(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】気体圧縮機システムのプログラム更新方法
(51)【国際特許分類】
G06F 8/65 20180101AFI20240502BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20240502BHJP
F04C 28/00 20060101ALN20240502BHJP
【FI】
G06F8/65
F04B49/06 341L
F04C28/00 A
(21)【出願番号】P 2021006199
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内樹 諒介
(72)【発明者】
【氏名】池村 勇次
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-277367(JP,A)
【文献】国際公開第2020/084939(WO,A1)
【文献】特開2020-143858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65
F04B 49/06
F04C 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体圧
縮機本体及び該気体圧縮機本体をプログラムと演算装置の協働によって制御する制御装置を有する複数の気体圧縮機と、前記複数の
気体圧縮機の夫々と接続した吐出配管系統と、前記複数の気体圧縮機の制御装置を制御する管理装置とを備え、前記吐出配管系統から吐き出される気体の圧力及び流量のうち少なくとも一方を所定値に基づいて供給する気体圧縮機システムのプログラム更新方法であって、
前記管理装置が、更新用プログラムを取得するステップと、
前記複数の気体圧縮機の内、プログラムの更新対象となる稼働中の
気体圧縮機についてプログラムを更新するステップと、
前記複数の気体圧縮機の内、前記プログラムの更新対象となる稼働中の
気体圧縮機とは異なる
他の気体圧縮機を前記所定値に応じて駆動するステップと
を含み、前記他の
気体圧縮機が、無負荷運転中の
気体圧縮機である場合、当該無負荷運転中の
気体圧縮機を停止させて、プログラムの更新作業を行う気体圧縮機システムのプログラム更新方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプログラム更新方法であって、
前記プログラムの更新対象となる稼働中の
気体圧縮機以外
の他の気体圧縮機が全負荷運転中であるときに、先に停止或いは無負荷運転となった更新処理対象の
気体圧縮機についてプログラムを更新するステップを含むプログラム更新方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプログラム更新方法であって、
前記プログラムの更新対象となる稼働中の
気体圧縮機についてプログラムを更新するステップを実行する前に、前記他の気体圧縮機を前記所定値に応じて駆動することの可否を案内及び当該可否への回答を受け付ける情報を外部出力するステップを含むプログラム更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定圧力や流量の圧縮気体の供給を維持したままで、圧縮機のプログラム更新を行う気体圧縮機システムのプログラム更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気を始め気体を圧縮する気体圧縮機は、有線/無線によるネットワーク通信機能を有するものが知られている。例えば通信機能を介したサーバシステムを利用した遠隔監視で24時間365日リアルタイムに稼働状況を把握するとともに、状況監視により圧縮機設備の設置環境の問題を抽出し、電子メールやメッセージ機能による警報を自動送信し、設備のダウンタイム短縮を図っている。
【0003】
このような監視機能には、気体圧縮機の制御プログラムの更新処理もある。例えば、特許文献1は、冷却媒体の圧縮を行う圧縮機を備える冷却システムのプログラム更新方法であって、複数の機器コントローラのうち一の機器コントローラは、統合コントローラの指示に従って、一の制御プログラムから他の制御プログラム(「UD用制御プログラム」)へのアップデートを実行する旨を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気体圧縮機を動作させるプログラムや上記稼働状況の監視等に使用するプログラムの更新は、例えばユーザである工場の運休日及び流体機械停止のタイミングに合わせて、サービス作業員が現地で流体機械に直接更新プログラムを読み込ませることで実施しており、時間とコストが掛かるという課題がある。この点、上述の監視機能等を利用して遠隔サーバから流体機械に更新用のプログラムを送信して自動的に更新することもできるが、プログラムの更新処理には流体機械の停止及び再起動が必要であり、この間、圧縮気体の供給が停止するという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば、以下の構成を適用する。即ち気体圧縮機機本体及び該気体圧縮機本体をプログラムと演算装置の協働によって制御する制御装置を有する複数の気体圧縮機と、前記複数の圧縮気体の夫々と接続した吐出配管系統と、前記複数の気体圧縮機の制御装置を制御する管理装置とを備え、前記吐出配管系統から吐き出される気体の圧力及び流量のうち少なくとも一方を所定値に基づいて供給する気体圧縮機システムのプログラム更新方法であって、前記管理装置が、更新用プログラムを取得するステップと、前記複数の気体圧縮機の内、プログラムの更新対象となる稼働中の圧縮機についてプログラムを更新するステップと、前記複数の気体圧縮機の内、前記プログラムの更新対象となる稼働中の圧縮機とは異なる他の前記気体圧縮機を前記所定値に応じて駆動するステップとを含む気体圧縮機システムのプログラム更新方法である。
【0007】
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プログラムの更新処理時に、所定値(設定圧力や流量)に応じた圧縮気体の供給を維持しつつ自動的にソフト更新を行う。本発明の他の課題・構成・効果は、以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明を適用した実施形態に係る概略構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施例1による制御例を示すフロー図である。
【
図3】本発明の実施例2による制御例を示すフロー図である。
【
図4】本発明の実施例2による制御例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1を
図1及び
図2を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す各図において、共通する部分には同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する場合がある。
図1に、気体圧縮機システム50の構成を示す。気体圧縮機システム50は、圧縮機5、6及び7という複数の圧縮機と、これらを制御する台数制御装置2と、管理サーバ1と、管理端末3とを備える。管理サーバ1と、台数制御装置2と、管理端末3とは有線又は無線からなる通信網4を介して接続され、種々の制御指令や制御結果のフィードバックが通信可能に構成される。
【0012】
圧縮機5、6及び7は、容積型や遠心式といった種々の型式を適用可能な圧縮機本体を夫々備える。各圧縮機は、例えば大気を吸い込んで圧縮空気を生成する空気圧縮機である。各圧縮機5、6及び7は、吐出配管系統7が合流し、所定の圧力及び空気量の圧縮空気をユーザに提供する。
なお、本実施例は、各圧縮機として一定速機、可変速機或いはこれらの混載のいずれの構成であっても適用することができる。
【0013】
圧縮機5、6及び7は、演算部及びこれと協働とするプログラムによって制御機能部を有し、各圧縮機の起動、停止及び各種運転制御制御を行うことができるようになっている。また、制御機能部は、再書き込み可能な揮発及び/又は不揮発メモリを有し、後述するプログラム更新処理において、更新プログラムを記憶することができるようになっている。
【0014】
台数制御装置2は、演算部及びこれと協働する制御機能部を有し、有線又は無線の通信線を介して圧縮機5、6及び7の稼働スケジュールを管理する装置である。稼働スケジュールには、稼働する圧縮機の台数や稼働順等を含む。例えば、吐出配管系統7から吐き出される圧縮空気の圧力や量に応じて、各圧縮機に指令を送信し、圧縮機の起動及び稼働台数を1台或いは3台としたり、所定台数の圧縮機を停止或いは無負荷運転としたりするようになっている。また、台数制御装置2は、後述する管理サーバ1からのプログラム更新処理指令に応じて、各圧縮機の制御プロブラムを更新する処理機能を有する。
【0015】
管理サーバ1は、台数制御装置2は、演算部及びこれと協働する制御機能部を有するサーバ装置である。また、管理端末3は、演算部及びこれと協働する制御機能部を有するとともに気体圧縮機システムの管理者に対して各種情報の入力装置と出力装置を提供する端末装置である。管理サーバ1及び管理端末3は、後述する各各圧縮機の制御プロブラムを更新する処理機能を有する。
なお、本実施例では、管理サーバ1と管理サーバ3は別体の構成として説明するが、両者の機能を一体とした構成であってもよい。
【0016】
通信網4は、例えば、LAN、BAN、インターネット等といった種々の有線/無線の通信型式からなるネットワークである。
【0017】
次いで、
図2を用いて、本実施例によるプログラム更新処理を説明する。
【0018】
S100で、管理サーバ1は、台数制御装置2に、各圧縮機に記憶されているプログラムの現状のバージョン情報の取得要求を行い、これを取得する。なお、各圧縮機のプログラムバージョン情報は、台数制御装置2に記憶する態様であっても、各圧縮機のメモリに記憶された現状のバージョン情報を、台数制御装置2が適宜取得する態様のいずれであってもよい。
【0019】
S101で、管理サーバ1は、取得した現状の圧縮機プログラムのバージョン比較を行う。管理サーバ1は、更新内容有りの場合、管理端末3に、更新案内及び実行可否の情報を出力させ、S103に移行する。更新内容無しの場合は現状維持とする(S111)。
【0020】
S103で、管理サーバ1は、管理端末3からの回答が「YES(更新実施)」である場合、S104の処理に進む。また、管理サーバ1は、管理端末3からの回答が「NO(更新不可)である場合はS112に進み、更新を待機として任意時間(一定の時間間隔或いはランダムの時間間隔)で、再度、管理端末3に更新案内及び実行可否の情報を出力し、回答を待機する。
【0021】
S104で、管理サーバ1は、各圧縮機の稼働状況を確認し、更新対象機が更新可能な状態(停止中=更新可能)である場合には(S104:YES)、S105に進む。管理サーバ1は、更新可能な状態でない場合(稼働中=更新不可)には(S104:NO)、S113に進む。なお、本実施例において、圧縮機の「稼働中」とは、停止及び無負荷運転を含むものとする。
【0022】
S113で、管理サーバ1は、管理端末3に以下A又はBの案内を表示し、回答を待機する。
【0023】
A:「現在更新対象機が運転中です。更新のために停止中の圧縮機と運転を切り替えますがよろしいでしょうか?」
B:「更新のために運転機及び停止機を自動切り替えする場合がございますがよろしいでしょうか?」
つまり、管理サーバ1は、圧縮機5、6及び7のうち、更新対象とする圧縮機と異なる他の圧縮機が停止中である場合にはAの案内を管理端末3に表示させ、全ての圧縮機が稼働中の場合には、Bの案内を表示する。即ち気体圧縮機システムが稼働中に、プログラム更新に起因する圧縮空気の供給を停止させることが無い。
【0024】
管理サーバ1は、上記A又はBに対する回答が、「YES」の場合(S113:YES)、S105に進む(全圧縮機が稼働中の場合には、更新対象の圧縮機を停止させることができるようになってからS105に進む。)。また、管理サーバ1は、上記A又はBに対する回答が。「NO」の場合(S113:NO)、S115の処理に進み、管理端末3に更新時間の指定又は更新案内を任意間隔で送信し、指定された時間或いは更新指示回答時にS105に進む。
【0025】
S105で、管理サーバ1は、更新対象の圧縮機のプログラム更新処理を行う(S113の更新時間の指定がある場合は、当該時間に更新処理を実施し又管理端末3から更新実施指令がある場合には、更新処理を実施する。
【0026】
このように、本実施例によれば、気体圧縮機システムシステムから圧縮空気の供給を停止することなくプログラムの更新処理を効率的に行うことができる。更には、気体圧縮気システムの管理者の意に反してプログラム更新処理が行われることを防止することができる。
【実施例2】
【0027】
次いで、実施例2を説明する。 実施例1では、更新対象の圧縮機が「稼働中」即ち全速運転及び無負荷運転中の場合には、他の停止中の圧縮機に運転の切替又は他の圧縮機に運転の切替ができるようになったタイミングで、プログラムの更新を行うことを特徴の一つとした。実施例2は、更新対象の圧縮機が全速運転中である場合、更新対象且つ停止中又は無負荷運転中の圧縮機のプログラム更新を先に実行することを特徴の一つとする。
【0028】
図3に、実施例2の処理の流れを示す。なお、以下の説明において、実施例2は、S213が実施例1のS113と異なる為、当該ステップについて特に説明し、共通する部分には同一の参照符号を付し説明を適宜省略する場合がある。
【0029】
S213で、S104で更新対象の圧縮機が停止中でない(S104:NO)と判断した管理サーバ1は、管理端末3に以下C又はDの案内を表示し、回答を待機する。
【0030】
C:「現在更新対象機が運転中です。他の停止中又は無負荷運転中の圧縮機から更新を行いますがよろしいでしょうか?」
D:「更新のために運転機及び停止機の更新順番を切り替える場合がございますがよろしいでしょうか?」
管理サーバ1は、上記C又はDに対する回答が、「YES」の場合(S213:YES)、S105に進む(他の圧縮機が無負荷運転中である場合には、当該圧縮機を停止させることができるようになってからS105に進む。)。また、管理サーバ1は、上記C又はDに対する回答が。「NO」の場合(S213:NO)、S115の処理に進み、管理端末3に更新時間の指定又は更新案内を任意間隔で送信し、指定された時間或いは更新指示回答時にS105に進む。
【0031】
S105で、管理サーバ1は、更新対象の圧縮機のプログラム更新処理を行う(S113の更新時間の指定がある場合は、当該時間に更新処理を実施し又管理端末3から更新実施指令がある場合には、更新処理を実施する。
【0032】
無負荷運転は、一般に、吐出配管系統7を介した圧縮空気の需要先での要求圧力・空気量を満たしているときに行う運転である。したがって、無負荷運転中の圧縮機を停止させても需要先への圧縮空気の供給を継続することができる状態といえる。このように、本実施例は、圧縮空気の供給を止めることなくプログラムの更新処理を効率的に実施することができる。
【実施例3】
【0033】
次いで、実施例3を説明する。 実施例1では、更新対象の圧縮機が「稼働中」即ち全速運転及び無負荷運転中の場合には、他の停止中の圧縮機に運転の切替又は他の圧縮機に運転の切替ができるようになったタイミングで、プログラムの更新を行うことを特徴の一つとした。実施例2では、更新対象の圧縮機が全速運転中である場合、更新対象且つ停止中又は無負荷運転中の圧縮機のプログラム更新を先に実行することを特徴の一つとした。
【0034】
実施例3は、更新対象の圧縮機が全負荷運転中であり且つ更新対象の全ての圧縮機が全負荷運転中である場合に、先に停止或いは無負荷運転となった更新対象の圧縮機からプログラムの更新を行うことを特徴の一つとする。
【0035】
図4に、実施例3の処理の流れを示す。なお、以下の説明において、実施例3は、S313、S314、S315が実施例1又は2のと主に異なる為、当該ステップについて特に説明し、共通する部分には同一の参照符号を付し説明を適宜省略する場合がある。
【0036】
S313で、S104において更新対象の圧縮機が停止中でない(S104:NO)と判断した管理サーバ1は、全ての圧縮機が全負荷運転中であるか否かを判断する。全機が全負荷運転中である場合(S313:YES)、S314に進む。管理サーバ1は、停止或いは無負荷運転中の圧縮機がある場合(S313:NO)、S105に進み、当該停止或いは無負荷運転中の圧縮機についてプログラムの更新処理を実行する。
【0037】
S314で、管理サーバ1は、管理端末3に以下E又はFの案内を表示し、回答を待機する。
【0038】
E:「現在更新対象機が全て全負荷運転中です。先に停止或いは無負荷運転となった圧縮機から更新を行いますがよろしいでしょうか?」
F:「更新のために停止或いは無負荷運転になった圧縮機から更新を行う場合がございますがよろしいでしょうか?」
S314で、E又はFへの回答が「YES」(S314:YES)の場合、管理サーバ1は、S105に進み、更新対象且つ先に停止した圧縮機のプログラム更新を行う。また、E又はFの回答が「NO」(S314:NO)の場合、管理サーバ1は、S315に進み、プログラム更新を行う時間指定の要求又は任意時間間隔で更新の案内を管理端末3に表示する。指定時間の回答がある場合には、当該指定時間にプログラム更新を行い、プログラム更新の実施要求がある場合には、即時更新を行う。
【0039】
このように本実施例によれば、他に停止或いは無負荷運転中の圧縮機が無い場合、先に停止或いは無負荷運転となった圧縮機からプログラムの更新処理を行うことができ、圧縮機空気の供給を維持しつつ効率的に圧縮機のプログラム更新を行うことができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記種々の例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、他の実施例の内容の一部を他の実施例の一部と置換することも可能である。
【0041】
特に、本実形態では、気体圧縮機システムの構成を管理サーバ1、台数制御装置2、管理端末3が通信網4を介して通信制御する態様として説明したが、これらが機能的に一体となる構成であってもよい。
【0042】
また、本実施形態では、気体圧縮機として空気圧縮機を例示したが、本発明は他の媒体を圧縮する圧縮機システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…管理サーバ、2…台数制御装置、3…管理端末、4…通信網、5・6・7…気体圧縮機