか一項に記載の液滴バンドパスフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴粒子サイズの分布を有するミストから不必要なサイズの液滴の数を低減するための方法と装置に関する。本発明は、主として、超音波プローブ等の医療用物品を滅菌するための滅菌チャンバに供給するための、滅菌剤エアロゾルのミストの濾過に関して説明されている。しかし、本発明は、そのような使用に限定されず、液滴サイズの制御が望ましいその他の場合において有用である可能性があることが理解されるであろう。
【背景技術】
【0002】
本明細書全体にわたる従来技術の記載は、そのような従来技術が公知である、または本技術分野における共通の一般的な知見の一部を形成していると認めているものとは決して考えるべきではない。
【0003】
滅菌装置は、医療、食料、および包装産業において、胞子、菌類、および細菌等の伝染性物質を死滅させ、それにより伝染を防止するために用いられている。通常の滅菌装置は、滅菌チャンバの中でこれらの伝染性物質のほとんど全てを効果的に死滅させる一連の物理的条件を作り出している。
【0004】
滅菌の必要がある物品を滅菌剤ミストまたは滅菌剤エアロゾルに接触させることは、1つの既知の滅菌方法である。従来のミスト滅菌装置は、ミスト入口バルブおよびミスト出口バルブを有する滅菌チャンバと、入口バルブを介してチャンバと流体連通しているミスト生成器(通常、超音波ネブライザ)と、ミスト生成器の上流にあって、ミスト生成器と流体連通しているファンとを有する。
【0005】
使用時、滅菌を必要とする物品は、チャンバの中に置かれ、次にチャンバは密閉される。ミスト入口バルブが開放され、エアロゾル出口バルブが閉鎖される。ファンが連結され、そのファンが、ミスト生成器を通ってまたは通過してチャンバの中に入るガス流を生成する。滅菌チャンバの受動的な排出口により、必要に応じて圧力均等化が可能となり、ガス流が滅菌チャンバを出入りすることを可能にする。次に、所望の滅菌剤を含むミスト生成器が起動されて、多数の小さい滅菌剤の液滴がガス流の中に入る。当該液滴のミストは、ガス流によって滅菌チャンバの中に搬送される。ミスト流中の滅菌剤の濃度は、ガス流の流速、ミスト生成器の生産性、または使用される液体滅菌剤の濃度のいずれかを変えることによって調整することができる。
【0006】
受動的な廃棄物の排出口により、一部の流れがそれを通過することが可能となり、滅菌チャンバをほぼ室内圧力のままとすることを可能にする。当該受動システムは、滅菌剤(多くの場合、ペルオキシ化合物)と反応し、滅菌剤を廃棄処分に適したより安全な化学的性質に分解する触媒元素を通過して外気まで流れるための経路を含んでもよい。
【0007】
一定期間の後、ファンおよびミスト生成器は、作動が停止され、空気入口バルブが閉鎖され、従って滅菌剤の供給段階が完了する。次に、出口バルブが開放され、通常、ミストおよび蒸気を高速で滅菌チャンバから引き出すポンプによって、ミストが勢いよく取り出される。取り出しシステムは、滅菌チャンバと、滅菌剤と反応して廃棄処分に適した安全な化学物質に分解する触媒元素を通過した外気との間の流れための経路を含んでもよい。受動排出口により、新鮮な空気の供給源を外気から滅菌チャンバの中に引き込むことが可能となる。
【0008】
通常、総滅菌サイクルタイムは、できるだけ短いことが望ましい。再処理時間が短いと、所定時間内に滅菌物品を使用できる回数が増加して、ひいては、治療できる1日当たりの患者の数が増加する。滅菌する物品が高価な医療器具の場合、サイクルタイムの短縮化により、医療従事者の大幅な経済的節約を生み出すことが可能となる。
【0009】
滅菌剤ミストの液滴が物品の表面で合体して液滴または凝縮液の領域が決して形成されないようにすることが重要である。そのような滅菌する物品の表面上の凝縮液の領域は、多くの点で問題となる。
【0010】
全体のプロセスが最大の効率を確実に達成するために、ミストの一連の複数の再使用において、各再使用の間で滅菌用の物品を乾燥状態にすることがきわめて望ましい。表面に堆積する凝縮液または液滴の層は、新しい滅菌剤ミストが表面に接触することを妨げる潜在的に不活性化された滅菌剤を含んでいる。
【0011】
滅菌中の物品の表面に液体層が形成されると、多層のBET比表面積的な吸収も引き起こされる。合体し吸収された液滴は、滅菌プロセスの最後に物品から除去することが難しく、事実上、湿潤状態にしたままとする場合がある。滅菌された物品に残された残留滅菌剤は、手術者および患者に対して有害な場合があり、そのため、完全自動の滅菌装置において望ましくない。
【0012】
滅菌された物品の表面上の残留滅菌剤は、洗浄により除去される可能性もあるが、自動滅菌装置に追加される高価な機能であり、常には容易に得ることができない滅菌水と真水の供給が必要となる。代わりに、スタッフに物品を手洗いさせることも望ましくない、というのは、これにより、高価な可能性がある安全装置(ドラフト等)の使用が必要となり、貴重な時間とスペースとを費やす可能性があり、さらに有害な滅菌剤が手術者または患者に接触するというリスクが増大するからである。手動のプロセスを追加することは自動化の多くの利点をなくすことになる。
【0013】
洗浄段階において、装置のターンアラウンド時間を大幅に増加させるその後の乾燥段階も必要となる。
【0014】
一般的に、ミスト中の液滴が大きいほど物品の表面に凝縮する可能性が大きくなり、その結果、滅菌工程の効率が全体的に低下する。
【0015】
従って、大きい液滴サイズの集団が減少したミストに滅菌する物品を接触させることが望ましい。ミストは、液体から多くの方法で、例えば、超音波エネルギの印加により、または圧力の制御により生成することができるが、作製の正確な手段を問わず、どのミストも粒子サイズ変動の広がりを含む。このことは、図1の理想的な図に示されており、例えば、液滴の粒子サイズは、平均の粒子サイズが約50μmで、最大約200μmまで分布している。
【0016】
形成されたままのミスト中の液滴サイズの分布の固有の性質は、望ましくないより大きい液滴サイズが滅菌する物品に接触することを防止するために、より大きい液滴を除去し、それによってより小さい液滴サイズが滅菌する物品に接触することを優先的に可能にするためにミストの処置が必要であることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、先行技術の不利な点の少なくとも1つを克服もしくは改善すること、または有用な代替措置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の側面によれば、本発明は、ガス中に浮遊する液滴の集団の液滴サイズ分布を変更する方法を提供する。本方法は、ガス中に浮遊する前記液滴の集団を、第1の入力流の方向から少なくとも1つの第1の出力流の方向への流れ方向の変化に隣接する位置に配置される少なくとも1つのインパクタ領域を含む曲線経路を通して流す工程を備え、前記液滴の第1の部分は、前記インパクタ領域に衝突して留まり、前記液滴の第2の部分は、ガス中に浮遊したままとなって前記少なくとも1つの第1の出力流の方向に流れる。
【0019】
曲線流路は、正方形、六角形、八角形の断面等の任意の断面であってもよいが、最も好適には円形断面である導管によって制約される(かつ規定される)。ガス中の液滴は導管の一方の終端から他方の終端に流れる。
【0020】
曲線流は、それの最も簡単な形態において、導管の屈曲部であってもよい。
【0021】
前記曲線流は、1つの第1の入力流の方向と2つの第1の出力流の方向とを有する分岐流であってもよい。前記2つの第1の出力流の方向それぞれの前記流れは同じであることが好ましく、すなわち分岐は、対称であることが好ましい。前記出力方向は、反対向きであることが好ましい。
【0022】
好ましくは、前記第1の出力流中の粒子の前記液滴サイズ分布は、前記第1の入力流中の前記液滴サイズ分布より、より小さい粒子サイズ側に偏っている。つまり、出力流は、例えば、入力流に対して出力流のMMADが減少していることからわかるように、より小さい粒子の割合が増加している。出力流の粒子のMMADは、入力流の粒子のMMADより小さい。
【0023】
前記第1の入力流の方向と第1の出力流の方向とが直交することが好ましい。前記インパクタ領域は、理想的には、前記第1の入力流の方向の直線的な連続性により画定される経路をたどる液滴を受け取るように配置されている。
【0024】
前記ミストに1つ以上の屈曲部を通過させて、第n+1番目の入力流の方向から第n+1番目の出力流の方向への直交する流れ方向の変化を引き起こさせる工程をさらに備えてもよい。
【0025】
たとえば、方法は、前記ミストに屈曲部を通過させて、第2の入力流の方向から第2の出力流の方向への直交する流れ方向の変化を引き起こさせる工程をさらに備えることが好ましい。この場合、前記第1の出力流が前記第2の入力流になる。
【0026】
方法が、前記ミストに屈曲部を通過させて、第3の入力流の方向から第3の出力流の方向への直交する流れ方向の変化を引き起こさせる工程をさらに備えていれば、さらに好ましい。この場合、前記第2の出力流が前記第3の入力流になる。
【0027】
前記流路の1つまたは複数の特性、たとえば経路の直径は、所定の液滴サイズのプロファイルを有するミストを提供するために選択されてもよい。
【0028】
好ましくは、前記所定の液滴サイズのプロファイルは、所定の直径以上の液滴を排除または実質的に排除し、あるいは前記所定の液滴サイズのプロファイルは、前記ミスト中の液滴のMMAD(空気力学的質量中央径)である。
【0029】
本発明の方法は、縮径された出口を前記ミストに通過させる工程をさらに備えてもよい。
【0030】
第2の側面によれば、本発明は、ミスト用の液滴バンドパスフィルタを提供する。前記液滴バンドパスフィルタは、第1の入口導管と、前記第1の入口導管と直交する少なくとも2つの第1の出口導管と、前記入口導管の終端に配置され、前記入口導管を通じて液滴の直線的流れを受け取るように配置されるインパクタ領域とを備える。
【0031】
好ましくは、前記液滴バンドパスフィルタは、各屈曲部が第n+1番目の入口導管と第n+1番目の出口導管とを有するn個の直交屈曲部をさらに備える。
【0032】
好ましくは、第2の入口導管と第2の出口導管とを有する直交屈曲部をさらに備える。この場合、前記第1の出口導管は、前記第2の入口導管と流体連通し、前記第2の入口導管を画定する。
【0033】
さらに、好ましくは、前記液滴バンドパスフィルタは、第3の入口導管と第3の出口導管とを有する直交屈曲部をさらに備える。この場合、前記第2の出口導管は、前記第3の入口導管と流体連通し、前記第3の入口導管を画定する。
【0034】
好ましくは、それぞれの導管の断面が円形であり、および/または、それぞれの導管が同じ断面積である。
【0035】
本発明の液滴バンドパスフィルタは、末端部分に流れ制限部をさらに備える。前記流れ制限部は、開口部を有するプレートであってもよく、前記流れ方向に寸法が小さくなる管であってもよい。
【0036】
さらに第3の態様において、本発明は、超音波ネブライザと、滅菌チャンバと、中間にあって、超音波ネブライザと滅菌チャンバとに流体連通してネブライザで生成された液滴をチャンバに搬送し、濾過するための第2の態様に係る液滴バンドパスフィルタと、を含む殺菌装置を提供する。
【0037】
文脈上明らかに別段の定めがない限り、明細書および特許請求の範囲の全体を通して、単語「を備える(comprise)」、「を備える(comprising)」等は、排他的または網羅的な意味ではなく、内包的な意味で、つまり、「含むがこれに限定されない(including、but not limited to)」の意味で解釈されるものとする。
【0038】
本明細書中に用いられる「滅菌(sterilisation)」および「消毒(disinfection)」への言及は、区別しないで使用することができ、滅菌、高レベルおよび低レベルの消毒を含むがこれに限定されない、その他のレベルの微生物の削減を含むことも意図されている。
【0039】
本明細書中に用いられる「ミスト(mist)」は、サイズの集団を有し、ガス中に浮遊している、比較的小さいサイズの個々の液体粒子の大きい集団を備える系である。ガスは空気であってもよい。液滴の近傍において、液滴から蒸発した、すなわち、気化した物質が存在することも可能である。例えば、ミストは、ガスとして空気中に浮遊している、液体過酸化水素または水中の過酢酸の粒子であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】ミスト中の液滴サイズの分布を示す。
図2】粒子サイズに基づく分離技法を示す。
図3】本発明のローパスフィルタの効果を示す。
図4】本発明のT字路、すなわちインパクタを示す。
図5】本発明のT字路、すなわちインパクタにより引き起こされる液滴サイズの減衰を示す。
図6】本発明の屈曲部フィルタを示す。
図7】単一屈曲部の周りの液滴の通過を示す。
図8】本発明の二重屈曲部フィルタを示す。
図9】二重屈曲部フィルタの周りの液滴の通過を示す。
図10】単一の屈曲部と組み合わせたT字路、すなわちインパクタのコンピュータシミュレーション結果を示す。
図11】二重屈曲部フィルタを加えたT字路、すなわちインパクタを有する本発明の好適な実施形態を示す。
図12】二重屈曲部フィルタと最終制限部フィルタを加えたT字路、すなわちインパクタを有する本発明の好適な実施形態を示す。
図13】最終制限部の特性を示す。
図14】最終制限部の例による液滴の通過を示す。
図15】本発明におけるフィルタ要素の累積効果を示す。
図16】滅菌装置における本発明の曲線フィルタの構成を示す。
図17】滅菌装置における本発明の曲線フィルタの代替構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、ミストが生成されたとき、本質的に作製されるより大きいサイズの液滴をミストから除去するための方法と装置を提供する。上記で述べたように、滅菌である本発明の文脈において、より大きい液滴は、消毒する物品の表面に液体の層の形成を助長する可能性があるのでミストから除去することが望ましい。これらの液体の層は、さらに、活性滅菌剤が表面に接触することを妨げ、殺菌処置の後で物品を濡れたままにする可能性がある。濡れた物品は、好ましくないと認識されるのみでなく、活性滅菌剤を含む場合、手術者および患者に対して重大な危険を及ぼす恐れがある。これは、特に、粘膜に大きい損傷を引き起こす恐れがある過酸化物の場合である。物品上の残留滅菌剤は、洗浄および/またはその後の乾燥によって除去することができるが、滅菌サイクルの長さが増大し、費用が増大するので、好ましくない。
【0042】
噴霧化された溶液から特定の液滴サイズの集団を除去するために利用できる方法がいくつかある。これらの方法には、例えば、スクラバー、サイクロン分離器、物理的濾過、および帯電分離が挙げられる。これらの手法は、液滴の流れに対する大きな抵抗を生成する場合が多く、実施に費用がかかる。
【0043】
スクリーニング等の物理的方法は、より大きい粒子を除去する上で効果的である可能性があるが、より小さい粒子の数も大幅に減少させるように除去する傾向がある。これは、滅菌剤の浪費、および回収された未使用の滅菌剤のリサイクルまたは破壊を増大させる必要性の観点から好ましくない。
【0044】
物理的濾過手段も、特に好ましくない流れに対する大きな抵抗を引き起こす。エネルギ的に好ましくないことに加え、ミスト技術に基づく医療用滅菌器は、通常、適度なサイズの超音波ネブライザを適度な出力で使用する。同様に、ミストを推進させるために用いられるファンも比較的控え目であり、そのため、高抵抗のフィルタを使用することは実用的ではない。
【0045】
サイクロン分離プロセスおよび帯電分離プロセス等の代替プロセスは、非常に複雑でかつ高価である。
【0046】
上記のように、本ケースでは、サイズ分布スペクトルの小さいほうの端に粒子を有するミストを生成するプロセスが非常に望ましい。
【0047】
本発明は、ミスト生成器(通常、超音波ネブライザ)と対象(滅菌する物品を含む滅菌チャンバ)との間の流路の方向の変化または断面の変化に依拠する。驚くべきことに、導管によって画定される曲線経路の特定の構成を選択することによって、所定の効果的な粒子のカットオフサイズを設定することができる。
【0048】
この場合に用いられる一般的な原理は、ローパスフィルタに流れ込む空気流が粒子の分布を有するミストを含むことである。ミストが経路の曲がり角の周りを流れるとき、大きい質量(従って、より大きい運動量)の粒子は曲がることができず、経路を囲む導管の壁に衝突し、空気流から除去される。ミスト中の液滴の残りは、導管の壁に衝突することなく曲がり角の周りを流れることができて導管を出ていく。動作の概略の原理は、単一の屈曲部に関する場合を示す図2に示されている。より大きい液滴は必要な半径で曲がることができず対向する壁に衝突する。
【0049】
この方向の変化により、入口流に対し、出口流に変更されたサイズ分布がもたらされ、図3に示すように、より大きい粒子が通過する確率が減少する。特定のサイズまでは、粒子が確実に曲がることができてフィルタを通過する。特定のサイズを超える粒子については、粒子が曲がらずインパクタに衝突する確率が減少する。
【0050】
興味深いことに、当該効果がシグモイド曲線において比較的急勾配の変曲点を有し、より大きい粒子の通過を制限するだけでなく、より小さい粒子の通過を可能とするようにパラメータを調整できることを意味していることが分かる。
【0051】
粒子のカットオフサイズを決定する要因は、流速と制限部または曲線経路の特性である。ガス中の粒子の流速が増加し、および/または制限部が増加するにつれて(すなわち、曲がり角の数が増加し、および/または流路の断面積が小さくなるにつれて)、通過可能な粒子の最大サイズは小さくなる。同様に、ガス中の粒子の流速が減少し、または制限部が減少するにつれて(すなわち、曲がり角の数が減少し、および/または流路の断面積が大きくなるにつれて)、通過可能な粒子のサイズは大きくなる。
【0052】
通常、滅菌装置においては、装置の動作パラメータおよび生成可能な全体としてのミストの量に基づいて、チャンバへ流入する流速は固定される。流れはカットオフサイズを制御する1つの方法であるが、医療用滅菌装置では、滅菌剤の必要量を一定の時間で供給する必要があるので、通常、流れは大きくは変更できない。そのため、何らかの方法により流れを制限することが唯一の実行可能な制御方法である。
【0053】
本発明の最も簡易な実施形態を図6に示す。ミストの液滴サイズの分布は、ミスト1を第1の流れ方向8に曲線経路6を通して流すことによって変更することができ、曲線経路は、流れ方向が第1の入力流の方向8から第1の出口流の方向9に変わる導管10の壁上の、隣接する屈曲部7に配置されているインパクタ領域を含む。より大きいサイズの液滴に対応する液滴の部分は、インパクタ領域に衝突し、そのためミストから除去される。より小さいサイズの液滴および減少したより大きい液滴の部分に対応する液滴の第2の部分は、ガス中に浮遊して残留し、第1の出口方向9に継続して流れる。
【0054】
本発明の簡易で好適な実施形態を図4に示す。ミストの液滴サイズの分布は、ミスト1を第1の流れ方向2に曲線経路3を通して流すことによって変更することができ、曲線経路は、流れ方向が第1の入力流の方向2から第1の出口流の方向5に変わる位置に配置されているインパクタ領域4を含む。より大きいサイズの液滴に対応する液滴の部分は、インパクタ領域に衝突し、そのためミストから除去される。より小さいサイズの液滴および減少したより大きい液滴の部分に対応する液滴の第2の部分は、ガス中に浮遊して残留し、第1の出口方向5に継続して流れる。
【0055】
複数の第1の出口方向が存在してもよい。図示の例において、曲線経路は、浮遊液滴が、第2の方向5に、2つの別ではあるが均等に可能な流路を有する二股に分岐した「T」の形をしている。
【0056】
図は、1つの平面として曲線経路の断面を示しているが、1つ以上の屈曲部が平面の外にあることも可能である(任意の第2の流路が第1の流路に対して直角であれば、これは許容される)。
【0057】
第2の経路は第1の経路に対して90度であるとして示されているが、厳密に直角な流路が絶対に必要ということではない。所望の場合、流路はより大きい、またはより小さい角度であってもよい。
T字路、すなわちインパクタにおける変数間の関係は、下記の関係によって制御される。
要素1:インパクタ
パラメータ:
【0058】
【表1】
【0059】
ストークス数は、粒子がインパクタ領域に衝突するか否かを決定する。ストークス数が1以上である場合、粒子は衝突し、フィルタを通過しない。ストークス数が0.1未満の粒子は、衝突はゼロと考えられる。

従って、ストークス数と粒子直径との間の関係は以下のとおりである。
Stk=P U/9μW

上記は以下のように縮約される。
Stk=17953xD

次に、ミスト中のサンプルの様々な粒子サイズの動作を見ると、結果は、以下のように表にまとめることができる。

インパクタ通過での液滴サイズの除去:
【0060】
【表2】
【0061】
結果は図5にグラフ化されている。これは、アウトライン設計の原則を用いて構成されている、上記のT字路、すなわちインパクタが80μm以上の全てのミストの粒子を減衰させることを示している。10μm以下の粒子は、最初に曲がる際、衝突する可能性が非常に低く、ほぼ確実にミスト中に保持されている。
【0062】
本プロセスは、大きい不必要な粒子をミストから除去するだけでなくより小さい粒子が妨げられることなく通過することを可能にするので、有利である。これは、大きい粒子を除去するだけでなく、通常、小さい粒子の数に悪影響を与える制限的な方法と比べて大きな利点である。小さい粒子が妨げられることなく通過することを可能にすることにより、本方法により生成されたミストは、有用なサイズの粒子から生じる滅菌剤の浪費を最小にした状態で、非常に効率的に通過する。より大きい、不必要な粒子の除去により生じる滅菌剤の損失は避けられないが、本発明の利点は、好ましいサイズのより小さい粒子が優先的にミスト中に保持されることにより、好ましいサイズの粒子の除去による滅菌剤の損失を最小限にするということである。
【0063】
さらに、上記の関係を利用すると、所定の粒子サイズを選択し、その次に、様々な構造的要因を制御することにより供給することが可能となる。例えば、カットオフサイズを制御するために、入力直径の制御を用いることができる。例えば、ノズルの直径を大きくすると、与えられた粒子サイズに対するストークス数が減少し、粒子が通過しやすくなる。特定のカットオフサイズが望まれる場合、他のパラメータを念頭に置いて、必要に応じてストークス数が1以下になるように導管を適切なサイズとすることによって選択可能である。
【0064】
バイパスフィルタの選択性をさらに高めるために付加的要因を含めるとさらに有利であることが判明している。
【0065】
特に、本発明は1つ以上の屈曲部を直列に含む。屈曲部は、単独で用いてもよいし、または上記のT字路、すなわちインパクタを出るミストを受け取ってもよい。屈曲部の場合における根本的な前提は、T字路、すなわちインパクタの前提と同じである。ミストは屈曲部の周りを流れ、より大きいサイズの粒子は、より大きい運動量を有するので、屈曲部の壁に衝突することなく曲がることはできない。通常、屈曲部は、一様な断面の導管で形成されている。単一の屈曲部フィルタを図6に示す。ミスト1は、最初の流れ方向8で導管6に流入する。ミストは、屈曲部7を通り過ぎて直角に配置された導管10に流入し、最初の方向8と直交する出口方向9から出て行く。屈曲部7で曲がるのに十分小さいサイズの粒子は通過し、他の粒子は、屈曲部7にあり、またはその後の導管10の出口側の壁に衝突する。
要素2:屈曲部
パラメータ:
【0066】
【表3】
【0067】
屈曲部における損失は、以下により決定される:
η=e-Av/Q

ここで:
v=堆積速度
η=フラクショナル通過/部分通過
Q=体積流量
A=堆積面積
T=粒子緩和時間
F=面積係数

ここで:
T=P /18μ

および:
v=TU /R
および:
A=F(π

これらをまとめると:
lnη=-0.72P Q/18a μ
lnη=-52929D /a
【0068】
これにより、粒子サイズと部分通過(すなわち、そのサイズの粒子が屈曲部を通過する可能性)との間の関係が得られる。次に、ミスト中のサンプルの様々な粒子サイズの動作を見ると、結果は、以下のように表にまとめることができる。
単一の屈曲部通過時の液滴サイズの除去:
【表4】
【0069】
結果は図7にグラフ化して示されており、100μmの直径の粒子が単一の屈曲部の壁に堆積していること、および100μm未満1μmまでの全ての直径が減衰していることを示している。10μm未満のより小さい粒子が4%未満減衰し、5μm以下の粒子が1%未満減衰している。
【0070】
第1の屈曲部と同一であってもよく、または同一でなくてもよい、さらなる屈曲部を使用することも可能である。これは、図8に示されている。ミスト1は、最初の流れ方向8で導管6に流入する。ミストは、屈曲部7を通り過ぎて直角に配置された導管10に流入し、最初の方向8と直交する出口方向9から出て行く。屈曲部7で曲がるのに十分小さいサイズの粒子は通過し、他の粒子は、屈曲部7にあり、またはその後の、導管10の出口側の壁に衝突する。本プロセスは、屈曲部11で繰り返され、第1の屈曲部7から出て行く濾過されたミストは、屈曲部11に対する供給ミストとなり、2重濾過されたミストを13において排出するさらなる導管12に供給する。
【0071】
第2の屈曲部が第1の屈曲部と同一の場合、同一の数式が適用される。2つの屈曲部の効果は、このため、相乗的である。従って、第2の同一の屈曲部に関する液滴バンドパスは、図9に示すことができる。この場合、移行領域の勾配が事実上より垂直になり、より大きな粒子サイズのより急激なカットオフにより徹底的な減衰をもたらすことが分かる。5μm以下の粒子サイズは、両方を曲がる可能性が98%(0.99x0.99)であるが、例えば、100μmの粒子サイズは、10、000個の粒子毎に4個のみ両方の曲がり角を通過して滅菌チャンバに供給される。
2つの屈曲部通過時の液滴サイズの除去:
【0072】
【表5】
【0073】
結果は、任意の数の屈曲部に対して繰り返されるであろうが、装置の大きさとミストの経路の全体的長さは、実際に収容する必要性と優先順位が競合する。
【0074】
従って、多数の屈曲部を有する曲線経路を使用すると、カットオフフィルタとして十分に作用して約80μm以上の全ての粒子を効果的に除去し(0.64%のみ通過)、事実、50μm以上の粒子の数が全体のミストの数%に過ぎないようにミストを減衰させることができることが分かる。
【0075】
この関係は、ガス中の液滴のあらゆる安定したミスト(エアロゾル)に適用される。滅菌ミストには、過酸化水素水溶液または過酢酸水溶液等の過酸化物化合物のミストが含まれる。
要素3:制限部
【0076】
本発明は、その末端側終端(すなわち、液滴ソースから最も遠い経路の1つ以上の終端点)において制限部を有する曲線経路も含む。
【0077】
制限部の特性は、制限部の領域の導管の断面を示す図13に示されている。始端直径はA、終端直径はA、および半角はΘである。制限部の長さは、始端直径、終端直径、および半角から確定される。Θがゼロに等しい場合、管は制限部を有しない。Θが90度に等しい場合、制限部は開口部を有するプレートである。
【0078】
制限部は、プレートの形態であってもよい、または、より好適には、流れ方向に断面が徐々に狭くなる(先細になる)形態であってもよい。
パラメータ:
【0079】
【表6】
【0080】
制限部での損失は、以下の公式により与えられる:
η=1-1/1+(Stk(1-(A0/A1))/3.14exp(‐0.0185Θ))‐1.24

前に設定したストークス数と粒子直径との間の関係より:
Stk=PpCcDp 2U/9μW

これは、以下のように縮約される:
Stk=17953xDp 2

これは、粒子サイズと部分通過(すなわち、そのサイズの粒子が制限部を通過する可能性)との間の関係を与える。

次に、ミスト中のサンプルの様々な粒子サイズの動作を見ると、結果は、以下のように表にまとめることができる。

制限部通過時の液滴サイズ除去:
【0081】
【表7】
【0082】
結果は、様々な直径の液滴に対する、円形断面管の直径のサイズ制限に関する効果を示す図14に、グラフ化して与えられている。
【0083】
上記から、多数の要素、すなわち、インパクタ、第1の屈曲部、第2の屈曲部、および制限部が一緒に付加されるとき、個々の要素が協調して相乗的に作用し、明確に定められたカットオフ領域を有するフィルタを提供することが分かる。各フィルタ要素の効果は、相乗的に次のフィルタに作用する。これは、図15にグラフ化して示されている。協調して作用する要素の数は、バンドパスフィルタのフィルタプロファイルに匹敵するフィルタプロファイルをもたらす。本発明のフィルタは、適切な出発ミストに基づき、上記の原理に沿って管の形状を選択することにより調整して、任意の適切なカットオフのバンドパスフィルタ、例えば、10μmフィルタを生成することができる。
【0084】
ほんの一例として、上記の表を見ると、インパクタ、2つの屈曲部、および制限部を流路に有するシステムは、10μm液滴の80%に近い通過を可能にし、その一方で、50μm液滴の約6%のみ経路から出て行くことを可能にすることが分かる。100μm範囲の液滴は滅菌する物品に到達することはない。
【0085】
10μmを超える粒子を濾過するバンドパスフィルタを達成する濾過は、広い範囲の液滴サイズを有するミストを用いることに対して、液滴の最大かつ効率的な微小効果、および所望のレベルの消毒を達成するための時間の低減を達成するために特に望ましい。非常に効率的な消毒を可能にする上で、そのような液滴を使用することで、取り扱う使用者に対し、およびその後の患者の接触に対して安全なシステムももたらされる。
【0086】
この場合、重要なことに、本発明のフィルタは、より大きいサイズの粒子の数を減少させる一方、同時に、より小さい粒子の数をそれほど減少させないように作動する。従って、本バンドパスフィルタは非常に効果的であるだけでなく、多数の望ましい小さい粒子が通過することを可能にする上で効率的でもある。
【0087】
より大きい液滴を回避することは、特に、滅菌用途において、効率の観点から重要である。より大きい液滴は、上記のように湿潤に伴う問題を引き起こすだけでなく、より小さい液滴よりもかなり多くの滅菌剤も含む。例えば、100μm粒子は、40μm粒子よりも15倍多い液体を、または10μm粒子よりも1000倍多い液体を保持している。大きい粒子を除去し、過酸化物をリサイクルすることにより、時間と共に、大きな効率を生み出すことができる。これに加えて、大半の滅菌装置は、大気中に排出することができる前に処理する必要がある滅菌剤残留物、例えば、通常、触媒分解を必要とする過酸化水素を生成する。リサイクルが可能な時点でシステムから大きい使用できない液滴を除去することによって、そのような廃棄滅菌剤処理システムに対する不要な負荷が大幅に低減される。
【0088】
T字路インパクタと単一屈曲部とを有する本発明のシステムは、詳細なコンピュータシミュレーションの対象とされた。その結果は図10に示されている。
【0089】
シミュレーションによると、40μmの直径の5000個の粒子を含むミストを本発明の(Tインパクタおよび単一の屈曲部の形態の)バンドパスフィルタを通過させたとき、約1200個の粒子がシステムから出て行ったことが分かった。10μmサイズの5000個の粒子を含むミストでは、約4500個の粒子がシステムから出て行くことができる。このように、単一のインパクタと単一の屈曲部を有する構成は、10μmの粒子よりも40μmの粒子に対してはるかに制限的であり、このようなミッドレンジの粒子に対してさえもフィルタとして有効に作用することが分かる。例えば、第2の屈曲部を使用すると、10μmの粒子に最小限の影響を及ぼしながら40μmの粒子を極度に減少させ、バンドパスフィルタの効率を一層高める。
【0090】
本明細書中に提示された数式を用いることによって、所定のアウトプットを得ることができるシステムを作り出すことが可能である。例えば、目標の粒子サイズとミスト流速を知ることによって、曲線経路および/または制限経路を定める導管の直径を調整し、特にインパクタの設計を参照して、例えば、特定のカットオフサイズを定めることができる。あるいは、MMAD(空気力学的質量中央径)等の液滴の集団のその他のパラメータを制御することもできる。
【0091】
非常に好適なシステムが図11に示されている。ミスト1は、曲線経路3を通って第1の流れ方向2に入る。ここで、曲線経路は、流れ方向が第1の入力流の方向2から第1の出口流の方向5に変わる位置に配置されているインパクタ領域4を含む。
【0092】
より大きいサイズの液滴に対応する液滴の一部は、インパクタ領域に衝突し、そのため、ミストから除去される。より小さいサイズの液滴に対応する液滴の第2の部分および減少したより大きい液滴の部分は、ガス中に浮遊して残留り、第1の出口方向5に継続して流れる。
【0093】
経路には、また、直交する屈曲部7および11が直列に含まれる。5でインパクタを出るミストは、屈曲部7に、そして、次に11に供給され、13から出て行く。屈曲部7および11において、二重屈曲部に関して説明した上記の原理に従ってサイズの制限が行われる。
【0094】
本発明は、好適な実施形態を参照して説明されてきたが、T字路および屈曲部の様々な構成をその範囲に含む。
【0095】
本発明は、簡易なT字路(インパクタ)単独、または単一の屈曲部であってもよい。本発明は、T字路と、T字路から出て行く分岐経路のそれぞれに接続される屈曲部であってもよいし、あるいは、上記で示されているように、2つの屈曲部を有してもよい。屈曲部は、同じであってもよいし、または異なってもよい。
【0096】
T字路は、ミストが遭遇する最初の要素である必要はない。要素は任意の順序で存在してもよい。例えば、本発明は、最初に屈曲部、そして次にT字路を含んでもよいし、あるいは、先頭の屈曲部と、T字路から出る分岐経路のそれぞれに接続される後続の屈曲部との間に配置される当該T字路を含んでもよいし、または、直後にT字路が続いてる2つの屈曲部でもよい。
【0097】
これに加えて、曲線経路の終端に流れ制限部14を追加することで、滅菌チャンバに供給される可能性があるより大きい粒子の減衰の点でさらなる利点が提供される。図11の好適な実施形態に末端制限部が備え付けられて示される図12を参照されたい。
【0098】
本発明はまた、T字路と制限部、または屈曲部と制限部、および、T字路を出て制限部で終わる分岐経路のそれぞれに接続する屈曲部が続くT字路、または、T字路を出て制限部で終わる分岐路のそれぞれに接続する一連の屈曲部が続くT字路であってもよい等のその他の配置の使用も含む。
【0099】
図16は、滅菌装置と関連した本発明の好適な実施形態を示す。ファン100は、超音波ネブライザ201を含む噴霧チャンバ200の上流に、噴霧チャンバ200と流体連通して配置されている。ファン100は、本発明の曲線フィルタ250を介して、200で生成されたミストを、その中に含まれている物品を滅菌することができるチャンバ300の中に吹き込む。曲線フィルタは、T字路と、各分岐点に接続される屈曲部フィルタとを含む。制限部は、フィルタ250がチャンバ300と出会う位置に、またはその位置の付近に配置されてもよい。
【0100】
図17は、滅菌装置と関連した本発明の代替の好適な実施形態を示す。ファン100は、超音波ネブライザ201を含む噴霧チャンバ200の上流に、噴霧チャンバ200と流体連通して配置されている。ファン100は、本発明の曲線フィルタ270を介して、200で生成されたミストを、その中に含まれている物品を滅菌することができるチャンバ300の中に吹き込む。曲線フィルタは、T字路と、各分岐点に二重の屈曲部フィルタとを含む。曲線フィルタ270の第2の屈曲部は、示されているように、第1の屈曲部と直交し、平面の外側にあるが、もちろんこれは必要ではなく、任意の適切な配列を用いてチャンバ300にミストを供給してもよい。制限部は、フィルタ270がチャンバ300と出会う位置に配列されてもよい。
【0101】
これに加えて、本発明のミストにより滅菌される装置を試験すると、従来のミストにより滅菌される装置に比べ乾燥しているように見え、さらに加えて、プールされ吸着された液体のないより小さい粒子のミストと一致する生物学的データが得られる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17