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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】有機電子デバイス用のスパッタ保護層
(51)【国際特許分類】
   H10K 85/10 20230101AFI20240502BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20240502BHJP
   C07C 69/68 20060101ALI20240502BHJP
   C07C 69/76 20060101ALI20240502BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20240502BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240502BHJP
   H10K 10/40 20230101ALI20240502BHJP
   H10K 85/20 20230101ALI20240502BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240502BHJP
【FI】
H10K85/10
C07C69/54 Z
C07C69/68
C07C69/76 Z
H01L21/312 M
H01L29/78 617T
H01L29/78 618B
H10K10/40
H10K85/20
H10K85/60
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020571828
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 GB2019051807
(87)【国際公開番号】W WO2020002914
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】1810710.2
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514215170
【氏名又は名称】スマートケム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ローマン,イアン
(72)【発明者】
【氏名】モーガン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】モヒアルディン-カファフ,ソード
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン,コリン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ビバリー
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-513788(JP,A)
【文献】特開2007-145965(JP,A)
【文献】特開2015-224340(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133542(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/017396(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 85/10
C07C 69/54
C07C 69/68
C07C 69/76
H01L 21/312
H01L 29/786
H10K 10/40
H10K 85/20
H10K 85/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1000Hzで誘電定数(k)<3.0を有する有機ゲート絶縁体(OGI)層であって、前記有機ゲート絶縁体(OGI)層は架橋有機層(OSPL)でオーバーコートされており、
前記架橋有機層はフリーラジカル光硬化架橋層であり、
その表面の前記架橋有機層は1000Hzで誘電率(k)>3.3を有し、
その表面の前記架橋有機層が、少なくとも1種の多官能性アクリレート、フルオロポリマー界面活性剤ならびにアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーン界面活性剤、ならびに1種または複数の開始剤を含む、溶液を重合することによって得られたものである、有機ゲート絶縁体(OGI)層。
【請求項2】
その表面の前記架橋有機層は1000Hzで誘電率(k)>3.5を有する、請求項1に記載のOGI層。
【請求項3】
その表面の前記架橋有機層は1000Hzで誘電率(k)4.0を有する、請求項2に記載のOGI層。
【請求項4】
前記OGI層の材料が、パーフルオロポリマー、ベンゾシクロブテンポリマー(BCB)、パリレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマー、環状オレフィンコポリマー(例えば、ノルボルネン)、パーフルオロ環状オレフィンポリマー、アダマンチルポリマー、パーフルオロシクロブチリデンポリマー(PFCB)、シロキサンポリマー(ポリメチルシロキサンなど)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載のOGI層。
【請求項5】
前記OGI層の材料が、パーフルオロポリマーからなる群から選択される、請求項4に記載のOGI層。
【請求項6】
その表面の前記架橋有機層が50~4000nmの厚さである、請求項1から5のいずれかに記載のOGI層。
【請求項7】
OGIの表面自由エネルギーが15~22mN/mである、請求項1から6のいずれかに記載のOGI層。
【請求項8】
その表面の前記架橋有機層の表面自由エネルギーが、16~35mN/mの間である、請求項1から7のいずれかに記載のOGI層。
【請求項9】
その表面の前記架橋有機層が、アクリレート官能性オリゴマーをさらに含む溶液を重合することによって得られたものである、請求項1からのいずれかに記載のOGI層。
【請求項10】
基板、1つまたは複数のソース/ドレイン電極、少なくとも1つのゲート電極、有機半導体層、および請求項1からのいずれかに記載の有機ゲート絶縁体(OGI)層を含む、薄膜トランジスタ。
【請求項11】
前記有機半導体層が、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、およびこれら共役炭化水素ポリマーのオリゴマー;縮合芳香族炭化水素、例えばテトラセン、クリセン、ペンタセン、ジケトピロロピロール、置換ベンゾチエノベンゾチオフェン(C8-BTBT)、ジナフトチエノチオフェン(DNTT)、ピレン、ペリレン、コロネン、またはこれらの置換誘導体;オリゴマーパラ置換フェニレン、例えばp-クアテルフェニル(p-4P)、p-キンクエフェニル(p-5P)、p-セキシフェニル(p-6P)、またはこれらの可溶性置換誘導体;共役複素環ポリマー、例えばポリ(3-置換チオフェン)、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(λ/-置換ピロール)、ポリ(3-置換ピロール)、ポリ(3,4-二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ-1,3,4-オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(λ/-置換アニリン)、ポリ(2-置換アニリン)、ポリ(3-置換アニリン)、ポリ(2,3-二置換アニリン)、ポリアズレン、ポリピレン;ピラゾリン化合物;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ベンジジン化合物;スチルベン化合物;トリアジン;置換メタロまたは金属フリーポルフィン、フタロシアニン、フルオロフタロシアニン、ナフタロシアニン、ナフタレンジイミド、またはフルオロナフタロシアニン;C60およびC70フラーレン;A/.λ/’-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびフルオロ誘導体;λ/,λ/’-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリール、または置換ジアリール3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド;バトフェナントロリン;ジフェノキノン;1,3,4-オキサジアゾール;11,11,12,12-テトラシアノナフト-2,6-キノジメタン;α,α’-ビス(ジチエノ[3,2-b2’,3’-d]チオフェン);ジチエノ[2,3-d;2’,3’-d’]ベンゾ[1,2-b;4,5-b’]ジチオフェン(DTBDT); ポリジチエノベンゾジチオフェン-co-ジケトピロロピロールビチオフェン(PDPDBD);イソインジゴ-ビチオフェン-(IIDDT-C3)、チエノ[3,2-b]チオフェン-5-フルオロベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾールコポリマー、ジ(チオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン(DTTT);2,8-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリールアントラジチオフェン;2,2’-ビベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン、ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)ポリマー ベンゾジチアゾールポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の材料を含む、請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項12】
前記有機半導体層が、ポリアセン分子、半導体ポリマーバインダ、および/または絶縁ポリマーバインダのうち1種または複数を含む、請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項13】
前記有機半導体層が、ビス[トリイソプロピルシリルエチニル]ペンタセンまたはビス[トリイソプロピルシリルエチニル]テトラメチルペンタセンを含む、請求項12に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項14】
前記ビス[トリイソプロピルシリルエチニル]ペンタセンまたはビス[トリイソプロピルシリルエチニル]テトラメチルペンタセンがバインダ中にある、請求項13に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項15】
請求項10から14のいずれかに記載の薄膜トランジスタを含む、電子デバイス。
【請求項16】
少なくとも1種の多官能性アクリレート、非アクリレート有機溶媒、フルオロポリマー界面活性剤、ならびにアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーンを含む溶液であって、前記溶液が架橋可能であり、
前記多官能性アクリレートが、(a1)少なくとも2個のペンダントアクリレート部分を有する窒素含有環状コアを含有する多官能性アクリレート化合物と、(a2)オキシまたはポリオキシアルカンコアを有する、ポリアクリレートモノマーを含有する、溶液。
【請求項17】
18から35mN/mの範囲の表面張力を有する、請求項16に記載の溶液。
【請求項18】
前記界面活性剤が、24mN/m未満の、トルエン中0.1%溶液表面張力(mN/m)を有する、請求項16から17のいずれかに記載の溶液。
【請求項19】
低表面エネルギー有機ゲート絶縁体上に、架橋可能な有機層を溶液堆積するための方法であって、溶液は、少なくとも1種のフルオロ界面活性剤、ならびに少なくとも1種のアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーンを含む、方法。
【請求項20】
前記フルオロ界面活性剤が、24mN/m未満の、トルエン中0.1%溶液表面張力(mN/m)を有する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率有機ゲート絶縁体(OGI)に直接接触した溶液コーティング可能な架橋可能有機スパッタ保護層(OSPL)を含む、有機薄膜トランジスタ(OTFT)を含む電子デバイスであって、OSPLはトランジスタの加工中にOGIに対するスパッタ損傷を防止するように組み込まれている、電子デバイスに関し、それらのプレプラズマ電気性能評価基準を保持するトランジスタを提供する。
【背景技術】
【0002】
金属の熱蒸着は、電子デバイスの試験アレイでの接触電極の堆積のために、一般に使用される実験室技法である。一般に、供給源材料は、昇華しかつ基板上に凝縮されて薄膜を形成する時点まで、抵抗加熱される。基板への最小限の熱伝達または物理的損傷があり、得られた被膜は、任意の気体の包含(スパッタリングの場合のように)の欠如およびこのプロセスに必要な高真空に起因して、通常は高純度のものである。非常に高純度の金属被膜が、例えば電気化学的なまたはバイオセンサーの製作で必要とされる場合、および表面純度が性能に影響を及ぼし得る場合、蒸着が好ましい。これらの属性は、その物理的および化学的構造を損傷させずにポリマー有機基板上に電極を堆積する研究開発技法として、蒸着の使用を促す。しかし蒸着は、大面積にわたる均一性が不十分でありスループットが低いので規模を拡大するのが難しく、したがって工業的製造プロセスで広く使用されない。
【0003】
トランジスタアレイを含む電子デバイスの工業的製作において、製造業者は、金属電極を堆積するのにプラズマプロセスを使用する。このことは、スパッタツールがほとんどの電子製造ライン上に既に存在するという事実と共に、スパッタプロセスの高スループットに起因する。低誘電率有機誘電体に対するプラズマ誘導された損傷の作用は公知であり、Bao et al., Mechanistic study of plasma induced damage to low k dielectric surfaces; Journal of Vac. Sci. & Tech., B: Microelectronics and Nanometer structures, Processing Measurement, and Phenomena, 26, 219, 2008, doi: 101116/1.2834562により報告されている。これは非晶質ポリマー有機材料が、プラズマに直接曝露される層として使用されている場合、特に問題がある。このことは、プラズマスパッタリング中に発生したイオン、電子、およびUV光子からの衝撃に起因し、有機材料に構造的損傷を引き起こす。さらに、非晶質パーフルオロポリマー層に対してプラズマ誘導された損傷が、the Journal of Photopolymer Sci & Technology; Vol 27, No.3, 2014, pp 393-398[1]で報告されており、C-F結合が特にプラズマ損傷する傾向があると述べている。発生した深UV光子は、Cytop(商標)におけるC-C、C-O、およびC-F結合を破壊するのに十分な11.6~11.8eVの範囲のエネルギーを有する。これらの損傷した結合は、架橋または再結合して欠陥/双極子を形成する可能性があり、OSC/OGI界面でまたはこの界面近くで捕捉される。
【0004】
有機トランジスタにおいて、非晶質パーフルオロポリマーなどの低k誘電体材料は、特に小分子有機半導体(OSC)をポリマーバインダと組み合わせて使用する場合、好ましい有機ゲート絶縁体材料である。Veres et al., Adv. Func. Mat; 2003, 13, No.3, pp 199-204は、OTFTでの低誘電率OGI材料の使用が、有機半導体と有機ゲート絶縁体(OGI)との間の界面捕捉を最小限に抑えることを報告した。これは、ランダム双極子モーメントの変調を最小限に抑えることに起因し、理想的な電気特性に近い有機薄膜トランジスタをもたらす。
【0005】
トップゲート(TG)OTFTに特に好ましいOGI材料には、Cytop(商標)、Hyflon(商標)、およびTEFLON AF(商標)などのパーフルオロポリマーが含まれる。この場合、パーフルオロポリマーは、プラズマスパッタリングに直接曝露される有機薄膜トランジスタ内の層である(層5、図3)。ゲート絶縁体としてCytop(商標)などの材料を含むトップゲートOTFTがプラズマスパッタリングプロセスに曝されると、UV光子は、Cytop(商標)層の化学的性質に不可逆的な損傷を引き起こす。OTFTにおいて、この損傷は、高い閾値電圧値(Vth)、高いターンオン電圧(Vto)、高いサブ閾値スイング(SS)、高いオフ電流、低いIオン/オフ比、および不十分なバイアスストレス安定性を含む、いくつかの望ましくない電気特性として明らかにされる。これらの電気パラメーターの重要性は、当業者に十分理解される。
【0006】
パーフルオロポリマーOGIを組み込んだ有機電界効果トランジスタの性能に対する、プラズマスパッタリングからの高エネルギー粒子の有害な影響を、図10に示す。図10は、蒸着ゲートで作製された対照TFT(SKBL808)と比較して、トップゲートTFTが、OGIの最上部にOSPLがない状態で製作された場合(TFTS-SKBL756)、Vth値が8.0ボルトから16.4ボルトに増加し、Vtoが11.8ボルトから23.5ボルトに増加し、サブ閾値スイングが1.3ボルト/ディケードから2.4ボルト/ディケードに増加することを示す。図11は、スパッタプロセスに曝されかつゲート金属を堆積する前に、その場でOSPL層上に製作されたTFTが、そのプレプラズマ電気特性を保持することを実証する。次に得られた、より高い動作電圧は、より高い電力消費を有するデバイスをもたらす。Cytop(商標)は、アルゴンプラズマ中で損傷を受けることが公知である。その場にある前記OSPLにより、Vth、Vto、SS、Ion、Ioff、およびIon/off比に関してポストプラズマ値に最小限の変化がある(≦20%の変化)。
【0007】
国際公開第2008/131836号パンフレットは、誘電体層の表面の露出部分に対する損傷を最小限に抑えるために層を組み込む、有機電界効果トランジスタ(OFET)を調製するためのプロセスについて記述する。保護層は、プラズマまたはスパッタリングプロセスに曝される前にOGI上に堆積され、任意選択でデバイスから除去される。この特許は、好ましい保護層が、Cytop(商標)などのパーフルオロポリマーであることを開示する(14ページ、23~25行、および15ページ、1~5行参照)。しかし、国際公開第2008/131836号パンフレットの教示に真っ向から反して、本発明者らは、低レベルの低エネルギーArプラズマに曝露された場合であっても、Cytop(商標)が不可逆的に損傷を受けることを見出した。UV発生粒子とは別に、反射Ar(17~25eV)およびスパッタ原子(約10eV)などの他のエネルギー粒子が、典型的なスパッタプロセス中に形成されてもよい。これらの粒子のエネルギーは、有機層内のC-C(約3.7eV)、C-O(約3.5eV)、およびC-F結合(約5eV)を破壊するのに十分である。
【0008】
Cytop(商標)およびパーフルオロポリマーは材料のクラスとして、スパッタ損傷に対する保護を行わず、したがってOTFTの保護層として使用されるべきではない。
【0009】
本発明により解決される問題の1つは、その表面エネルギーを増大させるためにOGIのプラズマまたは化学エッチングなどの表面前処理プロセスの使用を必要とすることなく、わずか14~18mN/mの表面自由エネルギーを有するCYTOP(商標)などの低表面エネルギーOGI材料上に、OSPLインクをどのように均一に溶液コーティングするかである。OTFTの場合、プラズマまたは化学処理がOGIを不可逆的に損傷し、OTFTを役に立たないものにする可能性がある。国際公開第2008/131836号パンフレットは、パーフルオロポリマー上での均一な溶液コーティングをどのように実現するかについていかなる教示も提供せず、それに対して本発明者らの発明は、この工業的に関連ある技術的問題を解決する。さらに、本発明のようなTG OTFTでは、同じ材料が非晶質パーフルオロポリマーOGI上にOSPLとして溶液コーティングされた場合、OGIを再溶解するだけと考えられる。国際公開第2008/131836号パンフレットの教示は、TGデバイスに適用可能ではない。国際公開第2008/131836号パンフレットと比較した本発明におけるさらに大きな相違は、前述のTFTチャネルでのより高いキャパシタンスの利益になるような、OGIよりも高い誘電率を有するOSPLについての要件である。国際公開第2008/131836号パンフレットは、低誘電率OGIおよび低誘電率OSPLを好む。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様において、本発明は、1000Hzで誘電定数(k)<3.0を有する有機ゲート絶縁体(OGI)層であって、架橋有機層(OSPL)でオーバーコートされている、有機ゲート絶縁体(OGI)層を提供する。
【0011】
好ましくは、架橋有機層は1000Hzで誘電率(k)>3.3を有し、より好ましくは、架橋有機層は1000Hzでk>4.0を有する。
【0012】
本発明の第2の態様では、基板、1つまたは複数のソース/ドレイン電極、少なくとも1つのゲート電極、有機半導体層、および1000Hzで誘電定数(k)<3.0を有する誘電体材料を含む有機ゲート絶縁体層を含む、有機薄膜トランジスタであって、前記有機ゲート絶縁体層は架橋有機層でオーバーコートされている、有機薄膜トランジスタが提供される。好ましくは、架橋有機層は1000Hzで誘電率(k)>3.3を有し、より好ましくは、架橋有機層は1000Hzでk>4.0を有する。
【0013】
本発明の第3の態様では、本発明の第2の態様による有機薄膜トランジスタを含む、電子デバイスが提供される。
【0014】
本発明の第4の態様では、(a)少なくとも1種の多官能性アクリレート、(b)任意選択で、非アクリレート有機溶媒、(c)フルオロポリマー界面活性剤、およびアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーン界面活性剤、ならびに(d)少なくとも1つのタイプの光開始剤を含む、溶液が提供される。そのような溶液を、この技術分野では一般にインクと呼ぶ。
【0015】
本発明の第5の態様では、低表面エネルギー有機ゲート絶縁体上に、架橋可能な有機層を溶液堆積するための方法であって、溶液は、少なくとも1種のフルオロ界面活性剤、ならびに少なくとも1種のアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーン界面活性剤を含む、方法が提供される。この方法において、架橋有機層(OSPL)は、本発明の第4の態様の溶液から形成される。この方法は、好ましくは、連続した無欠陥有機層を提供し、その後に、有機架橋可能な層の架橋が行われる。本発明の態様は、低表面エネルギーOGI、特にフルオロポリマーの、有効なオーバーコートが可能である。開発された手法は、インク堆積の前の、フルオロポリマー表面の侵襲的な化学またはプラズマエッチングを使用する必要性を回避し;そのいずれも、有機薄膜トランジスタを製作する場合に望ましくないものである。
【0016】
本発明で使用されるフルオロ界面活性剤は、複数のフッ素原子を有する合成有機フッ素化合物である。それらは、ポリフッ素化またはフルオロカーボンをベースにすることができる(過フッ素化)。界面活性剤として、それらは、同等の炭化水素界面活性剤よりも水の表面張力を低下させるときに、より有効である。好ましくは、それらは、フッ素化「尾部」および親水性「頭部」を有する。
【0017】
架橋有機層は、空気または窒素中で優れた硬化特性を有し、好ましくは、基板の表面に、優れた硬さ、高いプラズマ耐性、優れた熱耐久性、および高い引張り強さを有する、実質的に平面状の硬化層を形成することが可能である。
【0018】
本発明の全ての態様において架橋有機層を、有機スパッタ保護層(OSPL)と呼ぶ。これは好ましくは、低k(誘電定数)有機ゲート絶縁体(OGI)層上に直接被覆されて、スパッタ/プラズマプロセスからOGIに対する損傷を最小限に抑える。
【0019】
本明細書において、OGIは有機ゲート絶縁体を意味する
【0020】
本明細書において、TGはトップゲートを意味する
【0021】
本明細書において、BGはボトムゲートを意味する
【0022】
本明細書において、OTFTは有機薄膜トランジスタを意味する
【0023】
本明細書において、OSCは有機半導体を意味する
【0024】
特に、OSPLは、好ましくは、高い架橋密度≧3H鉛筆硬度を有し、好ましくは、365nm波長で2.4J/cmに曝露したときにFTIRにより>70%変換率に達する(これは、プラズマ誘導された損傷に対する高い耐性、化学損傷に対する高い耐性、高い熱耐久性、および高い引張り強さを提供する)。
【0025】
OSPLは、生ずる可能性のある、下にある界面からの低k OGI層の層剥離も低減させる。
【0026】
1つのOSPLに第2のOSPLをオーバーコートすることも可能である。本質的に、第1のOSPLは、第1のOSPLと同じまたは異なる性質を有していてもよい第2のOSLPのプライマーとして、使用することができる。このようにOGIは、その表面に構築された複数のOSPL層を有していてもよい。
【0027】
架橋可能なOSPLは、化学的に、熱的に、または光化学的に硬化されてもよい。架橋OSPLは、ASTM-D3363を使用して測定したとき、好ましくは2Hから6Hの間、好ましくは3Hから6Hの間の鉛筆硬度を有する。
【0028】
本発明は、任意の低表面エネルギーポリマー層のオーバーコーティングも可能である。本発明の全ての態様によれば、OGI層は、表面自由エネルギー(SFE)≧25mN/m、好ましくは20mN/m未満、より好ましくは15mN/m未満を有する。この手法は、OSPL堆積前に、低表面エネルギー有機ゲート絶縁体の侵襲的な化学またはプラズマエッチング前処理を使用する必要性を回避するが、これらの処理はどちらも、OTFTのイオンドーピングがもたらされることに起因して、薄膜トランジスタを製作する場合に望ましくないものである。
【0029】
本発明の第4の態様の好ましい実施形態によれば、OSPLインクは、18から35mN/mの範囲の、より好ましくは21から28mN/mの表面張力を有する。OSPLインクの比較的低い表面張力は、OGIの濡れを可能にする。これは好ましくは、フルオロ界面活性剤とシリコーン界面活性剤との組合せを使用することによって、実現される。好ましくは、フルオロ界面活性剤はパーフルオロ界面活性剤である。好ましくは、シリコーン界面活性剤は、アクリレートまたはメタクリレート官能基を有するシリコーン界面活性剤である。そのようなシリコーン界面活性剤の例は、欧州特許第1828813号明細書に記載されている。あるいは、そのようなシリコーン界面活性剤は、好ましくは、1つまたは複数のアクリレートおよび/またはメタクリレート官能基で修飾されたポリジメチルまたはポリトリメチルシロキサンポリマーである。そのようなシロキサンポリマーは、好ましくは、ホスフェート(phosphate)またはスルフェート(sulphate)部分などの親水性部分も含有する。例えば、好ましいポリマーには、アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレートコポリマー(および)ラウレス-1リン酸コポリマーである、Dowsil(商標)fa 4103シリコーンアクリレートが含まれる。さらに好ましいシリコーン界面活性剤には、Siltechから得ることが可能なSilmer ACR D208、Silmer ACR Di-50、Silmer ACR Di-1508、Silmer ACR Di-2510、Silmer ACR Di-4515-0、およびSilmer ACR Di-10が含まれる。
【0030】
この組合せは、フルオロ界面活性剤がOGI界面に移行し、かつシリコーン界面活性剤がOSPL層のバルク内に架橋するので、有効であるとみなされる。
【0031】
本発明で使用されるフルオロ界面活性剤は、パーフルオロオリゴマーおよびパーフルオロポリマーを含む。使用に適したフルオロ界面活性剤の例には、F(CF-(式中、n=3から50)の直鎖フッ素化官能基が含まれる。そのような界面活性剤は、商標名CAPSTONE、メガファック(MEGAFACE)、または3MによりNovecという商標名で販売されているFC-4332として販売されている。特に、DIC製のメガファック F-563が好ましい。
【0032】
本発明は、OGI上に直接被覆された、高度に架橋されたOSPLを提供することによって、OGIをプラズマ誘導損傷から保護することを目的とする。このためOTFTアレイは、低閾値電圧値(好ましくは、プラズマ後のVgボルトでΔVth<2V(直線レジームで測定)、低ターンオン電圧(好ましくは、プラズマ後Vto<3V)、低オフ電流(好ましくは、<10-10A)、サブ閾値スイング値の低い変化(好ましくは、プラズマ後ΔSS<0.5V)、および高Iオン/オフ比(好ましくは、≧10)など、そのプレスパッタ/プラズマ電子特性を保持することが可能になる。利益には、より低い閾値電圧値、より低いターンオン電圧、改善されたサブ閾値スイング、より高いオン電流、低オフ電流、および高オン/オフ比を有するOTFTが含まれ、これら全てが改善された駆動能力を可能にする。より低いオフ電流は、漏れ電流(および付随してオフ状態での電力消費)を低減させる。低Vthは、オフ状態にOTFTを維持するのに必要なゲート電圧を、低減させるのに必要とされる。低サブ閾値スイングと組み合わせた低Vthは、電力消費を低減させ、デバイスのスイッチング速度を改善する。
【0033】
本発明のOSPLは、好ましくは、OGIよりも高い誘電率を有する。例えば、OGI材料は、1000Hzで誘電定数(k)<3.0、好ましくは1000Hzで<2.5を有する。OSPLは、好ましくはOGI層よりも高い誘電率を有し、典型的にはOGIよりも>1単位高い。OSPLは、1000Hzで誘電定数(k)>3.3、好ましくは1000Hzで>3.5、好ましくは1000Hzで>4.0を有する。そのような、より高い誘電率は、OSPLインクの極性の多官能性アクリレート成分によって提供される(以下の詳細に論ずる)。この特徴は、トランジスタのアクティブチャネル領域でOGI/OSPL層の全キャパシタンスを増大させるのに、有利に使用することができる。より高いゲートキャパシタンスは、デバイス動作電圧を低減させるのに望ましい。しかし、このことは、誘電破壊が防止されるよう、OGIの厚さを低減させるのではなく誘電率を増大させることによって、最も良く実現される。低誘電率OGIおよびより高い誘電率のOSPLによって形成された2重層は、OGIよりも高い有効誘電率を有し、キャパシタンスを増大させ、誘電率の整合性を維持し、一方で上述のようにOSCに直接接触する低誘電率絶縁体を有する利益も保持する。スパッタ保護層は、デバイスの寿命全体を通してOTFTのOSC/OGIチャネル領域で所定位置にあり続け、除去されない。
【0034】
OSPLは、好ましくはOSC層よりも低い誘電率を有する。
【0035】
特に好ましい実施形態では、本発明のOTFTは、OTFT積層体中の複数のOSPLを含有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】OSPL-1に関する硬化変換率曲線である。
図2】OSPL-2に関する硬化変換率曲線である。
図3】下記のキー:1a 基板;1b ベース層;2 電極(ソースおよびドレイン);3 電極表面処理/SAM;4 有機半導体層(OSC);5 絶縁体(OGI);6 保護層(OSPL);7 ゲート電極を備えた高誘電率OSPLを持つTGBC(トップゲート、ボトムコンタクトTFT)である。
図4】下記のキー:1a 基板;1b ベース層;2 電極(ソースおよびドレイン);3 電極表面処理/SAM;4 有機半導体層(OSC);5 絶縁体(OGI);6 保護層(OSPL);7 ゲート電極を備えた高誘電率OSPLを持つTGTC(トップゲート、トップコンタクトTFT)である。
図5】下記のキー:1a 基板;1b ベース層;2 電極(ソースおよびドレイン);3 電極表面処理/SAM;4 有機半導体層(OSC);5 絶縁体(OGI);6 保護層(OSPL);7 ゲート電極;8 不動態化層;9 金属相互接続を備えた、OSPL(6)、ベース層(1b)、不動態化層(8)、および金属相互接続(9)を持つTGBC(トップゲートボトムコンタクトTFT)である。
図6】下記のキー:1a 基板;1b ベース層;2 電極(ソースおよびドレイン);3 電極表面処理/SAM;4 有機半導体層(OSC);5 絶縁体(OGI);6a 保護層1(OSPL-1);6b 保護層2(OSPL-2);7 ゲート電極;8 不動態化層;9 金属相互接続を備えた、2つのOSPL層6aおよび6b、ベース層(1b)、不動態化層(8)、ならびに金属相互接続(9)を持つTGBC(トップゲートボトムコンタクトTFT)である。
図7】下記のキー:1a 基板;1b ベース層;2a 電極(ソースまたはドレイン);2b 電極(ソースまたはドレイン);3 電極表面処理/SAM;4 有機半導体層(OSC);5 絶縁体(OGI);6a 保護層1(OSPL-1);6b 保護層2(OSPL-2);7 ゲート電極を備えた、高誘電率OSPLを持つSmartKem垂直TFTである。
図8】120nm OGI/200nm OSPL、および50nm 蒸着Auゲートを備えたOTFTアレイSKBL748に関する、線形伝達および移動度のプロットである。
図9】OTFTデバイスSKBL755 120nm OGI/200nm OSPLおよび50nm スパッタAuゲートに関する、線形伝達および移動度のプロットである。
図10】OSPL層がないOTFTデバイスに関する、線形伝達および移動度のプロットである。SKBL808は、50nmの蒸着Auゲートを有し、SKBL756は、スパッタ型の50nm Auゲートを有する。
図11】120nm OGI/200nm OSPL1を備えたデバイスに関する、線形伝達および移動度のプロットである。SKBL748は、蒸着Auゲートを有し、SKBL755は、スパッタ型Auゲートを有する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
好ましくは、有機ゲート絶縁体(OGI)層は、1000Hzで誘電定数(k)<3.0を有する低誘電率ポリマー、例えばパーフルオロポリマーを含む。本明細書で使用される低kは、1000Hzで測定したときの3.0未満の誘電定数、好ましくは2.8未満、好ましくは2.5未満を意味する。好ましくは、低誘電定数(k)ポリマーは、1.0から3.0の範囲の誘電定数を有する。本発明において、高誘電率は、1000Hzで>3.3、より好ましくは>3.5、より好ましくは>4.0を意味する。
【0038】
好ましくは、OSPLは、1000Hzで誘電率(k)>3.3、好ましくはk>3.5、および好ましくは1000Hzで>4.0を有する。複数のOSPLが存在する場合、それらは互いに異なる誘電率を有していてもよい。このことは、その相対的化学組成により影響を受ける可能性がある。
【0039】
低誘電率ポリマーのいくつかの例は、好ましくは、パーフルオロポリマー、ベンゾシクロブテンポリマー(BCB)、パリレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマー、環状オレフィンコポリマー(例えば、ノルボルネン、TOPAS(商標))ポリマー、アダマンチルポリマー、パーフルオロシクロブチリデンポリマー(PFCB)、ポリメチルシロキサン(PDMS)、およびそれらの混合物を含む。
【0040】
架橋可能なOSPLは、好ましくはスピンコーティング、噴霧コーティング、スロットダイコーティング、インクジェット印刷を含む任意の溶液コーティング技法を使用して、OGIの最上部に被覆される。OSPLは、連続層が得られるように架橋される。
【0041】
好ましくは、パーフルオロポリマーOGIは、Cytop(商標)、Hyflon(商標)、およびTEFLON AF(商標)からなる化学分類から選択される。これらのパーフルオロポリマーは、以下に示される構造を有する。
【0042】
【化1】

式中、は、ポリマーの他の部分に対する繰り返し単位の結合点を示し、nは、整数である(nは、そのようなパーフルオロポリマーに関して従来使用されたものである)。
【0043】
一実施形態において、Cytopは、上記構造の左側のモノマーのホモポリマーとして表される。したがって、上記で与えられたCytop の例に関して、好ましくはm=1およびn=0である。
【0044】
好ましい非晶質過フッ素化ポリマーは、Du Pont(Teflon(登録商標)AF)、Asahi Glass(Cytop(登録商標)として)、およびSolvay(Hyflon(登録商標)ADとして)から入手可能である。
【0045】
Teflon(登録商標)AFおよびHyflon(登録商標)ADは、テトラフルオロエチレンをそれぞれが持つ、2,2-ビス(トリフルオロメチル)-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソール(I)と2,2-ビス(トリフルオロメチル)-4-フルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1,3-ジオキソール(II)とのコポリマーである。
【0046】
Cytop(登録商標)809Mは、本発明で使用される最も好ましいOGI材料である。
【0047】
これらの材料は全て市販されており、それらの生成は、当技術分野で周知である。
【0048】
有機ゲート絶縁体(OGI)層は、本発明によってスパッタ損傷から完全に保護することができ、得られたOTFTは、そのプレスパッタ電気特性を保持する。
【0049】
本発明の架橋保護有機層は、好ましくはフリーラジカル光硬化架橋層である。
【0050】
好ましくは、OSPL層は、10~1000nmの厚さの範囲にあり、より好ましくは10~250nmの厚さ、最も好ましくは100~500nmの厚さにある。必要とされるOSPL層の厚さは、ゲート金属を堆積するのに使用されるプラズマプロセスのエネルギーおよび持続時間に依存する。プラズマエネルギーが高くなるほど、または曝露時間が長くなるほど、必要とされるOSPL層は厚くなって、スパッタ損傷からの保護をもたらす。例えば、金ゲート金属(約100nmの厚さ)のスパッタ堆積は、わずか100~250nmの厚さのOSPLしか必要としない。AuまたはAgなどの貴金属のスパッタ収率は、AlまたはMoの場合よりも2~3倍高い。したがって、同じレベルの保護を得るには、AlまたはMoなどの金属を堆積する場合、OSPLのより厚い層(約400~500nm)が必要である。
【0051】
OSPLは、少なくとも1種の多官能性アクリレートを含むインク組成物を重合することによって、好ましくは得ることができる。多官能性アクリレートは、好ましくは、インクのその他の成分と架橋することが可能であるべきである。
【0052】
OSPLは、好ましくは、OGI上に前記インク組成物を溶液コーティングすることにより、得ることができる。
【0053】
OSPLは、好ましくは、3から6Hの範囲の鉛筆硬度の架橋密度を有する。
【0054】
好ましくは、多官能性アクリレートは、少なくとも2個のペンダントアクリレート部分を有する窒素含有コアを含有する。
【0055】
OSPLは、(a1)少なくとも2個のペンダントアクリレート部分を有する窒素含有コアを含有する第1の多官能性アクリレート化合物と、(a2)オキシまたはポリオキシアルカンコアを有する第2の多官能性アクリレート化合物とを含むインク組成物を重合することによって、好ましくは得ることが可能である。
【0056】
両方の成分(a1)および(a2)は、好ましくはシリコーンをベースとせず、好ましくは界面活性剤ではない。
【0057】
好ましくは、多官能性アクリレート化合物(a1)は、少なくとも2つのペンダント(アクリロイルオキシ)エチル部分、好ましくは3つのペンダント(アクリロイルオキシ)エチル部分を含有する。多官能性アクリレート化合物は、最大6つのアクリレート部分を有していてもよい。
【0058】
好ましくは、OSPLの多官能性アクリレート化合物(a1)は、少なくとも2個のペンダントアクリレート部分を有する窒素含有コアを含み、より好ましくは、少なくとも2個のアクリレート基、好ましくは少なくとも2個の(アクリロイルオキシ)エチル部分、好ましくは3個の(アクリロイルオキシ)エチル部分を持つイソシアヌレートコアである。
【0059】
OSPLの多官能性アクリレート化合物(a1)の特に好ましい例は、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、Photomer 5662 Amine修飾ポリエーテルアクリレート、Photomer 5930 Amine修飾ポリエーテルアクリレート、Sartomer CN550、およびSartmer CN503からなる群から選択される、イソシアヌレート化合物である。
【0060】
好ましくは、OSPLの多官能性アクリレート化合物(a1)は、下記の構造:
【0061】
【化2】

を有するトリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートである。
【0062】
OSPLの多官能性アクリレート化合物(a1)は、硬化層の、必要とされる架橋密度を提供する。この成分は、好ましくは、層に硬度を与える高いTを有する。
【0063】
多官能性アクリレートモノマー化合物(a2)は、高速硬化をもたらすのに、かつ硬さとOSPL層に対する化学耐性とをコーティングに与えるのに、使用される。
【0064】
好ましくは、高反応性モノマー(a2)は、オキシまたはポリオキシアルカンコアと少なくとも2個のアクリレート基とを有する多官能性アクリレート化合物である。より好ましくは、オキシまたはポリオキシ-C2~24アルカンコア、例えばポリオキシC4~12アルカンコアである。(a2)アクリレートのいくつかの例には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DiTMPTA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエステルヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、および多官能性アクリレートオリゴマー、例えばPhotomer 5434ポリエステルテトラアクリレート、Photomer 5443ポリエステルヘキサアクリレート、Photomer 5050多官能性アクリレート、Photomer 6628脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、Photomer 6692脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、およびCresolノボラックエポキシアクリレートが含まれる。
【0065】
好ましくは、モノマー(a2)は、少なくとも2個のペンダントアクリレート部分、好ましくは3個のペンダントアクリレート部分を有するポリオキシ-C4~12アルカンコア部分を含む。好ましくは、モノマー(a2)は、3個のペンダントアクリレート部分を有するポリオキシ-C4~12アルカンコアを含む。モノマー(a2)は、最大6個のアクリレート部分を有していてもよい。
【0066】
好ましくは、多官能性アクリレートモノマー(a2)は、トリメチロールプロパントリアクリレートを含む。
【0067】
好ましくは、多官能性アクリレートモノマー(a2)は高反応性であり、それによって、表面およびバルク硬化の両方で、OSPLの高速硬化が可能になる。
【0068】
モノマー(a1)および(a2)の組合せは、高度な架橋を可能にする。
【0069】
加えて、OSPLインクはさらに、比較的高い粘度成分を含むことが好ましく、したがってOGI上にコーティングされるとそのより高い粘度によって、湿潤被膜がOGI表面から網状化するのを防止する。
【0070】
OSPLインクからの溶媒蒸発後、硬化前のOSPL層の粘度は、OGI表面から網状化するのを防止するために>2000cPsであるべきことが好ましい。したがって好ましくは、インク組成物は、>3000MPa.秒の粘度を有する多官能性アクリレートオリゴマーを含む。多官能性アクリレートオリゴマーは、任意選択でビスフェノールアクリレートオリゴマーを含む。
【0071】
OSPLは、好ましくは、本発明の第4の態様による組成物を重合することによって得ることが可能である。好ましい実施形態では、インクは、上記にて定義されたモノマー(a1)および(a2)を含む。非アクリレート溶媒(b)は、調製中もしくはコーティング操作において組成物の粘度を調節するのに、またはコーティングされる基板に関して濡れ性を改善するのに、使用されてもよい。
【0072】
溶媒(b)の例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン、およびメチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ハロゲン化炭化水素 クロロベンゼン、およびブロモベンゼン;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、グリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、およびジエチレングリコールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノンなどのケトン;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコール、プロピレンカーボネート、ジメチルエーテル、およびジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、およびカプロニトリルなどのニトリル;ならびにエステル、例えばギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、およびラクトン、例えばガンマブチロラクトンが含まれる。好ましくは、有機溶媒は乳酸エチルを含むか、または乳酸エチルからなる。
【0073】
OSPLは、好ましくは、本発明の第4の態様による組成物を重合することによって得ることが可能である。
【0074】
光硬化メカニズムは、OTFTデバイス内に存在するイオン汚染物質をもたらすべきではない。これは、光発生の酸を含むフォトレジスト材料が好ましくないことを意味する。
【0075】
OSPLの特定のアクリレート成分は、下にあるOGI層に直交するように、高速硬化速度を与えるように、優れた深さの硬化および表面硬化が得られるように、ならびに最も重要なのは、高い架橋密度が得られるように、選択される。架橋密度は、スパッタ損傷に対する耐性に相関すると考えられる。
【0076】
本発明で使用される有機半導体層は、好ましくは、少なくとも1種の半導体インクを含む。好ましくは、インクは、小分子ポリアセンおよび/またはポリトリアリールアミンバインダ配合物を含む。好ましい半導体インクには、国際公開第2010/0020329号パンフレット、国際公開第2012/003918号パンフレット、国際公開第2012/164282号パンフレット、国際公開第2013/000531号パンフレット、国際公開第2013/124682号パンフレット、国際公開第2013/124683号パンフレット、国際公開第2013/124684号パンフレット、国際公開第2013/124685号パンフレット、国際公開第2013/124686号パンフレット、国際公開第2013/124687号パンフレット、国際公開第2013/124688号パンフレット、国際公開第2013/159863号パンフレット、国際公開第2014/083328号パンフレット、国際公開第2015/028768号パンフレット、国際公開第2015/058827号パンフレット、国際公開第2014/005667号パンフレット、国際公開第2012/160383号パンフレット、国際公開第2012/160382号パンフレット、国際公開第2016/015804号パンフレット、国際公開第2017/0141317号パンフレット、国際公開第2018/078080号パンフレットに記載されているものが含まれる。
【0077】
本発明で使用することができる、その他のOSC材料には、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレンなどの共役炭化水素ポリマー、およびこれら共役炭化水素ポリマーのオリゴマー;縮合芳香族炭化水素、例えばテトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン、ジケトピロロピロール、置換ベンゾチエノベンゾチオフェン(C8-BTBT)、ジナフトチエノチオフェン(DNTT)、またはこれらの置換誘導体;オリゴマーパラ置換フェニレン、例えばp-クアテルフェニル(p-4P)、p-キンクエフェニル(p-5P)、p-セキシフェニル(p-6P)、またはこれらの可溶性置換誘導体;共役複素環ポリマー、例えばポリ(3-置換チオフェン)、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(λ/-置換ピロール)、ポリ(3-置換ピロール)、ポリ(3,4-二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ-1,3,4-オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(λ/-置換アニリン)、ポリ(2-置換アニリン)、ポリ(3-置換アニリン)、ポリ(2,3-二置換アニリン)、ポリアズレン、ポリピレン;ピラゾリン化合物;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ベンジジン化合物;スチルベン化合物;トリアジン;置換メタロまたは金属フリーポルフィン、フタロシアニン、フルオロフタロシアニン、ナフタロシアニン、ナフタレンジイミド、またはフルオロナフタロシアニン;C60およびC70フラーレン;A/.λ/’-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびフルオロ誘導体;λ/,λ/’-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリール、または置換ジアリール3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド;バトフェナントロリン;ジフェノキノン;1,3,4-オキサジアゾール;11,11,12,12-テトラシアノナフト-2,6-キノジメタン;α,α’-ビス(ジチエノ[3,2-b2’,3’-d]チオフェン);ジチエノ[2,3-d;2’,3’-d’]ベンゾ[1,2-b;4,5-b’]ジチオフェン(DTBDT); ポリジチエノベンゾジチオフェン-co-ジケトピロロピロールビチオフェン(PDPDBD);イソインジゴ-ビチオフェン-(IIDDT-C3)、チエノ[3,2-b]チオフェン-5-フルオロベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾールコポリマー、ジ(チオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン(DTTT);2,8-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリールアントラジチオフェン;2,2’-ビベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン、ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)ポリマー ベンゾジチアゾールポリマー、およびそれらの混合物の、個別の化合物、化合物のオリゴマーおよび誘導体が含まれる。
【0078】
好ましい化合物は、可溶性である、上記列挙されたものおよびそれらの誘導体である。
【0079】
OSPLは:(a1)多官能性アクリレート化合物;(a2)高反応性モノマー;(b)有機溶媒;(c)フルオロポリマー界面活性剤、ならびにアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーン界面活性剤、ならびに(d)少なくとも1種の光開始剤を含む、本発明の第4の態様による組成物から、好ましくは生成される。
【0080】
最終層における多官能性アクリレート(a1)および任意選択で(a2)の量は、最終OSPLの好ましくは10~99%、より好ましくは20~99重量%である。
【0081】
有機溶媒(b)は、好ましくは最終OSPLから実質的に除去され、したがって好ましくは、最終OSPLの0.5重量%未満で残される。
【0082】
一般に、重合可能な組成物に使用される開始剤(d)の量は、重合可能な組成物の約0.01から約25重量%、好ましくは約5から約20重量%、最も好ましくは約8から約15重量%である。
【0083】
好ましくは、本発明の第2の態様の薄膜トランジスタは、トップゲートデバイスである。本発明の第2の態様の前記デバイスは、好ましくは、改善された電気特性(低Vth、低Vto、低SS、低Ioff、および高Ion/off比)を有する。さらに任意選択で、平坦化層、自己集合単層の1つまたは複数を含む。そのようなデバイスを、図1に示す。
【0084】
OSPLは、好ましくは、
(a)多官能性アクリレート化合物;
(b)非アクリレート有機溶媒;
(c)フルオロポリマー界面活性剤、ならびにアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーン界面活性剤を含む、界面活性剤組成物;
(d)少なくとも1種の光開始剤;および
(e)任意選択で、アクリレート官能化オリゴマーを含む組成物を重合することによって得ることができる。
【0085】
OSPLは、好ましくは、
(a1)窒素含有環状コア、および少なくとも2個のペンダントアクリレート部分を有する、多官能性アクリレート化合物;
(a2)オキシまたはポリオキシアルカンコア、および少なくとも2個のペンダントアクリレート部分を有する、ポリアクリレートモノマーを有するモノマー;
(b)非アクリレート有機溶媒;
(c)フルオロポリマー界面活性剤、ならびにアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーン界面活性剤を含む、界面活性剤組成物;
(d)少なくとも1種の光開始剤;および
(e)任意選択で、アクリレート官能化オリゴマー
を含む組成物を重合することによって得ることができる。
【0086】
OSPLは、好ましくは、
(a1)窒素含有環状コアおよび少なくとも2個のペンダントアクリレート部分を有する多官能性アクリレート化合物を、100重量部;
(a2)ポリオキシアルカンコアおよび少なくとも2個のペンダントアクリレート部分を有するポリアクリレートモノマーを、5~1000重量部;
(b)有機溶媒の成分(a1)および(a2)を合わせた100重量部当たり、1~10000重量部;
(c)成分(a1)および(a2)を合わせた100重量部当たり、フルオロポリマー界面活性剤ならびにアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーン界面活性剤を含む界面活性剤組成物を、0.01から20重量部;ならびに
(d)成分(a)および(b)を合わせた100重量部当たり、少なくとも1種の光開始剤を0.01から20重量部
含む組成物を重合することによって得ることができる。
【0087】
好ましくは、開始剤化合物(d)は、アミンをベースにした開始剤、チオキサノンをベースにした開始剤、およびそれらの組合せから選択される。好ましくは、開始剤化合物(d)は、ベンゾエート化合物、置換チオキサノン化合物、またはそれらの組合せ、好ましくはエチル-4-(ジアミノ)ベンゾエートおよびジエチルチオキサノンの組合せ、またはエチル-4-(ジアミノ)ベンゾエートおよびイソプロピルチオキサノンの組合せを含む。
【0088】
有効なOSPL配合物の例は、表1、2、および3に含まれる:
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
製作のコストおよび容易さに関しては、ゲート絶縁体上にOSPLを溶液コーティングすることが望ましく、いくつかの適切なコーティング技法には、スピンコーティング、スロットダイコーティング、またはインクジェット印刷が含まれるがこれらに限定するものではない。しかし、パーフルオロポリマーの非常に低い表面自由エネルギー(11~20<dyne/cm)は、コーティングが行われる前にOSPLインク配合物の表面張力を修正することが好ましいことを意味する。
【0093】
好ましくは、配合されたOSPLインクは、18から35mN/mの範囲の表面張力を、より好ましくは20から30mN/m、より好ましくは19から28mN/mを有する。
【0094】
一実施形態において、OSPL組成物は、フルオロポリマー界面活性剤およびシリコーン界面活性剤を含む界面活性剤組成物を添加することによって、その表面張力が低減するように修正される。好ましくは、界面活性剤の2重量%未満が、より好ましくは1重量%未満がインク組成物中に含まれる。界面活性剤は、好ましくは、アクリレートをベースにしたOSPL組成物に適合性がある。
【0095】
好ましい界面活性剤は、フルオロ界面活性剤ならびにアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーン界面活性剤を含む。特に非イオン性フルオロ界面活性剤が、特に非イオン性パーフルオロ界面活性剤が好ましい。
【0096】
好ましい界面活性剤は、24mN/m未満、好ましくは23mN/m未満、好ましくは≦21mN/mの、トルエン中0.1%溶液表面張力(mN/m)を有するものである。
【0097】
好ましくは、界面活性剤を含有するOSPL組成物は、ゲート絶縁体層上に堆積された溶液であり、いずれかの任意選択の溶媒は、熱蒸発によって除去される。次いで得られた層を架橋させる。
【0098】
OSPL層が所定位置に配置されたら(約10~500nmの厚さの層)、その上に、プラズマスパッタプロセスを使用して金属ゲートを堆積することができる。得られたOTFTデバイスの試験は、所定位置にあるOSPLによって、プラズマ曝露後のトランジスタ性能の劣化がゼロから最小限に抑えられている状態にあることを示し、したがってOSPLは、プラズマ誘導性の損傷からOTFTを保護していた。
【0099】
実験
1. コーティングの均一性、硬化、および表面自由エネルギーを評価するための、OSPL/OGI/OSC/ガラス基板の調製
OSPLスクリーニング実験は、ガラス基板上にOSC/OGIをコーティングし、その上にOSPLをオーバーコートして硬化したものを使用して実施した。顕微鏡用スライド(50mm×50mm)を清浄化し、プラズマエッチングし、β-フェニルエチル-トリクロロシランで処理した。次いでこれらに、SKL09有機半導体の25μm層(SKL09インクは、1.7%固形分、30:70wt:wtのTMTES:メトキシ-PTAAをテトラリン中に含む)をコーティングし、その後、Cytop 809Mの500μm層をコーティングした。次いでCYTOP/OSC/ガラスを持つ複合積層体に、スパッタ保護層インク配合物をオーバーコートし、これをUV硬化して、被膜の被覆の程度および均一性を評価した。高度に架橋された均一OSPL被膜が得られた。
【0100】
詳細な実験方法を、以下に詳述する:
【0101】
1a. ガラス基板の調製
ガラススライドを、下記の通り調製した:
【0102】
ガラススライドを5cm×5cmに切断し、アセトンで10秒間洗浄し、その後、IPAで10秒間洗浄し;圧縮Nガスで乾燥し、120℃で5分ベークした。室温で2分間、アルミニウム板上で冷却した。
【0103】
プラズマエッチングを、Plasmalab PE100で、200mbarのベース圧力、250mWの電力、および50sccmの流量のエッチングガス(酸素およびアルゴン)により行った。圧縮Nで乾燥して、コーティング前に塵埃を除去した。ガラスを、無水トルエン中のβ-フェニルエチルトリクロロシラン(B-PTS)溶液(10mlのトルエン中25mM(59.9mg)のB-PETCS)で処理した。溶液を基板上に溢れさせ、2分間保持し、スピンオフした(60秒 500rpm、停止10秒、およびトルエンで満たし、500rpmで回転させて1000rpmに上昇させ、このときより多くのトルエンで濯ぎながら行った)。基板を100℃で1分間加熱し、次いで室温に1分間冷却した。
【0104】
1b. ガラス基板上へのOSC溶液のコーティング:
半導体インク1mlを、0.45μmのフィルターに通して基板上に吐出して、全表面に満たした。ぴたりとしたひっくり返したボウルで覆い、Laurellスピンコータを使用してスピンコートした(500rpm/5秒/500rpms-1、次いで1500rpm/60秒/500rpms-1)。100℃で1分間ベークし、アルミニウム板上で1分間冷却した。
【0105】
1c. OGI(有機ゲート絶縁体)のコーティング:
FC43溶媒中のCytop CTL 809Mの4.5%固形分溶液約1mlを、基板上に吐出した。スピンコートし(500rpm/5秒/500rpms-1、次いで1500rpm/20秒/6000rpms-1)、50℃で90秒および100℃で1分間加熱し;アルミニウム板上で1分間冷却した。
【0106】
1d. OSPL層のコーティングおよび架橋:
有機スパッタ保護層配合物(SPL 184/2+任意選択でフルオロ界面活性剤)を、0.45μmフィルターに通して基板上に吐出した。スピンコートした(500rpm/5秒/500rpms-1、次いで1500rpm/60秒/500rpms-1)。
【0107】
300から3000mJ/cmの間のUV光、i線に曝露し、次いで100℃で1分間ベークした。
【0108】
1e. 膜厚の測定
膜厚は、Bruker Nano Surfaces DivisionのDektakXTで決定した。
【0109】
1f. 被膜の表面自由エネルギーの測定
表面自由エネルギーを、Owens、Wendt、Rabel、およびKaelbleモデルを使用したデータフィジックスOCA 15ECゴニオメーターを使用して、少なくとも3種の溶媒による液滴法を使用して決定した。
【0110】
1g. インクの表面張力の測定
表面張力は、ペンダントドロップ技法およびデータフィジックスOCA 15ECゴニオメーターを使用して決定した。
【0111】
1h. FTIRによるC=C結合変換率パーセンテージの決定
任意のUV曝露前の湿潤未硬化被膜、および漸増的UV曝露により様々な程度に硬化された一連の被膜に関する、FTIRスペクトルを記録する(Perkin ElmerSpectrum 2機器、ダイヤモンドATRモジュールを備える)。問題となる吸収ピークの周りのトラフを使用して、3点で、スペクトルを正確にベースライン作成する。これらは典型的には、約1846、1657、および1573cm-1の波数である。1725cm-1でカルボニルピークの、および1635cm-1でアルケンピークの高さを測定する。1635cm-1での吸光度の1725cm-1での吸光度に対する比を計算し、未硬化試料で得られた比と比較する。下式:
【0112】
【数1】

を使用して、硬化度を計算する。
【0113】
2. OTFTアレイの調製
図1は、下記の構成要素:
- 基板(1)
- ソースおよびドレイン電極(2)
- (任意選択の)電極表面処理(3)または自己集合単層(SAM)
- 有機半導体層(OSC、4)
- 有機ゲート絶縁体層(OGI、5)
- 有機スパッタ保護層(6)
- ゲート電極(7)
を含む、トップゲートボトムコンタクト(TGBC)OTFTを示す。
【0114】
TGBC OTFTを製作するプロセスステップは、ソースおよびドレイン電極(2)を基板の最上部にパターニングすること、任意選択で電極表面処理(3)を施すこと、OSC層(4)を付与して基板(1)ならびにソースおよびドレイン電極(2)を覆うこと、OGI層(5)をOSC層(4)の最上部に付与すること、OSPL(6)をOGI層(5)の最上部にコーティングすること、OSPL層(6)を架橋すること、ゲート電極(7)をOSPLの最上部に付与することを含む。フォトレジスト(8)の層をゲート電極(7)の最上部に堆積し、パターニングして、ゲート電極(7)を画定するためのマスクを提供する。ゲート電極(7)をそれぞれ取り囲むOSPL、OGI、およびOSC層(6)、(5)、および(4)の部分は、任意選択で除去されるが、OSPLは、図4にあるようなチャネル領域内で常に無傷のまま残される。
【0115】
2a. 実験方法:ガラス基板上へのコーティング
以下に記述される例でのTGBC OTFTは、下記のプロセスステップを使用して製作される:
1. Corning Eagle2000ガラス基板を、20分間、脱イオン水中のDecon 90の5%溶液中で、超音波処理で清浄化し、脱イオン水で濯ぎ、70℃の対流オーブンで30分間乾燥した。
2. プラズマ処理後(50sccm O、70W、1.5分、Oxford Instruments PLasmaLab 80+)、500nmのSU-8 2000シリーズ(MicroChem)を含むベース層を、基板上に、3000rpmで25秒間、スピンコートした。
3. ベース層を、最初にホットプレート上で、95℃で1分間加熱し、i線放射線(400mJ/cm)で露光し、露光後に95℃で1分間ベークし、その後、200℃で15分間ハードベークした。
4. 50nm Auのソースおよびドレイン電極をスパッタリングし(Arガス、プロセス圧力10mTorr、200W RF電力)、標準のフォトリソグラフィおよび湿式エッチング技法を使用してパターニングした。
5.
6. 基板をO/Heプラズマ(15sccm O、50sccm He、60W)処理に3分間供して(Alpha Plasma、AL76)、ベース層の表面エネルギーを増大させ、パターニングされた金電極からあらゆる残留物を清浄化した。SAM層、電子グレードの2-プロパノール中の10mMペンタフルオロベンゼンチオール(PFBT)溶液を、スピンコーティングによって形成し(速度および持続時間)、2-プロパノールで2回濯ぎ、ホットプレート上で100℃で1分間加熱した。
7. OSC層をスピンコートし(1250rpmで2分間)、次いで100℃で1分間ベークした。
8. OGI層は、絶縁体Cytop(AGC)の溶液を、1500rpmで20秒間スピンコートすることによって形成した。
9. 次いでOGIを、ホットプレート上で、85℃で1分間加熱した。
10. OSPLは、デバイスを浸漬し、1500rpmで2分間スピンコートし、2.4J/cmのUV(i線)でフラッド露光し、次いでホットプレートで、120℃で2分間加熱することによって付与した。
11. 50nmのAuゲート電極をスパッタリングし(Arガス、プロセス圧力10mTorr、200W RF電力)、標準のフォトリソグラフィおよび湿潤エッチングプロセスに従いパターニングした。
【0116】
OTFT特性は、ソース電極に対してトランジスタのゲートおよびドレイン電極にバイアスをかけることによって得られた。全ての例のトランジスタは、負のゲート電圧Vが存在する場合に正孔(正電荷担体)がOGIとOSCとの間の界面で蓄積され、チャネルを形成するように、p型有機半導体を含む。ドレイン電極に印加された負の電圧Vにより電流Iが流されるが、この電流は、OTFTが線型レジームでバイアスがかけられた場合(即ち、V<V)、式
【0117】
【数2】

によって記述されるように電荷担体密度、移動度μ、チャネル長L、および幅Wに依存するものである。Vthは、閾値電圧であり、Iは、漏れ電流である。Cは、ゲートの下のOGIまたはOGI/OSPL層の単位面積当たりのキャパシタンスであり、チャネル内の電荷担体密度を決定する。
【0118】
電気測定は、Wentworth S200プローブステーションに連結されたKeithley 4200 SCSパラメーター分析器を使用して得た。線形レジームでデバイスを測定するため、ドレイン電圧を-2Vに設定し、ゲート電圧を+30Vから-30Vまで、1Vステップで掃引した。
【0119】
電界効果移動度を、式2:
【0120】
【数3】

に従って計算し、式中、δI/δVは、I-Vプロットの勾配である。移動度がゲート電圧依存の場合、引用された値は、V<Vによる蓄積で記録された最大値であることに留意されたい。
【0121】
閾値電圧Vthおよびターンオン電圧Vtoは、共に、正規化ドレイン電流から抽出され、NI=I×L/W、Vthに関してNI=1nA(10-9A)でありVtoに関して1pA(10-12A)である場合、ゲート電圧と定義される。
【0122】
トランジスタのオフ電流Ioffは、ゲート電圧掃引中に記録された最も低い電流として得られる。Iオン/オフは、V=-30Vでのドレイン電流をIオフで割ることによって計算される。
【0123】
誘電率
OSPLの誘電率は、金属-絶縁体-金属(MIM)キャパシタを製作することによって決定した。3×5アレイMIMキャパシタを、以下に概説するように製作した:
1. 25mm×25mm基板をシリコンウエハから切断し、次いでアセトンおよび2-プロパノールで濯ぎ、ホットプレート上で、150℃で10分間ベークし、最後に5分間、Oプラズマに曝露した(25sccm、250W、Diener Nano)。
2. OSPL配合物を、1500rpmで2分間、スピンコートした。
3. デバイスを、2.4J/cmのi線放射線で露光し(EVG 620)、次いで120℃で5分間ベークした。
4. 次いで3×5MIMキャパシタの各アレイを、シャドウマスクを通して80nmのAuを蒸着させることによって形成した。
【0124】
このように、誘電体の2層を備えたMIMキャパシタが形成され、第1の層は300nmの熱酸化物からなり、第2の層はOSPLによって形成される。OSPLの厚さは、スピンコーティング条件および配合物の固形分含量に依存する。2層キャパシタの場合、キャパシタンスCは、酸化物COXおよびOSPL CSPLのキャパシタンスの級数和と定義され:
【0125】
【数4】

式中、
OX=εεOXA/dox 式4
および
SPL=εεSPLA/dSPL 式5
であり、εOX、dOX、dSPL、およびεSPLは、ぞれぞれ、酸化物およびOSPL層の相対誘電率および厚さであり、Aはキャパシタの面積であり、εは自由空間の誘電率である。
【0126】
OSPLの誘電率は、式3、4、および5から抽出することができる:
【0127】
【数5】
【0128】
各MIMデバイスのキャパシタンスは、Agilent 4264精密LCR計を使用して、周波数1kHz、200mVP-Pで測定した。OSPLおよび酸化物の厚さは、J.A.Woollam M2000可変角度分光偏光解析器により、波長300~1500nmおよび入射角55°~75°で測定した。各MIMデバイスの面積は、較正されたNikon顕微鏡を使用して測定した。
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】

本発明は、以下の態様を含む。
[1]
1000Hzで誘電定数(k)<3.0を有する有機ゲート絶縁体(OGI)層であって、前記有機ゲート絶縁体(OGI)層は架橋有機層(OSPL)でオーバーコートされており、その表面の前記架橋有機層は1000Hzで誘電率(k)>3.3を有し、好ましくは、その表面の前記架橋有機層は1000Hzで誘電率(k)>3.5を有し、より好ましくは、その表面の前記架橋有機層は1000Hzで誘電率(k)>4.0を有する、有機ゲート絶縁体(OGI)層。
[2]
前記OGI層の材料が、パーフルオロポリマー、ベンゾシクロブテンポリマー(BCB)、パリレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマー、環状オレフィンコポリマー(例えば、ノルボルネン、TOPAS(商標))、パーフルオロ環状オレフィンポリマー、アダマンチルポリマー、パーフルオロシクロブチリデンポリマー(PFCB)、シロキサンポリマー(ポリメチルシロキサンなど)、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはパーフルオロポリマーである、[1]に記載のOGI層。
[3]
前記OGI層の材料が、以下の群:
【化3】

から選択される繰り返し単位を含有し、式中、 は、前記ポリマーの他の部分に対する前記繰り返し単位の結合点を示し、mおよびnは整数である、[1]または[2]に記載のOGI層。
[4]
その表面の前記架橋有機層が50~4000nmの厚さ、好ましくは100~500nmの厚さ、より好ましくは100~350nmの厚さである、[1]から[3]のいずれかに記載のOGI層。
[5]
OGIの表面自由エネルギーが15~22mN/m、好ましくは<15mN/mである、[1]から[4]のいずれかに記載のOGI層。
[6]
その表面の前記架橋有機層の表面自由エネルギーが、16~35mN/mの間、好ましくは18~35mN/m、好ましくは20~35mN/m、好ましくは22~27mN/mである、[1]から[5]のいずれかに記載のOGI。
[7]
その表面の前記架橋有機層の誘電率が、1000Hzで、≧4、好ましくは4から10の間である、[1]から[6]のいずれかに記載のOGI。
[8]
その表面の前記架橋有機層が、少なくとも1種の多官能性アクリレート、任意選択でアクリレート官能性オリゴマー、任意選択で非アクリレート有機溶媒、フルオロポリマー界面活性剤ならびにアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーン界面活性剤、ならびに1種または複数の開始剤を含む、溶液を重合することによって得ることができる、[1]から[7]のいずれかに記載のOGI。
[9]
前記多官能性アクリレートが、(a1)少なくとも2個のペンダントアクリレート部分を有する窒素含有環状コアを含有する多官能性アクリレート化合物と、(a2)オキシまたはポリオキシアルカンコアを有するポリアクリレートモノマーとを含む、[8]に記載のOGI層。
[10]
前記多官能性アクリレート化合物(a1)が、少なくとも2個のペンダントアクリレート部分、好ましくは少なくとも2個のペンダント(アクリロイルオキシ)エチル部分、好ましくは3個のペンダント(アクリロイルオキシ)エチル部分を有する窒素含有環状コアを含有する、[9]に記載のOGI層。
[11]
前記多官能性アクリレート化合物(a1)が、イソシアヌレートコアを含む、[9]または[10]に記載のOGI層。
[12]
前記多官能性アクリレート化合物(a1)が、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、Photomer 5662アミン修飾ポリエーテルアクリレート、Photomer 5930アミン修飾ポリエーテルアクリレート、Sartomer CN550、およびSartomer CN503、ならびにそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはトリス-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレートである、[9]から[11]のいずれかに記載のOGI層。
[13]
前記ポリアクリレートモノマー(a2)の前記オキシまたはポリオキシアルカンコアが、1分子当たり少なくとも1つのエーテル結合および少なくとも3個のヒドロキシル基を含有する、[9]から[12]のいずれかに記載のOGI層。
[14]
前記ポリアクリレートモノマー(a2)が、オキシまたはポリオキシアルカンコアと、少なくとも2個のアクリレート基とを有する、好ましくは、オキシまたはポリオキシ-C 2~24 アルカンコア、例えばポリオキシ-C 4~12 アルカンコアを有する、多官能性アクリレート化合物であり、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DiTMPTA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエステルヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、および多官能性アクリレートオリゴマー、例えばPhotomer 5434ポリエステルテトラアクリレート、Photomer 5443ポリエステルヘキサアクリレート、Photomer 5050多官能性アクリレート、Photomer 6628脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、Photomer 6692脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、クレゾールノボラックエポキシアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、[12]または[13]に記載のOGI層。
[15]
前記ポリアクリレートモノマー(a2)が、トリメチロールプロパントリアクリレートを含む、[13]または[14]に記載のOGI。
[16]
開始剤化合物(d)が、アミンをベースにした開始剤、チオキサノンをベースにした開始剤、およびそれらの組合せから選択される、[9]から[15]のいずれかに記載のOGI。
[17]
前記開始剤化合物(d)が、ベンゾエート化合物、置換チオキサノン化合物、またはそれらの組合せ、好ましくは安息香酸エチル-4-(ジアミノ)およびジエチルチオキサノンの組合せ、または安息香酸エチル-4-(ジアミノ)およびイソプロピルチオキサノンの組合せを含む、[9]から[16]のいずれかに記載のOGI。
[18]
前記OGIがその表面に、コーティングされた複数の架橋有機層を有する、[1]から[17]のいずれかに記載のOGI。
[19]
基板、1つまたは複数のソース/ドレイン電極、少なくとも1つのゲート電極、有機半導体層、および[1]から18]のいずれかに記載の有機ゲート絶縁体(OGI)層を含む、薄膜トランジスタ。
[20]
前記有機半導体層が、ポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、およびこれら共役炭化水素ポリマーのオリゴマー;縮合芳香族炭化水素、例えばテトラセン、クリセン、ペンタセン、ジケトピロロピロール、置換ベンゾチエノベンゾチオフェン(C8-BTBT)、ジナフトチエノチオフェン(DNTT)、ピレン、ペリレン、コロネン、またはこれらの置換誘導体;オリゴマーパラ置換フェニレン、例えばp-クアテルフェニル(p-4P)、p-キンクエフェニル(p-5P)、p-セキシフェニル(p-6P)、またはこれらの可溶性置換誘導体;共役複素環ポリマー、例えばポリ(3-置換チオフェン)、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(λ/-置換ピロール)、ポリ(3-置換ピロール)、ポリ(3,4-二置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ-1,3,4-オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、ポリ(λ/-置換アニリン)、ポリ(2-置換アニリン)、ポリ(3-置換アニリン)、ポリ(2,3-二置換アニリン)、ポリアズレン、ポリピレン;ピラゾリン化合物;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ベンジジン化合物;スチルベン化合物;トリアジン;置換メタロまたは金属フリーポルフィン、フタロシアニン、フルオロフタロシアニン、ナフタロシアニン、ナフタレンジイミド、またはフルオロナフタロシアニン;C60およびC70フラーレン;A/.λ/’-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびフルオロ誘導体;λ/,λ/’-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリール、または置換ジアリール3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド;バトフェナントロリン;ジフェノキノン;1,3,4-オキサジアゾール;11,11,12,12-テトラシアノナフト-2,6-キノジメタン;α,α’-ビス(ジチエノ[3,2-b2’,3’-d]チオフェン);ジチエノ[2,3-d;2’,3’-d’]ベンゾ[1,2-b;4,5-b’]ジチオフェン(DTBDT); ポリジチエノベンゾジチオフェン-co-ジケトピロロピロールビチオフェン(PDPDBD);イソインジゴ-ビチオフェン-(IIDDT-C3)、チエノ[3,2-b]チオフェン-5-フルオロベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾールコポリマー、ジ(チオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン(DTTT);2,8-ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリールアントラジチオフェン;2,2’-ビベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン、ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)ポリマー ベンゾジチアゾールポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の材料を含む、[19]に記載の薄膜トランジスタ。
[21]
前記有機半導体層が、ポリアセン分子、半導体ポリマーバインダ、および/または絶縁ポリマーバインダのうち1種または複数を含む、[19]に記載の薄膜トランジスタ。
[22]
前記有機半導体層が、ビス[トリイソプロピルシリルエチニル]ペンタセンまたはビス[トリイソプロピルシリルエチニル]テトラメチルペンタセンを含み、好ましくは前記ビス[トリイソプロピルシリルエチニル]ペンタセンまたはビス[トリイソプロピルシリルエチニル]テトラメチルペンタセンがバインダ中にある、[21]に記載の薄膜トランジスタ。
[23]
[19]から[22]のいずれかに記載の薄膜トランジスタを含む、電子デバイス。
[24]
少なくとも1種の多官能性アクリレート、非アクリレート有機溶媒、フルオロポリマー界面活性剤、ならびにアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーンを含み、好ましくは前記シリコーンがOmnivad 280(IGM Resisns製)である、溶液。
[25]
前記非アクリレート溶媒が、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、ケトン、エーテル、ニトリル、エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは乳酸エチルである、[24]に記載の溶液。
[26]
前記多官能性アクリレートが、[10]から[13]のいずれかに記載の通りである、請求項24または25に記載の溶液。
[27]
18から35mN/mの範囲、より好ましくは20から30mN/m、より好ましくは19から28mN/mの表面張力を有する、[24]から[26]のいずれかに記載の溶液。
[28]
2重量%未満、好ましくは1重量%未満の界面活性剤を含有する、[24]から[27]のいずれかに記載の溶液。
[29]
前記界面活性剤が、非イオン性フルオロ界面活性剤、好ましくは非イオン性パーフルオロ界面活性剤から選択される、[24]から[28]のいずれかに記載の溶液。
[30]
前記界面活性剤が、24mN/m未満、好ましくは23mN/m未満、好ましくは≦21mN/mの、トルエン中0.1%溶液表面張力(mN/m)を有する、[24]から[29]のいずれかに記載の溶液。
[31]
少なくとも1種の光開始剤をさらに含む、[24]から[30]のいずれかに記載の溶液。
[32]
アクリレート官能化オリゴマーをさらに含む、[24]から[30]のいずれかに記載の溶液。
[33]
低表面エネルギー有機ゲート絶縁体上に、架橋可能な有機層を溶液堆積するための方法であって、溶液は、少なくとも1種のフルオロ界面活性剤、ならびに少なくとも1種のアクリレートおよび/またはメタクリレート官能化シリコーンを含む、方法。
[34]
前記溶液が、2重量%未満、好ましくは1重量%未満の界面活性剤を含有する、[33]に記載の方法。
[35]
前記フルオロ界面活性剤が、非イオン性フルオロ界面活性剤、好ましくは非イオン性パーフルオロ界面活性剤から選択される、[33]または[34]に記載の方法。
[36]
前記フルオロ界面活性剤が、24mN/m未満、好ましくは23mN/m未満、好ましくは≦21mN/mの、トルエン中0.1%溶液表面張力(mN/m)を有する、[33]から[35]のいずれかに記載の方法。
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