(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】建造物情報集計システム及び建造物情報集計方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240502BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2021005042
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 孟史
(72)【発明者】
【氏名】池田 篤司
(72)【発明者】
【氏名】畠山 誠
(72)【発明者】
【氏名】須磨 桂一
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-524888(JP,A)
【文献】特開2006-058955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋及び構築物を含む建造物をモデル化した建造物モデルのうち、情報の集計対象となる集計エリアの境界を指定する入力部と、
前記建造物モデルの情報を用いて、前記境界が指定された前記集計エリアの容積及びこの集計エリアの前記境界の面積を算出するデータ処理部と、
前記データ処理部の算出結果を帳票に集計する集計部と、を有し
、
前記データ処理部は、前記集計エリアの前記境界の厚さに応じて前記境界を分割し、この分割された前記境界の各要素の面積、この面積の算定寸法、及び前記各要素の厚さを算出するよう構成されたことを特徴とする建造物情報集計システム。
【請求項2】
建屋及び構築物を含む建造物をモデル化した建造物モデルのうち、情報の集計対象となる集計エリアの境界の情報を予め記憶したファイルを入力する入力部と、
入力された前記ファイルの前記境界の情報と前記建造物モデルの情報とを組み合せて前記集計エリアの前記境界を指定する受信部と、
前記建造物モデルの情報を用いて、前記境界が指定された前記集計エリアの容積及びこの集計エリアの前記境界の面積を算出するデータ処理部と、
前記データ処理部の算出結果を帳票に集計する集計部と、を有し
、
前記データ処理部は、前記集計エリアの前記境界の厚さに応じて前記境界を分割し、この分割された前記境界の各要素の面積、この面積の算定寸法、及び前記各要素の厚さを算出するよう構成されたことを特徴とする建造物情報集計システム。
【請求項3】
前記データ処理部は、分割された境界の各要素における内部の鉄筋物量及び鉄骨物量を、更に算出するよう構成されたことを特徴とする請求項
1または2に記載の建造物情報集計システム。
【請求項4】
前記データ処理部は、分割された境界の各要素における開口面積、及び前記各要素における開口閉塞用建具の情報を、更に算出するよう構成されたことを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の建造物情報集計システム。
【請求項5】
前記データ処理部は、集計エリア内に設置された設備の体積が差し引かれた前記集計エリアの見掛け容積、前記集計エリアの容積に設計マージンを加味した前記集計エリアの新たな容積、及び前記集計エリアの境界が分割された各要素の面積に前記設計マージンを加味した前記各要素の新たな面積を、更に算出するよう構成されたことを特徴とする請求項
1乃至
4のいずれか1項に記載の建造物情報集計システム。
【請求項6】
前記集計部により帳票に集計された集計結果は、複数の集計エリア毎にデータベースに保存されると共に、出力部に表示可能に構成されたことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の建造物情報集計システム。
【請求項7】
建屋及び構築物を含む建造物をモデル化した建造物モデルのうち、情報の集計対象となる集計エリアの境界を
入力部により指定する入力ステップと、
前記建造物モデルの情報を用いて、前記境界が指定された前記集計エリアの容積及びこの集計エリアの前記境界の面積を
データ処理部により算出するデータ処理ステップと、
前記データ処理ステップによる算出結果を
集計部により帳票に集計する集計ステップと、を有
し、
前記データ処理部は、前記集計エリアの前記境界の厚さに応じて前記境界を分割し、この分割された前記境界の各要素の面積、この面積の算定寸法、及び前記各要素の厚さを算出することを特徴とする建造物情報集計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラントに対して実施される火災評価や溢水評価などの各種評価に必要な建造物の情報を、建造物モデルを用いて集計する建造物情報集計システム及び建造物情報集計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントや火力発電プラント等における各種評価(火災評価・溢水評価・室温評価等)の入力情報として、建造物の空間を含む幾何学的情報及び建造物の躯体等の情報が要求される機会が増えている。これまで、上述の評価を行う評価装置の提供により、上述の評価に対して品質向上及び工数削減が図られている。
【0003】
上記評価の入力条件は、建造物の形状に基づく情報の集計対象となる集計エリアの面積及び容積等の幾何学的情報、並びに集計エリアを構成する躯体部材及び建具等の情報である。ところが、この情報は、原子力発電プラントにおいては、保守性及び信頼性確保の観点から手計算による算出及び集計が主流であり、自動での算出及び集計への移行が進んでいない。また、手計算においては精緻な計算が困難であることから、上述の評価は厳しい評価結果となりがちで、再評価や建造物の構造変更等が必要になるケースが発生している。
【0004】
上述の各種評価に対して更なる品質向上、工数削減及び精緻な評価に寄与するためには、集計エリアの面積及び容積等の幾何学的情報、並びに集計エリアの躯体部材及び建具等の情報を、自動で精緻に算出することできるシステムの開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-149965号公報
【文献】特開2019-32572号公報
【文献】特開2002-117080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、建屋内の火災環境情報を基に、火災発生後の延焼面積及び焼損額について計算しており、出火室面積等ついても、出火室における煙層温度に影響することから評価要素になっている。ところが、この特許文献1では、空間情報の算出については手計算で実施しており、算出プロセスや設計マージン(設計裕度)の設定が変われば、評価結果にばらつきが生じる恐れがある。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、建造物内で溢水があった場合に、建造物内で溢水が伝搬する状況を計算しているが、解析条件となる床面積等については手計算で実施している。従って、この特許文献2は、特許文献1と同様に、算出プロセスや設計マージンの設定が変われば評価結果にばらつきが生じる恐れがある。
【0008】
特許文献3に記載の技術は、建築オブジェクトを図面上で定義する手段、部材割付手段及び数量算出手段を備えたことを特徴とする建築数量積算連動CADシステムである。この技術は、部屋毎の床面積をリスト化した面積表の作成や、部屋を構成する躯体部材単位(柱、壁、梁、床、天井、開口等)での積算を行い、コスト評価に使用できる。また、各躯体部材にはサイズや高さ情報が関連づけられており、設計変更時に、設計変更行為と同時に積算数量の算出が行われるため、設計変更及び仕様変更への対応を躯体部材に関して迅速に行うことが可能になる。
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載の技術は、部屋を構成する躯体部材単位の積算を行ってコスト評価することを目的としている。従って、特許文献1及び2の評価要素として用いられる、建造物の形状に基づく情報の集計エリアの面積及び容積等の幾何学的情報の算出までは考慮されておらず、評価装置に必要な情報を集計できない恐れがある。
【0010】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、建造物モデルのうち情報の集計対象となる集計エリアに関する集計エリア容積及び集計エリア境界面積等の情報を、自動で且つ精緻に算出して集計することができる建造物情報集計システム及び建造物情報集計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態における建造物情報集計システムは、建屋及び構築物を含む建造物をモデル化した建造物モデルのうち、情報の集計対象となる集計エリアの境界を指定する入力部と、前記建造物モデルの情報を用いて、前記境界が指定された前記集計エリアの容積及びこの集計エリアの前記境界の面積を算出するデータ処理部と、前記データ処理部の算出結果を帳票に集計する集計部と、を有し、前記データ処理部は、前記集計エリアの前記境界の厚さに応じて前記境界を分割し、この分割された前記境界の各要素の面積、この面積の算定寸法、及び前記各要素の厚さを算出するよう構成されたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の実施形態における建造物情報集計方法は、建屋及び構築物を含む建造物をモデル化した建造物モデルのうち、情報の集計対象となる集計エリアの境界を入力部により指定する入力ステップと、前記建造物モデルの情報を用いて、前記境界が指定された前記集計エリアの容積及びこの集計エリアの前記境界の面積をデータ処理部により算出するデータ処理ステップと、前記データ処理ステップによる算出結果を集計部により帳票に集計する集計ステップと、を有し、前記データ処理部は、前記集計エリアの前記境界の厚さに応じて前記境界を分割し、この分割された前記境界の各要素の面積、この面積の算定寸法、及び前記各要素の厚さを算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、建造物モデルのうち情報の集計対象となる集計エリアに関する集計エリア容積及び集計エリア境界面積等の情報を、自動で且つ精緻に算出して集計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る建造物情報集計システムの構成を示すブロック図。
【
図2】
図1の建造物情報集計システムが情報を集計する建造物モデルの一例を示し、(A)がその建造物モデルの全体模式図、(B)が上記建造物モデルの集計エリアを拡大して示す斜視図。
【
図3】(A)~(D)は
図2(B)の集計エリアの各壁を示す平面図。
【
図4】(A)は
図2(B)の集計エリアの床を、(B)は同集計エリアの天井をそれぞれ示す平面図。
【
図5】
図1の建造物情報集計システムにより作成される帳票の一例を示す図表。
【
図6】
図1の建造物情報集計システムの動作を説明するフローチャート。
【
図7】第2実施形態に係る建造物情報集計システムの構成を示すブロック図。
【
図8】
図7の建造物情報集計システムが情報を集計する建造物モデルの一例を示し、(A)がその建造物モデルの全体模式図、(B)が上記建造物モデルの集計エリアを拡大して示す斜視図。
【
図9】(A)は
図8(B)のIXA-IXA線、(B)は同図のIXB-IXB線にそれぞれ沿う断面図。
【
図10】(A)は
図8(B)の集計エリアの床を、(B)は同集計エリアの天井をそれぞれ示す平面図。
【
図11】
図7の建造物情報集計システムにより作成される帳票の一例を示す図表。
【
図12】
図7の建造物情報集計システムの動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(
図1~
図6)
図1は、第1実施形態に係る建造物情報集計システムの構成を示すブロックである。また、
図2は、
図1の建造物情報集計システムが情報を集計する建造物モデルの一例を示し、(A)がその建造物モデルの全体模式図、(B)が上記建造物モデルの集計エリアを拡大して示す斜視図である。
図1に示す建造物情報集計システム10は、例えば原子力発電プラントなどのプラントに対して実施される火災評価や溢水評価、室温評価などの各種評価に必要な建造物(建屋及び構築物を含む)の情報を、建造物をモデル化した建造物モデル1(
図2)を用いて取得し集計するものであり、ユーザ端末11、CPU(Central Processing Unit)12及びデータベース13を有して構成される。
【0016】
ユーザ端末11は、入力部11A及び出力部11Bを有して構成され、具体的には、例えばキーボード、マウス、外部入力インタフェース装置、外部出力インタフェース装置、ディスプレイなどである。また、CPU12は、受信部12A、データ処理部12B、集計部12C及び送信部12Dを有して構成される。更に、データベース13は、前述の建造物モデル1を保存するものであり、具体的には例えばハードディスクドライブ装置、メモリ等である。
【0017】
ユーザ端末11の入力部11Aは、ユーザの操作によって建造物モデル1から、情報の集計対象となる集計エリアX(
図2)の境界である床E1、壁E2及び天井E3を指定する。更に、入力部11Aは、この指定した集計エリアXの名称、並びにこの集計エリアXの隣室A、B、C、D、E、F、G及びHの名称を、CPU12の受信部12Aに入力する。ここで、隣室G、Hは、
図2には明示していないが、隣室Gが集計エリアXの下方に、隣室Hが集計エリアXの上方にそれぞれ隣接する。また、出力部11Bは、CPU12の送信部12Dから送信された後述の帳票14(
図5)の画面または画像を表示する。
【0018】
CPU12の受信部12Aは、ユーザ端末11の入力部11Aからの入力データ(指定された集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)、集計エリアXの名称、及び集計エリアXの隣室A~Hの名称)と、データベース13の建造物モデル1からのモデルデータ(例えば集計エリアXに関するモデルデータ)を受信する。
【0019】
データ処理部12Bは、建造物モデル1のモデルデータなど受信部12Aが受信した情報を用いて、境界(床E1、壁E2、天井E3)が指定された集計エリアXの容積、この集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)の面積、この面積の算定寸法(後述)、及び上記集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)の厚さ(床・天井厚さt、壁厚さd)を算出し、更に集計エリアXの隣室A~Hの名称を処理する。
【0020】
ここで、集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)の面積算定寸法について述べる。この面積算定寸法は、
図2及び
図3に示す壁E2の場合にはW0(横幅)方向寸法と、このW0方向寸法に直交する壁高さH0であり、また、
図2及び
図4に示す床E1、天井E3の場合にはW0(横幅)方向寸法と、このW0方向寸法に直交するD0(奥行き)方向寸法である。
【0021】
上述のデータ処理部12Bが実施する集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)の面積、この面積の算定寸法、及び上記集計エリアXの境界の厚さ(床・天井厚さt、壁厚さd)の各算出処理については、境界を分割した要素毎に実施される。
【0022】
つまり、データ処理部12Bは、入力部11Aにより指定された集計エリアXの境界、集計エリアXの名称及び集計エリアXの隣室A~Hの名称に基づいて、集計エリアXの境界である床E1、壁E2、天井E3のそれぞれを、集計エリアXの裏側の隣室A~H、床・天井厚さt及び壁厚さdの少なくとも1つが異なる毎に分割する。例えば、
図2(B)及び
図3に示すように、壁E2については、集計エリアXの裏側の隣室A~H及び壁厚さdが異なる毎に、E2-1、E2-2、E2-3、E2-4、E2-5、E2-6、E2-7の各壁要素に分割する。また、
図2及び
図4に示すように、床E1及び天井E3については、集計エリアXの隣室A~Hが異なる毎に、床E1を床要素E1-1に分割し、天井E3を天井要素E3-1に分割する。
【0023】
そして、データ処理部12Bは、集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)を分割した各要素E2-1~7、E1-1、E3-1について、その各要素の面積、この面積の算定寸法(W0方向寸法、壁高さH0、D0方向寸法)、及び上記各要素の厚さ(床・天井厚さt、壁厚さd)を算出する。例えば、壁E2を分割した壁要素E2-2について、その面積、この面積算定寸法(W0方向寸法、壁高さH0)、及び壁厚さdを算出する。
【0024】
集計部12Cは、データ処理部12Bが算出し処理した算出結果を帳票14(
図5)に出力して集計する。即ち、集計エリアXの容積データ21、集計エリアXの名称データ22、及び集計エリアXの隣室A~Hの名称データ23、並びに集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)が分割された各要素E1-1、E2-1~7、E3-1の番号(No.)データ24、各要素の面積データ25、この面積算定寸法(W0方向寸法データ26、壁高さH0データ27、D0方向寸法データ28)、及び上記各要素の厚さ(床・天井厚さtデータ29、壁厚さdデータ30)を集計部12Cが帳票14に集計する。また、送信部12Dは、集計部12Cにより集計が完了した帳票14を、ユーザ端末11の出力部11Bへ送信する。
【0025】
次に、上述のように構成された建造物情報集計システム10の動作を、主に
図1及び
図6を参照して説明する。
ユーザ端末11の入力部11Aは、ユーザにより操作されることで、建造物モデル1における集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)を指定し、この集計エリアXの境界、集計エリアXの名称及び集計エリアXの隣室A~Hの名称等の処理条件(入力情報)を入力する入力ステップを実施する(S1)。また、CPU12の受信部12Aは、入力部11Aからの入力情報を受信すると共に、データベース13の建造物モデル1から集計エリアXに関するモデルデータを受信する受信ステップを実施する(S2、S3)。
【0026】
次に、CPU12のデータ処理部12Bは、受信部12Aが受信した入力情報(指定された集計エリアXの境界、集計エリアXの名称、集計エリアXの隣室A~Hの名称、及び建造物モデル1からの集計エリアXに関するモデルデータ)に基づいてデータ処理するデータ処理ステップを実施する(S4)。このデータ処理として、データ処理部12Bは、集計エリアXの容積を算出し、隣室A~Hの名称を処理し、集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)を、集計エリアXの隣室A~H、床・天井厚さt及び壁厚さdの少なくとも1つが異なる毎に分割する。
【0027】
データ処理部12Bは、更に、集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)を分割した各要素E2-1~7、E1-1、E3-1について、その各要素の面積、この面積の算定寸法(W0方向寸法、壁高さH0、D0方向寸法)、及び上記各要素の厚さ(床・天井厚さt、壁厚さd)を算出する。
【0028】
次に、集計部12Cは、データ処理部12Bが算出し処理した集計結果を、帳票14に出力して集計する集計ステップを実施する(S5)。即ち、集計エリアXの容積データ21、集計エリアXの名称データ22、及び集計エリアXの隣室A~Hの名称データ23、並びに集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)が分割された各要素E1-1、E2-1~7、E3-1の番号(No.)データ24、各要素の面積データ25、この面積算定寸法(W0方向寸法データ26、壁高さH0データ27、D0方向寸法データ28)、及び上記各要素の厚さ(床・天井厚さtデータ29、壁厚さdデータ30)を集計部12Cが帳票14に集計する。
【0029】
その後、送信部12Dは、集計部12Cにより作成された集計結果としての帳票14をユーザ端末11の出力部11Bに送信することで、この出力部11Bが帳票14の画面または画像を表示する表示ステップを実施する(S6)。
【0030】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)及び(2)を奏する。
(1)建造物モデル1のうち情報の集計対象となる集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)がユーザ端末11の入力部11Aを用いて指定されることで、CPU12のデータ処理部12Bが、境界(床E1、壁E2、天井E3)が指定された集計エリアXの容積、並びにこの集計エリアXの境界の面積、この面積の算定寸法(W0方向寸法、壁高さH0、D0方向寸法)、境界厚さ(床・天井厚さt、壁厚さd)、及び集計エリアXの隣室A~Hの名称を算出し処理する。このデータ処理部12Bの算出結果を集計部12Cが帳票14に集計する。これにより、建造物モデル1の集計エリアXに関する情報(集計エリアXの容積データ21、集計エリアXの境界面積データ25など)を自動で且つ精緻に算出して帳票14に集計することができる。この結果、上述の集計情報を、火災評価や溢水評価などに好適に利用することができる。
【0031】
(2)CPU12のデータ処理部12Bにより集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)が、集計エリアXの裏側の隣室A~H及び境界の厚さ(床・天井厚さt、壁厚さd)の少なくとも1つが異なる毎に分割され、この分割された境界の各要素E1-1、E2-1~7、E3-1について、その各要素の面積及び厚さが算出され、集計部12Cにより帳票14に集計される。この集計結果を用いることで、建造物における室温の時刻歴評価の際に、隣室との伝熱を精緻に評価することができる。
【0032】
なお、建造物モデル1における集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)は、ユーザ端末11の入力部11Aにより直接指定される場合を述べたが、上記集計エリアXの境界(床E1、壁E2、天井E3)の情報を予め記録したファイルを用いて、入力部11Aにより間接に指定されてもよい。つまり、ユーザ端末11の入力部11Aが、図示しないデータベースなどから上記ファイルを入力(例えばダウンロード)することで、CPU12の受信部12Aが、入力された上記ファイルにおける境界(床E1、壁E2、天井E3)の情報と建造物モデル1の情報とを組み合わせることで、集計エリアXの境界を指定するように構成されてもよい。
【0033】
(B)第2実施形態(
図7~
図12)
図7は、第2実施形態に係る建造物情報集計システムの構成を示すブロック図である。また、
図8は、
図7の建造物情報集計システムが情報を集計する建造物モデルの一例を示し、(A)がその建造物モデルの全体模式図、(B)が上記建造物モデルの集計エリアを拡大して示す斜視図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0034】
本第2実施形態の建造物情報集計システム40が第1実施形態と異なる点は、建造物モデル1において指定される情報の集計対象となる集計エリアYと、ユーザ端末41の入力部41Aと、CPU42のデータ処理部42B、集計部42C及び送信部42Dと、データベース43の集計情報蓄積部43Mとを有する点である。
【0035】
図8(B)に示すように、集計エリアYは、床E1、壁E2、天井E3のほかに、床E1に開口2を、壁E2に開口3をそれぞれ備え、更に、床E1側に階段4が、天井E3側に梁5が、壁E2に開口3を閉塞する扉等の建具6がそれぞれ設けられている。
【0036】
図1に示すユーザ端末41の入力部41Aは、第1実施形態の入力部11Aと同様に、ユーザの操作により建造物モデル1から、集計エリアYの境界である床E1、壁E2及び天井E3を指定し、この指定した集計エリアYの名称、並びにこの集計エリアYの隣室A~Hの名称をCPU42の受信部12Aに入力する。更に、入力部41Aは、ユーザの操作により、集計エリアY内に設置された設備の体積と、設計裕度としての設計マージンを含むデータをCPU42の受信部12Aに入力する。上記設計マージンは、集計エリアYの容積や集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)の面積に対して各種評価装置が入力の際に設定するものである。
【0037】
CPU42のデータ処理部42Bは、建造物モデル1のモデルデータなど受信部12Aが受信した情報を用いて、境界(床E1、壁E2、天井E3)が指定された集計エリアYの容積を算出し、この集計エリアYの隣室A~Hの名称を処理すると共に、集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)を、集計エリアYの裏側の隣室A~H、床・天井厚さt、壁厚さd、壁高さH0、及びD0方向寸法の少なくとも1つが異なる毎に分割する。
【0038】
例えば、
図8(B)及び
図9(A)に示すように、集計エリアYに階段4がある場合には、壁E2-6の壁厚さに階段4の踏み面の奥行き寸法を加算した壁厚さを壁厚さdと考えて、壁E2の壁要素E2-6は、壁厚さdが異なる毎に壁要素E2-6-5、E2-6-6、E2-6-7、E2-6-8、E2-6-9に更に分割される。また、この壁要素E2-6は、壁高さH0が異なる毎に、壁要素E2-6-1、E2-6-2、E2-6-3、E2-6-4に更に分割される。
【0039】
また、
図8(B)及び
図9(B)に示すように、集計エリアYの階段4の際(端)が壁に接している場合には、壁E2-7の壁厚さに階段4の横幅を加算した壁厚さを壁厚さdと考えて、壁E2の壁要素E2-7は、壁厚さdが異なる毎に壁要素E2-7-7、E2-7-8、E2-7-9、E2-7-10、E2-7-11に更に分割される。また、この壁要素E2-7は、壁高さH0が異なる毎に、壁要素E2-7-1、E2-7-2、E2-7-3、E2-7-4、E2-7-5、E2-7-6に更に分割される。
【0040】
図8(B)及び
図10(A)に示すように、床要素E1-1についても、集計エリアYの階段4が床に接している場合に、階段4の高さを床厚さtと考えて、床E1の床要素E1-1は、床厚さtが異なる毎に、床要素E1-1-3、E1-1-4、E1-1-5、E1-1-6、E1-1-7に更に分割される。また、この床要素E1-1は、D0方向寸法が異なる毎に、床要素E1-1-1、E1-1-2に分割される。
【0041】
なお、床の開口2について、データ処理部42Bは、床要素E1-1の分割時には躯体(床)と同様であるとして区別せずに分割するが、分割した床要素E1-1-1内の開口としてその開口面積を算出する。
図9(A)の壁の開口3についても、データ処理部42Bは、上述の床の開口2と同様に処理する。
【0042】
図8(B)及び
図10(B)に示すように、集計エリアYの梁5が天井に接している場合には、梁5の高さを天井厚さtと考えて、天井E3の天井要素E3-1は、天井厚さtが異なる毎に天井要素E3-1-1、E3-1-2、E3-1-3に更に分割される。なお、
図8(B)に示すように、梁5は、集計エリアY内で対向する壁要素E2-6、E2-2間に掛け渡されているため、集計エリアYと隣室A、Eとの間で壁厚さdの情報を算出できない。このため、
図9(A)に示す壁要素E2-6では、梁5について厚さ情報が集計されない。
【0043】
データ処理部42Bは、更に、集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)が分割された各要素E2-1~5、E2-6-1~9、E2-7-1~11、E1-1-1~7、E3-1-1~3について、その各要素の面積、この面積の算定寸法(W0方向寸法、壁高さH0、D0方向寸法)、及び上記各要素の厚さ(床・天井厚さt、壁厚さd)を算出する。
【0044】
また、データ処理部に42Bは、上記各要素内の開口(例えば開口2、3)の面積、上記各要素内で開口を閉塞する扉等の建具(例えば建具6)の情報(建具の寸法や材料、気密性、液密性、耐火性など)、並びに上記各要素における内部の鉄筋物量及び鉄骨物量を算出する。
【0045】
更に、データ処理部42Bは、集計エリアY内に設置された設備の体積が差し引かれた集計エリアYの容積(見掛け容積)、集計エリアYの容積に設計裕度としての設計マージンを加味した集計エリアYの新たな容積、集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)が分割された各要素における面積に設計マージンを加味した各要素の新たな面積を算出する。
【0046】
集計部42Cは、データ処理部42Bが算出し処理した算出結果を帳票44(
図11)に出力して集計する。即ち、集計エリアYの容積データ21、集計エリアYの名称データ22、及び集計エリアYの隣室A~Hの名称データ23、並びに集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)が分割された各要素E2-1~5、E2-6-1~9、E2-7-1~11、E1-1~7、E3-1-1~3の番号(No.)データ24、この各要素の面積データ25、この面積の算定寸法データ(W0方向寸法データ26、壁高さH0データ27、D0方向寸法データ28)、及び上記各要素の厚さ(床・天井厚さtデータ29、壁厚さdデータ30)を集計部42Cが帳票44に集計する。
【0047】
更に、集計部42Cは、上記各要素内の開口面積データ45、上記各要素内での開口閉塞用の建具情報46、上記各要素の内部の鉄筋物量データ47及び鉄骨物量データ48を帳票44に集計する。集計部44Cは、また、集計エリアY内の設備体積が差し引かれた集計エリアYの容積(見掛け容積)データ49、集計エリアYの容積に設計マージンを加味した集計エリアYの新たな容積データ50、及び上記各要素の面積に設計マージンを加味した各要素の新たな面積データ51を帳票44に集計する。
【0048】
送信部42Dは、集計部42Cにより集計が完了して帳票44に集計された集計結果を、データベース43の集計情報蓄積部43Mに複数の集計エリアY毎に保存すると共に、ユーザ端末41の出力部11Bに送信する。上記集計情報蓄積部43Mは、帳票44に集計された集計結果を複数の集計エリアY毎に保存して蓄積すると共に、ユーザ端末41の出力部11Bに保存データを表示可能に構成される。
【0049】
次に、上述のように構成された建造物情報集計システム40の動作を、主に
図7及び
図12を参照して説明する。
ユーザ端末41の入力部41Aは、ユーザにより操作されることで、建造物モデル1における集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)を指定し、この集計エリアYの名称、集計エリアYの隣室A~Hの名称、集計エリアY内の設備体積、及び集計エリアYの容積に加味されると共に集計エリアYの境界が分割された各要素の面積に加味される設計マージン等の処理条件(入力情報)を入力する入力ステップを実施する(S11)。
【0050】
次に、CPU42の受信部42Aは、第1実施形態と同様に、入力部41Aからの入力情報を受信すると共に、データベース43の建造物モデル1から集計エリアYに関するモデルデータを受信する受信ステップを実施する(S12、S13)。
【0051】
次に、CPU42のデータ処理部42Bは、受信部12Aが受信した情報に基づいてデータ処理するデータ処理ステップを実施する(S14)。このデータ処理として、データ処理部42Bは、集計エリアYの容積を算出し、この集計エリアYの隣室A~Hの名称を処理し、集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)を、集計エリアYの裏側の隣室A~H、床・天井厚さt、壁厚さd、壁高さH0及びD0方向寸法の少なくとも1つが異なる毎に分割する。
【0052】
データ処理部42Bは、更に、集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)が分割された各要素E2-1~5、E2-6-1~9、E2-7-1~11、E1-1-1~7、E3-1-1~3について、その各要素の面積、この面積の算定寸法(W0方向寸法、壁高さH0、D0方向寸法)、及び上記各要素の厚さ(床・天井厚さt、壁厚さd)を算出する。
【0053】
また、データ処理部に42Bは、上記各要素内の開口(例えば開口2、3)の面積、上記各要素内で開口を閉塞する扉等の建具(例えば建具6)の情報(建具の寸法や材料、気密性、液密性、耐火性など)、並びに上記各要素における内部の鉄筋物量及び鉄骨物量を算出する。
【0054】
更に、データ処理部42Bは、集計エリアY内に設置された設備の体積が差し引かれた集計エリアYの容積(見掛け容積)、集計エリアYの容積に設計マージンを加味した集計エリアYの新たな容積、集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)が分割された各要素における面積に設計マージンを加味した各要素の新たな面積を算出する。
【0055】
次に、集計部42Cは、データ処理部42Bが算出し処理した算出結果を帳票44に出力して集計する集計ステップを実施する(S15)。即ち、集計エリアYの容積データ21、集計エリアYの名称データ22、及び集計エリアYの隣室A~Hの名称データ23、並びに集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)が分割された各要素E2-1~5、E2-6-1~9、E2-7-1~11、E1-1~7、E3-1-1~3の番号(No.)データ24、この各要素の面積データ25、この面積の算定寸法データ(W0方向寸法データ26、壁高さH0データ27、D0方向寸法データ28)、及び上記各要素の厚さ(床・天井厚さtデータ29、壁厚さdデータ30)を集計部42Cが帳票44に集計する。
【0056】
更に、集計部42Cは、上記各要素内の開口面積データ45、上記各要素内での開口閉塞用の建具情報46、上記各要素の内部の鉄筋物量データ47及び鉄骨物量データ48を帳票44に集計する。集計部44Cは、また、集計エリアY内の設備体積が差し引かれた集計エリアYの容積(見掛け容積)データ49、集計エリアYの容積に設計マージンを加味した集計エリアYの新たな容積データ50、及び上記各要素の面積に設計マージンを加味した各要素の新たな面積データ51を帳票44に集計する。
【0057】
その後、送信部42Dは、集計部42Cにより作成された集計結果としての帳票44を、データベース43の集計情報蓄積部43Mに保存させると共に、ユーザ端末41の出力部11Bに表示させる保存・表示ステップを実施する(S16)。
【0058】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態によれば、次の効果(3)~(5)を奏する。
(3)建造物情報集計システム40により帳票44に集計された集計エリアYの情報には、第1実施形態と同様な情報である集計エリアYの容積データ21、集計エリアYの境界の各要素の面積データ25、この面積算定寸法(W0方向寸法データ26、壁高さH0データ27、D0方向寸法データ28)、境界厚さ(床・天井厚さtデータ29、壁厚さdデータ30)、及び集計エリアYの隣室A~Hの名称データ23のほかに、開口面積データ45、開口閉塞用建具情報46、及び集計エリアY内の設備体積が差し引かれた集計エリアYの容積(見掛け容積)データ49が追加されている。この結果、建造物モデル1の集計エリアYに関する情報を、第1実施形態の場合よりも一層精緻に自動で集計することができ、火災評価や溢水評価などの各種評価に一層好適に利用することができる。
【0059】
(4)第1実施形態と同様に、集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)が分割された各要素について、その各要素の面積及び厚さが算出されて集計されるほか、各要素の内部の鉄筋物量及び鉄骨物量、並びに開口閉塞用建具情報が算出されて集計される。これらの鉄筋や鉄骨、建具などは、コンクリートよりも密度が高く伝熱効果が高い材料である。従って、建造物における室温の時刻歴評価に際し、隣室との伝熱を、第1実施形態の場合よりも一層精緻に評価することができる。
【0060】
(5)建造物情報集計システム40により帳票44に集計された集計エリアYの情報には、集計エリアYの容積に設計マージンを加味した新たな集計エリアYの容積データ50、及び集計エリアYの境界(床E1、壁E2、天井E3)が分割された各要素の面積に設計マージンを加味した各要素の新たな面積データ51の情報が追加される。上記設計マージンが火災評価や溢水評価などの各種評価毎に設定されるので、上記新たな容積50、面積51にばらつきがなく、上述の各種評価を適切に実施できる。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1…建造物モデル、10…建造物情報集計システム、11A…入力部、12A…受信部、12B…データ処理部、12C…集計部、14…帳票、21…集計エリアの容積データ、25…各要素の面積データ、26…W0方向寸法データ、27…壁高さH0データ、28…D0方向寸法データ、29…床・天井厚さtデータ、30…壁厚さdデータ、40…建造物情報集計システム、41A…入力部、42B…データ処理部、42C…集計部、43…データベース、43M…集計情報蓄積部、44…帳票、45…開口面積データ、46…建具情報、47…鉄筋物量データ、48…鉄骨物量データ、49、50…集計エリアの容積データ、51…各要素の面積データ、X、Y…集計エリア、E1…床、E2…壁、E3…天井、t…床・天井厚さ、d…壁厚さ